JPWO2008129936A1 - 懸濁重合用分散安定剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ビニル系化合物の懸濁重合に用いた場合に、少量の使用でも、得られるビニル系重合体粒子について、可塑剤の吸収性が高くて加工が容易であること、残存するビニル系化合物などのモノマー成分の除去が容易であること、粗大粒子が少ないこと、粒子径ができるだけ均一な粒子が得られ、フィッシュアイなどの形成を防止できること、を達成できる、重合安定性に優れる分散安定剤を提供する。本発明は、けん化度が60モル%以上、重合度が200以上のポリビニルアルコール系重合体(A)、および、カルボン酸化合物により、けん化度60モル%未満のポリビニルアルコール系重合体(B)をエステル化して得られるポリビニルアルコール系重合体(C)を含む懸濁重合用分散安定剤である。

Description

本発明は、懸濁重合用分散安定剤に関する。特にビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤に関する。
従来より、塩化ビニルをはじめとするビニル系化合物を懸濁重合するに際し、分散安定剤として部分けん化ポリビニルアルコール系重合体を用いることが知られている。
ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤には、これを少量で用いた場合でも、得られるビニル系重合体粒子について、[1]可塑剤の吸収性が高くて加工が容易であること、[2]残存するビニル系化合物などのモノマー成分の除去が容易であること、[3]粗大粒子が少ないこと、[4]粒子径ができるだけ均一な粒子が得られ、フィッシュアイなどの形成を防止できること、などが必要な性能として求められており、[1]〜[4]の要求性能のすべて満たすことが理想的である。
これらの要求に対し、たとえば、ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤に、低重合度、低けん化度のポリビニルアルコールを分散助剤として併用する方法が提案されている。
特開平4−154810号公報には、側鎖にアミノ基、アンモニウム基、カルボキシル基またはスルホン酸基を有する、けん化度70モル%以下のビニルエステル系重合体を分散質とする水性分散液を用いることが記載されている。
特開平10−259213号公報には、オキシアルキレン基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、アンモニウム基を含有するけん化度70モル%以下の部分けん化ビニルエステル系樹脂水溶液を用いることが記載されている。
特開昭53−6392号公報には、けん化度が40〜55モル%であり、イソプロパノールと水との混合溶剤(イソプロパノール:水=1:1)中での4%溶液粘度が5〜15mPas(平均重合度74〜80に相当する)である部分けん化ポリビニルアセテートと非イオン系乳化剤を用いて塩化ビニルを懸濁重合する方法が開示されている。
特開昭56−167745号公報には、けん化度65モル%以上、平均重合度100〜3000のポリビニルアルコールを分散安定剤とし、けん化度20〜65モル%、平均重合度1000以下のポリビニルエステルを分散質とする水性分散液が開示されており、該水性分散液は、塩化ビニルの懸濁重合用分散安定助剤に使用できる旨の記載がある。
WO91/15518号公報には、けん化度60モル%以下、平均重合度50〜3000の末端イオン変性ポリビニルエステル系重合体を分散助剤に用いた水性分散液を、塩化ビニル等のビニル系単量体の懸濁重合用分散安定剤に用いることが開示されている。
特開昭52−110797号公報には、けん化度30〜65モル%、重合度60〜6000であって、ブロック構造を有する部分けん化ポリビニルアルコールからなる塩化ビニルの懸濁重合用分散助剤が開示されている。
特開平5−345805号公報には、けん化度60モル%以下および平均重合度4000以上であり、かつ平均粒子径が100μm以下のポリビニルエステル系重合体を分散質とする水性分散液からなるビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤が開示されている。
特開平7−62006号公報には、けん化度が70〜85モル%、平均重合度が1500〜3000の部分けん化ポリビニルアルコールを分散安定剤とし、けん化度が20〜55モル%、平均重合度が100〜600の部分けん化ポリビニルアルコールを分散助剤とし、該分散助剤の一部または全量を塩化ビニル系単量体に溶解させた後、反応を開始する塩化ビニル系重合体の製造方法が開示されている。
特開平9−77807号公報には、ヒドロキシアルキル基を側鎖に有したけん化度65モル%未満のビニルエステル系重合体よりなるビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤が開示されている。
特開平10−168128号公報には、ビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤などとして有用な、片末端にイオン性基を有するけん化度10〜85モル%、重合度50〜3000のポリビニルアルコール系重合体が開示されている。
特開平9−100301号公報には、オキシアルキレン基の含有量が0.5〜10モル%でけん化度が70モル%以下のビニルエステル系樹脂を10〜50重量%含有する水性液からなるビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤が開示されている。
特開平10−152508号公報には、水性分散液とした場合のpHが4.0〜7.0で、側鎖または末端にイオン性基を10モル%以下含有し、けん化度が60モル%以下のビニルエステル系重合体からなるビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤が開示されている。
特開平9−183805号公報には、側鎖または末端にスルホン酸基を0.01〜0.3モル%およびカルボキシル基を0.05〜1.0モル%有し、かつスルホン酸基とカルボキシル基のモル比が0.1〜0.5で、けん化度が60モル%以下のポリビニルエステル系重合体からなるビニル系化合物の懸濁重合用分散助剤が開示されている。
特開平8−109206号公報には、けん化度60モル%以上の末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール系重合体(A)、およびけん化度60モル%未満のポリビニルエステル系重合体(B)からなり、成分(A)と成分(B)との重量比(A)/(B)=40/60〜95/5であるビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤が開示されている。
特開平8−259609号公報には、エチレン単位の含有量が1〜24モル%、けん化度が80モル%より大であり、スルホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、カルボキシル基またはカチオン基を0.01〜10モル%を有する変性ポリビニルアルコール(A)ならびにけん化度が60〜95モル%および重合度が600以上のポリビニルアルコール系重合体(B)を、重量比で(A)成分/(B)成分が1/9〜8/2の割合で混合してなるビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤が開示されている。
特開2002−37807号公報には、けん化度60モル%以上、重合度600以上のポリビニルアルコール系重合体(A)、およびエチレン単位の含有量が0.5〜20モル%、けん化度が20〜60モル%、重合度が100〜600の変性ポリビニルアルコール系重合体(B)からなるビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤が開示されている。
しかしながら、これらの特許文献に記載された懸濁重合用分散安定助剤を用いた場合でもなお、前記した[1]〜[4]の要求性能のすべてを満たすまでに至っていない。
本発明は、塩化ビニルをはじめとするビニル系化合物を懸濁重合するに際して、前記した[1]〜[4]の要求性能を充足する、重合安定性に優れる懸濁重合用分散安定剤を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、けん化度が60モル%以上、重合度が200以上のポリビニルアルコール系重合体(A)、および、
カルボン酸化合物により、けん化度60モル%未満のポリビニルアルコール系重合体(B)をエステル化して得られるポリビニルアルコール系重合体(C)
を含む懸濁重合用分散安定剤が、上記した課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の懸濁重合用分散安定剤を用いてビニル系化合物の懸濁重合を行った場合には、少量の使用でも、得られるビニル系重合体粒子の可塑剤の吸収性が高くて加工が容易であること、残留するビニル系化合物などのモノマー成分の除去が容易であること、重合安定性が高いために粗大粒子の形成が少なくて、粒子径が均一な粒子が得られること、フィッシュアイなどの形成を防止できることなど、優れた効果を達成することができる。
本発明において用いられるポリビニルアルコール系重合体(A)(以下、ポリビニルアルコール系重合体をPVA系重合体と略記することがある)のけん化度は、60モル%以上であり、好ましくは65〜95モル%であり、さらに好ましくは70〜90モル%である。けん化度が60モル%未満の場合には、PVA系重合体の水溶性が低下して取扱性が悪化する。また、PVA系重合体(A)の重合度は200以上であり、好ましくは500以上であり、より好ましくは550〜8000であり、さらに好ましくは600〜3500である。PVA系重合体の重合度が500未満の場合には、ビニル系化合物を懸濁重合する際の重合安定性が低下する。PVA系重合体(A)は単独で使用してもよいし、特性の異なる2種類以上を併用してもよい。なお、PVA系重合体の重合度およびけん化度は、例えば、JIS K6726にしたがい求めることができる。
本発明において用いられるPVA系重合体(C)は、カルボン酸化合物により、けん化度60モル%未満のPVA系重合体(B)をエステル化して得られる構造を有する。従来は、けん化度の低いポリビニルアルコールが懸濁重合用分散助剤として用いられていた。しかし、本発明では、けん化度が低いPVA系重合体をカルボン酸化合物とエステル化することにより、当該PVA系重合体に、モノマーユニットとして新たなビニルエステルユニットを導入した。この新たなビニルエステルユニットにより、PVA系重合体を高性能化でき、従来のけん化度の低いポリビニルアルコールを用いるよりも、塩化ビニル単量体の分散状態の安定性を向上させることができる。特に、この新たなビニルエステルユニットには、不飽和二重結合、カルボキシル基等の官能基を導入することができ、これにより塩化ビニル単量体の分散状態の安定性向上効果を得ることができる。
カルボン酸化合物としては、本発明の主旨を損なわないものであれば特に制限なく使用できる。ただし、部分けん化されているPVA系重合体(B)がモノマーユニットとして有するビニルエステルユニットとは異なるビニルエステルユニットが導入されるものを選択する。例えば、PVA系重合体(B)の有するビニルエステルユニットが、酢酸ビニルユニットであった場合には、カルボン酸化合物には、酢酸以外のもの、特に、炭素数が3以上のカルボン酸化合物を選択する。
カルボン酸化合物は、大別すると、不飽和二重結合を有するカルボン酸、分子内にオレフィン性不飽和結合を含まない脂肪族カルボン酸、および分子内にオレフィン性不飽和結合を含まない芳香族カルボン酸に分類することができる。
不飽和二重結合を有するカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、2−ペンテン酸、4−ペンテン酸、2−ヘプテン酸、2−オクテン酸、ケイ皮酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸、ソルビン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。なお、不飽和二重結合を有するカルボン酸は、エステル化を行う際に、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物;マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル;マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル等の不飽和ジカルボン酸ジエステルなどの誘導体、または塩の形態で用いることもできる。
本発明において用いられる分子内にオレフィン性不飽和結合を含まない脂肪族カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アセト酢酸、グリコール酸、乳酸、アスコルビン酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、酒石酸、リンゴ酸等の脂肪族ジカルボン酸;クエン酸等の脂肪族トリカルボン酸などが挙げられる。
また、分子内にオレフィン性不飽和結合を含まない芳香族カルボン酸としては、フェニル酢酸、安息香酸、トルイル酸、サリチル酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも特に、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族カルボン酸および/または芳香族カルボン酸が好ましい。
なお、これらの脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸は、実際にエステル化を行う際には、酸無水物、エステル等の誘導体または塩の形態で用いることもできる。
本発明においてカルボン酸化合物としては、分子内に不飽和二重結合を有するカルボン酸を用いることが好ましい。分子内に不飽和二重結合を有するカルボン酸を用いた場合には、PVA系重合体中に導入された不飽和二重結合が塩化ビニル単量体との吸着ポイントとして作用し、塩化ビニル単量体の分散状態の安定性が高くなる。
本発明においてカルボン酸化合物としては、分子内にカルボキシル基を2個以上有するカルボン酸を用いることもまた好ましい。分子内にカルボキシル基を2個以上有するカルボン酸を用いた場合には、(1)1個のカルボキシル基が反応している場合、もう1個のカルボキシル基の効果で水溶性が高くなり、貯蔵時の水溶液安定性が良くなり、(2)2個のカルボキシル基が反応した場合、PVA系重合体(B)の架橋が進行し、これにより塩化ビニル系単量体の分散状態の安定性が高くなる。(ただし反応条件次第では、架橋が激しく進行し、水に不溶化する場合があるため、過度に架橋が起こらないように、反応条件を適宜調整すべきであり、例えば、後述の反応条件を採用するとよい。)
カルボン酸化合物は、単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。カルボン酸化合物として特に好ましくは、懸濁重合分散安定助剤の性能の観点から、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロトン酸、アジピン酸、ラウリン酸、が挙げられ、最も好ましくは、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸である。
本発明において、PVA系重合体(B)のけん化度は60モル%未満であり、好ましくは55モル%未満であり、特に好ましくは50モル%以下である。けん化度の下限については特に制限はないが、部分けん化PVA系重合体の製造上の観点から、けん化度は10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましい。
また、PVA系重合体(B)の重合度について特に制限はないが、好ましくは650以下であり、より好ましくは600以下、特に好ましくは550以下である。重合度が650を超えると、ビニル系化合物の懸濁重合により得られるビニル系重合体粒子からモノマー成分を除去するのが困難になり、あるいは可塑剤吸収性が低下し、好ましくない。重合度の下限については特に制限はないが、部分けん化PVA系重合体の製造上の観点から、重合度は50以上が好ましく、80以上がより好ましい。
本発明において、PVA系重合体(B)は単独で使用しても、あるいは特性の異なる2種以上を混合して使用してもよい。
本発明において、PVA系重合体(A)およびPVA系重合体(B)はそれぞれ、ビニルエステル系単量体を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等の従来公知の方法を採用して重合させ、得られたビニルエステル系重合体をけん化することにより、製造することができる。工業的観点から好ましい重合方法は、溶液重合法、乳化重合法および分散重合法である。重合操作にあたっては、回分法、半回分法および連続法のいずれの重合方式を採用することも可能である。
重合に用いることができるビニルエステル系単量体としては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどを挙げることができ、これらの中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
ビニルエステル系単量体の重合に際して、本発明の主旨を損なわない範囲であればビニルエステル系単量体を他の単量体と共重合させても差し支えない。使用しうる単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレンなどのα−オレフィン;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその酸塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその酸塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリル酸アミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリル酸アミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテルなどのオキシアルキレン基含有単量体;酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。
また、ビニルエステル系単量体の重合に際して、得られるビニルエステル系重合体の重合度を調節することなどを目的として、連鎖移動剤を共存させても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;2−ヒドロキシエタンチオール、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類;トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられ、中でもアルデヒド類およびケトン類が好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数および目的とするビニルエステル系重合体の重合度に応じて決定されるが、一般にビニルエステル系単量体に対して0.1〜10重量%が望ましい。
本発明において、ビニルエステル系単量体を通常よりも高い温度条件で重合して得られるビニルエステル系重合体をけん化して得られる、1,2−グリコール結合の含有量の多いPVA系重合体を用いることもできる。この場合の1,2−グリコール結合の含有量は、好ましくは1.9モル%以上、より好ましくは2.0モル%以上、さらに好ましくは2.1モル%以上である。
ビニルエステル系重合体のけん化反応には、従来公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基性触媒、またはp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いた、加アルコール分解ないし加水分解反応が適用できる。けん化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。中でも、メタノール、またはメタノールと酢酸メチルとの混合溶液を溶媒として用い、塩基性触媒である水酸化ナトリウムの存在下にけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。
本発明において用いられるPVA系重合体(A)およびPVA系重合体(B)は、それぞれ末端にイオン性官能基を有していてもよい。これらのイオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基などが挙げられ、その中でもカルボキシル基が好ましい。これらのイオン性基にはその塩も含まれ、PVA系重合体(A)およびPVA系重合体(B)は水分散性であることが好ましいという観点から、アルカリ金属塩が好ましい。PVA系重合体の末端部にイオン性官能基を導入する手法としては、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩などのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合させ、得られる重合体をけん化する等の方法を用いることができる。
本発明において、PVA系重合体(B)を、カルボン酸化合物とエステル化させる方法については特に制限はない。その方法として、例えば、(i)PVA系重合体(B)を無水溶媒中、懸濁状態でカルボン酸化合物と反応させる方法;(ii)カルボン酸化合物を粉末状で、あるいはメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールもしくは酢酸メチルもしくは水に溶解または分散させた後、スラリー状または粉末状のPVA系重合体(B)と混合し、窒素または空気雰囲気下で加熱処理して反応させる方法;(iii)ペースト状のポリ酢酸ビニルにカルボン酸化合物を添加し、けん化して得られるPVA系重合体(B)を加熱処理する方法;(iv)PVA系重合体(A)とカルボン酸化合物をリボンブラベンダー、Vブラベンダー、ヘンシェルミキサーなどでドライブレンドした後、バンバリーミキサー、ミキシングロール、単軸または二軸の押出し機およびニーダーなどを用いて溶融混練する方法などが挙げられる。中でも、(ii)のPVA系重合体(B)とカルボン酸化合物を混合した後、窒素雰囲気下で加熱反応して反応させる方法、および(iv)のPVA系重合体(B)とカルボン酸化合物を溶融混練する方法が好ましい。また、エステル化の際、カルボン酸化合物を、エステル、酸無水物等の誘導体、または塩の形態で反応させてもよい。
前記(ii)の方法において、PVA系重合体(B)とカルボン酸化合物との混合物を加熱処理する際の条件は、特に制限されないが、加熱処理時の温度は60〜190℃が好ましく、65〜185℃がより好ましく、70〜180℃がさらに好ましい。また加熱処理の時間は0.5〜20時間が好ましく、1〜18時間がより好ましく、1〜16時間がさらに好ましい。
前記(iv)の方法において、PVA系重合体(B)とカルボン酸化合物とを溶融混合する際の温度は、110〜250℃が好ましく、120〜220℃がより好ましい。溶融混練に用いられる装置内にPVA系重合体(B)およびカルボン酸化合物を滞留させる時間は1〜15分が好ましく、2〜10分がより好ましい。
PVA系重合体(B)およびカルボン酸化合物を加熱処理する際にPVAが分解し、あるいはPVAの主鎖中にポリエンが形成されることによって生じる着色を防止する目的で、PVAに通常用いられる可塑剤を配合し、これにより加熱処理時の温度を下げることも可能である。可塑剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトールなどの多価アルコール;これらのアルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物;水;糖類;ポリエーテル類;アミド化合物などを挙げることができ、これらは1種または2種以上を組合せて用いることができる。これら可塑剤の使用量は、通常PVA系重合体100重量部に対し1〜300重量部であり、1〜200重量部がより好ましく、1〜100重量部がさらに好ましい。
また、カルボン酸化合物が不飽和二重結合を有するカルボン酸であった場合は、PVA系重合体(B)および不飽和二重結合を有するカルボン酸を加熱処理する際に、不飽和二重結合を有するカルボン酸、またはPVA系重合体(B)が加熱処理時に熱重合してゲルが生成するのを防ぐため、重合禁止剤を配合して加熱処理することも可能である。重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどのフェノール系重合禁止剤、フェノチアジン、N,N−ジフェニルパラフェニレンジアミンなどを挙げることができる。重合禁止剤の配合量は、PVA系重合体100重量部に対して0.00001〜10重量部が好ましく、0.0001〜1重量部がより好ましい。
さらに、PVA系重合体(B)およびカルボン酸化合物を加熱処理する際に、PVA系重合体(B)100重量部に対してアルカリ金属イオンを0.003〜3重量%の割合で含有させると、PVA系重合体(B)の熱劣化、熱分解、ゲル化、着色などを抑制することができるため好ましい。アルカリ金属イオンとしては、例えば、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオンなどが挙げられ、これらは主に酢酸、プロピオン酸などの低級脂肪酸の塩として存在し、またPVA系重合体(B)がカルボキシル基やスルホン酸基を有している場合には、これらの官能基の塩として存在する。なお、PVA系重合体中のアルカリ金属イオンの含有量は、原子吸光法により測定することができる。
本発明において、カルボン酸化合物によるPVA系重合体(B)のエステル化を促進するために、触媒として作用する酸性物質または塩基性物質を配合した状態で、PVA系重合体(B)およびカルボン酸化合物を加熱処理することも可能である。酸性物質としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸;p−トルエンスルホン酸ピリジニウム、塩化アンモニウムなどの塩;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、三塩化鉄、二塩化錫、四塩化錫、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体などのルイス酸などを挙げることができ、これらは1種または2種以上を組合せて用いることができる。また、塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;酸化バリウム、酸化銀などの金属酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;ナトリウムアミド、カリウムアミドなどのアルカリ金属アミドなどを挙げることができ、これらは1種または2種以上を組合せて用いることができる。これらの酸性物質および塩基性物質の配合量は、通常、PVA系重合体100重量部に対して0.0001〜5重量部が好ましい。
PVA系重合体(B)を、カルボン酸化合物によりエステル化することにより、PVA系重合体(C)が得られる。カルボン酸化合物による変性量は、例えば、液体クロマトグラフィーにより未反応カルボン酸を測定する方法などによって測定できる。また、不飽和二重結合を有するカルボン酸を用いた場合には、PVA系重合体(C)をDMSO−d6溶媒に溶解させ、これを1H−NMRにより測定し、二重結合に由来するシグナルを解析する方法により測定してもよい。
PVA系重合体(C)の、カルボン酸化合物によりエステル化されたモノマーユニットの量(エステル化されたPVAル系重合体(C)のカルボン酸変性量)は、PVA系重合体(C)の全モノマーユニット中、0.01〜20モル%が好ましく、0.01〜18モル%が好ましく、0.02〜15モル%がより好ましく、0.05〜10モル%がさらに好ましい。
本発明において、PVA系重合体(C)が、PVA系重合体(B)を2個以上のカルボキシル基を有するカルボン酸化合物でエステル化したPVA系重合体である場合、その水溶性を高めるために、エステル結合に関与していない方のカルボキシル基を、1〜3価の金属の水酸化物、塩類、アルコキシド、アンモニア、アンモニウム塩、アミン塩、アミン塩類のうちのいずれかと反応させることも好適に行われる。
本発明の懸濁重合用分散安定剤において、PVA系重合体(A)およびPVA系重合体(C)の使用比率は、(A)/(C)の重量比で99/1〜5/95が好ましく、より好ましくは95/5〜10/90であり、さらに好ましくは95/5〜15/85である。(A)/(C)の重量比が99/1を超える場合には、ビニル系化合物の懸濁重合によって得られるビニル系重合体の可塑剤吸収能が悪化したり、粒度分布が広くなる傾向があり、5/95満の場合には、ビニル系化合物を懸濁重合する際に重合安定性が低下することがある。
本発明の懸濁重合用分散安定剤には、必要に応じて、懸濁重合に通常使用される防腐剤、防黴剤、ブロッキング防止剤、消泡剤等の添加剤を配合することができる。
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、粉体のまま重合系に添加して用いてもよい。また、PVA系重合体(A)およびPVA系重合体(C)を、水、メタノール等の溶媒に溶解または分散させて、溶液または分散液として用いてもよい。
本発明において、懸濁重合用分散安定剤の使用量については特に制限はないが、ビニル系化合物100重量部に対するPVA系重合体(A)およびPVA系重合体(C)の合計量で、0.01〜5重量部が好ましく、0.02〜2重量部がより好ましく、0.02〜1重量部が更に好ましい。0.01重量部未満の場合には、ビニル系化合物を懸濁重合する際に重合安定性が低下する傾向があり、5重量部を超える場合には、懸濁重合後の廃液が白濁し、化学的酸素要求量(COD)が高くなる傾向がある。
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、特にビニル系化合物の懸濁重合に好適に用いられる。ビニル系化合物としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、これらのエステルおよび塩;マレイン酸、フマル酸、これらのエステルおよび無水物;スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。これらのうち、特に好適には塩化ビニルを単独で、または塩化ビニルおよび塩化ビニルと共重合することが可能な単量体を懸濁共重合する際に用いられる。塩化ビニルと共重合することができる単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類;アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。
ビニル系化合物の懸濁重合には、従来から塩化ビニル単量体等の重合に使用されている、油溶性または水溶性の重合開始剤を用いることができる。油溶性の重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、α−クミルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。水溶性の重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの油溶性あるいは水溶性の重合開始剤は単独で、または2種類以上を組合せて用いることができる。
ビニル系化合物の懸濁重合に際し、必要に応じて、重合反応系にその他の各種添加剤を加えることができる。添加剤としては、例えば、アルデヒド類、ハロゲン化炭化水素類、メルカプタン類などの重合調節剤、フェノール化合物、イオウ化合物、N−オキサイド化合物などの重合禁止剤などが挙げられる。また、pH調整剤、架橋剤なども任意に加えることができる。
ビニル系化合物の懸濁重合に際し、重合温度には特に制限はなく、20℃程度の低い温度はもとより、90℃を超える高い温度に調整することもできる。また、重合反応系の除熱効率を高めるために、リフラックスコンデンサー付の重合器を用いることも好ましい実施態様の一つである。
本発明の懸濁重合用分散安定剤は単独で使用してもよいが、ビニル系化合物を水性媒体中で懸濁重合する際に通常使用されるメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテル、ゼラチンなどの水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックコポリマーなどの油溶性乳化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤等を併用しても良い。その添加量については特に制限は無いが、ビニル系化合物100重量部あたり0.01〜1.0重量部が好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。以下の実施例および比較例において、特に断りがない場合、「部」および「%」はそれぞれ「重量部」および「重量%」を示す。
なお、PVA系重合体ならびに塩化ビニル重合体粒子の評価は以下のように行った。
(PVA系重合体の分析)
(1)重合度の測定
JIS K6726にしたがって測定した。
(2)けん化度の測定
JIS K6726にしたがって測定した。
(3)カルボン酸変性量の測定
PVA系重合体1gをイオン交換水100gに溶解し、ODSカラムを用い、0.1Mリン酸二水素アンモニウム水溶液を移動相に用いて、30℃でHPLC測定を行った。未反応カルボン酸の定量結果から、カルボン酸変性量を求めた。
(塩化ビニル重合体粒子の評価)
塩化ビニル重合体粒子について、粒度分布、可塑剤吸収性、残留モノマー量およびフィッシュアイ発生量を以下の方法にしたがって測定した。評価結果を表1に示す。
(1)塩化ビニル重合体粒子の粒度分布
JIS標準篩い42メッシュオンの含有量を重量%で表示した。
A : 0.5%未満
B : 0.5%以上1%未満
C : 1%以上
JIS標準篩い80メッシュオンの含有量を重量%で表示した。
A : 5%未満
B : 5%以上10%未満
C : 10%以上
数字が小さいほど粗大粒子が少なくて粒度分布がシャープであり、重合安定性に優れていることを示している。
(2)可塑剤吸収量
ASTM−D3367−75に記載された方法にしたがって、23℃におけるジオクチルフタレートの吸収量(%)を測定した。
(3)残留塩化ビニルモノマー量
塩化ビニル重合体粒子1gをテトラヒドロフラン25gに溶解して、ガスクロマトグラフにより塩化ビニル樹脂中に残留した塩化ビニルモノマー含有量を定量した。
A : 5ppm未満
B : 5ppm以上10ppm未満
C : 10ppm以上
(4)フィッシュアイ発生量
塩化ビニル重合体粒子100部、ジオクチルフタレート(DOP)50部、三塩基性硫酸鉛5部およびステアリン酸鉛1部を7分間150℃でロール練りして、厚み0.1mm、1400mm×1400mmのシートを5枚作製し、フィッシュアイの数を測定した。1000cm2当たりのフィッシュアイ個数に換算し、以下の基準で評価した。
A : 0〜3個であり、極めて少ない
B : 4〜10個であり、少ない
C : 11個以上であり、多い
実施例1
(PVA系重合体(C)の合成−加熱処理法)
重合度550、けん化度50モル%のPVA系重合体(B)の粉末100重量部を、フマル酸1重量部をメタノール200重量部に溶解させた溶液に加えて膨潤させた後、減圧下40℃の温度で24時間乾燥を行った。次いで、窒素雰囲気下にて120℃で3時間、加熱処理を行いPVA系重合体(C)を得た。カルボン酸変性量は0.2モル%であった。
(塩化ビニルの懸濁重合)
重合度850、けん化度72モル%のPVA系重合体(A)を塩化ビニル単量体に対して800ppm、上記PVA系重合体(C)を塩化ビニル単量体に対して400ppm、それぞれ脱イオン水に溶解させ、分散安定剤を調整した。このようにして得られた分散安定剤を、スケール付着防止剤NOXOL WSW(CIRS社製)が固形分として0.3g/m2になるように塗布されたグラスライニング製オートクレーブに仕込んだ。次いで、グラスライニング製オートクレーブにジイソプロピルパーオキシジカーボネートの70%トルエン溶液0.04部を仕込み、オートクレーブ内の圧力が0.0067MPaとなるまで脱気して酸素を除いた後、塩化ビニル30部を仕込み、オートクレーブ内の内容物を63℃に昇温して撹拌下で重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は1.02MPaであった。重合を開始してから5時間経過後のオートクレーブ内の圧力が0.5MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルを除去した後、重合反応物を取り出し、65℃にて16時間乾燥を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。
実施例2〜6
表1に示すPVA系重合体(B)および不飽和二重結合を有するカルボン酸を用い、さらに表1に示す条件で加熱処理を行った以外は実施例1と同様にして合成されたPVA系重合体(C)を用い、実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表1に示す。
比較例1および2
カルボン酸化合物を用いずにPVA系重合体(B)の粉末を表1に示す条件で加熱処理を行った以外は実施例1と同様にして合成されたPVA系重合体(C)を用い、表1に示す使用量で実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。評価結果を表1に示す。粗大粒子があり均一な重合体粒子が得られず、また残留塩化ビニルモノマーも多く、フィッシュアイも多かった。
比較例3
表1に示す不飽和二重結合を有するカルボン酸を用いたが、加熱処理をしなかった以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。評価結果を表1に示す。粗大粒子があり均一な重合体粒子が得られず、また残留塩化ビニルモノマーも多く、フィッシュアイも多かった。
比較例4
PVA系重合体(A)を用いず、PVA系重合体(C)のみを塩化ビニル単量体に対して400ppmに相当する量で用いた以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。評価結果を表1に示す。重合が安定に行えず、ブロック化した。
比較例5
(イタコン酸変性PVA系重合体の製造方法)
撹拌機、窒素導入口、還流冷却器および添加剤導入口を備えた6L反応槽に酢酸ビニル1200g、メタノール1800gを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。コモノマーとしてイタコン酸をメタノールに溶解した濃度20%溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の反応槽内温を60℃に調整し、イタコン酸の20%メタノール溶液3.0mLを添加した後に、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)2.0gを加えて重合を開始した。重合中は重合温度を60℃に維持し、イタコン酸の20%メタノール溶液を15mL/時間で連続添加し、4.5時間後に重合率が65%に達したところで冷却して重合を停止した。次いで減圧下で未反応酢酸ビニルモノマーを除去し、変性PVAcのメタノール溶液を得た。40%に調整した該メタノール溶液にアルカリモル比(NaOHのモル数/変性PVAc中のビニルエステル単位のモル数)が0.01となるようにNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加してけん化した。得られた変性PVAのけん化度は50モル%であった。
重合後に未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られた変性PVAcのメタノール溶液をn−ヘキサンに投入して変性PVAcを沈殿させ、回収した変性PVAcをアセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、60℃で減圧乾燥して変性PVAcの精製物を得た。該変性PVAcのプロトンNMR測定から求めた変性量は1モル%であった。上記の変性PVAcのメタノール溶液をアルカリモル比0.2でけん化した後、メタノールによるソックスレー抽出を3日間実施し、次いで乾燥して変性PVAの精製物を得た。該変性PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ550であった。
上記操作により得た重合度550、けん化度50モル%、変性量1.0モル%のイタコン酸変性PVA系重合体を用いて、実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。評価結果を表1に示す。粗大粒子があり均一な重合体粒子が得られず、また残留塩化ビニルモノマーも多く、フィッシュアイも多かった。
比較例6
(マレイン酸変性PVA系重合体の製造方法)
撹拌機、窒素導入口、還流冷却器および添加剤導入口を備えた6L反応槽に酢酸ビニル1200g、メタノール1800gを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。コモノマーとして無水マレイン酸をメタノールに溶解した濃度50%溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の反応槽内温を60℃に調整し、無水マレイン酸の50%メタノール溶液1.8mLを添加した後に、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)2.0gを加えて重合を開始した。重合中は重合温度を60℃に維持し,無水マレイン酸の50%メタノール溶液を2.5mL/時間で連続添加し、4.5時間後に重合率が65%に達したところで冷却して重合を停止した。次いで減圧下で未反応酢酸ビニルモノマーを除去し、変性PVAcのメタノール溶液を得た。40%に調整した該メタノール溶液にアルカリモル比(NaOHのモル数/変性PVAc中のビニルエステル単位のモル数)が0.01となるようにNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加してけん化した。得られた変性PVAのけん化度は50モル%であった。
重合後に未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られた変性PVAcのメタノール溶液をn−ヘキサンに投入して変性PVAcを沈殿させ、回収した変性PVAcをアセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、60℃で減圧乾燥して変性PVAcの精製物を得た。該変性PVAcのプロトンNMR測定から求めた変性量は0.5モル%であった。上記の変性PVAcのメタノール溶液をアルカリモル比0.2でけん化した後、メタノールによるソックスレー抽出を3日間実施し、次いで乾燥して変性PVAの精製物を得た。該変性PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ550であった。
上記操作により得た重合度550、けん化度50モル%、変性量0.5モル%のマレイン酸変性PVA系重合体を用いて、実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。評価結果を表1に示す。粗大粒子があり均一な重合体粒子が得られず、また残留塩化ビニルモノマーも多く、フィッシュアイも多かった。
Figure 2008129936
実施例7
(PVA系重合体(C)の合成−溶融混練法)
重合度250、けん化度40モル%のPVA系重合体(B)の粉末100重量部に対して、フマル酸1重量部をドライブレンドし、ラボプラストミルを用いて160℃の温度で3分間溶融混練し、PVA系重合体(C)を得た。カルボン酸変性量は、0.4モル%であった。
(塩化ビニルの懸濁重合)
実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、得られた塩化ビニル重合体粒子について実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
実施例8〜10
表2に示す不飽和二重結合を有するカルボン酸を用い、さらに表2に示す条件で加熱処理を行った以外は実施例7と同様にして合成されたPVA系重合体(C)を用い、実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。
比較例7および8
フマル酸をドライブレンドしないで溶融混練を行った以外は実施例7と同様にして合成されたPVA系重合体(C)を用い、表2に示す使用量で実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行ったが、粗大粒子があり均一な重合体粒子が得られず、また残留塩化ビニルモノマーも多く、フィッシュアイも多かった。
Figure 2008129936
実施例11
(PVA系重合体(C)の合成−加熱処理法)
重合度600、けん化度50モル%のPVA系重合体(B)の粉末100重量部を、アジピン酸1重量部をメタノール200重量部に溶解させた溶液に加えて膨潤させた後、減圧下40℃の温度で24時間乾燥を行った。次いで、窒素雰囲気下にて120℃で3時間、加熱処理を行いPVA系重合体(C)を得た。カルボン酸変性量は0.2モル%であった。
(塩化ビニルの懸濁重合)
重合度780、けん化度72モル%のPVA系重合体(A)を塩化ビニル単量体に対して800ppm、上記PVA系重合体(C)を塩化ビニル単量体に対して350ppm、それぞれ脱イオン水に溶解させ、分散安定剤を調整した。このようにして得られた分散安定剤を、スケール付着防止剤NOXOL WSW(CIRS社製)が固形分として0.3g/m2になるように塗布されたグラスライニング製オートクレーブに仕込んだ。次いで、グラスライニング製オートクレーブにジイソプロピルパーオキシジカーボネートの70%トルエン溶液0.04部を仕込み、オートクレーブ内の圧力が0.0067MPaとなるまで脱気して酸素を除いた後、塩化ビニル30部を仕込み、オートクレーブ内の内容物を63℃に昇温して撹拌下で重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は1.02MPaであった。重合を開始してから5時間経過後のオートクレーブ内の圧力が0.5MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルを除去した後、重合反応物を取り出し、65℃にて16時間乾燥を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。
実施例12〜14
表3に示すPVA系重合体(B)および分子内にオレフィン性不飽和結合を含まないカルボン酸を用い、さらに表3に示す条件で加熱処理を行った以外は実施例11と同様にして合成されたPVA系重合体(C)を用い、実施例11と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表3に示す。
比較例9および10
カルボン酸を用いずにPVA系重合体(B)の粉末を表3に示す条件で加熱処理を行った以外は実施例11と同様にして合成されたPVA系重合体(C)を用い、表3に示す使用量で実施例11と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。評価結果を表3に示す。粗大粒子があり均一な重合体粒子が得られず、また残留塩化ビニルモノマーも多く、フィッシュアイも多かった。
比較例11
加熱処理をしなかった以外は実施例11と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。評価結果を表3に示す。粗大粒子があり均一な重合体粒子が得られず、また残留塩化ビニルモノマーも多く、フィッシュアイも多かった。
比較例12
PVA系重合体(A)を用いず、PVA系重合体(C)のみを塩化ビニル単量体に対して350ppmに相当する量で用いた以外は実施例11と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。評価結果を表3に示す。重合が安定に行えず、ブロック化した。
Figure 2008129936
実施例15
(PVA系重合体(C)の合成−溶融混練法)
重合度200、けん化度35モル%のPVA系重合体(B)の粉末100重量部に対して、アジピン酸1重量部をドライブレンドし、ラボプラストミルを用いて160℃の温度で3分間溶融混練し、PVA系重合体(C)を得た。カルボン酸変性量は、0.4モル%であった。
(塩化ビニルの懸濁重合)
実施例11と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、得られた塩化ビニル重合体粒子について実施例11と同様にして評価を行った。評価結果を表4に示す。
実施例16および17
表4に示すカルボン酸を用いた以外は実施例15と同様にして合成されたPVA系重合体(C)を用い、実施例11と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表4に示す。
比較例13および14
アジピン酸をドライブレンドしないで溶融混練を行った以外は実施例15と同様にして合成されたPVA系重合体(C)を用い、表4に示す使用量で実施例11と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行ったが、粗大粒子があり均一な重合体粒子が得られず、また残留塩化ビニルモノマーも多く、フィッシュアイも多かった。
Figure 2008129936
本発明のビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤を用いた場合は、少量の使用であっても、得られたビニル系重合体粒子が、(1)可塑剤の吸収性が高くて加工が容易である、(2)残留するビニル系化合物などのモノマー成分の除去が容易である、(3)重合安定性が高いために粗大粒子の形成が少ない、(4)粒子径が均一な粒子である、(5)フィッシュアイなどの形成を防止することができる、などの特性を備えており、その工業的な評価はきわめて高い。

Claims (5)

  1. けん化度が60モル%以上、重合度が200以上のポリビニルアルコール系重合体(A)、および、
    カルボン酸化合物により、けん化度60モル%未満のポリビニルアルコール系重合体(B)をエステル化して得られるポリビニルアルコール系重合体(C)
    を含む懸濁重合用分散安定剤。
  2. 前記ポリビニルアルコール系重合体(A)と前記ポリビニルアルコール系重合体(C)との重量比(A)/(C)が99/1〜5/95である請求項1に記載の懸濁重合用分散安定剤。
  3. 前記ポリビニルアルコール系重合体(C)の、前記カルボン酸化合物によりエステル化されたモノマーユニットの量が、前記ポリビニルアルコール系重合体(C)の全モノマーユニット中、0.01〜20モル%である請求項1に記載の懸濁重合用分散安定剤。
  4. 前記カルボン酸化合物が、分子内に不飽和二重結合を有する請求項1に記載の懸濁重合用分散安定剤。
  5. 前記カルボン酸化合物が、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する請求項1に記載の懸濁重合用分散安定剤。
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