JP6212782B2 - 懸濁重合用分散安定剤及びそれを用いたビニル樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は水性エマルションからなるビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤及びその製造方法に関する。また、本発明は、懸濁重合用分散安定剤の存在下で、ビニル化合物を懸濁重合するビニル樹脂の製造方法に関する。
従来から、ビニル化合物(例えば、塩化ビニル)の懸濁重合用分散安定剤として、部分けん化ポリビニルアルコール(以下、ポリビニルアルコールをPVAと略記することがある)を用いることが知られている。懸濁重合用分散安定剤に要求される効果としては、可塑剤吸収性が高く加工性に優れたビニル樹脂が得られること;重合後に残存するモノマー成分の除去が容易であること;重合安定性が向上し、粗大樹脂粒子の発生が抑制されること等が挙げられる。また、固形分割合が高い場合においても、分散安定剤溶液が安定であり、分散安定剤が取扱性に優れていることも求められている。しかしながら、部分けん化PVAは、水への溶解性が低く、高濃度の水溶液を得ることが困難であり、取扱性が不十分であった。さらに、重合安定性も低かった。
分散安定剤の取扱性を向上させるため、PVAの水溶性を向上させる試みがなされている。特許文献1及び2には、低重合度、低けん化度、かつ側鎖に親水性であるオキシアルキレン基を有するPVAを用いた懸濁重合用分散安定剤が記載されている。しかしながら、当該分散安定剤は、取扱性がなお不十分である場合があったうえに、得られる重合体の可塑剤吸収性を向上させる効果及び重合安定性を向上させる効果も不十分であった。特許文献3及び4には、イオン性基を有するPVAを用いた懸濁重合用分散安定剤が記載されている。しかしながら、当該分散安定剤は、取扱性がなお不十分であったうえに、重合安定性を向上させる効果も不十分である場合があった。
特許文献5には、水性エマルションを用いた懸濁重合用分散安定剤が記載されている。しかしながら、当該分散安定剤は、可塑剤吸収性や重合安定性が不十分である場合があった。
特開平9−100301号公報 特開平10−147604号公報 特開2007−063369号公報 特開平10−168128号公報 特開平9−132608号公報
本発明は、塩化ビニルをはじめとするビニル化合物を懸濁重合するに際して、分散安定剤に求められる、重合安定性に優れ、得られるビニル樹脂の可塑剤吸収性が良好であり、かつ取扱性に優れる懸濁重合用分散安定剤を提供することを目的とする。また、このような懸濁重合用分散安定剤の存在下で、ビニル化合物を懸濁重合するビニル樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、このような現状を鑑み鋭意検討した結果、水性エマルションからなるビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤であって、前記水性エマルションが、ポリビニルアルコール(A)、ポリビニルエステル(B)及びポリビニルアルコールにビニルエステルモノマーをグラフト重合させてなるグラフトポリマー(C)を含有する固形分を含有し、(A)、(B)及び(C)の合計量に対するポリビニルアルコール(A)の量が0.1〜18質量%であり、(A)、(B)及び(C)の合計量に対するグラフトポリマー(C)の量が7〜80質量%であり、かつ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した前記固形分の重量平均分子量が110万以下である懸濁重合用分散安定剤により、上記課題が解決されることを見出した。
前記懸濁重合用分散安定剤において、前記水性エマルション中の、ポリビニルアルコール(A)、ポリビニルエステル(B)及びグラフトポリマー(C)の合計含有量が30〜70質量%であることが好適である。ポリビニルエステル(B)がポリ酢酸ビニルであることも好適である。
上記課題は、水性媒体中で、ポリビニルアルコール(A)の存在下、ビニルエステルモノマーを重合させることにより前記水性エマルションを得る懸濁重合用分散安定剤の製造方法によっても解決される。
このとき、ポリビニルアルコール(A)1〜32質量部に対して、前記ビニルエステルモノマー100質量部を重合させることが好適である。連鎖移動剤の存在下、前記重合を行うことも好適である。原料のポリビニルアルコール(A)の反応率が20〜97質量%であることも好適である。
前記懸濁重合用分散安定剤の存在下、水性媒体中で、ビニル化合物を懸濁重合するビニル樹脂の製造方法が本発明の好適な実施態様である。このとき、前記水性媒体に対する前記ビニル化合物の質量比(ビニル化合物/水性媒体)が0.75〜1.25であることが好適である。
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、重合安定性を向上させる効果に優れる。特に、重合が不安定になり易い条件下で重合を行った場合であっても、粗大粒子の形成が抑制され、粒子径が均一な粒子が得られる。また、本発明の懸濁重合用分散安定剤は、得られる樹脂の可塑剤吸収性を向上させる効果にも優れる。特に、分散安定剤の使用量が少ない場合であっても、可塑剤吸収性が高く加工が容易であるビニル樹脂粒子が得られる。さらに、本発明の懸濁重合用分散安定剤は、固形分割合が高い場合においても、エマルションが安定であり、取扱性及び生産性に優れている。
[懸濁重合用分散安定剤]
本発明のビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤は、水性エマルション(以下、水性エマルションをエマルションと略記することがある)からなるものであって、前記水性エマルションが、PVA(A)、ポリビニルエステル(B)及びポリビニルアルコールにビニルエステルモノマーをグラフト重合させてなるグラフトポリマー(C)を含有する固形分を含有し、(A)、(B)及び(C)の合計量に対するPVA(A)の量が0.1〜18質量%であり、(A)、(B)及び(C)の合計量に対するグラフトポリマー(C)の量が7〜80質量%であり、かつ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した前記固形分の重量平均分子量が110万以下であるものである。
本発明のエマルションは固形分として、ポリビニルアルコール(A)、ポリビニルエステル、(B)及びポリビニルアルコールにビニルエステルモノマーをグラフト重合させてなるグラフトポリマー(C)を含有する。このうち、PVA(A)は分散剤として機能する。そして、前記エマルションを分散安定剤として用いて懸濁重合を行った際に、PVA(A)によってエマルションの親水性が向上するため、界面活性作用が強まり、重合安定性が向上するとともに、得られるビニル樹脂の可塑剤吸収性が向上する。
エマルションがより安定化する観点、エマルションの親水性向上による懸濁重合用分散安定剤としての性能がより向上する観点、並びに、エマルションを後述する本発明の懸濁重合用分散安定剤の製造方法により得る場合のグラフトポリマー(C)含有量の調節のし易さの観点から、本発明のエマルション中のPVA(A)のけん化度は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは73モル%以上である。PVA(A)のけん化度は、好ましくは99.5モル%以下であり、より好ましくは95モル%以下であり、さらに好ましくは90モル%以下であり、特に好ましくは85モル%以下である。PVA(A)のけん化度はJIS−K6726に準じて測定することにより得られる値である。
エマルションが安定化する観点及び懸濁重合用分散安定剤としての性能がより向上する観点からPVA(A)の粘度平均重合度は、好ましくは100〜8000であり、より好ましくは100〜4000であり、さらに好ましくは150〜3000である。PVA(A)の粘度平均重合度は、該PVAを実質的に完全にけん化した後、アセチル化してポリビニルエステルとした後、アセトン溶液中の極限粘度の測定から中島の式(中島章夫:高分子化学6(1949))を用いて算出されるものである。
PVA(A)は、従来公知の方法にしたがい、ビニルエステルモノマーを重合し、得られた重合体を常法によりけん化することによって得ることができる。ビニルエステルモノマーを重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来公知の方法を適用することができる。重合触媒としては、重合方法に応じて、アゾ系触媒、過酸化物系触媒、レドックス系触媒などが適宜選ばれる。けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解などを適用することができ、この中でもメタノールを溶剤とし、苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いるけん化反応が簡便であり最も好ましい。
PVA(A)の製造に用いられるビニルエステルモノマーは特に限定されず、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。中でも酢酸ビニルが最も好ましい。
PVA(A)は、本発明の趣旨を損なわない範囲で他の単量体を共重合させたものであっても差し支えない。このようなPVAの合成に使用しうる他のモノマーとして、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン;アクリル酸およびその塩;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。PVA(A)中のこのような他の単量体の共重合量は、通常10モル%以下である。また、ビニルエステルモノマーを通常の重合条件よりも高い温度下で重合して得た重合体をけん化して得られる、1,2−グリコール含有量の高いポリビニルアルコールもPVA(A)として好ましく用いることができる。この場合の1,2−グリコール結合含有量は特に制限されないが、1.9モル%以上、好ましくは2.0モル%以上、さらに好ましくは2.1モル%以上のものが用いられる。1,2−グリコール結合が前記範囲にある時、エマルションに含まれる粒子の粒子径がより小さい分散安定剤を得ることが可能である。
また、PVA(A)を合成するに際し、その重合度を調節、あるいはその末端に変性基を導入する目的で、本発明の趣旨を損なわない範囲で連鎖移動剤を用いても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;2−ヒドロキシエタンチオール、3−メルカプトプロピオン酸、ドデカンチオール、チオ酢酸等のチオール類;四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ホスフィン酸ナトリウム1水和物等のホスフィン酸塩類が挙げられる。中でもチオール類、アルデヒド類およびケトン類が好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数および目的とするポリビニルエステルの重合度に応じて決定すればよい。一般にビニルエステルモノマーに対して0.1質量%以上10質量%以下が望ましい。
PVA(A)の重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)の値には特に制限はないが、通常10以下であり、6以下であることがエマルションの安定性の観点から好ましい。
PVA(A)の残存ビニルエステル基のブロックキャラクターは特に制限はないが、通常1.0以下であり、エマルションの粒子径をコントロールすることにより、エマルションの安定性を確保する観点からは好ましくは0.8以下であり、より好ましくは0.6以下である。
上述のブロックキャラクターとは残存エステル基とエステル基のけん化によって生じる水酸基の分布を表した数値であり、0から2の間の値をとる。0が完全にブロック的にエステル基または水酸基が分布しているということを示し、値が増加するにつれて交互性が増していき、1がエステル基と水酸基が完全にランダムに存在し、2がエステル基と水酸基が完全に交互に存在することを示している。
上述のブロックキャラクターはビニルエステル単量体の種類、触媒や溶媒等のけん化条件、けん化後の熱処理等で調整することができる。
本発明のエマルション中のポリビニルエステル(B)は、分散質を構成する。ポリビニルエステル(B)の合成に用いられるビニルエステルモノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、パルミチン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられる。ビニルエステルモノマーは単独重合させてもよいし、ビニルエステルモノマーに対して本発明の効果を阻害しない範囲で他のモノマーを共重合させても構わない。この中でも酢酸ビニルの単独重合体、あるいは共重合体が生産性、経済性、取扱性の観点から望ましい。
上記ビニルエステルモノマーに共重合させる他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和酸又はそのエステル或いは塩又は無水物、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体、アリルスルホン酸ナトリウムやメタアリルスルホン酸ナトリウム等の不飽和スルホン酸塩類、アルキルビニルエーテル、アセトアセチル基含有エチレン性不飽和モノマー、オキシアルキレン基含有不飽和モノマー、第4級アンモニウム塩含有不飽和ビニルモノマー、エチレン、プロピレン、α−オクテン、α−ドデセン等のα−オレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、(メタアクリロニトリル、ビニルアルコキシシラン類、スチレンなどが挙げられる。ポリビニルエステル(B)中のこのような他の単量体の共重合量は、通常10モル%以下である。
ポリビニルエステル(B)の製造方法は特に限定されないが、後述する、本発明の懸濁重合用分散安定剤の製造方法を用いて、グラフトポリマー(C)と同時に生成させることにより得ることが好ましい。
本発明のエマルション中のグラフトポリマー(C)は、PVAにビニルエステルモノマーをグラフト重合させてなるものである。グラフトポリマー(C)の製造に用いられるPVAは特に限定されないが、PVA(A)として用いられるものとして上述したものが好適に用いられる。グラフトポリマー(C)の製造に用いられるビニルエステルモノマーも特に限定されないが、ポリビニルエステル(B)の製造に用いられるビニルエステルモノマーとして上述したものが好適に用いられる。グラフトポリマー(C)は、PVAに対して、ビニルエステルモノマーとともに、本発明の趣旨を損なわない範囲で他のモノマーをグラフト重合させてなるものであっても構わない。他のモノマーとしては、ポリビニルエステル(B)を製造する場合に、ビニルエステルモノマーに対して、共重合させる他のモノマーとして上述したものが好適に用いられる。グラフトポリマー(C)における、グラフト重合により導入された単量体単位の合計に対する、他のモノマーに由来する単位の量は、通常10モル%以下である。グラフトポリマー(C)の製造方法は特に限定されないが、後述する、本発明の懸濁重合用分散安定剤の製造方法を用いて、ポリビニルエステル(B)と同時に生成させることにより得ることが好ましい。
本発明のエマルション中の固形分は、PVA(A)、ポリビニルエステル、(B)及びグラフトポリマー(C)以外の成分を含有していてもよい。固形分中における、このような成分の含有量は、通常、10質量%以下である。
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、アルデヒド類、ハロゲン化炭化水素類、メルカプタン類などの重合調節剤;フェノール化合物、イオウ化合物、N−オキサイド化合物などの重合禁止剤;pH調整剤;架橋剤;防腐剤;防黴剤;ブロッキング防止剤;消泡剤等が挙げられる。
本発明の懸濁重合用分散安定剤を用いてビニル化合物の懸濁重合を行った際に、PVA(A)、ポリビニルエステル、(B)及びグラフトポリマー(C)はそれぞれ異なる作用を持つ。PVA(A)は主に、ビニル化合物の界面に存在して界面活性剤として作用したり、ポリビニルエステル(B)及びグラフトポリマー(C)の分散安定剤として作用したりする。ポリビニルエステル(B)は主に、ビニル化合物に溶け込み得られるビニル樹脂のモルフォロジー変化に関与する。グラフトポリマー(C)は、ビニル化合物に溶け込む部位と親水性基とを有しているため、PVA(A)の持つ作用とポリビニルエステル(B)の持つ作用の両方を有する。そして、グラフトポリマー(C)は、主に、ビニル化合物界面に存在して界面活性剤として作用したり、得られるビニル樹脂のモルフォロジー変化に関与したりする。これら3種類の成分は互いに相互作用しており、懸濁重合用分散安定剤としてビニル化合物の重合安定性や、得られるビニル樹脂粒子の可塑剤吸収性の向上に寄与する。すなわち、これらの割合が本発明の懸濁重合用分散安定剤の性能向上に重要である。
本発明のエマルションにおいて、PVA(A)、ポリビニルエステル(B)及びグラフトポリマー(C)の合計量に対するPVA(A)の量が0.1質量%以上18質量%以下であることが重要である。PVA(A)の量は、0.5質量%以上16質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。PVA(A)の量が0.1質量%未満になると、ポリビニルエステル(B)およびグラフトポリマー(C)を分散安定化させることが困難になりエマルションの安定性が低下する、得られるビニル樹脂粒子の可塑剤吸収性が低下する、懸濁重合を行う際の重合安定性が低下する等の問題が発生する。一方、PVA(A)の量が18質量%を超えると、エマルション粘度が増大して扱いにくくなる、得られるビニル樹脂粒子の可塑剤吸収性が低下する、懸濁重合を行う際の重合安定性が低下する等の問題が発生する。
後述する、本発明の製造方法を用いて懸濁重合用分散安定剤を製造する場合、(A)、(B)及び(C)の合計量に対するPVA(A)の量は、PVA(A)のけん化度または重合度を調整すること、PVA(A)の使用量を調整すること、連鎖移動剤や添加剤等を用いること等によってグラフト反応の確率を変化させることで調節できる。
本発明のエマルションにおいて、PVA(A)、ポリビニルエステル(B)及びグラフトポリマー(C)の合計量に対するグラフトポリマー(C)の量が7質量%以上80質量%以下であることが重要である。グラフトポリマー(C)の量が10質量%以上70質量%以下であることが好ましく、10質量%以上65質量%以下であることがより好ましい。グラフトポリマー(C)の量が7質量%未満の場合及び80質量%を超える場合には、得られるビニル樹脂粒子の可塑剤吸収性が低下したり、懸濁重合を行う際の重合安定性が低下したりする。
後述する、本発明の製造方法を用いて懸濁重合用分散安定剤を製造する場合、(A)、(B)及び(C)の合計量に対するグラフトポリマー(C)の量は、PVA(A)のけん化度または重合度を調整すること、PVA(A)の使用量を調整すること、合成時の条件、連鎖移動剤を用いること等によってPVA(A)にグラフトするポリビニルエステル(B)の量を変化させることで調節できる。
エマルション中のPVA(A)、ポリビニルエステル(B)及びグラフトポリマー(C)の含有量は、これらの水や有機溶媒に対する溶解性の違いを利用して求めることができる。本発明において、エマルション中のPVA(A)の含有量は以下のとおり求める。エマルションを遠心分離して上澄み液を回収する。当該上澄み液中には水溶性のPVA(A)のみが含まれるため、当該上澄み液を乾燥させて析出した固体の重量を測定することにより、PVA(A)の含有量を求める。
本発明において、エマルション中のグラフトポリマー(C)の含有量は、トルエンに対する溶解性の違い(特開平10−081865号公報参照)を利用して求める。この方法は、PVA(A)及びグラフトポリマー(C)がトルエンに不溶解性であることを利用する。エマルションを乾燥させて得られた固形分をトルエンに浸漬する。可溶分が溶解するために十分な時間(1日程度)が経過した後、トルエン中の不溶分を回収する。当該不溶分を乾燥させて重量を測定することにより、エマルション中のPVA(A)及びグラフトポリマー(C)の合計含有量が求められる。この合計含有量から上述の方法で求めたPVA(A)の含有量を引くことにより、エマルション中のグラフトポリマー(C)の含有量を求めることができる。なお、アセトンおよび水でエマルションを洗浄することによりグラフトポリマーの含有量を求める方法(特許文献5、特開2005−82665号公報参照)も知られている。アセトンによりポリビニルエステルを除去した後に水によってPVAを除去することにより、グラフトポリマーの含有量が求められる。当該方法により得られた値と、上述のトルエンを用いた方法により得られた値はほぼ一致する。
本発明のエマルション中の、PVA(A)、ポリビニルエステル(B)及びグラフトポリマー(C)の合計含有量が30質量%以上70質量%以下であることが好ましく、35質量%以上70質量%以下がより好ましく、35質量%以上65質量%以下がさらに好ましい。この含有量が30質量%未満となると生産性、経済性の面で好ましくない、エマルションの粘度が下がりすぎてエマルションの溶液安定性が低下する等の問題が生じる可能性がある。また70質量%を超える場合、エマルションの粘度が増大し、取扱性が低下する可能性がある。
本発明のエマルション中の固形分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した重量平均分子量が110万以下であることが重要である。当該重量平均分子量は100万以下が好ましく、85万以下がより好ましく、65万以下がさらに好ましく、55万以下であることが特に好ましく、35万以下が最も好ましい。固形分の重量平均分子量が110万を超えると、得られるビニル樹脂粒子の可塑剤吸収性が低下したり、ビニル化合物の懸濁重合を行う際の重合安定性が低下する。また、エマルションの粘度が増大したり、放置安定性が悪化するため好ましくない。固形分の重量平均分子量は、通常、3万以上である。本発明において、エマルション中の固形分の重量平均分子量は、エマルションを乾燥させて得られる固形分をゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することにより求める。
後述する、本発明の製造方法を用いて懸濁重合用分散安定剤を製造する場合、前記重量平均分子量の値は、PVA(A)のけん化度または重合度を調整すること、PVA(A)の種類や使用量を調整すること、重合開始剤の選択、連鎖移動剤を用いること等によってグラフトポリマー(C)の幹や枝の長さを変化させることで調節できる。
本発明のエマルションにおいて、エマルションに含まれる粒子の平均径は、動的光散乱法による測定値が2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.8μm以下である。平均粒子径が2μmを超えた場合、エマルションの安定性が低下するおそれがある。動的光散乱法による測定は、例えば、大塚電子株式会社製のレーザーゼータ電位計ELS−8000等を用いて行うことができる。平均粒子径は、合成時のビニルエステルモノマーとPVA(A)の重量比、さらにはエマルションの製造条件(重合温度、重合時間、単量体の種類、重合開始剤の種類、PVA(A)の添加時期、連鎖移動剤の使用量など)を適宜選択することによって調整される。
本発明のエマルションは、水性媒体中で、PVA(A)の存在下、ビニルエステルモノマーを重合させることにより製造することが好ましい。当該方法によれば、簡便に本発明のエマルションを製造できる。原料のビニルエステルモノマーは、ポリビニルエステル(B)の製造に用いられるものとして上述したものが好適に用いられる。前記製造方法において、ビニルエステルモノマーとともに、本発明の趣旨を損なわない範囲で他のモノマーを重合させても構わない。他のモノマーとしては、ポリビニルエステル(B)を製造する場合に、ビニルエステルモノマーに対して、共重合させる他のモノマーとして上述したものが好適に用いられる。
上記製造方法おいて、重合方法は特に制限されないが、PVA(A)水溶液中に、ビニルエステルモノマー及び重合開始剤を添加して乳化重合する方法が挙げられる。ここで、ビニルエステルモノマーは一時に添加してもよいし、連続的に添加してもよい。前記重合開始剤としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウム等の過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。当該重合開始剤は還元剤と併用し、レドックス系で用いられる場合もある。その場合、通常、過酸化水素は酒石酸、酒石酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどと共に用いられる。また、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムは亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどとともに用いられることもある。
前記製造方法において、エマルションが安定化する観点やグラフトポリマー(C)の割合の調整が容易になる観点から、連鎖移動剤の存在下、重合を行うことが好ましい。また、連鎖移動剤を用いることにより、エマルション中の固形分の重量平均分子量が低くなるため、懸濁重合用分散安定剤の性能がより向上する。連鎖移動剤の添加方法は、一時に添加してもよいし、連続的に添加してもよい。連鎖移動剤の使用量は、ビニルエステルモノマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上50質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上50質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以上40質量部以下の割合である。
前記連鎖移動剤としては、チオール化合物及びアルデヒド化合物が挙げられる。前記チオール化合物は、特に限定されず、アルキルチオール、官能基を有するチオールのどちらも用いることができる、アルキルチオールを用いる場合、取扱面、臭気の面から炭素数4以上18以下の直鎖又は分岐のアルキルチオールが好ましい。その例として、n−ブタンチオール、n−ペンタンチオール、n−ヘキサンチオール、シクロヘキサンチオール、アダマンチルチオール、n−ヘプタンチオール、n−オクタンチオール、n−ノナンチオール、n−デカンチオール、n−ウンデカンチオール、n−ドデカンチオール、t−ドデカンチオール、n−ヘキサデカンチオール、n−オクタデカンチオール等が挙げられる。官能基を有するチオールとしては、チオ酢酸、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロパンスルホン酸、2−メルカプトエタノール等が挙げられる。前記製造方法において、連鎖移動剤は、単独で、又は、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の製造方法において、PVA(A)1〜32質量部に対して、前記ビニルエステルモノマー100質量部を重合させることが好ましい。ビニルエステルモノマー100質量部に対するPVA(A)の量は2〜27質量部がより好ましく、2〜24質量部がさらに好ましく、2〜21質量部が特に好ましい。PVA(A)の量が32質量部を超える場合、得られるエマルションの粘度が増大して生産性及び取扱性が低下する可能性がある。また、エマルション合成時のPVA(A)水溶液の粘度が増大して固形分量が高いエマルションを得ることが困難になる可能性があり、それにより、生産性、取扱性が低下する可能性がある。一方、PVA(A)の量が1質量部未満である場合、得られるエマルションの粒子径が増大してエマルションの安定性が低下する可能性がある。また、エマルション合成中にビニルエステルモノマーがブロック化し、エマルションが得られなくなるおそれやビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤としての性能が低下するおそれがある。
前記製造方法において、原料のPVA(A)の反応率が20質量%以上97質量%以下であることが好ましく、22質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上93質量%以下であることがさらに好ましい。原料のPVA(A)の反応率とは、原料のPVA(A)のうち、グラフトポリマー(C)に取り込まれたものの割合である。この割合はPVA(A)のけん化度や重合度を調整することや、PVA(A)とビニルエステルモノマーの反応のし易さを変化させることで調節できる。PVA(A)の反応率が20質量%未満になると、グラフトポリマー(C)の親水性が低下することにより得られるビニル樹脂粒子の可塑剤吸収性低下が低下するおそれがある。また、得られるビニル樹脂の加工工程においてフィッシュアイが増加するおそれもある。一方、97質量%を超えるとエマルション中のポリビニルエステル(B)及びグラフトポリマー(C)の分散安定性が低くなり、エマルションの溶液安定性が低下するおそれがある。
[ビニル樹脂の製造]
本発明の懸濁重合用分散安定剤の存在下、水性媒体中で、ビニル化合物を懸濁重合するビニル樹脂の製造方法が本発明の好適な実施態様である。原料のビニル化合物としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、これらのエステルおよび塩;マレイン酸、フマル酸、これらのエステルおよび無水物;スチレン;アクリロニトリル;塩化ビニリデン;ビニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、本発明の懸濁重合用分散安定剤は、特に好適には塩化ビニルを単独で、または塩化ビニルおよび塩化ビニルと共重合することが可能な単量体と共に懸濁重合する際に用いられる。塩化ビニルと共重合することができる単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類;アクリロニトリル;スチレン;塩化ビニリデン;ビニルエーテル等が挙げられる。
ビニル化合物の懸濁重合には、従来から塩化ビニル単量体等の重合に使用されている、油溶性または水溶性の重合開始剤を用いることができる。油溶性の重合開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、α−クミルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。水溶性の重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの油溶性あるいは水溶性の重合開始剤は単独で、または2種類以上を組合せて用いることができる。
ビニル化合物の懸濁重合に際し、重合温度には特に制限はなく、20℃程度の低い温度はもとより、90℃を超える高い温度であってもよい。また、重合反応系の除熱効率を高めるために、リフラックスコンデンサー付の重合器を用いることも好ましい実施態様の一つである。
ビニル化合物の懸濁重合に際し、仕込むビニル化合物と水性媒体の比は特に限定されない。一般的に、水性媒体に対するビニル化合物の割合が低いほど、重合は安定だが生産性が低くなり、水性媒体に対するビニル化合物の割合が高いほど、生産性は高くなるが、重合が不安定となる。本発明のビニル樹脂の製造方法において、水性媒体に対するビニル化合物の質量比(ビニル化合物/水性媒体)は、好ましくは0.57〜1.25であり、より好ましくは0.57〜1.11である。質量比(ビニル化合物/水性媒体)が0.57未満である場合、得られるビニル樹脂の生産性が低くなるおそれがある。一方、質量比(ビニル化合物/水性媒体)が1.25を超える場合、重合安定性が低下し、粗大樹脂粒子が生成するおそれがある。また、得られるビニル樹脂を成形した製品のフィッシュアイが増加するおそれもある。
生産性が向上する観点から、本発明のビニル樹脂の製造方法において、水性媒体に対するビニル化合物の質量比(ビニル化合物/水性媒体)が0.75〜1.25であることが好ましい。このようなビニル化合物の割合が高く、一般的に、重合が不安定になりやすい条件下で、本発明の懸濁重合用分散安定剤による重合安定性を向上させる効果がより発揮される。
本発明のビニル樹脂の製造方法において、本発明の懸濁重合用分散安定剤、及び、粘度平均重合度が650以上であり、かつけん化度が65モル%以上であるPVAの存在下、ビニル化合物を懸濁重合することが好ましい。このようなPVAを併用することで、重合安定性がさらに向上し、粗大樹脂粒子の発生がさらに抑制される。
前記ビニル樹脂の製造方法において、本発明の懸濁重合用分散安定剤と併用されるPVAのけん化度は65モル%以上であることが好ましく、65モル%以上95モル%以下であることがより好ましく、70モル%以上90モル%以下であることがさらに好ましい。前記PVAのけん化度が65モル%未満の場合には、当該PVAの水溶性が低下して取扱性が悪化するおそれがある。なお、前記PVAのけん化度は、JIS−K6726に準じて測定して得られる値である。
本発明の懸濁重合用分散安定剤と併用されるPVAの粘度平均重合度は650以上であることが好ましく、650以上8000以下であることがより好ましく、650以上3500以下であることがさらに好ましい。前記PVAの粘度平均重合度が650未満の場合には、重合安定性が低下するおそれがある。なお、前記PVAの粘度平均重合度は、当該PVAを実質的に完全にけん化した後、アセチル化してポリビニルエステルとした後、アセトン溶液中の極限粘度の測定から中島の式(中島章夫:高分子化学6(1949))を用いて算出されたものである。
本発明の懸濁重合用分散安定剤と併用されるPVAの添加量については特に制限はないが、本発明の懸濁重合用分散安定剤100質量部に対して、40〜900質量部が好ましく、100〜900質量部がより好ましい。前記PVAの添加量が40質量部未満の場合には、重合安定性に悪影響を及ぼすおそれがある。一方、添加量が900質量部を超える場合には、本発明の懸濁重合用分散剤を添加することによる効果が不十分になるおそれがある。
本発明の懸濁重合用分散安定剤と併用されるPVAは単独で使用してもよいし、特性の異なる2種類以上のものを併用してもよい。
本発明のビニル樹脂の製造方法において、ビニル化合物を懸濁重合する際に通常使用されるメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテル;ゼラチンなどの水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロックコポリマーなどの油溶性乳化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤等を本発明の懸濁重合用分散安定剤と併用してもよい。その添加量については特に制限は無いが、ビニル化合物100質量部に対して0.01質量部以上1.0質量部以下が好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下の実施例および比較例において、特に断りがない場合、「部」および「%」はそれぞれ質量部および質量%を示す。
下記の製造例により得られたエマルションについて、以下の方法にしたがって評価を行った。
[エマルションの重量平均分子量(Mw)]
エマルションを温度20℃、湿度65%で乾固させ、厚み約500μmのエマルションフィルムを作成した。当該フィルムをヘキサフルオロイソプロパノールに溶解して、エマルション中の固形分が溶解した溶液を得た後、当該溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い測定した。[装置:東ソー株式会社製HLC−8220GPC、カラム:GMHHR−H(S)×2、移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)+20mM CFCOONa、測定温度:40℃、標品:ポリメチルメタクレート(PMMA)]
[エマルション固形分全量に対するPVA(A)の割合]
エマルションを濃度約5%に希釈した。希釈したエマルション約2gをアルミ容器にとり105℃で3h乾燥させて、得られた固形分の重量を測定した。前記希釈液の正確な固形分含有量a(%)を下記式により求めた。

固形分含有量a(%)=[固形分(g)/乾燥前の希釈エマルション(g)]×100
こうして予め固形分含有量を測定した希釈エマルション約100gを精秤し、温度10℃、回転数20000rpmの条件下1h遠心分離を行った後、上澄みをすべて回収した。得られた上澄み約80gをアルミ容器にとり、105℃で24h乾燥させて絶乾させ、乾燥した固形分を得た。上澄みから得られた固形分の重量を測定した後、エマルション固形分全量に対するPVA(A)の割合を下式により求めた。

PVA(A)の割合(%)=100×c/[(a/100)×b]

a:希釈エマルションの固形分含有量(%)
b:希釈エマルションの重量(g)
c:上澄み中の固形分重量(g)
[PVA(A)の反応率]
エマルション固形分全量に対するPVA(A)の割合を求めるために使用したa、b及びcを用いて、下記式により、原料のPVA(A)の反応率を求めた。但し、原料のビニルエステルモノマーが全て消費されたものとする。

原料のPVA(A)の反応率(%)=100×{1−c/[(a/100)×b×d]}

a、b、c:エマルション固形分全量に対するPVA(A)の割合を求める場合と同義である。
d:エマルションの製造に使用したPVAとビニルエステルモノマーの合計量に対する、エマルションの製造に使用したPVAの質量比[PVA/(PVA+モノマー)]
[エマルション固形分全量に対するポリビニルエステル(B)の割合]
エマルションを約500μmの厚みになるように温度20℃、湿度65%で乾固させエマルションフィルムを作成した。当該フィルム約0.5gを精秤してアルミ容器にとり105℃で3h乾燥させた後、再度重量を測定した。下記式により、前記フィルム中の固形分含有量α(%)を求めた。

フィルム中の固形分含有量α(%)
=100×[乾燥後のフィルム重量(g)/乾燥前のフィルム重量(g)]
こうして予め固形分含有量を測定した乾燥前のエマルションフィルム約0.5gを精秤して約50mLのトルエンに浸漬し、室温中で24時間静置した。これらが入った容器を手で軽く振り、直ちに不溶分を200メッシュのステンレス金網で回収した。不溶分を金網ごと105℃で24h乾燥させた後、重量を測定した。下記式により、エマルション固形分全量に対する、トルエンに不溶解性であるPVA(A)及びグラフトポリマー(C)の割合を求めた。

トルエン不溶解成分(%)=
100×不溶分の乾燥重量(g)/[乾燥前のフィルム(g)×(α/100)]
さらに、下記式により、エマルション固形分全量に対するポリビニルエステル(B)の割合を求めた。

ポリビニルエステル(B)の割合(%)=100−トルエン不溶解成分(%)
[エマルション固形分全量に対するグラフトポリマー(C)の割合]
エマルション固形分全量に対するグラフトポリマー(C)の割合を、上述の方法により求めた、エマルション固形分全量に対するPVA(A)の割合及びエマルション固形分全量に対するポリビニルエステル(B)の割合を用いて、下記式により求めた。

グラフトポリマー(C)の割合(%)=
100−[PVA(A)の割合(%)+ポリビニルエステル(B)の割合(%)]
[製造例1:Em−1の製造]
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を供えた2Lガラス製重合容器にイオン交換水240部、PVA(A)としてPVA−2(重合度300、けん化度80モル%)20部を仕込み80℃で完全に溶解した。次に、このPVA水溶液を窒素置換した後、200rpmで撹拌しながら、1%過硫酸アンモニウム水溶液40部および酢酸ビニルモノマー100部を3時間かけて連続的に添加し反応液中のモノマーが消失したことを確認して、重合を完結させた。得られたエマルションの固形分含有量は30%、重量平均分子量(Mw)が85万、エマルション固形分全量に対するPVA−2の割合が12%、エマルション固形分全量に対するポリビニルエステル(B)の割合が27%、エマルション固形分全量に対するグラフトポリマー(C)の割合が61%、原料のPVA−2の反応率が31%のエマルションを得た。
[製造例2〜10、16〜18、20〜22、24:Em−2〜10、16〜18、20〜22、24の製造]
原料のビニルエステルモノマーの種類、原料のPVAの種類や使用量、イオン交換水の仕込み量を変更したこと以外は、製造例1と同様にして表1に示すエマルション(Em−2〜10、16〜18、20〜22、24)を製造した。製造条件および得られたエマルションの物性値を表1に、原料のPVAの種類を表2に示す。
[製造例11〜15、19:(Em−11〜15、19)の製造]
用いるPVAの種類や使用量、イオン交換水の仕込量を変更したこと、連鎖移動剤をビニルエステルモノマーに予め混合させた後、PVA水溶液に連続的に添加し重合を行ったこと以外は、製造例1と同様にして表1に示すエマルション(Em−11〜15、19)を製造した。製造条件および得られたエマルションの物性値を表1に示す。原料のPVAの種類を表2に示す。ビニルエステルモノマーに対する連鎖移動剤の添加量を表1に示し、連鎖移動剤の種類を表3に示す。
[製造例23:(Em−23)の製造]
原料のPVAの使用量、イオン交換水の仕込量以外は、製造例1と同様にして重合を行おうと試みたが、PVAを溶解させる際に水溶液の粘度が上昇しすぎ、ゲル化してしまったため重合を行うことができなかった。
[製造例25:(Em−25)の製造]
原料のPVAの使用量、イオン交換水の仕込量以外は、製造例1と同様にして重合を行ったが、重合が安定せず粗大な粒子が生成し、エマルションが得られなかった。
Figure 0006212782
Figure 0006212782
Figure 0006212782
[実施例1]
容量5Lのオートクレーブに、塩化ビニル単量体に対して800ppmとなる量のPVA(重合度2000、けん化度80モル%)が溶解した脱イオン水溶液100部、塩化ビニル単量体に対して固形分換算で400ppmとなる量のEm−1をそれぞれ仕込み、仕込む脱イオン水の合計が1200部となるように脱イオン水を追加して仕込んだ。次いで、クミルパーオキシネオデカノエートの70%トルエン溶液0.65部およびt−ブチルパーオキシネオドデカネートの70%トルエン溶液1.05部をオートクレーブに仕込んだ。オートクレーブ内に圧力0.2MPaとなるように窒素を導入した後、パージした。この作業を5回繰り返すことにより、オートクレーブ内を十分に窒素置換した後、塩化ビニル940部を仕込み、オートクレーブ内の内容物を57℃に昇温して撹拌下で塩化ビニル単量体の重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は0.80MPaであった。重合を開始してから約3.5時間経過後、オートクレーブ内の圧力が0.70MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を除去した後、重合反応物を取り出し、65℃にて16時間乾燥を行い、塩化ビニル樹脂粒子を得た。
(塩化ビニル樹脂粒子の評価)
実施例1で得られた塩化ビニル樹脂粒子について、平均粒子径、粒度分布、可塑剤吸収性およびかさ比重を以下の方法にしたがって評価した。評価結果を表4に示す。
(1)平均粒子径
タイラーメッシュ基準の金網を使用して、乾式篩分析により粒度分布を測定し、塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径を求めた。
(2)粒度分布
得られた塩化ビニル樹脂粒子中における、JIS標準篩い42メッシュオンのものの含有量を質量%で表示した。
A:0.5%未満
B:0.5%以上1%未満
C:1%以上
得られた塩化ビニル樹脂粒子中における、JIS標準篩い60メッシュオンのものの含有量を質量%で表示した。
A:5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上
なお、42メッシュオンの粒子の含有量および60メッシュオンの粒子の含有量はともに、値が小さいほど粗大粒子が少なくて粒度分布がシャープであり、重合安定性に優れていることを示している。
(3)可塑剤吸収性
底に脱脂綿(0.02g)を詰めた容量5mLのシリンジに、塩化ビニル樹脂粒子0.5gを入れ、さらにジオクチルフタレート(DOP)1gを入れた後、15分静置した。当該シリンジを3000rpmにて40分間遠心分離した。遠心分離前後のシリンジ重量の差から、塩化ビニル樹脂粒子が吸収したDOPの重量を求め、下記の計算式より可塑剤吸収性(%)を求めた。

可塑剤吸収性(%)=100×[吸収されたDOP(g)/塩化ビニル樹脂粒子(g)]
(4)かさ比重
JISK6721に準拠して、ビニル樹脂粒子のかさ比重を測定した。
[実施例2〜16]
Em−1に代えてEm−2〜16をそれぞれ使用したこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル樹脂粒子を得た。塩化ビニル樹脂粒子の評価結果を表4に示す。
[実施例17]
用いる脱イオン水の量を計1390部としたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル樹脂粒子を得た。塩化ビニル樹脂粒子の評価結果を表5に示す。
[比較例1]
Em−1を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル樹脂粒子の評価結果を表4に示す。この場合、得られた塩化ビニル樹脂粒子は、42メッシュオンのものの割合が多く重合不安定であり、可塑剤吸収性も不十分であった。
[比較例2]
Em−1に代えて、Em−17を使用したこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル樹脂粒子の評価結果を表4に示す。この場合、得られた塩化ビニル樹脂粒子の、42メッシュオンのものの割合、60メッシュオンのものの割合がいずれも多く重合不安定であり、可塑剤吸収性も不十分であった。
[比較例3]
Em−1に代えて、Em−18を使用したこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル樹脂粒子の評価結果を表4に示す。この場合、得られた塩化ビニル樹脂粒子の、42メッシュオンのものの割合、60メッシュオンのものの割合がいずれも多く重合不安定であり、可塑剤吸収性も不十分であった。
[比較例4]
Em−1に代えて、Em−19を使用したこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル樹脂粒子の評価結果を表4に示す。この場合、得られた塩化ビニル樹脂粒子の、42メッシュオンの割合が多く重合不安定であり、可塑剤吸収性も不十分であった。
[比較例5]
Em−1に代えて、Em−20を使用したこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル樹脂粒子の評価結果を表4に示す。この場合、得られた塩化ビニル樹脂粒子の、42メッシュオンのものの割合、60メッシュオンのものの割合がいずれも多く重合不安定であり、可塑剤吸収性も不十分であった。
[比較例6]
Em−1に代えて、Em−21を使用したこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル樹脂粒子の評価結果を表4に示す。この場合、得られた塩化ビニル樹脂粒子の、42メッシュオンのものの割合、60メッシュオンのものの割合がいずれも多く重合がやや不安定であり、可塑剤吸収性も不十分であった。
[比較例7]
Em−1に代えて、Em−22を使用したこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル樹脂粒子の評価結果を表4に示す。この場合、得られた塩化ビニル樹脂粒子の、42メッシュオンの割合が多く重合不安定であり、可塑剤吸収性も不十分であった。
[比較例8]
Em−1に代えて、Em−24を使用したこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル樹脂粒子の評価結果を表4に示す。この場合、得られた塩化ビニル樹脂粒子の、42メッシュオンのものの割合、60メッシュオンのものの割合がいずれも多く重合不安定であり、可塑剤吸収性も不十分であった。
[比較例9]
Em−1に代えて、重合度250、けん化度60モル%の無変性部分けん化PVAの4%水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル樹脂粒子の評価結果を表4に示す。この場合、得られた塩化ビニル樹脂粒子の可塑剤吸収性には優れるものの、42メッシュオンのものの割合、60メッシュオンのものの割合がいずれも多く重多く、平均粒子径が非常に大きく重合が不安定であった。
[比較例10]
用いる脱イオン水の量を計1390部としたこと以外は比較例7と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル樹脂粒子を得た。塩化ビニル樹脂粒子の評価結果を表5に示す。この場合、得られた塩化ビニル樹脂粒子の60メッシュオンの割合が多く重合がやや不安定であり、可塑剤吸収性が不十分であった
[比較例11]
用いる脱イオン水の量を計1390部としたこと以外は比較例10と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル樹脂粒子を得た。塩化ビニル樹脂粒子の評価結果を表5に示す。この場合、42メッシュオンのものの割合、60メッシュオンのものの割合がいずれも多く、平均粒子径が非常に大きく重合が不安定であった。また、表5の実施例1、17、比較例6、10、比較例9、11をそれぞれ比較すると本発明のエマルションは、使用する塩化ビニルの割合が多く、通常、重合が不安定になりやすい条件下であっても、他の分散剤に比べ42メッシュオンのものや60メッシュオンのものの割合を低く保つことができ、特に重合安定性関して、優れた効果を発揮することができることが分かる。
Figure 0006212782
Figure 0006212782
実施例において示されているように、本発明の、水性エマルションからなるビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤は、重合安定性が高いため粗大粒子が少なく、粒子径が均一なビニル樹脂粒子が得られる。なおかつ当該ビニル樹脂粒子は、可塑剤吸収性にも優れる。また、固形分含有量が30%を超えるエマルションとして生産することができ、そのままビニル化合物の懸濁重合を行う重合槽に仕込むことが可能であるため、ハンドリング性、経済性に非常に優れている。したがって、本発明の懸濁重合用分散安定剤の工業的な有用性はきわめて高い。

Claims (7)

  1. 水性媒体中で、ポリビニルアルコール(A)の存在下、ビニルエステルモノマーを重合させる、水性エマルションからなるビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤の製造方法であって、
    ポリビニルアルコール(A)1〜32質量部に対して、前記ビニルエステルモノマー100質量部を重合させることにより、
    ポリビニルアルコール(A)、ポリビニルエステル(B)及びポリビニルアルコールにビニルエステルモノマーをグラフト重合させてなるグラフトポリマー(C)を含有する固形分を含有し、
    (A)、(B)及び(C)の合計量に対するポリビニルアルコール(A)の量が0.1〜18質量%であり、
    (A)、(B)及び(C)の合計量に対するグラフトポリマー(C)の量が7〜80質量%であり、かつ、
    ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した前記固形分の重量平均分子量が110万以下である水性エマルションを得る懸濁重合用分散安定剤の製造方法
  2. 水性媒体中で、ポリビニルアルコール(A)の存在下、ビニルエステルモノマーを重合させる、水性エマルションからなるビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤の製造方法であって、
    連鎖移動剤の存在下、前記重合を行うことにより、
    ポリビニルアルコール(A)、ポリビニルエステル(B)及びポリビニルアルコールにビニルエステルモノマーをグラフト重合させてなるグラフトポリマー(C)を含有する固形分を含有し、
    (A)、(B)及び(C)の合計量に対するポリビニルアルコール(A)の量が0.1〜18質量%であり、
    (A)、(B)及び(C)の合計量に対するグラフトポリマー(C)の量が7〜80質量%であり、かつ、
    ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した前記固形分の重量平均分子量が110万以下である水性エマルションを得る懸濁重合用分散安定剤の製造方法
  3. 前記水性エマルション中の、ポリビニルアルコール(A)、ポリビニルエステル(B)及びグラフトポリマー(C)の合計含有量が30〜70質量%である請求項1又は2に記載の懸濁重合用分散安定剤の製造方法
  4. ポリビニルエステル(B)がポリ酢酸ビニルである請求項1〜3のいずれかに記載の懸濁重合用分散安定剤の製造方法
  5. 原料のポリビニルアルコール(A)の反応率が20〜97質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の懸濁重合用分散安定剤の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の方法により懸濁重合用分散安定剤を得た後に、当該分散安定剤の存在下、水性媒体中で、ビニル化合物を懸濁重合するビニル樹脂の製造方法。
  7. 前記水性媒体に対する前記ビニル化合物の質量比(ビニル化合物/水性媒体)が0.75〜1.25である請求項に記載のビニル樹脂の製造方法。
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