JP6023726B2 - 懸濁重合用分散安定剤 - Google Patents
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Description
[1]アルキレン基の炭素数が2〜4であり、繰り返し単位数が2以上100以下のポリオキシアルキレン基を側鎖に有するポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体(A)を含有する懸濁重合用分散安定剤であって、
該ポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体(A)は、粘度平均重合度が500未満であり、けん化度が70モル%より大きく、かつポリオキシアルキレン基変性率が0.1モル%以上10モル%以下である、懸濁重合用分散安定剤。
[2]前記ポリオキシアルキレン基が、下記一般式(I)で示されるポリオキシアルキレン基である上記[1]の懸濁重合用分散安定剤;
[3]さらに、粘度平均重合度が500以上、けん化度が60モル%以上のビニルアルコール系重合体(B)を含有する上記[1]または[2]の懸濁重合用分散安定剤;
[4]前記R1および前記R2がともに水素原子である上記[1]〜[3]のいずれかの懸濁重合用分散安定剤;
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、後述する特定のポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体(A)(以下、ポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体をPOA変性PVAと略記することがある)を含有する。また、当該懸濁重合用分散安定剤は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、上記POA変性PVA(A)以外のPVA(B)や、他の成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
本発明で用いられるPOA変性PVA(A)は、アルキレン基の炭素数が2〜4であり、繰り返し単位数が2以上100以下のポリオキシアルキレン基(以下、ポリオキシアルキレン基をPOA基と略記することがある)を側鎖に有し、粘度平均重合度が500未満であり、けん化度が70モル%より大きく、かつPOA基変性率が0.1モル%以上10モル%以下である。
POA基変性率(モル%)={(ピークβの面積/3n)/(ピークαの面積+(ピークβの面積/3n)}×100
粘度平均重合度=([η]×103/8.29)(1/0.62)
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、上記POA変性PVA(A)に加えて、さらに粘度平均重合度が500以上、けん化度が60モル%以上のPVA(B)を含有することが好ましい。このように、粘度平均重合度がPOA変性PVA(A)よりも高いPVA(B)を併用する組成物からなる分散安定剤とすることで、懸濁重合時の重合安定性が向上し粗粒化をより一層抑制できるため好ましい。
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、その他の各種添加剤を含有してもよい。該添加剤としては、例えば、アルデヒド類、ハロゲン化炭化水素類、メルカプタン類などの重合調節剤;フェノール化合物、イオウ化合物、N−オキサイド化合物などの重合禁止剤;pH調整剤;架橋剤;防腐剤;防黴剤、ブロッキング防止剤;消泡剤等が挙げられる。
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、特にビニル系化合物の懸濁重合に好適に用いられる。ビニル系化合物としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、これらのエステルおよび塩;マレイン酸、フマル酸、これらのエステルおよび無水物;スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、本発明の懸濁重合用分散安定剤は、特に好適には塩化ビニルを単独で、または塩化ビニルおよび塩化ビニルと共重合することが可能な単量体と共に懸濁重合する際に用いられる。塩化ビニルと共重合することができる単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類;アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。
PVAの粘度平均重合度およびけん化度は、JIS K6726に記載の方法により求めた。
PVAのPOA基変性率は、上述したプロトンNMRを用いた方法に準じて求めた。なお、プロトンNMRは、500MHzのJEOL GX−500を用いた。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口および開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル690g、メタノール2310g、表2に示す構造のブロック共重合POA基含有モノマー(単量体A)7.1gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてPOA基含有モノマー(単量体A)をメタノールに溶解して濃度20%としたコモノマー溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.6gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルと単量体Aの比率)が一定となるようにしながら、60℃で6時間重合した後冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えたコモノマーの総量は32gであった。また重合停止時の固形分濃度は7.6%であった。続いて30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、POA変性PVAcのメタノール溶液(濃度63%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したPOA変性PVAcのメタノール溶液78.8g(溶液中のPOA変性PVAc50.0g)に、1.01gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの12%水溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液のPOA変性PVAc濃度30%、POA変性PVAc中の酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比0.0052)。40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル150gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール200gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を真空乾燥機中50℃で1日間放置してPOA変性PVA(A1)を得た。POA変性PVA(A1)の粘度平均重合度は300、けん化度は74モル%およびPOA基変性率は0.7モル%であった。
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、重合時に使用するPOA基を有する不飽和単量体の種類およびその使用量、並びに重合率等の重合条件、けん化時におけるPOA変性PVAcの濃度、酢酸ビニルユニットに対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にしてPOA変性PVA(A2〜16)を製造した。製造条件を表1に、用いたPOA基を有する不飽和単量体の構造を表2に示す。
粘度平均重合度2000、けん化度80モル%のPVA(B)が塩化ビニル単量体に対して800ppm、上記POA変性PVA(A1)が塩化ビニル単量体に対して200ppmとなるように、それぞれ脱イオン水に溶解させ、分散安定剤を調製した。このようにして得られた分散安定剤を、容量5Lのオートクレーブに仕込んだ。次いで、オートクレーブにクミルパーオキシネオデカノエートの70%トルエン溶液0.65部およびt−ブチルパーオキシネオドデカネートの70%トルエン溶液1.05部を仕込み、オートクレーブ内の圧力が0.0067MPaとなるまで脱気して酸素を除いた後、塩化ビニル940部を仕込み、オートクレーブ内の内容物を57℃に昇温して撹拌下で塩化ビニル単量体の重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は0.80MPaであった。重合を開始してから3.5時間経過後のオートクレーブ内の圧力が0.70MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を除去した後、重合反応物を取り出し、65℃にて16時間乾燥を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。
実施例1で得られた塩化ビニル重合体粒子について、平均粒子径、粒度分布、スケール付着量、可塑剤吸収性および残留モノマー量を以下の方法にしたがって評価した。評価結果を表3に示す。
タイラーメッシュ基準の金網を使用して、乾式篩分析により粒度分布を測定し、塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径を求めた。
JIS標準篩い42メッシュオンの含有量を質量%で表示した。
A:0.5%未満
B:0.5%以上1%未満
C:1%以上
JIS標準篩い60メッシュオンの含有量を質量%で表示した。
A:5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上
なお、42メッシュオンの含有量および60メッシュオンの含有量はともに、値が小さいほど粗大粒子が少なくて粒度分布がシャープであり、重合安定性に優れていることを示している。
実施例1で得られた塩化ビニル重合体粒子100部、ジオクチルフタレート(DOP)50部、三塩基性硫酸鉛5部およびステアリン酸鉛1部を7分間150℃でロール練りして、厚み0.1mm、140mm×140mmのシートを5枚作製し、各シートのフィッシュアイの数を測定し、合計したフィッシュアイの数をスケール付着量の指標とし、以下の基準で評価した。
A:4個未満
B:4個以上11個未満
C:11個以上
脱脂綿を0.02g詰めた容量5mLのシリンジの質量を量り(Agとする)、そこに塩化ビニル重合体粒子0.5gを入れ質量を秤量し(Bgとする)、そこにジオクチルフタレート(DOP)1gを入れ15分静置後、3000rpm、40分遠心分離して質量を量った(Cgとする)。そして、下記の計算式より可塑剤吸収性(%)を求めた。
可塑剤吸収性(%)=[{(C−A)/(B−A)}−1]×100
脱モノマー性の指標として、塩化ビニルの懸濁重合における重合反応物を取り出したのち、65℃にて5時間乾燥を行い、その時点での残留モノマー量をヘッドスペースガスクロマトグラフィーにて測定した。
POA変性PVA(A1)に代えて、POA変性PVA(A2〜12)をそれぞれ使用したこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。使用したPOA変性PVA(A2〜12)の物性および得られた塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表3に示す。
POA変性PVA(A1)を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。使用したPOA変性PVA(A)の物性および得られた塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表3に示す。この場合、得られた塩化ビニル重合体粒子の可塑剤吸収性が不十分であり、残存モノマー量が多かった。
POA変性PVA(A1)に代えて、粘度平均重合度が630であるPOA変性PVA(A13)を使用したこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。使用したPOA変性PVA(A)の物性および得られた塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表3に示す。この場合、得られた塩化ビニル重合体粒子の可塑剤吸収性が不十分であり、残存モノマー量が多かった。
実施例1においてPOA変性PVA(A1)に代えて、けん化度が60モル%であるPOA変性PVA(A14)を使用したが、該POA変性PVA(A14)は水に溶解せず、塩化ビニル重合体粒子の懸濁重合を行なうことができなかった。
POA変性PVA(A1)に代えて、POA基変性率が0.05モル%であるPOA変性PVA(A15)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。使用したPOA変性PVA(A15)の物性および得られた塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表3に示す。この場合、得られた塩化ビニル重合体粒子の可塑剤吸収性が不十分であり、残存モノマー量が多かった。
POA変性PVA(A1)に代えて、POA基変性率が11モル%であるPOA変性PVA(A16)を使用したが、該POA変性PVA(A16)は水に溶解せず、塩化ビニル重合体粒子の懸濁重合を行うことができなかった。
Claims (2)
- アルキレン基の炭素数が2〜4であり、繰り返し単位数が2以上100以下のポリオキシアルキレン基を側鎖に有するポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体(A)を含有し、懸濁重合の開始以前に添加される懸濁重合用分散安定剤であって、
該ポリオキシアルキレン変性ビニルアルコール系重合体(A)は、
粘度平均重合度が500未満であり、けん化度が70モル%より大きく、かつポリオキシアルキレン基変性率が0.1モル%以上10モル%以下であり、
前記ポリオキシアルキレン基が、下記一般式(I)で示される懸濁重合用分散安定剤。
(式中、R 1 およびR 2 は、ともに水素原子であり、R 3 およびR 4 は、いずれか一方がメチル基若しくはエチル基、他方が水素原子であり、R 5 は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。mとnはそれぞれのオキシアルキレンユニットの繰り返し単位数を表し、1≦m≦50、1≦n≦50である。) - さらに、粘度平均重合度が500以上、けん化度が60モル%以上のビニルアルコール系重合体(B)を含有する請求項1に記載の懸濁重合用分散安定剤。
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