JP7321394B2 - 懸濁重合用分散剤及びビニル系重合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、懸濁重合用分散剤及びビニル系重合体の製造方法に関する。
ビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することがある)は、ビニル系化合物の懸濁重合用分散剤として一般的に用いられている。懸濁重合においては、水性媒体中に分散させたビニル系化合物を油溶性の触媒を用いて重合させることにより、粒子状のビニル系重合体が得られる。その際、得られる重合体の品質向上を目的として、分散剤が水性媒体に添加される。ビニル系化合物を懸濁重合して得られるビニル系重合体の品質を支配する因子には、重合率、水とビニル系化合物(単量体)との比、重合温度、油溶性触媒の種類及び量、重合容器の形式、重合容器における内容物の撹拌速度、分散剤の種類などがある。なかでも分散剤の種類が、ビニル重合体の粒度分布又は可塑剤吸収性といった品質に大きな影響を与える。PVAは、一種を単独で、又は異なる種類のPVA若しくはメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体等と組み合わされて、分散剤として使用されている。
例えば特許文献1には、平均重合度が500以上、重量平均重合度Pwと数平均重合度Pnとの比(Pw/Pn)が3.0以下であり、カルボニル基とこれに隣接するビニレン基とを含む構造[-CO-(CH=CH)-]とを有し、0.1%水溶液の波長280nm及び320nmでの吸光度が各々0.3以上及び0.15以上であり、かつ波長280nmでの吸光度(a)に対する波長320nmでの吸光度(b)の比(b)/(a)が0.30以上のPVAからなる分散剤が開示されている。
特公平5-88251号公報
本発明は、使用量が少ない場合にも、平均粒子径が小さくかつ粗大粒子が少なく、可塑剤吸収性が良好な重合体粒子を得ることができる懸濁重合用分散剤、及びビニル系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的は、
[1]下記式(1)で表される構造を有し、下記式(2)を満たすビニルアルコール系重合体を含有する、懸濁重合用分散剤;
Figure 0007321394000001
0.4≦[X]×10/[Ra,1≦3.0 (2)
前記式(1)中、Rは炭素数4以上の炭化水素基である。
前記式(2)中、[X]は前記ビニルアルコール系重合体の全構造単位に対する前記式(1)で表される構造の含有率(モル%)であり、[Ra,1]は前記式(1)で表される構造と塩化ビニルとのHSP距離((J/cm1/2)である。
[2]前記ビニルアルコール系重合体のけん化度が60モル%以上99.5モル%以下である、[1]の懸濁重合用分散剤;
[3]前記ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が150以上5,000以下である、[1]又は[2]の懸濁重合用分散剤;
[4]前記ビニルアルコール系重合体が下記式(3)を満たす、[1]~[3]のいずれかの懸濁重合用分散剤;
3.5≦[X]×10/[Ra,2≦25 (3)
前記式(3)中、[X]の定義は前記式(2)と同じであり、[Ra,2]は前記式(1)で表される構造と水とのHSP距離((J/cm1/2)である。
[5][1]~[4]のいずれかの懸濁重合用分散剤の存在下で、ビニル系化合物の懸濁重合を行う工程を備える、ビニル系重合体の製造方法
のいずれかを提供することにより達成される。
本発明によれば、使用量が少ない場合にも、平均粒子径が小さくかつ粗大粒子が少なく、可塑剤吸収性が良好な重合体粒子を得ることができる懸濁重合用分散剤、及びビニル系重合体の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。なお、本明細書において、数値範囲(各成分の含有量、各成分から算出される値及び物性など)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。
<懸濁重合用分散剤>
本発明の懸濁重合用分散剤(以下「分散剤」と称することがある)は、ビニルアルコール系重合体(PVA)を含有する。
(PVA)
前記PVAは、ビニルアルコール単位を構造単位として有する重合体である。前記PVAは下記式(1)で表される構造を有する。式(1)で表される構造は、通常、PVAの末端に位置する。
Figure 0007321394000002
式(1)中、Rは炭素数4以上の炭化水素基である。Rの炭素数が4未満であると、分散剤の使用量が少ない場合に、平均粒子径が小さくかつ粗大粒子が少ない重合体粒子を得ることができない。また、前記PVAは、例えば炭素数5以上のアルデヒドを連鎖移動剤として用いて酢酸ビニルを重合した後、けん化することにより得ることができるが、炭素数3又は4のアルデヒドを用いた場合には、未反応のアルデヒドと酢酸ビニルとの分離が困難であり、酢酸ビニルを再利用することが困難となる。すなわち、式(1)中のRが4以上である前記PVAは、生産効率に優れる。Rの炭素数の下限は、5が好ましく、6がより好ましい場合がある。一方、Rの炭素数の上限は、12が好ましく、10がより好ましく、8がさらに好ましい場合がある。Rの炭素数の上限が前記の値であると、平均粒子径が小さくかつ粗大粒子が少ない重合体粒子をより得やすく、また原料の入手性が優れるため安価に製造できる。
Rで表される炭化水素基は、フェニル基等の芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよいが、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の鎖状脂肪族炭化水素基、及びシクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基等の環状脂肪族炭化水素基を挙げることができるが、鎖状脂肪族炭化水素基が好ましい。鎖状脂肪族炭化水素基は、直鎖状の基であってもよく、分岐を有する基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、アルキル基等の飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、アルケニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基であってもよいが、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。Rで表される炭化水素基としては、アルキル基がより好ましく、直鎖状アルキル基がさらに好ましい。Rで表されるアルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
前記PVAは、下記式(2)を満たす。
0.4≦[X]×10/[Ra,1≦3.0 (2)
式(2)中、[X]は前記PVAの全構造単位に対する式(1)で表される構造の含有率(モル%)である。[Ra,1]は式(1)で表される構造と塩化ビニルとのHSP距離((J/cm1/2)である。
本発明の分散剤は、式(2)を満たすPVAを含有することにより、使用量が少ない場合であってもビニル系化合物の重合を安定させることができるため、重合が不安定なことに起因するブロック化が低減されるという優れた効果を発揮する。その結果、平均粒子径が小さくかつ粗大粒子が少なく、可塑剤吸収性も高い重合体粒子が得られる。
本発明の分散剤が前記効果を奏する理由は定かではないが、以下の理由が推測される。[Ra,1]で表されるHSP距離が小さい場合、式(1)で表される構造と、塩化ビニル等のビニル系化合物との相溶性が高いことを意味する。また、式(1)で表される構造の含有量は、PVAとビニル系化合物との相溶性に影響を与える。このため、[X]×10/[Ra,1は、PVAとビニル系化合物との相溶性の程度を表すことができると考えられる。[X]×10/[Ra,1が0.4未満であると、懸濁重合の際、モノマーであるビニル系化合物と水との界面に存在するPVAの量が少なくなり、平均粒子径が小さくかつ粗大粒子が少ない重合体粒子を得ることができない。一方、[X]×10/[Ra,1が3.0を超えるPVAは、製造が困難である。また、[X]×10/[Ra,1が3.0を超えるPVAは水溶性が低いため、懸濁重合を行う際のハンドリング性が悪い。[X]×10/[Ra,1の下限は、0.5が好ましく、0.6がより好ましく、0.7がさらに好ましく、0.8、0.9又は0.95が好ましい場合もある。一方、[X]×10/[Ra,1の上限は、2.9が好ましく、2.8がより好ましく、2.7がさらに好ましく、2.6又は2.5が好ましい場合もある。
前記PVAの全構造単位に対する式(1)で表される構造の含有率[X]の下限は、0.01モル%が好ましく、0.03モル%がより好ましく、0.05モル%がさらに好ましく、0.07モル%、0.08モル%、0.09モル%又は0.10モル%がよりさらに好ましい場合がある。[X]が前記下限以上であることで、使用量が少ない場合にも、平均粒子径が小さくかつ粗大粒子が少ない重合体粒子をより得やすい。一方、前記[X]の上限は、3モル%が好ましく、2モル%がより好ましく、1.5モル%、1.2モル%、1.0モル%、0.8モル%、0.6モル%、0.5モル%又は0.4モル%がさらに好ましい場合がある。[X]が前記上限以下であることで、懸濁重合で得られる重合体粒子の可塑剤吸収性が優れる傾向にある。
前記[X]は、けん化度99.5モル%まで再けん化したPVAのH-NMR解析により算出できる。より詳細には、実施例に記載の方法により算出できる。
式(1)で表される構造と塩化ビニルとのHSP距離[Ra,1]の下限は、1(J/cm1/2が好ましく、2(J/cm1/2がより好ましく、2.5(J/cm1/2又は2.8(J/cm1/2がさらに好ましい場合がある。一方、式(1)で表される構造と塩化ビニルとのHSP距離[Ra,1]の上限は、5.5(J/cm1/2が好ましく、4.9(J/cm1/2がより好ましく、4.5(J/cm1/2、4.2(J/cm1/2、4.0(J/cm1/2又は3.8(J/cm1/2が好ましい場合もある。[Ra,1]が前記範囲内にあることで、使用量が少ない場合にも、平均粒子径が小さくかつ粗大粒子が少ない重合体粒子をより得やすく、係る重合体粒子の可塑剤吸収性も優れる傾向にある。
式(1)で表される構造と塩化ビニルとのHSP距離[Ra,1]は、山本秀樹著「SP値:基礎・応用と計算方法」(2005年発行、情報機構)及びJ.Brandrup著「POLYMER HANDBOOK(FOURTH EDITION)」(2003年発行、Wiley)に記載の方法で算出できる。また、PVA中の式(1)で表される構造の特定は、けん化度99.5モル%まで再けん化したPVAのH-NMR解析により算出でき、詳細には実施例に記載の方法により算出できる。
以下、HSP距離[Ra,1]の算出方法について詳述する。ある二つの物質の間のHSP距離は、HSP値(δd、δp、δh)の値を三次元空間の座標と考えたときの二点間の距離に相当するパラメータである。HSP値は分散項(δd)、極性項(δp)及び水素結合項(δh)の3成分で表される。例えば、式(1)で表される構造が下記式(4)で表される構造である場合、この構造のδd、δp及びδhは、下記式(4)で表される構造のモル体積(V)を下記式(5)によって求めた上で、下記式(6)~(8)によって求めることができる。なお、下記式(5)中のmは3以上の数であり、H-NMR解析における測定誤差、PVAに複数種の式(1)で表される構造が導入されている場合などのため、整数でなくてもよい。式(1)で表される構造が、下記式(4)で表される構造以外の構造である場合も、下記方法に準じ、山本秀樹著「SP値:基礎・応用と計算方法」(2005年発行、情報機構)及びJ. Brandrup著「POLYMER HANDBOOK(FOURTH EDITION)」(2003年発行、Wiley)に記載の方法で算出できる。
-(C=O)-(CH-CH (4)
V=33.5+16.1m+10.8 (5)
δd=(420+270m+290)/V (6)
δp=770/V (7)
δh=(2000/V)1/2 (8)
また、塩化ビニルのHSP値は、(δD、δP、δH)=(15.4、8.1、2.4)とする。
HSP距離[Ra,1]は、これらの値を用い、下記式(9)により求めることができる。
[Ra,1]={4(δD-δd)+(δP-δp)+(δH-δh)1/2 (9)
前記PVAは、下記式(3)を満たすことが好ましい。
3.5≦[X]×10/[Ra,2≦25 (3)
式(3)中、[X]は前記PVAの全構造単位に対する式(1)で表される構造の含有率(モル%)である。[Ra,2]は式(1)で表される構造と水とのHSP距離((J/cm1/2)である。[X]×10/[Ra,2の下限は、4が好ましく、6がより好ましく、7、8、9又は10がさらに好ましい場合がある。一方、[X]×10/[Ra,2の上限は、22が好ましく、20がより好ましく、18、16又は15がさらに好ましい場合がある。[X]×10/[Ra,2は、PVAと水との相溶性の程度を表すことができると考えられる。[X]×10/[Ra,2が前記範囲内にあることで、使用量が少ない場合にも、平均粒子径が小さくかつ粗大粒子が少ない重合体粒子をより得やすく、係る重合体粒子の可塑剤吸収性も優れる傾向にある。
式(1)で表される構造と水とのHSP距離[Ra,2]の上限は、45(J/cm1/2が好ましく、42(J/cm1/2がより好ましい場合もある。一方、式(1)で表される構造と水とのHSP距離[Ra,2]の下限は、36(J/cm1/2が好ましい。[Ra,2]が前記範囲内にあることで、使用量が少ない場合にも、平均粒子径が小さくかつ粗大粒子が少ない重合体粒子をより得やすく、係る重合体粒子の可塑剤吸収性も優れる傾向にある。
式(1)で表される構造と水とのHSP距離[Ra,2]は、山本秀樹著「SP値:基礎・応用と計算方法」(2005年発行、情報機構)及びJ.Brandrup著「POLYMER HANDBOOK(FOURTH EDITION)」(2003年発行、Wiley)に記載の方法で算出できる。具体的には、前記したHSP距離[Ra,1]と同様の方法にて算出できる。すなわち、HSP距離[Ra,2]は、式(1)で表される構造のHSP値(δd、δp、δh)と、水のHSP値(δD、δP、δH)とから、下記式(10)により求めることができる。なお、水のHSP値は、(δD、δP、δH)=(15.5、16.0、42.4)とする。
[Ra,2]={4(δD-δd)+(δP-δp)+(δH-δh)1/2 (10)
通常、前記PVAは、後に詳述するように、炭素数5以上のアルデヒドの存在下でビニルエステルを重合し、得られたビニルエステル系重合体をけん化することで得られる。前記PVAのけん化度の下限としては、20モル%が好ましく、30モル%がより好ましく、40モル%がさらに好ましい場合がある。一方、前記けん化度の上限は、100モル%であってよいが、99.5モル%が好ましく、99.2モル%がより好ましく、99モル%がさらに好ましく、95モル%又は90モル%が好ましい場合がある。本発明の分散剤を一次分散剤として使用する場合には、前記PVAのけん化度の下限は60モル%が好ましく、65モル%がより好ましく、68モル%がさらに好ましい。本発明の分散剤を二次分散剤として使用する場合には、前記PVAのけん化度の上限は80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましい場合がある。前記PVAのけん化度が前記範囲であることで、界面活性性能が好適化されることなどにより、本発明の効果がより向上する。なお、一次分散剤とは、懸濁重合の際にモノマーの分散性を高め、得られる重合体粒子の粒径を制御するなどのために用いられる添加剤である。一方、二次分散剤とは、通常、特に得られる重合体粒子の空孔率を高めることなどのために、一次分散剤と共に用いられる添加剤である。けん化度は、JIS K 6726:1994に記載の方法により測定される値である。
前記PVAの粘度平均重合度の下限としては、100が好ましく、120がより好ましく、150がさらに好ましく、160がよりさらに好ましく、200、300、400、500又は600がよりさらに好ましい場合がある。粘度平均重合度が前記下限以上であることで、保護コロイド性が高まり、重合安定性等の分散剤としての諸性能がより高まる。一方、この粘度平均重合度の上限としては、5,000が好ましく、3,500がより好ましく、2,000がさらに好ましく、1,500、1,000又は800がよりさらに好ましい場合がある。粘度平均重合度が前記上限以下であることで、界面活性性能が高まり、分散剤としての諸性能がより向上する。本発明の分散剤を一次分散剤として使用する場合には、前記PVAの粘度平均重合度の下限は200が好ましく、300がより好ましく、400がさらに好ましく、500がよりさらに好ましく、600が特に好ましい。当該分散剤を二次分散剤として使用する場合には、前記PVAの粘度平均重合度の上限は、800が好ましく、700がより好ましく、600がさらに好ましい。PVAの粘度平均重合度は、JIS K 6726:1994に準じて測定した値である。すなわち、PVAをけん化度99.5モル%以上に再けん化し、生成した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](リットル/g)から下記式(11)により求めることができる。
粘度平均重合度=([η]×10/8.29)(1/0.62) (11)
前記PVAは、下記式(12)で表される構造を有することが好ましい。
-CO-(CH=CH)- (12)
式(12)中、pは、1~5の整数である。
前記式(12)で表される構造は、例えば、式(1)で表される構造を有するPVAを熱処理することにより形成される。前記式(12)で表される構造中のカルボニル基と、前記式(1)で表される構造中のカルボニル基とは、同一のものであってよい。すなわち、前記PVAの末端構造は、R-CO-(CH=CH)-で表される構造であってよい。前記PVAが前記式(12)で表される構造を有する場合、波長320nmの吸光が生じる。そのため、前記PVAの0.1質量%水溶液の光路長10mm、波長320nmにおける吸光度の下限は、0.05が好ましく、0.1がより好ましく、0.15、0.20又は0.25がさらに好ましい場合がある。前記吸光度が前記下限以上である場合、前記式(12)で表される構造が十分にPVAに形成されており、より平均粒子径が小さく且つ粗大粒子が少ない重合体粒子を得ることができる。従って、このような場合、特に使用量が少ない場合にも、平均粒子径が小さくかつ粗大粒子が少なく、可塑剤吸収性が良好な重合体粒子を得ることができる。
一方、前記PVAの0.1質量%水溶液の光路長10mm、波長320nmにおける吸光度の上限は、0.4が好ましく、0.35がより好ましく、0.30又は0.25がさらに好ましい場合がある。前記PVAにおいて、前記式(12)で表される構造が過剰に形成されている場合、得られる重合体粒子の可塑剤吸収性に影響を与えることがある。従って、前記吸光度が前記上限以下である場合、得られる重合体粒子の可塑剤吸収性を高めることができる。
前記PVAが末端にホルミル基(-COH)を有する場合、その含有率は前記PVAの全構造単位に対して、3.5ミリモル%以下が好ましく、3.0ミリモル%以下がより好ましく、2.5ミリモル%以下がさらに好ましい場合がある。前記含有率の下限に特に制限はなく、実質的に末端にホルミル基を有していなくてもよい。本発明においては、PVAの末端に存在するホルミル基が少ないことで、分散剤としての諸性能が高まる場合があり、特に得られる重合体粒子の可塑剤吸収性が向上する場合がある。なお、PVAの末端のホルミル基の含有率は、酸素が供給される系で重合を行った場合などに高まる傾向にある。また、PVAの重合度も末端のホルミル基の含有率に影響する。前記ホルミル基の含有率は、前記PVAをメタノール等により洗浄し、未反応のアルデヒド等を除去した状態で、H-NMR測定を行うことにより算出できる。
前記PVAは、前記式(1)で表される構造、及びビニルエステルに由来する構造単位(ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位)以外の他の構造単位を有していてもよい。前記他の構造単位を与える単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブチレン等のα-オレフィン;アクリル酸及びその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド;N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N-メチロールアクリルアミド及びその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N-メチロールメタクリルアミド及びその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩又はそのモノ又はジアルキルエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン等が挙げられる。他の単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。
前記PVAにおける全構造単位に対する前記他の構造単位の割合は、20モル%以下が好ましいことがあり、10モル%以下がより好ましいことがあり、5モル%、3モル%又は1モル%がさらに好ましい場合がある。一方、前記他の構造単位の割合は、例えば0.1モル%以上であってよく、1モル%以上であってもよい。
(PVAの製造方法)
本発明の分散剤に含まれるPVAの製造方法は特に限定されないが、例えば、変性剤として炭素数5以上のアルデヒドを添加してビニルエステル単量体を重合し、得られたビニルエステル系重合体をけん化する方法が挙げられる。
前記アルデヒドとしては、アルキルアルデヒドが好ましく、例えば、1-ペンタナール、1-ヘキサナール、1-へプタナール、1-オクタナール、1-ノナナール、1-デカナール、1-ウンデカナール等の直鎖アルキルアルデヒド;7-オクテナール等の直鎖アルケニルアルデヒド;2-メチルブタナール、2-エチルヘキサナール、2-エチルブタナール、2-メチルウンデカナール等の分岐アルキルアルデヒドが挙げられる。前記アルデヒドは1種を単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。前記アルデヒドの存在下でビニルエステル単量体を重合することで、前記アルデヒドが連鎖移動剤として作用し、式(1)で表される構造を有するPVAを容易に製造できる。前記アルデヒドの使用量は特に制限されないが、例えば、ビニルエステル単量体100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下が好ましい。
前記アルデヒドは、通常、連鎖移動剤として働く。ビニルエステル単量体を重合する際は、前記アルデヒド以外の他の連鎖移動剤を併用してもよい。他の連鎖移動剤としては、例えば前記アルデヒド以外のアルデヒド(例えば、アセトアルデヒド、1-プロパナール、1-ブタナール);アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサノン、シクロヘキサノン等のケトン;2-ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン;3-メルカプトプロピオン酸、チオ酢酸等のチオカルボン酸;トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられる。連鎖移動剤の添加量は、この連鎖移動剤の連鎖移動定数、達成すべきPVAの重合度等に応じて決定すればよい。
ビニルエステル単量体の重合方法としては、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等が挙げられ、工業的観点から、溶液重合法、乳化重合法又は分散重合法が好ましい。ビニルエステル単量体の重合は、回分法、半回分法及び連続法のいずれの重合方式であってもよい。
ビニルエステル単量体としては、例えば酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でも、工業的観点から酢酸ビニルが好ましい。前記PVAは、1種類のビニルエステル単量体の単独重合体であってもよく、異なるビニルエステル単量体の共重合体であってもよい。
重合に使用される重合開始剤は、公知の重合開始剤、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤から重合方法に応じて選択される。アゾ系開始剤は、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。過酸化物系開始剤は、例えば、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジエトキシエチルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート系化合物;t-ブチルペルオキシネオデカネート、α-クミルペルオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド;2,4,4-トリメチルペンチル-2-ペルオキシフェノキシアセテート等が挙げられる。過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等を前記開始剤に組み合わせて重合開始剤としてもよい。レドックス系開始剤は、例えば前記の過酸化物系開始剤或いは酸化剤(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等)と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L-アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤とを組み合わせた重合開始剤である。重合開始剤の使用量は、重合触媒により異なるために一概には決められないが、重合速度に応じて選択される。
前記PVAは、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ビニルエステル単量体と共重合可能な他の不飽和単量体とを共重合させたビニルエステル共重合体をけん化したものであってもよい。他の単量体は、前記した他の構造単位を与える単量体が例示される。
前記PVAは、水溶性を向上させる目的で、ビニルエステル単量体と共に、不飽和カルボン酸類、不飽和ジカルボン酸類、これらの塩、又はこれらのモノ若しくはジアルキルエステル等の不飽和単量体を共重合させたビニルエステル系共重合体をけん化して製造してもよい。連鎖移動剤としてアルキルチオールを使用して製造したPVAは水溶性が低く、前記不飽和カルボン酸類等を共重合させたり、水溶液を調整する際にメタノール等の有機溶剤を使用したりといった措置が必要となることが多い。一方で、式(1)で表される構造を有し、式(2)を満たすPVAは、アルキルチオールと同じ炭素数の炭化水素鎖を有する場合であっても比較的水溶性が高い。そのため、必ずしも前記の措置をとる必要がなく、係る点からも本発明は優れている。
ビニルエステル重合体のけん化反応には、公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒、又はp-トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いた加アルコール分解ないし加水分解反応を適用できる。
けん化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素などが挙げられ、これらは1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。中でも、メタノール又はメタノールと酢酸メチルとの混合溶液を溶媒として用い、塩基性触媒である水酸化ナトリウムの存在下にけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。
また、けん化工程以降の工程として、PVAを含む樹脂固形物を洗浄する工程、PVAを含む樹脂固形物を乾燥する工程、PVAを含む樹脂固形物を熱処理する工程等をさらに備えていてもよい。熱処理を行う場合の処理温度としては、例えば100℃以上150℃以下とすることができる。また、処理時間としては、例えば10分以上3時間以下とすることができる。
(他の成分、用途等)
本発明の分散剤は、前記PVAを含み、さらに他の成分を含んでいてもよい。本発明の分散剤の不揮発分中の前記PVAの含有量の下限としては、30質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、70質量%、90質量%又は99質量%がさらに好ましい場合もある。本発明の分散剤の不揮発分中の前記PVAの含有量の上限は100質量%であってよい。本発明の分散剤に含まれていてよい前記PVA以外の不揮発分は、前記PVA以外のPVA、PVA以外の樹脂、界面活性剤、可塑剤等の添加剤、製造時に用いられた各化合物等が挙げられる。本発明の分散剤の不揮発分中の全てのPVAの含有量の下限としては、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%、90質量%又は99質量%がさらに好ましい場合もある。本発明の分散剤の不揮発分中の全てのPVAの含有量の上限は100質量%であってよい。また、本発明の分散剤における揮発分の含有量は、通常20質量%以下であり、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。本発明の分散剤に含まれ得る揮発分としては、アルコール、水等が挙げられる。すなわち、本発明の分散剤は、実質的に本発明のPVAからなるものであってよい。本発明の分散剤の形状は特に限定されないが、通常、粉体である。
本発明の分散剤は、一次分散剤(主分散剤又は分散安定剤ともいう)及び二次分散剤(分散助剤ともいう)のいずれであってもよい。一次分散剤と共に二次分散剤を用いることで、分散性をより高めることもできる。
本発明の分散剤は、ビニル化合物の懸濁重合用分散剤として好適である。本発明の分散剤を用いることで、重合安定性が高まり、平均粒径が小さく且つ粗大粒子の少ない重合体粒子を効率的に得ることができる。また、本発明の分散剤を用いた懸濁重合により得られる重合体粒子は、可塑剤吸収性も良好となる傾向にある。特に本発明の分散剤は、モノマーに対して例えば1,500ppm又は1,000ppm以下といった、使用量が少ない場合にも、平均粒子径が小さくかつ粗大粒子が少なく、可塑剤吸収性が良好な重合体粒子を得ることができる。
本発明の分散剤は、必要に応じて、懸濁重合に通常使用される防腐剤、防黴剤、ブロッキング防止剤、消泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤の含有量は通常、1.0質量%以下である。添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
<ビニル系重合体の製造方法>
本発明のビニル重合体の製造方法は、本発明の分散剤の存在下でビニル系化合物を懸濁重合する工程を備える。ビニル系単量体としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル単量体;(メタ)アクリル酸これらのエステル及び塩;マレイン酸、フマル酸、これらのエステル及び無水物;スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。これらのうち、塩化ビニルを単独で、又は塩化ビニルと共重合することが可能な単量体と共に懸濁重合することが好適である。塩化ビニルと共重合することができる単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレンなどのα-オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類;アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。
前記懸濁重合に使用する媒体としては水性媒体が好ましい。当該水性媒体としては、水、又は水及び有機溶剤を含有するものが挙げられる。前記水性媒体中の水の含有量は、90質量%以上が好ましい。
前記懸濁重合する際の水性媒体とビニル系化合物の質量比(水性媒体/ビニル系化合物)は通常0.1~10であり、0.5~5が好ましく、0.9~2がさらに好ましい。
前記懸濁重合における本発明の分散剤の使用量は特に制限はないが、ビニル系化合物に対して、質量基準で100ppm以上50,000ppm以下が好ましく、200ppm以上20,000ppm以下がより好ましく、10,000ppm以下、5,000ppm以下、2,000ppm以下又は1,500ppm以下がさらに好ましい場合もある。
本発明の分散剤は単独で使用してもよいが、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテル;ポリビニルアルコール、ゼラチンなどの水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロックコポリマーなどの油溶性乳化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤等と共に使用することもできる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ビニル系化合物の懸濁重合には、従来から塩化ビニル単量体等の重合に使用されている、油溶性又は水溶性の重合開始剤を用いることができる。油溶性の重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジエトキシエチルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート化合物;t-ブチルペルオキシネオデカネート、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ヘキシルペルオキシピバレート、α-クミルペルオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-ペルオキシフェノキシアセテート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の過酸化物;アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。水溶性の重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンハイドロペルオキシド等が挙げられる。これらの油溶性或いは水溶性の重合開始剤は1種を単独で、又は2種以上を組合せて用いることができる。
ビニル系化合物の懸濁重合に際し、必要に応じて、重合反応系にその他の各種添加剤を加えることができる。添加剤としては、例えば、アルデヒド類、ハロゲン化炭化水素類、メルカプタン類などの重合調節剤、フェノール化合物、硫黄化合物、N-オキシド化合物などの重合禁止剤などが挙げられる。また、pH調整剤、架橋剤なども任意に加えることができる。
ビニル系化合物の懸濁重合に際し、重合温度には特に制限はなく、20℃程度の低い温度であっても、90℃を超える高い温度であってもよい。また、重合反応系の除熱効率を高めるために、リフラックスコンデンサー付の重合器を用いることも好ましい実施形態の一つである。
本発明のビニル系重合体の製造方法において、一次分散剤(例えば本発明の分散剤)及び二次分散剤(例えば本発明の分散剤)の添加量の質量比(一次分散剤/二次分散剤)は、用いられる分散剤の種類等によって異なるが、例えば95/5~20/80の範囲が好ましく、90/10~30/70の範囲がより好ましい。一次分散剤と二次分散剤とは、重合の初期に一括して添加してもよいし、重合の途中で分割して添加してもよい。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、「部」、「%」、「ppm」とあるのは、特に断りのない限り、質量基準を意味する。
[PVAの粘度平均重合度]
PVAの粘度平均重合度はJIS K 6726:1994に準じて測定した。具体的には、PVAのけん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまで再けん化し、得られたPVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](リットル/g)を用いて下記式(11)により粘度平均重合度を求めた。
粘度平均重合度=([η]×10/8.29)(1/0.62) (11)
[PVAのけん化度]
PVAのけん化度は、JIS K 6726:1994に記載の方法により求めた。
[PVA水溶液の吸光度]
0.1質量%のPVA水溶液を調製し、(株)島津製作所製吸光光度計「UV2450」を用いて320nmの吸光度(光路長10mm)を測定した。
[HSP距離(合成例1~11、17~19)]
下記の方法により、HSP距離[Ra,1]((J/cm1/2)及びHSP距離[Ra,2]((J/cm1/2)を算出した。
まず、PVAをけん化度99.5モル%以上まで再けん化後、メタノールで洗浄した。得られたPVAの1質量%DO溶液(内部標準として0.1質量%トリメチルシリルプロパン酸を添加)をサンプルとして用いて、H-NMR測定を行った(400MHz、80℃、積算256回)。変性剤として直鎖アルキルアルデヒドを用いた場合、前記式(1)で表される構造として、下記式(4)で表される構造が形成される。そして、式(4)中のmは、H-NMR測定の結果から、下記式(13)により求められる。
-(C=O)-(CH-CH (4)
m={(ピーク(a)の積分値)×3}/{(ピーク(b)の積分値)×2}+2 (13)
式(13)中、ピーク(a)は、1.22~1.38ppmの間に存在するアルキル鎖のメチレンに由来するピークを表し、ピーク(b)は、0.80~0.92ppmの間に存在するアルキル鎖のメチルに由来するピークを表す。ピーク(b)が存在せず、0.94~1.08ppm付近にピークが存在する場合はm=1とし、ピーク(a)もピーク(b)も存在しない場合はm=0とした。
H-NMRスペクトルから得られた構造をもとに、前記式(5)~(10)を用いて、HSP距離[Ra,1]及びHSP距離[Ra,2]を算出した。
[HSP距離(合成例12、13:参考値)]
後述するように、合成例12においては1-ヘキセンを、合成例13においては1-デセンを変性剤として用いた。このとき得られるPVAは、側鎖にアルキル基を有する。アルキル基と塩化ビニル又は水とのHSP距離[R]を参考値として算出した。具体的には、下記の方法によりRを算出した。
前記と同様の方法でH-NMR測定を行った。変性剤としてα-オレフィンを用いた場合は、PVAに導入された変性剤に由来する下記式(14)で表される構造中のnは、下記式(15)により求められる。
-(CH-CH (14)
n={(ピーク(c)の積分値/2)/{ピーク(d)の積分値}/3} (15)
式(15)中、ピーク(c)は、1.1~1.3ppmの間に存在するピークを表し、ピーク(d)は、0.80~0.92ppmの間に存在するピークを表す。
続いて、HSP距離を算出した。式(14)で表される構造のモル体積は、下記式(16)により算出でき、HSP値は、下記式(17)~(19)で算出できる。
V=33.5+n×16.1 (16)
δd=(420+n×270)/V (17)
δp=0 (18)
δh=0 (19)
続いて、Rを下記式(20)を用いて計算した。塩化ビニルモノマーのHSP値は、(δD、δP、δH)=(15.4、8.1、2.4)とし、水のHSP値は(δD、δP、δH)=(15.5、16.0、42.4)とした。
={4(δD-δd)+(δP-δp)+(δH-δh)1/2 (20)
[HSP距離(合成例14、15:参考値)]
後述するように、合成例14においては1-オクタンチオールを、合成例15においては1-ヘキサンチオールを変性剤として用いた。このとき得られるPVAは、末端にアルキルチオール基を有する。アルキルチオール基と塩化ビニル又は水とのHSP距離を、山本秀樹著「SP値:基礎・応用と計算方法」(2005年発行、情報機構)及びJ. Brandrup著「POLYMER HANDBOOK(FOURTH EDITION)」(2003年発行、Wiley)に記載の方法に基づき、上述した方法と同様にして、参考値として算出した。
[変性率]
PVAの全構造単位に対する変性剤により変性された単位の含有率(モル%)を「変性率」と称する。なお、変性剤により変性された単位が式(1)で表される構造であるとき、変性率は、ビニルアルコール系重合体の全構造単位に対する式(1)で表される構造の含有率[X](モル%)と同義である。
H-NMR測定を行い、変性率(モル%)を算出した。PVAをけん化度99.5モル%以上まで再けん化後、メタノールで洗浄した。得られたPVAの1質量%DO溶液(内部標準として0.1質量%トリメチルシリルプロパン酸を添加)をサンプルとして用いて、H-NMR測定を行った(400MHz、80℃、積算256回)。PVAの主鎖のメチン基に由来するピークの積分値[M]、変性剤に由来する構造に含まれるメチル基に由来するピークの積分値[O]及び変性剤1分子当たりのメチル基の数qを用いて、下記式(21)により、変性率(モル%)を求めた。なお、PVAの主鎖のメチン基に由来するピークは3.8~4.0ppmに存在する。また、変性剤に由来する構造に含まれるメチル基に由来するピークは、変性剤が例えば炭素数4以上の直鎖アルキルアルデヒドの場合、0.80~0.92ppmに存在する。
変性率(モル%)={([O]/(3×q))/[M]}×100 (21)
[合成例1](PVA-1の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管及び重合開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル1000質量部及び1-オクタナール21.5質量部を仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.1質量部を添加し重合を開始した。60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の固形分濃度は51.2質量%、重合率50%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の単量体の除去を行い、ビニルエステル系重合体のメタノール溶液(濃度34.5質量%)を得た。次に、このメタノール溶液にさらにメタノールを加えて調製したビニルエステル系重合体のメタノール溶液174.6質量部(溶液中の前記重合体60質量部)に、水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液3.7質量部、酢酸メチル20質量部及びイオン交換水2.0質量部を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液の前記重合体濃度30質量%、前記重合体中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.013、けん化溶液の含水率1質量%)。水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加後、約12分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕した。さらに40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル160質量部とメタノール40質量部を加えて、40℃で30分間放置洗浄した。この洗浄操作を2回繰り返した後、脱液して得られた白色固体を40℃で真空乾燥を16時間行い、PVA(PVA-1)を得た。PVA-1の物性を表2に示す。
PVA―1をソックスレー抽出器を用いて酢酸メチルで十分に洗浄し40℃で16時間真空乾燥した。洗浄後PVA-1の1質量%DMSO溶液(内部標準として0.05容積%テトラメチルシランを添加)をサンプルとして用いて、H-NMR測定を行った(400MHz、80℃、積算256回)。この結果を元にPVA-1における全構造単位に対するホルミル基の含有率を求めたところ、3.0ミリモル%以下であった。
[合成例2~8、10~13、17、19](PVA-2~8、10~13、17、19の製造)
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用する変性剤の種類や添加量等の重合条件;けん化時におけるビニルエステル重合体の濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように示すように変更したこと以外は、合成例1と同様の方法により各PVA(PVA-2~8、10~13、17、19)を製造した。なお、PVA-8は、PVA-8AとPVA-8Bの各ポリ酢酸ビニルメタノール溶液を6:4で混合した後、けん化を行った。PVA-2~8、10~13、17、19の物性を表2に示す。
[合成例14の製造](PVA-14)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、連鎖移動剤滴下口及び重合開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル1200質量部及び1-オクタンチオール0.18質量部を仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また1-オクタンチオールのメタノール溶液(濃度1.8質量%)を窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.75質量部を添加し重合を開始した。前記反応器に、前記1-オクタンチオールのメタノール溶液を滴下して重合溶液中の単量体組成比を一定に保ちながら、60℃で2時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の固形分濃度は39.4質量%、重合率は40%であった。また、添加した1-オクタンチオールは、当初仕込み量とあわせて2.05質量部であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の単量体の除去を行い、ビニルエステル系重合体のメタノール溶液(濃度38.2質量%)を得た。次に、このメタノール溶液にさらにメタノールを加えて調製したビニルエステル系重合体のメタノール溶液175.8質量部(溶液中の前記重合体60質量部)に、水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液2.5質量部、酢酸メチル20質量部及びイオン交換水2.0質量部を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液の前記重合体濃度25質量%、前記重合体中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.0075、けん化溶液の含水率1質量%)。水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加後約10分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、さらに40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル160質量部とメタノール40質量部を加えて、40℃で30分間放置洗浄した。この洗浄操作を2回繰り返した後、脱液して得られた白色固体を40℃で真空乾燥を16時間行い、PVA(PVA-14)を得た。PVA-14の物性を表2に示す。
[合成例15の製造](PVA-15)
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、変性剤の種類や添加量等の重合条件;けん化時におけるビニルエステル重合体の濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように示すように変更したこと以外は、合成例14と同様の方法によりPVA(PVA-15)を製造した。PVA-15の物性を表2に示す。
[合成例16の製造](PVA-16)
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、変性剤を使用しないこと等の重合条件;けん化時におけるビニルエステル重合体の濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように示すように変更したこと以外は、合成例1と同様の方法によりPVA(PVA-16)を製造した。PVA-16の物性を表2に示す。
[合成例9、18の製造](PVA-9、18)
合成例9では、PVA-1を130℃で1時間熱処理を行い、PVA-9を合成した。また、合成例18では、PVA-17を130℃で1時間熱処理を行い、PVA-18を合成した。PVA-9、18の物性を表2に示す。
Figure 0007321394000003
Figure 0007321394000004
[実施例1]
得られたPVA-1を懸濁重合用分散剤として用いて、下記の方法で塩化ビニルの懸濁重合を行った。次いで、得られた塩化ビニル重合体粒子について、平均粒子径、粗大粒子量及び可塑剤吸収性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
(塩化ビニルの懸濁重合)
前記で得られたビニルアルコール系共重合体を、塩化ビニルに対して1000ppmに相当する量となるように脱イオン水に溶解させ、分散剤水溶液を調製した。このようにして得られた分散剤水溶液1150gを、容量5Lのオートクレーブに仕込んだ。次いでオートクレーブにクミルパーオキシネオデカノエートの70%トルエン溶液0.65g及びt-ブチルパーオキシネオデカノエートの70%トルエン溶液1.05gを仕込んだ。オートクレーブ内の圧力が0.0067MPaになるまで脱気して酸素を除いた。その後、塩化ビニル800gを仕込み、オートクレーブ内の内容物を57℃に昇温して、撹拌下に重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は0.83MPaであった。重合を開始してから3.5時間が経過し、オートクレーブ内の圧力が0.70MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルを除去した。その後、重合スラリーを取り出し、65℃にて17時間乾燥を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。
(塩化ビニル重合体粒子の評価)
(1)塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径
タイラーメッシュ基準の金網を使用して、乾式篩分析により粒度分布を測定し、その結果をロジン・ラムラー(Rosin-Rammler)分布式にプロットして平均粒子径(dp50;メジアン径)を算出した。
(2)粗大粒子量
目開き250μmの篩(JIS標準篩のメッシュ換算では、60メッシュ)を通過しなかった塩化ビニル重合体粒子の含有量を質量%で表示した。数字が小さいほど粗大粒子が少なく、粒度分布がシャープであり、重合安定性に優れていることを示している。
(3)可塑剤吸収性(CPA)
脱脂綿を0.02g詰めた容量5mLのシリンジの質量を量り(A(g)とする)、そこに塩化ビニル重合体粒子0.5gを入れ質量を量り(B(g)とする)、そこにジオクチルフタレート(DOP)1gを入れ15分静置後、3000rpm、40分遠心分離して質量を量った(C(g)とする)。そして、下記式(22)により可塑剤吸収性(%)を求めた。可塑剤吸収性が高いほど、加工が容易で主にシートへの加工時にブツ等の外観に生じる欠点を生じにくいことを示す。なお、重合が不安定で平均粒子径や粗大粒子量が多い場合、可塑剤吸収性が高くなるが、これは重合体粒子の空隙率によるものではない。本評価において、平均粒子径が180μmより小さいときの可塑剤吸収性が27%以上のとき可塑剤吸収性は良好とし、29%以上のとき可塑剤吸収性がより良好と判断した。
可塑剤吸収性(%)=100×[{(C-A)/(B-A)}-1] (22)
[実施例2~10、比較例1~9]
懸濁重合用分散剤として用いたPVAの種類を表3に記載の通り変更したこと以外は、実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行った。結果を表3に示す。
Figure 0007321394000005
実施例1~10の懸濁重合用分散剤(PVA-1~10)を用いた場合、いずれも得られた塩化ビニル粒子の平均粒子径が小さく且つ、粗大粒子が少なく、良好な重合安定性を有していた。また、得られた塩化ビニル粒子は、いずれも良好な可塑剤吸収性を有するものであった。
なお、実施例の中でも、加熱処理したPVA-9を用いた実施例9の可塑剤吸収性はそれほど高くないが、分散剤の使用量を低減することで可塑剤吸収性を改善できる。PVA-9の重合安定性は極めて高いため、使用量を低減しても平均粒子径を十分に小さく保つことができる。また、PVAに対する加熱処理の有無のみ異なる実施例1と実施例9とを比較すると、加熱処理したPVA-9を用いた実施例9は、重合安定性が顕著に向上していることがわかる。一方、同様にPVAに対する加熱処理の有無のみ異なる比較例7と比較例8とを比較すると、加熱処理により改善効果は小さい。式(1)で表される構造を有し且つ式(2)を満たすPVAに対して加熱処理をすることで、重合安定性が顕著に向上することが示唆される。
また、実施例の中でも、[X]×10/[Ra,1(変性率とHSP距離とのパラメータA)及び[X]×10/[Ra,2(変性率とHSP距離とのパラメータB)が比較的小さいPVA-10を用いた実施例10は、重合安定性がやや低い結果となった。これらのパラメータが適切に調整されたPVAを用いることで、重合安定性がより高まることがわかる。
一方、比較例1~5、7~9においては、得られた塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径が大きいものとなった。これは、用いたPVA-11~PVA-15、PVA-17及びPVA-18においては、変性率とHSP距離とのパラメータAの値が0.4未満であるため、PVAの変性部位と塩化ビニルモノマーとの相溶性が低く、塩化ビニルモノマーと水の界面に存在するPVA量が少なくなったことによると推測される。また、PVA-19は式(1)中のRの炭素数が3であり、疎水性が低いために、PVAの変性部位と塩化ビニルモノマーとの相溶性が低く、塩化ビニルモノマーと水の界面に存在するPVA量が少なくなったことによると推測される。さらに、非変性のPVA-16を分散剤として用いた比較例6では、塩化ビニルがブロック化して重合を行うことができなかったために、塩化ビニル重合体粒子を得ることはできなかった。
本発明の懸濁重合用分散剤は、ビニル系化合物の懸濁重合の際の分散剤等に用いることができる。

Claims (5)

  1. 下記式(1)で表される構造を有し、下記式(2)を満たし、けん化度が20モル%以上99.5モル%以下であるビニルアルコール系重合体を含有する、懸濁重合用分散剤。
    Figure 0007321394000006
    0.4≦[X]×10/[Ra,1≦3.0 (2)
    前記式(1)中、Rは炭素数4以上12以下の炭化水素基である。
    前記式(2)中、[X]は前記ビニルアルコール系重合体の全構造単位に対する前記式(1)で表される構造の含有率(モル%)であり、[Ra,1]は前記式(1)で表される構造と塩化ビニルとのHSP距離((J/cm1/2)である。
  2. 前記ビニルアルコール系重合体のけん化度が60モル%以上99.5モル%以下である、請求項1に記載の懸濁重合用分散剤。
  3. 前記ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度が150以上5,000以下である、請求項1又は2に記載の懸濁重合用分散剤。
  4. 前記ビニルアルコール系重合体が下記式(3)を満たす、請求項1~3のいずれかに記載の懸濁重合用分散剤。
    3.5≦[X]×10/[Ra,2≦25 (3)
    前記式(3)中、[X]の定義は前記式(2)と同じであり、[Ra,2]は前記式(1)で表される構造と水とのHSP距離((J/cm1/2)である。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の懸濁重合用分散剤の存在下で、ビニル系化合物の懸濁重合を行う工程を備える、ビニル系重合体の製造方法。
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