JP4615153B2 - ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、少量の使用で重合槽内壁に付着する重合体スケールが少ないなどの効果を奏して懸濁重合安定性に顕著に優れ、さらにビニル系化合物の懸濁重合によって、粒径分布がシャープでかつ多孔性であり、かさ比重が大きいビニル系重合体粒子を製造することができるビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル系樹脂などのビニル系重合体の製造は、工業的には、水性媒体中で分散安定剤の存在下で塩化ビニルなどのビニル系化合物を分散させ、油溶性開始剤を用いて重合を行う懸濁重合により広く行われている。一般に、ビニル系重合体の品質を支配する因子としては、重合率、水−モノマー比、重合温度、開始剤の種類および量、重合槽の型式、攪拌速度あるいは分散安定剤の種類などが挙げられるが、この中でも分散安定剤の種類による影響が非常に大きい。
【0003】
ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤に要求される性能としては、(1)少量の使用で懸濁重合安定性に顕著に優れ、得られるビニル系重合体粒子の粒径分布をできるだけシャープにする働きがあること、(2)可塑剤の吸収速度を大きくして加工性を容易にし、重合体粒子中に残存する塩化ビニルなどのモノマーの除去を容易にし、かつ成形品中のフィッシュアイなどの生成を防止するために、重合体粒子をできるだけ均一にし、さらに多孔性にする働きがあること、(3)かさ比重の大きい重合体粒子を形成する働きがあること、(4)重合槽などにスケールの付着がないことなどが挙げられる。
従来、ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体のほか、部分けん化ポリビニルアルコールなどが単独でまたは適当に組み合わされて使用されている。しかしながら、従来の分散安定剤は上記の要求性能を必ずしも十分には満たしていない。
【0004】
さらには、特開昭54−127490号公報、特開平1−95104号公報、特開平3−140303号公報、特開平6−80709号公報、特開平8−259609号公報などにおいて、エチレン単位を含有する変性ポリビニルアルコールからなるビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤が提案されている。特開昭54−127490号公報で提案されたエチレン変性ポリビニルアルコールからなる分散安定剤については、エチレン単位の含有量が大きい変性ポリビニルアルコールを用いた場合には、分散安定剤の水溶性が悪いために作業性が悪化したり、分散安定剤の溶解性を向上させるために水−有機溶媒系の媒体を使用しなければならず、有機溶媒を使用すると懸濁重合後の排水が環境に悪影響を与える要因となる、などの問題があった。特開平1−95104号公報および特開平3−140303号公報で提案された側鎖にイオン性基を有するエチレン変性ポリビニルアルコールからなる分散安定剤においては、水溶性は改善されるものの、塩化ビニルを懸濁重合するときに泡立ちやすく重合槽にスケールが付着しやすいという問題があった。特開平6−80709号公報で提案されたエチレン変性ポリビニルアルコールからなる分散安定剤は、比較的バランスのとれた塩化ビニル樹脂を与えるものの、その塩化ビニル樹脂のかさ比重は押出加工性の観点からは必ずしも十分に満足できるレベルには達していない。さらに、特開平8−259609号公報で提案されたエチレン変性ポリビニルアルコールとポリビニルアルコール系重合体とを併用する分散安定剤は、重合槽内の消泡効果に優れているために、塩化ビニルを懸濁重合する際に泡立ちにより重合槽にスケールが付着するといった問題は改善されるものの、得られる塩化ビニル樹脂のかさ比重や粒子径分布のシャープさは必ずしも十分に満足できるレベルには達していない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、少量の使用で懸濁重合安定性に顕著に優れ、さらにビニル系化合物の懸濁重合によって、粒径分布がシャープでかつ多孔性であり、かさ比重が大きいビニル系重合体粒子を製造することができるビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤を提供することを目的とする。さらに、本発明の他の目的は、取り扱い時の粉の飛散が少なく、また、成形機へのくい込み性がよいという特性を有するビニル系重合体粒子を製造することができるビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、エチレン単位の含有量が0.5〜20モル%、けん化度が60モル%以上90モル%未満、かつ重合度が600以上のビニルアルコール系重合体(A)、ならびにエチレン単位の含有量が0.5〜20モル%、けん化度が90モル%以上、かつ重合度が1000以上のビニルアルコール系重合体(B)からなるビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤が上記課題を達成するのに有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられるビニルアルコール系重合体(A)のエチレン単位の含有量は0.5〜20モル%であり、好ましくは0.5〜10モル%であり、より好ましくは1〜10モル%であり、さらに好ましくは1.5〜8モル%である。エチレン単位の含有量が0.5モル%未満の場合には、ビニル系化合物を懸濁重合する際に重合槽へのスケールの付着が多くなり、20モル%を越える場合には、ビニルアルコール系重合体の水溶性が低下して取り扱い性が悪化する。
ビニルアルコール系重合体(A)のけん化度は60モル%以上90モル%未満であり、好ましくは65モル%以上90モル%未満であり、さらに好ましくは70モル%以上90モル%未満である。けん化度が60モル%未満の場合には、ビニルアルコール系重合体の水溶性が低下して取り扱い性が悪化し、90モル%以上の場合には可塑剤吸収性能が低下する。
また、ビニルアルコール系重合体(A)の重合度は600以上であり、好ましくは600〜8000、さらに好ましくは650〜3500である。ビニルアルコール系重合体の重合度が600未満の場合には、ビニル系化合物を懸濁重合する際に重合安定性が低下する。
【0008】
本発明において用いられるビニルアルコール系重合体(B)のエチレン単位の含有量は0.5〜20モル%であり、好ましくは0.5〜10モル%であり、より好ましくは1〜10モル%、さらに好ましくは1.5〜8モル%である。エチレン単位の含有量が0.5モル%未満の場合には、ビニル系化合物を懸濁重合する際に重合槽へのスケールの付着が多くなり、20モル%を越える場合には、ビニルアルコール系重合体の水溶性が低下して取り扱い性が悪化する。
ビニルアルコール系重合体(B)のけん化度は90モル%以上であり、好ましくは91モル%以上であり、さらに好ましくは92モル%以上である。けん化度が90モル%未満の場合にはかさ比重の高い樹脂を得ることができない。
ビニルアルコール系重合体(B)の重合度は1000以上であり、好ましくは1000〜8000、さらに好ましくは1000〜3500である。重合度が1000未満の場合にはかさ比重の高い樹脂を得ることができない。
【0009】
また、ビニルアルコール系重合体(A)とビニルアルコール系重合体(B)は、そのけん化度の差が5モル%以上および/またはその重合度の差が200以上であることが好ましく、10モル%以上および/またはその重合度の差が200以上であることがさらに好ましい。
【0010】
本発明の懸濁重合用分散安定剤において、ビニルアルコール系重合体(A)およびビニルアルコール系重合体(B)の使用比率について厳密な意味での制限はとくにないが、通常(A)成分/(B)成分の重量比で95/5〜20/80であり、好ましくは90/10〜20/80、より好ましくは80/20〜30/70、さらに好ましくは70/30〜40/60である。(A)成分/(B)成分の重量比が95/5を越える場合にはかさ比重の高い樹脂を得ることができないおそれがあり、20/80未満の場合には可塑剤吸収性能が悪化する傾向がある。
【0011】
本発明において、懸濁重合用分散安定剤の使用量について特に制限はないが、ビニル系化合物100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.02〜2重量部がより好ましく、0.02〜1重量部がさらに好ましい。0.01重量部未満の場合には、ビニル系化合物を懸濁重合する際に重合安定性が低下する傾向があり、5重量部を越える場合には、懸濁重合後の廃液が白濁し、化学的酸素要求量(COD)が高くなる傾向がみられる。
【0012】
本発明において用いられるビニルアルコール系重合体(A)およびビニルアルコール系重合体(B)は、アンモニウム基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基などのイオン性基を導入することにより水溶性を高めることができ、あるいはノニオン基または(長鎖)アルキル基などを導入してもよい。ビニルアルコール系重合体(A)およびビニルアルコール系重合体(B)は、5〜100℃、好ましくは10〜90℃の水に対して水溶性であることが好ましい。
ここで、イオン性基、ノニオン基または(長鎖)アルキル基などを導入されたビニルアルコール系重合体のけん化度はビニルエステル基とビニルアルコール基の比から求められ、導入されたイオン性基、ノニオン基または(長鎖)アルキル基などのけん化度は含まれない。
【0013】
本発明において、ビニルアルコール系重合体(A)およびビニルアルコール系重合体(B)の製造方法について特に制限はなく、従来公知の方法、例えば特開平8−259609号公報に記載されている方法にしたがって、ビニルエステル系単量体、エチレンおよび必要に応じてイオン性基を有する単量体を共重合し、得られた共重合体を常法によりけん化したり、あるいはチオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下でビニルエステル系単量体とエチレンを共重合し、それをけん化する末端変性法によっても得ることができる。
【0014】
ビニルエステル系単量体とエチレンを共重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来公知の方法が適用できる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などが適宜選ばれる。けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解などが適用でき、この中でもメタノールを溶剤としNaOH触媒を用いるけん化反応が簡便であり最も好ましい。
【0015】
ここで、ビニルエステル系単量体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられるが、なかでも酢酸ビニルが最も好ましい。
【0016】
本発明において、ビニルアルコール系重合体に必要に応じてイオン性基を導入するために用いられるイオン性基を有する単量体としては、特に制限はないが、例えば、エチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スルホアルキルマレート、スルホアルキル(メタ)アクリレート、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸含有単量体およびその塩;N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノブチル)(メタ)アクリルアミド、N−ビニルイミダゾール、2−メチル−N−ビニルイミダゾール、ビニル−3−ジメチルアミノプロピルエーテル、ビニル−2−ジメチルアミノエチルエーテル、アリル−3−ジメチルアミノプロピルエーテル、アリルジメチルアミン、メタアリルジメチルアミンなどのアミノ基またはアンモニウム基含有単量体;クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有単量体などが挙げられる。
【0017】
本発明において、ビニルアルコール系重合体(A)およびビニルアルコール系重合体(B)は、本発明の主旨を損なわない範囲で他の単量体単位を含有しても差し支えない。使用しうるコモノマーとして、例えば、プロピレン、n−ブテン、イソブチレンなどのα−オレフィン;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどがある。
【0018】
本発明において、ビニルアルコール系重合体(A)およびビニルアルコール系重合体(B)は、通常、それぞれ別々に、もしくは混合して、水性媒体に溶解または分散され、ビニル系化合物の懸濁重合に供される。
【0019】
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、ビニルアルコール系重合体(A)として熱処理されたものを用いることで、懸濁重合時の安定性がさらに向上する。熱処理の条件は特に制限されないが、通常、酸素、空気または窒素雰囲気下、100〜200℃の温度で0.5〜20時間加熱することが好ましい。熱処理時の温度が100℃未満では熱処理による懸濁重合時の安定性向上効果が十分発現しなくなる場合があり、200℃を越えると懸濁重合用分散安定剤が着色するおそれがある。
その際、熱処理による懸濁重合用分散安定剤の着色を抑制するために、熱処理前にビニルアルコール系重合体(A)をメタノール等の溶媒によって洗浄することが好ましい。
【0020】
本発明の懸濁重合用分散安定剤において、ビニルアルコール系重合体(A)として熱処理されたものを用いる場合、少量の使用で懸濁重合安定性に顕著に優れ、また懸濁重合で得られた重合体を加工する際に着色を抑制することができることから、ビニルアルコール系重合体(A)は、25℃におけるpKaが3.5〜5.5の酸および/またはその金属塩(C)を含有していることが好ましい。使用しうる酸の種類についてとくに制限はなく、その具体例として、酢酸(pKa4.76)、プロピオン酸(pKa4.87)、酪酸(pKa4.63)、オクタン酸(pKa4.89)、アジピン酸(pKa5.03)、安息香酸(pKa4.00)、ギ酸(pKa3.55)、吉草酸(pKa4.63)、ヘプタン酸(pKa4.66)、乳酸(pKa3.66)、フェニル酢酸(pKa4.10)、イソ酪酸(pKa4.63)、シクロヘキサンカルボン酸(pKa4.70)などを挙げることができる。奏される効果の点でとくに好ましく用いることができる酸は、酢酸、プロピオン酸、および乳酸である。
また、上記の酸の金属塩としては特に制限はないが、通常、上記の酸とナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属からなる金属塩が用いられ、とりわけ酢酸ナトリウムが好適に用いられる。
【0021】
上記の酸および/またはその金属塩(C)の含有量は、ビニルアルコール系重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.05〜2重量部、より好ましくは0.1〜1.7重量部、さらに好ましくは0.2〜1.5重量部の割合である。ビニルアルコール系重合体(A)に対する酸および/またはその金属塩(C)の含有量が0.05重量部未満の場合、熱処理による懸濁重合時の安定性向上効果が低下し、2重量部を越えると、熱処理時に懸濁重合用分散安定剤が着色したり、懸濁重合で得られた重合体を加工する際に重合体が着色するため、好ましくない。
【0022】
次に、本発明の懸濁重合用分散安定剤を用いたビニル系化合物の懸濁重合方法について説明する。
【0023】
本発明の懸濁重合用分散安定剤を用いてビニル系化合物を水性媒体中で懸濁重合するに際し、水性媒体の温度には特に制限はなく、20℃程度の冷水はもとより、90℃以上の温水でも好適に用いられる。この水性媒体は、純粋な水のほか、各種の添加成分を含有する水溶液または他の有機溶剤を含む水性媒体からなることができる。水性媒体を重合反応系に仕込む際に、その供給量は重合反応系を充分に加熱できる量であればよい。また、除熱効率を高めるためにリフラックスコンデンサー付重合器も好適に用いられる。
【0024】
本発明の懸濁重合用分散安定剤は単独で使用してもよいが、ビニル系化合物を水性媒体中で懸濁重合する際に通常使用されるポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテル、ゼラチンなどの水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロックコポリマーなどの油溶性乳化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤などを併用してもよい。その添加量については特に制限はないが、ビニル系化合物100重量部あたり0.01〜1.0重量部が好ましい。
【0025】
その他の各種添加剤も必要に応じて加えることができる。添加剤としては、例えば、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、メルカプタン類などの重合調節剤、フェノール化合物、イオウ化合物、N−オキシド化合物などの重合禁止剤などが挙げられる。また、pH調整剤、スケール防止剤、架橋剤などを加えることも任意であり、上記の添加剤を複数併用しても差し支えない。一方、重合開始剤としても、塩化ビニルなどのビニル系化合物の重合に従来使用されているものを用いることができ、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α―クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネートなどのパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4―トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどの過酸化物;2,2’―アゾビスイソブチロニトリル、2,2’―アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’―アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物などが挙げられ、さらにはこれらに過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明の懸濁重合用分散安定剤を適用することができるビニル系化合物としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、無水マレイン酸、アクリロニトリル、イタコン酸、スチレンなどのほか、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン、プロピレン、イソブテン、イソプレンなどのα−オレフィン類を挙げることができる。これらのビニル系化合物のうちでも代表的なものは塩化ビニルであり、塩化ビニルは単独で、あるいは塩化ビニルを主体としこれに他の単量体を混合(塩化ビニル50重量%以上)して使用することができる。この塩化ビニルと共重合されるコモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類、無水マレイン酸、アクリロニトリル、イタコン酸、スチレン、塩化ビニリデン、ビニルエーテルなどが例示される。
【0027】
本発明の懸濁重合用分散安定剤を用いてビニル系化合物を懸濁重合するに当たって、各成分の仕込み割合、重合温度などは、従来塩化ビニルなどのビニル系化合物の懸濁重合で採用されている条件に準じて定めればよい。また、ビニル系化合物、重合開始剤、分散安定剤、水性媒体およびその他添加物の仕込み順序や比率について何ら制限はない。また、水性媒体として温水を用いると同時に、ビニル系化合物を重合器に仕込む前にビニル系化合物を加熱しておく方法も好適に用いられる。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例において「%」および「部」は特に断りのない限り、「重量%」および「重量部」を意味する。また、以下においてポリビニルアルコールをPVA、ポリ酢酸ビニルをPVAc、ビニルアルコール系重合体をPVA系重合体と略記することがある。
【0029】
(PVA系重合体の分析)
(1)重合度の測定
JIS K6726に従ってPVA系重合体の重合度を測定した。
(2)けん化度の測定
JIS K6726に従ってPVA系重合体のけん化度を測定した。
(3)酸金属塩の定量
(株)島津製作所製の細管式等速電気泳動分析装置(IP−3A)を用い、PVA系重合体中に含有される酢酸ナトリウムを電気泳動分析により定量した。
(4)熱処理時の着色性
PVA系重合体を空気雰囲気下で150℃、2時間熱処理した後、PVA系重合体の着色の程度を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:変化なし
△:微黄色に着色
×:赤茶色に着色
【0030】
(塩化ビニル系単量体の重合性および得られた塩化ビニル系重合体の特性評価)
(1)粒径分布
タイラーメッシュ基準の金網を使用して乾式篩分析により粒径分布を測定した。
(2)かさ比重
JIS K6721に従って塩化ビニル系重合体のかさ比重を測定した。
(3)CPA(Cold Plasticizer Absorption:冷可塑剤吸収)
ASTM−D3367−75に記載された方法より、23℃におけるジオクチルフタレートの吸収量を測定した。
(4)スケール付着性
重合体スラリーを重合槽外に取り出した後、重合槽内におけるスケール付着の状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:重合体スケールの付着がほとんどない
△:重合槽内壁に白色の重合体スケールが確認できる
×:重合槽内壁に白色の重合体スケールが多く確認できる
(5)熱処理時の着色性
塩化ビニル系重合体を空気雰囲気下で140℃、10分間熱処理した後、塩化ビニル系重合体の着色の程度を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:変化なし
△:微黄色に着色
×:黄色に着色
【0031】
実施例1
(PVA系重合体の製造)
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル38.1kg、メタノール21.8kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が0.10MPaとなるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の反応槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液32mLを注入し、重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を0.10MPaに、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を102mL/hrで連続添加した。5時間後に重合率が50%に達したところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニル単量体を除去し、PVAc系重合体のメタノール溶液を得た。30%に調整した該溶液にアルカリモル比(NaOHのモル数/PVAc系重合体中のビニルエステル単位のモル数)が0.006となるようにNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加してけん化した。けん化反応後、反応溶液中の固形分を粉砕してから遠心脱液を行い、60℃で減圧乾燥してPVA系重合体を得た。該PVA系重合体のけん化度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ85モル%であった。
【0032】
重合後に未反応酢酸ビニル単量体を除去して得られたPVAc系重合体のメタノール溶液をn−ヘキサンに投入してPVAc系重合体を沈殿させ、回収したPVAc系重合体をアセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、60℃で減圧乾燥してPVAc系重合体の精製物を得た。該PVAc系重合体のプロトンNMR測定から求めたエチレン単位の含有量は2モル%であった。また、上記のPVAc系重合体のメタノール溶液をアルカリモル比0.2でけん化した後、メタノールによるソックスレー抽出を3日間実施し、次いで乾燥してPVA系重合体の精製物を得た。該PVA系重合体の平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ1000であった。
上記操作により重合度1000、けん化度85モル%、エチレン含有量2モル%のPVA系重合体(A)を得た。以下、これをPVA系重合体(A−1)と称する。
【0033】
上記操作により得られる重合体は、その重合操作において酢酸ビニルなどの単量体に対するメタノールの重量比を変えることで該重合体の重合度を、反応槽内のエチレンの圧力を変えることで該重合体のエチレン含有量を変えることができ、そのけん化操作においてアルカリモル比を変えることで該重合体のけん化度を変えることができる。上記操作において、重合時に単量体/メタノールの重量比および反応槽内のエチレンの圧力を変更し、けん化時にアルカリモル比を変更して重合度1700、けん化度98モル%、エチレン含有量5モル%のPVA系重合体(B)を得た。以下、これをPVA系重合体(B−1)と称する。
【0034】
(塩化ビニルの重合)
グラスライニング製オートクレーブに、表1に示した分散安定剤を溶かした脱イオン水40部およびジイソプロピルパーオキシジカーボネートの70%トルエン溶液0.04部を仕込み、オートクレーブ内を0.0067MPaとなるまで脱気して酸素を除いたのち、塩化ビニル単量体30部を仕込み、攪拌下に57℃に昇温して重合を行った。重合開始時、オートクレーブ内の圧力は0.83MPaであったが、重合開始7時間後に0.44MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニル単量体をパージし、内容物を取り出し脱水乾燥した。塩化ビニル重合体の重合収率は85%であり、スケールはほとんど付着しておらず、平均重合度は1050であった。得られた塩化ビニル重合体の特性を評価した結果を表2に示す。0.575g/ccと高いかさ比重を有する粒径分布のシャープな塩化ビニル重合体を、重合安定性良く得ることができた。
【0035】
実施例2
(PVA系重合体の製造)
実施例1において、重合時に単量体/メタノールの重量比および反応槽内のエチレンの圧力を変更し、けん化時にアルカリモル比を変更して重合度700、けん化度80モル%、エチレン含有量2モル%のPVA系重合体(A)を得た。以下、これをPVA系重合体(A−2)と称する。
【0036】
(塩化ビニルの重合)
実施例1において、PVA系重合体(A)としてPVA系重合体(A−2)、PVA系重合体(B)としてPVA系重合体(B−1)を分散安定剤に用いた以外は実施例1と同様に操作して塩化ビニルの懸濁重合を行い、重合性の評価および塩化ビニル重合体の特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0037】
実施例3
(PVA系重合体の製造)
実施例1において、重合時に単量体/メタノールの重量比および反応槽内のエチレンの圧力を変更し、けん化時にアルカリモル比を変更して重合度1700、けん化度95モル%、エチレン含有量5モル%のPVA系重合体(B)を得た。以下、これをPVA系重合体(B−2)と称する。
【0038】
(塩化ビニルの重合)
実施例1において、PVA系重合体(A)としてPVA系重合体(A−2)、PVA系重合体(B)としてPVA系重合体(B−2)を分散安定剤に用いた以外は実施例1と同様に操作して塩化ビニルの懸濁重合を行い、重合性の評価および塩化ビニル重合体の特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0039】
実施例4
(PVA系重合体の製造)
実施例1において、重合時に単量体/メタノールの重量比および反応槽内のエチレンの圧力を変更し、けん化時にアルカリモル比を変更して重合度1700、けん化度93モル%、エチレン含有量5モル%のPVA系重合体(B)を得た。以下、これをPVA系重合体(B−3)と称する。
【0040】
(塩化ビニルの重合)
実施例1において、PVA系重合体(A)としてPVA系重合体(A−2)、PVA系重合体(B)としてPVA系重合体(B−3)を分散安定剤に用いた以外は実施例1と同様に操作して塩化ビニルの懸濁重合を行い、重合性の評価および塩化ビニル重合体の特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0041】
実施例5
(塩化ビニルの重合)
実施例1において、PVA系重合体(A)としてPVA系重合体(A−2)、PVA系重合体(B)としてPVA系重合体(B−1)を分散安定剤に用い、PVA系重合体(A)とPVA系重合体(B)の重量比(A)/(B)を変えた以外は実施例1と同様に操作して塩化ビニルの懸濁重合を行い、重合性の評価および塩化ビニル重合体の特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0042】
実施例6
(塩化ビニルの重合)
実施例1において、PVA系重合体(A)としてPVA系重合体(A−2)、PVA系重合体(B)としてPVA系重合体(B−1)を分散安定剤に用い、PVA系重合体(A)とPVA系重合体(B)の使用量を変えた以外は実施例1と同様に操作して塩化ビニルの懸濁重合を行い、重合性の評価および塩化ビニル重合体の特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0043】
実施例7
(側鎖にカルボキシル基を含有するPVA系重合体の製造)
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口、添加剤導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル35.0kg、メタノール25.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が0.33MPaとなるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調製し、コモノマーとしてイタコン酸をメタノールに溶解した濃度10%溶液を調製し、それぞれ窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の反応槽内温を60℃に調整し、イタコン酸15.7gを添加した後に、上記の開始剤溶液40mLを注入し、重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を0.33MPaに、重合温度を60℃に維持し、イタコン酸の10%メタノール溶液を600mL/hr、上記の開始剤溶液を124mL/hrでそれぞれ連続添加した。5時間後に重合率が45%に達したところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニル単量体を除去し、PVAc系重合体のメタノール溶液を得た。30%に調整した該溶液にアルカリモル比(NaOHのモル数/PVAc系重合体中のビニルエステル単位のモル数)が0.008となるようにNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加してけん化した。けん化反応後、反応溶液中の固形分を粉砕してから遠心脱液を行い、60℃で減圧乾燥してPVA系重合体を得た。該PVA系重合体のけん化度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ85モル%であった。
【0044】
重合後に未反応酢酸ビニル単量体を除去して得られたPVAc系重合体のメタノール溶液をn−ヘキサンに投入してPVAc系重合体を沈殿させ、回収したPVAc系重合体をアセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、60℃で減圧乾燥してPVAc系重合体の精製物を得た。該PVAc系重合体のプロトンNMR測定から求めたエチレン単位の含有量は5モル%、イタコン酸単位の含有量は1モル%であった。また、上記のPVAc系重合体のメタノール溶液をアルカリモル比0.2でけん化した後、メタノールによるソックスレー抽出を3日間実施し、次いで乾燥してPVA系重合体の精製物を得た。該PVA系重合体の平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ700であった。
【0045】
上記操作により重合度700、けん化度85モル%、エチレン含有量5モル%で、側鎖にイオン性基としてカルボキシル基を含有するPVA系重合体(A)を得た。以下、これをイオン変性PVA系重合体(A−3)と称する。
【0046】
(塩化ビニルの重合)
実施例1において、PVA系重合体(A)としてイオン変性PVA系重合体(A−3)、PVA系重合体(B)としてPVA系重合体(B−1)を分散安定剤に用いた以外は実施例1と同様に操作して塩化ビニルの懸濁重合を行い、重合性の評価および塩化ビニル重合体の特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0047】
比較例1
(PVA系重合体の製造)
実施例1において、重合時にエチレンを用いず、単量体/メタノールの重量比を変更し、けん化時にアルカリモル比を変更して重合度700、けん化度80モル%のPVA系重合体を得た。以下、これをPVA系重合体(a−2)と称する。
【0048】
(塩化ビニルの重合)
実施例1において、PVA系重合体(A)の代わりにPVA系重合体(a−2)を用い、PVA系重合体(B)を用いずに、それ以外は実施例1と同様に操作して塩化ビニルの懸濁重合を行い、重合性の評価および塩化ビニル重合体の特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0049】
比較例2
(PVA系重合体の製造)
実施例1において、重合時にエチレンを用いず、単量体/メタノールの重量比を変更し、けん化時にアルカリモル比を変更して重合度1700、けん化度95モル%のPVA系重合体を得た。以下、これをPVA系重合体(b−2)と称する。
【0050】
(塩化ビニルの重合)
実施例1において、PVA系重合体(A)の代わりにPVA系重合体(a−2)、PVA系重合体(B)の代わりにPVA系重合体(b−2)を分散安定剤に使用した以外は実施例1と同様に操作して塩化ビニルの懸濁重合を行い、重合性の評価および塩化ビニル重合体の性能の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0051】
比較例3
(塩化ビニルの重合)
実施例1において、PVA系重合体(A)としてPVA系重合体(A−2)、PVA系重合体(B)の代わりにPVA系重合体(b−2)を分散安定剤に使用した以外は実施例1と同様に操作して塩化ビニルの懸濁重合を行い、重合性の評価および塩化ビニル重合体の特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0052】
比較例4
(塩化ビニルの重合)
実施例1において、PVA系重合体(A)の代わりにPVA系重合体(a−2)、PVA系重合体(B)としてPVA系重合体(B−2)を分散安定剤に使用した以外は実施例1と同様に操作して塩化ビニルの懸濁重合を行い、重合性の評価および塩化ビニル重合体の特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
実施例8
(PVA系重合体の製造)
実施例1において、PVAc系重合体のけん化反応後、得られたPVA系重合体を、重量基準でPVA系重合体の30倍量のメタノールを用いて25℃で洗浄し、60℃で減圧乾燥した後、空気中で150℃、2時間熱処理した以外は実施例1と同様に操作して、重合度1000、けん化度85モル%、エチレン含有量2モル%のPVA系重合体(A)を得た。以下、これをPVA系重合体(A−4)と称する。PVA系重合体(A−4)を電気泳動法により分析したところ、該PVA系重合体100重量部当たりの酢酸ナトリウムの含有量は0.7重量部であった。また、上記の熱処理されたPVA系重合体(A−4)に着色は見られなかった。
【0056】
(塩化ビニルの重合)
グラスライニング製オートクレーブに、表3に示したPVA系重合体を溶かした脱イオン水40部およびジイソプロピルパーオキシジカーボネートの70%トルエン溶液0.016部を仕込み、オートクレーブ内を0.0067MPaとなるまで脱気して酸素を除いた後、塩化ビニル単量体30部を仕込み、攪拌下に65℃に昇温して重合を行った。重合開始時、オートクレーブ内の圧力は1.08MPaであったが、重合開始6時間後に0.44MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニル単量体をパージし、内容物を取り出し脱水乾燥した。
スケール付着性および塩化ビニル重合体の熱処理時の着色性を上記の方法により評価した。評価結果を表3に示す。
【0057】
比較例5
(PVA系重合体の製造)
実施例1において、PVAc系重合体のけん化反応後、得られたPVA系重合体を、電気泳動法により分析して該PVA系重合体100重量部当たりの酢酸ナトリウムの含有量が0.02重量部になるまで、重量基準でPVA系重合体の30倍量のメタノールを用いて25℃で洗浄する操作を繰り返し、60℃で減圧乾燥した後、空気中で150℃、2時間熱処理した以外は実施例1と同様に操作して、重合度1000、けん化度85モル%、エチレン含有量2モル%のPVA系重合体(A)を得た。以下、これをPVA系重合体(A−5)と称する。PVA系重合体(A−5)を電気泳動法により分析したところ、該PVA系重合体100重量部当たりの酢酸ナトリウムの含有量は0.02重量部であった。また、上記の熱処理されたPVA系重合体(A−5)に着色は見られなかった。
【0058】
(塩化ビニルの重合)
実施例8において、PVA系重合体(A−4)の代わりにPVA系重合体(A−5)を使用した以外は実施例8と同様に操作して塩化ビニルの懸濁重合を行い、スケール付着性および塩化ビニル重合体の熱処理時の着色性を評価した。評価結果を表3に示す。
【0059】
比較例6
(PVA系重合体の製造)
実施例1において、PVAc系重合体のけん化反応時に、30%に調整したPVAc系重合体のメタノール溶液に、アルカリモル比(NaOHのモル数/PVAc系重合体中のビニルエステル単位のモル数)が0.006となるようにNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加し、さらに酢酸ナトリウム0.3kgを添加してけん化し、60℃で減圧乾燥した後、得られたPVA系重合体を空気中で150℃、2時間熱処理した以外は実施例1と同様に操作して、重合度1000、けん化度85モル%、エチレン含有量2モル%のPVA系重合体(A)を得た。以下、これをPVA系重合体(A−6)と称する。PVA系重合体(A−6)を電気泳動法により分析したところ、該PVA系重合体100重量部当たりの酢酸ナトリウムの含有量は2.5重量部であった。また、上記の熱処理されたPVA系重合体(A−6)は赤茶色に着色していた。
【0060】
(塩化ビニルの重合)
実施例8において、PVA系重合体(A−4)の代わりにPVA系重合体(A−6)を使用した以外は実施例8と同様に操作して塩化ビニルの懸濁重合を行い、スケール付着性および塩化ビニル重合体の熱処理時の着色性を評価した。評価結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
【発明の効果】
本発明のビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤は、少量の使用で懸濁重合安定性に顕著に優れて重合槽に付着する重合体スケールが少なく、さらにこのものを使用してビニル系化合物を懸濁重合することにより、重合体粒子の粒径分布がシャープである、取り扱い時の飛散が少ない、かさ比重が大きく成形機などへのくい込み性が良好で押出成形性に優れる、などの特性を具えたビニル系重合体を製造することができることから、その工業的な評価はきわめて高い。
Claims (8)
- エチレン単位の含有量が0.5〜20モル%、けん化度が60モル%以上90モル%未満、かつ重合度が600以上のビニルアルコール系重合体(A)、ならびにエチレン単位の含有量が0.5〜20モル%、けん化度が90モル%以上、かつ重合度が1000以上のビニルアルコール系重合体(B)からなるビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤。
- ビニルアルコール系重合体(A)とビニルアルコール系重合体(B)とのけん化度の差が5モル%以上および/または重合度の差が200以上である請求項1に記載のビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤。
- ビニルアルコール系重合体(A)およびビニルアルコール系重合体(B)を(A)成分/(B)成分=95/5〜20/80の重量比で含有してなる請求項1に記載の懸濁重合用分散安定剤。
- ビニルアルコール系重合体(A)が酸素、空気または窒素雰囲気下、100〜200℃の温度で0.5〜20時間加熱処理されていることを特徴とする請求項1に記載の懸濁重合用分散安定剤。
- ビニルアルコール系重合体(A)100重量部に対して、pKaが3.5〜5.5の酸および/またはその金属塩(C)を0.05〜2重量部の割合で含有することを特徴とする請求項4に記載の懸濁重合用分散安定剤。
- ビニル系化合物100重量部に対する懸濁重合用分散安定剤の添加量が0.01〜5重量部である請求項1〜5のいずれか1項に記載の懸濁重合用分散安定剤。
- ビニル系化合物が塩化ビニルである請求項1〜6のいずれか1項に記載の懸濁重合用分散安定剤。
- 請求項1に記載の懸濁重合用分散安定剤の存在下で行われることを特徴とするビニル系化合物の懸濁重合方法。
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