JP6525000B2 - ビニル樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はエチレン性不飽和単量体単位を有する重合体を水性媒体中に分散せてなる水性エマルションと、2種類以上のポリビニルアルコールとを用いてビニル化合物を懸濁重合するビニル樹脂の製造方法に関する。
従来より、ビニル化合物(例えば、塩化ビニル)の懸濁重合用分散安定剤として、部分けん化ポリビニルアルコール(以下、ポリビニルアルコールをPVAと略記することがある)を用いる方法が知られている。しかしながら、部分けん化PVAは、水への溶解性が低く、固形分割合を高めることが困難であり、取扱性が不十分であった。そのため、取扱性を向上させるため懸濁重合用分散安定剤として、水性エマルションを用いる試みがなされている。また、ビニル化合物の懸濁重合に関して、併用するPVAの組み合わせによって、得られるビニル樹脂の物性をコントロールする試みがなされることがある。しかしながら、部分けん化PVAを用いる場合、懸濁重合の際に併用するPVAの組み合わせによっては重合が不安定になり粗大粒子が生成したり、得られるビニル樹脂の物性が悪化したりする場合がある。
例えば、ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤として水性エマルションを用いる試みには特許文献1や2に記載された方法が挙げられる。併用するPVAの組み合わせを工夫する試みには特許文献3に記載された方法が挙げられる。用いる分散剤や、分散安定剤の組み合わせに要求される事項として、近年は、(1)可塑剤の吸収性が高く加工が容易であること、(2)シート成型時のフィッシュアイが少ないこと、(3)重合安定性に優れ、粗大粒子が少ないこと、(4)かさ比重が高い樹脂が得られること、(5)分散安定剤のハンドリング性に優れること等が挙げられる。
特許文献3によれば、部分けん化PVAと共に、けん化度、重合度の異なる二種類のPVAを用いている。部分けん化PVAは水に溶解、分散等しないため(5)のハンドリング性に関しては問題があり、かつその他の性能に関しても満足であるとは言いがたかった。
特開2005−82665号公報 特開平9−132608号公報 特開平10−101715号公報
本発明は、塩化ビニルをはじめとするビニル化合物を懸濁重合するに際して、上記(1)〜(5)の要求性能を充足し、特に重合安定性に優れ、樹脂シート成型時のフィッシュアイの低減が可能なビニル樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、このような現状を鑑み鋭意検討した結果、エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体を水性媒体中に分散せてなる水性エマルションと、特定のけん化度、重合度を有する2種類以上のポリビニルアルコールとが特定の割合で存在する中で、ビニル化合物を懸濁重合することで上記の目標が達成できるものであることを見出した。
すなわち、本発明は、分散安定剤を用いて水性媒体中でビニル化合物を懸濁重合するビニル樹脂の製造方法であって;前記分散安定剤が、エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体(A)を水性媒体中に分散させてなる水性エマルション(a)と、けん化度65モル%以上82モル%未満であり、かつ粘度平均重合度250以上1500未満のポリビニルアルコール(B)と、けん化度82モル%以上98モル%未満であり、かつ粘度平均重合度1500以上4000未満のポリビニルアルコール(C)とを含有し、重合体(A)、ポリビニルアルコール(B)及びポリビニルアルコール(C)の合計量に対して、重合体(A)を7〜51質量%、ポリビニルアルコール(B)を40〜84質量%及びポリビニルアルコール(C)を9〜53質量%含有することを特徴とするビニル樹脂の製造方法である。
このとき、前記水性エマルション(a)の固形分含有量が、35〜70質量%であることが好ましい。
重合体(A)がポリビニルエステルを含むことが好ましい。前記ポリビニルエステルがポリ酢酸ビニルであることも好ましい。
ポリビニルアルコール(B)およびポリビニルアルコール(C)の残存ビニルエステル基のブロックキャラクターがいずれも0.55以下であることが好ましい。
前記水性媒体に対する前記ビニル化合物の質量比(ビニル化合物/水性媒体)が0.57〜1.25であることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、要求性能を充足するビニル樹脂を得ることができる。本発明の製造方法は、特に重合安定性に優れている。本発明の製造方法によれば、樹脂シート成型時のフィッシュアイが低減されたビニル樹脂を提供することができる。
<懸濁重合用分散安定剤>
本発明で用いる分散安定剤は、エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体(A)を水性媒体中に分散させてなる水性エマルション(a)と、けん化度65モル%以上82モル%未満であり、かつ粘度平均重合度250以上1500未満のポリビニルアルコール(B)(PVA(B))と、けん化度82モル%以上98モル%未満であり、かつ粘度平均重合度1500以上4000未満のポリビニルアルコール(C)(PVA(C))とを含む。前記分散安定剤が、重合体(A)、PVA(B)及びPVA(C)の合計量に対して、重合体(A)を7〜51質量%、PVA(B)を40〜84質量%及びPVA(C)を9〜53質量%含有する。本発明の趣旨を損なわない範囲で、上記の水性エマルション(a)、PVA(B)、(C)以外の懸濁重合用分散安定剤や、他の成分を含有してもよい。本明細書において、特に断らない限り、水性エマルション(a)のことを単にエマルションと略記することがある。以下、各成分について詳述する。
[水性エマルション(a)]
本発明で用いられる水性エマルション(a)の合成方法に関しては特に制限はないが、適当な分散剤を含む水溶液中に、エチレン性不飽和単量体を一時的又は連続的に添加し、過酸化水素、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウム等の過酸化物系重合開始剤等の重合開始剤を添加し、乳化重合する方法が挙げられる。水性エマルション(a)の合成に際して、エチレン性不飽和単量体は1種類単独で用いることもできるし、2種類以上が併用されてもよい。前記重合開始剤は還元剤と併用し、レドックス系で用いられる場合もある。その場合、通常、過酸化水素は酒石酸、酒石酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどと共に用いられる。また、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムは亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどとともに用いられる。
水性エマルション(a)を合成する際の分散剤に関しては特に制限はないが、ノニオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、ポリビニルアルコール、水溶性セルロース等を用いることができる。それらを単独で用いても、異なる2種類以上の分散剤を併用しても構わない。経済性、エマルションの安定化、懸濁重合用分散剤としての性能向上の観点からポリビニルアルコール、ノニオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤のいずれかを用いることが好ましい。水性エマルション(a)を合成する際に、ポリビニルアルコール、ノニオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤のいずれかを分散剤として用いることで、分散安定剤の性能が向上する。重合が安定する。得られるビニル樹脂の可塑剤吸収性が向上する。
上記ノニオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシエチレンポリオキシアルキレングリコール、ポリエチレングリコールステアレート等のポリエチレングリコールエステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等のポリオキシエチレン基と芳香環を含む界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル、グリセロールモノステアレート等のグリセリンエステル、ポリオキシエチレンアリルグリシジルノニルフェニルエーテル等の反応性界面活性剤が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。経済性、分散安定剤の性能向上、エマルションの安定化の観点からポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、グリセリンエステルが好適に用いられる。
上記イオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミンアセテート、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウム塩、ラウリルベタイン等のアルキルベタイン、その他アルキルスルホン酸金属塩、ポリカルボン酸塩等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。経済性、分散安定剤の性能向上、エマルションの安定化の観点からアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルベタインが好適に用いられる。
分散剤がポリビニルアルコール(PVA)の場合、PVAのけん化度は、エマルションの安定化、ハンドリング性の観点から、通常50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上であり、さらに好ましくは73モル%以上であり、特に好ましくは78モル%以上である。上限は好ましくは99.5モル%以下であり、より好ましくは95モル%以下であり、さらに好ましくは90モル%以下である。また、PVAの粘度平均重合度は、通常は100〜8000であり、好ましくは100〜4000であり、より好ましくは150〜3000である。
上記PVAのけん化度はJIS−K6726に準じて測定し得られる値である。粘度平均重合度は、該PVAを実質的に完全にけん化した後、アセチル化してポリビニルエステルとした後、アセトン溶液中の極限粘度の測定から中島の式(中島章夫:高分子化学6(1949))を用いて算出されたものである。
上記PVAの製造方法としては、後述するPVA(B)及びPVA(C)の製造方法と同様の製造方法を挙げることができる。
また、水性エマルション(a)を合成する際に用いる分散剤として、後述するPVA(B)及びPVA(C)も使用することができる。
水溶性セルロースとしては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の各種セルロース誘導体が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。水溶性セルロースの粘度に特に制限はないが、エマルションの安定化、ハンドリング面から、通常20℃、濃度2%の水溶液として0.5mPa・s以上、5000mPa・s以下である。
上記分散剤の使用量は特に限定されないが、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、通常0.5〜20質量部である。分散剤の使用量が20質量部を超える場合、重合して得られたビニル樹脂をシート加工した際にフィッシュアイが増加するおそれがある。加工時の色相が悪化するおそれもある。分散剤の使用量は、15質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であることがより好ましい。一方、分散剤の使用量が0.5質量部未満の場合、エマルションの粒子径が増大しエマルションの安定性が低下するおそれがある。また、エマルション合成中にブロック化し、エマルションが得られなくなるおそれもある。さらに、分散安定剤の性能が低下する可能性があり、ビニル樹脂に対する要求性能を充足できなくなる可能性がある。
水性エマルション(a)の製造に用いられる上記エチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン、塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニリデンクロリド、ビニリデンフルオリドなどのハロゲン化オレフィン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、パルミチン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの四級化物を挙げることができる。さらに、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩などのアクリルアミド系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、p−スチレンスルホン酸および、そのナトリウム塩、カリウム塩などのスチレン系単量体、その他N−ビニルピロリドンなどを挙げることができる。これらの不飽和単量体は単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。分散安定剤の性能面、経済面から、エチレン性不飽和単量体がビニルエステルであることが好ましく、重合体(A)がポリビニルエステルを含むことが好ましい。
好適に用いられるビニルエステルとしては、上記ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、パルミチン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられる。重合体(A)はこれらを単独重合あるいは共重合して得られる。この中でも酢酸ビニルを単独重合して用いるか、あるいは酢酸ビニルを主成分として、上記に挙げられるようなエチレン性不飽和単量体を共重合して用いることが水性エマルション(a)の生産性、経済性、ハンドリング性の観点から好ましい。
エマルションに含有される水性媒体としては、水、または水及び有機溶剤を含有するものが挙げられる。前記水性媒体中の水の量は、90質量%以上が好ましい。
エマルション(a)に含まれる粒子の平均粒子径には特に制限されない。平均粒子径は、動的光散乱法による測定値で、0.05〜5μmであることが好ましい。平均粒子径が、5μmを超える場合、エマルションの安定性が低下するおそれがある。平均粒子径は、3μm以下であることがより好ましく、2.5μm以下であることがさらに好ましい。一方、平均粒子径が、0.05μm未満の場合、ビニル樹脂を加工したとき、シートのフィッシュアイが増加するおそれがある。エマルションを合成する際に分散剤を大量に用いる必要があり、経済性の面でも懸念が生じる。動的光散乱法による測定は、例えば、大塚電子株式会社製のレーザーゼータ電位計「ELS−8000」等を用いて行うことができる。平均粒子の粒子径は、エマルションを合成する際に用いる分散剤とエチレン性不飽和単量体の質量比、エマルションの合成条件(重合温度、重合時間、単量体の種類、重合開始剤の種類、分散剤の添加時期、連鎖移動剤の使用量など)を適宜選択することによって調整することができる。また、エマルションの固形分濃度を調節することでもエマルションの安定性をコントロールすることができる。
水性エマルション(a)は、連鎖移動剤としてチオール化合物及び/またはアルデヒド化合物の存在下、乳化重合を行うことで得ることもできる。このようにすることで、エマルションを安定化させたり、エマルションの粘度を下げることが可能になりハンドリング性が向上する。反応性が高い観点からチオール化合物を用いることが好ましい。チオール化合物及び/またはアルデヒド化合物の添加方法は一時的又は連続的に添加のどちらでも差し支えない。また、使用する連鎖移動剤の量に特に制限はないが、その使用割合は一種または二種以上のエチレン性不飽和単量体に対して0.01質量%以上、50質量%以下、好ましくは0.05質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上30質量%以下の割合である。
上述したチオール化合物としては、特に制限は無く、アルキルチオール、官能基を有するチオールどちらも用いることができる。アルキルチオールを用いる場合、取り扱い面、臭気等の面から炭素数4以上18以下の直鎖、分岐アルキルチオールが好ましく、その例として、n−ブタンチオール、n−ペンタンチオール、n−ヘキサンチオール、シクロヘキサンチオール、アダマンチルチオール、n−ヘプタンチオール、n−オクタンチオール、n−ノナンチオール、n−デカンチオール、n−ウンデカンチオール、n−ドデカンチオール、t−ドデカンチオール、n−ヘキサデカンチオール、n−オクタデカンチオール等を挙げる事ができる。官能基を有するチオールを用いる場合、チオ酢酸、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロパンスルホン酸、2−メルカプトエタノール等を用いることができる。しかしこれらのみに限定されるものではない。
分散剤を用いて水性エマルション(a)を合成した場合、合成条件によっては、分散剤とエチレン性不飽和単量体単位とがグラフト重合し、水性エマルション(a)中にグラフトポリマーが存在する場合がある。エマルション固形分全量に対する分散剤の割合が0.1質量%以上18質量%以下であることが好ましい。この割合が0.1質量%未満の場合、重合体(A)の分散安定化が困難となりエマルションの溶液安定性が低下するおそれがある。得られるビニル樹脂の可塑剤吸収性が低下するおそれもある。ビニル樹脂をシート加工した際にフィッシュアイが増大するおそれもある。この割合は、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。一方、この割合が18質量%を超えると、エマルション粘度が増大し高濃度溶液となり取扱性が低下するおそれがある。得られるビニル樹脂の可塑剤吸収性が低下するおそれもある。ビニル樹脂をシート加工した際にフィッシュアイの数が増大したり、ビニル樹脂の色相が悪化するおそれもある。この割合は、15質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることがさらに好ましい。この割合を調整する方法としては、エマルション合成時に分散剤としてPVAを用いた場合は、当該PVAのけん化度または重合度を適宜選択する方法を挙げることができる。この割合を調整する方法としては、グラフト点の存在する分散剤を用いたり、分散剤の使用量を調整したり、連鎖移動剤や添加剤等を用いたりして、グラフト反応の確率を変化させる方法も挙げることができる。
水性エマルション(a)の中に上述のグラフトポリマーが含まれる場合、グラフトポリマーの割合は、エマルション固形分全量に対して0質量%以上85質量%未満であることが好ましい。この割合が85質量%以上の場合、得られるビニル樹脂の可塑剤吸収性が低下するおそれがある。ビニル樹脂をシート加工した際に色相が悪化したり、フィッシュアイが増大したりするおそれもある。この割合は、80質量%未満であることがより好ましく、75質量%未満であることがさらに好ましい。グラフトポリマーの割合がこのような範囲にあることで、ビニル樹脂の粗粒化を防止したり、かさ比重を増加させることができる。この割合を調整する方法としては、エマルション合成時に分散剤としてPVAを用いた場合は、当該PVAのけん化度または重合度を適宜選択する方法を挙げることができる。この割合を調整する方法としては、グラフトが困難な分散剤(界面活性剤など)を用いる、分散剤の使用量を調整する、合成時の条件を調整する、連鎖移動剤を用いる、エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体の量を変化させる方法を挙げることができる。
当該エマルション固形分全量に対するグラフトポリマーの割合の求め方については様々な方法が挙げられ、アセトンおよび水でエマルションを洗浄する方法(特許文献1〜2参照)や、トルエン不溶解分(特開平10−081865号公報参照)の割合からエマルション固形分全量に対する分散剤の割合を引くことで求める方法が挙げられる。前者はアセトンによりエチレン性不飽和単量体単位を有する重合体を除去したのちに水によって分散剤を除去する方法である。後者はトルエン不溶解分の成分がグラフトポリマーおよび分散剤であるため、そこから別の方法(遠心分離により分離した水相の固形分割合)で求めた分散剤の割合を引くことで求める方法である。両者は同義の方法であるため、どちらの方法を用いてもグラフトポリマーの割合の値はほぼ一致する。前者の方法で求める場合、同サンプルを水、アセトンで洗浄するため、水、アセトンに溶解せず残存するグラフトポリマーの割合は0以上となるが、後者の方法の場合、2種の測定には異なるサンプルを用いるため、測定誤差によってはグラフトポリマー割合が負の値になる場合がある。そこで、エマルション溶液を遠心分離することによって分散剤を除いた沈殿物に対してトルエン不溶解分測定をすると、より正確にグラフトポリマーの割合を求めることができる。
水性エマルション(a)の重量平均分子量には特に制限はないが400万以下であることが好ましい。重量平均分子量の値はエマルション合成時に分散剤としてPVAを用いる場合、そのけん化度または重合度を調整すること、分散剤の種類や使用量を調整すること、重合開始剤の選択、連鎖移動剤を用いること等によってグラフトポリマー幹、枝の長さを変化させることで調節できる。重量平均分子量が400万を超えると、ビニル樹脂の可塑剤吸収性が低下するおそれがある。ビニル樹脂をシート加工した際にフィッシュアイの数が増大したり、色相が悪化したりするおそれもある。得られるエマルションの粘度が増大したり、放置安定性が悪化するおそれもある。
水性エマルション(a)の固形分含有量が、35〜70質量%であることが好ましい。固形分含有量が、70質量%を超える場合、エマルションの粘度が増大し、ハンドリング性が低下する可能性がある。固形分含有量は、65質量%以下であることがより好ましい。一方、固形分含有量が35質量%未満の場合、生産性、経済性の面で好ましくない。エマルションの粘度が下がりすぎてエマルションの溶液安定性が低下するおそれもある。
[PVA(B)及びPVA(C)]
本発明の製造方法において、前記分散安定剤が、エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体(A)を水性媒体中に分散させてなる水性エマルション(a)とともに、けん化度65モル%以上82モル%未満であり、かつ粘度平均重合度250以上1500未満のPVA(B)と、けん化度82モル%以上98モル%未満であり、かつ粘度平均重合度1500以上4000未満のPVA(C)とを含有する。このとき、前記分散安定剤が、重合体(A)、PVA(B)及びPVA(C)の合計量に対して、重合体(A)を7〜51質量%、PVA(B)を40〜84質量%及びPVA(C)を9〜53質量%含有する。これにより、ビニル樹脂の可塑剤吸収性、シート加工した際のフィッシュアイの数の削減、粗大粒子の削減、かさ比重の増大等の要求性能を充足することができる。要求性能を充足するビニル樹脂を得るためには各成分のバランスが重要となる。
PVA(B)の含有量が40質量%未満の場合、重合が不安定となり、得られるビニル樹脂が粗粒化し加工が困難になる。PVA(B)の含有量は、45質量%以上であることが好ましい。一方、PVA(B)の含有量が84質量%を超える場合、分散安定剤における重合体(A)とPVA(C)の割合が非常に少なくなり、得られるビニル樹脂の可塑剤吸収性が低下する。シート加工した際にフィッシュアイの数が増大する。かさ比重の低下が生じる。PVA(B)の含有量は、75質量%以下であることが好ましい。
PVA(C)の含有量が9質量%未満の場合、得られるビニル樹脂のかさ比重が低下する。重合が不安定になり粒子が粗粒になる。PVA(C)の含有量は、15質量%以上であることが好ましい。一方、PVA(C)の含有量が53質量%を超える場合、得られるビニル樹脂の可塑剤吸収性が低下する。シート加工した際にフィッシュアイの数が増大する。PVA(C)の含有量は、45質量%以下であることが好ましい。
上述のPVA(B)のけん化度は65モル%以上82モル%未満であることが重要である。けん化度が65モル%未満の場合、水溶性が低下するため、水に不溶となり懸濁重合に用いる際にハンドリング性が低下する。けん化度は、68モル%以上であることが好ましい。一方、けん化度が82モル%以上の場合、得られるビニル樹脂の可塑剤吸収性が低下する。シート加工した際にフィッシュアイの数が増大する。重合が不安定になり得られるビニル樹脂が粗粒化する。けん化度は、80モル%未満であることが好ましく、78モル%未満であることがより好ましい。PVA(B)のけん化度は、JIS−K6726に準じて測定し得られる値である。
上述のPVA(B)の粘度平均重合度は250以上1500未満であることが重要である。粘度平均重合度が250未満の場合、ビニル化合物を懸濁重合する際の重合安定性が低下し、得られるビニル樹脂が粗粒化する。粘度平均重合度は、300以上であることが好ましく、350以上であることがより好ましい。一方、粘度平均重合度が1500以上の場合、得られるビニル樹脂の可塑剤吸収性が低下する。シート加工した際のフィッシュアイの数が増大する。重合が不安定になりビニル樹脂が粗粒化する。粘度平均重合度は、1300未満であることが好ましく、1200以下であることがより好ましい。PVA(B)の粘度平均重合度は、該PVA(B)を実質的に完全にけん化した後、アセチル化してポリビニルエステルとした後、アセトン溶液中の極限粘度の測定から中島の式(中島章夫:高分子化学6(1949))を用いて算出されたものである。
上述のPVA(C)のけん化度は82モル%以上98モル%未満であることが重要である。けん化度が82モル%未満の場合、水溶性が低下するため、懸濁重合に用いる際のハンドリング性が低下する。得られるビニル樹脂のかさ比重が低下する。PVA(C)のけん化度は、85モル%以上であることが好ましく、86モル%以上であることがより好ましい。一方、けん化度が98モル%以上の場合、重合が不安定になりビニル樹脂が粗粒化する。得られるビニル樹脂の可塑剤吸収性が低下する。シート加工した際にフィッシュアイの数が増大する。けん化度は、95モル%未満であることが好ましく、93モル%未満であることがより好ましい。PVA(C)のけん化度は、JIS−K6726に準じて測定し得られる値である。
上述のPVA(C)の粘度平均重合度は1500以上4000未満であることが重要である。粘度平均重合度が1500未満の場合、得られるビニル樹脂のかさ比重が低下する。粘度平均重合度は、1700以上であることが好ましく、1800以上であることがより好ましい。一方、粘度平均重合度が4000以上の場合、水溶性が低下し、ハンドリング性が低下する。得られるビニル樹脂の可塑剤吸収性が低下する。シート加工した際のフィッシュアイの数が増大する。ビニル樹脂が粗粒化する。粘度平均重合度は、3700未満であることが好ましく、3500以下であることがより好ましい。PVA(C)の粘度平均重合度は、該PVA(C)を実質的に完全にけん化した後、アセチル化してポリビニルエステルとした後、アセトン溶液中の極限粘度の測定から中島の式(中島章夫:高分子化学6(1949))を用いて算出されたものである。
上記のPVA(B)及びPVA(C)は、従来公知の方法にしたがい、ビニルエステルモノマーを重合し、得られた重合体を常法によりけん化することによって得ることができる。ビニルエステルモノマーを重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来公知の方法を適用することができる。重合触媒としては、重合方法に応じて、アゾ系触媒、過酸化物系触媒、レドックス系触媒などが適宜選ばれる。けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解などを適用することができ、この中でもメタノールを溶剤とし、苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いるけん化反応が簡便であり最も好ましい。
上記のPVA(B)及びPVA(C)を構成するビニルエステル単位としては様々なビニルエステル化合物に由来する単位があるが、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。中でも酢酸ビニルが最も好ましい。
PVA(B)及びPVA(C)を合成する際の分散剤としてPVAを用いる場合、本発明の趣旨を損なわない範囲で他の単量体を共重合したポリビニルアルコールを用いても差し支えない。使用しうる単量体として、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン;アクリル酸およびその塩;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。また、ビニルエステルモノマーを通常の重合条件よりも高い温度下で重合して得た重合体をけん化して得られる、1,2グリコール含有量の高いポリビニルアルコールも好ましく用いることができる。この場合の1,2−グリコール結合含有量は特に制限されないが、1.9モル%以上、好ましくは2.0モル%以上、さらに好ましくは2.1モル%以上のものが用いられる。1,2−グリコール結合が前記範囲にある時、エマルジョンに含まれる粒子の粒子径がより小さい分散安定剤を得ることが可能である。
PVA(B)及びPVA(C)を合成する場合、本発明の趣旨を損なわない範囲でその重合度を調節、あるいは末端に変性種を導入する目的で連鎖移動剤を用い合成したポリビニルアルコールを用いても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;2−ヒドロキシエタンチオール、3−メルカプトプロピオン酸、ドデカンチオール、チオ酢酸等のチオール;四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素;ホスフィン酸ナトリウム1水和物等のホスフィン酸塩が挙げられる。中でもチオール、アルデヒドおよびケトンが好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数および目的とするポリビニルエステルの重合度に応じて決定すればよい。一般にビニルエステルモノマーに対して0.1質量%以上10質量%以下が望ましい。
PVA(B)及び(C)を合成する場合、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)の値には特に制限はないが、いずれも、通常10以下であり、6以下であることがエマルションの安定性の観点から好ましい。
PVA(B)およびPVA(C)の残存ビニルエステル基のブロックキャラクターがいずれも0.55以下であることが好ましい。下限は特に制限はないが通常0.3以上である。
本発明は、分散安定剤を用いて水性媒体中でビニル化合物を懸濁重合するビニル樹脂の製造方法である。当該分散安定剤が、エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体(A)を水性媒体中に分散せてなる水性エマルション(a)と、PVA(B)と、PVA(C)とを含有する。水性エマルション(a)は主に、得られるビニル樹脂の可塑剤吸収性の向上、シート加工した際のフィッシュアイの数の削減、粗大粒子の削減等に寄与する。PVA(B)は主に、可塑剤吸収性の向上、粗大粒子の削減、重合安定性の付与に寄与する。PVA(C)は主に、かさ比重の向上、重合の安定性に寄与する。これらの効果は上述した割合で重合体(A)、PVA(B)及びPVA(C)を併用した場合に発揮されるものである。エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体(A)の使用割合が少ない場合、得られた塩化ビニル重合体粒子は可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイの数が多くなる。PVA(B)を用いなかった場合、得られた塩化ビニル重合体粒子は可塑剤吸収性が低く、粒子が粗粒であり、フィッシュアイの数が非常に多くなる。またPVA(C)の使用割合が少ない場合やPVA(C)用いなかった場合、得られた塩化ビニル重合体粒子はかさ比重が低く、粒子が粗粒となる。
[その他の成分]
本発明の製造方法において、水性エマルション(a)、PVA(B)、PVA(C)以外に、本発明の趣旨を損なわない範囲で、その他の添加剤を添加してもよい。上記添加剤としては、例えば、アルデヒド、ハロゲン化炭化水素、メルカプタンなどの重合調節剤;フェノール化合物、イオウ化合物、N−オキサイド化合物などの重合禁止剤;pH調整剤;架橋剤;防腐剤;防黴剤、ブロッキング防止剤、消泡剤等が挙げられる。
本発明の製造方法で用いられるビニル化合物としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、これらのエステルおよび塩;マレイン酸、フマル酸、これらのエステルおよび無水物;スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、本発明の製造方法では、塩化ビニルを単独で懸濁重合することが好適である。また、塩化ビニルと、共重合可能な他の単量体とを共に懸濁重合することも好適である。塩化ビニルと共重合することができる単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸;アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。
ビニル化合物の懸濁重合には、従来から塩化ビニル単量体等の重合に使用されている、油溶性または水溶性の重合開始剤を用いることができる。油溶性の重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、α−クミルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。水溶性の重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの油溶性あるいは水溶性の重合開始剤は単独で、または2種類以上を組合せて用いることができる。
ビニル化合物の懸濁重合に際し、重合温度には特に制限はなく、20℃程度の低い温度はもとより、90℃を超える高い温度に調整することもできる。また、重合反応系の除熱効率を高めるために、リフラックスコンデンサー付の重合器を用いることも好ましい実施態様の一つである。
ビニル化合物の懸濁重合に際し、仕込むビニル化合物と水性媒体の比は特に限定されない。一般的に、水性媒体に対するビニル化合物の割合が低いほど、重合は安定だが生産性が低くなる。一方、水性媒体に対するビニル化合物の割合が高いほど、生産性は高くなるが、重合が不安定となる。本発明の製造方法において、水性媒体に対するビニル化合物の質量比(ビニル化合物/水性媒体)が0.57〜1.25であることが好ましい。質量比(ビニル化合物/水性媒体)が0.57未満である場合、ビニル樹脂の生産性が低くなるおそれがある。質量比(ビニル化合物/水性媒体)は、0.75以上であることがより好ましい。一方、質量比(ビニル化合物/水性媒体)が1.25を超える場合、重合安定性が低下し、粗大な樹脂粒子が生成するおそれがある。また、得られるビニル樹脂を成形した製品のフィッシュアイが増加するおそれもある。質量比(ビニル化合物/水性媒体)は、1.11以下であることがより好ましい。本発明の製造方法によれば、一般的に、重合が不安定になりやすい条件下でも、得られるビニル樹脂の粗粒化を防止することができる。成形した製品のフィッシュアイを低減することができる。
本発明における水性媒体としては、水、または水及び有機溶剤を含有するものが挙げられる。前記水性媒体中の水の量は、90質量%以上が好ましい。
本発明の製造方法において、重合体(A)を含む水性エマルション(a)、PVA(B)、PVA(C)を別々に仕込んでもよいし、同時に仕込んでもよい。また、PVA(B)、PVA(C)の形態としては粉体であってもよいし、水溶液であってもかまわない。
本発明の製造方法で用いられる、水性エマルション(a)、PVA(B)、PVA(C)以外に、本発明の趣旨を損なわない範囲で、その他のPVA、ビニル化合物を水性媒体中で懸濁重合する際に通常使用されるメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性セルロースエーテル;ゼラチンなどの水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロックコポリマーなどの油溶性乳化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤等を併用してもよい。その添加量については特に制限は無いが、ビニル化合物100質量部あたり0.01質量部以上1.0質量部以下が好ましい。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下の実施例および比較例におい
て、特に断りがない場合、「部」および「%」はそれぞれ質量部および質量%を示す。
水性エマルション(a1〜a7)の製造法を以下に示す。
[水性エマルション(a1)の製造]
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を供えた2Lガラス製重合容器にイオン交換水161.2部、分散剤として「エマルゲン1150S−60」(花王社製)7.5部を仕込み80℃で完全に溶解した。次に窒素置換した後、200rpmで撹拌しながら、1%過硫酸アンモニウム水溶液40部および、エチレン性不飽和単量体として酢酸ビニル100部を3時間かけて連続的に添加し重合を完結させた。得られたエマルションの固形分は50質量%であった。
[水性エマルション(a2)の製造]
用いるエチレン性不飽和単量体をプロピオン酸ビニルにしたこと以外は、水性エマルション(a1)と同様にして合成した。
[水性エマルション(a3)の製造]
用いるエチレン性不飽和単量体をメタクリル酸メチル(MMA)50部、アクリル酸ブチル(BA)50部の混合物にしたこと以外は、水性エマルション(a1)と同様にして合成した。
[水性エマルション(a4)の製造]
用いるエチレン性不飽和単量体をスチレンにしたこと以外は、水性エマルション(a1)と同様にして合成した。
[水性エマルション(a5)の製造]
分散剤として重合度1700、けん化度88モル%のPVAを用いた以外は、水性エマルション(a5)と同様にして合成した。
[水性エマルション(a6)の製造]
酢酸ビニル100部を3時間かけて連続的に添加する際に、ドデシルメルカプタン2部を酢酸ビニルに溶解させて滴下したこと以外は、水性エマルション(a1)と同様にして合成した。
[水性エマルション(a7)の製造]
還流冷却器、温度計、窒素吹込口を備えた2Lガラス製重合容器に、イオン交換水900g、重合度2000、けん化度80モル%のPVA100gを仕込み、80℃で完全に溶解した。次に、このPVA水溶液を冷却し、窒素置換後、200rpmで撹拌しながら液温を60℃に調整した後、エチレン性不飽和単量体として酢酸ビニル25g、酒石酸ナトリウムの10%水溶液を5g仕込んだ。その後、0.5%過酸化水素水50gを3時間にわたって連続的に滴下し、乳化重合を行った。得られたエマルションの固形分は12質量%であった。
PVA(B)およびPVA(C)の残存ビニルエステル基のブロックキャラクターの測定方法を以下に示す。
残存ビニルエステル基のブロックキャラクターはPVAの重水、重メタノール混合溶媒中、測定温度70℃、積算回数18000回での13C−NMR測定を行い、残存エステル基、水酸基に挟まれたメチレン炭素のピークの積分値、残存エステル基同士に挟まれたメチレン炭素のピークの積分値、水酸基同士に挟まれたメチレン炭素のピークの積分値から求めた。測定法、計算法についてはポバール(高分子刊行会、1984年発行、第246〜249頁)およびMacromolecules,10,532(1977年)に記載されている。
実施例1
容量5Lのオートクレーブに重合体(A1)を含む水性エマルション(a1)、PVA(B)の脱イオン水溶液100部、PVA(C)の脱イオン水溶液100部を各成分の固形分割合が表1の配合例1に示すように仕込み、各成分の固形分合計が塩化ビニル単量体に対して850ppmとなるようにした。その後に仕込む脱イオン水の合計が1200部となるように脱イオン水を追加して仕込んだ。次いで、クミルパーオキシネオデカノエートの70%トルエン溶液0.65部およびt−ブチルパーオキシネオドデカネートの70%トルエン溶液1.05部をオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内に圧力0.2MPaとなるように窒素を導入、導入した窒素のパージ、という作業を計5回行い、オートクレーブ内を十分に窒素置換して酸素を除いた後、塩化ビニル940部を仕込み、オートクレーブ内の内容物を57℃に昇温して撹拌下で塩化ビニルの重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は0.80MPaであった。重合を開始してから約3.5時間経過後、オートクレーブ内の圧力が0.70MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルを除去した後、重合反応物を取り出し、65℃にて16時間乾燥を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。
Figure 0006525000
(塩化ビニル重合体粒子の評価)
実施例1で得られた塩化ビニル重合体粒子について、(1)平均粒子径、(2)粒度分布、(3)可塑剤吸収性、(4)かさ比重、(5)シート加工した際のフィッシュアイ数を以下の方法にしたがって評価した。評価結果を表2に示す。
(1)平均粒子径
タイラーメッシュ基準の金網を使用して、乾式篩分析により粒度分布を測定し、塩化ビニル重合体粒子の平均粒子径を求めた。
(2)粒度分布
JIS標準篩い42メッシュオンの含有量を質量%で表示した。
A:0.5%未満
B:0.5%以上1%未満
C:1%以上
JIS標準篩い60メッシュオンの含有量を質量%で表示した。
A:5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上
なお、42メッシュオンの含有量および60メッシュオンの含有量はともに、値が小さいほど粗大粒子が少なくて粒度分布がシャープであり、重合安定性に優れていることを示している。
(3)可塑剤吸収性
脱脂綿を0.02g詰めた容量5mLのシリンジの質量を量り(Agとする)、そこに塩化ビニル重合体粒子0.5gを入れ質量を量り(Bgとする)、そこにジオクチルフタレート(DOP)1gを入れ15分静置後、3000rpm、40分遠心分離して質量を量った(Cgとする)。そして、下記の計算式より可塑剤吸収性(%)を求めた。
可塑剤吸収性(%)=100×[{(C−A)/(B−A)}−1]
(4)かさ比重
JIS K6721に従って塩化ビニル重合体粒子のかさ比重を測定した。
(5)フィッシュアイ
得られた塩化ビニル重合体粒子100部、DOP(ジオクチルフタレート)50部、三塩基性硫酸鉛5部及びステアリン酸亜鉛1部を150℃で7分間ロール練りして0.1mm厚のシートを作製し100mm×100mm当たりのフィッシュアイの数を測定した。
実施例2〜19
使用する水性エマルション(a)、PVA(B)及びPVA(C)の種類、またはそれぞれの配合比を変えたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。
実施例20
用いる脱イオン水の量を計1390部としたこと以外は実施例1と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表3に示す。
比較例1
PVA(B)として、けん化度を88モル%としたPVA(B7)を用い、PVA(B)及びPVA(C)の使用割合を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。この場合、得られた塩化ビニル重合体粒子は粒子径が大きく粗粒であり、42メッシュオン、60メッシュオンの割合が多く重合が不安定であった。可塑剤吸収性、かさ比重が低く、フィッシュアイの数が非常に多い結果となった。
比較例2
PVA(B)として、けん化度を62モル%としたPVA(B8)を用いたこと以外は実施例1と同様にした。しかしながら、PVA(B8)は水に溶解、または分散せず、懸濁重合を行うことができなかった。
比較例3
PVA(B)として、重合度を2000としたPVA(B9)を用いたこと以外は実施例1と同様にした。しかしながら、PVA(B9)は水に溶解、または分散せず、懸濁重合を行うことができなかった。
比較例4
PVA(B)として、重合度を150としたPVA(B10)を用い、PVA(B)及びPVA(C)の使用割合を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。この場合、得られた塩化ビニル重合体粒子は粒子径が大きく粗粒であり、42メッシュオン、60メッシュオンの割合が多く重合が不安定であった。可塑剤吸収性及びかさ比重が低く、フィッシュアイの数が非常に多い結果となった。
比較例5
PVA(C)として、けん化度を72モル%としたPVA(C5)を用い、PVA(B)及びPVA(C)の使用割合を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にした。しかしながら、PVA(C5)は水に溶解、または分散せず、懸濁重合を行うことができなかった。
比較例6
PVA(C)として、重合度を1000としたPVA(C6)を用い、PVA(B)及びPVA(C)の使用割合を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。この場合、得られた塩化ビニル重合体粒子は粒子径が大きく粗粒であり、42メッシュオン、60メッシュオンの割合が多く重合が不安定であった。かさ比重が低く、フィッシュアイの数が多い結果となった。
比較例7
水性エマルション(a)、PVA(B)および(C)の使用割合を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。この場合、得られた塩化ビニル重合体粒子は可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイの数が非常に多い結果となった。
比較例8
水性エマルション(a)、PVA(B)および(C)の使用割合を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。この場合、得られた塩化ビニル重合体粒子は粒子径が大きく粗粒であり、42メッシュオン、60メッシュオンの割合が多く重合不安定であるとともに、かさ比重が低く、フィッシュアイの数が非常に多い結果となった。
比較例9
水性エマルション(a)、ポリビニルアルコール系重合体(B)および(C)の使用割合を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。この場合、得られた塩化ビニル重合体粒子は粒子径が大きく粗粒であり、60メッシュオンの割合が多く重合が不安定であった。かさ比重も低かった。
比較例10
水性エマルション(a)、ポリビニルアルコール系重合体(B)および(C)の使用割合を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。この場合、得られた塩化ビニル重合体粒子は粒子径が大きく粗粒であり、42メッシュオン、60メッシュオンの割合が多く重合が不安定であった。可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイの数が非常に多い結果となった。
比較例11
水性エマルション(a)の代わりに重合度160、けん化度50モル%の部分けん化PVAを用いたこと以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。各成分の割合は、部分けん化PVAが15質量%であり、PVA(B1)が48質量%であり、PVA(C1)が37質量%であった(配合例30とする)。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。この場合、得られた塩化ビニル重合体粒子は粒子径が大きく粗粒であり、60メッシュオンの割合が多く重合が不安定であった。かさ比重も低かった。
比較例12
PVA(B1)およびPVA(C1)を用いず、代わりに重合度2400、けん化度80モル%のPVAを用いたこと以外は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。各成分の割合は、水性エマルション(a)が15質量%であり、上記PVAが85質量%であった(配合例31とする)。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。この場合、得られた塩化ビニル重合体粒子は可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイの数が非常に多い結果となった。
比較例13
PVA(B)およびPVA(C)を用いずに、水性エマルション(a1)の代わりに水性エマルション(a7)のみを用いたこと以外(配合例32とする)は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。この場合、PVA(B)およびPVA(C)を用いていないため得られた塩化ビニル重合体粒子は可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイの数が非常に多い結果となった。また、使用した水性エマルション(a7)は固形分含有量が低く、経済性で劣る。
比較例14
PVA(B)を用いなかったこと、および水性エマルション(a1)とPVA(C)の使用割合を15/85にしたこと以外(配合例33とする)は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。この場合、PVA(B)を用いてないため得られた塩化ビニル重合体粒子は可塑剤吸収性が低く、粒子が粗粒であり、フィッシュアイの数が非常に多い結果となった。
比較例15
PVA(C)を用いなかったこと、および水性エマルション(a1)とPVA(B)の使用割合を15/85にしたこと以外(配合例34とする)は実施例1と同様にして、塩化ビニルの懸濁重合を行った。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表2に示す。この場合、PVA(C)を用いてないため得られた塩化ビニル重合体粒子はかさ比重が低く、粒子が粗粒であった。
比較例16
用いる脱イオン水の量を計1390部としたこと以外は比較例6と同様にして塩化ビニルの懸濁重合を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。塩化ビニル重合体粒子の評価結果を表3に示す。この場合、得られた塩化ビニル重合体粒子は60メッシュオンの割合が多く重合不安定であるとともに、かさ比重が低い結果となった。可塑剤吸収性が低く、フィッシュアイの数が多い結果となった。また、表3の実施例1、20、比較例6、16をそれぞれ比較すると本発明の製造方法は、使用する塩化ビニルの割合が多く、重合不安定になりやすい重合条件下でも重合安定性に優れ、粗粒化防止、フィッシュアイ数削減に対して優れた効果を発揮する。
Figure 0006525000
Figure 0006525000
本発明で規定した条件を満たす水性エマルション(a)、PVA(B)及びPVA(C)を用いると重合安定性に優れる。本発明の製造方法によれば、懸濁重合時に重合が不安定になりやすい条件、具体的には、ビニル化合物の割合が多い条件下でも粗大粒子の生成が少ない。可塑剤の吸収性が高く、加工が容易であるビニル樹脂が得られる。ビニル樹脂をシート成型時したときフィッシュアイが少なく、かさ比重も向上する。さらに、水性エルション(a)はそのままビニル化合物の懸濁重合を行う重合槽に仕込むことが可能であるため、水溶性の低い従来の部分けん化PVAを用いる場合と比較してハンドリング性、経済性に非常に優れている。したがって、本発明の製造方法の工業的な有用性はきわめて高い。

Claims (6)

  1. 分散安定剤を用いて水性媒体中でビニル化合物を懸濁重合するビニル樹脂の製造方法であって;
    前記分散安定剤が、
    エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体(A)を水性媒体中に分散させてなる水性エマルション(a)と、
    けん化度65モル%以上82モル%未満であり、かつ粘度平均重合度250以上1500未満のポリビニルアルコール(B)と、
    けん化度82モル%以上98モル%未満であり、かつ粘度平均重合度1500以上4000未満のポリビニルアルコール(C)とを含有し、
    重合体(A)、ポリビニルアルコール(B)及びポリビニルアルコール(C)の合計量に対して、重合体(A)を7〜51質量%、ポリビニルアルコール(B)を40〜84質量%及びポリビニルアルコール(C)を9〜53質量%含有することを特徴とするビニル樹脂の製造方法。
  2. 前記水性エマルション(a)の固形分含有量が、35〜70質量%である請求項1に記載の製造方法。
  3. 重合体(A)がポリビニルエステルを含む請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記ポリビニルエステルがポリ酢酸ビニルである請求項3に記載の製造方法。
  5. ポリビニルアルコール(B)およびポリビニルアルコール(C)の残存ビニルエステル基のブロックキャラクターがいずれも0.55以下である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記水性媒体に対する前記ビニル化合物の質量比(ビニル化合物/水性媒体)が0.57〜1.25である請求項1〜5いずれかに記載の製造方法。
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