JPWO2007020781A1 - 被膜形成用塗布液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
アルコキシド化合物を用いて塗布液が調製される場合、一般に使用されるアルコキシド化合物はシリコンアルコキシドを除いては加水分解速度が速い。そのため、アルコキシド化合物の加水分解速度を調整する目的で、アセチルアセトン等のキレート化剤を作用させることが試みられている。しかし、一般にキレート化された化合物は、熱分解温度が高くなり、450℃以上の焼成が望ましいとされている。(例えば、特許文献1参照。)
別の方法として、シリカ−チタニア系塗布液において、シリコンアルコキシドとチタンアルコキシドの加水分解物に鉱酸を添加することで、キレート化等の安定化手段を用いずに透明なコーティング剤とすることが試みられている。この場合も、少なくとも300℃以上の焼成が必要とされている。(例えば、特許文献2参照。)
近年、液晶表示素子の軽薄化が進むにつれて、液晶表示素子に用いられる透明電極膜の抵抗値変化、基板ガラスの薄型化、カラーフィルターの耐熱性等の問題から絶縁膜(酸化物被膜)の形成温度を低下させることが望まれている。更に、液晶表示素子の製造コスト削減や省エネ指向といった状況から、特に250℃以下で硬化する絶縁膜(酸化物被膜)に対する要望が高まってきている。
それと同時に、液晶表示素子の高精細化は、絶縁膜に由来する液晶配向膜のはじきや、ピンホール等が、液晶表示素子の表示特性に大きく影響することから、絶縁膜の改善が望まれている。加えて、前記の改善に伴い、液晶表示素子の製造プロセスにおける歩留まりの向上も求められている。
即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
1.金属アルコキシド(A)を溶媒(B)中で加水分解・縮合反応して生成する縮合物を含有する溶液を得る[工程1]と、
上記[工程1]で得られた溶液を溶媒(C)で置換した溶液を得る[工程2]と、を有することを特徴とする被膜形成用塗布液の製造方法。
但し、金属アルコキシド(A)は、式(1)で表される化合物(式中、R1は炭素数1〜5のアルキル基を表す)から選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシドであり;
2.金属アルコキシド(A)が、更に、式(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のアルコキシシランを含有する1に記載の製造方法。
3.アルコキシシランが、式(2)のnが0である化合物から選ばれる少なくとも1種の硅素化合物である、上記2に記載の製造方法。
4.金属アルコキシド(A)が、アルコキシチタンの1モルに対してアルコキシシランを0.05〜4モル含有する1乃至3のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液の製造方法。
5.金属塩類から選ばれる1種又は複数種の触媒を[工程1]で使用する、上記1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法。
6.[工程2]で得られた溶液に対し、該溶液と相溶する溶媒(D)を添加する[工程3]を有する、上記1乃至5のいずれか1項に記載の製造方法。
7.上記1乃至5のいずれか1項に記載の製造方法により得られる被膜形成用塗布液。
8.上記7に記載の被膜形成用塗布液を用いて得られる被膜。
9.上記7に記載の被膜形成用塗布液を用いて得られる絶縁膜。
10.上記7に記載の被膜形成用塗布液を用いて形成される被膜を有する液晶表示素子用基板。
11.上記7に記載の被膜形成用塗布液を用いて形成される被膜を有する液晶表示素子。
ここで、従来は、グリコール等の安定化剤が配位したアルコキシチタン又はそれを含有する金属アルコキシドが加水分解・縮合して縮合物を生成する。後者(本発明)では、アルコキシチタン又はそれを含有する金属アルコキシドが加水分解・縮合して縮合物を生成した後に、グリコールが配位する。
特に、縮合体のチタン原子とグリコールとの配位状態において、本発明ではグリコールがより脱離し易い状態であると推察される。
そして、この配位状態が、塗布液及びそれから得られる塗膜においても維持されていることで、本発明の効果を発現させるものと推察される。
換言すると、前者に対し、後者(本発明)では、グリコールの脱離が比較的容易なため、低温で塗膜が硬化し易いと言える。
更に、塗膜を液晶表示素子の電極保護膜(絶縁膜)として用いる場合には、塗膜中のチタン原子に配位したグリコールが少ないということが、液晶配向膜のはじきやピンホールを抑制するということに繋がる。つまり、本発明は、塗膜を液晶表示素子の電極保護膜(絶縁膜)として用いる場合にも、液晶配向膜の印刷性を良好にするという非常に優れた効果を奏するのである。
[工程1]について:
この工程1では、金属アルコキシド(A)を溶媒(B)中で加水分解・縮合反応を行う。
この工程1で用いる金属アルコキシド(A)は、式(1)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種のアルコキシチタンが使用される。
この中で、シリコンアルコキシド(以下、アルコキシシランと称す。)は、種類も豊富で市場での入手が容易なので用いやすい。特に、本発明の製造方法によって得られる被膜用塗布液を液晶表示素子に適用する場合、被膜用塗布液から得られる被膜の屈折率調整がし易いため好ましい。
メチルシリケート及びエチルシリケートの縮合体の具体例としては、エチルシリケート40(商品名、多摩化学工業社製)、エチルシリケート48(商品名、日本コルコート社製)、MKCシリケート(商品名、三菱化学社製)、東レ・ダウコーニング社製のシリコンレジン、GE東芝シリコーン社製のシリコンレジン、信越化学工業社製のシリコンレジン、ダウコーニング・アジア社製のヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサン、日本ユニカ社製のシリコンオリゴマー等が挙げられる。
本発明においては、特に、式(2)で表されるアルコキシシランが好適に用いられ、これらの中から選ばれる1種又は複数種を用いることができる。
以下に、上記式(2)で表されるアルコキシシランの具体例を示すがこれに限定されるものではない。
(A)成分として、式(2)で表されるアルコキシシランを用いる場合、アルコキシチタンの1モルに対してアルコキシシランを好ましくは0.05〜4モル、特に好ましくは0.25〜4モルとすることで、150〜250℃の低温で充分に硬化し、液晶配向材の印刷性が良好な塗膜を形成できるという効果が得られ易い。
この効果は、工程1で生成する縮合体中のチタン原子と、(C)成分であるグリコールとの配位状態に依存している。そのため、アルコキシシランが4モルより多い場合には、前記の配位及び結合状態にあるグリコールの量が相対的に少なくなるので、本発明の効果が得られにくくなる。
また、上記した量のアルコキシシランを用いることで、硬化被膜の屈折率を1.50〜2.1の範囲で任意に調整し易くなる。
そしてこの溶媒(B)は、(A)成分を溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
また、経済的な面からは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が用い易い。
触媒としては、酸、アルカリ、金属無機酸塩、有機金属化合物等が用いられる。一般には、酸又は金属無機酸塩が好ましく用いられる。この触媒の具体例を以下に挙げるが、これに限定されない。
酸のうち無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。有機酸としては、蟻酸、酢酸、リンゴ酸等のモノカルボン酸類;蓚酸、クエン酸、プロピオン酸、コハク酸等の多価カルボン酸類等が挙げられる。アルカリとしては、アンモニア、苛性ソーダ、水酸化カリウム等の無機アルカリ;モノエタノールアミン;ジエタノールアミン;トリエタノールアミン;ピリジン等が挙げられる。
IIIa、IVa、Va族の金属としては、Al、In、Sn、Sb、Pb、Bi等が挙げられる。遷移金属としては、Ti、Mn、Fe、Ni、Zn、Y、Zr、Mo、Cu、W、Ce等が挙げられる。
電子材料分野に用いる場合は、金属硝酸塩、その塩基性塩若しくはその水和物又は有機金属化合物が好ましい。より好ましくは、Al、In、Zn、Zr、Ce、Snの硝酸塩、その塩基性塩若しくはその水和物又は有機金属化合物である。
また、工程1においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記した金属無機塩や有機金属化合物を他の触媒と併用してもよい。
本発明においては、上記反応に用いる水の量は、所望により適宜選択することができるが、(A)成分中の全アルコキシド基の0.2〜2.5倍モルである。金属塩が含水塩である場合には、その水分も上記加水分解に用いられる水の量に算入される。
また、アルコキシチタンの加水分解を抑制する目的で予め冷却して加水分解・縮合反応を行ってもよい。さらには、加水分解・縮合反応中に冷却してもよいし、加水分解・縮合反応後冷却してもよい。
水及び触媒は、混合して添加してもよいし、別々に添加してもよい。通常、水及び触媒は溶媒(B)で希釈した溶液として添加することが一般的である。
そして、(A)成分の加水分解・縮合反応を促進する目的で、(A)成分と溶媒(B)の混合溶液を加熱することもできる。加熱温度及び加熱時間は所望により適宜選択できる。例えば、50℃で24時間加熱・撹拌したり、還流下で8時間加熱・撹拌する等の方法が挙げられる。
また、(A)成分と溶媒(B)の混合溶液の加熱途中に、水及び触媒を添加することも可能である。
工程2は、上記工程1で得られた置換前溶液の溶媒(B)を溶媒(C)に溶媒置換することを主とする工程である。
ここで、溶媒(C)は炭素数が2〜10、好ましくは2〜6のグリコールから選ばれる少なくとも1種の有機溶媒であり、溶媒(C)から選ばれる複数種を併用してもよい。
以下に溶媒(C)の具体例を挙げるがこれに限定されるものではない。
エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等が挙げられる。
この中でも、ヘキシレングリコールは基板への濡れ性が良好であるため好ましい。
簡便な方法としては、置換前溶液に溶媒(C)を混合した溶液から溶媒(B)を主とする溶媒を留去する方法が挙げられる。また、置換前溶液から溶媒(B)を主とする溶媒を留去しながら溶媒(C)を加える方法等も挙げられる。
溶媒置換する際の条件は、溶媒の置換効率を高めるために、通常、減圧下で行われるが、常圧下であってもよい。すなわち、好ましくは0.1mmHg(13.3Pa)〜760mmHg(101.3kPa)、特に好ましくは5mmHg(666.6Pa)〜200mmHg(26.7KPa)の条件で溶媒置換することができる。その際、更に溶媒の置換効率を高めるために加熱してもよい。加熱温度は、コストを考慮して100℃以下の温度にすることが好ましいが、溶媒(C)の沸点よりも低い温度であればよい。
また、工程2においては、溶媒(C)の量を調整することによって、置換溶液の金属酸化物固形分換算濃度を調整することも可能である。その際、金属酸化物固形分換算濃度は、好ましくは、20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下とされる。なお、必要に応じて所望の濃度を選択することができる。
このように、上記した工程1及び工程2を経ることによって、(A)成分を溶媒(B)中で加水分解・縮合反応した縮合物を含有する溶液(置換前溶液)を、溶媒(C)で置換して得られる溶液、即ち、置換溶液を得ることができる。
工程3は、被膜形成用塗布液を調製する工程であるが、上記で得られた置換溶液を、そのまま被膜形成用塗布液とする場合は、この工程を省略することも可能である。
通常は、被膜形成用塗布液の酸化物固形分換算濃度の調整や塗布性改善を目的として更に溶媒(D)を加えることで、被膜形成用塗布液を調製する。
また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、無機微粒子、界面活性剤、レベリング剤等のその他の成分を添加することも可能である。
本発明においては、被膜形成用塗布液の金属酸化物換算濃度は、好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは、1〜15質量%である。無機微粒子を用いる場合は、置換溶液中の金属原子と無機微粒子中の金属原子の合計量を酸化物換算した濃度を0.5〜20質量%とすることが好ましい。
上記の溶媒(D)及びその他の成分を添加する方法は、均質な溶液が得られる限りにおいては特に限定されない。
溶媒(D)としては、置換溶液と相溶する溶媒が使用され、この限りにおいて特に限定されず、複数種を併用してもよい。
本発明においては、無機微粒子を含有させることにより、形成される硬化被膜の表面形状やその他の機能を付与することが可能となる。無機微粒子としては、その平均粒子径が0.001〜0.2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.001〜0.1μmである。無機微粒子の平均粒子径が0.2μmを超える場合には、調製される塗布液によって形成される硬化被膜の透明性が低下する場合がある。
無機微粒子の分散媒は、被膜形成用塗布液の保存安定性を良好に保つために、有機溶媒である方が好ましい。コロイド溶液としては、被膜形成用塗布液の安定性の観点から、pH又はpKaが2〜10、特に3〜7に調整されていることが好ましい。
また、レベリング剤及び界面活性剤等は、公知のものを用いることができ、特に市販品は入手が容易なので好ましい。
上記したように、本発明により得られる被膜形成用塗布液は、[工程1]及び[工程2]を含む製造方法で調製され、必要に応じて[工程3]を含む方法で調製することもできる。
本発明の製造方法により得られる被膜形成用塗布液は、基材に塗布し、熱硬化することで所望の硬化被膜を得ることができる。塗布方法は、公知又は周知の方法を採用できる。例えば、ディップ法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、フレキソ印刷法、インクジェット法等を採用できる。これらに中でもフレキソ印刷法において良好な塗膜を形成することができる。
その際、用いる基材は、プラスチック;ガラス;ATO、FTO(fluorine-doped tin oxide)、ITO、IZO等の透明電極付ガラス;セラミックス等の基材を挙げることができる。プラスチックとしては、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース等が挙げられる。その形状は、板又はフィルム等が挙げられる。
被膜形成用塗布液は、塗布前に、フィルター等を用いて濾過することが一般的である。
熱硬化に要する時間は、所望の硬化被膜特性に応じて適宜選択することができるが、10分間以上であればよい。低い硬化温度を選択する場合は、硬化時間を長くすることで充分な硬さを有する硬化被膜を得られやすい。
なお、本発明の被膜形成用塗布液は、温度250℃を超える硬化温度であっても充分な硬さを有する硬化被膜を得ることができる。
また、熱硬化に先立ち、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等を用いてエネルギー線(紫外線等)を照射することも有効である。乾燥した塗膜にエネルギー線を照射することで、更に硬化温度を低下できたり、被膜の硬さを高めたり、屈折率を高めたりすることができる。エネルギー線の照射量は必要に応じて適宜選択することができるが、通常、数百〜数千mJ/cm2が適当である。
本発明により得られる被膜形成用塗布液は、フレキソ印刷での塗膜形成能に優れ、低温で充分に硬化できる被膜を形成することできる。
そして、この被膜上への液晶配向材の印刷性が良好であるため、はじきやピンホールを抑制した液晶配向膜を形成することができる。
従って、本発明により得られる被膜形成用塗布液は、上記した如き特性を有する被膜を形成できるため、液晶表示素子の表示特性向上に非常に有用である。
本実施例における略語の説明は以下のとおりである。
TEOS:テトラエトキシシラン
MTES:メチルトリエトキシシラン
TET:テトラエトキシチタン
TIPT:テトライソプロポキシチタン
HG:ヘキシレングリコール(別名:2−メチル−2,4−ペンタンジオール)
THF:テトラヒドロフラン
PG:プロピレングリコール(別名:1,2−プロパンジオール)
EG:エチレングリコール
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル(別名:1−メトキシ−2−プロパノール)
BCS:ブチルセロソルブ(別名:1−ブトキシ−2−エタノール)
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル(別名:1−ブトキシ−2−プロパノール)
AN:硝酸アルミニウム九水和物
CN:硝酸セリウム六水和物
IN:硝酸インジウム三水和物
下記実施例における測定法を以下に示す。
ジエチレングリコールジブチルエーテルを希釈溶媒とし、ジエチレングリコールジエチルエーテルを内標準物質として、希釈溶媒/内標準物質/被膜形成用塗布液の質量比97.5/0.5/2.0の試料を調製し、ガスクロマトグラフィー(以下、GCと称す。)を用いた内標準法により、被膜形成用塗布液に残存する溶媒(B)量を測定した。GCの測定条件は以下の通りである。
GC測定条件:
装置:Shimadzu GC−14B。
カラム:キャピラリーカラム、CBP1−W25−100(25mm×0.53mmφ×1μm)。
カラム温度:カラム温度は昇温プログラムを用いて制御した。開始温度40℃で4分間保持後、15℃/分で昇温して到達温度300℃で3分保持した。
試料注入量:1μL。
インジェクション温度:270℃。
検出器温度:320℃。
キャリヤーガス:窒素(流量30mL/min)。
検出方法:FID法。
300mlフラスコに純水2.70g、溶媒(B)としてエタノール62.53g及び触媒としてANを2.96g仕込み、撹拌して均一な溶液を得た。この溶液にその他金属アルコキシドとしてTEOSを24.98g加え、室温で30分撹拌した。その後、TETを6.84g添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を置換前溶液(P1)とした。
表1に示す組成で、調製例1と同様の方法で置換前溶液(P2〜P11)を調製した。
但し、調整例4ではその他アルコキシドを用いなかった。
なお、表1中の硝酸は60質量%硝酸水溶液を意味する。
300mlフラスコ中で、調製例1で得られた置換前溶液(P1)を24.00gと、溶媒(C)としてHG25.87gを混合した。次に、NEWロータリーバキュームエバポレーター(東京理化器械社製、NE−1)により60℃で20mmHg(2.67kPa)まで徐々に減圧しながら溶媒を留去して、28.91gの置換溶液(Q1)を得た。その後、置換溶液(Q1)28.91gに溶媒(D)としてPGME11.09gを混合して被膜形成用塗布液(Z1)を調製した。この塗布液(Z1)について、溶媒(B)の残存量をGCで測定したところ、5.7質量%であった。
また、得られた被膜形成用塗布液(Z1)について、後述する方法を用いて鉛筆硬度、屈折率、印刷性及び液晶配向膜印刷性を評価した。結果は表3に示す。
表2に示す組成で、置換前溶液(P2〜P11)を溶媒(C)で、実施例1と同様の方法で置換し、置換溶液(Q2〜Q15)を得た。そして、表2に示す組成で、置換溶液(Q2〜Q15)に溶媒(D)を加えて被膜形成用塗布液(Z2〜Z15)を調製した。この塗布液(Z2〜Z15)中の残存溶媒(B)量をGCで測定した。
また、得られた被膜形成用塗布液(Z2〜Z15)について、後述する方法を用いて鉛筆硬度、屈折率、印刷性及び液晶配向膜印刷性を評価した。結果は表3に示す。
TEOS20.8gをエタノールに混合した溶液に、水5.4gとアルカリ触媒として28質量%アンモニア水溶液0.6gとをエタノール23.2gに溶解、混合した溶液を、室温で撹拌しながら混合した。30分後、液はコロイド色を呈し始め、粒子状の生成物が確認された。その後、室温で24時間撹拌を続け、SiO2換算濃度で6質量%の、エタノールに分散したシリカコロイド溶液を得た。得られた溶液のコロイド粒子の粒子径を、DLS−7000(大塚電子社製)を用いて測定した結果、動的光散乱法による平均粒子径が20nmであった。
表2に示される被膜形成用塗布液(Z2)10.00gと粒子分散溶液K10.00gを混合して、被膜形成用塗布液(Z16)を調製した。
また、得られた被膜形成用塗布液(Z16)について、後述する方法を用いて鉛筆硬度、屈折率、印刷性及び液晶配向膜印刷性を評価した。結果は表3に示す。
300mlフラスコ中で、純水1.49gにAN1.63gを溶解した溶液と、PGME23.66gとHG26.94gとを混合した。これにTEOS8.60gを添加して室温で30分撹拌した。その後、TET9.42gとHG28.26gをあらかじめ混合しておいた溶液を加え、室温で30分撹拌して塗布液(T1)を得た。
また、得られた塗布液(T1)について、後述する方法を用いて鉛筆硬度、屈折率、印刷性及び液晶配向膜印刷性を評価した。結果は表3に示す。
300mlフラスコ中で、純水1.31gにAN1.43gを溶解した溶液と、PGME24.20gとHG6.74gとを混合した。これに、TET16.58gとHG49.74gをあらかじめ混合しておいた溶液を加え、室温で30分撹拌して塗布液(T2)を得た。
また、得られた塗布液(T2)について、後述する方法を用いて鉛筆硬度、屈折率、印刷性及び液晶配向膜印刷性を評価した。結果は表3に示す。
300mlフラスコ中で、純水1.49gにAN1.63gを溶解した溶液と、PGME23.66gとEG7.89gとHG19.07gとを混合した。これにTEOS8.60gを添加して室温で30分撹拌した。その後、TET9.42gとHG28.25gをあらかじめ混合しておいた溶液を加え、室温で30分撹拌して塗布液(T3)を得た。
また、得られた塗布液(T3)について、後述する方法を用いて鉛筆硬度、屈折率、印刷性及び液晶配向膜印刷性を評価した。結果は表3に示す。
実施例の被膜形成用塗布液及び比較例の塗布液をクロマトディスク(倉敷紡績社製、孔径0.45μm)を用いて濾過した。その後、ITO付ガラス基板(ITOの膜厚が0.7mm)上に滴下して、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用いて、回転数300rpmで5秒間の予備回転の後、回転数4000rpmで20秒間回転させて塗膜を形成した。次いで、温度80℃のホットプレート上で3分間乾燥させた後、ホットプレート上で硬化温度180℃として15分間加熱して硬化被膜を得た。得られた硬化被膜の鉛筆硬度を試験法(JIS K5400)に準拠して測定した。
但し、実施例3、実施例14及び比較例3においては、硬化温度を200℃とし、実施例4及び比較例2においては硬化温度を250℃とした。
基板をITO付ガラス基板からシリコン基板(100)に代えた以外は、上記の[鉛筆硬度]評価と同様の方法で硬化被膜を形成した。エリプソメーター(溝尻光学工業所社製、DVA−36L型)で波長633nmにおける屈折率を測定した。
実施例の被膜形成用塗布液及び比較例の塗布液をクロマトディスク(倉敷紡績社製、孔径0.45μm)を用いて濾過した。その後、DR型印刷機(日本写真印刷社製、アニロックスロール(360#)、凸版(網点400L30%70°))を用いてITO付ガラス基板(ITOの膜厚が0.7mm)上に塗膜を形成した。この塗膜を、温度80℃のホットプレート上で3分間乾燥させた後、ホットプレート上で硬化温度180℃として15分間加熱して硬化被膜を得た。得られた硬化被膜を目視で観察し、硬化被膜にピンホール・ムラがない良好な場合を○、ピンホール・ムラが生じている場合を△、はじきを生じて基板上に充分に成膜されていない状態を×とした。
但し、実施例3、実施例14及び比較例3においては、硬化温度を200℃とし、実施例4及び比較例2においては硬化温度を250℃とした。
上記した[印刷性]と同様の方法で形成した硬化被膜上に、DR型印刷機(日本写真印刷社製、アニロックスロール(360#)、凸版(網点400L30%70°))を用いて、液晶配向材(日産化学工業社製、サンエバー(登録商標)SE−5291 032B(商品名))を塗布した。その後、温度80℃のホットプレート上で、3分間乾燥して液晶配向膜を形成した。形成した液晶配向膜を目視で観察し、液晶配向膜にはじき、ピンホール及びムラがない良好な場合を○、ピンホール又はムラが生じている場合を△、はじきを生じて基板上に充分に成膜されていない状態を×とした。
実施例1で得られた被膜形成用塗布液(Z1)について、以下に示す方法により、鉛筆硬度(UV照射有)、屈折率(UV照射有)及び液晶配向膜印刷性(UV照射有)を評価した。結果を表4に示す。
実施例2で得られた被膜形成用塗布液(Z2)について、以下に示す方法により、鉛筆硬度(UV照射有)、屈折率(UV照射有)及び液晶配向膜印刷性(UV照射有)を評価した。結果を表4に示す。
被膜形成用塗布液をクロマトディスク(倉敷紡績社製、孔径0.45μm)を用いて濾過した後、ITO付ガラス基板上に滴下して、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用いて、回転数300rpmで5秒間の予備回転の後、回転数4000rpmで20秒間回転させて塗膜を形成した。次いで、温度80℃のホットプレート上で3分間乾燥させた。その後、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、UB 011−3A形)、高圧水銀ランプ(入力電源1000W)を用いて50mW/cm2(波長350nm換算)で2分間照射し(積算6000mJ/cm2)、ホットプレート上で硬化温度150℃として15分間加熱して硬化被膜を得た。得られた硬化被膜の鉛筆硬度を試験法(JIS K5400)に準拠して測定した。
基板をITO付ガラス基板からシリコン基板(100)に代えた以外は、上記の[鉛筆硬度(UV照射有)]評価と同様の方法で硬化被膜を形成した。エリプソメーター(溝尻光学工業所社製、DVA−36L型)で波長633nmにおける屈折率を測定した。
上記した[鉛筆硬度(UV照射有)]評価と同様の方法で形成した硬化被膜上に、DR型印刷機(日本写真印刷社製、アニロックスロール(360#)、凸版(網点400L30%70°))を用いて、液晶配向材(日産化学工業社製、サンエバー(登録商標)SE−5291 032B(商品名))を塗布した。その後、温度80℃のホットプレート上で、3分間乾燥して液晶配向膜を形成した。形成した液晶配向膜を目視で観察し、液晶配向膜にはじき、ピンホール及びムラがない良好な場合を○、ピンホール又はムラが生じている場合を△、はじきを生じて基板上に充分に成膜されていない状態を×とした。
実施例1で得られた被膜形成用塗布液(Z1)について、硬化温度を150℃から300℃に代えた以外は実施例17と同様の方法により、鉛筆硬度(UV照射有)、屈折率(UV照射有)及び液晶配向膜印刷性(UV照射有)を評価した。結果を表5に示す。
実施例2で得られた被膜形成用塗布液(Z2)について、硬化温度を150℃から300℃に代えた以外は実施例18と同様の方法により、鉛筆硬度(UV照射有)、屈折率(UV照射有)及び液晶配向膜印刷性(UV照射有)を評価した。結果を表5に示す。
実施例2の被膜形成用塗布液(Z2)を秤量瓶に1g秤量し、オーブンで温度120℃1時間乾燥後、温度180℃で2時間焼成した。焼成残分の質量を測定し、次の式を用いて、残留有機成分量を算出した。その際、被膜形成用塗布液に含まれる全ての金属原子を酸化物として算出した値を金属酸化物固形分量とした。結果を表6に示す。
(i)残留有機成分量(質量%)={(焼成残分の質量−金属酸化物固形分量)/(焼成残分の質量)}×100
(ii)固形分濃度(質量%)={(焼成残分の質量)/(被膜形成用塗布液の質量)}×100
(iii)金属酸化物換算濃度(質量%)={(金属酸化物固形分量)/(被膜用形成塗布液の質量)}×100
比較例1の塗布液(T1)について、実施例19の被膜形成用塗布液(Z2)を塗布液(T1)に代えた以外は実施例19と同様にして残留有機成分量を算出した。結果は表6に示す。
実施例2の被膜形成用塗布液(Z2)について、Z2をガラス基板上に滴下し、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用いて、回転数300rpmで5秒の予備回転の後、回転数4000rpmで20秒回転させて成膜した。次いで、成膜したガラス基板をホットプレート上で温度80℃、3分間乾燥させた。この塗膜を、削って、Z2の乾燥粉末を採取した。採取した粉末を熱重量示差熱分析測定装置(マックサイエンス社製、モデル WS 002)を用い、室温から500℃まで毎分5℃で昇温させて、粉末のTG(重量減少率)及びDTA(示差熱)を測定した。測定結果を図1及び図2に示す。
この結果から、140℃付近に吸熱を伴う重量減少と、200℃付近に、吸熱した後に発熱を伴う重量減少が確認された。
実施例20において、被膜形成用塗布液(Z2)を比較例1の塗布液(T1)に代えた以外は実施例20と同様にして、T1の乾燥粉末の重量減少率及び示差熱を測定した。測定結果を図1及び図2に示す。
この結果、160℃付近に吸熱を伴う重量減少、230℃付近に吸熱を伴う重量減少及び270℃付近に発熱を伴う重量減少が確認された。
実施例1〜実施例16の結果(表3参照)から、本発明により得られる被膜形成用塗布液は、低温の硬化温度において、一般的にその被膜を液晶表示素子の電極保護膜(絶縁膜)として使用する場合に充分な硬度とされる5H以上の鉛筆硬度を示した。
そして、この被膜上に、はじきやピンホールを抑制した液晶配向膜を形成することが確認された。
また、熱硬化に先立ち、乾燥した塗膜に紫外線を照射することで、更に硬化温度を低下して150℃で、被膜の硬さ及び屈折率を高めることができ、さらに、この被膜上に形成された液晶配向膜は、はじきやピンホールのない優れた成膜性を示した。
更に、屈折率を1.5〜2.1の範囲で任意に調整しうる被膜が形成された。
実施例19及び比較例4の結果(表6参照)から、本発明により得られる被膜形成用塗布液は、低温で硬化した被膜に残存する有機成分(炭素成分)が少ないことが確認された。このことから、低温の硬化条件で有機成分(主としてグリコール)の脱離・分解が起こっていると推察される。
実施例20及び比較例5の熱重量示差熱分析の結果(図1及び図2)から、本発明により得られる被膜形成用塗布液を用いて形成される塗膜の残留有機成分が、より離脱・分解し易い状態であると推察される。このことが、塗膜の硬化を促進し、低温で硬化し易いことに繋がると考えられる。
従って、各種電子部品や表示装置、特に液晶表示装置に有用である。
なお、2005年8月19日に出願された日本特許出願2005−239057号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
Claims (11)
- 金属アルコキシド(A)を溶媒(B)中で加水分解・縮合反応して生成する縮合物を含有する溶液を得る[工程1]と、
上記[工程1]で得られた溶液を溶媒(C)で置換した溶液を得る[工程2]と、を有することを特徴とする被膜形成用塗布液の製造方法。
但し、金属アルコキシド(A)は、式(1)で表される化合物(式中、R1は炭素数1〜5のアルキル基を表す)から選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシドであり;
- アルコキシシランが、式(2)のnが0である化合物から選ばれる少なくとも1種の硅素化合物である請求項2に記載の被膜形成用塗布液の製造方法。
- 金属アルコキシド(A)が、アルコキシチタンの1モルに対してアルコキシシランを0.05〜4モル含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液の製造方法。
- 金属塩類から選ばれる1種又は複数種の触媒を[工程1]で使用する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液の製造方法。
- [工程2]で得られた溶液に対し、該溶液と相溶する溶媒(D)を添加する[工程3]を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被膜形成用塗布液の製造方法。
- 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の製造方法により得られる被膜形成用塗布液。
- 請求項7に記載の被膜形成用塗布液を用いて得られる被膜。
- 請求項7に記載の被膜形成用塗布液を用いて得られる絶縁膜。
- 請求項7に記載の被膜形成用塗布液を用いて形成される被膜を有する液晶表示素子用基板。
- 請求項7に記載の被膜形成用塗布液を用いて形成される被膜を有する液晶表示素子。
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