JPWO2005063065A1 - 空調衣服 - Google Patents
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Abstract
本発明は、少ない消費電力で、着用者の個体差や使用目的に応じて人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することができる空調衣服を提供することを目的とする。この空調衣服は、身体との間の空間において空気を身体の表面に沿って案内するための服地部20と、服地部20と身体との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すための三つの空気流通部40,40,40と、服地部20と身体との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせる二つの送風手段50,50と、送風手段50,50に電力を供給する電源手段61とを備える。送風手段50,50は、外部の空気を服地部20内に取り込み、6リットル/秒の流量で流れる空気を発生させる。これにより、空調衣服は、汗をすばやく蒸発させることができるので、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大して、十分な冷却効果を奏することができる。11
Description
本発明は、人間が本来的に有している、汗の気化熱による身体の冷却機能を、有効に働かせるための補助装置として用いられる空調衣服に関するものである。
夏などの暑い季節に、暑さを解消する手段として現在最も広く用いられているのはエアーコンディショナーである。これは、部屋の空気を直接冷やすものであるため、暑さを解消するという点においては、非常に有効である。
しかしながら、エアーコンディショナーは、高価な装置であり、世帯普及率は高くなってきたが、一つの世帯の各部屋ごとに普及するまでには至っていない。また、エアーコンディショナーは大量の電力を消費するため、エアーコンディショナーが普及することによって社会全体の電力消費も増え、しかも、発電の大きな割合を化石燃料に頼っている現状では、エアーコンディショナーが普及することによって、地球全体の温暖化につながるという皮肉な結果を招く。また、エアーコンディショナーは、部屋の空気そのものを冷却するので、冷えすぎによって健康を損なうといった問題も考えられる。
上記問題を解決するために、本発明者は、暑い季節でも消費電力が少なく、かつ快適に過ごすことのできる冷却衣服を案出している(PCT/JP01/01360)。かかる冷却衣服は、衣服と下着又は体との間に空気を流通させるための流通路と、衣服に一体的に設けられた送風手段とを備える。この冷却衣服では、送風手段により外部の空気を流通路内に取り込んで流通させることにより、体温と外部の空気の温度との温度差により身体を冷却する。この冷却衣服を着用するだけで、着用者は、暑さを解消できる。このため、冷却衣服を広く普及させれば、ほとんどエアーコンディショナーを必要としなくなり、地球環境保護に貢献するところ極めて大である。
ところで、一般に、冷却衣服を着用することによって得られる冷却効果は、着用者の個体差や使用目的によって異なる。例えば、体重の重い人が冷却衣服を着用する場合には、体重の軽い人が冷却衣服を着用する場合よりも、大きな流量の空気を流通路に流さなければ、十分な冷却効果が得られないことがある。また、着用者が重作業に従事する場合には、軽作業に従事する場合よりも、大きな流量の空気を流通路に流さなければ、十分な冷却効果が得られない。従来の冷却衣服では、この点について考慮されておらず、ただ衣服と下着又は体との間に空気を流すだけであった。しかも、従来の冷却衣服には、後述する汗を冷媒とした生理クーラーを活用するという概念が含まれていなかった。後述するように、生理クーラーを活用するためには周囲の温度、着用者の行う仕事の内容、着用者の体重等の条件により決まる一定流量以上の空気を流通させることが必要であり、これらの条件を考慮せず、単に少量の空気を流通させることを前提とした従来の冷却衣服では、目的とする十分な冷却効果が得られなかった。
しかしながら、エアーコンディショナーは、高価な装置であり、世帯普及率は高くなってきたが、一つの世帯の各部屋ごとに普及するまでには至っていない。また、エアーコンディショナーは大量の電力を消費するため、エアーコンディショナーが普及することによって社会全体の電力消費も増え、しかも、発電の大きな割合を化石燃料に頼っている現状では、エアーコンディショナーが普及することによって、地球全体の温暖化につながるという皮肉な結果を招く。また、エアーコンディショナーは、部屋の空気そのものを冷却するので、冷えすぎによって健康を損なうといった問題も考えられる。
上記問題を解決するために、本発明者は、暑い季節でも消費電力が少なく、かつ快適に過ごすことのできる冷却衣服を案出している(PCT/JP01/01360)。かかる冷却衣服は、衣服と下着又は体との間に空気を流通させるための流通路と、衣服に一体的に設けられた送風手段とを備える。この冷却衣服では、送風手段により外部の空気を流通路内に取り込んで流通させることにより、体温と外部の空気の温度との温度差により身体を冷却する。この冷却衣服を着用するだけで、着用者は、暑さを解消できる。このため、冷却衣服を広く普及させれば、ほとんどエアーコンディショナーを必要としなくなり、地球環境保護に貢献するところ極めて大である。
ところで、一般に、冷却衣服を着用することによって得られる冷却効果は、着用者の個体差や使用目的によって異なる。例えば、体重の重い人が冷却衣服を着用する場合には、体重の軽い人が冷却衣服を着用する場合よりも、大きな流量の空気を流通路に流さなければ、十分な冷却効果が得られないことがある。また、着用者が重作業に従事する場合には、軽作業に従事する場合よりも、大きな流量の空気を流通路に流さなければ、十分な冷却効果が得られない。従来の冷却衣服では、この点について考慮されておらず、ただ衣服と下着又は体との間に空気を流すだけであった。しかも、従来の冷却衣服には、後述する汗を冷媒とした生理クーラーを活用するという概念が含まれていなかった。後述するように、生理クーラーを活用するためには周囲の温度、着用者の行う仕事の内容、着用者の体重等の条件により決まる一定流量以上の空気を流通させることが必要であり、これらの条件を考慮せず、単に少量の空気を流通させることを前提とした従来の冷却衣服では、目的とする十分な冷却効果が得られなかった。
本発明は、このような技術的背景のもとになされたものであり、少ない消費電力で、着用者の個体差や使用目的に応じて人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することができる空調衣服を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、を備え、前記送風手段は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とするものである。
請求項1記載の発明に係る空調衣服では、送風手段として着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させることができるものを用いている。このため、かかる空調衣服は、身体から生じた汗をすばやく蒸発させることができるので、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大して、十分な冷却効果を奏することができる。
上記の目的を達成するための請求項2記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、を備え、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大し、且つ、外部の空気が温度33℃、湿度50%である場合、身体から生じた汗が周囲から奪う気化熱が着用者の体重1kg当たり少なくとも340カロリー/時であるような空調能力を有することを特徴とするものである。
ここで、外部の空気が温度33℃、湿度50%である場合、送風手段が、その外部の空気を利用して、着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させると、身体から生じた汗が周囲から奪う気化熱は着用者の体重1kg当たり少なくとも340カロリー/時である。したがって、請求項2記載の発明に係る空調衣服も、請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。
上記の目的を達成するための請求項3記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に外部の空気を取り込むと共に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、を備え、前記送風手段は少なくとも2リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とするものである。
請求項3記載の発明に係る空調衣服は、上記の請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。特に、請求項3記載の発明に係る空調衣服では、送風手段が少なくとも2リットル/秒の流量で空気を送り出すことにより、その空気の圧力によって、空気案内手段と身体又は下着との間に、空気を身体又は下着の表面に沿って略平行に流すための空間を自動的に形成することができる。
上記の目的を達成するための請求項4記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための少なくとも二つの送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、を備え、前記送風手段は、前記空気案内手段の背中側の下部であって脇腹に近い部位に取り付けられ、着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とするものである。
請求項4記載の発明に係る空調衣服は、上記の請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。特に、請求項4記載の発明に係る空調衣服では、送風手段を空気案内手段の背中側の下部であって脇腹に近い部位に取り付けたことにより、着用者が椅子にもたれかかったときでも送風手段が邪魔になることはなく、しかも、作業時に腕を送風手段にぶつけてしまうこともない。また、前から見たときに、送風手段が見えず、空調衣服の見栄えをよくすることができる。更に、空気流通部が空気案内手段の上部に形成される場合には、空気案内手段で覆われる身体部分の略全体に空気を流通させることが可能である。
上記の目的を達成するための請求項5記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に外部の空気を取り込むと共に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、を備え、前記送風手段は、前記空気案内手段の背部に取り付けられ、少なくとも10リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とするものである。
請求項5記載の発明に係る空調衣服は、上記の請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。特に、請求項5記載の発明に係る空調衣服では、送風手段を空気案内手段の背部に取り付け、送風手段として少なくとも10リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものを用いることにより、かかる空調衣服は、例えば立ち作業用の作業服として用いるのに好適である。
上記の目的を達成するための請求項6記載の発明に係る空調衣服は、上着の下に着用される空調衣服であって、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、を備え、前記送風手段は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、しかも前記送風手段の最大静圧が少なくとも30パスカルであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体の表面近傍における温度勾配を大きくして体を冷却すると共に、身体から生じた汗を蒸発させ、その蒸発の際に汗が周囲から奪う気化熱を利用して身体を冷却することを特徴とするものである。
請求項6記載の発明に係る空調衣服は、上記の請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。特に、請求項6記載の発明に係る空調衣服では、送風手段として、最大静圧が少なくとも30パスカルであるような送風圧力特性を有するものを用いることにより、送風手段は、例えば、空気案内手段と身体又は下着との間の空間を流れる空気を空気案内手段と上着との間の空間に確実に排気することができる。したがって、かかる空調衣服は、上着と身体又は下着との間に着用する中着服として用いるのに好適である。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、を備え、前記送風手段は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とするものである。
請求項1記載の発明に係る空調衣服では、送風手段として着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させることができるものを用いている。このため、かかる空調衣服は、身体から生じた汗をすばやく蒸発させることができるので、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大して、十分な冷却効果を奏することができる。
上記の目的を達成するための請求項2記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、を備え、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大し、且つ、外部の空気が温度33℃、湿度50%である場合、身体から生じた汗が周囲から奪う気化熱が着用者の体重1kg当たり少なくとも340カロリー/時であるような空調能力を有することを特徴とするものである。
ここで、外部の空気が温度33℃、湿度50%である場合、送風手段が、その外部の空気を利用して、着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させると、身体から生じた汗が周囲から奪う気化熱は着用者の体重1kg当たり少なくとも340カロリー/時である。したがって、請求項2記載の発明に係る空調衣服も、請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。
上記の目的を達成するための請求項3記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に外部の空気を取り込むと共に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、を備え、前記送風手段は少なくとも2リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とするものである。
請求項3記載の発明に係る空調衣服は、上記の請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。特に、請求項3記載の発明に係る空調衣服では、送風手段が少なくとも2リットル/秒の流量で空気を送り出すことにより、その空気の圧力によって、空気案内手段と身体又は下着との間に、空気を身体又は下着の表面に沿って略平行に流すための空間を自動的に形成することができる。
上記の目的を達成するための請求項4記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための少なくとも二つの送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、を備え、前記送風手段は、前記空気案内手段の背中側の下部であって脇腹に近い部位に取り付けられ、着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とするものである。
請求項4記載の発明に係る空調衣服は、上記の請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。特に、請求項4記載の発明に係る空調衣服では、送風手段を空気案内手段の背中側の下部であって脇腹に近い部位に取り付けたことにより、着用者が椅子にもたれかかったときでも送風手段が邪魔になることはなく、しかも、作業時に腕を送風手段にぶつけてしまうこともない。また、前から見たときに、送風手段が見えず、空調衣服の見栄えをよくすることができる。更に、空気流通部が空気案内手段の上部に形成される場合には、空気案内手段で覆われる身体部分の略全体に空気を流通させることが可能である。
上記の目的を達成するための請求項5記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に外部の空気を取り込むと共に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、を備え、前記送風手段は、前記空気案内手段の背部に取り付けられ、少なくとも10リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とするものである。
請求項5記載の発明に係る空調衣服は、上記の請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。特に、請求項5記載の発明に係る空調衣服では、送風手段を空気案内手段の背部に取り付け、送風手段として少なくとも10リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものを用いることにより、かかる空調衣服は、例えば立ち作業用の作業服として用いるのに好適である。
上記の目的を達成するための請求項6記載の発明に係る空調衣服は、上着の下に着用される空調衣服であって、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、を備え、前記送風手段は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、しかも前記送風手段の最大静圧が少なくとも30パスカルであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体の表面近傍における温度勾配を大きくして体を冷却すると共に、身体から生じた汗を蒸発させ、その蒸発の際に汗が周囲から奪う気化熱を利用して身体を冷却することを特徴とするものである。
請求項6記載の発明に係る空調衣服は、上記の請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。特に、請求項6記載の発明に係る空調衣服では、送風手段として、最大静圧が少なくとも30パスカルであるような送風圧力特性を有するものを用いることにより、送風手段は、例えば、空気案内手段と身体又は下着との間の空間を流れる空気を空気案内手段と上着との間の空間に確実に排気することができる。したがって、かかる空調衣服は、上着と身体又は下着との間に着用する中着服として用いるのに好適である。
図1は生理クーラーの原理を説明するための人体の概略ブロック図である。
図2は身体の表面近傍に10リットル/秒の流量の空気を流した状況下で汗の気化熱により身体表面の温度を33℃に保つ場合における最大放熱可能量と外気の温湿度との関係を説明するための図である。
図3は2枚の平行平板の間に空気を流したときに一の平板からの距離に対する風速の分布を模式的に表した図である。
図4は理想的な身体平行風を実現するための空調衣服を説明するための図である。
図5は各種の空調衣服の仕様を説明するための図である。
図6は各種の空調衣服の仕様を説明するための図である。
図7は各種の空調衣服の仕様を説明するための図である。
図8は各種の空調衣服の仕様を説明するための図である。
図9Aは本発明の第一実施形態である空調衣服の概略正面図、図9Bはその空調衣服の概略背面図である。
図10Aは第一実施形態の空調衣服に用いられる送風手段の概略断面図、図10Bはその送風手段に用いられる羽根車の概略平面図である。
図11Aはその送風手段に用いられる内部ファンガードの概略側面図、図11Bはその送風手段に用いられる内部ファンガードの概略平面図、図11Cはその送風手段に用いられる外部ファンガードの概略平面図である。
図12Aは服地部に形成された孔部を説明するための図、図12Bはその服地部に送風手段を取り付けたときの様子を説明するための図である。
図13Aは本発明の第二実施形態である空調衣服の概略正面図、図13Bはその空調衣服の概略背面図である。
図14Aはその空調衣服に用いられる集積ベルトの概略平面図、図14Bはその集積ベルトを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。
図15Aはその空調衣服に用いられる局所スペーサの概略平面図、図15Bはその局所スペーサの概略側面図、図15Cはその局所スペーサを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。
図16Aは本発明の第三実施形態である空調衣服の概略正面図、図16Bはその空調衣服の概略背面図である。
図17Aは本発明の第四実施形態である空調衣服の概略正面図、図17Bはその空調衣服の概略背面図である。
図18Aは本発明の第五実施形態である空調衣服の概略正面図、図18Bはその空調衣服の概略背面図である。
図19Aはその空調衣服に用いられる耐圧スペーサの一部の概略平面図、図19Bはその耐圧スペーサの一部の概略側面図である。
図20Aは本発明の第六実施形態である空調衣服の概略正面図、図20Bはその空調衣服の概略背面図、図20Cはその空調衣服の下に着用される下着の概略正面図である。
図21Aは本発明の第七実施形態である空調衣服の概略正面図、図21Bはその空調衣服の概略背面図である。
図22はその空調衣服に用いられる送風手段を説明するための図である。
図23Aは本発明の第八実施形態である空調衣服の概略正面図、図23Bはその空調衣服の概略背面図である。
図24Aは本発明の第九実施形態である空調衣服の概略正面図、図24Bはその空調衣服の概略背面図である。
図25Aは本発明の第十実施形態である空調衣服の概略正面図、図25Bはその空調衣服の概略背面図である。
図26Aは本発明の第十一実施形態である空調衣服の概略正面図、図26Bはその空調衣服の概略背面図である。
図27Aは本発明の第十二実施形態である空調衣服の概略正面図、図27Bはその空調衣服の概略背面図である。
図28はその空調衣服に用いられる送風手段を説明するための図である。
図29Aは本発明の第十三実施形態である空調衣服の概略正面図、図29Bはその空調衣服の概略背面図、図29Cはその空調衣服に用いられる下部空気漏れ防止手段を説明するための図である。
図30Aは本発明の第十四実施形態である空調衣服の概略正面図、図30Bはその空調衣服の概略背面図である。
図31はその空調衣服における回路部の概略ブロック図である。
図32Aは本発明の第十五実施形態である空調衣服の概略正面図、図32Bはその空調衣服の概略背面図である。
図33Aはその空調衣服に用いられる送風手段の概略正面図、図33Bはその送風手段の概略側面図である。
図34Aはその空調衣服を着用したときの様子を説明するための図、図34Bはその空調衣服を着用したときのベルト部分の様子を説明するための図である。
図35Aは本発明の第十六実施形態である空調衣服の概略正面図、図35Bはその空調衣服の概略背面図である。
図36Aはその空調衣服に用いられる空調ベルトを裏面側から見たときの概略平面図、図36Bはその空調ベルトが巻き付けられた状態を説明するための図である。
図37はその空調衣服に用いられる送風手段の概略側面図である。
図38は送風手段から空気案内手段と身体又は下着との間の空間を介して空気流通部に至るまでの空気の流れの経路を模式的に示した図である。
図2は身体の表面近傍に10リットル/秒の流量の空気を流した状況下で汗の気化熱により身体表面の温度を33℃に保つ場合における最大放熱可能量と外気の温湿度との関係を説明するための図である。
図3は2枚の平行平板の間に空気を流したときに一の平板からの距離に対する風速の分布を模式的に表した図である。
図4は理想的な身体平行風を実現するための空調衣服を説明するための図である。
図5は各種の空調衣服の仕様を説明するための図である。
図6は各種の空調衣服の仕様を説明するための図である。
図7は各種の空調衣服の仕様を説明するための図である。
図8は各種の空調衣服の仕様を説明するための図である。
図9Aは本発明の第一実施形態である空調衣服の概略正面図、図9Bはその空調衣服の概略背面図である。
図10Aは第一実施形態の空調衣服に用いられる送風手段の概略断面図、図10Bはその送風手段に用いられる羽根車の概略平面図である。
図11Aはその送風手段に用いられる内部ファンガードの概略側面図、図11Bはその送風手段に用いられる内部ファンガードの概略平面図、図11Cはその送風手段に用いられる外部ファンガードの概略平面図である。
図12Aは服地部に形成された孔部を説明するための図、図12Bはその服地部に送風手段を取り付けたときの様子を説明するための図である。
図13Aは本発明の第二実施形態である空調衣服の概略正面図、図13Bはその空調衣服の概略背面図である。
図14Aはその空調衣服に用いられる集積ベルトの概略平面図、図14Bはその集積ベルトを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。
図15Aはその空調衣服に用いられる局所スペーサの概略平面図、図15Bはその局所スペーサの概略側面図、図15Cはその局所スペーサを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。
図16Aは本発明の第三実施形態である空調衣服の概略正面図、図16Bはその空調衣服の概略背面図である。
図17Aは本発明の第四実施形態である空調衣服の概略正面図、図17Bはその空調衣服の概略背面図である。
図18Aは本発明の第五実施形態である空調衣服の概略正面図、図18Bはその空調衣服の概略背面図である。
図19Aはその空調衣服に用いられる耐圧スペーサの一部の概略平面図、図19Bはその耐圧スペーサの一部の概略側面図である。
図20Aは本発明の第六実施形態である空調衣服の概略正面図、図20Bはその空調衣服の概略背面図、図20Cはその空調衣服の下に着用される下着の概略正面図である。
図21Aは本発明の第七実施形態である空調衣服の概略正面図、図21Bはその空調衣服の概略背面図である。
図22はその空調衣服に用いられる送風手段を説明するための図である。
図23Aは本発明の第八実施形態である空調衣服の概略正面図、図23Bはその空調衣服の概略背面図である。
図24Aは本発明の第九実施形態である空調衣服の概略正面図、図24Bはその空調衣服の概略背面図である。
図25Aは本発明の第十実施形態である空調衣服の概略正面図、図25Bはその空調衣服の概略背面図である。
図26Aは本発明の第十一実施形態である空調衣服の概略正面図、図26Bはその空調衣服の概略背面図である。
図27Aは本発明の第十二実施形態である空調衣服の概略正面図、図27Bはその空調衣服の概略背面図である。
図28はその空調衣服に用いられる送風手段を説明するための図である。
図29Aは本発明の第十三実施形態である空調衣服の概略正面図、図29Bはその空調衣服の概略背面図、図29Cはその空調衣服に用いられる下部空気漏れ防止手段を説明するための図である。
図30Aは本発明の第十四実施形態である空調衣服の概略正面図、図30Bはその空調衣服の概略背面図である。
図31はその空調衣服における回路部の概略ブロック図である。
図32Aは本発明の第十五実施形態である空調衣服の概略正面図、図32Bはその空調衣服の概略背面図である。
図33Aはその空調衣服に用いられる送風手段の概略正面図、図33Bはその送風手段の概略側面図である。
図34Aはその空調衣服を着用したときの様子を説明するための図、図34Bはその空調衣服を着用したときのベルト部分の様子を説明するための図である。
図35Aは本発明の第十六実施形態である空調衣服の概略正面図、図35Bはその空調衣服の概略背面図である。
図36Aはその空調衣服に用いられる空調ベルトを裏面側から見たときの概略平面図、図36Bはその空調ベルトが巻き付けられた状態を説明するための図である。
図37はその空調衣服に用いられる送風手段の概略側面図である。
図38は送風手段から空気案内手段と身体又は下着との間の空間を介して空気流通部に至るまでの空気の流れの経路を模式的に示した図である。
本発明に係る空調衣服は、人間が本来的に有している、汗の気化熱による身体の冷却機能を、有効に働かせるための補助装置として用いられるものである。まず、この点について詳しく説明する。
人間は食物を摂取して、生命維持活動や仕事を行い、それに対応して産熱する非常に効率の悪い作業装置と考えることができる。効率が悪いゆえに、摂取したカロリーのほとんどが熱になる。そして、正常な体温を維持するためには、そのときの作業量に応じた量の放熱が必要になる。具体的に、標準的な大人の場合、身体からの放熱量は、安静時で約100キロカロリー/時、歩行時(速度5km/時)で約260キロカロリー/時である。また、最大労働時では、放熱量は1000キロカロリー/時を超えるといわれている。かかる放熱を行うための機能として、人間には本来的に発汗により身体を冷却する機能(以下、これを「生理クーラー」とも称する。)が備わっており、この生理クーラーは、上述の最大労働時の放熱量を十分に放熱する能力を持っている。すなわち、作業量に応じて生理的に必要とする放熱量が決まり、人体はその放熱量に対応した量の汗を出すようになっている。そして、汗がすべて気化されれば、その人のそのときの状況に最適な放熱が行われる。放熱量に対応した汗の量はもちろん脳により一義的に計算されたものではないであろうが、体温が激しく上昇すれば、人体は大量の汗を出し続け、その結果、体温が下がれば、汗の量は少なくなり、体を冷やしすぎることはない。
汗の蒸発による体の冷却という観点から考えると、汗には、大別して、冷却に寄与する有効発汗と、冷却に寄与しない無効発汗とがある。さらに細かく分類すると、汗は、即効発汗、遅効発汗、無効発汗の三種類に分けることができる。即効発汗とは、身体から出ると同時に蒸発する汗である。この即効発汗は直ちに蒸発するので、身体はすぐに冷却される。遅効発汗とは、身体から液体の状態で出る汗である。この遅効発汗はすぐには蒸発しないので、汗で下着が濡れてしまい、身体が必要とするときにすぐに冷却効果は得られない。しかし、風が吹いたときなどに汗が遅れて蒸発し、結果的に身体が冷却される。また、無効発汗とは、身体から垂れ落ちる汗である。この場合には、蒸発による身体の冷却作用はない。無効発汗が出ているときは、身体は生理クーラーの作用が間に合わない状態にあり、体温が上昇し続け、身体は一定の状態を維持し続けることはできない。
生理クーラーが有効に機能すれば、作業量の変化等に応じた必要量の汗が即効発汗として身体を冷却し、下着に液体状の汗が残ることもなく、身体を常に快適な状態に保つことができる。しかしながら、温湿度、風の有無、作業量などの条件により汗をすべて気化することができなくなると、必要とする放熱量が得られなくなり、身体は気化されない無駄な液体状の汗(無効発汗)を出し続け、人は不快になるだけでなく、生理的にもダメージをこうむる。
図1は生理クーラーの原理を説明するための人体の概略ブロック図である。図1に示すように、人体には、作業等に伴い熱を発生する動力産熱部と、体温等を検知するセンサ部と、必要な放熱量を演算・制御する演算制御部(主に脳)と、冷媒である水(汗)を貯めておく貯水部と、演算制御部からの指示により冷媒である水(汗)を身体の表面に運ぶための汗腺と、汗腺からの汗を身体全体に薄く濡らす大面積の気化プレート(皮膚)とが備わっていると考えられる。ここで、人体には、汗の最大供給能力として、前述した最大労働時の産熱量を十分に放熱できる程度の能力がある。このように、人体は、理想的で完全な冷却システムを備えているといえる。
ところで、汗腺から出た汗が単に気化プレートである皮膚を覆っているだけでは、身体を冷却することはできない。汗を気化させることによってはじめて生理クーラーとしての機能が発揮される。汗を気化させるためには、後述するような空気が必要である。また、空気の流れがなければ、皮膚表面の空気は汗の気化によってすぐに飽和状態に達してしまい、汗はそれ以上気化することができない。したがって、連続的に汗を気化させるためには、皮膚近傍に空気の流れを作る必要がある。このような、皮膚の表面に空気の流れを人工的に作る手段としては、扇風機がある。しかしながら、扇風機には野外で使用することができないこと等、さまざまな問題点がある。
一方、本発明者は、身体の表面近傍に空気の流れを作るための手段として、冷却衣服を案出した(PCT/JP01/01360)。かかる冷却衣服は、衣服と下着又は体との間に空気を流通させるための流通路と、衣服に取り付けられた送風手段とを備える。この冷却衣服では、送風手段により外部の空気を流通路内に取り込んで流通させることにより、体温と外部の空気の温度との温度差により身体を冷却する。
この方式を発展させたものが本発明の空調衣服である。すなわち、本発明の空調衣服は、送風手段により服地と身体との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせ、服地と身体との間の空間において空気を身体の表面に沿って流通させることにより、気化プレートに相当する皮膚の表面における湿度勾配を大きくして、身体が必要とする放熱量に対応して供給される汗をすべて即効発汗として気化させるものであり、人体にもともと備えられている生理クーラーを有効に機能させるための補助装置である。
生理クーラーは、それが完全に機能すれば、人体にとって完全で理想的なクーラーであるということについては議論の余地がない。問題は、生理クーラーを完全に機能させるための補助装置、すなわち空調衣服が、どの程度、生理クーラーのパフォーマンスを上げられるかである。
外気温が低い場合や産熱量が少ない場合には、当然、生理クーラーは有効に働かない。そして、人体には、生理クーラーとは逆の作用をする機能、すなわち人体からの放熱を抑えるような機能はほとんど備わっておらず、せいぜい、生理的に身体表面の血流量を少なくすることが行われるくらいである。このため、このような場合、実際には、人は自分で衣服の調整をすることにより体温を調整する。すなわち、人は寒く感じれば衣服を重ね着したりする。これに対し、外気温が高い場合や産熱量が多い場合には、空調衣服を着用し、身体の表面近傍を十分な流量の空気によって包むことにより、生理クーラーが有効に働き、人が衣服を脱いだりしなくても、自動的に最適な放熱が行われる。このように、外気温が低い場合や産熱量が少ない場合は、衣服の調整をするなり、暖を取るなり、何らかのアクションをしなければならないのに対し、外気温が高い場合や産熱量が多い場合には、空調衣服を着用することにより身体を常に最適な状態に保つことができる。
したがって、本発明の空調衣服を用いて、生理クーラーが有効に機能する範囲を大幅に拡大することにより、暑さによるすべての問題、エアーコンディショナーによるエネルギー問題、環境問題、熱中症等の健康問題など、各種の問題を一挙に解決することができる。
次に、汗の気化熱により身体表面の温度を33℃に保つ場合における放熱量と外気の温湿度との関係について説明する。図2は身体の表面近傍に10リットル/秒の流量の空気を流した状況下で汗の気化熱により身体表面の温度を33℃に保つ場合における最大放熱可能量と外気の温湿度との関係を説明するための図である。ここで、図2において、縦軸は湿度(%)、横軸は温度(℃)を表す。また、図2では、最大放熱可能量が0カロリー/時、200キロカロリー/時、500キロカロリー/時である場合の温湿度条件を示している。図2から分かるように、例えば外気の温度が35℃、湿度が63%である場合、汗が十分に供給されれば、最大200キロカロリー/時の放熱を行うことができる。もちろん、空気の流量が倍になれば、最大放熱可能量も2倍になる。
図2における最大放熱可能量は、空気が汗を無駄なく気化させたときの理論値である。例えば扇風機を用いて人体に空気を流した場合には、その流した風のごく一部しか汗の蒸発には寄与せず、送風量に対して最大放熱可能量は大幅に小さくなる。また、扇風機を用いた場合、扇風機の使用態様に起因する風の性質にも大きな問題点がある。すなわち、扇風機は人体に対向して配置されるのが通常であるので、必然的に風が人体に対して略垂直に当たることになる。このため、汗を気化させるための送風量を最適化するのは非常に難しい。送風量が少なすぎれば汗を全部気化させることができなくなる。一方、送風量が多すぎれば、風の当たった皮膚の汗は完全に気化するが、汗の供給が間に合わなくなり、皮膚表面の温度が風の温度の影響を受けてしまう。例えば、40℃の風を皮膚に強く当てた場合、皮膚の温度は略40℃になり、冷却とは全く逆の効果になってしまう。したがって、汗を無駄なく気化するためには、身体の表面近傍において身体の表面に対して略平行な風(以下、これを「身体平行風」とも称する。)を流す必要がある。
次に、この身体平行風について説明する。図3は2枚の平行平板の間に空気を流したときに一の平板(プレート)からの距離に対する風速の分布を模式的に表した図である。図3に示すようにプレート表面では風速がゼロになることはよく知られている。いま、一方のプレートを気化プレート(皮膚)、もう一方のプレートを、身体平行風を形成するための案内プレートと考えると、図3に示すように、皮膚表面での空気の流れはなく、皮膚表面が風圧を受けることもない。また、二つのプレートの間では風速が大きいので、皮膚表面の温湿度勾配がとても大きくなる。このため、風路の長さに対して皮膚表面と案内プレートとの間隔が十分小さいと、身体平行風は汗の気化に無駄なく寄与することになる。
ここで、図2のA点で示した温度35℃、湿度30%の身体平行風を、身体の大部分を包むように流した場合を考察する。標準的体格の大人が安静にしているときは約100キロカロリー/時、5km/時で歩行しているときは約260キロカロリー/時の放熱が必要であるが、図2から、10リットル/秒の流量で空気を流せば、上記の量の放熱が可能であることが分かる。水(汗)の気化熱は常温で580カロリー/ccであるので、100キロカロリー/時を580カロリー/ccで割ることにより、安静時には172.4cc/時の量の汗が気化されることになる。また、5km/時での歩行時には、同様にして、448cc/時の量の汗が気化されることになる。このように、一定量の身体平行風を流しているにもかかわらず、必要な放熱量に応じた量の汗が出て、その汗がすべて気化されることにより自動的に最適な放熱を行うことができる。逆に、これ以上の量の汗が出ることもない。なぜならば、必要な放熱量に応じた量以上の汗が出て気化されると、体温が下がってしまうので、脳を中心とした制御機能が正常に動作している限り、このようなことは起こりえないからである。ここで注目すべき点は、10リットル/秒の流量の空気を流し続けても、放熱量を決めるのは、あくまで生理クーラーの制御機能であるという点である。このため、生理クーラーは、必要とする放熱量が少なければ発汗量も少なくなるように、必要とする放熱量が多ければ発汗量も多くなるように発汗量を自動的に制御する。空気の流量が関係するのは、その生理クーラーが有効に機能する範囲である。例えば、必要な放熱量が500キロカロリー/時であれば、図2から分かるように、外気の温度が35℃、湿度が30%の場合、その外気を身体平行風として10リットル/秒の流量で流しても、その放熱量に応じた量の汗をすべて気化することはできない。この場合には、身体平行風の流量を大きくすればよい。身体平行風の利点は、いくら流量を大きくしても、扇風機のように風が身体に略垂直に当たるという問題がなく、生理クーラーが有効に機能する範囲を容易に拡大することができるという点である。
このように生理クーラーはあらゆる面で理想的な人体放熱手段であるが、その生理クーラーには、汗を気化させるための手段が唯一欠けている。この欠けている手段を補うものが本発明の空調衣服である。言い換えれば、空調衣服は、身体平行風を発生する手段を有し、生理クーラーが有効に機能する範囲を拡大するための補助装置である。
図4は理想的な身体平行風を実現するための空調衣服を説明するための図である。理想的な身体平行風を実現するには、図4に示すように、身体表面の略全体を、身体平行風を案内するための案内シート(空気案内手段)で覆うようにすればよい。そして、案内シートと身体表面との間に一定の小さな間隔を作り、例えば頭上に取り付けた大型のファンにより空気の流れを発生し、案内シートと身体表面との間の空間において大量の身体平行風を流すようにする。しかしながら、図4に示すような空調衣服では、人体の放熱・汗の気化の観点からは理想的なものであっても、実生活を行う上では現実的ではない。このため、生理クーラーの機能を100%生かすことができなくとも、十分に性能を発揮させることができる実用的な空調衣服の実現が望まれている。
以下に、実用上、空調衣服に要求される条件を列記する。
▲1▼身体全体の表面積に対する、身体平行風で包むことのできる身体部分の表面積の割合(空調面積率)が大きいこと(空調面積率は少なくとも10%であること)、
▲2▼作業等の邪魔にならないような形状と重量を有すること、
▲3▼屋外でも使用できるように小さな電池で長時間、空気を送風することができ、且つ十分な流量の空気を発生させることができること、
▲4▼安価であること、
▲5▼洗濯をするときに簡単に電気部品を着脱することができること、
▲6▼その他、安全性はもちろんのこと、ファッション性を含め、通常の衣服と外観上の差が小さいこと、
等である。
いま、上記▲1▼の条件、すなわち空調面積率について具体的に説明する。空調衣服を着用することにより着用者が快適に過ごすことができるようにするためには、当然、身体平行風で身体のできるだけ多くの部分を包み、かかる部分において人体の放熱や汗の気化を促進させるようにすればよい。現実的には、顔、手、足を除き、その他の身体部分を身体平行風で包むようにした空調衣服が考えられる。この空調衣服の空調面積率は約85%である。一方、空調衣服を着用する用途によっては、身体の一部についてだけ体温の上昇を防げばよい場合がある。具体的には、特に汗の出やすい胴体上部及び脇の下だけを身体平行風で包むようにした空調衣服が考えられる。この空調衣服の空調面積率は次のように算出される。平均的な大人の身体全体の表面積は約1.8m2である。胴体上部の長さを15cm、胸囲を80cmとすると、胴体上部の表面積は1200cm2であり、これに脇の下の面積を加えると、胴体上部及び脇の下の全表面積は約1400cm2である。したがって、この場合の空調面積率は約7.8%である。体型等の個人差を考慮すると、本発明の空調衣服の空調面積率は少なくても10%であることが望ましい。
具体的に、本発明の空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体との間の空間において空気を身体の表面に沿って案内するための空気案内手段と、空気案内手段と身体との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を空気案内手段と身体との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、空気案内手段と身体との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、送風手段に電力を供給するための電源手段とを備えるものである。そして、送風手段が空気案内手段と身体との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗を蒸発させ、その蒸発の際に汗が周囲から奪う気化熱を利用して身体を冷却する。尚、空気案内手段としては、空気案内手段と身体との間の空間に取り込まれた空気の流量に対する空気案内手段全体から外部に漏れる空気の流量の割合が多くとも60%であるような空気透過性を有するものを用いることが望ましい。
ここで、空気案内手段と身体との間の空間内に流通させる空気の流量が少ないと、十分な冷却効果が得られなくなってしまう。実際、空調衣服を着用することにより十分な冷却効果を得るためには、送風手段は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させる必要がある。例えば、体重60kgの大人が空調衣服を着用する場合には、少なくとも0.6リットル/秒の流量で空気を流さなければならない。本発明者等が行った実験によれば、空気の流量を上記の最小流量よりも少ない流量とすると、風がある程度吹いている環境では、通常の衣服を着用した場合よりも不快に感じる着用者もいた。これは、空気案内手段の素材として空気透過性の良くないものを用いているのが主な原因である。これに対し、風のない蒸し暑い環境の場合には、空気の流量を0.6リットル/秒の流量で流すことにより、空調衣服を着用した全員が、通常の衣服を着用した場合に比べ快適であると感じた。しかも、空気の流量を上記の最小流量とした場合には、汗が下着に長時間残ってしまうのを防ぐ効果が得られた。そして、空気の流量をさらに大きくすれば、最大放熱可能量を大きくして、生理クーラーが有効に機能する範囲を拡大することができることが確認された。尚、外部の空気が温度33℃、湿度50%である場合、送風手段が、その外部の空気を利用して、着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させると、身体から生じた汗が周囲から奪う気化熱は着用者の体重1kg当たり少なくとも340カロリー/時である。
本発明の空調衣服では、送風手段として、着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものを用いている。このため、送風手段が空気案内手段と身体との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することができる。
また、本発明者は、形状や空気の流量等の異なる各種の空調衣服を案出している。これにより、ファッション性を重視した空調衣服、エアーコンディショナーを用いることなくオフィスワークを行うための空調衣服、暑さによる労働災害を防止するための空調衣服、屋外での作業を快適に行うための空調衣服等、使用目的に応じて最適な空調衣服を実現し、暑さに関する全ての問題を解決することができる。
尚、遅効発汗を伴う場合、すなわち発汗量に対して放熱量が間に合わない場合には、空調衣服を着用しても着用者の不快感はあまり改善されないことが実験的に確認されている。しかし、空調衣服を着用した場合は、着用しない場合に比べて放熱量が十分に大きければ、たとえ汗による不快感があっても、生理的なダメージは小さくなる。このため、遅効発汗を伴う場合であっても、空調衣服を着用することは有益である。
本発明の空調衣服を使用する場合、通常、空調衣服を身体の上に直接着用するが、空調衣服を下着の上に着用してもよい。ここで、「下着」とは、空調衣服の下に着用される衣類を意味する。但し、空調衣服の下に下着を着用した場合、例えば下着の通気性があまりよくないと、生理クーラーが有効に機能する範囲は小さくなることに注意する必要がある。また、空調衣服の下に下着を着用した場合、下着の存在によって身体平行風が身体の表面近傍を流れなくなってしまうと、空調衣服の機能が低下してしまう。これを避けるために、下着としては、小さめのものであって体にフィットするものを用いることが望ましい。尚、以下では、放熱量等を説明するに当たっては、下着を着用していないこと、すなわち、身体平行風が文字通り、空調衣服と身体との間を流れることを前提とする。
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明者は、着用者の使用目的等に応じて16種類の空調衣服を案出した。図5、図6、図7及び図8は16種類の空調衣服の仕様を説明するための図である。具体的に、かかる16種類の空調衣服の内容は、軽作業用空調衣服、中作業用空調衣服、雨天作業用空調衣服、ライン作業用空調衣服、オフィス用空調衣服、野外用空調衣服、防臭用空調衣服、幼児用空調衣服、重作業用空調衣服、つなぎ型空調衣服、中着用空調衣服、温度調整用空調衣服、Tシャツ型空調衣服、高機能型空調衣服、オフィス用改良型空調衣服、空調ベルト型空調衣服である。
また、図5、図6、図7及び図8では、空調衣服の仕様として19項目を挙げている。具体的には、「空調能力」、「流量」、「送風方式」、「スペーサ」、「ファン取付面」、「ファン数」、「ファン位置」、「ファン種類」、「ファン総有効面積」、「ファン径」、「電源種類」、「消費電力」、「空調面積率」、「袖」、「空気案内手段の種類」、「空気流通部」、「開閉手段」、「下部空気漏れ防止」、「ファン着脱方式」の各項目がある。
「空調能力」の欄には、空気案内手段と身体との間の空間に流通させた基準空気が1時間当たりに吸熱することができる熱量を仕事率に換算した概略値(W)が示される。ここで、「基準空気」とは、温度33℃、湿度50%の空気のことをいう。「流量」の欄には、送風手段が空気案内手段と身体との間に流通させる空気の流量(リットル/秒)が示される。「送風方式」の欄には、送風手段による送風方向の区別、すなわち、送風手段によって外部の空気を空気案内手段内に取り込む「吸気」方式、送風手段によって空気案内手段内の空気を外部に排気する「排気」方式のいずれかが示される。また、「スペーサ」の欄には、空気案内手段と身体との間にスペーサを用いるかどうか、スペーサを用いる場合にあってはそのスペーサの種類が示される。
「ファン取付面」の欄には、送風手段が空気案内手段の内面側、外面側のいずれに取り付けられるのかが示される。「ファン数」の欄には、空調衣服に取り付けられる送風手段の数量が示される。「ファン位置」の欄には、送風手段の取付け位置が示される。「ファン種類」の欄には、送風手段の種類、例えば側流ファンであるか、プロペラファンであるかが示される。「ファン総有効面積」の欄には、各送風手段における吸気又は排気のための開口部の面積をすべての送風手段について合計した面積の値(cm2)が示される。「ファン径」の欄には、送風手段の羽根車又はプロペラの直径(mm)が示される。
「電源種類」の欄には、電源手段の種類が示される。「消費電力」の欄には、各送風手段の消費電力をすべての送風手段について合計した値(W)が示される。「空調面積率」の欄には、身体全体の表面積に対する、送風手段によって発生された空気で包むことのできる身体部分の表面積の割合(%)が示される。
「袖」の欄には、空調衣服が半袖の服であるか、長袖の服であるか、あるいは袖なし(ノンスリーブ)の服であるか等が示される。「空気案内手段の種類」の欄には、空気案内手段の素材が示される。「空気流通部」の欄には、空気流通部の内容が示される。「開閉手段」の欄には、空調衣服の前側を開閉する手段の内容が示される。「下部空気漏れ防止」の欄には、空調衣服の下部から空気が漏れるのを防止する手段の内容が示される。また、「ファン着脱方式」の欄には、送風手段を空気案内手段に着脱する方式の内容が示される。
以下の各実施形態では、上記の16種類の空調衣服のそれぞれについて詳しく説明する。
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。図9Aは本発明の第一実施形態である空調衣服の概略正面図、図9Bはその空調衣服の概略背面図である。
第一実施形態の空調衣服1は、図9に示すように、服地部20と、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)、流量調整手段(不図示)とを備えるものである。かかる空調衣服1は、最も実用的な軽作業用衣服として使用される。ここで、この空調衣服1の主な仕様は、図5の表にまとめられている。
服地部20は、身体の所定部位を覆うものである。第一実施形態では、かかる服地部20を用いて、上半身を覆う半袖の軽作業用衣服を製作している。また、第一実施形態では、服地部20は、服地部20と身体又は下着との間の空間において、送風手段50により発生した空気を身体又は下着の表面に沿って案内するという役割をも果たす。すなわち、服地部20は、身体を覆う衣服としての役割と共に、空気案内手段としての役割をも果たす。
服地部20を空気案内手段として用いるためには、服地部20の素材として、身体平行風をスムーズに流すことができ、且つ空気が外部にあまり漏れないようなものを用いることが望ましい。この服地部20に用いるのに最適な素材の一つとして、ポリエステル100%の布が挙げられる。ここで、ポリエステル布は、空気透過性が非常に小さいという性質を有する。この性質により、ポリエステル布はウィンドブレーカーや冬用の衣服地として一般的に使用されている。また、ポリエステル布には、安価である、光沢がある、汚れにくい、しわになりにくい等の性質もある。これに対し、ポリエステル布は、空気透過性がよくないこと、汗を吸収しにくいこと等の理由から、一般に、夏用の衣服地としてはほとんど使用されていない。空調衣服1に用いる服地部20にとっては、空気透過性が小さいことは空気の漏れを防止する上で必要な条件である。また、空調衣服1を着用することにより汗は皮膚から直ちに気化するため(即効発汗)、服地部20として汗を吸収する素材を必ずしも用いる必要はない。したがって、ポリエステル布は、空調衣服1用の服地部20に要求される条件をすべて兼ね備えている。第一実施形態では、服地部20(空気案内手段)の素材としてポリエステル布を用いることにする。
尚、一般に、空調衣服1用の服地部20の素材としては、空気が実質的に透過しないような素材であれば、どのような素材を用いてもよい。例えば、ポリエステル布以外に、ナイロン布等のプラスチック繊維で作られた布や、高密度布を用いることができる。むろん使用目的によっては、綿などの天然繊維や、これらの混紡繊維を用いてもよい。
また、服地部20の素材としては、ポリエステルを80%以上含む混紡素材を用いるようにしてもよい。ポリエステルを80%以上含む混紡素材を用いるのは、素材に含まれるポリエステルの割合が80%よりも少ないと、上述したポリエステルの特徴が生かせなくなるからである。
服地部20の前部には開閉手段31が設けられている。この開閉手段31は、空調衣服1を着用する際にその前部を開閉する役割を果たすものである。また、開閉手段31としては、服地部20の前部を閉じたときに当該前部から空気が外部に漏れるのを防止することができるようなものを用いる必要がある。第一実施形態では、開閉手段31としてファスナーを用いている。ファスナーは簡単に開閉することができ、しかもファスナーを閉じたときにそのファスナー部分から外部へ空気がほとんど漏れることはない。
また、服地部20の裾部には、下部空気漏れ防止手段32が設けられている。この下部空気漏れ防止手段32は、服地部20の下部(裾部)を身体、下着又は衣服に密着させることにより当該裾部から空気が外部に漏れるのを防止するためのものである。第一実施形態では、下部空気漏れ防止手段32として、伸縮性素材、例えば冬期用のジャンパー等に用いられているゴムベルトを用いている。かかるゴムベルトは服地部20の裾部に縫い込まれている。このため、裾部がズボン等の衣服に密着して裾部から外部に空気が漏れることはない。尚、下部空気漏れ防止手段32として、ゴムベルトの他に、例えば紐、ベルト等を用いることができる。下部空気漏れ防止手段32として紐を用いる場合には、その紐は服地部20の裾部にその裾部の周りに沿って動かすことができるように取り付けられる。そして、その紐で服地部20の裾部を締めることにより、裾部をズボン等に密着させる。
空気流通部40は、服地部20と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出す空気流出部又は外部の空気を服地部20と身体又は下着との間の空間内に取り入れる空気流入部として利用される。空気流通部40を空気流出部として利用するか、空気流入部として利用するかは、送風手段50の送風方式によって決められる。すなわち、送風手段50が外部の空気を服地部20内に取り込むように動作する場合には、空気流通部40は空気流出部として利用され、一方、送風手段50が服地部20内の空気を外部に排出するように動作する場合には、空気流通部40は空気流入部として利用される。第一実施形態では、空気流通部40を、空気流出部として利用する。
また、第一実施形態では、空調衣服1に三つの空気流通部40,40,40を設けている。具体的には、衣服としての機能上、服地部20の所定の端部に形成される開口部、すなわち、襟周り部分の開口部と、左右の袖口部分の開口部とが空気流通部40,40,40である。空調衣服1を着用してファスナーを閉じると、送風手段50を除き、空気流通部40,40,40以外は、服地部20内の空気が外部に流出するところはなくなる。尚、以下では、襟周り部分の開口部及び左右の袖口部分の開口部を、「上部開口部」とも称することにする。
服地部20の背中側の下部であって脇腹に近い左右両側には、それぞれ孔部21,21が形成されている(図12A参照)。各孔部21に対応する服地部20の位置には服地部20の内面側から送風手段50が取り付けられている。送風手段50は、服地部20と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるものである。二つの送風手段50,50は、外部の空気を服地部20内に取り込む方向に回転する。すなわち、送風手段50,50の送風方式としては吸気方式を採用している。送風手段50,50に電力が供給されると、送風手段50,50は外部の空気を服地部20内に取り込み、その取り込まれた空気は、服地部20の存在により服地部20と身体又は下着との間の空間内を身体平行風として流通する。そして、身体平行風は空気流通部40,40,40に達すると、そこから外部に排出される。
ここで、上記の送風手段50,50の取付位置、すなわち服地部20の背中側の下部であって脇腹に近い位置を「標準位置」と称することにする。この標準位置は送風手段50,50の取付位置として、最も好ましい位置である。送風手段50,50を標準位置に取り付けると、着用者が椅子にもたれかかったときでも送風手段50,50が邪魔になることはなく、しかも、作業時に腕を送風手段50,50にぶつけてしまうこともないからである。また、前から見たときに、送風手段50,50が見えず、空調衣服1の見栄えもよい。更に、標準位置が服地部20の下部に位置するので、空気流通部40,40,40が服地部20の上部に形成される場合には、服地部20で覆われる身体部分の略全体に身体平行風を流通させることができる。すなわち、この標準位置は、身体全体の表面積に対する、身体平行風で包まれる身体部分の表面積の割合(空調面積率)を比較的大きくすることが可能な位置である。尚、第一実施形態の空調衣服1では、空調面積率は約35%である。
次に、送風手段50について説明する。図10Aは第一実施形態の空調衣服1に用いられる送風手段50の概略断面図、図10Bはその送風手段50に用いられる羽根車の概略平面図である。図11Aはその送風手段50に用いられる内部ファンガードの概略側面図、図11Bはその送風手段50に用いられる内部ファンガードの概略平面図、図11Cはその送風手段50に用いられる外部ファンガードの概略平面図である。また、図12Aは服地部20に形成された孔部21を説明するための図、図12Bはその服地部20に送風手段50を取り付けたときの様子を説明するための図である。
送風手段50は、図10に示すように、モータ51と、羽根車52と、内部ファンガード53と、外部ファンガード54と、マジックテープ55とを備える。内部ファンガード53と外部ファンガード54は、モータ51及び羽根車52を収納するものである。羽根車52は、図10Bに示すように、R状の複数の羽根52aと、円板52bと、モータ軸圧入用孔52cとを有するものである。複数の羽根52aは、円板52bの周辺に取り付けられている。
内部ファンガード53は、図11A,Bに示すように、円形状の底板53aと、多数のファンガード柱53bと、円環形状のフランジ53cとを有する。底板53aは、モータ固定板としての役割を果たす。ファンガード柱53bは、底板53aに略垂直に取り付けられると共に、底板53aの周囲部に沿って所定の間隔で取り付けられる。これらのファンガード柱53bは、指が内部ファンガード53内に入るのを防ぐ役割を果たす。フランジ53cは、底板53aと反対側に位置するファンガード柱53bの端部に取り付けられる。また、外部ファンガード54は、図11Cに示すように、半径の異なる複数のガードリング54aと、複数のガードリング54aを固定するフランジ54bとを有する。ここで、フランジ54bのうち最も外側に位置する円環状部には、図10Aに示すように、マジックテープ55が取り付けられている。
送風手段50を組み立てるには、まず、モータ51を、内部ファンガード53の底板53aの中央に取り付ける。そして、モータ51の回転軸を羽根車52のモータ軸圧入用孔52cに入れるようにして、羽根車52を内部ファンガード53に収納する。その後、外部ファンガード54を内部ファンガード53の上に固定することにより、送風手段50が完成する。
図10Bに示す矢印は、羽根車52の回転方向を表している。すなわち、羽根車52は、回転方向に対して羽根52aが後ろ向きに曲がった後ろ向き羽根車になっている。このため、かかる羽根車52が当該矢印の方向に回転すると、羽根車52の軸方向から空気を吸入し、羽根車52の外周方向へ空気を放射状に送り出すことができる。このように羽根車の軸方向から吸入した空気を羽根車の外周方向へ放射状に送り出す送風手段を、以下「側流ファン」とも称する。
ここで、羽根車52の直径(ファン径)は約5cmである。また、各送風手段50における吸気又は排気のための開口部の面積を二つの送風手段50,50について合計した面積の値(ファン総有効面積)は、約30cm2である。
第一実施形態で実際に使用する送風手段50としては、服地部20と身体又は下着との間に発生させることができる空気の流量が6リットル/秒であるものを使用している。ここで、送風手段50が6リットル/秒の流量の空気を服地部20内に送出すると、その空気の圧力によって、服地部20と身体との間に身体平行風を流すための空間を自動的に形成することができる。かかる空間を自動的に形成するためには、服地部20の種類(特に硬さ、重さ)や形状にもよるが、一般には、送風手段50が少なくとも2リットル/秒の流量の空気を送り出すことが必要である。また、二つの送風手段50,50がそれぞれ6リットル/秒の流量の空気を送出する場合、二つの送風手段50,50の消費電力は約1Wである。
送風手段50は服地部20に着脱自在に取り付けられている。具体的には、図12Aに示すように、服地部20の内面であって孔部21の周囲部には、マジックテープ22が取り付けられている。このマジックテープ22をA面のものとすると、B面のマジックテープは送風手段50のフランジ54bに取り付けられたマジックテープ55である。服地部20の内面側において、送風手段50の外部ファンガード54を服地部20の孔部21と対向するように送風手段50を配置し、二つのマジックテープ22,55を貼り付けることにより、図12Bに示すように、送風手段50が服地部20の孔部21に対応する位置に取り付けられる。このように誰でも間単に送風手段50を容易に着脱することができるので、空調衣服1を容易に洗濯できるだけでなく、送風手段50が故障したときに送風手段50だけを容易に交換することができる。
尚、送風手段50を服地部20に着脱する方法としては、マジックテープ22,55を用いる方法に限定されるものではなく、送風手段50の着脱が簡単で、しかもその取付け部分において空気漏れが少ない方法であれば、どのような方法を用いてもよい。例えば、シート状マグネットを用いて送風手段50を着脱するようにしてもよい。
電源ポケット63は、図9Aに示すように、電源手段61を収納するものであり、服地部20の内面側であって服地部20の前側左下部に取り付けられている。電源手段61は、送風手段50,50に電力を供給するためのものである。ここでは、電源手段61として、経済性の観点から二次電池を用いている。電源手段61と二つの送風手段50,50とは電源ケーブル62により接続されている。また、電源手段61と二つの送風手段50,50との間には、電源スイッチ(不図示)が設けられている。この電源スイッチは、電源手段61から二つの送風手段50,50に供給する電力をオン・オフするものである。
空調衣服1には、送風手段50,50が発生させる空気の流量を調整する流量調整手段(不図示)が設けられている。ここでは、流量調整手段として例えばボリュームを用いている。ボリュームを設けたことにより、服地部20と身体との間の空間に必要以上の流量の空気を流さないようすることができるので、電源手段61を長持ちさせることができる。
第一実施形態の空調衣服1では、電源手段61と送風手段50,50との間に設けた電源スイッチをオンにすると、二つの送風手段50,50がそれぞれ外部の空気を服地部20内に取り込む。このとき、その取り込まれた空気の圧力によって、服地部20と身体又は下着との間に身体平行風を流すための空間が自動的に形成される。これにより、服地部20と身体又は下着との間の空間において、上半身を包み込むような身体平行風の流れが生じる。そして、その身体平行風は空気流通部40,40,40に達すると、そこから外部に排出される。ここで、図9に示した矢印は、外部から空気を取り込む方向及び外部へ空気を排出する方向を示している。
このように、空調衣服1は身体平行風を服地部20と身体又は下着との間の空間に流通させることができるので、生理クーラーが有効に機能する範囲を拡大することができる。このとき、生理クーラーの最大能力は外部の空気の温湿度によって決まる。例えば図2に示すA点の環境(温度35℃、湿度30%)では、空気の流量が10リットル/秒のとき、約450キロカロリー/時までの放熱を行うことができる。空調衣服1では、空気の流量が6リットル/秒であるので、270キロカロリー/時までの放熱を行うことができる。したがって、かかる環境下において、通常の体格の大人が第一実施形態の空調衣服1を着用した場合、5km/時で歩行運動を行っても液体状の発汗を伴うことはなく、快適に歩行することができる。但し、上記の放熱量の値の算出にあたっては、体温と身体平行風の温度との温度差による熱のやり取り、呼吸による冷却、足や頭など身体平行風に包まれていない皮膚からの汗の気化による冷却効果を考慮していない。
ここで、服地部20と空気案内手段との関係を述べる。第一実施形態では、服地部20の裾部から空気が流出することはないので、実際、服地部20のうち送風手段60より下の部分にはあまり身体平行風が流れないと考えられる。このため、厳密には、服地部20全体が空気案内手段としての役割を果たすのではなく、服地部20のうち送風手段60より上の部分だけが空気案内手段としての役割を果たすといえる。しかし、送風手段60を標準位置に設けた場合には、服地部20の大部分が身体平行風を導く役割を果たすので、服地部20全体が空気案内手段であると考えることができる。
また、外気の圧力と空気案内手段内の圧力との圧力差は、送風手段50に近いほど大きい。そして、送風手段50の送風方式が吸気方式であって、送風手段50によって発生される空気の流量が大きい場合には、送風手段50の近傍における空気案内手段が上記の圧力差によって膨らみ、送風手段50の近傍には、いわゆる「空気溜め」が形成される。ところで、上述したように、空気案内手段から空気が外部に漏れると、空調効率が下がってしまうので、空気案内手段としては空気漏れの少ない素材を用いている。実用上、空気案内手段は、送風手段50,50によって空気案内手段と身体又は下着との間の空間に取り込まれた空気の流量に対する空気案内手段全体から外部に漏れる空気の流量の割合が多くとも60%であるような空気透過性を有することが望ましい。
次に、第一実施形態の空調衣服1の空調能力について詳しく説明する。ここでは、外部の空気が基準空気(温度33℃、湿度50%)であるとする。そして、身体の表面には十分な汗があり、基準空気を身体平行風として服地部20と身体との間に流通させることにより汗を蒸発させ、その汗の気化熱で体温を冷却した後、空気流通部50から排出される空気が温度33℃、湿度100%になったものとする。このような場合において、以下に示すように、エネルギー収支を計算することにより空調能力を求める。尚、基準空気の温度を33℃としたのは、身体の表面温度が約33℃であるので、エネルギー収支の計算において乾熱による効果を無視できるからである。
さて、温度33℃の空気の飽和水蒸気量は約32.5g/m3である。このため、その空気の湿度が50%であるときは、その空気中に約16.25g/m3の水が含まれており、その空気には約16.25g/m3の水を気化させる余裕が残っている。水の気化熱は約580キロカロリー/gであるので、基準空気1m3の気化可能カロリーは、16.25(g/m3)×580(キロカロリー/g)≒9.43(キロカロリー/m3)となる。第一実施形態の軽作業用空調衣服の場合、身体平行風の流量は約6リットル/秒であるので、1時間に流通する身体平行風の体積は、0.006(m3/秒)×3600(秒)=21.6(m3)である。したがって、基準空気を身体平行風として1時間流通させたときの気化可能カロリーは、9.43(キロカロリー/m3)×21.6(m3)≒203.7(キロカロリー)となり、これは約236.3Wに相当する。ここで、上述したように、この値は乾熱による効果を考慮せずに求めたものである。逆の言い方をすると、乾熱による効果がゼロになるように、身体の表面温度との温度差のない33℃を基準空気の温度としたのである。このように、第一実施形態の空調衣服1の空調能力の理論値は、236.3Wであるが、空気の蒸発寄与率(汗の供給が十分に行われているとき、流通させた空気のうち、汗の蒸発に寄与する空気の割合である。これは空気の流れが体に近いほど向上する。)を考慮すると、大体200W程度であると考えられる。
第一実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が6リットル/秒であるので、第一実施形態の空調衣服は、着用者が軽作業を行う場合に用いるのに好適である。
また、第一実施形態の空調衣服では、着用者が流量調整手段を用いて送風手段が発生させる空気の流量を調整することができるので、周囲温度があまり高くないときには、空気の流量を下げることにより、ファンによるノイズを小さくしたり、消費電力を小さくしたりすることができる。
また、服地部の空気透過性が小さいことを逆に利用すると、第一実施形態の空調衣服を、ウィンドブレーカーのように外気が服地部内に入ることを防ぐ目的で使用することができる。特に、一日の温度や風の変化が激しい場合には、空調衣服をこのような目的で使用することは有効である。具体的には、気温が低く、風が強いときは、送風手段から空気を送風せずに、空調衣服をウィンドブレーカーとして使用し、その後、気温が高くなったときに、送風手段から空気を送風して空調衣服をその本来の目的で使用する。これにより、着用者は、温度等の変化に応じて着替えることなく、快適に過ごすことができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について図面を参照して説明する。図13Aは本発明の第二実施形態である空調衣服の概略正面図、図13Bはその空調衣服の概略背面図、図14Aはその空調衣服に用いられる集積ベルトの概略平面図、図14Bはその集積ベルトを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。また、図15Aはその空調衣服に用いられる局所スペーサの概略平面図、図15Bはその局所スペーサの概略側面図、図15Cはその局所スペーサを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。尚、第二実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第二実施形態の空調衣服2は、図13に示すように、服地部20と、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、集積ベルト64と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服2は、主に、中程度の作業に用いる作業服(中作業用衣服)として使用される。ここで、この空調衣服2の主な仕様は、図5の表にまとめられている。
第二実施形態の空調衣服2が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、空調能力が300Wである点、空調衣服2が長袖のものである点、集積ベルト64を用いて送風手段50,50等を服地部20に着脱する点、服地部20の肩に対応する部分に局所スペーサ70,70を設けた点である。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同じである。
次に、第二実施形態の空調衣服2の特徴点について詳しく説明する。
まず、空調衣服2の空調能力を300Wに強化したことに伴い、送風手段50,50として、9リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約1.5Wである。このため、空調衣服2を着用することにより、第一実施形態の空調衣服1よりも高い冷却効果が得られる。尚、送風手段50,50としては、ファン径が60mmであるものを用いている。また、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は45cm2である。
また、空調衣服2が長袖のものであるので、その空調面積率は、第一実施形態のものよりも少し大きい。具体的に、空調衣服2の空調面積率は約40%である。この空調衣服2では、腕の部分をも冷却することができる。
集積ベルト64は、二つの送風手段50,50、電源手段61、電源ポケット63、電源スイッチ等を取り付けるための帯状部材であって、図14Aに示すように、帯状のベースシート64aと、ベースシート64aに形成された二つの孔部64b,64bと、複数のマジックテープ64cとを有する。ベースシート64aとしては、例えばビニールシート等が用いられる。各孔部64bは、送風手段50を挿入して取り付けるためのものである。二つの孔部64b,64bの間隔は、服地部20に設けられた二つの孔部21,21の間隔と同じである。また、ベースシート64aには電源ポケット63が取り付けられている。電源手段61はこの電源ポケット63に収納される。そして、電源手段61と二つの送風手段50,50とは電源ケーブル62により接続されている。ここで、電源ケーブル62はベースシート64aに固定されている。マジックテープ64cは、例えばベースシート64aの周端部における所定箇所に取り付けられる。ここで、かかるマジックテープ64cをA面のものであるとすると、図14Bに示すように、B面のマジックテープ23は服地部20の内面の所定位置に取り付けられている。
集積ベルト64は服地部20の内面側であって所定の位置に着脱自在に取り付けられる。具体的に、集積ベルト64を服地部20に取り付ける場合、まず、服地部20の内面側において、送風手段50の外部ファンガード54が服地部20の孔部21と対向するようにして集積ベルト64を配置し、送風手段50のマジックテープ55と服地部20の孔部21の周辺に取り付けられたマジックテープ22とを貼り付ける。これにより、二つの送風手段50,50はそれぞれ服地部20の孔部21,21に対応する位置に取り付けられる。その後、集積ベルト64のマジックテープ64cを、それに対応する服地部20の所定位置に取り付けられたマジックテープ23に貼り付けることにより、集積ベルト64を固定する。送風手段50,50を取り外す場合には、集積ベルト64を服地部20から剥がすだけでよい。したがって、空調衣服2を洗濯する場合には、誰でも簡単に集積ベルト64を着脱することができる。
尚、ベースシート64aとしてビニールシートを用いているので、ベースシート64aは汚れにくく、たとえベースシート64aが汚れてしまった場合でも汚れを容易に拭き取ることができる。
局所スペーサ70は、服地部20と身体との間に空気を流通させるための空間を局所的に確保するものである。第二実施形態では、かかる局所スペーサ70を、服地部20の内面側であって両肩に対応する部分に設けている。例えば空調衣服2が重いと、服地部20の肩に対応する部分には、身体平行風の流通用の空間が自動的に生成されないことがある。このため、第二実施形態では、局所スペーサ70を用いて、服地部20の肩に対応する部分に身体平行風の流通用の空間を確実に形成することにしている。
局所スペーサ70は、図15A,Bに示すように、円形状部材71と、その円形状部材71の中央部に形成された凸部72とを有する。この局所スペーサ70の材質としては、例えばフェルトが用いられる。局所スペーサ70を服地部20に取り付ける場合には、まず、図15Cに示すように、服地部20の内面側において、局所スペーサ70の円形状部材71を服地部20の肩に対応する部分と対向するように局所スペーサ70を配置する。その後、局所スペーサ70の円形状部材71の端部を服地部20に縫い付けることにより、局所スペーサ70が服地部20に取り付けられる。
第二実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が9リットル/秒であるので、第二実施形態の空調衣服は、着用者が中作業を行う場合に用いるのに好適である。
尚、局所スペーサは、上記の構造のものに限定されるものではなく、服地部と身体又は下着との間に身体平行風流通用の空間を確実に形成できる構造のものならば、どのようなものでもよい。また、局所スペーサの取付け場所も肩に限られず、必要に応じ適所に局所スペーサを取り付けることができる。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について図面を参照して説明する。図16Aは本発明の第三実施形態である空調衣服の概略正面図、図16Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第三実施形態において、第一及び第二の実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第三実施形態の空調衣服3は、図16に示すように、服地部20aと、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。ここで、服地部20aは空気案内手段としての役割を果たす。かかる空調衣服3は、主に、雨天時に屋外での作業に用いる作業服(雨天用作業服)として使用される。ここで、この空調衣服3の主な仕様は、図5の表にまとめられている。
第三実施形態の空調衣服3が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、空調能力が500Wである点、雨に対する種々の対策を施した点、服地部20aの肩に対応する部分に局所スペーサ70,70を設けた点である。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同じである。
次に、第三実施形態の空調衣服3の特徴点について詳しく説明する。
まず、空調衣服3の空調能力を500Wに強化したことに伴い、送風手段50,50として、14リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約3Wである。空調能力を500Wにまで高めたのは、雨天時には湿度が高く、空調衣服3内に取り込む空気の質が悪いためである。すなわち、前述したように、図5における空調能力の表記は温度33℃、湿度50%のもとでの値であるので、湿度が極端に高い等、服地部20a内に取り込む空気の質が悪い場合、実際の空調能力は、図5に表記された空調能力を下回るからである。空調衣服3を着用することにより、空気の質が悪くても多くの空気を服地部20aと身体との間の空間に流すことができるので、雨天時であっても十分な冷却効果が得られる。尚、送風手段50,50としては、ファン径が70mmであるものを用いている。また、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は62cm2である。
第三実施形態の空調衣服3には雨に対する種々の対策が施されている。まず、服地部20aを、上半身を覆うと共に顔を除く頭部を覆うような形状に構成している。具体的には、服地部20aの腕部を長袖の形状にすると共に、服地部20aにフード25を設けている。フード25を設けたことにより、作業時に頭部が雨で濡れないようにすることができると共に、生理クーラーが有効に機能する範囲を頭部まで広げることができる。この場合、フード25部分(襟周り部分)の開口部及び左右の袖口部分の開口部が空気流通部40,40,40となる。また、服地部20aにフード25を設けたことにより、空調衣服3の空調面積率は第一実施形態のものよりも大きく、約60%である。
服地部20aの素材としては、雨水を吸収しない素材、例えばビニールシート等のプラスチックシートが用いられている。プラスチックシートの他には、ゴムシートや、防水加工が施された布等を用いることができる。このように、服地部20aは汚れにくくなっている。
また、送風手段50,50には耐水加工が施されている。かかる送風手段50,50は服地部20aに固定されており、送風手段50,50を服地部20aから取り外すことはできない。
第三実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が14リットル/秒であるので、第三実施形態の空調衣服は、着用者が雨天時に屋外での作業を行う場合に用いるのに好適である。実際、第三実施形態の空調衣服には、雨に対するさまざまな対策が施されており、かかる空調衣服を雨天時に使用した場合、身体が蒸れることはなく、着用者は快適に作業を行うことができる。しかも、空調衣服自体が汚れにくくなっており、たとえ汚れたときにでも汚れを容易に落とすことができる。
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について図面を参照して説明する。図17Aは本発明の第四実施形態である空調衣服の概略正面図、図17Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第四実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第四実施形態の空調衣服4は、図17に示すように、服地部20と、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源ケーブル62と、集積ベルト64と、DCアダプタ(DC変換手段)65と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服4は、主に、製造ラインでの作業に用いる作業服(ライン作業用衣服)として使用される。ここで、製造ラインでは、作業者は座った状態で製造作業を行う。尚、この空調衣服4の主な仕様は、図5の表にまとめられている。
第四実施形態の空調衣服4が第二実施形態の空調衣服2と異なる主な点は、商用電源から送風手段50,50に電力を供給する点である。すなわち、電源手段として商用電源が用いられる。このため、集積ベルト64には、送風手段50,50だけが取り付けられており、二次電池は取り付けられていない。また、送風手段50,50として、9リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。その他の点については、上記の第二実施形態のものと同様である。
次に、第四実施形態の空調衣服4の特徴点について詳しく説明する。
第四実施形態では、商用電源から二つの送風手段50,50に電力を供給する。このために、DCアダプタ65を用いて、商用電源からの交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を電源ケーブル62を介して二つの送風手段50,50に供給している。これにより、空調衣服4を着用して作業する時間が長くなっても、第二実施形態のように電池を電源とする場合と異なり、消費電力をあまり気にする必要がないので、着用者は作業に集中して従事することができる。
また、第四実施形態では、送風手段50の消費電力をあまり気にする必要がないので、送風手段50としてファン径の小さなものを用いることにし、送風手段50を高速で回転させることにしている。ファン径の小さな送風手段50を用いるのは、着用者が椅子の背もたれにもたれかかっても、送風手段50が身体に当たらないようにするためである。実際、第四実施形態では、送風手段50,50として、ファン径が40mmであるものを用いている。そして、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は20cm2である。また、二つの送風手段50,50の消費電力は約20Wである。
尚、着用者は、椅子から離れるときに、DCアダプタ65と送風手段50,50とを繋ぐ電源ケーブル62を外さなければならないので、椅子から離れている間に空調衣服4による冷却効果が得られないという問題がある。この問題を解決するには、例えば、集積ベルト64に小さな容量の二次電池を取り付けておくようにすればよい。DCアダプタ65と送風手段50,50とを繋ぐ電源ケーブル62を外したときには、その二次電池から送風手段50,50に電力を供給することにより、短時間であれば商用電源からの電力供給なしで、送風手段50,50を駆動することができる。
第四実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が9リットル/秒であり、しかもDCアダプタを用いて商用電源から送風手段に電力を供給するので、第四実施形態の空調衣服は、着用者が座った状態で中作業を行う場合に用いるのに好適である。
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態について図面を参照して説明する。図18Aは本発明の第五実施形態である空調衣服の概略正面図、図18Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第五実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第五実施形態の空調衣服5は、図18に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、耐圧スペーサ80とを備えるものである。かかる空調衣服5は、主に、オフィスワーク用のユニフォーム(オフィス用衣服)として使用される。ここで、この空調衣服5の主な仕様は、図6の表にまとめられている。
第五実施形態の空調衣服5が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、服地部200の上部に空気透過性の高い布を用いた点、服地部200の下部を着用者の臀部及び下腹部を覆うことができるように長めに形成した点、開閉手段31aとしてボタンを用いた点、服地部200に耐圧スペーサ80を設けた点である。また、送風手段50,50として、6リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。更に、この空調衣服5の空調面積率は約40%である。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同様である。
次に、第五実施形態の空調衣服5の特徴点について詳しく説明する。
第五実施形態では、服地部200を、腕部を除く上部と、その上部以外の部分(腕部、下部)とに区分し、それら各部に異なる素材を用いている。すなわち、服地部200の上部には空気透過性の高い布を用い、服地部200の腕部及び下部にはポリエステル布等、空気透過性の低い布を用いている。第五実施形態では、服地部200のうち空気透過性の低い布を用いて形成された部分(腕部及び下部)だけが空気案内手段としての役割を果たす。また、第一実施形態と同様に上部開口部が空気流通部40,40,40となるが、これに加えて、服地部200のうち空気透過性の高い布を用いて形成された部分(上部)も空気流通部40aとなる。この空気流通部40aは、上部開口部による空気の流通を補助する役割を果たす。例えば、ネクタイ等を着用すると、上部開口部のうち襟周り部分の開口部からは空気が流通することができなくなってしまう。このようなときには、空気流通部40aが襟周り部分の開口部の役割を代行することになる。
このような服地部200を作製するには、上部と腕部及び下部とにそれぞれ異なる素材を用いて縫製を行ったり、服地部200全体を空気透過性の高い布で作製した後に服地部200の腕部及び下部に空気透過性の低い布を縫い付けたりするようにすればよい。しかし、これでは、縫い目が見えるため、空調衣服5の外観を損ねてしまうことがある。この問題を解決する一つの方法としては、例えば、まず、服地部200全体を空気透過性の高い布で作製し、その後、服地部200の腕部及び下部にその内側から空気透過性の低いシートをラミネートする方法が考えられる。この場合、服地部200のうち、その内側に空気透過性の低いシート状部材がラミネートされた部分が空気案内手段となり、そのシート状部材がラミネートされていない部分が空気流通部40aとなる。
また、服地部200の下部は、一般のワイシャツ等と同様に、着用者の臀部及び下腹部を覆うことができるように長めに形成されている。ここで、服地部200の裾部には、ゴムベルトを設ける等の加工を何ら施していない。第五実施形態では、空調衣服5を着用するときに、服地部200のうち図18においてXで示す部分より下の部分をズボン等の中に入れることにより、服地部200の裾部から空気が外部に漏れるのを防止する。
第五実施形態では、開閉手段31aとして、ワイシャツ等に使用されるボタンを用いている。ところで、ボタンを掛けると、ボタンが取り付けられている側の服地部200の端部が内側に、ボタン用の孔が形成されている側の服地部200の端部が外側に位置し、服地部200の重なり合う部分ができる。このとき、その重なり合う部分の幅が、一般のワイシャツにおける重なり合う部分の幅と同程度であるとすると、送風手段50から送出された身体平行風の大部分がその重なり合う部分から外部に漏れてしまい、オフィス用空調衣服の空調能力が著しく低下してしまう。これを改善するためには、例えばボタンの数を増やし、ボタンの間隔を狭くすることにより、重なり合う部分に生じる隙間を小さくする方法が考えられる。しかし、この方法では、ボタンの数が増えるため、空調衣服5を着用したときに外観上の違和感が生じ、またボタンを掛けたり外したりするのに多くの時間を要してしまうという別の問題が生じてしまう。このため、あまり実用的な方法とはいえない。そこで、第五実施形態では、ボタンが取り付けられている側の服地部200の端部に、延長部201を設けている。すなわち、ボタンが取り付けられている側の服地部200の端部を延長することにより、ボタンを掛けたときに生じる服地部200の重なり合う部分の面積を大きくしている。これにより、空調衣服5の外観等を損なうことなく、当該重なり合う部分から空気が外部に漏れるのを十分改善することができる。尚、この場合であっても、当該重なり合う部分から空気漏れが多少発生するが、空調衣服5をオフィス用衣服として使用するのであれば、当該空調衣服5は実用上十分な空調能力を有する。
尚、当然のことであるが、空調衣服5の使用目的によっては、ボタンが取り付けられている側の服地部200の端部に延長部201を必ずしも設ける必要はない。例えば、ボタンを掛けたときに生じる服地部200の重なり合う部分を空気流通部の一つとして利用することも可能である。
第五実施形態では、服地部200の内面側であって背中に対応する部分には、耐圧スペーサ80が取り付けられている。耐圧スペーサ80は、服地部200と身体又は下着との間に空気を流通させるための空間を確保するものであって、大きな圧力に耐えられる強度を有するものである。特に、第五実施形態では、耐圧スペーサ80を、着用者が椅子の背もたれにもたれかかったときに、服地部200と身体又は下着とが密着してしまい身体平行風が背中の近傍を流れなくなってしまうのを防止するために使用される。かかる耐圧スペーサ80には、大きな圧力に耐えることができると共に、空気の受ける抵抗が小さく、空気が容易に流通することができるものであることが要求される。
ここで、耐圧スペーサ80の構造について説明する。図19Aは耐圧スペーサ80の一部の概略平面図、図19Bはその耐圧スペーサ80の一部の概略側面図である。耐圧スペーサ80は、いわゆるメッシュスペーサであり、図19に示すように、網目状シート(網目状部材)81と、複数の凸部82とを有する。ここで、各凸部82は、略半球形状に形成されている。この耐圧スペーサ80を製造するには、軟質プラスチックの網目状シートを凸の金型と凹の金型の間に入れて、熱成形する。これにより、網目状シート上には、その厚み方向に突出した複数の凸部82が形成される。このように、耐圧スペーサ80は簡単に作ることができる。
また、耐圧スペーサ80の厚さ(凸部82の高さ)Wは2mm以上30mm以下であることが望ましい。耐圧スペーサ80の厚さWが2mmより小さいと、一定流量の空気を流すためには、空気の圧力をかなり高める必要があり、実用的でないからである。特に、送風手段50,50の周辺では空気の流れが大きいので、送風手段50,50の周辺に設けられる耐圧スペーサ80の厚さWは5mm以上であることが望ましい。一方、耐圧スペーサ80の厚さWが30mmよりも大きいと、見栄えや着心地が悪くなってしまうからである。実際、耐圧スペーサ80の厚さWとして最も好ましい範囲は、3mm以上10mm以下である。
耐圧スペーサ80は服地部200の背中に対応する部分に縫い付けられる。具体的には、耐圧スペーサ80の網目状シート81を服地部200の内面側から服地部200に対向させるようにして、耐圧スペーサ80を服地部200の背中に対応する部分に配置する。そして、例えば、ミシン等を用いて耐圧スペーサ80を服地部200に縫い付ける。
第五実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が6リットル/秒であるので、第五実施形態の空調衣服は、着用者がオフィスで作業を行う場合に用いるのに好適である。
[第六実施形態]
次に、本発明の第六実施形態について図面を参照して説明する。図20Aは本発明の第六実施形態である空調衣服の概略正面図、図20Bはその空調衣服の概略背面図、図20Cはその空調衣服の下に着用される下着の概略正面図である。尚、第六実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第六実施形態の空調衣服6は、図20に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、太陽電池66と、電源スイッチ(不図示)と、耐圧スペーサ80とを備えるものである。かかる空調衣服6は、主に、野外で長時間活動する際に着用する衣服(野外用衣服)として使用される。また、空調衣服6は、図20Cに示す所定の下着の上に着用される。ここで、この空調衣服6の主な仕様は、図6の表にまとめられている。
第六実施形態の空調衣服6が第五実施形態の空調衣服5と異なる主な点は、空調能力が400Wである点、服地部200に防水加工又は撥水加工を施した点、電源手段61としての二次電池を太陽電池66を用いて充電する点である。その他の点については、上記の第五実施形態のものと同様である。
次に、第六実施形態の空調衣服6の特徴点について詳しく説明する。
空調衣服6は野外活動用として使用するものであるので、その空調能力を400Wに強化している。それに伴い、送風手段50,50として、12リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約2.5Wである。そして、各送風手段50のファン径は55mmであり、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は38cm2である。また、雨対策として服地部200に防水加工又は撥水加工を施している。
また、空調衣服6は、電源手段61としての二次電池を充電するための太陽電池66を備えている。この太陽電池66は、服地部200の外面側であって背中上部に対応する位置に取り付けられている。太陽電池66と二次電池とは電源ケーブル62により接続されている。これにより、太陽電池66が二次電池を充電し、その二次電池から送風手段50,50に電力が供給される。尚、電源手段として太陽電池66を用い、太陽電池66からの電力を直接、送風手段50,50に供給するようにしてもよい。
第六実施形態の空調衣服6は、下着の上に着用される。下着の外面側であって両肩に対応する部分には、図20Cに示すように、局所スペーサ70,70が取り付けられている。ここで、局所スペーサ70の構造は第二実施形態で説明したものと同様である。下着に局所スペーサ70,70を設けたことにより、下着の上に空調衣服6を着用したときに、服地部200と下着との間に、空気が流通するための空間が確実に形成される。
第六実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が12リットル/秒であり、しかも服地部に防水加工又は撥水加工を施しているので、第六実施形態の空調衣服は、着用者が野外で長時間活動する場合に用いるのに好適である。
[第七実施形態]
次に、本発明の第七実施形態について図面を参照して説明する。図21Aは本発明の第七実施形態である空調衣服の概略正面図、図21Bはその空調衣服の概略背面図、図22はその空調衣服に用いられる送風手段を説明するための図である。尚、第七実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第七実施形態の空調衣服7は、図21に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段500,500と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、面状スペーサ90とを備えるものである。かかる空調衣服7は、主に、下着が汗臭くなるのを防止するための衣服(防臭用衣服)として使用される。したがって、この空調衣服7は下着の上に着用される。ここで、空調衣服7の主な仕様は、図6の表にまとめられている。
第七実施形態の空調衣服7が第五実施形態の空調衣服5と異なる主な点は、空調能力が20Wである点、送風手段500の送風方式として排気方式を採用した点、服地部200に面状スペーサ90を設けた点である。また、この空調衣服7の空調面積率は約35%である。その他の点については、上記の第五実施形態のものと同様である。
次に、第七実施形態の空調衣服7の特徴点について詳しく説明する。
第七実施形態の空調衣服7は、汗をすばやく気化して下着が汗臭くなるのを防止することを主目的としており、必ずしも身体を冷却することを目的としているわけではない。このため、空調衣服7の空調能力を20Wととても小さくしている。それに伴い、送風手段500,500として、0.6リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段500,500の消費電力は約0.15Wである。このように送風手段500,500によって発生させる空気の流量が少ないので、送風手段500,500によるノイズはとても小さい。尚、送風手段500,500としては、ファン径が20mmであるものを用いている。また、二つの送風手段500,500のファン総有効面積は4cm2である。
実際、暑がりの人や、一時的に重作業(例えば階段の昇り降り等)を行った人は、ある程度、空調が効いているオフィス等の部屋の中にいても、汗が下着に残り、下着が汗臭くなる。このような場合に、空調衣服7を下着の上に着用すると、服地部200と下着との間に身体平行風を流すことができるので、下着に残った汗を、すばやく気化することができる。したがって、汗が下着に長時間残ってしまい、下着が汗臭くなるのを防止することができる。
第七実施形態では、送風手段500の送風方式として排気方式を採用している。この排気方式では、送風手段500が服地部200内の空気を外部に排出することにより、服地部200と身体(又は下着)との間の空間に身体平行風を流す。このために、第七実施形態では、送風手段500として、図22に示すようなプロペラファンを用いている。
送風手段500は、図22に示すように、プロペラ501と、モータ(不図示)と、ケージング502と、外部ファンガード(不図示)と、間隔確保手段(不図示)とを有する。プロペラ501はモータの回転軸と結合されている。そして、プロペラ501及びモータはケージング502に収納されている。このケージング502には外部ファンガード取り付けられている。外部ファンガードは、指がケージング502に入るのを防止するためのものである。送風手段500は、プロペラ501の回転軸が服地部200の表面に略垂直となるように、服地部200にその内面側から取り付けられている。送風手段500を服地部200に取り付ける方法としては、第一実施形態で説明したマジックテープによる方法を用いることができる。また、送風手段500の身体と対向する側には、間隔保持手段が設けられている。この間隔保持手段は、プロペラ501と身体との間隔を一定の値Hに保つためのものである。
電源手段61から電力が送風手段500,500に供給されると、プロペラ501は、服地部200内の空気を外部に排出する方向に回転する。ここで、図22において、矢印は、空気の流れを表している。
尚、第七実施形態では、送風手段500によって発生させる空気の流量は少なくてすむので、送風手段500としては小型のものを用いることができる。このため、空調衣服7を着用しても、その外観上の違和感があまりない。また、送風手段500の空気排気口を通気性のよい布地でカバーすることにより、送風手段500が外部から見えないようにすることもできる。
ところで、送風手段500の送風方式として排気方式を採用しているので、送風手段500,500を駆動すると、服地部200と身体(下着)との間の空間内の圧力は外気圧に対して陰圧になる。このため、送風方式として排気方式を採用した場合には、身体平行風を流通させるための空間を形成する方法として、上記の第一実施形態のように送風手段によって発生される空気の圧力を利用する方法を採用することはできない。一般に、送風方式として排気方式を採用した場合、送風手段が発生させる空気の流量が6リットル/秒よりも大きいと、空気案内手段の特性(例えば硬さや重さ)や形状にもよるが、外気圧と服地部内の圧力との差が大きくなり、身体平行風を流通させるための空間を確保することがとても困難である。
第七実施形態では、身体平行風を流通させるための空間を確保するために、服地部200に面状スペーサ90を取り付けている。具体的に、面状スペーサ90は、服地部200の内面側であって送風手段500,500に対応する部分及びそれよりも上側の部分に取り付けられている。この面状スペーサ90は、服地部200と身体(下着)との間に空気を流通させるための空間を確保するものである。面状スペーサ90には、空気の受ける抵抗が小さいことが要求される。尚、面状スペーサ90は耐圧スペーサとしての役割をも果たす。このため、面状スペーサ90としては、耐圧スペーサ80と同様の構造のものを用いることができる。特に、耐圧性の必要としない腹部や胸部に対応する服地部200に取り付ける面状スペーサ90としては、軽くしなやかなものを用いることが望ましい。
面状スペーサ90は、服地部200の内面側であって送風手段500,500に対応する部分及びそれよりも上側の部分に縫い付けられる。具体的には、まず、面状スペーサ90の網目状シートを服地部200の内面に対向させるようにして、面状スペーサ90を服地部200の所定位置に配置する。そして、例えばミシン等を用い、面状スペーサ90を服地部200の内面に縫い付ける。このとき、面状スペーサ90の端部だけを服地部200に縫い付けるのが望ましい。面状スペーサ90の縫合作業を容易に行うことができると共に、空調衣服7の外観上、その縫い目を目立たないようにできるからである。
尚、面状スペーサ90は必ずしも連続した一枚のスペーサである必要はなく、縫製の都合等のため、いくつかに分割してもよい。また、面状スペーサ90は、必ずしも、服地部200のうち送風手段500,500に対応する部分及びそれよりも上側の部分のすべてに取り付ける必要はなく、要所要所に取り付けるようにしてもよい。
こうして、面状スペーサ90が縫い付けられた空調衣服7を着用すると、面状スペーサ90の凸部が身体(下着)の表面に接するようになり、服地部200と身体(下着)との間に、空気を流通させるための空間が確保される。したがって、送風手段500,500を駆動すると、外部の空気が空気流通部40,40,40,40aから服地部200と身体(下着)との間の空間に流入し、身体平行風として上半身を包むように流れ、送風手段500,500から外部に排出される。
上述したように、第七実施形態の空調衣服では、遅効発汗の蒸発を促進し、下着が汗臭くなるのを防止することができる。
[第八実施形態]
次に、本発明の第八実施形態について図面を参照して説明する。図23Aは本発明の第八実施形態である空調衣服の概略正面図、図23Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第八実施形態において、第七実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第八実施形態の空調衣服8は、図23に示すように、服地部210と、開閉手段31aと、着脱手段33と、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段500,500と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、面状スペーサ90,90とを備えるものである。かかる空調衣服8は、主に、体重が10〜15kg程度の幼児が着用する衣服(幼児用衣服)として使用される。ここで、この空調衣服8の主な仕様は、図6の表にまとめられている。
第八実施形態の空調衣服8が第七実施形態の空調衣服7と異なる主な点は、空調能力が50Wである点、服地部210を上下二つの部分に分離することができるように構成した点である。その他の点については、上記の第七実施形態のものと同様である。
次に、第八実施形態の空調衣服8の特徴点について詳しく説明する。
第八実施形態では、着用者が幼児であり、体重が軽く、その産熱量も小さいので、空調衣服8の空調能力を50Wとしている。それに伴い、送風手段500,500として、1.4リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段500,500の消費電力は約0.3Wである。尚、送風手段500,500としては、ファン径が25mmであるものを用いている。また、二つの送風手段500,500のファン総有効面積は7cm2である。
また、幼児は服を汚しやすいので、洗濯の便宜を考えて、服地部210を上下二つの部分に分離することができるように構成している。ここで、服地部210の上の部分を上服地部210a、下の部分を下服地部210bと称することにする。
上服地部210aは、第七実施形態の服地部と同様に構成されている。すなわち、上服地部210aのうち、空気透過性の低い布を用いて形成された部分(腕部及び下部)は空気案内手段としての役割を果たし、空気透過性の高い布を用いて形成された部分(上部)は空気流通部40aとなる。一方、下服地部210bは空気案内手段としての役割を果たす。特に、下服地部210bの素材としては、例えばビニールシートが用いられる。これにより、下服地部210bが汚れた場合には、汚れを拭き取ることにより、その汚れを容易に落とすことができる。
また、下服地部210bには、二つの送風手段500,500、電源手段61、電源ケーブル62、電源ポケット63、電源スイッチ(不図示)、面状スペーサ90が取り付けられている。
上服地部210aと下服地部210bとは、着脱手段33によって互いに取り付けられている。この着脱手段33としては、例えばファスナーやマジックテープを用いることができる。このように、上服地部210aと下服地部210bとは容易に着脱することができる。空調衣服8を洗濯する場合には、上服地部210aと下服地部210bとを取り外し、上服地部210aについては通常の洗濯を行い、下服地部210bについては必要に応じて汚れを拭き取るようにすればよい。尚、下服地部210bは第二実施形態で説明した集積ベルトの役割をも果たしていると考えることができる。
[第九実施形態]
次に、本発明の第九実施形態について図面を参照して説明する。図24Aは本発明の第九実施形態である空調衣服の概略正面図、図24Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第九実施形態において、第一及び第二の実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第九実施形態の空調衣服9は、図24に示すように、服地部20と、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、六つの空気流通部40,40,40,40b,40b,40bと、一つの送風手段50と、電源手段61aと、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服9は、主に、重労働の作業に用いる作業服(重作業用衣服)として使用される。ここで、この空調衣服9の主な仕様は、図7の表にまとめられている。
第九実施形態の空調衣服9が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、空調能力が2000Wである点、送風手段50を一つだけ設けた点、空気流通部として上部開口部40,40,40の他に三つの補助開口部40b,40b,40bを設けた点、電源手段61aとして燃料電池を用いた点である。また、第九実施形態では、服地部20の内面側であって両肩に対応する部分には、第二実施形態のように、局所スペーサ70,70を設けている。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同様である。
次に、第九実施形態の空調衣服9の特徴点について詳しく説明する。
第九実施形態の空調衣服9では、重作業を行う際に使用されるので、空調能力を2000Wと大きくしている。それに伴い、送風手段50として、60リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、送風手段50の消費電力は約20Wである。
このように送風手段50に要求される送風能力がとても高いので、実際に使用する送風手段50のファン径は大きく、その重量も重い。例えば、送風手段50のファン径は少なくとも100mmである。実際、第九実施形態では、送風手段50として、ファン径が150mm、ファン総有効面積は150cm2であるものを用いている。したがって、送風手段50を服地部20に取り付け、服地部20だけで送風手段50の重量を受けるようにしたのでは、送風手段50が服地部20から容易に外れてしまう等、さまざまな問題がある。そこで、第九実施形態では、送風手段50の取付け方法に工夫を凝らしている。
具体的には、服地部20の背中中央部に一つの大きな孔部を設け、この孔部に送風手段50を取り付けている。ここで、送風手段50の構造・着脱方法は、基本的には、第一実施形態で説明したものと同様である。そして、第九実施形態では、送風手段50に、それを背負うための背負いベルト(背負い手段)56を設けている。着用者はその背負いベルト56を肩にかけて、送風手段50を背負う。これにより、送風手段50の重量を、服地部20だけでなく、着用者の肩でも受けることができるので、送風手段50が服地部20から容易に外れてしまうことはない。尚、背負い手段としては、必ずしも服地部20の外部から送風手段50の重量を支えるものを用いる必要はなく、背負い手段は、服地部20の内部に取り付けてもよいし、服地部20内面に縫い込んでもよい。
また、送風手段50を服地部20の背部に取り付け、送風手段50として少なくとも10リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものを用いることにより、立ち作業用の作業服として用いるのに非常に合理的な空調衣服9を得ることができる。特に、送風手段50を服地部20の背中に対応する部分に一つだけ設け、送風手段50として、服地部20と身体又は下着との間に発生させる空気の流量が少なくとも15リットル/秒であるものを用いることにより、立ち作業用の実用本位の作業服を最も低コストで作製することができる。尚、服地部20と身体又は下着との間に15リットル/秒の流量の空気を流すには、送風手段50のファン径は少なくとも60mmである必要がある。
また、服地部20と身体又は下着との間の空間に大量の身体平行風を流すためには、それに応じた量の空気を外部に流出することができなければならない。このため、第九実施形態では、空気流通部として上部開口部40,40,40の他に三つの補助開口部40b,40b,40bを設けている。三つの補助開口部40b,40b,40bはそれぞれ、服地部20の前側左部、前側右部、背中上部に設けられている。かかる補助開口部40bは、例えば、服地部20の所定箇所に孔を開け、その孔を塞ぐようにして空気透過性のよい素材を服地部20に縫い付けることにより形成される。ここで、空気透過性の大きい布としては、例えばメッシュ状シートが用いられる。
また、第九実施形態では、電源手段61aとして燃料電池を用いている。これは、送風手段50が大量の空気を送出し、送風手段50の消費電力が大きいので、一般の電池を用いたのでは実用的でないからである。燃料電池は、その容量に対して瞬間的に流せる電流が小さいので、瞬間的に大電流を流す必要がある場合には大きな容量のコンデンサー等を併用する必要があるが、空調衣服9では瞬間的に大電流を流す必要はないので、燃料電池は空調衣服9の電源として用いるのにとても適している。
第九実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が60リットル/秒であるので、第九実施形態の空調衣服は、着用者が重作業を行う場合に用いるのに好適である。
[第十実施形態]
次に、本発明の第十実施形態について図面を参照して説明する。図25Aは本発明の第十実施形態である空調衣服の概略正面図、図25Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第十実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十実施形態の空調衣服10は、図25に示すように、服地部220と、開閉手段31と、五つの空気流通部40,40,40,40c,40cと、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット(収納手段)63と、集積ベルト640と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服10は、上着とズボンが一つにつながった作業用の衣服(つなぎ型衣服)に適用される。ここで、この空調衣服10の主な仕様は、図7の表にまとめられている。
第十実施形態の空調衣服10が第二実施形態の空調衣服2と異なる主な点は、服地部220が上半身だけでなく下半身も覆っている点、空調能力が500Wである点、電源手段61を胸ポケットの裏側に取り付けた点、送風手段50,50を取り付けるための集積ベルト640を服地部220の内面側であって腰に対応する位置に着脱自在に取り付けた点である。その他の点については、上記の第二実施形態のものと同様である。
次に、第十実施形態の空調衣服10の特徴点について詳しく説明する。
第十実施形態では、空調衣服10を、いわゆるつなぎ型衣服に適用しているので、服地部220は上半身だけでなく下半身も覆っている。このため、下半身にも身体平行風が流れ、首から上を除く、身体表面のほとんど大部分を身体平行風で包むことができる。この場合、上部開口部40,40,40の他に、脚部の裾の開口部40c,40cも空気流通部となる。また、かかる空調衣服10の空調面積率は約80%である。尚、図25において、矢印は空気の流出方向を表している。
また、下半身にも身体平行風を流通させるため、空調衣服10の空調能力を500Wに強化している。これに伴い、送風手段50,50として、14リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約3Wである。尚、送風手段50,50としては、ファン径が70mmであるものを用いている。また、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は62cm2である。
服地部220の外面側の左上部には、胸ポケットが設けられている。第十実施形態では、服地部220の内面側であって胸ポケットに対応する位置に、電源ポケット63を取り付けている。そして、電源ポケット63に電源手段61である二次電池が収納される。このとき、電源ポケット63のサイズを胸ポケットのサイズと同じか或いは小さくしており、電源ポケット63を服地部220に縫い付けている。このため、電源ポケット63の縫い目を胸ポケットによって覆い隠すことができるので、その縫い目が外部から見えないという利点がある。また、胸ポケットは通常、物を収納するものであるので、胸ポケットの裏側に設けた電源ポケット63に電源手段61が収納されていても、着用者にとってそれ程違和感がない。更に、電源手段61を交換するとき、開閉手段31であるファスナーを少し開けるだけで、電源手段61を簡単に交換することができる。ちなみに、電源ポケットの取付け位置が下になればなる程、電源手段61の交換時にはファスナーを下の方まで開けなければならない。このことは、ファスナーだけでなく、ボタン、その他の開閉手段を用いた場合でも同様である。
次に、集積ベルト640について説明する。集積ベルト640は、二つの送風手段50,50及び電源ケーブル62を取り付けるための帯状部材である。この集積ベルト640の目的は、第二実施形態で用いられる集積ベルトと略同じである。但し、第十実施形態では、電源手段61は、服地部220の胸部に設けた電源ポケット63に収納されているので、集積ベルト640には取り付けられていない。また、集積ベルト640のベースシートとしては、空気透過性の低い素材を用いており、したがって、第二実施形態で用いられる集積ベルトとの構造上の大きな違いは、かかるベースシートが空気案内手段としての役割をも果たすことである。尚、第十実施形態の空調衣服10の洗濯時には、服地部220から、集積ベルト640と、電源ポケット63に収納された電源手段61とを取り外してから、空調衣服10を洗濯するようにすればよい。
[第十一実施形態]
次に、本発明の第十一実施形態について図面を参照して説明する。図26Aは本発明の第十一実施形態である空調衣服の概略正面図、図26Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第十一実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十一実施形態の空調衣服11は、図26に示すように、服地部230と、開閉手段31bと、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、20個の送風手段50と、電源手段61aと、電源ケーブル62と、集積ベルト64と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服11は、主に、女性が着用する、空気透過性のよいファッショナブルな服の下に着用する中着服(中着用衣服)に適用される。ここで、この空調衣服11の主な仕様は、図7の表にまとめられている。
第十一実施形態の空調衣服11が第二実施形態の空調衣服2と異なる主な点は、空調衣服11が袖部のないノンスリーブタイプのものである点、開閉手段31bとしてマジックテープを用いた点、集積ベルト64上に20個の送風手段50を取り付けた点、電源手段61aとして燃料電池を用いた点である。その他の点については、上記の第二実施形態のものと同様である。
第十一実施形態の空調衣服11の上には、通常、空気透過性のよい衣服が着用されるので、かかる衣服の外観上の美観を損なわないようにする必要がある。このため、送風手段50としては、厚さが薄く、小型のものを用いている。具体的に、送風手段50としては厚さが大きくとも6mmであるものを用いることが望ましい。また、小型の送風手段50はそれ単体の送風量が少ないので、集積ベルト64に合計20個の送風手段50を分散して取り付けている。一般に、送風手段50としては少なくとも10個設けるようにすることが望ましい。更に、小型の送風手段50はモータの効率が非常に悪いので、身体平行風について所望の流量を得るためには、大きな電力を必要とする。この点を考慮して、電源手段61aとしては燃料電池を用いている。
実際、第十一実施形態では、20個の送風手段50として、6リットル/秒の流量の身体平行風を流すことができるものを用いている。各送風手段50のファン径は20mmであり、20個の送風手段50のファン総有効面積は45cm2である。ここで、20個の送風手段50の消費電力は約8Wである。また、空調衣服11の空調能力は約200Wである。尚、この空調衣服11の空調面積率は約30%である。
[第十二実施形態]
次に、本発明の第十二実施形態について図面を参照して説明する。図27Aは本発明の第十二実施形態である空調衣服の概略正面図、図27Bはその空調衣服の概略背面図、図28はその空調衣服に用いられる送風手段を説明するための図である。尚、第十二実施形態において、第七実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十二実施形態の空調衣服12は、図27に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段50,50と、電源手段61bと、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、面状スペーサ90とを備えるものである。かかる空調衣服12は、上着が必要な季節に上着と身体又は下着との間に着用する中着服であって、体温の調節を目的として着用されるもの(温度調整用衣服)に適用される。ここで、この空調衣服12の主な仕様は、図7の表にまとめられている。
第十二実施形態の空調衣服12が第七実施形態の空調衣服7と異なる主な点は、空調衣服12が上着の下に着用して使用されるものである点、送風手段50,50として側流ファンを用い、かかる送風手段50,50を服地部200の外面側に取り付けた点、電源手段61bとして一次電池を用いた点である。また、送風手段50,50として、1.4リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。各送風手段50のファン径は35mmであり、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は15cm2である。そして、二つの送風手段50,50の消費電力は約2Wである。また、空調衣服12の空調能力は約50W、その空調面積率は約30%である。その他の点については、上記の第七実施形態のものと同様である。
次に、第十二実施形態の空調衣服12の特徴点について詳しく説明する。
寒い時期には防寒のために厚着をする必要がある。上着を着用している場合に、例えば電車やバス等に乗り遅れないように駆け足で乗り物に乗車すると、一時的に大きな産熱が伴い、体温が上昇し、場合によっては液体状の汗をかくこともある。このような状態で満員の乗り物に乗車した場合、暑苦しくなり上着を脱ぎたいが、満員のために脱ぐことができずに、暑苦しさを我慢しなければならないことがある。第十二実施形態の空調衣服12は、このような状況で使用されるものである。すなわち、着用者が暑苦しいと感じたときのみ、空調衣服12と身体又は下着との間に身体平行風を一時的に流通させることにより、身体の表面近傍における温度勾配を大きくして体を冷却すると共に、体からの汗と身体平行風とを接触させることによって身体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して体を冷却する。尚、かかる温度調整用の空調衣服12でも、十分な冷却効果を得るためには、送風手段50,50は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる身体平行風を発生させる必要がある。実際には、送風手段50,50として、少なくとも0.5リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いることが望ましい。
また、第十二実施形態では、送風手段50,50としては、図10に示すような側流ファンを用いている。そして、送風手段50,50を、図28に示すように、服地部200の外側に取り付けられている。このため、上着と服地部200との間には、送風手段50の厚みに対応した間隔hの空間が生じる。送風手段50,50に電力が供給されると、送風手段50,50は、服地部200と身体又は下着との間の空間を流れる空気を吸入し、服地部200と上着との間の空間において服地部200の表面に沿って略平行な方向に排出する。これにより、服地部200と身体又は下着との間に存在する体温で温もった空気を外気と入れ替えることができる。ここで、温度調整用の空調衣服12では、服地部200と身体又は下着との間の空間を流れる空気を、服地部200と上着との間の空間に排気する必要があるので、送風手段50の能力としては高い送風能力が必要である。具体的には、送風手段50としては、最大静圧(maximum static pressure)、すなわち流量がゼロになるところでの圧力が30Paから300Paまでの範囲内であるような送風圧力特性を有するものを用いることが望ましい。
第十二実施形態の空調衣服では、着用者は、暑苦しいと感じたときにのみ電源スイッチを入れ、自己の体温を冷却することができる。
[第十三実施形態]
次に、本発明の第十三実施形態について図面を参照して説明する。図29Aは本発明の第十三実施形態である空調衣服の概略正面図、図29Bはその空調衣服の概略背面図、図29Cはその空調衣服に用いられる下部空気漏れ防止手段を説明するための図である。尚、第十三実施形態において、第一及び第二の実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十三実施形態の空調衣服13は、図29に示すように、服地部20と、下部空気漏れ防止手段32aと、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服13は、Tシャツのように前部に開閉手段のない日常的な衣服に適用される。以下、このような衣服を「Tシャツ型衣服」とも称する。この空調衣服13の主な仕様は、図8の表にまとめられている。
第十三実施形態の空調衣服13が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、開閉手段が設けられていない点、下部空気漏れ防止手段32aとして帯状布地を用いた点、服地部20の両肩に対応する部分に局所スペーサ70,70を設けた点である。また、送風手段50,50として、12リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。各送風手段50のファン径は60mmであり、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は45cm2である。そして、二つの送風手段50,50の消費電力は約2.5Wである。また、空調衣服12の空調能力は約400W、その空調面積率は約35%である。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同様である。
空調衣服13では開閉手段が設けられていないので、着用者は空調衣服13を頭からかぶって着用する。このように頭からかぶって着用するTシャツ等は、通常、その裾部をズボンの中に入れず、裾部が外に垂れ下がった状態で着用される。このようなTシャツ型衣服の着用態様を考慮し、第十三実施形態では、下部空気漏れ防止手段32aとして、服地部20の裾部にゴムを入れるという手段ではなく、帯状布地に、伸縮性のある部材、例えばゴムを入れるという手段を用いている。具体的に、かかる下部空気漏れ防止手段32aは、帯状布地と、伸縮性部材とからなる。そして、図29Cに示すように、帯状布地を、服地部20の内面側であって服地部20の裾部近傍の位置に胴回り方向に沿って縫い付けている。また、帯状布地の身体側の端部には伸縮性部材を入れて、ギャザーを寄せている。これにより、空調衣服13を着用すると、伸縮性部材が入れられた帯状部材の端部は身体、下着又は衣服に密着するようになる。したがって、かかる空調衣服13では、裾部がだらりと垂れ下がった状態で着用されたときでも、下部空気漏れ防止手段32aにより空気が裾部から外部に漏れてしまうのを防止することができる。
[第十四実施形態]
次に、本発明の第十四実施形態について図面を参照して説明する。図30Aは本発明の第十四実施形態である空調衣服の概略正面図、図30Bはその空調衣服の概略背面図、図31はその空調衣服における回路部の概略ブロック図である。尚、第十四実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十四実施形態の空調衣服14は、図30及び図31に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段50,50と、電源手段61aと、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、耐圧スペーサ80と、二つの電源供給用コネクタ111,112と、五つのセンサ121,122,123,124,125と、回路部130とを備えるものである。ここで、各送風手段50のファン径は60mmであり、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は45cm2である。また、この空調衣服14の空調面積率は約40%である。かかる空調衣服14は、情報処理、通信技術等を利用したさまざまな機能を付加したものである。以下、このような各種の機能を付加した衣服を「高機能型衣服」とも称する。この空調衣服14の主な仕様は、図8の表にまとめられている。
第十四実施形態の空調衣服14が第五実施形態の空調衣服5と異なる主な点は、電源手段61aとして燃料電池を用いている点、及び、他の装置へ電力を供給する機能、身体平行風の流量を自動調整する機能、健康管理服としての機能、インターネット通信機能等の各種の機能を備えている点である。その他の点については、上記の第五実施形態のものと同様である。
次に、第十四実施形態の空調衣服14が備える上記の各機能について詳しく説明する。
最初に、他の装置へ電力を供給する機能について説明する。第十四実施形態では、電源手段61aとして燃料電池を用いている。服地部200の内面側には、電源手段61aの電力を各部に供給するための電源ケーブル62が複数配線されている。ここで、電源ケーブル62としては、洗濯に耐えうるように、耐水性を有するものを用いている。具体的に、電源手段61aと各電源供給用コネクタ111,112、電源手段61aと回路部130、及び回路部130と各送風手段50,50がそれぞれ電源ケーブル62によって接続されている。各送風手段50,50には、回路部130を経由して電源手段61aの電力が供給される。
電源供給用コネクタ111は、携帯電話等に電力を供給するためのコネクタであり、胸ポケットの内部に取り付けられている。例えば携帯電話を胸ポケットに入れ、携帯電話の電池充電用コネクタを電源供給用コネクタ111と接触させることにより、携帯電話の電池を充電することができる。また、電源供給用コネクタ112は、本発明の空調衣服と同様の原理を適用した空調帽子や空調ヘルメットに電力を供給するためのコネクタである。空調帽子や空調ヘルメットに設けられた所定のコネクタを電源供給用コネクタ112に接続することにより、空調帽子や空調ヘルメットに設けられた送風手段に電源手段61aの電力を供給することができる。したがって、この場合、空調帽子や空調ヘルメットには電源手段を設ける必要がない。
次に、空調衣服14が備える、身体平行風の流量を自動調整する機能について説明する。空調衣服14には、図31に示すように、五つのセンサ121〜125が取り付けられている。すなわち、体温センサ(体温検出手段)121と、脈拍センサ(脈拍検出手段)122と、温度センサ123と、湿度センサ124と、GPSセンサ125とである。体温センサ121は着用者の体温を検出するものであり、脈拍センサ122は着用者の脈拍を検出するものである。体温センサ121及び脈拍センサ122は身体に接する所定位置に取り付けられる。温度センサ123は外気の温度を検出するものであり、湿度センサ124は外気の湿度を検出するものである。温度センサ123と湿度センサ124は服地部200の外側に取り付けられる。また、GPSセンサ125は、位置情報を検出するものである。これら各センサ121〜125で得られた検出結果は、回路部130の演算手段に送られる。尚、以下では、体温センサ121及び脈拍センサ122をまとめて「体調センサ(体調検出手段)」、温度センサ123及び湿度センサ124をまとめて「環境センサ」とも称することにする。
また、回路部130は、図31に示すように、入力インターフェース131と、記憶手段132と、演算手段133と、ファン制御手段(駆動制御手段)134と、通信手段135と、出力インターフェース136とを備える。
入力インターフェース131としては、例えばキーボード用の入力端子がある。これにより、例えば、着用者は、空調衣服14を着用する前にその入力端子にキーボードを接続し、そのキーボードを用いて各種の情報を入力することができる。記憶手段132には、着用者の個人情報が格納されている。個人情報としては、例えば、身長、体重、健康時における体温・脈拍、血液型、当日の体調等がある。これらの情報は、着用者がキーボードを用いて入力することもできる。尚、記憶手段132には、上記の情報以外にも、着用者の住所、電話番号等さまざまな情報を記憶することが可能である。
通信手段135は、各種のセンサ121〜125で検出された体調等に関するデータを外部の受信手段との間で送受信するものである。また、出力インターフェース136としては、例えばスピーカ用の音声出力端子がある。これにより、着用者はスピーカから音声等を聞くことができる。
演算手段133は、体調センサ及び環境センサで得られた検出結果に基づいて、人体がその時の状況に応じて適切な放熱を行うために必要とされる発汗量を予測し、当該発汗量をすべて気化するために必要とされる身体平行風の流量を算出するものである。演算手段133で得られた算出結果はファン制御手段134に送られる。また、演算手段133は、各部の制御を行う制御手段としての役割をも果たす。
ファン制御手段134は、演算手段133で算出された身体平行風の流量に基づいて送風手段50,50の駆動条件を決定し、その決定した駆動条件にしたがって送風手段50,50の駆動を制御する。ここで、送風手段50,50の駆動条件としては、例えばモータの回転数が用いられる。モータの回転数が決まれば、身体平行風の流量も決まるからである。具体的には、ファン制御手段134は、送風手段50に供給する電圧を変えることにより、送風手段50の回転数を制御する。この場合、電源手段61aと送風手段50,50との間に、出力電圧を変えることができるDC−DCコンバータ(DC−DC変換手段)を設けることが望ましい。そして、ファン制御手段134が、DC−DCコンバータを制御することにより、送風手段50,50に供給する電力量を変えて、送風手段50,50から発生させる空気の流量を制御する。DC−DCコンバータを用いることにより、電力の損失をあまり伴わずに送風手段50の回転数を制御することができるという利点がある。このように、第十四実施形態の空調衣服14では、着用者の体調や外気の温湿度に応じて適切な量の空気を自動的に服地部200内に流すことができる。尚、DC−DCコンバータとしては、例えば、出力電圧をPWM変調した後にコンデンサで整流するようなものを用いてもよい。
尚、第十四実施形態では、送風手段50,50として、最大47リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。かかる最大流量で身体平行風を流したとき、二つの送風手段50,50の消費電力は40Wである。また、空調衣服14の空調能力は最大1500Wである。
前述した身体平行風の特性によれば、汗を気化させるのに必要な流量以上の流量の身体平行風をいくら流していても、生理クーラーへの影響はない。しかし、身体平行風の流量を常に一定にしたのでは、空調能力が一定に決まってしまう。このため、身体が生理的に必要とする放熱量が少ない場合でも送風手段50,50の消費電力は一定であるので、結果的に、電源手段61aへの一回の燃料補給で送風手段50,50を駆動できる時間が短くなってしまう。この点は、電源手段として二次電池を用いたときも同様である。したがって、第十四実施形態の空調衣服14では、身体がその時に生理的に必要とする放熱量に応じて身体平行風の流量を自動的に制御することができるので、燃料(又は電池)の無駄使いを抑えることができるだけでなく、送風手段50,50の寿命を延ばすことができる。
また、一般にオフィスワーク等の軽作業を行う環境では周囲の騒音は小さいが、重労働を行う環境では周囲の騒音が大きい。第十四実施形態の空調衣服14では、身体が生理的に必要とする放熱量に応じて身体平行風の流量を自動的に制御することにより、オフィス等、周囲が静かな環境で空調衣服14を着用する場合には、送風手段50,50の回転数が小さく、送風手段50,50から発生するノイズも小さいので、着用者本人及び周囲の者は、空調衣服14の騒音が喧しいと感じることはない。一方、重労働を行う環境で空調衣服14を着用した場合には、送風手段50,50の回転数が大きく、送風手段50,50から発生するノイズも大きくなるが、周囲の騒音も大きいため、空調衣服14の騒音はそれ程問題にならない。
尚、体調センサや環境センサからの検出結果を用いただけでは、身体がその時の状況に応じて適切な放熱を行うために必要とされる発汗量を正確に予測することができない場合がある。作業の状況に応じて身体が生理的に必要とする放熱量には、個人差があるからである。このような場合には、演算手段133は、体調センサ及び環境センサからの検出結果に加えて、記憶手段132に記憶されている体重や当日の体調その他の着用者の個人情報を用いて、発汗量を予測することが望ましい。これにより、演算手段133は、身体がその時の状況に応じて適切な放熱を行うために必要とされる発汗量を正確に且つきめ細かく決定することができる。
次に、空調衣服14が備える、健康管理服としての機能について説明する。この機能を実現するため、演算手段133はさらに次のような処理を行う。すなわち、演算手段133は、体調センサで検出された体温・脈拍に基づいて当該体温又は脈拍がそれぞれ所定の基準範囲内にあるか否かを判断し、当該体温又は脈拍が基準範囲外にあると判断したときに、出力インターフェース136に接続されたスピーカから所定の警告を発生させる。これにより、着用者は、自分の体温又は脈拍について問題が生じたことを直ちに知ることができる。ここで、体温及び脈拍の基準範囲についての情報は、予め記憶手段132に記憶されている。
また、演算手段133は、体調センサで検出された体温・脈拍に基づいて当該体温又は脈拍がそれぞれ所定の基準範囲内にあるか否かを判断した際に、例えば当該脈拍が所定の異常値以上であると判断したときには、体調センサで得られた検出結果に基づいて体調に関する情報を生成し、通信手段135に送出する。この異常値は予め記憶手段132に記憶されている。そして、通信手段135は、その体調に関する情報を外部の受信手段に送信する。ここで、受信手段は、例えば着用者の係り付けの病院に設置される。また、上記の「体調に関する情報」には、体調センサで検出された体温・脈拍(体調)だけでなく、GPSセンサ125で検出された位置情報、記憶手段132に記憶されている着用者の個人情報も含まれる。特に、「所定の情報」にGPSセンサ125で検出された位置情報を含めることにより、受信手段が設置された病院の担当者は、その位置情報に基づいて着用者の居所を特定することができる。このため、着用者が健康上の緊急事態に陥ったときに、着用者(患者)の居所を救急車等に素早く連絡することができる。
尚、体調センサとしては、体温センサ121、脈拍センサ122の他に、心臓の状態をチェックするセンサ等、さまざまな種類のセンサを用いることができる。空調衣服14に各種の体調センサを付加することにより、空調衣服14の有する、健康管理服としての機能をより一層向上させることができる。
次に、空調衣服14が備えるインターネット通信機能を説明する。通信手段135には、インターネットに接続して通信を行う機能が付加されている。そして、着用者がインターネット通信機能を利用する場合には、入力インターフェース131にキーボード等の入力手段を接続すると共に、出力インターフェース136に、インターネットを介してダウンロードした情報を出力するための出力手段を接続する。例えば、聞きたい音楽を、キーボードの操作によってインターネットを介してダウンロードし、スピーカからその音楽を出力することができる。ここで、空調衣服14にスピーカを取り付ける代わりに、出力インターフェース136のヘッドフォン用音声出力端子にヘッドフォンを接続し、ヘッドフォンで音楽を聞くようにしてもよい。また、出力インターフェース136にビデオ出力端子を設け、そのビデオ出力端子に眼鏡型表示装置を接続することにより、着用者は、その眼鏡型表示装置をかけて、ダウンロードした映像を見ることができる。尚、入力インターフェース131に音声入力装置用の端子を設けることにより、キーボードの代わりに、音声入力装置を用いて音声で入力を行うようにすることが望ましい。これにより、着用者は入力作業を容易に行うことができるので、空調衣服14のインターネット通信機能がさらに活用しやすくなる。
第十四実施形態の空調衣服では、演算手段が着用者の体調や外気の温湿度に基づいて人体がその時に生理的に必要とする放熱量を算出し、その放熱量に応じて身体平行風の流量を自動的に制御することができる。このため、かかる空調衣服を着用することにより、着用者がどのような体型の人であろうと、どのような内容の作業を行おうとも、着用者は自己に適した冷却効果を得ることができる。
尚、上記の第十四実施形態では、体調センサとして、体温センサ及び脈拍センサを用いた場合について説明したが、体調センサとしては、体温センサだけを用いてもよい。
また、上記の第十四実施形態では、体調センサ及び環境センサで得られた検出結果に基づいて発汗量を予測し、身体平行風の流量を決定する場合について説明した。しかし、体調センサを用いる場合には、体調センサを身体に接する位置に取り付けなければならず、その取付けが若干面倒である。このため、体調センサの代わりに、身体の動きに応じて作業量の概算量を検出する加速度センサ等の作業量センサ(作業量検出手段)を用いるようにしてもよい。かかる作業量センサは、必ずしも身体に接する位置に取り付ける必要はなく、空調衣服のいずれの位置に取り付けてもよい。この場合、演算手段は、作業量センサ及び環境センサで得られた検出結果に基づいて、人体がその時の状況に応じて適切な放熱を行うために必要とされる発汗量を予測する。
また、第十四実施形態の空調衣服は、たとえ身体を冷却する機能を備えていなくとも、上述した健康管理服としての機能やインターネット通信機能を備えているだけで十分な使用価値がある。
[第十五実施形態]
次に、本発明の第十五実施形態について図面を参照して説明する。図32Aは本発明の第十五実施形態である空調衣服の概略正面図、図32Bはその空調衣服の概略背面図、図33Aはその空調衣服に用いられる送風手段の概略正面図、図33Bはその送風手段の概略側面図である。また、図34Aはその空調衣服を着用したときの様子を説明するための図、図34Bはその空調衣服を着用したときのベルト部分の様子を説明するための図である。尚、第十五実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十五実施形態の空調衣服15は、図32に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段550,550と、耐圧スペーサ80,800と、リモートコントロール用送信器(遠隔制御用送信手段)140とを備えるものである。かかる空調衣服15は、第五実施形態のオフィス用空調衣服5を改良したものである。以下、この空調衣服15を「オフィス用改良型空調衣服」とも称する。この空調衣服15の主な仕様は、図8の表にまとめられている。
第十五実施形態の空調衣服15が第五実施形態の空調衣服5と異なる主な点は、各送風手段550,550の回転制御をリモートコントロール用送信器140で行う点、服地部200の内面側であって腰に対応する位置に耐圧スペーサ800を設けた点である。その他の点については、上記の第五実施形態のものと同様である。
次に、第十五実施形態の空調衣服15の特徴点について詳しく説明する。
第十五実施形態では、送風手段550として、いわゆるハイブリッドファンを用いている。この送風手段550の基本的な構成は、図10及び図11に示した送風手段50とほぼ同じであるが、送風手段550は、送風手段50の各構成要素に加えて、図33に示すように、電源手段551と、受信回路(受信手段)552と、制御回路(制御手段)553とを備えている点で送風手段50と異なる。ここで、送信手段550の内部ファンガードには板状の載置部555が設けられており、電源手段551、受信回路552及び制御回路553は、その載置部555上に取り付けられている。
電源手段551は、送風手段550に電力を供給するためのものである。ここでは、電源手段551としてキャパシターを用いている。キャパシターは、寿命が非常に長いこと、ごく短時間に充電できること、安全性が高いこと等の理由から空調衣服用の電源として用いるのに非常に適している。受信回路552は、リモートコントロール用送信器140からの信号を受信するものである。制御回路553は、受信回路552の受信した信号に基づいて、送風手段550の駆動を制御するものである。また、リモートコントロール用送信器140は、送風手段550,550が発生する空気の流量を調整する流量調整手段としての役割を果たすものである。具体的に、リモートコントロール用送信器140は、送風手段550,550のオン/オフを指示する信号や、送風量を所定の量に調整するための信号を送信する。
このように、送風手段550自体に電源手段551を取り付けたことにより、電源手段551と送風手段550との間を電源ケーブルで接続する必要がなくなり、しかも、空調衣服15の洗濯時には送風手段550,550を取り外すだけでよいという利点がある。また、着用者は、リモートコントロール用送信器140を操作して、送風手段550,550が発生する空気の流量を簡単に調整することができる。
第十五実施形態の空調衣服15では、服地部200の内面側であって腰に対応する位置に耐圧スペー800が取り付けられている。具体的には、服地部200の裾部をズボンの内側に入れたときに、少なくともズボンのベルト部に対応する服地部200の位置に耐圧スペーサ800を取り付けるようにしている。この耐圧スペーサ800の構造は、服地部200の背中部に取り付けられる耐圧スペーサ80とほぼ同様である。
かかる耐圧スペーサ800を設けたことにより、図34に示すように、服地部200の裾部をズボンに入れ、ズボンのベルトを締めても、服地部200の裾部が身体又は下着と密着することがないので、送風手段550,550から発生した身体平行風の一部は、耐圧スペーサ800を介して下半身にも送られることになる。したがって、ズボンの生地として空気漏れの少ない素材を用いると、当該ズボンを空気案内手段として機能させることができると共に、当該ズボンの裾部の開口部を空気流通部として機能させることができる。この場合、空調衣服15内だけでなく、当該ズボン内にも身体平行風を流すことができるので、空調面積率を大幅に改善することができる。例えば、着用者が空調衣服15とともに空気案内手段としてのズボンを着用した場合、空調面積率は約80%に向上する。
尚、耐圧スペーサ800を必ずしも服地部200の裾部に取り付ける必要はない。上述したように、耐圧スペーサ800の役割は、ズボンのベルト等が胴体を締め付けることによって服地部200の裾部と身体又は下着とが密着することを回避し、下半身への空気の流通空間を確保することである。このため、耐圧スペーサ800の取付け方法としては、服地部200と身体又は下着との間に耐圧スペーサ800が存在することができる方法であれば、どのような方法を用いてもよい。すなわち、耐圧スペーサ800は、服地部200の裾部をズボン(下半身用衣服)の内側に入れたときに少なくともズボンのベルト部に対応する位置に設けられていればよい。例えば、耐圧スペーサ800を腹巻の外面に取り付けるようにしてもよい。この場合、着用者は、その腹巻を着用した後に空調衣服15を着用する。これにより、服地部200と腹巻との間に空気の流通空間が確保される。
第十五実施形態の空調衣服では、着用者がリモートコントロール用送信器を用いて身体平行風の流量を調整することができるので、着用者がどのような体型の人であろうと、どのような内容の作業を行おうとも、着用者は自己に適した冷却効果を得ることができる。
[第十六実施形態]
次に、本発明の第十六実施形態について図面を参照して説明する。図35Aは本発明の第十六実施形態である空調衣服の概略正面図、図35Bはその空調衣服の概略背面図、図36Aはその空調衣服に用いられる空調ベルトを裏面側から見たときの概略平面図、図36Bはその空調ベルトが巻き付けられた状態を説明するための図、図37はその空調衣服に用いられる送風手段の概略側面図である。尚、第十六実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十六実施形態の空調衣服16は、図35に示すように、上半身の上部を覆う上部服地部260と、上半身の下部を覆う下部服地部270と、二つの開閉手段31,31と、二つの着脱手段34,34と、三つの空気流通部40,40,40と、空調ベルト150とを備えるものである。上記の第一から第十五までの各実施形態では、一般の服の形態をそのまま生かして空調衣服を製造していたが、第十六実施形態では、空調ベルト150を用いて服地部を上下二つに分離している。以下、第十六実施形態の空調衣服16を「空調ベルト型衣服」とも称する。この空調衣服16の主な仕様は、図8の表にまとめられている。
上部服地部260は臍部より上側の身体を覆うものであり、下部服地部270は腰部を覆うものである。上部服地部260及び下部服地部270は空気案内手段としての役割を果たす。このため、上部服地部260及び下部服地部270の素材としては空気漏れの少ない素材が用いられる。また、上部服地部260の前部及び下部服地部270の前部にはそれぞれ、開閉手段31,31としてのファスナーが設けられている。
上部服地部260の下端は空調ベルト150の上端に着脱手段34により着脱自在に取り付けられ、下部服地部270の上端は空調ベルト150の下端に着脱手段34により着脱自在に取り付けられている。ここで、着脱手段34,34としてファスナーを用いている。したがって、上部服地部260と下部服地部270とを空調ベルト150に取り付けることにより、空調衣服16が完成する。
空調ベルト150は、図36に示すように、ベルト状のベース部材(帯状部材)151と、二つの送風手段560,560と、ファン制御手段152と、電源手段61と、電源スイッチ(不図示)と、流量調整手段(不図示)と、複数の耐圧スペーサ153と、マジックテープ154a,154bとを備える。送風手段560,560、ファン制御手段152、電源手段61等の電気部品は、ベース部材151の裏面に取り付けられている。
二つの送風手段560,560はベース部材151上の所定位置に取り付けられる。送風手段560は、いわゆるプロペラファンであり、図37に示すように、モータ(不図示)と、プロペラ561と、方向変換手段562と、ファンガード563とを有するものである。ファンガード563は、モータ、プロペラ561及び方向変換手段562を収納するものである。プロペラ561は、外部の空気をプロペラ561の回転軸方向から吸入し、その吸入側と反対側において回転軸方向に略平行に空気を送り出す。方向変換手段562は、プロペラ561からその回転軸方向に沿って取り込まれた空気がその回転軸方向に略直交する方向へ放射状に流れるように空気の流れ方向を変換するものである。例えば、方向変換手段562としては、略円錐形状の部材を用いることができる。したがって、送風手段560,560は、外部の空気を吸入し、その吸入した空気を身体の表面と略平行な方向に流すことができる。尚、プロペラ561の下端と身体又は下着との間に間隔を設けるための間隔保持手段を用いることにより、プロペラ561から吸入された空気が、直接、身体又は下着に当たり、それによって空気の流れ方向を変換することができるが、この間隔保持手段も方向変換手段の一つとみなすことができる。また、送風手段560を空調ベルト150に取り付ける方法としては、第一実施形態で示した方法と同じ方法を用いることができる。
また、送風手段560,560としては、12リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。各送風手段560のファン径は60mm、二つの送風手段560,560のファン総有効面積は45cm2である。ここで、二つの送風手段560,560の消費電力は約2.5Wである。
電源手段61は、ファン制御手段152及び送風手段560,560に電力を供給するものである。ファン制御手段152は、送風手段560,560から発生させる空気の流量を制御するものである。また、図示しない流量調整手段は、送風手段560,560が発生する空気の流量を調整するものである。流量調整手段としては、例えばボリュームが用いられる。
各耐圧スペーサ153は、送風手段560,560、ファン制御手段152、電源手段61等の各電気部品の間に取り付けられている。耐圧スペーサ153は空調ベルト150と身体との間に空気が流通できるような空間を確保するためのものであり、その構造は図19に示す耐圧スペーサ80と同様である。
マジックテープ154aは、ベース部材151の裏面であってその長手方向の一方の端部に取り付けられており、マジックテープ154bは、ベース部材151の表面であってその長手方向の他方の端部に取り付けられている。ここで、マジックテープ154aをA面のものとすると、それに貼り付けられるB面のマジックテープがマジックテープ154bである。したがって、空調ベルト150を胴に巻きつけたときに、マジックテープ154aとマジックテープ154bとを貼り付けることにより、空調ベルト150が胴からずれ落ちないようにすることができる。すなわち、マジックテープ154a,154bは、空調ベルト150の長さを調整して空調ベルト150を胴回りに取り付けるベルト留め手段である。尚、ベース部材151には複数の耐圧スペーサ153が取り付けられているので、空調ベルト150をきつく締めても、空調ベルト150と身体との間に空間を確保することができる。
第十六実施形態の空調衣服16を着用する場合、まず、上部服地部260と下部服地部270とを空調ベルト150に取り付ける。次に、着用者は上部服地部260の袖部を腕に通す。そして、上部服地部260のファスナーを締めることにより、上部服地部260の前部を閉じると共に、下部服地部270のファスナーを締めることにより、下部服地部270の前部を閉じる。最後に、空調ベルト150の両端をマジックテープ154a,154bで貼り付ける。こうして、空調衣服16が着用される。尚、ここでは、下部服地部270の裾部から空気が外部に漏れるのを防止するために、下部服地部270の裾部をズボン等の内部に入れることにする。
着用者が空調ベルト150に設けられた電源スイッチ(不図示)を押すと、ファン制御手段152が送風手段560,560に電力を供給し、送風手段560,560が駆動する。これにより、空調ベルト150から身体平行風が発生し、その発生した身体平行風は上部服地部260及び下部服地部270と身体との間の空間を流れ、空気流通部40,40,40から外部に排出される。尚、空調衣服16の空調能力は約400Wである。
尚、第十六実施形態においては、上部服地部及び下部服地部としては、上部服地部及び下部服地部と身体又は下着との間に身体平行風を流すことができるような形状であれば、どのような形状のものでも用いることができる。また、空調ベルトを留める方法としては、マジックテープに限られず、例えば通常のベルトの留め具等、各種の方法を用いることができる。更に、上部服地部及び下部服地部の前部の開閉手段としては、ファスナーに限られず、空気漏れが少なく、確実に結合できる方法であれば、どのような方法を用いてもよい。
尚、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
上記の第一から第十六までの各実施形態では、さまざまな用途の空調衣服を説明した。当然のことであるが、本発明の空調衣服は、それらの空調衣服に限られるものではなく、上記の各実施形態の仕様を合理的に組み合わせて得られるものであってもよい。
また、上記の各実施形態において、空気案内手段と身体又は下着との間の空間において空気が流れる経路を強制的に設定するための流路設定手段を空気案内手段の内面に設けるようにしてもよい。例えば、流路設定手段としては、スポンジ等の軽量な部材を用いることができる。この流路設定手段を設けることにより、空調衣服としてのパフォーマンスが更に向上する。
また、上記の各実施形態において、空気案内手段と身体又は下着との間の空間における空気の流れを強制的に乱すための空気攪拌手段を空気案内手段の内面のところどころに設けるようにしてもよい。例えば、空気攪拌手段としても、スポンジ等の軽量な部材を用いることができる。この空気攪拌手段を設けることにより、身体平行風が層流になるのを防止することができる。身体平行風が層流になると、身体平行風のうち、体から離れた、すなわち空気案内手段側を流れる空気は、汗の蒸発にあまり寄与しなくなるからである。
また、送風手段の送風方式として吸気方式を採用すると共に、身体平行風の流量が大きく且つ風圧が高い場合には、空気案内手段として、それが身体から大きく離れてしまうような形状のものを用いることは望ましくない。このような形状の空気案内手段を用いると、空気案内手段と身体又は下着との間の空間において空気案内手段の近傍を空気が層流として流れるため、汗の蒸発にあまり寄与しない無駄な空気が多くなるからである。但し、もともと送風量の大きい送風手段の付近では、空気案内手段が身体又は下着から大きく離れても、その部分が一種の空気溜めの役割を果たし、外部から空調衣服内に空気を取り入れる際の空気抵抗が小さくなる。このため、このような場合には、空気案内手段を身体又は下着から大きく離した方が、送風量が大きくなり空調衣服全体としての空調効率が上がる。
更に、上述したように、空調衣服の空調能力は、空気の蒸発寄与率に依存する。そして、空気の蒸発寄与率は、服地部の形状や空気攪拌手段の有無等により変化する。この点を考慮すると、実際に、上記の各実施形態の空調衣服においてそれに対応する図5〜図8に記した空調能力を実現するためには、同図中に記した空気の流量の約80%から約150%までの範囲内の流量の空気を服地部と身体又は下着との間の空間に流す必要がある。
次に、服地部と身体又は下着との間の空間に発生させる空気の流量と空気流通部の総有効断面積との関係、及び、送風手段の総有効断面積(ファン総有効面積)と空気流通部の総有効断面積との関係について説明する。
図38は送風手段から空気案内手段と身体又は下着との間の空間(空気流通空間)を介して空気流通部に至るまでの空気の流れの経路を模式的に示した図である。ここでは、外部の空気が送風手段から空気流通空間内に流入し、空気流出部から外部に流出する場合を考える。また、図38に示す経路は、着用者が送風手段のスイッチをオンしたときに、実際に空気が流れる経路を表している。図38では、ファン総有効面積をS1、空気流通空間内のある位置における空気流通空間の総有効断面積をS2、空気流通部の総有効断面積をS3で示している。ファン総有効面積S1は、例えば送風手段としてプロペラファンを用いた場合には、各送風手段のプロペラ部の面積を合計したものであり、プロペラが構成されていない送風手段の中央部の面積はファン総有効面積S1に含まれない。また、空気流通部の総有効断面積S3は、空気流通部を通過する空気の流れ方向に垂直な平面に、当該空気流通部の面積を射影して得られる面積である。ここで、第五実施形態で説明したような空気透過性の高い布を用いて形成された空気流通部についても、空気流通部の総有効断面積S3に加えられる。
一般に、図38に示すように、空気流通空間の総有効断面積S2は、送風手段から遠ざかるにつれて大きくなり、空気流通部に近づくにつれて小さくなる。また、通常、空気流通部の総有効断面積S3はファン総有効面積S1よりも大きい。すなわち、三つの総有効断面積S1,S2,S3の間には、送風手段及び空気流通部の近くの領域を除き、S1<S3<S2という関係がある。
ファン総有効面積S1は、外観上、露出している送風手段の面積と略等しいので、空調衣服の外観上の違和感を少なくするためには、ファン総有効面積S1をあまり大きくすることは好ましくない。また、もし空気流通部の総有効断面積S3を大きくしようとすると、空気流通部を空気案内手段に多数設けなければならない。しかし、これを行うと、身体平行風が空気流通空間を流れる平均距離が短くなり、空気の蒸発寄与率が低下してしまう。本発明者が実験により確かめたところによると、空気流通部を空気案内手段に設ける場合、空気の蒸発寄与率がそれ程低下しないようにするためには、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量をLリットル/秒とすると、空気流通部の総有効断面積を20・L1/2cm2以下にすればよい。ここで、定数「20」は次元をもった量であり、これとL1/2との積が面積の次元をもつ。
空気の流量が小さい場合、例えば6リットル/秒以下である場合には、図5〜図8におけるファン総有効面積の欄に示されているように、ファン総有効面積S1は小さく、実際、送風手段及び空気流通部の近くの領域を除き、S1<S3<S2の関係が成立している。したがって、この場合には、空調衣服の外観上の違和感も小さく、しかも空気流通部の総有効断面積S3を大きくする必要はないので、空気の蒸発寄与率を低下させることはない。
一方、もし空気の流量を大きくしようとすると、ファン総有効面積S1を大きくする必要がある。この場合には、空気流通路の総有効断面積S3を大きくしないと、上記の三つの総有効断面積S1,S2,S3の間の関係が成り立たなくなってしまうことがある。空気流通路の総有効断面積S3がファン総有効面積S1よりも著しく小さいと、送風圧力を非常に大きくしなければならなくなり、消費電力が非常に大きくなる等の不都合が生じる。この点を考慮すると、空気流通路の総有効断面積S3がファン総有効面積S1よりも小さくなったとしても、空気流通路の総有効断面積S3はファン総有効面積S1の少なくとも0.7倍である必要がある。また、本発明者が実験により確かめたところによると、このような不都合を回避するためには、空気流通部の総有効断面積S3を5・L1/2cm2以上にすればよい。ここで、定数「5」は次元をもった量であり、これとL1/ 2との積が面積の次元をもつ。
したがって、空調衣服においては、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量をLリットル/秒とすると、空気流通部の総有効断面積が5・L1/2cm2以上20・L1/2cm2以下の範囲内にあることが望ましい。また、ファン総有効面積(送風手段の総有効断面積)に対する空気流通部の総有効断面積の比率が少なくとも0.7倍であることが望ましい。
本発明の空調衣服においては、省エネルギー、電池の連続使用時間(二次電池の場合は一回の充電で使用可能な時間)及び電池のコストや重量を考慮すると、送風手段の消費電力に対する空調衣服の空調能力の比率は大きい程よい。特に、外部の空気が温度33℃、湿度50%であって、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量が少なくとも5リットル/秒である場合、送風手段の消費電力に対する空調衣服の空調能力の比率は少なくとも50倍であることが望ましい。尚、上記の比率は、送風手段のモータの効率、空気の蒸発寄与率等に依存する。
また、本発明の空調衣服では、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量をLリットル/秒とすると、使用する送風手段として、最大静圧、すなわち流量がゼロになるところでの圧力が5・L1/2パスカル以上50・L1/2パスカル以下の範囲内にあるような送風圧力特性を有するものを用いるのが実用的である。ここで、定数「5」、「50」は次元をもった量であり、これらとL1/2との積が圧力の次元をもつ。このためには、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に流す空気の流量が10リットル/秒以下である場合には、送風手段としてプロペラファンを用い、空気の流量が10リットル/秒より大きい場合には、送風手段としてターボファンを用いることが望ましい。
次に、空気案内手段の通気性について説明する。上記の第一実施形態において説明したように、送風手段の送風方式が吸気方式であって、送風手段によって発生される空気の流量が大きい場合には、送風手段の近傍における空気案内手段が、外部の圧力と空気案内手段内の圧力との圧力差によって膨らみ、空気案内手段の近傍には、いわゆる「空気溜め」が形成される。そして、この「空気溜め」が形成された部分(空気溜め部)において、空気案内手段から漏れる空気の流量が最も大きい。ここで、この空気溜め部での上記圧力差は、空気流通部の総有効断面積を大きくする等、空調衣服の設計に応じて小さくすることが可能である。また、送風手段の消費電力及びノイズの低減を図り、送風手段にかかる負担を小さくするためには、この空気溜め部での上記圧力差を小さくする必要がある。本発明者が実験を行った結果、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に流れる空気の流量をLリットル/秒とすると、空気溜め部での上記圧力差が0.5・Lパスカル程度であれば、送風手段にかかる負担を小さくできることが確かめられた。ここで、定数「0.5」は次元をもった量であり、これとLとの積が圧力の次元をもつ。この値と空気溜め部を形成する空気案内手段の面積を考え合わせると、空気案内手段に圧力をかけて、空気溜め部での上記圧力差を10パスカルとした場合、1cm2当たり1秒間に漏れる空気の流量が5cc以下であれば空気漏れの問題は回避される。尚、この圧力領域では、上記圧力差と漏れる空気の流量とが略比例すると考えられる。空調衣服に流す空気の流量が、その代表的な値である10リットル/秒であり、空気溜め部を形成する空気案内手段の面積が300cm2である場合、空気溜め部での圧力差は5パスカルになるので、空気溜め部において漏れる空気の流量は、5・(5/10)・300=750cc/sである。すなわち1秒間に750ccの空気が空気溜め部から漏れることになる。このとき、10リットル/秒の空気流量に対する空気溜め部で漏れる空気の流量の割合は、7.5%である。尚、送風手段の送風方式が排気方式でも、同様の考えが成り立つ。
また、上記の第二、第八及び第十一の各実施形態では、送風手段の着脱方式として集積ベルト方式を採用し、電源手段を集積ベルト上に配置した場合について説明したが、空調衣服の使用目的によっては電源手段を必ずしも集積ベルト上に配置せず、例えばズボンのベルトに電源手段を取り付けるようにしてもよい。尚、この点については、集積ベルト方式を採用した空調衣服に限らず、他の空調衣服でも同様であり、電源手段はどこに取り付けてもよい。
更に、本発明の空調衣服を使用する場合、電気部品を除いた服地部を多数用意し、電気部品については一セットだけを用意しておくことが望ましい。実際に着用する服地部にその電気部品を取り付けることにより、毎日、色、柄、形状等の異なる空調衣服を楽しむことができる。
人間は食物を摂取して、生命維持活動や仕事を行い、それに対応して産熱する非常に効率の悪い作業装置と考えることができる。効率が悪いゆえに、摂取したカロリーのほとんどが熱になる。そして、正常な体温を維持するためには、そのときの作業量に応じた量の放熱が必要になる。具体的に、標準的な大人の場合、身体からの放熱量は、安静時で約100キロカロリー/時、歩行時(速度5km/時)で約260キロカロリー/時である。また、最大労働時では、放熱量は1000キロカロリー/時を超えるといわれている。かかる放熱を行うための機能として、人間には本来的に発汗により身体を冷却する機能(以下、これを「生理クーラー」とも称する。)が備わっており、この生理クーラーは、上述の最大労働時の放熱量を十分に放熱する能力を持っている。すなわち、作業量に応じて生理的に必要とする放熱量が決まり、人体はその放熱量に対応した量の汗を出すようになっている。そして、汗がすべて気化されれば、その人のそのときの状況に最適な放熱が行われる。放熱量に対応した汗の量はもちろん脳により一義的に計算されたものではないであろうが、体温が激しく上昇すれば、人体は大量の汗を出し続け、その結果、体温が下がれば、汗の量は少なくなり、体を冷やしすぎることはない。
汗の蒸発による体の冷却という観点から考えると、汗には、大別して、冷却に寄与する有効発汗と、冷却に寄与しない無効発汗とがある。さらに細かく分類すると、汗は、即効発汗、遅効発汗、無効発汗の三種類に分けることができる。即効発汗とは、身体から出ると同時に蒸発する汗である。この即効発汗は直ちに蒸発するので、身体はすぐに冷却される。遅効発汗とは、身体から液体の状態で出る汗である。この遅効発汗はすぐには蒸発しないので、汗で下着が濡れてしまい、身体が必要とするときにすぐに冷却効果は得られない。しかし、風が吹いたときなどに汗が遅れて蒸発し、結果的に身体が冷却される。また、無効発汗とは、身体から垂れ落ちる汗である。この場合には、蒸発による身体の冷却作用はない。無効発汗が出ているときは、身体は生理クーラーの作用が間に合わない状態にあり、体温が上昇し続け、身体は一定の状態を維持し続けることはできない。
生理クーラーが有効に機能すれば、作業量の変化等に応じた必要量の汗が即効発汗として身体を冷却し、下着に液体状の汗が残ることもなく、身体を常に快適な状態に保つことができる。しかしながら、温湿度、風の有無、作業量などの条件により汗をすべて気化することができなくなると、必要とする放熱量が得られなくなり、身体は気化されない無駄な液体状の汗(無効発汗)を出し続け、人は不快になるだけでなく、生理的にもダメージをこうむる。
図1は生理クーラーの原理を説明するための人体の概略ブロック図である。図1に示すように、人体には、作業等に伴い熱を発生する動力産熱部と、体温等を検知するセンサ部と、必要な放熱量を演算・制御する演算制御部(主に脳)と、冷媒である水(汗)を貯めておく貯水部と、演算制御部からの指示により冷媒である水(汗)を身体の表面に運ぶための汗腺と、汗腺からの汗を身体全体に薄く濡らす大面積の気化プレート(皮膚)とが備わっていると考えられる。ここで、人体には、汗の最大供給能力として、前述した最大労働時の産熱量を十分に放熱できる程度の能力がある。このように、人体は、理想的で完全な冷却システムを備えているといえる。
ところで、汗腺から出た汗が単に気化プレートである皮膚を覆っているだけでは、身体を冷却することはできない。汗を気化させることによってはじめて生理クーラーとしての機能が発揮される。汗を気化させるためには、後述するような空気が必要である。また、空気の流れがなければ、皮膚表面の空気は汗の気化によってすぐに飽和状態に達してしまい、汗はそれ以上気化することができない。したがって、連続的に汗を気化させるためには、皮膚近傍に空気の流れを作る必要がある。このような、皮膚の表面に空気の流れを人工的に作る手段としては、扇風機がある。しかしながら、扇風機には野外で使用することができないこと等、さまざまな問題点がある。
一方、本発明者は、身体の表面近傍に空気の流れを作るための手段として、冷却衣服を案出した(PCT/JP01/01360)。かかる冷却衣服は、衣服と下着又は体との間に空気を流通させるための流通路と、衣服に取り付けられた送風手段とを備える。この冷却衣服では、送風手段により外部の空気を流通路内に取り込んで流通させることにより、体温と外部の空気の温度との温度差により身体を冷却する。
この方式を発展させたものが本発明の空調衣服である。すなわち、本発明の空調衣服は、送風手段により服地と身体との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせ、服地と身体との間の空間において空気を身体の表面に沿って流通させることにより、気化プレートに相当する皮膚の表面における湿度勾配を大きくして、身体が必要とする放熱量に対応して供給される汗をすべて即効発汗として気化させるものであり、人体にもともと備えられている生理クーラーを有効に機能させるための補助装置である。
生理クーラーは、それが完全に機能すれば、人体にとって完全で理想的なクーラーであるということについては議論の余地がない。問題は、生理クーラーを完全に機能させるための補助装置、すなわち空調衣服が、どの程度、生理クーラーのパフォーマンスを上げられるかである。
外気温が低い場合や産熱量が少ない場合には、当然、生理クーラーは有効に働かない。そして、人体には、生理クーラーとは逆の作用をする機能、すなわち人体からの放熱を抑えるような機能はほとんど備わっておらず、せいぜい、生理的に身体表面の血流量を少なくすることが行われるくらいである。このため、このような場合、実際には、人は自分で衣服の調整をすることにより体温を調整する。すなわち、人は寒く感じれば衣服を重ね着したりする。これに対し、外気温が高い場合や産熱量が多い場合には、空調衣服を着用し、身体の表面近傍を十分な流量の空気によって包むことにより、生理クーラーが有効に働き、人が衣服を脱いだりしなくても、自動的に最適な放熱が行われる。このように、外気温が低い場合や産熱量が少ない場合は、衣服の調整をするなり、暖を取るなり、何らかのアクションをしなければならないのに対し、外気温が高い場合や産熱量が多い場合には、空調衣服を着用することにより身体を常に最適な状態に保つことができる。
したがって、本発明の空調衣服を用いて、生理クーラーが有効に機能する範囲を大幅に拡大することにより、暑さによるすべての問題、エアーコンディショナーによるエネルギー問題、環境問題、熱中症等の健康問題など、各種の問題を一挙に解決することができる。
次に、汗の気化熱により身体表面の温度を33℃に保つ場合における放熱量と外気の温湿度との関係について説明する。図2は身体の表面近傍に10リットル/秒の流量の空気を流した状況下で汗の気化熱により身体表面の温度を33℃に保つ場合における最大放熱可能量と外気の温湿度との関係を説明するための図である。ここで、図2において、縦軸は湿度(%)、横軸は温度(℃)を表す。また、図2では、最大放熱可能量が0カロリー/時、200キロカロリー/時、500キロカロリー/時である場合の温湿度条件を示している。図2から分かるように、例えば外気の温度が35℃、湿度が63%である場合、汗が十分に供給されれば、最大200キロカロリー/時の放熱を行うことができる。もちろん、空気の流量が倍になれば、最大放熱可能量も2倍になる。
図2における最大放熱可能量は、空気が汗を無駄なく気化させたときの理論値である。例えば扇風機を用いて人体に空気を流した場合には、その流した風のごく一部しか汗の蒸発には寄与せず、送風量に対して最大放熱可能量は大幅に小さくなる。また、扇風機を用いた場合、扇風機の使用態様に起因する風の性質にも大きな問題点がある。すなわち、扇風機は人体に対向して配置されるのが通常であるので、必然的に風が人体に対して略垂直に当たることになる。このため、汗を気化させるための送風量を最適化するのは非常に難しい。送風量が少なすぎれば汗を全部気化させることができなくなる。一方、送風量が多すぎれば、風の当たった皮膚の汗は完全に気化するが、汗の供給が間に合わなくなり、皮膚表面の温度が風の温度の影響を受けてしまう。例えば、40℃の風を皮膚に強く当てた場合、皮膚の温度は略40℃になり、冷却とは全く逆の効果になってしまう。したがって、汗を無駄なく気化するためには、身体の表面近傍において身体の表面に対して略平行な風(以下、これを「身体平行風」とも称する。)を流す必要がある。
次に、この身体平行風について説明する。図3は2枚の平行平板の間に空気を流したときに一の平板(プレート)からの距離に対する風速の分布を模式的に表した図である。図3に示すようにプレート表面では風速がゼロになることはよく知られている。いま、一方のプレートを気化プレート(皮膚)、もう一方のプレートを、身体平行風を形成するための案内プレートと考えると、図3に示すように、皮膚表面での空気の流れはなく、皮膚表面が風圧を受けることもない。また、二つのプレートの間では風速が大きいので、皮膚表面の温湿度勾配がとても大きくなる。このため、風路の長さに対して皮膚表面と案内プレートとの間隔が十分小さいと、身体平行風は汗の気化に無駄なく寄与することになる。
ここで、図2のA点で示した温度35℃、湿度30%の身体平行風を、身体の大部分を包むように流した場合を考察する。標準的体格の大人が安静にしているときは約100キロカロリー/時、5km/時で歩行しているときは約260キロカロリー/時の放熱が必要であるが、図2から、10リットル/秒の流量で空気を流せば、上記の量の放熱が可能であることが分かる。水(汗)の気化熱は常温で580カロリー/ccであるので、100キロカロリー/時を580カロリー/ccで割ることにより、安静時には172.4cc/時の量の汗が気化されることになる。また、5km/時での歩行時には、同様にして、448cc/時の量の汗が気化されることになる。このように、一定量の身体平行風を流しているにもかかわらず、必要な放熱量に応じた量の汗が出て、その汗がすべて気化されることにより自動的に最適な放熱を行うことができる。逆に、これ以上の量の汗が出ることもない。なぜならば、必要な放熱量に応じた量以上の汗が出て気化されると、体温が下がってしまうので、脳を中心とした制御機能が正常に動作している限り、このようなことは起こりえないからである。ここで注目すべき点は、10リットル/秒の流量の空気を流し続けても、放熱量を決めるのは、あくまで生理クーラーの制御機能であるという点である。このため、生理クーラーは、必要とする放熱量が少なければ発汗量も少なくなるように、必要とする放熱量が多ければ発汗量も多くなるように発汗量を自動的に制御する。空気の流量が関係するのは、その生理クーラーが有効に機能する範囲である。例えば、必要な放熱量が500キロカロリー/時であれば、図2から分かるように、外気の温度が35℃、湿度が30%の場合、その外気を身体平行風として10リットル/秒の流量で流しても、その放熱量に応じた量の汗をすべて気化することはできない。この場合には、身体平行風の流量を大きくすればよい。身体平行風の利点は、いくら流量を大きくしても、扇風機のように風が身体に略垂直に当たるという問題がなく、生理クーラーが有効に機能する範囲を容易に拡大することができるという点である。
このように生理クーラーはあらゆる面で理想的な人体放熱手段であるが、その生理クーラーには、汗を気化させるための手段が唯一欠けている。この欠けている手段を補うものが本発明の空調衣服である。言い換えれば、空調衣服は、身体平行風を発生する手段を有し、生理クーラーが有効に機能する範囲を拡大するための補助装置である。
図4は理想的な身体平行風を実現するための空調衣服を説明するための図である。理想的な身体平行風を実現するには、図4に示すように、身体表面の略全体を、身体平行風を案内するための案内シート(空気案内手段)で覆うようにすればよい。そして、案内シートと身体表面との間に一定の小さな間隔を作り、例えば頭上に取り付けた大型のファンにより空気の流れを発生し、案内シートと身体表面との間の空間において大量の身体平行風を流すようにする。しかしながら、図4に示すような空調衣服では、人体の放熱・汗の気化の観点からは理想的なものであっても、実生活を行う上では現実的ではない。このため、生理クーラーの機能を100%生かすことができなくとも、十分に性能を発揮させることができる実用的な空調衣服の実現が望まれている。
以下に、実用上、空調衣服に要求される条件を列記する。
▲1▼身体全体の表面積に対する、身体平行風で包むことのできる身体部分の表面積の割合(空調面積率)が大きいこと(空調面積率は少なくとも10%であること)、
▲2▼作業等の邪魔にならないような形状と重量を有すること、
▲3▼屋外でも使用できるように小さな電池で長時間、空気を送風することができ、且つ十分な流量の空気を発生させることができること、
▲4▼安価であること、
▲5▼洗濯をするときに簡単に電気部品を着脱することができること、
▲6▼その他、安全性はもちろんのこと、ファッション性を含め、通常の衣服と外観上の差が小さいこと、
等である。
いま、上記▲1▼の条件、すなわち空調面積率について具体的に説明する。空調衣服を着用することにより着用者が快適に過ごすことができるようにするためには、当然、身体平行風で身体のできるだけ多くの部分を包み、かかる部分において人体の放熱や汗の気化を促進させるようにすればよい。現実的には、顔、手、足を除き、その他の身体部分を身体平行風で包むようにした空調衣服が考えられる。この空調衣服の空調面積率は約85%である。一方、空調衣服を着用する用途によっては、身体の一部についてだけ体温の上昇を防げばよい場合がある。具体的には、特に汗の出やすい胴体上部及び脇の下だけを身体平行風で包むようにした空調衣服が考えられる。この空調衣服の空調面積率は次のように算出される。平均的な大人の身体全体の表面積は約1.8m2である。胴体上部の長さを15cm、胸囲を80cmとすると、胴体上部の表面積は1200cm2であり、これに脇の下の面積を加えると、胴体上部及び脇の下の全表面積は約1400cm2である。したがって、この場合の空調面積率は約7.8%である。体型等の個人差を考慮すると、本発明の空調衣服の空調面積率は少なくても10%であることが望ましい。
具体的に、本発明の空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体との間の空間において空気を身体の表面に沿って案内するための空気案内手段と、空気案内手段と身体との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を空気案内手段と身体との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、空気案内手段と身体との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、送風手段に電力を供給するための電源手段とを備えるものである。そして、送風手段が空気案内手段と身体との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗を蒸発させ、その蒸発の際に汗が周囲から奪う気化熱を利用して身体を冷却する。尚、空気案内手段としては、空気案内手段と身体との間の空間に取り込まれた空気の流量に対する空気案内手段全体から外部に漏れる空気の流量の割合が多くとも60%であるような空気透過性を有するものを用いることが望ましい。
ここで、空気案内手段と身体との間の空間内に流通させる空気の流量が少ないと、十分な冷却効果が得られなくなってしまう。実際、空調衣服を着用することにより十分な冷却効果を得るためには、送風手段は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させる必要がある。例えば、体重60kgの大人が空調衣服を着用する場合には、少なくとも0.6リットル/秒の流量で空気を流さなければならない。本発明者等が行った実験によれば、空気の流量を上記の最小流量よりも少ない流量とすると、風がある程度吹いている環境では、通常の衣服を着用した場合よりも不快に感じる着用者もいた。これは、空気案内手段の素材として空気透過性の良くないものを用いているのが主な原因である。これに対し、風のない蒸し暑い環境の場合には、空気の流量を0.6リットル/秒の流量で流すことにより、空調衣服を着用した全員が、通常の衣服を着用した場合に比べ快適であると感じた。しかも、空気の流量を上記の最小流量とした場合には、汗が下着に長時間残ってしまうのを防ぐ効果が得られた。そして、空気の流量をさらに大きくすれば、最大放熱可能量を大きくして、生理クーラーが有効に機能する範囲を拡大することができることが確認された。尚、外部の空気が温度33℃、湿度50%である場合、送風手段が、その外部の空気を利用して、着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させると、身体から生じた汗が周囲から奪う気化熱は着用者の体重1kg当たり少なくとも340カロリー/時である。
本発明の空調衣服では、送風手段として、着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものを用いている。このため、送風手段が空気案内手段と身体との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することができる。
また、本発明者は、形状や空気の流量等の異なる各種の空調衣服を案出している。これにより、ファッション性を重視した空調衣服、エアーコンディショナーを用いることなくオフィスワークを行うための空調衣服、暑さによる労働災害を防止するための空調衣服、屋外での作業を快適に行うための空調衣服等、使用目的に応じて最適な空調衣服を実現し、暑さに関する全ての問題を解決することができる。
尚、遅効発汗を伴う場合、すなわち発汗量に対して放熱量が間に合わない場合には、空調衣服を着用しても着用者の不快感はあまり改善されないことが実験的に確認されている。しかし、空調衣服を着用した場合は、着用しない場合に比べて放熱量が十分に大きければ、たとえ汗による不快感があっても、生理的なダメージは小さくなる。このため、遅効発汗を伴う場合であっても、空調衣服を着用することは有益である。
本発明の空調衣服を使用する場合、通常、空調衣服を身体の上に直接着用するが、空調衣服を下着の上に着用してもよい。ここで、「下着」とは、空調衣服の下に着用される衣類を意味する。但し、空調衣服の下に下着を着用した場合、例えば下着の通気性があまりよくないと、生理クーラーが有効に機能する範囲は小さくなることに注意する必要がある。また、空調衣服の下に下着を着用した場合、下着の存在によって身体平行風が身体の表面近傍を流れなくなってしまうと、空調衣服の機能が低下してしまう。これを避けるために、下着としては、小さめのものであって体にフィットするものを用いることが望ましい。尚、以下では、放熱量等を説明するに当たっては、下着を着用していないこと、すなわち、身体平行風が文字通り、空調衣服と身体との間を流れることを前提とする。
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明者は、着用者の使用目的等に応じて16種類の空調衣服を案出した。図5、図6、図7及び図8は16種類の空調衣服の仕様を説明するための図である。具体的に、かかる16種類の空調衣服の内容は、軽作業用空調衣服、中作業用空調衣服、雨天作業用空調衣服、ライン作業用空調衣服、オフィス用空調衣服、野外用空調衣服、防臭用空調衣服、幼児用空調衣服、重作業用空調衣服、つなぎ型空調衣服、中着用空調衣服、温度調整用空調衣服、Tシャツ型空調衣服、高機能型空調衣服、オフィス用改良型空調衣服、空調ベルト型空調衣服である。
また、図5、図6、図7及び図8では、空調衣服の仕様として19項目を挙げている。具体的には、「空調能力」、「流量」、「送風方式」、「スペーサ」、「ファン取付面」、「ファン数」、「ファン位置」、「ファン種類」、「ファン総有効面積」、「ファン径」、「電源種類」、「消費電力」、「空調面積率」、「袖」、「空気案内手段の種類」、「空気流通部」、「開閉手段」、「下部空気漏れ防止」、「ファン着脱方式」の各項目がある。
「空調能力」の欄には、空気案内手段と身体との間の空間に流通させた基準空気が1時間当たりに吸熱することができる熱量を仕事率に換算した概略値(W)が示される。ここで、「基準空気」とは、温度33℃、湿度50%の空気のことをいう。「流量」の欄には、送風手段が空気案内手段と身体との間に流通させる空気の流量(リットル/秒)が示される。「送風方式」の欄には、送風手段による送風方向の区別、すなわち、送風手段によって外部の空気を空気案内手段内に取り込む「吸気」方式、送風手段によって空気案内手段内の空気を外部に排気する「排気」方式のいずれかが示される。また、「スペーサ」の欄には、空気案内手段と身体との間にスペーサを用いるかどうか、スペーサを用いる場合にあってはそのスペーサの種類が示される。
「ファン取付面」の欄には、送風手段が空気案内手段の内面側、外面側のいずれに取り付けられるのかが示される。「ファン数」の欄には、空調衣服に取り付けられる送風手段の数量が示される。「ファン位置」の欄には、送風手段の取付け位置が示される。「ファン種類」の欄には、送風手段の種類、例えば側流ファンであるか、プロペラファンであるかが示される。「ファン総有効面積」の欄には、各送風手段における吸気又は排気のための開口部の面積をすべての送風手段について合計した面積の値(cm2)が示される。「ファン径」の欄には、送風手段の羽根車又はプロペラの直径(mm)が示される。
「電源種類」の欄には、電源手段の種類が示される。「消費電力」の欄には、各送風手段の消費電力をすべての送風手段について合計した値(W)が示される。「空調面積率」の欄には、身体全体の表面積に対する、送風手段によって発生された空気で包むことのできる身体部分の表面積の割合(%)が示される。
「袖」の欄には、空調衣服が半袖の服であるか、長袖の服であるか、あるいは袖なし(ノンスリーブ)の服であるか等が示される。「空気案内手段の種類」の欄には、空気案内手段の素材が示される。「空気流通部」の欄には、空気流通部の内容が示される。「開閉手段」の欄には、空調衣服の前側を開閉する手段の内容が示される。「下部空気漏れ防止」の欄には、空調衣服の下部から空気が漏れるのを防止する手段の内容が示される。また、「ファン着脱方式」の欄には、送風手段を空気案内手段に着脱する方式の内容が示される。
以下の各実施形態では、上記の16種類の空調衣服のそれぞれについて詳しく説明する。
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。図9Aは本発明の第一実施形態である空調衣服の概略正面図、図9Bはその空調衣服の概略背面図である。
第一実施形態の空調衣服1は、図9に示すように、服地部20と、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)、流量調整手段(不図示)とを備えるものである。かかる空調衣服1は、最も実用的な軽作業用衣服として使用される。ここで、この空調衣服1の主な仕様は、図5の表にまとめられている。
服地部20は、身体の所定部位を覆うものである。第一実施形態では、かかる服地部20を用いて、上半身を覆う半袖の軽作業用衣服を製作している。また、第一実施形態では、服地部20は、服地部20と身体又は下着との間の空間において、送風手段50により発生した空気を身体又は下着の表面に沿って案内するという役割をも果たす。すなわち、服地部20は、身体を覆う衣服としての役割と共に、空気案内手段としての役割をも果たす。
服地部20を空気案内手段として用いるためには、服地部20の素材として、身体平行風をスムーズに流すことができ、且つ空気が外部にあまり漏れないようなものを用いることが望ましい。この服地部20に用いるのに最適な素材の一つとして、ポリエステル100%の布が挙げられる。ここで、ポリエステル布は、空気透過性が非常に小さいという性質を有する。この性質により、ポリエステル布はウィンドブレーカーや冬用の衣服地として一般的に使用されている。また、ポリエステル布には、安価である、光沢がある、汚れにくい、しわになりにくい等の性質もある。これに対し、ポリエステル布は、空気透過性がよくないこと、汗を吸収しにくいこと等の理由から、一般に、夏用の衣服地としてはほとんど使用されていない。空調衣服1に用いる服地部20にとっては、空気透過性が小さいことは空気の漏れを防止する上で必要な条件である。また、空調衣服1を着用することにより汗は皮膚から直ちに気化するため(即効発汗)、服地部20として汗を吸収する素材を必ずしも用いる必要はない。したがって、ポリエステル布は、空調衣服1用の服地部20に要求される条件をすべて兼ね備えている。第一実施形態では、服地部20(空気案内手段)の素材としてポリエステル布を用いることにする。
尚、一般に、空調衣服1用の服地部20の素材としては、空気が実質的に透過しないような素材であれば、どのような素材を用いてもよい。例えば、ポリエステル布以外に、ナイロン布等のプラスチック繊維で作られた布や、高密度布を用いることができる。むろん使用目的によっては、綿などの天然繊維や、これらの混紡繊維を用いてもよい。
また、服地部20の素材としては、ポリエステルを80%以上含む混紡素材を用いるようにしてもよい。ポリエステルを80%以上含む混紡素材を用いるのは、素材に含まれるポリエステルの割合が80%よりも少ないと、上述したポリエステルの特徴が生かせなくなるからである。
服地部20の前部には開閉手段31が設けられている。この開閉手段31は、空調衣服1を着用する際にその前部を開閉する役割を果たすものである。また、開閉手段31としては、服地部20の前部を閉じたときに当該前部から空気が外部に漏れるのを防止することができるようなものを用いる必要がある。第一実施形態では、開閉手段31としてファスナーを用いている。ファスナーは簡単に開閉することができ、しかもファスナーを閉じたときにそのファスナー部分から外部へ空気がほとんど漏れることはない。
また、服地部20の裾部には、下部空気漏れ防止手段32が設けられている。この下部空気漏れ防止手段32は、服地部20の下部(裾部)を身体、下着又は衣服に密着させることにより当該裾部から空気が外部に漏れるのを防止するためのものである。第一実施形態では、下部空気漏れ防止手段32として、伸縮性素材、例えば冬期用のジャンパー等に用いられているゴムベルトを用いている。かかるゴムベルトは服地部20の裾部に縫い込まれている。このため、裾部がズボン等の衣服に密着して裾部から外部に空気が漏れることはない。尚、下部空気漏れ防止手段32として、ゴムベルトの他に、例えば紐、ベルト等を用いることができる。下部空気漏れ防止手段32として紐を用いる場合には、その紐は服地部20の裾部にその裾部の周りに沿って動かすことができるように取り付けられる。そして、その紐で服地部20の裾部を締めることにより、裾部をズボン等に密着させる。
空気流通部40は、服地部20と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出す空気流出部又は外部の空気を服地部20と身体又は下着との間の空間内に取り入れる空気流入部として利用される。空気流通部40を空気流出部として利用するか、空気流入部として利用するかは、送風手段50の送風方式によって決められる。すなわち、送風手段50が外部の空気を服地部20内に取り込むように動作する場合には、空気流通部40は空気流出部として利用され、一方、送風手段50が服地部20内の空気を外部に排出するように動作する場合には、空気流通部40は空気流入部として利用される。第一実施形態では、空気流通部40を、空気流出部として利用する。
また、第一実施形態では、空調衣服1に三つの空気流通部40,40,40を設けている。具体的には、衣服としての機能上、服地部20の所定の端部に形成される開口部、すなわち、襟周り部分の開口部と、左右の袖口部分の開口部とが空気流通部40,40,40である。空調衣服1を着用してファスナーを閉じると、送風手段50を除き、空気流通部40,40,40以外は、服地部20内の空気が外部に流出するところはなくなる。尚、以下では、襟周り部分の開口部及び左右の袖口部分の開口部を、「上部開口部」とも称することにする。
服地部20の背中側の下部であって脇腹に近い左右両側には、それぞれ孔部21,21が形成されている(図12A参照)。各孔部21に対応する服地部20の位置には服地部20の内面側から送風手段50が取り付けられている。送風手段50は、服地部20と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるものである。二つの送風手段50,50は、外部の空気を服地部20内に取り込む方向に回転する。すなわち、送風手段50,50の送風方式としては吸気方式を採用している。送風手段50,50に電力が供給されると、送風手段50,50は外部の空気を服地部20内に取り込み、その取り込まれた空気は、服地部20の存在により服地部20と身体又は下着との間の空間内を身体平行風として流通する。そして、身体平行風は空気流通部40,40,40に達すると、そこから外部に排出される。
ここで、上記の送風手段50,50の取付位置、すなわち服地部20の背中側の下部であって脇腹に近い位置を「標準位置」と称することにする。この標準位置は送風手段50,50の取付位置として、最も好ましい位置である。送風手段50,50を標準位置に取り付けると、着用者が椅子にもたれかかったときでも送風手段50,50が邪魔になることはなく、しかも、作業時に腕を送風手段50,50にぶつけてしまうこともないからである。また、前から見たときに、送風手段50,50が見えず、空調衣服1の見栄えもよい。更に、標準位置が服地部20の下部に位置するので、空気流通部40,40,40が服地部20の上部に形成される場合には、服地部20で覆われる身体部分の略全体に身体平行風を流通させることができる。すなわち、この標準位置は、身体全体の表面積に対する、身体平行風で包まれる身体部分の表面積の割合(空調面積率)を比較的大きくすることが可能な位置である。尚、第一実施形態の空調衣服1では、空調面積率は約35%である。
次に、送風手段50について説明する。図10Aは第一実施形態の空調衣服1に用いられる送風手段50の概略断面図、図10Bはその送風手段50に用いられる羽根車の概略平面図である。図11Aはその送風手段50に用いられる内部ファンガードの概略側面図、図11Bはその送風手段50に用いられる内部ファンガードの概略平面図、図11Cはその送風手段50に用いられる外部ファンガードの概略平面図である。また、図12Aは服地部20に形成された孔部21を説明するための図、図12Bはその服地部20に送風手段50を取り付けたときの様子を説明するための図である。
送風手段50は、図10に示すように、モータ51と、羽根車52と、内部ファンガード53と、外部ファンガード54と、マジックテープ55とを備える。内部ファンガード53と外部ファンガード54は、モータ51及び羽根車52を収納するものである。羽根車52は、図10Bに示すように、R状の複数の羽根52aと、円板52bと、モータ軸圧入用孔52cとを有するものである。複数の羽根52aは、円板52bの周辺に取り付けられている。
内部ファンガード53は、図11A,Bに示すように、円形状の底板53aと、多数のファンガード柱53bと、円環形状のフランジ53cとを有する。底板53aは、モータ固定板としての役割を果たす。ファンガード柱53bは、底板53aに略垂直に取り付けられると共に、底板53aの周囲部に沿って所定の間隔で取り付けられる。これらのファンガード柱53bは、指が内部ファンガード53内に入るのを防ぐ役割を果たす。フランジ53cは、底板53aと反対側に位置するファンガード柱53bの端部に取り付けられる。また、外部ファンガード54は、図11Cに示すように、半径の異なる複数のガードリング54aと、複数のガードリング54aを固定するフランジ54bとを有する。ここで、フランジ54bのうち最も外側に位置する円環状部には、図10Aに示すように、マジックテープ55が取り付けられている。
送風手段50を組み立てるには、まず、モータ51を、内部ファンガード53の底板53aの中央に取り付ける。そして、モータ51の回転軸を羽根車52のモータ軸圧入用孔52cに入れるようにして、羽根車52を内部ファンガード53に収納する。その後、外部ファンガード54を内部ファンガード53の上に固定することにより、送風手段50が完成する。
図10Bに示す矢印は、羽根車52の回転方向を表している。すなわち、羽根車52は、回転方向に対して羽根52aが後ろ向きに曲がった後ろ向き羽根車になっている。このため、かかる羽根車52が当該矢印の方向に回転すると、羽根車52の軸方向から空気を吸入し、羽根車52の外周方向へ空気を放射状に送り出すことができる。このように羽根車の軸方向から吸入した空気を羽根車の外周方向へ放射状に送り出す送風手段を、以下「側流ファン」とも称する。
ここで、羽根車52の直径(ファン径)は約5cmである。また、各送風手段50における吸気又は排気のための開口部の面積を二つの送風手段50,50について合計した面積の値(ファン総有効面積)は、約30cm2である。
第一実施形態で実際に使用する送風手段50としては、服地部20と身体又は下着との間に発生させることができる空気の流量が6リットル/秒であるものを使用している。ここで、送風手段50が6リットル/秒の流量の空気を服地部20内に送出すると、その空気の圧力によって、服地部20と身体との間に身体平行風を流すための空間を自動的に形成することができる。かかる空間を自動的に形成するためには、服地部20の種類(特に硬さ、重さ)や形状にもよるが、一般には、送風手段50が少なくとも2リットル/秒の流量の空気を送り出すことが必要である。また、二つの送風手段50,50がそれぞれ6リットル/秒の流量の空気を送出する場合、二つの送風手段50,50の消費電力は約1Wである。
送風手段50は服地部20に着脱自在に取り付けられている。具体的には、図12Aに示すように、服地部20の内面であって孔部21の周囲部には、マジックテープ22が取り付けられている。このマジックテープ22をA面のものとすると、B面のマジックテープは送風手段50のフランジ54bに取り付けられたマジックテープ55である。服地部20の内面側において、送風手段50の外部ファンガード54を服地部20の孔部21と対向するように送風手段50を配置し、二つのマジックテープ22,55を貼り付けることにより、図12Bに示すように、送風手段50が服地部20の孔部21に対応する位置に取り付けられる。このように誰でも間単に送風手段50を容易に着脱することができるので、空調衣服1を容易に洗濯できるだけでなく、送風手段50が故障したときに送風手段50だけを容易に交換することができる。
尚、送風手段50を服地部20に着脱する方法としては、マジックテープ22,55を用いる方法に限定されるものではなく、送風手段50の着脱が簡単で、しかもその取付け部分において空気漏れが少ない方法であれば、どのような方法を用いてもよい。例えば、シート状マグネットを用いて送風手段50を着脱するようにしてもよい。
電源ポケット63は、図9Aに示すように、電源手段61を収納するものであり、服地部20の内面側であって服地部20の前側左下部に取り付けられている。電源手段61は、送風手段50,50に電力を供給するためのものである。ここでは、電源手段61として、経済性の観点から二次電池を用いている。電源手段61と二つの送風手段50,50とは電源ケーブル62により接続されている。また、電源手段61と二つの送風手段50,50との間には、電源スイッチ(不図示)が設けられている。この電源スイッチは、電源手段61から二つの送風手段50,50に供給する電力をオン・オフするものである。
空調衣服1には、送風手段50,50が発生させる空気の流量を調整する流量調整手段(不図示)が設けられている。ここでは、流量調整手段として例えばボリュームを用いている。ボリュームを設けたことにより、服地部20と身体との間の空間に必要以上の流量の空気を流さないようすることができるので、電源手段61を長持ちさせることができる。
第一実施形態の空調衣服1では、電源手段61と送風手段50,50との間に設けた電源スイッチをオンにすると、二つの送風手段50,50がそれぞれ外部の空気を服地部20内に取り込む。このとき、その取り込まれた空気の圧力によって、服地部20と身体又は下着との間に身体平行風を流すための空間が自動的に形成される。これにより、服地部20と身体又は下着との間の空間において、上半身を包み込むような身体平行風の流れが生じる。そして、その身体平行風は空気流通部40,40,40に達すると、そこから外部に排出される。ここで、図9に示した矢印は、外部から空気を取り込む方向及び外部へ空気を排出する方向を示している。
このように、空調衣服1は身体平行風を服地部20と身体又は下着との間の空間に流通させることができるので、生理クーラーが有効に機能する範囲を拡大することができる。このとき、生理クーラーの最大能力は外部の空気の温湿度によって決まる。例えば図2に示すA点の環境(温度35℃、湿度30%)では、空気の流量が10リットル/秒のとき、約450キロカロリー/時までの放熱を行うことができる。空調衣服1では、空気の流量が6リットル/秒であるので、270キロカロリー/時までの放熱を行うことができる。したがって、かかる環境下において、通常の体格の大人が第一実施形態の空調衣服1を着用した場合、5km/時で歩行運動を行っても液体状の発汗を伴うことはなく、快適に歩行することができる。但し、上記の放熱量の値の算出にあたっては、体温と身体平行風の温度との温度差による熱のやり取り、呼吸による冷却、足や頭など身体平行風に包まれていない皮膚からの汗の気化による冷却効果を考慮していない。
ここで、服地部20と空気案内手段との関係を述べる。第一実施形態では、服地部20の裾部から空気が流出することはないので、実際、服地部20のうち送風手段60より下の部分にはあまり身体平行風が流れないと考えられる。このため、厳密には、服地部20全体が空気案内手段としての役割を果たすのではなく、服地部20のうち送風手段60より上の部分だけが空気案内手段としての役割を果たすといえる。しかし、送風手段60を標準位置に設けた場合には、服地部20の大部分が身体平行風を導く役割を果たすので、服地部20全体が空気案内手段であると考えることができる。
また、外気の圧力と空気案内手段内の圧力との圧力差は、送風手段50に近いほど大きい。そして、送風手段50の送風方式が吸気方式であって、送風手段50によって発生される空気の流量が大きい場合には、送風手段50の近傍における空気案内手段が上記の圧力差によって膨らみ、送風手段50の近傍には、いわゆる「空気溜め」が形成される。ところで、上述したように、空気案内手段から空気が外部に漏れると、空調効率が下がってしまうので、空気案内手段としては空気漏れの少ない素材を用いている。実用上、空気案内手段は、送風手段50,50によって空気案内手段と身体又は下着との間の空間に取り込まれた空気の流量に対する空気案内手段全体から外部に漏れる空気の流量の割合が多くとも60%であるような空気透過性を有することが望ましい。
次に、第一実施形態の空調衣服1の空調能力について詳しく説明する。ここでは、外部の空気が基準空気(温度33℃、湿度50%)であるとする。そして、身体の表面には十分な汗があり、基準空気を身体平行風として服地部20と身体との間に流通させることにより汗を蒸発させ、その汗の気化熱で体温を冷却した後、空気流通部50から排出される空気が温度33℃、湿度100%になったものとする。このような場合において、以下に示すように、エネルギー収支を計算することにより空調能力を求める。尚、基準空気の温度を33℃としたのは、身体の表面温度が約33℃であるので、エネルギー収支の計算において乾熱による効果を無視できるからである。
さて、温度33℃の空気の飽和水蒸気量は約32.5g/m3である。このため、その空気の湿度が50%であるときは、その空気中に約16.25g/m3の水が含まれており、その空気には約16.25g/m3の水を気化させる余裕が残っている。水の気化熱は約580キロカロリー/gであるので、基準空気1m3の気化可能カロリーは、16.25(g/m3)×580(キロカロリー/g)≒9.43(キロカロリー/m3)となる。第一実施形態の軽作業用空調衣服の場合、身体平行風の流量は約6リットル/秒であるので、1時間に流通する身体平行風の体積は、0.006(m3/秒)×3600(秒)=21.6(m3)である。したがって、基準空気を身体平行風として1時間流通させたときの気化可能カロリーは、9.43(キロカロリー/m3)×21.6(m3)≒203.7(キロカロリー)となり、これは約236.3Wに相当する。ここで、上述したように、この値は乾熱による効果を考慮せずに求めたものである。逆の言い方をすると、乾熱による効果がゼロになるように、身体の表面温度との温度差のない33℃を基準空気の温度としたのである。このように、第一実施形態の空調衣服1の空調能力の理論値は、236.3Wであるが、空気の蒸発寄与率(汗の供給が十分に行われているとき、流通させた空気のうち、汗の蒸発に寄与する空気の割合である。これは空気の流れが体に近いほど向上する。)を考慮すると、大体200W程度であると考えられる。
第一実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が6リットル/秒であるので、第一実施形態の空調衣服は、着用者が軽作業を行う場合に用いるのに好適である。
また、第一実施形態の空調衣服では、着用者が流量調整手段を用いて送風手段が発生させる空気の流量を調整することができるので、周囲温度があまり高くないときには、空気の流量を下げることにより、ファンによるノイズを小さくしたり、消費電力を小さくしたりすることができる。
また、服地部の空気透過性が小さいことを逆に利用すると、第一実施形態の空調衣服を、ウィンドブレーカーのように外気が服地部内に入ることを防ぐ目的で使用することができる。特に、一日の温度や風の変化が激しい場合には、空調衣服をこのような目的で使用することは有効である。具体的には、気温が低く、風が強いときは、送風手段から空気を送風せずに、空調衣服をウィンドブレーカーとして使用し、その後、気温が高くなったときに、送風手段から空気を送風して空調衣服をその本来の目的で使用する。これにより、着用者は、温度等の変化に応じて着替えることなく、快適に過ごすことができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について図面を参照して説明する。図13Aは本発明の第二実施形態である空調衣服の概略正面図、図13Bはその空調衣服の概略背面図、図14Aはその空調衣服に用いられる集積ベルトの概略平面図、図14Bはその集積ベルトを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。また、図15Aはその空調衣服に用いられる局所スペーサの概略平面図、図15Bはその局所スペーサの概略側面図、図15Cはその局所スペーサを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。尚、第二実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第二実施形態の空調衣服2は、図13に示すように、服地部20と、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、集積ベルト64と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服2は、主に、中程度の作業に用いる作業服(中作業用衣服)として使用される。ここで、この空調衣服2の主な仕様は、図5の表にまとめられている。
第二実施形態の空調衣服2が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、空調能力が300Wである点、空調衣服2が長袖のものである点、集積ベルト64を用いて送風手段50,50等を服地部20に着脱する点、服地部20の肩に対応する部分に局所スペーサ70,70を設けた点である。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同じである。
次に、第二実施形態の空調衣服2の特徴点について詳しく説明する。
まず、空調衣服2の空調能力を300Wに強化したことに伴い、送風手段50,50として、9リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約1.5Wである。このため、空調衣服2を着用することにより、第一実施形態の空調衣服1よりも高い冷却効果が得られる。尚、送風手段50,50としては、ファン径が60mmであるものを用いている。また、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は45cm2である。
また、空調衣服2が長袖のものであるので、その空調面積率は、第一実施形態のものよりも少し大きい。具体的に、空調衣服2の空調面積率は約40%である。この空調衣服2では、腕の部分をも冷却することができる。
集積ベルト64は、二つの送風手段50,50、電源手段61、電源ポケット63、電源スイッチ等を取り付けるための帯状部材であって、図14Aに示すように、帯状のベースシート64aと、ベースシート64aに形成された二つの孔部64b,64bと、複数のマジックテープ64cとを有する。ベースシート64aとしては、例えばビニールシート等が用いられる。各孔部64bは、送風手段50を挿入して取り付けるためのものである。二つの孔部64b,64bの間隔は、服地部20に設けられた二つの孔部21,21の間隔と同じである。また、ベースシート64aには電源ポケット63が取り付けられている。電源手段61はこの電源ポケット63に収納される。そして、電源手段61と二つの送風手段50,50とは電源ケーブル62により接続されている。ここで、電源ケーブル62はベースシート64aに固定されている。マジックテープ64cは、例えばベースシート64aの周端部における所定箇所に取り付けられる。ここで、かかるマジックテープ64cをA面のものであるとすると、図14Bに示すように、B面のマジックテープ23は服地部20の内面の所定位置に取り付けられている。
集積ベルト64は服地部20の内面側であって所定の位置に着脱自在に取り付けられる。具体的に、集積ベルト64を服地部20に取り付ける場合、まず、服地部20の内面側において、送風手段50の外部ファンガード54が服地部20の孔部21と対向するようにして集積ベルト64を配置し、送風手段50のマジックテープ55と服地部20の孔部21の周辺に取り付けられたマジックテープ22とを貼り付ける。これにより、二つの送風手段50,50はそれぞれ服地部20の孔部21,21に対応する位置に取り付けられる。その後、集積ベルト64のマジックテープ64cを、それに対応する服地部20の所定位置に取り付けられたマジックテープ23に貼り付けることにより、集積ベルト64を固定する。送風手段50,50を取り外す場合には、集積ベルト64を服地部20から剥がすだけでよい。したがって、空調衣服2を洗濯する場合には、誰でも簡単に集積ベルト64を着脱することができる。
尚、ベースシート64aとしてビニールシートを用いているので、ベースシート64aは汚れにくく、たとえベースシート64aが汚れてしまった場合でも汚れを容易に拭き取ることができる。
局所スペーサ70は、服地部20と身体との間に空気を流通させるための空間を局所的に確保するものである。第二実施形態では、かかる局所スペーサ70を、服地部20の内面側であって両肩に対応する部分に設けている。例えば空調衣服2が重いと、服地部20の肩に対応する部分には、身体平行風の流通用の空間が自動的に生成されないことがある。このため、第二実施形態では、局所スペーサ70を用いて、服地部20の肩に対応する部分に身体平行風の流通用の空間を確実に形成することにしている。
局所スペーサ70は、図15A,Bに示すように、円形状部材71と、その円形状部材71の中央部に形成された凸部72とを有する。この局所スペーサ70の材質としては、例えばフェルトが用いられる。局所スペーサ70を服地部20に取り付ける場合には、まず、図15Cに示すように、服地部20の内面側において、局所スペーサ70の円形状部材71を服地部20の肩に対応する部分と対向するように局所スペーサ70を配置する。その後、局所スペーサ70の円形状部材71の端部を服地部20に縫い付けることにより、局所スペーサ70が服地部20に取り付けられる。
第二実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が9リットル/秒であるので、第二実施形態の空調衣服は、着用者が中作業を行う場合に用いるのに好適である。
尚、局所スペーサは、上記の構造のものに限定されるものではなく、服地部と身体又は下着との間に身体平行風流通用の空間を確実に形成できる構造のものならば、どのようなものでもよい。また、局所スペーサの取付け場所も肩に限られず、必要に応じ適所に局所スペーサを取り付けることができる。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について図面を参照して説明する。図16Aは本発明の第三実施形態である空調衣服の概略正面図、図16Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第三実施形態において、第一及び第二の実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第三実施形態の空調衣服3は、図16に示すように、服地部20aと、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。ここで、服地部20aは空気案内手段としての役割を果たす。かかる空調衣服3は、主に、雨天時に屋外での作業に用いる作業服(雨天用作業服)として使用される。ここで、この空調衣服3の主な仕様は、図5の表にまとめられている。
第三実施形態の空調衣服3が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、空調能力が500Wである点、雨に対する種々の対策を施した点、服地部20aの肩に対応する部分に局所スペーサ70,70を設けた点である。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同じである。
次に、第三実施形態の空調衣服3の特徴点について詳しく説明する。
まず、空調衣服3の空調能力を500Wに強化したことに伴い、送風手段50,50として、14リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約3Wである。空調能力を500Wにまで高めたのは、雨天時には湿度が高く、空調衣服3内に取り込む空気の質が悪いためである。すなわち、前述したように、図5における空調能力の表記は温度33℃、湿度50%のもとでの値であるので、湿度が極端に高い等、服地部20a内に取り込む空気の質が悪い場合、実際の空調能力は、図5に表記された空調能力を下回るからである。空調衣服3を着用することにより、空気の質が悪くても多くの空気を服地部20aと身体との間の空間に流すことができるので、雨天時であっても十分な冷却効果が得られる。尚、送風手段50,50としては、ファン径が70mmであるものを用いている。また、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は62cm2である。
第三実施形態の空調衣服3には雨に対する種々の対策が施されている。まず、服地部20aを、上半身を覆うと共に顔を除く頭部を覆うような形状に構成している。具体的には、服地部20aの腕部を長袖の形状にすると共に、服地部20aにフード25を設けている。フード25を設けたことにより、作業時に頭部が雨で濡れないようにすることができると共に、生理クーラーが有効に機能する範囲を頭部まで広げることができる。この場合、フード25部分(襟周り部分)の開口部及び左右の袖口部分の開口部が空気流通部40,40,40となる。また、服地部20aにフード25を設けたことにより、空調衣服3の空調面積率は第一実施形態のものよりも大きく、約60%である。
服地部20aの素材としては、雨水を吸収しない素材、例えばビニールシート等のプラスチックシートが用いられている。プラスチックシートの他には、ゴムシートや、防水加工が施された布等を用いることができる。このように、服地部20aは汚れにくくなっている。
また、送風手段50,50には耐水加工が施されている。かかる送風手段50,50は服地部20aに固定されており、送風手段50,50を服地部20aから取り外すことはできない。
第三実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が14リットル/秒であるので、第三実施形態の空調衣服は、着用者が雨天時に屋外での作業を行う場合に用いるのに好適である。実際、第三実施形態の空調衣服には、雨に対するさまざまな対策が施されており、かかる空調衣服を雨天時に使用した場合、身体が蒸れることはなく、着用者は快適に作業を行うことができる。しかも、空調衣服自体が汚れにくくなっており、たとえ汚れたときにでも汚れを容易に落とすことができる。
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について図面を参照して説明する。図17Aは本発明の第四実施形態である空調衣服の概略正面図、図17Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第四実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第四実施形態の空調衣服4は、図17に示すように、服地部20と、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源ケーブル62と、集積ベルト64と、DCアダプタ(DC変換手段)65と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服4は、主に、製造ラインでの作業に用いる作業服(ライン作業用衣服)として使用される。ここで、製造ラインでは、作業者は座った状態で製造作業を行う。尚、この空調衣服4の主な仕様は、図5の表にまとめられている。
第四実施形態の空調衣服4が第二実施形態の空調衣服2と異なる主な点は、商用電源から送風手段50,50に電力を供給する点である。すなわち、電源手段として商用電源が用いられる。このため、集積ベルト64には、送風手段50,50だけが取り付けられており、二次電池は取り付けられていない。また、送風手段50,50として、9リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。その他の点については、上記の第二実施形態のものと同様である。
次に、第四実施形態の空調衣服4の特徴点について詳しく説明する。
第四実施形態では、商用電源から二つの送風手段50,50に電力を供給する。このために、DCアダプタ65を用いて、商用電源からの交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を電源ケーブル62を介して二つの送風手段50,50に供給している。これにより、空調衣服4を着用して作業する時間が長くなっても、第二実施形態のように電池を電源とする場合と異なり、消費電力をあまり気にする必要がないので、着用者は作業に集中して従事することができる。
また、第四実施形態では、送風手段50の消費電力をあまり気にする必要がないので、送風手段50としてファン径の小さなものを用いることにし、送風手段50を高速で回転させることにしている。ファン径の小さな送風手段50を用いるのは、着用者が椅子の背もたれにもたれかかっても、送風手段50が身体に当たらないようにするためである。実際、第四実施形態では、送風手段50,50として、ファン径が40mmであるものを用いている。そして、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は20cm2である。また、二つの送風手段50,50の消費電力は約20Wである。
尚、着用者は、椅子から離れるときに、DCアダプタ65と送風手段50,50とを繋ぐ電源ケーブル62を外さなければならないので、椅子から離れている間に空調衣服4による冷却効果が得られないという問題がある。この問題を解決するには、例えば、集積ベルト64に小さな容量の二次電池を取り付けておくようにすればよい。DCアダプタ65と送風手段50,50とを繋ぐ電源ケーブル62を外したときには、その二次電池から送風手段50,50に電力を供給することにより、短時間であれば商用電源からの電力供給なしで、送風手段50,50を駆動することができる。
第四実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が9リットル/秒であり、しかもDCアダプタを用いて商用電源から送風手段に電力を供給するので、第四実施形態の空調衣服は、着用者が座った状態で中作業を行う場合に用いるのに好適である。
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態について図面を参照して説明する。図18Aは本発明の第五実施形態である空調衣服の概略正面図、図18Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第五実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第五実施形態の空調衣服5は、図18に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、耐圧スペーサ80とを備えるものである。かかる空調衣服5は、主に、オフィスワーク用のユニフォーム(オフィス用衣服)として使用される。ここで、この空調衣服5の主な仕様は、図6の表にまとめられている。
第五実施形態の空調衣服5が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、服地部200の上部に空気透過性の高い布を用いた点、服地部200の下部を着用者の臀部及び下腹部を覆うことができるように長めに形成した点、開閉手段31aとしてボタンを用いた点、服地部200に耐圧スペーサ80を設けた点である。また、送風手段50,50として、6リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。更に、この空調衣服5の空調面積率は約40%である。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同様である。
次に、第五実施形態の空調衣服5の特徴点について詳しく説明する。
第五実施形態では、服地部200を、腕部を除く上部と、その上部以外の部分(腕部、下部)とに区分し、それら各部に異なる素材を用いている。すなわち、服地部200の上部には空気透過性の高い布を用い、服地部200の腕部及び下部にはポリエステル布等、空気透過性の低い布を用いている。第五実施形態では、服地部200のうち空気透過性の低い布を用いて形成された部分(腕部及び下部)だけが空気案内手段としての役割を果たす。また、第一実施形態と同様に上部開口部が空気流通部40,40,40となるが、これに加えて、服地部200のうち空気透過性の高い布を用いて形成された部分(上部)も空気流通部40aとなる。この空気流通部40aは、上部開口部による空気の流通を補助する役割を果たす。例えば、ネクタイ等を着用すると、上部開口部のうち襟周り部分の開口部からは空気が流通することができなくなってしまう。このようなときには、空気流通部40aが襟周り部分の開口部の役割を代行することになる。
このような服地部200を作製するには、上部と腕部及び下部とにそれぞれ異なる素材を用いて縫製を行ったり、服地部200全体を空気透過性の高い布で作製した後に服地部200の腕部及び下部に空気透過性の低い布を縫い付けたりするようにすればよい。しかし、これでは、縫い目が見えるため、空調衣服5の外観を損ねてしまうことがある。この問題を解決する一つの方法としては、例えば、まず、服地部200全体を空気透過性の高い布で作製し、その後、服地部200の腕部及び下部にその内側から空気透過性の低いシートをラミネートする方法が考えられる。この場合、服地部200のうち、その内側に空気透過性の低いシート状部材がラミネートされた部分が空気案内手段となり、そのシート状部材がラミネートされていない部分が空気流通部40aとなる。
また、服地部200の下部は、一般のワイシャツ等と同様に、着用者の臀部及び下腹部を覆うことができるように長めに形成されている。ここで、服地部200の裾部には、ゴムベルトを設ける等の加工を何ら施していない。第五実施形態では、空調衣服5を着用するときに、服地部200のうち図18においてXで示す部分より下の部分をズボン等の中に入れることにより、服地部200の裾部から空気が外部に漏れるのを防止する。
第五実施形態では、開閉手段31aとして、ワイシャツ等に使用されるボタンを用いている。ところで、ボタンを掛けると、ボタンが取り付けられている側の服地部200の端部が内側に、ボタン用の孔が形成されている側の服地部200の端部が外側に位置し、服地部200の重なり合う部分ができる。このとき、その重なり合う部分の幅が、一般のワイシャツにおける重なり合う部分の幅と同程度であるとすると、送風手段50から送出された身体平行風の大部分がその重なり合う部分から外部に漏れてしまい、オフィス用空調衣服の空調能力が著しく低下してしまう。これを改善するためには、例えばボタンの数を増やし、ボタンの間隔を狭くすることにより、重なり合う部分に生じる隙間を小さくする方法が考えられる。しかし、この方法では、ボタンの数が増えるため、空調衣服5を着用したときに外観上の違和感が生じ、またボタンを掛けたり外したりするのに多くの時間を要してしまうという別の問題が生じてしまう。このため、あまり実用的な方法とはいえない。そこで、第五実施形態では、ボタンが取り付けられている側の服地部200の端部に、延長部201を設けている。すなわち、ボタンが取り付けられている側の服地部200の端部を延長することにより、ボタンを掛けたときに生じる服地部200の重なり合う部分の面積を大きくしている。これにより、空調衣服5の外観等を損なうことなく、当該重なり合う部分から空気が外部に漏れるのを十分改善することができる。尚、この場合であっても、当該重なり合う部分から空気漏れが多少発生するが、空調衣服5をオフィス用衣服として使用するのであれば、当該空調衣服5は実用上十分な空調能力を有する。
尚、当然のことであるが、空調衣服5の使用目的によっては、ボタンが取り付けられている側の服地部200の端部に延長部201を必ずしも設ける必要はない。例えば、ボタンを掛けたときに生じる服地部200の重なり合う部分を空気流通部の一つとして利用することも可能である。
第五実施形態では、服地部200の内面側であって背中に対応する部分には、耐圧スペーサ80が取り付けられている。耐圧スペーサ80は、服地部200と身体又は下着との間に空気を流通させるための空間を確保するものであって、大きな圧力に耐えられる強度を有するものである。特に、第五実施形態では、耐圧スペーサ80を、着用者が椅子の背もたれにもたれかかったときに、服地部200と身体又は下着とが密着してしまい身体平行風が背中の近傍を流れなくなってしまうのを防止するために使用される。かかる耐圧スペーサ80には、大きな圧力に耐えることができると共に、空気の受ける抵抗が小さく、空気が容易に流通することができるものであることが要求される。
ここで、耐圧スペーサ80の構造について説明する。図19Aは耐圧スペーサ80の一部の概略平面図、図19Bはその耐圧スペーサ80の一部の概略側面図である。耐圧スペーサ80は、いわゆるメッシュスペーサであり、図19に示すように、網目状シート(網目状部材)81と、複数の凸部82とを有する。ここで、各凸部82は、略半球形状に形成されている。この耐圧スペーサ80を製造するには、軟質プラスチックの網目状シートを凸の金型と凹の金型の間に入れて、熱成形する。これにより、網目状シート上には、その厚み方向に突出した複数の凸部82が形成される。このように、耐圧スペーサ80は簡単に作ることができる。
また、耐圧スペーサ80の厚さ(凸部82の高さ)Wは2mm以上30mm以下であることが望ましい。耐圧スペーサ80の厚さWが2mmより小さいと、一定流量の空気を流すためには、空気の圧力をかなり高める必要があり、実用的でないからである。特に、送風手段50,50の周辺では空気の流れが大きいので、送風手段50,50の周辺に設けられる耐圧スペーサ80の厚さWは5mm以上であることが望ましい。一方、耐圧スペーサ80の厚さWが30mmよりも大きいと、見栄えや着心地が悪くなってしまうからである。実際、耐圧スペーサ80の厚さWとして最も好ましい範囲は、3mm以上10mm以下である。
耐圧スペーサ80は服地部200の背中に対応する部分に縫い付けられる。具体的には、耐圧スペーサ80の網目状シート81を服地部200の内面側から服地部200に対向させるようにして、耐圧スペーサ80を服地部200の背中に対応する部分に配置する。そして、例えば、ミシン等を用いて耐圧スペーサ80を服地部200に縫い付ける。
第五実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が6リットル/秒であるので、第五実施形態の空調衣服は、着用者がオフィスで作業を行う場合に用いるのに好適である。
[第六実施形態]
次に、本発明の第六実施形態について図面を参照して説明する。図20Aは本発明の第六実施形態である空調衣服の概略正面図、図20Bはその空調衣服の概略背面図、図20Cはその空調衣服の下に着用される下着の概略正面図である。尚、第六実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第六実施形態の空調衣服6は、図20に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、太陽電池66と、電源スイッチ(不図示)と、耐圧スペーサ80とを備えるものである。かかる空調衣服6は、主に、野外で長時間活動する際に着用する衣服(野外用衣服)として使用される。また、空調衣服6は、図20Cに示す所定の下着の上に着用される。ここで、この空調衣服6の主な仕様は、図6の表にまとめられている。
第六実施形態の空調衣服6が第五実施形態の空調衣服5と異なる主な点は、空調能力が400Wである点、服地部200に防水加工又は撥水加工を施した点、電源手段61としての二次電池を太陽電池66を用いて充電する点である。その他の点については、上記の第五実施形態のものと同様である。
次に、第六実施形態の空調衣服6の特徴点について詳しく説明する。
空調衣服6は野外活動用として使用するものであるので、その空調能力を400Wに強化している。それに伴い、送風手段50,50として、12リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約2.5Wである。そして、各送風手段50のファン径は55mmであり、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は38cm2である。また、雨対策として服地部200に防水加工又は撥水加工を施している。
また、空調衣服6は、電源手段61としての二次電池を充電するための太陽電池66を備えている。この太陽電池66は、服地部200の外面側であって背中上部に対応する位置に取り付けられている。太陽電池66と二次電池とは電源ケーブル62により接続されている。これにより、太陽電池66が二次電池を充電し、その二次電池から送風手段50,50に電力が供給される。尚、電源手段として太陽電池66を用い、太陽電池66からの電力を直接、送風手段50,50に供給するようにしてもよい。
第六実施形態の空調衣服6は、下着の上に着用される。下着の外面側であって両肩に対応する部分には、図20Cに示すように、局所スペーサ70,70が取り付けられている。ここで、局所スペーサ70の構造は第二実施形態で説明したものと同様である。下着に局所スペーサ70,70を設けたことにより、下着の上に空調衣服6を着用したときに、服地部200と下着との間に、空気が流通するための空間が確実に形成される。
第六実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が12リットル/秒であり、しかも服地部に防水加工又は撥水加工を施しているので、第六実施形態の空調衣服は、着用者が野外で長時間活動する場合に用いるのに好適である。
[第七実施形態]
次に、本発明の第七実施形態について図面を参照して説明する。図21Aは本発明の第七実施形態である空調衣服の概略正面図、図21Bはその空調衣服の概略背面図、図22はその空調衣服に用いられる送風手段を説明するための図である。尚、第七実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第七実施形態の空調衣服7は、図21に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段500,500と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、面状スペーサ90とを備えるものである。かかる空調衣服7は、主に、下着が汗臭くなるのを防止するための衣服(防臭用衣服)として使用される。したがって、この空調衣服7は下着の上に着用される。ここで、空調衣服7の主な仕様は、図6の表にまとめられている。
第七実施形態の空調衣服7が第五実施形態の空調衣服5と異なる主な点は、空調能力が20Wである点、送風手段500の送風方式として排気方式を採用した点、服地部200に面状スペーサ90を設けた点である。また、この空調衣服7の空調面積率は約35%である。その他の点については、上記の第五実施形態のものと同様である。
次に、第七実施形態の空調衣服7の特徴点について詳しく説明する。
第七実施形態の空調衣服7は、汗をすばやく気化して下着が汗臭くなるのを防止することを主目的としており、必ずしも身体を冷却することを目的としているわけではない。このため、空調衣服7の空調能力を20Wととても小さくしている。それに伴い、送風手段500,500として、0.6リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段500,500の消費電力は約0.15Wである。このように送風手段500,500によって発生させる空気の流量が少ないので、送風手段500,500によるノイズはとても小さい。尚、送風手段500,500としては、ファン径が20mmであるものを用いている。また、二つの送風手段500,500のファン総有効面積は4cm2である。
実際、暑がりの人や、一時的に重作業(例えば階段の昇り降り等)を行った人は、ある程度、空調が効いているオフィス等の部屋の中にいても、汗が下着に残り、下着が汗臭くなる。このような場合に、空調衣服7を下着の上に着用すると、服地部200と下着との間に身体平行風を流すことができるので、下着に残った汗を、すばやく気化することができる。したがって、汗が下着に長時間残ってしまい、下着が汗臭くなるのを防止することができる。
第七実施形態では、送風手段500の送風方式として排気方式を採用している。この排気方式では、送風手段500が服地部200内の空気を外部に排出することにより、服地部200と身体(又は下着)との間の空間に身体平行風を流す。このために、第七実施形態では、送風手段500として、図22に示すようなプロペラファンを用いている。
送風手段500は、図22に示すように、プロペラ501と、モータ(不図示)と、ケージング502と、外部ファンガード(不図示)と、間隔確保手段(不図示)とを有する。プロペラ501はモータの回転軸と結合されている。そして、プロペラ501及びモータはケージング502に収納されている。このケージング502には外部ファンガード取り付けられている。外部ファンガードは、指がケージング502に入るのを防止するためのものである。送風手段500は、プロペラ501の回転軸が服地部200の表面に略垂直となるように、服地部200にその内面側から取り付けられている。送風手段500を服地部200に取り付ける方法としては、第一実施形態で説明したマジックテープによる方法を用いることができる。また、送風手段500の身体と対向する側には、間隔保持手段が設けられている。この間隔保持手段は、プロペラ501と身体との間隔を一定の値Hに保つためのものである。
電源手段61から電力が送風手段500,500に供給されると、プロペラ501は、服地部200内の空気を外部に排出する方向に回転する。ここで、図22において、矢印は、空気の流れを表している。
尚、第七実施形態では、送風手段500によって発生させる空気の流量は少なくてすむので、送風手段500としては小型のものを用いることができる。このため、空調衣服7を着用しても、その外観上の違和感があまりない。また、送風手段500の空気排気口を通気性のよい布地でカバーすることにより、送風手段500が外部から見えないようにすることもできる。
ところで、送風手段500の送風方式として排気方式を採用しているので、送風手段500,500を駆動すると、服地部200と身体(下着)との間の空間内の圧力は外気圧に対して陰圧になる。このため、送風方式として排気方式を採用した場合には、身体平行風を流通させるための空間を形成する方法として、上記の第一実施形態のように送風手段によって発生される空気の圧力を利用する方法を採用することはできない。一般に、送風方式として排気方式を採用した場合、送風手段が発生させる空気の流量が6リットル/秒よりも大きいと、空気案内手段の特性(例えば硬さや重さ)や形状にもよるが、外気圧と服地部内の圧力との差が大きくなり、身体平行風を流通させるための空間を確保することがとても困難である。
第七実施形態では、身体平行風を流通させるための空間を確保するために、服地部200に面状スペーサ90を取り付けている。具体的に、面状スペーサ90は、服地部200の内面側であって送風手段500,500に対応する部分及びそれよりも上側の部分に取り付けられている。この面状スペーサ90は、服地部200と身体(下着)との間に空気を流通させるための空間を確保するものである。面状スペーサ90には、空気の受ける抵抗が小さいことが要求される。尚、面状スペーサ90は耐圧スペーサとしての役割をも果たす。このため、面状スペーサ90としては、耐圧スペーサ80と同様の構造のものを用いることができる。特に、耐圧性の必要としない腹部や胸部に対応する服地部200に取り付ける面状スペーサ90としては、軽くしなやかなものを用いることが望ましい。
面状スペーサ90は、服地部200の内面側であって送風手段500,500に対応する部分及びそれよりも上側の部分に縫い付けられる。具体的には、まず、面状スペーサ90の網目状シートを服地部200の内面に対向させるようにして、面状スペーサ90を服地部200の所定位置に配置する。そして、例えばミシン等を用い、面状スペーサ90を服地部200の内面に縫い付ける。このとき、面状スペーサ90の端部だけを服地部200に縫い付けるのが望ましい。面状スペーサ90の縫合作業を容易に行うことができると共に、空調衣服7の外観上、その縫い目を目立たないようにできるからである。
尚、面状スペーサ90は必ずしも連続した一枚のスペーサである必要はなく、縫製の都合等のため、いくつかに分割してもよい。また、面状スペーサ90は、必ずしも、服地部200のうち送風手段500,500に対応する部分及びそれよりも上側の部分のすべてに取り付ける必要はなく、要所要所に取り付けるようにしてもよい。
こうして、面状スペーサ90が縫い付けられた空調衣服7を着用すると、面状スペーサ90の凸部が身体(下着)の表面に接するようになり、服地部200と身体(下着)との間に、空気を流通させるための空間が確保される。したがって、送風手段500,500を駆動すると、外部の空気が空気流通部40,40,40,40aから服地部200と身体(下着)との間の空間に流入し、身体平行風として上半身を包むように流れ、送風手段500,500から外部に排出される。
上述したように、第七実施形態の空調衣服では、遅効発汗の蒸発を促進し、下着が汗臭くなるのを防止することができる。
[第八実施形態]
次に、本発明の第八実施形態について図面を参照して説明する。図23Aは本発明の第八実施形態である空調衣服の概略正面図、図23Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第八実施形態において、第七実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第八実施形態の空調衣服8は、図23に示すように、服地部210と、開閉手段31aと、着脱手段33と、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段500,500と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、面状スペーサ90,90とを備えるものである。かかる空調衣服8は、主に、体重が10〜15kg程度の幼児が着用する衣服(幼児用衣服)として使用される。ここで、この空調衣服8の主な仕様は、図6の表にまとめられている。
第八実施形態の空調衣服8が第七実施形態の空調衣服7と異なる主な点は、空調能力が50Wである点、服地部210を上下二つの部分に分離することができるように構成した点である。その他の点については、上記の第七実施形態のものと同様である。
次に、第八実施形態の空調衣服8の特徴点について詳しく説明する。
第八実施形態では、着用者が幼児であり、体重が軽く、その産熱量も小さいので、空調衣服8の空調能力を50Wとしている。それに伴い、送風手段500,500として、1.4リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段500,500の消費電力は約0.3Wである。尚、送風手段500,500としては、ファン径が25mmであるものを用いている。また、二つの送風手段500,500のファン総有効面積は7cm2である。
また、幼児は服を汚しやすいので、洗濯の便宜を考えて、服地部210を上下二つの部分に分離することができるように構成している。ここで、服地部210の上の部分を上服地部210a、下の部分を下服地部210bと称することにする。
上服地部210aは、第七実施形態の服地部と同様に構成されている。すなわち、上服地部210aのうち、空気透過性の低い布を用いて形成された部分(腕部及び下部)は空気案内手段としての役割を果たし、空気透過性の高い布を用いて形成された部分(上部)は空気流通部40aとなる。一方、下服地部210bは空気案内手段としての役割を果たす。特に、下服地部210bの素材としては、例えばビニールシートが用いられる。これにより、下服地部210bが汚れた場合には、汚れを拭き取ることにより、その汚れを容易に落とすことができる。
また、下服地部210bには、二つの送風手段500,500、電源手段61、電源ケーブル62、電源ポケット63、電源スイッチ(不図示)、面状スペーサ90が取り付けられている。
上服地部210aと下服地部210bとは、着脱手段33によって互いに取り付けられている。この着脱手段33としては、例えばファスナーやマジックテープを用いることができる。このように、上服地部210aと下服地部210bとは容易に着脱することができる。空調衣服8を洗濯する場合には、上服地部210aと下服地部210bとを取り外し、上服地部210aについては通常の洗濯を行い、下服地部210bについては必要に応じて汚れを拭き取るようにすればよい。尚、下服地部210bは第二実施形態で説明した集積ベルトの役割をも果たしていると考えることができる。
[第九実施形態]
次に、本発明の第九実施形態について図面を参照して説明する。図24Aは本発明の第九実施形態である空調衣服の概略正面図、図24Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第九実施形態において、第一及び第二の実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第九実施形態の空調衣服9は、図24に示すように、服地部20と、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、六つの空気流通部40,40,40,40b,40b,40bと、一つの送風手段50と、電源手段61aと、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服9は、主に、重労働の作業に用いる作業服(重作業用衣服)として使用される。ここで、この空調衣服9の主な仕様は、図7の表にまとめられている。
第九実施形態の空調衣服9が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、空調能力が2000Wである点、送風手段50を一つだけ設けた点、空気流通部として上部開口部40,40,40の他に三つの補助開口部40b,40b,40bを設けた点、電源手段61aとして燃料電池を用いた点である。また、第九実施形態では、服地部20の内面側であって両肩に対応する部分には、第二実施形態のように、局所スペーサ70,70を設けている。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同様である。
次に、第九実施形態の空調衣服9の特徴点について詳しく説明する。
第九実施形態の空調衣服9では、重作業を行う際に使用されるので、空調能力を2000Wと大きくしている。それに伴い、送風手段50として、60リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、送風手段50の消費電力は約20Wである。
このように送風手段50に要求される送風能力がとても高いので、実際に使用する送風手段50のファン径は大きく、その重量も重い。例えば、送風手段50のファン径は少なくとも100mmである。実際、第九実施形態では、送風手段50として、ファン径が150mm、ファン総有効面積は150cm2であるものを用いている。したがって、送風手段50を服地部20に取り付け、服地部20だけで送風手段50の重量を受けるようにしたのでは、送風手段50が服地部20から容易に外れてしまう等、さまざまな問題がある。そこで、第九実施形態では、送風手段50の取付け方法に工夫を凝らしている。
具体的には、服地部20の背中中央部に一つの大きな孔部を設け、この孔部に送風手段50を取り付けている。ここで、送風手段50の構造・着脱方法は、基本的には、第一実施形態で説明したものと同様である。そして、第九実施形態では、送風手段50に、それを背負うための背負いベルト(背負い手段)56を設けている。着用者はその背負いベルト56を肩にかけて、送風手段50を背負う。これにより、送風手段50の重量を、服地部20だけでなく、着用者の肩でも受けることができるので、送風手段50が服地部20から容易に外れてしまうことはない。尚、背負い手段としては、必ずしも服地部20の外部から送風手段50の重量を支えるものを用いる必要はなく、背負い手段は、服地部20の内部に取り付けてもよいし、服地部20内面に縫い込んでもよい。
また、送風手段50を服地部20の背部に取り付け、送風手段50として少なくとも10リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものを用いることにより、立ち作業用の作業服として用いるのに非常に合理的な空調衣服9を得ることができる。特に、送風手段50を服地部20の背中に対応する部分に一つだけ設け、送風手段50として、服地部20と身体又は下着との間に発生させる空気の流量が少なくとも15リットル/秒であるものを用いることにより、立ち作業用の実用本位の作業服を最も低コストで作製することができる。尚、服地部20と身体又は下着との間に15リットル/秒の流量の空気を流すには、送風手段50のファン径は少なくとも60mmである必要がある。
また、服地部20と身体又は下着との間の空間に大量の身体平行風を流すためには、それに応じた量の空気を外部に流出することができなければならない。このため、第九実施形態では、空気流通部として上部開口部40,40,40の他に三つの補助開口部40b,40b,40bを設けている。三つの補助開口部40b,40b,40bはそれぞれ、服地部20の前側左部、前側右部、背中上部に設けられている。かかる補助開口部40bは、例えば、服地部20の所定箇所に孔を開け、その孔を塞ぐようにして空気透過性のよい素材を服地部20に縫い付けることにより形成される。ここで、空気透過性の大きい布としては、例えばメッシュ状シートが用いられる。
また、第九実施形態では、電源手段61aとして燃料電池を用いている。これは、送風手段50が大量の空気を送出し、送風手段50の消費電力が大きいので、一般の電池を用いたのでは実用的でないからである。燃料電池は、その容量に対して瞬間的に流せる電流が小さいので、瞬間的に大電流を流す必要がある場合には大きな容量のコンデンサー等を併用する必要があるが、空調衣服9では瞬間的に大電流を流す必要はないので、燃料電池は空調衣服9の電源として用いるのにとても適している。
第九実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が60リットル/秒であるので、第九実施形態の空調衣服は、着用者が重作業を行う場合に用いるのに好適である。
[第十実施形態]
次に、本発明の第十実施形態について図面を参照して説明する。図25Aは本発明の第十実施形態である空調衣服の概略正面図、図25Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第十実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十実施形態の空調衣服10は、図25に示すように、服地部220と、開閉手段31と、五つの空気流通部40,40,40,40c,40cと、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット(収納手段)63と、集積ベルト640と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服10は、上着とズボンが一つにつながった作業用の衣服(つなぎ型衣服)に適用される。ここで、この空調衣服10の主な仕様は、図7の表にまとめられている。
第十実施形態の空調衣服10が第二実施形態の空調衣服2と異なる主な点は、服地部220が上半身だけでなく下半身も覆っている点、空調能力が500Wである点、電源手段61を胸ポケットの裏側に取り付けた点、送風手段50,50を取り付けるための集積ベルト640を服地部220の内面側であって腰に対応する位置に着脱自在に取り付けた点である。その他の点については、上記の第二実施形態のものと同様である。
次に、第十実施形態の空調衣服10の特徴点について詳しく説明する。
第十実施形態では、空調衣服10を、いわゆるつなぎ型衣服に適用しているので、服地部220は上半身だけでなく下半身も覆っている。このため、下半身にも身体平行風が流れ、首から上を除く、身体表面のほとんど大部分を身体平行風で包むことができる。この場合、上部開口部40,40,40の他に、脚部の裾の開口部40c,40cも空気流通部となる。また、かかる空調衣服10の空調面積率は約80%である。尚、図25において、矢印は空気の流出方向を表している。
また、下半身にも身体平行風を流通させるため、空調衣服10の空調能力を500Wに強化している。これに伴い、送風手段50,50として、14リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約3Wである。尚、送風手段50,50としては、ファン径が70mmであるものを用いている。また、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は62cm2である。
服地部220の外面側の左上部には、胸ポケットが設けられている。第十実施形態では、服地部220の内面側であって胸ポケットに対応する位置に、電源ポケット63を取り付けている。そして、電源ポケット63に電源手段61である二次電池が収納される。このとき、電源ポケット63のサイズを胸ポケットのサイズと同じか或いは小さくしており、電源ポケット63を服地部220に縫い付けている。このため、電源ポケット63の縫い目を胸ポケットによって覆い隠すことができるので、その縫い目が外部から見えないという利点がある。また、胸ポケットは通常、物を収納するものであるので、胸ポケットの裏側に設けた電源ポケット63に電源手段61が収納されていても、着用者にとってそれ程違和感がない。更に、電源手段61を交換するとき、開閉手段31であるファスナーを少し開けるだけで、電源手段61を簡単に交換することができる。ちなみに、電源ポケットの取付け位置が下になればなる程、電源手段61の交換時にはファスナーを下の方まで開けなければならない。このことは、ファスナーだけでなく、ボタン、その他の開閉手段を用いた場合でも同様である。
次に、集積ベルト640について説明する。集積ベルト640は、二つの送風手段50,50及び電源ケーブル62を取り付けるための帯状部材である。この集積ベルト640の目的は、第二実施形態で用いられる集積ベルトと略同じである。但し、第十実施形態では、電源手段61は、服地部220の胸部に設けた電源ポケット63に収納されているので、集積ベルト640には取り付けられていない。また、集積ベルト640のベースシートとしては、空気透過性の低い素材を用いており、したがって、第二実施形態で用いられる集積ベルトとの構造上の大きな違いは、かかるベースシートが空気案内手段としての役割をも果たすことである。尚、第十実施形態の空調衣服10の洗濯時には、服地部220から、集積ベルト640と、電源ポケット63に収納された電源手段61とを取り外してから、空調衣服10を洗濯するようにすればよい。
[第十一実施形態]
次に、本発明の第十一実施形態について図面を参照して説明する。図26Aは本発明の第十一実施形態である空調衣服の概略正面図、図26Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第十一実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十一実施形態の空調衣服11は、図26に示すように、服地部230と、開閉手段31bと、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、20個の送風手段50と、電源手段61aと、電源ケーブル62と、集積ベルト64と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服11は、主に、女性が着用する、空気透過性のよいファッショナブルな服の下に着用する中着服(中着用衣服)に適用される。ここで、この空調衣服11の主な仕様は、図7の表にまとめられている。
第十一実施形態の空調衣服11が第二実施形態の空調衣服2と異なる主な点は、空調衣服11が袖部のないノンスリーブタイプのものである点、開閉手段31bとしてマジックテープを用いた点、集積ベルト64上に20個の送風手段50を取り付けた点、電源手段61aとして燃料電池を用いた点である。その他の点については、上記の第二実施形態のものと同様である。
第十一実施形態の空調衣服11の上には、通常、空気透過性のよい衣服が着用されるので、かかる衣服の外観上の美観を損なわないようにする必要がある。このため、送風手段50としては、厚さが薄く、小型のものを用いている。具体的に、送風手段50としては厚さが大きくとも6mmであるものを用いることが望ましい。また、小型の送風手段50はそれ単体の送風量が少ないので、集積ベルト64に合計20個の送風手段50を分散して取り付けている。一般に、送風手段50としては少なくとも10個設けるようにすることが望ましい。更に、小型の送風手段50はモータの効率が非常に悪いので、身体平行風について所望の流量を得るためには、大きな電力を必要とする。この点を考慮して、電源手段61aとしては燃料電池を用いている。
実際、第十一実施形態では、20個の送風手段50として、6リットル/秒の流量の身体平行風を流すことができるものを用いている。各送風手段50のファン径は20mmであり、20個の送風手段50のファン総有効面積は45cm2である。ここで、20個の送風手段50の消費電力は約8Wである。また、空調衣服11の空調能力は約200Wである。尚、この空調衣服11の空調面積率は約30%である。
[第十二実施形態]
次に、本発明の第十二実施形態について図面を参照して説明する。図27Aは本発明の第十二実施形態である空調衣服の概略正面図、図27Bはその空調衣服の概略背面図、図28はその空調衣服に用いられる送風手段を説明するための図である。尚、第十二実施形態において、第七実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十二実施形態の空調衣服12は、図27に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段50,50と、電源手段61bと、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、面状スペーサ90とを備えるものである。かかる空調衣服12は、上着が必要な季節に上着と身体又は下着との間に着用する中着服であって、体温の調節を目的として着用されるもの(温度調整用衣服)に適用される。ここで、この空調衣服12の主な仕様は、図7の表にまとめられている。
第十二実施形態の空調衣服12が第七実施形態の空調衣服7と異なる主な点は、空調衣服12が上着の下に着用して使用されるものである点、送風手段50,50として側流ファンを用い、かかる送風手段50,50を服地部200の外面側に取り付けた点、電源手段61bとして一次電池を用いた点である。また、送風手段50,50として、1.4リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。各送風手段50のファン径は35mmであり、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は15cm2である。そして、二つの送風手段50,50の消費電力は約2Wである。また、空調衣服12の空調能力は約50W、その空調面積率は約30%である。その他の点については、上記の第七実施形態のものと同様である。
次に、第十二実施形態の空調衣服12の特徴点について詳しく説明する。
寒い時期には防寒のために厚着をする必要がある。上着を着用している場合に、例えば電車やバス等に乗り遅れないように駆け足で乗り物に乗車すると、一時的に大きな産熱が伴い、体温が上昇し、場合によっては液体状の汗をかくこともある。このような状態で満員の乗り物に乗車した場合、暑苦しくなり上着を脱ぎたいが、満員のために脱ぐことができずに、暑苦しさを我慢しなければならないことがある。第十二実施形態の空調衣服12は、このような状況で使用されるものである。すなわち、着用者が暑苦しいと感じたときのみ、空調衣服12と身体又は下着との間に身体平行風を一時的に流通させることにより、身体の表面近傍における温度勾配を大きくして体を冷却すると共に、体からの汗と身体平行風とを接触させることによって身体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して体を冷却する。尚、かかる温度調整用の空調衣服12でも、十分な冷却効果を得るためには、送風手段50,50は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる身体平行風を発生させる必要がある。実際には、送風手段50,50として、少なくとも0.5リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いることが望ましい。
また、第十二実施形態では、送風手段50,50としては、図10に示すような側流ファンを用いている。そして、送風手段50,50を、図28に示すように、服地部200の外側に取り付けられている。このため、上着と服地部200との間には、送風手段50の厚みに対応した間隔hの空間が生じる。送風手段50,50に電力が供給されると、送風手段50,50は、服地部200と身体又は下着との間の空間を流れる空気を吸入し、服地部200と上着との間の空間において服地部200の表面に沿って略平行な方向に排出する。これにより、服地部200と身体又は下着との間に存在する体温で温もった空気を外気と入れ替えることができる。ここで、温度調整用の空調衣服12では、服地部200と身体又は下着との間の空間を流れる空気を、服地部200と上着との間の空間に排気する必要があるので、送風手段50の能力としては高い送風能力が必要である。具体的には、送風手段50としては、最大静圧(maximum static pressure)、すなわち流量がゼロになるところでの圧力が30Paから300Paまでの範囲内であるような送風圧力特性を有するものを用いることが望ましい。
第十二実施形態の空調衣服では、着用者は、暑苦しいと感じたときにのみ電源スイッチを入れ、自己の体温を冷却することができる。
[第十三実施形態]
次に、本発明の第十三実施形態について図面を参照して説明する。図29Aは本発明の第十三実施形態である空調衣服の概略正面図、図29Bはその空調衣服の概略背面図、図29Cはその空調衣服に用いられる下部空気漏れ防止手段を説明するための図である。尚、第十三実施形態において、第一及び第二の実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十三実施形態の空調衣服13は、図29に示すように、服地部20と、下部空気漏れ防止手段32aと、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服13は、Tシャツのように前部に開閉手段のない日常的な衣服に適用される。以下、このような衣服を「Tシャツ型衣服」とも称する。この空調衣服13の主な仕様は、図8の表にまとめられている。
第十三実施形態の空調衣服13が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、開閉手段が設けられていない点、下部空気漏れ防止手段32aとして帯状布地を用いた点、服地部20の両肩に対応する部分に局所スペーサ70,70を設けた点である。また、送風手段50,50として、12リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。各送風手段50のファン径は60mmであり、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は45cm2である。そして、二つの送風手段50,50の消費電力は約2.5Wである。また、空調衣服12の空調能力は約400W、その空調面積率は約35%である。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同様である。
空調衣服13では開閉手段が設けられていないので、着用者は空調衣服13を頭からかぶって着用する。このように頭からかぶって着用するTシャツ等は、通常、その裾部をズボンの中に入れず、裾部が外に垂れ下がった状態で着用される。このようなTシャツ型衣服の着用態様を考慮し、第十三実施形態では、下部空気漏れ防止手段32aとして、服地部20の裾部にゴムを入れるという手段ではなく、帯状布地に、伸縮性のある部材、例えばゴムを入れるという手段を用いている。具体的に、かかる下部空気漏れ防止手段32aは、帯状布地と、伸縮性部材とからなる。そして、図29Cに示すように、帯状布地を、服地部20の内面側であって服地部20の裾部近傍の位置に胴回り方向に沿って縫い付けている。また、帯状布地の身体側の端部には伸縮性部材を入れて、ギャザーを寄せている。これにより、空調衣服13を着用すると、伸縮性部材が入れられた帯状部材の端部は身体、下着又は衣服に密着するようになる。したがって、かかる空調衣服13では、裾部がだらりと垂れ下がった状態で着用されたときでも、下部空気漏れ防止手段32aにより空気が裾部から外部に漏れてしまうのを防止することができる。
[第十四実施形態]
次に、本発明の第十四実施形態について図面を参照して説明する。図30Aは本発明の第十四実施形態である空調衣服の概略正面図、図30Bはその空調衣服の概略背面図、図31はその空調衣服における回路部の概略ブロック図である。尚、第十四実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十四実施形態の空調衣服14は、図30及び図31に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段50,50と、電源手段61aと、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、耐圧スペーサ80と、二つの電源供給用コネクタ111,112と、五つのセンサ121,122,123,124,125と、回路部130とを備えるものである。ここで、各送風手段50のファン径は60mmであり、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は45cm2である。また、この空調衣服14の空調面積率は約40%である。かかる空調衣服14は、情報処理、通信技術等を利用したさまざまな機能を付加したものである。以下、このような各種の機能を付加した衣服を「高機能型衣服」とも称する。この空調衣服14の主な仕様は、図8の表にまとめられている。
第十四実施形態の空調衣服14が第五実施形態の空調衣服5と異なる主な点は、電源手段61aとして燃料電池を用いている点、及び、他の装置へ電力を供給する機能、身体平行風の流量を自動調整する機能、健康管理服としての機能、インターネット通信機能等の各種の機能を備えている点である。その他の点については、上記の第五実施形態のものと同様である。
次に、第十四実施形態の空調衣服14が備える上記の各機能について詳しく説明する。
最初に、他の装置へ電力を供給する機能について説明する。第十四実施形態では、電源手段61aとして燃料電池を用いている。服地部200の内面側には、電源手段61aの電力を各部に供給するための電源ケーブル62が複数配線されている。ここで、電源ケーブル62としては、洗濯に耐えうるように、耐水性を有するものを用いている。具体的に、電源手段61aと各電源供給用コネクタ111,112、電源手段61aと回路部130、及び回路部130と各送風手段50,50がそれぞれ電源ケーブル62によって接続されている。各送風手段50,50には、回路部130を経由して電源手段61aの電力が供給される。
電源供給用コネクタ111は、携帯電話等に電力を供給するためのコネクタであり、胸ポケットの内部に取り付けられている。例えば携帯電話を胸ポケットに入れ、携帯電話の電池充電用コネクタを電源供給用コネクタ111と接触させることにより、携帯電話の電池を充電することができる。また、電源供給用コネクタ112は、本発明の空調衣服と同様の原理を適用した空調帽子や空調ヘルメットに電力を供給するためのコネクタである。空調帽子や空調ヘルメットに設けられた所定のコネクタを電源供給用コネクタ112に接続することにより、空調帽子や空調ヘルメットに設けられた送風手段に電源手段61aの電力を供給することができる。したがって、この場合、空調帽子や空調ヘルメットには電源手段を設ける必要がない。
次に、空調衣服14が備える、身体平行風の流量を自動調整する機能について説明する。空調衣服14には、図31に示すように、五つのセンサ121〜125が取り付けられている。すなわち、体温センサ(体温検出手段)121と、脈拍センサ(脈拍検出手段)122と、温度センサ123と、湿度センサ124と、GPSセンサ125とである。体温センサ121は着用者の体温を検出するものであり、脈拍センサ122は着用者の脈拍を検出するものである。体温センサ121及び脈拍センサ122は身体に接する所定位置に取り付けられる。温度センサ123は外気の温度を検出するものであり、湿度センサ124は外気の湿度を検出するものである。温度センサ123と湿度センサ124は服地部200の外側に取り付けられる。また、GPSセンサ125は、位置情報を検出するものである。これら各センサ121〜125で得られた検出結果は、回路部130の演算手段に送られる。尚、以下では、体温センサ121及び脈拍センサ122をまとめて「体調センサ(体調検出手段)」、温度センサ123及び湿度センサ124をまとめて「環境センサ」とも称することにする。
また、回路部130は、図31に示すように、入力インターフェース131と、記憶手段132と、演算手段133と、ファン制御手段(駆動制御手段)134と、通信手段135と、出力インターフェース136とを備える。
入力インターフェース131としては、例えばキーボード用の入力端子がある。これにより、例えば、着用者は、空調衣服14を着用する前にその入力端子にキーボードを接続し、そのキーボードを用いて各種の情報を入力することができる。記憶手段132には、着用者の個人情報が格納されている。個人情報としては、例えば、身長、体重、健康時における体温・脈拍、血液型、当日の体調等がある。これらの情報は、着用者がキーボードを用いて入力することもできる。尚、記憶手段132には、上記の情報以外にも、着用者の住所、電話番号等さまざまな情報を記憶することが可能である。
通信手段135は、各種のセンサ121〜125で検出された体調等に関するデータを外部の受信手段との間で送受信するものである。また、出力インターフェース136としては、例えばスピーカ用の音声出力端子がある。これにより、着用者はスピーカから音声等を聞くことができる。
演算手段133は、体調センサ及び環境センサで得られた検出結果に基づいて、人体がその時の状況に応じて適切な放熱を行うために必要とされる発汗量を予測し、当該発汗量をすべて気化するために必要とされる身体平行風の流量を算出するものである。演算手段133で得られた算出結果はファン制御手段134に送られる。また、演算手段133は、各部の制御を行う制御手段としての役割をも果たす。
ファン制御手段134は、演算手段133で算出された身体平行風の流量に基づいて送風手段50,50の駆動条件を決定し、その決定した駆動条件にしたがって送風手段50,50の駆動を制御する。ここで、送風手段50,50の駆動条件としては、例えばモータの回転数が用いられる。モータの回転数が決まれば、身体平行風の流量も決まるからである。具体的には、ファン制御手段134は、送風手段50に供給する電圧を変えることにより、送風手段50の回転数を制御する。この場合、電源手段61aと送風手段50,50との間に、出力電圧を変えることができるDC−DCコンバータ(DC−DC変換手段)を設けることが望ましい。そして、ファン制御手段134が、DC−DCコンバータを制御することにより、送風手段50,50に供給する電力量を変えて、送風手段50,50から発生させる空気の流量を制御する。DC−DCコンバータを用いることにより、電力の損失をあまり伴わずに送風手段50の回転数を制御することができるという利点がある。このように、第十四実施形態の空調衣服14では、着用者の体調や外気の温湿度に応じて適切な量の空気を自動的に服地部200内に流すことができる。尚、DC−DCコンバータとしては、例えば、出力電圧をPWM変調した後にコンデンサで整流するようなものを用いてもよい。
尚、第十四実施形態では、送風手段50,50として、最大47リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。かかる最大流量で身体平行風を流したとき、二つの送風手段50,50の消費電力は40Wである。また、空調衣服14の空調能力は最大1500Wである。
前述した身体平行風の特性によれば、汗を気化させるのに必要な流量以上の流量の身体平行風をいくら流していても、生理クーラーへの影響はない。しかし、身体平行風の流量を常に一定にしたのでは、空調能力が一定に決まってしまう。このため、身体が生理的に必要とする放熱量が少ない場合でも送風手段50,50の消費電力は一定であるので、結果的に、電源手段61aへの一回の燃料補給で送風手段50,50を駆動できる時間が短くなってしまう。この点は、電源手段として二次電池を用いたときも同様である。したがって、第十四実施形態の空調衣服14では、身体がその時に生理的に必要とする放熱量に応じて身体平行風の流量を自動的に制御することができるので、燃料(又は電池)の無駄使いを抑えることができるだけでなく、送風手段50,50の寿命を延ばすことができる。
また、一般にオフィスワーク等の軽作業を行う環境では周囲の騒音は小さいが、重労働を行う環境では周囲の騒音が大きい。第十四実施形態の空調衣服14では、身体が生理的に必要とする放熱量に応じて身体平行風の流量を自動的に制御することにより、オフィス等、周囲が静かな環境で空調衣服14を着用する場合には、送風手段50,50の回転数が小さく、送風手段50,50から発生するノイズも小さいので、着用者本人及び周囲の者は、空調衣服14の騒音が喧しいと感じることはない。一方、重労働を行う環境で空調衣服14を着用した場合には、送風手段50,50の回転数が大きく、送風手段50,50から発生するノイズも大きくなるが、周囲の騒音も大きいため、空調衣服14の騒音はそれ程問題にならない。
尚、体調センサや環境センサからの検出結果を用いただけでは、身体がその時の状況に応じて適切な放熱を行うために必要とされる発汗量を正確に予測することができない場合がある。作業の状況に応じて身体が生理的に必要とする放熱量には、個人差があるからである。このような場合には、演算手段133は、体調センサ及び環境センサからの検出結果に加えて、記憶手段132に記憶されている体重や当日の体調その他の着用者の個人情報を用いて、発汗量を予測することが望ましい。これにより、演算手段133は、身体がその時の状況に応じて適切な放熱を行うために必要とされる発汗量を正確に且つきめ細かく決定することができる。
次に、空調衣服14が備える、健康管理服としての機能について説明する。この機能を実現するため、演算手段133はさらに次のような処理を行う。すなわち、演算手段133は、体調センサで検出された体温・脈拍に基づいて当該体温又は脈拍がそれぞれ所定の基準範囲内にあるか否かを判断し、当該体温又は脈拍が基準範囲外にあると判断したときに、出力インターフェース136に接続されたスピーカから所定の警告を発生させる。これにより、着用者は、自分の体温又は脈拍について問題が生じたことを直ちに知ることができる。ここで、体温及び脈拍の基準範囲についての情報は、予め記憶手段132に記憶されている。
また、演算手段133は、体調センサで検出された体温・脈拍に基づいて当該体温又は脈拍がそれぞれ所定の基準範囲内にあるか否かを判断した際に、例えば当該脈拍が所定の異常値以上であると判断したときには、体調センサで得られた検出結果に基づいて体調に関する情報を生成し、通信手段135に送出する。この異常値は予め記憶手段132に記憶されている。そして、通信手段135は、その体調に関する情報を外部の受信手段に送信する。ここで、受信手段は、例えば着用者の係り付けの病院に設置される。また、上記の「体調に関する情報」には、体調センサで検出された体温・脈拍(体調)だけでなく、GPSセンサ125で検出された位置情報、記憶手段132に記憶されている着用者の個人情報も含まれる。特に、「所定の情報」にGPSセンサ125で検出された位置情報を含めることにより、受信手段が設置された病院の担当者は、その位置情報に基づいて着用者の居所を特定することができる。このため、着用者が健康上の緊急事態に陥ったときに、着用者(患者)の居所を救急車等に素早く連絡することができる。
尚、体調センサとしては、体温センサ121、脈拍センサ122の他に、心臓の状態をチェックするセンサ等、さまざまな種類のセンサを用いることができる。空調衣服14に各種の体調センサを付加することにより、空調衣服14の有する、健康管理服としての機能をより一層向上させることができる。
次に、空調衣服14が備えるインターネット通信機能を説明する。通信手段135には、インターネットに接続して通信を行う機能が付加されている。そして、着用者がインターネット通信機能を利用する場合には、入力インターフェース131にキーボード等の入力手段を接続すると共に、出力インターフェース136に、インターネットを介してダウンロードした情報を出力するための出力手段を接続する。例えば、聞きたい音楽を、キーボードの操作によってインターネットを介してダウンロードし、スピーカからその音楽を出力することができる。ここで、空調衣服14にスピーカを取り付ける代わりに、出力インターフェース136のヘッドフォン用音声出力端子にヘッドフォンを接続し、ヘッドフォンで音楽を聞くようにしてもよい。また、出力インターフェース136にビデオ出力端子を設け、そのビデオ出力端子に眼鏡型表示装置を接続することにより、着用者は、その眼鏡型表示装置をかけて、ダウンロードした映像を見ることができる。尚、入力インターフェース131に音声入力装置用の端子を設けることにより、キーボードの代わりに、音声入力装置を用いて音声で入力を行うようにすることが望ましい。これにより、着用者は入力作業を容易に行うことができるので、空調衣服14のインターネット通信機能がさらに活用しやすくなる。
第十四実施形態の空調衣服では、演算手段が着用者の体調や外気の温湿度に基づいて人体がその時に生理的に必要とする放熱量を算出し、その放熱量に応じて身体平行風の流量を自動的に制御することができる。このため、かかる空調衣服を着用することにより、着用者がどのような体型の人であろうと、どのような内容の作業を行おうとも、着用者は自己に適した冷却効果を得ることができる。
尚、上記の第十四実施形態では、体調センサとして、体温センサ及び脈拍センサを用いた場合について説明したが、体調センサとしては、体温センサだけを用いてもよい。
また、上記の第十四実施形態では、体調センサ及び環境センサで得られた検出結果に基づいて発汗量を予測し、身体平行風の流量を決定する場合について説明した。しかし、体調センサを用いる場合には、体調センサを身体に接する位置に取り付けなければならず、その取付けが若干面倒である。このため、体調センサの代わりに、身体の動きに応じて作業量の概算量を検出する加速度センサ等の作業量センサ(作業量検出手段)を用いるようにしてもよい。かかる作業量センサは、必ずしも身体に接する位置に取り付ける必要はなく、空調衣服のいずれの位置に取り付けてもよい。この場合、演算手段は、作業量センサ及び環境センサで得られた検出結果に基づいて、人体がその時の状況に応じて適切な放熱を行うために必要とされる発汗量を予測する。
また、第十四実施形態の空調衣服は、たとえ身体を冷却する機能を備えていなくとも、上述した健康管理服としての機能やインターネット通信機能を備えているだけで十分な使用価値がある。
[第十五実施形態]
次に、本発明の第十五実施形態について図面を参照して説明する。図32Aは本発明の第十五実施形態である空調衣服の概略正面図、図32Bはその空調衣服の概略背面図、図33Aはその空調衣服に用いられる送風手段の概略正面図、図33Bはその送風手段の概略側面図である。また、図34Aはその空調衣服を着用したときの様子を説明するための図、図34Bはその空調衣服を着用したときのベルト部分の様子を説明するための図である。尚、第十五実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十五実施形態の空調衣服15は、図32に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段550,550と、耐圧スペーサ80,800と、リモートコントロール用送信器(遠隔制御用送信手段)140とを備えるものである。かかる空調衣服15は、第五実施形態のオフィス用空調衣服5を改良したものである。以下、この空調衣服15を「オフィス用改良型空調衣服」とも称する。この空調衣服15の主な仕様は、図8の表にまとめられている。
第十五実施形態の空調衣服15が第五実施形態の空調衣服5と異なる主な点は、各送風手段550,550の回転制御をリモートコントロール用送信器140で行う点、服地部200の内面側であって腰に対応する位置に耐圧スペーサ800を設けた点である。その他の点については、上記の第五実施形態のものと同様である。
次に、第十五実施形態の空調衣服15の特徴点について詳しく説明する。
第十五実施形態では、送風手段550として、いわゆるハイブリッドファンを用いている。この送風手段550の基本的な構成は、図10及び図11に示した送風手段50とほぼ同じであるが、送風手段550は、送風手段50の各構成要素に加えて、図33に示すように、電源手段551と、受信回路(受信手段)552と、制御回路(制御手段)553とを備えている点で送風手段50と異なる。ここで、送信手段550の内部ファンガードには板状の載置部555が設けられており、電源手段551、受信回路552及び制御回路553は、その載置部555上に取り付けられている。
電源手段551は、送風手段550に電力を供給するためのものである。ここでは、電源手段551としてキャパシターを用いている。キャパシターは、寿命が非常に長いこと、ごく短時間に充電できること、安全性が高いこと等の理由から空調衣服用の電源として用いるのに非常に適している。受信回路552は、リモートコントロール用送信器140からの信号を受信するものである。制御回路553は、受信回路552の受信した信号に基づいて、送風手段550の駆動を制御するものである。また、リモートコントロール用送信器140は、送風手段550,550が発生する空気の流量を調整する流量調整手段としての役割を果たすものである。具体的に、リモートコントロール用送信器140は、送風手段550,550のオン/オフを指示する信号や、送風量を所定の量に調整するための信号を送信する。
このように、送風手段550自体に電源手段551を取り付けたことにより、電源手段551と送風手段550との間を電源ケーブルで接続する必要がなくなり、しかも、空調衣服15の洗濯時には送風手段550,550を取り外すだけでよいという利点がある。また、着用者は、リモートコントロール用送信器140を操作して、送風手段550,550が発生する空気の流量を簡単に調整することができる。
第十五実施形態の空調衣服15では、服地部200の内面側であって腰に対応する位置に耐圧スペー800が取り付けられている。具体的には、服地部200の裾部をズボンの内側に入れたときに、少なくともズボンのベルト部に対応する服地部200の位置に耐圧スペーサ800を取り付けるようにしている。この耐圧スペーサ800の構造は、服地部200の背中部に取り付けられる耐圧スペーサ80とほぼ同様である。
かかる耐圧スペーサ800を設けたことにより、図34に示すように、服地部200の裾部をズボンに入れ、ズボンのベルトを締めても、服地部200の裾部が身体又は下着と密着することがないので、送風手段550,550から発生した身体平行風の一部は、耐圧スペーサ800を介して下半身にも送られることになる。したがって、ズボンの生地として空気漏れの少ない素材を用いると、当該ズボンを空気案内手段として機能させることができると共に、当該ズボンの裾部の開口部を空気流通部として機能させることができる。この場合、空調衣服15内だけでなく、当該ズボン内にも身体平行風を流すことができるので、空調面積率を大幅に改善することができる。例えば、着用者が空調衣服15とともに空気案内手段としてのズボンを着用した場合、空調面積率は約80%に向上する。
尚、耐圧スペーサ800を必ずしも服地部200の裾部に取り付ける必要はない。上述したように、耐圧スペーサ800の役割は、ズボンのベルト等が胴体を締め付けることによって服地部200の裾部と身体又は下着とが密着することを回避し、下半身への空気の流通空間を確保することである。このため、耐圧スペーサ800の取付け方法としては、服地部200と身体又は下着との間に耐圧スペーサ800が存在することができる方法であれば、どのような方法を用いてもよい。すなわち、耐圧スペーサ800は、服地部200の裾部をズボン(下半身用衣服)の内側に入れたときに少なくともズボンのベルト部に対応する位置に設けられていればよい。例えば、耐圧スペーサ800を腹巻の外面に取り付けるようにしてもよい。この場合、着用者は、その腹巻を着用した後に空調衣服15を着用する。これにより、服地部200と腹巻との間に空気の流通空間が確保される。
第十五実施形態の空調衣服では、着用者がリモートコントロール用送信器を用いて身体平行風の流量を調整することができるので、着用者がどのような体型の人であろうと、どのような内容の作業を行おうとも、着用者は自己に適した冷却効果を得ることができる。
[第十六実施形態]
次に、本発明の第十六実施形態について図面を参照して説明する。図35Aは本発明の第十六実施形態である空調衣服の概略正面図、図35Bはその空調衣服の概略背面図、図36Aはその空調衣服に用いられる空調ベルトを裏面側から見たときの概略平面図、図36Bはその空調ベルトが巻き付けられた状態を説明するための図、図37はその空調衣服に用いられる送風手段の概略側面図である。尚、第十六実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十六実施形態の空調衣服16は、図35に示すように、上半身の上部を覆う上部服地部260と、上半身の下部を覆う下部服地部270と、二つの開閉手段31,31と、二つの着脱手段34,34と、三つの空気流通部40,40,40と、空調ベルト150とを備えるものである。上記の第一から第十五までの各実施形態では、一般の服の形態をそのまま生かして空調衣服を製造していたが、第十六実施形態では、空調ベルト150を用いて服地部を上下二つに分離している。以下、第十六実施形態の空調衣服16を「空調ベルト型衣服」とも称する。この空調衣服16の主な仕様は、図8の表にまとめられている。
上部服地部260は臍部より上側の身体を覆うものであり、下部服地部270は腰部を覆うものである。上部服地部260及び下部服地部270は空気案内手段としての役割を果たす。このため、上部服地部260及び下部服地部270の素材としては空気漏れの少ない素材が用いられる。また、上部服地部260の前部及び下部服地部270の前部にはそれぞれ、開閉手段31,31としてのファスナーが設けられている。
上部服地部260の下端は空調ベルト150の上端に着脱手段34により着脱自在に取り付けられ、下部服地部270の上端は空調ベルト150の下端に着脱手段34により着脱自在に取り付けられている。ここで、着脱手段34,34としてファスナーを用いている。したがって、上部服地部260と下部服地部270とを空調ベルト150に取り付けることにより、空調衣服16が完成する。
空調ベルト150は、図36に示すように、ベルト状のベース部材(帯状部材)151と、二つの送風手段560,560と、ファン制御手段152と、電源手段61と、電源スイッチ(不図示)と、流量調整手段(不図示)と、複数の耐圧スペーサ153と、マジックテープ154a,154bとを備える。送風手段560,560、ファン制御手段152、電源手段61等の電気部品は、ベース部材151の裏面に取り付けられている。
二つの送風手段560,560はベース部材151上の所定位置に取り付けられる。送風手段560は、いわゆるプロペラファンであり、図37に示すように、モータ(不図示)と、プロペラ561と、方向変換手段562と、ファンガード563とを有するものである。ファンガード563は、モータ、プロペラ561及び方向変換手段562を収納するものである。プロペラ561は、外部の空気をプロペラ561の回転軸方向から吸入し、その吸入側と反対側において回転軸方向に略平行に空気を送り出す。方向変換手段562は、プロペラ561からその回転軸方向に沿って取り込まれた空気がその回転軸方向に略直交する方向へ放射状に流れるように空気の流れ方向を変換するものである。例えば、方向変換手段562としては、略円錐形状の部材を用いることができる。したがって、送風手段560,560は、外部の空気を吸入し、その吸入した空気を身体の表面と略平行な方向に流すことができる。尚、プロペラ561の下端と身体又は下着との間に間隔を設けるための間隔保持手段を用いることにより、プロペラ561から吸入された空気が、直接、身体又は下着に当たり、それによって空気の流れ方向を変換することができるが、この間隔保持手段も方向変換手段の一つとみなすことができる。また、送風手段560を空調ベルト150に取り付ける方法としては、第一実施形態で示した方法と同じ方法を用いることができる。
また、送風手段560,560としては、12リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。各送風手段560のファン径は60mm、二つの送風手段560,560のファン総有効面積は45cm2である。ここで、二つの送風手段560,560の消費電力は約2.5Wである。
電源手段61は、ファン制御手段152及び送風手段560,560に電力を供給するものである。ファン制御手段152は、送風手段560,560から発生させる空気の流量を制御するものである。また、図示しない流量調整手段は、送風手段560,560が発生する空気の流量を調整するものである。流量調整手段としては、例えばボリュームが用いられる。
各耐圧スペーサ153は、送風手段560,560、ファン制御手段152、電源手段61等の各電気部品の間に取り付けられている。耐圧スペーサ153は空調ベルト150と身体との間に空気が流通できるような空間を確保するためのものであり、その構造は図19に示す耐圧スペーサ80と同様である。
マジックテープ154aは、ベース部材151の裏面であってその長手方向の一方の端部に取り付けられており、マジックテープ154bは、ベース部材151の表面であってその長手方向の他方の端部に取り付けられている。ここで、マジックテープ154aをA面のものとすると、それに貼り付けられるB面のマジックテープがマジックテープ154bである。したがって、空調ベルト150を胴に巻きつけたときに、マジックテープ154aとマジックテープ154bとを貼り付けることにより、空調ベルト150が胴からずれ落ちないようにすることができる。すなわち、マジックテープ154a,154bは、空調ベルト150の長さを調整して空調ベルト150を胴回りに取り付けるベルト留め手段である。尚、ベース部材151には複数の耐圧スペーサ153が取り付けられているので、空調ベルト150をきつく締めても、空調ベルト150と身体との間に空間を確保することができる。
第十六実施形態の空調衣服16を着用する場合、まず、上部服地部260と下部服地部270とを空調ベルト150に取り付ける。次に、着用者は上部服地部260の袖部を腕に通す。そして、上部服地部260のファスナーを締めることにより、上部服地部260の前部を閉じると共に、下部服地部270のファスナーを締めることにより、下部服地部270の前部を閉じる。最後に、空調ベルト150の両端をマジックテープ154a,154bで貼り付ける。こうして、空調衣服16が着用される。尚、ここでは、下部服地部270の裾部から空気が外部に漏れるのを防止するために、下部服地部270の裾部をズボン等の内部に入れることにする。
着用者が空調ベルト150に設けられた電源スイッチ(不図示)を押すと、ファン制御手段152が送風手段560,560に電力を供給し、送風手段560,560が駆動する。これにより、空調ベルト150から身体平行風が発生し、その発生した身体平行風は上部服地部260及び下部服地部270と身体との間の空間を流れ、空気流通部40,40,40から外部に排出される。尚、空調衣服16の空調能力は約400Wである。
尚、第十六実施形態においては、上部服地部及び下部服地部としては、上部服地部及び下部服地部と身体又は下着との間に身体平行風を流すことができるような形状であれば、どのような形状のものでも用いることができる。また、空調ベルトを留める方法としては、マジックテープに限られず、例えば通常のベルトの留め具等、各種の方法を用いることができる。更に、上部服地部及び下部服地部の前部の開閉手段としては、ファスナーに限られず、空気漏れが少なく、確実に結合できる方法であれば、どのような方法を用いてもよい。
尚、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
上記の第一から第十六までの各実施形態では、さまざまな用途の空調衣服を説明した。当然のことであるが、本発明の空調衣服は、それらの空調衣服に限られるものではなく、上記の各実施形態の仕様を合理的に組み合わせて得られるものであってもよい。
また、上記の各実施形態において、空気案内手段と身体又は下着との間の空間において空気が流れる経路を強制的に設定するための流路設定手段を空気案内手段の内面に設けるようにしてもよい。例えば、流路設定手段としては、スポンジ等の軽量な部材を用いることができる。この流路設定手段を設けることにより、空調衣服としてのパフォーマンスが更に向上する。
また、上記の各実施形態において、空気案内手段と身体又は下着との間の空間における空気の流れを強制的に乱すための空気攪拌手段を空気案内手段の内面のところどころに設けるようにしてもよい。例えば、空気攪拌手段としても、スポンジ等の軽量な部材を用いることができる。この空気攪拌手段を設けることにより、身体平行風が層流になるのを防止することができる。身体平行風が層流になると、身体平行風のうち、体から離れた、すなわち空気案内手段側を流れる空気は、汗の蒸発にあまり寄与しなくなるからである。
また、送風手段の送風方式として吸気方式を採用すると共に、身体平行風の流量が大きく且つ風圧が高い場合には、空気案内手段として、それが身体から大きく離れてしまうような形状のものを用いることは望ましくない。このような形状の空気案内手段を用いると、空気案内手段と身体又は下着との間の空間において空気案内手段の近傍を空気が層流として流れるため、汗の蒸発にあまり寄与しない無駄な空気が多くなるからである。但し、もともと送風量の大きい送風手段の付近では、空気案内手段が身体又は下着から大きく離れても、その部分が一種の空気溜めの役割を果たし、外部から空調衣服内に空気を取り入れる際の空気抵抗が小さくなる。このため、このような場合には、空気案内手段を身体又は下着から大きく離した方が、送風量が大きくなり空調衣服全体としての空調効率が上がる。
更に、上述したように、空調衣服の空調能力は、空気の蒸発寄与率に依存する。そして、空気の蒸発寄与率は、服地部の形状や空気攪拌手段の有無等により変化する。この点を考慮すると、実際に、上記の各実施形態の空調衣服においてそれに対応する図5〜図8に記した空調能力を実現するためには、同図中に記した空気の流量の約80%から約150%までの範囲内の流量の空気を服地部と身体又は下着との間の空間に流す必要がある。
次に、服地部と身体又は下着との間の空間に発生させる空気の流量と空気流通部の総有効断面積との関係、及び、送風手段の総有効断面積(ファン総有効面積)と空気流通部の総有効断面積との関係について説明する。
図38は送風手段から空気案内手段と身体又は下着との間の空間(空気流通空間)を介して空気流通部に至るまでの空気の流れの経路を模式的に示した図である。ここでは、外部の空気が送風手段から空気流通空間内に流入し、空気流出部から外部に流出する場合を考える。また、図38に示す経路は、着用者が送風手段のスイッチをオンしたときに、実際に空気が流れる経路を表している。図38では、ファン総有効面積をS1、空気流通空間内のある位置における空気流通空間の総有効断面積をS2、空気流通部の総有効断面積をS3で示している。ファン総有効面積S1は、例えば送風手段としてプロペラファンを用いた場合には、各送風手段のプロペラ部の面積を合計したものであり、プロペラが構成されていない送風手段の中央部の面積はファン総有効面積S1に含まれない。また、空気流通部の総有効断面積S3は、空気流通部を通過する空気の流れ方向に垂直な平面に、当該空気流通部の面積を射影して得られる面積である。ここで、第五実施形態で説明したような空気透過性の高い布を用いて形成された空気流通部についても、空気流通部の総有効断面積S3に加えられる。
一般に、図38に示すように、空気流通空間の総有効断面積S2は、送風手段から遠ざかるにつれて大きくなり、空気流通部に近づくにつれて小さくなる。また、通常、空気流通部の総有効断面積S3はファン総有効面積S1よりも大きい。すなわち、三つの総有効断面積S1,S2,S3の間には、送風手段及び空気流通部の近くの領域を除き、S1<S3<S2という関係がある。
ファン総有効面積S1は、外観上、露出している送風手段の面積と略等しいので、空調衣服の外観上の違和感を少なくするためには、ファン総有効面積S1をあまり大きくすることは好ましくない。また、もし空気流通部の総有効断面積S3を大きくしようとすると、空気流通部を空気案内手段に多数設けなければならない。しかし、これを行うと、身体平行風が空気流通空間を流れる平均距離が短くなり、空気の蒸発寄与率が低下してしまう。本発明者が実験により確かめたところによると、空気流通部を空気案内手段に設ける場合、空気の蒸発寄与率がそれ程低下しないようにするためには、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量をLリットル/秒とすると、空気流通部の総有効断面積を20・L1/2cm2以下にすればよい。ここで、定数「20」は次元をもった量であり、これとL1/2との積が面積の次元をもつ。
空気の流量が小さい場合、例えば6リットル/秒以下である場合には、図5〜図8におけるファン総有効面積の欄に示されているように、ファン総有効面積S1は小さく、実際、送風手段及び空気流通部の近くの領域を除き、S1<S3<S2の関係が成立している。したがって、この場合には、空調衣服の外観上の違和感も小さく、しかも空気流通部の総有効断面積S3を大きくする必要はないので、空気の蒸発寄与率を低下させることはない。
一方、もし空気の流量を大きくしようとすると、ファン総有効面積S1を大きくする必要がある。この場合には、空気流通路の総有効断面積S3を大きくしないと、上記の三つの総有効断面積S1,S2,S3の間の関係が成り立たなくなってしまうことがある。空気流通路の総有効断面積S3がファン総有効面積S1よりも著しく小さいと、送風圧力を非常に大きくしなければならなくなり、消費電力が非常に大きくなる等の不都合が生じる。この点を考慮すると、空気流通路の総有効断面積S3がファン総有効面積S1よりも小さくなったとしても、空気流通路の総有効断面積S3はファン総有効面積S1の少なくとも0.7倍である必要がある。また、本発明者が実験により確かめたところによると、このような不都合を回避するためには、空気流通部の総有効断面積S3を5・L1/2cm2以上にすればよい。ここで、定数「5」は次元をもった量であり、これとL1/ 2との積が面積の次元をもつ。
したがって、空調衣服においては、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量をLリットル/秒とすると、空気流通部の総有効断面積が5・L1/2cm2以上20・L1/2cm2以下の範囲内にあることが望ましい。また、ファン総有効面積(送風手段の総有効断面積)に対する空気流通部の総有効断面積の比率が少なくとも0.7倍であることが望ましい。
本発明の空調衣服においては、省エネルギー、電池の連続使用時間(二次電池の場合は一回の充電で使用可能な時間)及び電池のコストや重量を考慮すると、送風手段の消費電力に対する空調衣服の空調能力の比率は大きい程よい。特に、外部の空気が温度33℃、湿度50%であって、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量が少なくとも5リットル/秒である場合、送風手段の消費電力に対する空調衣服の空調能力の比率は少なくとも50倍であることが望ましい。尚、上記の比率は、送風手段のモータの効率、空気の蒸発寄与率等に依存する。
また、本発明の空調衣服では、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量をLリットル/秒とすると、使用する送風手段として、最大静圧、すなわち流量がゼロになるところでの圧力が5・L1/2パスカル以上50・L1/2パスカル以下の範囲内にあるような送風圧力特性を有するものを用いるのが実用的である。ここで、定数「5」、「50」は次元をもった量であり、これらとL1/2との積が圧力の次元をもつ。このためには、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に流す空気の流量が10リットル/秒以下である場合には、送風手段としてプロペラファンを用い、空気の流量が10リットル/秒より大きい場合には、送風手段としてターボファンを用いることが望ましい。
次に、空気案内手段の通気性について説明する。上記の第一実施形態において説明したように、送風手段の送風方式が吸気方式であって、送風手段によって発生される空気の流量が大きい場合には、送風手段の近傍における空気案内手段が、外部の圧力と空気案内手段内の圧力との圧力差によって膨らみ、空気案内手段の近傍には、いわゆる「空気溜め」が形成される。そして、この「空気溜め」が形成された部分(空気溜め部)において、空気案内手段から漏れる空気の流量が最も大きい。ここで、この空気溜め部での上記圧力差は、空気流通部の総有効断面積を大きくする等、空調衣服の設計に応じて小さくすることが可能である。また、送風手段の消費電力及びノイズの低減を図り、送風手段にかかる負担を小さくするためには、この空気溜め部での上記圧力差を小さくする必要がある。本発明者が実験を行った結果、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に流れる空気の流量をLリットル/秒とすると、空気溜め部での上記圧力差が0.5・Lパスカル程度であれば、送風手段にかかる負担を小さくできることが確かめられた。ここで、定数「0.5」は次元をもった量であり、これとLとの積が圧力の次元をもつ。この値と空気溜め部を形成する空気案内手段の面積を考え合わせると、空気案内手段に圧力をかけて、空気溜め部での上記圧力差を10パスカルとした場合、1cm2当たり1秒間に漏れる空気の流量が5cc以下であれば空気漏れの問題は回避される。尚、この圧力領域では、上記圧力差と漏れる空気の流量とが略比例すると考えられる。空調衣服に流す空気の流量が、その代表的な値である10リットル/秒であり、空気溜め部を形成する空気案内手段の面積が300cm2である場合、空気溜め部での圧力差は5パスカルになるので、空気溜め部において漏れる空気の流量は、5・(5/10)・300=750cc/sである。すなわち1秒間に750ccの空気が空気溜め部から漏れることになる。このとき、10リットル/秒の空気流量に対する空気溜め部で漏れる空気の流量の割合は、7.5%である。尚、送風手段の送風方式が排気方式でも、同様の考えが成り立つ。
また、上記の第二、第八及び第十一の各実施形態では、送風手段の着脱方式として集積ベルト方式を採用し、電源手段を集積ベルト上に配置した場合について説明したが、空調衣服の使用目的によっては電源手段を必ずしも集積ベルト上に配置せず、例えばズボンのベルトに電源手段を取り付けるようにしてもよい。尚、この点については、集積ベルト方式を採用した空調衣服に限らず、他の空調衣服でも同様であり、電源手段はどこに取り付けてもよい。
更に、本発明の空調衣服を使用する場合、電気部品を除いた服地部を多数用意し、電気部品については一セットだけを用意しておくことが望ましい。実際に着用する服地部にその電気部品を取り付けることにより、毎日、色、柄、形状等の異なる空調衣服を楽しむことができる。
以上説明したように、本発明の空調衣服では、送風手段として着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させることができるものを用いている。このため、本発明の空調衣服は、身体から生じた汗をすばやく蒸発させることができ、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を広げることができるので、例えば、軽作業用衣服、中作業用衣服、雨天作業用衣服、ライン作業用衣服、オフィス用衣服、野外用衣服、防臭用衣服、幼児用衣服、重作業用衣服等に適用することができる。
本発明は、人間が本来的に有している、汗の気化熱による身体の冷却機能を、有効に働かせるための補助装置として用いられる空調衣服に関するものである。
夏などの暑い季節に、暑さを解消する手段として現在最も広く用いられているのはエアーコンディショナーである。これは、部屋の空気を直接冷やすものであるため、暑さを解消するという点においては、非常に有効である。
しかしながら、エアーコンディショナーは、高価な装置であり、世帯普及率は高くなってきたが、一つの世帯の各部屋ごとに普及するまでには至っていない。また、エアーコンディショナーは大量の電力を消費するため、エアーコンディショナーが普及することによって社会全体の電力消費も増え、しかも、発電の大きな割合を化石燃料に頼っている現状では、エアーコンディショナーが普及することによって、地球全体の温暖化につながるという皮肉な結果を招く。また、エアーコンディショナーは、部屋の空気そのものを冷却するので、冷えすぎによって健康を損なうといった問題も考えられる。
上記問題を解決するために、本発明者は、暑い季節でも消費電力が少なく、かつ快適に過ごすことのできる冷却衣服を案出している(PCT/JP01/01360)。かかる冷却衣服は、衣服と下着又は体との間に空気を流通させるための流通路と、衣服に一体的に設けられた送風手段とを備える。この冷却衣服では、送風手段により外部の空気を流通路内に取り込んで流通させることにより、体温と外部の空気の温度との温度差により身体を冷却する。この冷却衣服を着用するだけで、着用者は、暑さを解消できる。このため、冷却衣服を広く普及させれば、ほとんどエアーコンディショナーを必要としなくなり、地球環境保護に貢献するところ極めて大である。
ところで、一般に、冷却衣服を着用することによって得られる冷却効果は、着用者の個体差や使用目的によって異なる。例えば、体重の重い人が冷却衣服を着用する場合には、体重の軽い人が冷却衣服を着用する場合よりも、大きな流量の空気を流通路に流さなければ、十分な冷却効果が得られないことがある。また、着用者が重作業に従事する場合には、軽作業に従事する場合よりも、大きな流量の空気を流通路に流さなければ、十分な冷却効果が得られない。従来の冷却衣服では、この点について考慮されておらず、ただ衣服と下着又は体との間に空気を流すだけであった。しかも、従来の冷却衣服には、後述する汗を冷媒とした生理クーラーを活用するという概念が含まれていなかった。後述するように、生理クーラーを活用するためには周囲の温度、着用者の行う仕事の内容、着用者の体重等の条件により決まる一定流量以上の空気を流通させることが必要であり、これらの条件を考慮せず、単に少量の空気を流通させることを前提とした従来の冷却衣服では、目的とする十分な冷却効果が得られなかった。
本発明は、このような技術的背景のもとになされたものであり、少ない消費電力で、着用者の個体差や使用目的に応じて人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することができる空調衣服を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、前記空気案内手段の前部を開閉すると共に、前記空気案内手段の前部を閉じたときに当該前部から空気が外部に漏れるのを防止する開閉手段とを備え、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大し、且つ、外部の空気が温度33℃、湿度50%である場合、身体から生じた汗が周囲から奪う気化熱が着用者の体重1kg当たり少なくとも340カロリー/時であるような空調能力を有することを特徴とするものである。
ここで、外部の空気が温度33℃、湿度50%である場合、送風手段が、その外部の空気を利用して、着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させると、身体から生じた汗が周囲から奪う気化熱は着用者の体重1kg当たり少なくとも340カロリー/時である。したがって、請求項1記載の発明に係る空調衣服は、身体から生じた汗をすばやく蒸発させることができるので、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大して、十分な冷却効果を奏することができる。
上記の目的を達成するための請求項2記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に外部の空気を取り込むと共に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、前記空気案内手段の前部を開閉すると共に、前記空気案内手段の前部を閉じたときに当該前部から空気が外部に漏れるのを防止する開閉手段とを備え、前記送風手段は少なくとも2リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とするものである。
請求項2記載の発明に係る空調衣服は、上記の請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。特に、請求項2記載の発明に係る空調衣服では、送風手段が少なくとも2リットル/秒の流量で空気を送り出すことにより、その空気の圧力によって、空気案内手段と身体又は下着との間に、空気を身体又は下着の表面に沿って略平行に流すための空間を自動的に形成することができる。
上記の目的を達成するための請求項3記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための少なくとも二つの送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、前記空気案内手段の前部を開閉すると共に、前記空気案内手段の前部を閉じたときに当該前部から空気が外部に漏れるのを防止する開閉手段とを備え、前記送風手段は、前記空気案内手段の背中側の下部であって脇腹に近い部位に取り付けられ、着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とするものである。
請求項3記載の発明に係る空調衣服は、上記の請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。特に、請求項3記載の発明に係る空調衣服では、送風手段を空気案内手段の背中側の下部であって脇腹に近い部位に取り付けたことにより、着用者が椅子にもたれかかったときでも送風手段が邪魔になることはなく、しかも、作業時に腕を送風手段にぶつけてしまうこともない。また、前から見たときに、送風手段が見えず、空調衣服の見栄えをよくすることができる。更に、空気流通部が空気案内手段の上部に形成される場合には、空気案内手段で覆われる身体部分の略全体に空気を流通させることが可能である。
上記の目的を達成するための請求項4記載の発明に係る空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に外部の空気を取り込むと共に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、前記空気案内手段の前部を開閉すると共に、前記空気案内手段の前部を閉じたときに当該前部から空気が外部に漏れるのを防止する開閉手段と、を備え、前記送風手段は、前記空気案内手段の背部に取り付けられ、少なくとも10リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とするものである。
請求項4記載の発明に係る空調衣服は、上記の請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。特に、請求項4記載の発明に係る空調衣服では、送風手段を空気案内手段の背部に取り付け、送風手段として少なくとも10リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものを用いることにより、かかる空調衣服は、例えば立ち作業用の作業服として用いるのに好適である。
上記の目的を達成するための請求項5記載の発明に係る空調衣服は、上着の下に着用される空調衣服であって、身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、前記空気案内手段の前部を開閉すると共に、前記空気案内手段の前部を閉じたときに当該前部から空気が外部に漏れるのを防止する開閉手段と、を備え、前記送風手段は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、しかも前記送風手段の最大静圧が少なくとも30パスカルであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体の表面近傍における温度勾配を大きくして体を冷却すると共に、身体から生じた汗を蒸発させ、その蒸発の際に汗が周囲から奪う気化熱を利用して身体を冷却することを特徴とするものである。
請求項5記載の発明に係る空調衣服は、上記の請求項1記載の発明と同様の作用・効果を奏する。特に、請求項5記載の発明に係る空調衣服では、送風手段として、最大静圧が少なくとも30パスカルであるような送風圧力特性を有するものを用いることにより、送風手段は、例えば、空気案内手段と身体又は下着との間の空間を流れる空気を空気案内手段と上着との間の空間に確実に排気することができる。したがって、かかる空調衣服は、上着と身体又は下着との間に着用する中着服として用いるのに好適である。
本発明に係る空調衣服は、人間が本来的に有している、汗の気化熱による身体の冷却機能を、有効に働かせるための補助装置として用いられるものである。まず、この点について詳しく説明する。
人間は食物を摂取して、生命維持活動や仕事を行い、それに対応して産熱する非常に効率の悪い作業装置と考えることができる。効率が悪いゆえに、摂取したカロリーのほとんどが熱になる。そして、正常な体温を維持するためには、そのときの作業量に応じた量の放熱が必要になる。具体的に、標準的な大人の場合、身体からの放熱量は、安静時で約100キロカロリー/時、歩行時(速度5km/時)で約260キロカロリー/時である。また、最大労働時では、放熱量は1000キロカロリー/時を超えるといわれている。かかる放熱を行うための機能として、人間には本来的に発汗により身体を冷却する機能(以下、これを「生理クーラー」とも称する。)が備わっており、この生理クーラーは、上述の最大労働時の放熱量を十分に放熱する能力を持っている。すなわち、作業量に応じて生理的に必要とする放熱量が決まり、人体はその放熱量に対応した量の汗を出すようになっている。そして、汗がすべて気化されれば、その人のそのときの状況に最適な放熱が行われる。放熱量に対応した汗の量はもちろん脳により一義的に計算されたものではないであろうが、体温が激しく上昇すれば、人体は大量の汗を出し続け、その結果、体温が下がれば、汗の量は少なくなり、体を冷やしすぎることはない。
汗の蒸発による体の冷却という観点から考えると、汗には、大別して、冷却に寄与する有効発汗と、冷却に寄与しない無効発汗とがある。さらに細かく分類すると、汗は、即効発汗、遅効発汗、無効発汗の三種類に分けることができる。即効発汗とは、身体から出ると同時に蒸発する汗である。この即効発汗は直ちに蒸発するので、身体はすぐに冷却される。遅効発汗とは、身体から液体の状態で出る汗である。この遅効発汗はすぐには蒸発しないので、汗で下着が濡れてしまい、身体が必要とするときにすぐに冷却効果は得られない。しかし、風が吹いたときなどに汗が遅れて蒸発し、結果的に身体が冷却される。また、無効発汗とは、身体から垂れ落ちる汗である。この場合には、蒸発による身体の冷却作用はない。無効発汗が出ているときは、身体は生理クーラーの作用が間に合わない状態にあり、体温が上昇し続け、身体は一定の状態を維持し続けることはできない。
生理クーラーが有効に機能すれば、作業量の変化等に応じた必要量の汗が即効発汗として身体を冷却し、下着に液体状の汗が残ることもなく、身体を常に快適な状態に保つことができる。しかしながら、温湿度、風の有無、作業量などの条件により汗をすべて気化することができなくなると、必要とする放熱量が得られなくなり、身体は気化されない無駄な液体状の汗(無効発汗)を出し続け、人は不快になるだけでなく、生理的にもダメージをこうむる。
図1は生理クーラーの原理を説明するための人体の概略ブロック図である。図1に示すように、人体には、作業等に伴い熱を発生する動力産熱部と、体温等を検知するセンサ部と、必要な放熱量を演算・制御する演算制御部(主に脳)と、冷媒である水(汗)を貯めておく貯水部と、演算制御部からの指示により冷媒である水(汗)を身体の表面に運ぶための汗腺と、汗腺からの汗を身体全体に薄く濡らす大面積の気化プレート(皮膚)とが備わっていると考えられる。ここで、人体には、汗の最大供給能力として、前述した最大労働時の産熱量を十分に放熱できる程度の能力がある。このように、人体は、理想的で完全な冷却システムを備えているといえる。
ところで、汗腺から出た汗が単に気化プレートである皮膚を覆っているだけでは、身体を冷却することはできない。汗を気化させることによってはじめて生理クーラーとしての機能が発揮される。汗を気化させるためには、後述するような空気が必要である。また、空気の流れがなければ、皮膚表面の空気は汗の気化によってすぐに飽和状態に達してしまい、汗はそれ以上気化することができない。したがって、連続的に汗を気化させるためには、皮膚近傍に空気の流れを作る必要がある。このような、皮膚の表面に空気の流れを人工的に作る手段としては、扇風機がある。しかしながら、扇風機には野外で使用することができないこと等、さまざまな問題点がある。
一方、本発明者は、身体の表面近傍に空気の流れを作るための手段として、冷却衣服を案出した(PCT/JP01/01360)。かかる冷却衣服は、衣服と下着又は体との間に空気を流通させるための流通路と、衣服に取り付けられた送風手段とを備える。この冷却衣服では、送風手段により外部の空気を流通路内に取り込んで流通させることにより、体温と外部の空気の温度との温度差により身体を冷却する。
この方式を発展させたものが本発明の空調衣服である。すなわち、本発明の空調衣服は、送風手段により服地と身体との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせ、服地と身体との間の空間において空気を身体の表面に沿って流通させることにより、気化プレートに相当する皮膚の表面における湿度勾配を大きくして、身体が必要とする放熱量に対応して供給される汗をすべて即効発汗として気化させるものであり、人体にもともと備えられている生理クーラーを有効に機能させるための補助装置である。
生理クーラーは、それが完全に機能すれば、人体にとって完全で理想的なクーラーであるということについては議論の余地がない。問題は、生理クーラーを完全に機能させるための補助装置、すなわち空調衣服が、どの程度、生理クーラーのパフォーマンスを上げられるかである。
外気温が低い場合や産熱量が少ない場合には、当然、生理クーラーは有効に働かない。そして、人体には、生理クーラーとは逆の作用をする機能、すなわち人体からの放熱を抑えるような機能はほとんど備わっておらず、せいぜい、生理的に身体表面の血流量を少なくすることが行われるくらいである。このため、このような場合、実際には、人は自分で衣服の調整をすることにより体温を調整する。すなわち、人は寒く感じれば衣服を重ね着したりする。これに対し、外気温が高い場合や産熱量が多い場合には、空調衣服を着用し、身体の表面近傍を十分な流量の空気によって包むことにより、生理クーラーが有効に働き、人が衣服を脱いだりしなくても、自動的に最適な放熱が行われる。このように、外気温が低い場合や産熱量が少ない場合は、衣服の調整をするなり、暖を取るなり、何らかのアクションをしなければならないのに対し、外気温が高い場合や産熱量が多い場合には、空調衣服を着用することにより身体を常に最適な状態に保つことができる。
したがって、本発明の空調衣服を用いて、生理クーラーが有効に機能する範囲を大幅に拡大することにより、暑さによるすべての問題、エアーコンディショナーによるエネルギー問題、環境問題、熱中症等の健康問題など、各種の問題を一挙に解決することができる。
次に、汗の気化熱により身体表面の温度を33℃に保つ場合における放熱量と外気の温湿度との関係について説明する。図2は身体の表面近傍に10リットル/秒の流量の空気を流した状況下で汗の気化熱により身体表面の温度を33℃に保つ場合における最大放熱可能量と外気の温湿度との関係を説明するための図である。ここで、図2において、縦軸は湿度(%)、横軸は温度(℃)を表す。また、図2では、最大放熱可能量が0カロリー/時、200キロカロリー/時、500キロカロリー/時である場合の温湿度条件を示している。図2から分かるように、例えば外気の温度が35℃、湿度が63%である場合、汗が十分に供給されれば、最大200キロカロリー/時の放熱を行うことができる。もちろん、空気の流量が倍になれば、最大放熱可能量も2倍になる。
図2における最大放熱可能量は、空気が汗を無駄なく気化させたときの理論値である。例えば扇風機を用いて人体に空気を流した場合には、その流した風のごく一部しか汗の蒸発には寄与せず、送風量に対して最大放熱可能量は大幅に小さくなる。また、扇風機を用いた場合、扇風機の使用態様に起因する風の性質にも大きな問題点がある。すなわち、扇風機は人体に対向して配置されるのが通常であるので、必然的に風が人体に対して略垂直に当たることになる。このため、汗を気化させるための送風量を最適化するのは非常に難しい。送風量が少なすぎれば汗を全部気化させることができなくなる。一方、送風量が多すぎれば、風の当たった皮膚の汗は完全に気化するが、汗の供給が間に合わなくなり、皮膚表面の温度が風の温度の影響を受けてしまう。例えば、40℃の風を皮膚に強く当てた場合、皮膚の温度は略40℃になり、冷却とは全く逆の効果になってしまう。したがって、汗を無駄なく気化するためには、身体の表面近傍において身体の表面に対して略平行な風(以下、これを「身体平行風」とも称する。)を流す必要がある。
次に、この身体平行風について説明する。図3は2枚の平行平板の間に空気を流したときに一の平板(プレート)からの距離に対する風速の分布を模式的に表した図である。図3に示すようにプレート表面では風速がゼロになることはよく知られている。いま、一方のプレートを気化プレート(皮膚)、もう一方のプレートを、身体平行風を形成するための案内プレートと考えると、図3に示すように、皮膚表面での空気の流れはなく、皮膚表面が風圧を受けることもない。また、二つのプレートの間では風速が大きいので、皮膚表面の温湿度勾配がとても大きくなる。このため、風路の長さに対して皮膚表面と案内プレートとの間隔が十分小さいと、身体平行風は汗の気化に無駄なく寄与することになる。
ここで、図2のA点で示した温度35℃、湿度30%の身体平行風を、身体の大部分を包むように流した場合を考察する。標準的体格の大人が安静にしているときは約100キロカロリー/時、5km/時で歩行しているときは約260キロカロリー/時の放熱が必要であるが、図2から、10リットル/秒の流量で空気を流せば、上記の量の放熱が可能であることが分かる。水(汗)の気化熱は常温で580カロリー/ccであるので、100キロカロリー/時を580カロリー/ccで割ることにより、安静時には172.4cc/時の量の汗が気化されることになる。また、5km/時での歩行時には、同様にして、448cc/時の量の汗が気化されることになる。このように、一定量の身体平行風を流しているにもかかわらず、必要な放熱量に応じた量の汗が出て、その汗がすべて気化されることにより自動的に最適な放熱を行うことができる。逆に、これ以上の量の汗が出ることもない。なぜならば、必要な放熱量に応じた量以上の汗が出て気化されると、体温が下がってしまうので、脳を中心とした制御機能が正常に動作している限り、このようなことは起こりえないからである。ここで注目すべき点は、10リットル/秒の流量の空気を流し続けても、放熱量を決めるのは、あくまで生理クーラーの制御機能であるという点である。このため、生理クーラーは、必要とする放熱量が少なければ発汗量も少なくなるように、必要とする放熱量が多ければ発汗量も多くなるように発汗量を自動的に制御する。空気の流量が関係するのは、その生理クーラーが有効に機能する範囲である。例えば、必要な放熱量が500キロカロリー/時であれば、図2から分かるように、外気の温度が35℃、湿度が30%の場合、その外気を身体平行風として10リットル/秒の流量で流しても、その放熱量に応じた量の汗をすべて気化することはできない。この場合には、身体平行風の流量を大きくすればよい。身体平行風の利点は、いくら流量を大きくしても、扇風機のように風が身体に略垂直に当たるという問題がなく、生理クーラーが有効に機能する範囲を容易に拡大することができるという点である。
このように生理クーラーはあらゆる面で理想的な人体放熱手段であるが、その生理クーラーには、汗を気化させるための手段が唯一欠けている。この欠けている手段を補うものが本発明の空調衣服である。言い換えれば、空調衣服は、身体平行風を発生する手段を有し、生理クーラーが有効に機能する範囲を拡大するための補助装置である。
図4は理想的な身体平行風を実現するための空調衣服を説明するための図である。理想的な身体平行風を実現するには、図4に示すように、身体表面の略全体を、身体平行風を案内するための案内シート(空気案内手段)で覆うようにすればよい。そして、案内シートと身体表面との間に一定の小さな間隔を作り、例えば頭上に取り付けた大型のファンにより空気の流れを発生し、案内シートと身体表面との間の空間において大量の身体平行風を流すようにする。しかしながら、図4に示すような空調衣服では、人体の放熱・汗の気化の観点からは理想的なものであっても、実生活を行う上では現実的ではない。このため、生理クーラーの機能を100%生かすことができなくとも、十分に性能を発揮させることができる実用的な空調衣服の実現が望まれている。
以下に、実用上、空調衣服に要求される条件を列記する。
1)身体全体の表面積に対する、身体平行風で包むことのできる身体部分の表面積の割合(空調面積率)が大きいこと(空調面積率は少なくとも10%であること)、
2)作業等の邪魔にならないような形状と重量を有すること、
3)屋外でも使用できるように小さな電池で長時間、空気を送風することができ、且つ十分な流量の空気を発生させることができること、
4)安価であること、
5)洗濯をするときに簡単に電気部品を着脱することができること、
6)その他、安全性はもちろんのこと、ファッション性を含め、通常の衣服と外観上の差が小さいこと、
等である。
1)身体全体の表面積に対する、身体平行風で包むことのできる身体部分の表面積の割合(空調面積率)が大きいこと(空調面積率は少なくとも10%であること)、
2)作業等の邪魔にならないような形状と重量を有すること、
3)屋外でも使用できるように小さな電池で長時間、空気を送風することができ、且つ十分な流量の空気を発生させることができること、
4)安価であること、
5)洗濯をするときに簡単に電気部品を着脱することができること、
6)その他、安全性はもちろんのこと、ファッション性を含め、通常の衣服と外観上の差が小さいこと、
等である。
いま、上記1)の条件、すなわち空調面積率について具体的に説明する。空調衣服を着用することにより着用者が快適に過ごすことができるようにするためには、当然、身体平行風で身体のできるだけ多くの部分を包み、かかる部分において人体の放熱や汗の気化を促進させるようにすればよい。現実的には、顔、手、足を除き、その他の身体部分を身体平行風で包むようにした空調衣服が考えられる。この空調衣服の空調面積率は約85%である。一方、空調衣服を着用する用途によっては、身体の一部についてだけ体温の上昇を防げばよい場合がある。具体的には、特に汗の出やすい胴体上部及び脇の下だけを身体平行風で包むようにした空調衣服が考えられる。この空調衣服の空調面積率は次のように算出される。平均的な大人の身体全体の表面積は約1.8m2である。胴体上部の長さを15cm、胸囲を80cmとすると、胴体上部の表面積は1200cm2であり、これに脇の下の面積を加えると、胴体上部及び脇の下の全表面積は約1400cm2である。したがって、この場合の空調面積率は約7.8%である。体型等の個人差を考慮すると、本発明の空調衣服の空調面積率は少なくても10%であることが望ましい。
具体的に、本発明の空調衣服は、身体の所定部位を覆うと共に、身体との間の空間において空気を身体の表面に沿って案内するための空気案内手段と、空気案内手段と身体との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を空気案内手段と身体との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、空気案内手段と身体との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、送風手段に電力を供給するための電源手段とを備えるものである。そして、送風手段が空気案内手段と身体との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗を蒸発させ、その蒸発の際に汗が周囲から奪う気化熱を利用して身体を冷却する。尚、空気案内手段としては、空気案内手段と身体との間の空間に取り込まれた空気の流量に対する空気案内手段全体から外部に漏れる空気の流量の割合が多くとも60%であるような空気透過性を有するものを用いることが望ましい。
ここで、空気案内手段と身体との間の空間内に流通させる空気の流量が少ないと、十分な冷却効果が得られなくなってしまう。実際、空調衣服を着用することにより十分な冷却効果を得るためには、送風手段は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させる必要がある。例えば、体重60kgの大人が空調衣服を着用する場合には、少なくとも0.6リットル/秒の流量で空気を流さなければならない。本発明者等が行った実験によれば、空気の流量を上記の最小流量よりも少ない流量とすると、風がある程度吹いている環境では、通常の衣服を着用した場合よりも不快に感じる着用者もいた。これは、空気案内手段の素材として空気透過性の良くないものを用いているのが主な原因である。これに対し、風のない蒸し暑い環境の場合には、空気の流量を0.6リットル/秒の流量で流すことにより、空調衣服を着用した全員が、通常の衣服を着用した場合に比べ快適であると感じた。しかも、空気の流量を上記の最小流量とした場合には、汗が下着に長時間残ってしまうのを防ぐ効果が得られた。そして、空気の流量をさらに大きくすれば、最大放熱可能量を大きくして、生理クーラーが有効に機能する範囲を拡大することができることが確認された。尚、外部の空気が温度33℃、湿度50%である場合、送風手段が、その外部の空気を利用して、着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させると、身体から生じた汗が周囲から奪う気化熱は着用者の体重1kg当たり少なくとも340カロリー/時である。
本発明の空調衣服では、送風手段として、着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものを用いている。このため、送風手段が空気案内手段と身体との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することができる。
また、本発明者は、形状や空気の流量等の異なる各種の空調衣服を案出している。これにより、ファッション性を重視した空調衣服、エアーコンディショナーを用いることなくオフィスワークを行うための空調衣服、暑さによる労働災害を防止するための空調衣服、屋外での作業を快適に行うための空調衣服等、使用目的に応じて最適な空調衣服を実現し、暑さに関する全ての問題を解決することができる。
尚、遅効発汗を伴う場合、すなわち発汗量に対して放熱量が間に合わない場合には、空調衣服を着用しても着用者の不快感はあまり改善されないことが実験的に確認されている。しかし、空調衣服を着用した場合は、着用しない場合に比べて放熱量が十分に大きければ、たとえ汗による不快感があっても、生理的なダメージは小さくなる。このため、遅効発汗を伴う場合であっても、空調衣服を着用することは有益である。
本発明の空調衣服を使用する場合、通常、空調衣服を身体の上に直接着用するが、空調衣服を下着の上に着用してもよい。ここで、「下着」とは、空調衣服の下に着用される衣類を意味する。但し、空調衣服の下に下着を着用した場合、例えば下着の通気性があまりよくないと、生理クーラーが有効に機能する範囲は小さくなることに注意する必要がある。また、空調衣服の下に下着を着用した場合、下着の存在によって身体平行風が身体の表面近傍を流れなくなってしまうと、空調衣服の機能が低下してしまう。これを避けるために、下着としては、小さめのものであって体にフィットするものを用いることが望ましい。尚、以下では、放熱量等を説明するに当たっては、下着を着用していないこと、すなわち、身体平行風が文字通り、空調衣服と身体との間を流れることを前提とする。
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明者は、着用者の使用目的等に応じて16種類の空調衣服を案出した。図5、図6、図7及び図8は16種類の空調衣服の仕様を説明するための図である。具体的に、かかる16種類の空調衣服の内容は、軽作業用空調衣服、中作業用空調衣服、雨天作業用空調衣服、ライン作業用空調衣服、オフィス用空調衣服、野外用空調衣服、防臭用空調衣服、幼児用空調衣服、重作業用空調衣服、つなぎ型空調衣服、中着用空調衣服、温度調整用空調衣服、Tシャツ型空調衣服、高機能型空調衣服、オフィス用改良型空調衣服、空調ベルト型空調衣服である。
また、図5、図6、図7及び図8では、空調衣服の仕様として19項目を挙げている。具体的には、「空調能力」、「流量」、「送風方式」、「スペーサ」、「ファン取付面」、「ファン数」、「ファン位置」、「ファン種類」、「ファン総有効面積」、「ファン径」、「電源種類」、「消費電力」、「空調面積率」、「袖」、「空気案内手段の種類」、「空気流通部」、「開閉手段」、「下部空気漏れ防止」、「ファン着脱方式」の各項目がある。
「空調能力」の欄には、空気案内手段と身体との間の空間に流通させた基準空気が1時間当たりに吸熱することができる熱量を仕事率に換算した概略値(W)が示される。ここで、「基準空気」とは、温度33℃、湿度50%の空気のことをいう。「流量」の欄には、送風手段が空気案内手段と身体との間に流通させる空気の流量(リットル/秒)が示される。「送風方式」の欄には、送風手段による送風方向の区別、すなわち、送風手段によって外部の空気を空気案内手段内に取り込む「吸気」方式、送風手段によって空気案内手段内の空気を外部に排気する「排気」方式のいずれかが示される。また、「スペーサ」の欄には、空気案内手段と身体との間にスペーサを用いるかどうか、スペーサを用いる場合にあってはそのスペーサの種類が示される。
「ファン取付面」の欄には、送風手段が空気案内手段の内面側、外面側のいずれに取り付けられるのかが示される。「ファン数」の欄には、空調衣服に取り付けられる送風手段の数量が示される。「ファン位置」の欄には、送風手段の取付け位置が示される。「ファン種類」の欄には、送風手段の種類、例えば側流ファンであるか、プロペラファンであるかが示される。「ファン総有効面積」の欄には、各送風手段における吸気又は排気のための開口部の面積をすべての送風手段について合計した面積の値(cm2)が示される。「ファン径」の欄には、送風手段の羽根車又はプロペラの直径(mm)が示される。
「電源種類」の欄には、電源手段の種類が示される。「消費電力」の欄には、各送風手段の消費電力をすべての送風手段について合計した値(W)が示される。「空調面積率」の欄には、身体全体の表面積に対する、送風手段によって発生された空気で包むことのできる身体部分の表面積の割合(%)が示される。
「袖」の欄には、空調衣服が半袖の服であるか、長袖の服であるか、あるいは袖なし(ノンスリーブ)の服であるか等が示される。「空気案内手段の種類」の欄には、空気案内手段の素材が示される。「空気流通部」の欄には、空気流通部の内容が示される。「開閉手段」の欄には、空調衣服の前側を開閉する手段の内容が示される。「下部空気漏れ防止」の欄には、空調衣服の下部から空気が漏れるのを防止する手段の内容が示される。また、「ファン着脱方式」の欄には、送風手段を空気案内手段に着脱する方式の内容が示される。
以下の各実施形態では、上記の16種類の空調衣服のそれぞれについて詳しく説明する。
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。図9Aは本発明の第一実施形態である空調衣服の概略正面図、図9Bはその空調衣服の概略背面図である。
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。図9Aは本発明の第一実施形態である空調衣服の概略正面図、図9Bはその空調衣服の概略背面図である。
第一実施形態の空調衣服1は、図9に示すように、服地部20と、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)、流量調整手段(不図示)とを備えるものである。かかる空調衣服1は、最も実用的な軽作業用衣服として使用される。ここで、この空調衣服1の主な仕様は、図5の表にまとめられている。
服地部20は、身体の所定部位を覆うものである。第一実施形態では、かかる服地部20を用いて、上半身を覆う半袖の軽作業用衣服を製作している。また、第一実施形態では、服地部20は、服地部20と身体又は下着との間の空間において、送風手段50により発生した空気を身体又は下着の表面に沿って案内するという役割をも果たす。すなわち、服地部20は、身体を覆う衣服としての役割と共に、空気案内手段としての役割をも果たす。
服地部20を空気案内手段として用いるためには、服地部20の素材として、身体平行風をスムーズに流すことができ、且つ空気が外部にあまり漏れないようなものを用いることが望ましい。この服地部20に用いるのに最適な素材の一つとして、ポリエステル100%の布が挙げられる。ここで、ポリエステル布は、空気透過性が非常に小さいという性質を有する。この性質により、ポリエステル布はウィンドブレーカーや冬用の衣服地として一般的に使用されている。また、ポリエステル布には、安価である、光沢がある、汚れにくい、しわになりにくい等の性質もある。これに対し、ポリエステル布は、空気透過性がよくないこと、汗を吸収しにくいこと等の理由から、一般に、夏用の衣服地としてはほとんど使用されていない。空調衣服1に用いる服地部20にとっては、空気透過性が小さいことは空気の漏れを防止する上で必要な条件である。また、空調衣服1を着用することにより汗は皮膚から直ちに気化するため(即効発汗)、服地部20として汗を吸収する素材を必ずしも用いる必要はない。したがって、ポリエステル布は、空調衣服1用の服地部20に要求される条件をすべて兼ね備えている。第一実施形態では、服地部20(空気案内手段)の素材としてポリエステル布を用いることにする。
尚、一般に、空調衣服1用の服地部20の素材としては、空気が実質的に透過しないような素材であれば、どのような素材を用いてもよい。例えば、ポリエステル布以外に、ナイロン布等のプラスチック繊維で作られた布や、高密度布を用いることができる。むろん使用目的によっては、綿などの天然繊維や、これらの混紡繊維を用いてもよい。
また、服地部20の素材としては、ポリエステルを80%以上含む混紡素材を用いるようにしてもよい。ポリエステルを80%以上含む混紡素材を用いるのは、素材に含まれるポリエステルの割合が80%よりも少ないと、上述したポリエステルの特徴が生かせなくなるからである。
服地部20の前部には開閉手段31が設けられている。この開閉手段31は、空調衣服1を着用する際にその前部を開閉する役割を果たすものである。また、開閉手段31としては、服地部20の前部を閉じたときに当該前部から空気が外部に漏れるのを防止することができるようなものを用いる必要がある。第一実施形態では、開閉手段31としてファスナーを用いている。ファスナーは簡単に開閉することができ、しかもファスナーを閉じたときにそのファスナー部分から外部へ空気がほとんど漏れることはない。
また、服地部20の裾部には、下部空気漏れ防止手段32が設けられている。この下部空気漏れ防止手段32は、服地部20の下部(裾部)を身体、下着又は衣服に密着させることにより当該裾部から空気が外部に漏れるのを防止するためのものである。第一実施形態では、下部空気漏れ防止手段32として、伸縮性素材、例えば冬期用のジャンパー等に用いられているゴムベルトを用いている。かかるゴムベルトは服地部20の裾部に縫い込まれている。このため、裾部がズボン等の衣服に密着して裾部から外部に空気が漏れることはない。尚、下部空気漏れ防止手段32として、ゴムベルトの他に、例えば紐、ベルト等を用いることができる。下部空気漏れ防止手段32として紐を用いる場合には、その紐は服地部20の裾部にその裾部の周りに沿って動かすことができるように取り付けられる。そして、その紐で服地部20の裾部を締めることにより、裾部をズボン等に密着させる。
空気流通部40は、服地部20と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出す空気流出部又は外部の空気を服地部20と身体又は下着との間の空間内に取り入れる空気流入部として利用される。空気流通部40を空気流出部として利用するか、空気流入部として利用するかは、送風手段50の送風方式によって決められる。すなわち、送風手段50が外部の空気を服地部20内に取り込むように動作する場合には、空気流通部40は空気流出部として利用され、一方、送風手段50が服地部20内の空気を外部に排出するように動作する場合には、空気流通部40は空気流入部として利用される。第一実施形態では、空気流通部40を、空気流出部として利用する。
また、第一実施形態では、空調衣服1に三つの空気流通部40,40,40を設けている。具体的には、衣服としての機能上、服地部20の所定の端部に形成される開口部、すなわち、襟周り部分の開口部と、左右の袖口部分の開口部とが空気流通部40,40,40である。空調衣服1を着用してファスナーを閉じると、送風手段50を除き、空気流通部40,40,40以外は、服地部20内の空気が外部に流出するところはなくなる。尚、以下では、襟周り部分の開口部及び左右の袖口部分の開口部を、「上部開口部」とも称することにする。
服地部20の背中側の下部であって脇腹に近い左右両側には、それぞれ孔部21,21が形成されている(図12A参照)。各孔部21に対応する服地部20の位置には服地部20の内面側から送風手段50が取り付けられている。送風手段50は、服地部20と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるものである。二つの送風手段50,50は、外部の空気を服地部20内に取り込む方向に回転する。すなわち、送風手段50,50の送風方式としては吸気方式を採用している。送風手段50,50に電力が供給されると、送風手段50,50は外部の空気を服地部20内に取り込み、その取り込まれた空気は、服地部20の存在により服地部20と身体又は下着との間の空間内を身体平行風として流通する。そして、身体平行風は空気流通部40,40,40に達すると、そこから外部に排出される。
ここで、上記の送風手段50,50の取付位置、すなわち服地部20の背中側の下部であって脇腹に近い位置を「標準位置」と称することにする。この標準位置は送風手段50,50の取付位置として、最も好ましい位置である。送風手段50,50を標準位置に取り付けると、着用者が椅子にもたれかかったときでも送風手段50,50が邪魔になることはなく、しかも、作業時に腕を送風手段50,50にぶつけてしまうこともないからである。また、前から見たときに、送風手段50,50が見えず、空調衣服1の見栄えもよい。更に、標準位置が服地部20の下部に位置するので、空気流通部40,40,40が服地部20の上部に形成される場合には、服地部20で覆われる身体部分の略全体に身体平行風を流通させることができる。すなわち、この標準位置は、身体全体の表面積に対する、身体平行風で包まれる身体部分の表面積の割合(空調面積率)を比較的大きくすることが可能な位置である。尚、第一実施形態の空調衣服1では、空調面積率は約35%である。
次に、送風手段50について説明する。図10Aは第一実施形態の空調衣服1に用いられる送風手段50の概略断面図、図10Bはその送風手段50に用いられる羽根車の概略平面図である。図11Aはその送風手段50に用いられる内部ファンガードの概略側面図、図11Bはその送風手段50に用いられる内部ファンガードの概略平面図、図11Cはその送風手段50に用いられる外部ファンガードの概略平面図である。また、図12Aは服地部20に形成された孔部21を説明するための図、図12Bはその服地部20に送風手段50を取り付けたときの様子を説明するための図である。
送風手段50は、図10に示すように、モータ51と、羽根車52と、内部ファンガード53と、外部ファンガード54と、マジックテープ55とを備える。内部ファンガード53と外部ファンガード54は、モータ51及び羽根車52を収納するものである。羽根車52は、図10Bに示すように、R状の複数の羽根52aと、円板52bと、モータ軸圧入用孔52cとを有するものである。複数の羽根52aは、円板52bの周辺に取り付けられている。
内部ファンガード53は、図11A,Bに示すように、円形状の底板53aと、多数のファンガード柱53bと、円環形状のフランジ53cとを有する。底板53aは、モータ固定板としての役割を果たす。ファンガード柱53bは、底板53aに略垂直に取り付けられると共に、底板53aの周囲部に沿って所定の間隔で取り付けられる。これらのファンガード柱53bは、指が内部ファンガード53内に入るのを防ぐ役割を果たす。フランジ53cは、底板53aと反対側に位置するファンガード柱53bの端部に取り付けられる。また、外部ファンガード54は、図11Cに示すように、半径の異なる複数のガードリング54aと、複数のガードリング54aを固定するフランジ54bとを有する。ここで、フランジ54bのうち最も外側に位置する円環状部には、図10Aに示すように、マジックテープ55が取り付けられている。
送風手段50を組み立てるには、まず、モータ51を、内部ファンガード53の底板53aの中央に取り付ける。そして、モータ51の回転軸を羽根車52のモータ軸圧入用孔52cに入れるようにして、羽根車52を内部ファンガード53に収納する。その後、外部ファンガード54を内部ファンガード53の上に固定することにより、送風手段50が完成する。
図10Bに示す矢印は、羽根車52の回転方向を表している。すなわち、羽根車52は、回転方向に対して羽根52aが後ろ向きに曲がった後ろ向き羽根車になっている。このため、かかる羽根車52が当該矢印の方向に回転すると、羽根車52の軸方向から空気を吸入し、羽根車52の外周方向へ空気を放射状に送り出すことができる。このように羽根車の軸方向から吸入した空気を羽根車の外周方向へ放射状に送り出す送風手段を、以下「側流ファン」とも称する。
ここで、羽根車52の直径(ファン径)は約5cmである。また、各送風手段50における吸気又は排気のための開口部の面積を二つの送風手段50,50について合計した面積の値(ファン総有効面積)は、約30cm2である。
第一実施形態で実際に使用する送風手段50としては、服地部20と身体又は下着との間に発生させることができる空気の流量が6リットル/秒であるものを使用している。ここで、送風手段50が6リットル/秒の流量の空気を服地部20内に送出すると、その空気の圧力によって、服地部20と身体との間に身体平行風を流すための空間を自動的に形成することができる。かかる空間を自動的に形成するためには、服地部20の種類(特に硬さ、重さ)や形状にもよるが、一般には、送風手段50が少なくとも2リットル/秒の流量の空気を送り出すことが必要である。また、二つの送風手段50,50がそれぞれ6リットル/秒の流量の空気を送出する場合、二つの送風手段50,50の消費電力は約1Wである。
送風手段50は服地部20に着脱自在に取り付けられている。具体的には、図12Aに示すように、服地部20の内面であって孔部21の周囲部には、マジックテープ22が取り付けられている。このマジックテープ22をA面のものとすると、B面のマジックテープは送風手段50のフランジ54bに取り付けられたマジックテープ55である。服地部20の内面側において、送風手段50の外部ファンガード54を服地部20の孔部21と対向するように送風手段50を配置し、二つのマジックテープ22,55を貼り付けることにより、図12Bに示すように、送風手段50が服地部20の孔部21に対応する位置に取り付けられる。このように誰でも間単に送風手段50を容易に着脱することができるので、空調衣服1を容易に洗濯できるだけでなく、送風手段50が故障したときに送風手段50だけを容易に交換することができる。
尚、送風手段50を服地部20に着脱する方法としては、マジックテープ22,55を用いる方法に限定されるものではなく、送風手段50の着脱が簡単で、しかもその取付け部分において空気漏れが少ない方法であれば、どのような方法を用いてもよい。例えば、シート状マグネットを用いて送風手段50を着脱するようにしてもよい。
電源ポケット63は、図9Aに示すように、電源手段61を収納するものであり、服地部20の内面側であって服地部20の前側左下部に取り付けられている。電源手段61は、送風手段50,50に電力を供給するためのものである。ここでは、電源手段61として、経済性の観点から二次電池を用いている。電源手段61と二つの送風手段50,50とは電源ケーブル62により接続されている。また、電源手段61と二つの送風手段50,50との間には、電源スイッチ(不図示)が設けられている。この電源スイッチは、電源手段61から二つの送風手段50,50に供給する電力をオン・オフするものである。
空調衣服1には、送風手段50,50が発生させる空気の流量を調整する流量調整手段(不図示)が設けられている。ここでは、流量調整手段として例えばボリュームを用いている。ボリュームを設けたことにより、服地部20と身体との間の空間に必要以上の流量の空気を流さないようすることができるので、電源手段61を長持ちさせることができる。
第一実施形態の空調衣服1では、電源手段61と送風手段50,50との間に設けた電源スイッチをオンにすると、二つの送風手段50,50がそれぞれ外部の空気を服地部20内に取り込む。このとき、その取り込まれた空気の圧力によって、服地部20と身体又は下着との間に身体平行風を流すための空間が自動的に形成される。これにより、服地部20と身体又は下着との間の空間において、上半身を包み込むような身体平行風の流れが生じる。そして、その身体平行風は空気流通部40,40,40に達すると、そこから外部に排出される。ここで、図9に示した矢印は、外部から空気を取り込む方向及び外部へ空気を排出する方向を示している。
このように、空調衣服1は身体平行風を服地部20と身体又は下着との間の空間に流通させることができるので、生理クーラーが有効に機能する範囲を拡大することができる。このとき、生理クーラーの最大能力は外部の空気の温湿度によって決まる。例えば図2に示すA点の環境(温度35℃、湿度30%)では、空気の流量が10リットル/秒のとき、約450キロカロリー/時までの放熱を行うことができる。空調衣服1では、空気の流量が6リットル/秒であるので、270キロカロリー/時までの放熱を行うことができる。したがって、かかる環境下において、通常の体格の大人が第一実施形態の空調衣服1を着用した場合、5km/時で歩行運動を行っても液体状の発汗を伴うことはなく、快適に歩行することができる。但し、上記の放熱量の値の算出にあたっては、体温と身体平行風の温度との温度差による熱のやり取り、呼吸による冷却、足や頭など身体平行風に包まれていない皮膚からの汗の気化による冷却効果を考慮していない。
ここで、服地部20と空気案内手段との関係を述べる。第一実施形態では、服地部20の裾部から空気が流出することはないので、実際、服地部20のうち送風手段60より下の部分にはあまり身体平行風が流れないと考えられる。このため、厳密には、服地部20全体が空気案内手段としての役割を果たすのではなく、服地部20のうち送風手段60より上の部分だけが空気案内手段としての役割を果たすといえる。しかし、送風手段60を標準位置に設けた場合には、服地部20の大部分が身体平行風を導く役割を果たすので、服地部20全体が空気案内手段であると考えることができる。
また、外気の圧力と空気案内手段内の圧力との圧力差は、送風手段50に近いほど大きい。そして、送風手段50の送風方式が吸気方式であって、送風手段50によって発生される空気の流量が大きい場合には、送風手段50の近傍における空気案内手段が上記の圧力差によって膨らみ、送風手段50の近傍には、いわゆる「空気溜め」が形成される。ところで、上述したように、空気案内手段から空気が外部に漏れると、空調効率が下がってしまうので、空気案内手段としては空気漏れの少ない素材を用いている。実用上、空気案内手段は、送風手段50,50によって空気案内手段と身体又は下着との間の空間に取り込まれた空気の流量に対する空気案内手段全体から外部に漏れる空気の流量の割合が多くとも60%であるような空気透過性を有することが望ましい。
次に、第一実施形態の空調衣服1の空調能力について詳しく説明する。ここでは、外部の空気が基準空気(温度33℃、湿度50%)であるとする。そして、身体の表面には十分な汗があり、基準空気を身体平行風として服地部20と身体との間に流通させることにより汗を蒸発させ、その汗の気化熱で体温を冷却した後、空気流通部50から排出される空気が温度33℃、湿度100%になったものとする。このような場合において、以下に示すように、エネルギー収支を計算することにより空調能力を求める。尚、基準空気の温度を33℃としたのは、身体の表面温度が約33℃であるので、エネルギー収支の計算において乾熱による効果を無視できるからである。
さて、温度33℃の空気の飽和水蒸気量は約32.5g/m3である。このため、その空気の湿度が50%であるときは、その空気中に約16.25g/m3の水が含まれており、その空気には約16.25g/m3の水を気化させる余裕が残っている。水の気化熱は約580キロカロリー/gであるので、基準空気1m3の気化可能カロリーは、16.25(g/m3)×580(キロカロリー/g)≒9.43(キロカロリー/m3)となる。第一実施形態の軽作業用空調衣服の場合、身体平行風の流量は約6リットル/秒であるので、1時間に流通する身体平行風の体積は、0.006(m3/秒)×3600(秒)=21.6(m3)である。したがって、基準空気を身体平行風として1時間流通させたときの気化可能カロリーは、9.43(キロカロリー/m3)×21.6(m3)≒203.7(キロカロリー)となり、これは約236.3Wに相当する。ここで、上述したように、この値は乾熱による効果を考慮せずに求めたものである。逆の言い方をすると、乾熱による効果がゼロになるように、身体の表面温度との温度差のない33℃を基準空気の温度としたのである。このように、第一実施形態の空調衣服1の空調能力の理論値は、236.3Wであるが、空気の蒸発寄与率(汗の供給が十分に行われているとき、流通させた空気のうち、汗の蒸発に寄与する空気の割合である。これは空気の流れが体に近いほど向上する。)を考慮すると、大体200W程度であると考えられる。
第一実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が6リットル/秒であるので、第一実施形態の空調衣服は、着用者が軽作業を行う場合に用いるのに好適である。
また、第一実施形態の空調衣服では、着用者が流量調整手段を用いて送風手段が発生させる空気の流量を調整することができるので、周囲温度があまり高くないときには、空気の流量を下げることにより、ファンによるノイズを小さくしたり、消費電力を小さくしたりすることができる。
また、服地部の空気透過性が小さいことを逆に利用すると、第一実施形態の空調衣服を、ウィンドブレーカーのように外気が服地部内に入ることを防ぐ目的で使用することができる。特に、一日の温度や風の変化が激しい場合には、空調衣服をこのような目的で使用することは有効である。具体的には、気温が低く、風が強いときは、送風手段から空気を送風せずに、空調衣服をウィンドブレーカーとして使用し、その後、気温が高くなったときに、送風手段から空気を送風して空調衣服をその本来の目的で使用する。これにより、着用者は、温度等の変化に応じて着替えることなく、快適に過ごすことができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について図面を参照して説明する。図13Aは本発明の第二実施形態である空調衣服の概略正面図、図13Bはその空調衣服の概略背面図、図14Aはその空調衣服に用いられる集積ベルトの概略平面図、図14Bはその集積ベルトを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。また、図15Aはその空調衣服に用いられる局所スペーサの概略平面図、図15Bはその局所スペーサの概略側面図、図15Cはその局所スペーサを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。尚、第二実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第二実施形態について図面を参照して説明する。図13Aは本発明の第二実施形態である空調衣服の概略正面図、図13Bはその空調衣服の概略背面図、図14Aはその空調衣服に用いられる集積ベルトの概略平面図、図14Bはその集積ベルトを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。また、図15Aはその空調衣服に用いられる局所スペーサの概略平面図、図15Bはその局所スペーサの概略側面図、図15Cはその局所スペーサを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。尚、第二実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第二実施形態の空調衣服2は、図13に示すように、服地部20と、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、集積ベルト64と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服2は、主に、中程度の作業に用いる作業服(中作業用衣服)として使用される。ここで、この空調衣服2の主な仕様は、図5の表にまとめられている。
第二実施形態の空調衣服2が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、空調能力が300Wである点、空調衣服2が長袖のものである点、集積ベルト64を用いて送風手段50,50等を服地部20に着脱する点、服地部20の肩に対応する部分に局所スペーサ70,70を設けた点である。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同じである。
次に、第二実施形態の空調衣服2の特徴点について詳しく説明する。
まず、空調衣服2の空調能力を300Wに強化したことに伴い、送風手段50,50として、9リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約1.5Wである。このため、空調衣服2を着用することにより、第一実施形態の空調衣服1よりも高い冷却効果が得られる。尚、送風手段50,50としては、ファン径が60mmであるものを用いている。また、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は45cm2である。
まず、空調衣服2の空調能力を300Wに強化したことに伴い、送風手段50,50として、9リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約1.5Wである。このため、空調衣服2を着用することにより、第一実施形態の空調衣服1よりも高い冷却効果が得られる。尚、送風手段50,50としては、ファン径が60mmであるものを用いている。また、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は45cm2である。
また、空調衣服2が長袖のものであるので、その空調面積率は、第一実施形態のものよりも少し大きい。具体的に、空調衣服2の空調面積率は約40%である。この空調衣服2では、腕の部分をも冷却することができる。
集積ベルト64は、二つの送風手段50,50、電源手段61、電源ポケット63、電源スイッチ等を取り付けるための帯状部材であって、図14Aに示すように、帯状のベースシート64aと、ベースシート64aに形成された二つの孔部64b,64bと、複数のマジックテープ64cとを有する。ベースシート64aとしては、例えばビニールシート等が用いられる。各孔部64bは、送風手段50を挿入して取り付けるためのものである。二つの孔部64b,64bの間隔は、服地部20に設けられた二つの孔部21,21の間隔と同じである。また、ベースシート64aには電源ポケット63が取り付けられている。電源手段61はこの電源ポケット63に収納される。そして、電源手段61と二つの送風手段50,50とは電源ケーブル62により接続されている。ここで、電源ケーブル62はベースシート64aに固定されている。マジックテープ64cは、例えばベースシート64aの周端部における所定箇所に取り付けられる。ここで、かかるマジックテープ64cをA面のものであるとすると、図14Bに示すように、B面のマジックテープ23は服地部20の内面の所定位置に取り付けられている。
集積ベルト64は服地部20の内面側であって所定の位置に着脱自在に取り付けられる。具体的に、集積ベルト64を服地部20に取り付ける場合、まず、服地部20の内面側において、送風手段50の外部ファンガード54が服地部20の孔部21と対向するようにして集積ベルト64を配置し、送風手段50のマジックテープ55と服地部20の孔部21の周辺に取り付けられたマジックテープ22とを貼り付ける。これにより、二つの送風手段50,50はそれぞれ服地部20の孔部21,21に対応する位置に取り付けられる。その後、集積ベルト64のマジックテープ64cを、それに対応する服地部20の所定位置に取り付けられたマジックテープ23に貼り付けることにより、集積ベルト64を固定する。送風手段50,50を取り外す場合には、集積ベルト64を服地部20から剥がすだけでよい。したがって、空調衣服2を洗濯する場合には、誰でも簡単に集積ベルト64を着脱することができる。
尚、ベースシート64aとしてビニールシートを用いているので、ベースシート64aは汚れにくく、たとえベースシート64aが汚れてしまった場合でも汚れを容易に拭き取ることができる。
局所スペーサ70は、服地部20と身体との間に空気を流通させるための空間を局所的に確保するものである。第二実施形態では、かかる局所スペーサ70を、服地部20の内面側であって両肩に対応する部分に設けている。例えば空調衣服2が重いと、服地部20の肩に対応する部分には、身体平行風の流通用の空間が自動的に生成されないことがある。このため、第二実施形態では、局所スペーサ70を用いて、服地部20の肩に対応する部分に身体平行風の流通用の空間を確実に形成することにしている。
局所スペーサ70は、図15A,Bに示すように、円形状部材71と、その円形状部材71の中央部に形成された凸部72とを有する。この局所スペーサ70の材質としては、例えばフェルトが用いられる。局所スペーサ70を服地部20に取り付ける場合には、まず、図15Cに示すように、服地部20の内面側において、局所スペーサ70の円形状部材71を服地部20の肩に対応する部分と対向するように局所スペーサ70を配置する。その後、局所スペーサ70の円形状部材71の端部を服地部20に縫い付けることにより、局所スペーサ70が服地部20に取り付けられる。
第二実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が9リットル/秒であるので、第二実施形態の空調衣服は、着用者が中作業を行う場合に用いるのに好適である。
尚、局所スペーサは、上記の構造のものに限定されるものではなく、服地部と身体又は下着との間に身体平行風流通用の空間を確実に形成できる構造のものならば、どのようなものでもよい。また、局所スペーサの取付け場所も肩に限られず、必要に応じ適所に局所スペーサを取り付けることができる。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について図面を参照して説明する。図16Aは本発明の第三実施形態である空調衣服の概略正面図、図16Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第三実施形態において、第一及び第二の実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第三実施形態について図面を参照して説明する。図16Aは本発明の第三実施形態である空調衣服の概略正面図、図16Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第三実施形態において、第一及び第二の実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第三実施形態の空調衣服3は、図16に示すように、服地部20aと、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。ここで、服地部20aは空気案内手段としての役割を果たす。かかる空調衣服3は、主に、雨天時に屋外での作業に用いる作業服(雨天用作業服)として使用される。ここで、この空調衣服3の主な仕様は、図5の表にまとめられている。
第三実施形態の空調衣服3が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、空調能力が500Wである点、雨に対する種々の対策を施した点、服地部20aの肩に対応する部分に局所スペーサ70,70を設けた点である。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同じである。
次に、第三実施形態の空調衣服3の特徴点について詳しく説明する。
まず、空調衣服3の空調能力を500Wに強化したことに伴い、送風手段50,50として、14リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約3Wである。空調能力を500Wにまで高めたのは、雨天時には湿度が高く、空調衣服3内に取り込む空気の質が悪いためである。すなわち、前述したように、図5における空調能力の表記は温度33℃、湿度50%のもとでの値であるので、湿度が極端に高い等、服地部20a内に取り込む空気の質が悪い場合、実際の空調能力は、図5に表記された空調能力を下回るからである。空調衣服3を着用することにより、空気の質が悪くても多くの空気を服地部20aと身体との間の空間に流すことができるので、雨天時であっても十分な冷却効果が得られる。尚、送風手段50,50としては、ファン径が70mmであるものを用いている。また、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は62cm2である。
まず、空調衣服3の空調能力を500Wに強化したことに伴い、送風手段50,50として、14リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約3Wである。空調能力を500Wにまで高めたのは、雨天時には湿度が高く、空調衣服3内に取り込む空気の質が悪いためである。すなわち、前述したように、図5における空調能力の表記は温度33℃、湿度50%のもとでの値であるので、湿度が極端に高い等、服地部20a内に取り込む空気の質が悪い場合、実際の空調能力は、図5に表記された空調能力を下回るからである。空調衣服3を着用することにより、空気の質が悪くても多くの空気を服地部20aと身体との間の空間に流すことができるので、雨天時であっても十分な冷却効果が得られる。尚、送風手段50,50としては、ファン径が70mmであるものを用いている。また、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は62cm2である。
第三実施形態の空調衣服3には雨に対する種々の対策が施されている。まず、服地部20aを、上半身を覆うと共に顔を除く頭部を覆うような形状に構成している。具体的には、服地部20aの腕部を長袖の形状にすると共に、服地部20aにフード25を設けている。フード25を設けたことにより、作業時に頭部が雨で濡れないようにすることができると共に、生理クーラーが有効に機能する範囲を頭部まで広げることができる。この場合、フード25部分(襟周り部分)の開口部及び左右の袖口部分の開口部が空気流通部40,40,40となる。また、服地部20aにフード25を設けたことにより、空調衣服3の空調面積率は第一実施形態のものよりも大きく、約60%である。
服地部20aの素材としては、雨水を吸収しない素材、例えばビニールシート等のプラスチックシートが用いられている。プラスチックシートの他には、ゴムシートや、防水加工が施された布等を用いることができる。このように、服地部20aは汚れにくくなっている。
また、送風手段50,50には耐水加工が施されている。かかる送風手段50,50は服地部20aに固定されており、送風手段50,50を服地部20aから取り外すことはできない。
第三実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が14リットル/秒であるので、第三実施形態の空調衣服は、着用者が雨天時に屋外での作業を行う場合に用いるのに好適である。実際、第三実施形態の空調衣服には、雨に対するさまざまな対策が施されており、かかる空調衣服を雨天時に使用した場合、身体が蒸れることはなく、着用者は快適に作業を行うことができる。しかも、空調衣服自体が汚れにくくなっており、たとえ汚れたときにでも汚れを容易に落とすことができる。
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について図面を参照して説明する。図17Aは本発明の第四実施形態である空調衣服の概略正面図、図17Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第四実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第四実施形態について図面を参照して説明する。図17Aは本発明の第四実施形態である空調衣服の概略正面図、図17Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第四実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第四実施形態の空調衣服4は、図17に示すように、服地部20と、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源ケーブル62と、集積ベルト64と、DCアダプタ(DC変換手段)65と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服4は、主に、製造ラインでの作業に用いる作業服(ライン作業用衣服)として使用される。ここで、製造ラインでは、作業者は座った状態で製造作業を行う。尚、この空調衣服4の主な仕様は、図5の表にまとめられている。
第四実施形態の空調衣服4が第二実施形態の空調衣服2と異なる主な点は、商用電源から送風手段50,50に電力を供給する点である。すなわち、電源手段として商用電源が用いられる。このため、集積ベルト64には、送風手段50,50だけが取り付けられており、二次電池は取り付けられていない。また、送風手段50,50として、9リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。その他の点については、上記の第二実施形態のものと同様である。
次に、第四実施形態の空調衣服4の特徴点について詳しく説明する。
第四実施形態では、商用電源から二つの送風手段50,50に電力を供給する。このために、DCアダプタ65を用いて、商用電源からの交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を電源ケーブル62を介して二つの送風手段50,50に供給している。これにより、空調衣服4を着用して作業する時間が長くなっても、第二実施形態のように電池を電源とする場合と異なり、消費電力をあまり気にする必要がないので、着用者は作業に集中して従事することができる。
第四実施形態では、商用電源から二つの送風手段50,50に電力を供給する。このために、DCアダプタ65を用いて、商用電源からの交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を電源ケーブル62を介して二つの送風手段50,50に供給している。これにより、空調衣服4を着用して作業する時間が長くなっても、第二実施形態のように電池を電源とする場合と異なり、消費電力をあまり気にする必要がないので、着用者は作業に集中して従事することができる。
また、第四実施形態では、送風手段50の消費電力をあまり気にする必要がないので、送風手段50としてファン径の小さなものを用いることにし、送風手段50を高速で回転させることにしている。ファン径の小さな送風手段50を用いるのは、着用者が椅子の背もたれにもたれかかっても、送風手段50が身体に当たらないようにするためである。実際、第四実施形態では、送風手段50,50として、ファン径が40mmであるものを用いている。そして、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は20cm2である。また、二つの送風手段50,50の消費電力は約20Wである。
尚、着用者は、椅子から離れるときに、DCアダプタ65と送風手段50,50とを繋ぐ電源ケーブル62を外さなければならないので、椅子から離れている間に空調衣服4による冷却効果が得られないという問題がある。この問題を解決するには、例えば、集積ベルト64に小さな容量の二次電池を取り付けておくようにすればよい。DCアダプタ65と送風手段50,50とを繋ぐ電源ケーブル62を外したときには、その二次電池から送風手段50,50に電力を供給することにより、短時間であれば商用電源からの電力供給なしで、送風手段50,50を駆動することができる。
第四実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が9リットル/秒であり、しかもDCアダプタを用いて商用電源から送風手段に電力を供給するので、第四実施形態の空調衣服は、着用者が座った状態で中作業を行う場合に用いるのに好適である。
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態について図面を参照して説明する。図18Aは本発明の第五実施形態である空調衣服の概略正面図、図18Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第五実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第五実施形態について図面を参照して説明する。図18Aは本発明の第五実施形態である空調衣服の概略正面図、図18Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第五実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第五実施形態の空調衣服5は、図18に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、耐圧スペーサ80とを備えるものである。かかる空調衣服5は、主に、オフィスワーク用のユニフォーム(オフィス用衣服)として使用される。ここで、この空調衣服5の主な仕様は、図6の表にまとめられている。
第五実施形態の空調衣服5が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、服地部200の上部に空気透過性の高い布を用いた点、服地部200の下部を着用者の臀部及び下腹部を覆うことができるように長めに形成した点、開閉手段31aとしてボタンを用いた点、服地部200に耐圧スペーサ80を設けた点である。また、送風手段50,50として、6リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。更に、この空調衣服5の空調面積率は約40%である。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同様である。
次に、第五実施形態の空調衣服5の特徴点について詳しく説明する。
第五実施形態では、服地部200を、腕部を除く上部と、その上部以外の部分(腕部、下部)とに区分し、それら各部に異なる素材を用いている。すなわち、服地部200の上部には空気透過性の高い布を用い、服地部200の腕部及び下部にはポリエステル布等、空気透過性の低い布を用いている。第五実施形態では、服地部200のうち空気透過性の低い布を用いて形成された部分(腕部及び下部)だけが空気案内手段としての役割を果たす。また、第一実施形態と同様に上部開口部が空気流通部40,40,40となるが、これに加えて、服地部200のうち空気透過性の高い布を用いて形成された部分(上部)も空気流通部40aとなる。この空気流通部40aは、上部開口部による空気の流通を補助する役割を果たす。例えば、ネクタイ等を着用すると、上部開口部のうち襟周り部分の開口部からは空気が流通することができなくなってしまう。このようなときには、空気流通部40aが襟周り部分の開口部の役割を代行することになる。
第五実施形態では、服地部200を、腕部を除く上部と、その上部以外の部分(腕部、下部)とに区分し、それら各部に異なる素材を用いている。すなわち、服地部200の上部には空気透過性の高い布を用い、服地部200の腕部及び下部にはポリエステル布等、空気透過性の低い布を用いている。第五実施形態では、服地部200のうち空気透過性の低い布を用いて形成された部分(腕部及び下部)だけが空気案内手段としての役割を果たす。また、第一実施形態と同様に上部開口部が空気流通部40,40,40となるが、これに加えて、服地部200のうち空気透過性の高い布を用いて形成された部分(上部)も空気流通部40aとなる。この空気流通部40aは、上部開口部による空気の流通を補助する役割を果たす。例えば、ネクタイ等を着用すると、上部開口部のうち襟周り部分の開口部からは空気が流通することができなくなってしまう。このようなときには、空気流通部40aが襟周り部分の開口部の役割を代行することになる。
このような服地部200を作製するには、上部と腕部及び下部とにそれぞれ異なる素材を用いて縫製を行ったり、服地部200全体を空気透過性の高い布で作製した後に服地部200の腕部及び下部に空気透過性の低い布を縫い付けたりするようにすればよい。しかし、これでは、縫い目が見えるため、空調衣服5の外観を損ねてしまうことがある。この問題を解決する一つの方法としては、例えば、まず、服地部200全体を空気透過性の高い布で作製し、その後、服地部200の腕部及び下部にその内側から空気透過性の低いシートをラミネートする方法が考えられる。この場合、服地部200のうち、その内側に空気透過性の低いシート状部材がラミネートされた部分が空気案内手段となり、そのシート状部材がラミネートされていない部分が空気流通部40aとなる。
また、服地部200の下部は、一般のワイシャツ等と同様に、着用者の臀部及び下腹部を覆うことができるように長めに形成されている。ここで、服地部200の裾部には、ゴムベルトを設ける等の加工を何ら施していない。第五実施形態では、空調衣服5を着用するときに、服地部200のうち図18においてXで示す部分より下の部分をズボン等の中に入れることにより、服地部200の裾部から空気が外部に漏れるのを防止する。
第五実施形態では、開閉手段31aとして、ワイシャツ等に使用されるボタンを用いている。ところで、ボタンを掛けると、ボタンが取り付けられている側の服地部200の端部が内側に、ボタン用の孔が形成されている側の服地部200の端部が外側に位置し、服地部200の重なり合う部分ができる。このとき、その重なり合う部分の幅が、一般のワイシャツにおける重なり合う部分の幅と同程度であるとすると、送風手段50から送出された身体平行風の大部分がその重なり合う部分から外部に漏れてしまい、オフィス用空調衣服の空調能力が著しく低下してしまう。これを改善するためには、例えばボタンの数を増やし、ボタンの間隔を狭くすることにより、重なり合う部分に生じる隙間を小さくする方法が考えられる。しかし、この方法では、ボタンの数が増えるため、空調衣服5を着用したときに外観上の違和感が生じ、またボタンを掛けたり外したりするのに多くの時間を要してしまうという別の問題が生じてしまう。このため、あまり実用的な方法とはいえない。そこで、第五実施形態では、ボタンが取り付けられている側の服地部200の端部に、延長部201を設けている。すなわち、ボタンが取り付けられている側の服地部200の端部を延長することにより、ボタンを掛けたときに生じる服地部200の重なり合う部分の面積を大きくしている。これにより、空調衣服5の外観等を損なうことなく、当該重なり合う部分から空気が外部に漏れるのを十分改善することができる。尚、この場合であっても、当該重なり合う部分から空気漏れが多少発生するが、空調衣服5をオフィス用衣服として使用するのであれば、当該空調衣服5は実用上十分な空調能力を有する。
尚、当然のことであるが、空調衣服5の使用目的によっては、ボタンが取り付けられている側の服地部200の端部に延長部201を必ずしも設ける必要はない。例えば、ボタンを掛けたときに生じる服地部200の重なり合う部分を空気流通部の一つとして利用することも可能である。
第五実施形態では、服地部200の内面側であって背中に対応する部分には、耐圧スペーサ80が取り付けられている。耐圧スペーサ80は、服地部200と身体又は下着との間に空気を流通させるための空間を確保するものであって、大きな圧力に耐えられる強度を有するものである。特に、第五実施形態では、耐圧スペーサ80を、着用者が椅子の背もたれにもたれかかったときに、服地部200と身体又は下着とが密着してしまい身体平行風が背中の近傍を流れなくなってしまうのを防止するために使用される。かかる耐圧スペーサ80には、大きな圧力に耐えることができると共に、空気の受ける抵抗が小さく、空気が容易に流通することができるものであることが要求される。
ここで、耐圧スペーサ80の構造について説明する。図19Aは耐圧スペーサ80の一部の概略平面図、図19Bはその耐圧スペーサ80の一部の概略側面図である。耐圧スペーサ80は、いわゆるメッシュスペーサであり、図19に示すように、網目状シート(網目状部材)81と、複数の凸部82とを有する。ここで、各凸部82は、略半球形状に形成されている。この耐圧スペーサ80を製造するには、軟質プラスチックの網目状シートを凸の金型と凹の金型の間に入れて、熱成形する。これにより、網目状シート上には、その厚み方向に突出した複数の凸部82が形成される。このように、耐圧スペーサ80は簡単に作ることができる。
また、耐圧スペーサ80の厚さ(凸部82の高さ)Wは2mm以上30mm以下であることが望ましい。耐圧スペーサ80の厚さWが2mmより小さいと、一定流量の空気を流すためには、空気の圧力をかなり高める必要があり、実用的でないからである。特に、送風手段50,50の周辺では空気の流れが大きいので、送風手段50,50の周辺に設けられる耐圧スペーサ80の厚さWは5mm以上であることが望ましい。一方、耐圧スペーサ80の厚さWが30mmよりも大きいと、見栄えや着心地が悪くなってしまうからである。実際、耐圧スペーサ80の厚さWとして最も好ましい範囲は、3mm以上10mm以下である。
耐圧スペーサ80は服地部200の背中に対応する部分に縫い付けられる。具体的には、耐圧スペーサ80の網目状シート81を服地部200の内面側から服地部200に対向させるようにして、耐圧スペーサ80を服地部200の背中に対応する部分に配置する。そして、例えば、ミシン等を用いて耐圧スペーサ80を服地部200に縫い付ける。
第五実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が6リットル/秒であるので、第五実施形態の空調衣服は、着用者がオフィスで作業を行う場合に用いるのに好適である。
[第六実施形態]
次に、本発明の第六実施形態について図面を参照して説明する。図20Aは本発明の第六実施形態である空調衣服の概略正面図、図20Bはその空調衣服の概略背面図、図20Cはその空調衣服の下に着用される下着の概略正面図である。尚、第六実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第六実施形態について図面を参照して説明する。図20Aは本発明の第六実施形態である空調衣服の概略正面図、図20Bはその空調衣服の概略背面図、図20Cはその空調衣服の下に着用される下着の概略正面図である。尚、第六実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第六実施形態の空調衣服6は、図20に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、太陽電池66と、電源スイッチ(不図示)と、耐圧スペーサ80とを備えるものである。かかる空調衣服6は、主に、野外で長時間活動する際に着用する衣服(野外用衣服)として使用される。また、空調衣服6は、図20Cに示す所定の下着の上に着用される。ここで、この空調衣服6の主な仕様は、図6の表にまとめられている。
第六実施形態の空調衣服6が第五実施形態の空調衣服5と異なる主な点は、空調能力が400Wである点、服地部200に防水加工又は撥水加工を施した点、電源手段61としての二次電池を太陽電池66を用いて充電する点である。その他の点については、上記の第五実施形態のものと同様である。
次に、第六実施形態の空調衣服6の特徴点について詳しく説明する。
空調衣服6は野外活動用として使用するものであるので、その空調能力を400Wに強化している。それに伴い、送風手段50,50として、12リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約2.5Wである。そして、各送風手段50のファン径は55mmであり、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は38cm2である。また、雨対策として服地部200に防水加工又は撥水加工を施している。
空調衣服6は野外活動用として使用するものであるので、その空調能力を400Wに強化している。それに伴い、送風手段50,50として、12リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約2.5Wである。そして、各送風手段50のファン径は55mmであり、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は38cm2である。また、雨対策として服地部200に防水加工又は撥水加工を施している。
また、空調衣服6は、電源手段61としての二次電池を充電するための太陽電池66を備えている。この太陽電池66は、服地部200の外面側であって背中上部に対応する位置に取り付けられている。太陽電池66と二次電池とは電源ケーブル62により接続されている。これにより、太陽電池66が二次電池を充電し、その二次電池から送風手段50,50に電力が供給される。尚、電源手段として太陽電池66を用い、太陽電池66からの電力を直接、送風手段50,50に供給するようにしてもよい。
第六実施形態の空調衣服6は、下着の上に着用される。下着の外面側であって両肩に対応する部分には、図20Cに示すように、局所スペーサ70,70が取り付けられている。ここで、局所スペーサ70の構造は第二実施形態で説明したものと同様である。下着に局所スペーサ70,70を設けたことにより、下着の上に空調衣服6を着用したときに、服地部200と下着との間に、空気が流通するための空間が確実に形成される。
第六実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が12リットル/秒であり、しかも服地部に防水加工又は撥水加工を施しているので、第六実施形態の空調衣服は、着用者が野外で長時間活動する場合に用いるのに好適である。
[第七実施形態]
次に、本発明の第七実施形態について図面を参照して説明する。図21Aは本発明の第七実施形態である空調衣服の概略正面図、図21Bはその空調衣服の概略背面図、図22はその空調衣服に用いられる送風手段を説明するための図である。尚、第七実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第七実施形態について図面を参照して説明する。図21Aは本発明の第七実施形態である空調衣服の概略正面図、図21Bはその空調衣服の概略背面図、図22はその空調衣服に用いられる送風手段を説明するための図である。尚、第七実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第七実施形態の空調衣服7は、図21に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段500,500と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、面状スペーサ90とを備えるものである。かかる空調衣服7は、主に、下着が汗臭くなるのを防止するための衣服(防臭用衣服)として使用される。したがって、この空調衣服7は下着の上に着用される。ここで、空調衣服7の主な仕様は、図6の表にまとめられている。
第七実施形態の空調衣服7が第五実施形態の空調衣服5と異なる主な点は、空調能力が20Wである点、送風手段500の送風方式として排気方式を採用した点、服地部200に面状スペーサ90を設けた点である。また、この空調衣服7の空調面積率は約35%である。その他の点については、上記の第五実施形態のものと同様である。
次に、第七実施形態の空調衣服7の特徴点について詳しく説明する。
第七実施形態の空調衣服7は、汗をすばやく気化して下着が汗臭くなるのを防止することを主目的としており、必ずしも身体を冷却することを目的としているわけではない。このため、空調衣服7の空調能力を20Wととても小さくしている。それに伴い、送風手段500,500として、0.6リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段500,500の消費電力は約0.15Wである。このように送風手段500,500によって発生させる空気の流量が少ないので、送風手段500,500によるノイズはとても小さい。尚、送風手段500,500としては、ファン径が20mmであるものを用いている。また、二つの送風手段500,500のファン総有効面積は4cm2である。
第七実施形態の空調衣服7は、汗をすばやく気化して下着が汗臭くなるのを防止することを主目的としており、必ずしも身体を冷却することを目的としているわけではない。このため、空調衣服7の空調能力を20Wととても小さくしている。それに伴い、送風手段500,500として、0.6リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段500,500の消費電力は約0.15Wである。このように送風手段500,500によって発生させる空気の流量が少ないので、送風手段500,500によるノイズはとても小さい。尚、送風手段500,500としては、ファン径が20mmであるものを用いている。また、二つの送風手段500,500のファン総有効面積は4cm2である。
実際、暑がりの人や、一時的に重作業(例えば階段の昇り降り等)を行った人は、ある程度、空調が効いているオフィス等の部屋の中にいても、汗が下着に残り、下着が汗臭くなる。このような場合に、空調衣服7を下着の上に着用すると、服地部200と下着との間に身体平行風を流すことができるので、下着に残った汗を、すばやく気化することができる。したがって、汗が下着に長時間残ってしまい、下着が汗臭くなるのを防止することができる。
第七実施形態では、送風手段500の送風方式として排気方式を採用している。この排気方式では、送風手段500が服地部200内の空気を外部に排出することにより、服地部200と身体(又は下着)との間の空間に身体平行風を流す。このために、第七実施形態では、送風手段500として、図22に示すようなプロペラファンを用いている。
送風手段500は、図22に示すように、プロペラ501と、モータ(不図示)と、ケージング502と、外部ファンガード(不図示)と、間隔確保手段(不図示)とを有する。プロペラ501はモータの回転軸と結合されている。そして、プロペラ501及びモータはケージング502に収納されている。このケージング502には外部ファンガード取り付けられている。外部ファンガードは、指がケージング502に入るのを防止するためのものである。送風手段500は、プロペラ501の回転軸が服地部200の表面に略垂直となるように、服地部200にその内面側から取り付けられている。送風手段500を服地部200に取り付ける方法としては、第一実施形態で説明したマジックテープによる方法を用いることができる。また、送風手段500の身体と対向する側には、間隔保持手段が設けられている。この間隔保持手段は、プロペラ501と身体との間隔を一定の値Hに保つためのものである。
電源手段61から電力が送風手段500,500に供給されると、プロペラ501は、服地部200内の空気を外部に排出する方向に回転する。ここで、図22において、矢印は、空気の流れを表している。
尚、第七実施形態では、送風手段500によって発生させる空気の流量は少なくてすむので、送風手段500としては小型のものを用いることができる。このため、空調衣服7を着用しても、その外観上の違和感があまりない。また、送風手段500の空気排気口を通気性のよい布地でカバーすることにより、送風手段500が外部から見えないようにすることもできる。
ところで、送風手段500の送風方式として排気方式を採用しているので、送風手段500,500を駆動すると、服地部200と身体(下着)との間の空間内の圧力は外気圧に対して陰圧になる。このため、送風方式として排気方式を採用した場合には、身体平行風を流通させるための空間を形成する方法として、上記の第一実施形態のように送風手段によって発生される空気の圧力を利用する方法を採用することはできない。一般に、送風方式として排気方式を採用した場合、送風手段が発生させる空気の流量が6リットル/秒よりも大きいと、空気案内手段の特性(例えば硬さや重さ)や形状にもよるが、外気圧と服地部内の圧力との差が大きくなり、身体平行風を流通させるための空間を確保することがとても困難である。
第七実施形態では、身体平行風を流通させるための空間を確保するために、服地部200に面状スペーサ90を取り付けている。具体的に、面状スペーサ90は、服地部200の内面側であって送風手段500,500に対応する部分及びそれよりも上側の部分に取り付けられている。この面状スペーサ90は、服地部200と身体(下着)との間に空気を流通させるための空間を確保するものである。面状スペーサ90には、空気の受ける抵抗が小さいことが要求される。尚、面状スペーサ90は耐圧スペーサとしての役割をも果たす。このため、面状スペーサ90としては、耐圧スペーサ80と同様の構造のものを用いることができる。特に、耐圧性の必要としない腹部や胸部に対応する服地部200に取り付ける面状スペーサ90としては、軽くしなやかなものを用いることが望ましい。
面状スペーサ90は、服地部200の内面側であって送風手段500,500に対応する部分及びそれよりも上側の部分に縫い付けられる。具体的には、まず、面状スペーサ90の網目状シートを服地部200の内面に対向させるようにして、面状スペーサ90を服地部200の所定位置に配置する。そして、例えばミシン等を用い、面状スペーサ90を服地部200の内面に縫い付ける。このとき、面状スペーサ90の端部だけを服地部200に縫い付けるのが望ましい。面状スペーサ90の縫合作業を容易に行うことができると共に、空調衣服7の外観上、その縫い目を目立たないようにできるからである。
尚、面状スペーサ90は必ずしも連続した一枚のスペーサである必要はなく、縫製の都合等のため、いくつかに分割してもよい。また、面状スペーサ90は、必ずしも、服地部200のうち送風手段500,500に対応する部分及びそれよりも上側の部分のすべてに取り付ける必要はなく、要所要所に取り付けるようにしてもよい。
こうして、面状スペーサ90が縫い付けられた空調衣服7を着用すると、面状スペーサ90の凸部が身体(下着)の表面に接するようになり、服地部200と身体(下着)との間に、空気を流通させるための空間が確保される。したがって、送風手段500,500を駆動すると、外部の空気が空気流通部40,40,40,40aから服地部200と身体(下着)との間の空間に流入し、身体平行風として上半身を包むように流れ、送風手段500,500から外部に排出される。
上述したように、第七実施形態の空調衣服では、遅効発汗の蒸発を促進し、下着が汗臭くなるのを防止することができる。
[第八実施形態]
次に、本発明の第八実施形態について図面を参照して説明する。図23Aは本発明の第八実施形態である空調衣服の概略正面図、図23Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第八実施形態において、第七実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第八実施形態について図面を参照して説明する。図23Aは本発明の第八実施形態である空調衣服の概略正面図、図23Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第八実施形態において、第七実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第八実施形態の空調衣服8は、図23に示すように、服地部210と、開閉手段31aと、着脱手段33と、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段500,500と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、面状スペーサ90,90とを備えるものである。かかる空調衣服8は、主に、体重が10〜15kg程度の幼児が着用する衣服(幼児用衣服)として使用される。ここで、この空調衣服8の主な仕様は、図6の表にまとめられている。
第八実施形態の空調衣服8が第七実施形態の空調衣服7と異なる主な点は、空調能力が50Wである点、服地部210を上下二つの部分に分離することができるように構成した点である。その他の点については、上記の第七実施形態のものと同様である。
次に、第八実施形態の空調衣服8の特徴点について詳しく説明する。
第八実施形態では、着用者が幼児であり、体重が軽く、その産熱量も小さいので、空調衣服8の空調能力を50Wとしている。それに伴い、送風手段500,500として、1.4リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段500,500の消費電力は約0.3Wである。尚、送風手段500,500としては、ファン径が25mmであるものを用いている。また、二つの送風手段500,500のファン総有効面積は7cm2である。
第八実施形態では、着用者が幼児であり、体重が軽く、その産熱量も小さいので、空調衣服8の空調能力を50Wとしている。それに伴い、送風手段500,500として、1.4リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段500,500の消費電力は約0.3Wである。尚、送風手段500,500としては、ファン径が25mmであるものを用いている。また、二つの送風手段500,500のファン総有効面積は7cm2である。
また、幼児は服を汚しやすいので、洗濯の便宜を考えて、服地部210を上下二つの部分に分離することができるように構成している。ここで、服地部210の上の部分を上服地部210a、下の部分を下服地部210bと称することにする。
上服地部210aは、第七実施形態の服地部と同様に構成されている。すなわち、上服地部210aのうち、空気透過性の低い布を用いて形成された部分(腕部及び下部)は空気案内手段としての役割を果たし、空気透過性の高い布を用いて形成された部分(上部)は空気流通部40aとなる。一方、下服地部210bは空気案内手段としての役割を果たす。特に、下服地部210bの素材としては、例えばビニールシートが用いられる。これにより、下服地部210bが汚れた場合には、汚れを拭き取ることにより、その汚れを容易に落とすことができる。
また、下服地部210bには、二つの送風手段500,500、電源手段61、電源ケーブル62、電源ポケット63、電源スイッチ(不図示)、面状スペーサ90が取り付けられている。
上服地部210aと下服地部210bとは、着脱手段33によって互いに取り付けられている。この着脱手段33としては、例えばファスナーやマジックテープを用いることができる。このように、上服地部210aと下服地部210bとは容易に着脱することができる。空調衣服8を洗濯する場合には、上服地部210aと下服地部210bとを取り外し、上服地部210aについては通常の洗濯を行い、下服地部210bについては必要に応じて汚れを拭き取るようにすればよい。尚、下服地部210bは第二実施形態で説明した集積ベルトの役割をも果たしていると考えることができる。
[第九実施形態]
次に、本発明の第九実施形態について図面を参照して説明する。図24Aは本発明の第九実施形態である空調衣服の概略正面図、図24Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第九実施形態において、第一及び第二の実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第九実施形態について図面を参照して説明する。図24Aは本発明の第九実施形態である空調衣服の概略正面図、図24Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第九実施形態において、第一及び第二の実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第九実施形態の空調衣服9は、図24に示すように、服地部20と、開閉手段31と、下部空気漏れ防止手段32と、六つの空気流通部40,40,40,40b,40b,40bと、一つの送風手段50と、電源手段61aと、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服9は、主に、重労働の作業に用いる作業服(重作業用衣服)として使用される。ここで、この空調衣服9の主な仕様は、図7の表にまとめられている。
第九実施形態の空調衣服9が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、空調能力が2000Wである点、送風手段50を一つだけ設けた点、空気流通部として上部開口部40,40,40の他に三つの補助開口部40b,40b,40bを設けた点、電源手段61aとして燃料電池を用いた点である。また、第九実施形態では、服地部20の内面側であって両肩に対応する部分には、第二実施形態のように、局所スペーサ70,70を設けている。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同様である。
次に、第九実施形態の空調衣服9の特徴点について詳しく説明する。
第九実施形態の空調衣服9では、重作業を行う際に使用されるので、空調能力を2000Wと大きくしている。それに伴い、送風手段50として、60リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、送風手段50の消費電力は約20Wである。
第九実施形態の空調衣服9では、重作業を行う際に使用されるので、空調能力を2000Wと大きくしている。それに伴い、送風手段50として、60リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、送風手段50の消費電力は約20Wである。
このように送風手段50に要求される送風能力がとても高いので、実際に使用する送風手段50のファン径は大きく、その重量も重い。例えば、送風手段50のファン径は少なくとも100mmである。実際、第九実施形態では、送風手段50として、ファン径が150mm、ファン総有効面積は150cm2であるものを用いている。したがって、送風手段50を服地部20に取り付け、服地部20だけで送風手段50の重量を受けるようにしたのでは、送風手段50が服地部20から容易に外れてしまう等、さまざまな問題がある。そこで、第九実施形態では、送風手段50の取付け方法に工夫を凝らしている。
具体的には、服地部20の背中中央部に一つの大きな孔部を設け、この孔部に送風手段50を取り付けている。ここで、送風手段50の構造・着脱方法は、基本的には、第一実施形態で説明したものと同様である。そして、第九実施形態では、送風手段50に、それを背負うための背負いベルト(背負い手段)56を設けている。着用者はその背負いベルト56を肩にかけて、送風手段50を背負う。これにより、送風手段50の重量を、服地部20だけでなく、着用者の肩でも受けることができるので、送風手段50が服地部20から容易に外れてしまうことはない。尚、背負い手段としては、必ずしも服地部20の外部から送風手段50の重量を支えるものを用いる必要はなく、背負い手段は、服地部20の内部に取り付けてもよいし、服地部20内面に縫い込んでもよい。
また、送風手段50を服地部20の背部に取り付け、送風手段50として少なくとも10リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものを用いることにより、立ち作業用の作業服として用いるのに非常に合理的な空調衣服9を得ることができる。特に、送風手段50を服地部20の背中に対応する部分に一つだけ設け、送風手段50として、服地部20と身体又は下着との間に発生させる空気の流量が少なくとも15リットル/秒であるものを用いることにより、立ち作業用の実用本位の作業服を最も低コストで作製することができる。尚、服地部20と身体又は下着との間に15リットル/秒の流量の空気を流すには、送風手段50のファン径は少なくとも60mmである必要がある。
また、服地部20と身体又は下着との間の空間に大量の身体平行風を流すためには、それに応じた量の空気を外部に流出することができなければならない。このため、第九実施形態では、空気流通部として上部開口部40,40,40の他に三つの補助開口部40b,40b,40bを設けている。三つの補助開口部40b,40b,40bはそれぞれ、服地部20の前側左部、前側右部、背中上部に設けられている。かかる補助開口部40bは、例えば、服地部20の所定箇所に孔を開け、その孔を塞ぐようにして空気透過性のよい素材を服地部20に縫い付けることにより形成される。ここで、空気透過性の大きい布としては、例えばメッシュ状シートが用いられる。
また、第九実施形態では、電源手段61aとして燃料電池を用いている。これは、送風手段50が大量の空気を送出し、送風手段50の消費電力が大きいので、一般の電池を用いたのでは実用的でないからである。燃料電池は、その容量に対して瞬間的に流せる電流が小さいので、瞬間的に大電流を流す必要がある場合には大きな容量のコンデンサー等を併用する必要があるが、空調衣服9では瞬間的に大電流を流す必要はないので、燃料電池は空調衣服9の電源として用いるのにとても適している。
第九実施形態の空調衣服では、送風手段が発生させる空気の流量が60リットル/秒であるので、第九実施形態の空調衣服は、着用者が重作業を行う場合に用いるのに好適である。
[第十実施形態]
次に、本発明の第十実施形態について図面を参照して説明する。図25Aは本発明の第十実施形態である空調衣服の概略正面図、図25Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第十実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第十実施形態について図面を参照して説明する。図25Aは本発明の第十実施形態である空調衣服の概略正面図、図25Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第十実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十実施形態の空調衣服10は、図25に示すように、服地部220と、開閉手段31と、五つの空気流通部40,40,40,40c,40cと、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット(収納手段)63と、集積ベルト640と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服10は、上着とズボンが一つにつながった作業用の衣服(つなぎ型衣服)に適用される。ここで、この空調衣服10の主な仕様は、図7の表にまとめられている。
第十実施形態の空調衣服10が第二実施形態の空調衣服2と異なる主な点は、服地部220が上半身だけでなく下半身も覆っている点、空調能力が500Wである点、電源手段61を胸ポケットの裏側に取り付けた点、送風手段50,50を取り付けるための集積ベルト640を服地部220の内面側であって腰に対応する位置に着脱自在に取り付けた点である。その他の点については、上記の第二実施形態のものと同様である。
次に、第十実施形態の空調衣服10の特徴点について詳しく説明する。
第十実施形態では、空調衣服10を、いわゆるつなぎ型衣服に適用しているので、服地部220は上半身だけでなく下半身も覆っている。このため、下半身にも身体平行風が流れ、首から上を除く、身体表面のほとんど大部分を身体平行風で包むことができる。この場合、上部開口部40,40,40の他に、脚部の裾の開口部40c,40cも空気流通部となる。また、かかる空調衣服10の空調面積率は約80%である。尚、図25において、矢印は空気の流出方向を表している。
第十実施形態では、空調衣服10を、いわゆるつなぎ型衣服に適用しているので、服地部220は上半身だけでなく下半身も覆っている。このため、下半身にも身体平行風が流れ、首から上を除く、身体表面のほとんど大部分を身体平行風で包むことができる。この場合、上部開口部40,40,40の他に、脚部の裾の開口部40c,40cも空気流通部となる。また、かかる空調衣服10の空調面積率は約80%である。尚、図25において、矢印は空気の流出方向を表している。
また、下半身にも身体平行風を流通させるため、空調衣服10の空調能力を500Wに強化している。これに伴い、送風手段50,50として、14リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。ここで、二つの送風手段50,50の消費電力は約3Wである。尚、送風手段50,50としては、ファン径が70mmであるものを用いている。また、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は62cm2である。
服地部220の外面側の左上部には、胸ポケットが設けられている。第十実施形態では、服地部220の内面側であって胸ポケットに対応する位置に、電源ポケット63を取り付けている。そして、電源ポケット63に電源手段61である二次電池が収納される。このとき、電源ポケット63のサイズを胸ポケットのサイズと同じか或いは小さくしており、電源ポケット63を服地部220に縫い付けている。このため、電源ポケット63の縫い目を胸ポケットによって覆い隠すことができるので、その縫い目が外部から見えないという利点がある。また、胸ポケットは通常、物を収納するものであるので、胸ポケットの裏側に設けた電源ポケット63に電源手段61が収納されていても、着用者にとってそれ程違和感がない。更に、電源手段61を交換するとき、開閉手段31であるファスナーを少し開けるだけで、電源手段61を簡単に交換することができる。ちなみに、電源ポケットの取付け位置が下になればなる程、電源手段61の交換時にはファスナーを下の方まで開けなければならない。このことは、ファスナーだけでなく、ボタン、その他の開閉手段を用いた場合でも同様である。
次に、集積ベルト640について説明する。集積ベルト640は、二つの送風手段50,50及び電源ケーブル62を取り付けるための帯状部材である。この集積ベルト640の目的は、第二実施形態で用いられる集積ベルトと略同じである。但し、第十実施形態では、電源手段61は、服地部220の胸部に設けた電源ポケット63に収納されているので、集積ベルト640には取り付けられていない。また、集積ベルト640のベースシートとしては、空気透過性の低い素材を用いており、したがって、第二実施形態で用いられる集積ベルトとの構造上の大きな違いは、かかるベースシートが空気案内手段としての役割をも果たすことである。尚、第十実施形態の空調衣服10の洗濯時には、服地部220から、集積ベルト640と、電源ポケット63に収納された電源手段61とを取り外してから、空調衣服10を洗濯するようにすればよい。
[第十一実施形態]
次に、本発明の第十一実施形態について図面を参照して説明する。図26Aは本発明の第十一実施形態である空調衣服の概略正面図、図26Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第十一実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第十一実施形態について図面を参照して説明する。図26Aは本発明の第十一実施形態である空調衣服の概略正面図、図26Bはその空調衣服の概略背面図である。尚、第十一実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十一実施形態の空調衣服11は、図26に示すように、服地部230と、開閉手段31bと、下部空気漏れ防止手段32と、三つの空気流通部40,40,40と、20個の送風手段50と、電源手段61aと、電源ケーブル62と、集積ベルト64と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服11は、主に、女性が着用する、空気透過性のよいファッショナブルな服の下に着用する中着服(中着用衣服)に適用される。ここで、この空調衣服11の主な仕様は、図7の表にまとめられている。
第十一実施形態の空調衣服11が第二実施形態の空調衣服2と異なる主な点は、空調衣服11が袖部のないノンスリーブタイプのものである点、開閉手段31bとしてマジックテープを用いた点、集積ベルト64上に20個の送風手段50を取り付けた点、電源手段61aとして燃料電池を用いた点である。その他の点については、上記の第二実施形態のものと同様である。
第十一実施形態の空調衣服11の上には、通常、空気透過性のよい衣服が着用されるので、かかる衣服の外観上の美観を損なわないようにする必要がある。このため、送風手段50としては、厚さが薄く、小型のものを用いている。具体的に、送風手段50としては厚さが大きくとも6mmであるものを用いることが望ましい。また、小型の送風手段50はそれ単体の送風量が少ないので、集積ベルト64に合計20個の送風手段50を分散して取り付けている。一般に、送風手段50としては少なくとも10個設けるようにすることが望ましい。更に、小型の送風手段50はモータの効率が非常に悪いので、身体平行風について所望の流量を得るためには、大きな電力を必要とする。この点を考慮して、電源手段61aとしては燃料電池を用いている。
実際、第十一実施形態では、20個の送風手段50として、6リットル/秒の流量の身体平行風を流すことができるものを用いている。各送風手段50のファン径は20mmであり、20個の送風手段50のファン総有効面積は45cm2である。ここで、20個の送風手段50の消費電力は約8Wである。また、空調衣服11の空調能力は約200Wである。尚、この空調衣服11の空調面積率は約30%である。
[第十二実施形態]
次に、本発明の第十二実施形態について図面を参照して説明する。図27Aは本発明の第十二実施形態である空調衣服の概略正面図、図27Bはその空調衣服の概略背面図、図28はその空調衣服に用いられる送風手段を説明するための図である。尚、第十二実施形態において、第七実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第十二実施形態について図面を参照して説明する。図27Aは本発明の第十二実施形態である空調衣服の概略正面図、図27Bはその空調衣服の概略背面図、図28はその空調衣服に用いられる送風手段を説明するための図である。尚、第十二実施形態において、第七実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十二実施形態の空調衣服12は、図27に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段50,50と、電源手段61bと、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、面状スペーサ90とを備えるものである。かかる空調衣服12は、上着が必要な季節に上着と身体又は下着との間に着用する中着服であって、体温の調節を目的として着用されるもの(温度調整用衣服)に適用される。ここで、この空調衣服12の主な仕様は、図7の表にまとめられている。
第十二実施形態の空調衣服12が第七実施形態の空調衣服7と異なる主な点は、空調衣服12が上着の下に着用して使用されるものである点、送風手段50,50として側流ファンを用い、かかる送風手段50,50を服地部200の外面側に取り付けた点、電源手段61bとして一次電池を用いた点である。また、送風手段50,50として、1.4リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。各送風手段50のファン径は35mmであり、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は15cm2である。そして、二つの送風手段50,50の消費電力は約2Wである。また、空調衣服12の空調能力は約50W、その空調面積率は約30%である。その他の点については、上記の第七実施形態のものと同様である。
次に、第十二実施形態の空調衣服12の特徴点について詳しく説明する。
寒い時期には防寒のために厚着をする必要がある。上着を着用している場合に、例えば電車やバス等に乗り遅れないように駆け足で乗り物に乗車すると、一時的に大きな産熱が伴い、体温が上昇し、場合によっては液体状の汗をかくこともある。このような状態で満員の乗り物に乗車した場合、暑苦しくなり上着を脱ぎたいが、満員のために脱ぐことができずに、暑苦しさを我慢しなければならないことがある。第十二実施形態の空調衣服12は、このような状況で使用されるものである。すなわち、着用者が暑苦しいと感じたときのみ、空調衣服12と身体又は下着との間に身体平行風を一時的に流通させることにより、身体の表面近傍における温度勾配を大きくして体を冷却すると共に、体からの汗と身体平行風とを接触させることによって身体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して体を冷却する。尚、かかる温度調整用の空調衣服12でも、十分な冷却効果を得るためには、送風手段50,50は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる身体平行風を発生させる必要がある。実際には、送風手段50,50として、少なくとも0.5リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いることが望ましい。
寒い時期には防寒のために厚着をする必要がある。上着を着用している場合に、例えば電車やバス等に乗り遅れないように駆け足で乗り物に乗車すると、一時的に大きな産熱が伴い、体温が上昇し、場合によっては液体状の汗をかくこともある。このような状態で満員の乗り物に乗車した場合、暑苦しくなり上着を脱ぎたいが、満員のために脱ぐことができずに、暑苦しさを我慢しなければならないことがある。第十二実施形態の空調衣服12は、このような状況で使用されるものである。すなわち、着用者が暑苦しいと感じたときのみ、空調衣服12と身体又は下着との間に身体平行風を一時的に流通させることにより、身体の表面近傍における温度勾配を大きくして体を冷却すると共に、体からの汗と身体平行風とを接触させることによって身体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して体を冷却する。尚、かかる温度調整用の空調衣服12でも、十分な冷却効果を得るためには、送風手段50,50は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる身体平行風を発生させる必要がある。実際には、送風手段50,50として、少なくとも0.5リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いることが望ましい。
また、第十二実施形態では、送風手段50,50としては、図10に示すような側流ファンを用いている。そして、送風手段50,50を、図28に示すように、服地部200の外側に取り付けられている。このため、上着と服地部200との間には、送風手段50の厚みに対応した間隔hの空間が生じる。送風手段50,50に電力が供給されると、送風手段50,50は、服地部200と身体又は下着との間の空間を流れる空気を吸入し、服地部200と上着との間の空間において服地部200の表面に沿って略平行な方向に排出する。これにより、服地部200と身体又は下着との間に存在する体温で温もった空気を外気と入れ替えることができる。ここで、温度調整用の空調衣服12では、服地部200と身体又は下着との間の空間を流れる空気を、服地部200と上着との間の空間に排気する必要があるので、送風手段50の能力としては高い送風能力が必要である。具体的には、送風手段50としては、最大静圧(maximum static pressure)、すなわち流量がゼロになるところでの圧力が30Paから300Paまでの範囲内であるような送風圧力特性を有するものを用いることが望ましい。
第十二実施形態の空調衣服では、着用者は、暑苦しいと感じたときにのみ電源スイッチを入れ、自己の体温を冷却することができる。
[第十三実施形態]
次に、本発明の第十三実施形態について図面を参照して説明する。図29Aは本発明の第十三実施形態である空調衣服の概略正面図、図29Bはその空調衣服の概略背面図、図29Cはその空調衣服に用いられる下部空気漏れ防止手段を説明するための図である。尚、第十三実施形態において、第一及び第二の実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第十三実施形態について図面を参照して説明する。図29Aは本発明の第十三実施形態である空調衣服の概略正面図、図29Bはその空調衣服の概略背面図、図29Cはその空調衣服に用いられる下部空気漏れ防止手段を説明するための図である。尚、第十三実施形態において、第一及び第二の実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十三実施形態の空調衣服13は、図29に示すように、服地部20と、下部空気漏れ防止手段32aと、三つの空気流通部40,40,40と、二つの送風手段50,50と、電源手段61と、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、局所スペーサ70,70とを備えるものである。かかる空調衣服13は、Tシャツのように前部に開閉手段のない日常的な衣服に適用される。以下、このような衣服を「Tシャツ型衣服」とも称する。この空調衣服13の主な仕様は、図8の表にまとめられている。
第十三実施形態の空調衣服13が第一実施形態の空調衣服1と異なる主な点は、開閉手段が設けられていない点、下部空気漏れ防止手段32aとして帯状布地を用いた点、服地部20の両肩に対応する部分に局所スペーサ70,70を設けた点である。また、送風手段50,50として、12リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。各送風手段50のファン径は60mmであり、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は45cm2である。そして、二つの送風手段50,50の消費電力は約2.5Wである。また、空調衣服12の空調能力は約400W、その空調面積率は約35%である。その他の点については、上記の第一実施形態のものと同様である。
空調衣服13では開閉手段が設けられていないので、着用者は空調衣服13を頭からかぶって着用する。このように頭からかぶって着用するTシャツ等は、通常、その裾部をズボンの中に入れず、裾部が外に垂れ下がった状態で着用される。このようなTシャツ型衣服の着用態様を考慮し、第十三実施形態では、下部空気漏れ防止手段32aとして、服地部20の裾部にゴムを入れるという手段ではなく、帯状布地に、伸縮性のある部材、例えばゴムを入れるという手段を用いている。具体的に、かかる下部空気漏れ防止手段32aは、帯状布地と、伸縮性部材とからなる。そして、図29Cに示すように、帯状布地を、服地部20の内面側であって服地部20の裾部近傍の位置に胴回り方向に沿って縫い付けている。また、帯状布地の身体側の端部には伸縮性部材を入れて、ギャザーを寄せている。これにより、空調衣服13を着用すると、伸縮性部材が入れられた帯状部材の端部は身体、下着又は衣服に密着するようになる。したがって、かかる空調衣服13では、裾部がだらりと垂れ下がった状態で着用されたときでも、下部空気漏れ防止手段32aにより空気が裾部から外部に漏れてしまうのを防止することができる。
[第十四実施形態]
次に、本発明の第十四実施形態について図面を参照して説明する。図30Aは本発明の第十四実施形態である空調衣服の概略正面図、図30Bはその空調衣服の概略背面図、図31はその空調衣服における回路部の概略ブロック図である。尚、第十四実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第十四実施形態について図面を参照して説明する。図30Aは本発明の第十四実施形態である空調衣服の概略正面図、図30Bはその空調衣服の概略背面図、図31はその空調衣服における回路部の概略ブロック図である。尚、第十四実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十四実施形態の空調衣服14は、図30及び図31に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段50,50と、電源手段61aと、電源ケーブル62と、電源ポケット63と、電源スイッチ(不図示)と、耐圧スペーサ80と、二つの電源供給用コネクタ111,112と、五つのセンサ121,122,123,124,125と、回路部130とを備えるものである。ここで、各送風手段50のファン径は60mmであり、二つの送風手段50,50のファン総有効面積は45cm2である。また、この空調衣服14の空調面積率は約40%である。かかる空調衣服14は、情報処理、通信技術等を利用したさまざまな機能を付加したものである。以下、このような各種の機能を付加した衣服を「高機能型衣服」とも称する。この空調衣服14の主な仕様は、図8の表にまとめられている。
第十四実施形態の空調衣服14が第五実施形態の空調衣服5と異なる主な点は、電源手段61aとして燃料電池を用いている点、及び、他の装置へ電力を供給する機能、身体平行風の流量を自動調整する機能、健康管理服としての機能、インターネット通信機能等の各種の機能を備えている点である。その他の点については、上記の第五実施形態のものと同様である。
次に、第十四実施形態の空調衣服14が備える上記の各機能について詳しく説明する。
最初に、他の装置へ電力を供給する機能について説明する。第十四実施形態では、電源手段61aとして燃料電池を用いている。服地部200の内面側には、電源手段61aの電力を各部に供給するための電源ケーブル62が複数配線されている。ここで、電源ケーブル62としては、洗濯に耐えうるように、耐水性を有するものを用いている。具体的に、電源手段61aと各電源供給用コネクタ111,112、電源手段61aと回路部130、及び回路部130と各送風手段50,50がそれぞれ電源ケーブル62によって接続されている。各送風手段50,50には、回路部130を経由して電源手段61aの電力が供給される。
最初に、他の装置へ電力を供給する機能について説明する。第十四実施形態では、電源手段61aとして燃料電池を用いている。服地部200の内面側には、電源手段61aの電力を各部に供給するための電源ケーブル62が複数配線されている。ここで、電源ケーブル62としては、洗濯に耐えうるように、耐水性を有するものを用いている。具体的に、電源手段61aと各電源供給用コネクタ111,112、電源手段61aと回路部130、及び回路部130と各送風手段50,50がそれぞれ電源ケーブル62によって接続されている。各送風手段50,50には、回路部130を経由して電源手段61aの電力が供給される。
電源供給用コネクタ111は、携帯電話等に電力を供給するためのコネクタであり、胸ポケットの内部に取り付けられている。例えば携帯電話を胸ポケットに入れ、携帯電話の電池充電用コネクタを電源供給用コネクタ111と接触させることにより、携帯電話の電池を充電することができる。また、電源供給用コネクタ112は、本発明の空調衣服と同様の原理を適用した空調帽子や空調ヘルメットに電力を供給するためのコネクタである。空調帽子や空調ヘルメットに設けられた所定のコネクタを電源供給用コネクタ112に接続することにより、空調帽子や空調ヘルメットに設けられた送風手段に電源手段61aの電力を供給することができる。したがって、この場合、空調帽子や空調ヘルメットには電源手段を設ける必要がない。
次に、空調衣服14が備える、身体平行風の流量を自動調整する機能について説明する。空調衣服14には、図31に示すように、五つのセンサ121〜125が取り付けられている。すなわち、体温センサ(体温検出手段)121と、脈拍センサ(脈拍検出手段)122と、温度センサ123と、湿度センサ124と、GPSセンサ125とである。体温センサ121は着用者の体温を検出するものであり、脈拍センサ122は着用者の脈拍を検出するものである。体温センサ121及び脈拍センサ122は身体に接する所定位置に取り付けられる。温度センサ123は外気の温度を検出するものであり、湿度センサ124は外気の湿度を検出するものである。温度センサ123と湿度センサ124は服地部200の外側に取り付けられる。また、GPSセンサ125は、位置情報を検出するものである。これら各センサ121〜125で得られた検出結果は、回路部130の演算手段に送られる。尚、以下では、体温センサ121及び脈拍センサ122をまとめて「体調センサ(体調検出手段)」、温度センサ123及び湿度センサ124をまとめて「環境センサ」とも称することにする。
また、回路部130は、図31に示すように、入力インターフェース131と、記憶手段132と、演算手段133と、ファン制御手段(駆動制御手段)134と、通信手段135と、出力インターフェース136とを備える。
入力インターフェース131としては、例えばキーボード用の入力端子がある。これにより、例えば、着用者は、空調衣服14を着用する前にその入力端子にキーボードを接続し、そのキーボードを用いて各種の情報を入力することができる。記憶手段132には、着用者の個人情報が格納されている。個人情報としては、例えば、身長、体重、健康時における体温・脈拍、血液型、当日の体調等がある。これらの情報は、着用者がキーボードを用いて入力することもできる。尚、記憶手段132には、上記の情報以外にも、着用者の住所、電話番号等さまざまな情報を記憶することが可能である。
通信手段135は、各種のセンサ121〜125で検出された体調等に関するデータを外部の受信手段との間で送受信するものである。また、出力インターフェース136としては、例えばスピーカ用の音声出力端子がある。これにより、着用者はスピーカから音声等を聞くことができる。
演算手段133は、体調センサ及び環境センサで得られた検出結果に基づいて、人体がその時の状況に応じて適切な放熱を行うために必要とされる発汗量を予測し、当該発汗量をすべて気化するために必要とされる身体平行風の流量を算出するものである。演算手段133で得られた算出結果はファン制御手段134に送られる。また、演算手段133は、各部の制御を行う制御手段としての役割をも果たす。
ファン制御手段134は、演算手段133で算出された身体平行風の流量に基づいて送風手段50,50の駆動条件を決定し、その決定した駆動条件にしたがって送風手段50,50の駆動を制御する。ここで、送風手段50,50の駆動条件としては、例えばモータの回転数が用いられる。モータの回転数が決まれば、身体平行風の流量も決まるからである。具体的には、ファン制御手段134は、送風手段50に供給する電圧を変えることにより、送風手段50の回転数を制御する。この場合、電源手段61aと送風手段50,50との間に、出力電圧を変えることができるDC−DCコンバータ(DC−DC変換手段)を設けることが望ましい。そして、ファン制御手段134が、DC−DCコンバータを制御することにより、送風手段50,50に供給する電力量を変えて、送風手段50,50から発生させる空気の流量を制御する。DC−DCコンバータを用いることにより、電力の損失をあまり伴わずに送風手段50の回転数を制御することができるという利点がある。このように、第十四実施形態の空調衣服14では、着用者の体調や外気の温湿度に応じて適切な量の空気を自動的に服地部200内に流すことができる。尚、DC−DCコンバータとしては、例えば、出力電圧をPWM変調した後にコンデンサで整流するようなものを用いてもよい。
尚、第十四実施形態では、送風手段50,50として、最大47リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。かかる最大流量で身体平行風を流したとき、二つの送風手段50,50の消費電力は40Wである。また、空調衣服14の空調能力は最大1500Wである。
前述した身体平行風の特性によれば、汗を気化させるのに必要な流量以上の流量の身体平行風をいくら流していても、生理クーラーへの影響はない。しかし、身体平行風の流量を常に一定にしたのでは、空調能力が一定に決まってしまう。このため、身体が生理的に必要とする放熱量が少ない場合でも送風手段50,50の消費電力は一定であるので、結果的に、電源手段61aへの一回の燃料補給で送風手段50,50を駆動できる時間が短くなってしまう。この点は、電源手段として二次電池を用いたときも同様である。したがって、第十四実施形態の空調衣服14では、身体がその時に生理的に必要とする放熱量に応じて身体平行風の流量を自動的に制御することができるので、燃料(又は電池)の無駄使いを抑えることができるだけでなく、送風手段50,50の寿命を延ばすことができる。
また、一般にオフィスワーク等の軽作業を行う環境では周囲の騒音は小さいが、重労働を行う環境では周囲の騒音が大きい。第十四実施形態の空調衣服14では、身体が生理的に必要とする放熱量に応じて身体平行風の流量を自動的に制御することにより、オフィス等、周囲が静かな環境で空調衣服14を着用する場合には、送風手段50,50の回転数が小さく、送風手段50,50から発生するノイズも小さいので、着用者本人及び周囲の者は、空調衣服14の騒音が喧しいと感じることはない。一方、重労働を行う環境で空調衣服14を着用した場合には、送風手段50,50の回転数が大きく、送風手段50,50から発生するノイズも大きくなるが、周囲の騒音も大きいため、空調衣服14の騒音はそれ程問題にならない。
尚、体調センサや環境センサからの検出結果を用いただけでは、身体がその時の状況に応じて適切な放熱を行うために必要とされる発汗量を正確に予測することができない場合がある。作業の状況に応じて身体が生理的に必要とする放熱量には、個人差があるからである。このような場合には、演算手段133は、体調センサ及び環境センサからの検出結果に加えて、記憶手段132に記憶されている体重や当日の体調その他の着用者の個人情報を用いて、発汗量を予測することが望ましい。これにより、演算手段133は、身体がその時の状況に応じて適切な放熱を行うために必要とされる発汗量を正確に且つきめ細かく決定することができる。
次に、空調衣服14が備える、健康管理服としての機能について説明する。この機能を実現するため、演算手段133はさらに次のような処理を行う。すなわち、演算手段133は、体調センサで検出された体温・脈拍に基づいて当該体温又は脈拍がそれぞれ所定の基準範囲内にあるか否かを判断し、当該体温又は脈拍が基準範囲外にあると判断したときに、出力インターフェース136に接続されたスピーカから所定の警告を発生させる。これにより、着用者は、自分の体温又は脈拍について問題が生じたことを直ちに知ることができる。ここで、体温及び脈拍の基準範囲についての情報は、予め記憶手段132に記憶されている。
また、演算手段133は、体調センサで検出された体温・脈拍に基づいて当該体温又は脈拍がそれぞれ所定の基準範囲内にあるか否かを判断した際に、例えば当該脈拍が所定の異常値以上であると判断したときには、体調センサで得られた検出結果に基づいて体調に関する情報を生成し、通信手段135に送出する。この異常値は予め記憶手段132に記憶されている。そして、通信手段135は、その体調に関する情報を外部の受信手段に送信する。ここで、受信手段は、例えば着用者の係り付けの病院に設置される。また、上記の「体調に関する情報」には、体調センサで検出された体温・脈拍(体調)だけでなく、GPSセンサ125で検出された位置情報、記憶手段132に記憶されている着用者の個人情報も含まれる。特に、「所定の情報」にGPSセンサ125で検出された位置情報を含めることにより、受信手段が設置された病院の担当者は、その位置情報に基づいて着用者の居所を特定することができる。このため、着用者が健康上の緊急事態に陥ったときに、着用者(患者)の居所を救急車等に素早く連絡することができる。
尚、体調センサとしては、体温センサ121、脈拍センサ122の他に、心臓の状態をチェックするセンサ等、さまざまな種類のセンサを用いることができる。空調衣服14に各種の体調センサを付加することにより、空調衣服14の有する、健康管理服としての機能をより一層向上させることができる。
次に、空調衣服14が備えるインターネット通信機能を説明する。通信手段135には、インターネットに接続して通信を行う機能が付加されている。そして、着用者がインターネット通信機能を利用する場合には、入力インターフェース131にキーボード等の入力手段を接続すると共に、出力インターフェース136に、インターネットを介してダウンロードした情報を出力するための出力手段を接続する。例えば、聞きたい音楽を、キーボードの操作によってインターネットを介してダウンロードし、スピーカからその音楽を出力することができる。ここで、空調衣服14にスピーカを取り付ける代わりに、出力インターフェース136のヘッドフォン用音声出力端子にヘッドフォンを接続し、ヘッドフォンで音楽を聞くようにしてもよい。また、出力インターフェース136にビデオ出力端子を設け、そのビデオ出力端子に眼鏡型表示装置を接続することにより、着用者は、その眼鏡型表示装置をかけて、ダウンロードした映像を見ることができる。尚、入力インターフェース131に音声入力装置用の端子を設けることにより、キーボードの代わりに、音声入力装置を用いて音声で入力を行うようにすることが望ましい。これにより、着用者は入力作業を容易に行うことができるので、空調衣服14のインターネット通信機能がさらに活用しやすくなる。
第十四実施形態の空調衣服では、演算手段が着用者の体調や外気の温湿度に基づいて人体がその時に生理的に必要とする放熱量を算出し、その放熱量に応じて身体平行風の流量を自動的に制御することができる。このため、かかる空調衣服を着用することにより、着用者がどのような体型の人であろうと、どのような内容の作業を行おうとも、着用者は自己に適した冷却効果を得ることができる。
尚、上記の第十四実施形態では、体調センサとして、体温センサ及び脈拍センサを用いた場合について説明したが、体調センサとしては、体温センサだけを用いてもよい。
また、上記の第十四実施形態では、体調センサ及び環境センサで得られた検出結果に基づいて発汗量を予測し、身体平行風の流量を決定する場合について説明した。しかし、体調センサを用いる場合には、体調センサを身体に接する位置に取り付けなければならず、その取付けが若干面倒である。このため、体調センサの代わりに、身体の動きに応じて作業量の概算量を検出する加速度センサ等の作業量センサ(作業量検出手段)を用いるようにしてもよい。かかる作業量センサは、必ずしも身体に接する位置に取り付ける必要はなく、空調衣服のいずれの位置に取り付けてもよい。この場合、演算手段は、作業量センサ及び環境センサで得られた検出結果に基づいて、人体がその時の状況に応じて適切な放熱を行うために必要とされる発汗量を予測する。
また、第十四実施形態の空調衣服は、たとえ身体を冷却する機能を備えていなくとも、上述した健康管理服としての機能やインターネット通信機能を備えているだけで十分な使用価値がある。
[第十五実施形態]
次に、本発明の第十五実施形態について図面を参照して説明する。図32Aは本発明の第十五実施形態である空調衣服の概略正面図、図32Bはその空調衣服の概略背面図、図33Aはその空調衣服に用いられる送風手段の概略正面図、図33Bはその送風手段の概略側面図である。また、図34Aはその空調衣服を着用したときの様子を説明するための図、図34Bはその空調衣服を着用したときのベルト部分の様子を説明するための図である。尚、第十五実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第十五実施形態について図面を参照して説明する。図32Aは本発明の第十五実施形態である空調衣服の概略正面図、図32Bはその空調衣服の概略背面図、図33Aはその空調衣服に用いられる送風手段の概略正面図、図33Bはその送風手段の概略側面図である。また、図34Aはその空調衣服を着用したときの様子を説明するための図、図34Bはその空調衣服を着用したときのベルト部分の様子を説明するための図である。尚、第十五実施形態において、第五実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十五実施形態の空調衣服15は、図32に示すように、服地部200と、開閉手段31aと、四つの空気流通部40,40,40,40aと、二つの送風手段550,550と、耐圧スペーサ80,800と、リモートコントロール用送信器(遠隔制御用送信手段)140とを備えるものである。かかる空調衣服15は、第五実施形態のオフィス用空調衣服5を改良したものである。以下、この空調衣服15を「オフィス用改良型空調衣服」とも称する。この空調衣服15の主な仕様は、図8の表にまとめられている。
第十五実施形態の空調衣服15が第五実施形態の空調衣服5と異なる主な点は、各送風手段550,550の回転制御をリモートコントロール用送信器140で行う点、服地部200の内面側であって腰に対応する位置に耐圧スペーサ800を設けた点である。その他の点については、上記の第五実施形態のものと同様である。
次に、第十五実施形態の空調衣服15の特徴点について詳しく説明する。
第十五実施形態では、送風手段550として、いわゆるハイブリッドファンを用いている。この送風手段550の基本的な構成は、図10及び図11に示した送風手段50とほぼ同じであるが、送風手段550は、送風手段50の各構成要素に加えて、図33に示すように、電源手段551と、受信回路(受信手段)552と、制御回路(制御手段)553とを備えている点で送風手段50と異なる。ここで、送信手段550の内部ファンガードには板状の載置部555が設けられており、電源手段551、受信回路552及び制御回路553は、その載置部555上に取り付けられている。
第十五実施形態では、送風手段550として、いわゆるハイブリッドファンを用いている。この送風手段550の基本的な構成は、図10及び図11に示した送風手段50とほぼ同じであるが、送風手段550は、送風手段50の各構成要素に加えて、図33に示すように、電源手段551と、受信回路(受信手段)552と、制御回路(制御手段)553とを備えている点で送風手段50と異なる。ここで、送信手段550の内部ファンガードには板状の載置部555が設けられており、電源手段551、受信回路552及び制御回路553は、その載置部555上に取り付けられている。
電源手段551は、送風手段550に電力を供給するためのものである。ここでは、電源手段551としてキャパシターを用いている。キャパシターは、寿命が非常に長いこと、ごく短時間に充電できること、安全性が高いこと等の理由から空調衣服用の電源として用いるのに非常に適している。受信回路552は、リモートコントロール用送信器140からの信号を受信するものである。制御回路553は、受信回路552の受信した信号に基づいて、送風手段550の駆動を制御するものである。また、リモートコントロール用送信器140は、送風手段550,550が発生する空気の流量を調整する流量調整手段としての役割を果たすものである。具体的に、リモートコントロール用送信器140は、送風手段550,550のオン/オフを指示する信号や、送風量を所定の量に調整するための信号を送信する。
このように、送風手段550自体に電源手段551を取り付けたことにより、電源手段551と送風手段550との間を電源ケーブルで接続する必要がなくなり、しかも、空調衣服15の洗濯時には送風手段550,550を取り外すだけでよいという利点がある。また、着用者は、リモートコントロール用送信器140を操作して、送風手段550,550が発生する空気の流量を簡単に調整することができる。
第十五実施形態の空調衣服15では、服地部200の内面側であって腰に対応する位置に耐圧スペー800が取り付けられている。具体的には、服地部200の裾部をズボンの内側に入れたときに、少なくともズボンのベルト部に対応する服地部200の位置に耐圧スペーサ800を取り付けるようにしている。この耐圧スペーサ800の構造は、服地部200の背中部に取り付けられる耐圧スペーサ80とほぼ同様である。
かかる耐圧スペーサ800を設けたことにより、図34に示すように、服地部200の裾部をズボンに入れ、ズボンのベルトを締めても、服地部200の裾部が身体又は下着と密着することがないので、送風手段550,550から発生した身体平行風の一部は、耐圧スペーサ800を介して下半身にも送られることになる。したがって、ズボンの生地として空気漏れの少ない素材を用いると、当該ズボンを空気案内手段として機能させることができると共に、当該ズボンの裾部の開口部を空気流通部として機能させることができる。この場合、空調衣服15内だけでなく、当該ズボン内にも身体平行風を流すことができるので、空調面積率を大幅に改善することができる。例えば、着用者が空調衣服15とともに空気案内手段としてのズボンを着用した場合、空調面積率は約80%に向上する。
尚、耐圧スペーサ800を必ずしも服地部200の裾部に取り付ける必要はない。上述したように、耐圧スペーサ800の役割は、ズボンのベルト等が胴体を締め付けることによって服地部200の裾部と身体又は下着とが密着することを回避し、下半身への空気の流通空間を確保することである。このため、耐圧スペーサ800の取付け方法としては、服地部200と身体又は下着との間に耐圧スペーサ800が存在することができる方法であれば、どのような方法を用いてもよい。すなわち、耐圧スペーサ800は、服地部200の裾部をズボン(下半身用衣服)の内側に入れたときに少なくともズボンのベルト部に対応する位置に設けられていればよい。例えば、耐圧スペーサ800を腹巻の外面に取り付けるようにしてもよい。この場合、着用者は、その腹巻を着用した後に空調衣服15を着用する。これにより、服地部200と腹巻との間に空気の流通空間が確保される。
第十五実施形態の空調衣服では、着用者がリモートコントロール用送信器を用いて身体平行風の流量を調整することができるので、着用者がどのような体型の人であろうと、どのような内容の作業を行おうとも、着用者は自己に適した冷却効果を得ることができる。
[第十六実施形態]
次に、本発明の第十六実施形態について図面を参照して説明する。図35Aは本発明の第十六実施形態である空調衣服の概略正面図、図35Bはその空調衣服の概略背面図、図36Aはその空調衣服に用いられる空調ベルトを裏面側から見たときの概略平面図、図36Bはその空調ベルトが巻き付けられた状態を説明するための図、図37はその空調衣服に用いられる送風手段の概略側面図である。尚、第十六実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第十六実施形態について図面を参照して説明する。図35Aは本発明の第十六実施形態である空調衣服の概略正面図、図35Bはその空調衣服の概略背面図、図36Aはその空調衣服に用いられる空調ベルトを裏面側から見たときの概略平面図、図36Bはその空調ベルトが巻き付けられた状態を説明するための図、図37はその空調衣服に用いられる送風手段の概略側面図である。尚、第十六実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第十六実施形態の空調衣服16は、図35に示すように、上半身の上部を覆う上部服地部260と、上半身の下部を覆う下部服地部270と、二つの開閉手段31,31と、二つの着脱手段34,34と、三つの空気流通部40,40,40と、空調ベルト150とを備えるものである。上記の第一から第十五までの各実施形態では、一般の服の形態をそのまま生かして空調衣服を製造していたが、第十六実施形態では、空調ベルト150を用いて服地部を上下二つに分離している。以下、第十六実施形態の空調衣服16を「空調ベルト型衣服」とも称する。この空調衣服16の主な仕様は、図8の表にまとめられている。
上部服地部260は臍部より上側の身体を覆うものであり、下部服地部270は腰部を覆うものである。上部服地部260及び下部服地部270は空気案内手段としての役割を果たす。このため、上部服地部260及び下部服地部270の素材としては空気漏れの少ない素材が用いられる。また、上部服地部260の前部及び下部服地部270の前部にはそれぞれ、開閉手段31,31としてのファスナーが設けられている。
上部服地部260の下端は空調ベルト150の上端に着脱手段34により着脱自在に取り付けられ、下部服地部270の上端は空調ベルト150の下端に着脱手段34により着脱自在に取り付けられている。ここで、着脱手段34,34としてファスナーを用いている。したがって、上部服地部260と下部服地部270とを空調ベルト150に取り付けることにより、空調衣服16が完成する。
空調ベルト150は、図36に示すように、ベルト状のベース部材(帯状部材)151と、二つの送風手段560,560と、ファン制御手段152と、電源手段61と、電源スイッチ(不図示)と、流量調整手段(不図示)と、複数の耐圧スペーサ153と、マジックテープ154a,154bとを備える。送風手段560,560、ファン制御手段152、電源手段61等の電気部品は、ベース部材151の裏面に取り付けられている。
二つの送風手段560,560はベース部材151上の所定位置に取り付けられる。送風手段560は、いわゆるプロペラファンであり、図37に示すように、モータ(不図示)と、プロペラ561と、方向変換手段562と、ファンガード563とを有するものである。ファンガード563は、モータ、プロペラ561及び方向変換手段562を収納するものである。プロペラ561は、外部の空気をプロペラ561の回転軸方向から吸入し、その吸入側と反対側において回転軸方向に略平行に空気を送り出す。方向変換手段562は、プロペラ561からその回転軸方向に沿って取り込まれた空気がその回転軸方向に略直交する方向へ放射状に流れるように空気の流れ方向を変換するものである。例えば、方向変換手段562としては、略円錐形状の部材を用いることができる。したがって、送風手段560,560は、外部の空気を吸入し、その吸入した空気を身体の表面と略平行な方向に流すことができる。尚、プロペラ561の下端と身体又は下着との間に間隔を設けるための間隔保持手段を用いることにより、プロペラ561から吸入された空気が、直接、身体又は下着に当たり、それによって空気の流れ方向を変換することができるが、この間隔保持手段も方向変換手段の一つとみなすことができる。また、送風手段560を空調ベルト150に取り付ける方法としては、第一実施形態で示した方法と同じ方法を用いることができる。
また、送風手段560,560としては、12リットル/秒の流量で身体平行風を流すことができるものを用いている。各送風手段560のファン径は60mm、二つの送風手段560,560のファン総有効面積は45cm2である。ここで、二つの送風手段560,560の消費電力は約2.5Wである。
電源手段61は、ファン制御手段152及び送風手段560,560に電力を供給するものである。ファン制御手段152は、送風手段560,560から発生させる空気の流量を制御するものである。また、図示しない流量調整手段は、送風手段560,560が発生する空気の流量を調整するものである。流量調整手段としては、例えばボリュームが用いられる。
各耐圧スペーサ153は、送風手段560,560、ファン制御手段152、電源手段61等の各電気部品の間に取り付けられている。耐圧スペーサ153は空調ベルト150と身体との間に空気が流通できるような空間を確保するためのものであり、その構造は図19に示す耐圧スペーサ80と同様である。
マジックテープ154aは、ベース部材151の裏面であってその長手方向の一方の端部に取り付けられており、マジックテープ154bは、ベース部材151の表面であってその長手方向の他方の端部に取り付けられている。ここで、マジックテープ154aをA面のものとすると、それに貼り付けられるB面のマジックテープがマジックテープ154bである。したがって、空調ベルト150を胴に巻きつけたときに、マジックテープ154aとマジックテープ154bとを貼り付けることにより、空調ベルト150が胴からずれ落ちないようにすることができる。すなわち、マジックテープ154a,154bは、空調ベルト150の長さを調整して空調ベルト150を胴回りに取り付けるベルト留め手段である。尚、ベース部材151には複数の耐圧スペーサ153が取り付けられているので、空調ベルト150をきつく締めても、空調ベルト150と身体との間に空間を確保することができる。
第十六実施形態の空調衣服16を着用する場合、まず、上部服地部260と下部服地部270とを空調ベルト150に取り付ける。次に、着用者は上部服地部260の袖部を腕に通す。そして、上部服地部260のファスナーを締めることにより、上部服地部260の前部を閉じると共に、下部服地部270のファスナーを締めることにより、下部服地部270の前部を閉じる。最後に、空調ベルト150の両端をマジックテープ154a,154bで貼り付ける。こうして、空調衣服16が着用される。尚、ここでは、下部服地部270の裾部から空気が外部に漏れるのを防止するために、下部服地部270の裾部をズボン等の内部に入れることにする。
着用者が空調ベルト150に設けられた電源スイッチ(不図示)を押すと、ファン制御手段152が送風手段560,560に電力を供給し、送風手段560,560が駆動する。これにより、空調ベルト150から身体平行風が発生し、その発生した身体平行風は上部服地部260及び下部服地部270と身体との間の空間を流れ、空気流通部40,40,40から外部に排出される。尚、空調衣服16の空調能力は約400Wである。
尚、第十六実施形態においては、上部服地部及び下部服地部としては、上部服地部及び下部服地部と身体又は下着との間に身体平行風を流すことができるような形状であれば、どのような形状のものでも用いることができる。また、空調ベルトを留める方法としては、マジックテープに限られず、例えば通常のベルトの留め具等、各種の方法を用いることができる。更に、上部服地部及び下部服地部の前部の開閉手段としては、ファスナーに限られず、空気漏れが少なく、確実に結合できる方法であれば、どのような方法を用いてもよい。
尚、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
上記の第一から第十六までの各実施形態では、さまざまな用途の空調衣服を説明した。当然のことであるが、本発明の空調衣服は、それらの空調衣服に限られるものではなく、上記の各実施形態の仕様を合理的に組み合わせて得られるものであってもよい。
また、上記の各実施形態において、空気案内手段と身体又は下着との間の空間において空気が流れる経路を強制的に設定するための流路設定手段を空気案内手段の内面に設けるようにしてもよい。例えば、流路設定手段としては、スポンジ等の軽量な部材を用いることができる。この流路設定手段を設けることにより、空調衣服としてのパフォーマンスが更に向上する。
また、上記の各実施形態において、空気案内手段と身体又は下着との間の空間における空気の流れを強制的に乱すための空気攪拌手段を空気案内手段の内面のところどころに設けるようにしてもよい。例えば、空気攪拌手段としても、スポンジ等の軽量な部材を用いることができる。この空気攪拌手段を設けることにより、身体平行風が層流になるのを防止することができる。身体平行風が層流になると、身体平行風のうち、体から離れた、すなわち空気案内手段側を流れる空気は、汗の蒸発にあまり寄与しなくなるからである。
また、送風手段の送風方式として吸気方式を採用すると共に、身体平行風の流量が大きく且つ風圧が高い場合には、空気案内手段として、それが身体から大きく離れてしまうような形状のものを用いることは望ましくない。このような形状の空気案内手段を用いると、空気案内手段と身体又は下着との間の空間において空気案内手段の近傍を空気が層流として流れるため、汗の蒸発にあまり寄与しない無駄な空気が多くなるからである。但し、もともと送風量の大きい送風手段の付近では、空気案内手段が身体又は下着から大きく離れても、その部分が一種の空気溜めの役割を果たし、外部から空調衣服内に空気を取り入れる際の空気抵抗が小さくなる。このため、このような場合には、空気案内手段を身体又は下着から大きく離した方が、送風量が大きくなり空調衣服全体としての空調効率が上がる。
更に、上述したように、空調衣服の空調能力は、空気の蒸発寄与率に依存する。そして、空気の蒸発寄与率は、服地部の形状や空気攪拌手段の有無等により変化する。この点を考慮すると、実際に、上記の各実施形態の空調衣服においてそれに対応する図5〜図8に記した空調能力を実現するためには、同図中に記した空気の流量の約80%から約150%までの範囲内の流量の空気を服地部と身体又は下着との間の空間に流す必要がある。
次に、服地部と身体又は下着との間の空間に発生させる空気の流量と空気流通部の総有効断面積との関係、及び、送風手段の総有効断面積(ファン総有効面積)と空気流通部の総有効断面積との関係について説明する。
図38は送風手段から空気案内手段と身体又は下着との間の空間(空気流通空間)を介して空気流通部に至るまでの空気の流れの経路を模式的に示した図である。ここでは、外部の空気が送風手段から空気流通空間内に流入し、空気流出部から外部に流出する場合を考える。また、図38に示す経路は、着用者が送風手段のスイッチをオンしたときに、実際に空気が流れる経路を表している。図38では、ファン総有効面積をS1、空気流通空間内のある位置における空気流通空間の総有効断面積をS2、空気流通部の総有効断面積をS3で示している。ファン総有効面積S1は、例えば送風手段としてプロペラファンを用いた場合には、各送風手段のプロペラ部の面積を合計したものであり、プロペラが構成されていない送風手段の中央部の面積はファン総有効面積S1に含まれない。また、空気流通部の総有効断面積S3は、空気流通部を通過する空気の流れ方向に垂直な平面に、当該空気流通部の面積を射影して得られる面積である。ここで、第五実施形態で説明したような空気透過性の高い布を用いて形成された空気流通部についても、空気流通部の総有効断面積S3に加えられる。
一般に、図38に示すように、空気流通空間の総有効断面積S2は、送風手段から遠ざかるにつれて大きくなり、空気流通部に近づくにつれて小さくなる。また、通常、空気流通部の総有効断面積S3はファン総有効面積S1よりも大きい。すなわち、三つの総有効断面積S1,S2,S3の間には、送風手段及び空気流通部の近くの領域を除き、S1<S3<S2という関係がある。
ファン総有効面積S1は、外観上、露出している送風手段の面積と略等しいので、空調衣服の外観上の違和感を少なくするためには、ファン総有効面積S1をあまり大きくすることは好ましくない。また、もし空気流通部の総有効断面積S3を大きくしようとすると、空気流通部を空気案内手段に多数設けなければならない。しかし、これを行うと、身体平行風が空気流通空間を流れる平均距離が短くなり、空気の蒸発寄与率が低下してしまう。本発明者が実験により確かめたところによると、空気流通部を空気案内手段に設ける場合、空気の蒸発寄与率がそれ程低下しないようにするためには、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量をLリットル/秒とすると、空気流通部の総有効断面積を20・L1/2cm2以下にすればよい。ここで、定数「20」は次元をもった量であり、これとL1/2との積が面積の次元をもつ。
空気の流量が小さい場合、例えば6リットル/秒以下である場合には、図5〜図8におけるファン総有効面積の欄に示されているように、ファン総有効面積S1は小さく、実際、送風手段及び空気流通部の近くの領域を除き、S1<S3<S2の関係が成立している。したがって、この場合には、空調衣服の外観上の違和感も小さく、しかも空気流通部の総有効断面積S3を大きくする必要はないので、空気の蒸発寄与率を低下させることはない。
一方、もし空気の流量を大きくしようとすると、ファン総有効面積S1を大きくする必要がある。この場合には、空気流通路の総有効断面積S3を大きくしないと、上記の三つの総有効断面積S1,S2,S3の間の関係が成り立たなくなってしまうことがある。空気流通路の総有効断面積S3がファン総有効面積S1よりも著しく小さいと、送風圧力を非常に大きくしなければならなくなり、消費電力が非常に大きくなる等の不都合が生じる。この点を考慮すると、空気流通路の総有効断面積S3がファン総有効面積S1よりも小さくなったとしても、空気流通路の総有効断面積S3はファン総有効面積S1の少なくとも0.7倍である必要がある。また、本発明者が実験により確かめたところによると、このような不都合を回避するためには、空気流通部の総有効断面積S3を5・L1/2cm2以上にすればよい。ここで、定数「5」は次元をもった量であり、これとL1/2との積が面積の次元をもつ。
したがって、空調衣服においては、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量をLリットル/秒とすると、空気流通部の総有効断面積が5・L1/2cm2以上20・L1/2cm2以下の範囲内にあることが望ましい。また、ファン総有効面積(送風手段の総有効断面積)に対する空気流通部の総有効断面積の比率が少なくとも0.7倍であることが望ましい。
本発明の空調衣服においては、省エネルギー、電池の連続使用時間(二次電池の場合は一回の充電で使用可能な時間)及び電池のコストや重量を考慮すると、送風手段の消費電力に対する空調衣服の空調能力の比率は大きい程よい。特に、外部の空気が温度33℃、湿度50%であって、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量が少なくとも5リットル/秒である場合、送風手段の消費電力に対する空調衣服の空調能力の比率は少なくとも50倍であることが望ましい。尚、上記の比率は、送風手段のモータの効率、空気の蒸発寄与率等に依存する。
また、本発明の空調衣服では、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量をLリットル/秒とすると、使用する送風手段として、最大静圧、すなわち流量がゼロになるところでの圧力が5・L1/2パスカル以上50・L1/2パスカル以下の範囲内にあるような送風圧力特性を有するものを用いるのが実用的である。ここで、定数「5」、「50」は次元をもった量であり、これらとL1/2との積が圧力の次元をもつ。このためには、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に流す空気の流量が10リットル/秒以下である場合には、送風手段としてプロペラファンを用い、空気の流量が10リットル/秒より大きい場合には、送風手段としてターボファンを用いることが望ましい。
次に、空気案内手段の通気性について説明する。上記の第一実施形態において説明したように、送風手段の送風方式が吸気方式であって、送風手段によって発生される空気の流量が大きい場合には、送風手段の近傍における空気案内手段が、外部の圧力と空気案内手段内の圧力との圧力差によって膨らみ、空気案内手段の近傍には、いわゆる「空気溜め」が形成される。そして、この「空気溜め」が形成された部分(空気溜め部)において、空気案内手段から漏れる空気の流量が最も大きい。ここで、この空気溜め部での上記圧力差は、空気流通部の総有効断面積を大きくする等、空調衣服の設計に応じて小さくすることが可能である。また、送風手段の消費電力及びノイズの低減を図り、送風手段にかかる負担を小さくするためには、この空気溜め部での上記圧力差を小さくする必要がある。本発明者が実験を行った結果、空気案内手段と身体又は下着との間の空間に流れる空気の流量をLリットル/秒とすると、空気溜め部での上記圧力差が0.5・Lパスカル程度であれば、送風手段にかかる負担を小さくできることが確かめられた。ここで、定数「0.5」は次元をもった量であり、これとLとの積が圧力の次元をもつ。この値と空気溜め部を形成する空気案内手段の面積を考え合わせると、空気案内手段に圧力をかけて、空気溜め部での上記圧力差を10パスカルとした場合、1cm2当たり1秒間に漏れる空気の流量が5cc以下であれば空気漏れの問題は回避される。尚、この圧力領域では、上記圧力差と漏れる空気の流量とが略比例すると考えられる。空調衣服に流す空気の流量が、その代表的な値である10リットル/秒であり、空気溜め部を形成する空気案内手段の面積が300cm2である場合、空気溜め部での圧力差は5パスカルになるので、空気溜め部において漏れる空気の流量は、5・(5/10)・300=750cc/sである。すなわち1秒間に750ccの空気が空気溜め部から漏れることになる。このとき、10リットル/秒の空気流量に対する空気溜め部で漏れる空気の流量の割合は、7.5%である。尚、送風手段の送風方式が排気方式でも、同様の考えが成り立つ。
また、上記の第二、第八及び第十一の各実施形態では、送風手段の着脱方式として集積ベルト方式を採用し、電源手段を集積ベルト上に配置した場合について説明したが、空調衣服の使用目的によっては電源手段を必ずしも集積ベルト上に配置せず、例えばズボンのベルトに電源手段を取り付けるようにしてもよい。尚、この点については、集積ベルト方式を採用した空調衣服に限らず、他の空調衣服でも同様であり、電源手段はどこに取り付けてもよい。
更に、本発明の空調衣服を使用する場合、電気部品を除いた服地部を多数用意し、電気部品については一セットだけを用意しておくことが望ましい。実際に着用する服地部にその電気部品を取り付けることにより、毎日、色、柄、形状等の異なる空調衣服を楽しむことができる。
以上説明したように、本発明の空調衣服では、送風手段として着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させることができるものを用いている。このため、本発明の空調衣服は、身体から生じた汗をすばやく蒸発させることができ、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を広げることができるので、例えば、軽作業用衣服、中作業用衣服、雨天作業用衣服、ライン作業用衣服、オフィス用衣服、野外用衣服、防臭用衣服、幼児用衣服、重作業用衣服等に適用することができる。
Claims (57)
- 身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、
前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、
前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、
を備え、
前記送風手段は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とする空調衣服。 - 身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、
前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、
前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、
を備え、
前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大し、且つ、外部の空気が温度33℃、湿度50%である場合、身体から生じた汗が周囲から奪う気化熱が着用者の体重1kg当たり少なくとも340カロリー/時であるような空調能力を有することを特徴とする空調衣服。 - 身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、
前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流通部と、
前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に外部の空気を取り込むと共に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、
を備え、
前記送風手段は少なくとも2リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とする空調衣服。 - 身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、
前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、
前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための少なくとも二つの送風手段と、
前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、
を備え、
前記送風手段は、前記空気案内手段の背中側の下部であって脇腹に近い部位に取り付けられ、着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とする空調衣服。 - 身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、
前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流通部と、
前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に外部の空気を取り込むと共に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、
を備え、
前記送風手段は、前記空気案内手段の背部に取り付けられ、少なくとも10リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体から生じた汗が気化するのを促進し、人体に本来的に備えられている生理クーラー機能が有効に働く範囲を拡大することを特徴とする空調衣服。 - 上着の下に着用される空調衣服であって、
身体の所定部位を覆うと共に、身体又は下着との間の空間において空気を身体又は下着の表面に沿って案内するための空気案内手段と、
前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内を流れる空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に取り入れるための一又は複数の空気流通部と、
前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給するための電源手段と、
を備え、
前記送風手段は着用者の体重1kg当たり少なくとも0.01リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、しかも前記送風手段の最大静圧が少なくとも30パスカルであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間内に空気を流通させることにより、身体の表面近傍における温度勾配を大きくして体を冷却すると共に、身体から生じた汗を蒸発させ、その蒸発の際に汗が周囲から奪う気化熱を利用して身体を冷却することを特徴とする空調衣服。 - 前記空気案内手段は、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に取り込まれた空気の流量に対する前記空気案内手段全体から外部に漏れる空気の流量の割合が多くとも60%であるような空気透過性を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 身体全体の表面積に対する、前記送風手段によって発生された空気で包まれる身体の部分の表面積の割合は、少なくとも略10%であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の内面側の所定位置に、前記空気案内手段と身体又は下着との間に空気を流通させるための空間を局所的に確保する局所スペーサを設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記送風手段は、羽根車の軸方向から吸入した空気を羽根車の外周方向へ放射状に送り出す側流ファンであり、前記空気案内手段の内面側の所定位置に取り付けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記送風手段は、プロペラと、前記プロペラから前記プロペラの回転軸方向に沿って取り込まれた空気が前記プロペラの回転軸方向に略直交する方向へ放射状に流れるように空気の流れ方向を変換する方向変換手段とを有するものであることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記送風手段は、前記空気案内手段と身体又は下着との間を流れる空気を外部に排気するものであって、多くとも6リットル/秒の流量で流れる空気を発生させるものであり、且つ、前記空気案内手段の内面であって所定の部分には、前記空気案内手段と身体又は下着との間に空気を流通させるための空間を確保する面状のスペーサが設けられていることを特徴とする請求項1,2,4,6記載の空調衣服。
- 前記送風手段を、前記空気案内手段の内面側に取り付けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記空気流通部は前記空気案内手段の所定の端部に形成される開口部であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 身体の所定部位を覆う服地のうち、空気透過性の高い布で形成された部分を前記空気流通部として利用することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記服地の全体が空気透過性の高い布を用いて作製されており、前記服地のうち、その内側に空気透過性の低いシート状部材がラミネートされた部分を前記空気案内手段として利用し、前記シート状部材がラミネートされていない部分を前記空気流通部として利用することを特徴とする請求項15記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の所定箇所に孔を開け、その孔を塞ぐようにして空気透過性のよい素材を前記空気案内手段に取り付けることにより前記空気流通部を形成したことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の前部を開閉すると共に、前記空気案内手段の前部を閉じたときに当該前部から空気が外部に漏れるのを防止する開閉手段を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記開閉手段はファスナー又はマジックテープであることを特徴とする請求項18記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の前部を開閉する開閉手段としてボタンを用いており、且つ、前記ボタンが取り付けられた側の前記空気案内手段の端部に、前記ボタンを掛けたときに生じる前記空気案内手段の重なり合う部分の面積を大きくするための延長部を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の裾部に、当該裾部を身体、下着又は衣服に密着させることにより当該裾部から空気が外部に漏れるのを防止する空気漏れ防止手段を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段は、その下部が着用者の臀部及び下腹部を覆うことができるような長さを有するものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の内面側であって前記空気案内手段の裾部近傍の位置に胴回り方向に沿って縫い付けられた帯状布地と、前記帯状布地の身体側の端部に入れられた伸縮性部材とを有し、前記伸縮性部材が入れられた前記帯状布地の端部が身体、下着又は衣服に密着することにより前記空気案内手段の裾部から空気が外部に漏れるのを防止する空気漏れ防止手段を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の素材として実質的に空気が透過しない素材を用いたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の素材として、ポリエステル100%の素材又はポリエステルを80%以上含む混紡素材を用いたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の素材として雨水を吸収しない素材を用いたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段に防水加工又は撥水加工を施したことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の内面に、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間における空気の流れを強制的に乱すための空気攪拌手段を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の内面に、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間において空気が流れる経路を強制的に設定するための流路設定手段を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の内面側であって、前記空気案内手段の外面側に設けられたポケットに対応する位置に、前記電源手段を収納するための収納手段を取り付けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記電源手段として二次電池を用いると共に、太陽電池を用いて前記二次電池を充電することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記電源手段として燃料電池を用いたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記電源手段としてキャパシターを用いたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記電源手段は商用電源であり、DC変換手段を用いて前記商用電源からの交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を前記送風手段に供給することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段は上半身を覆うと共に顔を除く頭部を覆うような形状に構成されたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段は上半身と下半身とを覆うような形状に構成されたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の内面側であって腰に対応する位置に、前記空気案内手段と身体又は下着との間に空気を流通させるための空間を確保するためのスペーサを設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段の内面側であって背中に対応する部分に、前記空気案内手段と身体又は下着との間に空気を流通させるための空間を確保するスペーサを設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 厚さが大きくとも6mmである前記送風手段を少なくとも10個、前記空気案内手段の所定位置に取り付けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記送風手段及び前記電源手段を取り付けるための帯状部材を備えており、且つ、前記空気案内手段が、上半身の上部を覆う上部空気案内手段と、上半身の下部を覆う下部空気案内手段とからなり、前記上部空気案内手段の下端が前記帯状部材の上端に着脱自在に取り付けられ、前記下部空気案内手段の上端が前記帯状部材の下端に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記送風手段を前記空気案内手段の所定位置に着脱自在に取り付けることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記送風手段を取り付けるための帯状部材を備え、前記帯状部材は前記空気案内手段の内面側であって所定の位置に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段が上下二つの部分に分離することができるように構成されており、前記送風手段が前記空気案内手段の下の部分に取り付けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記送風手段を取り付けるための帯状部材を備え、前記帯状部材は前記空気案内手段の内面側であって腰に対応する位置に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記送風手段のオン/オフを指示する信号を送信する遠隔制御用送信手段を備えており、且つ、前記送風手段には、前記電源手段と、前記遠隔制御用送信手段からの信号を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した信号に基づいて前記送風手段の駆動を制御する制御手段とが設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 着用者の体温を検出する体温検出手段又は着用者の動作に応じた作業量を検出する作業量検出手段と、
前記体温検出手段又は前記作業量検出手段で得られた検出結果に基づいて、人体がその時の状況に応じて適切な放熱を行うために必要とされる、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に流通させる空気の流量を算出する演算手段と、
前記演算手段で算出された空気の流量に基づいて前記送風手段の駆動条件を決定し、その決定された前記送風手段の駆動条件にしたがって前記送風手段の駆動を制御する駆動制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。 - 前記電源手段と前記送風手段との間には、出力電圧を変えることができるDC−DC変換手段が設けられており、前記駆動制御手段は、前記DC−DC変換手段を制御することにより、前記送風手段に供給する電力量を変えて、前記送風手段の駆動を制御することを特徴とする請求項46記載の空調衣服。
- 着用者の体調を検出する体調検出手段と、
前記体調検出手段で得られた検出結果に基づいて体調に関する情報を生成する演算手段と、
前記演算手段から送られた前記体調に関する情報を外部の受信手段に送信する通信手段と、
を備えることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。 - 入力手段と、インターネットに接続して通信を行う通信手段と、前記通信手段を制御する制御手段と、前記インターネットを介してダウンロードした情報を出力する出力手段とを備えることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記電源手段の電力を供給するためのケーブルとして耐水性のものを用い、且つ、前記ケーブルを前記空気案内手段の内面に取り付けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
- 前記送風手段は、羽根車の軸方向から吸入した空気を羽根車の外周方向へ放射状に送り出す側流ファンであって、前記羽根車の直径が少なくとも60mmであり、前記空気案内手段と身体又は下着との間に発生させる空気の流量が少なくとも15リットル/秒であるものであり、且つ、前記送風手段が前記空気案内手段の背中に対応する部分に一つだけ設けられていることを特徴とする請求5記載の空調衣服。
- 前記送風手段を背負うための背負い手段を設けたことを特徴とする請求項51記載の空調衣服。
- 外部の空気が温度33℃、湿度50%であって、前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量が少なくとも5リットル/秒である場合、前記送風手段の消費電力に対する空調能力の比率が少なくとも50倍であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量をLリットル/秒とすると、前記送風手段として、最大静圧が5・L1/2パスカル以上50・L1/2パスカル以下の範囲内にあるような送風圧力特性を有するものを用いることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段と身体又は下着との間の空間に発生された空気の流量をLリットル/秒とすると、前記空気流通部の総断面積が5・L1/2cm2以上20・L1/2cm2以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記送風手段の総有効断面積に対する前記空気流通部の総有効断面積の比率が少なくとも0.7倍であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の空調衣服。
- 前記空気案内手段内の圧力と外部の圧力との圧力差が10パスカルである場合、前記空気案内手段1cm2当たり1秒間に漏れる空気の流量が多くとも5ccであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の空調衣服。
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