JPWO2004006699A1 - 冷却衣服 - Google Patents
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Abstract
本発明は、少ない消費電力で、しかも簡易な構造で、快適に過ごすことのできる冷却衣服を提供する。服地部10aの上部には空気流通性のよい素材を使用し、服地部10aの上部以外の部分には実質的に空気が漏れないような素材を使用する。服地部10aの裏面には、服地部10aと下着との間に空気流通路が形成される。服地部10aの下部には、前記空気流通路内の空気を外部に取り出すための空気流出部50aが設けられ、空気流出部50aに対応する服地部10aの裏面の位置には、空気流通路内に空気の流れを強制的に生じさせるファンが設けられる。ファンにより服地部10aの上部から外部の空気を空気流通路内に取り入れ、その空気を空気流通路内に体の表面と略平行に流通させることにより、体を冷却する。
Description
本発明は、高温の環境下でも快適に過ごすことができる冷却衣服に関する。
夏などの暑い季節に、暑さを解消する手段として現在最も広く用いられているのはエアーコンディショナーである。これは、部屋の空気を直接冷やすものであるため、暑さを解消するという点においては、非常に有効である。
しかしながら、エアーコンディショナーは、高価な装置であり、世帯普及率は高くなってきたが、一つの世帯の各部屋ごとに普及するまでには至っていない。また、エアーコンディショナーは大量の電力を消費するため、エアーコンディショナーが普及することによって社会全体の電力消費も増え、しかも、発電の大きな割合を化石燃料に頼っている現状では、エアーコンディショナーが普及することによって、地球全体の温暖化につながるという皮肉な結果を招く。また、エアーコンディショナーは、部屋の空気そのものを冷却するので、冷えすぎによって健康を損なうといった問題も考えられる。
そこで、暑い季節でも、消費電力が少なく、かつ、快適に過ごすことのできる衣服が案出されれば、かかる問題の幾分かの解決につながる。
しかしながら、エアーコンディショナーは、高価な装置であり、世帯普及率は高くなってきたが、一つの世帯の各部屋ごとに普及するまでには至っていない。また、エアーコンディショナーは大量の電力を消費するため、エアーコンディショナーが普及することによって社会全体の電力消費も増え、しかも、発電の大きな割合を化石燃料に頼っている現状では、エアーコンディショナーが普及することによって、地球全体の温暖化につながるという皮肉な結果を招く。また、エアーコンディショナーは、部屋の空気そのものを冷却するので、冷えすぎによって健康を損なうといった問題も考えられる。
そこで、暑い季節でも、消費電力が少なく、かつ、快適に過ごすことのできる衣服が案出されれば、かかる問題の幾分かの解決につながる。
本発明は、このような技術的背景のもとになされたものであり、少ない消費電力で、しかも簡易な構造で、快適に過ごすことのできる冷却衣服を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、服地部に設けられた、外部の空気を前記服地部内に取り入れるための一又は複数の空気流入部と、
前記服地部に設けられた、服地部内の空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流出部と、
前記服地部と体又は下着との間の空間から外部に空気を排出することにより、前記空間に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の送風手段と、
前記体又は下着に対向する側の前記送風手段の表面を覆うように設けられた、前記送風手段と体又は下着との間に一定の間隔を確保するための一又は複数の間隔確保手段と、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記服地部と前記体又は下着との間を流通する空気が前記服地部の下端から外部に漏れるのを防止するための空気漏れ防止手段と、
を備え、前記送風手段によって前記空気流入部から外部の空気を前記服地部内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記空間内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記空間内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、
服地部の下部に設けられた、外部の空気を前記服地部内に取り入れるための一又は複数の空気流入部と、
前記服地部の上部に設けられた、服地部内の空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流出部と、
前記服地部と体又は下着との間の空間に外部の空気を送り込むことにより、前記空間に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の側流ファンと、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記服地部と体又は下着との間を流通する空気が前記服地部の下端から外部に漏れるのを防止するための空気漏れ防止手段と、
を備え、前記側流ファンによって前記空気流入部から外部の空気を前記服地部内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記空間内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記空間内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、服地部に設けられた、服地部内の空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記服地部内に取り入れるための一又は複数の空気流通口と、
前記空気流通口に対応する前記服地部の位置に設けられた、前記服地部と前記体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記空間を介して前記空気流通口と反対側に位置する前記服地部の所定部位であって、空気流通性のよい素材が用いられた部位である空気透過部位と、
を備え、前記送風手段によって前記空気流通口から又は前記空気透過部位から外部の空気を前記空間内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記空間内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記空間内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
更に、上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、服地部と体又は下着との間の空間を上下二つに仕切るための仕切手段と、
前記仕切手段に設けられた、前記服地部と体又は下着との空間内に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記服地部の上部及び下部のうち少なくとも一方に設けられた、前記空間内の空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空間内に取り入れるための空気流通部と、
を備え、前記送風手段によって前記空気流通部から又は前記服地部の端部から外部の空気を前記空間内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記空間内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記空間内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
尚、「下着」とは、冷却衣服の下に着用する衣類を意味する。
上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、服地部に設けられた、外部の空気を前記服地部内に取り入れるための一又は複数の空気流入部と、
前記服地部に設けられた、服地部内の空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流出部と、
前記服地部と体又は下着との間の空間から外部に空気を排出することにより、前記空間に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の送風手段と、
前記体又は下着に対向する側の前記送風手段の表面を覆うように設けられた、前記送風手段と体又は下着との間に一定の間隔を確保するための一又は複数の間隔確保手段と、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記服地部と前記体又は下着との間を流通する空気が前記服地部の下端から外部に漏れるのを防止するための空気漏れ防止手段と、
を備え、前記送風手段によって前記空気流入部から外部の空気を前記服地部内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記空間内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記空間内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、
服地部の下部に設けられた、外部の空気を前記服地部内に取り入れるための一又は複数の空気流入部と、
前記服地部の上部に設けられた、服地部内の空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流出部と、
前記服地部と体又は下着との間の空間に外部の空気を送り込むことにより、前記空間に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の側流ファンと、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記服地部と体又は下着との間を流通する空気が前記服地部の下端から外部に漏れるのを防止するための空気漏れ防止手段と、
を備え、前記側流ファンによって前記空気流入部から外部の空気を前記服地部内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記空間内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記空間内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、服地部に設けられた、服地部内の空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記服地部内に取り入れるための一又は複数の空気流通口と、
前記空気流通口に対応する前記服地部の位置に設けられた、前記服地部と前記体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記空間を介して前記空気流通口と反対側に位置する前記服地部の所定部位であって、空気流通性のよい素材が用いられた部位である空気透過部位と、
を備え、前記送風手段によって前記空気流通口から又は前記空気透過部位から外部の空気を前記空間内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記空間内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記空間内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
更に、上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、服地部と体又は下着との間の空間を上下二つに仕切るための仕切手段と、
前記仕切手段に設けられた、前記服地部と体又は下着との空間内に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記服地部の上部及び下部のうち少なくとも一方に設けられた、前記空間内の空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空間内に取り入れるための空気流通部と、
を備え、前記送風手段によって前記空気流通部から又は前記服地部の端部から外部の空気を前記空間内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記空間内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記空間内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
尚、「下着」とは、冷却衣服の下に着用する衣類を意味する。
図1(a)は本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図1(b)はその冷却衣服の概略背面図である。
図2(a)はその冷却衣服に用いられるファンの概略平面図、図2(b)はそのファンの概略側面図、図2(c)はそのファンの概略底面図である。
図3(a)はその冷却衣服に用いられる間隔確保手段の概略平面図、図3(b)はその間隔確保手段の脚部の概略拡大平面図である。
図4はファンを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。
図5は四つのファンの接続コードを固定する方法を説明するための図である。
図6は第一実施形態の冷却衣服で利用する冷却原理を説明するための図である。
図7はその冷却衣服により冷却効果を得ることができる環境を説明するためのグラフである。
図8に空気流入部に取り付けられた側流ファンの概略図を示す。
図9はファンの取り付け方法の他の例を説明するための図である。
図10(a)は本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図10(b)はその冷却衣服の概略背面図である。
図11は本発明の第三実施形態に係る冷却衣服を説明するための図である。
図12は本発明の第三実施形態の変形例で用いるベルトの概略平面図である。
図13は本変形例のバンドの装着状態を示す概略部分側面図である。
図2(a)はその冷却衣服に用いられるファンの概略平面図、図2(b)はそのファンの概略側面図、図2(c)はそのファンの概略底面図である。
図3(a)はその冷却衣服に用いられる間隔確保手段の概略平面図、図3(b)はその間隔確保手段の脚部の概略拡大平面図である。
図4はファンを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。
図5は四つのファンの接続コードを固定する方法を説明するための図である。
図6は第一実施形態の冷却衣服で利用する冷却原理を説明するための図である。
図7はその冷却衣服により冷却効果を得ることができる環境を説明するためのグラフである。
図8に空気流入部に取り付けられた側流ファンの概略図を示す。
図9はファンの取り付け方法の他の例を説明するための図である。
図10(a)は本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図10(b)はその冷却衣服の概略背面図である。
図11は本発明の第三実施形態に係る冷却衣服を説明するための図である。
図12は本発明の第三実施形態の変形例で用いるベルトの概略平面図である。
図13は本変形例のバンドの装着状態を示す概略部分側面図である。
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態について説明する。
最初に、本発明の第一実施形態に係る冷却衣服を説明する。図1(a)は本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図1(b)はその冷却衣服の概略背面図、図2(a)はその冷却衣服に用いられるファンの概略平面図、図2(b)はそのファンの概略側面図、図2(c)はそのファンの概略底面図である。図3(a)はその冷却衣服に用いられる間隔確保手段の概略平面図、図3(b)はその間隔確保手段の脚部の概略拡大平面図、図4はファンを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図、図5は四つのファンの接続コードを固定する方法を説明するための図である。
第一実施形態の冷却衣服は、図1及び図4に示すように、服地部10と、三つの空気流入部40と、四つの空気流出部50と、四つのファン(送風手段)60と、四つの間隔確保手段80と、電源ボックス90と、空気漏れ防止手段(不図示)とを備えるものである。第一実施形態では、かかる冷却衣服を、作業服、ユニホーム等、裾の部分をズボンの中に入れないで着用するタイプの衣服に適用した場合について説明する。この冷却衣服は、長袖の衣服であって、ファスナーで前を閉じるタイプのものであるとする。また、この冷却衣服は、下着の上に着用される。ここで、第一実施形態では、冷却衣服の下に着用する衣類を「下着」と称することにする。例えば、冷却衣服の下にワイシャツを着ることにすれば、そのワイシャツは、ここでいう「下着」である。
第一実施形態では、冷却衣服を着用したときにその前部を閉じる手段としてファスナーを用いている。ボタンやホック等を用いることもできるが、ファスナーを用いるのが望ましい。ファスナーは簡単に開閉することができ、しかもファスナーを閉じたときにそのファスナーの部分から外部へ空気がほとんど漏れないからである。ファスナーを閉じることにより、服地部10と下着との間に空気流通路が構成されることになる。すなわち、空気流通路というのは、服の形状、服地の材質、服の大きさ、着衣のしかた等により、服地部と下着との間のほぼ決まった所や、体の動き等により不定の所にできる空間のことをいう。この空気流通路に外部の空気を強制的に流し込むと、場所的なむらはあるが、下着と服地部との間に体と略平行な空気が流れる。また、場所によりばらつきができても、間隔が小さいと、一般的に空気の流れは速くなり、かつ、体の近くを風が通る為、むしろ冷却効果が大きくなる場合もあり、間隔のばらつきによる、冷却効果の差さはあまり大きくならない。
服地部10の上端部近傍には、空気流入部40が形成されている。この空気流入部40の横幅は、充分な幅をもっている。空気流入部40は、例えば、服地部10の所定部分を切り欠き、その切り欠いた部分に、服地部10の裏面側からメッシュ状の素材41を縫い付けることにより形成される。このメッシュ状の素材41は、冷却衣服の外観上の違和感を少なくするためのものである。かかる空気流入部40から外部の空気が空気流通路内に流入する。図1の例では、空気流入部40を、服地部10の上部の前側に二つ、その後側に一つの合計三つ設けている。尚、襟首や袖の部分も、広い意味では空気流入部と考えることができる。
一方、空気流通路の下端部に対応する服地部10の所定位置には、空気流出部50が形成されている。この空気流出部50も空気流入部40と同様にして形成される。すなわち、例えば、服地部10の所定部分を切り欠き、その切り欠いた部分に、服地部10の裏面側からメッシュ状の素材51を縫い付けることにより形成される。このメッシュ状の素材51は冷却衣服の外観上の違和感を少なくするためのものである。かかる空気流出部50から空気流通路内の空気が外部に流出する。空気流出部50の数はファン60の数と同じである。図1の例では、空気流出部50を、服地部10の下部の前後に二つずつ、合計四つ設けている。
四つのファン60は、空気流通路内に空気の流れを強制的に生じさせるためのものであり、それぞれ各空気流出部50に対応する服地部10の裏面の位置に取り付けられる。すなわち、ファン60を服地部10の下部の前後に二つずつ設けている。このファン60は、空気流通路内の空気を外部に排出する方向に回転する。ファン60をこの方向に回転させると、空気流通路内の圧力が低下し、空気流入部40から外部の空気が空気流通路内に流入する。この流入した空気は、空気流通路内において体表に略平行であって下側に向かう方向に沿って移動する。そして、空気は、ファン60に達すると、ファン60に吸引されて空気流出部50を介して外部へ排出される。なお、上述した、空気流通路内の空気を外部に排出する方式でも、服内外の圧力差は小さいので、一般の生地を使用する服の場合、服内外の圧力差で服地が下着に密着してしまうことはない。また、服地の部分的なしわにより服地部と下着が接触し、接触部に空気が通らなくても接触部の面積があまり大きくなければ、温度、湿度ともにすばやく拡散する。勿論、腰のある服地を使用したり、服地部の形状を工夫したりして積極的に空間を確保する事も可能である。しかしながら、デザインの問題やコストの問題が発生する。一方、市販されている通常の服地を使用しても、冷却に必要な流通路を十分に確保することができる。但し、伸縮性に富む素材を服地に使用すると、服地部と下着とが密着して空間を確保することが難しくなるので、好ましくない。
四つのファン60は、図5に示すように、並列に接続されており、その接続コード69が電源ボックス90に繋がれている。電源ボックス90には電池(電源手段)が収納されている。この電池が四つのファン60に電力を供給する電源である。また、電源ボックス90には、ファン60の駆動をオン/オフするスイッチが設けられている。冷却衣服の着用時には、電源ボックス90は、例えばズボンのベルトに取り付けられる。また、電源ボックス90を、服地部10に設けた専用のポケットに収納してもよい。
電池としては、通常、経済性の観点から二次電池が用いられる。しかし、最も好ましいのは、電池として燃料電池を用いることである。燃料電池は、二次電池に比べて、小型であり、充電する手間もかからないからである。しかも、燃料電池は、冷却衣服と相性がよいと考えられる。燃料電池というのは、その特性上、一時に大容量の電流を流す必要がある場合には適さず、一定の電流をじわじわ流すような場合に適している。冷却衣服の場合には、ファン60を駆動するために電池を用いるので、急激な立ち上がり電流がないからである。
ところで、燃料電池は、発電時に水蒸気を発生するので、冷却衣服における電源として燃料電池を用いた場合、燃料電池から発生した水蒸気が服地部10を濡らしてしまうことがある。このため、燃料電池は、服地部10内において空気流通性の優れたところに設けることが望ましい。これにより、水蒸気を、流通する空気と共に外部に排出することができるので、水蒸気によって服地部10が濡れてしまうのを防止することができる。
また、服地部10の裏面の所定位置(数箇所)には、図5に示すように、各ファン60から引き出された接続コード69を固定するためのコード固定手段15が設けられている。コード固定手段15としては、例えば1cm×4cmの細長いマジックテープが用いられる。このマジックテープはA面、B面が一体となったものである。そのマジックテープの先端部を服地部10の裏面に縫い付けておく。そして、そのマジックテープで接続コード69を巻き込むようにして、マジックテープの後端部をその先端部に貼り付けることにより、接続コード69を固定することができる。
ファン60は、図2に示すように、筐体部61と、羽根部71と、回路部(不図示)と、マジックテープ72とを有する。筐体部61は、円筒状部材65と、リング状部材66と、円板状部材67と、三つの保持部材68とからなる。リング状部材66は円筒状部材65の外側面の所定位置に設けられている。円板状部材67は、円筒状部材65の内部に設けられ、円筒状部材65の内側面に設けた三つの保持部材68により保持されている。かかる筐体部61は、プラスチックを用いてインジェクション成形により一体的に製造される。また、円筒状部材65の高さ(ファン60の厚さ)は約6mmである。
羽根部71と回路部は、円筒状部材65の内部に配設され、回路部は円板状部材67上に取り付けられている。回路部は回転モータ(駆動手段)を含み、この回転モータの軸に羽根部71が取り付けられている。この羽根部71としては、その直径が例えば10mm〜100mmのものが用いられる。このとき、羽根部71の回転軸は、円筒状部材65の中心軸と略平行であり、リング状部材66の表面に略垂直である。かかるファン60にはある程度の排気能力が要求される。例えば、ファン60としては、駆動時にファン60付近における服地部10の内外の空気圧差を最大50Paにすることができるものであれば十分である。また、本実施形態の方式では空気流通路の抵抗が大きい部分があるので、静圧が5Pa以上のファンを用いる事が望ましい。また、ファンにより空気流通路内の空気を排出する方式の場合、服地の変形、下着への密着を防ぐ為には150Pa以下の静圧のファンを用いることが望ましい。また、ファン60による風量は大きい程、冷却効果が高くなるが、すべてのファン60の風量はトータルで少なくとも1リットル/secであることが望ましい。
尚、ファン60としては、重さが40g以下であるものを用いることが望ましい。ファン60の重さで服地部10が変形しないようにするためである。また、ファン60のノイズは40dB[A]以下であることが望ましい。
羽根部71を回転させると、空気流通路内の空気は、円筒状部材65の一方の開口部から羽根部71に向かって流れ込み、羽根部71を介して円筒状部材65の他方の開口部から外部に排出される。かかるファン60は、その大きさの割には風量が多く、第一実施形態の冷却衣服に用いるのに適している。但し、空気流通路内の空気を円筒状部材65内に取り込むためには、円筒状部材65の下着に対向する側の端面と下着との間に一定の空間を設けなければならない。一般に、この空間の大きさはファン60の径に応じて決められる。
マジックテープ72は、リング状部材66の裏面に接着される。かかるマジックテープ72は、ファン60を服地部10に着脱自在に取り付けるためのものである。このマジックテープ72をA面のものとすると、B面のマジックテープ16は、図4に示すように、服地部10の裏面における空気流出部50の周囲部に縫い付けられている。これら二つのマジックテープ72,16を貼り付けることにより、ファン60が空気流出部50の周囲に取り付けられる。このため、冷却衣服を着用すると、羽根部71の回転軸は下着の表面に対して略垂直になる。尚、マジックテープ72の接着部位であるリング状部材66の形状を円形状にしたのは、そのマジックテープ72とペアになるマジックテープ16を服地部10に取り付ける場合、その取り付け面積はなるべく小さい方が望ましいからである。
一方、ファン60を冷却衣服から取り外す場合には、まず、コード固定手段15としてのマジックテープを剥がして、接続コード69の固定状態を解除する。次に、各ファン60のマジックテープ72を剥がして、四つのファン60を冷却衣服から取り外す。こうして、誰でも簡単にファン60を容易に取り外すことができる。尚、ファン60をマジックテープ72で着脱する代わりに、シート状マグネットを用いて着脱するようにしてもよい。このようにファン60及び電源ボックス90を着脱自在に構成することにより、冷却衣服を容易に洗濯できるだけでなく、ファン60が壊れたときにファン60だけを交換できるという利点もある。
また、ファン60を空気流出部50の周囲に取り付けたとき、ファン60が空気流出部50のメッシュ状素材51から突出しないように、ファン60を設計している。すなわち、図2(b)に示すように、ファン60の裏面側において、円筒状部材65の端面とリング状部材66との間隔dを、マジックテープ72の厚さと空気流出部50に設けたマジックテープの厚さとの和になるように設計している。これにより、図4に示すように、ファン60を服地部10に取り付けたときに、ファン60の端面は服地部10の表面と略同一平面上にあることになる。したがって、冷却衣服の着用者にとっては作業時にファン60が邪魔になることはなく、また、冷却衣服の外観上の違和感も少ない。尚、一般的には、ファン60の端面が服地部10の表面から5mmよりも多く外側に突出しないように、ファン60を取り付けることが望ましい。
ファン60を駆動すると、通常、羽根部71は一定の回転数で回転する。これにより、ファン60は一定の風量で空気を送り出す。これに限らず、ファン60は、例えば、風量を調整したり、風量に強弱をつけたりして空気を送り出す、いわゆるゆらぎ送風を行うようにしてもよい。この場合、羽根部71の回転数を変化させるのに、可変抵抗等を用いたのでは、電力がロスしてしまうので、PWM(pulse width modulation)等の変調方式を用いたり、あるいはDC−DCコンバータで電圧を変化させることが望ましい。更に、冷却衣服の内部に温度センサ又は温湿度センサを設けておき、かかるセンサで検知した温度又は温湿度に基づいて、羽根部71の回転数を制御するようにしてもよい。
尚、屋外作業中、急に雨が降ってきたときには、ファン60が濡れてしまうが、この対策として、ファン60の回路部に耐水加工を施すことが望ましい。具体的に、かかる耐水加工としては、回路部に樹脂をコーティングすることが考えられる。
間隔確保手段80は、ファン60と下着との間に一定の間隔を確保するためのものである。冷却衣服の着用者が作業をしたり、何らかの動作をしていると、どうしても下着にしわができてしまう。そのしわによりファン60の上端(ファン60の下着に対向する側の端)と下着との間隔が狭くなり、空気がファン60に流れ込みにくくなる。このような場合に、間隔確保手段80は、下着のしわを抑え込み、空気の流れを確保する役割を果たす。
間隔確保手段80は、図3(a)に示すように、本体部81と、四つの脚部82とを有する。この間隔確保手段80は、厚さ約0.3mmであり、その材料としては、柔らかく且つ弾力性を有するプラスチックシート等が用いられる。本体部81の外形は略円形状であり、また、本体部81には複数の開口部を形成している。図3(a)の例では、木体部81に四つの扇状の開口部を形成し、本体部81がリング状部と、その内部に位置する交差した二つの線状部とからなる場合を示している。但し、上記の開口部の大きさは、しわになった下着の部分が入り込まない程度にする必要がある。
脚部82は、図3(b)に示すように、その先端部には、長手方向に沿って長い切欠き部82aが形成されており、また、その幅方向には二つの短い切欠き部82bが形成されている。前者の切欠き部82aは脚部82の幅を狭くすることができるようにするためのものであり、後者の切欠き部82bは脚部82を固定するためのものである。また、ファン60のリング状部材66には、図2に示すように、間隔確保手段80を取り付けるための四つの取付部66aが形成されている。かかる取付部66aはリング状部材66の表面から突出して形成されている。また、各取付部66aには、脚部82を挿入するための孔が形成されている。
間隔確保手段80をファン60に取り付けるには、まず、本体部81をファン60に対向する位置に配置し、一つの脚部82の先端部を手で押えて、その幅を狭くする。そして、その状態のまま、脚部82の先端部を、所定の取付部66a内に押し込む。これにより、脚部82の二つの切欠き部82bが取付部66aと係合し、その脚部82が固定される。同様に、他の三つの脚部82も各取付部66aに固定する。こうして、間隔確保手段80は、図4に示すように、下着に対向する側のファン60の表面を覆うように取り付けられる。間隔確保手段80を設けたことにより、下着にしわができたときに、間隔確保手段80の本体部81がそのしわになった下着の部分をブロックすることができるので、下着とファン60との間に常に一定の間隔を確保することができる。
また、間隔確保手段80は、弾力性を有するため、外部から押圧されたときに、その押圧された方向に容易に移動することができる。したがって、間隔確保手段80が下着に当接している場合に、着用者に間隔確保手段80が硬いという感じを与えることはない。また、間隔確保手段80は、押圧されたときには容易につぶれてしまい、その押圧力から開放されたときには直ちに元の状態に戻ることができる。実際、間隔確保手段80としては非常に弱い弾力性を有するものを用いれば十分である。
例えば、着用者が冷却衣服を着たまま椅子に腰掛けて、冷却衣服の背中部が椅子の背もたれによって押された場合には、間隔確保手段80は押しつぶされて、その本体部81がファン60の上端に接するようになる。このように、間隔確保手段80は、その弾力性により押しつぶされるので、着用者にごつごつした感じを与えることはない。但し、間隔確保手段80の本体部81がファン60の上端に接した状態では、空気がファン60に流入することができないので、背中における冷却効果はあまり有効ではない。
また、間隔確保手段80は、しわになった下着の部分が空気の流れを妨げるのを防止する役割と共に、下着に接して、ファン60の近傍における空気流通路を確保するスペーサとしての役割を備えている。間隔確保手段80がスペーサとしての役割を果たすためには、ファン60が実用的サイズのものである場合、間隔確保手段80の本体部81とそれに対向する側のファン60の上端との距離を、少なくとも約2mmとする必要がある。かかる距離を2mmより小さくすると、流通する空気の受ける抵抗が大きくなり、風量が低下するからである。
尚、上述したファン60の代わりに、シロッコファンに代表される側流ファンを、第一実施形態の冷却衣服に用いることも可能である。側流ファンとは、羽根の軸方向から吸入した空気を、羽根の外周方向へ放射状に送り出すファンのことである。側流ファンを冷却衣服に用いる場合には、空気流入部を服地部の下部に、空気流出部を服地部の上部に設け、側流ファンを、空気流入部に対応する服地部10の裏面の位置に取り付ける。図8に空気流入部に取り付けられた側流ファンの概略図を示す。図8に示すように、側流ファン600が空気流入部40から吸入した空気は、側流ファン600の側面から空気流通路内に放射状に送り出され、空気流通路内を通って空気流出部から外部に排出される。特に、側流ファン600として、ある程度の厚さを有するものを使用すれば、ファンの周辺にも必ず服地と下着との間に空間が出来、空気抵抗を減らすことが出来る。また、側流ファンを使用する場合、側流ファンは圧力が高いので、空気流通路の空気抵抗が高くても空気を流しやすいというメリットがある。
次に、服地部10の素材について説明する。服地部10の素材としては、例えば、ダウンジャケットの表地などに使われる高密度布を用いる。高密度布は、通常の布と比べると高い密度で織られている。後述するように、第一実施形態の冷却衣服は、体により温められて湿った空気を、空気流通路内を流通させて、空気流出部50から排出することにより、かかる空気を外気と絶えず置き換えていくものであるため、空気が空気流通路内を流通する途中で服地部10から漏れないようにする必要がある。高密度布は糸の密度が高いため、糸の間から外部へ漏れる空気の量が非常に少なく、ほとんどの空気が空気流通路内を通って空気流出部50に達し、そこから外部に排出される。このため、高密度布は、服地部10の素材として用いるのにとても望ましい。また、高密度布は、あくまでも布であるため、汚れた場合には家庭用の洗濯機などで容易に洗うことができるという利点もある。このような高密度布は、各種の目的で製造されており、安価で入手できる。尚、高密度布は空気流通性のよくないものであることが好ましいが、具体的には、高密度布として、5Paの圧力を加えたときに、当該高密度布を単位時間、単位面積当たりに通過する空気の体積が5cc/cm2/sec以下であるものを用いる必要がある。
また、服地部10の素材としては、高密度布だけでなく、実質的に空気が漏れないものであれば、どのような素材でも用いることができる。特に、汚れを伴う作業を行う際に冷却衣服を使用する場合には、服地部10の素材としては、表面が滑らかなビニールやナイロン等、吸水性のない素材又は撥水加工してある素材を用いることが望ましい。服地部10に付いた汚れを容易に落とすことができるようにするためである。また、服地部10の素材として吸水性のある素材を用いると、雨等で服地部10が濡れたときに、空気流通路内を流通する空気が服地部10に吸収された水分を蒸発するのに使用され、体からの汗は有効に蒸発できなくなってしまうからである。これにより、汚れが服地部10にしみ込むことはなく、また、汚れを簡単に落とすことができる。また、服地部に吸水性のある素材を使用すると、汗に濡れた下着と接触して服地部が濡れ、体を動かしても、下着と服地部とが離れにくくなる。また、例え離れて空気が流れるようになっても服地側の汗の蒸発は、体の冷却にはあまり効果がない。吸水性のない素材は通気性が悪く、冷却衣服内の湿気を、当該素材を通して外部へ放散することはできないが、湿気はファン60によって空気とともに空気流通路内を通って外部に排出されるので、何ら問題はない。尚、冷却衣服を主に屋外での作業時に着用する場合には、服地部10の表面に熱線反射処理を施すことが望ましい。
ところで、冷却衣服の下端は開放されており、服地部10と下着との間を流通する空気が服地部10の下端から漏れることがあり、この場合、冷却衣服には、空気漏れ防止手段を設ける必要がある。例えば、冷却衣服の裾の部分にゴムを入れておき、そのゴムにより裾の部分を縮めることにより、冷却衣服の裾の部分を着用者の胴回りに密着させるようにすればよい。また、紐やベルトにより、冷却衣服の裾の部分を着用者の胴回りに密着させてもよい。尚、ファンを服地部の中央部付近に設け、服地部の上部だけでなく下部にも空気流入部を設けた冷却衣服を製作することもできる。この場合でも、上記の空気漏れ防止手段は必要である。
また、かかる冷却衣服を作製する場合、ファン60、電源ボックス90をパーツ化して予め製造しておくことが望ましい。これにより、冷却衣服を作業服以外の衣服に適用する場合でも、冷却衣服を容易に作製することができる。
次に、第一実施形態の冷却衣服で利用する冷却の原理について説明する。図6は第一実施形態の冷却衣服で利用する冷却原理を説明するための図である。図6(a)では、温度30℃の部屋に人Aが居るときに、その人Aの周囲の温度分布を等温曲線(点線)で概略的に示している。恒温動物である人Aの体温はほぼ一定であり、この温度を36℃とすると、部屋の空気に大きな対流がないと仮定した場合には、図6(a)に示すように、人Aの付近が最も温度が高く、人との距離が離れるにしたがって徐々に低下しながら30℃に近づく。
図6(b)は室温20℃の部屋に人Aが居るときの温度分布を等温曲線で概略的に示した図である。図6(b)を図6(a)と比べると分かるように、図6(b)の場合は図6(a)の場合に比べて、等温曲線同士の間隔が密である。言い換えると、図6(b)の場合は、図6(a)の場合に比べて温度勾配が大きい。温度勾配の大小は、放出される熱の量を左右し、人の温度の感じ方に大きな影響を与える。すなわち、人は、温度勾配が大きいほど暑さ、寒さを強く感じる。
この点に着目し、第一実施形態では、人の体の表面近傍における温度勾配を強制的に大きくし、これによって、人が涼しさ、快適さを感じるようにする。図6(c)は、室温30℃の部屋に、人Aが第一実施形態の冷却衣服を着用しているときの温度分布を示している。図6(c)の場合の室温は図6(a)の場合と同じであるが、人Aが冷却衣服を着用し、その冷却衣服の空気流通路内に室温と同じ30℃の空気を流し続けることにより、30℃の等温曲線が人Aの体から僅かに離れたところに位置する。このため、人Aの体の表面から周囲に向かう温度勾配は非常に大きくなり、人Aと冷却衣服との間の温度勾配だけを考えると、図6(b)の場合に類似している。
第一実施形態の冷却衣服を着用して空気流通路内に空気を流通させ、体の表面から比較的近い部分の温度を体温よりも低い温度とすることによって、体の表面近傍において大きな温度勾配を実現することができる。この大きな温度勾配によって、人の体の表面から発せられる熱は容易に温度の低い冷却衣服の側に放射され、そして、空気流通路内を流れる空気によって素早く吸収される。したがって、第一実施形態の冷却衣服では、ファン60により空気を空気流通路内に流通させるだけで、着用者は涼しさを感じることができる。
上述したように、体の表面近傍における大きな温度勾配が大きな冷却効果を生み出すが、同様なことが湿度についても言える。すなわち、暑いときには、体の表面近傍の湿度は約100%になっている。このとき、体の表面近傍に外気湿度の層を作ることにより、体の表面近傍において大きな湿度勾配を実現することができる。かかる大きな湿度勾配により、汗の蒸発が促進され、人は涼しく感じることができる。
第一実施形態の冷却衣服では、服地部10と下着との間の空間である空気流通路に空気を流通させている。汗をかいているが、その汗はそれ程下着に吸収されていないような状況下では、下着は水蒸気を透過させるので、汗は下着を通り抜けて服地部10と下着との間の空間に入り込む。そして、この水蒸気は空気流通路内を流れる空気によって容易に外部に運び出され、発汗による気化熱の吸収によって体がダイレクトに冷やされる。すなわち、体からの汗と空気流通路を流通する空気とを接触させることにより体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して体を冷却する。
また、汗をダラダラかき、その汗の大部分が下着に吸収されているような状況下では、下着に吸収された汗は空気流通路内を流れる空気によって外部に運び出されるので、その汗の蒸発量はとても多くなる。これにより、下着の表面温度は大きく低下する。例えば、室温が30℃のときに、濡れた下着の表面近傍に室温と同じ温度の空気を十分流すと、その下着の表面温度は室温よりも3℃〜5℃くらい低下する。特に、下着が体に密着していれば、体と下着との間には水分が存在し、しかも濡れた下着の熱抵抗は乾いた下着の熱抵抗に比べて極端に小さいので、体の表面近傍には大きな温度差が生じ、着用者は冷たいと感じるようになる。したがって、人間が本来的に有する体温の自動調整機能により、着用者はあまり汗をかかなくなり、十分な涼しさを感じることができる。
このように、汗をかくような状況にあっては、体の表面近傍において温度勾配を上げると共に、湿度勾配をも上げることができるので、着用者は、さらに涼しさを感じ、快適に過ごすことができる。
次に、第一実施形態の冷却衣服により冷却効果を得ることができる環境について説明する。図7はその冷却衣服により冷却効果を得ることができる環境を説明するためのグラフである。図7において縦軸は湿度、横軸は温度を表す。左側の曲線S1は湿球温度が30℃である曲線を示す。真ん中の曲線S2は湿球温度が33℃である曲線、右側の曲線S3は湿球温度が36℃である曲線を示す。尚、かかるグラフは、十分な風量がある環境において得られたものであり、ここでは、その結果を概略的に示している。
上述した冷却の原理から分かるように、体からの汗が蒸発できないような環境の下では、冷却衣服を使用してもその冷却効果は得られない。したがって、理論上は、図7において、右側の曲線S3を境界としてその右側の領域に対応する環境下では、冷却衣服による冷却効果はほとんどないと考えられる。また、右側の曲線S3と真ん中の曲線S2とで囲まれた領域に対応する環境下でも、体からの汗があまり蒸発できないので、冷却衣服による冷却効果はそれ程期待できない。一方、真ん中の曲線S2と左側の曲線S1とで囲まれた領域に対応する環境下では、体からの汗が蒸発できるので、冷却衣服による冷却効果が得られる。そして、左側の曲線S1を境界としてその左側の領域に対応する環境下では、体からの汗が十分蒸発できるので、冷却衣服による冷却効果は十分に得られると考えられる。真ん中の曲線S2を境界としてその左側の環境は、人間の通常の生活環境である。このため、理論上は、かかる冷却衣服を、非日常的な環境を除き、どのような環境の下で使用しても、冷却効果が得られると考えられる。
第一実施形態の冷却衣服では、ファンによって空気流通路内に空気の流れを強制的に生じさせることにより、空気を服地部と人体との間において体表に略平行に流すことができるので、体の表面近傍における温度勾配を大きくすることができる。このため、かかる冷却衣服を着用するだけで、着用者は、涼しさ、快適さを得ることができる。また、汗をかくような状況では、汗を、空気流通路内を流通する空気によって外部に運び出すことができるので、発汗による気化熱の吸収によりダイレクトに体を冷やすことができ、したがって、冷却効果をさらに高めることができる。
特に、空気漏れ防止手段を設けたことにより、服地部と下着との間を流通する空気が服地部の下端から外部に漏れるのを確実に防止することができるので、かかる空気漏れにより冷却効果が低下することはない。
また、第一実施形態の冷却衣服では、間隔確保手段を、下着に対向する側のファンの表面を覆うように設けたことにより、ファンと下着との間に空気流通路を確保することができると共に、しわになった下着の部分によってファンの上端が塞がれてしまうのを防ぐことができるので、冷却効果が減退するような事態の発生を確実に防止することができる。
尚、上記の第一実施形態では、冷却衣服を下着の上に着用する場合について説明したが、例えば、冷却衣服を直接、素肌の上に着用してもよい。
上記の第一実施形態では、冷却衣服の前部をファスナーで開閉する場合について説明したが、例えば、マジックテープを用いて冷却衣服の前部を開閉するようにしてもよい。また、かかる冷却衣服は、後部をファスナー等で開閉するタイプの衣服や、前後部が開いておらず、頭からかぶることによって着用するタイプの衣服に適用することもできる。
上記の第一実施形態では、マジックテープを用いてファンを服地部に着脱自在に取り付ける場合について説明したが、次の方法によりファンを服地部に着脱自在に取り付けるようにしてもよい。図9はファンの取り付け方法の他の例を説明するための図である。この方法では、服地部の裏面における空気流出部の周囲部に、図9(a)に示すようなファン保持部(保持手段)160を縫い付ける。このファン保持部160の形状は略円環状であり、その内円の直径はファン60の円筒状部材65の直径と略同じである。また、ファン保持部160には、二つの係止爪161が形成されている。一方、ファン60としては、図2に示すものと略同じであるが、次の二つの点で異なるものを用いる。すなわち、第一の相違点はファン60にマジックテープを設けない点、第二の相違点は、図9(b)に示すように、ファン60のリング状部材66に二つの切欠き部66bを形成する点である。まず、ファン60の切欠き部66bとファン保持部160の係止爪161との位置を合わせて、ファン60をファン保持部160に当接させる。その後、ファン60を羽根部71の中心軸の回りに回転させることにより、切欠き部66bの周辺に位置するリング状部材66の一部と係止爪161とを係合させる。こうして、図9(c)に示すように、ファン60はファン保持部160に取り付けられる。尚、ファン保持部160は、服地部に縫い付ける代わりに、服地部に接着するようにしてもよい。
上記の第一実施形態では、冷却衣服に四つのファンを設けた場合について説明したが、ファンの数としては特に制限はなく、一つ、二つ、三つ又は五つ以上のファンを設けるようにしてもよい。同様に、空気流入部、空気流出部についても、数の制限ははい。一つ、二つ又は四つ以上の空気流入部を設けてもよく、また、一つ、二つ、三つ又は五つ以上の空気流出部を設けてもよい。
また、上記の第一実施形態では、一つの電源ボックスから四つのファンに電力を供給する場合について説明したが、例えば、各ファンに個別に電力供給用の電源や制御回路を取り付けることにより、冷却衣服の内部におけるコードレス化を図るようにしてもよい。ファンのコードレス化を図ることにより、例えば、冷却衣服を着たまま、各ファンを簡単に着脱し、二次電池の交換作業を容易に行うことができる。この場合、さらに、各ファンに受信回路を設け、外部の送信手段から受信回路に無線で信号を送ることにより、ファンのオン・オフや強弱を切り替えるようにしてもよい。ここで、送信手段としては、ポケットに入れることができるようなサイズ・形状のもの、例えば万年筆形状のものを用いることが望ましい。また、携帯電話等にその送信機能を組み込んでもよい。そして、受信回路は、混信を防止するため、少なくとも1000個の固有の通信識別コードを有することが望ましい。また、電源手段をすべてのファンに対して共通的に用いた場合に、その電源手段に、制御回路、受信回路及び通信識別コード解読回路を取り付けるようにしてもよい。更に、例えば、冷却衣服の着用者が移動することなく、決まった作業場所等で作業をする場合には、ファンに供給する電力を商用電源からとるようにしてもよい。あるいは、商用電源により二次電池を充電しながら、冷却衣服を使用してもよい。尚、上記の制御回路は、ファンのオン・オフを制御したり、羽根部の回転数を制御したりするものである。制御回路により例えばファン毎にファンの駆動制御が行われるが、四つのファンを複数のグループに分け、当該グループ毎にファンの駆動制御が行われるようにしてもよい。
上記の第一実施形態において、下着の一部には、例えばスパンディクスと称されるポリウレタン製の伸縮性素材を用いることが望ましい。これにより、下着と体とが密着して、冷却効果の低下を防止することができる。この場合、下着には、吸水性のある素材を用いることが望ましい。
次に、本発明の第二実施形態について図面を参照して説明する。図10(a)は本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図10(b)はその冷却衣服の概略背面図である。尚、第二実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第二実施形態の冷却衣服は、図10に示すように、服地部10aと、二つの空気流出部(空気流通口)50aと、二つのファン(送風手段)60と、二つの間隔確保手段80と、電源ボックス90と、空気漏れ防止手段(不図示)とを備えるものである。第二実施形態では、かかる冷却衣服を、ワイシャツ等、裾の部分をズボンやスカートの中に入れて着用するタイプの衣服に適用した場合について説明する。したがって、服地部10aの裾の部分はある程度長くすることが必要である。この場合、服地部10aの裾の部分をズボン等の中に入れたことが、空気漏れ防止手段に該当する。また、この冷却衣服は、半袖の衣服であって、ボタンで前を閉じるタイプのものであるとする。また、この冷却衣服は、下着の上に着用される。
第二実施形態では、冷却衣服をワイシャツに適用しているので、その前部を閉じる手段としてボタンを用いている。ボタンを用いた場合、上下に隣り合うボタン間の隙間から外部へ空気が漏れるおそれがある。かかる空気漏れを防止するためには、例えば、ワイシャツ前部の合わせ部の幅を広くすることが考えられる。また、ボタンの数を多くして、ボタン間の間隔を狭くしてもよい。さらには、ワイシャツ前部の合わせ部にマジックテープやファスナー等を取り付けると共に、外観上ワイシャツのように思わせるために、飾り用のボタンを設けるようにしてもよい。
二つの空気流出部50aは、背中に対応する位置の下端部に対応する服地部10aの所定位置に形成されている。具体的には、二つの空気流出部50aはそれぞれ、左右の脇部からやや背中の方にずれた位置であって服地部10aの下部に形成されている。かかる空気流出部50aは、例えば、服地部10aの所定部分を切り欠き、その切り欠いた部分に、服地部10aの裏面側からメッシュ状の素材51を縫い付けることにより形成される。
二つのファン60は、空気流通路内に空気の流れを強制的に生じさせるためのものであり、各空気流出部50aに対応する服地部10aの裏面の位置に取り付けられる。第二実施形態では、二つのファン60を、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部10aの位置に取り付けているので、冷却衣服の着用者の腕がファン60に不用意に当たってしまい、ファン60が邪魔になることはない。また、電源ボックス90は、二つのファン60に電力を供給する電源である。尚、ファン60及び電源ボックス90の構造は、上記の第一実施形態のものと略同様である。
また、間隔確保手段80は、ファン60と下着との間に一定の間隔を確保するためのものであり、その構造・機能は、上記の第一実施形態のものと略同様である。
次に、服地部10aの素材について説明する。第二実施形態では、服地部10aの上部とそれ以外の部分とで、異なる素材が用いられる。すなわち、服地部10aの上部には、空気流通性のよい素材を使用し、一方、服地部10aの上部以外の部分には、第一実施形態と同様に、実質的に空気が漏れないような素材を使用する。このため、服地部10aの上部からは外部の空気が空気流通路内に流入することができる。第二実施形態では、第一実施形態のように服地部の一部を切り欠いて空気流入部を形成していないが、その代わりに、服地部10aの上部が空気流入部の役割を果たすことになる。このように空気流入部の役割を果たす、服地部10aの上部であって空気流通性のよい素材が用いられた部位のことを、「空気透過部位」とも称することにする。第二実施形態では、例えば、肩から、その下側約5cmのところまでの服地部10aの部分を空気透過部位とする。また、空気透過部位には、撥水処理を施すことが望ましい。かかる処理を施さない場合には、空気透過部位が水に濡れると、その部位における空気流通性が著しく低下してしまうからである。
また、空気透過部位に使用する空気流通性のよい素材としては、服地部10aにおいて、一見して空気透過部位とそれ以外の部分との違いが分かるようなものを用いないことが望ましい。冷却衣服の外観上の違和感を少なくするためである。例えば、下着があまりにも透けて見えるような、とても目を粗く編んだメッシュ状の素材は、空気透過部位に使用する素材として適さないが、ある程度目を細かく編んだ素材であれば用いることができる。したがって、外部の空気は、空気透過部位から空気流通路内に流入する際、その空気透過部位に使用した素材からある程度抵抗を受けることになる。このため、十分な量の空気を空気流通路内に取り込むためには、空気透過部位の面積は大きくすることが望ましい。
次に、かかる服地部10aに要求される空気流通性について説明する。
いま、服地部10aの空気流通性を表す定量的な物理量として、5Pa(約0.5mmH2O)の圧力を、服地部10aに加えたときに、その服地部10aを単位時間、単位面積当たりに通過する空気の体積(cc/cm2/sec)を考える。冷却衣服の着用時に良好な冷却効果を得るためには、空気流入部としての役割を果たす服地部10aの空気透過部位においては、十分な量の空気を取り込むことができるようにしなければならない。一方、服地部10aの空気透過部位以外の部位、例えばファン60の近傍等においては、空気があまり漏れないようにする必要がある。本発明者等による実験の結果、空気透過部位に対応する服地部10aを通過する空気量が少なくとも2cc/cm2/secであり、空気透過部位以外の部位に対応する服地部10aを通過する空気量が多くとも1cc/cm2/secであるような、服地部10aを用いれば、十分な冷却効果が得られることが分かった。
使用するファンの圧力、空気流通路の空気抵抗等により透過性の絶対値は異なるが、一般的に、空気透過部位に対応する服地部10aを通過する空気量は空気透過部位以外の部位に対応する服地部10aを通過する空気量よりも3倍以上大きいことが望ましい。
尚、裏地を取りつけ、それによって空気流通路内を流れる空気が服地部10aの上部以外の部分から外部に漏れてしまうのを防止するようにしてもよい。例えば、裏地31のうち服地部10aの上部に対応する部位には空気流通性のよい素材を用い、服地部10aの上部以外の部位に対応する部位には実質的に空気の漏れの少ない素材を用いる。そして、服地部10aには、すべての部位について空気流通性のよい素材を用いる。これにより、服地部10aの上部(空気透過部位)から十分な量の空気を空気流通路内に取り入れることができ、服地部10aの上部以外の部分からは空気が外部にあまり漏れないようにすることができる。このように、裏地31によって、服地部10aを介して流入又は流出する空気の量を制御することにより、服地部10a全体に対して同じ生地を用いることができ、服地部10aの見栄えをよくすることができると共に、空気透過性を服地部10aで制御するよりも裏地31で制御する方が安価であるので、冷却衣服の製造コストを低く抑えることができるという利点がある。
ここで、かかる二つの性質を有する裏地31の作製方法としては、例えば次のような方法を用いることができる。すなわち、まず、全体的に空気流通性のよい素材を用意する。そして、その素材において服地部10aの上部以外の部位に対応する部位を、実質的に空気漏れの少ない素材、例えばプラスチックフィルム等とラミネートする。特に、服地部10aのうちズボンのベルト等の近傍に対応する部位のように、空気の動きの少ない部位においては、高い透湿性を有するフィルムを用いることが望ましい。これにより、プラスチックフィルム等とラミネートされた部位からは実質的に空気が漏れないようにすることができる。かかる方法を用いることにより、布地31を容易に且つ安価に作製することができる。尚、この方法は、服地部10aで空気流通性を制御する場合に対しても適用することができる。
第二実施形態の冷却衣服は、上記の第一実施形態のものと同様の作用・効果を奏する。特に、第二実施形態の冷却衣服では、服地部の素材を利用して空気を空気流通路内に取り込み、また、二つの空気流出部をそれぞれ、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けているので、当該冷却衣服を正面から見たときには、ファンが見えず、普通のワイシャツと全く同じである。通常のワイシャツと外観上異なる点は、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に二つの空気流出部が設けられている点だけである。このため、冷却衣服を着用しても、外観上の違和感はほとんどない。また、第二実施形態では、二つのファンをそれぞれ、服地部の左右の脇部からやや背中の方にずれた位置に設けており、背中の真ん中に設けているわけではないので、冷却衣服の着用者が椅子に腰掛けた場合に、ファンの空気排出口が塞がれてしまうこともない。
また、第二実施形態の冷却衣服では、二つのファンと電源ボックスとを取り外すと、通常のワイシャツとの違いは、二つの空気流出部が設けられている点だけである。このため、冷却衣服が汚れた場合には、ファンと電源ボックスを取り外した状態で洗濯することができる。
また、ファンと電源ボックスとが取り外された冷却衣服本体は、安価なコストで製造することがきる。このため、冷却衣服の着用者は、ファンと電源ボックスとが設けられていない冷却衣服本体を複数組購入し、ファン及び電源ボックスについては少なくとも一組購入しておけば、冷却衣服としてのワイシャツを毎日、交換して着用することができる。
ところで、第二実施形態では、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けた二つのファンにより、空気流通路内に空気を流通させなければならない。二つのファンを、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けると、空気は、空気流通路内を、例えば胸部や背中の中央を避けて流れるなど、偏った経路で流れる可能性がある。特に、背中は汗をかきやすい箇所であるので、空気流通路内には、空気を空気流通路内における所定の経路に沿って案内するための空気案内手段を設け、空気が背中の中央を通るようにすることが望ましい。具体的には、服地内の所定位置にスポンジを設け、空気流通路内の空間を仕切ることにより、空気が空気流通路内において背中の中央を流れるようにする。また、シロッコファンのような方向性のあるファンを用いて、空気流通路内を流れる空気を背中の中央に向けて吹き付けるようにしてもよい。尚、空気が胸部の中央を通るようにする場合も、上記と同様の方法を用いればよい。
尚、上記の第二実施形態では、服地部の上部を空気透過部位とし、二つのファンを、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けた場合について説明したが、例えば、一方の脇部に対応する服地部の部位を空気透過部位とし、他方の脇部に対応する服地部の位置に一つのファンを設けるようにしてもよい。一般に、空気透過部位とファン(又は空気流出部)とは、空気流通路を介して互いに反対側に設けられていれば、その具体的な設置位置はどこでもよい。
また、上記の第二実施形態では、空気透過部位から外部の空気を空気流通路内に取り入れ、空気流出部から空気流通路内の空気を外部に取り出す場合について説明したが、逆に、空気流出部を空気流入部とし、当該空気流入部から外部の空気を空気流通路内に取り入れ、空気透過部位から空気流通路内の空気を外部に取り出すようにしてもよい。
次に、本発明の第三実施形態について図面を参照して説明する。図11は本発明の第三実施形態に係る冷却衣服を説明するための図である。尚、第三実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第三実施形態の冷却衣服は、服地部10aと、二つのファン60と、電源ボックス90と、帯状の布(仕切手段)110とを備える。かかる冷却衣服が第二実施形態のものと異なる点は、服地部10aの上部だけでなく下部にも空気流通性のよい素材を用い、服地部10aの一部を切り欠いて形成される空気流出部を設けていない点、及び、ファン60を、その回転軸が下着の表面に対して略平行となるように服地部10aと下着との間に取り付けた点である。その他の点については、上記の第二実施形態のものと同じである。
上記の第二実施形態では、服地部の上部に空気流通性のよい素材を用い、服地部の上部以外の部分に空気が漏れないような素材を用いる場合を説明した。これに対し、第三実施形態では、服地部10aの上部と下部に空気流通性のよい素材を用い、上部及び下部以外の中央部分に、実質的に空気が漏れないような素材を用いる。服地部10aの上部であって空気流通性のよい素材が用いられた部位を「第一の空気透過部位」、服地部10aの下部であって空気流通性のよい素材が用いられた部位を「第二の空気透過部位」とも称することにする。かかる第一の空気透過部位及び第二の空気透過部位は、クレーム3における「空気流通部」に対応する。第三実施形態では、第一の空気透過部位が空気流入部の役割を果たし、第二の空気透過部位が空気流出部の役割を果たすことになる。したがって、服地部10aの一部を切り欠いて空気流入部、空気流出部を形成する必要はないので、この場合の冷却衣服は、外部から見る限り、普通の衣服と全く同じであり、外観上の違和感が全くない。
また、第三実施形態では、ファン60の構造は第二実施形態のものと略同様であるが、ファン60の取り付け方法が第二実施形態と異なる。すなわち、図11に示すように、帯状の布110を、服地部10aの下部の裏面に、胴回り方向に沿って縫い付ける。ここで、この帯状の布のうち服地部10aに取り付けられた側と反対側の端部にはゴム等を入れて、ギャザーを寄せている。また、二つのファン60を、その帯状の布110の所定位置に取り付ける。これにより、帯状の布110のギャザーは下着と接し、冷却衣服の着用時に、ファン60の羽根部の中心軸は体の表面と略平行になる。このように、帯状の布110は、服地部10aと下着との間の空間を上下二つに仕切る役割を果たすものであり、クレーム3における「仕切手段」に対応する。ここで、ファン60としては、例えば直径約20mm程度の小型のものを用いる。但し、ファン60の風量はある程度大きいことが望ましいので、例えば厚さ10mm以上のファン60を用いることが望ましい。また、ファン60の代わりに、ふいごのような縦長の送風機を用いてもよい。このような方法によってファン60を取り付けることにより、空気流通路内を通ってきた空気はファン60により下方に向けて排出された後、空気流通性のよい服地部10aの下部(第二の空気透過部位)を介して外部に流出する。尚、ファン60よりも下側に位置する服地部についてはある程度の空気流通性を有するものであれば十分である。当該下側に位置する服地部10aの面積は大きいので、空気はあまり抵抗なく外部に流出できるからである。
尚、上記の第三実施形態では、外部の空気を服地部の上部(第一の空気透過部位)から空気流通路内に取り込み、その取り込んだ空気を上方から下方に向けて流通させる場合について説明したが、ファンを上下逆向きにして上記の帯状の布に取り付けることにより、外部の空気を服地部の下部(第二の空気透過部位)から空気流通路内に取り込み、その取り込んだ空気を下方から上方に向けて流通させるようにしてもよい。空気流通路内の空気は体温により熱せられ、空気流通路内に上昇気流や対流が生じるので、かかる上昇気流等を利用するという観点からは、空気流通路内の空気を下方から上方に向けて流通させる方が好ましい。
第三実施形態の冷却衣服は、上記の第二実施形態のものと同様の作用・効果を奏する。特に、第三実施形態の冷却衣服では、服地部の素材を利用して空気を空気流通路内に取り込むと共に外部に流出しており、しかも、ファンを外部から見えない服地部の裏面側に設けているので、冷却衣服を着用していても、外観上の違和感が全くないという特徴がある。
尚、上記の第三実施形態において、冷却衣服を、裾の部分をズボン等の中に入れないで着用するタイプの衣服(例えば、Tシャツ、つなぎ服等)に適用してもよい。この場合、服地部の下端が開放しているので、服地部の下部に必ずしも第二の空気透過部位を設ける必要はない。すなわち、一般には、空気透過部位を服地部の上部及び下部のうち少なくとも一方に設ければよい。ここで、当該空気透過部位から外部の空気を空気流通路内に取り入れる場合には、服地部の端部から空気流通路内の空気を外部に取り出し、一方、当該空気透過部位から空気流通路内の空気を外部に取り出す場合には、服地部の端部から外部の空気を空気流通路内に取り入れることになる。
また、上記の第3実施形態では、帯状の布110を用いて、二つのファンを所定の位置に取りける場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、帯状の布の代わりに図12に示す専用ベルトを用いてもよい。図12は第3実施形態の変形例で用いる専用ベルトの概略平面図である。また、図13は本変形例の専用ベルト120の装着状態を示す概略部分側面図である。なお、図12及び図13において、前述した第3実施形態と同一の機能を有するものには、同一の符号又は対応する符号を付することにより、その詳細な説明を省略する。図12及び図13に示すように、本変形例の専用ベルト120は、ベルト本体121と、ファン60を着脱自在に取着するためのファンホルダー122と、電源部90aと、留め金123とを備えている。ベルト本体121は、服地部10aと下着の間に空気流通路を確保するものであると共に空気流通路を上下方向に仕切るものである。したがって、ベルト本体121は、上下方向に所定の幅を有するだけでなく、側部方向にも空気流通路を確保すると共にファンを保持するための十分な幅を有する。なお、図12に示すようにベルト本体121の留め金123周辺の幅を狭くしているのは、本変形例の専用ベルトを装着した際に、ベルト装着による違和感をできるだけ少なくするためである。また、ベルト本体121の側部方向の厚い部分にはスポンジ等の軽く且つ弾力性に富む部材を用いる。なお、専用ベルト120と服地部10aとは、マジックテープを用いて密着させてもよいし、或いはファスナーを用いて専用ベルト120を服地部10aに着脱自在に取着してもよい。更に、専用ベルトと服地部とを密着させるために服地の上から薄いベルトをまくようにしてもよい。
尚、本発明の冷却衣服の上に背広等の上着を着用することができる。この場合、かかる上着については、冷却衣服の空気流入部(第二実施形態の場合には服地部の上部)やファンに対応する部分を、例えばメッシュ状の素材で作製することが望ましい。これにより、当該上着は、冷却衣服における空気の流れを阻害することはないので、冷却衣服による良好な冷却効果を維持することができる。また、最近では、全体的に空気流通性に優れた上着が販売されている。かかる上着であれば、何ら加工することなくそのまま、当該冷却衣服の上に着用することができる。尚、冷却衣服の上に着用するものは、背広に限られない。
また、本発明の冷却衣服は、上述した第一・第二実施形態で説明した作業服やワイシャツに限らず、どのような衣服にも適用することができる。
その他、本発明の冷却衣服は、上述したもの以外に、つなぎ服、レインコート、軍服、ウインタースポーツ用の衣服、農業や林業用の作業服、パイロットやレーサー用の衣服、発汗する動物用の衣服などに適用することができる。
本発明の冷却衣服は、第一実施形態で説明したようにファンを空気流出部に対応する服地部の位置に設けることにより、空気流通路内を流通する空気を体に略垂直な方向に排出する方式と、第三実施形態で説明したように仕切手段にファンを設けることにより、空気流通路内を流通する空気を服地部の下部から下方に向けて排出する方式とを両方備えたものであってもよい。かかる冷却衣服では、空気流通路内に大量の空気を流通させることができるという利点がある。
特に背中の上部等、服地と下着が密着しやすい所や、その他空気流通路として重要な所には必ずすき間が確保出来るようなスペーサを服地裏に取りつければ空気流通路の空気抵抗が減り、一層冷却効果が上がる。スペーサとしては、スポンジやフエルト等の小片などで良い。
最初に、本発明の第一実施形態に係る冷却衣服を説明する。図1(a)は本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図1(b)はその冷却衣服の概略背面図、図2(a)はその冷却衣服に用いられるファンの概略平面図、図2(b)はそのファンの概略側面図、図2(c)はそのファンの概略底面図である。図3(a)はその冷却衣服に用いられる間隔確保手段の概略平面図、図3(b)はその間隔確保手段の脚部の概略拡大平面図、図4はファンを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図、図5は四つのファンの接続コードを固定する方法を説明するための図である。
第一実施形態の冷却衣服は、図1及び図4に示すように、服地部10と、三つの空気流入部40と、四つの空気流出部50と、四つのファン(送風手段)60と、四つの間隔確保手段80と、電源ボックス90と、空気漏れ防止手段(不図示)とを備えるものである。第一実施形態では、かかる冷却衣服を、作業服、ユニホーム等、裾の部分をズボンの中に入れないで着用するタイプの衣服に適用した場合について説明する。この冷却衣服は、長袖の衣服であって、ファスナーで前を閉じるタイプのものであるとする。また、この冷却衣服は、下着の上に着用される。ここで、第一実施形態では、冷却衣服の下に着用する衣類を「下着」と称することにする。例えば、冷却衣服の下にワイシャツを着ることにすれば、そのワイシャツは、ここでいう「下着」である。
第一実施形態では、冷却衣服を着用したときにその前部を閉じる手段としてファスナーを用いている。ボタンやホック等を用いることもできるが、ファスナーを用いるのが望ましい。ファスナーは簡単に開閉することができ、しかもファスナーを閉じたときにそのファスナーの部分から外部へ空気がほとんど漏れないからである。ファスナーを閉じることにより、服地部10と下着との間に空気流通路が構成されることになる。すなわち、空気流通路というのは、服の形状、服地の材質、服の大きさ、着衣のしかた等により、服地部と下着との間のほぼ決まった所や、体の動き等により不定の所にできる空間のことをいう。この空気流通路に外部の空気を強制的に流し込むと、場所的なむらはあるが、下着と服地部との間に体と略平行な空気が流れる。また、場所によりばらつきができても、間隔が小さいと、一般的に空気の流れは速くなり、かつ、体の近くを風が通る為、むしろ冷却効果が大きくなる場合もあり、間隔のばらつきによる、冷却効果の差さはあまり大きくならない。
服地部10の上端部近傍には、空気流入部40が形成されている。この空気流入部40の横幅は、充分な幅をもっている。空気流入部40は、例えば、服地部10の所定部分を切り欠き、その切り欠いた部分に、服地部10の裏面側からメッシュ状の素材41を縫い付けることにより形成される。このメッシュ状の素材41は、冷却衣服の外観上の違和感を少なくするためのものである。かかる空気流入部40から外部の空気が空気流通路内に流入する。図1の例では、空気流入部40を、服地部10の上部の前側に二つ、その後側に一つの合計三つ設けている。尚、襟首や袖の部分も、広い意味では空気流入部と考えることができる。
一方、空気流通路の下端部に対応する服地部10の所定位置には、空気流出部50が形成されている。この空気流出部50も空気流入部40と同様にして形成される。すなわち、例えば、服地部10の所定部分を切り欠き、その切り欠いた部分に、服地部10の裏面側からメッシュ状の素材51を縫い付けることにより形成される。このメッシュ状の素材51は冷却衣服の外観上の違和感を少なくするためのものである。かかる空気流出部50から空気流通路内の空気が外部に流出する。空気流出部50の数はファン60の数と同じである。図1の例では、空気流出部50を、服地部10の下部の前後に二つずつ、合計四つ設けている。
四つのファン60は、空気流通路内に空気の流れを強制的に生じさせるためのものであり、それぞれ各空気流出部50に対応する服地部10の裏面の位置に取り付けられる。すなわち、ファン60を服地部10の下部の前後に二つずつ設けている。このファン60は、空気流通路内の空気を外部に排出する方向に回転する。ファン60をこの方向に回転させると、空気流通路内の圧力が低下し、空気流入部40から外部の空気が空気流通路内に流入する。この流入した空気は、空気流通路内において体表に略平行であって下側に向かう方向に沿って移動する。そして、空気は、ファン60に達すると、ファン60に吸引されて空気流出部50を介して外部へ排出される。なお、上述した、空気流通路内の空気を外部に排出する方式でも、服内外の圧力差は小さいので、一般の生地を使用する服の場合、服内外の圧力差で服地が下着に密着してしまうことはない。また、服地の部分的なしわにより服地部と下着が接触し、接触部に空気が通らなくても接触部の面積があまり大きくなければ、温度、湿度ともにすばやく拡散する。勿論、腰のある服地を使用したり、服地部の形状を工夫したりして積極的に空間を確保する事も可能である。しかしながら、デザインの問題やコストの問題が発生する。一方、市販されている通常の服地を使用しても、冷却に必要な流通路を十分に確保することができる。但し、伸縮性に富む素材を服地に使用すると、服地部と下着とが密着して空間を確保することが難しくなるので、好ましくない。
四つのファン60は、図5に示すように、並列に接続されており、その接続コード69が電源ボックス90に繋がれている。電源ボックス90には電池(電源手段)が収納されている。この電池が四つのファン60に電力を供給する電源である。また、電源ボックス90には、ファン60の駆動をオン/オフするスイッチが設けられている。冷却衣服の着用時には、電源ボックス90は、例えばズボンのベルトに取り付けられる。また、電源ボックス90を、服地部10に設けた専用のポケットに収納してもよい。
電池としては、通常、経済性の観点から二次電池が用いられる。しかし、最も好ましいのは、電池として燃料電池を用いることである。燃料電池は、二次電池に比べて、小型であり、充電する手間もかからないからである。しかも、燃料電池は、冷却衣服と相性がよいと考えられる。燃料電池というのは、その特性上、一時に大容量の電流を流す必要がある場合には適さず、一定の電流をじわじわ流すような場合に適している。冷却衣服の場合には、ファン60を駆動するために電池を用いるので、急激な立ち上がり電流がないからである。
ところで、燃料電池は、発電時に水蒸気を発生するので、冷却衣服における電源として燃料電池を用いた場合、燃料電池から発生した水蒸気が服地部10を濡らしてしまうことがある。このため、燃料電池は、服地部10内において空気流通性の優れたところに設けることが望ましい。これにより、水蒸気を、流通する空気と共に外部に排出することができるので、水蒸気によって服地部10が濡れてしまうのを防止することができる。
また、服地部10の裏面の所定位置(数箇所)には、図5に示すように、各ファン60から引き出された接続コード69を固定するためのコード固定手段15が設けられている。コード固定手段15としては、例えば1cm×4cmの細長いマジックテープが用いられる。このマジックテープはA面、B面が一体となったものである。そのマジックテープの先端部を服地部10の裏面に縫い付けておく。そして、そのマジックテープで接続コード69を巻き込むようにして、マジックテープの後端部をその先端部に貼り付けることにより、接続コード69を固定することができる。
ファン60は、図2に示すように、筐体部61と、羽根部71と、回路部(不図示)と、マジックテープ72とを有する。筐体部61は、円筒状部材65と、リング状部材66と、円板状部材67と、三つの保持部材68とからなる。リング状部材66は円筒状部材65の外側面の所定位置に設けられている。円板状部材67は、円筒状部材65の内部に設けられ、円筒状部材65の内側面に設けた三つの保持部材68により保持されている。かかる筐体部61は、プラスチックを用いてインジェクション成形により一体的に製造される。また、円筒状部材65の高さ(ファン60の厚さ)は約6mmである。
羽根部71と回路部は、円筒状部材65の内部に配設され、回路部は円板状部材67上に取り付けられている。回路部は回転モータ(駆動手段)を含み、この回転モータの軸に羽根部71が取り付けられている。この羽根部71としては、その直径が例えば10mm〜100mmのものが用いられる。このとき、羽根部71の回転軸は、円筒状部材65の中心軸と略平行であり、リング状部材66の表面に略垂直である。かかるファン60にはある程度の排気能力が要求される。例えば、ファン60としては、駆動時にファン60付近における服地部10の内外の空気圧差を最大50Paにすることができるものであれば十分である。また、本実施形態の方式では空気流通路の抵抗が大きい部分があるので、静圧が5Pa以上のファンを用いる事が望ましい。また、ファンにより空気流通路内の空気を排出する方式の場合、服地の変形、下着への密着を防ぐ為には150Pa以下の静圧のファンを用いることが望ましい。また、ファン60による風量は大きい程、冷却効果が高くなるが、すべてのファン60の風量はトータルで少なくとも1リットル/secであることが望ましい。
尚、ファン60としては、重さが40g以下であるものを用いることが望ましい。ファン60の重さで服地部10が変形しないようにするためである。また、ファン60のノイズは40dB[A]以下であることが望ましい。
羽根部71を回転させると、空気流通路内の空気は、円筒状部材65の一方の開口部から羽根部71に向かって流れ込み、羽根部71を介して円筒状部材65の他方の開口部から外部に排出される。かかるファン60は、その大きさの割には風量が多く、第一実施形態の冷却衣服に用いるのに適している。但し、空気流通路内の空気を円筒状部材65内に取り込むためには、円筒状部材65の下着に対向する側の端面と下着との間に一定の空間を設けなければならない。一般に、この空間の大きさはファン60の径に応じて決められる。
マジックテープ72は、リング状部材66の裏面に接着される。かかるマジックテープ72は、ファン60を服地部10に着脱自在に取り付けるためのものである。このマジックテープ72をA面のものとすると、B面のマジックテープ16は、図4に示すように、服地部10の裏面における空気流出部50の周囲部に縫い付けられている。これら二つのマジックテープ72,16を貼り付けることにより、ファン60が空気流出部50の周囲に取り付けられる。このため、冷却衣服を着用すると、羽根部71の回転軸は下着の表面に対して略垂直になる。尚、マジックテープ72の接着部位であるリング状部材66の形状を円形状にしたのは、そのマジックテープ72とペアになるマジックテープ16を服地部10に取り付ける場合、その取り付け面積はなるべく小さい方が望ましいからである。
一方、ファン60を冷却衣服から取り外す場合には、まず、コード固定手段15としてのマジックテープを剥がして、接続コード69の固定状態を解除する。次に、各ファン60のマジックテープ72を剥がして、四つのファン60を冷却衣服から取り外す。こうして、誰でも簡単にファン60を容易に取り外すことができる。尚、ファン60をマジックテープ72で着脱する代わりに、シート状マグネットを用いて着脱するようにしてもよい。このようにファン60及び電源ボックス90を着脱自在に構成することにより、冷却衣服を容易に洗濯できるだけでなく、ファン60が壊れたときにファン60だけを交換できるという利点もある。
また、ファン60を空気流出部50の周囲に取り付けたとき、ファン60が空気流出部50のメッシュ状素材51から突出しないように、ファン60を設計している。すなわち、図2(b)に示すように、ファン60の裏面側において、円筒状部材65の端面とリング状部材66との間隔dを、マジックテープ72の厚さと空気流出部50に設けたマジックテープの厚さとの和になるように設計している。これにより、図4に示すように、ファン60を服地部10に取り付けたときに、ファン60の端面は服地部10の表面と略同一平面上にあることになる。したがって、冷却衣服の着用者にとっては作業時にファン60が邪魔になることはなく、また、冷却衣服の外観上の違和感も少ない。尚、一般的には、ファン60の端面が服地部10の表面から5mmよりも多く外側に突出しないように、ファン60を取り付けることが望ましい。
ファン60を駆動すると、通常、羽根部71は一定の回転数で回転する。これにより、ファン60は一定の風量で空気を送り出す。これに限らず、ファン60は、例えば、風量を調整したり、風量に強弱をつけたりして空気を送り出す、いわゆるゆらぎ送風を行うようにしてもよい。この場合、羽根部71の回転数を変化させるのに、可変抵抗等を用いたのでは、電力がロスしてしまうので、PWM(pulse width modulation)等の変調方式を用いたり、あるいはDC−DCコンバータで電圧を変化させることが望ましい。更に、冷却衣服の内部に温度センサ又は温湿度センサを設けておき、かかるセンサで検知した温度又は温湿度に基づいて、羽根部71の回転数を制御するようにしてもよい。
尚、屋外作業中、急に雨が降ってきたときには、ファン60が濡れてしまうが、この対策として、ファン60の回路部に耐水加工を施すことが望ましい。具体的に、かかる耐水加工としては、回路部に樹脂をコーティングすることが考えられる。
間隔確保手段80は、ファン60と下着との間に一定の間隔を確保するためのものである。冷却衣服の着用者が作業をしたり、何らかの動作をしていると、どうしても下着にしわができてしまう。そのしわによりファン60の上端(ファン60の下着に対向する側の端)と下着との間隔が狭くなり、空気がファン60に流れ込みにくくなる。このような場合に、間隔確保手段80は、下着のしわを抑え込み、空気の流れを確保する役割を果たす。
間隔確保手段80は、図3(a)に示すように、本体部81と、四つの脚部82とを有する。この間隔確保手段80は、厚さ約0.3mmであり、その材料としては、柔らかく且つ弾力性を有するプラスチックシート等が用いられる。本体部81の外形は略円形状であり、また、本体部81には複数の開口部を形成している。図3(a)の例では、木体部81に四つの扇状の開口部を形成し、本体部81がリング状部と、その内部に位置する交差した二つの線状部とからなる場合を示している。但し、上記の開口部の大きさは、しわになった下着の部分が入り込まない程度にする必要がある。
脚部82は、図3(b)に示すように、その先端部には、長手方向に沿って長い切欠き部82aが形成されており、また、その幅方向には二つの短い切欠き部82bが形成されている。前者の切欠き部82aは脚部82の幅を狭くすることができるようにするためのものであり、後者の切欠き部82bは脚部82を固定するためのものである。また、ファン60のリング状部材66には、図2に示すように、間隔確保手段80を取り付けるための四つの取付部66aが形成されている。かかる取付部66aはリング状部材66の表面から突出して形成されている。また、各取付部66aには、脚部82を挿入するための孔が形成されている。
間隔確保手段80をファン60に取り付けるには、まず、本体部81をファン60に対向する位置に配置し、一つの脚部82の先端部を手で押えて、その幅を狭くする。そして、その状態のまま、脚部82の先端部を、所定の取付部66a内に押し込む。これにより、脚部82の二つの切欠き部82bが取付部66aと係合し、その脚部82が固定される。同様に、他の三つの脚部82も各取付部66aに固定する。こうして、間隔確保手段80は、図4に示すように、下着に対向する側のファン60の表面を覆うように取り付けられる。間隔確保手段80を設けたことにより、下着にしわができたときに、間隔確保手段80の本体部81がそのしわになった下着の部分をブロックすることができるので、下着とファン60との間に常に一定の間隔を確保することができる。
また、間隔確保手段80は、弾力性を有するため、外部から押圧されたときに、その押圧された方向に容易に移動することができる。したがって、間隔確保手段80が下着に当接している場合に、着用者に間隔確保手段80が硬いという感じを与えることはない。また、間隔確保手段80は、押圧されたときには容易につぶれてしまい、その押圧力から開放されたときには直ちに元の状態に戻ることができる。実際、間隔確保手段80としては非常に弱い弾力性を有するものを用いれば十分である。
例えば、着用者が冷却衣服を着たまま椅子に腰掛けて、冷却衣服の背中部が椅子の背もたれによって押された場合には、間隔確保手段80は押しつぶされて、その本体部81がファン60の上端に接するようになる。このように、間隔確保手段80は、その弾力性により押しつぶされるので、着用者にごつごつした感じを与えることはない。但し、間隔確保手段80の本体部81がファン60の上端に接した状態では、空気がファン60に流入することができないので、背中における冷却効果はあまり有効ではない。
また、間隔確保手段80は、しわになった下着の部分が空気の流れを妨げるのを防止する役割と共に、下着に接して、ファン60の近傍における空気流通路を確保するスペーサとしての役割を備えている。間隔確保手段80がスペーサとしての役割を果たすためには、ファン60が実用的サイズのものである場合、間隔確保手段80の本体部81とそれに対向する側のファン60の上端との距離を、少なくとも約2mmとする必要がある。かかる距離を2mmより小さくすると、流通する空気の受ける抵抗が大きくなり、風量が低下するからである。
尚、上述したファン60の代わりに、シロッコファンに代表される側流ファンを、第一実施形態の冷却衣服に用いることも可能である。側流ファンとは、羽根の軸方向から吸入した空気を、羽根の外周方向へ放射状に送り出すファンのことである。側流ファンを冷却衣服に用いる場合には、空気流入部を服地部の下部に、空気流出部を服地部の上部に設け、側流ファンを、空気流入部に対応する服地部10の裏面の位置に取り付ける。図8に空気流入部に取り付けられた側流ファンの概略図を示す。図8に示すように、側流ファン600が空気流入部40から吸入した空気は、側流ファン600の側面から空気流通路内に放射状に送り出され、空気流通路内を通って空気流出部から外部に排出される。特に、側流ファン600として、ある程度の厚さを有するものを使用すれば、ファンの周辺にも必ず服地と下着との間に空間が出来、空気抵抗を減らすことが出来る。また、側流ファンを使用する場合、側流ファンは圧力が高いので、空気流通路の空気抵抗が高くても空気を流しやすいというメリットがある。
次に、服地部10の素材について説明する。服地部10の素材としては、例えば、ダウンジャケットの表地などに使われる高密度布を用いる。高密度布は、通常の布と比べると高い密度で織られている。後述するように、第一実施形態の冷却衣服は、体により温められて湿った空気を、空気流通路内を流通させて、空気流出部50から排出することにより、かかる空気を外気と絶えず置き換えていくものであるため、空気が空気流通路内を流通する途中で服地部10から漏れないようにする必要がある。高密度布は糸の密度が高いため、糸の間から外部へ漏れる空気の量が非常に少なく、ほとんどの空気が空気流通路内を通って空気流出部50に達し、そこから外部に排出される。このため、高密度布は、服地部10の素材として用いるのにとても望ましい。また、高密度布は、あくまでも布であるため、汚れた場合には家庭用の洗濯機などで容易に洗うことができるという利点もある。このような高密度布は、各種の目的で製造されており、安価で入手できる。尚、高密度布は空気流通性のよくないものであることが好ましいが、具体的には、高密度布として、5Paの圧力を加えたときに、当該高密度布を単位時間、単位面積当たりに通過する空気の体積が5cc/cm2/sec以下であるものを用いる必要がある。
また、服地部10の素材としては、高密度布だけでなく、実質的に空気が漏れないものであれば、どのような素材でも用いることができる。特に、汚れを伴う作業を行う際に冷却衣服を使用する場合には、服地部10の素材としては、表面が滑らかなビニールやナイロン等、吸水性のない素材又は撥水加工してある素材を用いることが望ましい。服地部10に付いた汚れを容易に落とすことができるようにするためである。また、服地部10の素材として吸水性のある素材を用いると、雨等で服地部10が濡れたときに、空気流通路内を流通する空気が服地部10に吸収された水分を蒸発するのに使用され、体からの汗は有効に蒸発できなくなってしまうからである。これにより、汚れが服地部10にしみ込むことはなく、また、汚れを簡単に落とすことができる。また、服地部に吸水性のある素材を使用すると、汗に濡れた下着と接触して服地部が濡れ、体を動かしても、下着と服地部とが離れにくくなる。また、例え離れて空気が流れるようになっても服地側の汗の蒸発は、体の冷却にはあまり効果がない。吸水性のない素材は通気性が悪く、冷却衣服内の湿気を、当該素材を通して外部へ放散することはできないが、湿気はファン60によって空気とともに空気流通路内を通って外部に排出されるので、何ら問題はない。尚、冷却衣服を主に屋外での作業時に着用する場合には、服地部10の表面に熱線反射処理を施すことが望ましい。
ところで、冷却衣服の下端は開放されており、服地部10と下着との間を流通する空気が服地部10の下端から漏れることがあり、この場合、冷却衣服には、空気漏れ防止手段を設ける必要がある。例えば、冷却衣服の裾の部分にゴムを入れておき、そのゴムにより裾の部分を縮めることにより、冷却衣服の裾の部分を着用者の胴回りに密着させるようにすればよい。また、紐やベルトにより、冷却衣服の裾の部分を着用者の胴回りに密着させてもよい。尚、ファンを服地部の中央部付近に設け、服地部の上部だけでなく下部にも空気流入部を設けた冷却衣服を製作することもできる。この場合でも、上記の空気漏れ防止手段は必要である。
また、かかる冷却衣服を作製する場合、ファン60、電源ボックス90をパーツ化して予め製造しておくことが望ましい。これにより、冷却衣服を作業服以外の衣服に適用する場合でも、冷却衣服を容易に作製することができる。
次に、第一実施形態の冷却衣服で利用する冷却の原理について説明する。図6は第一実施形態の冷却衣服で利用する冷却原理を説明するための図である。図6(a)では、温度30℃の部屋に人Aが居るときに、その人Aの周囲の温度分布を等温曲線(点線)で概略的に示している。恒温動物である人Aの体温はほぼ一定であり、この温度を36℃とすると、部屋の空気に大きな対流がないと仮定した場合には、図6(a)に示すように、人Aの付近が最も温度が高く、人との距離が離れるにしたがって徐々に低下しながら30℃に近づく。
図6(b)は室温20℃の部屋に人Aが居るときの温度分布を等温曲線で概略的に示した図である。図6(b)を図6(a)と比べると分かるように、図6(b)の場合は図6(a)の場合に比べて、等温曲線同士の間隔が密である。言い換えると、図6(b)の場合は、図6(a)の場合に比べて温度勾配が大きい。温度勾配の大小は、放出される熱の量を左右し、人の温度の感じ方に大きな影響を与える。すなわち、人は、温度勾配が大きいほど暑さ、寒さを強く感じる。
この点に着目し、第一実施形態では、人の体の表面近傍における温度勾配を強制的に大きくし、これによって、人が涼しさ、快適さを感じるようにする。図6(c)は、室温30℃の部屋に、人Aが第一実施形態の冷却衣服を着用しているときの温度分布を示している。図6(c)の場合の室温は図6(a)の場合と同じであるが、人Aが冷却衣服を着用し、その冷却衣服の空気流通路内に室温と同じ30℃の空気を流し続けることにより、30℃の等温曲線が人Aの体から僅かに離れたところに位置する。このため、人Aの体の表面から周囲に向かう温度勾配は非常に大きくなり、人Aと冷却衣服との間の温度勾配だけを考えると、図6(b)の場合に類似している。
第一実施形態の冷却衣服を着用して空気流通路内に空気を流通させ、体の表面から比較的近い部分の温度を体温よりも低い温度とすることによって、体の表面近傍において大きな温度勾配を実現することができる。この大きな温度勾配によって、人の体の表面から発せられる熱は容易に温度の低い冷却衣服の側に放射され、そして、空気流通路内を流れる空気によって素早く吸収される。したがって、第一実施形態の冷却衣服では、ファン60により空気を空気流通路内に流通させるだけで、着用者は涼しさを感じることができる。
上述したように、体の表面近傍における大きな温度勾配が大きな冷却効果を生み出すが、同様なことが湿度についても言える。すなわち、暑いときには、体の表面近傍の湿度は約100%になっている。このとき、体の表面近傍に外気湿度の層を作ることにより、体の表面近傍において大きな湿度勾配を実現することができる。かかる大きな湿度勾配により、汗の蒸発が促進され、人は涼しく感じることができる。
第一実施形態の冷却衣服では、服地部10と下着との間の空間である空気流通路に空気を流通させている。汗をかいているが、その汗はそれ程下着に吸収されていないような状況下では、下着は水蒸気を透過させるので、汗は下着を通り抜けて服地部10と下着との間の空間に入り込む。そして、この水蒸気は空気流通路内を流れる空気によって容易に外部に運び出され、発汗による気化熱の吸収によって体がダイレクトに冷やされる。すなわち、体からの汗と空気流通路を流通する空気とを接触させることにより体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して体を冷却する。
また、汗をダラダラかき、その汗の大部分が下着に吸収されているような状況下では、下着に吸収された汗は空気流通路内を流れる空気によって外部に運び出されるので、その汗の蒸発量はとても多くなる。これにより、下着の表面温度は大きく低下する。例えば、室温が30℃のときに、濡れた下着の表面近傍に室温と同じ温度の空気を十分流すと、その下着の表面温度は室温よりも3℃〜5℃くらい低下する。特に、下着が体に密着していれば、体と下着との間には水分が存在し、しかも濡れた下着の熱抵抗は乾いた下着の熱抵抗に比べて極端に小さいので、体の表面近傍には大きな温度差が生じ、着用者は冷たいと感じるようになる。したがって、人間が本来的に有する体温の自動調整機能により、着用者はあまり汗をかかなくなり、十分な涼しさを感じることができる。
このように、汗をかくような状況にあっては、体の表面近傍において温度勾配を上げると共に、湿度勾配をも上げることができるので、着用者は、さらに涼しさを感じ、快適に過ごすことができる。
次に、第一実施形態の冷却衣服により冷却効果を得ることができる環境について説明する。図7はその冷却衣服により冷却効果を得ることができる環境を説明するためのグラフである。図7において縦軸は湿度、横軸は温度を表す。左側の曲線S1は湿球温度が30℃である曲線を示す。真ん中の曲線S2は湿球温度が33℃である曲線、右側の曲線S3は湿球温度が36℃である曲線を示す。尚、かかるグラフは、十分な風量がある環境において得られたものであり、ここでは、その結果を概略的に示している。
上述した冷却の原理から分かるように、体からの汗が蒸発できないような環境の下では、冷却衣服を使用してもその冷却効果は得られない。したがって、理論上は、図7において、右側の曲線S3を境界としてその右側の領域に対応する環境下では、冷却衣服による冷却効果はほとんどないと考えられる。また、右側の曲線S3と真ん中の曲線S2とで囲まれた領域に対応する環境下でも、体からの汗があまり蒸発できないので、冷却衣服による冷却効果はそれ程期待できない。一方、真ん中の曲線S2と左側の曲線S1とで囲まれた領域に対応する環境下では、体からの汗が蒸発できるので、冷却衣服による冷却効果が得られる。そして、左側の曲線S1を境界としてその左側の領域に対応する環境下では、体からの汗が十分蒸発できるので、冷却衣服による冷却効果は十分に得られると考えられる。真ん中の曲線S2を境界としてその左側の環境は、人間の通常の生活環境である。このため、理論上は、かかる冷却衣服を、非日常的な環境を除き、どのような環境の下で使用しても、冷却効果が得られると考えられる。
第一実施形態の冷却衣服では、ファンによって空気流通路内に空気の流れを強制的に生じさせることにより、空気を服地部と人体との間において体表に略平行に流すことができるので、体の表面近傍における温度勾配を大きくすることができる。このため、かかる冷却衣服を着用するだけで、着用者は、涼しさ、快適さを得ることができる。また、汗をかくような状況では、汗を、空気流通路内を流通する空気によって外部に運び出すことができるので、発汗による気化熱の吸収によりダイレクトに体を冷やすことができ、したがって、冷却効果をさらに高めることができる。
特に、空気漏れ防止手段を設けたことにより、服地部と下着との間を流通する空気が服地部の下端から外部に漏れるのを確実に防止することができるので、かかる空気漏れにより冷却効果が低下することはない。
また、第一実施形態の冷却衣服では、間隔確保手段を、下着に対向する側のファンの表面を覆うように設けたことにより、ファンと下着との間に空気流通路を確保することができると共に、しわになった下着の部分によってファンの上端が塞がれてしまうのを防ぐことができるので、冷却効果が減退するような事態の発生を確実に防止することができる。
尚、上記の第一実施形態では、冷却衣服を下着の上に着用する場合について説明したが、例えば、冷却衣服を直接、素肌の上に着用してもよい。
上記の第一実施形態では、冷却衣服の前部をファスナーで開閉する場合について説明したが、例えば、マジックテープを用いて冷却衣服の前部を開閉するようにしてもよい。また、かかる冷却衣服は、後部をファスナー等で開閉するタイプの衣服や、前後部が開いておらず、頭からかぶることによって着用するタイプの衣服に適用することもできる。
上記の第一実施形態では、マジックテープを用いてファンを服地部に着脱自在に取り付ける場合について説明したが、次の方法によりファンを服地部に着脱自在に取り付けるようにしてもよい。図9はファンの取り付け方法の他の例を説明するための図である。この方法では、服地部の裏面における空気流出部の周囲部に、図9(a)に示すようなファン保持部(保持手段)160を縫い付ける。このファン保持部160の形状は略円環状であり、その内円の直径はファン60の円筒状部材65の直径と略同じである。また、ファン保持部160には、二つの係止爪161が形成されている。一方、ファン60としては、図2に示すものと略同じであるが、次の二つの点で異なるものを用いる。すなわち、第一の相違点はファン60にマジックテープを設けない点、第二の相違点は、図9(b)に示すように、ファン60のリング状部材66に二つの切欠き部66bを形成する点である。まず、ファン60の切欠き部66bとファン保持部160の係止爪161との位置を合わせて、ファン60をファン保持部160に当接させる。その後、ファン60を羽根部71の中心軸の回りに回転させることにより、切欠き部66bの周辺に位置するリング状部材66の一部と係止爪161とを係合させる。こうして、図9(c)に示すように、ファン60はファン保持部160に取り付けられる。尚、ファン保持部160は、服地部に縫い付ける代わりに、服地部に接着するようにしてもよい。
上記の第一実施形態では、冷却衣服に四つのファンを設けた場合について説明したが、ファンの数としては特に制限はなく、一つ、二つ、三つ又は五つ以上のファンを設けるようにしてもよい。同様に、空気流入部、空気流出部についても、数の制限ははい。一つ、二つ又は四つ以上の空気流入部を設けてもよく、また、一つ、二つ、三つ又は五つ以上の空気流出部を設けてもよい。
また、上記の第一実施形態では、一つの電源ボックスから四つのファンに電力を供給する場合について説明したが、例えば、各ファンに個別に電力供給用の電源や制御回路を取り付けることにより、冷却衣服の内部におけるコードレス化を図るようにしてもよい。ファンのコードレス化を図ることにより、例えば、冷却衣服を着たまま、各ファンを簡単に着脱し、二次電池の交換作業を容易に行うことができる。この場合、さらに、各ファンに受信回路を設け、外部の送信手段から受信回路に無線で信号を送ることにより、ファンのオン・オフや強弱を切り替えるようにしてもよい。ここで、送信手段としては、ポケットに入れることができるようなサイズ・形状のもの、例えば万年筆形状のものを用いることが望ましい。また、携帯電話等にその送信機能を組み込んでもよい。そして、受信回路は、混信を防止するため、少なくとも1000個の固有の通信識別コードを有することが望ましい。また、電源手段をすべてのファンに対して共通的に用いた場合に、その電源手段に、制御回路、受信回路及び通信識別コード解読回路を取り付けるようにしてもよい。更に、例えば、冷却衣服の着用者が移動することなく、決まった作業場所等で作業をする場合には、ファンに供給する電力を商用電源からとるようにしてもよい。あるいは、商用電源により二次電池を充電しながら、冷却衣服を使用してもよい。尚、上記の制御回路は、ファンのオン・オフを制御したり、羽根部の回転数を制御したりするものである。制御回路により例えばファン毎にファンの駆動制御が行われるが、四つのファンを複数のグループに分け、当該グループ毎にファンの駆動制御が行われるようにしてもよい。
上記の第一実施形態において、下着の一部には、例えばスパンディクスと称されるポリウレタン製の伸縮性素材を用いることが望ましい。これにより、下着と体とが密着して、冷却効果の低下を防止することができる。この場合、下着には、吸水性のある素材を用いることが望ましい。
次に、本発明の第二実施形態について図面を参照して説明する。図10(a)は本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図10(b)はその冷却衣服の概略背面図である。尚、第二実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第二実施形態の冷却衣服は、図10に示すように、服地部10aと、二つの空気流出部(空気流通口)50aと、二つのファン(送風手段)60と、二つの間隔確保手段80と、電源ボックス90と、空気漏れ防止手段(不図示)とを備えるものである。第二実施形態では、かかる冷却衣服を、ワイシャツ等、裾の部分をズボンやスカートの中に入れて着用するタイプの衣服に適用した場合について説明する。したがって、服地部10aの裾の部分はある程度長くすることが必要である。この場合、服地部10aの裾の部分をズボン等の中に入れたことが、空気漏れ防止手段に該当する。また、この冷却衣服は、半袖の衣服であって、ボタンで前を閉じるタイプのものであるとする。また、この冷却衣服は、下着の上に着用される。
第二実施形態では、冷却衣服をワイシャツに適用しているので、その前部を閉じる手段としてボタンを用いている。ボタンを用いた場合、上下に隣り合うボタン間の隙間から外部へ空気が漏れるおそれがある。かかる空気漏れを防止するためには、例えば、ワイシャツ前部の合わせ部の幅を広くすることが考えられる。また、ボタンの数を多くして、ボタン間の間隔を狭くしてもよい。さらには、ワイシャツ前部の合わせ部にマジックテープやファスナー等を取り付けると共に、外観上ワイシャツのように思わせるために、飾り用のボタンを設けるようにしてもよい。
二つの空気流出部50aは、背中に対応する位置の下端部に対応する服地部10aの所定位置に形成されている。具体的には、二つの空気流出部50aはそれぞれ、左右の脇部からやや背中の方にずれた位置であって服地部10aの下部に形成されている。かかる空気流出部50aは、例えば、服地部10aの所定部分を切り欠き、その切り欠いた部分に、服地部10aの裏面側からメッシュ状の素材51を縫い付けることにより形成される。
二つのファン60は、空気流通路内に空気の流れを強制的に生じさせるためのものであり、各空気流出部50aに対応する服地部10aの裏面の位置に取り付けられる。第二実施形態では、二つのファン60を、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部10aの位置に取り付けているので、冷却衣服の着用者の腕がファン60に不用意に当たってしまい、ファン60が邪魔になることはない。また、電源ボックス90は、二つのファン60に電力を供給する電源である。尚、ファン60及び電源ボックス90の構造は、上記の第一実施形態のものと略同様である。
また、間隔確保手段80は、ファン60と下着との間に一定の間隔を確保するためのものであり、その構造・機能は、上記の第一実施形態のものと略同様である。
次に、服地部10aの素材について説明する。第二実施形態では、服地部10aの上部とそれ以外の部分とで、異なる素材が用いられる。すなわち、服地部10aの上部には、空気流通性のよい素材を使用し、一方、服地部10aの上部以外の部分には、第一実施形態と同様に、実質的に空気が漏れないような素材を使用する。このため、服地部10aの上部からは外部の空気が空気流通路内に流入することができる。第二実施形態では、第一実施形態のように服地部の一部を切り欠いて空気流入部を形成していないが、その代わりに、服地部10aの上部が空気流入部の役割を果たすことになる。このように空気流入部の役割を果たす、服地部10aの上部であって空気流通性のよい素材が用いられた部位のことを、「空気透過部位」とも称することにする。第二実施形態では、例えば、肩から、その下側約5cmのところまでの服地部10aの部分を空気透過部位とする。また、空気透過部位には、撥水処理を施すことが望ましい。かかる処理を施さない場合には、空気透過部位が水に濡れると、その部位における空気流通性が著しく低下してしまうからである。
また、空気透過部位に使用する空気流通性のよい素材としては、服地部10aにおいて、一見して空気透過部位とそれ以外の部分との違いが分かるようなものを用いないことが望ましい。冷却衣服の外観上の違和感を少なくするためである。例えば、下着があまりにも透けて見えるような、とても目を粗く編んだメッシュ状の素材は、空気透過部位に使用する素材として適さないが、ある程度目を細かく編んだ素材であれば用いることができる。したがって、外部の空気は、空気透過部位から空気流通路内に流入する際、その空気透過部位に使用した素材からある程度抵抗を受けることになる。このため、十分な量の空気を空気流通路内に取り込むためには、空気透過部位の面積は大きくすることが望ましい。
次に、かかる服地部10aに要求される空気流通性について説明する。
いま、服地部10aの空気流通性を表す定量的な物理量として、5Pa(約0.5mmH2O)の圧力を、服地部10aに加えたときに、その服地部10aを単位時間、単位面積当たりに通過する空気の体積(cc/cm2/sec)を考える。冷却衣服の着用時に良好な冷却効果を得るためには、空気流入部としての役割を果たす服地部10aの空気透過部位においては、十分な量の空気を取り込むことができるようにしなければならない。一方、服地部10aの空気透過部位以外の部位、例えばファン60の近傍等においては、空気があまり漏れないようにする必要がある。本発明者等による実験の結果、空気透過部位に対応する服地部10aを通過する空気量が少なくとも2cc/cm2/secであり、空気透過部位以外の部位に対応する服地部10aを通過する空気量が多くとも1cc/cm2/secであるような、服地部10aを用いれば、十分な冷却効果が得られることが分かった。
使用するファンの圧力、空気流通路の空気抵抗等により透過性の絶対値は異なるが、一般的に、空気透過部位に対応する服地部10aを通過する空気量は空気透過部位以外の部位に対応する服地部10aを通過する空気量よりも3倍以上大きいことが望ましい。
尚、裏地を取りつけ、それによって空気流通路内を流れる空気が服地部10aの上部以外の部分から外部に漏れてしまうのを防止するようにしてもよい。例えば、裏地31のうち服地部10aの上部に対応する部位には空気流通性のよい素材を用い、服地部10aの上部以外の部位に対応する部位には実質的に空気の漏れの少ない素材を用いる。そして、服地部10aには、すべての部位について空気流通性のよい素材を用いる。これにより、服地部10aの上部(空気透過部位)から十分な量の空気を空気流通路内に取り入れることができ、服地部10aの上部以外の部分からは空気が外部にあまり漏れないようにすることができる。このように、裏地31によって、服地部10aを介して流入又は流出する空気の量を制御することにより、服地部10a全体に対して同じ生地を用いることができ、服地部10aの見栄えをよくすることができると共に、空気透過性を服地部10aで制御するよりも裏地31で制御する方が安価であるので、冷却衣服の製造コストを低く抑えることができるという利点がある。
ここで、かかる二つの性質を有する裏地31の作製方法としては、例えば次のような方法を用いることができる。すなわち、まず、全体的に空気流通性のよい素材を用意する。そして、その素材において服地部10aの上部以外の部位に対応する部位を、実質的に空気漏れの少ない素材、例えばプラスチックフィルム等とラミネートする。特に、服地部10aのうちズボンのベルト等の近傍に対応する部位のように、空気の動きの少ない部位においては、高い透湿性を有するフィルムを用いることが望ましい。これにより、プラスチックフィルム等とラミネートされた部位からは実質的に空気が漏れないようにすることができる。かかる方法を用いることにより、布地31を容易に且つ安価に作製することができる。尚、この方法は、服地部10aで空気流通性を制御する場合に対しても適用することができる。
第二実施形態の冷却衣服は、上記の第一実施形態のものと同様の作用・効果を奏する。特に、第二実施形態の冷却衣服では、服地部の素材を利用して空気を空気流通路内に取り込み、また、二つの空気流出部をそれぞれ、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けているので、当該冷却衣服を正面から見たときには、ファンが見えず、普通のワイシャツと全く同じである。通常のワイシャツと外観上異なる点は、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に二つの空気流出部が設けられている点だけである。このため、冷却衣服を着用しても、外観上の違和感はほとんどない。また、第二実施形態では、二つのファンをそれぞれ、服地部の左右の脇部からやや背中の方にずれた位置に設けており、背中の真ん中に設けているわけではないので、冷却衣服の着用者が椅子に腰掛けた場合に、ファンの空気排出口が塞がれてしまうこともない。
また、第二実施形態の冷却衣服では、二つのファンと電源ボックスとを取り外すと、通常のワイシャツとの違いは、二つの空気流出部が設けられている点だけである。このため、冷却衣服が汚れた場合には、ファンと電源ボックスを取り外した状態で洗濯することができる。
また、ファンと電源ボックスとが取り外された冷却衣服本体は、安価なコストで製造することがきる。このため、冷却衣服の着用者は、ファンと電源ボックスとが設けられていない冷却衣服本体を複数組購入し、ファン及び電源ボックスについては少なくとも一組購入しておけば、冷却衣服としてのワイシャツを毎日、交換して着用することができる。
ところで、第二実施形態では、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けた二つのファンにより、空気流通路内に空気を流通させなければならない。二つのファンを、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けると、空気は、空気流通路内を、例えば胸部や背中の中央を避けて流れるなど、偏った経路で流れる可能性がある。特に、背中は汗をかきやすい箇所であるので、空気流通路内には、空気を空気流通路内における所定の経路に沿って案内するための空気案内手段を設け、空気が背中の中央を通るようにすることが望ましい。具体的には、服地内の所定位置にスポンジを設け、空気流通路内の空間を仕切ることにより、空気が空気流通路内において背中の中央を流れるようにする。また、シロッコファンのような方向性のあるファンを用いて、空気流通路内を流れる空気を背中の中央に向けて吹き付けるようにしてもよい。尚、空気が胸部の中央を通るようにする場合も、上記と同様の方法を用いればよい。
尚、上記の第二実施形態では、服地部の上部を空気透過部位とし、二つのファンを、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けた場合について説明したが、例えば、一方の脇部に対応する服地部の部位を空気透過部位とし、他方の脇部に対応する服地部の位置に一つのファンを設けるようにしてもよい。一般に、空気透過部位とファン(又は空気流出部)とは、空気流通路を介して互いに反対側に設けられていれば、その具体的な設置位置はどこでもよい。
また、上記の第二実施形態では、空気透過部位から外部の空気を空気流通路内に取り入れ、空気流出部から空気流通路内の空気を外部に取り出す場合について説明したが、逆に、空気流出部を空気流入部とし、当該空気流入部から外部の空気を空気流通路内に取り入れ、空気透過部位から空気流通路内の空気を外部に取り出すようにしてもよい。
次に、本発明の第三実施形態について図面を参照して説明する。図11は本発明の第三実施形態に係る冷却衣服を説明するための図である。尚、第三実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第三実施形態の冷却衣服は、服地部10aと、二つのファン60と、電源ボックス90と、帯状の布(仕切手段)110とを備える。かかる冷却衣服が第二実施形態のものと異なる点は、服地部10aの上部だけでなく下部にも空気流通性のよい素材を用い、服地部10aの一部を切り欠いて形成される空気流出部を設けていない点、及び、ファン60を、その回転軸が下着の表面に対して略平行となるように服地部10aと下着との間に取り付けた点である。その他の点については、上記の第二実施形態のものと同じである。
上記の第二実施形態では、服地部の上部に空気流通性のよい素材を用い、服地部の上部以外の部分に空気が漏れないような素材を用いる場合を説明した。これに対し、第三実施形態では、服地部10aの上部と下部に空気流通性のよい素材を用い、上部及び下部以外の中央部分に、実質的に空気が漏れないような素材を用いる。服地部10aの上部であって空気流通性のよい素材が用いられた部位を「第一の空気透過部位」、服地部10aの下部であって空気流通性のよい素材が用いられた部位を「第二の空気透過部位」とも称することにする。かかる第一の空気透過部位及び第二の空気透過部位は、クレーム3における「空気流通部」に対応する。第三実施形態では、第一の空気透過部位が空気流入部の役割を果たし、第二の空気透過部位が空気流出部の役割を果たすことになる。したがって、服地部10aの一部を切り欠いて空気流入部、空気流出部を形成する必要はないので、この場合の冷却衣服は、外部から見る限り、普通の衣服と全く同じであり、外観上の違和感が全くない。
また、第三実施形態では、ファン60の構造は第二実施形態のものと略同様であるが、ファン60の取り付け方法が第二実施形態と異なる。すなわち、図11に示すように、帯状の布110を、服地部10aの下部の裏面に、胴回り方向に沿って縫い付ける。ここで、この帯状の布のうち服地部10aに取り付けられた側と反対側の端部にはゴム等を入れて、ギャザーを寄せている。また、二つのファン60を、その帯状の布110の所定位置に取り付ける。これにより、帯状の布110のギャザーは下着と接し、冷却衣服の着用時に、ファン60の羽根部の中心軸は体の表面と略平行になる。このように、帯状の布110は、服地部10aと下着との間の空間を上下二つに仕切る役割を果たすものであり、クレーム3における「仕切手段」に対応する。ここで、ファン60としては、例えば直径約20mm程度の小型のものを用いる。但し、ファン60の風量はある程度大きいことが望ましいので、例えば厚さ10mm以上のファン60を用いることが望ましい。また、ファン60の代わりに、ふいごのような縦長の送風機を用いてもよい。このような方法によってファン60を取り付けることにより、空気流通路内を通ってきた空気はファン60により下方に向けて排出された後、空気流通性のよい服地部10aの下部(第二の空気透過部位)を介して外部に流出する。尚、ファン60よりも下側に位置する服地部についてはある程度の空気流通性を有するものであれば十分である。当該下側に位置する服地部10aの面積は大きいので、空気はあまり抵抗なく外部に流出できるからである。
尚、上記の第三実施形態では、外部の空気を服地部の上部(第一の空気透過部位)から空気流通路内に取り込み、その取り込んだ空気を上方から下方に向けて流通させる場合について説明したが、ファンを上下逆向きにして上記の帯状の布に取り付けることにより、外部の空気を服地部の下部(第二の空気透過部位)から空気流通路内に取り込み、その取り込んだ空気を下方から上方に向けて流通させるようにしてもよい。空気流通路内の空気は体温により熱せられ、空気流通路内に上昇気流や対流が生じるので、かかる上昇気流等を利用するという観点からは、空気流通路内の空気を下方から上方に向けて流通させる方が好ましい。
第三実施形態の冷却衣服は、上記の第二実施形態のものと同様の作用・効果を奏する。特に、第三実施形態の冷却衣服では、服地部の素材を利用して空気を空気流通路内に取り込むと共に外部に流出しており、しかも、ファンを外部から見えない服地部の裏面側に設けているので、冷却衣服を着用していても、外観上の違和感が全くないという特徴がある。
尚、上記の第三実施形態において、冷却衣服を、裾の部分をズボン等の中に入れないで着用するタイプの衣服(例えば、Tシャツ、つなぎ服等)に適用してもよい。この場合、服地部の下端が開放しているので、服地部の下部に必ずしも第二の空気透過部位を設ける必要はない。すなわち、一般には、空気透過部位を服地部の上部及び下部のうち少なくとも一方に設ければよい。ここで、当該空気透過部位から外部の空気を空気流通路内に取り入れる場合には、服地部の端部から空気流通路内の空気を外部に取り出し、一方、当該空気透過部位から空気流通路内の空気を外部に取り出す場合には、服地部の端部から外部の空気を空気流通路内に取り入れることになる。
また、上記の第3実施形態では、帯状の布110を用いて、二つのファンを所定の位置に取りける場合について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、帯状の布の代わりに図12に示す専用ベルトを用いてもよい。図12は第3実施形態の変形例で用いる専用ベルトの概略平面図である。また、図13は本変形例の専用ベルト120の装着状態を示す概略部分側面図である。なお、図12及び図13において、前述した第3実施形態と同一の機能を有するものには、同一の符号又は対応する符号を付することにより、その詳細な説明を省略する。図12及び図13に示すように、本変形例の専用ベルト120は、ベルト本体121と、ファン60を着脱自在に取着するためのファンホルダー122と、電源部90aと、留め金123とを備えている。ベルト本体121は、服地部10aと下着の間に空気流通路を確保するものであると共に空気流通路を上下方向に仕切るものである。したがって、ベルト本体121は、上下方向に所定の幅を有するだけでなく、側部方向にも空気流通路を確保すると共にファンを保持するための十分な幅を有する。なお、図12に示すようにベルト本体121の留め金123周辺の幅を狭くしているのは、本変形例の専用ベルトを装着した際に、ベルト装着による違和感をできるだけ少なくするためである。また、ベルト本体121の側部方向の厚い部分にはスポンジ等の軽く且つ弾力性に富む部材を用いる。なお、専用ベルト120と服地部10aとは、マジックテープを用いて密着させてもよいし、或いはファスナーを用いて専用ベルト120を服地部10aに着脱自在に取着してもよい。更に、専用ベルトと服地部とを密着させるために服地の上から薄いベルトをまくようにしてもよい。
尚、本発明の冷却衣服の上に背広等の上着を着用することができる。この場合、かかる上着については、冷却衣服の空気流入部(第二実施形態の場合には服地部の上部)やファンに対応する部分を、例えばメッシュ状の素材で作製することが望ましい。これにより、当該上着は、冷却衣服における空気の流れを阻害することはないので、冷却衣服による良好な冷却効果を維持することができる。また、最近では、全体的に空気流通性に優れた上着が販売されている。かかる上着であれば、何ら加工することなくそのまま、当該冷却衣服の上に着用することができる。尚、冷却衣服の上に着用するものは、背広に限られない。
また、本発明の冷却衣服は、上述した第一・第二実施形態で説明した作業服やワイシャツに限らず、どのような衣服にも適用することができる。
その他、本発明の冷却衣服は、上述したもの以外に、つなぎ服、レインコート、軍服、ウインタースポーツ用の衣服、農業や林業用の作業服、パイロットやレーサー用の衣服、発汗する動物用の衣服などに適用することができる。
本発明の冷却衣服は、第一実施形態で説明したようにファンを空気流出部に対応する服地部の位置に設けることにより、空気流通路内を流通する空気を体に略垂直な方向に排出する方式と、第三実施形態で説明したように仕切手段にファンを設けることにより、空気流通路内を流通する空気を服地部の下部から下方に向けて排出する方式とを両方備えたものであってもよい。かかる冷却衣服では、空気流通路内に大量の空気を流通させることができるという利点がある。
特に背中の上部等、服地と下着が密着しやすい所や、その他空気流通路として重要な所には必ずすき間が確保出来るようなスペーサを服地裏に取りつければ空気流通路の空気抵抗が減り、一層冷却効果が上がる。スペーサとしては、スポンジやフエルト等の小片などで良い。
以上説明したように、本発明は、服地部と下着との間の空気流通路内に空気を体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、汗をかくような状況では、汗を、空気流通路内を流通する空気によって外部に運び出し、発汗による気化熱の吸収によりダイレクトに体を冷やすものであり、少ない消費電力で、しかも簡易な構造で、快適に過ごすことのできる衣服に適用することができる。
Claims (37)
- 服地部に設けられた、外部の空気を前記服地部内に取り入れるための一又は複数の空気流入部と、
前記服地部に設けられた、服地部内の空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流出部と、
前記服地部と体又は下着との間の空間から外部に空気を排出することにより、前記空間に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の送風手段と、
前記体又は下着に対向する側の前記送風手段の表面を覆うように設けられた、前記送風手段と体又は下着との間に一定の間隔を確保するための一又は複数の間隔確保手段と、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記服地部と前記体又は下着との間を流通する空気が前記服地部の下端から外部に漏れるのを防止するための空気漏れ防止手段と、
を備え、前記送風手段によって前記空気流入部から外部の空気を前記服地部内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記空間内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記空間内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とする冷却衣服。 - 服地部の下部に設けられた、外部の空気を前記服地部内に取り入れるための一又は複数の空気流入部と、
前記服地部の上部に設けられた、服地部内の空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流出部と、
前記服地部と体又は下着との間の空間に外部の空気を送り込むことにより、前記空間に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の側流ファンと、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記服地部と体又は下着との間を流通する空気が前記服地部の下端から外部に漏れるのを防止するための空気漏れ防止手段と、
を備え、前記側流ファンによって前記空気流入部から外部の空気を前記服地部内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記空間内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記空間内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とする冷却衣服。 - 服地部に設けられた、服地部内の空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記服地部内に取り入れるための一又は複数の空気流通口と、
前記空気流通口に対応する前記服地部の位置に設けられた、前記服地部と前記体又は下着との間の空間に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記空間を介して前記空気流通口と反対側に位置する前記服地部の所定部位であって、空気流通性のよい素材が用いられた部位である空気透過部位と、
を備え、前記送風手段によって前記空気流通口から又は前記空気透過部位から外部の空気を前記空間内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記空間内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記空間内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とする冷却衣服。 - 服地部と体又は下着との間の空間を上下二つに仕切るための仕切手段と、
前記仕切手段に設けられた、前記服地部と体又は下着との空間内に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記服地部の上部及び下部のうち少なくとも一方に設けられた、前記空間内の空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記空間内に取り入れるための空気流通部と、
を備え、前記送風手段によって前記空気流通部から又は前記服地部の端部から外部の空気を前記空間内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記空間内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記空間内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とする冷却衣服。 - 空気を前記空間内における所定の経路に沿って流通させるための空気案内手段を前記空間内に設けたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却衣服。
- 前記電源手段は燃料電池であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却衣服。
- 前記電源手段はコードを介して前記送風手段に電力を供給することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却衣服。
- 前記服地部に裏地を取り付け、前記服地部のすべての部位に対して空気流通性のよい素材を用いると共に、前記裏地のうち前記服地部の上部に対応する部位には空気流通性のよい素材を、前記服地部の上部以外の部位に対応する部位には実質的に空気漏れの少ない素材を用いたことを特徴とする請求項3又は4記載の冷却衣服。
- 前記服地部の上部に対応する部位の裏地及び前記服地部としては、5Paの圧力を前記服地部及び前記裏地に加えたときに、前記空気透過部位に対応する前記服地部及び前記裏地を単位時間、単位面積当たりに通過する空気の体積が少なくとも2cc/cm2/secであり、前記空気透過部位以外の部位に対応する前記裏地として単位時間、単位面積当たりに通過する空気の体積が多くとも1cc/cm2/secであるようなものを用いたことを特徴とする請求項8記載の冷却衣服。
- 前記裏地は、空気流通性のよい素材を用いて形成し、且つ前記服地部の上部以外の部位に対応する部位に、実質的に空気漏れの少ない素材をラミネートすることにより得られたものであることを特徴とする請求項8記載の冷却衣服。
- 前記服地部として空気流通性の良い素材を用い、空気漏れを防止する部分には空気漏れの少ない素材を服地裏側にラミネートすることを特徴とする請求項3又は4記載の冷却衣服。
- 前記送風手段は、マジックテープ又はシート状マグネットを用いて前記服地部に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却衣服。
- 前記送風手段の筐体部の周囲には、少なくとも二つの切欠き部を有するリング状部材が形成され、前記送風手段の取付位置には、前記送風手段を保持するための保持手段が取り付けられ、前記保持部には少なくとも二つの係止爪が形成されており、且つ、前記切欠き部と前記係止爪との位置を合わせて前記送風手段を前記保持手段に当接させた後、前記送風手段を回して、前記切欠き部の周囲に位置する前記リング状部材の一部と前記係止爪とを係合させることにより、前記送風手段を前記保持手段に取り付けたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却衣服。
- PWM変調方式を用いて前記送風手段の回転数を変化させることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却衣服。
- 前記送風手段には、前記電源手段、制御回路及び受信回路が取り付けられており、外部の送信手段から前記受信回路に無線で信号を送ることにより、前記送風手段の駆動を制御することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却衣服。
- 前記送風手段には、制御回路及び受信回路が取り付けられており、外部の送信手段から前記受信回路に無線で信号を送ることにより、前記送風手段の駆動を制御することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却衣服。
- 前記受信回路は少なくとも1000個の通信識別コードを有することを特徴とする請求項15又は16記載の冷却衣服。
- 前記送風手段毎にあるいは前記複数の送風手段をいくつかのグループに区分したときのグループ毎に、前記送風手段の駆動を制御することを特徴とする請求項15又は16記載の冷却衣服。
- 前記送風手段は、その回転軸が体又は下着の表面に対して略垂直となるように前記服地部の裏面に取り付けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記送風手段は、前記送風手段の前記服地部に対向する側の端面が前記服地部の表面と略同一平面上にあるように、前記服地部の裏面の所定位置に取り付けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記送風手段の端面が前記服地部の表面から外側に突出している量は多くとも5mmであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記送風手段を、脇部からやや背中の方にずれた前記服地部の位置に設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記送風手段は側流ファンであり、前記服地部の裏面の所定位置に取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の冷却衣服。
- 前記送風手段はファンであり、前記ファンの回路部に耐水加工を施したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却衣服。
- 体又は下着に対向する側の前記送風手段の表面を覆うように設けられた、前記送風手段と体又は下着との間に一定の間隔を確保するための一又は複数の間隔確保手段を有することを特徴とする請求項3記載の冷却衣服。
- 前記間隔確保手段は弾力性を有し、外部から押圧されたときに、その押圧された方向に容易に移動することができることを特徴とする請求項1又は25記載の冷却衣服。
- 前記送風手段の筐体部は、前記間隔確保手段の取付部を有することを特徴とする請求項1又は25記載の冷却衣服。
- 前記服地部の上部を前記空気透過部位としたことを特徴とする請求項3記載の冷却衣服。
- 前記空気流通部は、前記服地部の所定部位であって空気流通性のよい素材が用いられた部位であることを特徴とする請求項4記載の冷却衣服。
- 前記服地部の前部を開閉する手段としてファスナー又はマジックテープを用いたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却衣服。
- 前記服地部には吸水性のない素材を用いたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却衣服。
- 前記服地部の所定部位に撥水加工を施したことを特徴とする請求項3又は4記載の冷却衣服。
- 前記服地部に熱線反射処理を施したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却衣服。
- 前記送風手段に対応する前記服地部の部分にはメッシュ状素材を用いたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記服地部と前記体又は下着とが密着しやすい部位の前記服地部の裏側に前記空間を確保する為のスペーサを取りつけたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の冷却衣服。
- 前記送風手段はファンであり、前記ファンは服地部と体又は下着の間に配置されるように、服地部の内側に使用する専用のベルトに電源手段と共に着脱自在に取着されていることを特徴とする請求項4記載の冷却衣服。
- 前記空気流出部は、背中の上部に設けられた、横に長い切り欠き部を有し、且つ前記切り欠き部をメッシュで覆うか、或いは前記切り欠き部の周囲に1若しくは複数個のスペーサを配置したことを特徴とする請求項2記載の冷却衣服。
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