JPWO2003103424A1 - 冷却衣服 - Google Patents
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Abstract
本発明は、少ない消費電力で、しかも簡易な構造で、快適に過ごすことのできる冷却衣服を提供する。服地部10aの上部には空気流通性のよい素材を使用し、服地部10aの上部以外の部分には実質的に空気が漏れないような素材を使用する。服地部10aの裏面の中央部には、服地部10aと下着との間に空気流通路を確保するためのスペーサ部20aが設けられる。服地部10aの下部には、空気流通路内の空気を外部に取り出すための空気流出部50aが設けられ、空気流出部50aに対応する服地部10aの裏面の位置には、空気流通路内に空気の流れを強制的に生じさせるファンが設けられる。ファンにより服地部10aの上部から外部の空気を空気流通路内に取り入れ、その空気を空気流通路内に体の表面と略平行に流通させることにより、体を冷却する。
Description
技術分野
本発明は、高温の環境下でも快適に過ごすことができる冷却衣服に関する。
背景技術
夏などの暑い季節に、暑さを解消する手段として現在最も広く用いられているのはエアーコンディショナーである。これは、部屋の空気を直接冷やすものであるため、暑さを解消するという点においては、非常に有効である。
しかしながら、エアーコンディショナーは、高価な装置であり、世帯普及率は高くなってきたが、一つの世帯の各部屋ごとに普及するまでには至っていない。また、エアーコンディショナーは大量の電力を消費するため、エアーコンディショナーが普及することによって社会全体の電力消費も増え、しかも、発電の大きな割合を化石燃料に頼っている現状では、エアーコンディショナーが普及することによって、地球全体の温暖化につながるという皮肉な結果を招く。また、エアーコンディショナーは、部屋の空気そのものを冷却するので、冷えすぎによって健康を損なうといった問題も考えられる。
そこで、暑い季節でも、消費電力が少なく、かつ、快適に過ごすことのできる衣服が案出されれば、かかる問題の幾分かの解決につながる。
発明の開示
本発明は、このような技術的背景のもとになされたものであり、少ない消費電力で、しかも簡易な構造で、快適に過ごすことのできる冷却衣服を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、服地部の裏面の所定部位に接する一又は複数のスペーサにより形成された、前記服地部と体又は下着との間に空気を流通させるための流通路と、前記服地部に設けられた、外部の空気を前記流通路内に取り入れるための一又は複数の空気流入部と、前記服地部に設けられた、前記流通路内の空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流出部と、前記服地部に設けられた、前記流通路内に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給する電源手段と、前記服地部と体又は下着との間を流通する空気が前記服地部の下端から外部に漏れるのを防止するための空気漏れ防止手段と、を備え、前記送風手段によって前記空気流入部から外部の空気を前記流通路内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記流通路内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記流通路内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、服地部の裏面の所定部位に接する一又は複数のスペーサにより形成された、前記服地部と体又は下着との間に空気を流通させるための流通路と、前記服地部に設けられた、前記流通路内の空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記流通路内に取り入れるための一又は複数の空気流通口と、前記空気流通口に対応する前記服地部の位置に設けられた、前記流通路内に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給する電源手段と、前記流通路を介して前記空気流通口と反対側に位置する前記服地部の所定部位であって、空気流通性のよい素材が用いられた部位である空気透過部位と、を備え、前記送風手段によって前記空気流通口から又は前記空気透過部位から外部の空気を前記流通路内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記流通路内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記流通路内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
更に、上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、服地部の裏面の所定部位に接する一又は複数のスペーサにより形成された、前記服地部と体又は下着との間に空気を流通させるための流通路と、前記服地部と体又は下着との間の空間を上下二つに仕切るための仕切手段と、前記仕切手段に設けられた、前記流通路内に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給する電源手段と、前記服地部の上部及び下部のうち少なくとも一方に設けられた、前記流通路内の空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記流通路内に取り入れるための空気流通部と、を備え、前記送風手段によって前記空気流通部から又は前記服地部の端部から外部の空気を前記流通路内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記流通路内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記流通路内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
上記の各冷却衣服では、種々の方法を用いて流通路を形成することができる。例えば、前記スペーサを前記服地部の裏面の所定部位に取り付けることにより、前記流通路を形成してもよい。また、前記スペーサをシート状素材に取り付けた後、前記シート状素材を前記服地部の裏面に対向させるようにして、前記シート状素材を前記服地部の所定部位に縫い付けることにより、前記流通路を形成してもよい。また、前記複数のスペーサを用いて着衣できる形状の中着服を作製し、前記中着服の上に前記服地部を着用することにより、前記流通路を形成してもよい。更に、前記スペーサを下着の表面の所定部位に取り付け、前記スペーサが取り付けられた前記下着の上に前記服地部を着用することにより、前記流通路を形成してもよい。
尚、「下着」とは、冷却衣服の下に着用する衣類を意味する。
発明を実施するための最良の形態
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態について説明する。
最初に、本発明の第一実施形態に係る冷却衣服を説明する。図1(a)は本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図1(b)はその冷却衣服の概略背面図、図2(a)はその冷却衣服に用いられるファンの概略平面図、図2(b)はそのファンの概略側面図、図2(c)はそのファンの概略底面図である。図3(a)はその冷却衣服に用いられる間隔確保手段の概略平面図、図3(b)はその間隔確保手段の脚部の概略拡大平面図、図4はファンを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図、図5は四つのファンの接続コードを固定する方法を説明するための図である。
第一実施形態の冷却衣服は、図1及び図4に示すように、服地部10と、三つのスペーサ部20と、三つの空気流入部40と、四つの空気流出部50と、四つのファン(送風手段)60と、四つの間隔確保手段80と、電源ボックス90と、空気漏れ防止手段(不図示)とを備えるものである。第一実施形態では、かかる冷却衣服を、作業服、ユニホーム等、裾の部分をズボンの中に入れないで着用するタイプの衣服に適用した場合について説明する。この冷却衣服は、長袖の衣服であって、ファスナーで前を閉じるタイプのものであるとする。また、この冷却衣服は、下着の上に着用される。ここで、第一実施形態では、冷却衣服の下に着用する衣類を「下着」と称することにする。例えば、冷却衣服の下にワイシャツを着ることにすれば、そのワイシャツは、ここでいう「下着」である。
服地部10の裏面には、三つのスペーサ部20が糸で縫い付けられている。第一実施形態では、各スペーサ部20を、汗のかきやすい箇所、例えば左胸部、右胸部及び背中に対応する服地部10の位置に縫い付けている。スペーサ部20は、服地部10と下着との間に空気を流通させるための空気流通路を形成するためのものである。この空間は、人が冷却衣服を着用したときに体表に略平行な空気流通路を構成する。尚、一般に、クッション等の目的でスペーサを設けた衣服があるが、かかる衣服においても、結果的に、そのスペーサが衣服と下着との間に一定の空間を確保するという機能を有する場合は、当該スペーサは、本発明における「スペーサ」である。
第一実施形態では、冷却衣服を着用したときにその前部を閉じる手段としてファスナーを用いている。ボタンやホック等を用いることもできるが、ファスナーを用いるのが望ましい。ファスナーは簡単に開閉することができ、しかもファスナーを閉じたときにそのファスナーの部分から外部へ空気がほとんど漏れないからである。このため、ファスナーを閉じると、服地部10の前側に設けた二つのスペーサ部20は全体で一つの空気流通路を構成することになる。
各スペーサ部20の上端部の近傍に対応する服地部10の位置には、空気流入部40が形成されている。この空気流入部40の横幅は、当該スペーサ部20の横幅と略同程度である。空気流入部40は、例えば、服地部10の所定部分を切り欠き、その切り欠いた部分に、服地部10の裏面側からメッシュ状の素材41を縫い付けることにより形成される。このメッシュ状の素材41はスペーサ部20が外に飛び出ないようにすると共に、冷却衣服の外観上の違和感を少なくするためのものである。かかる空気流入部40から外部の空気がスペーサ部20内に流入する。図1の例では、空気流入部40を、服地部10の上部の前側に二つ、その後側に一つの合計三つ設けている。尚、襟首や袖の部分も、広い意味では空気流入部と考えることができる。
一方、スペーサ部20の下端部に対応する服地部10の所定位置には、空気流出部50が形成されている。この空気流出部50も空気流入部40と同様にして形成される。すなわち、例えば、服地部10の所定部分を切り欠き、その切り欠いた部分に、服地部10の裏面側からメッシュ状の素材51を縫い付けることにより形成される。このメッシュ状の素材51は冷却衣服の外観上の違和感を少なくするためのものである。かかる空気流出部50からスペーサ部20内の空気が外部に流出する。空気流出部50の数はファン60の数と同じである。図1の例では、空気流出部50を、服地部10の下部の前後に二つずつ、合計四つ設けている。
尚、このような空気流入部40を設けずに、服地部10の所定の端部、例えば襟首の部分におけるスペーサ部20の開口端(冷却衣服と下着との隙間)から、空気をスペーサ部20内に取り入れるようにしてもよい。この場合、スペーサ部20の取り付け位置は、その空気を取り入れる部分まで引き延ばす必要がある。このように、襟首の部分におけるスペーサ部20の開口端を空気の流入部として利用する場合には、上記の空気流入部40を設ける必要はないので、冷却衣服の外観上の違和感が少なくなるという利点がある。
四つのファン60は、スペーサ部20内に空気の流れを強制的に生じさせるためのものであり、それぞれ各空気流出部50に対応する服地部10の裏面の位置に取り付けられる。すなわち、ファン60を服地部10の下部の前後に二つずつ設けている。このファン60は、スペーサ部20内の空気を外部に排出する方向に回転する。ファン60をこの方向に回転させると、スペーサ部20により形成される空気流通路内の圧力が低下し、空気流入部40から外部の空気が空気流通路内に流入する。この流入した空気は、空気流通路内において体表に略平行であって下側に向かう方向に沿って移動する。そして、空気は、ファン60に達すると、ファン60に吸引されて空気流出部50を介して外部へ排出される。
四つのファン60は、図5に示すように、並列に接続されており、その接続コード69が電源ボックス90に繋がれている。電源ボックス90には電池(電源手段)が収納されている。この電池が四つのファン60に電力を供給する電源である。また、電源ボックス90には、ファン60の駆動をオン/オフするスイッチが設けられている。冷却衣服の着用時には、電源ボックス90は、例えばズボンのベルトに取り付けられる。また、電源ボックス90を、服地部10に設けた専用のポケットに収納してもよい。
電池としては、通常、経済性の観点から二次電池が用いられる。しかし、最も好ましいのは、電池として燃料電池を用いることである。燃料電池は、二次電池に比べて、小型であり、充電する手間もかからないからである。しかも、燃料電池は、冷却衣服と相性がよいと考えられる。燃料電池というのは、その特性上、一時に大容量の電流を流す必要がある場合には適さず、一定の電流をじわじわ流すような場合に適している。冷却衣服の場合には、ファン60を駆動するために電池を用いるので、急激な立ち上がり電流がないからである。
ところで、燃料電池は、発電時に水蒸気を発生するので、冷却衣服における電源として燃料電池を用いた場合、燃料電池から発生した水蒸気が服地部10を濡らしてしまうことがある。このため、燃料電池は、服地部10内において空気流通性の優れたところに設けることが望ましい。これにより、水蒸気を、流通する空気と共に外部に排出することができるので、水蒸気によって服地部10が濡れてしまうのを防止することができる。
また、服地部10の裏面の所定位置(数箇所)には、図5に示すように、各ファン60から引き出された接続コード69を固定するためのコード固定手段15が設けられている。コード固定手段15としては、例えば1cm×4cmの細長いマジックテープが用いられる。このマジックテープはA面、B面が一体となったものである。そのマジックテープの先端部を服地部10の裏面に縫い付けておく。そして、そのマジックテープで接続コード69を巻き込むようにして、マジックテープの後端部をその先端部に貼り付けることにより、接続コード69を固定することができる。
ファン60は、図2に示すように、筐体部61と、羽根部71と、回路部(不図示)と、マジックテープ72とを有する。筐体部61は、円筒状部材65と、リング状部材66と、円板状部材67と、三つの保持部材68とからなる。リング状部材66は円筒状部材65の外側面の所定位置に設けられている。円板状部材67は、円筒状部材65の内部に設けられ、円筒状部材65の内側面に設けた三つの保持部材68により保持されている。かかる筐体部61は、プラスチックを用いてインジェクション成形により一体的に製造される。また、円筒状部材65の高さ(ファン60の厚さ)は約6mmである。
羽根部71と回路部は、円筒状部材65の内部に配設され、回路部は円板状部材67上に取り付けられている。回路部は回転モータ(駆動手段)を含み、この回転モータの軸に羽根部71が取り付けられている。この羽根部71としては、その直径が例えば10mm〜100mmのものが用いられる。このとき、羽根部71の回転軸は、円筒状部材65の中心軸と略平行であり、リング状部材66の表面に略垂直である。かかるファン60にはある程度の排気能力が要求される。例えば、ファン60としては、駆動時にファン60付近における服地部10の内外の空気圧差を最大50Paにすることができるものであれば十分である。このため、ファン60としては、静圧が最大でも150Paであるものを用いれば十分である。また、ファン60による風量は大きい程、冷却効果が高くなるが、すべてのファン60の風量はトータルで少なくとも1リットル/secであることが望ましい。
尚、ファン60としては、重さが40g以下であるものを用いることが望ましい。ファン60の重さで服地部10が変形しないようにするためである。また、ファン60のノイズは40dB[A]以下であることが望ましい。
羽根部71を回転させると、スペーサ部20内の空気は、円筒状部材65の一方の開口部から羽根部71に向かって流れ込み、羽根部71を介して円筒状部材65の他方の開口部から外部に排出される。かかるファン60は、その大きさの割には風量が多く、第一実施形態の冷却衣服に用いるのに適している。但し、スペーサ部20内の空気を円筒状部材65内に取り込むためには、円筒状部材65の下着に対向する側の端面と下着との間に一定の空間を設けなければならない。一般に、この空間の大きさはファン60の径に応じて決められる。
マジックテープ72は、リング状部材66の裏面に接着される。かかるマジックテープ72は、ファン60を服地部10に着脱自在に取り付けるためのものである。このマジックテープ72をA面のものとすると、B面のマジックテープ16は、図4に示すように、服地部10の裏面における空気流出部50の周囲部に縫い付けられている。これら二つのマジックテープ72,16を貼り付けることにより、ファン60が空気流出部50の周囲に取り付けられる。このため、冷却衣服を着用すると、羽根部71の回転軸は下着の表面に対して略垂直になる。尚、マジックテープ72の接着部位であるリング状部材66の形状を円形状にしたのは、そのマジックテープ72とペアになるマジックテープ16を服地部10に取り付ける場合、その取り付け面積はなるべく小さい方が望ましいからである。
一方、ファン60を冷却衣服から取り外す場合には、まず、コード固定手段15としてのマジックテープを剥がして、接続コード69の固定状態を解除する。次に、各ファン60のマジックテープ72を剥がして、四つのファン60を冷却衣服から取り外す。こうして、誰でも簡単にファン60を容易に取り外すことができる。尚、ファン60をマジックテープ72で着脱する代わりに、シート状マグネットを用いて着脱するようにしてもよい。このようにファン60及び電源ボックス90を着脱自在に構成することにより、冷却衣服を容易に洗濯できるだけでなく、ファン60が壊れたときにファン60だけを交換できるという利点もある。
また、ファン60を空気流出部50の周囲に取り付けたとき、ファン60が空気流出部50のメッシュ状素材51から突出しないように、ファン60を設計している。すなわち、図2(b)に示すように、ファン60の裏面側において、円筒状部材65の端面とリング状部材66との間隔dを、マジックテープ72の厚さと空気流出部50に設けたマジックテープの厚さとの和になるように設計している。これにより、図4に示すように、ファン60を服地部10に取り付けたときに、ファン60の端面は服地部10の表面と略同一平面上にあることになる。したがって、冷却衣服の着用者にとっては作業時にファン60が邪魔になることはなく、また、冷却衣服の外観上の違和感も少ない。尚、一般的には、ファン60の端面が服地部10の表面から5mmよりも多く外側に突出しないように、ファン60を取り付けることが望ましい。
ファン60を駆動すると、通常、羽根部71は一定の回転数で回転する。これにより、ファン60は一定の風量で空気を送り出す。これに限らず、ファン60は、例えば、風量を調整したり、風量に強弱をつけたりして空気を送り出す、いわゆるゆらぎ送風を行うようにしてもよい。この場合、羽根部71の回転数を変化させるのに、可変抵抗等を用いたのでは、電力がロスしてしまうので、PWM(pulse width modulation)等の変調方式を用いたり、あるいはDC−DCコンバータで電圧を変化させることが望ましい。更に、冷却衣服の内部に温度センサ又は温湿度センサを設けておき、かかるセンサで検知した温度又は温湿度に基づいて、羽根部71の回転数を制御するようにしてもよい。
尚、屋外作業中、急に雨が降ってきたときには、ファン60が濡れてしまうが、この対策として、ファン60の回路部に耐水加工を施すことが望ましい。具体的に、かかる耐水加工としては、回路部に樹脂をコーティングすることが考えられる。
間隔確保手段80は、ファン60と下着との間に一定の間隔を確保するためのものである。冷却衣服の着用者が作業をしたり、何らかの動作をしていると、どうしても下着にしわができてしまう。そのしわによりファン60の上端(ファン60の下着に対向する側の端)と下着との間隔が狭くなり、空気がファン60に流れ込みにくくなる。このような場合に、間隔確保手段80は、下着のしわを抑え込み、空気の流れを確保する役割を果たす。
間隔確保手段80は、図3(a)に示すように、本体部81と、四つの脚部82とを有する。この間隔確保手段80は、厚さ約0.3mmであり、その材料としては、柔らかく且つ弾力性を有するプラスチックシート等が用いられる。本体部81の外形は略円形状であり、また、本体部81には複数の開口部を形成している。図3(a)の例では、本体部81に四つの扇状の開口部を形成し、本体部81がリング状部と、その内部に位置する交差した二つの線状部とからなる場合を示している。但し、上記の開口部の大きさは、しわになった下着の部分が入り込まない程度にする必要がある。
脚部82は、図3(b)に示すように、その先端部には、長手方向に沿って長い切欠き部82aが形成されており、また、その幅方向には二つの短い切欠き部82bが形成されている。前者の切欠き部82aは脚部82の幅を狭くすることができるようにするためのものであり、後者の切欠き部82bは脚部82を固定するためのものである。また、ファン60のリング状部材66には、図2に示すように、間隔確保手段80を取り付けるための四つの取付部66aが形成されている。かかる取付部66aはリング状部材66の表面から突出して形成されている。また、各取付部66aには、脚部82を挿入するための孔が形成されている。
間隔確保手段80をファン60に取り付けるには、まず、本体部81をファン60に対向する位置に配置し、一つの脚部82の先端部を手で押えて、その幅を狭くする。そして、その状態のまま、脚部82の先端部を、所定の取付部66a内に押し込む。これにより、脚部82の二つの切欠き部82bが取付部66aと係合し、その脚部82が固定される。同様に、他の三つの脚部82も各取付部66aに固定する。こうして、間隔確保手段80は、図4に示すように、下着に対向する側のファン60の表面を覆うように取り付けられる。間隔確保手段80を設けたことにより、下着にしわができたときに、間隔確保手段80の本体部81がそのしわになった下着の部分をブロックすることができるので、下着とファン60との間に常に一定の間隔を確保することができる。
また、間隔確保手段80は、弾力性を有するため、外部から押圧されたときに、その押圧された方向に容易に移動することができる。したがって、間隔確保手段80が下着に当接している場合に、着用者に間隔確保手段80が硬いという感じを与えることはない。また、間隔確保手段80は、押圧されたときには容易につぶれてしまい、その押圧力から開放されたときには直ちに元の状態に戻ることができる。実際、間隔確保手段80としては非常に弱い弾力性を有するものを用いれば十分である。
例えば、着用者が冷却衣服を着たまま椅子に腰掛けて、冷却衣服の背中部が椅子の背もたれによって押された場合には、間隔確保手段80は押しつぶされて、その本体部81がファン60の上端に接するようになる。このように、間隔確保手段80は、その弾力性により押しつぶされるので、着用者にごつごつした感じを与えることはない。但し、間隔確保手段80の本体部81がファン60の上端に接した状態では、空気がファン60に流入することができないので、背中における冷却効果はあまり有効ではない。
また、間隔確保手段80は、しわになった下着の部分が空気の流れを妨げるのを防止する役割と共に、下着に接して、ファン60の近傍における空気流通路を確保するスペーサとしての役割を備えている。間隔確保手段80がスペーサとしての役割を果たすためには、ファン60が実用的サイズのものである場合、間隔確保手段80の本体部81とそれに対向する側のファン60の上端との距離を、少なくとも約2mmとする必要がある。かかる距離を2mmより小さくすると、流通する空気の受ける抵抗が大きくなり、風量が低下するからである。
尚、上述したファン60の代わりに、シロッコファンに代表される側流ファンを、第一実施形態の冷却衣服に用いることも可能である。側流ファンとは、羽根の軸方向から吸入した空気を、羽根の外周方向へ放射状に送り出すファンのことである。側流ファンを冷却衣服に用いる場合には、空気流入部を服地部の下部に、空気流出部を服地部の上部に設け、側流ファンを、空気流入部に対応する服地部10の裏面の位置に取り付ける。図10に空気流入部に取り付けられた側流ファンの概略図を示す。図10に示すように、側流ファン600が空気流入部40から吸入した空気は、側流ファン600の側面から空気流通路内に放射状に送り出され、空気流通路内を通って空気流出部から外部に排出される。特に、側流ファン600として、スペーサ20の厚さと同一又はそれ以下の厚さを持つものを用いることにより、着用者は冷却衣服を着たときに側流ファン600による違和感を受けることはない。また、側流ファンを冷却衣服に用いる場合、側流ファンの構造上、必ずしも間隔確保手段80を設ける必要はない。
次に、服地部10の素材について説明する。服地部10の素材としては、例えば、ダウンジャケットの表地などに使われる高密度布を用いる。高密度布は、通常の布と比べると高い密度で織られている。後述するように、第一実施形態の冷却衣服は、体により温められて湿った空気を、スペーサ部20により形成される空気流通路内を流通させて、空気流出部50から排出することにより、かかる空気を外気と絶えず置き換えていくものであるため、空気が空気流通路内を流通する途中で服地部10から漏れないようにする必要がある。高密度布は糸の密度が高いため、糸の間から外部へ漏れる空気の量が非常に少なく、ほとんどの空気が空気流通路内を通って空気流出部50に達し、そこから外部に排出される。このため、高密度布は、服地部10の素材として用いるのにとても望ましい。また、高密度布は、あくまでも布であるため、汚れた場合には家庭用の洗濯機などで容易に洗うことができるという利点もある。このような高密度布は、各種の目的で製造されており、安価で入手できる。尚、高密度布は空気流通性のよくないものであることが好ましいが、具体的には、高密度布として、5Paの圧力を加えたときに、当該高密度布を単位時間、単位面積当たりに通過する空気の体積が5cc/cm2/sec以下であるものを用いる必要がある。
また、服地部10の素材としては、高密度布だけでなく、実質的に空気が漏れないものであれば、どのような素材でも用いることができる。特に、汚れを伴う作業を行う際に冷却衣服を使用する場合には、服地部10の素材としては、表面が滑らかなビニールやナイロン等、吸水性のない素材又は撥水加工してある素材を用いることが望ましい。服地部10に付いた汚れを容易に落とすことができるようにするためである。また、服地部10の素材として吸水性のある素材を用いると、雨等で服地部10が濡れたときに、空気流通路内を流通する空気が服地部10に吸収された水分を蒸発するのに使用され、体からの汗は有効に蒸発できなくなってしまうからである。これにより、汚れが服地部10にしみ込むことはなく、また、汚れを簡単に落とすことができる。この場合、吸水性のない素材は通気性が悪く、冷却衣服内の湿気を、当該素材を通して外部へ放散することはできないが、湿気はファン60によって空気とともに空気流通路内を通って外部に排出されるので、何ら問題はない。尚、冷却衣服を主に屋外での作業時に着用する場合には、服地部10の表面に熱線反射処理を施すことが望ましい。
次に、スペーサ部20の構造について詳しく説明する。図6はスペーサ部20の一部の概略平面図、図7はそのスペーサ部20の一部の概略拡大斜視図である。
図6及び図7に示すスペーサ部20は、スペーサ21と、布地(シート状素材)31とを備える。また、スペーサ21は、網目状部材25と、複数の柱状部材26と、複数の連結部材27とを備える。網目状部材25は、ほぼ扁平状に形成されたものであり、複数の第一レール25aと、複数の第二レール25bとを有する。複数の第一レール25aは、図6において上下方向に沿って一定間隔で配列されており、第二レール25bは、図6において左右方向に沿って一定間隔で配列されている。第一レール25aの配列間隔と第二レール25bの配列間隔とは同じであり、これにより、網目状部材25の網目はほぼ正方形状とされる。ここで、第一レール25aの配列間隔と第二レール25bの配列間隔は例えば約7mmである。
各柱状部材26は、網目状部材25の厚さ方向の長さ成分を有し、第一レール25aと第二レール25bとが交差する交差点において網目状部材25と物理的に連なっている。第一実施形態では、特に、各柱状部材26を網目状部材25から鉛直上方に引き出している。例えば、柱状部材26の長さは約6mm、太さは約1.5mmである。
各連結部材27は、網目状部材25の所定の網目において、その周囲に位置する四つの柱状部材26のうち、一つの対角線上に位置する二つの柱状部材26の先端を連結するものである。例えば、左から奇数番目の行で、上から奇数番目の列に位置する網目においては、連結部材27は、右上に位置する柱状部材26と左下に位置する柱状部材26とを連結するように形成される。また、左から偶数番目の行で、上から偶数番目の列に位置する網目においては、連結部材27は、左上に位置する柱状部材26と右下に位置する柱状部材26とを連結するように形成される。その他の網目には、連結部材27は形成されない。尚、連結部材27の数はできるだけ少ない方が望ましい。例えば、網目状部材25のすべての網目において、連結部材27を設けることにすると、スペーサ21が柔軟性に欠けたものとなり、冷却衣服の着心地がとても悪くなってしまうからである。
第一レール25a及び第二レール25bの各辺、各連結部材27も柱状部材であるので、第一実施形態で使用するスペーサ21は、複数の柱状部材26を用い、それらが物理的に連なるようにして三次元的に構成されたものと考えることができる。
スペーサ21は、具体的には、軟質プラスチックや熱可塑性エラストマー等の材料(熱可塑性樹脂)を用いてインジェクション成形等により容易に製造することができる。すなわち、加熱流動化したプラスチックを金型内に押し込んで、スペーサ21を成形している。このように金型を用いて一体成形することができるのは、上述したスペーサ21の構造からも分かるように、スペーサ21はその厚さ方向に沿ってはどの部分も空間を介して他の部分と重なることがないからである。また、かかるスペーサ21は、その外形によって占められる体積に対してスペーサ21自体の体積の割合がとても小さく、軽量であり、しかも安価であるという特徴がある。したがって、スペーサ21としては、少なくともその一部がインジェクション成型により製造されたものを用いることが望ましい。
スペーサ21は布地31に縫い付けられる。具体的には、スペーサ21の網目状部材25を布地31に対向させるようにして、スペーサ21を布地31の所定位置に配置する。そして、網目状部材25の交差点に糸を巻きつけるようにして、スペーサ21を布地31に縫い付ける。このとき、複数の小サイズのスペーサ21を寄せ集めて、布地31に縫い付けるようにしてもよい。大サイズのスペーサ21を製造する場合は、その金型の作製に多大な費用がかかり、スペーサ21の製造コストがかさむからである。こうして、スペーサ21を布地31に縫い付けることにより、三つのスペーサ部20が得られる。ここで、各スペーサ部20の大きさ、サイズは、その取り付け位置等に応じて決められる。
尚、布地31は、必ずしも布である必要はなく、シート状のものであれば、プラスチックフィルム、メッシュ状の素材等、どのような素材であっても用いることができる。また、複数の小サイズのスペーサ部を寄せ集め、それらの布地を互いに縫い付けることにより、大サイズのスペーサ部を作製するようにしてもよい。
三つのスペーサ部20は、左胸部、右胸部、背中のそれぞれに対応する服地部10の位置に縫い付けられる。具体的には、まず、スペーサ部20の布地31を服地部10の裏面に対向させるようにして、スペーサ部20を服地部10の所定部位に配置する。そして、例えばミシン等を用い、布地31を服地部10に縫い付ける。このとき、布地31の端部だけを服地部10に縫い付けるのが望ましい。スペーサ部20の縫合作業を容易に行うことができると共に、冷却衣服の外観上、その縫い目を目立たないようにできるからである。このように、第一実施形態では、スペーサ部20の布地31を服地部10に縫い付けているので、布地31は、実質的に服地部10の裏地とみなすこともできる。
尚、上述したように、空気流入部を設けず、例えば襟首の部分におけるスペーサ部の開口端から、空気をスペーサ部内に取り入れるようにした場合には、襟首の近くまでスペーサ部を延長して取り付ける必要がある。このとき、襟首には、ライン状のスペーサ部を個別に取り付け、そのライン状のスペーサ部から上記の延長したスペーサ部に空気を導くようにすればよい。
こうしてスペーサ部20が縫い付けられた冷却衣服を着用すると、スペーサ21の連結部材27が下着に接するようになる。かかる連結部材27は、上述した間隔確保手段80と同様に、しわになった下着の部分がスペーサ21の内部に入り込むのを防止する役割を果たす。実際、連結部材27を設けない場合には、冷却衣服の着用者が作業をしている際、どうしても下着にしわがより、そのしわになった下着の部分がスペーサ21の柱状部材26の間に入り込んでしまう。このため、そのしわになった下着の部分は空気流通路内における空気の流れを妨げることになる。第一実施形態では、スペーサ21に連結部材27を設けたことにより、スペーサ21の内部に、しわになった下着の部分が入り込むのを確実に防止することができる。
尚、スペーサ21として連結部材のない単純な構造のものを用い、そのスペーサ21の下着に対向する側にメッシュ状の素材を貼り付けるようにしてもよい。すなわち、この場合は、メッシュ状の素材が、しわになった下着の部分がスペーサ21の内部に入り込むのを防止する役割を果たすことになる。
スペーサ部20は、冷却衣服の服地部10と下着との間に空間を確保し、スペーサ部20内に空気を流通させるという目的を有する。空気の流通性をよくするためには、空気の流れる方向に垂直な面におけるスペーサ部20の開口率を大きくする必要がある。具体的には、かかる開口率は30%以上とすることが望ましい。一方、スペーサ部20と接触する下着の表面に空気が十分触れるようにするためには、下着に対向する側のスペーサ部20の開口率も大きくする必要がある。具体的には、かかる開口率は20%以上とすることが望ましい。第一実施形態のスペーサ部20はこれらの条件を満たすように設計されており、これにより、空気の流通性の向上を図り、しかもスペーサ部20と接する下着の接触面積を小さくすることができるので、下着と空気との直接的な接触の機会を多くすることができる。また、かかるスペーサ部20は、極めて軽量で柔軟性が大きいという利点がある。
尚、スペーサ21の外形によって占められる体積は、冷却衣服を上半身に着用する場合、10リットル以下であることが望ましい。かかる体積が10リットルよりも大きいと、空気流通路内の空気を換気する効率が悪くなってしまうからである。また、スペーサ21の外形によって占められる体積に対するスペーサ21自体の体積の割合は50%以下であることが望ましい。更に、スペーサ21の総重量は400g以下であることが望ましい。加えて、スペーサ21には抗菌加工を施すことが望ましい。
ところで、冷却衣服の下端は開放されており、服地部10と下着との間を流通する空気が服地部10の下端から漏れることがあり、この場合、冷却衣服には、空気漏れ防止手段を設ける必要がある。例えば、冷却衣服の裾の部分にゴムを入れておき、そのゴムにより裾の部分を縮めることにより、冷却衣服の裾の部分を着用者の胴回りに密着させるようにすればよい。また、紐やベルトにより、冷却衣服の裾の部分を着用者の胴回りに密着させてもよい。尚、ファンを服地部の中央部付近に設け、服地部の上部だけでなく下部にも空気流入部を設けた冷却衣服を製作することもできる。この場合でも、上記の空気漏れ防止手段は必要である。
また、かかる冷却衣服を作製する場合、スペーサ21、ファン60、電源ボックス90をパーツ化して予め製造しておくことが望ましい。これにより、冷却衣服を作業服以外の衣服に適用する場合でも、冷却衣服を容易に作製することができる。
次に、第一実施形態の冷却衣服で利用する冷却の原理について説明する。図8は第一実施形態の冷却衣服で利用する冷却原理を説明するための図である。図8(a)では、温度30℃の部屋に人Aが居るときに、その人Aの周囲の温度分布を等温曲線(点線)で概略的に示している。恒温動物である人Aの体温はほぼ一定であり、この温度を36℃とすると、部屋の空気に大きな対流がないと仮定した場合には、図8(a)に示すように、人Aの付近が最も温度が高く、人との距離が離れるにしたがって徐々に低下しながら30℃に近づく。
図8(b)は室温20℃の部屋に人Aが居るときの温度分布を等温曲線で概略的に示した図である。図8(b)を図8(a)と比べると分かるように、図8(b)の場合は図8(a)の場合に比べて、等温曲線同士の間隔が密である。言い換えると、図8(b)の場合は、図8(a)の場合に比べて温度勾配が大きい。温度勾配の大小は、放出される熱の量を左右し、人の温度の感じ方に大きな影響を与える。すなわち、人は、温度勾配が大きいほど暑さ、寒さを強く感じる。
この点に着目し、第一実施形態では、人の体の表面近傍における温度勾配を強制的に大きくし、これによって、人が涼しさ、快適さを感じるようにする。図8(c)は、室温30℃の部屋に、人Aが第一実施形態の冷却衣服を着用しているときの温度分布を示している。図8(c)の場合の室温は図8(a)の場合と同じであるが、人Aが冷却衣服を着用し、その冷却衣服の空気流通路内に室温と同じ30℃の空気を流し続けることにより、30℃の等温曲線が人Aの体から僅かに離れたところに位置する。このため、人Aの体の表面から周囲に向かう温度勾配は非常に大きくなり、人Aと冷却衣服との間の温度勾配だけを考えると、図8(b)の場合に類似している。
第一実施形態の冷却衣服を着用してスペーサ部20内に空気を流通させ、体の表面から比較的近い部分の温度を体温よりも低い温度とすることによって、体の表面近傍において大きな温度勾配を実現することができる。この大きな温度勾配によって、人の体の表面から発せられる熱は容易に温度の低い冷却衣服の側に放射され、そして、スペーサ部20内を流れる空気によって素早く吸収される。したがって、第一実施形態の冷却衣服では、ファン60により空気をスペーサ部20内に流通させるだけで、着用者は涼しさを感じることができる。
上述したように、体の表面近傍における大きな温度勾配が大きな冷却効果を生み出すが、同様なことが湿度についても言える。すなわち、暑いときには、体の表面近傍の湿度は約100%になっている。このとき、体の表面近傍に外気湿度の層を作ることにより、体の表面近傍において大きな湿度勾配を実現することができる。かかる大きな湿度勾配により、汗の蒸発が促進され、人は涼しく感じることができる。
第一実施形態の冷却衣服では、服地部10の裏面にスペーサ部20で空間を形成し、さらにこの空間に空気を流通させている。汗をかいているが、その汗はそれ程下着に吸収されていないような状況下では、下着は水蒸気を透過させるので、汗は下着を通り抜けて服地部10と下着との間の空間に入り込む。そして、この水蒸気はスペーサ部20内を流れる空気によって容易に外部に運び出され、発汗による気化熱の吸収によって体がダイレクトに冷やされる。すなわち、体からの汗とスペーサ内を流通する空気とを接触させることにより体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して体を冷却する。
また、汗をダラダラかき、その汗の大部分が下着に吸収されているような状況下では、下着に吸収された汗はスペーサ部20内を流れる空気によって外部に運び出されるので、その汗の蒸発量はとても多くなる。これにより、下着の表面温度は大きく低下する。例えば、室温が30℃のときに、濡れた下着の表面近傍に室温と同じ温度の空気を十分流すと、その下着の表面温度は室温よりも3℃〜5℃くらい低下する。特に、下着が体に密着していれば、体と下着との間には水分が存在し、しかも濡れた下着の熱抵抗は乾いた下着の熱抵抗に比べて極端に小さいので、体の表面近傍には大きな温度差が生じ、着用者は冷たいと感じるようになる。したがって、人間が本来的に有する体温の自動調整機能により、着用者はあまり汗をかかなくなり、十分な涼しさを感じることができる。
このように、汗をかくような状況にあっては、体の表面近傍において温度勾配を上げると共に、湿度勾配をも上げることができるので、着用者は、さらに涼しさを感じ、快適に過ごすことができる。
尚、スペーサ部(空気流通路)が下着と離れてしまうと、上記の冷却効果が低下してしまう。このため、スペーサ部を下着に密着させる密着手段を設けることが望ましい。
次に、第一実施形態の冷却衣服により冷却効果を得ることができる環境について説明する。図9はその冷却衣服により冷却効果を得ることができる環境を説明するためのグラフである。図9において縦軸は湿度、横軸は温度を表す。左側の曲線S1は湿球温度が30℃である曲線を示す。真ん中の曲線S2は湿球温度が33℃である曲線、右側の曲線S3は湿球温度が36℃である曲線を示す。尚、かかるグラフは、十分な風量がある環境において得られたものであり、ここでは、その結果を概略的に示している。
上述した冷却の原理から分かるように、体からの汗が蒸発できないような環境の下では、冷却衣服を使用してもその冷却効果は得られない。したがって、理論上は、図9において、右側の曲線S3を境界としてその右側の領域に対応する環境下では、冷却衣服による冷却効果はほとんどないと考えられる。また、右側の曲線S3と真ん中の曲線S2とで囲まれた領域に対応する環境下でも、体からの汗があまり蒸発できないので、冷却衣服による冷却効果はそれ程期待できない。一方、真ん中の曲線S2と左側の曲線S1とで囲まれた領域に対応する環境下では、体からの汗が蒸発できるので、冷却衣服による冷却効果が得られる。そして、左側の曲線S1を境界としてその左側の領域に対応する環境下では、体からの汗が十分蒸発できるので、冷却衣服による冷却効果は十分に得られると考えられる。真ん中の曲線S2を境界としてその左側の環境は、人間の通常の生活環境である。このため、理論上は、かかる冷却衣服を、非日常的な環境を除き、どのような環境の下で使用しても、冷却効果が得られると考えられる。
尚、例えば湿度が100%に近いような特殊な環境下においても、次のような工夫を凝らすことにより冷却衣服による冷却効果を得ることができる。すなわち、強力なファンを空気流入部に対応する服地部の位置に設け、そのファンの前に、ドライアイスを入れた容器(冷却手段)を取り付ける。ファンを外部の空気が空気流通路内に導入する向きに回転させると、ドライアイスの気化熱によりファン周辺の外気の温湿度が下がるので、着用者は、涼しさを感じ、快適に過ごすことができる。同様に、市販されているゲル状冷却体や小型冷却機(冷却手段)によってファン周辺の外気を冷やすことにより、特殊な環境下でも冷却衣服を使用することができる。
第一実施形態の冷却衣服では、服地部と下着との間に空気の流通路を確保するためのスペーサ部を設け、ファンによって空気流通路内に空気の流れを強制的に生じさせることにより、空気を服地部と人体との間において体表に略平行に流すことができるので、体の表面近傍における温度勾配を大きくすることができる。このため、かかる冷却衣服を着用するだけで、着用者は、涼しさ、快適さを得ることができる。また、汗をかくような状況では、汗を、空気流通路内を流通する空気によって外部に運び出すことができるので、発汗による気化熱の吸収によりダイレクトに体を冷やすことができ、したがって、冷却効果をさらに高めることができる。
特に、空気漏れ防止手段を設けたことにより、服地部と下着との間を流通する空気が服地部の下端から外部に漏れるのを確実に防止することができるので、かかる空気漏れにより冷却効果が低下することはない。
また、第一実施形態の冷却衣服では、間隔確保手段を、下着に対向する側のファンの表面を覆うように設けたことにより、ファンと下着との間に空気流通路を確保することができると共に、しわになった下着の部分によってファンの上端が塞がれてしまうのを防ぐことができるので、冷却効果が減退するような事態の発生を確実に防止することができる。
尚、上記の第一実施形態では、冷却衣服を下着の上に着用する場合について説明したが、例えば、冷却衣服を直接、素肌の上に着用してもよい。
上記の第一実施形態では、胸部と背中に対応する服地部の部分に三つのスペーサ部を取り付け、胸部及び背中を冷却する場合について説明したが、例えば、腕部をも冷却する場合には、さらに、腕部に対応する服地部の部分にスペーサ部を取り付け、袖部にファンを設けるようにすればよい。また、脇の下など汗のかきやすい局部に対応する服地部の裏面の位置には、当該局部に空気を送風するための小型のファンを別途設けるようにしてもよい。この場合、当該局部には必ずしも外部の空気を導入する必要はない。
また、上記の第一実施形態では、スペーサとして、網目状部材と、複数の柱状部材と、複数の連結部材とを有するものを用いた場合について説明したが、それ以外にもさまざまなスペーサを用いることができる。一般に、柱状部材の間隔は最大でも70mmとすることが望ましい。また、スペーサの厚さは2mm以上30mm以下であることが望ましい。スペーサの厚さが2mmより小さいと、一定流量の空気を流すためには、空気の圧力をかなり高める必要があり、実用的でないからである。特に、ファンの周辺では空気の流れが大きいので、ファンの周辺に設けられるスペーサの厚さは5mm以上であることが望ましい。一方、スペーサの厚さが30mmより大きいと、見栄えや着心地が悪くなり、しかも空気が層流になって空気流通路内を流通するという問題が生じやすくなるからである。空気が層流になると、空気流通路内において体側を流れる空気と服地部側を流れる空気とが互いに混じらず、大きな冷却効果を得ることができなくなる。尚、層流発生の問題を解決するには、例えば、空気流通路内を流通する空気を攪拌する空気攪拌手段を、空気流通路内のところどころに設け、これにより、空気流通路内に空気の不規則な流れを発生させるようにしてもよい。
上記の第一実施形態では、スペーサを布地に縫い付けることによりスペーサ部を作製する場合について説明したが、例えば、スペーサの網目状部材を超音波融着や熱融着により、布地に取り付けて、スペーサ部を作製するようにしてもよい。このとき、布地としては、スペーサの材料よりも融点の高いものを用いる必要がある。このように超音波融着や熱融着でスペーサを布地に取り付けることにより、糸で縫い付ける場合に比べて作業効率の向上を図ることができる。
また、上記の第一実施形態では、スペーサ部の布地を服地部の裏面に対向させ、その布地を服地部に縫い付けることにより、スペーサ部を服地部に取り付ける場合について説明したが、逆に、図11に示すように、スペーサ部20の連結部材を服地部10の裏面に対向させ、スペーサ部20の布地31を服地部10に縫い付けるようにしてもよい。この場合、布地31を服地部10に縫い付けやすくするために、スペーサ21が取り付けられていない布地31の部分の面積を大きくする。また、スペーサ部20を服地部10に取り付けると、スペーサ21の全体が布地31によって覆われてしまうので、スペーサ部20の端部からスペーサ21内に空気が流通しやすいように、布地31としてはメッシュ状の素材を用いることが望ましい。さらに、この場合には、スペーサ21と下着との間に布地31が存在することになるので、しわになった下着の部分がスペーサ21の内部に入り込んでしまうことはない。このため、スペーサ21としては、連結部材がない単純な構造のものを用いることができる。
更に、上記の第一実施形態では、スペーサ部としてスペーサを布地に取り付けたものを用いる場合について説明したが、布地を使わず、スペーサ単体をスペーサ部として用いてもよい。この場合、スペーサを服地部に取り付けるには、例えば、スペーサを直接、服地部10の裏面に熱融着する。
上記の第一実施形態では、冷却衣服の前部をファスナーで開閉する場合について説明したが、例えば、マジックテープを用いて冷却衣服の前部を開閉するようにしてもよい。また、かかる冷却衣服は、後部をファスナー等で開閉するタイプの衣服や、前後部が開いておらず、頭からかぶることによって着用するタイプの衣服に適用することもできる。
上記の第一実施形態では、マジックテープを用いてファンを服地部に着脱自在に取り付ける場合について説明したが、次の方法によりファンを服地部に着脱自在に取り付けるようにしてもよい。図12はファンの取り付け方法の他の例を説明するための図である。この方法では、服地部の裏面における空気流出部の周囲部に、図12(a)に示すようなファン保持部(保持手段)160を縫い付ける。このファン保持部160の形状は略円環状であり、その内円の直径はファン60の円筒状部材65の直径と略同じである。また、ファン保持部160には、二つの係止爪161が形成されている。一方、ファン60としては、図2に示すものと略同じであるが、次の二つの点で異なるものを用いる。すなわち、第一の相違点はファン60にマジックテープを設けない点、第二の相違点は、図12(b)に示すように、ファン60のリング状部材66に二つの切欠き部66bを形成する点である。まず、ファン60の切欠き部66bとファン保持部160の係止爪161との位置を合わせて、ファン60をファン保持部160に当接させる。その後、ファン60を羽根部71の中心軸の回りに回転させることにより、切欠き部66bの周辺に位置するリング状部材66の一部と係止爪161とを係合させる。こうして、図12(c)に示すように、ファン60はファン保持部160に取り付けられる。尚、ファン保持部160は、服地部に縫い付ける代わりに、服地部に接着するようにしてもよい。
上記の第一実施形態では、冷却衣服に四つのファンを設けた場合について説明したが、ファンの数としては特に制限はなく、一つ、二つ、三つ又は五つ以上のファンを設けるようにしてもよい。同様に、空気流入部、空気流出部についても、数の制限ははい。一つ、二つ又は四つ以上の空気流入部を設けてもよく、また、一つ、二つ、三つ又は五つ以上の空気流出部を設けてもよい。
また、上記の第一実施形態では、一つの電源ボックスから四つのファンに電力を供給する場合について説明したが、例えば、各ファンに個別に電力供給用の電源や制御回路を取り付けることにより、冷却衣服の内部におけるコードレス化を図るようにしてもよい。ファンのコードレス化を図ることにより、例えば、冷却衣服を着たまま、各ファンを簡単に着脱し、二次電池の交換作業を容易に行うことができる。この場合、さらに、各ファンに受信回路を設け、外部の送信手段から受信回路に無線で信号を送ることにより、ファンのオン・オフや強弱を切り替えるようにしてもよい。ここで、送信手段としては、ポケットに入れることができるようなサイズ・形状のもの、例えば万年筆形状のものを用いることが望ましい。また、携帯電話等にその送信機能を組み込んでもよい。そして、受信回路は、混信を防止するため、少なくとも1000個の固有の通信識別コードを有することが望ましい。また、電源手段をすべてのファンに対して共通的に用いた場合に、その電源手段に、制御回路、受信回路及び通信識別コード解読回路を取り付けるようにしてもよい。更に、例えば、冷却衣服の着用者が移動することなく、決まった作業場所等で作業をする場合には、ファンに供給する電力を商用電源からとるようにしてもよい。あるいは、商用電源により二次電池を充電しながら、冷却衣服を使用してもよい。尚、上記の制御回路は、ファンのオン・オフを制御したり、羽根部の回転数を制御したりするものである。制御回路により例えばファン毎にファンの駆動制御が行われるが、四つのファンを複数のグループに分け、当該グループ毎にファンの駆動制御が行われるようにしてもよい。
更に、上記の第一実施形態において、空気流入部及び空気流出部に、必要に応じて、カバーを取り付けるようにしてもよい。冷却衣服は、ファンを駆動していないときでも、例えば、空気流入部から流入した空気が空気流通路内を通り、空気流出部から外部に流出するので、ある程度の冷却効果を有する。このため、寒いときには、空気流入部及び空気流出部をカバーで塞ぐことにより、冷却衣服の冷却効果を一時的になくすことができる。尚、かかるカバーの取り付け手段としては、例えばボタンを用いることができる。
上記の第一実施形態において、下着の一部には、例えばスパンディクスと称されるポリウレタン製の伸縮性素材を用いることが望ましい。これにより、下着と体とが密着して、冷却効果の低下を防止することができる。この場合、下着には、吸水性のある素材を用いることが望ましい。
次に、本発明の第二実施形態について図面を参照して説明する。図13(a)は本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図13(b)はその冷却衣服の概略背面図である。尚、第二実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第二実施形態の冷却衣服は、図13に示すように、服地部10aと、三つのスペーサ部20aと、二つの空気流出部(空気流通口)50aと、二つのファン(送風手段)60と、二つの間隔確保手段80と、電源ボックス90と、空気漏れ防止手段(不図示)とを備えるものである。第二実施形態では、かかる冷却衣服を、ワイシャツ等、裾の部分をズボンやスカートの中に入れて着用するタイプの衣服に適用した場合について説明する。したがって、服地部10aの裾の部分はある程度長くすることが必要である。この場合、服地部10aの裾の部分をズボン等の中に入れたことが、空気漏れ防止手段に該当する。また、この冷却衣服は、半袖の衣服であって、ボタンで前を閉じるタイプのものであるとする。また、この冷却衣服は、下着の上に着用される。
三つのスペーサ部20aは、服地部10aと下着との間に空気を流通させるための空気流通路を形成するためのものであり、服地部10aの裏面の中央部に広く設けられている。かかるスペーサ部20aは、図6に示すように、スペーサ21と、布地31とを有し、その構造は第一実施形態のものと略同様である。また、スペーサ部20aは、第一実施形態と同様に、布地31を服地部10aの裏面に対向させるようにして、布地31を服地部10aの所定の位置に糸で縫い付けることにより、服地部10aに取り付けられる。第二実施形態のスペーサ部20aが第一実施形態のものと異なる点は、その大きさ、形状の点だけである。具体的には、各スペーサ部20aは、左胸部、右胸部及び背中に対応する服地部10aの位置に縫い付けられているが、特に、背中に対応する位置に設けられたスペーサ部と左右の胸部に対応する位置に設けられた二つのスペーサ部とがそれぞれ、左右の脇部に対応する位置で連なるように、各スペーサ部20aの大きさ、形状を設計している。すなわち、三つのスペーサ部20aは全体で一つの大きな空気流通路を構成する。
尚、胸部、背中だけでなく、腹部や腰部を冷却する場合には、服地部10aの裾の部分にもスペーサ部20aを設けるようにすればよい。このとき、服地部10aをズボン等の中に入れているが、裾の部分に設けたスペーサ部20aにより、服地部10aの下方からも空気がスペーサ部20a内に入り込む。
第二実施形態では、冷却衣服をワイシャツに適用しているので、その前部を閉じる手段としてボタンを用いている。ボタンを用いた場合、上下に隣り合うボタン間の隙間から外部へ空気が漏れるおそれがある。かかる空気漏れを防止するためには、例えば、ワイシャツ前部の合わせ部の幅を広くすることが考えられる。また、ボタンの数を多くして、ボタン間の間隔を狭くしてもよい。さらには、ワイシャツ前部の合わせ部にマジックテープやファスナー等を取り付けると共に、外観上ワイシャツのように思わせるために、飾り用のボタンを設けるようにしてもよい。
二つの空気流出部50aは、背中に対応する位置に設けられたスペーサ部20aの下端部に対応する服地部10aの所定位置に形成されている。具体的には、二つの空気流出部50aはそれぞれ、左右の脇部からやや背中の方にずれた位置であって服地部10aの下部に形成されている。かかる空気流出部50aは、例えば、服地部10aの所定部分を切り欠き、その切り欠いた部分に、服地部10aの裏面側からメッシュ状の素材51を縫い付けることにより形成される。
二つのファン60は、スペーサ部20a内に空気の流れを強制的に生じさせるためのものであり、各空気流出部50aに対応する服地部10aの裏面の位置に取り付けられる。第二実施形態では、二つのファン60を、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部10aの位置に取り付けているので、冷却衣服の着用者の腕がファン60に不用意に当たってしまい、ファン60が邪魔になることはない。また、電源ボックス90は、二つのファン60に電力を供給する電源である。尚、ファン60及び電源ボックス90の構造は、上記の第一実施形態のものと略同様である。
また、間隔確保手段80は、ファン60と下着との間に一定の間隔を確保するためのものであり、その構造・機能は、上記の第一実施形態のものと略同様である。
次に、服地部10aの素材について説明する。第二実施形態では、服地部10aの上部とそれ以外の部分とで、異なる素材が用いられる。すなわち、服地部10aの上部には、空気流通性のよい素材を使用し、一方、服地部10aの上部以外の部分には、第一実施形態と同様に、実質的に空気が漏れないような素材を使用する。このため、服地部10aの上部からは外部の空気がスペーサ部20a内に流入することができる。第二実施形態では、第一実施形態のように服地部の一部を切り欠いて空気流入部を形成していないが、その代わりに、服地部10aの上部が空気流入部の役割を果たすことになる。このように空気流入部の役割を果たす、服地部10aの上部であって空気流通性のよい素材が用いられた部位のことを、「空気透過部位」とも称することにする。第二実施形態では、例えば、肩から、その下側約5cmのところまでの服地部10aの部分を空気透過部位とする。また、空気透過部位には、撥水処理を施すことが望ましい。かかる処理を施さない場合には、空気透過部位が水に濡れると、その部位における空気流通性が著しく低下してしまうからである。
ここで、服地部10aの空気透過部位から空気をスペーサ部20a内に効率よく取り込むために、スペーサ部20aはその一部が服地部10aの空気透過部位と重なるように服地部10aに設けられている。そして、スペーサ部20a内に流入した空気は、スペーサ部20aによって服地部10aと下着との間に形成された空気流通路内を流通することになる。
また、空気透過部位に使用する空気流通性のよい素材としては、服地部10aにおいて、一見して空気透過部位とそれ以外の部分との違いが分かるようなものを用いないことが望ましい。冷却衣服の外観上の違和感を少なくするためである。例えば、下着があまりにも透けて見えるような、とても目を粗く編んだメッシュ状の素材は、空気透過部位に使用する素材として適さないが、ある程度目を細かく編んだ素材であれば用いることができる。したがって、外部の空気は、空気透過部位からスペーサ部20a内に流入する際、その空気透過部位に使用した素材からある程度抵抗を受けることになる。このため、十分な量の空気をスペーサ部20a内に取り込むためには、空気透過部位の面積は大きくすることが望ましい。
次に、かかる服地部10aに要求される空気流通性について説明する。ここで、服地部10aの裏面にはスペーサ部20aが縫い付けられているので、服地部10aの空気流通性を考える場合には、服地部10aとスペーサ部20aの布地31とを一体のものとして考える必要がある。
いま、服地部10a及び布地31の空気流通性を表す定量的な物理量として、5Pa(約0.5mmH2O)の圧力を、服地部10a及び布地31に加えたときに、その服地部10a及び布地31を単位時間、単位面積当たりに通過する空気の体積(cc/cm2/sec)を考える。冷却衣服の着用時に良好な冷却効果を得るためには、空気流入部としての役割を果たす服地部10aの空気透過部位においては、十分な量の空気を取り込むことができるようにしなければならない。一方、服地部10aの空気透過部位以外の部位、例えばファン60の近傍等においては、空気があまり漏れないようにする必要がある。本発明者等による実験の結果、空気透過部位に対応する服地部10a及び布地31を通過する空気量が少なくとも2cc/cm2/secであり、空気透過部位以外の部位に対応する服地部10a及び布地31を通過する空気量が多くとも1cc/cm2/secであるような、服地部10a及び布地31を用いれば、十分な冷却効果が得られることが分かった。
但し、例えば、流通する空気の受ける抵抗が十分小さくなるように設計されたスペーサ部20aを用いると共に、大きな風量を有するファン60を用いた場合等には、服地部10a及び布地31の空気流通性についての上記の制限を緩和することができる。すなわち、この場合は、空気透過部位に対応する服地部10a及び布地31を通過する空気量が少なくとも10cc/cm2/secであり、空気透過部位以外の部位に対応する服地部10a及び布地31を通過する空気量が多くとも5cc/cm2/secであるような、服地部10a及び布地31を用いれば、良好な冷却効果が得られる。このように、ファン60の圧力やスペーサ21によって空気の受ける抵抗によって、服地部10a及び布地31を通過する空気量は変化するが、一般的に、空気透過部位に対応する服地部10a及び布地31を通過する空気量は空気透過部位以外の部位に対応する服地部10a及び布地31を通過する空気量よりも3倍以上大きいことが望ましい。
尚、スペーサ部20aの布地31を服地部10aの裏地と考えることができるので、その布地31によって空気流通路内を流れる空気が服地部10aの上部以外の部分から外部に漏れてしまうのを防止するようにしてもよい。例えば、布地31のうち服地部10aの上部に対応する部位には空気流通性のよい素材を用い、服地部10aの上部以外の部位に対応する部位には実質的に空気の漏れの少ない素材を用いる。そして、服地部10aには、すべての部位について空気流通性のよい素材を用いる。これにより、服地部10aの上部(空気透過部位)から十分な量の空気をスペーサ部20a内に取り入れることができ、服地部10aの上部以外の部分からは空気が外部にあまり漏れないようにすることができる。このように、布地31によって、服地部10aを介して流入又は流出する空気の量を制御することにより、服地部10a全体に対して同じ生地を用いることができ、服地部10aの見栄えをよくすることができると共に、空気透過性を服地部10aで制御するよりも布地31で制御する方が安価であるので、冷却衣服の製造コストを低く抑えることができるという利点がある。
ここで、かかる二つの性質を有する布地31の作製方法としては、例えば次のような方法を用いることができる。すなわち、まず、全体的に空気流通性のよい素材を用意する。そして、その素材において服地部10aの上部以外の部位に対応する部位を、実質的に空気漏れの少ない素材、例えばプラスチックフィルム等とラミネートする。特に、服地部10aのうちズボンのベルト等の近傍に対応する部位のように、空気の動きの少ない部位においては、高い透湿性を有するフィルムを用いることが望ましい。これにより、プラスチックフィルム等とラミネートされた部位からは実質的に空気が漏れないようにすることができる。かかる方法を用いることにより、布地31を容易に且つ安価に作製することができる。尚、この方法は、服地部10aで空気流通性を制御する場合に対しても適用することができる。
ところで、空気流通性のよい素材は柔らかく、材料として粘り強さがない。このため、服地部10aの上部に空気流通性のよい素材を使用した場合、スペーサ21の厚さを厚くしたとすると、服地部10aの上部にスペーサ21の形状が映ったり、スペーサ21の押圧力により服地部10aにしわが寄ってしまったりすることがある。しかし、空気流通性のよい素材を使用する服地部10aの上部の面積を大きくすれば、十分な量の空気をスペーサ部20a内に取り入れることができるので、服地部10aの上部であって、服地部10aの中央部における空気流通路から離れた部分については、スペーサ21の厚さを薄くすることができる。なぜならば、服地部10aの中央部における空気流通路から上方へ離れるに従い(服地部10aの上部に行くに従い)、服地部10a内に取り入れる空気の量が少なくて済むからである。したがって、かかる場合には、服地部10aの上部に対応する部分の厚さを薄くしたスペーサを用いることにより、服地部10aの上部にスペーサ21の形状が映ったりすることがない。また、たとえ肩に対応する服地部10aの裏面の位置にスペーサ部20aを設けたとしても、冷却衣服の着用者の肩が盛り上がっている感じを与えることもない。さらには、冷却衣服の着心地をよくすることができる。
また、服地部10aの上部に対応する部分において、スペーサ21の厚さを薄くする代わりに、流通する空気の抵抗は大きいが、肌触りのよい三次元織布等、別のタイプのスペーサを用いることもできる。一般に、スペーサ部20aとしては、その布地31に、例えば、厚さや材質等の異なる各種のスペーサを取り付けたものを用いることができる。特に、スペーサ部20aの各部位毎に、スペーサの厚さを変えることにより、各部位における空気の風量を調整することができる。例えば、図6及び図7に示すスペーサを用いて、スペーサの厚さを変える場合には、大サイズのスペーサにおいて各部位毎に柱状部材の長さを変えたり、あるいは、柱状部材の長さの異なる複数の小サイズのスペーサを各部位に取り付けるようにすればよい。このように、スペーサ部20aには、各部位毎に、厚さや材質、肌触り等の異なる各種のスペーサを複合的に用いてもよい。尚、空気流通路の厚みがスペーサ21の厚み以上にならないように、空気流通路を下着に密着させる密着手段を用いることが望ましい。
第二実施形態の冷却衣服は、上記の第一実施形態のものと同様の作用・効果を奏する。特に、第二実施形態の冷却衣服では、服地部の素材を利用して空気を空気流通路内に取り込み、また、二つの空気流出部をそれぞれ、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けているので、当該冷却衣服を正面から見たときには、ファンが見えず、普通のワイシャツと全く同じである。通常のワイシャツと外観上異なる点は、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に二つの空気流出部が設けられている点だけである。このため、冷却衣服を着用しても、外観上の違和感はほとんどない。また、第二実施形態では、二つのファンをそれぞれ、服地部の左右の脇部からやや背中の方にずれた位置に設けており、背中の真ん中に設けているわけではないので、冷却衣服の着用者が椅子に腰掛けた場合に、ファンの空気排出口が塞がれてしまうこともない。尚、この場合、椅子の背もたれとぶつかる位置に設けられるスペーサとしては、1cm2当たり少なくとも0.3Nの力に耐えうる強度を有するものを用いることが望ましい。これにより、着用者が椅子の背もたれに寄りかかったときに、スペーサがつぶれてしまうことはない。
また、第二実施形態の冷却衣服では、二つのファンと電源ボックスとを取り外すと、通常のワイシャツとの違いは、二つの空気流出部が設けられている点、スペーサ部が服地部の裏面に縫い付けられている点だけである。このため、冷却衣服が汚れた場合には、ファンと電源ボックスを取り外した状態で洗濯することができる。但し、かかる冷却衣服にはスペーサ部が取り付けられているため、アイロンをかけることはできない。このため、服地部には、予めパーマネント加工を施し、形状を記憶させておくことが望ましい。
また、ファンと電源ボックスとが取り外された冷却衣服本体は、安価なコストで製造することがきる。このため、冷却衣服の着用者は、ファンと電源ボックスとが設けられていない冷却衣服本体を複数組購入し、ファン及び電源ボックスについては少なくとも一組購入しておけば、冷却衣服としてのワイシャツを毎日、交換して着用することができる。
ところで、第二実施形態では、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けた二つのファンにより、胸部と背中に対応する位置に設けたスペーサ部内に空気を流通させなければならない。二つのファンを、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けると、空気は、スペーサ部内を、例えば胸部や背中の中央を避けて流れるなど、偏った経路で流れる可能性がある。特に、背中は汗をかきやすい箇所であるので、空気流通路内には、空気をスペーサ部内における所定の経路に沿って案内するための空気案内手段を設け、空気が背中の中央を通るようにすることが望ましい。具体的には、スペーサ部内の所定位置にスポンジを設け、スペーサ部内の空間を仕切ることにより、空気が空気流通路内において背中の中央を流れるようにする。また、シロッコファンのような方向性のあるファンを用いて、空気流通路内を流れる空気を背中の中央に向けて吹き付けるようにしてもよい。さらには、スペーサの厚さを調整し、背中の中央において空気が受ける抵抗を小さくすることにより、空気が背中の中央を流れやすくしてもよい。尚、空気が胸部の中央を通るようにする場合も、上記と同様の方法を用いればよい。
尚、上記の第二実施形態では、服地部の上部を空気透過部位とし、二つのファンを、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けた場合について説明したが、例えば、一方の脇部に対応する服地部の部位を空気透過部位とし、他方の脇部に対応する服地部の位置に一つのファンを設けるようにしてもよい。一般に、空気透過部位とファン(又は空気流出部)とは、空気流通路を介して互いに反対側に設けられていれば、その具体的な設置位置はどこでもよい。
また、冷却衣服について外観をあまり気にせず、冷却効果を第一に考える場合には、例えば、少なくとも直径50mm程度の大型のファンを、背中の中央に対応する服地部の位置に一つだけ設け、その大型のファンにより空気流通路内の空気を外部に排出すると共に、服地部の前面側における複数の所定部位を空気透過部位としてもよい。これにより、1、2ワットの小さな電力で、10リットル/sec程度の大量の空気を空気流通路内に流すことができ、かかる大量の空気によって胴体の表面全体を包み込むことができるので、非常に大きな冷却効果を得ることができる。尚、当然のことながら、逆に、大型のファンを、腹部の中央に対応する服地部の位置に設け、服地部の背面側における複数の所定部位を空気透過部位としてもよい。
また、上記の第二実施形態では、空気透過部位から外部の空気を空気流通路内に取り入れ、空気流出部から空気流通路内の空気を外部に取り出す場合について説明したが、逆に、空気流出部を空気流入部とし、当該空気流入部から外部の空気を空気流通路内に取り入れ、空気透過部位から空気流通路内の空気を外部に取り出すようにしてもよい。
次に、本発明の第三実施形態について図面を参照して説明する。図14は本発明の第三実施形態に係る冷却衣服を説明するための図である。尚、第三実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第三実施形態の冷却衣服は、服地部10aと、三つのスペーサ部20aと、二つのファン60と、電源ボックス90と、帯状の布(仕切手段)110とを備える。かかる冷却衣服が第二実施形態のものと異なる点は、服地部10aの上部だけでなく下部にも空気流通性のよい素材を用い、服地部10aの一部を切り欠いて形成される空気流出部を設けていない点、及び、ファン60を、その回転軸が下着の表面に対して略平行となるように服地部10aと下着との間に取り付けた点である。その他の点については、上記の第二実施形態のものと同じである。
上記の第二実施形態では、服地部の上部に空気流通性のよい素材を用い、服地部の上部以外の部分に空気が漏れないような素材を用いる場合を説明した。これに対し、第三実施形態では、服地部10aの上部と下部に空気流通性のよい素材を用い、上部及び下部以外の中央部分に、実質的に空気が漏れないような素材を用いる。服地部10aの上部であって空気流通性のよい素材が用いられた部位を「第一の空気透過部位」、服地部10aの下部であって空気流通性のよい素材が用いられた部位を「第二の空気透過部位」とも称することにする。かかる第一の空気透過部位及び第二の空気透過部位は、クレーム3における「空気流通部」に対応する。第三実施形態では、第一の空気透過部位が空気流入部の役割を果たし、第二の空気透過部位が空気流出部の役割を果たすことになる。したがって、服地部10aの一部を切り欠いて空気流入部、空気流出部を形成する必要はないので、この場合の冷却衣服は、外部から見る限り、普通の衣服と全く同じであり、外観上の違和感が全くない。また、三つのスペーサ部20aは、服地部10aの裏面の中央部に広く設けられる。
また、第三実施形態では、ファン60の構造は第二実施形態のものと略同様であるが、ファン60の取り付け方法が第二実施形態と異なる。すなわち、図14に示すように、帯状の布110を、服地部10aの下部の裏面であってスペーサ部20aの近傍の部分に、胴回り方向に沿って縫い付ける。ここで、この帯状の布のうち服地部10aに取り付けられた側と反対側の端部にはゴム等を入れて、ギャザーを寄せている。また、二つのファン60を、その帯状の布110の所定位置に取り付ける。これにより、帯状の布110のギャザーは下着と接し、冷却衣服の着用時に、ファン60の羽根部の中心軸は体の表面と略平行になる。このように、帯状の布110は、服地部10aと下着との間の空間を上下二つに仕切る役割を果たすものであり、クレーム3における「仕切手段」に対応する。ここで、ファン60としては、例えば直径約20mm程度の小型のものを用いる。但し、ファン60の風量はある程度大きいことが望ましいので、例えば厚さ10mm以上のファン60を用いることが望ましい。また、ファン60の代わりに、ふいごのような縦長の送風機を用いてもよい。このような方法によってファン60を取り付けることにより、空気流通路内を通ってきた空気はファン60により下方に向けて排出された後、空気流通性のよい服地部10aの下部(第二の空気透過部位)を介して外部に流出する。尚、ファン60よりも下側に位置する服地部についてはある程度の空気流通性を有するものであれば十分である。当該下側に位置する服地部10aの面積は大きいので、空気はあまり抵抗なく外部に流出できるからである。
尚、上記の第三実施形態では、外部の空気を服地部の上部(第一の空気透過部位)から空気流通路内に取り込み、その取り込んだ空気を上方から下方に向けて流通させる場合について説明したが、ファンを上下逆向きにして上記の帯状の布に取り付けることにより、外部の空気を服地部の下部(第二の空気透過部位)から空気流通路内に取り込み、その取り込んだ空気を下方から上方に向けて流通させるようにしてもよい。空気流通路内の空気は体温により熱せられ、空気流通路内に上昇気流や対流が生じるので、かかる上昇気流等を利用するという観点からは、空気流通路内の空気を下方から上方に向けて流通させる方が好ましい。
第三実施形態の冷却衣服は、上記の第二実施形態のものと同様の作用・効果を奏する。特に、第三実施形態の冷却衣服では、服地部の素材を利用して空気を空気流通路内に取り込むと共に外部に流出しており、しかも、ファンを外部から見えない服地部の裏面側に設けているので、冷却衣服を着用していても、外観上の違和感が全くないという特徴がある。
尚、上記の第三実施形態において、冷却衣服を、裾の部分をズボン等の中に入れないで着用するタイプの衣服(例えば、Tシャツ、つなぎ服等)に適用してもよい。この場合、服地部の下端が開放しているので、服地部の下部に必ずしも第二の空気透過部位を設ける必要はない。すなわち、一般には、空気透過部位を服地部の上部及び下部のうち少なくとも一方に設ければよい。ここで、当該空気透過部位から外部の空気を空気流通路内に取り入れる場合には、服地部の端部から空気流通路内の空気を外部に取り出し、一方、当該空気透過部位から空気流通路内の空気を外部に取り出す場合には、服地部の端部から外部の空気を空気流通路内に取り入れることになる。
次に、本発明の第四実施形態について図面を参照して説明する。図15(a)は本発明の第四実施形態に係る冷却衣服の中着服の概略正面図、図15(b)はその中着服の概略背面図である。尚、第四実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第四実施形態の冷却衣服は、衣服本体と、中着服とからなる。衣服本体は、スペーサ部が設けられていない点を除き、図13に示す第二実施形態の冷却衣服と略同様である。すなわち、衣服本体は、服地部10aと、二つの空気流出部50aと、二つのファン60と、二つの間隔確保手段80と、電源ボックス90とを備えている。
中着服は、衣服本体と下着の表面との間に空気を流通させるための空気流通路を確保するために衣服本体の下に着用されるものであり、複数のスペーサを用いて着衣できる形状に形成されている。すなわち、中着服は、スペーサ部の役割を果たす。第四実施形態では、中着服を、例えばベスト等に適用した場合を考える。中着服は、図15に示すように、三つのスペーサ121と、シート状素材131とを備える。シート状素材131は、ベスト等のような、人が着衣できる形状に形成されている。スペーサ121は、下着の表面に沿って一定の空間を確保するためのものである。シート状素材131の表面には、三つのスペーサ121が糸で縫い付けられている。具体的には、各スペーサ121を、例えば左胸部、右胸部及び背中に対応するシート状素材131の位置に縫い付けている。ここで、シート状素材131のうち二つのファン60に対応する部位には、スペーサ121が重ならないようにする。
シート状素材131としては、メッシュ状の素材等、通気性を損なわないものを使用する。特に、汗で汚れにくい素材を用いることが望ましい。
尚、中着服には、着心地を良くしたり、抗菌性を付与したり、高機能性を付加してもよい。また、当然のことながら、各部位に応じて、スペーサの厚さや種類を変えてもよい。
かかる中着服は下着の上に着用される。そして、この中着服の上に衣服本体が着用される。このように、中着服と衣服本体とを一緒に着用することにより、中着服は服地部10a及び下着と接するようになるので、スペーサ121によって服地部10aの中央部と下着との間に空気流通路を確保することができる。
第四実施形態の冷却衣服では、スペーサが設けられた中着服を衣服本体と別個に構成したことにより、衣服本体を洗濯する際、衣服本体からファンを取り外せば、衣服本体はほとんど通常のワイシャツと同じになるので、衣服本体を容易に且つ簡単に洗うことができる。また、スペーサを衣服本体に直接取り付けた場合には、スペーサによって衣服本体にしわができてしまうことがあるが、スペーサ(中着服)と衣服本体とを別個に構成したことにより、衣服本体はしわになったりせず、見栄えが悪くならない。
また、中着服は一着あれば、その中着服を、各種の冷却衣服本体(スペーサ部が設けられていないもの)と組み合わせて使用することができるので、着用者による経済的なコスト負担が少なくて済むという利点がある。更に、衣服本体にはスペーサ部を設けていないので、ワイシャツ(衣服本体)前部の合わせ部の幅を十分広くすることができる。このため、かかる合わせ部の幅を十分広くすることにより、ボタンの隙間から外部へ空気が漏れるのを防止することができる。その他の効果は、上記の第二実施形態のものと同様である。
また、中着服の上に着用する衣服本体としては、例えばスパンディクスと称されるポリウレタン製の伸縮性素材を少なくとも一部に用いたものを使用すると、下着と服地部との間隔がスペーサの厚さで決まるので、設計した空気流通路に近いものが得られ、冷却効果が高まる。また、中着服のシート状素材にも上記のスパンディクスを使用すると、中着服が体に密着するので、下着と体との密着性がよくなる。
尚、複数のスペーサを下着に取り付けたものを、中着服として用いてもよい。すなわち、例えば、スペーサを、下着の表面であって服地部の中央部に対応する部位に設け、衣服本体にはスペーサ部を設けないようにしてもよい。この場合にも、スペーサが設けられた下着(中着服)の上に衣服本体を着用すれば、服地部の中央部と下着との間に空気流通路を確保することができる。
また、中着服として、シート状素材の裏面(下着に対向する側の面)にスペーサを取り付けたものを用いてもよい。このとき、スペーサが取り付けられた部分のシート状素材としては実質的に空気漏れの少ない素材を使用し、衣服本体の服地部としては空気流通性のよい素材を使用する。これにより、中着服を着用するだけで、空気流通路を形成することができる。
また、ボタン等を用いて中着服を服地部の裏面に簡単に着脱できるように冷却衣服を構成してもよい。中着服を服地部の裏面に取り付けた場合には、中着服が取り付けられた衣服本体を着るだけで、服地部の中央部と下着との間に空気流通路を確保することができるので、着衣の面倒が少なくなる。
更に、ファンを、衣服本体に取り付ける代わりに、中着服自体に取り付けるようにしてもよい。この場合、ファンに相当する服地部の部位(空気流通口)には、通風孔を設けるか、あるいは空気流通性のよい素材を用いるようにする。この場合、中着服の上に衣服本体を着用したときに、例えばシート状マグネットリングを用いて、ファンと空気流通口との位置合わせを行う。
また、第四実施形態では、冷却衣服を、第二実施形態のタイプの衣服に適用した場合について説明したが、例えば、第一実施形態又は第三実施形態のタイプの衣服に適用することも可能である。
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形・組合せが可能である。
上記の各実施形態では、本発明の冷却衣服を着用することにより、胸部及び背中を冷却する場合について説明したが、冷却衣服を着用して、例えば背中だけを冷却してもよい。背中はとても汗をかきやすく、その面積も広いので、背中だけを冷却しても、着用者には十分な冷却感を与えることができる。
上記の各実施形態の冷却衣服で使用したスペーサは、その厚さを自由に決定でき、しかも、とても軽量で柔軟性に優れているという特徴がある。かかるスペーサの特徴を生かし、服地部の裏面にスペーサ部(又はスペーサ)だけを設けた冷却衣服を作製することも可能である。すなわち、かかる冷却衣服は、服地部、スペーサ部だけを備え、上記の各実施形態の冷却衣服に設けられていた空気流入部、空気流出部、ファン、電源ボックスを有しない。このとき、服地部には空気流通性のよい素材を用いる。ここで、服地部(スペーサ部の布地を含む。)としては、5Paの圧力を加えたときに、単位時間、単位面積当たりに通過する空気量が少なくとも3cc/cm2/secであるようなものを用いることが望ましい。この冷却衣服でも、上記の各実施形態のものと同様に、スペーサ部によって服地部と下着との間に空気流通路が形成される。尚、かかる冷却衣服において、スペーサ部と服地部とを別個に構成してもよい。例えば、上記の第四実施形態における中着服を着用した後、その中着服の上に、空気流通性のよい素材で作製された服地部を着用してもよい。
図16はスペーサ部だけを設けた冷却衣服における空気の流れを説明するための概略断面図である。風が吹いている場合には、図16に示すように、空気は、服地部を介して空気流通路内に入り、空気流通路内を通った後、服地部から外部に排出される。また、風がない場合でも、空気は、上昇気流や、体の熱による対流により、同様に、服地部を介して空気流通路内に入り、空気流通路内を通った後、服地部から外部に排出される。当然、この冷却衣服は、上記の各実施形態のものに比べると冷却効果が劣るが、例えば、夏の時期における釣り人やカメラマン用のベストなどの用途に使用する場合には、十分な冷却効果を有する。尚、上昇気流の効果を考えれば、かかる冷却衣服においてスペーサ部(中着服)と服地部(上着)とを別個に構成した場合、その上着としては、必ずしも空気流通性のよい素材で作製されたものを用いる必要はなく、一般の服を用いてもよい。したがって、かかる中着服を、いろいろな種類の上着と組み合わせて着用することができる。
尚、本発明の冷却衣服の上に背広等の上着を着用することができる。この場合、かかる上着については、冷却衣服の空気流入部(第二実施形態の場合には服地部の上部)やファンに対応する部分を、例えばメッシュ状の素材で作製することが望ましい。これにより、当該上着は、冷却衣服における空気の流れを阻害することはないので、冷却衣服による良好な冷却効果を維持することができる。また、最近では、全体的に空気流通性に優れた上着が販売されている。かかる上着であれば、何ら加工することなくそのまま、当該冷却衣服の上に着用することができる。尚、冷却衣服の上には、背広に限らず、レインコート、軍服、ウインタースポーツ用の衣服、漁業用の作業服、きもの、消防訓練用の衣服、防刃・防弾チョッキ、ステージ衣装、パイロット・レーサー用の衣服などを上着として着用することができる。
また、本発明の冷却衣服は、上述した第一・第二実施形態で説明した作業服やワイシャツに限らず、どのような衣服にも適用することができる。
例えば、本発明の冷却衣服は、着ぐるみに適用することができる。着ぐるみは人の全身を覆う衣服であるので、その着用者はとても暑く感じる。このため、着ぐるみの場合には、両脚の下側の部分に空気流入部を設け、頭部に空気流出部及びファンを設けることが望ましい。そして、着ぐるみの裏面全体にスペーサ部を取り付ける。尚、着ぐるみの場合には、ファンを着脱可能に構成する必要はない。
また、本発明の冷却衣服は、寒い環境において少なくとも一枚の保温用上着の下に着用される温度調整服として利用することができる。通常、夏以外の季節では、人は複数枚の衣服を重ねて着ている。そして、運動等により汗をかいた場合には、着用者は、数枚の衣服を脱いで、自分で温度調整をする。このような場合、本発明の冷却衣服を例えば上着の下に着用していれば、ファンのスイッチをオンにするだけで、着用者は涼しく感じ、上着を脱いだのと同様の効果が得られる。特に、冷却衣服を冬の寒い季節に着用する場合には、外部の空気が冷えているので、ファンの平均風量は少なくてよい。しかし、冷却衣服の上に上着を着用している場合には、ファンの圧力を高めて、冷却衣服と上着との隙間から、空気を排出できるようにすればよい。但し、ファンの圧力を高めるとしても、300Paの静圧をもつファン又はブロワを用いれば十分である。
このように、本発明の冷却衣服を温度調整服として利用する場合、ファンとしては、シロッコファンに代表される側流ファンを用いてもよい。この場合、側流ファンの空気吸入口と服地部の表面とを対向させ、側流ファンを、空気流出部を覆うようにして取り付ける。すなわち、側流ファンを服地部の表側に取り付け、服地部から外側に突出させる。空気流入部から流入した空気は、スペーサ内を通って空気流出部に達し、側流ファンの側面から体に平行な方向に排出される。このような方法で側流ファンを取り付けることにより、冷却衣服の上に上着を着用しても、側流ファンと上着との間に側流ファンの厚みの分だけ空間を確保することができ、しかも、側流ファンは服地部と略平行に空気を排出すると共に排出する空気の圧力が高いため、側流ファンからの空気の排出が上着によって妨げられることはない。
更に、本発明の冷却衣服は、クリーンルーム用の衣服として利用することができる。通常、クリーンルームでは、空気を上から下に向かって流しており、床に落ちた塵を吸い取っている。このため、クリーンルーム用の冷却衣服の場合には、服地部の上部に空気流入部を設け、服地部の下部に空気流出部を取り付ける。このとき、ファンは、人体から出た塵を空気と共に下方に排出するように構成する。かかるクリーンルーム用の冷却衣服としては、上記の第三実施形態の冷却衣服を用いることが望ましい。
また、本発明の冷却衣服は、頭部をゆったりと包むフードを有する衣服に適用することができる。この場合、フードの裏面側にスペーサを設けることにより、頭部にも空気流通路を形成することができるので、頭部を冷却することができる。
その他、本発明の冷却衣服は、上述したもの以外に、つなぎ服、レインコート、軍服、ウインタースポーツ用の衣服、農業や林業用の作業服、パイロットやレーサー用の衣服、発汗する動物用の衣服などに適用することができる。
本発明の冷却衣服は、第一実施形態で説明したようにファンを空気流出部に対応する服地部の位置に設けることにより、空気流通路内を流通する空気を体に略垂直な方向に排出する方式と、第三実施形態で説明したように仕切手段にファンを設けることにより、空気流通路内を流通する空気を服地部の下部から下方に向けて排出する方式とを両方備えたものであってもよい。かかる冷却衣服では、空気流通路内に大量の空気を流通させることができるという利点がある。
産業上の利用可能性
以上説明したように、本発明は、服地部と下着との間に設けた空気流通路内に空気を体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、汗をかくような状況では、汗を、空気流通路内を流通する空気によって外部に運び出し、発汗による気化熱の吸収によりダイレクトに体を冷やすものであり、少ない消費電力で、しかも簡易な構造で、快適に過ごすことのできる衣服に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
図1(a)は本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図1(b)はその冷却衣服の概略背面図である。
図2(a)はその冷却衣服に用いられるファンの概略平面図、図2(b)はそのファンの概略側面図、図2(c)はそのファンの概略底面図である。
図3(a)はその冷却衣服に用いられる間隔確保手段の概略平面図、図3(b)はその間隔確保手段の脚部の概略拡大平面図である。
図4はファンを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。
図5は四つのファンの接続コードを固定する方法を説明するための図である。
図6は第一実施形態の冷却衣服に用いられるスペーサ部の一部の概略平面図である。
図7はそのスペーサ部の一部の概略拡大斜視図である。
図8は第一実施形態の冷却衣服で利用する冷却原理を説明するための図である。
図9はその冷却衣服により冷却効果を得ることができる環境を説明するためのグラフである。
図10に空気流入部に取り付けられた側流ファンの概略図を示す。
図11はスペーサ部の取り付け方法の他の例を説明するための図である。
図12はファンの取り付け方法の他の例を説明するための図である。
図13(a)は本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図13(b)はその冷却衣服の概略背面図である。
図14は本発明の第三実施形態に係る冷却衣服を説明するための図である。
図15(a)は本発明の第四実施形態に係る冷却衣服の中着服の概略正面図、図15(b)はその中着服の概略背面図である。
図16はスペーサ部だけを設けた冷却衣服における空気の流れを説明するための概略断面図である。
本発明は、高温の環境下でも快適に過ごすことができる冷却衣服に関する。
背景技術
夏などの暑い季節に、暑さを解消する手段として現在最も広く用いられているのはエアーコンディショナーである。これは、部屋の空気を直接冷やすものであるため、暑さを解消するという点においては、非常に有効である。
しかしながら、エアーコンディショナーは、高価な装置であり、世帯普及率は高くなってきたが、一つの世帯の各部屋ごとに普及するまでには至っていない。また、エアーコンディショナーは大量の電力を消費するため、エアーコンディショナーが普及することによって社会全体の電力消費も増え、しかも、発電の大きな割合を化石燃料に頼っている現状では、エアーコンディショナーが普及することによって、地球全体の温暖化につながるという皮肉な結果を招く。また、エアーコンディショナーは、部屋の空気そのものを冷却するので、冷えすぎによって健康を損なうといった問題も考えられる。
そこで、暑い季節でも、消費電力が少なく、かつ、快適に過ごすことのできる衣服が案出されれば、かかる問題の幾分かの解決につながる。
発明の開示
本発明は、このような技術的背景のもとになされたものであり、少ない消費電力で、しかも簡易な構造で、快適に過ごすことのできる冷却衣服を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、服地部の裏面の所定部位に接する一又は複数のスペーサにより形成された、前記服地部と体又は下着との間に空気を流通させるための流通路と、前記服地部に設けられた、外部の空気を前記流通路内に取り入れるための一又は複数の空気流入部と、前記服地部に設けられた、前記流通路内の空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流出部と、前記服地部に設けられた、前記流通路内に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給する電源手段と、前記服地部と体又は下着との間を流通する空気が前記服地部の下端から外部に漏れるのを防止するための空気漏れ防止手段と、を備え、前記送風手段によって前記空気流入部から外部の空気を前記流通路内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記流通路内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記流通路内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、服地部の裏面の所定部位に接する一又は複数のスペーサにより形成された、前記服地部と体又は下着との間に空気を流通させるための流通路と、前記服地部に設けられた、前記流通路内の空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記流通路内に取り入れるための一又は複数の空気流通口と、前記空気流通口に対応する前記服地部の位置に設けられた、前記流通路内に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給する電源手段と、前記流通路を介して前記空気流通口と反対側に位置する前記服地部の所定部位であって、空気流通性のよい素材が用いられた部位である空気透過部位と、を備え、前記送風手段によって前記空気流通口から又は前記空気透過部位から外部の空気を前記流通路内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記流通路内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記流通路内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
更に、上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却衣服は、服地部の裏面の所定部位に接する一又は複数のスペーサにより形成された、前記服地部と体又は下着との間に空気を流通させるための流通路と、前記服地部と体又は下着との間の空間を上下二つに仕切るための仕切手段と、前記仕切手段に設けられた、前記流通路内に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、前記送風手段に電力を供給する電源手段と、前記服地部の上部及び下部のうち少なくとも一方に設けられた、前記流通路内の空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記流通路内に取り入れるための空気流通部と、を備え、前記送風手段によって前記空気流通部から又は前記服地部の端部から外部の空気を前記流通路内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記流通路内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記流通路内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とするものである。
上記の各冷却衣服では、種々の方法を用いて流通路を形成することができる。例えば、前記スペーサを前記服地部の裏面の所定部位に取り付けることにより、前記流通路を形成してもよい。また、前記スペーサをシート状素材に取り付けた後、前記シート状素材を前記服地部の裏面に対向させるようにして、前記シート状素材を前記服地部の所定部位に縫い付けることにより、前記流通路を形成してもよい。また、前記複数のスペーサを用いて着衣できる形状の中着服を作製し、前記中着服の上に前記服地部を着用することにより、前記流通路を形成してもよい。更に、前記スペーサを下着の表面の所定部位に取り付け、前記スペーサが取り付けられた前記下着の上に前記服地部を着用することにより、前記流通路を形成してもよい。
尚、「下着」とは、冷却衣服の下に着用する衣類を意味する。
発明を実施するための最良の形態
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態について説明する。
最初に、本発明の第一実施形態に係る冷却衣服を説明する。図1(a)は本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図1(b)はその冷却衣服の概略背面図、図2(a)はその冷却衣服に用いられるファンの概略平面図、図2(b)はそのファンの概略側面図、図2(c)はそのファンの概略底面図である。図3(a)はその冷却衣服に用いられる間隔確保手段の概略平面図、図3(b)はその間隔確保手段の脚部の概略拡大平面図、図4はファンを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図、図5は四つのファンの接続コードを固定する方法を説明するための図である。
第一実施形態の冷却衣服は、図1及び図4に示すように、服地部10と、三つのスペーサ部20と、三つの空気流入部40と、四つの空気流出部50と、四つのファン(送風手段)60と、四つの間隔確保手段80と、電源ボックス90と、空気漏れ防止手段(不図示)とを備えるものである。第一実施形態では、かかる冷却衣服を、作業服、ユニホーム等、裾の部分をズボンの中に入れないで着用するタイプの衣服に適用した場合について説明する。この冷却衣服は、長袖の衣服であって、ファスナーで前を閉じるタイプのものであるとする。また、この冷却衣服は、下着の上に着用される。ここで、第一実施形態では、冷却衣服の下に着用する衣類を「下着」と称することにする。例えば、冷却衣服の下にワイシャツを着ることにすれば、そのワイシャツは、ここでいう「下着」である。
服地部10の裏面には、三つのスペーサ部20が糸で縫い付けられている。第一実施形態では、各スペーサ部20を、汗のかきやすい箇所、例えば左胸部、右胸部及び背中に対応する服地部10の位置に縫い付けている。スペーサ部20は、服地部10と下着との間に空気を流通させるための空気流通路を形成するためのものである。この空間は、人が冷却衣服を着用したときに体表に略平行な空気流通路を構成する。尚、一般に、クッション等の目的でスペーサを設けた衣服があるが、かかる衣服においても、結果的に、そのスペーサが衣服と下着との間に一定の空間を確保するという機能を有する場合は、当該スペーサは、本発明における「スペーサ」である。
第一実施形態では、冷却衣服を着用したときにその前部を閉じる手段としてファスナーを用いている。ボタンやホック等を用いることもできるが、ファスナーを用いるのが望ましい。ファスナーは簡単に開閉することができ、しかもファスナーを閉じたときにそのファスナーの部分から外部へ空気がほとんど漏れないからである。このため、ファスナーを閉じると、服地部10の前側に設けた二つのスペーサ部20は全体で一つの空気流通路を構成することになる。
各スペーサ部20の上端部の近傍に対応する服地部10の位置には、空気流入部40が形成されている。この空気流入部40の横幅は、当該スペーサ部20の横幅と略同程度である。空気流入部40は、例えば、服地部10の所定部分を切り欠き、その切り欠いた部分に、服地部10の裏面側からメッシュ状の素材41を縫い付けることにより形成される。このメッシュ状の素材41はスペーサ部20が外に飛び出ないようにすると共に、冷却衣服の外観上の違和感を少なくするためのものである。かかる空気流入部40から外部の空気がスペーサ部20内に流入する。図1の例では、空気流入部40を、服地部10の上部の前側に二つ、その後側に一つの合計三つ設けている。尚、襟首や袖の部分も、広い意味では空気流入部と考えることができる。
一方、スペーサ部20の下端部に対応する服地部10の所定位置には、空気流出部50が形成されている。この空気流出部50も空気流入部40と同様にして形成される。すなわち、例えば、服地部10の所定部分を切り欠き、その切り欠いた部分に、服地部10の裏面側からメッシュ状の素材51を縫い付けることにより形成される。このメッシュ状の素材51は冷却衣服の外観上の違和感を少なくするためのものである。かかる空気流出部50からスペーサ部20内の空気が外部に流出する。空気流出部50の数はファン60の数と同じである。図1の例では、空気流出部50を、服地部10の下部の前後に二つずつ、合計四つ設けている。
尚、このような空気流入部40を設けずに、服地部10の所定の端部、例えば襟首の部分におけるスペーサ部20の開口端(冷却衣服と下着との隙間)から、空気をスペーサ部20内に取り入れるようにしてもよい。この場合、スペーサ部20の取り付け位置は、その空気を取り入れる部分まで引き延ばす必要がある。このように、襟首の部分におけるスペーサ部20の開口端を空気の流入部として利用する場合には、上記の空気流入部40を設ける必要はないので、冷却衣服の外観上の違和感が少なくなるという利点がある。
四つのファン60は、スペーサ部20内に空気の流れを強制的に生じさせるためのものであり、それぞれ各空気流出部50に対応する服地部10の裏面の位置に取り付けられる。すなわち、ファン60を服地部10の下部の前後に二つずつ設けている。このファン60は、スペーサ部20内の空気を外部に排出する方向に回転する。ファン60をこの方向に回転させると、スペーサ部20により形成される空気流通路内の圧力が低下し、空気流入部40から外部の空気が空気流通路内に流入する。この流入した空気は、空気流通路内において体表に略平行であって下側に向かう方向に沿って移動する。そして、空気は、ファン60に達すると、ファン60に吸引されて空気流出部50を介して外部へ排出される。
四つのファン60は、図5に示すように、並列に接続されており、その接続コード69が電源ボックス90に繋がれている。電源ボックス90には電池(電源手段)が収納されている。この電池が四つのファン60に電力を供給する電源である。また、電源ボックス90には、ファン60の駆動をオン/オフするスイッチが設けられている。冷却衣服の着用時には、電源ボックス90は、例えばズボンのベルトに取り付けられる。また、電源ボックス90を、服地部10に設けた専用のポケットに収納してもよい。
電池としては、通常、経済性の観点から二次電池が用いられる。しかし、最も好ましいのは、電池として燃料電池を用いることである。燃料電池は、二次電池に比べて、小型であり、充電する手間もかからないからである。しかも、燃料電池は、冷却衣服と相性がよいと考えられる。燃料電池というのは、その特性上、一時に大容量の電流を流す必要がある場合には適さず、一定の電流をじわじわ流すような場合に適している。冷却衣服の場合には、ファン60を駆動するために電池を用いるので、急激な立ち上がり電流がないからである。
ところで、燃料電池は、発電時に水蒸気を発生するので、冷却衣服における電源として燃料電池を用いた場合、燃料電池から発生した水蒸気が服地部10を濡らしてしまうことがある。このため、燃料電池は、服地部10内において空気流通性の優れたところに設けることが望ましい。これにより、水蒸気を、流通する空気と共に外部に排出することができるので、水蒸気によって服地部10が濡れてしまうのを防止することができる。
また、服地部10の裏面の所定位置(数箇所)には、図5に示すように、各ファン60から引き出された接続コード69を固定するためのコード固定手段15が設けられている。コード固定手段15としては、例えば1cm×4cmの細長いマジックテープが用いられる。このマジックテープはA面、B面が一体となったものである。そのマジックテープの先端部を服地部10の裏面に縫い付けておく。そして、そのマジックテープで接続コード69を巻き込むようにして、マジックテープの後端部をその先端部に貼り付けることにより、接続コード69を固定することができる。
ファン60は、図2に示すように、筐体部61と、羽根部71と、回路部(不図示)と、マジックテープ72とを有する。筐体部61は、円筒状部材65と、リング状部材66と、円板状部材67と、三つの保持部材68とからなる。リング状部材66は円筒状部材65の外側面の所定位置に設けられている。円板状部材67は、円筒状部材65の内部に設けられ、円筒状部材65の内側面に設けた三つの保持部材68により保持されている。かかる筐体部61は、プラスチックを用いてインジェクション成形により一体的に製造される。また、円筒状部材65の高さ(ファン60の厚さ)は約6mmである。
羽根部71と回路部は、円筒状部材65の内部に配設され、回路部は円板状部材67上に取り付けられている。回路部は回転モータ(駆動手段)を含み、この回転モータの軸に羽根部71が取り付けられている。この羽根部71としては、その直径が例えば10mm〜100mmのものが用いられる。このとき、羽根部71の回転軸は、円筒状部材65の中心軸と略平行であり、リング状部材66の表面に略垂直である。かかるファン60にはある程度の排気能力が要求される。例えば、ファン60としては、駆動時にファン60付近における服地部10の内外の空気圧差を最大50Paにすることができるものであれば十分である。このため、ファン60としては、静圧が最大でも150Paであるものを用いれば十分である。また、ファン60による風量は大きい程、冷却効果が高くなるが、すべてのファン60の風量はトータルで少なくとも1リットル/secであることが望ましい。
尚、ファン60としては、重さが40g以下であるものを用いることが望ましい。ファン60の重さで服地部10が変形しないようにするためである。また、ファン60のノイズは40dB[A]以下であることが望ましい。
羽根部71を回転させると、スペーサ部20内の空気は、円筒状部材65の一方の開口部から羽根部71に向かって流れ込み、羽根部71を介して円筒状部材65の他方の開口部から外部に排出される。かかるファン60は、その大きさの割には風量が多く、第一実施形態の冷却衣服に用いるのに適している。但し、スペーサ部20内の空気を円筒状部材65内に取り込むためには、円筒状部材65の下着に対向する側の端面と下着との間に一定の空間を設けなければならない。一般に、この空間の大きさはファン60の径に応じて決められる。
マジックテープ72は、リング状部材66の裏面に接着される。かかるマジックテープ72は、ファン60を服地部10に着脱自在に取り付けるためのものである。このマジックテープ72をA面のものとすると、B面のマジックテープ16は、図4に示すように、服地部10の裏面における空気流出部50の周囲部に縫い付けられている。これら二つのマジックテープ72,16を貼り付けることにより、ファン60が空気流出部50の周囲に取り付けられる。このため、冷却衣服を着用すると、羽根部71の回転軸は下着の表面に対して略垂直になる。尚、マジックテープ72の接着部位であるリング状部材66の形状を円形状にしたのは、そのマジックテープ72とペアになるマジックテープ16を服地部10に取り付ける場合、その取り付け面積はなるべく小さい方が望ましいからである。
一方、ファン60を冷却衣服から取り外す場合には、まず、コード固定手段15としてのマジックテープを剥がして、接続コード69の固定状態を解除する。次に、各ファン60のマジックテープ72を剥がして、四つのファン60を冷却衣服から取り外す。こうして、誰でも簡単にファン60を容易に取り外すことができる。尚、ファン60をマジックテープ72で着脱する代わりに、シート状マグネットを用いて着脱するようにしてもよい。このようにファン60及び電源ボックス90を着脱自在に構成することにより、冷却衣服を容易に洗濯できるだけでなく、ファン60が壊れたときにファン60だけを交換できるという利点もある。
また、ファン60を空気流出部50の周囲に取り付けたとき、ファン60が空気流出部50のメッシュ状素材51から突出しないように、ファン60を設計している。すなわち、図2(b)に示すように、ファン60の裏面側において、円筒状部材65の端面とリング状部材66との間隔dを、マジックテープ72の厚さと空気流出部50に設けたマジックテープの厚さとの和になるように設計している。これにより、図4に示すように、ファン60を服地部10に取り付けたときに、ファン60の端面は服地部10の表面と略同一平面上にあることになる。したがって、冷却衣服の着用者にとっては作業時にファン60が邪魔になることはなく、また、冷却衣服の外観上の違和感も少ない。尚、一般的には、ファン60の端面が服地部10の表面から5mmよりも多く外側に突出しないように、ファン60を取り付けることが望ましい。
ファン60を駆動すると、通常、羽根部71は一定の回転数で回転する。これにより、ファン60は一定の風量で空気を送り出す。これに限らず、ファン60は、例えば、風量を調整したり、風量に強弱をつけたりして空気を送り出す、いわゆるゆらぎ送風を行うようにしてもよい。この場合、羽根部71の回転数を変化させるのに、可変抵抗等を用いたのでは、電力がロスしてしまうので、PWM(pulse width modulation)等の変調方式を用いたり、あるいはDC−DCコンバータで電圧を変化させることが望ましい。更に、冷却衣服の内部に温度センサ又は温湿度センサを設けておき、かかるセンサで検知した温度又は温湿度に基づいて、羽根部71の回転数を制御するようにしてもよい。
尚、屋外作業中、急に雨が降ってきたときには、ファン60が濡れてしまうが、この対策として、ファン60の回路部に耐水加工を施すことが望ましい。具体的に、かかる耐水加工としては、回路部に樹脂をコーティングすることが考えられる。
間隔確保手段80は、ファン60と下着との間に一定の間隔を確保するためのものである。冷却衣服の着用者が作業をしたり、何らかの動作をしていると、どうしても下着にしわができてしまう。そのしわによりファン60の上端(ファン60の下着に対向する側の端)と下着との間隔が狭くなり、空気がファン60に流れ込みにくくなる。このような場合に、間隔確保手段80は、下着のしわを抑え込み、空気の流れを確保する役割を果たす。
間隔確保手段80は、図3(a)に示すように、本体部81と、四つの脚部82とを有する。この間隔確保手段80は、厚さ約0.3mmであり、その材料としては、柔らかく且つ弾力性を有するプラスチックシート等が用いられる。本体部81の外形は略円形状であり、また、本体部81には複数の開口部を形成している。図3(a)の例では、本体部81に四つの扇状の開口部を形成し、本体部81がリング状部と、その内部に位置する交差した二つの線状部とからなる場合を示している。但し、上記の開口部の大きさは、しわになった下着の部分が入り込まない程度にする必要がある。
脚部82は、図3(b)に示すように、その先端部には、長手方向に沿って長い切欠き部82aが形成されており、また、その幅方向には二つの短い切欠き部82bが形成されている。前者の切欠き部82aは脚部82の幅を狭くすることができるようにするためのものであり、後者の切欠き部82bは脚部82を固定するためのものである。また、ファン60のリング状部材66には、図2に示すように、間隔確保手段80を取り付けるための四つの取付部66aが形成されている。かかる取付部66aはリング状部材66の表面から突出して形成されている。また、各取付部66aには、脚部82を挿入するための孔が形成されている。
間隔確保手段80をファン60に取り付けるには、まず、本体部81をファン60に対向する位置に配置し、一つの脚部82の先端部を手で押えて、その幅を狭くする。そして、その状態のまま、脚部82の先端部を、所定の取付部66a内に押し込む。これにより、脚部82の二つの切欠き部82bが取付部66aと係合し、その脚部82が固定される。同様に、他の三つの脚部82も各取付部66aに固定する。こうして、間隔確保手段80は、図4に示すように、下着に対向する側のファン60の表面を覆うように取り付けられる。間隔確保手段80を設けたことにより、下着にしわができたときに、間隔確保手段80の本体部81がそのしわになった下着の部分をブロックすることができるので、下着とファン60との間に常に一定の間隔を確保することができる。
また、間隔確保手段80は、弾力性を有するため、外部から押圧されたときに、その押圧された方向に容易に移動することができる。したがって、間隔確保手段80が下着に当接している場合に、着用者に間隔確保手段80が硬いという感じを与えることはない。また、間隔確保手段80は、押圧されたときには容易につぶれてしまい、その押圧力から開放されたときには直ちに元の状態に戻ることができる。実際、間隔確保手段80としては非常に弱い弾力性を有するものを用いれば十分である。
例えば、着用者が冷却衣服を着たまま椅子に腰掛けて、冷却衣服の背中部が椅子の背もたれによって押された場合には、間隔確保手段80は押しつぶされて、その本体部81がファン60の上端に接するようになる。このように、間隔確保手段80は、その弾力性により押しつぶされるので、着用者にごつごつした感じを与えることはない。但し、間隔確保手段80の本体部81がファン60の上端に接した状態では、空気がファン60に流入することができないので、背中における冷却効果はあまり有効ではない。
また、間隔確保手段80は、しわになった下着の部分が空気の流れを妨げるのを防止する役割と共に、下着に接して、ファン60の近傍における空気流通路を確保するスペーサとしての役割を備えている。間隔確保手段80がスペーサとしての役割を果たすためには、ファン60が実用的サイズのものである場合、間隔確保手段80の本体部81とそれに対向する側のファン60の上端との距離を、少なくとも約2mmとする必要がある。かかる距離を2mmより小さくすると、流通する空気の受ける抵抗が大きくなり、風量が低下するからである。
尚、上述したファン60の代わりに、シロッコファンに代表される側流ファンを、第一実施形態の冷却衣服に用いることも可能である。側流ファンとは、羽根の軸方向から吸入した空気を、羽根の外周方向へ放射状に送り出すファンのことである。側流ファンを冷却衣服に用いる場合には、空気流入部を服地部の下部に、空気流出部を服地部の上部に設け、側流ファンを、空気流入部に対応する服地部10の裏面の位置に取り付ける。図10に空気流入部に取り付けられた側流ファンの概略図を示す。図10に示すように、側流ファン600が空気流入部40から吸入した空気は、側流ファン600の側面から空気流通路内に放射状に送り出され、空気流通路内を通って空気流出部から外部に排出される。特に、側流ファン600として、スペーサ20の厚さと同一又はそれ以下の厚さを持つものを用いることにより、着用者は冷却衣服を着たときに側流ファン600による違和感を受けることはない。また、側流ファンを冷却衣服に用いる場合、側流ファンの構造上、必ずしも間隔確保手段80を設ける必要はない。
次に、服地部10の素材について説明する。服地部10の素材としては、例えば、ダウンジャケットの表地などに使われる高密度布を用いる。高密度布は、通常の布と比べると高い密度で織られている。後述するように、第一実施形態の冷却衣服は、体により温められて湿った空気を、スペーサ部20により形成される空気流通路内を流通させて、空気流出部50から排出することにより、かかる空気を外気と絶えず置き換えていくものであるため、空気が空気流通路内を流通する途中で服地部10から漏れないようにする必要がある。高密度布は糸の密度が高いため、糸の間から外部へ漏れる空気の量が非常に少なく、ほとんどの空気が空気流通路内を通って空気流出部50に達し、そこから外部に排出される。このため、高密度布は、服地部10の素材として用いるのにとても望ましい。また、高密度布は、あくまでも布であるため、汚れた場合には家庭用の洗濯機などで容易に洗うことができるという利点もある。このような高密度布は、各種の目的で製造されており、安価で入手できる。尚、高密度布は空気流通性のよくないものであることが好ましいが、具体的には、高密度布として、5Paの圧力を加えたときに、当該高密度布を単位時間、単位面積当たりに通過する空気の体積が5cc/cm2/sec以下であるものを用いる必要がある。
また、服地部10の素材としては、高密度布だけでなく、実質的に空気が漏れないものであれば、どのような素材でも用いることができる。特に、汚れを伴う作業を行う際に冷却衣服を使用する場合には、服地部10の素材としては、表面が滑らかなビニールやナイロン等、吸水性のない素材又は撥水加工してある素材を用いることが望ましい。服地部10に付いた汚れを容易に落とすことができるようにするためである。また、服地部10の素材として吸水性のある素材を用いると、雨等で服地部10が濡れたときに、空気流通路内を流通する空気が服地部10に吸収された水分を蒸発するのに使用され、体からの汗は有効に蒸発できなくなってしまうからである。これにより、汚れが服地部10にしみ込むことはなく、また、汚れを簡単に落とすことができる。この場合、吸水性のない素材は通気性が悪く、冷却衣服内の湿気を、当該素材を通して外部へ放散することはできないが、湿気はファン60によって空気とともに空気流通路内を通って外部に排出されるので、何ら問題はない。尚、冷却衣服を主に屋外での作業時に着用する場合には、服地部10の表面に熱線反射処理を施すことが望ましい。
次に、スペーサ部20の構造について詳しく説明する。図6はスペーサ部20の一部の概略平面図、図7はそのスペーサ部20の一部の概略拡大斜視図である。
図6及び図7に示すスペーサ部20は、スペーサ21と、布地(シート状素材)31とを備える。また、スペーサ21は、網目状部材25と、複数の柱状部材26と、複数の連結部材27とを備える。網目状部材25は、ほぼ扁平状に形成されたものであり、複数の第一レール25aと、複数の第二レール25bとを有する。複数の第一レール25aは、図6において上下方向に沿って一定間隔で配列されており、第二レール25bは、図6において左右方向に沿って一定間隔で配列されている。第一レール25aの配列間隔と第二レール25bの配列間隔とは同じであり、これにより、網目状部材25の網目はほぼ正方形状とされる。ここで、第一レール25aの配列間隔と第二レール25bの配列間隔は例えば約7mmである。
各柱状部材26は、網目状部材25の厚さ方向の長さ成分を有し、第一レール25aと第二レール25bとが交差する交差点において網目状部材25と物理的に連なっている。第一実施形態では、特に、各柱状部材26を網目状部材25から鉛直上方に引き出している。例えば、柱状部材26の長さは約6mm、太さは約1.5mmである。
各連結部材27は、網目状部材25の所定の網目において、その周囲に位置する四つの柱状部材26のうち、一つの対角線上に位置する二つの柱状部材26の先端を連結するものである。例えば、左から奇数番目の行で、上から奇数番目の列に位置する網目においては、連結部材27は、右上に位置する柱状部材26と左下に位置する柱状部材26とを連結するように形成される。また、左から偶数番目の行で、上から偶数番目の列に位置する網目においては、連結部材27は、左上に位置する柱状部材26と右下に位置する柱状部材26とを連結するように形成される。その他の網目には、連結部材27は形成されない。尚、連結部材27の数はできるだけ少ない方が望ましい。例えば、網目状部材25のすべての網目において、連結部材27を設けることにすると、スペーサ21が柔軟性に欠けたものとなり、冷却衣服の着心地がとても悪くなってしまうからである。
第一レール25a及び第二レール25bの各辺、各連結部材27も柱状部材であるので、第一実施形態で使用するスペーサ21は、複数の柱状部材26を用い、それらが物理的に連なるようにして三次元的に構成されたものと考えることができる。
スペーサ21は、具体的には、軟質プラスチックや熱可塑性エラストマー等の材料(熱可塑性樹脂)を用いてインジェクション成形等により容易に製造することができる。すなわち、加熱流動化したプラスチックを金型内に押し込んで、スペーサ21を成形している。このように金型を用いて一体成形することができるのは、上述したスペーサ21の構造からも分かるように、スペーサ21はその厚さ方向に沿ってはどの部分も空間を介して他の部分と重なることがないからである。また、かかるスペーサ21は、その外形によって占められる体積に対してスペーサ21自体の体積の割合がとても小さく、軽量であり、しかも安価であるという特徴がある。したがって、スペーサ21としては、少なくともその一部がインジェクション成型により製造されたものを用いることが望ましい。
スペーサ21は布地31に縫い付けられる。具体的には、スペーサ21の網目状部材25を布地31に対向させるようにして、スペーサ21を布地31の所定位置に配置する。そして、網目状部材25の交差点に糸を巻きつけるようにして、スペーサ21を布地31に縫い付ける。このとき、複数の小サイズのスペーサ21を寄せ集めて、布地31に縫い付けるようにしてもよい。大サイズのスペーサ21を製造する場合は、その金型の作製に多大な費用がかかり、スペーサ21の製造コストがかさむからである。こうして、スペーサ21を布地31に縫い付けることにより、三つのスペーサ部20が得られる。ここで、各スペーサ部20の大きさ、サイズは、その取り付け位置等に応じて決められる。
尚、布地31は、必ずしも布である必要はなく、シート状のものであれば、プラスチックフィルム、メッシュ状の素材等、どのような素材であっても用いることができる。また、複数の小サイズのスペーサ部を寄せ集め、それらの布地を互いに縫い付けることにより、大サイズのスペーサ部を作製するようにしてもよい。
三つのスペーサ部20は、左胸部、右胸部、背中のそれぞれに対応する服地部10の位置に縫い付けられる。具体的には、まず、スペーサ部20の布地31を服地部10の裏面に対向させるようにして、スペーサ部20を服地部10の所定部位に配置する。そして、例えばミシン等を用い、布地31を服地部10に縫い付ける。このとき、布地31の端部だけを服地部10に縫い付けるのが望ましい。スペーサ部20の縫合作業を容易に行うことができると共に、冷却衣服の外観上、その縫い目を目立たないようにできるからである。このように、第一実施形態では、スペーサ部20の布地31を服地部10に縫い付けているので、布地31は、実質的に服地部10の裏地とみなすこともできる。
尚、上述したように、空気流入部を設けず、例えば襟首の部分におけるスペーサ部の開口端から、空気をスペーサ部内に取り入れるようにした場合には、襟首の近くまでスペーサ部を延長して取り付ける必要がある。このとき、襟首には、ライン状のスペーサ部を個別に取り付け、そのライン状のスペーサ部から上記の延長したスペーサ部に空気を導くようにすればよい。
こうしてスペーサ部20が縫い付けられた冷却衣服を着用すると、スペーサ21の連結部材27が下着に接するようになる。かかる連結部材27は、上述した間隔確保手段80と同様に、しわになった下着の部分がスペーサ21の内部に入り込むのを防止する役割を果たす。実際、連結部材27を設けない場合には、冷却衣服の着用者が作業をしている際、どうしても下着にしわがより、そのしわになった下着の部分がスペーサ21の柱状部材26の間に入り込んでしまう。このため、そのしわになった下着の部分は空気流通路内における空気の流れを妨げることになる。第一実施形態では、スペーサ21に連結部材27を設けたことにより、スペーサ21の内部に、しわになった下着の部分が入り込むのを確実に防止することができる。
尚、スペーサ21として連結部材のない単純な構造のものを用い、そのスペーサ21の下着に対向する側にメッシュ状の素材を貼り付けるようにしてもよい。すなわち、この場合は、メッシュ状の素材が、しわになった下着の部分がスペーサ21の内部に入り込むのを防止する役割を果たすことになる。
スペーサ部20は、冷却衣服の服地部10と下着との間に空間を確保し、スペーサ部20内に空気を流通させるという目的を有する。空気の流通性をよくするためには、空気の流れる方向に垂直な面におけるスペーサ部20の開口率を大きくする必要がある。具体的には、かかる開口率は30%以上とすることが望ましい。一方、スペーサ部20と接触する下着の表面に空気が十分触れるようにするためには、下着に対向する側のスペーサ部20の開口率も大きくする必要がある。具体的には、かかる開口率は20%以上とすることが望ましい。第一実施形態のスペーサ部20はこれらの条件を満たすように設計されており、これにより、空気の流通性の向上を図り、しかもスペーサ部20と接する下着の接触面積を小さくすることができるので、下着と空気との直接的な接触の機会を多くすることができる。また、かかるスペーサ部20は、極めて軽量で柔軟性が大きいという利点がある。
尚、スペーサ21の外形によって占められる体積は、冷却衣服を上半身に着用する場合、10リットル以下であることが望ましい。かかる体積が10リットルよりも大きいと、空気流通路内の空気を換気する効率が悪くなってしまうからである。また、スペーサ21の外形によって占められる体積に対するスペーサ21自体の体積の割合は50%以下であることが望ましい。更に、スペーサ21の総重量は400g以下であることが望ましい。加えて、スペーサ21には抗菌加工を施すことが望ましい。
ところで、冷却衣服の下端は開放されており、服地部10と下着との間を流通する空気が服地部10の下端から漏れることがあり、この場合、冷却衣服には、空気漏れ防止手段を設ける必要がある。例えば、冷却衣服の裾の部分にゴムを入れておき、そのゴムにより裾の部分を縮めることにより、冷却衣服の裾の部分を着用者の胴回りに密着させるようにすればよい。また、紐やベルトにより、冷却衣服の裾の部分を着用者の胴回りに密着させてもよい。尚、ファンを服地部の中央部付近に設け、服地部の上部だけでなく下部にも空気流入部を設けた冷却衣服を製作することもできる。この場合でも、上記の空気漏れ防止手段は必要である。
また、かかる冷却衣服を作製する場合、スペーサ21、ファン60、電源ボックス90をパーツ化して予め製造しておくことが望ましい。これにより、冷却衣服を作業服以外の衣服に適用する場合でも、冷却衣服を容易に作製することができる。
次に、第一実施形態の冷却衣服で利用する冷却の原理について説明する。図8は第一実施形態の冷却衣服で利用する冷却原理を説明するための図である。図8(a)では、温度30℃の部屋に人Aが居るときに、その人Aの周囲の温度分布を等温曲線(点線)で概略的に示している。恒温動物である人Aの体温はほぼ一定であり、この温度を36℃とすると、部屋の空気に大きな対流がないと仮定した場合には、図8(a)に示すように、人Aの付近が最も温度が高く、人との距離が離れるにしたがって徐々に低下しながら30℃に近づく。
図8(b)は室温20℃の部屋に人Aが居るときの温度分布を等温曲線で概略的に示した図である。図8(b)を図8(a)と比べると分かるように、図8(b)の場合は図8(a)の場合に比べて、等温曲線同士の間隔が密である。言い換えると、図8(b)の場合は、図8(a)の場合に比べて温度勾配が大きい。温度勾配の大小は、放出される熱の量を左右し、人の温度の感じ方に大きな影響を与える。すなわち、人は、温度勾配が大きいほど暑さ、寒さを強く感じる。
この点に着目し、第一実施形態では、人の体の表面近傍における温度勾配を強制的に大きくし、これによって、人が涼しさ、快適さを感じるようにする。図8(c)は、室温30℃の部屋に、人Aが第一実施形態の冷却衣服を着用しているときの温度分布を示している。図8(c)の場合の室温は図8(a)の場合と同じであるが、人Aが冷却衣服を着用し、その冷却衣服の空気流通路内に室温と同じ30℃の空気を流し続けることにより、30℃の等温曲線が人Aの体から僅かに離れたところに位置する。このため、人Aの体の表面から周囲に向かう温度勾配は非常に大きくなり、人Aと冷却衣服との間の温度勾配だけを考えると、図8(b)の場合に類似している。
第一実施形態の冷却衣服を着用してスペーサ部20内に空気を流通させ、体の表面から比較的近い部分の温度を体温よりも低い温度とすることによって、体の表面近傍において大きな温度勾配を実現することができる。この大きな温度勾配によって、人の体の表面から発せられる熱は容易に温度の低い冷却衣服の側に放射され、そして、スペーサ部20内を流れる空気によって素早く吸収される。したがって、第一実施形態の冷却衣服では、ファン60により空気をスペーサ部20内に流通させるだけで、着用者は涼しさを感じることができる。
上述したように、体の表面近傍における大きな温度勾配が大きな冷却効果を生み出すが、同様なことが湿度についても言える。すなわち、暑いときには、体の表面近傍の湿度は約100%になっている。このとき、体の表面近傍に外気湿度の層を作ることにより、体の表面近傍において大きな湿度勾配を実現することができる。かかる大きな湿度勾配により、汗の蒸発が促進され、人は涼しく感じることができる。
第一実施形態の冷却衣服では、服地部10の裏面にスペーサ部20で空間を形成し、さらにこの空間に空気を流通させている。汗をかいているが、その汗はそれ程下着に吸収されていないような状況下では、下着は水蒸気を透過させるので、汗は下着を通り抜けて服地部10と下着との間の空間に入り込む。そして、この水蒸気はスペーサ部20内を流れる空気によって容易に外部に運び出され、発汗による気化熱の吸収によって体がダイレクトに冷やされる。すなわち、体からの汗とスペーサ内を流通する空気とを接触させることにより体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して体を冷却する。
また、汗をダラダラかき、その汗の大部分が下着に吸収されているような状況下では、下着に吸収された汗はスペーサ部20内を流れる空気によって外部に運び出されるので、その汗の蒸発量はとても多くなる。これにより、下着の表面温度は大きく低下する。例えば、室温が30℃のときに、濡れた下着の表面近傍に室温と同じ温度の空気を十分流すと、その下着の表面温度は室温よりも3℃〜5℃くらい低下する。特に、下着が体に密着していれば、体と下着との間には水分が存在し、しかも濡れた下着の熱抵抗は乾いた下着の熱抵抗に比べて極端に小さいので、体の表面近傍には大きな温度差が生じ、着用者は冷たいと感じるようになる。したがって、人間が本来的に有する体温の自動調整機能により、着用者はあまり汗をかかなくなり、十分な涼しさを感じることができる。
このように、汗をかくような状況にあっては、体の表面近傍において温度勾配を上げると共に、湿度勾配をも上げることができるので、着用者は、さらに涼しさを感じ、快適に過ごすことができる。
尚、スペーサ部(空気流通路)が下着と離れてしまうと、上記の冷却効果が低下してしまう。このため、スペーサ部を下着に密着させる密着手段を設けることが望ましい。
次に、第一実施形態の冷却衣服により冷却効果を得ることができる環境について説明する。図9はその冷却衣服により冷却効果を得ることができる環境を説明するためのグラフである。図9において縦軸は湿度、横軸は温度を表す。左側の曲線S1は湿球温度が30℃である曲線を示す。真ん中の曲線S2は湿球温度が33℃である曲線、右側の曲線S3は湿球温度が36℃である曲線を示す。尚、かかるグラフは、十分な風量がある環境において得られたものであり、ここでは、その結果を概略的に示している。
上述した冷却の原理から分かるように、体からの汗が蒸発できないような環境の下では、冷却衣服を使用してもその冷却効果は得られない。したがって、理論上は、図9において、右側の曲線S3を境界としてその右側の領域に対応する環境下では、冷却衣服による冷却効果はほとんどないと考えられる。また、右側の曲線S3と真ん中の曲線S2とで囲まれた領域に対応する環境下でも、体からの汗があまり蒸発できないので、冷却衣服による冷却効果はそれ程期待できない。一方、真ん中の曲線S2と左側の曲線S1とで囲まれた領域に対応する環境下では、体からの汗が蒸発できるので、冷却衣服による冷却効果が得られる。そして、左側の曲線S1を境界としてその左側の領域に対応する環境下では、体からの汗が十分蒸発できるので、冷却衣服による冷却効果は十分に得られると考えられる。真ん中の曲線S2を境界としてその左側の環境は、人間の通常の生活環境である。このため、理論上は、かかる冷却衣服を、非日常的な環境を除き、どのような環境の下で使用しても、冷却効果が得られると考えられる。
尚、例えば湿度が100%に近いような特殊な環境下においても、次のような工夫を凝らすことにより冷却衣服による冷却効果を得ることができる。すなわち、強力なファンを空気流入部に対応する服地部の位置に設け、そのファンの前に、ドライアイスを入れた容器(冷却手段)を取り付ける。ファンを外部の空気が空気流通路内に導入する向きに回転させると、ドライアイスの気化熱によりファン周辺の外気の温湿度が下がるので、着用者は、涼しさを感じ、快適に過ごすことができる。同様に、市販されているゲル状冷却体や小型冷却機(冷却手段)によってファン周辺の外気を冷やすことにより、特殊な環境下でも冷却衣服を使用することができる。
第一実施形態の冷却衣服では、服地部と下着との間に空気の流通路を確保するためのスペーサ部を設け、ファンによって空気流通路内に空気の流れを強制的に生じさせることにより、空気を服地部と人体との間において体表に略平行に流すことができるので、体の表面近傍における温度勾配を大きくすることができる。このため、かかる冷却衣服を着用するだけで、着用者は、涼しさ、快適さを得ることができる。また、汗をかくような状況では、汗を、空気流通路内を流通する空気によって外部に運び出すことができるので、発汗による気化熱の吸収によりダイレクトに体を冷やすことができ、したがって、冷却効果をさらに高めることができる。
特に、空気漏れ防止手段を設けたことにより、服地部と下着との間を流通する空気が服地部の下端から外部に漏れるのを確実に防止することができるので、かかる空気漏れにより冷却効果が低下することはない。
また、第一実施形態の冷却衣服では、間隔確保手段を、下着に対向する側のファンの表面を覆うように設けたことにより、ファンと下着との間に空気流通路を確保することができると共に、しわになった下着の部分によってファンの上端が塞がれてしまうのを防ぐことができるので、冷却効果が減退するような事態の発生を確実に防止することができる。
尚、上記の第一実施形態では、冷却衣服を下着の上に着用する場合について説明したが、例えば、冷却衣服を直接、素肌の上に着用してもよい。
上記の第一実施形態では、胸部と背中に対応する服地部の部分に三つのスペーサ部を取り付け、胸部及び背中を冷却する場合について説明したが、例えば、腕部をも冷却する場合には、さらに、腕部に対応する服地部の部分にスペーサ部を取り付け、袖部にファンを設けるようにすればよい。また、脇の下など汗のかきやすい局部に対応する服地部の裏面の位置には、当該局部に空気を送風するための小型のファンを別途設けるようにしてもよい。この場合、当該局部には必ずしも外部の空気を導入する必要はない。
また、上記の第一実施形態では、スペーサとして、網目状部材と、複数の柱状部材と、複数の連結部材とを有するものを用いた場合について説明したが、それ以外にもさまざまなスペーサを用いることができる。一般に、柱状部材の間隔は最大でも70mmとすることが望ましい。また、スペーサの厚さは2mm以上30mm以下であることが望ましい。スペーサの厚さが2mmより小さいと、一定流量の空気を流すためには、空気の圧力をかなり高める必要があり、実用的でないからである。特に、ファンの周辺では空気の流れが大きいので、ファンの周辺に設けられるスペーサの厚さは5mm以上であることが望ましい。一方、スペーサの厚さが30mmより大きいと、見栄えや着心地が悪くなり、しかも空気が層流になって空気流通路内を流通するという問題が生じやすくなるからである。空気が層流になると、空気流通路内において体側を流れる空気と服地部側を流れる空気とが互いに混じらず、大きな冷却効果を得ることができなくなる。尚、層流発生の問題を解決するには、例えば、空気流通路内を流通する空気を攪拌する空気攪拌手段を、空気流通路内のところどころに設け、これにより、空気流通路内に空気の不規則な流れを発生させるようにしてもよい。
上記の第一実施形態では、スペーサを布地に縫い付けることによりスペーサ部を作製する場合について説明したが、例えば、スペーサの網目状部材を超音波融着や熱融着により、布地に取り付けて、スペーサ部を作製するようにしてもよい。このとき、布地としては、スペーサの材料よりも融点の高いものを用いる必要がある。このように超音波融着や熱融着でスペーサを布地に取り付けることにより、糸で縫い付ける場合に比べて作業効率の向上を図ることができる。
また、上記の第一実施形態では、スペーサ部の布地を服地部の裏面に対向させ、その布地を服地部に縫い付けることにより、スペーサ部を服地部に取り付ける場合について説明したが、逆に、図11に示すように、スペーサ部20の連結部材を服地部10の裏面に対向させ、スペーサ部20の布地31を服地部10に縫い付けるようにしてもよい。この場合、布地31を服地部10に縫い付けやすくするために、スペーサ21が取り付けられていない布地31の部分の面積を大きくする。また、スペーサ部20を服地部10に取り付けると、スペーサ21の全体が布地31によって覆われてしまうので、スペーサ部20の端部からスペーサ21内に空気が流通しやすいように、布地31としてはメッシュ状の素材を用いることが望ましい。さらに、この場合には、スペーサ21と下着との間に布地31が存在することになるので、しわになった下着の部分がスペーサ21の内部に入り込んでしまうことはない。このため、スペーサ21としては、連結部材がない単純な構造のものを用いることができる。
更に、上記の第一実施形態では、スペーサ部としてスペーサを布地に取り付けたものを用いる場合について説明したが、布地を使わず、スペーサ単体をスペーサ部として用いてもよい。この場合、スペーサを服地部に取り付けるには、例えば、スペーサを直接、服地部10の裏面に熱融着する。
上記の第一実施形態では、冷却衣服の前部をファスナーで開閉する場合について説明したが、例えば、マジックテープを用いて冷却衣服の前部を開閉するようにしてもよい。また、かかる冷却衣服は、後部をファスナー等で開閉するタイプの衣服や、前後部が開いておらず、頭からかぶることによって着用するタイプの衣服に適用することもできる。
上記の第一実施形態では、マジックテープを用いてファンを服地部に着脱自在に取り付ける場合について説明したが、次の方法によりファンを服地部に着脱自在に取り付けるようにしてもよい。図12はファンの取り付け方法の他の例を説明するための図である。この方法では、服地部の裏面における空気流出部の周囲部に、図12(a)に示すようなファン保持部(保持手段)160を縫い付ける。このファン保持部160の形状は略円環状であり、その内円の直径はファン60の円筒状部材65の直径と略同じである。また、ファン保持部160には、二つの係止爪161が形成されている。一方、ファン60としては、図2に示すものと略同じであるが、次の二つの点で異なるものを用いる。すなわち、第一の相違点はファン60にマジックテープを設けない点、第二の相違点は、図12(b)に示すように、ファン60のリング状部材66に二つの切欠き部66bを形成する点である。まず、ファン60の切欠き部66bとファン保持部160の係止爪161との位置を合わせて、ファン60をファン保持部160に当接させる。その後、ファン60を羽根部71の中心軸の回りに回転させることにより、切欠き部66bの周辺に位置するリング状部材66の一部と係止爪161とを係合させる。こうして、図12(c)に示すように、ファン60はファン保持部160に取り付けられる。尚、ファン保持部160は、服地部に縫い付ける代わりに、服地部に接着するようにしてもよい。
上記の第一実施形態では、冷却衣服に四つのファンを設けた場合について説明したが、ファンの数としては特に制限はなく、一つ、二つ、三つ又は五つ以上のファンを設けるようにしてもよい。同様に、空気流入部、空気流出部についても、数の制限ははい。一つ、二つ又は四つ以上の空気流入部を設けてもよく、また、一つ、二つ、三つ又は五つ以上の空気流出部を設けてもよい。
また、上記の第一実施形態では、一つの電源ボックスから四つのファンに電力を供給する場合について説明したが、例えば、各ファンに個別に電力供給用の電源や制御回路を取り付けることにより、冷却衣服の内部におけるコードレス化を図るようにしてもよい。ファンのコードレス化を図ることにより、例えば、冷却衣服を着たまま、各ファンを簡単に着脱し、二次電池の交換作業を容易に行うことができる。この場合、さらに、各ファンに受信回路を設け、外部の送信手段から受信回路に無線で信号を送ることにより、ファンのオン・オフや強弱を切り替えるようにしてもよい。ここで、送信手段としては、ポケットに入れることができるようなサイズ・形状のもの、例えば万年筆形状のものを用いることが望ましい。また、携帯電話等にその送信機能を組み込んでもよい。そして、受信回路は、混信を防止するため、少なくとも1000個の固有の通信識別コードを有することが望ましい。また、電源手段をすべてのファンに対して共通的に用いた場合に、その電源手段に、制御回路、受信回路及び通信識別コード解読回路を取り付けるようにしてもよい。更に、例えば、冷却衣服の着用者が移動することなく、決まった作業場所等で作業をする場合には、ファンに供給する電力を商用電源からとるようにしてもよい。あるいは、商用電源により二次電池を充電しながら、冷却衣服を使用してもよい。尚、上記の制御回路は、ファンのオン・オフを制御したり、羽根部の回転数を制御したりするものである。制御回路により例えばファン毎にファンの駆動制御が行われるが、四つのファンを複数のグループに分け、当該グループ毎にファンの駆動制御が行われるようにしてもよい。
更に、上記の第一実施形態において、空気流入部及び空気流出部に、必要に応じて、カバーを取り付けるようにしてもよい。冷却衣服は、ファンを駆動していないときでも、例えば、空気流入部から流入した空気が空気流通路内を通り、空気流出部から外部に流出するので、ある程度の冷却効果を有する。このため、寒いときには、空気流入部及び空気流出部をカバーで塞ぐことにより、冷却衣服の冷却効果を一時的になくすことができる。尚、かかるカバーの取り付け手段としては、例えばボタンを用いることができる。
上記の第一実施形態において、下着の一部には、例えばスパンディクスと称されるポリウレタン製の伸縮性素材を用いることが望ましい。これにより、下着と体とが密着して、冷却効果の低下を防止することができる。この場合、下着には、吸水性のある素材を用いることが望ましい。
次に、本発明の第二実施形態について図面を参照して説明する。図13(a)は本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図13(b)はその冷却衣服の概略背面図である。尚、第二実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第二実施形態の冷却衣服は、図13に示すように、服地部10aと、三つのスペーサ部20aと、二つの空気流出部(空気流通口)50aと、二つのファン(送風手段)60と、二つの間隔確保手段80と、電源ボックス90と、空気漏れ防止手段(不図示)とを備えるものである。第二実施形態では、かかる冷却衣服を、ワイシャツ等、裾の部分をズボンやスカートの中に入れて着用するタイプの衣服に適用した場合について説明する。したがって、服地部10aの裾の部分はある程度長くすることが必要である。この場合、服地部10aの裾の部分をズボン等の中に入れたことが、空気漏れ防止手段に該当する。また、この冷却衣服は、半袖の衣服であって、ボタンで前を閉じるタイプのものであるとする。また、この冷却衣服は、下着の上に着用される。
三つのスペーサ部20aは、服地部10aと下着との間に空気を流通させるための空気流通路を形成するためのものであり、服地部10aの裏面の中央部に広く設けられている。かかるスペーサ部20aは、図6に示すように、スペーサ21と、布地31とを有し、その構造は第一実施形態のものと略同様である。また、スペーサ部20aは、第一実施形態と同様に、布地31を服地部10aの裏面に対向させるようにして、布地31を服地部10aの所定の位置に糸で縫い付けることにより、服地部10aに取り付けられる。第二実施形態のスペーサ部20aが第一実施形態のものと異なる点は、その大きさ、形状の点だけである。具体的には、各スペーサ部20aは、左胸部、右胸部及び背中に対応する服地部10aの位置に縫い付けられているが、特に、背中に対応する位置に設けられたスペーサ部と左右の胸部に対応する位置に設けられた二つのスペーサ部とがそれぞれ、左右の脇部に対応する位置で連なるように、各スペーサ部20aの大きさ、形状を設計している。すなわち、三つのスペーサ部20aは全体で一つの大きな空気流通路を構成する。
尚、胸部、背中だけでなく、腹部や腰部を冷却する場合には、服地部10aの裾の部分にもスペーサ部20aを設けるようにすればよい。このとき、服地部10aをズボン等の中に入れているが、裾の部分に設けたスペーサ部20aにより、服地部10aの下方からも空気がスペーサ部20a内に入り込む。
第二実施形態では、冷却衣服をワイシャツに適用しているので、その前部を閉じる手段としてボタンを用いている。ボタンを用いた場合、上下に隣り合うボタン間の隙間から外部へ空気が漏れるおそれがある。かかる空気漏れを防止するためには、例えば、ワイシャツ前部の合わせ部の幅を広くすることが考えられる。また、ボタンの数を多くして、ボタン間の間隔を狭くしてもよい。さらには、ワイシャツ前部の合わせ部にマジックテープやファスナー等を取り付けると共に、外観上ワイシャツのように思わせるために、飾り用のボタンを設けるようにしてもよい。
二つの空気流出部50aは、背中に対応する位置に設けられたスペーサ部20aの下端部に対応する服地部10aの所定位置に形成されている。具体的には、二つの空気流出部50aはそれぞれ、左右の脇部からやや背中の方にずれた位置であって服地部10aの下部に形成されている。かかる空気流出部50aは、例えば、服地部10aの所定部分を切り欠き、その切り欠いた部分に、服地部10aの裏面側からメッシュ状の素材51を縫い付けることにより形成される。
二つのファン60は、スペーサ部20a内に空気の流れを強制的に生じさせるためのものであり、各空気流出部50aに対応する服地部10aの裏面の位置に取り付けられる。第二実施形態では、二つのファン60を、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部10aの位置に取り付けているので、冷却衣服の着用者の腕がファン60に不用意に当たってしまい、ファン60が邪魔になることはない。また、電源ボックス90は、二つのファン60に電力を供給する電源である。尚、ファン60及び電源ボックス90の構造は、上記の第一実施形態のものと略同様である。
また、間隔確保手段80は、ファン60と下着との間に一定の間隔を確保するためのものであり、その構造・機能は、上記の第一実施形態のものと略同様である。
次に、服地部10aの素材について説明する。第二実施形態では、服地部10aの上部とそれ以外の部分とで、異なる素材が用いられる。すなわち、服地部10aの上部には、空気流通性のよい素材を使用し、一方、服地部10aの上部以外の部分には、第一実施形態と同様に、実質的に空気が漏れないような素材を使用する。このため、服地部10aの上部からは外部の空気がスペーサ部20a内に流入することができる。第二実施形態では、第一実施形態のように服地部の一部を切り欠いて空気流入部を形成していないが、その代わりに、服地部10aの上部が空気流入部の役割を果たすことになる。このように空気流入部の役割を果たす、服地部10aの上部であって空気流通性のよい素材が用いられた部位のことを、「空気透過部位」とも称することにする。第二実施形態では、例えば、肩から、その下側約5cmのところまでの服地部10aの部分を空気透過部位とする。また、空気透過部位には、撥水処理を施すことが望ましい。かかる処理を施さない場合には、空気透過部位が水に濡れると、その部位における空気流通性が著しく低下してしまうからである。
ここで、服地部10aの空気透過部位から空気をスペーサ部20a内に効率よく取り込むために、スペーサ部20aはその一部が服地部10aの空気透過部位と重なるように服地部10aに設けられている。そして、スペーサ部20a内に流入した空気は、スペーサ部20aによって服地部10aと下着との間に形成された空気流通路内を流通することになる。
また、空気透過部位に使用する空気流通性のよい素材としては、服地部10aにおいて、一見して空気透過部位とそれ以外の部分との違いが分かるようなものを用いないことが望ましい。冷却衣服の外観上の違和感を少なくするためである。例えば、下着があまりにも透けて見えるような、とても目を粗く編んだメッシュ状の素材は、空気透過部位に使用する素材として適さないが、ある程度目を細かく編んだ素材であれば用いることができる。したがって、外部の空気は、空気透過部位からスペーサ部20a内に流入する際、その空気透過部位に使用した素材からある程度抵抗を受けることになる。このため、十分な量の空気をスペーサ部20a内に取り込むためには、空気透過部位の面積は大きくすることが望ましい。
次に、かかる服地部10aに要求される空気流通性について説明する。ここで、服地部10aの裏面にはスペーサ部20aが縫い付けられているので、服地部10aの空気流通性を考える場合には、服地部10aとスペーサ部20aの布地31とを一体のものとして考える必要がある。
いま、服地部10a及び布地31の空気流通性を表す定量的な物理量として、5Pa(約0.5mmH2O)の圧力を、服地部10a及び布地31に加えたときに、その服地部10a及び布地31を単位時間、単位面積当たりに通過する空気の体積(cc/cm2/sec)を考える。冷却衣服の着用時に良好な冷却効果を得るためには、空気流入部としての役割を果たす服地部10aの空気透過部位においては、十分な量の空気を取り込むことができるようにしなければならない。一方、服地部10aの空気透過部位以外の部位、例えばファン60の近傍等においては、空気があまり漏れないようにする必要がある。本発明者等による実験の結果、空気透過部位に対応する服地部10a及び布地31を通過する空気量が少なくとも2cc/cm2/secであり、空気透過部位以外の部位に対応する服地部10a及び布地31を通過する空気量が多くとも1cc/cm2/secであるような、服地部10a及び布地31を用いれば、十分な冷却効果が得られることが分かった。
但し、例えば、流通する空気の受ける抵抗が十分小さくなるように設計されたスペーサ部20aを用いると共に、大きな風量を有するファン60を用いた場合等には、服地部10a及び布地31の空気流通性についての上記の制限を緩和することができる。すなわち、この場合は、空気透過部位に対応する服地部10a及び布地31を通過する空気量が少なくとも10cc/cm2/secであり、空気透過部位以外の部位に対応する服地部10a及び布地31を通過する空気量が多くとも5cc/cm2/secであるような、服地部10a及び布地31を用いれば、良好な冷却効果が得られる。このように、ファン60の圧力やスペーサ21によって空気の受ける抵抗によって、服地部10a及び布地31を通過する空気量は変化するが、一般的に、空気透過部位に対応する服地部10a及び布地31を通過する空気量は空気透過部位以外の部位に対応する服地部10a及び布地31を通過する空気量よりも3倍以上大きいことが望ましい。
尚、スペーサ部20aの布地31を服地部10aの裏地と考えることができるので、その布地31によって空気流通路内を流れる空気が服地部10aの上部以外の部分から外部に漏れてしまうのを防止するようにしてもよい。例えば、布地31のうち服地部10aの上部に対応する部位には空気流通性のよい素材を用い、服地部10aの上部以外の部位に対応する部位には実質的に空気の漏れの少ない素材を用いる。そして、服地部10aには、すべての部位について空気流通性のよい素材を用いる。これにより、服地部10aの上部(空気透過部位)から十分な量の空気をスペーサ部20a内に取り入れることができ、服地部10aの上部以外の部分からは空気が外部にあまり漏れないようにすることができる。このように、布地31によって、服地部10aを介して流入又は流出する空気の量を制御することにより、服地部10a全体に対して同じ生地を用いることができ、服地部10aの見栄えをよくすることができると共に、空気透過性を服地部10aで制御するよりも布地31で制御する方が安価であるので、冷却衣服の製造コストを低く抑えることができるという利点がある。
ここで、かかる二つの性質を有する布地31の作製方法としては、例えば次のような方法を用いることができる。すなわち、まず、全体的に空気流通性のよい素材を用意する。そして、その素材において服地部10aの上部以外の部位に対応する部位を、実質的に空気漏れの少ない素材、例えばプラスチックフィルム等とラミネートする。特に、服地部10aのうちズボンのベルト等の近傍に対応する部位のように、空気の動きの少ない部位においては、高い透湿性を有するフィルムを用いることが望ましい。これにより、プラスチックフィルム等とラミネートされた部位からは実質的に空気が漏れないようにすることができる。かかる方法を用いることにより、布地31を容易に且つ安価に作製することができる。尚、この方法は、服地部10aで空気流通性を制御する場合に対しても適用することができる。
ところで、空気流通性のよい素材は柔らかく、材料として粘り強さがない。このため、服地部10aの上部に空気流通性のよい素材を使用した場合、スペーサ21の厚さを厚くしたとすると、服地部10aの上部にスペーサ21の形状が映ったり、スペーサ21の押圧力により服地部10aにしわが寄ってしまったりすることがある。しかし、空気流通性のよい素材を使用する服地部10aの上部の面積を大きくすれば、十分な量の空気をスペーサ部20a内に取り入れることができるので、服地部10aの上部であって、服地部10aの中央部における空気流通路から離れた部分については、スペーサ21の厚さを薄くすることができる。なぜならば、服地部10aの中央部における空気流通路から上方へ離れるに従い(服地部10aの上部に行くに従い)、服地部10a内に取り入れる空気の量が少なくて済むからである。したがって、かかる場合には、服地部10aの上部に対応する部分の厚さを薄くしたスペーサを用いることにより、服地部10aの上部にスペーサ21の形状が映ったりすることがない。また、たとえ肩に対応する服地部10aの裏面の位置にスペーサ部20aを設けたとしても、冷却衣服の着用者の肩が盛り上がっている感じを与えることもない。さらには、冷却衣服の着心地をよくすることができる。
また、服地部10aの上部に対応する部分において、スペーサ21の厚さを薄くする代わりに、流通する空気の抵抗は大きいが、肌触りのよい三次元織布等、別のタイプのスペーサを用いることもできる。一般に、スペーサ部20aとしては、その布地31に、例えば、厚さや材質等の異なる各種のスペーサを取り付けたものを用いることができる。特に、スペーサ部20aの各部位毎に、スペーサの厚さを変えることにより、各部位における空気の風量を調整することができる。例えば、図6及び図7に示すスペーサを用いて、スペーサの厚さを変える場合には、大サイズのスペーサにおいて各部位毎に柱状部材の長さを変えたり、あるいは、柱状部材の長さの異なる複数の小サイズのスペーサを各部位に取り付けるようにすればよい。このように、スペーサ部20aには、各部位毎に、厚さや材質、肌触り等の異なる各種のスペーサを複合的に用いてもよい。尚、空気流通路の厚みがスペーサ21の厚み以上にならないように、空気流通路を下着に密着させる密着手段を用いることが望ましい。
第二実施形態の冷却衣服は、上記の第一実施形態のものと同様の作用・効果を奏する。特に、第二実施形態の冷却衣服では、服地部の素材を利用して空気を空気流通路内に取り込み、また、二つの空気流出部をそれぞれ、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けているので、当該冷却衣服を正面から見たときには、ファンが見えず、普通のワイシャツと全く同じである。通常のワイシャツと外観上異なる点は、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に二つの空気流出部が設けられている点だけである。このため、冷却衣服を着用しても、外観上の違和感はほとんどない。また、第二実施形態では、二つのファンをそれぞれ、服地部の左右の脇部からやや背中の方にずれた位置に設けており、背中の真ん中に設けているわけではないので、冷却衣服の着用者が椅子に腰掛けた場合に、ファンの空気排出口が塞がれてしまうこともない。尚、この場合、椅子の背もたれとぶつかる位置に設けられるスペーサとしては、1cm2当たり少なくとも0.3Nの力に耐えうる強度を有するものを用いることが望ましい。これにより、着用者が椅子の背もたれに寄りかかったときに、スペーサがつぶれてしまうことはない。
また、第二実施形態の冷却衣服では、二つのファンと電源ボックスとを取り外すと、通常のワイシャツとの違いは、二つの空気流出部が設けられている点、スペーサ部が服地部の裏面に縫い付けられている点だけである。このため、冷却衣服が汚れた場合には、ファンと電源ボックスを取り外した状態で洗濯することができる。但し、かかる冷却衣服にはスペーサ部が取り付けられているため、アイロンをかけることはできない。このため、服地部には、予めパーマネント加工を施し、形状を記憶させておくことが望ましい。
また、ファンと電源ボックスとが取り外された冷却衣服本体は、安価なコストで製造することがきる。このため、冷却衣服の着用者は、ファンと電源ボックスとが設けられていない冷却衣服本体を複数組購入し、ファン及び電源ボックスについては少なくとも一組購入しておけば、冷却衣服としてのワイシャツを毎日、交換して着用することができる。
ところで、第二実施形態では、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けた二つのファンにより、胸部と背中に対応する位置に設けたスペーサ部内に空気を流通させなければならない。二つのファンを、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けると、空気は、スペーサ部内を、例えば胸部や背中の中央を避けて流れるなど、偏った経路で流れる可能性がある。特に、背中は汗をかきやすい箇所であるので、空気流通路内には、空気をスペーサ部内における所定の経路に沿って案内するための空気案内手段を設け、空気が背中の中央を通るようにすることが望ましい。具体的には、スペーサ部内の所定位置にスポンジを設け、スペーサ部内の空間を仕切ることにより、空気が空気流通路内において背中の中央を流れるようにする。また、シロッコファンのような方向性のあるファンを用いて、空気流通路内を流れる空気を背中の中央に向けて吹き付けるようにしてもよい。さらには、スペーサの厚さを調整し、背中の中央において空気が受ける抵抗を小さくすることにより、空気が背中の中央を流れやすくしてもよい。尚、空気が胸部の中央を通るようにする場合も、上記と同様の方法を用いればよい。
尚、上記の第二実施形態では、服地部の上部を空気透過部位とし、二つのファンを、左右の脇部からやや背中の方にずれた服地部の位置に設けた場合について説明したが、例えば、一方の脇部に対応する服地部の部位を空気透過部位とし、他方の脇部に対応する服地部の位置に一つのファンを設けるようにしてもよい。一般に、空気透過部位とファン(又は空気流出部)とは、空気流通路を介して互いに反対側に設けられていれば、その具体的な設置位置はどこでもよい。
また、冷却衣服について外観をあまり気にせず、冷却効果を第一に考える場合には、例えば、少なくとも直径50mm程度の大型のファンを、背中の中央に対応する服地部の位置に一つだけ設け、その大型のファンにより空気流通路内の空気を外部に排出すると共に、服地部の前面側における複数の所定部位を空気透過部位としてもよい。これにより、1、2ワットの小さな電力で、10リットル/sec程度の大量の空気を空気流通路内に流すことができ、かかる大量の空気によって胴体の表面全体を包み込むことができるので、非常に大きな冷却効果を得ることができる。尚、当然のことながら、逆に、大型のファンを、腹部の中央に対応する服地部の位置に設け、服地部の背面側における複数の所定部位を空気透過部位としてもよい。
また、上記の第二実施形態では、空気透過部位から外部の空気を空気流通路内に取り入れ、空気流出部から空気流通路内の空気を外部に取り出す場合について説明したが、逆に、空気流出部を空気流入部とし、当該空気流入部から外部の空気を空気流通路内に取り入れ、空気透過部位から空気流通路内の空気を外部に取り出すようにしてもよい。
次に、本発明の第三実施形態について図面を参照して説明する。図14は本発明の第三実施形態に係る冷却衣服を説明するための図である。尚、第三実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第三実施形態の冷却衣服は、服地部10aと、三つのスペーサ部20aと、二つのファン60と、電源ボックス90と、帯状の布(仕切手段)110とを備える。かかる冷却衣服が第二実施形態のものと異なる点は、服地部10aの上部だけでなく下部にも空気流通性のよい素材を用い、服地部10aの一部を切り欠いて形成される空気流出部を設けていない点、及び、ファン60を、その回転軸が下着の表面に対して略平行となるように服地部10aと下着との間に取り付けた点である。その他の点については、上記の第二実施形態のものと同じである。
上記の第二実施形態では、服地部の上部に空気流通性のよい素材を用い、服地部の上部以外の部分に空気が漏れないような素材を用いる場合を説明した。これに対し、第三実施形態では、服地部10aの上部と下部に空気流通性のよい素材を用い、上部及び下部以外の中央部分に、実質的に空気が漏れないような素材を用いる。服地部10aの上部であって空気流通性のよい素材が用いられた部位を「第一の空気透過部位」、服地部10aの下部であって空気流通性のよい素材が用いられた部位を「第二の空気透過部位」とも称することにする。かかる第一の空気透過部位及び第二の空気透過部位は、クレーム3における「空気流通部」に対応する。第三実施形態では、第一の空気透過部位が空気流入部の役割を果たし、第二の空気透過部位が空気流出部の役割を果たすことになる。したがって、服地部10aの一部を切り欠いて空気流入部、空気流出部を形成する必要はないので、この場合の冷却衣服は、外部から見る限り、普通の衣服と全く同じであり、外観上の違和感が全くない。また、三つのスペーサ部20aは、服地部10aの裏面の中央部に広く設けられる。
また、第三実施形態では、ファン60の構造は第二実施形態のものと略同様であるが、ファン60の取り付け方法が第二実施形態と異なる。すなわち、図14に示すように、帯状の布110を、服地部10aの下部の裏面であってスペーサ部20aの近傍の部分に、胴回り方向に沿って縫い付ける。ここで、この帯状の布のうち服地部10aに取り付けられた側と反対側の端部にはゴム等を入れて、ギャザーを寄せている。また、二つのファン60を、その帯状の布110の所定位置に取り付ける。これにより、帯状の布110のギャザーは下着と接し、冷却衣服の着用時に、ファン60の羽根部の中心軸は体の表面と略平行になる。このように、帯状の布110は、服地部10aと下着との間の空間を上下二つに仕切る役割を果たすものであり、クレーム3における「仕切手段」に対応する。ここで、ファン60としては、例えば直径約20mm程度の小型のものを用いる。但し、ファン60の風量はある程度大きいことが望ましいので、例えば厚さ10mm以上のファン60を用いることが望ましい。また、ファン60の代わりに、ふいごのような縦長の送風機を用いてもよい。このような方法によってファン60を取り付けることにより、空気流通路内を通ってきた空気はファン60により下方に向けて排出された後、空気流通性のよい服地部10aの下部(第二の空気透過部位)を介して外部に流出する。尚、ファン60よりも下側に位置する服地部についてはある程度の空気流通性を有するものであれば十分である。当該下側に位置する服地部10aの面積は大きいので、空気はあまり抵抗なく外部に流出できるからである。
尚、上記の第三実施形態では、外部の空気を服地部の上部(第一の空気透過部位)から空気流通路内に取り込み、その取り込んだ空気を上方から下方に向けて流通させる場合について説明したが、ファンを上下逆向きにして上記の帯状の布に取り付けることにより、外部の空気を服地部の下部(第二の空気透過部位)から空気流通路内に取り込み、その取り込んだ空気を下方から上方に向けて流通させるようにしてもよい。空気流通路内の空気は体温により熱せられ、空気流通路内に上昇気流や対流が生じるので、かかる上昇気流等を利用するという観点からは、空気流通路内の空気を下方から上方に向けて流通させる方が好ましい。
第三実施形態の冷却衣服は、上記の第二実施形態のものと同様の作用・効果を奏する。特に、第三実施形態の冷却衣服では、服地部の素材を利用して空気を空気流通路内に取り込むと共に外部に流出しており、しかも、ファンを外部から見えない服地部の裏面側に設けているので、冷却衣服を着用していても、外観上の違和感が全くないという特徴がある。
尚、上記の第三実施形態において、冷却衣服を、裾の部分をズボン等の中に入れないで着用するタイプの衣服(例えば、Tシャツ、つなぎ服等)に適用してもよい。この場合、服地部の下端が開放しているので、服地部の下部に必ずしも第二の空気透過部位を設ける必要はない。すなわち、一般には、空気透過部位を服地部の上部及び下部のうち少なくとも一方に設ければよい。ここで、当該空気透過部位から外部の空気を空気流通路内に取り入れる場合には、服地部の端部から空気流通路内の空気を外部に取り出し、一方、当該空気透過部位から空気流通路内の空気を外部に取り出す場合には、服地部の端部から外部の空気を空気流通路内に取り入れることになる。
次に、本発明の第四実施形態について図面を参照して説明する。図15(a)は本発明の第四実施形態に係る冷却衣服の中着服の概略正面図、図15(b)はその中着服の概略背面図である。尚、第四実施形態において、第二実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
第四実施形態の冷却衣服は、衣服本体と、中着服とからなる。衣服本体は、スペーサ部が設けられていない点を除き、図13に示す第二実施形態の冷却衣服と略同様である。すなわち、衣服本体は、服地部10aと、二つの空気流出部50aと、二つのファン60と、二つの間隔確保手段80と、電源ボックス90とを備えている。
中着服は、衣服本体と下着の表面との間に空気を流通させるための空気流通路を確保するために衣服本体の下に着用されるものであり、複数のスペーサを用いて着衣できる形状に形成されている。すなわち、中着服は、スペーサ部の役割を果たす。第四実施形態では、中着服を、例えばベスト等に適用した場合を考える。中着服は、図15に示すように、三つのスペーサ121と、シート状素材131とを備える。シート状素材131は、ベスト等のような、人が着衣できる形状に形成されている。スペーサ121は、下着の表面に沿って一定の空間を確保するためのものである。シート状素材131の表面には、三つのスペーサ121が糸で縫い付けられている。具体的には、各スペーサ121を、例えば左胸部、右胸部及び背中に対応するシート状素材131の位置に縫い付けている。ここで、シート状素材131のうち二つのファン60に対応する部位には、スペーサ121が重ならないようにする。
シート状素材131としては、メッシュ状の素材等、通気性を損なわないものを使用する。特に、汗で汚れにくい素材を用いることが望ましい。
尚、中着服には、着心地を良くしたり、抗菌性を付与したり、高機能性を付加してもよい。また、当然のことながら、各部位に応じて、スペーサの厚さや種類を変えてもよい。
かかる中着服は下着の上に着用される。そして、この中着服の上に衣服本体が着用される。このように、中着服と衣服本体とを一緒に着用することにより、中着服は服地部10a及び下着と接するようになるので、スペーサ121によって服地部10aの中央部と下着との間に空気流通路を確保することができる。
第四実施形態の冷却衣服では、スペーサが設けられた中着服を衣服本体と別個に構成したことにより、衣服本体を洗濯する際、衣服本体からファンを取り外せば、衣服本体はほとんど通常のワイシャツと同じになるので、衣服本体を容易に且つ簡単に洗うことができる。また、スペーサを衣服本体に直接取り付けた場合には、スペーサによって衣服本体にしわができてしまうことがあるが、スペーサ(中着服)と衣服本体とを別個に構成したことにより、衣服本体はしわになったりせず、見栄えが悪くならない。
また、中着服は一着あれば、その中着服を、各種の冷却衣服本体(スペーサ部が設けられていないもの)と組み合わせて使用することができるので、着用者による経済的なコスト負担が少なくて済むという利点がある。更に、衣服本体にはスペーサ部を設けていないので、ワイシャツ(衣服本体)前部の合わせ部の幅を十分広くすることができる。このため、かかる合わせ部の幅を十分広くすることにより、ボタンの隙間から外部へ空気が漏れるのを防止することができる。その他の効果は、上記の第二実施形態のものと同様である。
また、中着服の上に着用する衣服本体としては、例えばスパンディクスと称されるポリウレタン製の伸縮性素材を少なくとも一部に用いたものを使用すると、下着と服地部との間隔がスペーサの厚さで決まるので、設計した空気流通路に近いものが得られ、冷却効果が高まる。また、中着服のシート状素材にも上記のスパンディクスを使用すると、中着服が体に密着するので、下着と体との密着性がよくなる。
尚、複数のスペーサを下着に取り付けたものを、中着服として用いてもよい。すなわち、例えば、スペーサを、下着の表面であって服地部の中央部に対応する部位に設け、衣服本体にはスペーサ部を設けないようにしてもよい。この場合にも、スペーサが設けられた下着(中着服)の上に衣服本体を着用すれば、服地部の中央部と下着との間に空気流通路を確保することができる。
また、中着服として、シート状素材の裏面(下着に対向する側の面)にスペーサを取り付けたものを用いてもよい。このとき、スペーサが取り付けられた部分のシート状素材としては実質的に空気漏れの少ない素材を使用し、衣服本体の服地部としては空気流通性のよい素材を使用する。これにより、中着服を着用するだけで、空気流通路を形成することができる。
また、ボタン等を用いて中着服を服地部の裏面に簡単に着脱できるように冷却衣服を構成してもよい。中着服を服地部の裏面に取り付けた場合には、中着服が取り付けられた衣服本体を着るだけで、服地部の中央部と下着との間に空気流通路を確保することができるので、着衣の面倒が少なくなる。
更に、ファンを、衣服本体に取り付ける代わりに、中着服自体に取り付けるようにしてもよい。この場合、ファンに相当する服地部の部位(空気流通口)には、通風孔を設けるか、あるいは空気流通性のよい素材を用いるようにする。この場合、中着服の上に衣服本体を着用したときに、例えばシート状マグネットリングを用いて、ファンと空気流通口との位置合わせを行う。
また、第四実施形態では、冷却衣服を、第二実施形態のタイプの衣服に適用した場合について説明したが、例えば、第一実施形態又は第三実施形態のタイプの衣服に適用することも可能である。
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形・組合せが可能である。
上記の各実施形態では、本発明の冷却衣服を着用することにより、胸部及び背中を冷却する場合について説明したが、冷却衣服を着用して、例えば背中だけを冷却してもよい。背中はとても汗をかきやすく、その面積も広いので、背中だけを冷却しても、着用者には十分な冷却感を与えることができる。
上記の各実施形態の冷却衣服で使用したスペーサは、その厚さを自由に決定でき、しかも、とても軽量で柔軟性に優れているという特徴がある。かかるスペーサの特徴を生かし、服地部の裏面にスペーサ部(又はスペーサ)だけを設けた冷却衣服を作製することも可能である。すなわち、かかる冷却衣服は、服地部、スペーサ部だけを備え、上記の各実施形態の冷却衣服に設けられていた空気流入部、空気流出部、ファン、電源ボックスを有しない。このとき、服地部には空気流通性のよい素材を用いる。ここで、服地部(スペーサ部の布地を含む。)としては、5Paの圧力を加えたときに、単位時間、単位面積当たりに通過する空気量が少なくとも3cc/cm2/secであるようなものを用いることが望ましい。この冷却衣服でも、上記の各実施形態のものと同様に、スペーサ部によって服地部と下着との間に空気流通路が形成される。尚、かかる冷却衣服において、スペーサ部と服地部とを別個に構成してもよい。例えば、上記の第四実施形態における中着服を着用した後、その中着服の上に、空気流通性のよい素材で作製された服地部を着用してもよい。
図16はスペーサ部だけを設けた冷却衣服における空気の流れを説明するための概略断面図である。風が吹いている場合には、図16に示すように、空気は、服地部を介して空気流通路内に入り、空気流通路内を通った後、服地部から外部に排出される。また、風がない場合でも、空気は、上昇気流や、体の熱による対流により、同様に、服地部を介して空気流通路内に入り、空気流通路内を通った後、服地部から外部に排出される。当然、この冷却衣服は、上記の各実施形態のものに比べると冷却効果が劣るが、例えば、夏の時期における釣り人やカメラマン用のベストなどの用途に使用する場合には、十分な冷却効果を有する。尚、上昇気流の効果を考えれば、かかる冷却衣服においてスペーサ部(中着服)と服地部(上着)とを別個に構成した場合、その上着としては、必ずしも空気流通性のよい素材で作製されたものを用いる必要はなく、一般の服を用いてもよい。したがって、かかる中着服を、いろいろな種類の上着と組み合わせて着用することができる。
尚、本発明の冷却衣服の上に背広等の上着を着用することができる。この場合、かかる上着については、冷却衣服の空気流入部(第二実施形態の場合には服地部の上部)やファンに対応する部分を、例えばメッシュ状の素材で作製することが望ましい。これにより、当該上着は、冷却衣服における空気の流れを阻害することはないので、冷却衣服による良好な冷却効果を維持することができる。また、最近では、全体的に空気流通性に優れた上着が販売されている。かかる上着であれば、何ら加工することなくそのまま、当該冷却衣服の上に着用することができる。尚、冷却衣服の上には、背広に限らず、レインコート、軍服、ウインタースポーツ用の衣服、漁業用の作業服、きもの、消防訓練用の衣服、防刃・防弾チョッキ、ステージ衣装、パイロット・レーサー用の衣服などを上着として着用することができる。
また、本発明の冷却衣服は、上述した第一・第二実施形態で説明した作業服やワイシャツに限らず、どのような衣服にも適用することができる。
例えば、本発明の冷却衣服は、着ぐるみに適用することができる。着ぐるみは人の全身を覆う衣服であるので、その着用者はとても暑く感じる。このため、着ぐるみの場合には、両脚の下側の部分に空気流入部を設け、頭部に空気流出部及びファンを設けることが望ましい。そして、着ぐるみの裏面全体にスペーサ部を取り付ける。尚、着ぐるみの場合には、ファンを着脱可能に構成する必要はない。
また、本発明の冷却衣服は、寒い環境において少なくとも一枚の保温用上着の下に着用される温度調整服として利用することができる。通常、夏以外の季節では、人は複数枚の衣服を重ねて着ている。そして、運動等により汗をかいた場合には、着用者は、数枚の衣服を脱いで、自分で温度調整をする。このような場合、本発明の冷却衣服を例えば上着の下に着用していれば、ファンのスイッチをオンにするだけで、着用者は涼しく感じ、上着を脱いだのと同様の効果が得られる。特に、冷却衣服を冬の寒い季節に着用する場合には、外部の空気が冷えているので、ファンの平均風量は少なくてよい。しかし、冷却衣服の上に上着を着用している場合には、ファンの圧力を高めて、冷却衣服と上着との隙間から、空気を排出できるようにすればよい。但し、ファンの圧力を高めるとしても、300Paの静圧をもつファン又はブロワを用いれば十分である。
このように、本発明の冷却衣服を温度調整服として利用する場合、ファンとしては、シロッコファンに代表される側流ファンを用いてもよい。この場合、側流ファンの空気吸入口と服地部の表面とを対向させ、側流ファンを、空気流出部を覆うようにして取り付ける。すなわち、側流ファンを服地部の表側に取り付け、服地部から外側に突出させる。空気流入部から流入した空気は、スペーサ内を通って空気流出部に達し、側流ファンの側面から体に平行な方向に排出される。このような方法で側流ファンを取り付けることにより、冷却衣服の上に上着を着用しても、側流ファンと上着との間に側流ファンの厚みの分だけ空間を確保することができ、しかも、側流ファンは服地部と略平行に空気を排出すると共に排出する空気の圧力が高いため、側流ファンからの空気の排出が上着によって妨げられることはない。
更に、本発明の冷却衣服は、クリーンルーム用の衣服として利用することができる。通常、クリーンルームでは、空気を上から下に向かって流しており、床に落ちた塵を吸い取っている。このため、クリーンルーム用の冷却衣服の場合には、服地部の上部に空気流入部を設け、服地部の下部に空気流出部を取り付ける。このとき、ファンは、人体から出た塵を空気と共に下方に排出するように構成する。かかるクリーンルーム用の冷却衣服としては、上記の第三実施形態の冷却衣服を用いることが望ましい。
また、本発明の冷却衣服は、頭部をゆったりと包むフードを有する衣服に適用することができる。この場合、フードの裏面側にスペーサを設けることにより、頭部にも空気流通路を形成することができるので、頭部を冷却することができる。
その他、本発明の冷却衣服は、上述したもの以外に、つなぎ服、レインコート、軍服、ウインタースポーツ用の衣服、農業や林業用の作業服、パイロットやレーサー用の衣服、発汗する動物用の衣服などに適用することができる。
本発明の冷却衣服は、第一実施形態で説明したようにファンを空気流出部に対応する服地部の位置に設けることにより、空気流通路内を流通する空気を体に略垂直な方向に排出する方式と、第三実施形態で説明したように仕切手段にファンを設けることにより、空気流通路内を流通する空気を服地部の下部から下方に向けて排出する方式とを両方備えたものであってもよい。かかる冷却衣服では、空気流通路内に大量の空気を流通させることができるという利点がある。
産業上の利用可能性
以上説明したように、本発明は、服地部と下着との間に設けた空気流通路内に空気を体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、汗をかくような状況では、汗を、空気流通路内を流通する空気によって外部に運び出し、発汗による気化熱の吸収によりダイレクトに体を冷やすものであり、少ない消費電力で、しかも簡易な構造で、快適に過ごすことのできる衣服に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
図1(a)は本発明の第一実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図1(b)はその冷却衣服の概略背面図である。
図2(a)はその冷却衣服に用いられるファンの概略平面図、図2(b)はそのファンの概略側面図、図2(c)はそのファンの概略底面図である。
図3(a)はその冷却衣服に用いられる間隔確保手段の概略平面図、図3(b)はその間隔確保手段の脚部の概略拡大平面図である。
図4はファンを服地部に取り付けたときの様子を説明するための図である。
図5は四つのファンの接続コードを固定する方法を説明するための図である。
図6は第一実施形態の冷却衣服に用いられるスペーサ部の一部の概略平面図である。
図7はそのスペーサ部の一部の概略拡大斜視図である。
図8は第一実施形態の冷却衣服で利用する冷却原理を説明するための図である。
図9はその冷却衣服により冷却効果を得ることができる環境を説明するためのグラフである。
図10に空気流入部に取り付けられた側流ファンの概略図を示す。
図11はスペーサ部の取り付け方法の他の例を説明するための図である。
図12はファンの取り付け方法の他の例を説明するための図である。
図13(a)は本発明の第二実施形態に係る冷却衣服の概略正面図、図13(b)はその冷却衣服の概略背面図である。
図14は本発明の第三実施形態に係る冷却衣服を説明するための図である。
図15(a)は本発明の第四実施形態に係る冷却衣服の中着服の概略正面図、図15(b)はその中着服の概略背面図である。
図16はスペーサ部だけを設けた冷却衣服における空気の流れを説明するための概略断面図である。
Claims (57)
- 服地部の裏面の所定部位に接する一又は複数のスペーサにより形成された、前記服地部と体又は下着との間に空気を流通させるための流通路と、
前記服地部に設けられた、外部の空気を前記流通路内に取り入れるための一又は複数の空気流入部と、
前記服地部に設けられた、前記流通路内の空気を外部に取り出すための一又は複数の空気流出部と、
前記服地部に設けられた、前記流通路内に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記服地部と体又は下着との間を流通する空気が前記服地部の下端から外部に漏れるのを防止するための空気漏れ防止手段と、
を備え、前記送風手段によって前記空気流入部から外部の空気を前記流通路内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記流通路内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記流通路内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とする冷却衣服。 - 服地部の裏面の所定部位に接する一又は複数のスペーサにより形成された、前記服地部と体又は下着との間に空気を流通させるための流通路と、
前記服地部に設けられた、前記流通路内の空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記流通路内に取り入れるための一又は複数の空気流通口と、
前記空気流通口に対応する前記服地部の位置に設けられた、前記流通路内に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記流通路を介して前記空気流通口と反対側に位置する前記服地部の所定部位であって、空気流通性のよい素材が用いられた部位である空気透過部位と、
を備え、前記送風手段によって前記空気流通口から又は前記空気透過部位から外部の空気を前記流通路内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記流通路内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記流通路内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とする冷却衣服。 - 服地部の裏面の所定部位に接する一又は複数のスペーサにより形成された、前記服地部と体又は下着との間に空気を流通させるための流通路と、
前記服地部と体又は下着との間の空間を上下二つに仕切るための仕切手段と、
前記仕切手段に設けられた、前記流通路内に空気の流れを強制的に生じさせるための一又は複数の送風手段と、
前記送風手段に電力を供給する電源手段と、
前記服地部の上部及び下部のうち少なくとも一方に設けられた、前記流通路内の空気を外部に取り出すため又は外部の空気を前記流通路内に取り入れるための空気流通部と、
を備え、前記送風手段によって前記空気流通部から又は前記服地部の端部から外部の空気を前記流通路内に取り入れ、その取り入れられた空気を前記流通路内に体の表面と略平行に流通させることにより、体の表面近傍における温度勾配を大きくして、体を冷却すると共に、体からの汗と前記流通路内を流通する空気とを接触させることにより、体からの汗を気化させ、当該気化の際に周囲から気化熱を奪う作用を利用して、体を冷却することを特徴とする冷却衣服。 - 前記スペーサを前記服地部の裏面の所定部位に取り付けることにより、前記流通路を形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記スペーサをシート状素材に取り付けた後、前記シート状素材を前記服地部の裏面に対向させるようにして、前記シート状素材を前記服地部の所定部位に縫い付けることにより、前記流通路を形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記複数のスペーサを用いて着衣できる形状の中着服を作製し、前記中着服の上に前記服地部を着用することにより、前記流通路を形成することを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記服地部としては空気流通性のよい素材を用いると共に、前記服地部に対向する側の前記中着服の表面の所定部位には、実質的に空気漏れの少ない素材を取り付けたことを特徴とする請求項6記載の冷却衣服。
- 前記スペーサを下着の表面の所定部位に取り付け、前記スペーサが取り付けられた前記下着の上に前記服地部を着用することにより、前記流通路を形成することを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記流通路を体又は下着に密着させる密着手段を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 空気を前記流通路内における所定の経路に沿って流通させるための空気案内手段を前記流通路内に設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記電源手段は燃料電池であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記電源手段はコードを介して前記送風手段に電力を供給することを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記電源手段と前記送風手段とを接続するコードを着脱自在に固定するコード固定手段を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記スペーサは複数の柱状部材が物理的に連なるようにして構成されたものであり、且つ、空気の流れる方向に垂直な面における前記スペーサの開口率が30%以上、体又は下着に対向する側の前記スペーサの開口率が20%以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記スペーサは、略扁平状に形成された網目状部材と、その厚さ方向の長さ成分を有し、前記網目状部材の交差点において前記網目状部材と物理的に連なる複数の柱状部材と、前記網目状部材の所定の網目において、その周囲に位置する四つの柱状部材のうち二つの柱状部材の先端を連結する複数の連結部材とを備えることを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記スペーサは、少なくともその一部が熱可塑性樹脂を用いたインジェクション成形により製造されたものであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記スペーサに抗菌加工を施したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記複数のスペーサとして、前記服地部の各部位毎に厚さ又は材質の異なるスペーサを用いたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記スペーサをシート状素材に取り付けた後、前記シート状素材を前記服地部の裏面に対向させるようにして、前記シート状素材を前記服地部の所定の位置に縫い付けることにより、前記スペーサを前記服地部に取り付け、且つ、前記服地部のすべての部位に対して空気流通性のよい素材を用いると共に、前記シート状素材のうち前記服地部の上部に対応する部位には空気流通性のよい素材を、前記服地部の上部以外の部位に対応する部位には実質的に空気漏れの少ない素材を用いたことを特徴とする請求項2記載の冷却衣服。
- 前記服地部及び前記シート状素材としては、5Paの圧力を前記服地部及び前記シート状素材に加えたときに、前記空気透過部位に対応する前記服地部及び前記シート状素材を単位時間、単位面積当たりに通過する空気の体積が少なくとも2cc/cm2/secであり、前記空気透過部位以外の部位に対応する前記服地部及び前記シート状素材を単位時間、単位面積当たりに通過する空気の体積が多くとも1cc/cm2/secであるようなものを用いたことを特徴とする請求項19記載の冷却衣服。
- 前記シート状素材は、空気流通性のよい素材のうち前記服地部の上部以外の部位に対応する部位を、実質的に空気漏れの少ない素材とラミネートすることにより得られたものであることを特徴とする請求項19記載の冷却衣服。
- 前記スペーサの下着に対向する側にメッシュ状素材を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記服地部の裾の部分に前記スペーサを取り付け、前記服地部の裾の部分をズボン又はスカートの中に入れることにより、前記服地部の下方からも空気を前記流通路内に取り込むことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記送風手段は、マジックテープ又はシート状マグネットを用いて前記服地部に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記送風手段の筐体部の周囲には、少なくとも二つの切欠き部を有するリング状部材が形成され、前記送風手段の取付位置には、前記送風手段を保持するための保持手段が取り付けられ、前記保持部には少なくとも二つの係止爪が形成されており、且つ、前記切欠き部と前記係止爪との位置を合わせて前記送風手段を前記保持手段に当接させた後、前記送風手段を回して、前記切欠き部の周囲に位置する前記リング状部材の一部と前記係止爪とを係合させることにより、前記送風手段を前記保持手段に取り付けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- PWM変調方式を用いて前記送風手段の回転数を変化させることを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記送風手段には、前記電源手段、制御回路及び受信回路が取り付けられており、外部の送信手段から前記受信回路に無線で信号を送ることにより、前記送風手段の駆動を制御することを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記送風手段には、制御回路及び受信回路が取り付けられており、外部の送信手段から前記受信回路に無線で信号を送ることにより、前記送風手段の駆動を制御することを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記受信回路は少なくとも1000個の通信識別コードを有することを特徴とする請求項27又は28記載の冷却衣服。
- 前記送風手段毎にあるいは前記複数の送風手段をいくつかのグループに区分したときのグループ毎に、前記送風手段の駆動を制御することを特徴とする請求項27又は28記載の冷却衣服。
- 前記送風手段は、その回転軸が体又は下着の表面に対して略垂直となるように前記服地部の裏面に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却衣服。
- 前記送風手段は、前記送風手段の前記服地部に対向する側の端面が前記服地部の表面と略同一平面上にあるように、前記服地部の裏面の所定位置に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却衣服。
- 前記送風手段の端面が前記服地部の表面から外側に突出している量は多くとも5mmであることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却衣服。
- 前記送風手段を、脇部からやや背中の方にずれた前記服地部の位置に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の冷却衣服。
- 前記送風手段を、背中の中央に対応する前記服地部の位置に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の冷却衣服。
- 前記送風手段は側流ファンであり、前記服地部の裏面の所定位置に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却衣服。
- 前記送風手段はファンであり、前記ファンの回路部に耐水加工を施したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記送風手段は外部の空気を前記流通路内に取り込むものであり、且つ、前記送風手段の周辺には、前記送風手段の周辺の外気を冷やすための冷却手段が設けられたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 体又は下着に対向する側の前記送風手段の表面を覆うように設けられた、前記送風手段と体又は下着との間に一定の間隔を確保するための一又は複数の間隔確保手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の冷却衣服。
- 前記間隔確保手段は弾力性を有し、外部から押圧されたときに、その押圧された方向に容易に移動することができることを特徴とする請求項39記載の冷却衣服。
- 前記送風手段の筐体部は、前記間隔確保手段の取付部を有することを特徴とする請求項39記載の冷却衣服。
- 局部に対応する前記服地部の裏面の位置にファンを設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記服地部の上部を前記空気透過部位としたことを特徴とする請求項2記載の冷却衣服。
- 前記空気流通部は、前記服地部の所定部位であって空気流通性のよい素材が用いられた部位であることを特徴とする請求項3記載の冷却衣服。
- 前記服地部の前部を開閉する手段としてファスナー又はマジックテープを用いたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記服地部の前部を開閉する手段としてマジックテープを用い、前記服地部の前部の表面に飾り用のボタンを付けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記服地部には吸水性のない素材を用いたことを特徴とする請求項1又は3記載の冷却衣服。
- 前記服地部の所定部位に撥水加工を施したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記服地部に熱線反射処理を施したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記送風手段に対応する前記服地部の部分にはメッシュ状素材を用いたことを特徴とする請求項1又は2記載の冷却衣服。
- 前記服地部は少なくとも一枚の保温用上着の下に着用される衣服であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記送風手段は側流ファンであり、前記側流ファンを前記服地部の表側に取り付け、前記流通路内を流通する空気を、前記側流ファンから体に平行な方向に排出することを特徴とする請求項51記載の冷却衣服。
- 前記服地部は、人の全身を包む着ぐるみであり、前記ファンを頭部に対応する前記服地部の位置に取り付けたことを特徴とする請求項1又は2記載の冷却衣服。
- 前記服地部はクリーンルームで作業する際に着用される衣服であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 前記服地部はフードを有しており、前記フードの裏面側に前記スペーサを設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の冷却衣服。
- 上着と体又は下着の表面との間に空気を流通させるための流通路を確保するために前記上着の下に着用される中着服であって、複数のスペーサを用いて着衣できる形状に形成されたことを特徴とする中着服。
- 前記流通路内に空気の流れを強制的に生じさせる一又は複数の送風手段を設けたことを特徴とする請求項56記載の中着服。
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- 2002-06-07 WO PCT/JP2002/005673 patent/WO2003103424A1/ja active Application Filing
- 2002-06-07 AU AU2002311157A patent/AU2002311157A1/en not_active Abandoned
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