JPWO2004007605A1 - プラスチゾル組成物用粘度調整剤、プラスチゾル組成物並びにこれを用いた製品および成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
プラスチゾルに求められる性能は多岐にわたるが、その一つとして粘度が低いことが挙げられる。プラスチゾルの粘度が低いと工程通過速度を向上させることや増量材の配合量を増やすことが可能となり生産コストが低下する。
近年、プラスチゾルで汎用的に使用されている塩化ビニル系重合体は、廃棄焼却方法によっては有害な塩化水素ガスやダイオキシンを発生する可能性が指摘されている。この問題を解決する材料として、特開平9−216984号公報やWO00/01748号公報には、アクリル系重合体を可塑剤に分散させてなるアクリルゾルの提案がなされている。
これらの文献に記載されているアクリル系重合体及びアクリルゾルは、貯蔵時の粘度安定性と加熱硬化後の成形品又は硬化皮膜の可塑剤保持性というプラスチゾルに必要とされる基本的性能を満足しているものの、粘度は塩ビゾルと比較するとまだなお高いという課題があり、低粘度化技術に対する要求はますます大きくなっている。
プラスチゾルの粘度を低下させる方法としては、一般に可塑剤を増量する方法が考えられる。しかし、可塑剤を多く含むプラスチゾルの硬化物は可塑剤のブリードアウト量が多くなり、機械的強度が低下する場合がある。
また、プラスチゾルの粘度を低下させるために用いられる希釈剤は、成形時に有機物が揮発するという観点から好まれない。
そこで、特開2001−187834号公報にはヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルを含有する低粘度アクリルゾルの提案がなされている。
特開2001−187834号公報で紹介されているヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルは可塑剤の選択によっては減粘効果が低く、特に汎用的に用いられる安価なジ−2−エチルヘキシルフタレートやジイソノニルフタレートなどではさらなる減粘効果が求められる。また、得られる皮膜や成形物にヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステル由来の着色が見られる場合がある。
本発明の別の課題は、1)減粘効果が高く、2)着色の原因となることを避けることができ、3)可塑剤の種類によって減粘効果が左右されないプラスチゾル組成物用粘度調整剤を提供することである。
本発明の別の課題は、プラスチゾル組成物から得られる低コスト化可能な被覆層を有する製品もしくは成形品を提供することである。
本発明により、化合物(A)〜(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するプラスチゾル組成物用粘度調整剤が提供される:
(A)下記(A1)〜(A3)に示される基からなる群から選ばれる少なくとも1つを有する化合物:
(A1)カルボキシル基又はその塩、
(A2)アルコキシ基、
(A3)グリシジル基;
(B)アミン系化合物;
(C)金属キレート化合物。
前記化合物(B)が、アルキルアミン化合物(B1)であることが好ましい。
前記アルキルアミン化合物(B1)が、式(1)で示される化合物および式(2)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種のアルキルアミン化合物であることが好ましい。
(但し、Yは炭素数が4〜28のアルキル基を表す。V、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜28のアルキル基もしくは水素原子を表す。)
前記アルキルアミン化合物(B1)が、式(3)で示されるアルキルアミン化合物であることが好ましい。
(但し、Yは炭素数が4〜28のアルキル基を表す。m、nはそれぞれ独立して0〜10の整数を表す。)
前記化合物(B)が、式(4)で示されるイミダゾリン化合物(B2)であることが好ましい。
(但し、Rは炭素数が4〜28のアルキル基または炭素数が4〜28のアルケニル基を表す。Pは炭素数が1〜10のアルキル基又は炭素数が1〜10のヒドロキシアルキル基を表す。Aは陰イオンを表す。)
前記金属キレート化合物(C)が、アルミニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物およびジルコニウムキレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属キレート化合物であることが好ましい。
本発明により、上記の粘度調整剤を含有するプラスチゾル組成物が提供される。
上記プラスチゾル組成物が、アクリル系重合体を含むことが好ましい。
本発明により、上記プラスチゾル組成物を用いて得られた被覆層を有する製品が提供される。
本発明により、上記プラスチゾル組成物を用いて成形された成形品が提供される。
本発明で用いることのできる化合物(A)は、下記(A1)から(A3)のうちの1種以上の基を有する。
(A1)カルボキシル基又はその塩
(A2)アルコキシ基
(A3)グリシジル基
(A1)の内、カルボキシル基を有する化合物としては、オクチル酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ノニル酸、オレイン酸、ラウリン酸等のカルボン酸類が挙げられる。
また、カルボキシル基の塩に由来する基を有する化合物としては、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸ナトリウム等が挙げられる。
(A2)の置換基を有する化合物としては、金属アルコキシドを用いることが好ましい。金属アルコキシドの具体例としては、テトラプロピルジルコニウム、テトラ−n−ブチルジルコニウム等のジルコニウムアルコキシド類、テトラプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のチタンアルコキシド類、テトラプロピルアルミニウム、テトラ−n−ブチルアルミニウム等のアルミニウムアルコキシド類等が挙げられる。
(A3)の置換基を有する化合物としては、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジルアルキルエーテル類等を用いることができる。
本発明で用いることのできるアミン系化合物(B)の具体例として、例えばドデシルアミン、テトラデシルアミン、オクタデシルアミン等の脂肪族第1級アミン;ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジヤシアルキルアミン、ジオレイルアミン等の脂肪族第2級アミン;ドデシルジメチルアミン、オクタデシルジメチルアミン、ジオレイルメチルアミン等の脂肪族第3級アミン;N−ヤシアルキル−1,3−ジアミノプロパン、N−オレイル−1,3−ジアミノプロパン等のアルキルジアミン;芳香族アミン誘導体;脂環式アミン誘導体;ポリオキシエチレンアルキルアミン類;イミダゾール誘導体が挙げられる。
この中でも、粘度低下効果という点から、アルキルアミン化合物(B1)が好ましく、下記式(1)、(2)又は(3)で示されるアルキルアミン化合物のうちの少なくとも1種が特に好ましい。
(但し、Yは炭素数が4〜28のアルキル基を表す。V、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜28のアルキル基もしくは水素原子である。)
(但し、Yは炭素数が4〜28のアルキル基を表す。m、nはそれぞれ独立して0〜10の整数を表す。)
ここで、式(1)〜(3)で示される化合物のうちの複数種を使用する場合、それぞれの式におけるYは同一であっても異なってもよい。
その中でも、特にX、Y、Vの炭素数の上限は26が好ましく、下限は6が好ましい。X、Y、Vの炭素数が26以下のアミン化合物を用いた粘度調整剤は、常温で液体となる傾向にあり、プラスチゾル配合時の取り扱いが容易となる傾向にある。またX,Y,Vの炭素数が6以上のアミン化合物を用いた粘度調整剤は、粘度低下効果が高い傾向にある。
また、式(3)で表されるアルキルアミン化合物は、式中のm、nが8以下であることが好ましい。8以下であると粘度調整剤が常温で液体となる傾向にあり、プラスチゾル配合時の取り扱いが容易となる傾向にある。
本発明で用いることのできるイミダゾリン化合物(B2)は、粘度低下効果の点で下記式(4)で示される構造が特に好ましい。
(但し、Rは炭素数が4〜28のアルキル基または炭素数が4〜28のアルキレン基を表す。Pは炭素数が1〜10のアルキル基又は炭素数が1〜10のヒドロキシアルキル基を表す。Aは陰イオンを表す。)
その中でも、特にRのアルキル基又はアルキレン基の炭素数の上限は26が好ましく、下限は6が好ましい。Rの炭素数が26以下であるイミダゾリン化合物を用いた粘度調整剤は、常温で液体となる傾向にあり、プラスチゾル配合時の取り扱いが容易となる傾向にある。またRの炭素数が6以上であるイミダゾリン化合物を用いた粘度調整剤は、粘度低下効果が高い傾向にある。
Pのアルキル基又はヒドロキシアルキル基の炭素数の上限は8が好ましい。Pの炭素数が8以下のイミダゾリン化合物を用いた粘度調整剤は、常温で液体となる傾向にあり、プラスチゾル配合時の取り扱いが容易となる傾向にある。
Aの陰イオンの具体的な例としては、F−、Cl−、Br−、HCO3 −、NO2 −、NO3 −などが挙げられる。その中でも、Cl−が好ましい。
本発明で用いることのできる金属キレート化合物(C)とは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。これらの中でも、粘度低下効果の観点からAl、Zr、Tiが好ましく、成形物の透明性がよい点でAlがより好ましい。また、共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。これら多官能性金属キレートは、プラスチゾル組成物中において、重合体の表面と反応し、粒子表面を改質することにより、プラスチゾル組成物に優れた粘度低下効果を発現する。
金属キレート化合物(C)の具体例として、トリ−n−ブトキシ・アセチルアセトネートジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトネート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトネート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトネート)チタニウム等のチタンキレート化合物;ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトネートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトネート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、モノアセチルアセトネート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられる。なお、金属キレート化合物(C)としては上記以外にも、構造が類似のテトラプロピルジルコニウム、テトラ−n−ブチルジルコニウム等のジルコニウムアルコキシド化合物、テトラプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のチタンアルコキシド化合物、テトラプロピルアルミニウム、テトラ−n−ブチルアルミニウム等のアルミニウムアルコキシド化合物等の金属アルコキシドを用いてもよい。
これらの化合物のうち、粘度低下効果が高く、安定で取り扱いが容易であるという点から、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウムおよびモノアセチルアセトネート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムから選ばれるアルミニウムキレート化合物が好ましい。
粘度調整剤中の化合物(A)〜(C)の合計量が、重合体100質量部に対して0.0001質量部以上となるように、プラスチゾル組成物に粘度調整剤を加えることが好ましく、0.005質量部以上の添加がより好ましい。また重合体100質量部に対して30質量部以下の添加が好ましく、10質量部以下の添加がより好ましい。
添加量が0.0001質量部以上の場合には、得られるプラスチゾル組成物において粘度調整剤の粘度低下効果が優れて発現する傾向にある。そのため低粘度のプラスチゾルが必要とされるカレンダー加工やスラッシュ成形法等を採用する場合に好適なプラスチゾル組成物となる。また、増量剤の配合量増加、可塑剤の減量によるブリードアウトの抑制が容易となる。
一方、添加量が30質量部以下の場合には、プラスチゾル組成物を用いて得られる成形品の耐黄変性や機械的強度が良好となる傾向にある。そのため、壁紙、塗料、玩具など意匠性や耐黄変性を重要視する用途や透明な成形物又は皮膜を得る場合、及び玩具や手袋など特に高い強度が求められる場合に好適である。
粘度調整剤として、化合物(A)〜(C)を可塑剤や溶剤或いは希釈剤に溶解させたものを用いることもでき、化合物(A)〜(C)をそのまま用いることもできる。
粘度調整剤に配合する可塑剤としては公知の可塑剤から適宜選択して使用することができる。
可塑剤の具体例としては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート等のアジピン酸エステル系可塑剤;トリメチルホスフェート、トリエチルオスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル系可塑剤;ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバチン酸エステル系可塑剤;ポリ−1,3−ブタンジオールアジペート等の脂肋族系ポリエステル可塑剤;エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル系可塑剤;アルキルスルホン酸フェニルエステル等のアルキルスルホン酸フェニルエステル系可塑剤;脂環式二塩基酸エステル系可塑剤;ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル系可塑剤;クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
粘度調整剤に配合する溶剤や希釈剤としては公知の可塑剤から適宜選択して使用することができる。
希釈剤の具体例(商品名)としては、ソルベッソ100(エクソン化学(株)製)、ソルベッソ150(エクソン化学(株)製)ミネラルスピリットA(日本石油(株)製)等の芳香族系希釈剤;アイソパーC(エクソン化学(株)製)、アイソパーEエクソン化学(株)製)、アイソパーG(エクソン化学(株)製)、アイソパーH(エクソン化学(株)製)、アイソパーL(エクソン化学(株)製)、0号ソルベントL(日本石油(株))、0号ソルベントM(日本石油(株))、0号ソルベントH(日本石油(株))、テクリーンN−16(日本石油(株))、テクリーンN−20(日本石油(株))、テクリーンN−22(日本石油(株))等の脂肪族系希釈剤などが挙げられる。
化合物(A)〜(C)の粘度調整剤中の含有量は、必要に応じて適宜変更できる。しかしながら、可塑剤や溶剤或いは希釈剤の添加は、重合体を溶解させる場合がある。そのため、貯蔵時のプラスチゾル粘度が増加したり、プラスチゾルの成形品の透明性が低下する場合があり、(A)〜(C)の含有量はこれらの合計で粘度調整剤全量中20質量%以上であることが好ましい。
可塑剤や溶剤或いは希釈剤としては、公知の物質から重合体を溶解させず、成形品の透明性を低下させない種類を選択することが好ましい。
化合物(A)〜(C)は、必要に応じて二種類以上を混合して用いることが出来る。その配合量も所望に応じて適宜変更することが可能である。
プラスチゾル組成物には可塑剤を用いる。可塑剤としては粘度調整剤の希釈用に用いたものと同様の公知の可塑剤から適宜選択して使用することができる。
可塑剤は、必要に応じて1種で又は2種以上を混合して用いることができ、またその配合量も所望に応じて適宜変更することができる。
本発明のプラスチゾル中、可塑剤の含有量は、重合体100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、70質量部以上がより好ましい。また1000質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましい。
可塑剤の含有量が1000質量部以下のプラスチゾル組成物は、成膜後に皮膜から可塑剤がブリードアウトしにくい傾向にある。また可塑剤の含有量が50質量部以上のプラスチゾル組成物は粘度低下効果が優れて発揮する傾向にある。
本発明に用いる重合体はプラスチゾルに用いられる公知の重合体から適宜選択することが出来る。
重合体は粒子状であることが好ましく、その体積平均粒子径が0.1μm以上500μm以下の範囲であることが好ましい。体積平均粒子径が0.1μm以上であると、プラスチゾル組成物の貯蔵安定性の観点から好ましく、500μm以下であると粒子が沈殿せずに安定に分散するという観点から好ましい。
重合体の製造方法としては、公知の重合体の製造方法を適宜選択することが出来る。例えば乳化重合法、ソープフリー重合法、縣濁重合法、微細縣濁重合法、分散重合法等の重合方法によって得られたラテックスを、(湿式)凝固法、スプレードライ法等の公知の方法で粉体化して得ることができる。
重合体としては、プラスチゾルに用いられる公知の樹脂から適宜選択して使用することが出来る。
樹脂としては、1)焼却時に有害ガスを排出しない、2)貯蔵時の粘度安定性と成形品又は硬化皮膜の可塑剤保持性のバランスがとりやすい、という観点から、(メタ)アクリル系重合体を含有するプラスチゾル組成物が好ましい。本発明の粘度調整剤は(メタ)アクリル系重合体を含むプラスチゾル組成物において減粘効果を好適に発現するものであるが、樹脂が塩化ビニル系樹脂やスチレン系樹脂等である場合でも好適に減粘効果を発現する。従って、樹脂として塩化ビニル系樹脂やスチレン系樹脂等を用いることもできる。
(メタ)アクリル系重合体とは、アクリレート重合体または/およびメタクリレート重合体を意味し、メタクリロイル基及び/又はアクリロイル基を有する単量体から得られる重合体であり、単独で重合した単独重合体でもよいし、2種以上の単量体を併用した共重合体でもよい。
重合体は、重量平均分子量1万以上500万以下が好ましい。重量平均分子量が1万以上であると、プラスチゾル組成物の貯蔵安定性と強度の観点から好ましく、500万以下であると加熱成膜時のゲル化性という観点から好ましい。
(メタ)アクリル系重合体を得るために用いられる単量体は、公知のメタクリロイル基及び/又はアクリロイル基を有する単量体から適宜選択すればよい。
単量体の具体例としては、アクリロニトリル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類;あるいはシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環式アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類;メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸2−サクシノロイルオキシエチル−2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、メタクリル酸2−マレイノロイルオキシエチル−2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、メタクリル酸2−フタロイルオキシエチル−2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、メタクリル酸2−ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル−2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基含有単量体;アリルスルホン酸等のスルホン酸基含有(メタ)アクリレート類、2−(メタ)アクリロイキシエチルアシッドフォスフェート等のリン酸基含有(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類;アセトアセトキエチル(メタ)アクリレート等のカルボニル基含有(メタ)アクリレート類、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;アクリルアミドジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
なお、必要に応じてメタクリロイル基及び/又はアクリロイル基を有する単量体以外に、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フィニルスチレン等のスチレン誘導体;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル等の多官能単量体;イタコン酸;クロトン酸;マレイン酸、マレイン酸エステル、無水マレイン酸等のマレイン酸誘導体等;フマル酸、フマル酸エステル等のフマル酸誘導体;トリアリールイソシアヌレートなどの単量体を共重合しても良い。
重合体の粒子構造は、公知の構造から適宜選ぶことができ、例えば、単一構造、2層以上のコア/シェル構造等の構造とすることができる。
その中でも、必要に応じてプラスチゾルにさらなる付加的な物性を導入することができることから、各層の組成が異なるコア/シェル構造が好ましい。
重合体としては、例えば重合で得られた一次粒子が多数凝集した二次粒子構造や、それ以上の高次粒子構造等を形成していても使用可能である。その場合の凝集状態は、一次粒子同士が強固に結合せず、緩く凝集している状態が好ましい。これは、可塑剤中に一次粒子の分散安定性に優れ、微細に均一分散が達成される為である。
本発明のプラスチゾル組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じてさらに炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、パーライト、クレー、コロイダルシリカ、マイカ粉、珪砂、珪藻土、カオリン、タルク、ベントナイト、ガラス粉末、酸化アルミニウム、フライアッシュ、シラスバルーンなどの充填材を配合してもよい。
プラスチゾル組成物には本発明の効果を損なわない範囲で更に必要に応じて、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、さらに消泡剤、防黴剤、防臭剤、抗菌剤、界面活性剤、滑剤、紫外線吸収剤、香料、発泡剤、レベリング剤、接着剤等、各種添加剤を適宜配合してもよい。また、前述した理由で使用量の削減が求められているが、ミネラルターペン、ミネラルスピリット等の希釈剤を配合して更なる低粘度化を図ることも可能である。
プラスチゾル組成物を調製する方法は公知の方法を適宜選択して使用すればよい。
例えば、粘度調整剤を予め可塑剤中に分散させた混合物中に、重合体及び必要に応じてその他の添加剤等を配合して混合してもよいし、予め可塑剤と重合体及び必要に応じてその他の添加剤等を配合してから粘度調整剤を配合し混合しても良い。全ての成分を配合した上で混合し分散させることもできる。
また、重合体を重合した後のラテックス中に、粘度調整剤を添加し噴霧乾燥するなどして、あらかじめ重合体に粘度調整剤を付与しておくことも可能である。
プラスチゾル組成物を調製する機器としては、公知のものを適宜選択使用すればよい。
機器の例としては、ポニーミキサー(Pony mixer)、チェンジキャンミキサー(Change−can mixer)、ホバートミキサー(Hobert mixer)、プラネタリーミキサー、バタフライミキサー、らいかい機、ニーダー等が挙げられる。
プラスチゾル組成物は、被覆材料としても成形材料としても使用可能であり、その塗布方法や成形方法は特に限定されない。
プラスチゾル組成物を基材上に塗布する方法の具体例としては、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、ナイフコーティング法、ロールコーティング法、カーテンフローコーティング法、刷毛塗り塗装法、静電塗装法等が挙げられる。プラスチゾルの塗膜を、加熱することによりゲル化させて成膜すれば、目的とする被覆層を有する製品を得ることができる。
また、プラスチゾル組成物を成形する方法としては、ディップモールディング法、キャストモールディング法、スプラッシュモールディング法、ローテーショナルモールディング法等が挙げられる。
このように、本発明のプラスチゾル組成物を用いれば、壁紙、ビニル鋼板、自動車用被覆材等の被覆材や、ビニルレザー、人形、玩具、手袋、床材、スポンジ製品、自動車部品、産業機械部品等の成形材を得ることができる。
以下本発明について、実施例を用いて具体的に説明する。
実施例中でいう粘度低下率とは、以下の式で表される値である。なお、粘度の測定条件は25℃条件下である。
粘度低下率(%)={(μ’−μ)/μ’}×100
μ:粘度調整剤を含むプラスチゾル組成物の粘度、
μ’:上記プラスチゾル組成物から粘度調整剤のみ除いた組成のプラスチゾル組成物の粘度。
なお、実施例中の重合体粒子の調製方法、成膜方法、及び各種評価方法は下記の通りである。
また、実施例中の部は全て質量部を意味する。
<重合体粒子P1,P2の調製方法>
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2リットルの4つ口フラスコに純水500部を入れ、30分間窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、メチルメタクリレート25.0部、n−ブチルアクリレート20.0部を入れ、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10.0部の純水に溶解した過硫酸カリウム0.25部を一度に添加し、引き続きここに、表1に示すモノマー乳化液(M1)を滴下し、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、樹脂分散液を得た。
得られた樹脂分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤーを用いて、入口温度170℃、出口温度75℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、粉末状の重合体粒子(P1)を得た。
モノマー乳化液(M1)に替えて表1の配合表に示すモノマー乳化液(M2)を用いたこと以外は上記と同様にして、重合体粒子(P2)を得た。
<重合体粒子P3〜P5の調製方法>
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2リットルの4つ口フラスコに純水500部を入れ、30分間窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10.0部の純水に溶解した過硫酸カリウム0.25部を一度に添加し、引き続き表1の配合表に示すモノマー乳化液(M3)を滴下し、滴下終了後80℃にて1時間攪拌を継続して、目的とする樹脂分散液を得た。
さらに、得られた樹脂分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤーを用いて、入口温度170℃、出口温度75℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、樹脂粉末(P3)を得た。
モノマー乳化液(M3)に替えて表1の配合表に示すモノマー乳化液(M4)および(M5)をそれぞれ用いたこと以外は上記と同様にして、重合体粒子(P4)および(P5)を得た。
<重合体粒子P6,P7の調製方法>
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2リットルの4つ口フラスコに純水500部を入れ、30分間窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、メチルメタクリレート25.0部、n−ブチルアクリレート20.0部を入れ、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10.0部の純水に溶解した過硫酸カリウム0.25部を一度に添加し、引き続きここに、表2に示すモノマー乳化液(Mc6)を滴下した。つづいて、滴下終了後80℃にて1時間攪拌を継続して、表2の配合表に示すモノマー乳化液(Ms6)を滴下した。滴下終了後、80℃にて1時間攪拌を継続して目的とする樹脂分散液を得た。
さらに、得られた樹脂分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤーを用いて、入口温度170℃、出口温度75℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、樹脂粉末(P6)を得た。
モノマー乳化液(Mc6)およびモノマー乳化液(Ms6)に替えて、表2の配合表に示すモノマー乳化液(Mc7)および(Ms7)を用いたこと以外は上記と同様にして、重合体粒子(P7)を得た。
<重合体粒子P8〜P10の調製方法>
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2リットルの4つ口フラスコに純水500部を入れ、30分間窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、10.0部の純水に溶解した過硫酸カリウム0.25部を一度に添加し、引き続き表2の配合表に示すモノマー乳化液(Mc8)を滴下した。つづいて、滴下終了後80℃にて1時間攪拌を継続して、表2の配合表に示すモノマー乳化液(Ms8)を滴下した。滴下終了後、80℃にて1時間攪拌を継続して目的とする樹脂分散液を得た。
さらに、得られた樹脂分散液を室温まで冷却した後、スプレードライヤーを用いて、入口温度170℃、出口温度75℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、樹脂粉末(P8)を得た。
モノマー乳化液(Mc8)およびモノマー乳化液(Ms8)に替えて、表2の配合表に示すモノマー乳化液(Mc9)および(Ms9)を用いたこと、またモノマー乳化液(Mc10)および(Ms10)を用いたこと以外は上記と同様にして、それぞれ重合体粒子(P9)および(P10)を得た。
<重合体粒子P11,P12の調製方法>
重合体粒子(P1)を得るときと同じ方法・組成で得られた樹脂分散液を室温まで冷却した後、粘度調整剤(ライオン(株)製 商品名:アーミン8D。式(1)においてアルキル基Yの平均炭素数8、VおよびXはいずれも水素原子の構造を有する。)を表3に示すように8.1部混合し、スプレードライヤーを用いて、入口温度170℃、出口温度75℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥して、粉末状の重合体粒子(P11)を得た。なお、粘度調整剤は表4に示す比率に従い、あらかじめ粘度調整剤をミネラルスピリットA(商品名、日本石油(株)製ミネラルターペン)に溶解させておき、それを水に分散した乳化液として樹脂分散液に混合した。さらに、アーミン8Dを8.1部ではなく16.1部混合した以外は重合体粒子(P11)と同様の方法で粉末状重合体粒子(P12)を得た。
<プラスチゾル組成物の粘度>
プラスチゾル組成物を25℃の恒温槽で3時間保温した後、EHD型粘度計((株)東京計器製、製品名:EHD型粘度計、ローター:特殊コーン(円錐角度3度))を用いて、回転数1rpmにおいて1分後の粘度(単位:mPa・s)を測定した。測定した粘度を下記の通り分類し、表中に示した。
◎:5000mPa・s未満
○:5000mPa・s以上8000mPa・s未満
△:8000mPa・s以上10000mPa・s未満
×:10000mPa・s以上
<成膜条件>
ナイフコーターを用いて、成膜後の膜厚0.5mmとなるようにガラス板(厚さ2mm)上にプラスチゾル組成物を塗布し、130℃で10分間ギヤーオーブンで加熱し成膜した。
<皮膜の非ブリードアウト性>
上記のようにして成膜して得た皮膜を室温で1週間放置後の皮膜外観を目視と触感にて評価した。
○:ブリード無し
×:ブリード有り
<皮膜の着色>
上記のようにして成膜して得た皮膜の着色の有無を目視で評価した。
実施例2〜39、比較例1〜18
それぞれ表5〜表17記載の組成及び配合とする以外は、実施例1と同様にしてプラスチゾル組成物を得た。得られたプラスチゾル組成物の粘度は、表5〜表17に示す。
実施例1〜6、比較例1について
表5に示す実施例1〜3は直鎖でアルキル基長の異なる第1級アミンを配合した例で、実施例4、5はそれぞれ直鎖の第3級アミンとアルキルジアミンを配合した例で、実施例6は複素6員環構造をもつアミン化合物を配合した例である。
これらの比較のため、アミン化合物を配合しない以外は実施例1〜6と同一の重合体粒子と可塑剤を用いた比較例1を示した。
これら実施例1〜6について比較例1と比較すると、アミン化合物の添加によるプラスチゾル組成物の粘度低下効果は非常に優れていた。
特に、比較例1と実施例3で比較すると、実施例3の場合には粘度低下率が81%と非常に優れていた。
実施例7〜10について
表6に示す実施例7〜10は、アミン化合物の添加量を変更させた場合のプラスチゾル組成物の粘度変化を示す例である。これらの実施例を比較例1と比較したところ、いずれの実施例においても優れた粘度低下効果を確認することができた。
実施例11〜12、比較例3〜4について
表7に示す実施例11〜12は可塑剤の種類を変更した例である。
実施例11は比較例3と、実施例12は比較例4とそれぞれ比較したところ、いずれの実施例においても可塑剤に左右されず、粘度低下効果が発現することを確認した。
実施例13〜14、比較例5〜6について
表8に示す実施例13、14はコアシェル構造をもつ重合体を用いた例である。実施例13は高いガラス転移温度である重合体粒子を用いた例で、実施例14は低いガラス転移温度である重合体粒子を用いた例である。いずれの実施例においても粘度低下効果が発現することを確認した。
実施例15、16について
表9に示す実施例は乾燥前の樹脂分散液に粘度調整剤を配合して水分及び粘度調整剤と同時に添加したミネラルスピリットを揮発させることによって、あらかじめ樹脂に粘度調整剤を含有させた例である。粘度調整剤の添加方法によらず、粘度低下効果が発現することを確認した。
実施例17、18、比較例7について
表10に示す実施例17、18はポリエーテル可塑剤と、アミンとしてポリオキシエチレンアルキルアミン又はイミダゾリン誘導体を用いた例である。
実施例17、18は比較例7と比較したところ、粘度低下効果が発現することを確認した。
実施例19〜24、比較例8について
表11に示す実施例19〜21はアルミニウムキレート化合物を配合した例で、実施例22、23はそれぞれチタンキレート化合物を配合した例で、実施例24はジルコニウムキレート化合物を配合した例である。
これらの比較のため、金属キレート化合物を配合しない以外は実施例19〜24と同一の重合体粒子と可塑剤を用いた比較例8を示した。
これら実施例19〜24について比較例8と比較すると、金属キレート化合物の添加によるプラスチゾル組成物の粘度低下効果は非常に優れていた。
特に、比較例8と実施例19で比較すると、実施例19の場合には粘度低下率が82%と非常に優れていた。
実施例25〜28について
表12に示す実施例25〜28は、金属キレート化合物の添加量を変更させた場合のプラスチゾル組成物の粘度変化を示す例である。これらの実施例を比較例8と比較したところ、いずれの実施例においても優れた粘度低下効果を確認することができた。
実施例29〜30、比較例10〜11について
表13に示す実施例29〜30は可塑剤の種類を変更した例である。
実施例29は比較例10と、実施例30は比較例11とそれぞれ比較したところ、いずれの実施例においても可塑剤に左右されず、粘度低下効果が発現することを確認した。
実施例31〜32、比較例12〜13について
表14に示す実施例31〜32は重合体粒子組成及び可塑剤の種類を変更した例である。
実施例31は比較例12と、実施例32は比較例13とそれぞれ比較したところ、いずれの実施例においても重合体粒子組成及び可塑剤の種類に左右されず、粘度低下効果が発現することを確認した。
実施例33〜35、比較例14〜16について
表15に示す実施例33〜35はコアシェル構造をもつ重合体を用いた例である。実施例33はアクリル系重合体のシェルがメチルメタクリレートのみで構成されている重合体粒子を用いた例で、実施例34、35はアクリル系重合体のシェルがメチルメタクリレートとメタクリル酸で構成されている重合体粒子を用いた例である。実施例33は比較例14と、実施例34は比較例15と、実施例35は比較例16とそれぞれ比較したところ、いずれの実施例においても重合体の構造及び組成及び可塑剤の種類に左右されず、粘度低下効果が発現することを確認した。
比較例17〜18について
表16に示す比較例17〜18は粘度調整剤としてヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルを用いた例である。添加剤の量を増加して5部としても、本発明の粘度調整剤と比較して粘度低下効果が低くなる結果となった。また、皮膜には黄色く着色がみられた。
実施例36〜39について
表17に示す実施例36〜39は粘度調整剤としてカルボン酸及びカルボン酸塩を使用した例である。本願発明は可塑剤の種類に左右されず、粘度低下効果が発現することを確認した。
なお、表中の略記は下記の通りである。
乳化剤:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
MMA:メチルメタクリレート
EMA:エチルメタクリレート
i−BMA:イソブチルメタクリレート
n−BMA:ノルマルブチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
ミネラルスピリットA:商品名。ミネラルターペン(日本石油(株)製)
アーミン8D:商品名。直鎖の第1級アミン(式(1)の構造:アルキル基Yの平均炭素数8、VおよびXはいずれも水素原子。ライオン(株)製)
アーミン12D:商品名。直鎖の第1級アミン(式(1)の構造:アルキル基Yの平均炭素数12、VおよびXはいずれも水素原子。ライオン(株)製)
アーミン18D:直鎖の第1級アミン(式(1)の構造:アルキル基Yの平均炭素数18、VおよびXはいずれも水素原子。ライオン(株)製)
アーミンM2O:商品名。直鎖の第3級アミン(式(1)の構造:アルキル基の炭素数が14〜18、ライオン(株)製)
デュオミンOX:商品名。直鎖のアルキルジアミン(式(2)の構造:アルキル基Yの平均炭素数18、ライオン(株)製)
アミート:ポリオキシエチレンアルキルアミン(式(3)の構造:アルキル基Yの平均炭素数13、m+nの平均数2、花王(株)製、商品名:アミート105)
ホモゲノール:イミダゾリン誘導体(式(4)の構造:Rは炭素数16のパルミトレイル基、Pは2−ヒドロキシエチル基、AはCl−。花王(株)製、商品名:ホモゲノールL−95)
DINP:ジイソノニルフタレート
DOP:ジ−2−エチルヘキシルフタレート
メザモール:商品名。アルキルスルホン酸フェニルエステル(バイエル(株)製)
P−700:ポリプロピレングリコール、平均分子量700(旭電化工業(株)製、商品名:アデカポリエーテルP−700)
ALCH:ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム(川研ファインケミカル(株)、商品名:ALCH)
アルミキレートA(W):トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム(川研ファインケミカル(株)、商品名:アルミキレートA(W))
アルミキレートD:モノアセチルアセトネート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム(川研ファインケミカル(株)、商品名:アルミキレートD)
TC−100:ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトネート)チタニウム(松本製薬工業(株)、商品名:TC−100)
TC−750:ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム(松本製薬工業(株)、商品名:TC−750)
ZC−540:トリ−n−ブトキシ・アセチルアセトネートジルコニウム(松本製薬工業(株)、商品名:ZC−540)
ATBC:クエン酸アセチルトリブチル(大日本インキ化学工業(株)製)
DBP:フタル酸ジイソブチル
CR−ED:商品名。縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリンエステル(阪本薬品工業(株)製)
CR−500:商品名。縮合リシノレイン酸ポリグリセリンエステル(阪本薬品工業(株)製)
得られた成形品は成形物の着色、可塑剤のブリードも見られず、人形型玩具として使用可能であった。
Claims (10)
- 化合物(A)〜(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するプラスチゾル組成物用粘度調整剤:
(A)下記(A1)〜(A3)に示される基からなる群から選ばれる少なくとも1つを有する化合物
(A1)カルボキシル基又はその塩、
(A2)アルコキシ基、
(A3)グリシジル基;
(B)アミン系化合物;
(C)金属キレート化合物。 - 前記化合物(B)が、アルキルアミン化合物(B1)である請求項1記載のプラスチゾル組成物用粘度調整剤。
- 前記金属キレート化合物(C)が、アルミニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物およびジルコニウムキレート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属キレート化合物である請求項1記載のプラスチゾル組成物用粘度調整剤。
- 請求項1〜6記載の何れか1項記載の粘度調整剤を含有するプラスチゾル組成物。
- アクリル系重合体を含む請求項7記載のプラスチゾル組成物。
- 請求項7記載のプラスチゾル組成物を用いて得られた被覆層を有する製品。
- 請求項7記載のプラスチゾル組成物を用いて成形された成形品。
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