JP3819062B2 - アクリルゾル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル重合体粒子、可塑剤および充填剤からなるアクリルプラスチゾル、およびこれに有機溶剤を加えたアクリルオルガノゾルに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、工業的に広く用いられているプラスチゾルは、ポリ塩化ビニルパウダーと充填剤を可塑剤に分散させて得られる塩ビゾルを主成分としたものであり、さらに、用途により顔料、熱安定剤、発泡剤、希釈剤等を含むものが一般的である。
このプラスチゾルは、自動車、カーペット、壁紙、床、塗料等の種々の分野で用いられている。
一方、環境問題の点から、焼却時に塩化水素ガスを発生させる塩ビゾル関連製品は、オゾン層の破壊、酸性雨の原因となるばかりでなく、焼却炉を著しく損傷させ、さらにダイオキシンという有害物質を発生するという深刻な問題点を有しており、各種商品分野で塩ビゾルに替わるプラスチゾルの出現が待たれていた。
【0003】
この要求に対し、焼却時に塩化水素ガスを発生しないプラスチゾルとして、特公昭55−16177号公報に、アクリルゾル組成物が提案されている。
これは、均一組成系のアクリルポリマー粒子を用いたものであり、ジオクチルフタレートのような汎用可塑剤を用いた場合、前記粒子への溶解性が高く、混合後数分間でアクリルゾルの粘度上昇が起きて塗工不能となるため、実用上使用することができない。また、アクリルゾルの塗工安定性および貯蔵安定性を向上するために、アクリルポリマーに溶解性の低いモノマー成分を共重合させたものが提案されているが、硬化塗膜表面にタックが生じるため、逆にタックを防止しようとすると硬化塗膜の可撓性が劣るという問題点を有している。
このように、従来のアクリルゾルでは、焼成時に塩化水素ガスを発生しないものの、塗工特性と数日間の貯蔵時に増粘しないといった貯蔵安定性等の実用性能を満足できないのが現状である。
【0004】
また、特開平6−25365号公報では、可塑剤と良好な相溶性を有するスチレンポリマーをコア層に、可塑剤と非相溶性を有するメチルメタクリレート、不飽和カルボン酸及び不飽和アルコールの共重合ポリマーをシェル層とすることを特徴としたプラスチゾルが開示されている。
しかしながら、このようにコア層とシェル層が、可塑剤との相溶性の異なる2種類のモノマー単位から構成された複層構造を有している場合には、ゾル貯蔵安定性および加熱成膜性という相反する要求を改良しているものの、高温度、短時間加熱というゲル化条件で形成した硬化塗膜は、本質的に可塑剤との相溶性が不足し、且つコア・シェル構造のポリマーの相溶性も不足するため、該ポリマー内で層分離現象を起こしやすく、脆くなる。
【0005】
これらの問題を解決する目的で、特開平6−220336号公報には、カルボキシル基含有エマルションを重合し、該カルボキシル基の10%以上をアルカリ金属で中和した後に粉体化し、ゾルとすることで、貯蔵安定性、初期粘度、および硬化塗膜硬度などが改良されたアクリルゾルを提案している。
しかしながら、中和により該エマルションの粘度が上昇するため、粉体化する際に生産性が低下し、アクリル重合体粒子の工業的な製造が困難となり、さらに、該重合体粒子中のカルボキシル基の中和度が高くなるほど加熱時の成膜性は低下する傾向にあり、上記公報で提案されている10%以上の中和度では、実際の製品生産ラインで要求される短時間での加熱成膜性は不良である。
また、アルカリ金属による中和度が10%以上と高いために、得られる硬化塗膜の耐水性が低下するという欠点があった。
さらに、上記公報に記載された重合体粒子の構造は均一系であり、ゾルの貯蔵安定性と加熱成膜性といった相反する性能を満足できない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、焼却時に塩化水素ガスを発生することなく、良好な貯蔵安定性、低粘度、塗工性といった良好なゾル物性を有し、かつ短時間での加熱成膜性に優れ、硬度、強度、耐水性等に優れた硬化塗膜を成膜できることを特徴とするプラスチゾルを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、アクリル重合体粒子表面に、カルボキシル基を含有し、該カルボキシル基の一部がアルカリ金属で中和されていること、アルカリ金属による中和度を9%以下とすることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明に至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明の特徴は、粒子表面に、酸価にして20〜180mgKOH/gのカルボキシル基を含有し、且つ該カルボキシル基のうち1〜9%がアルカリ金属により中和されているアクリル重合体粒子(A)、可塑剤(B)及び充填剤(C)を主成分とし、前記アクリル重合体粒子(A)100重量部に対して、前記可塑剤(B)が50〜500重量部の範囲内で使用されてなるアクリルゾルにある。
以下、本発明のアクリルゾルについて、詳細に説明する。
なお、以下記載の(メタ)アクリレートとは、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
【0009】
[(A)について]
本発明に用いるアクリル重合体粒子(A)は、該粒子表面に含まれるカルボキシル基の含有量が酸価にして20〜180mgKOH/gの範囲であり、かつ該カルボキシル基の1〜9%がアルカリ金属により中和されていることが必要である。
このように、(A)成分表面に含まれるカルボキシル基の含有量を、酸価にして20〜180mgKOH/gの範囲とすることにより、中和によるゾルの低粘度化、低チキソ性化を図ることができ、また、これを成膜して得られる硬化 塗膜の硬度、強度、耐水性等を改良することができるとともに安定したゾル粘度や加熱成膜性を付与することができる。
特に、(A)成分に含まれるカルボキシル基の含有量が酸価にして30〜90mgKOH/gの範囲である場合に、上記の各物性がバランスよく良好となり好ましい。
【0010】
上記(A)成分表面に含まれるカルボキシル基のアルカリ金属による中和度を1〜9%の範囲とすることにより、ゾルの低粘度化や低チキソ化を図ることができ、また、安定して耐水性に優れた硬化塗膜を得ることができる。
そのため、本発明のアクリルゾルを成膜して得られる硬化塗膜の硬度、強度、耐水性等を向上させることができ、さらにゾルの加熱成膜性が良好であり、長時間の加熱あるいは高温での加熱をする必要がなく、実用性に優れたアクリルゾルを得ることができる。
特に、(A)成分表面に含まれるカルボキシル基のアルカリ金属による中和度が3〜8%の範囲である場合には、ゾルの低粘度化と低チキソ化に加え、成膜して得られる膜の上記物性がバランスよく良好となり好ましい。
本発明のアクリル重合体粒子(A)表面のカルボキシル基を、一部アルカリ金属により中和するのに用いるアルカリ金属は、特に限定されず、リチウム、ナトリウム、カリウム;2価のベリリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム;3価のアルミニウム等、広く用いることが可能である。
特に、安価で入手が容易である点から、実用的にはカリウムやナトリウム等を用いることが好ましい。
アクリル重合体粒子(A)中のカルボキシル基をアルカリ金属により中和させる際には、アルカリ金属の水酸化物あるいはアンモニウム塩として用いることが好ましい。
【0011】
本発明に用いるアクリル重合体粒子(A)の粒子構造はまた、粒子中心部での構成比率が高いモノマー群(M1)と最外部での構成比率が高いモノマー群(Mn)(但し、nは2以上)の2種以上の共重合性モノマーからなり、粒子中心部から最外部に向けて共重合比率が多段階もしくは連続的に変化するグラディエント構造であることが好ましい。
【0012】
本発明に用いる中心部での組成比率が高いモノマー群(M1)は、可塑剤に対する相溶性が良好で、150℃以上の加熱により可塑剤が拡散し、容易にゲル化膜となり、かつ膜化後には可塑剤をブリードアウトせずに保持する成分である。
【0013】
このモノマー群(M1)の具体的な組成例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートから選ばれる、少なくとも1種のメタクリレートまたはアクリレートを50〜100重量%含有することが必要である。
ここで、50重量%より少ない場合には、重合体粒子(A)の粒子構造に関わらず、加熱成膜性が不良となり、硬化塗膜から可塑剤がブリードアウトしてしまう。
【0014】
モノマー群(M1)には、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸から選ばれる少なくとも1種の不飽和カルボン酸を10重量%以下の割合で、また、その他の上記成分と共重合可能なモノマーを40重量%以下の割合で配合させることができる。
ここで、該共重合可能なモノマーは、特に限定しないが、例えばヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、上記以外の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどが特に好ましい。
【0015】
本発明に用いる最外部での組成比率が高いモノマー群(Mn)は、可塑剤に対する相溶性が低く、室温において可塑剤がアクリル重合体粒子(A)内部に拡散することを長期間にわたり防ぐことができるため、アクリル重合体粒子(A)の粒子中心部に存在する相溶性の高い成分を保護する成分である。
また、モノマー群(Mn)には、カルボキシル基含有モノマーが存在しており、該カルボキシル基をアルカリ金属で中和させることにより、ゾルの低粘度化、低チキソ化、等に寄与し、また加熱による成膜後の膜の硬度および強度を向上させる成分である。
【0016】
このモノマー群(Mn)の具体的な組成例としては、ゾルの貯蔵安定性を良好とするためにメチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートから選ばれる少なくとも1種のメタクリレート40〜95重量%を必須成分として含み、また、アルカリ金属の中和による諸物性を改良するのに必要な量のカルボキシル基を確保するためにメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸から選ばれる少なくとも1種の不飽和カルボン酸を5〜20重量%含有させる必要がある。
さらに、上記メタクリレートや不飽和カルボン酸以外の共重合可能なモノマーを30重量%以下の割合で配合させることができる。
【0017】
ここで、該共重合可能なモノマーは、特に限定しないが、例えばヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、上記以外の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどが特に好ましい。
【0018】
[アクリル重合体粒子について]
本発明のアクリルゾルに用いられるアクリル重合体粒子(A)の分子量は、本発明のアクリルゾルの用途により異なるものの、重量平均分子量で10,000〜2,000,000が好ましい。
重量平均分子量が10,000より少ない場合には、得られたアクリル重合体粒子は可塑剤に溶解しやすくなる傾向にあり、重量平均分子量が2,000,000より大きい場合には、乳化重合でアクリル重合体粒子を製造することが難しくなる傾向にあり、また、得られるアクリルゾルの加熱成膜性が低下するため好ましくない。
【0019】
また、本発明で用いるアクリル重合体粒子(A)の一次粒子構造は、従来は相反す性能であった、室温での貯蔵安定性と加熱成膜時のゲル化の容易性を満足しつつ、硬化塗膜の可撓性とタックフリー性という相反する性能も満足させるために、少なくとも2つ以上のモノマー群の共重合比率が、該粒子(A)の中心部から最外部に向けて、成分組成を多段的もしくは連続的に変化するという粒子構造とする。
【0020】
アクリル重合体粒子(A)の粒子構造において、段数の多いほど、連続した共重合比率の変化が緩やかになり、加熱成膜性、得られる膜の可撓性、伸度が向上する傾向にある。そこで、アクリル重合体粒子(A)の粒子構造は、加熱成膜性、可撓性、伸度などが要求される用途に特に好ましい。
また、逆に該粒子(A)の粒子構造において段数が少ないものほど、ゾルの貯蔵安定性、粘度などに優れたゾルが得られるため、高温でのゾル貯蔵安定性などが要求される用途に特に好ましい。
【0021】
このように、本発明のアクリル重合体粒子(A)は、目的とする用途に応じて、該粒子(A)の粒子構造の段数を変化させ、最適な性能を与えるモルフォルジーを選び、用途性能の最適化を図ることができる。
【0022】
[アクリル重合体粒子(A)の製造方法]
本発明に用いるアクリル重合体粒子(A)の製造方法は、その粒子構造が中心部から最外部に向けて特定のモノマーからなる構成単位の構成比率が多段的もしくは連続的に変化する構造となるものであれば、特に限定されるものではないが、アクリル重合体粒子(A)を含有するエマルションは、例えばスプレードライ法、もしくは酸、又は塩析により凝固・乾燥させることによって、本発明のアクリル重合体粒子(A)が得られる。
【0023】
本発明に用いられるアクリル重合体粒子(A)においては、前述のようなグラディエント構造を形成させるために、少なくとも2群以上のモノマー群を用いて、これらの配合割合を多段的または連続的に変化させながら重合を行うことが好ましい。
【0024】
具体的には、アクリル重合体粒子(A)の多段的もしくは連続的に変化する構造を、乳化重合により得る場合には、セミバッチもしくは全量モノマー滴下で行い、滴下方法を多段階もしくは連続して、目的とするアクリル重合体粒子の一次粒子構造に併せて、各滴下モノマーの組成比を変更すればよい。
【0025】
多段階重合の具体例としては、モノマー群(M1)とモノマー群(M2)を用いて5段階に分けてモノマーを滴下して重合を行う際に、モノマー群(M1)/モノマー群(M2)の構成比率(重量比)を、
一段目:10/0〜9/1(重量比)
二段目:8/2〜7/3
三段目:6/4〜4/6
四段目:3/7〜2/8
五段目:1/9〜0/10
のようにして、五分割滴下を行えば、モノマー構成比率がモノマー群(M1)/モノマー群(M2)=56/44〜44/56(重量%)のグラディエント型一次粒子構造を有するアクリル重合体粒子(A)を得ることができる。
【0026】
多段階重合における各段階の滴下モノマー比率は、特に限定されず、重合体粒子の物性を考慮して任意に設定することができる。
なお、本発明において、アクリル重合体粒子(A)の構造を、滴下段数が2段の場合には特にコアシェル構造と呼ぶが、滴下段数が3段以上の場合と特に区別するものではなく、多段階滴下の一形態であるとみなし、多段階滴下に含める。
【0027】
アクリル重合体粒子(A)の体積平均粒子径(以下、粒子径と記す)は、加熱成膜性と貯蔵安定性のバランスの点から、一次粒子及び/又は一次粒子が凝集した二次粒子で0.1〜100μmの範囲であることが好ましい。また、ゾルの粘度と加熱成膜性が良好となることから、0.5〜40μmの範囲が特に好ましい。
この粒子径が大きすぎると得られるゾルは塗工性が不良となるなどの弊害を生じる。
また、加熱成膜時に可塑剤の拡散が不良となり、完全なゲル化が起こらないため、可撓性が著しく劣る硬化塗膜になる。また、粒子径が小さすぎると、アクリルゾルの粘度が高くなる、チキソ性が増加するなどの傾向にあり、また、貯蔵安定性が不十分となる傾向にもある。
従って、用途に応じた要求性能に合わせ、粒子径を最適化することが好ましい。
【0028】
また、粒子径の影響による各種性能不良を招かない範囲であれば、光沢や手触りといった性能付与のために、粒子径0.1〜100μmの範囲であるアクリル重合体粒子(A)を用いても良い。
【0029】
本発明のアクリル重合体粒子(A)において、モノマー群(M1)とモノマー群(M2)の最適な共重合比率は、混合するモノマーの選択により異なるが、いかなる粒子構造であっても、可塑剤との相溶性、本発明のアクリルゾルの貯蔵安定性、成膜性、等の目的性能を考慮すると、これら2群で製造する場合には、モノマー群(M1)/モノマー群(M2)=20/80〜80/20(重量%)である。
この該粒子(A)において、モノマー群(M1)の構成比率(重量比)が20重量%より少ないアクリルゾルの場合には、可塑剤によるポリマーの溶解が発生し、また、モノマー群(M2)の構成比率(重量比)が20重量%より少ないアクリルゾルの場合には、可塑剤によるポリマーの溶解が生じて、アクリルゾルの粘度上昇やゲル化による貯蔵安定性の不良が生じてしまう。
【0030】
本発明の(B)成分である可塑剤は、特に限定されないが、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート等のジアルキルフタレート系モノマー;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル系モノマーなどが挙げられる。
特に、反応可塑剤である、ジオクチルフタレートなどを用いることが、安価で良好なアクリルゾルを調製することができるため、好ましい。
また、塩ビゾル相当の難燃性を付与するためには、リン酸エステル系可塑剤を用いることが特に好ましい。
【0031】
本発明に用いる可塑剤(B)の使用量は、アクリル重合体粒子(A)100重量部に対して50〜500重量部の範囲であることが好ましい。
この可塑剤の使用量が(A)成分100重量部に対して50重量部より少ないと、アクリルゾルの粘度が高くなり塗工不能となる場合があり、500重量部より多いと、可塑剤の含有量が多くなりすぎて、ゲル化させた硬化塗膜は可塑剤がフリードアウトしやすくなる傾向にある。
【0032】
本発明の(C)成分である充填剤は、アクリルゾルを増量し、着色することにより隠蔽性を付与できる成分であれば特に限定しない。
この具体例としては、炭酸カルシウム、パライタ、クレー、コロイダルシリカ、マイカ粉、珪藻土、カオリン、タルク、ベントナイト、ガラス粉末、砂、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、二酸化チタン、カーボンブラック、金属石けん、染料、顔料などである。
【0033】
本発明のアクリルゾルには、前記(A)〜(C)成分の他に、希釈剤として例えば、ミネラルターペン等を加えてオルガノゾルとすることもできる。
更に目的に応じて、接着促進剤、レベリング材、タック防止剤、離型剤、消泡剤、発泡剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、香料等の各種添加剤を配合することができる。
【0034】
本発明のアクリルゾルは、各種用途で適用するには、例えば刷毛塗り法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、ナイフコーティング法、ロールコーティング法、カーテンフローコーティング法、静電コーティング法等で用いられるコーティング材料や、ディップモールディング法、キャストモールディング法、スラッシュモールディング法、ローテーショナルモールディング法等で用いられる成型用材料として用いることができる。
【0035】
本発明のアクリルゾルを用いてゲルを形成させて得られる硬化塗膜は、ゲル形成温度が100〜260℃の範囲、処理時間は30秒〜90分の範囲で形成することができるが、アクリルゾルの組成によりこの範囲の条件を適宜選択して行えばよい。
また、用途によっては、得られた硬化塗膜に、印刷、エンボス加工、発泡処理を行うこともできる。
【0036】
本発明のアクリルゾルは、塗料、インキ、接着剤、粘着剤、シーリング剤等に応用でき、雑貨、玩具、工業部品、電機部品等の成型品にも応用できる。
例えば紙や布等に適用すれば、壁紙、人工皮革、敷物、医療用シート、防水シート等を得ることができ、金属板に適用すれば防蝕性金属板とすることができる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。
但し、実施例中の部は重量部を示す。また、実施例中の評価基準は以下の通りである。
【0038】
[評価方法]
1.ゾル物性
1-1.ゾル配合:アクリル重合体粒子100部、ジオクチルフタレート80部、炭酸カルシウム80部、およびミネラルターペン10部を混合し、ホモディスパーにて撹拌(3000rpm)した。
1-2.初期粘度:E型粘度計を用いて25℃、5rpmで測定した。
○:<5000cps
△:5000〜10000cps
×:>10000cps
1-3.貯蔵安定性:(7日後の粘度)/(初期粘度)の値に基づいて、以下のように評価した。
○:<2.0
△:2.0〜3.0
×:>3.0
1-4.TI値:E型粘度計を用いて25℃で、5rpmと50rpmで粘度を測定し、(5rpmで測定した粘度)/(50rpmで測定した粘度)の値に基づいて、以下のように評価した。
○:<1.5
△:1.5〜2.0
×:>2.0
【0039】
2.塗膜物性
2-1.塗膜の形成:塗膜の形成を下記記載の条件で行った。
塗布厚み 100μm
基材 ブリキ板
塗布方法 ナイフコーター
成膜条件 任意の温度で60秒
2-2.成膜性:60秒で均一な連続したゲル化膜を形成しえる温度を評価した。
○:200℃
△:220℃
×:>220℃
2-3.可撓性:硬化塗膜を180度折り曲げて、クラックの発生状況により評価した。
○:全く発生しない
△:部分的に発生する
×:折り曲げ部が完全に割れる
2-4.タック:硬化塗膜の表面同士を重ね、500g/cm2の荷重をかけ、80℃にて1時間加熱し、硬化塗膜の融着の程度を評価した。
○:まったく融着なし
△:部分的に融着
×:全面が融着
2-5.ブリード:硬化塗膜を10℃で1週間放置し、該塗膜表面に可塑剤の染みだしが有るか無いかを評価した。
○:まったく無し
△:やや有り
×:あきらかにしみ出す
【0040】
[実施例1]
〈成分(M1)の調製〉
メチルメタクリレート120部、エチルメタクリレート300部、n−ブチルアクリレート180部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(花王(株)製、商品名:エマルゲン905)12部を混合し、モノマー群(M1)を調製した。
〈成分(M2)の調製〉
メチルメタクリレート810部、メタクリル酸90部、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王(株)製、商品名:ペレックスOTP)12部を混合し、モノマー群(M2)を調製した。
〈アクリル重合体(A1)を含むエマルションの製造〉
5リットルの4つ口フラスコに、純水2890部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(花王(株)製、商品名:エマルゲン910)30部、過硫酸カリウム1.8部を投入し、窒素雰囲気中、130rpmで撹拌しながら70℃に昇温した。
次に、予め調製した成分(M1)の5/12量と成分(M2)の1/12量を混合したモノマー混合物を、昇温した前記フラスコ中に30分かけて滴下し、30分保持して第1段目の乳化重合を行った。
次に、第1段目に重合した粒子をシード粒子として、表1に示す条件で第2段目〜第6段目まで滴下・保持を繰り返して乳化重合を行い、その後1時間保持した。
さらに、80℃に昇温し、1時間保持した後、乳化重合を終了し、乳白色エマルション(固形分35.0%)を得た。
【0041】
【表1】
Figure 0003819062
【0042】
〈アクリル重合体粒子(A1)の製造〉
上記エマルション4000部を5リットルの4つ口フラスコに入れ、室温にて280rpmで撹拌した。そこへ、10%水酸化カリウム水溶液42.3部と純水600部の混合物を2時間かけて滴下し、引き続き3時間撹拌した。
この撹拌中、中和エマルションの電気伝導度及びpHの変化を経時的に測定したが、3時間後には両者とも定常的な値を示していた。
この中和操作により、中和度8%(計算値)のアルカリ金属中和エマルションが得られた。
このアルカリ金属中和エマルションを、スプレードライヤー(大川原化工機社製;商品名L−8型)を用いて、チャンバー入口温度150℃、チャンバー出口温度100℃、アトマイザー回転数35000rpmに設定し、噴霧乾燥を行い粉体化し、平均粒子径25.3μmのアクリル重合体粒子(A1)を得た。
そこで、この得られたアクリル重合体粒子(A1)を電子顕微鏡にて観察した結果、1μm以下の一次粒子が軽度に凝集し、25μm前後の球状の二次粒子を形成していた。
【0043】
〈アクリルゾルの調製〉
得られたアクリル重合体粒子(A1)100部に、ジオクチルフタレート80部、炭酸カルシウム(竹原化学工業(株)製、商品名:ネオライトSP)80部、ミネラルターペン10部を加え、ホモディスパーにて3000rpmで撹拌し、アクリルゾルを得た。
このゾルの物性評価をした結果、初期粘度は5rpmの条件では4500cps、50rpmの条件では3840cpsであり、TI値は1.17であった。また、貯蔵安定性は、室温で1週間経た後の粘度が初期粘度の1.3倍以内であり、実用上充分なものであった。
このゾルをブリキ板にナイフコーターを用いて100μm厚に塗布し、200℃で60秒加熱してゲル化させ、均一な硬化塗膜を形成した。
この硬化塗膜は10℃で1週間保持しても可塑剤のブリードアウトはなく、可塑剤との相溶性は良好であった。
また、この硬化塗膜は180度折り曲げてもクラックの発生はなく、十分な可撓性を有していた。また、塗膜の表面同士を重ねて500g/cmの荷重を加えて80℃に1時間保持して耐ブロッキング性を試験したところ、硬化塗膜のブロッキングは全く見られなかった。
[実施例2〜4、比較例1〜4]
表2に示す組成比で行う以外は、実施例1と同じ方法でアクリル重合体粒子を得た。得られた該粒子の評価結果は、表2に示す。
【0044】
【表2】
Figure 0003819062
【0045】
表中の略号は、以下の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
EMA:エチルメタクリレート
nBA:n−ブチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
得られたアクリル重合体粒子を用いて、実施例1と同じ方法でアクリルゾルを調製し、また、これを用いて実施例1と同じ方法で硬化塗膜を作成した。これらの評価結果は、表3に示す。
【0046】
【表3】
Figure 0003819062
実施例2は、ポリマー組成は実施例1と同じだが、中和度が異なる場合である。
このように、中和度が9%以下であればゾルおよび硬化塗膜の物性は良好であることががわかる。
実施例3は、成分(M2)の酸価が実施例1よりも高いが、酸価が180mgKOH/g以内であるため、ゾルおよび硬化塗膜の物性は良好である。
実施例4は、成分(M2)の酸価が実施例1よりも高く、また成分(M1)/(M2)の構成比率が実施例1と異なるが、酸価が180mgKOH/g以内であるため、ゾルおよび塗の物性は良好である。
【0047】
比較例1および比較例2は、(M2)の酸価は実施例1と同様であるが、その中和度を変えた例である。その結果、比較例1では中和度が15%と高く、ゾル物性は良好であるが、成膜性が悪く、実用に耐えうる硬化塗膜が得られなかった。
また、比較例2は逆に中和度していない場合であるため、ゾル粘度が高くなり、得られるゾルのチキソ性も上がってしまい、成膜性は短時間加熱で成膜するので良好であるが、得られた硬化塗膜の鉛筆硬度は2Hと低い。
比較例3および比較例4は、成分(M2)の酸価を変えた場合である。
比較例3では、成分(M2)の酸価が12mgKOH/gしかないため、中和度を9%まで上げてもゾルおよび硬化塗膜物性ともに不良であった。
また、比較例4は、(M2)の酸価を210mgKOH/gまで上げた場合であるが、加熱成膜性が悪く、実用に耐えうる硬化塗膜は得られなかった。
【0048】
【発明の効果】
このように、本発明のアクリルゾルは、焼却時に塩化水素ガスを発生することなく、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレートなどの安価で工業的に有利な可塑剤を用いて、ゾルの粘度、貯蔵安定性、低チキソ性、加熱成膜性などに優れ、かつ硬化塗膜の硬度、可撓性、タックフリー性、非ブリードアウト性などに優れた、実用に耐えうるプラスチゾル及びオルガノゾルを提供することができ、その工業的意義は著大である。

Claims (1)

  1. 粒子表面に、酸価にして20〜180mgKOH/gのカルボキシル基を含有し、且つ該カルボキシル基のうち1〜9%がアルカリ金属により中和されているアクリル重合体粒子(A)、可塑剤(B)及び充填剤(C)を主成分とし、前記アクリル重合体粒子(A)100重量部に対して、前記可塑剤(B)が50〜500重量部の範囲内で使用されてなるアクリルゾル。
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