JP3676572B2 - 塩化ビニリデン系エマルジョン及び下塗り用水性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化ビニリデン系エマルジョン、並びに、それを使用した上塗り塗料及び基材との密着性が良好な下塗り用水性樹脂塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、土木構造材、一般建築物、自動車、家具等に使用されるセメントコンクリート、セメントモルタルスレート等の窯業材の各種構造材を塗装する際には、構造材と塗料との密着性を高めるために、予め構造物にシーラー(下塗り塗料)を塗布、乾燥したのち、上塗り塗料を塗布する方法が採られている。このようなシーラーとしては、ウレタン系、アクリル系、塩化ビニル系等の溶剤型シーラーが使用されているが、環境問題、臭気、危険性の問題点から水性化が進んでいる。
【0003】
密着性に優れたシーラーとしては、塩素含有エマルジョンが一般に使用されている。特開平2−91140号公報には、有機溶剤を使用して塩素化ポリオレフィンを溶解したのち、最終的に減圧蒸留して溶剤を回収することが行われている。しかし、溶剤を完全には回収できないため、溶剤が残留して臭気が残り、また、工程が多いためコストも高くなる。
【0004】
特開平2−4623号公報には、溶剤を含まない塩素化ポリオレフィンの水性分散液の製法が開示されている。これは、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)を共存させて、塩素化ポリオレフィンの熱分解を抑制したものである。しかし、EVAを多量に含有するため、接着性が低下し、シーラー用には適さない。
【0005】
ところで、塩化ビニルを主体とする合成樹脂(塩化ビニル系樹脂)エマルジョンについては、塩化ビニル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が高いため、成膜性に乏しく、柔軟性に劣るという欠点がある。特開平9−12656号公報では、塩化ビニル系樹脂エマルジョンでのコア/シェル構造が提案されている。このものは、成膜性においては向上しているが、粒子表面の塩素量が少なく、充分な密着性が得られていない。また、基材に対する密着性も不充分である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、上塗り塗料及び基材との密着性が良好な水性エマルジョンを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため研究を重ねた結果、塩化ビニル系樹脂をシードとして、1種以上の(メタ)アクリレート単量体と塩化ビニリデンとを乳化重合して得られる塩化ビニリデン系エマルジョンからなる組成物を使用することによって、粒子表面に塩素を存在させて上塗り塗料との密着性を向上させ、また、乳化重合により新粒子を生成させて基材への密着性を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、塩化ビニル系樹脂からなる(A)成分をシードとして、単量体成分(B)を乳化重合して得られる塩化ビニリデン系エマルジョンであって、上記単量体成分(B)は、1種以上の(メタ)アクリレート単量体及び塩化ビニリデンからなる塩化ビニリデン系エマルジョン、並びに、上記塩化ビニリデン系エマルジョンからなる下塗り用水性樹脂組成物である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳述する。
本発明は、(A)成分の存在下に、これをシードとして、単量体成分(B)を乳化重合して得られる塩化ビニリデン系エマルジョンである。上記(A)成分は、塩化ビニル系樹脂からなるものである。
【0010】
上記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単量体の単独重合により得られる塩化ビニル単独重合樹脂、塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体との共重合樹脂、又は、塩化ビニル単量体の他の樹脂へのグラフト共重合樹脂等が挙げられる。好ましくは、塩化ビニル単量体の単独重合で得られる塩化ビニル単独樹脂である。
【0011】
上記重合方法としては、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等のいずれかの方法であってよい。上記塩化ビニル系樹脂の形状としては、粉末状、又は、媒体に分散されたスラリー状のいずれかであってもよい。好ましくは、乳化重合によって得られる、媒体として純水に分散された状態のエマルジョンである。
【0012】
上記乳化重合としては、一般に用いられる重合方法が使用でき、例えば、アニオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を乳化剤として使用し、水溶性過酸化物、水溶性過酸化物と水溶性還元剤との組み合わせ、又は、油溶性過酸化物との組み合わせを重合開始剤として使用し、所望により他の重合助剤の存在下、水性媒体中で行う方法が挙げられる。上記乳化重合は、塩化ビニル単量体を重合して平均粒子径が0.1〜0.5μmの微小粒子を生成する乳化重合、及び、予め種粒子として調製した塩化ビニル樹脂の存在下に乳化重合を行うことにより、種粒子を核として肥大させて0.5〜2μmの比較的大きな粒子を生成する乳化重合の双方を意味する。
本発明で用いる塩化ビニル系樹脂としては、粒子径0.1〜0.5μmのものが好ましく、より好ましくは、0.15〜0.3μmである。
【0013】
上記単量体成分(B)は、1種以上の(メタ)アクリレート単量体及び塩化ビニリデンからなるものである。
上記(メタ)アクリレート単量体としては、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートであってよく、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、i−ノニルアクリレート、n−デシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等の単官能アクリレート及びそれらのメタアクリレート;エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の2官能アクリレート及びそれらのメタアクリレート;並びに、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレート及びそれらのメタアクリレート等が挙げられ、これらから選択される1種以上を用いることができる。
【0014】
上記単量体成分(B)としては、エマルジョンの機械的安定性を向上させるために、更に、カルボキシル基含有単量体を含むものであることが好ましい。上記カルボキシル基含有単量体としては、1以上のカルボキシル基を含む単量体であれば特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0015】
本発明の塩化ビニリデン系エマルジョンは、上記塩化ビニル系樹脂からなる(A)成分をシードとして、上記単量体成分(B)を乳化重合して得られるものである。上記(A)成分をシードとして上記単量体成分(B)を乳化重合することによって、上記(A)成分をシードとする大粒子と単量体成分(B)のみからなる小さな新粒子を生成させることができる。
【0016】
上記(A)成分を構成する塩化ビニル系樹脂と上記単量体成分(B)に使用される塩化ビニリデンの重量比(〔塩化ビニル系樹脂〕/〔塩化ビニリデン〕)は、100:25〜100:600が好ましい。より好ましくは、100:100〜100:300である。100:25を超えると、シェルの塩素量が低下し、密着性が低下する。100:600未満では、エマルジョンの着色性が低下する場合がある。
【0017】
上記(A)成分を構成する塩化ビニル系樹脂の使用量としては、塩化ビニル系樹脂及び単量体成分(B)の合計100重量部に対して、10重量部〜50重量部が好ましい。上記単量体成分(B)とは、(メタ)アクリレート単量体、塩化ビニリデン、及び、該当する場合にはカルボキシル基含有単量体をいう。より好ましくは、15重量部〜35重量部であり、更に好ましくは、20重量部〜30重量部である。10重量部未満では、新粒子が多くなり、着色性が低下し、重合安定性が低下することがある。50重量部を超えると、新粒子の生成が少なく、基材への密着性が低下することがある。
【0018】
上記単量体成分(B)に使用される塩化ビニリデンの使用量としては、塩化ビニル系樹脂及び単量体成分(B)の合計100重量部に対して、10重量部〜60重量部が好ましい。より好ましくは、15重量部〜50重量部であり、更に好ましくは、20重量部〜45重量部である。10重量部未満では、粒子表面に存在する塩素量が少なくなり、上塗り塗料との密着性が低下することがある。60重量部を超えると、塩化ビニリデンの結晶性により成膜性が低下することがある。
【0019】
上記単量体成分(B)に使用される(メタ)アクリレート単量体の使用量としては、塩化ビニル系樹脂及び単量体成分(B)の合計100重量部に対して、 0.01〜70重量部が好ましい。より好ましくは、15重量部〜60重量部である。0.01重量部未満では、カルボキシル基含有単量体が少なく機械的安定性が低下する。70重量部を超えると、塩化ビニル樹脂及び塩化ビニリデン量が少なく、密着性が低下する。
【0020】
上記カルボキシル基含有単量体は、塩化ビニル系樹脂及び単量体成分(B)の合計100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましい。5重量部を超えると、エマルジョンが増粘し、重合安定性が低下することがある。0.01未満では、機械的安定性が低下し、長期攪拌又は高速攪拌により凝集物が生成することがある。
【0021】
上記乳化重合の方法としては特に限定されず、例えば、予め単量体成分(B)と乳化剤をよく混合した乳化液、及び、重合開始剤を、上記塩化ビニル系樹脂からなる(A)成分に対して、滴下する方法等が挙げられる。
上記重合温度は、30℃〜90℃程度で行えばよく、反応時間は、通常2〜20時間程度とすればよい。
【0022】
上記乳化剤としては、通常の乳化重合に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、アニオン性及びカチオン性のイオン性界面活性剤、並びに、非イオン性の界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
上記アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルコールの硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソオクチルベンゼンスルホン酸塩等のアルキルアリルスルホン酸塩;ホルマリン縮合ナフタレンスルホン酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等がある。上記カチオン性界面活性剤としては、イミダゾリンラウレート、アンモニウムハイドロオキサイド、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等が挙げられる。
【0024】
本発明においては、更に、乳化剤として、1分子中に重合性二重結合を有する反応性界面活性剤を用いることができる。上記反応性乳化剤の具体例としては、RMA−506、MA−30、MA−50、MA−100、MA150、MAG−130MA、(以上、日本乳化剤社製)、アクアロンRN−20、RN−30、RN−50、アクアロンHS−10、HS−20、HS−1025(以上、第一工業製薬社製)、アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40、SE−10N(以上、旭電化工業社製)等が挙げられる。
上記乳化剤は、単独又は2種類以上組み合わせて使用できる。
【0025】
上記乳化剤の使用量としては、上記単量体成分(B)100重量部に対して、1〜10重量部の範囲が好ましい。上記乳化剤の役割は、一般的に、重合の場の提供、生成した重合体エマルジョンの安定化、並びに、エマルジョンの機械的安定性及び化学的安定性の向上であるので、この役割を達成するために充分な量の乳化剤を存在させることとなる。10重量部を超えると、重合して得られるエマルジョンは塗膜の耐水性が悪くなることがある。1重量部未満では、重合安定性が悪く、得られるエマルジョンが不安定になり凝集体を生じることがある。従って、上記乳化剤量は、上記範囲内で目的に応じた使用量とすることが好ましい。
【0026】
上記重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル、過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジブチルパーオキサンド、アゾビスアミジノプロパン塩酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、クミルパーオキシネオデカノエート、クメンハイドロパーオキサイド等が例示される。
【0027】
本発明の乳化重合においては、更に必要に応じて、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、L−アスコルビン酸、糖類、アミン類等の還元剤;銅イオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン等遷移金属イオン、又は、上記遷移金属イオンとエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のキレート化剤とのキレート化合物を併用したレドックス開始剤も使用することができる。
【0028】
上記重合開始剤の使用量は、単量体成分(B)100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましい。0.01重量部未満では、重合が進行しなくなることがある。10重量部を超えると、得られるエマルジョンの分子量低下に伴って、塗膜形成時も耐水性等の低下が起こることがある。
【0029】
上記エマルジョンの機械的安定性、化学的安定性、凍結安定性、及び、重合安定性を向上させるため、乳化重合の開始時又は終了時に塩基性物質を加えて、pHを5以上になるように調整することが好ましい。より好ましくは、pH6〜10である。上記中和に使用する塩基性物質としては、苛性ソーダ、苛性カリ、アンモニア、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0030】
本発明の塩化ビニリデン系エマルジョンは、塩化ビニル樹脂からなる(A)成分をシードとして、(メタ)アクリレート単量体1種以上と塩化ビニリデンからなる単量体成分(B)を乳化重合して得られるものである。上記シードを使用せず、(メタ)アクリレート単量体1種以上と塩化ビニリデンからなる単量体成分(B)のみを乳化重合すると、粒子径の小さいものができるが、粒子の表面積が大きくなり、脱塩酸により着色性が低下する。本発明においては、シードを使用し、かつ、新粒子を生成することにより、大粒子と小粒子が生成され、着色性の低下が少なく、粒子表面に塩素を存在させることができる。粒子表面に塩素を存在させることにより上塗り塗料との密着性を向上させ、新たに生成した新粒子により基材への密着性を向上させることができる。
【0031】
本発明の塩化ビニリデン系エマルジョンは、上述の塩化ビニリデン系エマルジョンから選択された異なるガラス転移温度(Tg)を持つ2種以上の塩化ビニリデン系エマルジョンをブレンドしてなるものであることが、性能バランスを向上させることができるので好ましい。
【0032】
上記2種以上をブレンドした塩化ビニリデン系エマルジョンとしては、Tgが20〜60℃の高Tgエマルジョンから選択される1種以上と、Tgが10℃〜−25℃の低Tgエマルジョンから選択される1種以上を組み合わせて使用することが好ましい。上記低Tgエマルジョンをブレンドすることによって、上塗り塗料との初期密着性がよくなり、また、高Tgエマルジョンをブレンドすることによって、上塗り塗料と温水フクレ性を向上することができる。
上記2種の塩化ビニリデン系エマルジョンの配合比としては特に限定されず、目的とする性能に合わせて選択することができる。
【0033】
本発明の塩化ビニリデン系エマルジョンは、常法に従って、水、成膜助剤等を添加し、適当な固形分の樹脂組成物とすることによって、土木構造材、一般建築物、自動車、家具等に使用されるセメントコンクリート、セメントモルタルスレート等の各種構造材の下塗り塗料として好適に使用することができる。
【0034】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の合成例及び実施例において、「部」は「重量部」を表すものとする。
【0035】
(合成例1)エマルジョン−1の合成
純水525部、塩化ビニル樹脂225部、重亜硫酸ナトリウム1.55部、硫酸第1鉄0.18部を耐圧反応機中に仕込み、攪拌しながら55℃に調節する。別のモノマー乳化タンクに2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)95部、メチルメタクリレート(MMA)542部、塩化ビニリデン(VdC)245部、アクリル酸(AA)9部、純水639.8部にラウリル硫酸ナトリウム10.5部を入れ、攪拌して乳化液を得た。得られた乳化液と過硫酸アンモニウム1.22部を、6時間にわたり内温を55℃に維持し、一定速度で耐圧反応機中に連続追加した。追加終了後、2時間55℃を維持し反応を終えた。冷却後、アンモニアにて中和を行い、これにより固形分47重量%のエマルジョンを得た。エマルジョンの粒子径をナイコンプにより測定したところ、286nmと80nmの二山分布のものであった。
【0036】
(合成例2)エマルジョン−2
表1に示した原料を使用し、合成例1と同様に重合を行った。得られたエマルジョンの粒子径は282nmと64nmの二山分布のものであった。
【0037】
(合成例3)エマルジョン−3
表1に示した原料を使用し、合成例1と同様に重合を行った。得られたエマルジョンは粒子径は299nmと89nmの二山分布のものであった。
【0038】
(比較合成例1〜2)エマルジョン−4、エマルジョン−5
表1に示した原料を使用し、合成例1と同様に重合を行った。なお、カルボキシル基含有単量体として、アクリル酸(AA)及びメタクリル酸(MA)を使用した。得られたエマルジョンの粒子径は、それぞれ300nm(エマルジョン−4)、308nm(エマルジョン−5)の単分散のものであった。
【0039】
(比較合成例3)エマルジョン−6
表1に示した原料を使用し、合成例1と同様に重合を行った。得られたエマルジョンの粒子径は248nmと73nmの二山分布のものであった。
【0040】
(比較合成例4)エマルジョン−7
表1に示した原料を使用し、合成例1と同様に重合を行った。得られたエマルジョンの粒子径は290nmと85nmの二山分布のものであった。
【0041】
(比較合成例5)エマルジョン−8
表1に示した原料を使用し、合成例1と同様に重合を行った。重合中にスケールが多く発生し、良好なエマルジョンは得られなかった。
【0042】
合成例1〜3及び比較合成例1〜5で得られたエマルジョンの機械的安定性をマローン試験法によって評価した。結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
(実施例1)
合成例1で得られたエマルジョン−1を使用し、100重量部に対し成膜助剤としてテキサノール(商品名CS−12;チッソ社製)を11重量部添加し、純水で固形分20%に調整した。このサンプルを使用し、フレキルブル板に塗布量100g/m2 を刷毛塗りした。常温で24時間乾燥を行い、試験片1とした。試験片1(常温24時間乾燥品)の上に塗布量1.2Kg/m2 で水性弾性塗料を塗布し、常温で7日乾燥し試験片2とした。
試験片1(常温24時間乾燥品)の上に塗布量2.2Kg/m2 で水性アクリルゴム系高弾性塗料を塗布し、常温で7日乾燥し試験片3とした。
【0045】
作成した試験片1、試験片2及び試験片3について、基材密着性の評価、水性弾性塗料を使用した一次密着性及び二次密着性の評価、並びに、水性アクリルゴム系高弾性塗料を使用した一次密着性及びブリスター性の評価について下記評価方法で試験を行った。結果を表2に示した。基材密着性、水性弾性塗料を使用した一次密着性及び二次密着性、並びに、水性アクリルゴム系高弾性塗料を使用した一次密着性及びブリスター性が良好であった。
【0046】
評価方法
1.(密着性試験)基材密着性、一次密着性
JIS K 5400に準拠して、塗膜の5mm幅にXカットを行い、剥離用セロハンテープ(ニチバンセロハンテープ)をXカット部に貼り付け、テープを剥がし、はがれ状態を目視で評価した。◎:剥離なし、○:一部剥離、△:Xカット部の大部分に剥離がある、×:テープをはったところが剥離の4段階で評価を行った。
【0047】
(塗膜評価1)二次密着性
上塗り後、常温で7日乾燥したサンプル(試験片2)を使用し、養生期間中に溶剤系塗料を使用してサイドシール、バックシールを行った。40℃温水に完全浸積させ、4時間放置後、温水より取り出し、塗膜表面の水分を拭き取った。一次密着性試験と同様に評価し、二次密着性評価とした。
【0048】
(塗膜評価2)ブリスター試験
上塗り後、常温7日乾燥したサンプル(試験片3)を使用した。サイドシール、バックシールは行わずに、40℃温水に24時間完全浸積を行い、上塗り塗料のフクレを目視で評価した。◎:フクレなし。○:一部小さいフクレが認められる。△:小さいフクレが前面に認められる。×:フクレが前面に認められるの4段階で評価を行った。
【0049】
(実施例2)
合成例2で得られたエマルジョン−2を使用した以外は実施例1と同様に評価を行った。結果は表2に示した。水性弾性塗料を使用した一次密着性及び二次密着性の評価、並びに、水性アクリルゴム系高弾性塗料を使用した一次密着性及びブリスター性が良好であった。
【0050】
(実施例3)
合成例3で得られたエマルジョン−3を使用した以外は実施例1と同様に評価を行った。結果は表2に示した。水性弾性塗料を使用した一次密着性及び二次密着性の評価、並びに、水性アクリルゴム系高弾性塗料を使用した一次密着性及びブリスター性が良好であった。
【0051】
(実施例4)
実施例1及び2で使用したエマルジョン−1及び2を使用し、表2に示したようにエマルジョン−1/エマルジョン−2=50/50のブレンド比で混合した。得られたエマルジョンを使用し、100重量部に対し成膜助剤を11重量部添加し、純水で固形分20%に調整した。このサンプルを使い、試験片3を作成し、水性アクリルゴム系高弾性塗料を使用し、一次密着性及びブリスター性について、上記評価方法で評価した。結果は表2に示す。
水性アクリルゴム系高弾性塗料を使用した一次密着性及びブリスター性についてバランスが向上した。
【0052】
(実施例5)
表2に示されるエマルジョンを使用し、表2に示されるブレンド比で混合した。得られたエマルジョンを使用し、実施例4と同様に評価を行った。結果は表2に示す。水性アクリルゴム系高弾性塗料を使用した一次密着性及びブリスター性についてバランスが向上した。
【0053】
【表2】
【0054】
(比較例1)
比較合成例1で得られたエマルジョン−4を使用した以外は実施例1と同様に評価を行った。結果は表3に示した。小粒子の生成がないため、密着性が低下した。
【0055】
(比較例2)
比較合成例2で得られたエマルジョン−5を使用した以外は実施例1と同様に評価を行った。結果は表3に示した。小粒子の生成がないため、密着性低下した。
【0056】
(比較例3及び4)
比較合成例3及び4で得られたエマルジョンを使用した以外は実施例1と同様に評価を行った。結果は表3に示した。比較例3は、塩化ビニリデンが多いため、結晶性が高くなり、成膜性低下により2次密着性及びブリスター性が低下した。比較例4はTgが高いため、水性アクリルゴム系高弾性塗料との密着性が低下した。
【0057】
(比較例5〜7)
表3に示されるエマルジョンを使用し、表3に示されるブレンド比で混合した。得られたエマルジョンを使用し、実施例4と同様に評価を行った。結果は表3に示した。水性アクリルゴム系高弾性塗料を使用した一次密着性及びブリスター性についてバランスが向上するものの不充分であった。
【0058】
【表3】
【0059】
実施例1〜5及び比較例1〜7より、本発明の塩化ビニリデン系エマルジョンは、粒子表面に塩素を存在させることにより水性弾性塗料との密着性を向上させ、乳化重合により新粒子を生成させて基材への密着性を向上させることができることがわかった。更に、Tgの違うエマルジョンをブレンドすることにより、水性アクリルゴム系高弾性塗料に対しても、一次密着性とブリスター性の性能レベルを向上させることができた。
【0060】
【発明の効果】
本発明の塩化ビニリデン系エマルジョンは、上述の構成よりなるので、粒子表面に塩素を存在させることにより上塗り塗料との密着性を向上させ、乳化重合により新粒子を生成させ基材への密着性を向上させることができる。
Claims (5)
- 塩化ビニル系樹脂からなる(A)成分をシードとして、単量体成分(B)を乳化重合して得られる塩化ビニリデン系エマルジョンであって、
前記単量体成分(B)は、1種以上の(メタ)アクリレート単量体、塩化ビニリデン及びカルボキシル基含有単量体からなり、
前記塩化ビニル系樹脂と前記塩化ビニリデンとの重量比は、100:100〜100:600であり、
前記塩化ビニル系樹脂の使用量は、前記塩化ビニル系樹脂及び前記単量体成分(B)の合計100重量部に対して、10〜35重量部であり、
前記塩化ビニリデンの使用量は、前記塩化ビニル系樹脂及び前記単量体成分(B)の合計100重量部に対して、10〜60重量部であり、
前記(メタ)アクリレート単量体の使用量は、前記塩化ビニル系樹脂及び前記単量体成分(B)の合計100重量部に対して、0.01〜70重量部であり、
前記カルボキシル基含有単量体の使用量は、前記塩化ビニル系樹脂及び前記単量体成分(B)の合計100重量部に対して、0.01〜5重量部である
ことを特徴とする塩化ビニリデン系エマルジョン。 - (A)成分は、塩化ビニル単量体を乳化重合した重合体エマルジョン、又は、塩化ビニル単量体及び前記塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体を乳化重合した共重合体エマルジョンである請求項1記載の塩化ビニリデン系エマルジョン。
- 異なるガラス転移温度を持つ請求項1又は2記載の塩化ビニリデン系エマルジョンをブレンドしてなることを特徴とする塩化ビニリデン系エマルジョン。
- ガラス転移温度が20〜60℃の請求項1又は2記載の塩化ビニリデン系エマルジョンと、ガラス転移温度が10℃〜−25℃の請求項1又は2記載の塩化ビニリデン系エマルジョンとをブレンドしてなるものである請求項3記載の塩化ビニリデン系エマルジョン。
- 請求項1、2、3又は4記載の塩化ビニリデン系エマルジョンからなることを特徴とする下塗り用水性樹脂組成物。
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