JP2004099823A - 水性被覆組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香族ビニル系単量体(a−1)単位20〜80質量%、炭素数が1〜4個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a−2)単位20〜80質量%、その他のビニル系単量体(a−3)単位0〜60質量%からなる共重合体を有するコア層と、芳香族ビニル系単量体(b−1)単位20〜80質量%、炭素数が6〜14個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−2)単位5〜40質量%、その他のビニル系単量体(b−3)単位0〜75質量%からなる共重合体を有するシェル層から構成され、コア層/シェル層の質量比が30/50〜95/5の範囲にあるエマルションを含有する水性被覆組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、密着性、耐水性、耐アルコール性に優れた塗膜を形成する水性被覆組成物に関するものであり、特にプラスチック基材に好適に使用することができるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、表面の保護や美観の付与等を目的としたプラスチック基材の被覆には、各種の溶剤型被覆剤が多く用いられてきている。しかし、最近では、環境への影響がより少なく、安全性にも優れた、水性被覆剤への移行が望まれている。しかし、水性被覆剤は、溶剤型被覆剤に比べてプラスチック材料への浸透性が劣るため、皮膜のプラスチック基材に対する密着性が低いという問題点があり、さらに、形成される皮膜の耐水性や耐アルコール性に劣る傾向にあった。
【0003】
水性被覆剤の性能を向上させる検討は、これまで数多く検討されてきており、例えば、特定量のカルボキシル基を有するコア/シェル構造のエマルションを少量の界面活性剤の存在下で製造することによって、皮膜の耐水性が向上することが知られている(特許文献1参照)。また、特定比率のアルキル(メタ)アクリレートやエチレン性不飽和カルボン酸を反応性乳化剤の存在下で乳化重合して得られる、特定の表面張力を持つエマルションが、耐水性や密着性等に優れた皮膜を形成することが知られている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特公平7−14985号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平9−31396号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1、2に記載されているようなエマルションから形成される皮膜は、いずれも耐アルコール性が低位であり、プラスチック基材用の水性被覆剤として充分なものではなかった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、プラスチック基材との密着性、耐水性、及び、耐アルコール性が両立された塗膜を形成する、水性被覆組成物を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定組成のコア層とシェル層を有するエマルションからなる水性被覆組成物が、上記課題を解決することを見いだし、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の水性被覆組成物は、芳香族ビニル系単量体(a−1)単位20〜80質量%、炭素数が1〜4個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a−2)単位20〜80質量%、その他のビニル系単量体(a−3)単位0〜60質量%からなる共重合体を有するコア層と、芳香族ビニル系単量体(b−1)単位20〜80質量%、炭素数が6〜14個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−2)単位5〜40質量%、その他のビニル系単量体(b−3)単位0〜75質量%からなる共重合体を有するシェル層から構成され、コア層/シェル層の質量比が30/50〜95/5の範囲にあるエマルションを含有することを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の水性被覆組成物が含有するエマルションのコア層を構成する共重合体は、芳香族ビニル系単量体(a−1)からなる単位を構成成分として20〜80質量%有する必要がある。これは、(a−1)単位が20質量%未満であると、形成される皮膜の耐水性や耐アルコール性が低下する傾向にあるためである。好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上である。また、(a−1)単位が80質量%を超えると、形成される皮膜の密着性が低下する傾向にあるためである。好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。
【0011】
芳香族ビニル系単量体(a−1)としては、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系モノマー、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン等のアルキルビニルベンゼン、ビニルナフタレン等の多環芳香族ビニル化合物を挙げることができる。これらは必要に応じて1種以上を適宜選択して使用することができるが、中でも、形成される皮膜の耐水性や光沢等に優れる傾向にある点からスチレン系モノマーが好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0012】
また、コア層を構成する共重合体は、炭素数が1〜4個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a−2)からなる単位を構成成分として20〜80質量%有する必要がある。これは、(a−2)単位が20質量%未満であると、形成される皮膜とプラスチック等からなる基材との密着性が低下する傾向にあるためである。好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上である。また、(a−2)単位が80質量%を超えると、形成される皮膜の耐水性が低下する傾向にあるためである。好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。
【0013】
炭素数が1〜4個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a−2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは必要に応じて1種以上を適宜選択して使用することができる。
【0014】
さらに、コア層を構成する共重合体は、構成成分として、その他のビニル系単量体(a−3)からなる単位を0〜60質量%有するものである。(a−3)単位は、本発明の水性被覆組成物の特徴を損なわない範囲で、必要に応じて、60質量%以下の範囲で導入できるものである。好ましくは30質量%以下である。
【0015】
その他のビニル系単量体(a−3)としては、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数が5個以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとε―カプロラクトンとの付加物等の水酸基含有ビニル系単量体、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ブチルマレイミド等のマレイミド誘導体、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロ−ル、ビニルアルキルケトン、(メタ)アクリルアミドピバリンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリレ−ト、アセトニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレ−トアセチルアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタンジオ−ル−1,4−アクリレート−アセチルアセテート、アクリルアミドメチルアニスアルデヒド等のアルデヒド基又はカルボニル基を有するビニル単量体、(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、N−メチロールアクリルアミド等のアミド基含有ビニル性単量体、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル性単量体、アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル性単量体、ブタジエン等のオレフィン系単量体等を挙げることができる。これらは必要に応じて1種以上を適宜選択して使用することができる。
【0016】
本発明の水性被覆組成物が含有するエマルションのシェル層を構成する共重合体は、芳香族ビニル系単量体(b−1)からなる単位を構成成分として20〜80質量%有する必要がある。これは、(b−1)単位が20質量%未満であると、形成される皮膜の耐アルコール性が低下する傾向にあるためである。好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上である。また、(b−1)単位が80質量%を超えると、形成される被膜の耐水性が低下する傾向にあるためである。好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。
【0017】
芳香族ビニル系単量体(b−1)としては、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系モノマー、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン等のアルキルビニルベンゼン、ビニルナフタレン等の多環芳香族ビニル化合物を挙げることができる。これらは必要に応じて1種以上を適宜選択して使用することができるが、中でも、形成される皮膜の耐水性や光沢等に優れる傾向にある点からスチレン系モノマーが好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0018】
また、シェル層を構成する共重合体は、炭素数が6〜14個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−2)からなる単位を構成成分として5〜40質量%有する必要がある。これは、(b−2)単位が5質量%未満であると、形成される皮膜の耐アルコール性や耐水性が低下する傾向にあるためである。好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。また、(b−2)単位が40質量%を超えると、形成される皮膜の硬度や耐水性、耐アルコール性が低下する傾向にあるためである。好ましくは35質量%以下である。
【0019】
炭素数が6〜14個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−2)としては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートテトラデシル(メタ)アクリレートや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレートやイソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは必要に応じて1種以上を適宜選択して使用することができるが、中でも耐アルコール性の点から、アルキル基の炭素数が8個以上のものが好ましく、10個以上のものがさらに好ましい。
【0020】
さらに、シェル層を構成する共重合体は、構成成分として、その他のビニル系単量体(b−3)からなる単位を0〜75質量%有するものである。(b−3)単位は、本発明の水性被覆組成物の特徴を損なわない範囲で、必要に応じて、75質量%以下の範囲で導入できるものである。好ましくは50質量%以下である。
【0021】
その他のビニル系単量体(b−3)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等の(b−2)以外のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとε―カプロラクトンとの付加物等の水酸基含有ビニル系単量体、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ブチルマレイミド等のマレイミド誘導体、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロ−ル、ビニルアルキルケトン、(メタ)アクリルアミドピバリンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリレ−ト、アセトニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレ−トアセチルアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタンジオ−ル−1,4−アクリレート−アセチルアセテート、アクリルアミドメチルアニスアルデヒドのアルデヒド基又はカルボニル基を有するビニル単量体、(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、N−メチロールアクリルアミド等のアミド基含有ビニル性単量体、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル性単量体、アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル性単量体、ブタジエン等のオレフィン系単量体等を挙げることができる。これらは必要に応じて1種以上を適宜選択して使用することができる。
【0022】
本発明で使用するエマルションは、コア層/シェル層の質量比が30/50〜95/5の範囲にある必要がある。
これは、コア層/シェル層の質量比が30/50未満であると、形成される皮膜の外観や、プラスチック基材に対する密着性が不十分となる傾向にあるためである。好ましくは40/60以上であり、さらに好ましくは50/50以上である。コア層/シェル層の質量比が95/5を超えると、シェル部の疎水化が充分でなく耐水性、耐アルコール性が低下となる傾向にあるためである。好ましくは90/10以下であり、さらに好ましくは80/20以下である。
【0023】
さらに、本発明で使用するエマルションの平均粒子径は、20〜1000nmの範囲であるのが好ましい。
これは、平均粒子径を20nm以上とすることによって、塗装化時の塗料固形分向上となる傾向にあるためである。より好ましくは50nm以上であり、さらに好ましくは80nm以上である。また、平均粒子径を1000nm以下とすることによって、塗膜の外観向上となる傾向にあるためである。より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは300nm以下である。
【0024】
本発明で使用するエマルションは、例えば、(a−1)〜(a−3)成分からなる単量体混合物を乳化重合して得られるコア成分の存在下で、(b−1)〜(b−3)成分からなる単量体混合物を乳化重合することによって製造することができる。
【0025】
本発明で使用するエマルションは、(a−1)〜(a−3)成分と(b−1)〜(b−3)成分の合計100質量部に対して、0.1〜10質量部の界面活性剤の存在下で乳化重合して得られたものであるのが好ましい。これは、界面活性剤の使用量を0.1質量部以上とすることによって、塗料配合時の安定性、経時的安定性等が良好となる傾向にあり、使用量を10質量部以下とすることによって、形成される皮膜の耐水性が良好になる傾向にあるためである。
【0026】
乳化重合時に使用できる界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、アニオン性、カチオン性、及びノニオン性の界面活性剤、高分子乳化剤を挙げることができ、エチレン性不飽和結合を持つ、いわゆる反応性乳化剤を使用することもできる。
【0027】
また、乳化重合時に使用できる重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、水溶性開始剤や、無機過酸化物とチオ硫酸ナトリウム等の還元剤からなるレドックス系開始剤を使用することができる。
【0028】
さらに、重合中に重合体の分子量を調節する必要がある場合には、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を適宜使用することができる。
【0029】
また、本発明で使用するエマルションを中性〜弱アルカリ性とする、すなわちpHを6.5〜10.0の範囲とすることによって、エマルションの安定性を高めることができる。pHは、例えば乳化重合後に塩基性化合物を添加することによって調整することができる。ここで使用できる塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−プロピルアミノエタノール、エトキシプロピルアミン、アミノベンジルアルコール、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。
【0030】
上記構成からなる本発明の水性被覆組成物は、被覆材料としての高度な性能を発現させるために、必要に応じて、各種の顔料、消泡剤、造膜助剤、増粘剤、顔料分散剤、スリップ剤、防腐剤等を添加して使用することもできる。
【0031】
本発明の水性被覆組成物は、従来公知の種々の塗装方法でプラスチック等の基材に塗布することができる。本発明の水性被覆組成物は、基材への塗布後、例えば、具体的には60〜70℃程度での温度条件で、10分〜30時間加熱することによって、密着性、耐水性、耐アルコール性に優れた塗膜を形成することができる。
【0032】
【実施例】
本発明を実施例により詳細に説明する。実施例中の「部」及び「%」は、いずれも質量基準である。実施例及び比較例における性能の評価は、以下に示す方法を用いて行った。
【0033】
(1)基材密着性試験
得られたエマルション72gに2−ジメチルアミノエタノールを添加して、そのpHを8.0に調整した、さらに、造膜助剤としてジプロピレングリコールnブチルエーテル16.5gを添加した後、ディスパーで攪拌し、水性被覆組成物を製造した。この水性被覆組成物をPS樹脂成型板に乾燥膜厚が25μmとなるように塗布し、65℃の雰囲気中で30分間乾燥させて塗膜を形成させ、試験片を得た。
次いで、試験片の塗膜面に、基材に達するように縦横1mm間隔で各11本の切り込みを入れ100個の碁盤目を作り、この上にセロハン粘着テープを張りつけた後、該粘着テープを急激に剥がした後の塗膜の状態を観察し、基材密着性を下記の評価基準で評価した。
○:碁盤目の剥がれがない
△:碁盤目の一部が剥がれている
×:全ての碁盤目が剥がれている
【0034】
(2)耐水性試験
上記の基材密着性試験(1)で作製した試験片を40℃の温水に3日間浸漬した後、塗膜の外観状態を観察し、下記の評価基準で評価した。
・外観状態
○:異常なし
△:一部白化、ふくれ等がある
×:全面に白化、ふくれ等がある
【0035】
(3)耐アルコール性
上記の基材密着性試験(1)で作製した試験片の塗膜上に、エタノールを含浸させた5枚重ねのガーゼを置き、これを0.5kg/cm2の荷重をかけながら塗膜上で50往復させた後、塗膜の状態を観察し、下記の評価基準で評価した。
◎:擦り傷が全く認められない。
○:擦り傷がわずかに認められる。
△:擦り傷が認められるものの基材が全く露出していない。
×:基材が露出している。
【0036】
(4)平均粒子径
動的光散乱粒子径DLS−600(大塚電子(株)製)にて、水性分散体中の樹脂粒子径(重量平均粒子径)を測定した。
【0037】
(実施例1)
温度計、サーモスタット、攪拌器、還流冷却器、滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水80部を加え、窒素気流中で混合攪拌しながら80℃に昇温した。ついで、スチレン50部、メチルアクリレート40部、n−ブチルメタクリレート10部、アクアロンHS−10(ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエーテル硫酸エステル、第一工業製薬社製)1.0部、アデカリアソープNE−20(α−[1−[(アリルオキシ)メチル]−2−(ノニルフェノキシ)エチル]−ω−ヒドロキシオキシエチレン、旭電化社製、80%溶液)0.8部及び脱イオン水30部からなるモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム0.2部、及び脱イオン水10部からなる開始剤溶液とを2時間かけて定量ポンプを用いてそれぞれ反応器内に滴下し、滴下終了後1時間同温度で、熟成を行い、コア成分を得た。
さらに、このコア成分の存在下、80℃を維持しながら、スチレン50部、n−ステアリルメタクリレート25部及びラウリルメタクリレート5部、メチルメタクリレート2部、n−ブチルメタクリレート2部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート8部、メタクリル酸8部、アクアロンHS−10を0.3部、及び脱イオン水10部からなるモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム0.06部、及び脱イオン水10部からなる開始剤溶液とを1時間かけて定量ポンプを用いて反応器内に滴下した。滴下終了後1時間同温度で熟成を行った。
ついで、1質量%ジメチルアミノエタノール水溶液10部を加えながら40℃まで冷却し、300メッシュのナイロンクロスでろ過し、平均粒子径が100nm、不揮発分が40質量%である、コア層とシェル層を有するエマルションを得た。このエマルションを含有する水性被覆組成物の評価結果を表1に示す。
【0038】
(実施例2、比較例1〜10)
開始剤や重合温度等において実施例1と同様な方法で、表1に示された組成のエマルションを製造した。これらエマルションを含有する水性被覆組成物の評価結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例から明らかなように、本発明の水性被覆組成物から形成される塗膜は、密着性、耐水性、及び、耐アルコール性に優れていた。
これに対して、本発明の要件を満たさない比較例は、実施例に比べて性能が劣っていた。
【0041】
【発明の効果】
本発明の水性被覆組成物は、密着性、耐水性、耐アルコール性に優れた塗膜を形成するものであり、特にプラスチック基材に好適に使用することができるものであり、工業上極めて有用である。
Claims (1)
- 芳香族ビニル系単量体(a−1)単位20〜80質量%、炭素数が1〜4個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a−2)単位20〜80質量%、その他のビニル系単量体(a−3)単位0〜60質量%からなる共重合体を有するコア層と、芳香族ビニル系単量体(b−1)単位20〜80質量%、炭素数が6〜14個のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(b−2)単位5〜40質量%、その他のビニル系単量体(b−3)単位0〜75質量%からなる共重合体を有するシェル層から構成され、コア層/シェル層の質量比が30/50〜95/5の範囲にあるエマルションを含有する水性被覆組成物。
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