JP3827199B2 - 水性塗料組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐候性や、耐温水性等に優れ、また、平滑性のよい塗膜を形成する水性塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、建材等に塗装する塗料として、環境問題、省資源の観点から水性塗料が広く使用されるようになってきたが、形成される塗膜の性能として、更なる長期の耐候性が要求されるようになってきた。
耐候性を向上させた塗料としては、例えば、特許第2637574号公報に記載のように、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルと紫外線安定性単量体を含むエチレン性単量体から得られる共重合体からなるエマルション樹脂をバインダーとする水性エマルション塗料や、特許第3056427号公報に記載のように、特定のシラン化合物を重合時に導入したアクリルシリコン系エマルション樹脂と紫外線吸収剤、を含有する水性エマルション塗料等が、開発されている。しかしながら、これら耐候性のよい水性エマルション塗料をはじめ、多くのエマルション塗料は、平滑性が悪く、即ち、塗装時の塗料のレベリング性が悪く、また、形成される塗膜にシワや、チヂミ、ヒビワレ、チェッキング等が発生しやすい問題点があった。
そこで、通常、エマルション塗料に増粘剤を添加し、平滑性をよくする方法が広く採用されていた。
しかしながら、増粘剤は、平滑性をよくする効果はあるものの、その添加量の増加とともに塗膜性能、特に、耐水性、耐候性に悪影響を及ぼす問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の課題を背景になされたものであり、耐候性や、耐水性等に優れ、かつ、平滑性に優れた塗膜を形成する水性塗料組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、以下の構成により、上記課題が確実に達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
本発明に従って、次に示す水性塗料組成物が提供される:
紫外線吸収性単量体(a)、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(b)及び前記単量体(a)、(b)と共重合可能なその他エチレン性不飽和単量体(c)から得られるpH7〜10の水性液下でアルカリ可溶型又はアルカリ膨潤型共重合体の水性液(A)と、70〜350nmの平均粒子径を有する、エチレン性不飽和単量体から得られる共重合体の水性エマルション(B)とを含み、かつ、水性液(A)と水性エマルシヨン(B)の質量比(固形分換算)が、(0.5〜25:100)であることを特徴とする水性塗料組成物。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の水性塗料組成物の構成成分である水性液(A)は、紫外線吸収性単量体(a)とエチレン性不飽和カルボン酸単量体(b)と前記単量体(a)、(b)と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体(c)から得られ、かつ、アルカリ可溶型、又は、アルカリ膨潤型の共重合体でpH7〜10の水性液である。
前記紫外線吸収性単量体(a)は、基本的には、一分子中に、少なくとも一つのエチレン性不飽和二重結合を有するベンゾフェノンや、ベンゾトリアゾール、トリアジン系の単量体であり、具体的には、例えば、2−ヒドロキシ−4−アクリロキシベンゾフェノンや、2−ヒドロキシ−4−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシージエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−トリエトキシ)ベンゾフェノン、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製、製品名:RUVA−93)、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メタクリロキシエチル−3−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メタクリロキシプロピル−3−tert−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、3−メタクリロイル−2−ヒドロキシプロピル−3−〔3'−(2''−ベンゾトリアゾイル)−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー(株)、製品名:CGL−104)、特開平8−193180号公報記載のトリアジン系単量体等が代表的なものとして挙げられる。これら単量体は、1種類のみ用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体(b)としては、具体的には、例えば、アクリル酸や、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノエチル等が代表的なものとして挙げられる。
【0006】
前記単量体(a)、(b)と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体(c)としては、従来から、塗料用ビニル樹脂に通常使用されている各種エチレン性不飽和単量体が利用可能であるが、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレートや、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、α−クロロエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系単量体;スチレンや、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレンなどのスチレン系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2(3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミドや、マレインアミドなどのアミド基含有単量体;2−アミノエチル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジンなどのアミノ基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と活性水素原子を有するエチレン性不飽和単量体との反応により得られるエポキシ基含有単量体やオリゴノマー;その他N−メチロール基を有したN−メチロールアクリルアミドや、酢酸ビニル、塩化ビニル、さらには、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレートなどが代表的なものとして挙げられる。
これら単量体は、勿論1種類のみを用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい
【0007】
さらに、前記単量体(c)の一部の代りに、ジビニルベンゼンや、ジビニルアジペート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)クリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリットトリ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、トリアジルジシアヌレート、テトラアリルオキシエタンなどの重合性不飽和二重結合を2個以上有する単量体(c’)を使用するのが好ましい。
【0008】
また、前記単量体(c)の一部の代りに、アクロレインや、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロール、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレート−アセチルアクリレート、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトンなどのカルボニル基を有する単量体(c”)を使用し、かつ該単量体(c”)のカルボニル基量に対し0.1〜1.0当量のヒドラジド基量に相当する一分子中に2個以上のヒドラジド基を有する化合物(C)と併用するのが好ましい。
共重合体を構成する前記単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)の割合は、それぞれ、1〜40質量%、10〜50質量%、10〜89質量%、好ましくは、それぞれ、3〜20 質量%、20〜45質量%、35〜77質量%である。
なお、紫外線吸収性単量体(a)の配合量が、1質量%未満の場合、得られる塗膜の耐候性の改善効果が少なく、逆に40質量%を越えると、重合時の安定性や、水性液(A)の安定性が低下する傾向にある。
【0009】
また、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(b)の配合量が、10質量%未満の場合、pH7〜10の水性液下でアルカリ可溶性、もしくはアルカリ膨潤性となりにくく、水性液(A)の安定性が低下し、また、得られる塗膜の平滑性改善効果が少なく、一方、逆に50質量%を越えると、得られる塗膜の耐水性を低下させる傾向にある。
【0010】
また、本発明においては、前記単量体(c)成分の1部の代りに前述の重合性不飽和二重結合を2個以上有する単量体(c’)を使用することにより、塗料の粘弾性が向上し、得られる塗膜の平滑性や、耐温水性、耐ブロッキング性を向上させるので望ましい。単量体(c’)は、共重合体中、0.1〜10質量%、好ましくは、1〜7質量%使用するのが好ましいが、過剰になると水性液(A)の安定性が低下するので好ましくない。また、本発明においては、前述のカルボニル基を有する単量体(c”)を使用する(このさい、後述するヒドラジド基を有する化合物(C)と併用する)ことにより得られる塗膜の耐ブロッキング性を向上させるので望ましい。単量体(c”)は、共重合体中、0.5〜10質量%、好ましくは、1〜7質量%使用するのが好ましいが、過剰になると塗膜の耐水性が悪くなるので好ましくない。
【0011】
次に、水性液(A)の製造法について述べる。水性液(A)を製造するにあたり、単量体(a)〜(c)の共重合手法としては、従来から公知の溶液重合法や、乳化重合法等が採用できる。
溶液重合法は、重合開始剤や、必要に応じて分子量を制御するための連鎖移動剤の存在下で、親水性有機溶剤中で、前記単量体混合物を通常70〜150℃の温度にて、反応させ、必要に応じ親水性有機溶剤を減圧除去した後、水を添加することにより水性液(A)を製造する。
なお、反応は、単量体一括仕込み法や、単量体滴下法等が採用できる。
【0012】
前記重合開始剤としては、油溶性のものが採用され、具体的には、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。また、連鎖移動剤としては、具体的には、n−ドデシルメルカプタンや、メルカプト酢酸、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸エステル等が挙げられる。また、親水性有機溶剤としては、具体的には、イソプロピルアルコールや、n−ブタノール、イソブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の親水性有機溶剤が挙げられる。
【0013】
水性液(A)は、安定性を持たせるために、pHをアルカリ性物質により、7〜10、好ましくは、8〜9に調整しておく必要がある。なお、pHが7未満の場合、共重合体のアルカリ可溶化や、膨潤化が不充分となり、安定性が悪くなるばかりでなく、水性塗料組成物の増粘化が不充分となり、得られる塗膜の平滑性向上効果が低下するので好ましくない。一方、逆に、pHが10を越えると、得られる塗膜の耐水性を低下させてしまうので好ましくない。
【0014】
pHを上記範囲にするアルカリ物質としては、従来から水性塗料に通常使用されている中和剤が特に制限なく使用可能であるが、具体的には、モノエタノールアミンや、ジメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の有機アミン類、アンモニア等が代表的なものとして挙げられる。なお、中和剤は、予め、前記親水性有機溶剤中に添加しておくか、あるいは、反応終了後、水を添加する前後もしくは水と同時に添加するのが望ましい。また、水性液(A)と後述する水性エマルシヨン(B)を混合した後、中和剤を添加することも可能である。
【0015】
乳化重合法は、乳化剤及び重合開始剤、更に必要に応じて連鎖移動剤、乳化安定剤等の存在下で、水中で、前記単量体混合物を通常60〜90℃の温度にて、反応させ、水性液(A)を製造する。
なお、反応は、前述の通り、単量体一括仕込み法や、単量体滴下法、更には、単量体を数回にわたり添加する多段乳化重合法、シード法等が採用できる。また、水、乳化剤、単量体混合物を予め乳化したものを滴下していくプレ乳化物滴下法も採用できる。
【0016】
前記乳化剤としては、具体的には、ラウリル硫酸ナトリウムなどの脂肪酸塩や、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基または硫酸エステル基と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する、いわゆる反応性乳化剤などのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、または前述の骨格と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する反応性ノニオン性界面活性剤などのノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩や、第四級アンモニウム塩などのカチオン性界面活性剤;(変性)ポリビニルアルコールなどが挙げられる。その中で、アニオン性、ならびにノニオン性のものが好適に使用される。
【0017】
前記重合開始剤としては、具体的には、過硫酸カリウムや、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物が好適に挙げられる。また、重合開始剤とL−アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄などの還元剤などを組み合わせたレドックス反応では、30〜70℃でも乳化重合反応可能である。さらに、硫酸銅等の重合促進剤等も使用することも可能である。
乳化重合法で得られた水性液も、溶液重合法と同様pH7〜10に調整し、水性液(A)とする。
本発明の構成成分である水性エマルション(B)は、前述の乳化重合法をはじめ、公知の方法で製造される、本発明の水性塗料組成物の主成分となるエマルションである。
【0018】
乳化重合する単量体の種類も、前述の単量体(a)、単量体(b)、単量体(c)が特に制限なく使用可能であり、さらに、4−(メタ)アクロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンや、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン、4−(メタ)アクロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペラジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の重合性ヒンダードアミン化合物などの紫外線安定性単量体も使用可能である。
【0019】
但し、水性エマルション(B)は、動的光散乱法での平均粒径が、70〜350nm、好ましくは、80〜200nmである、エチレン性不飽和単量体から得られる共重合体の水性エマルションである必要がある。なお、平均粒子径が70nm未満の場合、上記水性液(A)との混合後の、系の粘度が著しく高くなってしまい、塗料組成物としての取り扱いが困難になり、一方、350nm越えると、塗膜の耐水性等が悪くなるので好ましくない。
また、水性エマルション(B)は、水性液(A)と同様、中和剤でpH7〜9程度に調整したものが好ましい。
【0020】
本発明の水性塗料組成物は、前述の水性液(A)と水性エマルション(B)との、固形分換算での質量比が、(0.5〜25:100)、好ましくは、(5〜20:100)からなる混合物を含有するものである。なお、水性液(A)の、水性エマルション(B)に対する量が、前記範囲より少ないと、得られる塗膜の平滑性と耐候性の同時改善効果が得られず、一方、過剰となると、得られる塗膜の耐水性が低下するので好ましくない。
【0021】
また、水性液(A)が単量体(c)成分の一部の代りに、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体(c”)を使用した共重合体の場合は、一分子中に少なくとも2個以上のヒドラジド基を有する化合物(C)を、併用する。それにより耐ブロッキング性の優れた塗膜が得られる。前記化合物(C)の量は、前記単量体(c”)のカルボニル基量に対し、0.1〜1.0当量のヒドラジド基量に相当する量が適当である。化合物(C)としては、例えば、カルボヒドラジドや、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、チオカルボジヒドラジド等が挙げられる。特に、エマルションへの分散性や耐水性などのバランスからカルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジドが好ましい。前記化合物(C)は、水性液(A)に添加することが通常であるが、水性液(A)と水性エマルション(B)の混合物に添加しても構わない。
【0022】
発明の水性塗料組成物は、前述の水性液(A)と水性エマルション(B)、場合によりヒドラジド基を有する化合物(C)とからなり、さらに必要に応じて、成膜助剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防微剤、防腐剤、凍結安定剤等の各種添加剤や、体質顔料、着色顔料、防錆顔料等の顔料などを配合したものである。なお、分散剤、増粘剤は、水性液(A)との相溶性などの関係から必要最小限の添加量とすべきである。
このようにして得られた本発明の水性塗料組成物は、各種無機質素材や、金属素材、木材素材、プラスチック素材等に適用でき、自然乾燥、もしくは100℃以下の温度にて強制乾燥させることにより、平滑性のよい、また、耐候性、耐水性等に優れた塗膜を形成することができる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中「部」、「%」は、特に断らない限り質量基準で示す。
【0024】
(水性液A−1)
攪拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール〔RUVA93(大塚化学(株)製)〕(a)14部、メタクリル酸(b)112部、エチルアクリレート(c)154部からなる単量体混合物の10%の分量とイオン交換水646部とラウリル硫酸ナトリウム〔エマール10ニードル(花王(株)製)〕4部とを、仕込んだ後、フラスコ内部を窒素で置換しながら80℃まで昇温して、10%過硫酸アンモニウム水溶液15部を加え、80℃、30分間反応させた。次いで、80℃を維持しながら残りの単量体混合物(90%の分量)を2時間かけて連続滴下した。更に引き続いて1%過硫酸アンモニウム水溶液20部を30分かけて滴下し、80℃で2時間攪拌を続けながら熟成してから30℃まで冷却した。次いで、イオン交換水と25%アンモニア水を添加して、H8.0、不揮発分20%のアルカリ可溶型共重合体の水性液(A−1)を得た。
【0025】
(水性液A−2〜4およびA ' −1)
単量体トータル量を変更せず、単量体組成を表1、2に示す配分に変更した以外は水性液A−1の製造方法と同様にして、pH8.0、不揮発分20%の水性液(A−2〜4およびA'−1)を得た。なお、水性液A−3、A−4については単量体(c”)成分としてジアセトンアクリルアミド(DAAM)に対応するヒドラジド化合物としてアジピン酸ジヒドラジドの20%水溶液を28.0部添加した。
【0026】
(水性エマルションB−1)
攪拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、イオン交換水220部と炭酸水素ナトリウム2.5部とポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸アンモニウム塩〔ハイテノールN−08(第一工業製薬(株)製)〕1.5部とを仕込み、フラスコ内部を窒素で置換しながら80℃まで昇温した後、過硫酸カリウム2部を加え、予め別容器で撹拌混合しておいたスチレン50部、メチルメタクリレート265部、2−エチルヘキシルアクリレート175部、メタクリル酸10部、ハイテノールN−08 6部、イオン交換水250部からなる単量体乳化物を3時間かけて連続滴下した。引き続いて1%過硫酸アンモニウム水溶液20部を30分かけて滴下し、80℃で2時間攪拌を続けながら熟成して30℃まで冷却した。次いで、50%ジメチルエタノールアミン、イオン交換水にてpH8.0、固形分濃度50%の水性エマルション(B−1)を得た。
なお、得られた共重合体エマルション粒子の平均粒子径は、125nm[動的光散乱法に基づく粒度分布計〔MICROTRAC MODEL:9340-UPA(日機装(株)製 )〕にて測定]であった。
【0027】
(水性エマルションB−2)
単量体を、メチルメタクリレート230部、2−エチルヘキシルアクリレート125部、シクロヘキシルメタクリレート125部、メタクリル酸10部、1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジルメタクリレート10部に変更する以外は、水性エマルション(B−1)の製造方法と同様にして、pH8.0、固形分濃度50%の水性エマルション(B−2)を得た。なお、得られた共重合体エマルション粒子の平均粒子径は、131nmであった。
【0028】
(水性エマルションB ' −1)
攪拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、イオン交換水550部とチオ硫酸ナトリウム2部と硫酸銅0.08部とハイテノールN−08 5部とラウリル硫酸ナトリウム5部とを、仕込み、フラスコ内部を窒素で置換しながら70℃まで昇温した後、過硫酸カリウム2部を加え、予め別容器で撹拌混合しておいたスチレン50部、メチルメタクリレート265部、2−エチルヘキシルアクリレート175部、メタクリル酸10部からなる単量体混合物を1.5時間かけて連続滴下した。引き続いて、1%過硫酸アンモニウム水溶液20部を30分かけて滴下し、80℃で2時間攪拌を続けながら熟成して30℃まで冷却した。次いで、50%ジメチルエタノールアミン、イオン交換水にてpH8.0、固形分濃度40%の水性エマルション(B'−1)を得た。なお、得られた共重合体エマルション粒子の平均粒子径は、56nmであった。
【0029】
(水性エマルションB ' −2)
初期にセパラブルフラスコに仕込むハイテノールN−08を0.2部、単量体乳化物中に仕込むハイテノールN−08を9.8部に変更する以外は、水性エマルションB−1の製造方法と同様にして、pH8.0、固形分濃度50%の水性エマルション(B'−2)を得た。なお、得られた共重合体エマルション粒子の平均粒子径は、390nmであった。
【0030】
<実施例1>
水性エマルション(B−1)100部に、エチレングリコールモノブチルエーテル5部、水性液(A−1)25部及び消泡剤1部を加え、攪拌し、次いでイオン交換水を加え、不揮発分34%の水性塗料組成物を調製した。
【0031】
<実施例2〜6及び比較例1〜5>
表1及び表2で示す通り、水性液(A)と水性エマルション(B)の組み合わせ、及びその混合比を代える以外は、実施例1と同様にして水性塗料組成物を得た。これらの水性塗料組成物の不揮発分は、イオン交換水により34%に調整した。
尚、表1及び表2で示した単量体原料の略号は、下記の意味を有する。
ST :スチレン
MMA :メチルメタクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
EA :エチルアクリレート
MAA :メタクリル酸
BGDA:1,4−ブチレングリコールジアクリレート
RUVA93:2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール
DAAM:ジアセトンアクリルアミド
LA82:1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジルメタクリレート
実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた水性塗料組成物につき、塗膜の平滑性、耐候性、耐温水性の各試験を行い、その結果を表1および表2の下段に示した。
なお、試験方法および評価は、次の方法に従って行った。
【0032】
<塗膜の平滑性>
各水性塗料組成物を、硝子板に6ミル及び10ミルアプリケーターにて塗装し、100℃で5分間強制乾燥させ、塗膜外観を目視にて判定した。
判定基準
◎:6ミル、10ミル塗装両方とも塗膜表面にシワ(歪み)が全く存在せず、平滑である。
○:6ミル塗装では塗膜表面にシワ(歪み)が全く存在せず、平滑であったが、10ミル塗装では、極一部シワが発生していた。
×:6ミル、10ミル塗装両方とも塗膜表面にシワ(歪み)が発生していた。
【0033】
<耐候性>
塗膜の平滑性試験と同様にして6ミルアプリケーターにて作成した試験板を、サンシャインウエザオメーター3000時間後の塗膜の光沢保持率(試験後の光沢/試験前の光沢)で評価した。
判定基準
◎:光沢保持率90%以上。
○:光沢保持率80%以上90%未満。
△:光沢保持率60%以上80%未満。
×:光沢保持率60%未満。
【0034】
<耐温水性>
塗膜の平滑性試験と同様にして6ミルアプリケーターにて作成した試験板を、50℃の温水に24時間浸漬し、温水から取り出した直後の塗膜外観を目視判定し、さらに、室温にて24時間放置、乾燥した後、塗膜外観を目視判定した。
判定基準
◎:塗膜の白化は少なく、乾燥後は完全に元のクリアー塗膜に回復する。
○:塗膜の白化は少なく、乾燥後2〜3時間後、ほぼ完全に元のクリアー塗膜に回復する。
△:多少塗膜の白化が認められ、乾燥後も24時間では少し濁っており、48時間後では、クリアー塗膜に回復している。
×:白化、ふくれ等の塗膜異常が著しく認められ、乾燥後もほとんど回復しない。
【0035】
<耐ブロッキング性>
塗膜の平滑性試験と同様にして6ミルアプリケーターにて作成した試験板を、50℃に加温しておいたホットプレート上に置いた。次に、塗膜表面にガーゼをのせ、更にその上に事前に50℃まで加温した500g分銅を置き、0.5kg/cm2の荷重を1時間かけた。そして、常温まで冷却した後、ゆっくりガーゼをはがし、その時のはがし抵抗、及びガーゼの痕跡を目視で判定した。
評価基準
◎:ガーゼが自然に落下し、塗膜上にガーゼの痕跡が殆ど残っていない。
○:ガーゼが自然に落下することはないが、塗膜上にガーゼの痕跡は殆ど残っていない。
△:ガーゼが自然に落下することはないが、少しの力で剥離することが出来、ガーゼの痕跡が多少残っている。
×:ガーゼを剥離時に塗膜の一部も剥離し、ガーゼの痕跡がくっきり残っている。
【0036】
【表1】
Figure 0003827199
【0037】
【表2】
Figure 0003827199
表1、表2より、明らかの通り、本発明の実施例1〜6の水性塗料組成物は、塗膜の平滑性、耐候性、耐温水性、耐ブロッキング性にバランスがとれて良好であった。
【0038】
しかしながら、紫外線吸収性単量体(a)を使用しない水性液(A'−1)を用いた比較例1は、耐候性に劣っていた。また、水性液(A)を使用せず、水性エマルション(B)に高耐候性を有する従来のエマルション(B−2)を用いた比較例2は、塗膜の平滑性に劣っていた。また、水性液(A)の配合量を過剰にした比較例3は、塗膜の平滑性に優れるものの、耐温水性に劣っていた。また、平均粒子径が56nmの水性エマルション(B'−1)を用いた比較例4は、水性液(A)の添加した効果が得られず、塗膜の平滑性が劣っていた。逆に、平均粒子径が390nmの水性エマルション(B'−2)を使用した比較例5は、塗膜の平滑性は優れるものの、塗膜の耐温水性が顕著に劣っていた。
【0039】
【発明の効果】
本発明の水性塗料組成物は、耐候性や、耐温水性等に優れ、また、平滑性のよい塗膜を形成する。

Claims (4)

  1. 紫外線吸収性単量体(a)、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(b)及び前記単量体(a)、(b)と共重合可能なその他エチレン性不飽和単量体(c)から得られるpH7〜10の水性液下でアルカリ可溶型又はアルカリ膨潤型共重合体の水性液(A)と、70〜350nmの平均粒子径を有する、エチレン性不飽和単量体から得られる共重合体の水性エマルション(B)とを含み、かつ前記水性液(A)と前記水性エマルション(B)の質量比(固形分換算)が、(0.5〜25:100)であることを特徴とする水性塗料組成物。
  2. 前記水性液(A)が、前記紫外線吸収性単量体(a)の1〜40質量%、前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体(b)の10〜50質量%及び前記その他エチレン性不飽和単量体(c)の10〜89質量%からなる共重合体の水性液である、請求項1に記載の水性塗料組成物。
  3. 前記水性液(A)が、前記エチレン性不飽和単量体(c)の1部の代りに、重合性不飽和二重結合を2個以上有するエチレン性不飽和単量体(c’)を0.1〜10質量%含有する共重合体の水性液である、請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
  4. 前記水性液(A)が、前記エチレン性不飽和単量体(c)の1部の代りに、カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体(c”)を0.5〜10質量%含有し、かつ前記単量体(c”)のカルボニル基量に対し、0.1〜1.0当量のヒドラジド基量に相当する一分子中に2個以上のヒドラジド基を有する化合物(C)を含有する、請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
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