本発明の塗料用水性樹脂組成物は、前記したように、少なくとも2層の樹脂層を有するエマルション粒子および水溶性ポリマーを含有する塗料用水性樹脂組成物であり、エマルション粒子の外層がカルボニル基含有単量体0.1〜10質量%を含有する単量体成分を重合させることによって得られる重合体で構成され、水溶性ポリマーがカルボニル基含有単量体1〜30質量%を含有する単量体成分を重合させることによって得られる水溶性ポリマーであることを特徴とする。
前記エマルション粒子は、少なくとも2層の樹脂層を有する。したがって、前記エマルション粒子は、少なくとも内層および外層を有する。
内層を構成する重合体の原料として用いられる単量体成分(以下、単量体成分Aという)としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、脂環構造を有する単量体、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボニル基含有単量体、芳香族系単量体、カルボキシル基含有単量体、ケイ素原子含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、紫外線吸収性単量体、紫外線安定性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分Aには、塗膜の耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性を向上させる観点から、アルキル(メタ)アクリレートおよび脂環構造を有する単量体が含有されていることが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのアルキル(メタ)アクリレートのなかでは、塗膜の耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性を向上させる観点から、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜12、好ましくは1〜8であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
単量体成分Aにおけるアルキル(メタ)アクリレートの含有率は、塗膜の耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性を向上させる観点から、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは3〜65質量%である。
脂環構造を有する単量体において、脂環構造は、好ましくは炭素数が4〜20のシクロアルキル基、より好ましくは炭素数が4〜10のシクロアルキル基である。脂環構造を有する単量体としては、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、これらの単量体は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、メチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
シクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基の炭素数が好ましくは4〜20、より好ましくは4〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシクロアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。シクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基の炭素数が好ましくは4〜20、より好ましくは4〜10であり、アルキル基の炭素数が1〜4であるシクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらのシクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
脂環構造を有する単量体のなかでは、炭素数が4〜20のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が4〜10のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
単量体成分Aにおける脂環構造を有する単量体の含有率は、塗膜の耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性を向上させる観点から、好ましくは15〜90質量%、より好ましくは20〜85質量%である。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートのなかでは、塗膜の耐水クラック性および長期親水性を向上させる観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびグリセリンモノ(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
単量体成分Aにおける水酸基含有(メタ)アクリレートの含有率は、塗膜の耐水クラック性および長期親水性を向上させる観点から、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%である。
単量体成分Aには、アルキル(メタ)アクリレートおよび脂環構造を有する単量体が含まれていることが好ましい。単量体成分Aには、これらの単量体の残部として、これらの単量体以外の単量体が含まれていてもよい。
本発明において、カルボニル基含有単量体は、式:=C=Oで表わされる基を有する単量体であって、当該カルボニル基が有する2つの結合手のうちの一方の結合手に水素原子またはアルキル基が結合し、他方の結合手にビニル基などの重合性不飽和二重結合を末端に有する基が結合している単量体を意味する。カルボニル基含有単量体としては、例えば、アクリロレイン、メタクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、アクリルオキシアルキルプロペナール、メタクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニルアクリレート、アセトニルメタクリレート、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチルアクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、アラルキル(メタ)アクリレート、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ケイ素原子含有単量体としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2〜6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
紫外線吸収性単量体としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5′−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル〕−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル〕−4−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ〕プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕ブトキシベンゾフェノンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
紫外線安定性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの紫外線安定性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分Aを乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下で単量体成分Aおよび重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分Aを水または水性媒体に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種類以上の単量体を共重合成分とする重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、前記乳化剤としては、塗膜の耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性を向上させる観点から、反応性基を有する乳化剤、すなわち、いわゆる反応性乳化剤が好ましく、環境保護の観点から非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましい。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩〔例えば、三洋化成工業(株)製、商品名:エレミノールRS−30など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH−10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE−10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10、SR−30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS−60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER−20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN−20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE−10など)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
単量体成分A100質量部あたりの乳化剤の量は、単重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
単量体成分A100質量部あたりの重合開始剤の量は、重合速度を高め、未反応の単量体成分Aの残存量を低減させる観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、形成される塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分Aを反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部をフラスコ内に添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、反応系内には、必要により、例えば、tert−ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤などの添加剤をフラスコ内に添加してもよい。単量体成分A100質量部あたりの添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
単量体成分Aを乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
単量体成分Aを乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
単量体成分Aを乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜9時間程度である。
以上のようにして単量体成分Aを乳化重合させることにより、内層を構成するエマルション粒子が得られる。
前記エマルション粒子を構成している重合体は、架橋構造を有していてもよい。重合体の重量平均分子量は、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、さらに一層好ましくは60万以上である。重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel GMHXL−Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
次に、単量体成分Aを乳化重合させた反応溶液中で、外層を構成する重合体の原料として用いられる単量体成分(以下、単量体成分Bという)を乳化重合させることにより、外層を形成することができる。
単量体成分Bを乳化重合させる際には、単量体成分Aを乳化重合させることによって得られる重合体の重合反応率が90%以上、好ましくは95%以上に到達した後、単量体成分Bを乳化重合させることが、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から好ましい。
なお、単量体成分Aを重合させることによって内層を形成させた後、外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる中間層が形成されていてもよい。したがって、本発明においては、単量体成分Aを乳化重合させて内層を形成した後、単量体成分Bを乳化重合させて外層を形成する前に、本発明の目的を阻害しない範囲内で他の層を形成してもよい。
本発明においては、単量体成分Bにカルボニル基含有単量体0.1〜10質量%が含有されている点に、1つの大きな特徴がある。
本発明においては、このように単量体成分Bにカルボニル基含有単量体0.1〜10質量%が含有されているので、本発明の水性樹脂組成物は、単量体成分Aにカルボニル基含有単量体が含有されている場合と相違して、耐水白化性に優れるのみならず、耐水クラック性、耐水変形性、耐候性および長期親水性にも総合的に優れた塗膜を形成させることができる。
カルボニル基含有単量体としては、単量体成分Aに用いられるカルボニル基含有単量体と同様のものを例示することができる。より具体的には、カルボニル基含有単量体としては、例えば、アクリロレイン、メタクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、アクリルオキシアルキルプロペナール、メタクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニルアクリレート、アセトニルメタクリレート、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチルアクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボニル基含有単量体のなかでは、耐水白化性に優れるのみならず、耐水クラック性、耐水変形性、耐候性および長期親水性にも総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、アクリロレイン、メタクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、アクリルオキシアルキルプロペナール、メタクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニルアクリレート、アセトニルメタクリレート、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミドおよびダイアセトンメタクリルアミドが好ましく、アクリロレイン、メタクロレイン、ホウミルスチロール、アセトニルアクリレート、アセトニルメタクリレート、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミドおよびダイアセトンメタクリルアミドがより好ましく、アクリロレイン、メタクロレイン、アセトニルアクリレート、アセトニルメタクリレート、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミドおよびダイアセトンメタクリルアミドがさらに好ましく、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミドおよびダイアセトンメタクリルアミドがさらに一層好ましい。
単量体成分Bにおけるカルボニル基含有単量体の含有率は、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、10質量%以下、好ましくは9質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
単量体成分Bにおけるカルボニル基含有単量体以外の単量体(以下、他の単量体Bという)としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、脂環構造を有する単量体、水酸基含有(メタ)アクリレート、芳香族系単量体、カルボキシル基含有単量体、ケイ素原子含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、紫外線吸収性単量体、紫外線安定性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの単量体としては、単量体成分Aで例示したものと同様のものを例示することができる。
単量体成分Bにおける他の単量体Bの含有率は、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは91質量%以上、さらに好ましくは92質量%以上であり、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、さらに好ましくは99質量%以下である。
単量体成分Bを乳化重合させる方法および重合条件は、単量体Aを乳化重合させる方法および重合条件と同様であればよい。
以上のようにして単量体成分Bを乳化重合させることにより、外層を形成する重合体が内層の表面に形成されたエマルション粒子を得ることができる。なお、このエマルション粒子の外層の表面上には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の重合体からなる表面層がさらに形成されていてもよい。エマルション粒子の樹脂層の数は、特に限定されないが、塗膜の耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性を向上させる観点から、好ましくは2〜5層、より好ましくは2〜4層、さらに好ましくは2〜3層である。
単量体成分Bを乳化重合させることによって得られる重合体は、架橋構造を有していてもよい。重合体の重量平均分子量は、塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
内層を構成している重合体および外層を構成している重合体のうちのいずれか一方のガラス転移温度は、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、好ましくは65℃以上、より好ましくは70℃以上であり、塗膜の耐水クラック性を向上させる観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
内層を構成している重合体および外層を構成している重合体のうちのいずれか一方のガラス転移温度は、塗膜強度を高める観点から、好ましくは−70℃以上、より好ましくは−60℃以上であり、耐水クラック性を向上させる観点から、好ましくは20℃以下、より好ましくは5℃以下、さらに好ましくは−10℃以下である。
また、エマルション粒子全体のガラス転移温度は、塗膜の耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に向上させる観点から、好ましくは−5℃以上、より好ましくは0℃以上、さらに好ましくは5℃以上であり、塗膜の耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に向上させる観点から、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。
なお、本明細書において、重合体のガラス転移温度は、当該重合体を構成する単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式(I):
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100 (I)
〔式中、Wmは重合体を構成する単量体成分における単量体mの含有率(質量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
本明細書においては、エマルション粒子を構成する重合体のガラス転移温度は、特に断りがない限り、式(I)に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。例えば、多層構造を有するエマルション粒子を構成する重合体全体のガラス転移温度は、多段乳化重合の際に用いられたすべての単量体成分における各単量体の質量分率とこれに対応する単量体の単独重合体のガラス転移温度から求められたガラス転移温度を意味する。なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10質量%以下である場合、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10質量%を超える場合には、重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)などによって求められる。
重合体のガラス転移温度は、単量体成分の組成を調整することにより、容易に調節することができる。エマルション粒子を構成する重合体のガラス転移温度を考慮して、当該エマルション粒子を構成する重合体の原料として用いられる単量体成分の組成を決定することができる。
重合体のガラス転移温度は、例えば、2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では−70℃、シクロヘキシルメタクリレートの単独重合体では83℃、スチレンの単独重合体では100℃、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの単独重合体では70℃、アクリル酸の単独重合体では95℃、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの単独重合体では55℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、tert−ブチルメタクリレートの単独重合体では107℃、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンの単独重合体では約130℃、ダイアセトンアクリルアミドの単独重合体では77℃、n−ブチルメタクリレートの単独重合体では20℃、グリセリンモノメタクリレートの単独重合体では55℃である。
外層を構成している重合体の溶解パラメーター(以下、SP値ともいう)は、内層を構成している重合体のSP値よりも高いことが、塗膜の可撓性および造膜性を向上させる観点から好ましい。また、内層を構成している重合体のSP値と外層を構成している重合体のSP値の差(絶対値)は、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から、大きいことが好ましい。
なお、SP値は、ヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された正則溶液論により定義される値であり、2成分系溶液の溶解度の目安にもなっている。一般に、SP値が近い物質同士は互いに混ざりやすい傾向がある。したがって、SP値は、溶質と溶媒との混ざりやすさを判断する目安にもなっている。
内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との質量比(内層を構成している重合体/外層を構成している重合体)は、塗膜強度および塗膜の耐透水性を向上させる観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは15/85以上であり、耐凍害性を向上させる観点から、好ましくは60/40以下である。
また、エマルション粒子における内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との合計含有率は、塗膜強度、塗膜の耐透水性および耐凍害性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以上であり、内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との合計含有量が多いほど好ましく、その上限値は100質量%である。
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルション粒子自体の機械的安定性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、塗膜の耐水性を向上させる観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。
なお、本明細書において、エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
樹脂エマルションにおける不揮発分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
なお、樹脂エマルションにおける不揮発分量は、樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
また、樹脂エマルションの最低造膜温度は、造膜性を向上させる観点から、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下である。本発明の樹脂エマルションの最低造膜温度は、例えば、エマルション粒子全体のガラス転移温度や外層のガラス転移温度を調節することによって調整することができる。
なお、本明細書において、樹脂エマルションの最低造膜温度は、熱勾配試験機の上に置いたガラス板上に樹脂エマルションを厚さが0.2mmとなるようにアプリケーターで塗工し、クラックが生じたときの温度を意味する。
以上のようにして得られるエマルション粒子を水性樹脂組成物に用いることにより、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成することができる。
本発明において、水溶性ポリマーの原料として用いられる単量体成分(以下、単量体成分Cという)は、カルボニル基含有単量体1〜30質量%を含有する。
このように、本発明においては単量体成分Cを重合させることによって得られる水溶性ポリマーが前記エマルション粒子とともに用いられているので、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成することができる。
単量体成分Cに用いられるカルボニル基含有単量体としては、単量体成分Aに用いられるカルボニル基含有単量体と同様のものを例示することができる。より具体的には、カルボニル基含有単量体としては、例えば、アクリロレイン、メタクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、アクリルオキシアルキルプロペナール、メタクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニルアクリレート、アセトニルメタクリレート、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチルアクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチルメタクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボニル基含有単量体のなかでは、耐水白化性に優れるのみならず、耐水クラック性、耐水変形性、耐候性および長期親水性にも総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、アクリロレイン、メタクロレイン、ホウミルスチロール、ビニルエチルケトン、アクリルオキシアルキルプロペナール、メタクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニルアクリレート、アセトニルメタクリレート、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミドおよびダイアセトンメタクリルアミドが好ましく、アクリロレイン、メタクロレイン、ホウミルスチロール、アセトニルアクリレート、アセトニルメタクリレート、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミドおよびダイアセトンメタクリルアミドがより好ましく、アクリロレイン、メタクロレイン、アセトニルアクリレート、アセトニルメタクリレート、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミドおよびダイアセトンメタクリルアミドがさらに好ましく、ダイアセトンアクリレート、ダイアセトンメタクリレート、ダイアセトンアクリルアミドおよびダイアセトンメタクリルアミドがさらに一層好ましい。
単量体成分Cにおけるカルボニル基含有単量体の含有率は、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
単量体成分Cにおけるカルボニル基含有単量体以外の単量体には、水溶性ポリマーを与える単量体が用いられる。水溶性ポリマーを与える単量体として、水溶性モノマーを用いることができる。
水溶性モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水溶性モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。水溶性モノマーのなかでは、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成する観点から、N−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタムが好ましく、N−ビニルピロリドンがより好ましい。
単量体成分Cにおける水溶性モノマーの含有率は、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、99質量%以下、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下である。
なお、単量体成分Cには、本発明の目的を阻害しない範囲内で、他のモノマーCが含まれていてもよい。他のモノマーCとしては、例えば、単量体成分Aに用いられるアルキル(メタ)アクリレート、脂環構造を有する単量体、水酸基含有(メタ)アクリレート、芳香族系単量体、ケイ素原子含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、紫外線吸収性単量体、紫外線安定性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。単量体成分Cにおける他のモノマーCの含有率は、当該他のモノマーの種類などによって異なることから一概には決定することができないが、水溶性ポリマーの水溶性を維持する観点から、通常、10質量%以下であることが好ましい。
水溶性ポリマーは、カルボニル基含有単量体と水溶性モノマーと必要により他のモノマーCとのランダムコポリマーであってもよく、ブロックコポリマーであってもよく、あるいはグラフトコポリマーであってもよい。これらのなかでは、水溶性ポリマーは、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、グラフトコポリマーであることが好ましい。
水溶性ポリマーは、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、沈殿重合法などの重合方法によって調製することができる。これらの重合方法のなかでは、溶液重合法が好ましく、溶媒として水を用いた溶液重合法がより好ましい。
水溶性ポリマーを溶液重合法によって調製する場合、溶媒が用いられる。溶媒としては、例えば、水、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、アミド、スルホキシド、炭化水素化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。好適な溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トルエン、酢酸エチルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
なお、前記溶媒には、必要により、有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属水酸化物などが適量で含まれていてもよい。
水溶性ポリマーを調製する際の重合温度は、特に限定されないが、通常、好ましくは0〜100℃、より好ましくは50〜80℃である。また、重合反応の際の圧力は、常圧であってもよく、減圧であってもよく、あるいは加圧であってもよい。重合反応の際の雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
単量体成分Cを重合させることによって水溶性ポリマーを調製する場合、および水溶性モノマーを含有する幹ポリマー用単量体成分を重合させた後、得られた幹ポリマーに単量体成分Cをグラフト共重合させることによって水溶性ポリマーを調製する場合のいずれの場合においても、重合の際に重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ジtert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)p−ジイソプロピルヘキシンなどのジアルキルパーオキサイド;tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジtert−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどのパーオキシエステル;n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレエート、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。重合に供させる単量体成分100質量部あたりの重合開始剤の量は、特に限定されないが、通常、0.01〜10質量部程度であることが好ましい。なお、重合開始剤は、重合反応の開始時に一括で仕込んでもよく、重合反応中に逐次添加してもよい。
前記重合開始剤は、適量の還元剤と併用することができる。還元剤としては、例えば、鉄(II)塩、亜ジチオン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、アスコルビン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
以上のようにして単量体成分Cを重合させるか、または水溶性モノマーを含有する幹ポリマー用単量体成分を重合させた後、得られた幹ポリマーに単量体成分Cをグラフト共重合させることにより、水溶性ポリマーを調製することができる。
水溶性ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、好ましくは1000〜300万、より好ましくは3000〜100万、さらに好ましくは5000〜50万、さらに一層好ましくは7000〜30万、特に好ましくは1万〜10万である。
本発明の水性樹脂組成物は、エマルション粒子と水溶性ポリマーとを混合することによって容易に調製することができる。エマルション粒子は、通常、当該エマルション粒子を調製したときに得られる樹脂エマルションの状態で用いることができる。
エマルション粒子と水溶性ポリマーとの質量比〔エマルション粒子/水溶性ポリマー(不揮発分量)〕は、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、好ましくは60/40〜99/1であり、より好ましくは70/30〜99/1であり、さらに好ましくは75/25〜99/1であり、さらに一層好ましくは80/20〜98/2であり、特に好ましくは90/10〜97/3である。
なお、本発明の水性樹脂組成物には、エマルション粒子と水溶性ポリマーとの反応を促進させ、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、多官能化合物を水性樹脂組成物に含有させることが好ましい。
前記多官能化合物は、カルボキシル基、ヒドラジノ基、オキサゾリン基およびエポキシ基のうちの少なくとも1種を2個以上有する化合物であることが好ましく、ヒドラジノ基を2つ以上有する化合物であることがより好ましい。
前記多官能化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどの炭素数2〜10のジカルボン酸ジヒドラジド、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジンなどの炭素数2〜4の脂肪族水溶性ジヒドラジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの多官能化合物のなかでは、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジドなどの炭素数4〜6のジカルボン酸ジヒドラジドが好ましく、アジピン酸ジヒドラジドがより好ましい。
エマルション粒子および水溶性樹脂と多官能化合物との質量比〔エマルション粒子および水溶性樹脂/多官能化合物(不揮発分量)〕は、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成させる観点から、好ましくは80/20〜99.9/0.1、より好ましくは90/10〜99.7/0.3、さらに好ましくは92/8〜99.5/0.5、さらに一層好ましくは94/6〜99.3/0.7である。
また、本発明の水性樹脂組成物には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、成膜助剤、消泡剤、pH緩衝剤、キレート剤、顔料、染料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、充填剤、レベリング剤、分散剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、艶消剤、凍結防止剤、コロイダルシリカなどの添加剤が適量で含まれていてもよい。
本発明の水性樹脂組成物における不揮発分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。本発明の水性樹脂組成物における不揮発分量は、例えば、本発明の水性樹脂組成物における含水量を調整することによって調節することができる。
なお、本明細書において、水性樹脂組成物における不揮発分量は、水性樹脂組成物1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔水性樹脂組成物における不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔水性樹脂組成物1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
本発明の水性樹脂組成物は、そのままの状態で、または前記添加剤を添加することにより、例えば、水性塗料などとして用いることができる。
本発明の水性樹脂組成物は、例えば、金属、ガラス、磁器、コンクリート、サイディングボード、樹脂などの素材からなる基材の表面仕上げに好適に使用することができる。本発明の水性樹脂組成物は、なかでも建築物の外装および窯業系建材のトップコートに好適に使用することができる。
窯業系建材としては、例えば、瓦、外壁材などが挙げられる。窯業系建材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料などを添加し、得られた混合物を成形し、得られた成形体を養生し、硬化させることによって得られる。建築物の外装を構成する無機質建材としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボードなどが挙げられる。
このような建材の表面には、通常、所望の意匠を付与するために、上塗り材(水性塗料)が塗布されている。本発明の水性樹脂組成物は、この上塗り材(水性塗料)に好適に使用することができる。
なお、本発明の水性樹脂組成物には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の樹脂成分およびエマルション粒子が含まれていてもよい。
本発明の水性樹脂組成物は、それ単独で1層で塗工してもよく、2層以上に重ね塗りすることによって塗工してもよい。2層以上に重ね塗りすることによって塗工する場合、その一部の層のみが本発明の水性樹脂組成物によって形成されてもよく、全部の層が本発明の水性樹脂組成物で形成されてもよい。重ね塗りは、例えば、プライマー処理やシーラー処理などを施した被塗物に、第1層(例えば、下塗り層)用塗料を塗布して乾燥させた後、第2層(例えば、上塗り層)用塗料を上塗りし、乾燥させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法によって限定されるものではない。塗料を塗布する際には、例えば、スプレー、ローラー、ハケ、コテなどを用いることができる。
以上のようにして得られる本発明の水性樹脂組成物は、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れた塗膜を形成することから、例えば、建築物の外装や窯業系建材などの表面に塗装されるトップコートと呼ばれている上塗り材(水性塗料)に好適に使用することができる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、「部」は「質量部」を意味する。
製造例A1
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水560部を入れた。
一方、滴下ロート内で脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10の25%水溶液〕80部、2−エチルへキシルアクリレート20部、シクロヘキシルメタクリレート400部、スチレン50部、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、アクリル酸10部および2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうちの単量体成分の総量の5質量%にあたる74部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液20部をフラスコ内に添加することにより、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部、5%過硫酸カリウム水溶液10部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10の25%水溶液〕80部、2−エチルへキシルアクリレート305部、シクロヘキシルメタクリレート100部、スチレン50部、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、アクリル酸10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部およびダイアセトンアクリルアミド15部からなる2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸カリウム水溶液10部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整して重合を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同じ)の金網で濾過することにより、不揮発分の含有率が49質量%である樹脂エマルションを得た。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子の内層のガラス転移温度は73℃であり、外層のガラス転移温度は−29℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は12℃であった。前記エマルション粒子の平均粒子径は150nmであった。
製造例A2
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水560部を入れた。
一方、滴下ロート内で脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10の25%水溶液〕80部、2−エチルへキシルアクリレート305部、シクロヘキシルメタクリレート115部、スチレン50部、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、アクリル酸10部および2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうちの単量体成分の総量の5質量%にあたる74部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液20部をフラスコ内に添加することにより、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部、5%過硫酸カリウム水溶液10部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を、80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10の25%水溶液〕80部、2−エチルへキシルアクリレート20部、シクロヘキシルメタクリレート385部、スチレン50部、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、アクリル酸10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部およびダイアセトンアクリルアミド15部からなる2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸カリウム水溶液10部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物を、80℃で60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整して重合を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、不揮発分の含有率が49質量%である樹脂エマルションを得た。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子の内層のガラス転移温度は−29℃であり、外層のガラス転移温度は73℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は12℃であった。前記エマルション粒子の平均粒子径は150nmであった。
製造例A3
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水560部を入れた。
一方、滴下ロート内で脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10の25%水溶液〕80部、2−エチルへキシルアクリレート30部、メチルメタクリレート100部、シクロヘキシルメタクリレート350部、メタクリル酸10部および2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうちの単量体成分の総量の5質量%にあたる74部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液20部をフラスコ内に添加することにより、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部、5%過硫酸カリウム水溶液10部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10の25%水溶液〕80部、2−エチルへキシルアクリレート360部、シクロヘキシルメタクリレート50部、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン20部、グリセリンモノメタクリレート20部およびダイアセトンアクリルアミド40部からなる2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸カリウム水溶液10部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整して重合を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、不揮発分の含有率が49質量%である樹脂エマルションを得た。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子の内層のガラス転移温度は70℃であり、外層のガラス転移温度は−43℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は6℃であった。前記エマルション粒子の平均粒子径は150nmであった。
製造例A4
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水560部を入れた。
一方、滴下ロート内で脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10の25%水溶液)80部、メチルメタクリレート100部、シクロヘキシルメタクリレート240部、tert−ブチルメタクリレート140部、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン10部および2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうちの単量体成分の総量の5質量%にあたる74部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液20部をフラスコ内に添加することにより、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部、5%過硫酸カリウム水溶液10部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10の25%水溶液)80部、ブチルアクリレート455部、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、グリセリンモノメタクリレート10部およびダイアセトンアクリルアミド15部からなる2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸カリウム水溶液10部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整して重合を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、不揮発分の含有率が49質量%である樹脂エマルションを得た。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子の内層のガラス転移温度は97℃であり、外層のガラス転移温度は−49℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は6℃であった。前記エマルション粒子の平均粒子径は140nmであった。
製造例A5
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水560部を入れた。
一方、滴下ロート内で脱イオン水326部、乳化剤〔ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10の25%水溶液〕160部、2−エチルへキシルアクリレート325部、シクロヘキシルメタクリレート500部、スチレン100部、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20部、アクリル酸20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20部およびダイアセトンアクリルアミド15部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうちの単量体成分の総量の5質量%にあたる74部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液20部をフラスコ内に添加することにより、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部、5%過硫酸カリウム水溶液20部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液20部を240分間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整して重合を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、不揮発分の含有率が49質量%である樹脂エマルションを得た。得られたエマルション粒子のガラス転移温度は12℃であった。前記エマルション粒子の平均粒子径は140nmであった。
製造例A6
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水560部を入れた。
一方、滴下ロート内で脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10の25%水溶液〕80部、2−エチルへキシルアクリレート305部、シクロヘキシルメタクリレート100部、スチレン50部、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、アクリル酸10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部およびダイアセトンアクリルアミド15部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうちの単量体成分の総量の5質量%にあたる74部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸カリウム水溶液20部をフラスコ内に添加することにより、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部、5%過硫酸カリウム水溶液10部および2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、引き続いて脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10の25%水溶液〕80部、2−エチルへキシルブチルアクリレート20部、シクロヘキシルメタクリレート325部、スチレン50部、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、アクリル酸10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部およびダイアセトンアクリルアミド75部からなる2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸カリウム水溶液10部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を120分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持し、25%アンモニア水をフラスコ内に添加し、pHを9に調整して重合を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、不揮発分の含有率が49質量%である樹脂エマルションを得た。
前記で得られた樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子の内層のガラス転移温度は−30℃であり、外層のガラス転移温度は71℃であり、エマルション粒子全体のガラス転移温度は12℃であった。前記エマルション粒子の平均粒子径は、150nmであった。
製造例B1
冷却管、窒素ガス導入管および温度計を備えた反応容器内に脱イオン水206部およびN−ビニルピロリドン90部を添加し、窒素ガスを反応容器内に導入することにより、窒素ガス雰囲気とした。室温下で攪拌しながら0.1%硫酸銅水溶液0.045部、25%アンモニア水0.5部および30%過酸化水素水2.1部を反応容器内に添加することにより、重合を開始した。内温が反応熱によって上昇した後、80℃で1.5時間攪拌を続けた。
次に、30%過酸化水素水1.0部を反応容器内に添加し、さらに80℃で1時間攪拌することにより、水溶性ポリマーを含有するポリマー溶液B1を得た。前記で得られたポリマー溶液B1における不揮発分の含有率は30.0質量%であり、K値は29.8であった。
なお、前記K値は、水溶性ポリマーを水に溶解させ、濃度が1質量%の水溶液を調製し、得られた水溶液の25℃における粘度を毛細管粘度計で測定し、その測定値から式:
(logηrel)/C=〔(75K0 2)/(1+1.5K0×C)〕+K0K=1000K0
(式中、Cは、水溶液100mlに含まれる水溶性ポリマーの質量(g)、ηrelは、溶媒(水)に対する水溶液の粘度を示す)
で表わされるフィケンチャー式に基づいて求められた値である。
一般に、前記K値が高いほど水溶性ポリマーの分子量が高いことが判明している。
製造例B2
冷却管、窒素ガス導入管および温度計を備えた反応容器に、製造例B1で得られたポリマー溶液B1900部を添加し、窒素ガスを反応容器内に導入することにより、窒素ガス雰囲気とした。室温下で攪拌しながら85℃まで昇温し、ダイアセトンアクリルアミド30部、アクリル酸3部、脱イオン水33部および25%アンモニア水1部を混合した水溶液を120分間かけて反応容器内に添加した。これと併行して過硫酸アンモニウム1.5部を脱イオン水48.5部に溶解させた水溶液を120分間かけて反応容器内に添加した。添加終了後、85℃で1時間攪拌することにより、重合を終了した。得られた水溶性ポリマーを含有するポリマー溶液における不揮発分の含有率は30.1質量%であった。
製造例B3
冷却管、窒素ガス導入管および温度計を備えた反応容器内に製造例B1で得られたポリマー溶液400部を添加し、窒素ガスを反応容器内に導入することにより、窒素ガス雰囲気とした。室温下で攪拌しながら85℃まで昇温し、ダイアセトンアクリルアミド30部、アクリル酸3部、脱イオン水33部および25%アンモニア水1部を混合した水溶液を120分間かけて反応容器内に添加した。これと併行して過硫酸アンモニウム1.5部を脱イオン水48.5部に溶解させた水溶液を120分間かけて反応容器内に添加した。添加終了後、85℃で1時間撹拌することにより、重合を終了した。得られた水溶性ポリマーを含有するポリマー溶液における不揮発分の含有率は、29.9質量%であった。
製造例B4
冷却管、窒素ガス導入管および温度計を備えた反応容器内に製造例B1で得られたポリマー溶液3230部を添加し、窒素ガスを反応容器内に導入することにより、窒素ガス雰囲気とした。室温下で攪拌しながら85℃まで昇温し、ダイアセトンアクリルアミド30部、アクリル酸3部、脱イオン水33部および25%アンモニア水1部を混合した水溶液を120分間かけて反応容器内に添加した。これと併行して過硫酸アンモニウム1.5部を脱イオン水48.5部に溶解させた水溶液を120分間かけて反応容器内に添加した。添加終了後、85℃で1時間攪拌することにより、重合を終了した。得られた水溶性ポリマーを含有するポリマー溶液における不揮発分の含有率は、30.0質量%であった。
製造例B5
冷却管、窒素ガス導入管および温度計を備えた反応容器内に製造例B1で得られたポリマー溶液150部を添加し、窒素ガスを反応容器内に導入することにより、窒素ガス雰囲気とした。室温下で攪拌しながら85℃まで昇温し、ダイアセトンアクリルアミド30部、アクリル酸3部、脱イオン水33部および25%アンモニア水1部を混合した水溶液を120分間かけて反応容器内に添加した。これと併行して過硫酸アンモニウム1.5部を脱イオン水48.5部に溶解させた水溶液を反応容器内に120分間かけて添加した。添加終了後、85℃で1時間攪拌することにより、重合を終了した。得られた水溶性ポリマーを含有するポリマー溶液における不揮発分の含有率は、29.9質量%であった。
調製例1
脱イオン水210部、分散剤〔花王(株)製、商品名:デモールEP〕60部、分散剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:ディスコートN−14〕50部、湿潤剤〔花王(株)製、商品名:エマルゲンLS−106〕10部、プロピレングリコール60部、酸化チタン〔石原産業(株)製、品番:CR−95〕1000部およびガラスビーズ(直径:1mm)200部をホモディスパーで回転速度3000min-1にて60分間分散させることにより、白色ペーストを調製し、以下の実施例または比較例で用いた。
実施例1
製造例A1で得られた樹脂エマルションおよび製造例B2で得られた水溶性ポリマーを樹脂エマルションの不揮発分と水溶性ポリマーの不揮発分との質量比(樹脂エマルション/水溶性ポリマー)が90/10となるように混合することにより、水性樹脂組成物を調製した。前記で得られた水性樹脂組成物100部および5%アジピン酸ジヒドラジド水溶液10部をフラスコ内に添加した。
成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕およびブチルセロソルブを等体積で混合することによって混合溶液を得た。前記で得られた混合溶液10部をフラスコ内に添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間攪拌した後、白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部をフラスコ内に添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックスフィールド社製、品番:KU−1)を用いて測定した25℃における粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットWR−503A〕をフラスコ内に添加し、その状態で30分間攪拌することにより、試料を調製した。
実施例2
製造例A2で得られた樹脂エマルションおよび製造例B2で得られた水溶性ポリマーを樹脂エマルションの不揮発分と水溶性ポリマーの不揮発分との質量比(樹脂エマルション/水溶性ポリマー)が90/10となるように混合することにより、水性樹脂組成物を調製した。前記で得られた水性樹脂組成物100部および5%アジピン酸ジヒドラジド水溶液10部をフラスコ内に添加した。
成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレート〔チッソ(株)製、品番CS−12〕とブチルセロソルブを等体積で混合することにより、混合溶液を得た。前記で得られた混合溶液10部をフラスコ内に添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間攪拌した後、白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部をフラスコ内に添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックスフィールド社製、品番:KU−1)を用いて測定した25℃における粘度が80KUになるように増粘剤〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットWR−503A〕をフラスコ内に添加し、その状態で30分間攪拌することにより、試料を調製した。
実施例3
製造例A3で得られた樹脂エマルションおよび製造例B3で得られた水溶性ポリマーを樹脂エマルションの不揮発分と水溶性ポリマーの不揮発分との質量比(樹脂エマルション/水溶性ポリマー)が90/10となるようにフラスコ内で混合することにより、水性樹脂組成物を調製した。前記で得られた水性樹脂組成物100部および5%アジピン酸ジヒドラジド水溶液10部をフラスコ内に添加した。
成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレート〔チッソ(株)製、品番CS−12〕とブチルセロソルブを等体積で混合することによって混合溶液を得た。前記で得られた混合溶液10部をフラスコ内に添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間攪拌した後、白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部をフラスコ内に添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックスフィールド社製、品番:KU−1)を用いて測定した25℃における粘度が80KUになるように増粘剤〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットWR−503A〕をフラスコ内に添加し、その状態で30分間攪拌することにより、試料を調製した。
実施例4
製造例A4で得られた樹脂エマルションおよび製造例B4で得られた水溶性ポリマーを樹脂エマルションの不揮発分と水溶性ポリマーの不揮発分との質量比(樹脂エマルション/水溶性ポリマー)が90/10となるようにフラスコ内で混合することにより、水性樹脂組成物を調製した。前記で得られた水性樹脂組成物100部および5%アジピン酸ジヒドラジド水溶液10部をフラスコ内に添加した。
成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレート〔チッソ(株)製、品番CS−12〕とブチルセロソルブを等体積で混合することにより、混合溶液を得た。前記で得られた混合溶液10部をフラスコ内に添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間攪拌した後、白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部をフラスコ内に添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックスフィールド社製、品番:KU−1)を用いて測定した25℃における粘度が80KUになるように増粘剤〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットWR−503A〕をフラスコ内に添加し、その状態で30分間攪拌することにより、試料を調製した。
比較例1
製造例A5で得られた樹脂エマルションおよび製造例B2で得られた水溶性ポリマーを樹脂エマルションの不揮発分と水溶性ポリマーの不揮発分との質量比(樹脂エマルション/水溶性ポリマー)が90/10となるようにフラスコ内で混合することにより、水性樹脂組成物を調製した。前記で得られた水性樹脂組成物100部および5%アジピン酸ジヒドラジド水溶液10部をフラスコ内に添加した。
成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレート〔チッソ(株)製、品番CS−12〕とブチルセロソルブを等体積で混合することにより、混合溶液を得た。前記で得られた混合溶液10部をフラスコ内に添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間攪拌した後、白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部をフラスコ内に添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックスフィールド社製、品番:KU−1)を用いて測定した25℃における粘度が80KUになるように増粘剤〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットWR−503A〕をフラスコ内に添加し、その状態で30分間攪拌することにより、試料を調製した。
比較例2
製造例A6で得られた樹脂エマルションおよび製造例B2で得られた水溶性ポリマーを樹脂エマルションの不揮発分と水溶性ポリマーの不揮発分との質量比(樹脂エマルション/水溶性ポリマー)が90/10となるようにフラスコ内で混合することにより、水性樹脂組成物を調製した。前記で得られた水性樹脂組成物100部および5%アジピン酸ジヒドラジド水溶液10部をフラスコ内に添加した。
成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレート〔チッソ(株)製、品番CS−12〕とブチルセロソルブを等体積で混合することにより、混合溶液を得た。前記で得られた混合溶液10部をフラスコ内に添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間攪拌した後、白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部をフラスコ内に添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックスフィールド社製、品番:KU−1)を用いて測定した25℃における粘度が80KUになるように増粘剤〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットWR−503A〕をフラスコ内に添加し、その状態で30分間攪拌することにより、試料を調製した。
比較例3
製造例A1で得られた樹脂エマルションおよび製造例B5で得られた水溶性ポリマーを樹脂エマルションの不揮発分と水溶性ポリマーの不揮発分との質量比(樹脂エマルション/水溶性ポリマー)が90/10となるようにフラスコ内で混合することにより、水性樹脂組成物を調製した。前記で得られた水性樹脂組成物100部および5%アジピン酸ジヒドラジド水溶液10部をフラスコ内に添加した。
成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレート〔チッソ(株)製、品番CS−12〕とブチルセロソルブを等体積で混合することにより、混合溶液を得た。前記で得られた混合溶液10部をフラスコ内に添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間攪拌した後、白色ペースト30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部をフラスコ内に添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックスフィールド社製、品番:KU−1)を用いて測定した25℃における粘度が80KUになるように増粘剤〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットWR−503A〕をフラスコ内に添加し、その状態で30分間攪拌することにより、試料を調製した。
次に、前記で得られた試料を用いて以下に示す水性樹脂組成物の物性を調べた。その結果を表1に示す。
<耐水クラック性>
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕に試料を20milアプリケーターで塗布し、23℃の雰囲気中で1日間乾燥させることにより、塗膜を形成させた。
次に塗膜が形成されたスレート板を23℃の水中に1日間浸漬させた後、当該スレート板を水中から取り出し、50℃の熱風乾燥機中で12時間乾燥させた。乾燥後の塗膜の外観を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて耐水クラック性を評価した。
(評価基準)
○:塗膜に異常なし
△:塗膜にクラックが数ヵ所存在する。
×:塗膜の全面にクラックが存在する。
<耐水変形性>
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃の雰囲気中で1週間乾燥させた。
次に、試料を10milアプリケーターで前記シーラーが塗布されたスレート板に塗布し、5℃の雰囲気中で1日間乾燥させた。乾燥させたスレート板を23℃の水中に1日間浸漬させた後、水中から取り出し、その塗膜の外観を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて耐水変形性を評価した。
(評価基準)
○:塗膜に異常なし
△:塗膜が変形した(膨れた)箇所が数ヵ所存在する。
×:塗膜の全面に変形した(膨れた)箇所が存在する。
<耐水白化性>
試料をポリメチルメタクリレートからなる黒色アクリル板〔日本テストパネル(株)製、縦:75mm、横:150mm、厚さ:3mm〕またはアルミニウム板〔日本テストパネル(株)製、品番:A1050P(縦:75mm、横:150mm、厚さ:0.3mm)〕に5milアプリケーターで塗布し、100℃の熱風乾燥機にて10分間乾燥させることにより、被膜(被膜の厚さ:約40μm)が形成された試験板を作製した。
前記で得られた試験板のL値(L0)を色差計〔日本電色工業(株)製、商品名:分光式色差計SE−2000〕で測定した。
次に、前記試験板を23℃の水中に24時間浸漬させた後、水中から引き上げ、キムタオル〔日本製紙クレシア(株)製〕で水分を拭き取り、1分間以内に前記色差計で試験板のL値(L1)を測定した。
耐水白化性は、式:
[L値の変化値(ΔL)]=[(L1)−(L0)]
に基づいてΔLを求め、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:ΔLが5未満
△:ΔLが5以上10未満
×:ΔLが10以上
<耐候性>
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃の雰囲気中で1週間乾燥させた。
試料を10milアプリケーターで前記スレート板に塗布し、23℃の雰囲気中にて1週間乾燥させた後、当該試料が塗布されたスレート板の側面および背面をアルミニウムテープでシールすることにより、試験片を作製した。前記で得られた試験片の試料が塗布された面の60°鏡面光沢を光沢計〔日本電色工業(株)製、品番:VG2000〕で測定した。
次に、前記試験片に対し、以下の耐候性試験条件にて1000時間耐候性試験を行なった後、前記と同様にして試験片の試料が塗布された面の60°鏡面光沢を光沢計で測定し、式:
〔光沢保持率(%)〕=〔〔耐候性試験後の光沢〕÷〔耐候性試験前の光沢〕〕×100
に基づいて光沢保持率を求め、以下の評価基準に基づいて耐候性を評価した。
(耐候性試験条件)
試験機:メタルウェザー〔ダイプラ・ウィンテス(株)製、品番:KU−R4〕
照射:気温65℃で相対湿度50%の雰囲気中で4時間照射(照射強度:80mW/cm2)
湿潤:気温35℃で相対温度98%の雰囲気中で4時間
シャワー:湿潤前後に各30秒間
(評価基準)
○:光沢保持率が80%以上
△:光沢保持率が60%以上80%未満
×:光沢保持率が60%未満
<長期親水性>
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃の雰囲気中で1週間乾燥させた。
次に、試料を10milアプリケーターで塗布し、23℃の雰囲気中にて1週間乾燥させることにより、試験板を作製した。
前記で得られた試験板にシャワーで60秒間散水した後、23℃の雰囲気中で1日間乾燥させた。前記操作を1サイクルとし、当該操作を試験板に対して5サイクル行ない、塗膜の表面の水の接触角を接触角測定器〔協和界面科学(株)製、FACE接触角計CA−X型〕で測定し、以下の評価基準に基づいて長期親水性を評価した。
(評価基準)
○:水の接触角が50°未満
△:水の接触角が50°以上65°未満
×:水の接触角が65°以上
<総合評価>
各評価基準において、○の評価を20点、△の評価を10点、×の評価を0点とし、各評価の得点を合計することにより、総合評価を行なった。なお、物性の評価に×の評価が1以上有する水性樹脂組成物は、不合格である。
表1に示された結果から、各実施例で得られた塗料用水性樹脂組成物は、各比較例で得られた塗料用水性樹脂組成物と対比して、耐水クラック性、耐水変形性、耐水白化性、耐候性および長期親水性に総合的に優れていることがわかる。