本発明の積層塗膜は、前記したように、顔料およびアクリル系重合体からなるエマルション粒子を含有する塗料で形成された上層の塗膜と、顔料およびアクリル系重合体からなるエマルション粒子を含有する塗料で形成された下層の塗膜とを有し、上層の塗膜における顔料の含有率が10〜25体積%であり、下層の塗膜における顔料の含有率と上層の塗膜における顔料の含有率との差の絶対値が50〜65体積%である積層塗膜であって、前記上層の塗膜を形成する塗料に含有されているエマルション粒子を構成する少なくとも1つの樹脂層の原料として用いられる単量体成分に炭素数が4〜10のシクロアルキル基を有する単量体が含有され、当該単量体成分における炭素数が4〜10のシクロアルキル基を有する単量体の含有率が1〜90質量%であることを特徴とする。
顔料を含有する上層の塗膜は、例えば、顔料を含有する上層用水性塗料を用いて形成することができる。好適な顔料を含有する上層用水性塗料としては、単量体成分を乳化重合させることによって得られる樹脂エマルションおよび顔料を含有する上層用水性塗料などが挙げられる。前記樹脂エマルションは、例えば、単量体成分を乳化剤の存在下で乳化重合させることによって得ることができる。
単量体成分としては、例えば、エチレン性不飽和単量体、芳香族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのカルボキシル基含有単量体のなかでは、エマルション粒子の分散安定性を向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸が好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸がより好ましい。
オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2〜6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N−ビニルピロリドンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、アラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、本発明においては、エマルション粒子に紫外線安定性や紫外線吸収性を付与する観点から、本発明の目的が阻害されない範囲内で、紫外線安定性単量体、紫外線吸収性単量体などを単量体成分に含有させてもよい。
紫外線安定性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイル−1−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
紫外線吸収性単量体としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体、ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシメチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルアミノメチル−5’−tert−オクチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(β−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3’−tert−ブチルフェニル]−4−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾトリアゾール系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシ]プロポキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−4−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]ブトキシベンゾフェノンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのベンゾフェノン系紫外線吸収性単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、本発明においては、耐水性、接着性、光透過性、耐クラック性および耐候性に総合的に優れた積層塗膜を得る観点から、単量体成分におけるカルボキシル基などの酸基を有する単量体の含有率は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下、さらに一層好ましくは0.1質量%以下である。
単量体成分を乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、撹拌下で単量体成分および重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた単量体成分を水または水性媒体中に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合生成物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの1種以上を共重合成分とする共重合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、前記乳化剤として、塗膜の耐水性を向上させる観点から、重合性基を有する乳化剤、すなわち、いわゆる反応性乳化剤が好ましく、環境保護の観点から、非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましい。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩〔例えば、三洋化成工業(株)製、商品名:エレミノールRS−30など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH−10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE−10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR−10、SR−30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS−60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER−20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN−20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE−10など)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
乳化剤の量は、単量体成分100質量部あたり、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、特に好ましくは3質量部以上であり、塗膜の耐水性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは4質量部以下である。
重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤の量は、単量体成分100質量部あたり、重合速度を高め、未反応の単量体成分の残存量を低減させる観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、塗膜の耐水性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、単量体成分を反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部を添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、反応系内には、必要により、例えば、tert−ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤などの添加剤を添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
単量体成分を乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
単量体成分を乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
単量体成分を乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、2〜9時間程度である。
なお、単量体成分を乳化重合させるとき、得られる重合体が有する酸性基の一部または全部が中和剤で中和されるようにしてもよい。中和剤は、最終段で単量体成分を添加した後に使用してもよく、例えば、1段目の重合反応と2段目の重合反応との間に使用してもよく、初期の乳化重合反応の終了時に使用してもよい。
中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸化物;アンモニア、モノメチルアミンなどの有機アミンなどのアルカリ性物質が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの中和剤のなかでは、耐候性および耐温水白化性を向上させる観点から、アンモニアなどの揮発性を有するアルカリ性物質が好ましい。
また、単量体成分を乳化重合させるとき、耐候性および耐温水白化性を向上させる観点から、シランカップリング剤を適量で用いてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基などの重合性不飽和結合を有するシランカップリング剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
以上のようにして単量体成分を乳化重合させることにより、樹脂エマルションを調製することができる。
樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成する重合体は、架橋構造を有していてもよい。重合体の重量平均分子量は、重合体が架橋構造を有する場合および架橋構造を有しない場合のいずれの場合であっても、塗膜の耐水性を向上させる観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC−8120GPC、カラム:TSKgel G−5000HXLとTSKgel GMHXL−Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
なお、樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、1段の乳化重合によって調製された1種類の重合体のみで構成されていてもよいが、単量体成分を多段乳化重合させることによって調製された複数の樹脂層を有することが、耐水性、接着性、光透過性、耐クラック性および耐候性に総合的により優れた積層塗膜を得る観点から好ましい。エマルション粒子が複数の樹脂層を有する場合、その樹脂層の数は、特に限定されないが、好ましくは2〜5層、より好ましくは2〜4層、さらに好ましくは2〜3層である。
複数の樹脂層を有するエマルション粒子は、前記樹脂エマルション中で前記と同様にして単量体成分を乳化重合させることにより、前記エマルション粒子上に外層を形成させることができる。また、前記外層が形成されたエマルション粒子上にさらに外層を形成させる場合には、前記と同様にして樹脂エマルション中で単量体成分を乳化重合させることにより、前記エマルション粒子上にさらに外層を形成させることができる。このように多段乳化重合法により、多層構造を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションを調製することができる。また、多層構造を有するエマルション粒子を調製する際、内層を形成する乳化重合を行なう前に1段または複数段の乳化重合を行なってもよく、内層を形成する乳化重合と中間層を形成する乳化重合との間に1段または複数段の乳化重合を行なってもよい。また、中間層を形成する乳化重合と外層を形成する乳化重合との間に1段または複数段の乳化重合を行なってもよい。さらに、外層を形成する乳化重合の後に1段または複数段の乳化重合を行なってもよい。
エマルション粒子は、多層構造の樹脂層を有し、アクリル系重合体からなるエマルション粒子であることが、耐水性、接着性、光透過性および耐クラック性に総合的により優れた積層塗膜を得る観点から好ましい。
複数の樹脂層を有するエマルション粒子において、耐水性、接着性、光透過性および耐クラック性に総合的により優れた積層塗膜を得る観点から、当該エマルション粒子を構成する少なくとも1つの樹脂層の原料として用いられる単量体成分に脂環構造を有する単量体が含まれていることが好ましく、当該エマルション粒子を構成するいずれの樹脂層にも、原料として用いられる単量体成分に脂環構造を有する単量体が含まれていることが好ましい。
脂環構造を有する単量体において、脂環構造は、好ましくは炭素数が4〜20のシクロアルキル基、より好ましくは炭素数が4〜10のシクロアルキル基である。脂環構造を有する単量体としては、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの脂環構造を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。脂環構造を有する単量体は、本発明の目的を阻害しない範囲内で置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
シクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基の炭素数が好ましくは4〜20、より好ましくは4〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシクロアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
シクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル基の炭素数が好ましくは4〜20、より好ましくは4〜10のシクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
脂環構造を有する単量体のなかでは、耐水性、接着性、光透過性および耐クラック性に総合的により優れた積層塗膜を得る観点から、炭素数が4〜20のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が4〜10のシクロアルキル基を有するシクロアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
単量体成分における脂環構造を有する単量体の含有率は、耐水性、接着性および光透過性を向上させる観点から、好ましくは1〜90質量%、より好ましくは3〜75質量%、さらに好ましくは5〜60質量%である。また、単量体成分には、耐水性、接着性および光透過性を向上させる観点から、好ましくは10〜99質量%、より好ましくは25〜97質量%、さらに好ましくは40〜95質量%の範囲内で、脂環構造を有する単量体と共重合可能な単量体が含有されていてもよい。
脂環構造を有する単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、前記芳香族系単量体、前記エチレン性不飽和単量体などのうち、脂環構造を有しない単量体などが挙げられる。脂環構造を有する単量体と共重合可能な好適な単量体としては、例えば、芳香族系単量体、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などのエチレン性不飽和単量体などが挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの単量体のなかでは、耐水性、接着性および光透過性を向上させる観点から、エチレン性不飽和単量体が好ましく、炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートがより好まく、tert−ブチル(メタ)アクリレートおよび/または2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。単量体成分における前記単量体の含有率は、耐水性、接着性、光透過性および耐クラック性に総合的により優れた積層塗膜を得る観点から、好ましくは10〜99質量%、より好ましくは20〜98質量%、さらに好ましくは30〜98質量%である。
また、前記エマルション粒子の内層を構成する樹脂層の原料として用いられる単量体成分には、耐水性、接着性、光透過性および耐クラック性に総合的により優れた積層塗膜を得る観点から、脂環構造を有する単量体と共重合可能な単量体として、スチレン系単量体が用いられていることが好ましい。スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、ベンゼン環にメチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの官能基が存在していてもよい。スチレン系単量体のなかでは、塗膜の耐水性を高める観点から、スチレンが好ましい。
外層を構成する重合体は、架橋構造を有していてもよい。重合体の重量平均分子量は、架橋構造を有する場合および架橋構造を有しない場合のいずれの場合であっても、塗膜の耐水性を向上させる観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。重合体の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、好ましくは100万以下、より好ましくは70万以下である。
また、複数層を有するエマルション粒子において、内層よりも内側に1層または複数層が形成されていてもよく、中間層と内層との間に1層または複数層が形成されていてもよく、外層と中間層との間に1層または複数層が形成されていてもよく、あるいは外層よりも外側に1層または複数層が形成されていてもよい。
なお、エマルション粒子を構成している重合体のガラス転移温度は、その重合体の原料として用いられる単量体成分に含まれている単量体からなる単独重合体のガラス転移温度(Tg)(絶対温度:K)と単量体の質量分率から、式(I):
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+W3/Tg3+・・・・+Wn/Tgn (I)
〔式中、Tgは、求めようとしている重合体のガラス転移温度(K)、W1、W2、W3・・・・Wnは、それぞれ各単量体の質量分率、Tg1、Tg2、Tg3・・・・Tgnは、それぞれ各単量体の質量分率に対応する単量体からなる単独重合体のガラス転移温度(K)を示す〕
に基づいて求めることができる。なお、重合体のガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定装置)、DTA(示差熱分析装置)、TMA(熱機械測定装置)によって測定することもできる。
エマルション粒子を構成している重合体のガラス転移温度の測定方法のうち、重合体の設計の利便性の観点から、エマルション粒子を構成している重合体のガラス転移温度には、主として式(I)に基づいて求められたガラス転移温度が用いられる。したがって、例えば、以下の製造例などにおいては、エマルション粒子を構成している重合体のガラス転移温度は、重合させる際に用いられたすべての単量体成分における各単量体の質量分率とこれに対応する単量体の単独重合体のガラス転移温度から求められたガラス転移温度を意味する。
なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計含有率が10質量%以下である場合には、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。また、単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計含有率が10質量%を超える場合には、単量体成分を重合させることによって得られた重合体のガラス転移温度を示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)などで測定することによって求められる。
このエマルション粒子を構成している重合体のガラス転移温度を考慮して、当該エマルション粒子を構成している重合体の原料として用いられる単量体成分の組成を決定することができる。
単独重合体のガラス転移温度は、例えば、アクリル酸の単独重合体では95℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、スチレンの単独重合体では100℃、シクロヘキシルメタクリレートの単独重合体では83℃、n−ブチルメタクリレートの単独重合体では20℃、2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では−70℃、ブチルアクリレートの単独重合体では−56℃、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの単独重合体では55℃、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンの単独重合体では130℃、2−[2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの単独重合体では100℃である。
複数の樹脂層を有するエマルション粒子の外層を構成している重合体のガラス転移温度は、塗膜の塗膜硬度を高め、塗膜の耐汚染性および耐摩耗性を向上させる観点から、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−30℃以上であり、低温での造膜性を向上させる観点から、好ましくは40℃以下、より好ましくは25℃以下である。
複数の樹脂層を有するエマルション粒子の内層を構成している重合体のガラス転移温度は、塗膜の塗膜硬度を高め、塗膜の耐汚染性および耐摩耗性を向上させる観点から、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−30℃以上であり、低温での造膜性を向上させる観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃以下である。
複数の樹脂層を有するエマルション粒子を構成している重合体全体のガラス転移温度は、塗膜の塗膜硬度を高め、塗膜の耐汚染性および耐摩耗性を向上させる観点から、好ましくは−10℃以上であり、造膜性を向上させる観点から、好ましくは30℃以下である。
複数の樹脂層を有するエマルション粒子の内層を構成している重合体と外層を構成している重合体との重量比(内層を構成している重合体/外層を構成している重合体)は、耐ブロッキング性および塗膜の耐水性を向上させる観点から、好ましくは25/75以上、より好ましくは35/65以上であり、造膜性および光透過性を向上させる観点から、好ましくは75/25以下、より好ましくは65/35以下である。
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルション粒子の貯蔵安定性を向上させる観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは70nm以上であり、塗膜の耐水性を向上させる観点から、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下である。
なお、本明細書において、エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
樹脂エマルションにおける不揮発分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
なお、本明細書において、樹脂エマルションにおける不揮発分量は、樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
樹脂エマルションの最低造膜温度は、塗膜硬度を高める観点から、好ましくは−5℃以上、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上であり、造膜性を向上させる観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。
なお、樹脂エマルションの最低造膜温度は、熱勾配試験機の上に置いたガラス板上に樹脂エマルションを厚さが0.2mmとなるようにアプリケーターで塗工して乾燥させ、クラックが生じたときの温度を意味する。
上層の塗膜に用いられる顔料としては、有機顔料および無機顔料が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
有機顔料としては、例えば、ベンジジン、ハンザイエローなどのアゾ顔料、アゾメチン顔料、メチン顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニンブルーなどのフタロシアニン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イミノイソインドリン顔料、イミノイソインドリノン顔料、キナクリドンレッドやキナクリドンバイオレットなどのキナクリドン顔料、フラバントロン顔料、インダントロン顔料、アントラピリミジン顔料、カルバゾール顔料、モノアリーライドイエロー、ジアリーライドイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ、キノフタロン顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、三酸化アンチモン、亜鉛華、リトポン、鉛白、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化鉄、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黄鉛、モリブデン赤、フェロシアン化第二鉄(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、クロム酸鉛などをはじめ、雲母(マイカ)、クレー、アルミニウム粉末、タルク、ケイ酸アルミニウムなどの扁平形状を有する顔料、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの体質顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの無機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
上層の塗膜における顔料の含有率は、耐候性、耐ブロッキング性および光透過性を向上させる観点から、10体積%以上、より好ましくは15体積%以上であり、塗膜の可撓性を向上させる観点から、好ましくは25体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。
上層の塗膜には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、充填剤、レベリング剤、pH調整剤、分散剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、消泡剤、防腐剤、染料、酸化防止剤などの添加剤が適量で含まれていてもよい。
顔料を含有する下層の塗膜は、例えば、顔料を含有する下層用水性塗料を用いて形成することができる。下層用水性塗料としては、例えば、アクリル系水性塗料、セルロース系水性塗料、ポリウレタン系水性塗料、ポリエステル系水性塗料、ポリエーテルポリオール系水性塗料、ポリアミド系水性塗料、エポキシ樹脂系水性塗料、無機系水性塗料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。好適な顔料を含有する下層用水性塗料としては、単量体成分を乳化重合させることによって得られる樹脂エマルションおよび顔料を含有する下層用水性塗料などが挙げられる。前記樹脂エマルションは、例えば、単量体成分を乳化剤の存在下で乳化重合させることによって得ることができる。下層用水性塗料のなかでは、上層の塗膜との親和性を高める観点から、アクリル系樹脂エマルションを含有するアクリル系水性塗料が好ましい。前記アクリル系樹脂エマルションに用いられる単量体成分としては、前記顔料を含有する上層用水性塗料に用いられる単量体成分を例示することができる。
なお、下層の塗膜には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、充填剤、レベリング剤、pH調整剤、分散剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、消泡剤、防腐剤、染料、酸化防止剤などの添加剤が適量で含まれていてもよい。
下層の塗膜に用いられる顔料としては、上層の塗膜に用いられる顔料と同様のものを例示することができる。また、顔料は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
下層の塗膜における顔料の含有率は、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、60体積%以上であり、塗膜の可撓性を向上させる観点から、85体積%以下である。
また、下層における顔料の含有率と上層における顔料の含有率との差の絶対値は、耐水性、接着性、光透過性、耐クラック性および耐候性に総合的に優れた積層塗膜を形成させる観点から、50〜65体積%である。
本発明の積層塗膜は、基材上に顔料を含有する下層の塗膜を形成させた後、顔料を含有する上層の塗膜を形成させることによって得ることができる。
前記基材としては、例えば、窯業系建材などの建材などが挙げられる。窯業系建材としては、例えば、瓦、外壁材などが挙げられる。窯業系建材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料などを添加し、得られた混合物を成形し、得られた成形体を養生し、硬化させることによって得られる。建築物の外装を構成する無機質建材としては、例えば、モルタル板、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボードなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
基材上に顔料を含有する下層または上層の塗膜を形成させる方法としては、例えば、下層または上層を形成する塗料を、例えば、刷毛、コテ、バーコーター、アプリケーター、エアスプレー、エアレススプレー、ロールコーター、フローコーターなどを用いて基材に塗布する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、基材の表面上には、必要により、例えば、プライマー処理やシーラー処理などが施されていてもよい。
下層または上層を形成する塗料の塗布量は、耐水性、接着性、光透過性、耐クラック性および耐候性に総合的に優れた積層塗膜を形成させる観点から、通常、それぞれ、不揮発分量で50〜1000g/m2程度であることが好ましい。なお、上層の塗布量よりも下層の塗布量が多いことが光透過性を向上させる観点から、好ましい。
下層または上層を形成する塗膜の乾燥条件は、塗料に使用されている溶媒を十分に蒸散させることができればよく、塗料に使用される溶媒の種類、量などによって異なるので一概には決定することができない。通常、塗膜は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜120℃の温度に加熱することによって乾燥させることができる。なお、乾燥時間は、塗膜が十分に乾燥すればよく、特に限定されない。
下層を形成する塗膜上に形成される上層を形成する塗膜は、1層であってもよく、2層以上であってもよいが、耐水性、接着性、光透過性、耐クラック性および耐候性に総合的に優れた積層塗膜を形成させる観点から、1層または2層であることが好ましい。下層を形成する塗膜上に2層以上の上層を形成させる場合、形成される2層以上の上層の塗膜の組成は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、本発明の積層塗膜は、顔料を含有する上層の塗膜および顔料を含有する下層の塗膜を有するが、本発明の目的を阻害しない範囲内で、顔料を含有する他の塗膜や、顔料を含有しない塗膜が含まれていてもよい。
以上のようにして得られる積層塗膜は、耐水性、接着性、光透過性、耐クラック性および耐候性に総合的に優れていることから、例えば、窯業系建材などの建材に代表される基材などに好適に使用することができる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。また、実施例1〜2は、参考例として扱われるものである。
調製例1
脱イオン水223部、分散剤〔花王(株)製、商品名:デモールEP〕60部、分散剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:ディスコートN−14〕50部、湿潤剤〔花王(株)製、商品名:エマルゲンLS−106〕10部、プロピレングリコール50部、酸化チタン〔石原産業(株)製、品番:CR−95〕1000部およびガラスビーズ(直径:1mm)200部をホモディスパーで回転速度3000min-1にて60分間分散させ、100メッシュ(JISメッシュ、以下同じ)の金網で濾過することにより、白色ペーストAを調製した。
調製例2
脱イオン水223部、分散剤〔花王(株)製、商品名:デモールEP〕60部、分散剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:ディスコートN−14〕50部、湿潤剤〔花王(株)製、商品名:エマルゲンLS−106〕10部、プロピレングリコール50部、炭酸カルシウム〔日東粉化工業(株)製、品番:NS#100〕1000部およびガラスビーズ(直径:1mm)200部をホモディスパーで回転速度3000min-1にて60分間分散させ、100メッシュの金網で濾過することにより、白色ペーストBを調製した。
製造例1
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水716部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水417部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート500部、n−ブチルアクリレート100部、2−エチルヘキシルアクリレート360部、ヒドロキシエチルメタクリレート30部およびアクリル酸10部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる77部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であり、樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子を構成している重合体のガラス転移温度は8℃であった。
製造例2
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水716部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水209部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液60部、スチレン75部、シクロへキシルメタクリレート150部、n−ブチルメタクリレート100部、2−エチルヘキシルアクリレート60部、n−ブチルアクリレート100部、ヒドロキシエチルメタクリレート10部およびメタクリル酸5部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる77部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水209部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液60部、メチルメタクリレート100部、シクロヘキシルメタクリレート150部、2−エチルヘキシルアクリレート210部、ヒドロキシエチルメタクリレート10部および4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン30部からなる2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であり、樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子を構成している内層の重合体のガラス転移温度は10℃であり、外層の重合体のガラス転移温度は1℃であり、外層を構成している重合体のガラス転移温度と内層を構成している重合体のガラス転移温度との差の絶対値は、9℃であった。
製造例3
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水716部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水209部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液60部、シクロへキシルメタクリレート150部、n−ブチルメタクリレート120部、2−エチルヘキシルアクリレート200部、ヒドロキシエチルメタクリレート15部および4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン15部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる77部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水209部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液60部、メチルメタクリレート130部、シクロヘキシルメタクリレート150部、2−エチルヘキシルアクリレート190部、ヒドロキシエチルメタクリレート15部および4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン15部からなる2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であり、樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子を構成している内層の重合体のガラス転移温度は−10℃であり、外層の重合体のガラス転移温度は7℃であり、外層を構成している重合体のガラス転移温度と内層を構成している重合体のガラス転移温度との差の絶対値は、17℃であった。
製造例4
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水716部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水209部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液60部、メチルメタクリレート100部、シクロヘキシルメタクリレート200部、n−ブチルメタクリレート100部、2−エチルヘキシルアクリレート70部、ヒドロキシエチルメタクリレート15部および4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン15部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる77部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、引き続いて、脱イオン水209部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR−10〕の25%水溶液60部、メチルメタクリレート70部、シクロヘキシルメタクリレート150部、2−エチルヘキシルアクリレート250部、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン15部および2−[2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール15部からなる2段目滴下用プレエマルションと5%過硫酸アンモニウム水溶液15部を120分間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で60分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であり、樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子を構成している内層の重合体のガラス転移温度は40℃であり、外層の重合体のガラス転移温度は−12℃であり、外層を構成している重合体のガラス転移温度と内層を構成している重合体のガラス転移温度との差の絶対値は、52℃であった。
製造例5
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水716部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水417部、乳化剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンBC−10〕の25%水溶液120部、メチルメタクリレート100部、スチレン100部、n−ブチルアクリレート300部、2−エチルヘキシルアクリレート450部、ヒドロキシエチルメタクリレート30部およびアクリル酸20部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる77部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら70℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を300分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、フラスコの内容物を70℃で90分間維持し、25%アンモニア水を添加することによってpHを8に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションにおける不揮発分の含有率は45%であり、樹脂エマルションに含まれているエマルション粒子を構成している重合体のガラス転移温度は−40℃であった。
実施例1
(上層用水性塗料の調製)
製造例1で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例1で得られた白色ペーストA30部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が11%である上層用水性塗料を調製した。
(下層用水性塗料の調製)
製造例5で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例2で得られた白色ペーストB290部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が90KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が65%である下層用水性塗料を調製した。
(積層塗膜の製造)
前記で得られた上層用水性塗料および下層用水性塗料を用い、以下の物性を調べる際に、積層塗膜を製造した。
実施例2
(上層用水性塗料の調製)
製造例1で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例1で得られた白色ペーストA44.5部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が15%である上層用水性塗料を調製した。
(下層用水性塗料の調製)
製造例5で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例2で得られた白色ペーストB364部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が90KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が70%である下層用水性塗料を調製した。
(積層塗膜の製造)
前記で得られた上層用水性塗料および下層用水性塗料を用い、以下の物性を調べる際に、積層塗膜を製造した。
実施例3
(上層用水性塗料の調製)
製造例2で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例1で得られた白色ペーストA63部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が20%である上層用水性塗料を調製した。
(下層用水性塗料の調製)
製造例5で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例2で得られた白色ペーストB625部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が90KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が80%である下層用水性塗料を調製した。
(積層塗膜の製造)
前記で得られた上層用水性塗料および下層用水性塗料を用い、以下の物性を調べる際に、積層塗膜を製造した。
実施例4
(上層用水性塗料の調製)
製造例3で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例1で得られた白色ペーストA44.5部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が15%である上層用水性塗料を調製した。
(下層用水性塗料の調製)
製造例5で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例2で得られた白色ペーストB364部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が90KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が70%である下層用水性塗料を調製した。
(積層塗膜の製造)
前記で得られた上層用水性塗料および下層用水性塗料を用い、以下の物性を調べる際に、積層塗膜を製造した。
実施例5
(上層用水性塗料の調製)
製造例4で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例1で得られた白色ペーストA44.5部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が15%である上層用水性塗料を調製した。
(下層用水性塗料の調製)
製造例5で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例2で得られた白色ペーストB364部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が90KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が70%である下層用水性塗料を調製した。
(積層塗膜の製造)
前記で得られた上層用水性塗料および下層用水性塗料を用い、以下の物性を調べる際に、積層塗膜を製造した。
比較例1
(上層用水性塗料の調製)
製造例1で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例1で得られた白色ペーストA63部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が20%である上層用水性塗料を調製した。
(下層用水性塗料の調製)
製造例5で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例2で得られた白色ペーストB290部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が90KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が65%である下層用水性塗料を調製した。
(積層塗膜の製造)
前記で得られた上層用水性塗料および下層用水性塗料を用い、以下の物性を調べる際に、積層塗膜を製造した。
比較例2
(上層用水性塗料の調製)
製造例1で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例1で得られた白色ペーストA13.5部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が5%である上層用水性塗料を調製した。
(下層用水性塗料の調製)
製造例5で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例2で得られた白色ペーストB234部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が60%である下層用水性塗料を調製した。
(積層塗膜の製造)
前記で得られた上層用水性塗料および下層用水性塗料を用い、以下の物性を調べる際に、積層塗膜を製造した。
比較例3
(上層用水性塗料の調製)
製造例1で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例1で得られた白色ペーストA108部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が80KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が30%である上層用水性塗料を調製した。
(下層用水性塗料の調製)
製造例5で得られた樹脂エマルション100部に成膜助剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート〔チッソ(株)製、品番:CS−12〕10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500min-1にて10分間撹拌した後、調製例2で得られた白色ペーストB625部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU−1)を用いて25℃で測定したときの粘度が90KUとなるように増粘剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカノールUH−420〕を添加し、その状態で30分間撹拌することにより、顔料の体積濃度が80%である下層用水性塗料を調製した。
(積層塗膜の製造)
前記で得られた上層用水性塗料および下層用水性塗料を用い、以下の物性を調べる際に、積層塗膜を製造した。
なお、以下の物性において、×の評価が1つでもあるものは、不合格であると判定される。
〔耐水性〕
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃で1週間乾燥させた。
次に、下層用水性塗料を20milアプリケーターで前記シーラーが塗布されたスレート板に塗布し、50℃で2日間乾燥させ、次いで上層用水性塗料を10milアプリケーターで当該スレート板に塗布し、23℃で1日間乾燥させた。次に、このスレート板を室温下で水中に1日間浸漬させた後、当該スレート板を水中から取り出し、その塗膜の外観を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて耐水性を評価した。その結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:異常なし
○:小さく膨れた箇所が存在する。
×:大きく膨れた箇所が存在する。
〔接着性〕
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃で1週間乾燥させた。
次に、下層用水性塗料を20milアプリケーターで前記シーラーが塗布されたスレート板に塗布し、50℃で2日間乾燥させ、上層用水性塗料を10milアプリケーターで塗布し、23℃で1週間乾燥させた。このスレート板を室温下で水中に1日間浸漬させ、当該スレート板を水中から取り出し、50℃で2日間乾燥させた。次に、塗膜を1mm間隔で縦10個、横10個の合計100個の碁盤目をカッターナイフでクロスカットし、形成された碁盤目上にセロハン粘着テープを貼り付けた後、当該セロハン粘着テープを剥離させることにより、塗膜の剥がれがないかどうかを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて接着性を評価した。その結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:異常なし
○:塗膜にわずかに剥がれが発生
×:塗膜に大きな剥がれが発生
〔光透過性〕
上層用水性塗料100部に対して水10部の割合で両者を混合し、得られた混合物を、JIS K6717(2006年)に準じてメチルメタクリレートを押し出し成形することによって成形された黒色アクリル樹脂板〔日本テストパネル(株)製、縦:75mm、横:150mm、厚さ:0.3mm〕に4milアプリケーターで塗布し、80℃で2時間乾燥させ、分光式色差計〔日本電色工業(株)製、品番:SE−2000〕でL値を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:L値が94以上
○:L値が90以上94未満
×:L値が90未満
〔耐クラック性〕
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃で1週間乾燥させた。
次に、下層用水性塗料を20milアプリケーターで前記シーラーが塗布されたスレート板に塗布し、50℃で2日間乾燥させ、上層用水性塗料を10milアプリケーターで塗布し、23℃で1週間乾燥させた。このスレート板の側面および背面をシリコーンバスボンド〔コニシ(株)製、商品名:バスボンドQ〕を用いてシールし、凍結融解試験を行なった。このとき、凍結融解条件は、気中凍結(−20℃で2時間)、水中融解(20℃で1時間)とし、この合計3時間を1サイクルとし、30倍ルーペを用いて塗膜にクラックが入るまでのサイクル数を測定し、以下の評価基準に基づいて耐クラック性を評価した。その結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:300サイクル以上で異常なし
○:200サイクル以上300サイクル未満で塗膜にクラックが発生
×:200サイクル未満で塗膜にクラックが発生
〔耐候性〕
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで150g/m2の塗布量で均一に塗布し、23℃で1週間乾燥させた。
次に、下層用水性塗料を20milアプリケーターで前記シーラーが塗布されたスレート板に塗布し、50℃で2日間乾燥させ、上層用水性塗料を10milアプリケーターで塗布し、23℃で1週間乾燥させた。このスレート板の側面および背面をアルミニウムテープでシールし、上層用水性塗料が塗布された面の60°鏡面光沢を光沢計〔日本電色工業(株)製、品番:VG2000〕で測定し、さらに以下の条件で耐光性試験を1000時間行ない、前記光沢計で当該スレート板の塗装面の光沢を測定し、式:
〔光沢保持率(%)〕
=〔[耐候性試験後の光沢]÷[耐候性試験前の光沢]〕×100
に基づいて求め、以下の評価基準に基づいて耐候性を評価した。その結果を表1に示す。
(耐光性試験の試験条件)
・試験機:メタルウェザー(登録商標)〔ダイプラ・ウィンテス(株)製、品番:KU−R4〕
・照射:気温63℃、相対湿度50%の雰囲気中で4時間照射(照射強度:75mW/cm2)
・湿潤:気温30℃、相対湿度98%の雰囲気中で4時間
・シャワー:湿潤前後に各10分間
(評価基準)
◎:光沢保持率が80%以上
○:光沢保持率が60%以上80%未満
×:光沢保持率が60%未満
〔総合評価〕
×の評価を0点、○の評価を10点、◎の評価を30点とし、各得点の合計点を総合評価の指標とした(最高得点:150点)。
表1に示された結果から、各実施例で得られた積層塗膜は、いずれも、各比較例で得られた積層塗膜と対比して、総合評価が高く、耐水性、接着性、光透過性、耐クラック性および耐光性に総合的に優れていることがわかる。