JP4959128B2 - 建築物外壁の塗装方法 - Google Patents

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Description

本発明は、建築物外壁の塗装方法に関するものである。
近年、ビル、集合住宅、戸建住宅等の建築物においては、高断熱化・高気密化によって、冷暖房費の節約を図り、省エネルギーを実現しようとする動きが盛んである。一般に、断熱設計を施していない建築物では、冬期の暖房時には屋根、床、窓、壁等の部位から室内の熱が逃げ、夏期の冷房時にはこれら部位から屋外の熱が侵入してしまうが、このような熱損失の約3分の1は壁面に起因すると言われている。このため、建築物の省エネルギー化を実現するには、室内と屋外を隔てる外壁の高断熱化が不可欠であり、壁面を構成する基材に断熱材を複合化して断熱性を高める手法が多く提案されている。
一方、ビル、集合住宅、戸建住宅等の建築物外壁においては、その美観性向上等を目的として、様々な塗料が塗付形成されている。このうち、P.BUSCHやJ.C.ZOLAの着想に由来する多彩模様塗料は、一回の塗装で複数色の斑点状模様が表出可能であり、様々な色相・意匠性が付与できることから注目が高まっている。このような多彩模様塗料としては、例えば特許文献1に開示されたもの等が挙げられる。
特開平9−221613号公報
しかし、上述のような断熱性外壁の化粧仕上げに多彩模様塗料を適用する場合には、いくつかの問題点がある。
第一には、塗膜に対する熱負荷の問題である。上述のように建築物外壁の断熱性を高めれば、その屋外側表面では太陽光直射による熱の逃げ場がなくなる。このため、外壁の屋外側表面に形成された塗膜は、その影響を直接的に受け、温度が非常に上昇しやすい状態となる。このような温度上昇は、塗膜の劣化を促進させる要因となる。特に、多彩模様塗料の塗膜では、斑点状模様を形成するそれぞれの着色粒子の色相によって耐候性レベルが異なるため、塗膜劣化の促進によって、当初の模様のバランスが大きく損われてしまう場合がある。
第二には、水分の問題である。外壁を構成する基材は、通常、ある程度の水分を含んでいる。降雨や結露等によって、基材の表面、側面、あるいは裏面等から水分が取り込まれる場合もある。このような状態の外壁に対して塗装を行うと、基材内部に水分が閉じ込められてしまう。外壁が高い断熱性を有する場合は、その水分の蒸発に伴って塗膜膨れ等の異常が発生しやすくなる。このような塗膜膨れ等は、特に、外壁面が有機系塗料による旧塗膜を有する場合において発生しやすい。
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、建築物の断熱性外壁表面に多彩な模様を付与することができ、さらにその模様の経時劣化を抑制することができる塗装方法を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するため本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定の赤外線反射性能と水蒸気透過性能を併有する下塗材を塗付した後、特定の水蒸気透過性能を有する多彩模様塗料を塗付することにより、塗膜の温度上昇を抑制するとともに、基材内部の水分を塗膜外に放散させることができ、形成模様の変色、膨れや剥れの発生等が防止できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.熱貫流率5.0W/(m・K)以下の断熱性外壁に対し、
結合剤としてガラス転移温度−20〜80℃の合成樹脂エマルションに加え、赤外線反射性顔料を含み、赤外線反射率20%以上、水蒸気透過度40g/m・24h以上の塗膜を形成する下塗材を塗付した後、
透明性を有する分散媒に、色相が異なる2種以上の着色樹脂粒子が分散されてなり、
上記着色樹脂粒子を形成する着色塗料が、着色材料として赤外線反射性顔料及び/または赤外線透過性顔料を含み、赤外線反射率20%以上の塗膜を形成する着色塗料であり、水蒸気透過度40g/m・24h以上の塗膜を形成する上塗材を塗付することを特徴とする建築物外壁の塗装方法。
2.熱貫流率5.0W/(m・K)以下の断熱性外壁の表面に、有機質樹脂を結合剤とする塗料によって形成された塗膜を有する旧塗膜面に対し、
結合剤としてガラス転移温度−20〜80℃の合成樹脂エマルションに加え、赤外線反射性顔料を含み、赤外線反射率20%以上、水蒸気透過度40g/m・24h以上の塗膜を形成する下塗材を塗付した後、
透明性を有する分散媒に、色相が異なる2種以上の着色樹脂粒子が分散されてなり、
上記着色樹脂粒子を形成する着色塗料が、着色材料として赤外線反射性顔料及び/または赤外線透過性顔料を含み、赤外線反射率20%以上の塗膜を形成する着色塗料であり、水蒸気透過度40g/m・24h以上の塗膜を形成する上塗材を塗付することを特徴とする建築物外壁の塗装方法。
3.下塗材が、さらに赤外線透過性顔料を含むことを特徴とする1.または2.に記載の建築物外壁の塗装方法。


本発明によれば、断熱性外壁の多彩模様仕上げにおいて、形成模様の変色、膨れや剥れの発生等を防止することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、本発明の対象となる外壁は、熱貫流率5.0W/(m・K)以下の断熱性壁である。このような断熱性壁は、建築物の高断熱化・高気密化には欠くことができないものであるが、太陽光が直射する部位においては、その屋外側表面に形成された塗膜に大きな熱負荷を与えてしまうものである。特に、本発明は、高い断熱性能を有する外壁、すなわち熱貫流率が1.0W/(m・K)以下、さらには0.50W/(m・K)以下である断熱性壁に適用した場合において顕著な効果を発揮することができる。
このような断熱性壁は、1種または2種以上の部材からなるものである。断熱性壁を構成する部材としては、基材のみの場合と、基材と断熱材を組合せた場合があり、例えば、軽量モルタル、軽量コンクリート、けい酸カルシウム板、ALC板、サイディングボード、石膏ボード、スレート板、コンクリート、モルタル等の基材;グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー等の繊維系断熱材や、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム等の発泡プラスチック系断熱材等に例示される断熱材等が挙げられる。このうち、本発明における断熱性壁には、通常、熱伝導率が0.5W/(m・K)以下の部材が少なくとも1種含まれる。
本発明は、断熱性壁が熱貫流率の低い基材の場合や、少なくとも上述のような基材と断熱材との複合体によって構成される場合において特に効果的である。
なお、本発明における熱貫流率は、住宅金融公庫監修「木造住宅工事共通仕様書(解説付)」の付録4「熱貫流率の計算方法」に基づく計算値であり、以下の手順によって求められる値である。
(1)式1により、外壁を構成する各部材の熱伝導率と厚さから熱抵抗を算出する。
熱抵抗=厚さ/熱伝導率・・・(式1)
(2)式2により、各部材の熱抵抗と空気の熱抵抗(熱伝達抵抗)から熱貫流抵抗を算出する。
熱貫流抵抗=屋内側空気の熱抵抗+各部材の熱抵抗の合計+屋外側空気の熱抵抗・・・(式2)
(但し、屋内側空気の熱抵抗は0.11m・K/W、屋外側空気の熱抵抗は0.04m・K/Wとする)
(3)式3により、熱貫流抵抗から熱貫流率を算出する。
熱貫流率=1/熱貫流抵抗・・・(式3)
本発明は、断熱性外壁が、有機質樹脂を結合剤とする塗料(以下、「有機系塗料」ともいう)による旧塗膜面を有する場合において、特に顕著な効果を発揮することができる。
有機系塗料としては、有機質樹脂を含む各種の塗料が挙げられる。具体的には、例えば、JIS K5654「アクリル樹脂エナメル」、JASS18 M−207「非水分散形アクリル樹脂エナメル」、JIS K5656「建築用ポリウレタン樹脂塗料」、JASS18 M−404「アクリルシリコン樹脂塗料」、JIS K5658「建築用ふっ素樹脂塗料」、JIS K5660「つや有合成樹脂エマルションペイント」、JIS K5663「合成樹脂エマルションペイント」、JIS K5667「多彩模様塗料」、JIS K5668「合成樹脂エマルション模様塗料」、JIS A6909「建築用仕上塗材」の外装薄塗材E、可とう形外装薄塗材E、防水形外装薄塗材E、外装厚塗材E、複層塗材E、防水形複層塗材E、複層塗材RE、防水形複層塗材RE、複層塗材RS、防水形複層塗材RE等が挙げられる。
有機系塗料における有機質樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、ふっ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。本発明は、特に有機質樹脂が熱可塑性樹脂である場合において有利な効果を奏することができる。
有機系塗料における有機質樹脂の含有量は特に限定されないが、有機系塗料の固形分中に通常5重量%以上100重量%以下、好ましくは20重量%以上95重量%以下である。
有機系塗料によって形成される塗膜の厚みは、塗料の形態にもよるが、通常0.02〜10mm程度である。本発明では、特に塗膜が1mm以上の厚みを有する場合においても、改装後の塗膜膨れや剥れを防止することができる。このような厚膜の塗膜を形成する塗料としては、例えばJIS A6909「建築用仕上塗材」の外装厚塗材E等が挙げられる。
本発明における旧塗膜面は、このような有機系塗料の塗膜を有するものであれば単層塗膜であっても複層塗膜であってもよいが、本発明では、特に有機系塗料の塗膜が旧塗膜の屋外側最表面に存在する場合に、大きな効果を得ることができる。
本発明では、上述の断熱性外壁に対して下塗材を塗付する。この下塗材は、結合剤としてガラス転移温度(以下「Tg」ともいう)−20〜80℃の合成樹脂エマルションを含み、赤外線反射率が20%以上、水蒸気透過度が40g/m・24h以上の塗膜を形成するものである。このような赤外線反射性能と水蒸気透過性能を併有する下塗材は、塗膜の温度上昇を抑制するとともに、塗膜内ないし基材内の水分を塗膜外に放散させることにより、塗膜の膨れ発生や剥れ発生等を長期にわたり十分に抑制する機能を発揮することができる。
下塗材における合成樹脂エマルションとしては、例えば、酢酸ビニル樹脂エマルション、塩化ビニル樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
合成樹脂エマルションのTgは、−20〜80℃、好ましくは−5〜50℃である。合成樹脂エマルションのTgが−20℃より低い場合は、塗膜の膨れが発生しやすくなる傾向となる。また、耐汚染性が不十分となるおそれもある。Tgが80℃より高い場合は、基材や旧塗膜の変位に追従できず、塗膜に割れが発生するおそれがある。なお、本発明におけるTgは、合成樹脂エマルションを構成するモノマーの種類とその構成比率から、Foxの計算式によって求められる値である。
本発明では、合成樹脂エマルションにおける樹脂として熱硬化性樹脂を使用することにより、膨れ防止性、剥れ防止性をいっそう高めることができ、さらに耐候性、耐水性等の塗膜物性を高めることもできる。熱硬化性樹脂としては、合成樹脂エマルション自体で架橋反応を生じるもの、あるいは別途混合する架橋剤によって架橋反応を生じるもののいずれであってもよい。熱硬化性樹脂における架橋反応性は、例えば、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルコキシシリル基どうし等の反応性官能基を組み合わせることによって付与することができる。
下塗材による形成塗膜の赤外線反射率は20%以上(好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上)である。赤外線反射率が20%より低い場合は、膨れや剥れが発生しやすくなる。また、上塗材塗膜の劣化が促進され、色相変化等が大きくなるおそれがある。赤外線反射率の上限は、通常90%以下である。なお、本発明における赤外線反射率は、波長800〜2100nmの光に対する分光反射率を測定し、その平均値を算出することにより得られる値である。
下塗材による形成塗膜の水蒸気透過度は40g/m・24h以上、好ましくは50g/m・24h以上である。着色塗料の形成塗膜がこのような水蒸気透過性能を有することより、塗膜内ないし基材内の水分が塗膜外に放散され、塗膜膨れ等の原因となる局所的な圧力上昇が抑制される。水蒸気透過度が40g/m・24h未満である場合は、塗膜に膨れや剥れが発生しやすくなる。
水蒸気透過度の上限は特に制限されないが、水蒸気透過度が大きすぎる場合は、遮水性が不十分となりやすく、基材や旧塗膜に水が浸入するおそれがある。水蒸気透過度の上限は通常500g/m・24h以下、好ましくは200g/m・24h以下である。
なお、本発明における水蒸気透過度は、JIS K5400−1990「塗料一般試験方法」8.17「水蒸気透過度」の方法によって測定される値である。
本発明における下塗材においては、上述のような赤外線反射性能と水蒸気透過性能を併有する限り、通常塗料に使用可能な成分を含むことができる。このような成分としては、例えば、顔料、染料、骨材、繊維、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。
本発明における下塗材では、上述の合成樹脂エマルションに加え、赤外線反射性顔料を含有することが望ましい。このような顔料としては、例えば、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、シリカ、珪酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。この中でも、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、及びアルミナから選ばれる1種以上が好適である。このような赤外線反射性顔料は、合成樹脂エマルションの固形分100容量部に対し、通常2〜150容量部、好ましくは5〜120容量部、より好ましくは10〜100容量部の比率で混合する。
この他、赤外線透過性顔料を併用することもできる。このような顔料を併用することにより、塗膜の赤外線反射性能を阻害せずに様々な色彩を表出することが可能となる。赤外線透過性顔料としては、ペリレン顔料、アゾ顔料、黄鉛、弁柄、朱、チタニウムレッド、カドミウムレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、及び紺青から選ばれる1種以上が好適である。
本発明では、上述のような顔料を適宜選択することにより、白色以外の色相においても顕著な効果を発揮することができる。よって、下塗材の色相を上塗材の共色に設定することもできる。
下塗材の顔料容積濃度は、通常2〜60%、好ましくは5〜55%、より好ましくは10〜50%であることが望ましい。このような顔料容積濃度であれば、膨れ防止性や剥れ防止性等が高まるとともに、基材や旧塗膜の変位に対する追従性を発揮することもできる。
下塗材の塗装においては、スプレーガン、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用することができる。
下塗材の塗膜厚み(乾燥膜厚)については、赤外線反射性能及び水蒸気透過性能が本発明の範囲内であれば特に限定されないが、通常10〜1000μm、好ましくは10〜400μm、より好ましくは20〜200μmである。
なお、下塗材を塗装する前には、必要に応じ下地調整塗材等を塗付しておいてもよい。ただし、この場合は本発明の効果を損なわないように、水蒸気透過性能を有する材料を使用することが望ましい。
本発明では、上述の下塗材を塗付した後、透明性を有する分散媒に、少なくとも1種以上の着色樹脂粒子が分散されてなり、水蒸気透過度40g/m・24h以上の塗膜を形成する上塗材を塗付する。この上塗材によって形成される模様は、着色樹脂粒子の色相、粒子径、混合割合等によって適宜調整することができる。特に、上塗材として、色相が異なる2種以上の着色樹脂粒子が分散されてなる多彩模様塗料を使用すれば、種々の多彩模様を幅広く表出することができる。例えば、一般的な自然石調の模様等を表出することもできる。
上塗材による形成塗膜の水蒸気透過度は40g/m・24h以上、好ましくは50g/m・24h以上である。上塗材の形成塗膜がこのような水蒸気透過性能を有することより、塗膜の膨れ、剥れ等を十分に抑制することができる。水蒸気透過度の上限は特に制限されないが、通常は500g/m・24h以下である。
本発明における上塗材としては、上述の性能を有する限り、公知の多彩模様塗料を使用することもできる。多彩模様塗料は、JIS K5667(2002)「多彩模様塗料」に規定されており、塗料を構成する分散媒と着色樹脂粒子の組み合わせによって、水中油型(O/W型)、油中水型(W/O型)、油中油型(O/O型)及び水中水型(W/W型)の4種類に分類される。本発明では、この中でも、水中油型(O/W型)、または水中水型(W/W型)が好適である。
水中油型(O/W型)多彩模様塗料は、溶剤系樹脂及び着色材料を含む着色塗料が水性分散媒に粒状に分散したものである。水中水型(W/W型)多彩模様塗料は、水性樹脂及び着色材料を含む着色塗料が水性分散媒に粒状に分散したものである。このような多彩模様塗料における分散媒と着色樹脂粒子の重量比率は、通常8:2〜2:8程度、好ましくは7:3〜3:7程度である。
着色樹脂粒子中の樹脂としては、例えば、アクリル、ウレタン、酢酸ビニル、アクリル酢酸ビニル、アクリルウレタン、アクリルシリコン、フッ素、ポリビニルアルコール、バイオガム、ガラクトマンナン誘導体、アルギン酸誘導体、セルロース誘導体等の溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、水溶性樹脂、水分散型樹脂等が使用できる。これらの樹脂は、硬化剤や硬化触媒によって架橋可能な官能基を有するものであってもよい。
着色材料としては、一般的に塗料に配合可能なものであれば特に制限されないが、赤外線反射性顔料及び/または赤外線透過性顔料を含有することが望ましい。このような成分を含有することにより、太陽光による上塗材層の蓄熱を抑制しつつ、所望の色相による模様を表出することが可能となる。
赤外線反射性顔料、赤外線透過性顔料としては、前記下塗材と同様のものを使用することができる。着色材料として赤外線反射性顔料を使用するのみでは、表出可能な色相に限界があるが、これら赤外線透過性顔料を適宜組み合わせることにより、様々な色相の塗膜を形成することが可能となる。
このような赤外線反射性顔料、赤外線透過性顔料の樹脂に対する混合量は、着色塗料の色相等によっても異なるが、通常は顔料容積濃度が2〜60%(好ましくは3〜50%)となる範囲内とすればよい。
着色樹脂粒子を形成する着色塗料としては、赤外線反射率が20%以上(好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上)の塗膜を形成するもの(上限は通常90%以下)が好適である。このような着色塗料の使用により、本発明の効果をいっそう顕著なものとすることができる。また、着色塗料としては、赤外線透過率が20%(好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上)以上の塗膜を形成するものも使用できる。なお、赤外線透過率は、波長800〜2100nmの光に対する分光透過率を測定し、その平均値を算出することにより得られる値である。
着色樹脂粒子を形成する着色塗料には、中空粒子を配合することもできる。このような中空粒子は、形成塗膜の温度上昇を抑制する効果を有し、塗膜の劣化防止にも有効に作用する。中空粒子としては、例えば、中空セラミックビーズ、中空樹脂ビーズ等が挙げられる。具体的に、中空セラミックビーズを構成するセラミック成分としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、カーボン、アルミナ、シラス、黒曜石等が挙げられる。中空樹脂ビーズを構成する樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、アクリル−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリル−スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、アクリロニトリル−メタアクリロニトリル共重合樹脂、アクリル−アクリロニトリル−メタアクリロニトリル共重合樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合樹脂等が挙げられる。これら中空粒子は、開気泡型、閉気泡型に大別されるが、本発明では閉気泡型の中空粒子が好ましく用いられる。中空粒子の密度は通常0.01〜1g/cm程度、好ましくは0.01〜0.5g/cm程度である。このような中空粒子は、着色塗料中の樹脂固形分100容量部に対し、通常2〜150容量部(好ましくは5〜120容量部)の比率で混合すればよい。
着色樹脂粒子は、上述のような樹脂と着色材料、及び必要に応じ中空粒子やその他添加剤等を含む着色塗料が粒子状に分散されたものである。着色樹脂粒子の粒子径は、通常0.01〜15mm、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.7〜5mm程度である。なお、ここに言う着色樹脂粒子の粒子径は、光学顕微鏡で観察することができる。
着色樹脂粒子自体は、成膜性能を有するもの、あるいは有さないもののいずれであってもよい。通常は、着色樹脂粒子内部が液状であれば成膜性能を有し、着色樹脂粒子内部のゲル化度が高くなれば成膜性能が低下する。着色樹脂粒子自体が成膜性能を有さない場合は、成膜性能を有する樹脂を分散媒中に混合すればよい。分散媒における樹脂としては、例えば、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリルシリコン樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション等、あるいはこれらの複合系等が使用できる。本発明では特に、分散媒中に樹脂が固形分で2〜50重量%含まれるものが好適である。
水中水型(W/W型)多彩模様塗料における着色樹脂粒子としては、水性樹脂、着色材料、水、及び水存在下で反応可能な反応性化合物、に由来するゲル化物が好適である。より好適な着色樹脂粒子は、反応性官能基を有する水性樹脂、着色材料、及び水を含む水性着色塗料に、水存在下で反応可能な反応性化合物を混合して得られるゲル化物を、水性分散媒中に分散させ、さらに、水存在下において前記水性樹脂と反応可能な反応性化合物を混合することによって得ることができる。
このような着色樹脂粒子を使用することにより、上塗材の耐候性、耐水性等の塗膜物性が高まり、初期の多彩模様を長期間維持することができる。
上塗材における分散媒は、塗膜形成時に上記着色樹脂粒子の発色を阻害しない程度(すなわち、形成塗膜において着色樹脂粒子が視認可能な程度)の透明性を有していればよい。このような透明性を有する範囲内で、分散媒には樹脂、分散安定剤、艶消し剤、繊維、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、造膜助剤、凍結防止剤、分散剤、防黴剤、防腐剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒、架橋剤等を混合することができる。
水中油型(O/W型)、水中水型(W/W型)では、いずれも水性分散媒が用いられる。水性分散媒の媒体としては、主に水が使用されるが、水に易溶性の有機溶剤を併用することもできる。
本発明における上塗材としては、着色樹脂粒子中の樹脂及び/または分散媒中の樹脂として、(p)固形分中のシリカ残量比率が0.1〜50重量%である合成樹脂(以下「(p)成分」という)を含むものが好適である。このような(p)成分を使用すれば、上塗材層の水蒸気透過性、下塗材層と上塗材層との密着性が向上し、塗膜の膨れ発生や剥れ発生等をより確実に防止することが可能となる。また、(p)成分は、排気ガス等に由来する汚染物質の密着を抑制する性質を有するため、これら汚染物質による蓄熱を防止することもできる。このような(p)成分は、反応性シリル基含有化合物を必須成分として得られるものである。
(p)成分としては、例えば、
(i)反応性シリル基含有モノマーを共重合して得られる合成樹脂、
(ii)反応性シリル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、及びカルボキシル基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種以上のモノマーを共重合した樹脂に、シラン化合物を付加させて得られる合成樹脂、
(iii)樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤とを反応させて得られる合成樹脂、
(iv)樹脂中の官能基と、該官能基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤とを反応させ、さらにシラン化合物を付加させて得られる合成樹脂、
等が挙げられる。このうち、膨れ防止性、剥れ防止性等の点で、特に(ii)または(iv)のいずれかが好適である。
反応性シリル基としては、珪素原子にアルコキシル基、水酸基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン等が結合したものである。この中でも、珪素原子にアルコキシル基が結合したアルコキシシリル基、珪素原子に水酸基が結合したシラノール基から選ばれる1種以上が特に好適である。
(i)、(ii)における反応性シリル基含有モノマーは、反応性シリル基と重合性二重結合を含有する化合物であり、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルプロピルビニルエーテル等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
(ii)における水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
(ii)におけるカルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
(ii)、(iv)におけるシラン化合物としては、反応性シリル基を一分子中に2個以上有するものが用いられ、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能アルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等の3官能アルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等の2官能アルコキシシラン類;テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン等のクロロシラン類;テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン等のアセトキシシラン類等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。また、反応性シリル基を一分子中に1個有する化合物を併用することもできる。本発明では、特に、3官能アルコキシシラン類と2官能アルコキシシラン類とを併用することが望ましい。
(iii)、(iv)における官能基の組み合わせとしては、水酸基とイソシアネート基、アミノ基とイソシアネート基、カルボキシル基とエポキシ基、アミノ基とエポキシ基、アルコキシシリル基どうし等が挙げられる。シランカップリング剤は、例えば、一分子中に、少なくとも1個以上の反応性シリル基とそのほかの置換基を有する化合物であり、具体的には、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、イソシアネート官能性シラン等があげられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
(p)成分の共重合モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;アクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系モノマー;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸含有ビニルモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン等の塩素含有モノマー;エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル等のアルキレングリコールモノアリルエーテル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;エチレン、プロピレン、イソブチレン等を使用することができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。この他、エチレン性不飽和二重結合含有紫外線吸収剤、エチレン性不飽和二重結合含有光安定剤等を用いることもできる。
(p)成分のTgは通常−20〜100℃、好ましくは−5〜80℃である。Tgが−20℃より低い場合は、膨れ、剥れ等が発生しやすくなる。また、上塗材層表面に汚染物質が付着しやすくなる。このような汚染物質は蓄熱の原因ともなる。Tgが100℃より高い場合は上塗材層に割れが生じやすくなる。
(p)成分におけるシリカ残量比率は、(p)成分の固形分中にSiO換算で0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%である。シリカ残量比率がこのような範囲であることにより、膨れ防止性、剥れ防止性、耐汚染性、耐候性等を高めることができる。(p)成分のシリカ残量比率が少なすぎる場合は、膨れや剥れが発生しやすくなる。また、汚染物質が密着しやすく、塗膜が蓄熱しやすくなる。シリカ残量比率が多すぎる場合は、密着性不良や、割れ発生等を引き起こすおそれがある。
なお、シリカ残量比率とは、Si−O結合をもつ化合物を、完全に加水分解した後に、900℃で焼成した際にシリカ(SiO)となって残る重量分にて表したものである。
一般に、アルコキシシランやシリケート等は、水と反応して加水分解反応が起こりシラノールとなり、さらにシラノールどうしやシラノールとアルコキシにより縮合反応を起こす性質を持っている。この反応を究極まで行うと、シリカ(SiO)となる。これらの反応は一般式、
RO(Si(OR)O)R+(n+1)HO→nSiO+(2n+2)ROH
という反応式で表される。本発明におけるシリカ残量比率は、この反応式をもとに残るシリカ成分の量を換算したものである。
上述のような上塗材は、通常、下塗材の塗膜表面が乾燥した後に塗装することができる。
上塗材の塗装においては、公知の塗装器具を用いることができる。塗装器具としては、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等を使用することができる。塗装時には水等を用いて塗料を希釈することができる。希釈割合は、使用する塗装器具等に応じて適宜調整すればよい。
上塗材による形成塗膜の乾燥膜厚は、通常50〜1000μm程度である。
本発明では、必要に応じ、クリヤー塗料を塗付することもできる。この場合、クリヤー塗料としては、本発明の効果を阻害しないように、水蒸気透過度40g/m・24h以上の塗膜を形成するものが好適である。このような性能を有する限り、公知のクリヤー塗料も使用できる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリルシリコン系、フッ素系等が挙げられる。このようなクリヤー塗料は、水系または溶剤系のいずれであってもよく、艶の程度(艶消しタイプ、艶有りタイプ等)についても特に限定されない。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
(実施例1)
スレート板(厚さ6mm)の片面に、アクリル系熱可塑性樹脂(Tg−40℃)、酸化チタン、炭酸カルシウム、寒水石、及びゴム粉を主成分とする外装厚塗材E(樹脂含有量22重量%)を吹付け、乾燥膜厚3〜5mmの塗膜を形成させ、これを促進耐候性試験機「アイスーパーUVテスター」(岩崎電気株式会社製)にて400時間曝露させたものを旧塗膜とした。
この旧塗膜に対し、下塗材Aを乾燥膜厚が約60μmとなるようにスプレー塗装し、標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で3時間乾燥後、多彩模様塗料Aを着色樹脂粒子が散在するようにスプレー塗装した(乾燥膜厚約80μm)。
次いで、スレート板の裏面(塗装面と反対側の面)に住宅用グラスウール(厚さ100mm)及びスレート板(厚さ6mm)を順に積層することにより、試験体Aを作製した。なお、スレート板(厚さ6mm)・住宅用グラスウール(厚さ100mm)・スレート板(厚さ6mm)からなる積層体は断熱性壁に相当するものであり、その熱貫流率は0.39W/(m・K)である。
得られた試験体Aについて、塗膜面より40cm離れた位置から、出力250Wの赤外線ランプを8時間照射した後、その外観変化を目視にて観察した。その結果、試験体Aについて特に異常は認められなかった。
なお、実施例1における下塗材Aとしては、樹脂1(アルコキシシリル基含有アクリル樹脂エマルション、Tg30℃、シリカ残量比率2重量%)の固形分100容量部に対し、酸化チタンを3.2容量部、黄色酸化鉄を0.3容量部、弁柄を0.5容量部、フタロシアニンブルーを0.3容量部、重質炭酸カルシウムを10容量部含有する、顔料容積濃度13%のグレー色の塗料を使用した。
この下塗材Aの赤外線反射率を分光光度計(島津製作所製「UV−3100」)にて測定したところ69%であった。なお、赤外線反射率測定に供した試験板は、アルミ板に黒色塗料(アクリル樹脂の固形分100容量部にカーボンブラックを6容量部含むもの)を乾燥膜厚60μmで塗付した後、対象塗料を乾燥膜厚60μmで塗付することによって作製した(以下同様)。
一方、下塗材A(乾燥膜厚60μm)の水蒸気透過度をJIS K5400−1990「塗料一般試験方法」8.17「水蒸気透過度」の方法によって測定したところ、その値は82g/m・24hであった。
多彩模様塗料Aとしては、樹脂1が固形分で20重量%含まれる分散媒Aに、下記の着色塗料1及び着色塗料2が粒状(粒径0.8〜1.4mm)に分散されたもの(水性分散媒:着色塗料1:着色塗料2=5:2:3(重量比))を使用した。この多彩模様塗料A(乾燥膜厚80μm)の水蒸気透過度は78g/m・24hであった。
・着色塗料1:樹脂2(アルコキシシリル基含有アクリル樹脂エマルション、Tg18℃、シリカ残量比率2重量%)の固形分100容量部に対し、酸化チタンを5.4容量部、黄色酸化鉄を0.2容量部、弁柄を0.3容量部、フタロシアニンブルーを0.2容量部含有する、顔料容積濃度6%の淡グレー色の塗料。赤外線反射率68%。
・着色塗料2:樹脂2(アルコキシシリル基含有アクリル樹脂エマルション、Tg18℃、シリカ残量比率2重量%)の固形分100容量部に対し、酸化チタンを3.0容量部、黄色酸化鉄を0.8容量部、弁柄を1.2容量部、フタロシアニンブルーを0.8容量部含有する、顔料容積濃度5%の濃グレー色の塗料。赤外線反射率64%。
(実施例2)
実施例1において多彩模様塗料Aに代えて多彩模様塗料Bを使用して試験体Bを作製した。
なお、多彩模様塗料Bとしては、樹脂1が固形分で20重量%含まれる分散媒Aに、上記着色塗料1及び下記着色塗料3が粒状(粒径0.8〜1.4mm)に分散されたもの(水性分散媒:着色塗料1:着色塗料3=5:2:3(重量比))を使用した。この多彩模様塗料B(乾燥膜厚80μm)の水蒸気透過度は83g/m・24hであった。
・着色塗料3:樹脂2(アルコキシシリル基含有アクリル樹脂エマルション、Tg18℃、シリカ残量比率2重量%)の固形分100容量部に対し、酸化チタンを3.0容量部、黄色酸化鉄を1.0容量部、弁柄を1.3容量部、フタロシアニンブルーを1.0容量部、中空粒子(アクリル−アクリロニトリル共重合樹脂、平均粒子径45μm、密度0.025g/cm)を35容量部含有する、顔料容積濃度29%の濃グレー色の塗料。赤外線反射率%69%。
得られた試験体Bに対し、実施例1と同様に試験を行ったところ、試験体Bにおいて特に異常は認められなかった。
(比較例1)
実施例1において下塗材Aに代えて下塗材Bを使用して試験体Cを作製した。
なお、下塗材Bは、樹脂3(アクリル樹脂エマルション、Tg30℃)の固形分100容量部に対し、酸化チタンを3.5容量部、黄色酸化鉄を0.2容量部、弁柄を0.1容量部、カーボンブラックを0.6容量部、重質炭酸カルシウムを10重量部含有する、顔料容積濃度13%のグレー色の塗料である。この下塗材Bの赤外線反射率は16%、水蒸気透過度は62g/m・24hであった。
得られた試験体Cに対し、実施例1と同様に試験を行ったところ、試験体Cでは塗膜に膨れが発生してしまった。
(比較例2)
実施例1において下塗材Aに代えて下塗材Cを使用して試験体Dを作製した。
なお、下塗材Cは、樹脂4(溶剤可溶形アクリル樹脂、Tg30℃)の固形分100容量部に対し、酸化チタンを3.2容量部、黄色酸化鉄を0.3容量部、弁柄を0.5容量部、フタロシアニンブルーを0.3容量部、重質炭酸カルシウムを10容量部含有する、顔料容積濃度13%のグレー色の塗料である。この塗料Cの形成塗膜の赤外線反射率は69%、水蒸気透過度は34g/m・24hであった。
得られた試験体Dに対し、実施例1と同様に試験を行ったところ、試験体Dでは塗膜に膨れが発生してしまった。

Claims (3)

  1. 熱貫流率5.0W/(m・K)以下の断熱性外壁に対し、
    結合剤としてガラス転移温度−20〜80℃の合成樹脂エマルションに加え、赤外線反射性顔料を含み、赤外線反射率20%以上、水蒸気透過度40g/m・24h以上の塗膜を形成する下塗材を塗付した後、
    透明性を有する分散媒に、色相が異なる2種以上の着色樹脂粒子が分散されてなり、
    上記着色樹脂粒子を形成する着色塗料が、着色材料として赤外線反射性顔料及び/または赤外線透過性顔料を含み、赤外線反射率20%以上の塗膜を形成する着色塗料であり、水蒸気透過度40g/m・24h以上の塗膜を形成する上塗材を塗付することを特徴とする建築物外壁の塗装方法。
  2. 熱貫流率5.0W/(m・K)以下の断熱性外壁の表面に、有機質樹脂を結合剤とする塗料によって形成された塗膜を有する旧塗膜面に対し、
    結合剤としてガラス転移温度−20〜80℃の合成樹脂エマルションに加え、赤外線反射性顔料を含み、赤外線反射率20%以上、水蒸気透過度40g/m・24h以上の塗膜を形成する下塗材を塗付した後、
    透明性を有する分散媒に、色相が異なる2種以上の着色樹脂粒子が分散されてなり、
    上記着色樹脂粒子を形成する着色塗料が、着色材料として赤外線反射性顔料及び/または赤外線透過性顔料を含み、赤外線反射率20%以上の塗膜を形成する着色塗料であり、水蒸気透過度40g/m・24h以上の塗膜を形成する上塗材を塗付することを特徴とする建築物外壁の塗装方法。
  3. 下塗材が、さらに赤外線透過性顔料を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の建築物外壁の塗装方法。
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