JP3794583B2 - 水性樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は水性樹脂組成物に関し、より詳しくは、揮発性有機化合物(以下、VOCという。)を殆ど含有せず、低い最低造膜温度を有しながら優れた物理的安定性、凍結−融解安定性(凍結安定性)をもち、低温成膜性に優れており、且つ耐温水白化性、耐ブロッキング性、光沢、平滑性、耐候性、耐溶剤性、耐水性、耐雨筋汚染性、耐凍害性、不粘着性等の諸物性に優れた塗膜を形成することが可能であり、屋内外の塗装に用いることができる水性樹脂組成物に関する。
近年、VOCの配合量や毒性等の低減に関する環境規制が厳しくなってきた観点や、省資源の観点から、塗料業界では溶媒として有機溶剤を使用した溶剤型塗料から水を使用した水性塗料への転換が急速になされつつある。その代表的な塗料として水性エマルション塗料を挙げることができる。
しかしながら、水性エマルション塗料は、一般的に、低温下で完全に凍結してしまうと室温で融解させても元の状態に復元できなく、即ち、凍結−融解安定性(凍結安定性)が悪く、また物理的安定性が不十分であるために塗装時に塗料をポンプ等で循環させる際に凝集物が発生する等の不都合が生じていた。
それで、塗料調製時にエチレングリコール等の凍結防止剤や、乳化分散安定剤を添加したり(例えば、特許文献1参照。)、エマルション中の重合体粒子表面にカルボキシル基を偏在化させるためアクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの乳化共重合量を増加させること(例えば、特許文献2参照。)等により、これらの問題を解決しようとしてきた。しかし、これらの場合には、塗料中のVOCが増大すること、形成される塗膜の耐水性が悪くなること等の弊害が発生した。
更に、上記のような塗料では、塗装条件により、その乾燥過程でひび割れが生じ、いわゆるマッドクラック(チェッキング)現象が発生し、形成される塗膜の平滑性が低下し、更には、形成される塗膜の膜厚が不均一になることより起こる凍結解凍サイクルによるひび割れ(凍害性)が生ずる場合が多く見られているのが現状であった。
上記の諸問題を解決するために、多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルションを用いたり(例えば、特許文献2、3及び4参照。)、水溶性樹脂をエマルションと混合する手法がとられたりしてきたが、水溶性樹脂の添加が耐水性、耐アルカリ性を大幅に低下させることがあり、その使用用途が限定されていた。
特開平9−31112号公報 特開2002−206067号公報 特開2003−128981号公報 特開2001−164178号公報
本発明は上記のような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、VOCを殆ど含有せず、低い最低造膜温度を有しながら優れた物理的安定性、凍結−融解安定性(凍結安定性)をもち、低温成膜性に優れており、且つ耐温水白化性、耐ブロッキング性、光沢、平滑性(マッドクラック、チェッキング現象が発現しない)、耐候性、耐溶剤性、耐水性、耐雨筋汚染性、耐凍害性、不粘着性等の諸物性に優れた塗膜を形成することが可能であり、屋内外の塗装に用いることができる水性樹脂組成物を提供することを目的としている。
本発明者等は上記目的を達成するために鋭意検討した結果、乳化共重合で得られたエポキシ基を有する特定の乳化共重合体粒子含有エマルションと、カルボキシル基を有する特定の水溶性樹脂の水溶液とを反応させることにより得ることができる水性樹脂組成物を用いることにより、上記目的が達成されることを見いだし、本発明に到達した。
即ち、本発明の水性樹脂組成物は、
エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体及びそれらの単量体との共重合が可能なその他のエチレン性不飽和単量体を含む単量体混合物を乳化重合させて得られる乳化共重合体粒子含有エマルションと、
カルボキシル基を有し、酸価が40〜300mgKOH/gであり、重量平均分子量が5000〜200000であり、且つガラス転移温度が20〜100℃である水溶性樹脂の水溶液とを、
該エマルション中の乳化共重合体100質量部に対して該水溶液中の水溶性樹脂1〜30質量部となる量比で反応させることによって得ることができる水性樹脂組成物である。

本発明の水性樹脂組成物はVOCを殆ど含有せず、低い最低造膜温度を有しながら優れた物理的安定性、凍結−融解安定性(凍結安定性)をもち、低温成膜性に優れており、且つ耐温水白化性、耐ブロッキング性、光沢、平滑性、耐候性、耐溶剤性、耐水性、耐雨筋汚染性、耐凍害性、不粘着性等の諸物性に優れた塗膜を形成することが可能であり、屋内外の塗装に用いることができる。
以下に本発明を具体的に説明する。
<乳化共重合体粒子含有エマルション>
本発明で使用する乳化共重合体粒子含有エマルションの調製に用いる単量体混合物は必須成分としてエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を含有する。そのようなエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体の好適な例として、グリシジル(メタ)アクリレートやアリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と活性水素原子を有するエチレン性不飽和単量体との反応により得られるエポキシ基含有単量体を挙げることができる。
乳化共重合体粒子含有エマルションの調製に用いる単量体混合物は、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を0.1〜10質量%含有することが望ましい。その含有量が0.1質量%未満である場合には、後述する水溶性樹脂中のカルボキシル基との反応点が少なくなり、本発明の水性樹脂組成物を用いて得られる塗膜の耐水性、耐アルカリ性が低下する傾向があり、逆に、10質量%を越える場合には乳化重合時の安定性が悪くなる傾向があるので好ましくない。
乳化共重合体粒子含有エマルションの調製に用いる単量体混合物は、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体との共重合が可能なその他のエチレン性不飽和単量体を含有する。そのようなエチレン性不飽和単量体として、メチル(メタ)アクリレートや、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、α−クロロエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系単量体;スチレンや、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等のスチレン系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2(3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミドや、マレインアミド等のアミド基含有単量体;2−アミノエチル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;その他N−メチロール基を有するN−メチロールアクリルアミドや、酢酸ビニル、塩化ビニル、更には、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレート等を代表的なものとして挙げることができる。
乳化共重合体粒子含有エマルションの調製に用いる単量体混合物は、本発明の水性樹脂組成物の凍結−融解安定性を更に向上させるために、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体を含有することが好適である。
そのようなポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体として下記の一般式(イ)、(ロ)又は(ハ)で示される化合物を挙げることができる。
CH2=C(R1)−C(=O)−O−(X−O)n−R2 (イ)
CH2=C(R1)−(CH2)m−O−(X−O)n−R2 (ロ)
CH2=C(R1)−C(=O)−O−(CH2CH2)m−
[CH2CH(CH3)−O]n−R2 (ハ)
(式中、R1 は−H又は−CH3 であり、R2 は−H又は炭素数1〜8のアルキル基であり、Xは−(CH2)2−、−(CH2)3−、又は−CH2CH(CH3)−であり、mは1〜30の整数であり、nは1〜30の整数である。)
これらのポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸やアリルアルコール等にエチレンオキサド及び/又はプロピレンオキサイドを付加重合反応させ、その後、必要に応じて、炭素数1〜8個のアルキル基でエーテル化することによって容易に調製することが出来る。この様なエチレン性不飽和単量体の市販品として、例えば、商品名「MA−30」、「MA−50」、「MA−100」、[MA−150]、「MPG−130MA」(以上、日本乳化剤株式会社製)、「ブレンマーPE」、「ブレンマーPP」、「ブレンマーAP−400」、「ブレンマーAE−350」、「ブレンマーPEP」(以上、日本油脂株式会社製)等を挙げることができる。
乳化共重合体粒子含有エマルションの調製に用いる単量体混合物は、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体を1〜20質量%含有することが望ましく、2〜7質量%含有することがより好適である。その含有量が1質量%未満である場合には目的とする凍結−融解安定性の更なる向上が不十分となり、逆に、20質量%よりも多い場合には乳化重合時に系の粘度が著しく高くなることがあるので好ましくない。
更に、乳化重合時に連続的に加えるエチレン性不飽和単量体が、生成しているエマルション中の乳化共重合体粒子に吸収される量を制御する目的や、本発明の水性樹脂組成物を塗布し、塗膜にした時の強靱性、耐ブロッキング性、不粘着性、耐溶剤性等の各性能を大幅に向上させるために乳化共重合体に内部架橋構造を適宜組み込むことが好ましい。このためには、乳化共重合体粒子含有エマルションの調製に用いる単量体混合物が、重合性不飽和二重結合を2個以上有する単量体であるジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等を含有することがことが好ましい。そのような重合性不飽和二重結合を2個以上有する単量体の含有量は0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好適である。その含有量が0.1質量%未満である場合には前述の性能が発現しにくく、逆に、10質量%より多い場合には、成膜性が低下するばかりでなく、得られる塗膜に脆性が発現する傾向があるので好ましくない。
更に、本発明の水性樹脂組成物から形成される塗膜の乾燥直後の耐汚染性、耐ブロッキング性を更に向上させるためには、乳化共重合体粒子含有エマルションの調製に用いる単量体混合物がカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体を含有し、更に本発明の水性樹脂組成物中に、分子内にヒドラジド基を2個以上有する化合物を存在させることが好ましい。この場合には、成膜時に上記のカルボニル基とヒドラジド基とが反応して塗膜乾燥直後の耐汚染性、耐ブロッキング性が更に向上する。
そのようなカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体として、例えば、アクロレインや、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロール、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート及びブタンジオール−1,4−アクリレート−アセチルアクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン等を挙げることができる。これらの中でも、特にアクロレインや、ジアセトンアクリルアミド、及びビニルメチルケトンが好ましい。
乳化共重合体粒子含有エマルションの調製に用いる単量体混合物は、そのようなカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体を1〜25質量%含有することが好ましく、2.5〜10質量%含有することがより好適である。その含有量が1.0質量%未満である場合には、目的とする耐汚染性、耐ブロッキング性の更なる向上が不十分となり、逆に、25質量%より多い場合には、乳化共重合時に系が不安定になり、得られた塗膜の耐水性が低下する傾向があるので好ましくない。
分子内にヒドラジド基を2個以上有する化合物として、例えば、カルボヒドラジドや、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン2酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,,4−ベンゼントリヒドラジド、チオカルボジヒドラジド等を挙げることができる。これらの中でも、エマルションへの分散性や耐水性のバランスからカルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジドが特に好ましい。
分子内にヒドラジド基を2個以上有する化合物を、本発明の水性樹脂組成物中に、上記の乳化共重合体粒子含有エマルション中の全カルボニル基数の、例えば、0.1〜2.0倍、好ましくは、0.3〜1.2倍のヒドラジド基数となる量で存在させることが適当である。ヒドラジド基の量が0.1倍未満である場合にはエマルションの乳化共重合体粒子中のカルボニル基との反応が不十分となり、形成される塗膜の耐ブロッキング性や塗膜硬度の更なる向上が不十分となる傾向があり、逆に、2.0倍よりも過剰の場合には、分子中に2個以上のヒドラジド基含有化合物が未反応で残存し、耐水性等が悪くなる傾向がある。
また、乳化共重合体粒子含有エマルションの調製に用いる単量体混合物は、必要に応じて、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を含有することができる。そのような単量体として、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノエチル等を挙げることができる。
更に、形成される塗膜に高度な耐ブロッキング性を付与する目的で、多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルション、即ち、乳化重合体が最外相と一相以上の内部相とからなる異相構造粒子を含有するエマルションを用いることがより好適である。
この異相構造粒子含有エマルションは、該異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度(以下、Tgと記載する)が−50〜30℃であり、該異相構造粒子の最外相より内側にある内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgが該最外相を形成する乳化共重合体のTgよりも高く且つ0〜150℃であることが好ましく、該異相構造粒子の最外相より内側にある内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgが該最外相を形成する乳化共重合体のTgよりも20℃以上高いことがより好ましい。このような場合には、形成される塗膜の耐ブロッキング性が更に向上するのみならず、成膜性が更に向上するので、塗料中の揮発性物質(VOC)を大幅に削減することが可能である。
なお、本発明に於いて、乳化共重合体のTgは、次のFOX式を用いて計算された値で
ある。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・・+Wn/Tgn
(上記のFOX式は、n種の単量体単位からなる乳化共重合体を構成する各々の単量体についてのホモポリマーのガラス転移温度をそれぞれTg1、Tg2・・・・Tgn(K)とし、各々の単量体の質量分率をW1、W2、・・・・Wn(W1+W2+・・・・+Wn=1)としている。)
異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のTgが−50℃未満である場合には、本発明の水性樹脂組成物を用いて形成される塗膜の耐汚染性や耐温水性等が悪くなる傾向があり、逆に30℃を超える場合には、本発明の水性樹脂組成物の低温時における造膜性が悪くなる傾向があるので好ましくない。
一方、内部相を形成する全ての相のTgが0℃未満である場合(即ち、異相構造粒子の最外相より内側にある内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgが0〜150℃であるという条件を満足しない場合)には、本発明の水性樹脂組成物を用いて形成される塗膜の耐ブロッキング性や物理的塗膜強度が低下する傾向があり、逆に150℃を超える場合には、異相構造粒子を製造するための乳化重合反応を制御することが困難となる傾向があるので好ましくない。
また、異相構造粒子の最外相より内側にある内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のTgが該最外相を形成する乳化共重合体のTgよりも低い場合には、本発明の水性樹脂組成物の低温成膜性及び本発明の水性樹脂組成物を用いて形成される塗膜の低粘着性を両立させることが困難になる傾向があるので好ましくない。
本発明で使用する乳化共重合体粒子含有エマルションは、常法に従い、上記の単量体混合物を水中で1段階で乳化重合させるか、あるいは、二相以上、即ち、最外相と一相以上の内部相とからなる異相構造粒子の乳化重合体を形成させる目的で、乳化重合を2段階以上の多段階で繰り返し実施することによって得ることができる。
1段乳化重合法及び多段乳化重合法の代表例として、エチレン性不飽和単量体混合物を含有する水性乳濁液中に乳化剤及び重合開始剤、更に必要に応じて連鎖移動剤や乳化安定剤等を存在させ、通常60〜90℃の加温下で1段で乳化重合させるか、またはこの工程を複数回繰り返して実施する多段乳化重合法を挙げることができる。これらの乳化重合法においては、単量体混合物を一括で仕込む単量体一括仕込み法、単量体混合物を連続的に滴下する単量体滴下法、単量体混合物を水及び乳化剤と予め混合して乳化させておき、この乳濁液を滴下するプレエマルション法、或いは、これらを組み合わせた方法等を挙げることができる。
上記の乳化剤として、例えば、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、更には、スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する、いわゆる反応性乳化剤等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、又はこれらの化合物の骨格と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する反応性ノニオン性界面活性剤等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;(変性)ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
上記の重合開始剤としては、従来からラジカル重合に一般的に使用されているものが使用可能であり、中でも水溶性のものが好適である。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;2,2'−アゾビス(2−アミノジプロパン)ハイドロクロライド、4,4'−アゾビス−シアノバレリックアシッド、2,2'−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジハイドロクロライドテトラハイドレート等のアゾ系化合物;過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物等を挙げることができる。更に、L−アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤と、硫酸第一鉄等とを組み合わせたレドックス系も使用できる。
上記の連鎖移動剤として、例えば、ラウリルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル、2−メチル−t−ブチルチオフェノール、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。
上記の乳化安定剤として、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。
<水溶性樹脂>
本発明で使用する水溶性樹脂は、カルボキシル基を有し、酸価が40〜300mgKOH/gであり、重量平均分子量が5000〜200000であり、且つTgが20〜100℃である水溶性樹脂であり、アルカリ添加で水溶化するものであれば、各種の樹脂を好適に使用することができる。例えば、乳化共重合体粒子含有エマルションの合成に用いた上記のエチレン性不飽和単量体の一種類もしくは二種類以上と、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体の一種類もしくは二種類以上とを任意の割合で共重合させることにより得られる。また、カルボキシメチルセルロース、ケラチン等のカルボキシル基を含有する水溶性の天然樹脂等ももちろん使用可能である。
水溶性樹脂の酸価が40mgKOH/g未満である場合には、アルカリを添加しても水溶化しにくいので好ましくなく、逆に300mgKOH/gより大きい場合には、水溶液の粘度が顕著に高くなって取り扱いが難しいこと、形成される塗膜の耐水性に悪影響を及ぼすこと等の理由から好ましくない。また、水溶性樹脂の重量平均分子量が5000未満である場合には、目標とする塗膜の平滑性を得るためには、乳化共重合体粒子含有エマルションの量との相対量で多量の水溶性樹脂の添加量を必要とし、この場合には形成される塗膜の耐水性等が悪化するので好ましくなく、逆に、200000を超える場合には、水溶液自体の粘度が顕著に高くなって取り扱いが難しいこと、並びに、エマルションとの混合反応時に均一に混合できなくなること等の理由から好ましくない。更に、水溶性樹脂のTgが20℃未満である場合には、形成される塗膜の耐ブロッキング性が低下する場合があるので好ましくなく、逆に100℃よりも高い場合には、成膜性が悪くなる傾向があるので好ましくない。
本発明で使用する水溶性樹脂は、上記した乳化共重合体粒子含有エマルションの調製で用いた重合開始剤と同様の重合開始剤を用いて通常の溶液重合を実施し、その後、アルカリ中和、水添加、減圧蒸留による反応溶剤の除去の緒工程を実施する方法や、上記した乳化共重合体粒子含有エマルションの調製と同様に水中で乳化重合を行い、アルカリ中和してエマルション粒子を完全に溶解させる方法等を用いることができるが、これらの方法に限定されるわけではない。
水溶性樹脂は、通常、アルカリにより水溶液にした状態で、乳化共重合体粒子含有エマルションに添加する。その添加方法としては、好ましくは乳化共重合体粒子含有エマルションの乳化重合反応終了後、引き続きその乳化重合温度(通常は60〜90℃)を維持した状態でエマルションに水溶性樹脂の水溶液を一定時間をかけて滴下し、その後更に一定時間加温状態を保つことが望ましい。しかしながら、乳化重合直後ではなく、貯蔵していた乳化共重合体粒子含有エマルションを再度加温した状態で水溶性樹脂の水溶液を滴下してもかまわない。この場合には、貯蔵していた乳化共重合体粒子含有エマルションを加温することなしで水溶性樹脂の水溶液を添加しても問題ない。また、上記の添加方法が、滴下ではなく一括投入であってもかまわない。
乳化共重合体粒子含有エマルションと水溶性樹脂の水溶液との混合割合は、該エマルション中の乳化共重合体100質量部に対して該水溶液中の水溶性樹脂1〜30質量部となる量比であることが望ましい。水溶性樹脂の量が1質量部未満である場合には、形成される塗膜の平滑性が不十分となるので好ましくなく、逆に、30質量部を超す場合には、形成される塗膜の耐水性が落ちるので好ましくない。
本発明の水性樹脂組成物は塗料として用い得るだけでなく、接着剤や医療用坦持体等としても用いることができる。
本発明の水性樹脂組成物は、塗料として使用する場合には、単独でクリアー塗料として用いることができるが、塗料に一般的に使用されているベンガラ、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の着色顔料や、炭酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、アルミナ、ミョウバン、白土、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土等の体質顔料、更には、光触媒活性を有する酸化チタン、シミ止め・吸着機能を有するフライポンタイト、活性亜鉛華、珪酸マグネシウム等の機能性顔料を配合して使用することも可能である。更に、塗料としての各種機能を付与するために、増粘剤や、分散剤、沈降防止剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤、架橋剤等を適宜添加してもよい。
この様にして得られる本発明の水性樹脂組成物は、各種無機質素材や、金属素材、木材素材、プラスチック素材等に適用でき、自然乾燥、若しくは、50℃以上の温度で強制乾燥させることにより優れた平滑性を有する塗膜を形成することが可能である。
本発明の水性樹脂組成物は、好ましくは建築物、一般家屋及び車両等の気密性の高い環境で塗料として用いて塗装することにより、従来の溶剤型塗料で発生していたような揮発性有機溶剤を全く発生しないか、若しくは極少量の発生に止めることが出来るので、住人や使用者の健康に負荷がかからず、更に、屋外で使用することによって高度な耐候性、耐雨筋汚染性を有しながら、自然環境に全く負荷がかからない。
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準で示す。
<水溶性樹脂(b−1)、(b−3)、(b−4)、(b−7)及び(b−8)の水溶液の調製>
攪拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコにメチルエチルケトン300部を仕込み、フラスコ内部を窒素で置換しながら78℃まで昇温させた。その後、それぞれ第1表、第3表又は第4表に記載した単量体の種類及び量比の単量体混合物300部にアゾビスイソブチロニトリル6部を溶解した混合物を上記の滴下装置から3時間かけて連続滴下した。更に昇温させ、引き続き還流下で2時間攪拌しながら熟成してから30℃まで冷却し、その後、アンモニア水及びイオン交換水を添加した。次いで、減圧蒸留にてメチルエチルケトンを除去した後、更にアンモニア水及びイオン交換水を添加してそれぞれpH9.0、不揮発性成分濃度30%の水溶性樹脂(b−1)、(b−3)、(b−4)、(b−7)及び(b−8)の水溶液を調製した。
<水溶性樹脂(b−2)の水溶液の調製>
攪拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコにイオン交換水650部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部を仕込み、フラスコ内部を窒素で置換しながら75℃まで昇温させた。その後、過硫酸カリウム0.3部を加え、その5分後から、第1表又は第2表に記載した単量体の種類及び量比の単量体混合物300部とドデシルメルカプタン0.45部との混合物を上記の滴下装置から3時間にわたって滴下した。更に、30分間で78℃まで昇温させた後、過硫酸カリウムの1%水溶液20部を30分間にわたって滴下し、更に、2時間熟成した。その後、冷却し、アンモニア水及びイオン交換水を添加してpH9.0、不揮発性成分濃度30%の水溶性樹脂(b−2)の水溶液を得た。
<水溶性樹脂(b−5)の水溶液の調製>
上記の水溶性樹脂(b−1)の調製で用いたアゾビスイソブチロニトリルの配合量を6部から15部に変更し、更に、単量体混合物中に連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン5部を加えた以外は水溶性樹脂(b−1)の調製と同じ手順に従って、pH9.0、不揮発性成分濃度30%の水溶性樹脂(b−5)の水溶液を得た。
<水溶性樹脂(b−6)の水溶液の調製>
上記の水溶性樹脂(b−2)の調製で単量体混合物と混合して用いたドデシルメルカプタンを用いなかった以外は水溶性樹脂(b−2)の調製と同じ手順に従って、pH9.0、不揮発性成分濃度30%の水溶性樹脂(b−6)の水溶液を得た。
実施例1〜2及び比較例1〜5
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中にイオン交換水200部、炭酸水素ナトリウム塩(pH調整剤)1部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(乳化剤)[「ハイテノール08E」(第一工業製薬株式会社製)]2部をそれぞれ仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら80℃まで昇温させた。その後、過硫酸カリウム(重合開始剤)1部を加え、続いて、予め別容器で撹拌混合しておいた第1表又は第3表に記載した単量体の種類及び量比の単量体混合物500部、イオン交換水250部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩(乳化剤)[「ハイテノール08E」(第一工業製薬株式会社製)]8部を3時間かけて連続滴下した。更に、2時間攪拌を続けながら熟成した後、第1表又は第3表に記載した水溶性樹脂を第1表又は第3表に記載した比率で加え、更に80℃で2時間反応させた。40℃まで冷却した後、28%アンモニア水、イオン交換水を添加してpH9.0、不揮発性成分濃度42%の水性樹脂組成物を調製した。なお、比較例1は、水溶性樹脂を加えず、そのまま40℃に冷却した後、28%アンモニア水、イオン交換水を加えてpH9.0、不揮発性成分濃度42%の水性樹脂組成物を調製した。
実施例3〜8及び比較例6〜9
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中にイオン交換水200部、炭酸水素ナトリウム塩1部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム[「ハイテノール08E」(第一工業製薬株式会社製)]2部をそれぞれ仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら80℃まで昇温させた。その後、過硫酸カリウム1部を加え、続いて予め別容器で攪拌混合しておいた第1表、第2表又は第4表に記載した単量体の種類及び量比の第1段階の単量体混合物250部、イオン交換水125部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩[「ハイテノール08E」(第一工業製薬株式会社製)]4部からなる乳化物を1.5時間かけて連続滴下した後、30分熟成した。引き続いて第1表、第2表又は第4表に記載した単量体の種類及び量比の第2段階の単量体混合物250部、イオン交換水125部及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩[「ハイテノール08E」(第一工業製薬株式会社製)]4部からなる乳化物を2時間かけて連続滴下した。第2段階の滴下が終了した後に2時間熟成し、その後、第1表、第2表又は第4表に記載した水溶性樹脂を第1表、第2表又は第4表に記載した比率で加え、更に80℃で2時間反応させた。40℃まで冷却した後、28%アンモニア水、イオン交換水を添加してpH9.0、不揮発性成分濃度42%の水性樹脂組成物を調製した。
なお、第1表〜第4表に記載した原料単量体の略号は下記の意味を有し、各単量体の後の( )内の温度はTgを計算する際に用いた各単量体のホモポリマーのTgを示す。
<エチレン性不飽和単量体>
MMA :メタクリル酸メチル(105℃)
ST :スチレン(100℃)
CHMA :メタクリル酸シクロヘキシル(66℃)
EA :アクリル酸エチル(−22℃)
EHA :アクリル酸−2−エチルヘキシル(−50℃)
BA :アクリル酸ブチル(−54℃)
MAA :メタクリル酸(185℃)
AA :アクリル酸(106℃)
DVB :ジビニルベンゼン(116℃)
GMA :グリシジルメタクリレート(41℃)
DAAM :ジアセトンアクリルアミド(65℃)
PEGMA:ポリエチレングリコール鎖含有モノマー(−50℃)
2C=C(CH3)−C(=O)−O(CH2CH2O)8
<ヒドラジド基含有化合物>
ADH:アジピン酸ジヒドラジド
<Tg>
第1表、第2表及び第4表に記載した「乳化共重合体の理論Tg(℃)」について、3つの数値からなる表示は「トータルのTg(℃)(内部相のTg(℃)/最外相のTg(℃))」を表し、「トータルのTg(℃)」は第1段階プレ乳化物中の各単量体と第2段階プレ乳化物中の各単量体との混合物を1段で乳化重合させた場合に得られる共重合体のTgであり、「内部相のTg(℃)」は第1段階プレ乳化物を単独で重合した場合に得られる共重合体のTgであり、「最外相のTg(℃)」は第2段階プレ乳化物を単独で重合した場合に得られる共重合体のTgである。また、水溶性樹脂のTgも同様に算出し掲載した。
実施例1〜8及び比較例1〜9で得られた水性樹脂組成物について、下記の試験方法及び評価方法に従って、反応時の水性樹脂組成物の状態、凍結−融解安定性、低温成膜性を調べ、更に、下記の試験方法及び評価方法に従って、形成された塗膜の塗膜平滑性、耐温水白化性、不粘着性及び耐ブロッキング性の試験を実施した。それらの結果は第1表〜第4表に示す通りであった。
<反応時の水性樹脂組成物の状態>
各々の実施例及び比較例において、乳化共重合体粒子含有エマルションと水溶性樹脂の水溶液とを混合し、反応させて得られた水性樹脂組成物の状態を目視で観察し、下記の評価基準で評価した。
○:凝固物の発生がなく、水溶性樹脂が均一に混和している。
△:水溶性樹脂が部分的に混和せずに残存している。
×:水溶性樹脂が混和せず、均一な状態にならない。
<凍結−融解安定性>
各々の実施例及び比較例で得た水性樹脂組成物をリットル内面コート缶にほぼ満たしてから密閉し、−20℃の冷凍庫に24時間貯蔵して凍結させた。次いで冷凍庫から取り出し、20℃で24時間放置して融解させた後、撹拌して、水性樹脂組成物の状態を目視で観察した。また、凍結前後の粘度の変化を調べ、更に、融解後の水性樹脂組成物を6ミルアプリケーターで硝子板に塗装し、その塗膜外観も目視で観察し、下記の評価基準で評価した。
◎:凝固物の発生及び粘度変化が無く、塗膜外観も良好である。
○:粘度の変動があったが、凝固物の発生は無く、塗膜外観も良好である。
×:凝固物の発生或いは、凝集・ゲル化が見られる。
<低温成膜性>
各々の実施例及び比較例で得た水性樹脂組成物を5℃の低温恒温室中で10ミルアプリケーターを用いて硝子板に塗装し、1日放置した。得られた塗膜の外観を目視で観察し、下記の評価基準で評価した。
○:マッドクラック、マイクロクラック等が全く見受けられず、完全に成膜している。
×:全面的にクラックや剥離が見られ、全く成膜していない。
<塗膜平滑性>
各々の実施例及び比較例で得た水性樹脂組成物を20ミルアプリケーターを用いて硝子板に塗装し、事前に80℃まで加温しておいたホットプレート上にのせて乾燥させた後、塗膜の“より”や“マッドクラック”を目視で観察し、下記の評価基準で評価した。
○:“より”や“マッドクラック”が殆ど見られず、連続した塗膜ができている。
×:塗装面全面に“マッドクラック”が見られ、凹凸が大きい。
<耐温水白化性>
各々の実施例及び比較例で得た水性樹脂組成物を6ミルアプリケーターにて硝子板に塗装し、80℃で5分間強制乾燥させた後、常温まで放冷した。次に、60℃の温水に硝子板ごと24時間浸漬し、温水から取り出した直後の塗膜外観を目視で観察し、更に、室温にて24時間放置し、乾燥させた後、塗膜外観を目視で観察し、下記の評価基準で評価した。
○:塗膜の白化は少なく、乾燥後は完全に元のクリアー塗膜に回復する。
×:多少塗膜の白化が認められ、乾燥後も白化したままで、元のクリアー塗膜に戻りき
れない。
<不粘着性>
各々の実施例及び比較例で得た水性樹脂組成物を6ミルアプリケーターにて硝子板に塗装し、80℃で5分間強制乾燥させた。次いで、常温まで放冷させた後、塗装表面にカーボン紙を置き、更にその上に分銅をのせて0.2kg/cm2の荷重を24時間かけた。その後、カーボン紙をゆっくりはがし、荷重をかけた箇所の汚染度合いを目視で観察し、下記の評価基準で評価した。
◎:全くカーボンが付いていない。
○:殆どカーボンが付いていない。
×:荷重のかかっていた箇所の5割以上にカーボンが付着している。
<耐ブロッキング性>
各々の実施例及び比較例で得た水性樹脂組成物を6ミルアプリケーターにて硝子板に塗装し、80℃で5分間強制乾燥させた。次いで、60℃まで冷却させた後、60℃に加温しておいたホットプレート上に置いた。次いで、その塗膜表面にガーゼをのせ、更にその上に事前に60℃まで加温した分銅をのせて2.0kg/cm2の荷重を30分間かけた。そして、常温まで冷却した後、ゆっくりガーゼをはがし、その時のはがし抵抗及びガーゼの痕跡を目視で観察し、下記の評価基準で評価した。
◎:ガーゼが自然に落下し、塗膜上にガーゼの痕跡が殆ど残っていない。
○:ガーゼが自然に落下することはないが、塗膜上にガーゼの痕跡は殆ど残っていない

×:ガーゼの剥離時に塗膜の一部も剥離し、ガーゼの痕跡がくっきり残っている。
Figure 0003794583
Figure 0003794583
Figure 0003794583
Figure 0003794583
第1表〜第4表に示すデータより明らかなように、実施例1〜8の水性樹脂組成物は反応時の水性樹脂組成物の状態が良好であり、凍結−融解安定性及び低温成膜性に優れており、また実施例1〜8の水性樹脂組成物から形成された塗膜は塗膜の平滑性、耐温水白化性、不粘着性、耐ブロッキング性において優れた性能を有していた。
一方、水溶性樹脂と反応させなかった比較例1のエマルションは凍結−融解安定性が不十分であるばかりでなく、比較例1のエマルションから形成された塗膜の塗膜平滑性、不粘着性、耐ブロッキング性も不良であった。また、エマルション中の乳化共重合体100質量部と反応させた水溶性樹脂の量が30質量部よりも多量であった比較例2の水性樹脂組成物から形成された塗膜は耐温水白化性に劣っていた。更に、水溶性樹脂との反応点を持たない乳化共重合体粒子含有エマルションを用いた比較例3の水性樹脂組成物から形成された塗膜は塗膜平滑性が不十分であり、耐温水白化性も悪かった。
酸価が40未満の水溶性樹脂を用いた比較例4の水性樹脂組成物から形成された塗膜は塗膜平滑性が不十分であるばかりでなく、不粘着性、耐ブロッキング性も悪かった。酸価が300より大きい水溶性樹脂を用いた比較例5の水性樹脂組成物は反応時の水性樹脂組成物の状態が不十分であり、比較例5の水性樹脂組成物から形成された塗膜は塗膜平滑性が悪く、耐温水白化性も劣っていた。
重量平均分子量が5000に満たない水溶性樹脂を用いた比較例6の水性樹脂組成物から形成された塗膜は塗膜の平滑性、耐温水白化性、不粘着性、耐ブロッキング性が悪かった。重量平均分子量が200000より大きい水溶性樹脂を用いた比較例7の場合には、乳化共重合体粒子含有エマルションと水溶性樹脂の水溶液との混和安定性が悪く、評価できる試料を調製することができなかった。Tgが100℃を上まわる水溶性樹脂を用いた比較例8の水性樹脂組成物は低温成膜性が不十分であり、比較例8の水性樹脂組成物から形成された塗膜は耐温水白化性が不十分であり、Tgが20℃を下まわる水溶性樹脂を用いた比較例9の水性樹脂組成物から形成された塗膜は塗膜の平滑性は良好であるにもかかわらず、不粘着性、耐ブロッキング性が十分なレベルになかった。

Claims (7)

  1. エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体及びそれらの単量体との共重合が可能なその他のエチレン性不飽和単量体を含む単量体混合物を乳化重合させて得られる乳化共重合体粒子含有エマルションと、
    カルボキシル基を有し、酸価が40〜300mgKOH/gであり、重量平均分子量が5000〜200000であり、且つガラス転移温度が20〜100℃である水溶性樹脂の水溶液とを、
    該エマルション中の乳化共重合体100質量部に対して該水溶液中の水溶性樹脂1〜30質量部となる量比で反応させることによって得ることができる水性樹脂組成物。
  2. エマルションがエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を0.1〜10質量%含有する単量体混合物を乳化重合させて得られるエマルションである、請求項1記載の水性樹脂組成物。
  3. エマルションがポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体を1〜20質量%含有する単量体混合物を乳化重合させて得られるエマルションである、請求項1又は2記載の水性樹脂組成物。
  4. エマルションが内部架橋構造を有するエチレン性不飽和単量体の乳化共重合体を含有している、請求項1、2又は3記載の水性樹脂組成物。
  5. エマルションがカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体を1〜25質量%含有する単量体混合物を乳化重合させて得られる乳化共重合体粒子含有エマルションであり、更に水性樹脂組成物中に、分子内にヒドラジド基を2個以上有する化合物が、該乳化共重合体粒子含有エマルション中の全カルボニル基数の0.1〜2.0倍のヒドラジド基数となる量で存在している請求項1〜4の何れかに記載の水性樹脂組成物。
  6. エマルションが多段乳化重合法によって得られる異相構造粒子含有エマルションであって、該異相構造粒子の最外相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度が−50〜30℃であり、該異相構造粒子の最外相より内側にある内部相の少なくとも一相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度が該最外相を形成する乳化共重合体のガラス転移温度よりも高く且つ0〜150℃である、請求項1〜5の何れかに記載の水性樹脂組成物。
  7. 水性樹脂組成物中の揮発性有機化合物の含有量が1質量%未満である、請求項1〜6の何れかに記載の水性樹脂組成物。

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