JP2003128981A - 水性塗料用樹脂組成物 - Google Patents

水性塗料用樹脂組成物

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JP2003128981A JP2001320747A JP2001320747A JP2003128981A JP 2003128981 A JP2003128981 A JP 2003128981A JP 2001320747 A JP2001320747 A JP 2001320747A JP 2001320747 A JP2001320747 A JP 2001320747A JP 2003128981 A JP2003128981 A JP 2003128981A
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Masayuki Sakurada
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Abstract

(57)【要約】 【課題】凍結−融解安定性や低温造膜性に優れ、かつ耐
洗浄性や、耐汚染性、耐ブロッキング性、耐水性に優れ
た塗膜を形成する水性塗料用樹脂組成物を提供する。 【解決手段】以下の(A)及び(B)の異相構造エマル
ション粒子をバインダーとして含有する水性塗料用樹脂
組成物。(A)(1)最外相の乳化重合体がTg−50
〜10℃であり、かつ、PEG鎖及び/またはPPG鎖
を有するエチレン性不飽和単量体を1〜20質量%含有
し、(2)最外相より内側にある相の乳化重合体のTg
が30〜110℃であり、(3)最低造膜温度が10℃
以下であることを満たす異相構造エマルション粒子。
(B)(1)最外相の乳化重合体のTgが60〜80℃
であり、(2)最外相より内側にある相の乳化重合体の
Tgが−50〜0℃であり、(3)最低造膜温度が10
〜30℃であることを満たす異相構造エマルション粒
子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、揮発性有機化合物
(以下、VOCという。)をほとんど含有せず、また優
れた凍結−融解安定性及び低温造膜性を有し、さらに耐
洗浄性、耐汚染性、耐ブロッキング性、耐水性等に優れ
た塗膜を形成する水性塗料用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、VOCや毒性等の低減に関する環
境姿勢が厳しくなり、また、省資源の観点から、塗料業
界では溶媒として、有機溶剤を使用した塗料から水を使
用した塗料への転換がなされつつある。その代表的な塗
料として水性エマルション塗料があるが、この塗料は、
水を溶媒として使用しているため、貯蔵中に凍結−融解
サイクルによって、分散状態に変化をきたし、粘度上昇
や、さらに進んで凝固するなど、凍結−融解安定性が悪
いという問題があった。そこで、従来は、凍結防止剤で
あるエチレングリコール等の有機溶剤を併用し、凍結−
融解安定性を改良する方法が、一般的であった。
【0003】また、水性エマルション樹脂には、固有の
最低造膜温度(以下、MFTという。)があり、被塗装
面の温度がMFTより低い場合には、造膜のために成膜
助剤として有機溶剤を配合する必要があった。従って、
水性エマルション塗料といえども相当量のVOCを含ん
でおり、さらに塗膜の乾燥が不十分な場合、残存するV
OCにより、耐水性や耐ブロッキング性が悪くなる問題
点があった。
【0004】そのため、水性エマルション塗料におい
て、環境対策や、省資源対策、さらには臭気防止の観点
からVOCを極力少なくする検討がなされている。例え
ば、低いMFTの水性エマルション樹脂を使用して、V
OCを少なくした塗料も開発されてきているが、低いM
FTの水性エマルション樹脂を使用した塗料は、耐洗浄
性や、耐汚染性、耐水性、耐ブロッキング性に劣り、さ
らに塗膜強度も劣る問題点があった。また、低VOC
で、かつ凍結−融解安定性などを改良した水性エマルシ
ョン塗料が、例えば、特開平8−302238号公報に
開示されている。
【0005】しかしながら、その塗料も凍結した状態で
長期間貯蔵する場合は、やはり凍結−融解安定性が悪く
なり、また、得られる塗膜は、耐洗浄性や、耐汚染性、
耐ブロッキング性、耐水性が劣るといった問題点があっ
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような、
従来の課題を背景になされたもので、環境汚染や、臭気
の発生源となる凍結防止剤や、造膜助剤などのVOCを
使用しなくても、また使用したとしても少量の添加で、
凍結−融解安定性や低温造膜性に優れ、かつ耐洗浄性、
耐汚染性、耐ブロッキング性、耐水性に優れた塗膜を形
成する水性塗料用樹脂組成物を提供することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するため、鋭意検討した結果、以下の構成により、上
記課題が確実に達成できることを見出し、本発明に到達
したものである。
【0008】すなわち、本発明は、以下の発明に関する
ものである。
【0009】多段乳化重合法によって得られる異相構造
エマルション粒子をバインダーとして含有する水性塗料
用樹脂組成物において、前記バインダーが、以下の2種
類の異相構造エマルション粒子からなることを特徴とす
る水性塗料用樹脂組成物。
【0010】(A)異相構造エマルション粒子が、以下
の条件(1)〜(3)を満たす異相構造エマルション粒
子。
【0011】(1)異相構造エマルション粒子の最外相
を形成する乳化重合体が、ガラス転移温度−50〜10
℃のエチレン性不飽和単量体の乳化重合体であり、か
つ、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリ
コール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単
量体を1〜20質量%含有する。
【0012】(2)異相構造エマルション粒子の最外相
より内側にある少なくとも一相を形成する乳化重合体
が、ガラス転移温度30〜110℃のエチレン性不飽和
単量体の乳化重合体である。
【0013】(3)最低造膜温度が、10℃以下であ
る。
【0014】(B)異相構造エマルション粒子が、以下
の条件(1)〜(3)を満たす異相構造エマルション粒
子。
【0015】(1)異相構造エマルション粒子の最外相
を形成する乳化重合体が、ガラス転移温度60〜80℃
のエチレン性不飽和単量体の乳化重合体である。
【0016】(2)異相構造エマルション粒子の最外相
より内側にある少なくとも一相を形成する乳化重合体
が、ガラス転移温度−50〜0℃のエチレン性不飽和単
量体の乳化重合体である。
【0017】(3)最低造膜温度が10〜30℃であ
る。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。
【0019】本発明の水性塗料用樹脂組成物は、水中に
て、エチレン性不飽和単量体を多段乳化重合法によって
製造した2種類の異相構造エマルション粒子をバインダ
ーとして使用するものである。
【0020】多段乳化重合法は、水中にて、エチレン性
不飽和単量体を従来から公知の乳化重合法にて重合を2
段階以上、通常2〜5段階繰り返し行い、形成されるエ
チレン性不飽和単量体の乳化重合体が、異相構造、すな
わち、最外相と一相以上の内部相とからなるエマルショ
ン粒子を形成させる方法である。
【0021】多段乳化重合法の代表例としては、水中に
て乳化剤及び重合開始剤、さらに必要に応じて連鎖移動
剤や、乳化安定剤等の存在下で、エチレン性不飽和単量
体を、通常60〜90℃の加温下で乳化重合し、この工
程を複数段回繰り返し行う方法が挙げられる。
【0022】前記乳化剤としては、例えば、ラウリル硫
酸ナトリウム等の脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステ
ル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアル
キルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキ
ルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテル
スルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンポリオキ
シプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基
または硫酸エステル基を有するモノマーのような反応性
乳化剤等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン
アルキルエーテル、ポリオキシノニルフェニルエーテ
ル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂
肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピ
レンブロックコポリマー、反応性ノニオン界面活性剤等
のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級ア
ンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;(変性)ポリ
ビニルアルコール等を挙げることができる。
【0023】前記重合開始剤としては、一般的にラジカ
ル重合に使用されているものが使用可能であるが、中で
も水溶性のものが好適であり、例えば、過硫酸カリウム
や、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩類、2,2'−アゾ
ビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、4,
4'−アゾビス−シアノバレリックアシッド、2,2'−アゾ
ビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジハイドロク
ロライドテトラハイドレートなどのアゾ系化合物、過酸
化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの過
酸化物等が挙げられる。さらに、L−アスコルビン酸
や、チオ硫酸ナトリウムなどの還元剤と硫酸第一鉄など
を組み合わせたレドックス系も使用できる。
【0024】前記連鎖移動剤としては、例えば、n−ド
デシルメルカプタンなどの長鎖のアルキルメルカプタン
類や、芳香族メルカプタン類、ハロゲン化炭化水素類等
を挙げることができる。
【0025】前記乳化安定剤としては、例えば、ポリビ
ニルアルコ−ルや、ヒドロキシエチルセルロ−ス、ポリ
ビニルピロリドン等を挙げることができる。
【0026】また、前記乳化重合は、単量体を一括して
仕込む単量体一括仕込み法や、単量体を連続的に滴下す
る単量体滴下法、単量体と水と乳化剤とを予め混合乳化
しておき、これを滴下するプレエマルション法、あるい
は、これらを組合わせる方法等が挙げられる。
【0027】本発明の水性塗料用樹脂組成物は、前述の
方法により形成される異相構造エマルション粒子(A)
と(B)をバインダーとするものである。
【0028】<異相構造エマルション粒子(A)につい
て>異相構造エマルション粒子(A)を製造するに当た
り、多段乳化重合の最終段階に加えられ、最外相を形成
するエチレン性不飽和単量体として、ポリエチレングリ
コール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも
一方を有するエチレン性不飽和単量体を、全エチレン性
不飽和単量体中、1〜20質量%、好ましくは、5〜1
5質量%含有させ、かつ、得られる最外相の乳化重合体
のガラス転移温度(以下、Tgという。)が、−50〜
10℃、好ましくは−30〜0℃となるエチレン性不飽
和単量体を使用する必要がある。また、内部相の少なく
とも一相の乳化重合体は、Tgが、30〜110℃、好
ましくは34〜90℃となるエチレン性不飽和単量体を
使用する必要がある。
【0029】また、異相構造エマルション粒子(A)バ
インダーのMFTは、10℃以下、好ましくは5℃以下
のものを使用する必要がある。
【0030】このような条件を満たすことにより、凍結
防止剤や成膜助剤等のVOCを使用しなくとも、また使
用したとしても、少量の添加で凍結−融解安定性や、低
温造膜性、耐汚染性、耐ブロツキング性、耐水性等に優
れた塗膜の形成が可能となるのである。
【0031】なお、本発明において、乳化重合体のTg
は、次のFOX式を用いて計算される。 1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・・+Wi
Tgi+・・・・+Wn/Tgn 〔上記FOX式は、n種の単量体からなる重合体を構成
する各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度をTg
i(K)とし、各モノマーの質量分率を、Wiとしてお
り、(W1+W2+・・・+Wi+・・・Wn=1)であ
る。〕
【0032】本発明において、異相構造エマルション粒
子(A)の、最外相の乳化重合体のTgが、−50℃未
満になると、得られる塗膜の耐汚染性や耐水性等が悪
く、逆に10℃を超えると、低温時における造膜性が悪
くなる。
【0033】一方、内部相を形成する全ての相の乳化重
合体のTgが、30℃未満になると、得られる塗膜の耐
ブロッキング性や物理的強度が悪くなり、逆に110℃
を超えると、反応が進まない。
【0034】また、バインダーのMFTが、10℃を超
えると、冬期における低温時において造膜性が悪くな
る。
【0035】次に、異相構造エマルション粒子(A)の
形成に使用されるエチレン性不飽和単量体について説明
する。
【0036】最外相を形成する乳化重合体に使用される
エチレン性不飽和単量体は、前述の通り、ポリエチレン
グリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なく
とも一方を有するエチレン性不飽和単量体を必須成分と
して含有するものである。
【0037】該単量体は、以下の式(1)、(2)また
は(3)で示されるものである。 ・式(1): CH2=C(R1)−C(=O)−O−〔X−O〕n−R2 (式中、R1は、HまたはCH3であり、R2は、Hまた
は炭素数1〜8のアルキル基であり、Xは、−(C
22−、または−CH2CH(CH3)−であり、n
は、1〜30の整数である。) ・式(2): CH2=C(R1)−(CH2m−O−〔X−O〕n−R2 (式中、R1、R2、X及びnは、上記式(1)と同一の
意味であり、mは、1〜30の整数である。) ・式(3): CH2=C(R1)−C(=O)−O−(CH2CH2O)
m−〔CH2−CH(CH 3)−O〕n−R2 (式中、R1及びR2は、上記式(1)と同一の意味であ
り、m及びnは、1〜30の整数である。)
【0038】これらの式で示される単量体が、最外相を
形成する全エチレン性不飽和単量体中、1質量%未満と
なると、塗料の凍結−融解安定性が悪くなり、逆に20
質量%を超えると、得られる塗膜の耐水性が悪くなるの
で好ましくない。
【0039】これらのモノマーは、例えば、(メタ)ア
クリル酸やアリルアルコール等にエチレンオキサイド及
び/またはプロピレンオキサイドを付加重合反応させた
後、必要に応じて、炭素数1〜8個のアルキル基でエー
テル化することによって、容易に製造することができ
る。このようなモノマーとしては、例えば、商品名とし
て、「MA−30」、「MA−50」、「MA−10
0」、「MA−150」、「MPG−130MA」(以
上、日本乳化剤(株)製)、「ブレンマ−PE」、「ブ
レンマ−PP」、「ブレンマ−AP−400」、「ブレ
ンマ−AE−350」、「ブレンマ−PEP」(以上、
日本油脂(株)製)等のモノマーが挙げられる。
【0040】また、これらの式で示される単量体と共重
合する共単量体としては、従来からアクリル樹脂の製造
に使用されている各種エチレン性不飽和単量体が、特に
制限なく使用できる。
【0041】具体的には、例えば、メチル(メタ)アク
リレートや、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピ
ル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリ
レート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル
(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレー
ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル
(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレー
ト、ステアリル(メタ)アクリレート、α−クロロエチ
ル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アク
リレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエ
チル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)ア
クリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、
エトキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)
アクリレート系単量体;スチレンや、メチルスチレン、
クロロスチレン、メトキシスチレンなどのスチレン系単
量体;(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン
酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン
酸ハーフエステルなどのカルボキシル基含有単量体;2
−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2(3)
−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒド
ロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価ア
ルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルなどの水酸
基含有単量体;(メタ)アクリルアミドや、マレインア
ミドなどのアミド基含有単量体;2−アミノエチル(メ
タ)アクリレートや、ジメチルアミノエチル(メタ)ア
クリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレー
ト、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビ
ニルピリジンなどのアミノ基含有単量体;グリシジル
(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル、
2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と、活
性水素原子を有する単量体との反応により得られるエポ
キシ基含有単量体やオリゴマー;その他N−メチロール
基を有した、N−メチロールアクリルアミドや、酢酸ビ
ニル、塩化ビニル、さらには、エチレン、ブタジエン、
アクリロニトリル、ジアルキルフマレートなどが代表的
なものとして挙げられる。
【0042】これら共単量体は、前述の通り、最外相を
形成する乳化重合体のTgが−50〜10℃になり、ま
た、前記バインダーのMFTが、10℃以下になるよう
適宜組合わせて使用すればよい。
【0043】また、異相構造エマルション粒子の内部相
の少なくとも一相の乳化重合体に使用されるエチレン性
不飽和単量体としては、前述のエチレン性不飽和単量体
と同様のものが使用できるが、乳化重合体のTgが、3
0〜110℃になり、また前記バインダーのMFTが、
10℃以下になるように適宜組合わせて使用する必要が
ある。
【0044】なお、最外相と、その内部相の一相を形成
する乳化重合体は、前述のTg、MFTを満足する単量
体を組合わせればよいが、さらに好ましくは、両者のT
g差が30℃以上であり、かつ異相構造エマルション粒
子からなるバインダーのMFTが、両者の全単量体を一
段で均一に乳化重合して得られる重合体のMFTより低
くなるような単量体を選択し、使用することが好まし
い。
【0045】また、エチレン性不飽和単量体として、カ
ルボキシル基含有単量体を使用している場合は、アンモ
ニアや、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールア
ミン等の中和剤で、中和することも可能である。
【0046】<異相構造エマルション粒子(B)につい
て>異相構造エマルション粒子(B)は、前述異相構造
エマルション粒子(A)と同様にして製造される。ただ
し異相構造エマルション粒子(B)を製造するに当た
り、多段乳化重合の最終段階に加えられ、最外相を形成
するエチレン性不飽和単量体として、得られる最外相の
乳化重合体のTgが、60〜80℃、好ましくは65〜
75℃となるエチレン性不飽和単量体を使用する必要が
ある。また、内部相の少なくとも一相の乳化重合体は、
Tgが、−50〜0℃、好ましくは−30〜0℃となる
エチレン性不飽和単量体を使用する必要がある。
【0047】また、異相構造エマルション粒子(B)バ
インダーのMFTは、10〜30℃、好ましくは15〜
25℃のものを使用する必要がある。
【0048】このような条件を満たすことにより、耐洗
浄性や、耐汚染性、耐ブロッキング性、耐水性等に優れ
た塗膜の形成が可能となるのである。
【0049】本発明において、異相構造エマルション粒
子(B)の、最外相の乳化重合体のTgが、60℃未満
になると、得られる塗膜の汚染性、粘着性等が悪くな
り、逆に、80℃を超えると、造膜性、耐クラック性等
が悪くなる。
【0050】一方、内部相を形成する全ての相の乳化重
合体のTgが、−50℃未満になると、得られる塗膜の
硬さ等が悪くなり、逆に0℃を超えると、造膜性が悪く
なる。
【0051】また、バインダーのMFTが、10℃未満
になると、粘着性等が悪くなり、逆に30℃を超える
と、耐クラック性が悪くなる。
【0052】異相構造エマルション粒子(B)の形成に
使用されるエチレン性不飽和単量体は、前述の異相構造
エマルション粒子(A)で説明した各種(共)単量体と
同様なものが使用でき、得られる乳化重合体が、前記T
g、METの範囲となるよう適宜(共)単量体を組合せ
て使用すればよい。
【0053】本発明の水性塗料用樹脂組成物は、以上説
明した多段乳化重合法によって得られる2種類のエマル
ションを混合した、異相構造エマルション粒子(A)、
(B)をバインダーとして含有するものである。
【0054】エマルションの混合割合は、異相構造エマ
ルション粒子(A)と異相構造エマルション粒子(B)
の質量割合(固形分換算)が、100:10〜70であ
ることが好ましく、100:20〜50であることがよ
り好ましい。なお、後者が、前記範囲より少ないと、得
られる塗膜の耐洗浄性や、耐汚染性等が悪くなる傾向に
あり、逆に、前記範囲より多くなると、凍結ー融解安定
性等が悪くなる傾向にあり、また、MFTが高くなるの
で、凍結防止剤や成膜助剤等を多く添加する必要が生
じ、塗料中のVOCが高くなる。
【0055】本発明の水性塗料用樹脂組成物は、異相構
造エマルション粒子(A)、(B)のバインダーを水に
分散(エマルション)した状態のものだけでもクリヤー
塗料として使用可能であるが、塗料としての各種機能を
付与させるために、防カビ剤や、防腐剤、紫外線吸収
剤、光安定性、さらに体質顔料や、着色顔料を配合する
場合は、分散剤や沈降防止剤、増粘剤等の各種添加剤を
配合するのが望ましい。このようにして得られた塗料
は、各種無機質素材や、金属素材、木材素材、プラスチ
ック素材等に適用でき、自然乾燥もしくは100℃以下
の温度で強制乾燥させることにより、優れた塗膜を形成
することが可能である。
【0056】
【実施例】以下、本発明について、実施例によりさらに
詳細に説明する。なお、実施例中「部」、「%」は、特
に断らない限り質量基準で示す。
【0057】
【表1】
【0058】表1で示した単量体原料の略号は、下記の
意味を有する。 MMA :メチルメタクリレート 2HA :2−エチルへキシルアクリレート BA :アクリル酸ブチル AA :アクリル酸 ハイテノールN08:ポリオキシエチレンアルキルフェ
ニル硫酸アンモニウム塩(第一工業製薬社製商品名) PPGモノマー :ポリプロピレングリコール鎖保有
単量体 H2C=C(CH3)−C(=O)−O(CH2CH(C
3)O)6
【0059】また、表1に示した計算Tgにおいて、
[トータル(℃)]は、「内部の原料、最外層の原料の
混合物を一段で均一乳化重合させた場合に得られる重合
体の計算Tg」であり、MFTは、温度勾配法によって
成膜不良時点の温度である。
【0060】<凍結−融解安定性> (1)各塗料を1リットル内面コート缶にほぼ満たして
から密閉した。 (2)−20℃の冷凍庫に24時間貯蔵し、完全に凍結
させた。 (3)冷凍庫から取り出し、20℃で24時間放置し融
解させた。 (4)缶内の塗料を撹拌して塗料の状態を目視判定する
とともに、凍結前の塗料との粘度変化、及びガラス板に
6ミルアプリケーターで塗装し、その塗膜外観も確認し
た。
【0061】(評価基準) ○:凝固物・ゲルの発生は認められず、粘度変化も殆ど
みられなかった。 △:凝固物・ゲルの発生は認められないが、粘度の変動
が確認された。 ×:粘度の変化が著しい、或いは、凝固物の発生、ゲル
化が認められる。
【0062】<低温造膜性> (1)各塗料を5℃の低温恒温室にて、ガラス板に6ミ
ルアプリケーターを用いて塗装し、一日放置した。 (2)得られた塗膜の外観を目視で判定した。
【0063】(評価基準) ○:マッドクラック、マイクロクラックなどの成膜不良
部が全く見受けられず、完全に成膜している。 △:大半は成膜しているが、局所的にクラックなどの成
膜不良部が見受けられる。 ×:全面にクラック、剥離などがみられる。
【0064】
【表2】
【0065】実施例1、比較例1、2、参考例1で得ら
れた塗料につき、性能評価するため以下の方法で試験
し、その結果を表2の下段に示した。
【0066】<耐汚染性>各水性塗料組成物をガラス板
に6ミルアプリケーターにて塗装し、100℃で5分間
強制乾燥させた試験板に赤、黒マジックインキを塗布し
てから24時間後に、キシレンで濡らした布で拭き取
り、除染性を目視判定した。
【0067】(評価基準) ◎:完全除去 ○:極軽微な汚染 △:少し汚染 ×:汚染著しい
【0068】<耐クラック性>予め40℃に熱しておい
たガラス板に6ミルアプリケーターを用いて各水性塗料
組成物を塗装し、130℃×30秒のジェット乾燥を実
施した後の塗膜の外観を目視判定した。
【0069】(評価基準) ◎:異常なし ○:一部にクラックがある △:半分程度の面にクラックがある ×:全面にクラックがある
【0070】<耐ブロッキング性>各水性塗料組成物を
ガラス板に6ミルアプリケーターにて塗装し、100℃
で5分間強制乾燥させた試験板を、50℃に加温してお
いたホットプレート上に置いた。次に、塗膜表面にガー
ゼをのせ、さらにその上に事前に50℃まで加温した5
00g分銅を置き、4.9N/cm2(0.5kg/c
2)の加重を1時間かけた。そして、常温まで冷却し
た後、ゆっくりガーゼをはがし、その時のはがし抵抗、
及びガーゼの痕跡を目視で判定した。
【0071】(評価基準) ◎:ガーゼが自然に落下し、塗膜上にガーゼの痕跡が殆
ど残っていない。 ○:ガーゼが自然に落下することはないが、塗膜上にガ
ーゼの痕跡は殆ど残っていない。 △:ガーゼが自然に落下することはないが、少しの力で
剥離することができ、ガーゼの痕跡が多少残っている。 ×:ガーゼを剥離時に塗膜の一部も剥離し、ガーゼの痕
跡がくっきり残っている。
【0072】
【発明の効果】本発明の水性塗料用樹脂組成物は、低V
OCであるため、環境汚染や、臭気が防止でき、また、
凍結−融解安定性や低温造膜性に優れ、かつ耐洗浄性、
耐汚染性、耐ブロッキング性、耐水性に優れた塗膜を形
成する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石黒 武 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 大沢 悟 千葉県印西市大塚一丁目5番地1 株式会 社竹中工務店技術研究所内 (72)発明者 水野 民雄 兵庫県西宮市熊野13−19−303 (72)発明者 足立 和生 大阪府大阪市東成区東今里2−14−15− 903 (72)発明者 桜田 将至 栃木県那須郡西那須野町下永田3−1172− 4 A−103 Fターム(参考) 4J038 CE011 CE012 CG011 CG012 CP021 CP022 GA02 KA03 KA09 MA03 MA08 MA10 MA13 NA03 NA05 NA10 NA11

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多段乳化重合法によって得られる異相構
    造エマルション粒子をバインダーとして含有する水性塗
    料用樹脂組成物において、前記バインダーが、以下の2
    種類の異相構造エマルション粒子からなることを特徴と
    する水性塗料用樹脂組成物。 (A)異相構造エマルション粒子が、以下の条件(1)
    〜(3)を満たす異相構造エマルション粒子。 (1)異相構造エマルション粒子の最外相を形成する乳
    化重合体が、ガラス転移温度−50〜10℃のエチレン
    性不飽和単量体の乳化重合体であり、かつ、ポリエチレ
    ングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少な
    くとも一方を有するエチレン性不飽和単量体を1〜20
    質量%含有する。 (2)異相構造エマルション粒子の最外相より内側にあ
    る少なくとも一相を形成する乳化重合体が、ガラス転移
    温度30〜110℃のエチレン性不飽和単量体の乳化重
    合体である。 (3)最低造膜温度が、10℃以下である。 (B)異相構造エマルション粒子が、以下の条件(1)
    〜(3)を満たす異相構造エマルション粒子。 (1)異相構造エマルション粒子の最外相を形成する乳
    化重合体が、ガラス転移温度60〜80℃のエチレン性
    不飽和単量体の乳化重合体である。 (2)異相構造エマルション粒子の最外相より内側にあ
    る少なくとも一相を形成する乳化重合体が、ガラス転移
    温度−50〜0℃のエチレン性不飽和単量体の乳化重合
    体である。 (3)最低造膜温度が10〜30℃である。
  2. 【請求項2】(A)異相構造エマルション粒子と(B)
    異相構造エマルション粒子の質量割合(固形分換算)
    が、100:10〜70である請求項1に記載の水性塗
    料用樹脂組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005528518A (ja) * 2002-06-06 2005-09-22 ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション 優れた凍結融解安定性を有する低−voc水性コーティング組成物
JP2007246677A (ja) * 2006-03-15 2007-09-27 Dainippon Toryo Co Ltd 水性塗料用樹脂組成物
JP2008038115A (ja) * 2006-08-10 2008-02-21 Asahi Kasei Chemicals Corp アクリル系水性エマルジョン

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