JP5545474B2 - 水性被覆材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水性被覆材の製造方法に関する。
近年、建築物、土木構造物等に使用する塗料は、地球環境や塗装作業環境等への配慮から、有機溶剤を媒体とする溶剤系塗料から、水を媒体とする水性塗料への変換が図られている。水性塗料の用途拡大に伴い、水性塗料に求められる要求性能も高くなってきており、耐候性、耐水性に加え、耐ブロッキング性や塗膜の伸度向上などの性能も求められるようになってきている。
たとえば、特許文献1には、耐候性、耐水性および柔軟性に優れた塗膜を形成する水性被覆組成物として、特定のポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散体の存在下で、異なるガラス転移温度を有するラジカル重合性単量体混合物を重合して得られる水性被覆組成物が開示されている。
また、特許文献2には、柔軟性と弾性回復性に優れた多層構造重合体粒子として、内部に少なくとも1つのゴム成分層を含有し、少なくとも最外部に分子量が特定値以下の熱可塑性を有する樹脂層を含有し、平均粒子径を特定範囲に制御した多層構造重合体粒子が開示されている。
特開2004−137374号公報 特開平11−292940号公報
しかし、特許文献1に記載の水性被覆組成物は、ポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散液中で、ラジカル重合性単量体混合物を重合する際に、単量体混合物中に含まれるSP値が20(J/cm1/2 以上のラジカル重合性単量体の量が少ないので、耐候性および耐水性は優れているものの、耐ブロッキング性と塗膜伸度が十分ではなかった。
また、特許文献2に記載の多層構造重合体粒子は、ポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散液中で単量体混合物を重合していないので、成形用材料としては有用な樹脂組成物であるものの、水性被覆材として用いた場合、耐候性、耐水性、耐ブロッキング性、および塗膜伸度が十分ではなかった。
そこで、本発明の目的は、優れた耐候性、耐水性を有し、なおかつ耐ブロッキング性と十分な塗膜伸度を有する塗膜が形成できる水性被覆材の製造方法を提供することにある。
本発明の要旨は、
ポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散液中で、
ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(a)を乳化重合した後、さらにラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(b)を乳化重合して得られる水性被覆材用重合体を製造する方法であって、
ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(a)、SP値が20(J/cm1/2以上であるメチルメタアクリレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカル重合性単量体(c)を30質量%以上含み、
前記単量体または単量体混合物(a)を重合して得られる重合体のFoxの計算式から求められるガラス転移温度が−15℃以上15℃以下であり、
前記単量体または単量体混合物(b)を重合して得られる重合体のFoxの計算式から求められるガラス転移温度が75℃以上125℃以下である、
水性被覆材用重合体を製造する方法、
にある
本発明により、優れた耐候性、耐水性を有し、なおかつ耐ブロッキング性と十分な塗膜伸度を有する塗膜が形成できる水性被覆材を製造することができる。
本発明の水性被覆材用重合体は、ポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散液中で、ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(a)を乳化重合した後、得られた重合体の存在下でラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(b)を乳化重合して得られるものであり、
ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(a)、SP値が20(J/cm1/2以上であるメチルメタアクリレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカル重合性単量体(c)を30質量%以上含み、前記ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(a)を重合して得られる重合体のFoxの計算式から求められるガラス転移温度が−15℃以上15℃以下であり、ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(b)を重合して得られる重合体のFoxの計算式から求められるガラス転移温度が75℃以上125℃以下であることが必要である。
本発明では、ポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散液中で、ラジカル重合性単量体混合物を重合することで、耐ブロッキング性が向上する。
さらに本発明では、Foxの計算式から求められるガラス転移温度が−15℃以上15℃以下であり、かつSP値が20(J/cm1/2 以上のラジカル重合性単量体(c)を30質量%以上含むラジカル重合性単量体または混合物(a)を乳化重合した後に、Foxの計算式から求められるガラス転移温度が75℃以上125℃以下である、ラジカル重合性単量体または混合物(b)を乳化重合することで、重合体中に高い凝集力を有する部位と高いガラス転移温度を有する部位ができると考えられ、このことにより優れた耐候性、耐水性を有しつつ、塗膜伸度の向上および耐ブロッキング性をも発現することができる。
[ポリオルガノシロキサン重合体]
本発明に用いられるポリオルガノシロキサン重合体は、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジメチルジアルコキシシラン類や、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン、ジメチルサイクリックス(ジメチルシロキサン環状オリゴマー3〜7量体混合物)等のジメチルシロキサン環状オリゴマー類や、ジメチルジクロロシラン等を酸性またはアルカリ性条件下で重合して合成することができる。得られる樹脂の熱安定性等の性能やコストに優れる点から、ジメチルシロキサン環状オリゴマーを用いることが好ましい。
さらにジメチルシロキサン環状オリゴマーと、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体からなるグラフト交叉剤を重合したポリオルガノシロキサン重合体を用いることがより好ましい。ポリオルガノシロキサン重合体とラジカル重合性単量体または混合物(a)とがグラフト重合することによって、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、耐凍害性が発現できるからである。
ポリオルガノシロキサン重合体の質量平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましい。ポリオルガノシロキサン重合体の質量平均分子量が10,000以上であれば、形成される塗膜に充分な耐久性が得られやすい。
ポリオルガノシロキサン重合体はラジカル重合性単量体(ラジカル重合性単量体または混合物(a)およびラジカル重合性単量体または混合物(b)の合計質量)100質量部に対し、0.5〜25質量部であることが好ましい。0.5質量部未満であると、塗膜の耐侯性、耐水性、柔軟性が低下する傾向にある。より好ましくは1質量部以上である。また、使用量が25質量部を超えると、塗膜の柔軟性、耐候性、耐水性および耐汚染性が低下する傾向にある。より好ましくは、20質量部以下である。さらに好ましくは、2〜15質量部である。
[重合体(A)]
重合体(A)はポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散液中で、ラジカル重合性単量体または混合物(a)を乳化重合することにより得られる。
〈ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(a)〉
ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(a)は、SP値が20(J/cm1/2以上であるメチルメタアクリレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカル重合性単量体(c)を30質量%以上含み、ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(a)を重合して得られる重合体のFoxの計算式から求められるガラス転移温度が−15℃以上15℃以下であることが必要である。
SP値とは、[数1]で表されるFedorsの式(R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14,(2),1974)により求めた値をいう。
Figure 0005545474
[数1]において、δj (J/cm1/2 は単量体(j)のSP値、△E(J/mol)は単量体(j)の凝集エネルギー密度、V(cm /mol)は単量体(j)のモル体積、△ei (J/mol)は原子又は原子団(i)の蒸発エネルギー、△vi (cm /mol)は原子又は原子団(i)のモル体積を示す。
Foxの計算式とは以下の式により求められる計算値である。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
[式中、Wiはモノマーiの質量分率、TgiはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す]
〈ラジカル重合性単量体(c)〉
ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(a)は、SP値が20(J/cm1/2以上であるメチルメタアクリレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であるラジカル重合性単量体(c)を30質量%以上含むことが必要である。
ラジカル重合性単量体(c)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチルアクリレート、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、ダイアセトンアクリルアミド、スチレン等のSP値が20〜25のエチレン性不飽和単量体が挙げられる。また、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、イタコン酸、アクリロニトリル等のSP値が25を超えるエチレン性不飽和単量体が挙げられる。塗膜の耐候性および耐水性の点から、SP値が20〜25のエチレン性不飽和単量体を使用することが好ましい。これらは必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
ラジカル重合性単量体または混合物(a)中に、ラジカル重合性単量体(c)を30質量%以上用いることにより、水性被覆剤の成膜性が向上し、耐候性、耐水性に加え塗膜伸度の向上および耐ブロッキング性が向上する。
ラジカル重合性単量体または混合物(a)としてラジカル重合性単量体(c)以外に使用できる単量体としては、特に限定されるものではないが、以下のものを挙げることができる。n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシルメタクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート等の光安定化作用を有する(メタ)アクリレート;2−[2´−ヒドロキシ−5´−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレート;2−アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ラジカル重合性単量体;ジ(メタ)アクリル酸亜鉛等の金属含有ラジカル重合性単量体;(メタ)アクリロニトリル、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等のその他の(メタ)アクリル系単量体;スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;1,3−ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系単量体;酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン等のラジカル重合性単量体。
〈ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(b)〉
温度が75℃以上125℃以下となるようなラジカル重合性単量体混合物である。75℃以上であれば、耐ブロッキング性の低下を抑制でき、125℃以下であれば、塗膜伸度の低下を抑制できる。
ラジカル重合性単量体または混合物(b)として使用できる単量体としては、特に限定されるものではないが、ラジカル重合性単量体または混合物(a)に例示した単量体を挙げることができる。好ましくはt−ブチルメタクリレートを含む。ラジカル重合性単量体または混合物(b)中、t−ブチルメタクリレートを10〜80質量%含むと耐候性の点から好ましい。より好ましくは10〜50質量%である。
本発明の製造方法に用いるラジカル重合性単量体または混合物(a)とラジカル重合性単量体または混合物(b)との質量比は、[ラジカル重合性単量体または混合物(a)]/[ラジカル重合性単量体または混合物(b)]=80/20〜10/90とするのが好ましい。より好ましくは、70/30〜15/85であり、さらに好ましくは60/40〜20/80である。
[ラジカル重合性単量体混合物の重合方法]
ラジカル重合性単量体混合物を重合する方法としては、低VOC、環境負荷低減の点から乳化重合法を用いることが好ましい。乳化重合は、例えば界面活性剤の存在下、エチレン性不飽和単量体混合物を重合系内に供給し、ラジカル重合開始剤により重合する公知の方法が使用できる。
[界面活性剤]
界面活性剤はラジカル重合性単量体100質量部に対して、0.1〜10質量部含むことが好ましい。界面活性剤を0.1質量部以上とすることによって重合体(B)の重合安定性および貯蔵安定性が向上する。また、界面活性剤を10質量部以下とすることによって、塗膜の耐水性を損なうことなく塗料化時の安定性、塗料の経時的安定性等を維持することができる。より好ましい含有量は0.5〜8質量部である。
界面活性剤の具体例として、各種のアニオン性、カチオン性、又はノニオン性の界面活性剤、更には高分子乳化剤が挙げられる。また、界面活性剤成分中にエチレン性不飽和結合を持つ、反応性界面活性剤も使用できる。中でも塗膜の耐候性および耐水性の点から反応性界面活性剤を使用することが好ましい。更に、塗膜の耐水性および耐候性向上という点から、界面活性剤成分のうち反応性界面活性剤を50質量%以上用いることが特に好ましい。
[ラジカル開始剤]
ラジカル開始剤としては、一般的にラジカル重合に使用されるものが使用可能であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリルに代表される油溶性アゾ化合物類、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類が挙げられる。
これらの開始剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、水性被覆材の貯蔵安定性、塗膜の耐水性、および耐候性の点から、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類と硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩等の還元剤と組み合わせて用いることが好ましい。
ラジカル重合開始剤の添加量は、通常、ラジカル重合性単量体100質量部に対して0.01〜10質量部であるが、重合の進行や反応の制御を考慮に入れると、0.05〜5質量部が好ましい。
得られた重合体(B)の粒子径としては、粒子の安定性および塗膜性能のバランスを考慮すると30〜300nmであることが好ましい。より好ましくは50〜200nmであり、さらに好ましくは50nm〜130nmである。30nm以上の粒子径であれば、重合中に凝集物が生じにくく、少量の界面活性化剤であっても安定に重合することができ、塗膜の耐水性を維持することができる。また300nm以下では成膜性が向上することから、耐水性および耐候性に優れた塗膜が得られる。
本製造方法により得られた重合体(B)の分散液は、重合後、塩基性化合物の添加により分散液のpHを中性領域〜弱アルカリ性、すなわちpH6.5〜11.0程度に調整することが好ましい。これにより、得られた分散液の安定性が向上する。
塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
これらの中で、VOCを含まないことが望まれる内装用途等の場合は、無機系塩基化合物を用いることが好ましい。更に、僅かな臭気が問題となる場合には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の非揮発性塩基化合物を用いることが好ましい。
[水性被覆材]
本製造方法により得られた重合体(B)を含む水性被覆材は、必要に応じて各種顔料、消泡剤、顔料分散剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤等を含有してもよい。また、他のエマルション樹脂、水溶性樹脂、粘性制御剤、メラミン類等の硬化剤と混合して使用してもよい。また、主成分である重合体(B)、前記界面活性剤、および添加剤等で固形分を形成し、通常、固形分20〜80質量%の状態で使用される。
各種基材の表面に水性被覆材を塗装する方法としては、例えば、噴霧コート法、ローラーコート法、バーコート法、エアナイフコート法、刷毛塗り法、ディッピング法およびフローコート法等の各種の塗装法を選択できる。水性被覆材は、室温乾燥もしくは50〜180℃で加熱乾燥を行うことによって塗膜を得ることができる。
本製造方法により得られた水性被覆材は、セメントモルタル、スレート板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリート、金属、ガラス、磁器タイル、アスファルト、木材、防水ゴム材、プラスチック、および珪酸カルシウム基材等の各種素材の表面仕上げ被覆材として有用であり、特に建築物、土木構造物等の躯体保護用水性被覆材として有用である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。尚、以下の記載において「部」は質量基準である。水性被覆材の評価は下記方法に従って実施した。
<評価用水性被覆材の作製>
得られた分散液のMFTが10℃を超えるものは、造膜助剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテル(以下「BDG」という)を添加しMFTを10℃以下にした。次いで、重合体(B)の分散液100gに対し、RHEOLATE350(RHEOX(株)製、増粘剤)を0.5g、サーフィノールDF−58(エア・プロダクツ(株)製、消泡剤)0.5gを加え、十分に攪拌し、フォードカップ#4で30秒程度になるように脱イオン水を加えて調整した。その後、100メッシュナイロン紗を用いて濾過を行い、評価用水性被覆材を得た。
<評価方法>
(1)耐候性
評価用水性被覆材をリン酸亜鉛処理鋼鈑(ボンデライト#100処理鋼鈑、板厚0.8mm、縦150mm×横70mm)にバーコーター#48にて塗装し、130℃で20分間強制乾燥した。次いで、室温まで放冷し評価用塗板とした。この評価用塗板を用い、ダイプラ・メタルウエザーKU−R4−W型(ダイプラ・ウィンテス(株)製)にて耐候性試験を行った。このとき、試験サイクルは、照射4時間(噴霧5秒/15分)/結露4時間、UV強度:85mW/cm2、ブラックパネル温度:照射時63℃/結露時30℃、湿度:照射時50%RH/結露時96%RHの条件で、600時間経過後の60°光沢度の保持率を耐候性の指標とし、下記の基準に従って評価した。
◎:90%以上。
○:80%以上、90%未満。
△:60%以上、80%未満。
×:60%未満、又は塗膜の剥離・クラックが生じたもの。
(2)耐水性
耐候性評価に使用したものと同様の評価用塗板を50℃の温水に50時間浸漬し、引き上げ直後および乾燥後の塗膜外観を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。
◎:塗装面の白化は少なく、乾燥後は完全にクリヤー塗膜となった。
○:多少塗装面の白化は認められるが、乾燥後は2〜3時間程度でほぼクリヤー塗膜となった。
△:多少塗装面の白化が認められ、乾燥24時間後でも少し濁っており、48時間後で辛うじて、クリヤー塗膜となった。
×:かなり塗装面が白化しており、乾燥後も白化したままで、最後までクリヤー塗膜にならなかった。
(3)耐ブロッキング性
評価用水性被覆材をガラス板に6ミルアプリケーターにて塗装(縦80mm×横80mm)し、100℃で20分間強制乾燥させた。次いで、50℃まで冷却した後、50℃雰囲気下で塗膜表面にガーゼを載せ、更にその上に事前に50℃まで加温した分銅を置き、3kg/cm2の荷重をかけて30分間維持した。次いで、常温まで冷却した後、ゆっくりガラス板を逆さまにしてガーゼを剥がし、その時の剥がし難さ、およびガーゼの痕跡を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。ガーゼが自然に落下しない場合については、ガーゼを手で引き剥がした。
◎:ガーゼが自然に落下し、塗膜上にガーゼの痕跡がほとんど残っていない。
○:ガーゼが自然に落下することはないが、塗膜上にガーゼの痕跡はほとんど残っていない。
△:ガーゼが自然に落下することはないが、少しの力で剥離することができ、ガーゼの痕跡が多少残っている。
×:ガーゼを剥離する時に塗膜の一部も剥離し、ガーゼの痕跡がくっきりと残っている。
(4)塗膜伸度
評価用水性被覆材をアプリケーター(乾燥膜厚=約100μm)を用いて離型紙上に塗布し、室温にて15時間乾燥し、80℃にて3時間乾燥し、120度にて30分間乾燥して塗膜を得た。この塗膜からJIS K 7113に規定するダンベル状2号型(平衡部分の幅10mm、標線間距離20mm)に打ち抜き、離型紙を取り除いたものを塗膜伸び試験サンプルとして用いた。試験サンプルを恒温槽付き引張測定装置(AG−IS 5KN (株)島津製作所製)を用いて、温度23℃、チャック間距離50mm、引張速度10mm/min.にて測定した。
<製造例1> ポリオルガノシロキサン重合体水分散液の調製
下記原料組成物をホモミキサーで予備混合し、圧力式ホモジナイザーを用いて200kg/cm2の圧力で強制乳化して、原料プレエマルションを得た。
次いで、水(55部)およびドデシルベンゼンスルホン酸(5部)を、攪拌機、還流冷却管、温度制御装置および滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、攪拌下に、フラスコの内温を85℃に保ちながら、前記原料プレエマルションを4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間重合を進行させ、冷却して、ドデシルベンゼンスルホン酸と当モル量のアンモニアを加えてポリオルガノシロキサン重合体水分散液(SiEm)を調製した。固形分は20質量%であった。
原料組成物:
環状ジメチルシロキサンオリゴマーの3〜7量体混合物 95部
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 5部
脱イオン水 290部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.4部
ドデシルベンゼンスルホン酸 0.4部
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、および滴下ポンプを備えたフラスコに下記第1原料混合物を仕込み、フラスコの内温を50℃に昇温した後に、下記還元剤水溶液を添加した。また、重合発熱によるピークトップ温度を確認後、フラスコの内温を80℃に保持した。

第1原料混合物:
SiEm(固形分) 5.3部
単量体1 メチルメタクリレート 12.3部
n−ブチルアクリレート 18.2部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 1.1部
界面活性剤 アデカリアソープSR−1025(商品名、ADEKA(株)製、
固形分30質量%) 2部
脱イオン水 67部
開始剤 パーブチルH69(商品名、日本油脂(株)製) 0.09部

還元剤水溶液:
硫酸第一鉄 0.0001部
エチレンジアミン(EDTA) 0.00025部
アスコルビン酸ナトリウム 0.02部
脱イオン水 2部

次いで、還元剤水溶液を添加してから0.4時間後に、下記開始剤水溶液を添加した。

開始剤水溶液:
過硫酸アンモニウム 0.1部
脱イオン水 2部

続いて、還元剤水溶液を添加してから0.5時間後に、2段目の共重合体の構成成分を含む第2原料混合物(予め乳化分散させたプレエマルション液)を2時間かけて滴下した。この滴下中はフラスコの内温を80℃に保持し、滴下終了後は80℃で1.5時間保持した。

第2原料混合物:
単量体2 t−ブチルメタクリレート 19.6部
メチルメタクリレート 39.9部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 2部
アクリル酸 1.6部
界面活性剤 アデカリアソープSR−1025(商品名、ADEKA(株)製、
固形分30質量%) 6部
脱イオン水 25部

その後、室温まで冷却し、28質量%アンモニア水(0.85部)を添加して水性被覆材を得た。
[実施例2〜5、比較例1〜5]
ラジカル重合性単量混合物の構成成分を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして水性被覆材を得た。
Figure 0005545474
表1中の略号は、以下の化合物を示す。また、表1の単位はFoxの計算式によるガラス転移温度を除いて全て質量部である。
MMA :メチルメタクリレート
2−HEMA :2−ヒドロキシエチルメタクリレート
n−BA :n−ブチルアクリレート
t−BMA :t−ブチルメタクリレート
2−EHA :2―エチルヘキシルアクリレート
AA :アクリル酸
Figure 0005545474
ラジカル重合性単量体のTgおよびSP値を表2に記載した。
各評価結果を表3に示す。
Figure 0005545474
表3に示すように、本発明の実施例1〜5の水性被覆材を用いた塗膜は、優れた耐候性、耐水性、耐ブロキング性、および十分な塗膜伸度を兼ね備えていた。
一方、比較例1では、ポリオルガノシロキサン重合体を使用していないために、全ての性能が劣っていた。比較例2では、ラジカル重合性単量体または混合物(a)のFoxの計算式から求められるガラス転移温度が15℃以上であるために、塗膜伸度が劣っていた。比較例3では、ラジカル重合性単量体または混合物(a)のFoxの計算式から求められるガラス転移温度が−15℃以下であり、さらにラジカル重合性単量体または混合物(a)のうちのラジカル重合性単量体混合物(c)の量が30質量%以下であるために、全ての性能が劣っていた。比較例4では、ラジカル重合性単量体または混合物(b)のFoxの計算式から求められるガラス転移温度が75℃以下であるために、耐ブロッキング性が劣っていた。比較例5では、ラジカル重合性単量体または混合物(a)のうちのラジカル重合性単量体(c)の量が30質量%以下であるため、耐ブロッキング性および塗膜伸度が劣っていた。
本発明は、優れた耐候性、耐水性を有し、なおかつ耐ブロッキング性と十分な塗膜伸度を有する塗膜が形成できる水性被覆材の製造することができる。そのため、建築物、土木構造物等の躯体保護を始めとする様々な被覆用途に用いることができ、工業上極めて有益である。

Claims (3)

  1. ポリオルガノシロキサン重合体を含む水性分散液中で、
    ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(a)を乳化重合した後、さらにラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(b)を乳化重合して得られる水性被覆材用重合体を製造する方法であって、
    ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(a)、SP値が20(J/cm1/2以上であるメチルメタアクリレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカル重合性単量体(c)を30質量%以上含み、
    前記単量体または単量体混合物(a)を重合して得られる重合体のFoxの計算式から求められるガラス転移温度が−15℃以上15℃以下であり、
    前記単量体または単量体混合物(b)を重合して得られる重合体のFoxの計算式から求められるガラス転移温度が75℃以上125℃以下である、
    水性被覆材用重合体を製造する方法。
  2. ラジカル重合性単量体またはラジカル重合性単量体混合物(b)にt−ブチルメタクリレートを含む、請求項1に記載の水性被覆材用重合体を製造する方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の水性被覆材用重合体を含む水性被覆材。
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