JP4333013B2 - 水性樹脂分散体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、塗料、コーティング剤及び印刷インキなどの被覆材、不織布用などの接合剤、接着剤、充填剤、成形材料並びにレジストなどに好適な耐候性、耐水性に優れた皮膜を与える樹脂エマルジョンなどの水性樹脂分散体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明者等は、先に塗料、コーティング剤などに用いられる、皮膜形成性のエマルジョンについての研究から、マレイミド基を有するエチレン性不飽和単量体を構成単量体とする共重合体から形成される皮膜が、耐候性に優れたもので、塗料原料として有効であることを見出し、特許出願を行った(特願平11−344275号、特願平11−362080号)。
【0003】
前記特許出願の明細書で述べたことであるが、それら特定の共重合体から得られた皮膜ないし塗膜は、耐候性に優れていることが知られている、重合体であるフルオロオレフィン−ビニルエーテル系共重合体からなるフッ素樹脂や、アクリルシリコン樹脂から得られた皮膜が有する皮膜光沢が不十分、皮膜と基材との密着性が満足できるレベルにないという問題点を解決するものであった。
【0004】
一方、塗料などの用途においては、近年の環境問題への対応や作業環境改善の要求から、塗料などの水性化の試みがなされている。
また、屋外塗料においては、被膜に耐汚染性及び耐候性等の物性が要求されているが、前記共重合体を水性化すると、耐汚染性に優れるものの、耐候性が低下してしまうことがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、それらの共重合体について、さらに研究を行い、水性化した場合においても、優れた耐候性を発揮し得る皮膜を形成し得るエマルジョンなどの水性分散体について検討した。
その結果、水性媒体中に分散される共重合体として、特定のエチレン性不飽和単量体を、マレイミド基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合させて得られた共重合体を、水性媒体中に分散させることにより、目的とする水性樹脂分散体が得られることを見出し、この発明を完成させた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この発明の請求項1に記載の発明は、
下記式で表されるマレイミド基と、他のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体、及びシクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体を必須の構成単量体とする共重合体が、水性媒体中に分散されていること
を特徴とする水性樹脂分散体である。
【0007】
【化2】
但し、式中、R 1 及びR 2 は、それぞれ独立した炭素数4以下のアルキル基、又はそれらが結合して炭素環を形成している基である。
【0008】
この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のマレイミド基と、他のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体に起因する構成成分が、構成単量体換算で4〜40質量%、
シクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体に起因する構成成分が、構成単量体換算で10〜96質量%、
その他のエチレン性不飽和単量体に起因する構成成分が、構成単量体換算で0〜86質量%である共重合体が、水性媒体中に分散されていること
を特徴とする水性樹脂分散体である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の水性樹脂分散体について、詳細に説明する。
なお、この明細書において、
アクリロイル基又はメタクリロイル基を、(メタ)アクリロイル基と、
アクリル酸又はメタアクリル酸を、(メタ)アクリル酸と、
アクリレート又はメタアクリレートを、(メタ)アクリレート
と表す。
【0010】
<マレイミド基を有するエチレン性不飽和単量体>
この発明における共重合体は、前記化2で表される環状であるマレイミド基と、他のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、単に「マレイミド化合物」という。)を構成単量体の一つとするものである。
マレイミド化合物における、他のエチレン性不飽和基としては、ビニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0011】
マレイミド基におけるR1 及びR2 は、それ自身の重合性、又はエチレン性不飽和基含有単量体との共重合性に優れている点から、それぞれ独立した炭素数4以下のアルキル基、又はそれらが結合して炭素環を形成する基である。
さらに、マレイミド化合物の製造が容易で、収率に優れ、又得られる共重合体が耐水性に優れたものとなる点で、それぞれが結合して炭素環を形成する基がより好ましく、炭素環を形成する基の中でも
基−CH2 CH2 CH2 −、又は基−CH2 CH2 CH2 CH2 −が好ましく、より好ましいものは、基−CH2 CH2 CH2 CH2 −
である。
【0012】
マレイミド化合物としては、下記化3で表されるマレイミド( メタ)アクリレートが好ましい。
【0013】
【化3】
但し、式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立した炭素数4以下のアルキル基、又はそれらが結合して炭素環を形成する基である。
また、R3 は炭素数1〜6のアルキレン基で、R4 は水素原子又はメチル基であり、nは1〜6の整数である。
【0014】
特に、その中でも、この発明にとり好ましいものは、前記化2において、nが1〜2のものであり、特に好ましいものは、1のものである。
R3 として好ましいものは、エチレン基及びプロピレン基が挙げられる。
【0015】
マレイミド(メタ)アクリレートの好ましい例としては、下記化4及び化5で表される化合物を挙げることができる。
【0016】
【化4】
但し、式中、R4 及びR5 は水素原子又はメチル基、nは1〜6の整数である。
【0017】
【化5】
但し、式中、R4 及びR5 は水素原子又はメチル基、R6 及びR7 は炭素数4以下のアルキル基である。nは1〜6の整数である。
【0018】
マレイミド(メタ)アクリレートは、以下の文献及び特許公報に記載のある方法によって、酸無水物、アミノアルコール及び(メタ)アクリル酸より製造することができる。
−加藤清ら、有機合成化学協会誌30(10),897,(1972)
−Javier de Abajo ら、Polymer,vol33(5),(1992)
−特開昭56−53119号公報,特開平1−242569号公報
【0019】
製造原料として使用される酸無水物としては、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物及びその誘導体、ジアルキルマレイン酸無水物及びその誘導体が挙げられる。
収率に優れる点から、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物及びその誘導体が好ましい。
【0020】
製造原料として使用されるアミノアルコールとしては、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミンなどのアルカノールアミン類及び2,2’−アミノエトキシエタノールなどが挙げられる。
【0021】
<シクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体>
構成単量体の他の一つである、シクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体におけるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロドデシル基等の単環式飽和炭化水素基、並びにイソボルニル基及びトリシクロデシル基等の多環式飽和炭化水素基等が挙げられる。
【0022】
これらシクロアルキル基には、アルキル基を置換基として有するものであってもよく、具体的に、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシニルなどが例示され、特に、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが好ましい。
【0023】
<その他のエチレン性不飽和単量体>
この発明における共重合体は、マレイミド化合物と共重合し得る、前記のシクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体以外のエチレン性不飽和単量体を構成単量体とすることができ、それらを共重合することにより、得られる共重合体に種々の特性を付与することができる。
【0024】
その他のエチレン性不飽和単量体としては、前記シクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体以外のものであれば、種々の単量体、
具体的には、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン並びにビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体
などが挙げられる。
【0025】
前記の(メタ)アクリル酸エステルとしては、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸nブチル、(メタ)アクリル酸isoブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキル、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート及び2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、並びにヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル等
が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、共重合性、塗膜物性などの面から好ましい単量体は、炭素数が1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸、スチレン、炭素数が2〜3のアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0027】
この発明の共重合体を構成するマレイミド化合物、シクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体、及びマレイミド化合物と共重合し得るその他のエチレン性不飽和単量体の構成割合は、マレイミド化合物及びエチレン性不飽和単量体のそれぞれの種類と組合せによって異なるが、マレイミド化合物4〜40質量%、シクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体10〜96質量%及びその他のエチレン性不飽和単量体0〜86質量%であるのが好ましい。
【0028】
この割合であれば、その共重合体は、構成単量体の種類と組合せに制限されずに、前記した耐候性や光沢に優れた皮膜を形成することができ、各種の用途において賞用され得る。
【0029】
特に、マレイミド化合物が4質量%未満であると、架橋密度が不足するためと思われるが、硬さと汚染性に満足することができず、シクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体が10質量%未満であると、耐候性に満足できないことがある。
【0030】
<共重合体及び水性樹脂分散体の製法>
この発明の水性樹脂分散体は、乳化剤を用いる一般的なエマルジョン重合方法で、マレイミド化合物と、シクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体の共重合を行うことにより、容易に調製される。
【0031】
エマルジョン重合の具体的な方法としては、共重合する単量体を水性媒体中に乳化剤を使用して分散させ、重合開始剤の存在下に加熱攪拌する方法、及び共重合する単量体を水性媒体中に乳化剤を使用して分散して水性乳濁液とし、当該水性乳濁液を水性媒体中に添加しつつ、重合開始剤の存在下に加熱攪拌する方法が挙げられる。
なお、必要に応じて、重合体の分子量を調節するために、連鎖移動剤を使用することができる。
【0032】
エマルジョン重合で使用される重合開始剤の種類及び割合、並びに適用される重合温度及び単量体の供給方法は、使用する単量体及び目的に応じて適宜選択すればよい。
重合温度としては、通常使用する重合開始剤に適した重合温度を、採用する。
【0033】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、並びに過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド及びt−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物などが挙げられる。
これらは、重亜硫酸ナトリウム及びアスコルビン酸などの還元剤を併用し、レドックス系開始剤として使用してもよい。
これらの中でも、水溶性の重合開始剤が好ましい。
【0034】
乳化剤としては、求められる特性などに応じて、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤、並びにポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0035】
また、エマルジョンの安定性や、硬化塗膜の耐水性を向上させるために、ポリカルボン酸系及びポリスルホン酸系などの陰イオン性乳化剤、ポリビニルアルコールなどの非イオン性高分子界面活性剤や反応性乳化剤を併用することもできる。
その使用量は、全単量体量100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0036】
連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、キサントゲン酸ジスルフィド、ジアゾチオエーテル及び2−プロパノールなどが挙げられる。
【0037】
水性樹脂分散体中の共重合体の割合としては、20〜70質量%が好ましく、より好ましくは30〜60質量%である。
【0038】
この発明の水性樹脂分散体は、被覆剤として好適に使用することができる。
適用可能な基材としては、例えば、ガラス、スレート、金属、木材、プラスチック及びコンクリート等が挙げられる。
【0039】
被覆剤の用途を具体的に示すと、土木、建築用の塗料、耐酸性雨用塗料、防汚性塗料、及び溌水剤、電気電子部品の防湿コーティング剤、磁気テープのバックコート剤等が挙げられる。
これら以外の用途としては、繊維用の硬化仕上げ剤、溌水剤、その他シーリング剤、接着剤、バインダー、粘着剤などに用いることができる。
【0040】
この発明の水性樹脂分散体は、特に塗料として有用であり、塗料として利用する際、従来の塗料で使用されている種々の添加剤を配合するこができる。
【0041】
添加剤としては、例えば、クレー、タルク及びチタンホワイト等の充填剤、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール及びジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の造膜助剤、ジブチルフタレート及びジオクチルフタレート等の可塑剤、ロジン、テンペンフェノール及び石油樹脂等の粘着付与剤、湿潤、分散及び消泡等の目的に用いられる各種界面活性剤、増粘剤、チクソ剤並びに凍結防止剤等が挙げられる。
【0042】
この発明の水性樹脂分散体からなる塗料組成物は、共重合体に存在する環状のマレイミド基の光二量化反応により3次元架橋を形成ものである。
これ以外の架橋系を併用することもでき、例えば、シロキサン架橋、イソシアネート架橋及びヒドラジン架橋等を併用することができる。
【0043】
シロキサン架橋としては、この発明の共重合体を、その他のエチレン性不飽和単量体として、アルコキシシリル基含有単量体を共重合させて得られたアルコキシシリル基含有共重合体とすることにより行う方法等が挙げられる。
【0044】
ウレタン架橋としては、この発明の共重合体として、その他のエチレン性不飽和単量体である、水酸基含有単量体を共重合させて得られた水酸基含有共重合体を使用し、ポリイソシアネートを配合する方法等が挙げられる。
【0045】
ポリイソシアネートとしては、
テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4(又は2,4,4)−トリメチル−1,6−ジイソシアネートヘキサン及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート;
4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート及び2,4−トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;
並びに上記のジイソシアネートより誘導されるイソシアヌレート変性ポリイソシアネート、ビュレット変性ポリイソシアネート及びウレタン変性ポリイソシアネート
等が挙げられる。
【0046】
ヒドラジン架橋としては、この発明の共重合体として、その他のエチレン性不飽和単量体である、アクロレイン、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート及びダイアセトン(メタ)アクリルアミド等を共重合させて得られたカルボニル基含有共重合体を使用し、ヒドラジンを配合する方法等が挙げられる。
【0047】
前記ヒドラジンとしては、
プロピレン−1,3−ジヒドラジン及びブチレン−1,4−ジヒドラジン等のジヒドラジン化合物;
N,N−ジエチルヒドラジン、N,N−ジプロピルヒドラジン、N,N−ジステアリルヒドラジン、N−メチル−N−エチルヒドラジン、N−メチル−N−ベンジルヒドラジン及びN,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)ヒドラジン等のN,N−ジ置換ヒドラジン;
マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド及びフタル酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド化合物;
トリメリット酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド化合物;
炭酸ジヒドラジド類並びにビスセミカルバジド類
等が挙げられる。
【0048】
水性樹脂分散体の使用方法としては、常法に従えばよく、例えば、当該分散体を基材に塗工し、自然乾燥又は加熱乾燥する方法等が挙げられる。
【0049】
また、環状のマレイミド基を有する、この発明の水性樹脂分散体における共重合体は、二個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートや、ポリアルレキングリコールポリ(メタ)アクリレートなどのアクリル系のモノマー、及びウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、及びポリエーテルポリオールなどの化合物と併用されて活性エネルギー線硬化型水性エマルジョンとして用いることにより、さらに応用範囲が広がるものである。
【0050】
【作用】
この発明の水性樹脂分散体は、水性媒体中に分散される共重合体がマレイミド化合物と、シクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体を必須の構成単量体とするため、共重合体中に存在するマレイミド基が太陽光により光二量化して三次元架橋構造を形成し、被膜に耐汚染性を付与し、さらに共重合体中に存在するシクロアルキル基により、皮膜は耐候性に非常に優れたものとなる。
【0051】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて、この発明をさらに具体的に説明する。
なお、文中、%及び部は、質量%及び質量部である。
【0052】
<実施例1〜5、比較例1〜3>
[水性樹脂分散体の調製]
下記表1に示される量の、下記化6で表されるマレイミドアクリレート(表1中、マレイミドアクリレートと表示)と、メタクリル酸シクロヘキシル(表1中、CHMAと表示)と、メタクリル酸メチル(表1中、MMAと表示)と、アクリル酸ブチル(表1中、BAと表示)及びメタクリル酸(表1中、MAAと表示)を混合して、脱イオン水100部、及び乳化剤(レベノールWZ)0.5部(有効成分)と混合し、回転式ホモミキサーを用いて単量体エマルジョンを作成した。
【0053】
一方、脱イオン水40部、炭酸ナトリウム0.5部、過硫酸アンモニウム1部及び乳化剤0.5部(有効成分)の入ったフラスコ内部を窒素置換した後、温度80℃まで加温した。
内液を温度80℃に維持しながら、そこへ、先の単量体エマルジョンを2時間かけて滴下し、さらにそのまま2時間熟成して、それぞれエマルジョン型の水性樹脂分散体を得た。
【0054】
【化6】
【0055】
【表1】
【0056】
[評価方法及び評価結果]
まず、水10部に、酸化チタン(CR97;石原産業株式会社製)30部、顔料分散剤(BYK−190;ビッグケミー株式会社製)1部、及び消泡剤(BYK−022;ビッグケミー株式会社製)0. 2部を混合し、これに平均粒径約1mmのガラスビーズを混合した後、高速回転式混合機を使用して約3000rpmの条件で30分混合して顔料を分散させた。
【0057】
この混合物から、ガラスビーズを除去して得られた顔料分散ペーストに、先に調製したそれぞれの水性樹脂分散体100部、造膜助剤のトリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル5部、及び増粘剤(プライマールRM−8W;日本アクリル株式会社製)0. 5部を混合し、塗料用を考慮した試験用水性樹脂分散体を得た。
【0058】
アルミ板に、バーコーター160μmで、それぞれの試験用水性樹脂分散体を塗布し、室温で1日間乾燥後、屋外(南面)に30日間暴露して得た、表面に皮膜の形成された試験体について、下記の評価試験を行い、その結果を表2に示す。
1.耐候性
メタルウエザーメーターKU−R4(大日本プラスチック株式会社製)480Hr照射後の光沢(60°)
保持率を評価
○:90%以上
△:60〜90%
×:60%以下
2.鉛筆硬度JIS−K5400に準拠
3.カーボン汚染性カーボン粉末(MA100)の灯油5wt%分散液を作成し、皮膜上に塗布し、24時間放置後ペーパータオルでの拭き取り性を評価
○:完全に除去
△:痕跡が残る程度
×:ほとんど除去できず
【0059】
【表2】
【0060】
【発明の効果】
この発明の水性樹脂分散体は、特定のマレイミド基と、他のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体と、シクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体を必須の構成単量体とする共重合体が、水性媒体中に分散されているので、耐候性及び耐汚染性に優れた皮膜を形成し得るので、塗料、接着剤、シーリング剤、コーティング剤など各種の用途に対して、きわめて有用なものである。
Claims (2)
- 下記式で表されるマレイミド基と、他のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体、及びシクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体を必須の構成単量体とする共重合体が、水性媒体中に分散されていること
を特徴とする水性樹脂分散体。
- 請求項1に記載のマレイミド基と、他のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体に起因する構成成分が、構成単量体換算で4〜40質量%、
シクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体に起因する構成成分が、構成単量体換算で10〜96質量%、
その他のエチレン性不飽和単量体に起因する構成成分が、構成単量体換算で0〜86質量%である共重合体が、水性媒体中に分散されていること
を特徴とする水性樹脂分散体。
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