JP4333012B2 - 水性樹脂分散体およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、塗料、コーティング剤及び印刷インキなどの被覆材、不織布用等の接合剤、接着剤、充填剤、成形材料並びにレジストなどに有用として賞用される耐候性、耐水性に優れた皮膜を与える樹脂エマルジョンなどの水性樹脂分散体と、その製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明者等は、先に塗料、コーティング剤などに用いられる、皮膜形成性のエマルジョンについての研究から、マレイミド基を有するエチレン性不飽和単量体を構成単量体とする共重合体から形成される皮膜が耐候性に優れたもので、塗料原料として有効であることを見出し、特許出願を行った(特願平11−344275号、特願平11−362080号)。
【0003】
特願平11−344275号ないし特願平11−362080号の明細書で述べたことであるが、それら特定の共重合体から得られた皮膜ないし塗膜は、耐候性に優れていることが知られている、重合体であるフルオロオレフィン−ビニルエーテル系共重合体からなるフッ素樹脂や、アクリルシリコン樹脂から得られた皮膜が有する皮膜光沢が不十分、皮膜と基材との密着性が満足できるレベルにない、という問題点を解決するものであった。
【0004】
一方、塗料などの用途においては、近年の環境問題への対応や、作業環境改善の要求から、塗料等の水性化への試みがなされている。
また、屋外塗料においては、被膜に耐汚染性、耐水性及び耐候性などの性能が要求されているが、前記共重合体を水性化すると、耐汚染性に優れてはいるものの、耐水性の点で不十分なものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、それらの共重合体について、さらに研究を行い、先に提案した前記共重合体から得られる皮膜の前記特性を維持したままで、エマルジョンなどの水性分散体から形成させた当該皮膜の耐水性を、さらに向上させることについて検討を行った。
その結果、水性樹脂分散体を取得する最も一般的である乳化重合により、水性樹脂分散体を取得する際に、乳化剤として特定の界面活性剤を使用すれば、目的のものが得られることを見出し、この発明を完成したのである。
【0006】
この発明の目的は、先に提案した、前記共重合体から得られる皮膜の特性を維持したうえで、耐水性に格別に優れるという皮膜を形成し得る水性樹脂分散体と、その製造法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この発明の請求項1に記載の発明は、
下記式で表されるマレイミド基と、他のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体、ラジカル重合性界面活性剤及び、必要に応じてその他のエチレン性不飽和単量体を構成単量体とする共重合体が、水性媒体中に分散されていること
を特徴とする水性樹脂分散体である。
【0008】
【化2】
但し、式中、R 1 及びR 2 は、それぞれ独立した炭素数4以下のアルキル基、又はそれらが結合して炭素環を形成している基である。
【0009】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
前記水性樹脂分散体におけるラジカル重合性界面活性剤が、
オキシアルキレン基を主鎖とし、一端にラジカル重合性二重結合を有する基、他端にイオン解離性基を有する界面活性剤であること
を特徴とする水性樹脂分散体である。
【0010】
さらには、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1記載のマレイミド基と、他のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体と、必要に応じて併用するその他のエチレン性不飽和単量体とを、ラジカル重合性界面活性剤を用いて乳化重合することにより調製すること
を特徴とする水性樹脂分散体の製造法に関するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる水性樹脂分散体の実施の形態について、詳細に説明する。
なお、この明細書においては、
アクリロイル基又はメタクリロイル基を、(メタ)アクリロイル基と、
アクリル酸又はメタクリル酸を、(メタ)アクリル酸と、
アクリレート又はメタクリレートを、(メタ)アクリレートと
表す。
【0012】
<マレイミド基を有するエチレン性不飽和単量体>
この発明における共重合体は、前記化2で表される環状のマレイミド基と、他のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、単に「マレイミド化合物」という。)を構成単量体の一つとするものである。
マレイミド化合物における、他のエチレン性不飽和基としては、ビニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0013】
マレイミド化合物におけるR1 及びR2 としては、それ自身の重合性又はエチレン性不飽和基含有単量体との共重合性に優れている点から、それぞれ独立した、炭素数4以下のアルキル基、又はそれらが結合して炭素環を形成する基が用いられる。
さらに、マレイミド化合物の製造が容易で、収率に優れ、又得られる共重合体が耐水性に優れたものとなる点で、それぞれが結合して炭素環を形成する基がより好ましく、炭素環を形成する基の中でも
基−CH2 CH2 CH2 −、又は基−CH2 CH2 CH2 CH2 −が好ましく、より好ましいものは、基−CH2 CH2 CH2 CH2 −である。
【0014】
マレイミド化合物としては、下記化3で表されるマレイミド(メタ)アクリレートが好ましい。
【0015】
【化3】
但し、式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立した水素原子、若しくは炭素数4以下のアルキル基、どちらか一方が水素原子で、他方が炭素数4以下のアルキル基、又はそれぞれが結合して炭素環を形成する基である。
また、R3 は炭素数1〜6のアルキレン基で、R4 は水素原子又はメチル基であり、nは1〜6の整数である。
【0016】
特に、その中でも、この発明により好ましいものは、前記化2において、nが1〜2のものであり、特に好ましいものは、1のものである。
R3 として好ましいものは、エチレン基及びプロピレン基が挙げられる。
【0017】
マレイミド(メタ)アクリレートの好ましい例としては、下記化4、及び化5で表される化合物を挙げることができる。
【0018】
【化4】
但し、式中、R4 及びR5 は水素原子又はメチル基、nは1〜6の整数である。
【0019】
【化5】
但し、式中、R4 及びR5 は水素原子又はメチル基、R6 及びR7 は炭素数4以下のアルキル基である。nは1〜6の整数である。
【0020】
マレイミド(メタ)アクリレートは、以下の文献、及び特許に記載のある方法により、酸無水物、アミノアルコール及び(メタ)アクリル酸より製造することができる。
−加藤清ら、有機合成化学協会誌30(10),897,(1972)
−Javier de Abajo ら、Polymer,vol33(5),(1992)
−特開昭56−53119号公報、特開平1−242569号公報
【0021】
製造原料として使用される酸無水物としては、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物及びその誘導体、ジアルキルマレイン酸無水物及びその誘導体が挙げられる。
収率に優れる点から、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物及びその誘導体が好ましい。
【0022】
製造原料として使用されるアミノアルコールとしては、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン等のアルカノールアミン類及び2,2’−アミノエトキシエタノールなどが挙げられる。
【0023】
<その他のエチレン性不飽和単量体>
この発明において、共重合体は、マレイミド化合物と、必要に応じて、このマレイミド化合物と共重合し得る、その他のエチレン性不飽和単量体の共重合体であってもよい。
マレイミド化合物と共重合し得るその他のエチレン性不飽和単量体としては、
(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン及び、α−メチルスチレン、並びにビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシ、プロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体
などが挙げられる。
【0024】
前記の(メタ)アクリル酸エステルとしては、
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸nブチル、(メタ)アクリル酸isoブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボロニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート及び2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、並びにヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキル、グリシジル(メタ)アクリレート、並びに(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル
を挙げることができる。
【0025】
これらの中でも共重合性、塗膜物性などの面から好ましい単量体としては、炭素数が1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸、スチレン、炭素数が2〜3のアルキレン基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
【0026】
この発明の共重合体を構成するマレイミド化合物と共重合し得る、その他のエチレン性不飽和単量体を併用する場合の構成割合は、マレイミド化合物及びエチレン性不飽和単量体のそれぞれの種類と組合せによって異なるが、マレイミド化合物4〜40質量部、エチレン性不飽和単量体96〜60質量部が好ましい。
この割合であれば、その共重合体は、構成単量体の種類や組合せなどに制限されずに、前記した耐汚染性や光沢に優れ、また耐水性にもそれなりに優れた皮膜を形成することができる。
【0027】
<ラジカル重合性界面活性剤>
この発明における共重合体は、ラジカル重合性界面活性剤を構成単量体とするものである。
前記マレイミド化合物と、このマレイミド化合物と共重合し得る、その他のエチレン性不飽和単量体の共重合体を乳化重合する際に、これを界面活性剤として使用することにより、容易に共重合体の第三成分として、共重合体の中に組み込まれるものである。
【0028】
ラジカル重合性界面活性剤については、特公昭46−12472号公報、特公昭56−29657号公報、特開昭56−28208号公報、特開昭56−127697号公報、特開昭62−100502号公報、特開平2−162287号公報などで知られ、すでに市販品としてラテムル〔商品名、花王(株)製〕、エレミノール〔商品名、三洋化成(株)製〕、アクアロン〔商品名、第一工業製薬(株)製〕、アデカリアソープ〔商品名、旭電化工業(株)製〕などが知られている。
【0029】
この発明においては、それらのいずれもが使用可能であるが、特に好ましいものは、オキシアルキレン基を主鎖とし、一端にラジカル重合性二重結合を有する基、多端にイオン解離性基を有する界面活性剤で、一般式で示せば、以下のとおりのものである。
【0030】
【化6】
但し、式中、Zはラジカル重合性二重結合を有する基、AOはオキシアルキレン基、n は2以上の整数、Yはイオン解離性基を示す。
【0031】
ラジカル重合性界面活性剤は、アニオン性又はカチオン性のものが好ましい。
ラジカル重合性二重結合を有する基として好ましいものは、芳香族炭化水素基、アルキル置換芳香族炭化水素基、高級アルキル基又は脂環式炭化水素基等の疎水性基と、ラジカル重合性二重結合とが組み合わされた構造のものである。
重合性二重結合としては、(メタ)アリル基、プロペニル基又はブテニル基などが好ましい。
【0032】
この発明におけるラジカル重合性界面活性剤として、より好ましいものはアニオン性のものである。
したがって、イオン解離性基としては、オキシアルキレン基にアニオンが共有結合し、これにカチオンがイオン結合した塩が好ましい。
具体例としては、
−SO3 Na 、−SO3 NH4 、−COONa 、−COONH4 、−PO3 Na2 及び−PO3 (NH4 )2 などが挙げられる。
さらに好ましくは、−SO3 Na 又は−SO3 NH4 である。
【0033】
オキシアルキレン基におけるnとしては、300以下が好ましく、さらに好ましくは5〜50である。
アルキレン基としては、エチレン基又はプロピレン基が好ましい。
【0034】
ラジカル重合性界面活性剤の具体例としては、例えば、下記化7、化8又は化9などで表される化合物が挙げられる。
化7及び化8中のR8 及びR9 としては、炭素数6〜18の直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましい。
化9中のR10としては、炭素数8〜24のアルキル基が好ましく、R11は水素原子又はメチル基である。
また、化7から化9中のイオン解離性基の具体例は、先に述べた通りである。
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
この発明の共重合体を構成するラジカル重合性界面活性剤は、マレイミド化合物及びエチレン性不飽和単量体の共重合の際に、乳化剤として用いられることによって、共重合体中に導入することができる。
乳化重合の際に使用されるラジカル重合性界面活性剤の量は、マレイミド化合物及びエチレン性不飽和単量体のそれぞれの種類と組合せ、さらにはラジカル重合性界面活性剤の種類によっても異なるが、一般的には、マレイミド化合物とエチレン性不飽和単量体の総和100質量部に対し、0.1〜5質量部である。
【0039】
使用量が0.1質量部未満では、これを用いて乳化重合や得られたエマルジョンの安定性が悪く、5質量部を超えても、添加量に比例した耐水性の効果の向上が認められないばかりでなく、むしろ耐水性が低下することがあり、避けるのが望ましい。
【0040】
前記割合であれば、得られる共重合体は、構成単量体の種類と組合せに制限されずに、前記した耐汚染性や光沢に優れ、また耐水性にも優れた皮膜を形成することができる。
【0041】
<共重合体及び水性樹脂分散体の製法>
この発明の水性樹脂分散体は、一般的な乳化重合方法で、ラジカル重合性界面活性剤を乳化剤とし、マレイミド化合物とエチレン性不飽和単量体の共重合を行うことにより、容易に調製される。
【0042】
乳化重合の具体的な方法としては、共重合する単量体を、水性媒体中にラジカル重合性界面活性剤を乳化剤として使用して分散させ、重合開始剤の存在下に加熱攪拌する方法、及び共重合する単量体を、水性媒体中にラジカル重合性界面活性剤を乳化剤として使用して分散して水性乳濁液とし、当該水性乳濁液を水性媒体中に添加しつつ、重合開始剤の存在下に加熱攪拌する方法等を挙げることができる。
【0043】
また、必要に応じて、重合体の分子量を調節するために、連鎖移動剤を使用することができる。
乳化重合で使用される重合開始剤の種類及び割合、並びに適用される重合温度及び単量体の供給方法は、使用する単量体、及び目的に応じて適宜選択すればよい。
重合温度としては、通常使用する重合開始剤に適した重合温度を採用する。
【0044】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、並びに過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド及びt-ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物などが挙げられる。
これらは、重亜硫酸ナトリウム及びアスコルビン酸等の還元剤を併用し、レドックス系開始剤として使用してもよい。これらの中でも、水溶性の重合開始剤が好ましい。
【0045】
乳化剤としてのラジカル重合性界面活性剤は、単独での使用も可能であるが、得られるエマルジョンの用途、求められる特性などに応じて、これ以外の界面活性剤を併用することができる。
【0046】
この界面活性剤の具体的なものとしては、たとえば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤、並びにポリオキシエチレン高級アルコールエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0047】
また、エマルジョンの安定性や、硬化塗膜の耐水性を向上させるために、ポリカルボン酸系及びポリスルホン酸系などの陰イオン性乳化剤、ポリビニルアルコール等の非イオン性高分子界面活性剤を併用することもできる。
併用される乳化剤の量は、前記したラジカル重合性界面活性剤の使用量の範囲内で用いるのが好ましいが、乳化剤による悪影響が問題にならない場合、特に乳化剤により特性を付加したい場合などには、使用量を多くすることも可能である。
【0048】
連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、キサントゲン酸ジスルフィド、ジアゾチオエーテル及び2−プロパノールなどが挙げられる。
【0049】
水性樹脂分散体中の共重合体の割合としては、20〜70質量%が好ましく、より好ましくは、40〜60質量%である。
【0050】
この発明の水性樹脂分散体は、被覆剤として好適である。
適用可能な基材としては、例えば、ガラス、スレート、金属、木材、プラスチック及びコンクリート等が挙げられる。
【0051】
被覆材の用途を具体的に示すと、土木・建築用の塗料、耐酸性雨用塗料、防汚性塗料、及び溌水剤、電気電子部品の防湿コーティング剤、磁気テープのバックコート剤が挙げられる。
それ以外の用途としては、たとえば、繊維用の硬化仕上げ剤、溌水剤、その他シーリング剤、接着剤、バインダー、粘着剤などに用いることができる。
【0052】
この発明の水性樹脂分散体は、特に塗料として有用であって、塗料として利用する際、従来の塗料で使用されている種々の添加剤を配合するこができる。
【0053】
添加剤としては、例えば、クレー、タルク及びチタンホワイト等の充填剤、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール及びジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の造膜助剤、ジブチルフタレート及びジオクチルフタレート等の可塑剤、ロジン、テンペンフェノール及び石油樹脂等の粘着付与剤、湿潤、分散及び消泡等の目的に用いられる各種界面活性剤、増粘剤、チクソ剤、並びに凍結防止剤等が挙げられる。
【0054】
この発明の水性樹脂分散体からなる塗料組成物は、共重合体の環状マレイミド基の光二量化反応により3次元架橋を形成する。
これ以外の架橋系を併用することもでき、例えば、シロキサン架橋、イソシアネート架橋及びヒドラジン架橋等を併用することができる。
【0055】
シロキサン架橋としては、この発明の共重合体を、その他のエチレン性不飽和単量体として、アルコキシシリル基含有単量体を共重合させて得られた、アルコキシシリル基含有共重合体とすることにより行う方法等が挙げられる。
【0056】
ウレタン架橋としては、この発明の共重合体として、その他のエチレン性不飽和単量体である水酸基含有単量体を共重合させて得られた水酸基含有共重合体を使用し、ポリイソシアネートを配合する方法等が挙げられる。
【0057】
前記のポリイソシアネートとしては、
テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4(又は2,4,4)−トリメチル−1,6−ジイソシアネートヘキサン及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート;
4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート及び2,4−トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;
並びに、前記のジイソシアネートより誘導されるイソシアヌレート変性ポリイソシアネート、ビュレット変性ポリイソシアネート及びウレタン変性ポリイソシアネート等
が挙げられる。
【0058】
ヒドラジン架橋としては、この発明の共重合体として、その他のエチレン性不飽和単量体である、アクロレイン、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート及びダイアセトン(メタ)アクリルアミド等を共重合させて得られたカルボニル基含有共重合体を使用し、ヒドラジンを配合する方法等が挙げられる。
【0059】
ヒドラジンとしては、
プロピレン−1,3−ジヒドラジン及びブチレン−1,4−ジヒドラジン等のジヒドラジン化合物;
N,N−ジエチルヒドラジン、N,N−ジプロピルヒドラジン、N,N−ジステアリルヒドラジン、N−メチル−N−エチルヒドラジン、N−メチル−N−ベンジルヒドラジン及びN,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)ヒドラジン等のN,N−ジ置換ヒドラジン;
マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド及びフタル酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド化合物;
トリメリット酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド化合物;
炭酸ジヒドラジド類並びにビスセミカルバジド類
等が挙げられる。
【0060】
水性樹脂分散体の使用方法としては、常法に従えばよく、たとえば、該分散体を基材に塗工し、自然乾燥又は加熱乾燥する方法等が挙げられる。
【0061】
また、環状マレイミド基を有する、この発明の水性樹脂分散体における共重合体は、二個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートやポリアルレキングリコールポリ(メタ)アクリレートなどのアクリル系のモノマー及びウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及びポリエーテルポリオールなどの化合物と併用されて、活性エネルギー線硬化型水性エマルジョンとして用いることにより、さらに応用範囲が広がるものである。
【0062】
【作用】
この発明の水性樹脂分散体は、水性媒体中に分散される共重合体が、マレイミド化合物を構成単量体とし、乳化重合に際して、共重合体中に組み込まれた乳化剤が被膜にブリードしてこないため、耐水性が改善される。
また、この水性樹脂分散体から得られる皮膜は、この中に存在するマレイミド基が太陽光線によって光二量化し、三次元架橋構造となって、耐汚染性や耐水性に非常に優れたものとなる。
【0063】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて、この発明の水性樹脂分散体を、さらに具体的に説明する。
なお、各例における成分配合の部は、全て質量部である。
また、実施例で使用されたラジカル重合性界面活性剤の、
“アクアロンHS10”〔第一工業製薬(株)製〕は、化10で表される化合物(n=10)で、レベノールWZは、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩〔花王(株)製〕である。
【0064】
【化10】
【0065】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
<水性樹脂分散体の調製>
表1に示される量の下記化11で表されるマレイミドアクリレート(マレイミドアクリレートと表示)、メタクリル酸メチル(MMAと表示)、アクリル酸ブチル(BAと表示)を混合して、脱イオン水100部及び乳化剤と添加し、回転式ホモミキサーを用いて単量体エマルジョンを作成した。
一方、脱イオン水 40部、炭酸ナトリウム0. 5部、過硫酸アンモニウム1部、乳化剤の入ったフラスコ内部を窒素置換した後、温度80℃迄加温した。
内液を温度80℃に維持しながら、そこへ、先の単量体エマルジョンを2時間かけて滴下し、そのまま2時間熟成して、それぞれエマルジョン型の水性樹脂分散体を得た。
【0066】
【化11】
【0067】
【表1】
【0068】
<評価方法及び評価結果>
得られたそれぞれの水性樹脂分散体100部に、造膜助剤のトリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル5部及び増粘剤(プライマールRM−8W、日本アクリル株式会社製)0.5部を混合し、塗料用を考慮した試験用水性樹脂分散体を得た。
アルミ板にバーコーター160μmで、それぞれの試験用水性樹脂分散体を塗布し、室温で1日間乾燥後、屋外(南面)に5日又は15日間暴露して得た、表面に皮膜の形成された試験体たについて、下記の評価試験を行い、その結果を表2に示した。
a.耐水白化性
温度50℃の温水に7日間浸漬した直後の皮膜の白化レベルを評価
○:白化せず
△:僅かに白化
×:白化した
b.鉛筆硬度
JIS−K5400に準拠
c.カーボン汚染性
カーボン粉末(MA100)の灯油5wt%分散液を作成し、皮膜上に塗布し24時間放置後ペーパータオルでの拭き取り性を評価
○:完全に除去
△:痕跡が残る程度
×:ほとんど除去できず
【0069】
【表2】
【0070】
【発明の効果】
この発明の水性樹脂分散体は、特定のマレイミド基と、他のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体と、ラジカル重合性界面活性剤、及び必要により併用されるその他のエチレン性不飽和単量体を構成単量体とする共重合体が、水性媒体中に分散されているので、耐汚染性、耐水性に優れた皮膜を形成することができ、塗料、接着剤、シーリング剤、コーティング剤など各種の用途に対して極めて有用なものである。
【0071】
また、この発明の水性樹脂分散体の製造方法は、例えば、塗料、接着剤、シーリング剤、コーティング剤など各種の用途に対して極めて有用な耐汚染性、耐水性に優れた皮膜を与える樹脂エマルジョンなどの水性樹脂分散体を、容易に製造することができる。
Claims (3)
- 下記式で表されるマレイミド基と、他のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体、ラジカル重合性界面活性剤及び、必要に応じてその他のエチレン性不飽和単量体を構成単量体とする共重合体が、水性媒体中に分散されていること
を特徴とする水性樹脂分散体。
- 前記ラジカル重合性界面活性剤が、
オキシアルキレン基を主鎖とし、一端にラジカル重合性二重結合を有する基、他端にイオン解離性基を有する界面活性剤であること
を特徴とする請求項1記載の水性樹脂分散体。 - 請求項1記載のマレイミド基と、他のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和単量体と、必要に応じて併用するその他のエチレン性不飽和単量体とを、ラジカル重合性界面活性剤を用いて乳化重合することにより調製すること
を特徴とする水性樹脂分散体の製造法。
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