JP2000034308A - 水性エマルションの製造方法 - Google Patents

水性エマルションの製造方法

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JP2000034308A
JP2000034308A JP10216510A JP21651098A JP2000034308A JP 2000034308 A JP2000034308 A JP 2000034308A JP 10216510 A JP10216510 A JP 10216510A JP 21651098 A JP21651098 A JP 21651098A JP 2000034308 A JP2000034308 A JP 2000034308A
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aqueous emulsion
radical polymerizable
monomer
aqueous
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JP10216510A
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Mitsutaka Hasegawa
三高 長谷川
Takuya Omura
卓也 大村
Takenao Yamamura
武尚 山村
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Toagosei Co Ltd
Original Assignee
Toagosei Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】得られる塗膜が耐汚染性に優れる水系のエマル
ションを製造可能な方法の提供。 【解決手段】界面活性剤の存在下に、ラジカル重合性単
量体、油溶性重合開始剤及び一般式Si(R)4 (Rは
加水分解性基を表す)で表される加水分解性基を有する
シラン化合物を水性媒体中に乳化分散させて得られる水
性乳化分散体を、加熱された水性媒体中に添加して、ラ
ジカル重合性単量体を重合させる水性エマルションの製
造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、長期間に渡り耐汚
染性に優れる塗膜を形成することが可能な水性エマルシ
ョンの製造方法に関するものであり、エマルションを利
用する被覆材等の技術分野で賞用し得るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、アクリル系重合体をベースにした
アクリルエマルション系塗料は、屋外塗装用塗料として
も使用されている。しかしながら、当該塗料は、有機溶
剤系塗料と比較して、塗膜硬度が低いこと等を原因とし
て、自動車排ガス、砂塵及び鉄粉等に起因する汚染物質
が塗膜表面に堆積したり、雨筋状の汚れが付着したりす
ることで美観が損なわれるという問題、即ち耐汚染性の
問題が顕在化しており、耐汚染性に優れる材料が要求さ
れている。
【0003】有機溶剤系塗料における耐汚染性を改善す
る方法としては、アルキルシリケート又はその部分加水
分解物等を塗料中に配合することで、得られる塗膜表面
に親水性と水中撥油性を付与し、塗膜が雨水で濡れて次
いで汚染物質が雨水とともに流れ落ちる、いわゆるロー
リングアップ機構によって汚れを除去する方法が提案さ
れている(特開平6−248237号)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、エマル
ション系塗料において、上記有機溶剤系塗料と同様の耐
汚染性改善策を行った場合、アルキルシリケート類の様
な加水分解性の物質は水中で安定に保持することが困難
なため、当該方法で塗膜の汚染性を改良することは不充
分なものであった。
【0005】他方、本発明者らは、アルコキシシリル基
を有する重合体からなる水性エマルションであって、保
存安定性に優れ、かつ耐水性及び耐溶剤性等の優れた物
性の塗膜を形成し得る硬化性エマルションとして、ポリ
オキシアルキレン単位及びラジカル重合性二重結合を有
するイオン性界面活性剤を使用して、ラジカル重合性ア
ルコキシシランと他のビニル単量体を共重合した水性エ
マルションを見出している(特開平8−217807
号)。しかしながら、当該エマルションは、保存安定性
に優れ、かつ優れた物性の被膜を形成することが可能で
あるものの、耐汚染性の点では不充分なものであった。
【0006】本発明者らは、得られる塗膜が耐汚染性に
優れる水系のエマルションを製造可能な方法について、
鋭意検討を行ったのである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、種々の検
討の結果、ラジカル重合性単量体、油溶性重合開始剤及
び加水分解性基を有するシラン化合物からなる混合物を
水性乳化分散体とし、これを水性媒体中で重合する方法
が、得られるエマルションが保存安定性に優れ、その塗
膜が耐汚染性に優れることを見い出し本発明を完成し
た。以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】◎ラジカル重合性単量体 本発明の製造方法では、種々のラジカル重合性単量体が
使用可能であり、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基
等のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げら
れ、具体的には、アルコキシシリル基を有するラジカル
重合性単量体;(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニ
ル及びプロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル;スチ
レン及びα−メチルスチレン等のエチレン性不飽和基含
有芳香族化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸及び
マレイン酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和基
化合物等が挙げられ、これらの中でも(メタ)アクリル
酸エステルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルと
しては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル
酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)ア
クリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチ
ルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル及び(メタ)
アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキ
ル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル及び(メ
タ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)ア
クリル酸ヒドロキシルアルキル、(メタ)アクリル酸パ
ーフルオロアルキル、グリシジル(メタ)アクリレー
ト、並びに(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノ
エチル等が挙げられる。
【0009】本発明の製造方法において、好ましいラジ
カル重合性単量体としては、アルコキシシリル基を有す
るラジカル重合性単量体0.5〜50重量%及びそれと
共重合可能なラジカル重合性単量体99.5〜50重量
%からなる単量体混合物である。当該単量体混合物から
得られる共重合体(以下アクリルシリコン共重合体とい
う)は、当該共重合体のアルコキシシリル基又はシラノ
ール基とシラン化合物とが結合を形成するため、得られ
る塗膜の架橋性が向上するため、耐水性及び耐溶剤性等
の各種塗膜物性がより優れたものとなる。以下、これら
の成分について説明する。
【0010】○アルコキシシリル基を有するラジカル重
合性単量体 本発明で好ましく使用されるアルコキシシリル基を有す
るラジカル重合性単量体〔以下単量体(a) という〕は、
下記式(1)で示される化合物である。
【0011】
【化1】
【0012】(式中、R1 は炭素数1〜10のアルキル
基、アリール基及びアラルキル基から選ばれる一価の炭
化水素基、R2 はラジカル重合性基、Xはアルコキシ基
又はハロゲン原子、aは0〜2までの整数である。Si
に結合するX及びR1 がそれぞれ二個以上の場合、それ
らは同一の基であっても異なる基であっても良い。) R2 のラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和基
が好ましく、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ビ
ニルエステル基及びビニルエーテル基等のラジカル重合
性の高い官能基がより好ましい。Xにおいて、アルコキ
シ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ
基、ブトキシ基、ペンタノキシ基及びヘキサノキシ基等
が挙げられ、ハロゲン原子としてはF、Cl、Br及び
Iが挙げられる。反応性と安定性のバランスから、Xと
しては炭素数4以下のアルコキシ基が好ましい。
【0013】単量体(a) の具体例としては、ビニルトリ
メトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタ
クリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルト
リエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ
−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メ
タクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニル
トリプロポキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラ
ン、γ−メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン
及びγ−メタクリロキシプロピルメチルジプロポキシシ
ラン等が挙げられる。当該単量体は、二種以上を併用し
てもよい。
【0014】○単量体(a) と共重合可能なラジカル重合
性単量体 上記単量体(a) と共重合可能なラジカル重合性単量体
〔以下単量体(b) という〕としては、(メタ)アクリル
酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレ
ン及びα−メチルスチレン等が挙げられる。(メタ)ア
クリル酸エステルの具体例としては、上記で挙げたもの
と同様のものが使用できる。単量体(a) と単量体(b) の
混合物を使用する場合において、得られるアクリルシリ
コン共重合体として、シラノール基を有するものを製造
する場合は、上記の他、(メタ)アクリル酸、イタコン
酸及びマレイン酸等のカルボキシル基を有する単量体も
使用することができる。一方、アクリルシリコン共重合
体として、アルコキシシリル基を有し、ほとんどシラノ
ール基を有しない共重合体を製造する場合は、アルコキ
シリル基の加水分解を促進させる当該カルボキシル基を
有する単量体を使用しないことが望ましい。これらの単
量体は単独で使用することもできるが、通常は塗膜物性
のバランスがとれるよう複数成分選定することが好まし
い。
【0015】単量体(b) としては、共重合性に優れ、得
られる共重合体の塗膜物性等に優れることから、炭素数
1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキ
ル、スチレン、炭素数2〜3のヒドロキシアルキル基を
有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル及びグリ
シジル(メタ)アクリレートが好ましい。又、アクリル
シリコン共重合体としてシラノール基を有するものを製
造する場合は、(メタ)アクリル酸も好ましい。耐候性
や強度、耐熱性等の塗膜物性を高レベルに保持するた
め、単量体成分の合計量100重量部に対し、(メタ)
アクリル酸エステルを少なくとも50重量部使用するこ
とが好ましい。
【0016】単量体(a) と単量体(b) の好ましい使用割
合は、単量体(a) 0.5〜50重量%及び単量体(b) 9
9.5〜50重量%であり、さらに好ましくは、単量体
(a)3〜20重量%及び単量体(b) 97〜80重量%で
ある。単量体(a) の割合が0.5に満たない場合は、単
量体(a) を構成成分とする効果が発揮されず、他方50
重量%を越えるとエマルションの安定性が低下しやす
い。
【0017】◎油溶性重合開始剤 本発明における油溶性重合開始剤は、油溶性のものであ
れば種々のものが使用可能であり、20℃の水に対する
溶解度が10重量%以下のものが好ましく、反応温度に
おいて単量体混合物中に溶解するものが好ましい。例え
ば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’
−アゾビス−2,4ジメチルバレロニトリル、1−アゾ
ビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル及びジメチル
−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始
剤、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシ
ド、ジクミルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキ
シドジ−n−プロピルパーオキシジカルボネート及びt
−ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物が好適
に用いられる。これら重合開始剤の量は、使用するラジ
カル重合性単量体の合計量に対して、0.1〜10重量
%が好ましく、より好ましくは0.2〜3重量%の範囲
に設定される。
【0018】◎加水分解性基を有するシラン化合物 本発明における加水分解性基を有するシラン化合物(以
下単にシラン化合物という)は、一般式Si(R)4
表される化合物であり、当該化合物の二量体、三量体又
はそのオリゴマーも使用可能である。ここで、Rは加水
分解性基であり、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロ
ゲン原子、アセトキシ基、カルボキシル基及びイソシア
ネート基等が挙げられる。
【0019】本発明においては、貯蔵安定性、取扱いの
容易さから、Rがアルコキシ基のものが好ましい。アル
コキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキ
シ基及びテトラブトキシ基等が挙げられ、具体的には、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ
プロポキシシラン及びテトラブトキシシラン等、並びに
これらテトラアルコキシシランの二量体、三量体及びオ
リゴマー等が挙げられる。本発明においては、これらシ
ラン化合物の中でも、テトラアルコキシシランがより好
ましい。シラン化合物は、2種以上を併用することもで
きる。
【0020】本発明において、シラン化合物の割合は、
シラン化合物/ラジカル重合性単量体=1/99〜50
/50(重量比)が好ましく、より好ましくは3/20
〜97/80である。シラン化合物の割合が1未満で
は、耐汚染性が改善されない場合があり、他方50を越
えると得られるエマルションの安定性が低下することが
ある。
【0021】◎界面活性剤 界面活性剤としては、通常の乳化重合において汎用され
る、アニオン系、ノニオン系及びカチオン系等の各種界
面活性剤を用いることができるが、得られる組成物の塗
膜が、耐水性及び耐候性に優れるため、ラジカル重合性
基を有する界面活性剤を用いることが好ましい。
【0022】当該ラジカル重合性界面活性剤としては、
下記一般式(2)で表されるポリオキシアルキレン基と
イオン解離性基を含有するものが好ましい。
【0023】
【化2】Z−(AO)n −Y ・・・・(2)
【0024】(式中、Zはラジカル重合性二重結合を有
する有機基、AOはオキシアルキレン基、nは2以上の
整数、Yはイオン解離性基を示す。) 前記一般式(2)における好ましいZは、芳香族炭化水
素基、アルキル置換芳香族炭化水素基、高級アルキル基
又は脂環式炭化水素基等の疎水性基とラジカル重合性二
重結合とが組み合わされた有機基である。Zにおけるラ
ジカル重合性二重結合としては、(メタ)アリル基、プ
ロペニル基又はブテニル基等が好ましい。
【0025】界面活性剤の好ましいイオン性はアニオン
であり、従ってYとしては、基(AO)n とアニオン性
の基で結合可能であり、当該アニオン性の基にカチオン
がイオン結合した塩が好ましい。好ましいYの具体例と
しては、−SO3 Na、−SO3 NH4 、−COON
a、−COONH4 、−PO3 Na2 及び−PO3 (N
4 2 等が挙げられ、さらに好ましくは−SO3 Na
又は−SO3 NH4 である。基(AO)n におけるnは
2以上の整数である。nが1の場合は、単量体(a)中の
アルコキシシリル基が不安定になり分解し易くなってし
まう。好ましいnとしては、300以下であり、さらに
好ましくは5〜50である。nが5未満であると、前記
単量体(a) 中のアルコキシシリル基の安定性が不足し易
くなる場合があり、一方nが300を越えると得られる
硬化性エマルションから形成される塗膜の物性が低下す
る傾向を示すことがある。又、基(AO)n における単
位A、すなわちアルキレン基としては、エチレン基又は
プロピレン基が好ましい。
【0026】上記界面活性剤の具体例としては、例えば
下記式(3)〜(5)で表される化合物等が挙げられ
る。式(3)及び(4)において、R3 及びR4 として
は、炭素数6〜18の直鎖状又は分岐状アルキル基が好
ましい。(5)において、R5は水素原子又はメチル基
であり、R6 としては、炭素数8〜24のアルキル基が
好ましい。又、式(3)〜(5)において、A1 、A2
及びA3 は、アルキレン基を示し、又いずれの化合物に
おいてもnは2以上の整数である。又、式(3)〜
(5)において、Y1 、Y2 及びY3 はイオン解離性基
を示し、その具体例としては、Yと同様のものを挙げる
ことができる。
【0027】
【化3】
【0028】
【化4】
【0029】
【化5】
【0030】界面活性剤の好ましい使用量は、前記ラジ
カル重合性単量体100重量部当たり、0.5〜20重
量部であり、さらに好ましくは1〜5重量部である。
【0031】◎水性エマルションの製造方法 本発明の水性エマルションの製造方法は、界面活性剤の
存在下に、ラジカル重合性単量体、油溶性重合開始剤及
びシラン化合物を水性媒体中に乳化分散させて得られる
水性乳化分散体を、加熱された水性媒体中に添加して、
ラジカル重合性単量体を重合させるものである。
【0032】使用する水性乳化分散体は、種々の方法で
製造され、界面活性剤の存在下に、ラジカル重合性単量
体、油溶性重合開始剤及びシラン化合物を、別々に又は
混合物として、水性媒体に添加して得ることができる
が、ラジカル重合性単量体、油溶性重合開始剤及びシラ
ン化合物を混合物(以下単量体等混合物という)とし、
これを界面活性剤の存在下に水性媒体中に乳化分散させ
て得られる水性乳化分散体が、得られるエマルションが
塗膜の耐汚染性により優れるため好ましい。単量体等混
合物は、油溶性重合開始剤をラジカル重合性単量体に溶
解させ、当該溶液中にシラン化合物を撹拌下添加混合し
て得ることができる。各成分を水性媒体中に乳化分散さ
せる方法としては、通常の回転式ホモミキサー等によ
り、各成分と水性媒体とを撹拌混合する方法、又は水性
媒体中に各成分を添加する方法等で十分に乳化分散させ
ることができる。界面活性剤は各成分又は単量体等混合
物に混合しておいても、水性媒体中に添加しておいても
良い。ラジカル重合性単量体、油溶性重合開始剤、シラ
ン化合物及び界面活性剤からなる乳化分散体は微粒子で
ある必要があり、好ましい粒径としては0.02〜2μ
mであり、より好ましくは0.1〜1.0μmである。
この様な粒子径の水性乳化分散体とすることにより、重
合後に得られる水性エマルションの粒子径を小さくする
ことができ、得られる各重合体の組成が均一となり、塗
膜が耐溶剤性及び耐水性に優れるものとなる。この様な
粒子径にするためには、回転式ホモミキサーによる処理
後に、高圧式乳化分散機(ホモジナイザー)、タービン
型ミキサー等高度の剪断エネルギーを有する分散装置を
用いて粒子径を微細化することが望ましい。
【0033】ラジカル重合性単量体及びシラン化合物の
合計量と水性媒体との好ましい比率は、ラジカル重合性
単量体及びシラン化合物の合計量100重量部当たり、
水性媒体20〜150重量部である。
【0034】本発明では、単量体(a) 及びシラン化合物
におけるアルコキシシリル基の安定化のため、pH緩衝
剤を配合することが好ましい。pH緩衝剤の配合は、単
量体等の水性媒体中への分散操作において、事前に水性
媒体に溶解させておくことも、単量体等と一緒に水性媒
体中に添加しても良い。pH緩衝剤としては、水性媒体
のpHを6〜10に保持するのに適した緩衝剤が好まし
く、有機酸、無機酸、塩基及びそれらの塩類が挙げら
れ、具体的な化合物としては、炭酸水素ナトリウム、炭
酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、ほう酸ナトリウム、
リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、
酢酸アンモニウム、モノ−、ジ−又はトリエタノールア
ミン、アニリン及びケイ酸ナトリウム等が挙げられる。
中でも、安全性、低価格等の面から、炭酸水素ナトリウ
ムが最も好ましい。緩衝剤は単独又は2種以上を併用す
ることができる。使用量は一般的には水性乳化分散体中
の濃度が0.01〜5重量%であるのが好ましい。
【0035】本発明においては、上記水性媒体が少量仕
込まれ、かつ、重合開始剤の分解温度以上に加熱された
攪拌下の反応器内に、上述の方法によって得られたラジ
カル重合性単量体を主成分とする水性乳化分散体を滴下
等の方法により添加する。反応器へ仕込んでおく水性媒
体の好ましい量は、反応器に滴下する水性乳化分散体1
00重量部当たり、10〜50重量部程度である。水性
乳化分散体は滴下ロートから反応器内に徐々に滴下する
ことが好ましく、又重合温度は、通常40〜100℃が
好ましい。本発明においては、単量体溶液の乳化分散粒
子中に油溶性重合開始剤が含まれているため、各分散微
細粒子内で重合が起こる。このような疎水性粒子内で単
量体を重合させる重合法は、一般にはミクロ懸濁重合と
称されており、該重合法によれば、水溶性開始剤により
乳化剤を形成するミセル内で単量体を重合させる乳化重
合法と比較して、シラン化合物を各粒子内に閉じこめる
ことができる。よって該エマルションより得られる塗膜
はシラン化合物が均一に分布した塗膜となり、特にアク
リルシリコン共重合体の場合、共重合体中のアルコキシ
シリル基とシラン化合物との架橋反応が期待できる上に
過剰なシラン化合物が塗膜表面に局在し、親水性の高い
塗膜表面が形成される。
【0036】◎使用方法 本発明で得られる水性エマルションは、種々の基材に塗
工し、常温又は加熱下に水分を揮発させれば塗膜が得ら
れる。当該塗膜は、特にラジカル重合性単量体として、
単量体(a) を使用する場合のアクリルシリコン共重合体
に由来するアルコキシシリル基又はシラノール基と、シ
ラン化合物に由来するアルコキシシリル基又はシラノー
ル基の反応により架橋する。架橋反応は室温でも進む
が、更に架橋を促進したい場合は、硬化触媒を配合する
こともできる。硬化触媒として、例えばイソプロピルト
リイソステアロイルチタネート及びイソプロピルトリ
(ジオクチルピロホスフェート)チタネート等の有機チ
タネート化合物、ジオクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレ
ート及びジブチル錫マレート等の有機錫化合物、並びに
パラトルエンスルフォン酸等の有機酸触媒が挙げられ
る。
【0037】○その他の成分 本発明で得られる水性エマルションには、塗料、コーテ
ィング剤、繊維・不織布用バインダー、粘・接着剤及び
防錆剤等の用途に常用される各種の添加剤、例えばクレ
ー、タルク、炭酸カルシウム及びチタンホワイト等の充
填剤、顔料、染料、成膜助剤、可塑剤、湿潤・分散・消
泡等に用いられる各種界面活性剤、帯電防止剤、増粘
剤、チクソトロピー性付与剤、凍結防止剤、各種架橋
剤、防曇剤、滑剤、金属粉末、酸化防止剤、紫外線防止
剤、抗菌剤、抗かび剤、粘着付与剤、並びに防錆剤等を
必要に応じて適量添加することができる。本発明では、
水系の塗料に使用される成膜助剤を配合することが好ま
しい。成膜助剤としては、ブチルセルソルブ等のセルソ
ルブ、カルビトール及びトリプロピレングリコール−n
−ブチルエーテル等のグリコールエーテル等が挙げられ
る。
【0038】◎用途 本発明の水性エマルションは、被覆剤として好適であ
る。適用可能な基材としては、例えばガラス、スレー
ト、金属、木材、プラスチック及びコンクリート等が挙
げられる。被覆剤の用途を更に具体的に示すと、土木・
建築を目的とした、塗料、耐酸性雨用塗料、防汚性塗料
及び溌水剤、電気電子部品の防湿コーティング剤、磁気
テープのバックコート剤等が挙げられ、これら以外の用
途としては、シーリング剤、繊維処理剤、繊維・不織布
用バインダー、インキ用バインダー及び粘着剤等が挙げ
られるが、耐汚染性の改善が著しいことから、屋外塗料
用途が最も好ましい。
【0039】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明する。尚、各例における「部」は、全て
重量部を意味する。又、実施例で使用された界面活性剤
の「アクアロンHS20」〔第一工業製薬(株)製〕は
下記式(6)で表されるラジカル重合性乳化剤である。
【0040】
【化6】
【0041】○実施例1 (1) 水性乳化分散体の調製工程 表1に示すラジカル重合性単量体、シラン化合物、油溶
性重合開始剤、pH緩衝剤、ラジカル重合性界面活性剤
及び水を、表1に示す配合量で混合し、ホモミキサーで
乳化分散処理を施して、水性乳化分散体を調製した。
尚、単量体混合物の粒径は、およそ0.2μmであっ
た。
【0042】
【表1】
【0043】(2) 重合工程 撹拌機、温度計及び冷却器を備えたフラスコに水性媒体
として脱イオン水70部を仕込み、液温を85℃に昇温
したのち、攪拌下で上記の水性乳化分散体を3時間かけ
て滴下した。滴下終了後内液を90℃に昇温し、更に1
時間保持して重合を完了した。重合中に液分離及びブロ
ッキングは起こらず、重合は安定に行われた。得られた
水性エマルションにおいて、共重合体の平均粒径は0.
23μmであった。得られた水性エマルションの固形分
100部に対して、トリプロピレングリコール−n−ブ
チルエーテル(以下TPNBと略す)を10部配合し、
水性組成物を製造した。当該水性組成物を、以下に示す
方法に従い評価した。それらの結果を表2に示す。
【0044】○評価 エタノール発生割合 水性組成物を製造直後又は密封容器に入れて1ケ月間6
0℃の温度に保持したサンプルについて、アルコキシシ
リル基が分解して生成したアルコール量をガスクロマト
グラフィーにより分析した。仕込み単量体(a) 及びシラ
ン化合物のアルコキシシリルが全て加水分解したと仮定
した場合のアルコール量に対する前記アルコールの割合
を計算し、エタノール発生割合(重量%)とした。。
尚、エタノール発生割合が多いサンプルでは架橋反応が
進行し、耐汚染性の発現が期待できないと推定される。
【0045】耐汚染性 0.6mm厚のアルミ板に白色のフッ素系塗料〔フロン
コート900、川上塗料(株)製〕を塗装後、得られた
水性組成物をバーコーターを使用して塗装し(乾燥膜厚
は約30μm )、常温で1週間乾燥した。得られた塗膜
を名古屋市南部工業地帯において、6ケ月間、45゜の
角度で暴露試験を行い、試験前後のL値の変化であるΔ
Lを測定した。ΔL値の絶対値が小さい程、耐汚染性が
良好であることを示す。
【0046】耐溶剤性 0.6mm厚のアルミ板に、得られた水性組成物をバー
コーターを使用して塗装し(乾燥膜厚は約30μm )、
常温で1週間乾燥した。得られた塗膜を、荷重500g
でキシレンラビング試験(50回)を行い、塗膜の変化
を観察した。尚、表2における○、△及び×は、以下の
意味を示す。 ○:変化なし、△:わずかに跡が残った、×:塗膜が剥
がれてしまった
【0047】○実施例2 実施例1におけるテトラエトキシシランを20部使用し
た以外は、すべて実施例1と同一条件により水性エマル
ションを製造した。得られた水性エマルションを使用
し、実施例1と同様にしてTPNBを配合して組成物を
製造し、実施例1と同様に評価した。それらの結果を表
2に示す。
【0048】○比較例1 テトラエトキシシランを使用せずに、その他成分及び操
作は、すべて実施例1と同一条件により水性エマルショ
ンを製造した。得られた水性エマルションを使用し、実
施例1と同様にしてTPNBを配合して組成物を製造
し、実施例1と同様に評価した。それらの結果を表2に
示す。
【0049】○比較例2 比較例1で得られた水性エマルションにテトラエトキシ
シラン10部を添加した後、ホモミキサーにより十分に
攪拌して、水性エマルションを得た。得られた水性エマ
ルションを使用し、実施例1と同様にしてTPNBを配
合して組成物を製造し、実施例1と同様に評価した。そ
れらの結果を表2に示す。
【0050】○比較例3 実施例1において油溶性重合開始剤を使用せずに水性乳
化分散液を製造した。即ち、重合開始剤であるロンガリ
ッド0.6部及びt−ブチルハイドロパーオキサイド
0.4部、並びに炭酸水素ナトリウムを添加した水性媒
体に、水性乳化分散液を滴下し、その他の条件は実施例
1と同様にして乳化重合を行った。得られた水性エマル
ションを使用し、実施例1と同様にしてTPNBを配合
して組成物を製造し、実施例1と同様に評価した。それ
らの結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】○実施例3 実施例1において、単量体の種類及び割合を以下に変更
する以外は実施例1と同様にして水性エマルションを製
造した。 ・γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン 10部 ・メチルメタクリレート 40部 ・n−ブチルメタクリレート 20部 ・n−ブチルアクリレート 20部 ・2−ヒドロキシエチルメタクリレート 10部 得られた水性エマルションを使用し、実施例1と同様に
してTPNBを配合して組成物を製造し、実施例1と同
様に評価した。それらの結果を表3に示す。
【0053】○実施例4 実施例3におけるテトラエトキシシランを20部使用し
た以外は、すべて実施例3と同一条件により水性エマル
ションを製造した。得られた水性エマルションを使用
し、実施例1と同様にしてTPNBを配合して組成物を
製造し、実施例1と同様に評価した。それらの結果を表
3に示す。
【0054】○比較例4 テトラエトキシシランを使用せずに、その他成分及び操
作は、すべて実施例3と同一条件により水性エマルショ
ンを製造した。得られた水性エマルションを使用し、実
施例1と同様にしてTPNBを配合して組成物を製造
し、実施例1と同様に評価した。それらの結果を表3に
示す。
【0055】○比較例5 比較例4で得られた水性エマルションにテトラエトキシ
シラン10部を添加した後、ホモミキサーにより十分に
攪拌して、水性エマルションを得た。得られた水性エマ
ルションを使用し、実施例1と同様にしてTPNBを配
合して組成物を製造し、実施例1と同様に評価した。そ
れらの結果を表3に示す。
【0056】○比較例6 実施例3において油溶性重合開始剤を使用せずに水性乳
化分散液を製造した。即ち、重合開始剤であるロンガリ
ッド0.6部及びt−ブチルハイドロパーオキサイド
0.4部、並びに炭酸水素ナトリウムを添加した水性媒
体に、水性乳化分散液を滴下し、その他の条件は実施例
3と同様にして乳化重合を行った。得られた水性エマル
ションを使用し、実施例1と同様にしてTPNBを配合
して組成物を製造し、実施例1と同様に評価した。それ
らの結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
【発明の効果】本発明により得られる水性エマルション
は、貯蔵安定性に優れ、得られる塗膜は耐汚染性に優れ
るものであり、屋外用での使用を始めとして、塗料、シ
ーリング剤及びコーティング剤等の各種用途に極めて有
用である。
フロントページの続き Fターム(参考) 4J011 AA05 KA06 KB02 KB05 KB29 PA47 PB40 PC06 4J100 AB02P AB03P AB07R AE18R AE26R AG02P AG04P AJ02P AJ08P AJ09P AL03P AL04P AL05P AL08P AL08Q AL09P AL10P AP16Q BA02R BA04R BA08R BA09R BA17R BA31P BA56R BA64R BA77Q BB18P BC04P BC43R CA04 EA07 FA03 FA20 JA01

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】界面活性剤の存在下に、ラジカル重合性単
    量体、油溶性重合開始剤及び一般式Si(R)4 (Rは
    加水分解性基を表す)で表される加水分解性基を有する
    シラン化合物を水性媒体中に乳化分散させて得られる水
    性乳化分散体を、加熱された水性媒体中に添加して、ラ
    ジカル重合性単量体を重合させることを特徴とする水性
    エマルションの製造方法。
  2. 【請求項2】ラジカル重合性単量体が、アルコキシシリ
    ル基を有するラジカル重合性単量体0.5〜50重量%
    及びこれと共重合可能なラジカル重合性単量体99.5
    〜50重量%からなることを特徴とする請求項1記載の
    水性エマルションの製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001172467A (ja) * 1999-12-17 2001-06-26 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The 樹脂組成物及びその用途
JP2002138119A (ja) * 2000-10-31 2002-05-14 Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd シリコン化合物が包含された樹脂エマルションおよびそれを含有してなる水性塗料用樹脂組成物
JP2007500257A (ja) * 2003-07-28 2007-01-11 デグサ アクチエンゲゼルシャフト ケイ素化合物を有するポリマー分散液
US10829505B2 (en) 2016-04-20 2020-11-10 Dow Silicones Corporation Lithium alkylsiliconate composition, coating, and method of making same

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