JP4370760B2 - 速乾型水性被覆剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、速乾性を有し、且つ貯蔵安定性も良好な水性被覆剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境保護、労働衛生上の観点より各種被覆剤において溶剤系から水系への移行が進められている。しかしながら水性被覆剤の場合、溶剤として水を使用していることから乾燥性が極端に遅く、水性化が進まない一つの原因となっている。また、建築塗料、即ち建築物の保護及び意匠性付与等の目的の為に塗装される被覆剤においては以前から水性被覆剤が用いられているが、やはり乾燥が極端に遅いため、工期短縮が出来ない、塗装後、雨が降った時塗膜が流出してしまう等の問題がある。かかる理由により、速乾型水性被覆剤が強く望まれており、種々検討が進められている。
【0003】
従来の速乾型水性被覆剤では、陰イオン的に安定化された乳化重合体、水溶性又は水分散性多官能性アミン重合体、及びアンモニア、モルフォリン等の揮発性塩基を組み合わせることにより、速乾化している。(例えば特許文献1参照。)
しかしながら、上記従来の速乾型水性被覆剤では貯蔵安定性が十分ではなく、市場においては、速乾性と貯蔵安定性が共に優れた速乾型水性被覆剤が強く望まれている。
【0004】
【特許文献1】
特開平3−157463号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、速乾性と貯蔵安定性がともに優れた速乾型水性被覆剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが鋭意検討を行った結果、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a−1)を必須成分とするエチレン性不飽和単量体(a)を乳化重合することにより得られたカルボキシル基含有乳化共重合体(A)、下記の特定の分子量300以下のアミノ基含有有機化合物(B)、アンモニア(C)、及び顔料(D)を含んでなる水性被覆剤が、速乾性を有し、且つ貯蔵安定性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a−1)をエチレン性不飽和単量体(a)100重量部当たり0.5重量部以上4重量部以下で用いて、乳化重合させて得られたものであるカルボキシル基含有乳化共重合体(A)、アミノ基を含有し、且つ分子量300以下の有機化合物(B)、アンモニア(C)、及び顔料(D)を含有する速乾型水性被覆剤であって、前記有機化合物(B)がエチレンジアミン、シクロヘキシルジアミン、ジブチルアミン及びトリプロピルアミンからなる群から選ばれる1種以上の化合物であり、前記速乾型水性被覆剤のpHが10〜11であり、且つ、前記有機化合物(B)の使用量が、カルボキシル基含有乳化共重合体(A)100重量部当たり0.05〜3重量部であることを特徴とする速乾型水性被覆剤を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について述べる。
本発明で用いるカルボキシル基含有乳化共重合体(A)は、公知の各種手法を採用することができるが、とくにカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a−1)を必須成分としたエチレン性不飽和単量体(a)を乳化剤の存在下、水性媒体中でラジカル開始剤を用いて乳化共重合させて得る方法が好適である。
【0009】
ここで用いることができるエチレン性不飽和単量体に特に制約は無く、一般的に重合反応に用いられているものは如何なるものも用いることができる。
【0010】
具体例を挙げるとすると、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル類;
【0011】
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸の各エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、第3級カルボン酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンの如き芳香族ビニル化合物;ビニルピロリドンの如き複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等の如きハロゲン化ビニリデン化合物;エチレン、プロピレン等の如きα−オレフィン類;ブタジエンの如きジエン類等;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド等のα,β−エチレン性不飽和酸のアミド類;
【0012】
グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー;2−ヒドロキシルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシルエチルアクリレート等の水酸基含有モノマー;ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有モノマー;N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和カルボン酸の置換アミド;
【0013】
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の不飽和結合含有シラン化合物;ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の1分子中に複数個不飽和基を持ったエチレン性不飽和単量体等を挙げることが出来る。
【0014】
上記の具体例に制限されるものではなく、ラジカル重合に使用可能なエチレン性不飽和単量体は如何なるものも用いることができる。また、エチレン性不飽和単量体は複数種を併用して用いることができる。
【0015】
この中でもアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを必須成分として用いることが好ましい。
【0016】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(a−1)としては、特に制約はなく、ラジカル重合反応に用いることができるものであれば如何なるものでも用いることが出来る。具体例をあげるとすると、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、2−メタクリロイルプロピオン酸等が挙げられる。これらは複数種を併用して用いることも可能である。また、この中でもアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸の中の一つまたは複数種を用いることが好ましい。
【0017】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(a−1)の使用量はエチレン性不飽和単量体(a)100重量部当たり0.5重量部以上4重量部以下である。すなわち、0.5重量部以上もちいることにより、より貯蔵安定性に優れた被覆剤とすることが可能となり、また4重量部以下とすることにより、より速乾性に優れた被覆剤とすることが可能である。
【0018】
エチレン性不飽和単量体を乳化重合させるには、一般的には乳化剤を用いられることが多いが、ここで使用する乳化剤に特に制約は無く、乳化重合に使用できるものであれば如何なるものでも用いることが出来る。
【0019】
一例を挙げるとすると、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキレンジスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩類、ジアルキルサクシネートスルホン酸塩類、モノアルキルサクシネートスルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩類、等のスルホン酸または硫酸エステル骨格を含有するアニオン乳化剤;
【0020】
脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム等の脂肪酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリカルボン酸系界面活性剤、アルキル化コハク酸またはその塩等のカルボキシル基またはその塩を骨格中に有するアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、アルキルリン酸塩等のリン酸基またはその塩を骨格中に有するアニオン系乳化剤;
【0021】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシエチレンアルケート、ソルビタンアルケート、ポリオキシエチレンソルビタンアルケート、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン乳化剤等を挙げることができる。
【0022】
これらの他にも乳化重合で使用出来うるものであれば如何なるものでも用いることができ、複数種を併用することも可能である。
【0023】
また、ビニルスルホン酸塩類、(メタ)アクリロイロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩類、(メタ)アクリロイロキシポリオキシエチレンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ナトリウムアリルアルキルスルホサクシネート、(メタ)アクリロイロキシポリオキシプロピレンスルホン酸塩類等のアニオン系反応性乳化剤、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメタクリロイルエーテル等のノニオン系反応性乳化剤などの反応性乳化剤も用いることができ、これらの乳化剤を複数種用いることも可能である。
【0024】
乳化剤の種類については上記構造に制約されるものではなく、適宜選択して用いることができ、一般的に市販されているものを用いることができる。また、複数種併用することも可能である。
また、環境保護、労働衛生上の観点よりアルキルフェノール骨格を持たない乳化剤を使用した方が好ましい。
【0025】
また、速乾性をより向上させる為には親水性成分としてカルボキシル基またはその塩を含有する乳化剤を必須成分として用いることが好ましく、更に好ましくはカルボキシル基含有乳化剤を他のアニオン乳化剤、ノニオン乳化剤と併用することが好ましい。
【0026】
また、最近乳化剤を用いずに乳化重合する方法、即ちソープフリー重合が頻繁に行われているが、この方法で重合された共重合体を使用することもできる。ソープフリー重合法の一例を挙げるとすると例えば特開平8−169919記載の方法を挙げることができる。勿論この方法に限定されるものではなく如何なる方法をも行うことが出来る。
【0027】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリル及びその塩酸塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系開始剤、過酸化水素、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤等が挙げられる。
【0028】
また、これらラジカル重合開始剤と併用可能な還元剤としてはナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ソーダ、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸及びその塩等が挙げられる。また、メルカプタン類、アルコール系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤、芳香族系有機溶剤等を分子量調整剤として併用することも可能である。
【0029】
本発明で使用するカルボキシル基含有乳化共重合体(A)は、公知の方法により製造することができ、基本的には、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(a−1)を必須成分とし、さらに必要に応じてエチレン性不飽和単量体を適宜選択して用い、乳化剤存在下、水性媒体中でラジカル重合開始剤を用いて乳化共重合させて得ることができる。一例を挙げるとするとエチレン性不飽和単量体100重量部あたり、ラジカル重合開始剤0.01〜10重量部用い、水性媒体50〜1000重量部使用して乳化剤の存在下で0〜100℃で重合することによりカルボキシル基含有乳化共重合体(A)の水分散体を得ることができる。
【0030】
また、上記開始剤と上記還元剤0.01〜10重量部を併用するレドックス重合にても行うことが出来る。この際、鉄イオンや銅イオン等の多価金属塩イオンを生成する化合物を促進剤として併用することも可能である。
【0031】
また、ラジカル重合開始剤は過硫酸塩類をエチレン性不飽和単量体100重量部当たり0.3重量部以下を用いて重合することが好ましく、更に好ましくは0.2重量部以下を用いて重合することが好ましい。即ち0.3重量部以上過硫酸塩類を用いるとポリマー中に開始剤に起因する親水性基が導入されることとなり、速乾性の観点から好ましくない場合がある。ここで言うラジカル重合開始剤は実質的にエチレン性不飽和単量体を乳化重合するのに用いる量であり、例えば主反応終了後、少量残存しているモノマーを除去するために使用するラジカル重合開始剤は含まれない。
【0032】
本発明で使用するアミノ基を含有し、且つ分子量300以下の有機化合物(B)としては、エチレンジアミン、シクロヘキシルジアミン、ジブチルアミン及びトリプロピルアミンからなる群から選ばれる1種以上の化合物であることが必須である。このような有機化合物を使用すると貯蔵安定性が向上し、本発明が目的とする速乾型水性被覆剤を得ることができる。
【0033】
特に親水性基としてアミノ基のみを含む、即ちアルコール性水酸基等の親水性基を含まないものが好ましく、更には分子量が300以下のものがより好ましく、150以下であるものがさらにより好ましい。前記有機化合物(B)の使用量は、カルボキシル基含有乳化共重合体100重量部当たり0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜3重量部である。即ち10重量部以下とすることにより貯蔵安定性をより良好なものとすることができ、また0.05重量部以上とすることにより速乾性をより良好なものとすることができる。また、分子量を300以下とすることにより、貯蔵安定性と乾燥性のバランスがより優れたものとすることができる。
【0034】
具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、トルイジンなどの1級アミン;トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジブチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、等の2級または3級アミン;エチレンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン類等を挙げることができる。勿論これらに制限されるものではなく、上述した条件を満たしているものであれば如何なるものも用いることが出来る。
【0035】
本発明においてアンモニア(C)を含有させることが必須である。理由は定かでは無いが、アンモニアを含有させることにより貯蔵安定性を良好なものとすることができる。使用量は特に制限は無いが、最終的に水性被覆剤のpHが9.0〜11.0の範囲に入るようにアンモニア、具体的にはアンモニア水を用いて調製することが必要であり、好ましく、更にはカルボキシル基含有乳化重合体(A)を予めアンモニア水でpHが6.5以上になるよう添加し、更に被覆剤の作製時にアンモニア水を添加し、被覆剤のpHが9.0〜11.0の範囲に入るよう調製することがより好ましい。即ちpHが9.0以上とすることにより貯蔵安定性を良好なものとすることが可能であり、またpHを11.0以上とするとアンモニアの臭気が強くなり、労働衛生上好ましくない場合がある。
【0036】
本発明の速乾型水性被覆剤は、顔料(D)を含有するが、その使用量としては使用用途にあわせ、幅広い範囲で含有させることが可能であり、具体的には、カルボキシル基含有乳化共重合体(A)100重量部当たり顔料(D)は0.5重量部以上2000重量部以下の範囲で用いることが好ましい。
【0037】
ここで言う顔料とは酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、ケイ砂、ベンガラ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー等一般的に用いられている顔料類、充填剤、また着色顔料を意味するものである。
【0038】
また、本水性被覆剤は、必要に応じて、骨材、造膜助剤、凍結防止剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、及び/又はレオロジーコントロール剤、消泡剤、防腐剤、防バイ剤、pH調整剤、防錆剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤等を配合することも可能である。また、乾燥性をより向上させる為、アルコール類、例えばメタノール、エタノール等を添加することも可能であるが、VOC削減の観点から添加する場合は必要最小限にとどめる必要がある。
また、本発明は金属架橋を施すことも可能である。
【0039】
本発明の速乾型水性被覆剤は、例えば以下の方法で製造することができる。
即ち、カルボキシル基含有乳化共重合体(A)の水分散体、前記有機化合物(B)、アンモニア(C)を予め混合したバインダー成分に酸化チタン、炭酸カルシウムなどの顔料(D)、必要に応じて分散剤、湿潤剤、増粘剤、造膜助剤、防腐剤、消泡剤、凍結防止剤等を添加し、分散を行う、いわゆるドライブレンド方式で速乾型水性被覆剤を得ることができる。この時、分散は一般的に水性被覆剤が作製される公知の方法で行えば良い。
【0040】
また、予め炭酸カルシウム、酸化チタンなどの顔料(D)を分散剤等を用いて水中に微分散させてミルベースを作製し、このものにカルボキシル基含有乳化共重合体(A)の水分散体、アミノ基を含有し、且つ分子量300以下の有機化合物(B)、アンモニア(C)を予め混合したバインダー成分を加えてレットダウンし、必要に応じて増粘剤、防腐剤、造膜助剤等の添加剤を加えることにより作製する、いわゆるミルベース方式でも速乾型水性被覆剤を作製することができる。
もちろん上記の方法に限定されるものではなく、公知の如何なる手段でも製造することが出来る。
【0041】
本発明の速乾型水性被覆剤は、無機系基材、有機系基材、金属基材など各種基材に適用可能な被覆剤であり、また塗装方法も特に限定されるものでは無く、公知慣用の塗装方法を用いることが可能である。
【0042】
とくに、本発明の速乾型水性被覆剤は、複層弾性塗料の中塗り、トップコート、単層弾性塗料、屋根用防水塗料、床用塗料、その他各種内外装建築塗料用として、また、路面標示用塗料、各種繊維用途、建材用接着剤、各種粘着剤等幅広い用途に適用することができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに制限されるものではない。なお、以下の「部」及び「%」はいずれも重量に基づく値である。
【0044】
〔路面標示用水性被覆剤としての実施例〕
〔製造例1 ;カルボキシル基含有乳化共重合体の水分散体(以下、ポリマーエマルジョンという。)〕
ブチルアクリレート(以下BAと略す)160部、メチルメタクリレート(以下MMAと略す)236部、アクリル酸(以下AAと略す)4部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPMS)0.8部を、ニューコール707SF(日本乳化剤(株)製アニオン乳化剤;ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩;有効成分30%)20部をイオン交換水80部に溶解した乳化剤水溶液中に分散させ、モノマーエマルジョンを得た。また、過硫酸カリウム0.8重量部をイオン交換水20重量部中に溶解し、開始剤水溶液を得た。
【0045】
攪拌機、温度計、コンデンサーを取り付けた1リットル反応容器にイオン交換水272部を投入し、窒素ガスを挿入しつつ攪拌しながら80℃に昇温した。昇温後、反応容器中にモノマーエマルジョン、開始剤水溶液をそれぞれ滴下投入した。滴下時間はモノマーエマルジョンが3時間、開始剤水溶液が3時間30分とし、滴下反応中、反応容器内を80℃に保持しつつ攪拌を継続した。開始剤水溶液滴下終了後30分間攪拌しながら80℃に保持した後に過硫酸カリウム0.2部を反応容器内に投入し、更に2時間攪拌しながら反応容器内を80℃に保持した。その後冷却し、14%アンモニア水でpHを7.0に調整し、調整水を投入した後に取り出し、ポリマーエマルジョン1を得た。得られたポリマーエマルジョンは、不揮発分50.0%、粘度230mPa・sであった。
【0046】
〔製造例2〜7 ;ポリマーエマルジョン2〜7〕
表1に記載した原料を用いた他は、製造例1と同じ方法で重合を行いポリマーエマルジョン2〜7を得た。
【0047】
【表1】
【0048】
*1 :メタクリル酸
*2 :ラウリルメルカプタン
*3 :花王(株)製アニオン乳化剤:ラウリル硫酸ナトリウム
*4 :花王(株)製カルボキシル基含有乳化剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(有効成分24%)
【0049】
〔実施例1〜13 速乾型水性被覆剤の作製〕
下記の、表2−1に従って水性被覆剤(実施例1〜13)を作製した。尚、各実施例におけるバインダー成分としては、後述するバインダー成分1〜13をそれぞれ用いた。また、28%アンモニア水は水性被覆剤のpHが10.0になるよう添加した。
【0050】
【表2】
【0051】
*5:サンノプコ(株)製分散剤
*6:サンノプコ(株)製消泡剤
*7:石原産業(株)製酸化チタン
*8:三共製粉(株)製炭酸カルシウム
*9:UCC製増粘剤
*10:イーストマンケミカル社製造膜助剤
【0052】
【表3】
【0053】
〔バインダー成分1〜14〕
ポリマーエマルジョン、アミノ基を含有し、且つ前記有機化合物(B)、アンモニア(C)から構成されるバインダー成分を、表3−1、2に示した。
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
〔比較例1〕
上記表3−2のバインダー成分14を用いて、表2に従って水性被覆剤(比較例1)を作製した。尚、28%アンモニア水は水性被覆剤のpHが10.0になるよう添加した。
【0057】
〔比較例2〕
14%アンモニア水を用いてpH=7〜9に調製する以外は、製造例1と同様の方法にてポリマーエマルジョンを作成した後、アミノ基含有水性ポリマー*11を30重量部加えた。このものをバインダー成分として用いて、表2に従って水性被覆剤(比較例2)を作製した。尚、28%アンモニア水は水性被覆剤のpHが10.0になるよう添加した。
【0058】
*11:ジメチルアミノエチルメタクリレート60重量%共重合されたアミノ基含有ポリマー(不揮発分20%)
【0059】
〔試験結果〕
実施例1〜13、比較例1〜2の水性被覆剤を用いて、各種特性を評価した。結果を表4に示す。
【0060】
【表6】
【0061】
指触乾燥性 :水性被覆剤をガラス板に10ミルアプリケーターで塗布し、経時で指で塗膜をおさえ、指触乾燥性を確認。指に水性被覆剤が付着しなくなった時間を示した。(単位;分)
【0062】
タイヤ付着性 :ガラス板に10ミルアプリケーターで塗布し、15分後にJIS−K−5665のタイヤ付着性試験用ローラーを 転がし、状態を目視確認した。
◎ :塗膜に状態変化がない。
○ :少し塗膜に跡がつくが、タイヤには水性被覆剤がついていない状態。
△−○:少し水性被覆剤がタイヤに付着した状態。
X:タイヤに水性被覆剤が大量に付着した状態。
【0063】
貯蔵安定性 :水性被覆剤を室温で1週間放置したときの水性被覆剤の状態を判定した。
○:かき混ぜた時、堅い固まりがなく、一様となる。
○−:かき混ぜた時、堅い固まりがなく、一様ではあるが、若干増粘傾向がみられる。
△:かき混ぜたとき、固まりがあるか、または著しく増粘している状態。
X:水性被覆剤が固化。
【0064】
〔グロスペイントとしての実施例〕
〔製造例8〜12 ;ポリマーエマルジョン8〜12〕
下記の、表5に記載したの原料を用いた以外は、製造例1と同様の重合方法により、ポリマーエマルジョン8〜12を得た。
【0065】
【表7】
【0066】
*12 :アクリル酸2−エチルヘキシル
*13 :スチレン
【0067】
〔実施例14〜24 ;速乾型水性被覆剤の作製〕
下記の表6に従って水性被覆剤(実施例14〜24)を作製した。尚、各実施例におけるバインダー成分としては、後述するバインダー成分15〜25をそれぞれ用いた。また、最後に添加する28%アンモニア水は水性被覆剤のpHが10.0になるよう添加した。
【0068】
【表8】
【0069】
*14:ローム&ハース社製顔料分散剤
*15:日本乳化剤製湿潤剤
*16:大日本インキ化学工業(株)製防腐剤
*17:テイカ製酸化チタン
*18:サンノプコ(株)製消泡剤
*19:ローム&ハース社製増粘剤
*20:ローム&ハース社製増粘剤
*21:サンノプコ(株)製消泡剤
【0070】
【表9】
【0071】
〔バインダー成分15〜26〕
バインダー成分を、表8−1、2に示した。
【0072】
【表10】
【0073】
【表11】
【0074】
〔比較例3〕
上記表8−2のバインダー成分26を用いて、表6に従って水性被覆剤(比較例3)を作製した。尚、28%アンモニア水は水性被覆剤のpHが10.0になるよう添加した。
【0075】
〔比較例4〕
14%アンモニア水を用いてpH=7〜9に調製する以外は、製造例8(ポリマーエマルジョン8の製造例)と同様の方法にてポリマーエマルジョンを作成した後、アミノ基含有水性ポリマー*11を30重量部加えた。このものをバインダー成分として用いて、表6に従って水性被覆剤(比較例4)を作製した。尚、28%アンモニア水は水性被覆剤のpHが10.0になるよう添加した。
【0076】
〔試験結果〕
実施例14〜24、比較例3〜4の水性被覆剤を用いて、各種特性を評価した。結果を表9に示す。
【0077】
【表12】
【0078】
光沢 :ガラス板に6ミルアプリケーターで水性被覆剤を塗布し、3日間室温乾燥後60度グロスを測定した。
【0079】
指触乾燥性 :水性被覆剤をガラス板に6ミルアプリケーターで塗布し、経時で指で塗膜をおさえ、指触乾燥性を確認。指に水性被覆剤が付着しなくなった時間を示した。(単位;分)
【0080】
貯蔵安定性 :水性被覆剤を室温で1週間放置したときの水性被覆剤の状態を判定した。
○:かき混ぜた時、堅い固まりがなく、一様となる。
○−:かき混ぜた時、堅い固まりがなく、一様ではあるが、若干増粘傾向がみられる。
△:かき混ぜたとき、固まりがあるか、または著しく増粘している状態。
X:水性被覆剤が固化。
【0081】
耐水性 :75KUに希釈した水性被覆剤をフレキシブル板に刷毛塗り(2回)し、室温で7日乾燥後5日間浸水した。取り出した時の塗膜状態及び洗浄・乾燥後の塗膜状態を目視で観察し、判定した。
○:状態変化なし
△:塗膜の一部でブリスターがあるか、または乾燥後つやびけしている。
X:塗膜の全面にブリスターがあるか、または乾燥後著しくつやびけしている。
【0082】
【発明の効果】
本発明によれば、速乾性に優れ、かつ貯蔵安定性にも優れた水性被覆剤を提供することができる。
Claims (3)
- カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a−1)をエチレン性不飽和単量体(a)100重量部当たり0.5重量部以上4重量部以下で用いて、乳化重合させて得られたものであるカルボキシル基含有乳化共重合体(A)、アミノ基を含有し、且つ分子量300以下の有機化合物(B)、アンモニア(C)、及び顔料(D)を含有する速乾型水性被覆剤であって、前記有機化合物(B)がエチレンジアミン、シクロヘキシルジアミン、ジブチルアミン及びトリプロピルアミンからなる群から選ばれる1種以上の化合物であり、前記速乾型水性被覆剤のpHが10〜11であり、且つ、前記有機化合物(B)の使用量が、カルボキシル基含有乳化共重合体(A)100重量部当たり0.05〜3重量部であることを特徴とする速乾型水性被覆剤。
- アミノ基を含有し、且つ分子量300以下の有機化合物(B)がアルコール性水酸基を含有しないものである、請求項1に記載の速乾型水性被覆剤。
- カルボキシル基含有乳化共重合体(A)が、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(a−1)を必須成分とするエチレン性不飽和単量体(a)を、親水性成分としてカルボキシル基またはその塩を有する乳化剤の存在下で乳化重合させて得られたものである、請求項1又は2に記載の速乾型水性被覆剤。
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