JP4463971B2 - 硬化型水性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化型水性樹脂組成物に関するものであり、本発明の組成物から得られる皮膜は耐候性及び耐水性に優れるため、塗料、コーティング剤及び印刷インキ等の被覆材、不織布用等の接合剤、接着剤、充填剤、成形材料並びにレジスト等の種々の用途に賞用され得るものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは、先に塗料、コーティング剤等に用いられる、皮膜形成性のエマルションについての研究から、マレイミド基を有するエチレン性不飽和単量体を構成単量体とする共重合体が、得られる皮膜が耐候性に優れたものであり、塗料原料として有効であることを見出し、特許出願を行った(特願平11−344275号、特願平11−362080号)。
【0003】
特願平11−344275号乃至特願平11−362080号の明細書で述べたことであるが、それら特定の共重合体から得られた皮膜ないし塗膜は、耐候性に優れていることが知られている重合体であるフルオロオレフィン−ビニルエーテル系共重合体からなるフッ素樹脂や、アクリルシリコン樹脂から得られた皮膜が有する皮膜光沢が不十分、皮膜と基材との密着性が満足できるレベルにないという問題点を解決するものであった。
【0004】
一方、塗料等の用途においては、近年の環境問題への対応や、作業環境改善の要求から、塗料等の水性化への試みがなされており、特に屋外塗料においては、皮膜に耐汚染性、耐水性及び耐候性等の性能が要求されているが、溶剤系の被覆剤と比較すると、耐汚染性、耐水性及び耐候性等のすべての点において不十分なものであった。
【0005】
本発明者らは、環境問題に適応し、かつ、溶剤系被覆剤と同等の性能を有する被覆剤について鋭意検討した結果、エマルション等の水性分散体においても、マレイミド基を有するエチレン性不飽和単量体及び特定のラジカル重合性界面活性剤を共重合する(特願平2000−270766)か、又はマレイミド基を有するエチレン性不飽和単量体及びシクロアルキル基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合すること(特願平2000−270767)で、耐水性、耐汚染性に優れた水性樹脂組成物が得られることを見出した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記水性樹脂組成物において、基材に塗布した後に、太陽光が当たらない部分や、太陽光が当たる部分でも太陽光が十分に当たる前に、雨等により水に浸される場合において、皮膜が白化するといった、耐水性が不足することがあったり、耐汚染性が不充分である場合があった。
本発明の目的は、太陽光による硬化後の皮膜の特性を維持したうえで、太陽光が充分当たらないか、又は太陽光が当たる前の耐水性及び耐汚染性を改良した皮膜を形成し得る水性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、太陽光による硬化が起こる前の皮膜の初期物性について、改良検討を実施した結果、カルボニル基を樹脂中に導入し、ヒドラジン化合物を架橋剤として使用する方法を併用することにより、初期段階おける耐水性及び耐汚染性が著しく改善できることを見出し、この発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、この明細書においては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、アクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表し、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。
【0008】
【発明の実施の形態】
1.共重合体(A)
1-1.マレイミド基を有するエチレン性不飽和単量体
本発明における共重合体は、下記式(1)で表されるマレイミド基を有するエチレン性不飽和単量体(以下マレイミド単量体という)を構成単量体単位の一つとするものである。
【0018】
【化2】
【0019】
但し、式(1)中、R 1 及びR 2 は水素原子又はメチル基である。nは1〜6の整数である。式(1)の中でも、nが1〜2のものが好ましく、より好ましいものは、1のものである。
【0022】
マレイミド単量体は、以下の文献、及び特許に記載のある方法により、酸無水物、アミノアルコール及び(メタ)アクリル酸より製造することができる。
・加藤清ら、有機合成化学協会誌30(10),897,(1972)
・Javier de Abajo ら、Polymer,vol33(5),(1992)
・特開昭56−53119号公報、特開平1−242569号公報
【0023】
1-2.アルデヒド基又はケトン構造を有するエチレン性不飽和単量体
本発明における共重合体は、アルデヒド基又はケトン構造を有するエチレン性不飽和単量体(以下アルデヒド又はケトン単量体という)を構成単量体単位とするものである。当該単量体に由来する(A)成分中のアルデヒド基又はケトンは、そのカルボニル基が後記する(B)成分と反応し、架橋するものである。
アルデヒド又はケトン単量体の例としては、例えば、(メタ)アクロレイン、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート及びダイアセトン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの中でも、入手が容易で(B)成分との反応性に優れる点でダイアセトン(メタ)アクリルアミドが好しい。
【0024】
1-3.その他のエチレン性不飽和単量体
本発明において、共重合体は、必須成分のマレイミド単量体及びアルデヒド又はケトン単量体の他、必要に応じてこれらの単量体と共重合し得るその他のエチレン性不飽和単量体(以下その他単量体という)の共重合体であってもよい。
その他のエチレン性不飽和単量体としては、前記マレイミド単量体及びアルデヒド又はケトン単量体以外の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン及び、α−メチルスチレン、並びにビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシ、プロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。
【0025】
(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、nブチル(メタ)アクリレート、iso ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びイソボロニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等のアリール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート及び2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、並びにヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキル、グリシジル(メタ)アクリレート、並びに(メタ)アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチルを挙げることができる。
【0026】
これらの中でも、共重合性、皮膜物性等の面から好ましい単量体としては、炭素数が1〜8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレン、炭素数が2〜3のアルキレン基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、耐候性等の面から好ましい単量体としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
共重合体(A)を構成するマレイミド単量体、アルデヒド又はケトン単量体及びその他単量体の好ましい構成割合は、マレイミド単量体1〜40質量部、好ましくは4〜20質量部、アルデヒド又はケトン単量体1〜30質量部、好ましくは2〜25質量部、その他単量体の構成割合40〜98質量部、好ましくは55〜94質量部である。
マレイミド単量体が1質量部未満では、太陽光による硬化後の架橋密度が低く、皮膜の耐水性等の物性が劣ることがあり、40質量部を越えると架橋密度が高くなりすぎて皮膜が脆くなることがある。アルデヒド又はケトン単量体が1未満では、太陽光による硬化前の耐水性等が劣ることがあり、30質量部を越えると皮膜の親水性が高くなりすぎで硬化後も耐水性が不足することがある。その他単量体が40質量部に満たないと、皮膜の親水性が高くなってしまい耐水性が低下してしまうことがあり、一方98質量部を超えると、硬化後の架橋密度が低下し皮膜の耐水性が低下してしまうことがある。
【0028】
1-4.(A)成分の製造方法
本発明の(A)成分は、水性媒体中に分散してなるものである。(A)成分の製造方法としては一般的な乳化重合方法で、一般的な界面活性剤を乳化剤とし、マレイミド単量体、アルデヒド又はケトン単量体及び必要に応じてその他単量体の共重合を行うことにより、容易に調製される。
【0029】
乳化重合の具体的な方法としては、共重合する単量体を、水性媒体中にラジカル重合性界面活性剤を乳化剤として使用して分散させ、重合開始剤の存在下に加熱攪拌する方法、及び共重合する単量体を、乳化剤を使用して分散して水性乳濁液とし、当該水性乳濁液を水性媒体中に添加しつつ、重合開始剤の存在下に加熱攪拌する方法等を挙げることができる。
【0030】
又、必要に応じて、重合体の分子量を調節するために、連鎖移動剤を使用することができる。乳化重合で使用される重合開始剤の種類及び割合、並びに適用される重合温度及び単量体の供給方法は、使用する単量体、及び目的に応じて適宜選択すればよい。重合温度としては、通常使用する重合開始剤に適した重合温度を採用する。
連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、キサントゲン酸ジスルフィド、ジアゾチオエーテル及び2−プロパノール等が挙げられる。
【0031】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、並びに過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド及びt-ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。
これらは、重亜硫酸ナトリウム及びアスコルビン酸等の還元剤を併用し、レドックス系開始剤として使用しても良い。これらの中でも、水溶性の重合開始剤が好ましい。
【0032】
乳化剤としては、求められる特性等に応じて、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤、並びにポリオキシエチレン高級アルコールエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0033】
乳化剤としては、得られる共重合体が耐水性に優れる点で、ラジカル重合性界面活性剤を使用することが好ましい。ラジカル重合性界面活性剤を乳化剤として使用する場合、前記単量体を乳化重合する際に容易に共重合体の第三成分として共重合体の中に組み込まれるものである。
ラジカル重合性界面活性剤については、特公昭46−12472号公報、特公昭56−29657号公報、特開昭56−28208号公報、特開昭56−127697号公報、特開昭62−100502号公報、特開平2−162287号公報等で知られ、すでに市販品としてラテムル〔商品名、花王(株)製〕、エレミノール〔商品名、三洋化成(株)製〕、アクアロン〔商品名、第一工業製薬(株)製〕、アデカリアソープ〔商品名、旭電化工業(株)製〕等が知られている。
【0034】
本発明においては、それらのいずれもが使用可能であるが、特に好ましいものは、オキシアルキレン基を主鎖とし、一端にラジカル重合性二重結合を有する基、多端にイオン解離性基を有する界面活性剤であり、一般式で示せば、以下のとおりのものである。
【0035】
Z−(AO)n−Y (2)
【0036】
但し、式中、Zはラジカル重合性二重結合を有する基、AOはオキシアルキレン基、nは2以上の整数、Yはイオン解離性基を示す。
【0037】
ラジカル重合性界面活性剤は、アニオン性又はカチオン性のものが好ましく、ラジカル重合性二重結合を有する基として好ましいものは、芳香族炭化水素基、アルキル置換芳香族炭化水素基、高級アルキル基又は脂環式炭化水素基等の疎水性基と、ラジカル重合性二重結合とが組み合わされた構造のものであり、重合性二重結合としては、(メタ)アリル基、プロペニル基又はブテニル基等が好ましい。
【0038】
ラジカル重合性界面活性剤として、より好ましいものはアニオン性のものであり、したがってイオン解離性基としては、オキシアルキレン基にアニオンが共有結合し、これにカチオンがイオン結合した塩が好ましく、具体例としては、−SO3Na 、−SO3NH4、−COONa、−COONH4、−PO3Na2及び−PO3(NH4)2等が挙げられ、さらに好ましくは−SO3Na 、−SO3NH4である。
【0039】
オキシアルキレン基におけるnとしては、300以下が好ましく、さらに好ましくは5〜50であり、アルキレン基としては、エチレン基又はプロピレン基が好ましい。
【0040】
ラジカル重合性界面活性剤の具体例としては、例えば、下記式(3)、(4)及び(5)等で表される化合物が挙げられる。
式(3)及び(4)のR 3 及びR 4 としては、炭素数6〜18の直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましい。
式(5)中のR 5 としては、炭素数8〜24のアルキル基が好ましく、R 6 は水素原子又はメチル基である。また、式(3)〜(5)中のイオン解離性基の具体例は、先に述べた通りである。
【0041】
【化3】
【0042】
【化4】
【0043】
【化5】
【0044】
ラジカル重合性界面活性剤の量は、マレイミド単量体、アルデヒド又はケトン化合物及びその他単量体のそれぞれの種類と組合せ、さらにはラジカル重合性界面活性剤の種類によっても異なるが、一般的には、使用する単量体の合計量100質量部に対し、0. 1〜5質量部が好ましい。
使用量が0. 1質量部未満では、これを用いて乳化重合や得られたエマルジョンの安定性が低下することがあり、5質量部を越えると、添加量に比例した耐水性の効果の向上が認められないばかりでなく、むしろ耐水性が低下することがあり避けるのが望ましい。
【0045】
又、エマルションの安定性や、硬化皮膜の耐水性を向上させるために、ポリカルボン酸系及びポリスルホン酸系等の陰イオン性高分子界面活性剤、ポリビニルアルコール等の非イオン性高分子界面活性剤を併用することもでき、その使用量は、全単量体量100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0046】
(A)成分の分子量は、目的に応じて適宜決定すれば良いが、好ましくは数平均分子量1000〜100万であり、より好ましくは1万〜50万である。この値が1000に満たないものは、耐候性及び耐水性に低下してしまうことがあり、一方100万を越えると、成膜性が低下することがある。
尚、本発明において、数平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(以下GPCと略する)により測定した分子量をポリエチレンの分子量を基準にして換算した値である。
【0047】
組成物中の(A)成分の割合としては、20〜70質量%が好ましく、より好ましくは、40〜60質量%である。
【0048】
2.1分子中に少なくとも2個以上のヒドラジン基又はセミカルバジド基を有する化合物(B)
1分子中に少なくとも2個以上のヒドラジン基又はセミカルバジド基を有する化合物(以下ヒドラジン誘導体ということもある)としては、ヒドラジン基又はセミカルバジド基を有するものであれば種々の化合物が使用できる。
ヒドラジン基を有する化合物の例としては、プロピレン−1,3−ジヒドラジン及びブチレン−1,4−ジヒドラジン等のジヒドラジン化合物;N,N−ジエチルヒドラジン、N,N−ジプロピルヒドラジン、N,N−ジステアリルヒドラジン、N−メチル−N−エチルヒドラジン、N−メチル−N−ベンジルヒドラジン及びN,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)ヒドラジン等のN,N−ジ置換ヒドラジン;マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド及びフタル酸ジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド化合物;トリメリット酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド化合物並びに炭酸ジヒドラジド等が挙げられる。
セミカルバジド基を有する化合物の例としては、ビスセミカルバジド及びポリイソシアネートにジヒドラジドを反応させて得られる化合物等が挙げられる。前記ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等のジソシアネート、ジイソシアネートから誘導されるポリイシソアネート、及びポリイソシアネートと活性水素基を有する化合物との反応物等が挙げられる。ここで活性水素基を有する化合物としては、ポリエーテルポリオール及びポリエチレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
(B)成分としては、2種以上を併用することもできる。
【0049】
組成物中の(B)成分の割合は、(A)成分に含有されるアルデヒド基又はケトンに由来するカルボニル基1モルに対して、(B)成分中のヒドラジド基又はセミカルバジド基の割合で0.01〜2モルであり、好ましくは0.05〜1.5モルである。
この割合が0.01モルに満たない場合、太陽光が不足した部位の皮膜の架橋密度が不足し、耐水性が低下することがあり、他方2モルを越えると未反応の(B)成分が残存し、耐水性が低下することがある。
【0050】
3.組成物の製造方法
本発明の組成物の製造方法としては、種々の方法が採用できる。好ましい方法は、製造が容易である点で、(A)成分を含むエマルションに、(B)成分及び必要に応じてその他の成分を配合し、攪拌・混合する方法等が挙げられる。
【0051】
4.用途及び使用方法
本発明の組成物は、種々の用途に使用可能であり、被覆剤、繊維用の硬化仕上げ剤、溌水剤、シーリング剤、バインダー、接着剤及び粘着剤等に用いることができ、特に好適に使用できる。
この場合、適用可能な基材としては、例えば、ガラス、スレート、金属、木材、プラスチック及びコンクリート等が挙げられる。
被覆材の用途を具体的に示すと、土木・建築用の塗料、耐酸性雨用塗料、防汚性塗料、及び溌水剤、電気電子部品の防湿コーティング剤及び磁気テープのバックコート剤が挙げられる。
【0052】
本発明の組成物は、被覆材の中でも特に塗料として有用であり、特に屋外塗料として有用である。塗料として使用する際、従来の塗料で使用されている種々の添加剤を配合するこができる。
【0053】
添加剤としては、例えば、クレー、タルク及びチタンホワイト等の充填剤、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール及びジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の造膜助剤、ジブチルフタレート及びジオクチルフタレート等の可塑剤、ロジン、テンペンフェノール及び石油樹脂等の粘着付与剤、湿潤、分散及び消泡等の目的に用いられる各種界面活性剤、増粘剤、チクソ剤、並びに凍結防止剤等が挙げられる。
【0054】
組成物の使用方法としては、常法に従えばよく、たとえば、該分散体を基材に塗工し、自然乾燥又は加熱乾燥する方法等が挙げられる。
【0055】
又、マレイミド基を有する本発明の組成物は、二個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートやポリアルレキングリコールポリ(メタ)アクリレート等のアクリル系のモノマー及びウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ )アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及びポリエーテルポリオール等の化合物と併用されて活性エネルギー線硬化型水性エマルションとして用いることにより、さらに応用範囲が広がるものである。
【0056】
【作用】
本発明の組成物は、(A)成分中のマレイミド基が太陽光により光二量化し、三次元架橋し、又(A)成分中のアルデヒド基又はケトン構造に由来するカルボニル基が、水分の蒸発とともに(B)成分と反応し、三次元架橋する。
(A)成分中のマレイミド基は、太陽光を効率良く吸収し、架橋するため、耐水性、耐候性及び耐汚染等に優れた架橋皮膜を形成する。一方、(A)成分中のアルデヒド基又はケトン構造に由来するカルボニル基とヒドラジン誘導体は、水分の蒸発と共に、素早く架橋するため、例えば、夜間のような太陽光が当たらない条件下においても反応、架橋して皮膜の耐水性を向上させる。
従って、本発明者らが先の見出した組成物では、太陽光に曝される前の皮膜が雨による濡れた場合、艶の低下、成膜不良による皮膜の白化等の問題が生じる可能性があるが、本発明の組成物では、(A)成分中のカルボニル基と(B)成分の架橋を併用することで、これらの問題がない良好な皮膜とすることができる。
【0057】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。
尚、各例における成分配合の部は、全て質量部を意味する。
【0058】
○製造例1(エマルションA−1の製造)
表1に示される量の下記式(6)で表されるイミドアクリレート(以下単にイミドアクリレートという)、ダイアセトンアクリルアミド、n−ブチルメタクリレート(以下BMAという)、メチルメタクリレート(以下MMAという)、n−ブチルアクリレート(以下BAという)及びメタクリル酸(以下MAAという)を混合して、脱イオン水100部及びアクアロンHS10の0.5部〔下記(7)で表されるラジカル重合性成界面活性剤(n=10)、第一工業製薬(株)製、以下HS10という〕を添加し、回転式ホモミキサーを用いて単量体エマルションを作成した。
一方、脱イオン水45部、HS10の0.5部の入ったフラスコ内部を窒素置換した後、温度80℃迄加温した。内液を温度80℃に維持しながら、そこへ、過硫酸アンモニウム1部と、先の単量体エマルションの内2質量%分を添加し、添加後15分後から残りの単量体エマルションを2時間かけて滴下し、さらにそのまま2時間熟成した。熟成後、冷却した後、中和剤としてアンモニア水(10wt%)を3部滴下して、エマルション型の水性樹脂分散体を得た。これをエマルションA−1という。
【0059】
【化6】
【0060】
【化7】
【0061】
○製造例2(エマルションA−2の製造)
使用する単量体及び界面活性剤の量を、表1に示す通りに変更する以外は、製造例1と同様の方法により水性樹脂分散体を得た。これをエマルションA−2という。
【0062】
○製造例3(エマルションA−3の製造)
アクアロンHS10の代わりにNewcol707SFを各1部〔ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性界面活性剤、不揮発性分30%、日本乳化剤(株)製、以下707SFという〕使用した以外は、製造例1と同様の方法により水性樹脂分散体を得た。これをエマルションA−3という。
【0063】
○比較製造例1〜3(エマルションX−1〜X−3の製造)
使用する単量体及び界面活性剤の量を表1に示す通りに変更する以外は、製造例1と同様の方法により水性樹脂分散体を得た。
【0064】
【表1】
【0065】
○実施例1
エマルションA−1の100部に、アジピン酸ジヒドラジド(以下ADHという)0.3部(共重合体のカルボニル基に対してヒドラジン基として0.29モル)配合した後、造膜助剤のトリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル5部及び増粘剤〔プライマールRM−8W、日本アクリル(株)製〕0.5部を混合し組成物を得た。
得られた組成物を、アルミ板にバーコーターを使用し、室温で50μmの膜厚で塗布した。
塗装後に10℃恒温槽で24時間乾燥するか、又は塗装後に屋外(晴天時の南面)に2時間暴露した。得られた2種類の試験体について、下記の評価試験を行った。それらの結果を表3に示す。
【0066】
・評価方法
a.耐水白化性
試験体を温度40℃の温水に1日間浸漬し、皮膜の▲1▼浸漬中の白化レベルと、▲2▼水中から取り出して室温で1日間放置した後の白化のレベルを目視で評価した。
○:▲1▼白化せず、▲2▼白化はなく艶のある皮膜
△:▲1▼僅かに白化、▲2▼白化はないが艶が減少
×:▲1▼白化した、▲2▼白化したまま
【0067】
b.カーボン汚染性
カーボン粉末(MA100)の灯油5%分散液を作成し、皮膜上に塗布し24時間放置後ペーパータオルでの拭き取り性を評価した。
○ :完全に除去
△:痕跡が残る程度
×:ほとんど除去できず
【0068】
○実施例2
エマルションA−1に代えエマルションA−2を使用し、ADHの0.6部を配合したこと以外は、すべて実施例1と同様の方法により組成物を製造した。
得られた組成物を実施例1と同様に評価を行った。それらの結果を表3に示す。
【0069】
○実施例3
エマルションA−1に代えエマルションA−3を使用したこと以外は、すべて実施例1と同様の方法により組成物を製造した。
得られた組成物を実施例1と同様に評価を行った。それらの結果を表4に示す。
【0070】
○比較例1
ADHを配合しなかったこと以外は、すべて実施例1と同様の方法により組成物を製造した。
得られた組成物を実施例1と同様に評価を行った。それらの結果を表3に示す。
【0071】
○比較例2〜同4
エマルションA−1の代え、それぞれエマルションX−1、X−2及びX−3を使用したことは、すべて実施例1と同様の方法により組成物を製造した。
得られた組成物を実施例1と同様に評価を行った。それらの結果を表3に示す。
【0072】
○比較例5
ADHしなかったこと以外は、すべて実施例3と同様の方法により組成物を製造した。
得られた組成物を実施例1と同様に評価を行った。それらの結果を表4に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【発明の効果】
本発明の組成物は、乾燥初期段階及び屋外曝露後の耐水性及び耐汚染性に優れた皮膜を形成することができ、塗料、接着剤、シーリング剤、コーティング剤等各種の用途に対して極めて有用なものであり、特に屋外塗料として有用なものである。
Claims (2)
- 下記式(1)で表されるマレイミド基を有するエチレン性不飽和単量体、アルデヒド基又はケトン構造を有するエチレン性不飽和単量体及び必要に応じて前記単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体を構成単量体単位とする共重合体(A)、1分子中に少なくとも2個以上のヒドラジン基又はセミカルバジド基を有する化合物(B)並びに水性媒体を含有する組成物であって、
(A)成分が水性媒体中に分散してなり、
(A)成分中のアルデヒド基又はケトン構造に由来するカルボニル基1モルに対して、(B)成分をヒドラジド基又はセミカルバジド基の割合で0.01〜2モル含有する硬化型水性樹脂組成物。
- 前記(A)成分が、
上記式(1)で表されるマレイミド基を有するエチレン性不飽和単量体:1〜40質量部、
アルデヒド基又はケトン構造を有するエチレン性不飽和単量体:1〜30質量部及び
前記単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体:40〜98質量部
を構成割合とする共重合体である請求項1記載の硬化型水性樹脂組成物。
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