JP3997493B2 - 常温硬化性一液水性塗料組成物 - Google Patents

常温硬化性一液水性塗料組成物 Download PDF

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Description

【0001】
本発明の背景
本発明は、常温硬化性一液水性塗料組成物に関する。
【0002】
省資源および環境保全の見地から有機溶剤を含まない水性塗料に関心が向けられている。広く使用されているエマルジョン塗料は、塗装後水分の蒸発によるエマルジョン粒子の物理的融合を造膜機構とし、そのため耐水性、耐溶剤性、耐薬品性などの塗膜性能において焼付硬化型の塗料に及ばない。架橋剤による常温での架橋反応を利用する系、特に高い架橋密度に設計した系は一般に二液性としなければならない。このような系は一液性とすると長期間安定に貯蔵することができないからである。
【0003】
α,β−不飽和カルボニル基のような分極した二重結合へ活性メチレン基が付加するマイケル付加反応を硬化メカニズムとして利用する系は、反応副生成物を発生せず、新たに形成された結合が化学的に安定な炭素−炭素間結合であるなどのすぐれた特徴を持っている。この系においても一液性とすると長期貯蔵安定性がなく、一液性で安定な場合は100℃以上に加熱しなければ架橋反応が実質上進行しない。
【0004】
例えば、米国特許第4,408,018号に開示されている、複数のアセトアセテートペンダント基をポリマー骨格へ導入したアクリルポリマーを塩基性触媒を使用してトリメチロールプロパントリアクリレート等の架橋モノマーで架橋する系は、常温で架橋反応が進行する代わりに一液性とした場合長期貯蔵安定性に欠ける。
【0005】
特開平5−247372号に開示されている、マイケル付加可能なα,β−不飽和カルボニル基を有する樹脂を活性メチン化合物で架橋する触媒を含まない系は、貯蔵安定性は問題ないが100℃以上に加熱しないと架橋反応が進行しない。
【0006】
特開平6−234954号は硬化機構としてマイケル反応を利用する水系塗料組成物を開示する。この組成物は低温、例えば60℃においても硬化し得ると記載されているが、マイケル反応成分および触媒の少なくとも一つを使用直前まで他の成分から分離して貯蔵しなければならない。
【0007】
カルボニル基とヒドラジド基との反応を利用した硬化系も知られている。例えば、特開平2−155956号は、カルボニル基含有共重合体のエマルジョンに、ポリヒドラジド化合物を添加した常温架橋一液性水性塗料組成物を開示する。この系においても、やはり高い架橋密度が得られるように設計すると、貯蔵安定性が得られない。さらにこの系は、架橋により新たに形成される結合はシッフ塩基型結合であるため、マイケル付加反応によって形成される炭素−炭素間結合に比べ化学的に分解され易く、塗膜性能、特に耐酸性が十分でない。
【0008】
そこで本発明は、貯蔵安定性と常温架橋性とが両立可能であり、かつすぐれた塗膜性能を与える、マイケル付加反応を利用する常温硬化性一液水性塗料組成物を提供する。
【0009】
本発明の開示
本発明は、(a)分子内に複数の活性メチレン基を有するアクリル共重合体の水性エマルション、(b)分子内に複数のエチレン性不飽和結合を有する化合物の水溶液または水分散液、および(c)前記(a)成分および(b)成分間のマイケル反応を促進する触媒を含むことを特徴とする常温硬化性一液水性塗料組成物を提供する。
【0010】
好ましい実施態様
(a)成分
複数の活性メチレン基を有するアクリル共重合体は、活性メチレン基を有するアクリルモノマー、例えば2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−シアノアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N−(2−シアノアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−プロピオニルアセトキシブチル)アクリルアミド、N−(4−アセトアセトキシメチルベンジル)アクリルアミド、N−(2−アセトアセチルアミノエチル)アクリルアミド、2−(N−アセトアセチルアミノエチル)(メタ)アクリレートなどと、他のアクリル系および/または非アクリル系モノマーを共重合することによって製造することができる。
【0011】
共重合に使用し得るアクリル系モノマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、フェニル、ベンジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピルエステル、プラクセルFM−1(アクリル酸2−ヒドロキシエチルとポリカプロラクトンとの付加物、ダイセル化学工業(株)製)、アクリルアミド、およびN−メチロールアクリルアミドのようなその誘導体、アクリロニトリルなどがあり、非アクリル系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、イタコン酸、マレイン酸、酢酸ビニルなどがある。さらに少割合の多官能モノマー、例えばジビニルベンゼン、多価アルコールポリ(メタ)アクリレート等を含んでもよい。多官能モノマーの添加は、塗膜の架橋密度を高め、または所望の架橋密度レベルを得るために活性メチレン基含有モノマーの比率を対応して低くすることを許容する。
【0012】
水性塗料組成物に使用するため、モノマー混合物は慣用の乳化剤および重合開始剤を使用して水性媒体中で乳化重合法によって共重合される。乳化剤は慣用のアニオン性、カチオン性、非イオン性または両性界面活性剤が使用し得る。開始剤としては過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジ塩酸塩(V−50)、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)(VA−061)などの水溶性開始剤が使用される。乳化剤として、市販されている反応性乳化剤、例えばAntox MS−60(日本乳化剤)、アクアロンHS−10(第一工業製薬)、アデカリアソープSE−10N(旭電化工業)などを使用してもよい。
【0013】
(a)成分中の活性メチレン濃度は一般に固形分中0.1〜20mmol/gであるが、高い架橋密度を望むときは少なくとも1mmol/gであることが好ましい。
【0014】
(b)成分
分子内に2つ以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を持つ化合物を用いることができる。その例として多価アルコールの重合性不飽和モノカルボン酸エステル化合物(例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタアクリレート、グリセロールアクロキシジメタアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジメタアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリメタアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパンジアクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパンジメタアクリレートなど)、多塩基酸の重合性不飽和アルコールエステル化合物(例えば、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテートなど)、2個以上のビニル基で置換された芳香族化合物(例えば、ジビニルベンゼンなど)、エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体とカルボキシル基含有エチレン性不飽和基単量体との付加物(例えば、グリシジルアクリレートやグリシジルメタアクリレートとアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸との反応物など)が挙げられる。
【0015】
これらのエチレン性不飽和化合物は単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
多価アルコール/エチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、例えばトリメチロールプロパン−エチレンオキシド付加物トリアクリレート(新中村化学工業社製TMPTA−30Eなど)は水溶性(b)成分の例である。
【0017】
水性塗料組成物に使用するため(b)成分を水分散液とする方法としては、慣用の乳化剤または分散安定剤を使用して水性媒体中に機械的に乳化もしくは分散すればよい。
【0018】
(c)成分
マイケル付加反応を促進する触媒は数多く知られている。それらは水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、4級アンモニウム塩基およびその炭酸塩、有機酸塩、ハライドである。
【0019】
種々のカチオン部分を有する4級アンモニウム化合物が使用し得るが、少なくとも一部のアルキル基が水酸基で置換されていてもよいテトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアラルキルアンモニウム塩が入手し易い。ピリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンなどの含窒素複素環化合物の4級アンモニウム塩を用いてもよい。具体的にはテトラブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、テトラデシルアンモニウム、テトラヘキサデシルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム(コリン)、メチルトリオクチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、2−クロエチルトリメチルアンモニウム、メチルピリジニウムなどがある。
【0020】
カウンターアニオンは、ハイドロオキサイド、ハライド、カルボキシレート、スルホネート、サルフェートなどである。具体的にはアセテート、ラウレート、グリコレート、ベンゾエート、サリチレート、クロライド、ブロマイド、アイオダイド、メタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、トリフレート、ナイトレート、サルフェート、メトサルフェートなどがある。
【0021】
4級アンモニウム塩を使用する場合、本出願人の特願平5−292736号に開示されているように、エポキシ化合物を併用することができる。
【0022】
アミジン類およびグアニジン類も触媒として使用することができる。(a)成分を先に述べたように乳化重合によって製造する場合、開始剤としてV−50またはVA−061のような末端にアミジン構造を有する開始剤を使用することにより、残っているアミジン骨格が触媒としての機能を十分に発揮する。
【0023】
塗料組成物
(a)成分,(b)成分および(c)成分は一液としてブレンドすることができ、別々に分離して貯蔵する必要はない。本発明の重要な利点の一つは、組成物が長期間貯蔵に安定であるが、なお室温において硬化性を保有していることである。勿論加熱条件下での硬化も可能である。
【0024】
(a)成分/(b)成分の割合は、化学量論的割合が好ましいことは勿論であるが、官能基のモル比が3/1ないし1/3の範囲の変動は許容される。(c)成分の添加量は、(a)成分および(b)成分の合計固形分重量に対して0.1〜10%である。
【0025】
本発明の塗料組成物は、慣用の体質顔料、着色顔料、造膜性調整のための有機溶剤、表面調整剤、消泡剤、粘性調製剤などの慣用の添加剤を含むことができる。
【0026】
以下に製造例、実施例および比較例を示すが、これらにおいて「部」および「%」は重量基準による。
【0027】
製造例1
攪拌機、冷却管および滴下ロートを備えたフラスコに、脱イオン水200部と、Antox MS−60(日本乳化剤(株)製反応性乳化剤)1.2部を仕込み、80℃に昇温した。次いで脱イオン水120部と過硫酸カリウム1.2部よりなる開始剤と、脱イオン水280部、Antox MS−60 3.2部、アセトアセトキシエチルメタクリレート214部、スチレン40部、メチルメタクリレート76.4部、2−エチルヘキシルアクリレート69.6部よりあらかじめ調製したモノマープレ乳化液を2時間かけて滴下した。その後内容物を80℃に1時間保持し、エマルジョンを得た。さらに2.5%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液60部を加え、pH7.5に調整した。
固形分38%,粒子径130nm(レーザー光散乱法による。以下同じ。)
【0028】
製造例2
製造例1において、pH調整を水酸化ナトリウム水溶液で行ったことを除いて全く同様にしてエマルジョンを得た。
固形分38%,粒子径130nm
【0029】
製造例3
製造例1において、pH調整をジメチルアミノエタノール水溶液で行ったことを除いて全く同様にしてエマルジョンを得た。
固形分38%,粒子径130nm
【0030】
製造例4
製造例1において、開始剤水溶液を脱イオン水120部、アゾビスシアノ吉草酸1.2部、テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド0.78部よりなる溶液に変更したことを除いて全く同様にしてエマルジョンを得た。
固形分38%,粒子径180nm
【0031】
製造例5
まず、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレートとラウリルブロマイドからカチオン性反応性乳化剤を製造した(固形分100%)。次に、製造例1で使用したフラスコに、脱イオン水150部、上記カチオン性乳化剤3部を仕込み、80℃に昇温した。次いで脱イオン水90部、V−50(和光純薬製2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジ塩酸塩)1.5部よりなる開始剤水溶液と、脱イオン水210部、上記カチオン性乳化剤12部、アセトアセトキシエチルメタクリレート160.5部、スチレン30部、メチルメタクリレート57.3部、2−エチルヘキシルメタクリレート52.2部よりあらかじめ調製したモノマープレ乳化液を2時間かけて滴下し、その後80℃に1時間保持し、エマルジョンを得た。固形分37%,粒子径220nm
【0032】
製造例6〜8
製造例1においてアセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM),スチレン(ST),メチルメタクリレート(MMA),2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)およびエチレングリコールジメタクリレート(EGDM)よりなる下記のモノマー混合物を用いたことを除き、製造例1と同様にしてエマルジョンを得た。
【0033】
モノマー(部) 製造例6 製造例7 製造例8
AAEM 42 8 8
ST 40 40 40
MMA 148.4 182.4 162.4
2−HEA 169.6 169.6 149.6
EGDM ─── ─── 40
【0034】
製造例9
モノマー混合物として、アセトアセトキシエチルメタクリレート104部、スチレン64部、メチルメタクリレート120部および2−エチルヘキシルアクリレート112部を用いたほかは製造例1と同様にして、固形分38%,粒子径140nmのエマルションを得た。
【0035】
製造例10
モノマー混合物として、アセトアセトキシエチルメタクリレート104部、スチレン64部、メチルメタクリレート120部および2−エチルヘキシルアクリレート112部を使用し、中和に7.1%テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液60部を使用したことを除き、実施例1と同様にして固形分39%,粒子径140nmのエマルションを得た。
【0036】
製造例11(比較例用溶剤型樹脂ワニス)
製造例1で使用したフラスコに、メトキシプロパノール240部を仕込み、110℃へ昇温した。次いでアセトアセチルエチルメタクリレート152.6部、メチルメタクリレート154.6部、2−エチルヘキシルアクリレート92.9部、カヤエステルO(化薬アクゾ社製t−ブチルパーオクトエート)2部よりなる混合物を3時間かけて滴下し、その後110℃に1時間保持した。次にカヤエステルO 2部、メトキシプロパノール18部の混合物を30分かけて滴下し、さらに90分間110℃に保持し、樹脂ワニスを得た。固形分62%,数平均分子量5000(GPC法による。)
【0037】
製造例12(比較例用エマルジョン)
製造例1で使用したフラスコに、脱イオン水68部、コータミン86Pコンク(花王製カチオン性乳化剤)1.6部を仕込み、80℃へ昇温した。次いで脱イオン水90部、V−50 0.5部よりなる開始剤水溶液と、脱イオン水100部、コータミン86Pコンク3部、ジアセトンアクリルアミド40部、スチレン16部、2−エチルヘキシルアクリレート44部からあらかじめつくったモノマープレ乳化液を2時間かけて滴下し、その後1時間80℃に保持してエマルジョンを得た。固形分28%,粒子径230nm
【0038】
製造例13
10%ポリビニルアルコール水溶液10部、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)60部、脱イオン水30部からTMPTA分散液を製造した。TMPTA含量60%
【0039】
製造例14
エトキシプロパノール816部、アクリル酸61.2部、メチルメタクリレート438部、2−エチルヘキシルアクリレート460.8部、スチレン240部、カヤエステルO 21.6部から溶液重合法により酸価40,固形分60%の高分子分散剤を製造した。次に上記分散剤75部、25%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液11.4部、TMPTA105部を混合し、さらに脱イオン水258部を加え、TMPTA分散液を製造した。TMPTA含量23%
【0040】
製造例15(比較例用ヒドラジド硬化剤)
アジピン酸ジメチル174.2部、ヒドラジンヒドラート100.1部、脱イオン水224部から80℃で10時間かけてアジピン酸ジヒドラジドを製造した。
【0041】
製造例16(顔料分散体)
SMA−1440(酸価180の顔料分散用樹脂,ATOCHEM社製)を当量のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで中和して得られる25%水溶液10部、二酸化チタン100部、脱イオン水33部から顔料分散体を得た。二酸化チタン含量70%
【0042】
製造例17(顔料分散体)
中和剤としてテトラブチルアンモニウムハイドロオキサイドを使用したことを除き、製造例16と同様にして二酸化チタン含量70%の顔料分散体を得た。
【0043】
実施例1
製造例1のエマルジョン26.4部、製造例13のTMPTA分散液4.2部を混合し、クリヤー塗料とした。この塗料を8ミルドクターブレードにてガラス板上に塗布し、室温で一週間乾燥させた。この塗膜についてメチルエチルケトンラビングテスト(20回および50回)を行った。また、40℃にて貯蔵安定性を試験した。1ケ月後も塗料の状態に変化はなかった。貯蔵後の塗料から上記と同様に作成した塗膜のラビングテスト(20回)も行った。結果を表1に示す。
【0044】
実施例2〜10
(a)成分エマルジョンおよび(b)成分分散体を混合し、表1に示すクリヤー塗料を得た。この塗料を用いて実施例1と同様にしてラビングテストおよび貯蔵安定性試験を行った。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
Figure 0003997493
【0046】
実施例11
フタル酸ジグリシジルエステル60部、10%ポリビニルアルコール水溶液10部、脱イオン水30部とからエポキシ化合物含量60%の分散体を製造した。次に製造例3のエマルジョン26.4部、製造例13のTMPTA分散体4.2部、5%テトラブチルアンモニウムブロマイド水溶液1.6部、上のエポキシ化合物分散体1.4部を混合し、クリヤー塗料とした。この塗料を用いて実施例1と同様にラビングテストおよび貯蔵安定性試験を行ったところ、いずれも良好であった。
【0047】
実施例12
製造例1のエマルジョン26.4部、製造例13のTMPTA分散体4.2部、製造例16の顔料分散体15部を混合し、エナメル塗料とした。この塗料を用いて実施例1と同様にラビングテストおよび貯蔵安定性試験を行ったところ、いずれも良好であった。
【0048】
実施例13
製造例9のエマルション26.4部、製造例13のTMPTA分散体4.2部、製造例16の顔料分散体15部を混合し、エナメル塗料とした。この塗料を用いて実施例1と同様にラビングテストおよび貯蔵安定性試験を行ったところ、いずれも良好であった。
【0049】
実施例14
製造例10のエマルション26.4部、製造例13のTMPTA分散体4.2部、製造例17の顔料分散体15部を混合し、エナメル塗料とした。この塗料を用いて実施例1と同様にラビングテストおよび貯蔵安定性試験を行ったところ、いずれも良好であった。
【0050】
比較例1
サイビノールNP−617(サイデン化学(株)製非架橋型常乾アクリルエマルジョン塗料)を用いて実施例1と同様にラビングテストおよび貯蔵安定性試験を行った。メチルエチルケトンラビングで塗膜は溶解し、ガラス板の素地が露出した。40℃1ケ月の貯蔵安定性試験では異常が認められなかった。
【0051】
比較例2
製造例11のワニス16.6部、TMPTA2.5部、3%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液1部を均一に混合し、クリヤー塗料を得た。この塗料を8ミルドクターブレードでガラス板上に塗布し、1週間乾燥させた。メチルエチルケトンラビングテストでは異常がなかった。この塗料は室温で放置したところ1時間でゲル化した。
【0052】
比較例3
テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液を添加しなかった製造例1のエマルジョン26.4部と、製造例13のTMPTA分散体4.2部を混合して得られたクリヤー塗料を用い、実施例1と同様に試験した。ラビングテストにおいて塗膜は溶解し、ガラス板素地が露出した。貯蔵安定性試験では異常が認められなかった。
【0053】
比較例4
製造例12のエマルジョンと、製造例15のヒドラジド硬化剤とを、カルボニル基とヒドラジド基が当量になるように混合し、クリヤー塗料を得た。この塗料を用いて実施例1と同様に試験したところ、ラビングテストにおいては僅かにこすり跡が認められた。貯蔵安定性試験では、40℃2日間でゲル化した。

Claims (9)

  1. (a)活性メチレン基を有するアクリルモノマーと、該モノマーと共重合し得るエチレン性不飽和モノマーとの乳化重合によって得られる、分子内に複数の活性メチレン基を有するアクリル共重合体の水性エマルション、
    (b)分子内に複数のエチレン性不飽和結合を有する化合物の水溶液または水分散液、および
    (c)前記(a)成分および(b)成分間のマイケル反応を促進する触媒
    を含むことを特徴とする常温硬化性一液水性塗料組成物。
  2. 前記(a)成分のアクリルモノマーは、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−シアノアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N−(2−プロピオニルアセトキシブチル)アクリルアミド、N−(4−アセトアセトキシメチルベンジル)アクリルアミド、N−(2−アセトアセチルアミノエチル)アクリルアミド、または2−(N−シアノアセチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートから選ばれる請求項1の塗料組成物。
  3. 前記(a)成分はその固形分中少なくとも0.1mmol/gの活性メチレン基濃度を有する請求項1または2の塗料組成物。
  4. 前記(b)成分の分子内に複数のエチレン性不飽和結合を有する化合物は多価アルコールのアクリル酸もしくはメタクリル酸エステルである請求項1の塗料組成物。
  5. 前記(a)成分と(b)成分の割合は、活性メチレン:エチレン性不飽和結合のモル比が3:1ないし1:3であるような割合である請求項1ないし4のいずれかの塗料組成物。
  6. 前記(c)成分は第4級アンモニウム塩基またはその塩である請求項1の塗料組成物。
  7. 前記(c)成分は第4級アンモニウム塩とエポキシ化合物の組合せである請求項1の塗料組成物。
  8. 前記(c)成分は有機もしくは無機強塩基である請求項1の塗料組成物。
  9. 前記(c)成分の量は、前記(a)成分および(b)成分の合計固形分重量の0.1ないし10%である請求項1ないし8のいずれかの塗料組成物。
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