JP2006346599A - 水性樹脂硬化塗膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】常温での造膜性に優れ、且つ、高硬度で、良好な透明性と平滑性とを有すると共に、耐久性にも優れている硬化塗膜を形成する方法を提供する。
【解決手段】被着体上に合成樹脂エマルジョン(a)と重合性基を有する化合物(b)と架橋剤(c)とから成る水性樹脂組成物を塗布して硬化塗膜を形成する方法であって、重合性基を有する化合物(b)には、溶解度パラメーターが9〜16であって且つ重合性基を有する化合物を使用し、架橋剤(c)の存在下で重合性基を有する化合物(b)を重合させて硬化することから成る水性樹脂硬化塗膜の形成方法。
【選択図】 なし
【解決手段】被着体上に合成樹脂エマルジョン(a)と重合性基を有する化合物(b)と架橋剤(c)とから成る水性樹脂組成物を塗布して硬化塗膜を形成する方法であって、重合性基を有する化合物(b)には、溶解度パラメーターが9〜16であって且つ重合性基を有する化合物を使用し、架橋剤(c)の存在下で重合性基を有する化合物(b)を重合させて硬化することから成る水性樹脂硬化塗膜の形成方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、水性樹脂硬化塗膜の形成方法に関するものであり、詳しくは、造膜性に優れ、高い硬度と良好な透明性および平滑性とを有する水性樹脂硬化塗膜の形成方法に関するものである。
従来より、水性樹脂の常温乾燥による硬化塗膜の形成方法として、水性樹脂と架橋剤とから成る水性樹脂組成物を被着体上に塗布し、水性樹脂が有する反応性基と架橋剤とを反応させて硬化する方法が提案されている。
例えば、水性樹脂組成物として、ケト基含有アクリルエマルジョンとヒドラジド架橋剤とから成る組成物を使用して常温乾燥による硬化塗膜を形成する方法(特許文献1参照)およびケト基含有分散型エマルジョンと架橋剤としてのジヒドラジド化合物とから成る水性2液型樹脂組成物を使用して常温乾燥による硬化塗膜を形成する方法が知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、上述の硬化塗膜を形成する方法では、造膜性が十分優れているとは言えず、且つ、得られる硬化塗膜の硬度が十分高いものであるとは言えない欠点がある。また、ケト基含有分散型エマルジョンの製造工程中で有機溶剤を使用することがあり、造膜の際にそれらが揮発して環境を汚染する恐れがある。
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、常温での造膜性に優れ、且つ、高硬度で、良好な透明性と平滑性とを有すると共に、耐久性にも優れている硬化塗膜を形成する方法を提供することにある。
本発明者らは、種々検討を重ねた結果、合成樹脂エマルジョン(a)と特定の溶解度パラメーターを有し且つ重合性基を有する化合物(b)と架橋剤(c)とから成る水性樹脂組成物を被着体上に塗布した後に、架橋剤(c)の存在下で当該重合性基を有する化合物(b)を重合させて硬化すると、意外にも、造膜性が優れると共に、高い硬度と透明性と平滑性とを有する硬化塗膜を得ることが出来ることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づき成されたものであり、その第1の要旨は、被着体上に合成樹脂エマルジョン(a)と重合性基を有する化合物(b)と架橋剤(c)とから成る水性樹脂組成物を塗布して硬化塗膜を形成する方法であって、重合性基を有する化合物(b)には、溶解度パラメーターが9〜16の重合性基を有する化合物を使用し、架橋剤(c)の存在下で重合性基を有する化合物(b)を重合させて硬化することを特徴とする水性樹脂硬化塗膜の形成方法に存する。
本発明によれば、造膜性が優れると共に、高い硬度と透明性と平滑性とを有する硬化塗膜を得ることが出来る。さらに、被着体への密着性に優れ、耐候性、耐溶剤性、耐水性、耐熱性などの耐久性に優れ、かつ、顔料分散性などに優れた硬化塗膜を製造することが出来る。また、被着体が柔軟な樹脂から成る場合、硬度や耐久性を向上させることが出来る。さらに、本発明の形成方法は、有機溶剤の揮発による作業環境の汚染のない方法であって、環境対応にも優れたものである。
以下、本発明を詳細に説明する。以下に記載する構成要件は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明は、これらの内容に限定はされない。なお、以下において、合成樹脂製造時に残存したモノマー以外に重合性基を有する化合物が遊離した状態で存在していない合成樹脂の水分散体または水溶液を「合成樹脂エマルジョン」と、合成樹脂エマルジョンと重合性基を有する化合物と架橋剤とが遊離した状態で存在している水分散体または水溶液を「水性樹脂組成物」と、水性樹脂組成物を被着体上に塗布して硬化した膜を「水性樹脂硬化塗膜」と略称する。
本発明の水性樹脂硬化塗膜の形成方法は、被着体上に合成樹脂エマルジョン(a)と溶解度パラメーターが9〜16であり且つ重合性基を有する化合物(b)と架橋剤(c)とから成る水性樹脂組成物を塗布し、架橋剤(c)の存在下で重合性基を有する化合物(b)を重合させて硬化する。
先ず、本発明で使用する水性樹脂組成物について説明する。当該水性樹脂組成物は、水媒体に合成樹脂エマルジョン(a)と溶解度パラメーターが9〜16であり且つ重合性基を有する化合物(b)と架橋剤(c)とを含有して成る。
合成樹脂エマルジョン(a)としては、アクリル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、ポリエステル系エマルジョン、エポキシ樹脂系エマルジョン、シリコーン樹脂系エマルジョン、ポリオレフィン系エマルジョン、ゴムラテックス等の合成樹脂エマルジョンが使用できる。中でも、本発明で使用する重合性基を有する化合物(b)および架橋剤(c)との相溶性および造膜性の向上の観点から、アクリル樹脂系エマルジョンと酢酸ビニル樹脂系エマルジョンが好ましく、特に、アクリル樹脂系エマルジョンが好適である。なお、本発明におけるアクリル樹脂系エマルジョンとは、基本的な樹脂構成がアクリルモノマー類の共重合体、アクリルモノマー類とスチレンとの共重合体などから成る樹脂エマルジョンを意味し、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンとは、基本的な樹脂構成が酢酸ビニル単独重合体、酢酸ビニルとアクリルモノマー類との共重合体、酢酸ビニルとエチレンとの共重合体などから成るエマルジョンを意味する。これらの樹脂エマルジョンの製造方法は、特に限定されず、公知の方法が採用される。そして、合成樹脂エマルジョンの市販品をそのまま使用することも出来る。
次に、アクリル樹脂系エマルジョンおよび酢酸ビニル樹脂系エマルジョンについて説明する。アクリル樹脂系エマルジョンは、公知の界面活性剤またはアクリルモノマー類と共重合可能な反応性界面活性剤を使用してアクリルモノマー類を水に乳化し、又は、アクリルモノマー類を界面活性剤によりエマルジョン化した後、水に添加し、次いで、必要により窒素封入などによって酸素の混入を遮断して、重合開始剤を使用してラジカル反応やレドックス反応により乳化重合する方法、カルボキシル基などのイオン基を形成可能なモノマーを併用して有機溶剤中でアクリルモノマー類を溶液重合し、水に分散した後、脱溶剤する方法などによって製造することが出来る。
酢酸ビニル系樹脂エマルジョンは、ポリビニルアルコールやセルロース系の高分子分散剤、界面活性剤などの存在下でモノマーを水に滴下し、前述のアクリル樹脂系エマルジョンと同様の重合方法を使用して製造することが出来る。特に、酢酸ビニルとエチレンとの共重合体は、エチレンの比率により適切な加圧条件下で塊状重合、溶液重合、乳化重合で製造することが出来る。
アクリル樹脂系エマルジョンおよび酢酸ビニル樹脂系エマルジョンの製造における反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜90℃ある。反応温度が0℃未満の場合は、モノマーの重合が起こり難く、他方、反応温度が100℃を超える場合は、重合反応の制御が困難となる。重合時間は、通常1〜20時間程度である。
重合反応の際、通常は、有機溶剤を使用しない。なお、有機溶剤を使用する場合には、樹脂の水性化後に除去しやすい沸点50〜120℃の有機溶剤が好適である。例えば、アセトン(沸点56.3℃)、メチルエチルケトン(沸点79.6℃)、メチルイソブチルケトン(沸点117℃)、テトラヒドラフラン(沸点66℃)1,4−ジオキサン(沸点101.4℃)、酢酸エチル(沸点76.8℃)、トルエン(沸点110.6℃)、イソプロピルアルコール(沸点82.4℃)、n−ブチルアルコール(沸点117.7℃)、sec−ブチルアルコール(沸点99.5℃)等が挙げられる。
本発明のアクリル系樹脂エマルジョンの製造に使用されるアクリルモノマー類とは、広義の意味で重合性基として不飽和二重結合を有する化合物であり、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、窒素含有モノマー、脂環式モノマー、芳香族系モノマー、含フッ素モノマー、前記重合性基以外に反応性の官能基を有する化合物などを使用することが出来る。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
窒素を含有するモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等が挙げられ;脂環式モノマーとしては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−ターシャリーブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられ;芳香族系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸フェニル、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、含フッ素モノマーとしては、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記重合性基以外の反応性の官能基としては、水酸基、カルボキシル基、無水カルボン酸基、アミド基、グリシジル基(エポキシ基)、3級アミノ基、ケト基、アセトアセキシ基、シリル基、リン酸基、アミノ基などが挙げられ、重合性基以外に反応性の官能基を有する化合物として、以下の化合物が挙げられる。
水酸基を有する化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、α−ヒドロキシアクリル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル等が挙げられ;カルボキシル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、プロピオン酸ビニル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸などが挙げられ;無水カルボン酸基を有する化合物としては、無水マレイン酸などが挙げられ;アミド基を有する化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド等が挙げられ;グリシジル基を有する化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2,3−エポキシ−2−メチルプロピル(メタ)アクリレート、ビニルシクロへキセンモノエポキシド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
3級アミノ基を有するモノマーとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリロイルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられ;ケト基を有するモノマーとしては、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられ;アセト基を有する化合物としてはアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ;シリル基を有する化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ;リン酸基を有する化合物としては、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート等が挙げられ;アミノ基を有する化合物としては、アリルアミン等が挙げられる。
更に、ジビニルベンゼン、アクリル酸亜鉛、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加体のトリアクリレート、(メタ)アクリル化ウレタン樹脂(例えば、Ebecryl220、SARTOMER−CN964、CN965等)、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂(例えば、SARTOMER−CN104)、(メタ)アクリル化ポリエステル及びポリエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の多官能の不飽和二重結合を有する化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、ビニル−4−ヒドロキシブチルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル;塩化ビニリデン;(メタ)アリルクロライド;ビニルピロリドン;ビニルカプロラクタム;ビニルカルバゾール;ビニル−1−イミダゾール;ジビニルエチレン尿素;テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩などの4級アンモニウム塩基を有する化合物も使用することが出来る。
また、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル(メタ)アクリレート等の酸化重合性の化合物も使用することが出来る。なお、上記のアクリルモノマー類は、2種以上を混合して使用してもよい。
酢酸ビニル系樹脂エマルジョンの製造に使用されるモノマーとしては、酢酸ビニル、前記アクリルモノマー類、エチレン等のオレフィン系モノマーが挙げられる。上記のモノマーは、2種以上を混合して使用してもよい。
アクリルモノマー類の重合および酢酸ビニルモノマー類の重合の際、公知のラジカル重合開始剤を使用することが出来る。重合開始剤としては、水溶性および油溶性重合開始剤を使用することが出来、具体的には、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソブチルバレロニトリル等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、ラウリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジンカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの無機過酸化物などが挙げられる。
上記の有機または無機過酸化物は、還元剤と組み合わせてレドックス系重合開始剤として使用してもよい。レドックス系重合開始剤として使用する還元剤としては、ジエチレンチオ尿素、ジブチルチオ尿素、エチレンチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、メルカプトベンズイミダゾール等のチオ尿素類、アミン類、ヒドラジン又はヒドラジド類、ショ糖類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸亜鉛などの鉛、亜鉛、銅、鉄、コバルト、バナジウム等の脂肪酸塩類;銅アセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート等の金属錯体;L−アスコルビン酸;L−ソルビン酸;メタ重亜硫酸ナトリウム:硫酸第二鉄;塩化第二鉄;ロンガリット;ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート;亜鉛ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート等が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、モノマーに対して通常0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%である。
エマルジョンを形成する際に使用する水としては、工業的に使用可能であれば特に制約はないが、中でも脱塩水が好適である。脱塩水中の金属含有量としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計含有量が、通常5ppm以下、好ましくは2ppm以下である。更に、周期表の第3〜14属の範囲の金属含有量の合計が、通常5ppm以下、好ましくは2ppm以下である。
合成樹脂エマルジョンを製造する際に使用する乳化・分散装置としては、公知の撹拌装置が使用できる。例えば、撹拌機として、アンカー型、パドル型、タービン型、マックスブレンド型などの撹拌翼を有する撹拌機を使用することが出来る。また、より小さい粒子径の均一な水分散体を得るためには、ホモミキサー、ホモディスパー、ホモジナイザー、ラインミキサー等を使用することが出来る。別に、衝突混合を利用した装置、超音波を利用した装置、連続製造装置なども使用してもよい。
上述の様にして得られた合成樹脂エマルジョン(a)の平均分散粒子径は、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。平均分散粒子径が500μm超える場合は、分散安定性の悪化や樹脂物性の悪化等の不具合が発生することがある。また、合成樹脂エマルジョン(a)の重量平均分子量は、通常5,000〜2,000,000、好ましくは10,000〜1000,000である。合成樹脂エマルジョン(a)の不揮発分は、通常20〜70重量%、好ましくは25〜60重量%である。
次に、重合性基を有する化合物(b)について説明する。重合性基を有する化合物(b)は、その溶解度パラメーター(SP値)が9〜16、好ましくは10〜15である。溶解度パラメーターが9未満または16を超える場合は、合成樹脂エマルジョン(a)との相溶性が悪く本発明の目的を達成することが出来ない。なお、溶解度パラメーターが9未満または16を超える重合性基を有する化合物は、他の重合性基を有する化合物と併用して、重合性基を有する化合物(b)全体のモル分率平均での溶解度パラメーターが9〜16の範囲内になる様に調整することによって使用できる。
重合性基を有する化合物(b)としては、ラジカル重合、酸化重合などが可能な化合物、例えば、炭素−炭素間の不飽和二重結合や三重結合を有する化合物であり、エチレン性不飽和二重結合を有する前述のアクリルモノマー類、不飽和脂肪酸またはそのエステル、プロピオール酸エステル、プロパルギルアルコール等の三重結合含有化合物などが挙げられる。中でも、アクリルモノマー類が好適である。
また、重合性基を有する化合物(b)は、水に対する溶解性および分散性の観点から、親水性化合物、例えば、親水基として水酸基、カルボキシル基、無水カルボン酸基、リン酸基、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、アミド基、ポリオキシエチレン基、アミノ基、その他窒素含有親水基などを有する化合物が好適である。そして、重合性基を有する化合物(b)の20℃での水に対する溶解度は、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上である。溶解度が10重量%未満の場合は、本発明の効果を達成することが困難なことがある。なお、溶解度10重量%未満の重合性基を有する化合物は、他の親水基を有する化合物と併用して重合性基を有する化合物(b)全体の溶解度が10重量%以上の範囲に調整することによって使用できる。また、親水基を持たない重合性基を有する化合物であっても、前述と同じ方法によって使用が可能となる。なお、水に対する溶解性および分散性の観点から、重合性基を有する化合物(b)を水に分散する際に、界面活性剤を使用してもよい。
重合性基を有する化合物(b)としては、特に、水に対する溶解性と分散性および造膜性の観点から、溶解度パラメーターが9〜16であり、且つ、親水性で20℃での水に対する溶解度が10重量%以上の液状アクリルモノマーが好適である。
水性樹脂組成物中の重合性基を有する化合物(b)の量は、合成樹脂エマルジョン(a)の樹脂固形分との重量比(樹脂固形分:重合性基を有する化合物)で通常99:1〜40:60、好ましくは95:5〜50:50、より好ましくは90:10〜60:40である。合成樹脂エマルジョン(a)の樹脂固形分に対する重合性基を有する化合物(b)の重量比が1未満の場合は、造膜性と塗膜硬度の向上効果が十分といえず、他方、重量比が60を超える場合は、相溶性不良を起こし、均一な塗膜を得ることが困難なことがある。
また、塗膜の硬度、耐水性、耐薬品性、耐熱性などを向上させる観点から、重合性基を有する化合物(b)の1成分として、架橋反応し得る官能基を有する化合物や多官能性化合物を使用することが好適である。官能基を有する化合物としては、前述の水酸基を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物、無水カルボン酸基を有する化合物、ケト基を有する化合物、アセトアセトキシ基を有する化合物、グリシジル基(エポキシ基)を有する化合物、シリル基を有する化合物、アミノ基を有する化合物などが挙げられる。すなわち、官能基を有する化合物と重合性基を有する化合物(b)との組み合わせによって、各種性能をバランスよく満たすことが出来る。重合性基を有する化合物(b)の成分中の官能基を有する化合物の量は、通常10〜100重量%である。
本発明の常温架橋反応の好ましい態様であるケト基とヒドラジノ基との脱水縮合による架橋反応において、ヒドラジド架橋剤と架橋反応する重合性基を有する化合物(b)の1成分として、ケト基を有するジアセトンアクリルアミドの使用が好適である。従来、ジアセトンアクリルアミドは、合成樹脂エマルジョン製造時に他のモノマーと共重合して樹脂分子鎖中に結合させて使用していたが、本発明において、ジアセトンアクリルアミドは、ジアセトンアクリルアミドをモノマーの状態で、かつ、遊離した状態で水性樹脂組成物中に配合されていてもよい。なお、ジアセトンアクリルアミドは、共重合して樹脂分子鎖中にジアセトンアクリルアミドが組み込まれた合成樹脂エマルジョンとして使用、または、ジアセトンアクリルアミドのモノマーを水性樹脂組成物に添加して使用してもよい。
重合性基を有する化合物(b)の成分中におけるジアセトンアクリルアミドの量は、通常0.5〜70重量%、好ましくは1〜60重量%である。ジアセトンアクリルアミドの量が0.5重量%未満の場合は、架橋効果を十分達成しえないことがあり、他方、70重量%を超える場合は、造膜性が悪くなることがある。
次に、本発明で使用される架橋剤(c)について説明する。架橋剤(c)としては、合成樹脂エマルジョン(a)の樹脂分子鎖中に含まれるカルボキシル基、無水カルボン酸基、アミノ基、ケト基、ヒドロキシル基、グリシジル基などの官能基と反応し得る架橋剤が使用できる。例えば、カルボジミド架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、イソシアネート架橋剤、ヒドラジド架橋剤、金属塩、金属キレート化合物などが挙げられる。中でも、常温での硬化性、安全性の観点から、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、オキサゾリン架橋剤、カルボジミド架橋剤、ヒドラジド架橋剤が好適である。ヒドラジド架橋剤としては、ケト基を有するジアセトンアクリルアミド又はジアセトンアクリルアミドは、結合した合成樹脂エマルジョンの分子鎖との常温架橋性が良いため、より好適である。更に、ヒドラジド架橋剤の中では、水に対する溶解性や反応性の点からアジピン酸ジヒドラジドが特に好適である。
水性樹脂組成物中の架橋剤(c)の量は、上記官能基に対して通常0.01〜3当量、好ましくは、0.1から2当量である。架橋剤の性状にもよるが、架橋剤(c)の量が多すぎる場合は、経済性に劣るだけでなく、水溶性の架橋剤を使用した場合、耐水性の悪化の原因となることがある。
水性樹脂組成物には、各用途に応じ、顔料、染料、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、耐光安定剤、難燃剤、黄変防止剤などの公知の添加剤を配合してもよい。また、硬化塗膜の乾燥時の造膜性および塗膜の柔軟性や伸びを向上させるために、本発明の効果を損なわない範囲であれば、造膜助剤やフタル酸エステル系、アジピン酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、エポキシ系などの可塑剤、有機溶剤などを添加してもよい。
次に、本発明の水性樹脂硬化塗膜の形成方法について説明する。本発明の形成方法は、合成樹脂エマルジョン(a)と溶解度パラメーターが9〜16である重合性基を有する化合物(b)と架橋剤(c)とから成る水性樹脂組成物を被着体上に塗布し、必要に応じて重合開始剤を使用して、架橋剤(c)の存在下で重合性基を有する化合物(b)を重合させて硬化する。
先ず、水性樹脂組成物は、合成樹脂エマルジョン(a)と重合性基を有する化合物(b)とを混合して成る組成物に架橋剤(c)を添加、混合する方法、または、合成樹脂エマルジョン(a)と架橋剤(c)とを混合して成る組成物に重合性基を有する化合物(b)添加、混合する方法によって調製される。
合成樹脂エマルジョン(a)と重合性基を有する化合物(b)とを混合する方法には、特に制限はないが、例えば、(1)合成樹脂エマルジョンを製造する際に、重合性基を有する化合物(b)を添加する方法、(2)合成樹脂エマルジョン(a)に重合性基を有する化合物(b)を混合する方法などが挙げられる。中でも、(2)の方法が好適である。なお、(1)および(2)の方法において、重合性基を有する化合物(b)を添加した後、重合性基を有する化合物(b)の一部を重合してもよい。混合は、前述の撹拌機を使用して行われる。
合成樹脂エマルジョン(a)と合成樹脂エマルジョン(a)と架橋剤(c)とを混合する方法としては、合成樹脂エマルジョンを製造した後に、架橋剤(c)を添加する方法が好適である。この際、必要に応じて、混合液のpHを調整してもよい。ヒドラジド架橋剤を使用する場合は、水性樹脂組成物の安定の点から、pHを7以上にすることが望ましい。混合は、前述の撹拌機を使用して行われる
重合性基を有する化合物(b)を重合させるために、必要に応じて、公知の重合開始剤を使用する。重合開始剤としては、前記の合成樹脂エマルジョンの製造時に使用するものと同様のものが使用できる。重合開始剤の使用量は、重合性基を有する化合物(b)に対して通常0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。
重合開始剤の使用方法としては、水性樹脂組成物に含有させる方法、被着体に重合開始剤を塗布した後に、水性樹脂組成物を塗布する方法、重合開始剤を含有する水性樹脂組成物を塗布した被着体と水性樹脂組成物を塗布した被着体を接着する方法などの様に、重合開始剤が被着体上で重合性基を有する化合物(b)に作用する形態で重合開始剤を存在させる方法が採用される。重合性基を有する化合物(b)の重合時における重合開始剤の存在量は、重合性基を有する化合物(b)に対して通常0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。
重合性基を有する化合物(b)の重合方法としては、ラジカル重合、レドックス重合、嫌気重合、酸化重合などが適用できる。ここで言うラジカル重合は、ラジカル重合開始剤によって重合する方法であり、レドックス重合は、重合開始剤と還元剤とを組み合わせた酸化・還元反応によって重合する方法である。中でも、低い温度で重合が可能なことからレドックス重合する方法が好適である。
なお、前記嫌気重合は、水性樹脂組成物を塗布して水が揮発する際に、水性樹脂組成物中の重合性基を有する化合物(b)が水中でまたは外気から遮断された状態で重合する方法であり、嫌気性を高めるために、必要に応じてワックス類や乾性油類を併用してもよい。前記酸化重合は、水性樹脂組成物を塗布して水が揮発する際に、水性樹脂組成物中の重合性基を有する化合物(b)を空気中の酸素により酸化されて重合する方法である。また、本発明の趣旨を超えない範囲で、光重合開始剤や増感剤などを加えることもできる。
重合性基を有する化合物(b)を重合、硬化するための温度および時間は、特に制限はなく、公知の条件を使用できる。例えば、重合、硬化のための温度は、重合方法・条件などに依存して一概に定まらないが、通常10〜50℃で、時間は、通常1分〜7日間程度である。また、重合性基を有する化合物(b)を重合する雰囲気は、実施する重合方法による公知の条件を適用できる。
本発明における重合性基を有する化合物(b)の重合は、上述の様に熱や人工の光エネルギーを与えることなく実施することが出来る。すなわち、本発明の方法によれば、基本的に紫外線や電子線の発生装置やオーブン等の機器を使用することなく、高硬度の水性樹脂硬化塗膜を得ることが出来る。しかしながら、重合速度、重合度などを高くする必要がある場合は、熱や光などのエネルギーを与えてもよい。
さらに、重合開始剤(主に有機過酸化物の場合)に加えて硬化促進剤を使用してもよい。硬化促進剤としては、o−ベンゾイックスルフィミド類などの有機スルホンイミド類;ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルパラトルイジン、1,2,3,4−テトラヒドロキノン、N,N−ジメチルアニリン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン等のアミン類;塩化銅、オクチル酸銅などの有機金属塩類などが例示される。また、必要に応じて、第2級や第3級アミン等の促進剤を併用してもよい。
また、重合性基を有する化合物(b)の重合における分子量を調節する目的で公知の連鎖移動剤、例えば、オクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ドデシルメルカプタン、チオグリセリン等を使用してもよい。
被着体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン又はその表面処理物、ポリエステル又はその表面処理物、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリアミド、ABS、PPO(ポリフェニレンオキサイド)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ベークライト、発泡ポリスチレン等のプラスチック、それらのブレンドまたは変性物などから成る成型物が挙げられる。また、金属蒸着プラスチック、鋼またはその表面処理物、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金などの金属から成る成型物、ガラス、セラミックス、スレート板、硅カル板の様な無機質材、段ボール紙、板紙、クラフト紙などの紙質材、プレコートメタル、電着塗装板、モルタル、コンクリート、木質材などが挙げられる。中でも、木質材が好ましく、例えば、木材、中質繊維板、ハードボード、パーティクルボード、合板などの単板やボ−ド類またはこれらの加工品が好適である。
本発明によれば、水性樹脂組成物を被着体上に塗布し、必要に応じて重合開始剤を使用して、架橋剤(c)の存在下に重合性基を有する化合物(b)を重合しながら硬化することによって得られた水性樹脂硬化塗膜は、従来の重合基を有する化合物(b)を重合した後に被着体上に塗布し、硬化して得られた水性樹脂硬化塗膜よりも一層硬度が高くなる。
水性樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、刷毛塗り、ロール塗り、スプレー塗り、流し塗りまたは浸漬法などの方法が挙げられる。被着体に対する塗布量は、特に制限はないが、通常固形分で1〜1000g/m2、好ましくは1〜500g/m2 である。
また、本発明の方法は、基本的には室温で造膜性の悪い合成樹脂エマルジョンを対象とするが、室温で造膜するものについても硬化塗膜の硬度や各種耐久性向上のために応用することは十分可能である。
本発明の方法は、フラッシュパネル、化粧合板、プレハブパネル、集成材などの接着や表面処理に利用でき、線貼り、ホゾ、ダボ、トメ、ハギ、角木、その他の組み立てや家具組み立てなどの木材工業に適用することが可能である。
また、本発明の方法は、木材用塗料、屋外塗装用塗料、現場施工用塗料などの様に加熱乾燥することができない施工、および、人工的な紫外線などを照射することができない施工にも好適である。
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断らない限り「%」は重量%、「比」は重量比を意味する。
先ず、水性樹脂硬化塗膜の作成方法について述べる。水性樹脂組成物をドクターブレードを使用して200μm/wetの厚みでガラス板に塗布し、温度25℃、湿度40%RHの恒温室内に2日放置して硬化塗膜を作成した。造膜性、鉛筆硬度および耐水性の評価を以下の様に行った。
(1)造膜性の評価:
硬化塗膜の外観を目視観察し、クラックや曇り、亀甲模様がなく均一で透明な連続膜となる場合を造膜性良好とした。不均一または不連続な膜の場合は造膜性不良とした。
硬化塗膜の外観を目視観察し、クラックや曇り、亀甲模様がなく均一で透明な連続膜となる場合を造膜性良好とした。不均一または不連続な膜の場合は造膜性不良とした。
(2)鉛筆硬度の評価:
鉛筆硬度は、鉛筆(三菱鉛筆社製「ユニ」(商品名))の6B〜9Hの新しい鉛筆を使用し、その鉛筆の一端の芯を芯部分を尖らすことなく露出させ、且つ、他端を保持し、当該露出部の芯を塗膜の塗布面に接触角度を約30度に保ちながら、鉛筆の自重のみの加重でゆっくりと移動させ、そのときの塗膜面の傷の発生の有無を目視で観測する。このとき、傷を発生させないもっとも堅い鉛筆の硬度を鉛筆硬度とした。
鉛筆硬度は、鉛筆(三菱鉛筆社製「ユニ」(商品名))の6B〜9Hの新しい鉛筆を使用し、その鉛筆の一端の芯を芯部分を尖らすことなく露出させ、且つ、他端を保持し、当該露出部の芯を塗膜の塗布面に接触角度を約30度に保ちながら、鉛筆の自重のみの加重でゆっくりと移動させ、そのときの塗膜面の傷の発生の有無を目視で観測する。このとき、傷を発生させないもっとも堅い鉛筆の硬度を鉛筆硬度とした。
(3)耐水性の評価:
硬化塗膜を設けたガラス板をそのまま25℃の水道水中に浸漬して、外観変化を目視観察した。塗膜の外観変化がない場合は耐水性良好とし、塗膜が白くなる(白化する)場合は耐水性不良とした。
硬化塗膜を設けたガラス板をそのまま25℃の水道水中に浸漬して、外観変化を目視観察した。塗膜の外観変化がない場合は耐水性良好とし、塗膜が白くなる(白化する)場合は耐水性不良とした。
実施例1:
撹拌装置を備えた1Lのセパラブルフラスコに、市販アクリル系エマルジョンであるビニゾール1125(大同化成工業社製(商品名)固形分45%、pH2)223.2g、脱塩水102.7gを仕込み、25%アンモニア水溶液を加えて液のpHを8.8に調整した。次いで、得られた液に撹拌しながら、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10.0gとペンタエリスリトールトリアクリレート4.0gを予め脱塩水14.0gに分散させた液を添加し、次いで、ジアセトンアクリルアミド10.0gとアジピン酸ジヒドラジド(ヒドラジド架橋剤)5.15gを添加し、30分撹拌して固形分35%の均一な水性樹脂組成物を得た。添加した3種類のアクリルモノマーの溶解度パラメーターは、平均値で12.6であった。得られた水性樹脂組成物は、1日静置しても相分離などなく分散安定性は良好であった。
撹拌装置を備えた1Lのセパラブルフラスコに、市販アクリル系エマルジョンであるビニゾール1125(大同化成工業社製(商品名)固形分45%、pH2)223.2g、脱塩水102.7gを仕込み、25%アンモニア水溶液を加えて液のpHを8.8に調整した。次いで、得られた液に撹拌しながら、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10.0gとペンタエリスリトールトリアクリレート4.0gを予め脱塩水14.0gに分散させた液を添加し、次いで、ジアセトンアクリルアミド10.0gとアジピン酸ジヒドラジド(ヒドラジド架橋剤)5.15gを添加し、30分撹拌して固形分35%の均一な水性樹脂組成物を得た。添加した3種類のアクリルモノマーの溶解度パラメーターは、平均値で12.6であった。得られた水性樹脂組成物は、1日静置しても相分離などなく分散安定性は良好であった。
次いで、得られた水性樹脂組成物に過硫酸カリウム1.0gを添加、混合し、ガラス板に塗布して硬化塗膜を作成した。硬化塗膜は、造膜性が良好で、均一かつ透明であり、鉛筆硬度がHと硬く、且つ、耐水性も優れていた。
比較例1:
実施例1において、市販アクリル系エマルジョンであるビニゾール1125(大同化成工業社製(商品名)固形分45%、pH2)223.2g、脱塩水62.5gを仕込み、且つ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジアセトンアクリルアミドおよびアジピン酸ジヒドラジドを使用しない以外は、実施例1と同様にして固形分35%の均一な水性樹脂組成物を得、次いで、硬化塗膜を作成した。硬化塗膜を評価した結果、硬化塗膜にクラックが発生しており、造膜性も不良であった。
実施例1において、市販アクリル系エマルジョンであるビニゾール1125(大同化成工業社製(商品名)固形分45%、pH2)223.2g、脱塩水62.5gを仕込み、且つ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジアセトンアクリルアミドおよびアジピン酸ジヒドラジドを使用しない以外は、実施例1と同様にして固形分35%の均一な水性樹脂組成物を得、次いで、硬化塗膜を作成した。硬化塗膜を評価した結果、硬化塗膜にクラックが発生しており、造膜性も不良であった。
比較例2:
実施例1において、市販アクリル系エマルジョンであるビニゾール1125(大同化成工業社製(商品名)固形分45%、pH2)223.2g、脱塩水74.6gを仕込み、且つ、ジアセトンアクリルアミドおよびアジピン酸ジヒドラジドを使用しない以外は、実施例1と同様にして固形分35%の均一な水性樹脂組成物を得、次いで、硬化塗膜を作成した。硬化塗膜の造膜性は良好であったが、鉛筆硬度が6Bと低く、耐水性評価では硬化塗膜が白化し不良であった。
実施例1において、市販アクリル系エマルジョンであるビニゾール1125(大同化成工業社製(商品名)固形分45%、pH2)223.2g、脱塩水74.6gを仕込み、且つ、ジアセトンアクリルアミドおよびアジピン酸ジヒドラジドを使用しない以外は、実施例1と同様にして固形分35%の均一な水性樹脂組成物を得、次いで、硬化塗膜を作成した。硬化塗膜の造膜性は良好であったが、鉛筆硬度が6Bと低く、耐水性評価では硬化塗膜が白化し不良であった。
実施例2:
実施例1と同様の装置を使用して、市販アクリル系水溶性樹脂であるダイドール9401(大同化成工業社製(商品名)固形分20%、pH8.6)500.0g、脱塩水105.9gを仕込み、撹拌しながら、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15.0gとペンタエリスリトールトリアクリレート4.0gを予め脱塩水19.0gに分散させた液を添加し、次いで、ジアセトンアクリルアミド 10.0gとアジピン酸ジヒドラジド(ヒドラジド架橋剤)5.15gを添加し、30分撹拌して固形分20%の均一な水性樹脂組成物を得た。添加した3種類のアクリルモノマーの溶解度パラメーターは、平均値で12.8であり、この水性樹脂組成物は、1日静置しても相分離などなく分散安定性は良好であった。
実施例1と同様の装置を使用して、市販アクリル系水溶性樹脂であるダイドール9401(大同化成工業社製(商品名)固形分20%、pH8.6)500.0g、脱塩水105.9gを仕込み、撹拌しながら、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15.0gとペンタエリスリトールトリアクリレート4.0gを予め脱塩水19.0gに分散させた液を添加し、次いで、ジアセトンアクリルアミド 10.0gとアジピン酸ジヒドラジド(ヒドラジド架橋剤)5.15gを添加し、30分撹拌して固形分20%の均一な水性樹脂組成物を得た。添加した3種類のアクリルモノマーの溶解度パラメーターは、平均値で12.8であり、この水性樹脂組成物は、1日静置しても相分離などなく分散安定性は良好であった。
次いで、得られた水性樹脂組成物に過硫酸カリウム1.0gを添加、混合し、ガラス板に塗布して塗膜を作成した。硬化塗膜は、造膜性良好で、均一かつ透明であり、鉛筆硬度は2Hと硬く、且つ、耐水性も優れていた。
比較例3:
実施例2において、市販アクリル系水溶性樹脂であるダイドール9401(大同化成工業社製(商品名)固形分20%、pH8.6)に脱塩水を添加することなく、原液のまま使用した以外は、実施例2と同様にして固形分20%の均一な水性樹脂組成物を得、次いで、硬化塗膜を作成した。硬化塗膜を評価した結果、硬化塗膜にクラックが発生しており、造膜性も不良であった。
実施例2において、市販アクリル系水溶性樹脂であるダイドール9401(大同化成工業社製(商品名)固形分20%、pH8.6)に脱塩水を添加することなく、原液のまま使用した以外は、実施例2と同様にして固形分20%の均一な水性樹脂組成物を得、次いで、硬化塗膜を作成した。硬化塗膜を評価した結果、硬化塗膜にクラックが発生しており、造膜性も不良であった。
比較例4:
実施例2において、市販アクリル系水溶性樹脂であるダイドール9401(大同化成工業社製(商品名)固形分20%、pH8.6)500.0g、脱塩水45.3gを仕込み、且つ、ジアセトンアクリルアミドおよびアジピン酸ジヒドラジドを使用しない以外は実施例2と同様にして固形分20%の均一な水性樹脂組成物を得、次いで、硬化塗膜を作成した。硬化塗膜の造膜性は良好であったが、鉛筆硬度が6Bと低く、耐水性評価では硬化塗膜が白化し不良であった。
実施例2において、市販アクリル系水溶性樹脂であるダイドール9401(大同化成工業社製(商品名)固形分20%、pH8.6)500.0g、脱塩水45.3gを仕込み、且つ、ジアセトンアクリルアミドおよびアジピン酸ジヒドラジドを使用しない以外は実施例2と同様にして固形分20%の均一な水性樹脂組成物を得、次いで、硬化塗膜を作成した。硬化塗膜の造膜性は良好であったが、鉛筆硬度が6Bと低く、耐水性評価では硬化塗膜が白化し不良であった。
実施例3:
撹拌装置を備えた1Lのセパラブルフラスコに、市販アクリル系エマルジョンであるビニゾール1090(大同化成工業社製(商品名)固形分40%、pH2.7)251.9g、脱塩水74.0gを仕込み、28%アンモニア水溶液を加えて液のpHを8.8に調整した。次いで、得られた液に撹拌しながら、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10.0gとペンタエリスリトールトリアクリレート4.0gを予め脱塩水14.0gに分散させた液を添加し、次いで、ジアセトンアクリルアミド 10.0gとアジピン酸ジヒドラジド(ヒドラジド架橋剤)5.15gを添加し、30分撹拌して固形分35%の均一な水性樹脂組成物を得た。添加した3種類のアクリルモノマーの溶解度パラメーターは、平均値で12.6であった。得られた水性樹脂組成物は、1日静置しても相分離などなく分散安定性は良好であった。
撹拌装置を備えた1Lのセパラブルフラスコに、市販アクリル系エマルジョンであるビニゾール1090(大同化成工業社製(商品名)固形分40%、pH2.7)251.9g、脱塩水74.0gを仕込み、28%アンモニア水溶液を加えて液のpHを8.8に調整した。次いで、得られた液に撹拌しながら、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10.0gとペンタエリスリトールトリアクリレート4.0gを予め脱塩水14.0gに分散させた液を添加し、次いで、ジアセトンアクリルアミド 10.0gとアジピン酸ジヒドラジド(ヒドラジド架橋剤)5.15gを添加し、30分撹拌して固形分35%の均一な水性樹脂組成物を得た。添加した3種類のアクリルモノマーの溶解度パラメーターは、平均値で12.6であった。得られた水性樹脂組成物は、1日静置しても相分離などなく分散安定性は良好であった。
次いで、得られた水性樹脂組成物に過硫酸カリウム1.0gを添加混合し、ガラス板に塗布して硬化塗膜を作成した。硬化塗膜は、造膜性が良好で、均一かつ透明であり、鉛筆硬度が2Hと硬く、且つ、耐水性も優れていた。
比較例5:
実施例3において、市販アクリル系エマルジョンであるビニゾール1090(大同化成工業社製(商品名)固形分40%、pH2.7)251.9g、脱塩水32.8gを仕込み、且つ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジアセトンアクリルアミドおよびアジピン酸ジヒドラジドを使用しない以外は、実施例3と同様にして固形分35%の均一な水性樹脂組成物を得、次いで、硬化塗膜を作成した。硬化塗膜を評価した結果、硬化塗膜にクラックが発生しており、造膜性も不良であった。
実施例3において、市販アクリル系エマルジョンであるビニゾール1090(大同化成工業社製(商品名)固形分40%、pH2.7)251.9g、脱塩水32.8gを仕込み、且つ、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジアセトンアクリルアミドおよびアジピン酸ジヒドラジドを使用しない以外は、実施例3と同様にして固形分35%の均一な水性樹脂組成物を得、次いで、硬化塗膜を作成した。硬化塗膜を評価した結果、硬化塗膜にクラックが発生しており、造膜性も不良であった。
比較例6:
実施例3において、市販アクリル系エマルジョンであるビニゾール1090(大同化成工業社製(商品名)固形分40%、pH2.7)251.9g、脱塩水45.9gを仕込み、且つ、ジアセトンアクリルアミドおよびアジピン酸ジヒドラジドを使用しない以外は実施例3と同様にして固形分35%の均一な水性樹脂組成物を得、次いで、硬化塗膜を作成した。硬化塗膜の造膜性は良好であったが、鉛筆硬度は4Bと低く、耐水性評価では硬化塗膜が白化し不良であった。
実施例3において、市販アクリル系エマルジョンであるビニゾール1090(大同化成工業社製(商品名)固形分40%、pH2.7)251.9g、脱塩水45.9gを仕込み、且つ、ジアセトンアクリルアミドおよびアジピン酸ジヒドラジドを使用しない以外は実施例3と同様にして固形分35%の均一な水性樹脂組成物を得、次いで、硬化塗膜を作成した。硬化塗膜の造膜性は良好であったが、鉛筆硬度は4Bと低く、耐水性評価では硬化塗膜が白化し不良であった。
Claims (7)
- 被着体上に合成樹脂エマルジョン(a)と重合性基を有する化合物(b)と架橋剤(c)とから成る水性樹脂組成物を塗布して硬化塗膜を形成する方法であって、重合性基を有する化合物(b)には、溶解度パラメーターが9〜16であって且つ重合性基を有する化合物を使用し、架橋剤(c)の存在下で重合性基を有する化合物(b)を重合させて硬化することを特徴とする水性樹脂硬化塗膜の形成方法。
- 合成樹脂エマルジョン(a)がアクリル系エマルジョンである請求項1に記載の方法。
- 重合性基を有する化合物(b)がアクリルモノマーである請求項1又は2に記載の方法。
- 架橋剤(c)がヒドラジド架橋剤である請求項1に記載の方法。
- 架橋剤(c)がアジピン酸ジヒドラジドである請求項1又は4に記載の方法。
- 水性樹脂組成物がジアセトンアクリルアミドを含有している請求項1〜6の何れかに記載の方法。
- 重合性基を有する化合物の重合が、ラジカル重合、レドックス重合、嫌気重合および酸化重合の何れかで行われる請求項1に記載の方法。
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