本発明の建築建材の中塗り塗料用樹脂エマルションは、前記したように、当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる全単量体成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率が45質量%以上であり、前記エマルション粒子が多層構造を有し、当該多層構造のうち最外層を構成する樹脂の水酸基価が20~90mgKOH/gであり、当該最外層以外の層と最外層との質量比(最外層以外の層/最外層)が50/50~90/10であることを特徴とする。
本発明の建築建材の中塗り塗料用樹脂エマルションは、前記構成を有することから、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する。
なお、前記最外層は、エマルション粒子の最表面に存在する樹脂層を意味する。最外層以外の層は、エマルション粒子が有する多層構造のうち、最表面に存在する樹脂層以外の樹脂層を意味する。例えば、エマルション粒子が内層、中間層および外層を有する場合、最外層は、当該外層を意味し、最外層以外の層は、当該内層および中間層を意味する。
本発明の建築建材の中塗り塗料用樹脂エマルションは、例えば、当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる単量体成分を乳化重合させる際に、全単量体成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率を45質量%以上に調整し、前記エマルション粒子を多層構造で形成させ、当該多層構造のうち最外層を構成する樹脂の水酸基価を20~90mgKOH/gに調整し、当該最外層以外の層と最外層との質量比(最外層以外の層/最外層)を50/50~90/10に調整することによって得ることができる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル」は「アクリル」または「メタクリル」を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」または「メタクリロイル」を意味する。
樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる全単量体成分には、メチル(メタ)アクリレートが含有される。メチル(メタ)アクリレートは、具体的にはメチルアクリレートおよびメチルメタクリレートを意味し、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。メチル(メタ)アクリレートのなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、メチルメタクリレートが好ましい。
前記全単量体成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、45質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。また、前記全単量体成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率は、100質量%以下であるが、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
前記全単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体の含有率は、中塗り塗料の密着性および中塗り塗料の機械安定性を向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、中塗り塗料を低粘度化させる観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、さらに一層好ましくは0.8質量%以下である。
前記エマルション粒子は、多層構造の樹脂層を有する。前記多層構造としては、例えば、2~5層構造などが挙げられる。多層構造のなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、2層構造および3層構造が好ましい。なお、エマルション粒子の各樹脂層の境界は、必ずしも明確である必要がなく、隣接する樹脂層同士が互いに混ざり合っていてもよい。
前記多層構造のうち最外層を構成する樹脂の水酸基価は、20~90mgKOH/gである。最外層を構成する樹脂の水酸基価は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、20mgKOH/g以上、好ましくは25mgKOH/g以上、より好ましくは30mgKOH/g以上、さらに好ましくは35mgKOH/g以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、90mgKOH/g以下であり、耐水性を向上させる観点から、好ましくは85mgKOH/g以下、より好ましくは80mgKOH/g以下、さらに好ましくは75mgKOH/g以下、さらに一層好ましくは60mgKOH/g以下である。
である。
樹脂の水酸基価は、当該樹脂1gに含まれている水酸基に相当する水酸化カリウムの量(mg)を意味し、当該樹脂1gに含まれている水酸基をアセチル化するときに水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)の量(mg)である。樹脂の水酸基価は、水酸基含有単量体として2-ヒドロキシエチルメタクリレート1質量%を含有する単量体成分を重合させることによって調製された樹脂を例にとると、当該樹脂の水酸基価は、式:
〔エマルション粒子を構成する樹脂の水酸基価〕
=〔0.01(エマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる単量体成分における2-ヒドロキシエチルメタクリレートの含有率)/130(2-ヒドロキシエチルメタクリレートの分子量)〕×56100=4.3mgKOH/g
に基づいて求めることができる。樹脂の水酸基価は、当該樹脂の原料として用いられる単量体成分に含まれる水酸基含有単量体の量を調節することによって容易に調整することができる。
最外層以外の層を構成する樹脂の水酸基価は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは0~15mgKOH/g、より好ましくは0~10mgKOH/g、さらに好ましくは0~5mgKOH/gであり、最も好ましくは0mgKOH/gである。なお、最外層以外の層が2層以上を有する場合、当該最外層以外の層を構成する樹脂の水酸基価は、各層を構成する樹脂の水酸基価の合計値である。
前記エマルション粒子を構成する樹脂層全体の水酸基価は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは4mgKOH/g以上、より好ましくは8mgKOH/g以上、さらに好ましくは10mgKOH/g以上である。また、前記エマルション粒子を構成する樹脂層全体の水酸基価は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは25mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下、さらに好ましくは15mgKOH/g以下である。なお、前記樹脂層全体は、前記エマルション粒子に含まれる樹脂全体、換言すれば、前記全単量体成分を乳化重合させることによって得られた樹脂全体を意味する。
前記最外層の水酸基価と当該最外層以外の層の水酸基価との分配比〔最外層の水酸基価/最外層以外の層の水酸基価〕の値は、前記エマルション粒子を構成する樹脂層全体の水酸基価は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8以上であり、その上限値は特に限定されない。
最外層以外の層と最外層との質量比(最外層以外の層/最外層)は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、50/50以上、好ましくは55/45以上、より好ましくは60/40以上、さらに好ましくは65/35以上である。また、最外層以外の層と最外層との質量比(最外層以外の層/最外層)は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、90/10以下、好ましくは85/15以下、より好ましくは80/20以下、さらに好ましくは75/25以下である。
なお、エマルションが内層、中間層および外層の3層構造を有する場合、最外層以外の層は、内層および中間層を有する。最外層以外の層を構成する内層と中間層との質量比(内層/中間層)は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10/90~90/10、より好ましくは20/80、さらに好ましくは30/70~70/30である。
多層構造の樹脂層を有するエマルション粒子は、単量体成分を多段で乳化重合させることによって得ることができる。例えば、2層構造の樹脂層を有するエマルション粒子は、1段目の単量体成分の乳化重合によって単層構造の樹脂層を有するエマルション粒子を調製し、当該単層構造の樹脂層を有するエマルション粒子の存在下で2段目の単量体成分の乳化重合を行なうことによって調製することができる。したがって、2層構造の樹脂層を有するエマルション粒子は、1段目の乳化重合によって形成されたエマルション粒子(内層)の表面に2段目の乳化重合によって形成された層(外層)を有する。
また、3層構造の樹脂層を有するエマルション粒子は、1段目の単量体成分の乳化重合によって単層構造の樹脂層を有するエマルション粒子を調製し、当該単層構造の樹脂層を有するエマルション粒子の存在下で2段目の単量体成分の乳化重合を行なうことによって2層構造の樹脂層を有するエマルション粒子を調製し、当該2層構造の樹脂層を有するエマルション粒子の存在下で3段目の単量体成分の乳化重合を行なうことによって調製することができる。したがって、3層構造の樹脂層を有するエマルション粒子は、1段目の単量体成分の乳化重合によって形成されたエマルション粒子(内層)の表面に2段目の単量体成分の乳化重合によって形成された層(中間層)を有し、当該中間層の表面に3段目の単量体成分の乳化重合によって形成された層(最外層)を有する。
なお、最外層と最外層以外の層との質量比は、各段の乳化重合に使用される単量体成分の質量から求めることができる。例えば、3層構造の樹脂層を有するエマルション粒子の場合、最外層と最外層以外の層との質量比(最外層/最外層以外の層)は、式:〔3段目の単量体成分の質量〕÷〔1段目の単量体成分の質量+2段目の単量体成分の質量〕に基づいて求めることができる。
多層構造の樹脂層を有するエマルション粒子において、内層は、当該エマルション粒子の最内層を意味する。内層は、内層用単量体成分を乳化重合させることによって得ることができる。
内層用単量体成分として、メチル(メタ)アクリレートを含有する単量体成分を用いることができる。
内層用単量体成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率の下限値は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成するとともに、耐水性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上である。内層用単量体成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率の上限値は、100質量%以下であり、メチル(メタ)アクリレート以外の単量体を用いることによる効果を十分に発現させる観点から、98質量%以下であることが好ましい。内層用単量体成分におけるメチル(メタ)アクリレート以外の単量体の含有率は、0質量%以上であり、メチル(メタ)アクリレート以外の単量体を用いることによる効果を十分に発現させる観点から、2質量%以上であることが好ましく、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成するとともに、耐水性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
メチル(メタ)アクリレート以外の単量体としては、例えば、アルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、芳香族系単量体、シラン基含有単量体、窒素原子含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのメチル(メタ)アクリレート以外の単量体のなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、アルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有単量体およびカルボキシル基含有単量体が好ましく、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成するとともに、耐水性に優れた塗膜を形成する観点から、アルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
アルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、前記アルキル基には、脂環構造を有するものを包含する概念のものである。これらのアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのアルキル(メタ)アクリレートのなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよびシクロヘキシルメタクリレートがより好ましい。内層用単量体成分におけるアルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレートの含有率は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、0質量%以上、好ましくは2質量%以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
水酸基含有単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2~4の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートのなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレートがより好ましい。内層用単量体成分における水酸基含有単量体の含有率は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、0質量%以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有脂肪族系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのカルボキシル基含有単量体のなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。内層用単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体の含有率は、0質量%以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成するとともに、耐水性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、tert-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体、アラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7~18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの芳香族系単量体のなかでは、内層用単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体の含有率は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、スチレン系単量体が好ましく、スチレンがより好ましい。
シラン基含有単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシラン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレートなどの(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキソ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのエステル基の炭素数が2~6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのフッ素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
内層用単量体成分を乳化重合させる方法としては、例えば、メタノールなどの低級アルコールなどの水溶性有機溶媒と水とを含む水性媒体、水などの媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下で内層用単量体成分および重合開始剤を滴下させる方法、乳化剤および水を用いてあらかじめ乳化させておいた内層用単量体成分を水または水性媒体に滴下させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分量を考慮して適宜設定すればよい。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤などが挙げられ、これらの乳化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェートなどのアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネートなどのアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸-ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合体、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレートなどのポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの樹脂を構成する単量体のうちの1種類以上の単量体を共重合成分とする樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
また、前記乳化剤として、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、重合性基を有する乳化剤、すなわち、いわゆる反応性乳化剤が好ましく、環境保護の保護を高める観点から、非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましい。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル-アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS-10、アクアロンBC-10など〕、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンKH-10など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSE-10など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10、SR-30など〕、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩〔例えば、日本乳化剤(株)製、商品名:アントックスMS-60など〕、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープER-20など〕、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル〔例えば、第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンRN-20など〕、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン〔例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープNE-10など〕などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの反応性乳化剤は、いずれもそれぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
内層用単量体成分100質量部あたりの乳化剤の量は、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
内層用単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
内層用単量体成分100質量部あたりの重合開始剤の量は、重合速度を高め、未反応の内層用単量体成分の残存量を低減させる観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されない。その添加方法としては、例えば、一括仕込み、分割仕込み、連続滴下などが挙げられる。また、重合反応の終了時期を早める観点から、内層用単量体成分を反応系内に添加する終了前またはその終了後に、重合開始剤の一部をフラスコ内に添加してもよい。
なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
また、反応系内には、必要により、例えば、tert-ドデシルメルカプタンなどのチオール基を有する化合物などの連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤などの添加剤をフラスコ内に適量で添加してもよい。添加剤の量は、その種類によって異なるので一概には決定することができないが、通常、内層用単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.1~3質量部である。
内層用単量体成分を乳化重合させる際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
内層用単量体成分を乳化重合させる際の重合温度は、特に限定がないが、通常、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~95℃である。重合温度は、一定であってもよく、重合反応の途中で変化させてもよい。
内層用単量体成分を乳化重合させる重合時間は、特に限定がなく、重合反応の進行状況に応じて適宜設定すればよいが、通常、1~5時間程度である。
以上のようにして内層用単量体成分を乳化重合させることにより、内層を形成するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションが得られる。
内層を構成する樹脂は、架橋構造を有していてもよい。内層を構成する樹脂の重量平均分子量は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。内層を構成する樹脂の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC-8120GPC、カラム:TSKgel G-5000HXLとTSKgel GMHXL-Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
内層を構成する樹脂の酸価は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは0~20mgKOH/g、より好ましくは0~15mgKOH/g、さらに好ましくは0~10mgKOH/gである。
樹脂の酸価は、当該樹脂の単位質量に含まれているCOOH基(カルボキシル基)の量を意味し、当該樹脂1gに含まれているカルボキシル基を中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)の量(mg)である。エマルション粒子を構成する樹脂の酸価は、例えば、カルボキシル基含有単量体としてメタクリル酸を1質量%含有する単量体成分を重合させることによって調製された樹脂を例にとると、当該樹脂の酸価は、式:
〔エマルション粒子を構成する樹脂の酸価〕
=〔0.01(エマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる単量体成分におけるメタクリル酸の含有率)/86(メタクリル酸の分子量)〕×56100
=6.5mgKOH/g
に基づいて求めることができる。
内層を構成する樹脂のガラス転移温度は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上、さらに一層好ましくは80℃以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは115℃以下、さらに好ましくは110℃以下、さらに一層好ましくは105℃以下である。
樹脂のガラス転移温度は、当該樹脂の原料として用いられる単量体成分に用いられる単量体の種類およびその量を調整することによって容易に調整することができる。樹脂のガラス転移温度を考慮して、当該樹脂の原料として用いられる単量体成分の組成を決定することができる。
本明細書において、樹脂のガラス転移温度は、当該樹脂を構成する単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
〔式中、Wmは樹脂を構成する単量体成分における単量体mの含有率(質量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す〕
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められた温度を意味する。
本明細書においては、エマルション粒子を構成する樹脂のガラス転移温度は、特に断りがない限り、前記フォックス(Fox)に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。複数の樹脂層を有するエマルション粒子全体のガラス転移温度は、多段乳化重合の際に用いられたすべての樹脂層の原料として用いられた全単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、前記フォックス(FOX)の式に基づいて求められたガラス転移温度を意味する。なお、特殊単量体、多官能単量体などのようにガラス転移温度が不明の単量体については、単量体成分における当該ガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10質量%以下である場合、ガラス転移温度が判明している単量体のみを用いてガラス転移温度が求められる。単量体成分におけるガラス転移温度が不明の単量体の合計量が質量分率で10質量%を超える場合には、樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)、示差熱量分析(DTA)、熱機械分析(TMA)などによって求められる。
樹脂のガラス転移温度は、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、2-エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では-70℃、n-ブチルアクリレートの単独重合体では-56℃、シクロヘキシルメタクリレートの単独重合体では83℃、tert-ブチルメタクリレートの単独重合体では107℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの単独重合体では55℃、アクリル酸の単独重合体では95℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、スチレンの単独重合体では100℃である。
多層構造の樹脂層を有するエマルション粒子が内層と外層との間に中間層を有する場合、中間層は、内層用単量体成分を乳化重合させることによって得られたエマルション粒子の存在下で中間層用単量体成分を乳化重合させることによって得ることができる。
中間層用単量体成分として、メチル(メタ)アクリレートを含有する単量体成分を用いることができる。
中間層用単量体成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率の下限値は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成するとともに、耐水性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。中間層用単量体成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率の上限値は、100質量%以下であり、メチル(メタ)アクリレート以外の単量体を用いることによる効果を十分に発現させる観点から好ましくは98質量%以下、より好ましくは90質量%以下、より一層好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、さらに一層好ましくは60質量%以下である。内層用単量体成分におけるメチル(メタ)アクリレート以外の単量体の含有率は、0質量%以上であり、メチル(メタ)アクリレート以外の単量体を用いることによる効果を十分に発現させる観点から好ましくは2質量%以上、より好ましくは10質量%以上、より一層好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに一層好ましくは40質量%以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成するとともに、耐水性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
メチル(メタ)アクリレート以外の単量体としては、例えば、アルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、芳香族系単量体、シラン基含有単量体、窒素原子含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのメチル(メタ)アクリレート以外の単量体としては、前記したものと同じものを例示することができる。これらのメチル(メタ)アクリレート以外の単量体のなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、アルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体および芳香族系単量体が好ましく、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成するとともに、耐水性に優れた塗膜を形成する観点から、アルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレートおよびカルボキシル基含有単量体がより好ましい。
アルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレートのなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよびシクロヘキシルメタクリレートがより好ましい。中間層用単量体成分におけるアルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレートの含有率は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは10質量%以上、より一層好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに一層好ましくは40質量%以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
水酸基含有単量体のなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレートがより好ましい。中間層用単量体成分における水酸基含有単量体の含有率は、0質量%以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
カルボキシル基含有単量体のなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。中間層用単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体の含有率は、0質量%以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成するとともに、耐水性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
芳香族系単量体のなかでは、内層用単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体の含有率は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、スチレン系単量体が好ましく、スチレンがより好ましい。中間層用単量体成分における芳香族系単量体の含有率は、0質量%以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成するとともに、耐水性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
中間層用単量体成分を乳化重合させる方法は、内層用単量体成分を乳化重合させる方法と同様であればよい。中間層用単量体成分を乳化重合させることにより、内層および中間層を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションが得られる。
中間層を構成する樹脂は、架橋構造を有していてもよい。中間層を構成する樹脂の重量平均分子量は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。中間層を構成する樹脂の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
中間層を構成する樹脂の酸価は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは3~20mgKOH/g、より好ましくは5~15mgKOH/gである。
中間層を構成する樹脂のガラス転移温度は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは-60℃以上、より好ましくは-50℃以上、さらに好ましくは-40℃以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは20℃以下、さらに一層好ましくは10℃以下である。
以上のようにして内層および中間層を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションを得ることができる。
エマルション粒子の最外層は、内層を有するエマルション粒子または内層と中間層を有するエマルション粒子の存在下で最外層用単量体成分を乳化重合させることによって得ることができる。
なお、内層または中間層を形成させた後、最外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の樹脂からなる層が形成されていてもよい。したがって、本発明においては、内層または中間層を形成させた後、最外層を形成させる前に、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、他の樹脂からなる層を形成させる操作が含まれていてもよい。
最外層用単量体成分として、メチル(メタ)アクリレートを含有する単量体成分を用いることができる。
最外層用単量体成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率の下限値は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成するとともに、耐水性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。最外層用単量体成分におけるメチル(メタ)アクリレートの含有率の上限値は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。内層用単量体成分におけるメチル(メタ)アクリレート以外の単量体の含有率は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成するとともに、耐水性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
メチル(メタ)アクリレート以外の単量体としては、例えば、アルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、芳香族系単量体、シラン基含有単量体、窒素原子含有単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのメチル(メタ)アクリレート以外の単量体としては、前記したものと同じものを例示することができる。これらのメチル(メタ)アクリレート以外の単量体のなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、アルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有単量体およびカルボキシル基含有単量体が好ましく、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、アルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレートおよび水酸基含有単量体がより好ましい。
アルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレートのなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびシクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよびシクロヘキシルメタクリレートがより好ましい。最外層用単量体成分におけるアルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレートの含有率は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
水酸基含有単量体のなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレートがより好ましい。最外層用単量体成分における水酸基含有単量体の含有率は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
カルボキシル基含有単量体のなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。最外層用単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体の含有率は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
本発明においては、エマルション粒子に紫外線安定性や紫外線吸収性を付与する観点から、本発明の目的が阻害されない範囲内で、紫外線安定性単量体、紫外線吸収性単量体などを前記単量体成分に含有させてもよい。
最外層用単量体成分を乳化重合させる方法は、内層用単量体成分を乳化重合させる方法と同様であればよい。最外層用単量体成分を乳化重合させることにより、内層および最外層を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルション、または内層、中間層および最外層を有するエマルション粒子を含有する樹脂エマルションが得られる。
最外層を構成する樹脂は、架橋構造を有していてもよい。内層を構成する樹脂の重量平均分子量は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、さらに好ましくは55万以上、特に好ましくは60万以上である。内層を構成する樹脂の重量平均分子量の上限値は、架橋構造を有する場合、その重量平均分子量を測定することが困難なため、特に限定されないが、架橋構造を有しない場合には、造膜性を向上させる観点から、500万以下であることが好ましい。
最外層を構成する樹脂の酸価は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは1~35mgKOH/g、より好ましくは1~30mgKOH/g、より一層好ましくは1.5~25mgKOH/g、さらに好ましくは2~20mgKOH/g、さらに一層好ましくは2~10mgKOH/gである。
最外層を構成する樹脂のガラス転移温度は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは-20℃以上、より好ましくは-15℃以上、さらに好ましくは-10℃以上、さらに一層好ましくは0℃以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下、さらに一層好ましくは25℃以下である。
最外層を構成している樹脂層の溶解パラメーター(以下、SP値ともいう)は、内層を構成している樹脂層のSP値よりも高いことが、塗膜の可撓性および造膜性を向上させる観点から好ましい。また、最外層以外の層のSP値と最外層とのSP値の差(絶対値)は、エマルション粒子内で層分離構造を形成させる観点から、大きいことが好ましい。
SP値は、ヒルデブラント(Hildebrand)によって導入された正則溶液論により定義される値であり、2成分系溶液の溶解度の目安にもなっている。一般に、SP値が近い物質同士は互いに混ざりやすい傾向がある。したがって、SP値は、溶質と溶媒との混ざりやすさを判断する目安にもなっている。
エマルション粒子全体のガラス転移温度は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは-10℃以上、より好ましくは-5℃以上、さらに好ましくは0℃以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは55℃以下である。
エマルション粒子の平均粒子径は、エマルション粒子自体の機械的安定性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。
なお、本明細書において、エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクル・サイジング・システムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380)を用いて測定された体積平均粒子径を意味する。
樹脂エマルションにおける不揮発分量は、生産性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
樹脂エマルションにおける不揮発分量は、樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発分とし、式:
〔樹脂エマルションにおける不揮発分量(質量%)〕
=(〔残渣の質量〕÷〔樹脂エマルション1g〕)×100
に基づいて求められた値を意味する。
また、樹脂エマルションの最低造膜温度は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは25~30℃である。樹脂エマルションの最低造膜温度は、例えば、エマルション粒子全体のガラス転移温度や最外層のガラス転移温度を調節することによって容易に調整することができる。
なお、本明細書において、樹脂エマルションの最低造膜温度は、熱勾配試験機の上に置いたガラス板上に樹脂エマルションを厚さが0.2mmとなるようにアプリケーターで塗工し、クラックが生じたときの温度を意味する。
以上のようにして得られる樹脂エマルションは、建築建材用中塗り塗料に好適に用いることができる。
本発明の建築建材用中塗り塗料は、前記樹脂エマルションを含有することを特徴とする。本発明の建築建材用中塗り塗料は、前記樹脂エマルションを含有するので、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成することから、例えば、建築物、窯業系建材などの建築建材の下塗り層と上塗り層との間で使用される中塗り塗料として好適に使用することができる。
本発明の中塗り塗料は、前記中塗り塗料用樹脂エマルションのみを含有するものであってもよく、必要により、例えば、顔料、添加剤などを含有していてもよい。
顔料としては、有機顔料および無機顔料が挙げられ、これらの顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、アゾメチン顔料、メチン顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イミノイソインドリン顔料、イミノイソインドリノン顔料、キナクリドンレッドやキナクリドンバイオレットなどのキナクリドン顔料、フラバントロン顔料、インダントロン顔料、アントラピリミジン顔料、カルバゾール顔料、モノアリーライドイエロー、ジアリーライドイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ、キノフタロン顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化鉄、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、フェロシアン化第二鉄(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、クロム酸鉛などをはじめ、雲母(マイカ)、クレー、アルミニウム粉末、タルク、ケイ酸アルミニウムなどの扁平形状を有する顔料、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの体質顔料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの無機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。顔料のなかでは、塗膜の隠蔽性および経済性を向上させる観点から、無機顔料が好ましく、そのなかでも二酸化チタンがより好ましい。
樹脂エマルションおよび顔料の合計固形分における顔料の固形分含量は、塗膜硬度を高めるとともに、形成される塗膜の意匠性または隠蔽性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに一層好ましくは45質量%以上であり、造膜性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
なお、樹脂エマルションおよび顔料の合計固形分における顔料の固形分含量は、式:
[樹脂エマルションおよび顔料の合計固形分における顔料の固形分含量(質量%)]
=[(顔料の固形分)/(樹脂エマルションの固形分+顔料の固形分)]×100
に基づいて求められた値を意味する。
添加剤としては、例えば、成膜助剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、充填剤、レベリング剤、抗酸化剤、重合禁止剤、骨材、カップリング剤、抗菌剤、金属不活性化剤、湿潤剤、補強剤、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防錆剤、防曇剤、防食剤、防炎剤、滴下防止剤、防藻剤、防腐剤、老化防止剤、防カビ剤、難燃剤、耐熱安定剤、艶消し剤、加工安定剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。添加剤の量は、当該添加剤の種類によって異なるので一概には決定することができないことから、当該添加剤の種類に応じて適宜決定することが好ましい。
なお、本発明の中塗り塗料には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、必要により、本発明の建築建材の中塗り塗料用樹脂エマルション以外の他の樹脂エマルションが含まれていてもよい。
本発明の中塗り塗料は、例えば、本発明の中塗り塗料用樹脂エマルション、必要により、顔料、添加剤、水などを適宜混合することによって容易に調製することができる。
本発明の中塗り塗料における不揮発分の含有率は、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、取り扱い性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
本発明の中塗り塗料の粘度は、取り扱い性および塗膜の外観を向上させる観点から、好ましくは4000mPa・s以下、より好ましくは3000mPa・s以下、さらに好ましくは2000mPa・s以下である。なお、中塗り塗料の粘度は、以下の「(4)塗料の粘度」の欄に記載の方法で測定したときの値である。
本発明の中塗り塗料は、不揮発分含量が高くても低粘度を有し、取り扱い性に優れるとともに塗膜の外観に優れ、塗膜の厚さが大きくても乾燥性に優れている。
したがって、本発明の中塗り塗料は、建築建材の中塗りに好適に使用することができる。建築建材としては、例えば、窯業系建材、スレート板、フレキシブルボード、サイディングボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボードなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。窯業系基材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料などを添加し、得られた混合物を成形し、得られた成形体を養生し、硬化させることによって得られる。
窯業系建材は、金属板と対比して、加熱時における温度の上昇勾配が小さいことから、当該窯業系建材に塗料を塗布することによって形成された塗膜の乾燥性が低いと考えられている。これに対して、本発明の中塗り塗料によって形成された塗膜は、乾燥性に優れている。
本発明の中塗り塗料は、当該窯業系建材以外にも、例えば、金属製サイディングボードなどの金属製建材にも使用することができる。
本発明の積層塗膜は、図1に示されるように、下塗り層、中塗り層および上塗り層を有する積層塗膜であり、前記中塗り層が前記中塗り塗料で形成されていることを特徴とする。
図1は、本発明の積層塗膜の概略断面図である。図1に示されるように、建築建材1の表面上に下塗り層2が形成され、当該下塗り層2上に中塗り層3が形成され、当該中塗り層3上に上塗り層4が形成されている。
下塗り層2は、プライマー処理層またはシーラー層とも称呼されている。下塗り層2は、基材との密着性を付与するための層である。
中塗り層3は、下塗り層2を隠蔽したり、塗膜を着色したり、塗膜の意匠性を高めるための層である。中塗り層3には、下塗り層2を隠蔽し、塗膜を着色し、塗膜の意匠性を高めるために、顔料を含有させることが好ましい。
上塗り層4は、例えば、太陽光、風雨、汚染物質などの環境因子から被塗物を保護するための層である。上塗り層4は、通常、透明~半透明で使用される。
本発明の積層塗膜は、例えば、下塗り塗料を基材などに塗布し、乾燥させることによって下塗り層2を形成させ、形成された下塗り層2上に本発明の中塗り塗料を塗布し、乾燥させることによって中塗り層3を形成させ、形成された中塗り層3上に上塗り塗料を塗布し、乾燥させることによって得ることができる。
下塗り塗料としては、例えば、アクリル系水性塗料、セルロース系水性塗料、ポリウレタン系水性塗料、ポリエステル系水性塗料、ポリエーテルポリオール系水性塗料、ポリアミド系水性塗料、エポキシ樹脂系水性塗料、無機系水性塗料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの下塗り塗料のなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、アクリル系水性塗料が好ましい。なお、前記下塗り塗料には、必要により、顔料、添加剤などが含まれていてもよい。顔料および添加剤は、本発明の中塗り塗料に用いられる顔料および添加剤と同様のものを例示することができる。
下塗り層2は、例えば、基材の表面に下塗り塗料を塗布することによって形成することができる。下塗り塗料を塗布する方法としては、例えば、刷毛、コテ、バーコーター、アプリケーター、エアスプレー、エアレススプレー、ロールコーター、フローコーターなどを用いた塗布方法が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。下塗り塗料は、1層のみで形成されていてもよく、重ね塗りによって2層以上が形成されていてもよい。
下塗り塗料で形成された中塗り層3は、例えば、50~200℃程度の温度に加熱することによって乾燥させることができる。乾燥された下塗り層2の厚さは、通常、5~50μm程度である。
次に、下塗り層2上に本発明の中塗り塗料が塗布される。中塗り塗料を塗布する方法としては、例えば、刷毛、コテ、バーコーター、アプリケーター、エアスプレー、エアレススプレー、ロールコーター、フローコーターなどを用いた塗布方法が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。中塗り塗料は、1層のみで形成されていてもよく、重ね塗りによって2層以上が形成されていてもよい。
例えば、積層塗膜が形成された窯業系建材を工場の製造ラインで加熱乾燥させる場合、当該窯業系建材を加熱乾燥させる際の雰囲気温度は、50~200℃程度であることが好ましい。当該窯業系建材の加熱乾燥に要する時間は、前記雰囲気温度によって異なるので一概には決定することができないが、通常、5~30分間程度である。
乾燥された中塗り層3の厚さは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、好ましくは65~250μm、より好ましくは80~180μm、さらに好ましくは100~160μmである。
中塗り層3の厚さを大きくする方法としては、例えば、(1)中塗り塗装および加熱乾燥を繰り返すことによって塗膜を積層させる方法、(2)中塗り塗料の塗布量を多くし、加熱乾燥させる方法、(3)不揮発分含量が高い中塗り塗料を塗布する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
なお、従来、既存の製造設備および製造工程を用いて塗膜の厚さが大きな中塗り層3を形成させる方法の開発が望まれているが、本発明の中塗り塗料を用い、前記(2)の方法または前記(3)の方法を採用した場合には、既存の製造設備および製造工程を用いて塗膜の厚さが大きい中塗り層3を形成させることができる。
次に、中塗り層3上に上塗り塗料が塗布される。上塗り塗料としては、例えば、アクリル系水性塗料、セルロース系水性塗料、ポリウレタン系水性塗料、ポリエステル系水性塗料、ポリエーテルポリオール系水性塗料、ポリアミド系水性塗料、エポキシ樹脂系水性塗料、フッ素系水性塗料、無機系水性塗料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの上塗り塗料のなかでは、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成する観点から、アクリル系水性塗料が好ましい。なお、前記上塗り塗料には、必要により、顔料、添加剤などが含まれていてもよい。顔料および添加剤は、本発明の中塗り塗料に用いられる顔料および添加剤と同様のものを例示することができる。
上塗り層4は、例えば、中塗り層3上に上塗り塗料を塗布することによって形成することができる。中塗り層3上に上塗り塗料を塗布する方法としては、例えば、刷毛、コテ、バーコーター、アプリケーター、エアスプレー、エアレススプレー、ロールコーター、フローコーターなどを用いた塗布方法が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。上塗り塗料は、1層のみで形成されていてもよく、重ね塗りによって2層以上が形成されていてもよい。
上塗り塗料で形成された上塗り層4は、例えば、50~200℃程度の温度に加熱することによって乾燥させることができる。乾燥された上塗り層4の厚さは、通常、10~60μm程度である。なお、前記上塗り塗料には、必要により、顔料、添加剤などが含まれていてもよい。顔料および添加剤は、本発明の建築建材用中塗り塗料に用いられる顔料および添加剤と同様のものを例示することができる。
上塗り塗料を塗布する方法としては、例えば、刷毛、コテ、バーコーター、アプリケーター、エアスプレー、エアレススプレー、ロールコーター、フローコーターなどを用いた塗布方法が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
以上のようにして形成される下塗り層2、中塗り層3および上塗り層4を有する積層塗膜の乾燥後の厚さは、通常、65~360μm程度である。
本発明の積層塗膜は、前記中塗り塗料からなる中塗り層3を有するので、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れていることから、例えば、建築物の外装、窯業系建材、金属製建材などの建築建材1に好適に使用することができる。
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味する。
実施例1
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1500部を仕込んだ。
滴下ロートに脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10〕の25%水溶液150部、2-エチルヘキシルアクリレート100部、シクロヘキシルメタクリレート50部およびメチルメタクリレート850部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうちの74部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、過硫酸カリウムの5%水溶液50部をフラスコ内に添加することにより、重合を開始した。
次に、1段目滴下用プレエマルションの残部を120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で60分間維持した。
引き続いて脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10〕の25%水溶液150部、2-エチルヘキシルアクリレート410部、ブチルアクリレート100部、ヒドロキシエチルメタクリレート50部、メチルメタクリレート430部、アクリル酸5部およびメタクリル酸5部からなる2段目滴下用プレエマルションと過硫酸カリウムの5%水溶液50部を120分間にわたってフラスコ内に均一に滴下した。滴下終了後、80℃で60分間フラスコの内容物を維持し、25%アンモニア水を添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュ(JISメッシュ、以下同じ)の金網で濾過することにより、不揮発分量が50質量%である建築建材の中塗り塗料用樹脂エマルションを得た。当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、平均粒子径が150nmの2層構造を有し、エマルション粒子全体のガラス転移温度は27℃であった。
実施例2および3
実施例1で使用した単量体成分を表1に示す単量体成分に変更したこと以外は、実施例1と同様にして建築建材の中塗り塗料用樹脂エマルションを得た。当該樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該樹脂エマルションの性質を表1および表2に示す。
実施例4
滴下ロート、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に脱イオン水1500部を仕込んだ。
滴下ロ-トに脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10〕の25%水溶液150部、2-エチルヘキシルアクリレート20部、シクロヘキシルメタクリレート10部、メチルメタクリレート550部、tert-ブチルメタクリレート10部およびブチルアクリレート10部からなる1段目滴下用プレエマルションを調製し、そのうちの74部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、過硫酸カリウムの5%水溶液50部をフラスコ内に添加することにより、重合反応を開始した。
次に、1段目滴下用プレエマルションの残部と過硫酸カリウムの5%水溶液10部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を120分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、80℃で60分間フラスコの内容物を維持した。
引き続いて脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10〕の25%水溶液150部、2-エチルヘキシルアクリレート540部、ブチルアクリレート100部、メチルメタクリレート100部、シクロヘキシルメタクリレート30部、スチレン22部、アクリル酸6部およびメタクリル酸2部からなる2段目滴下用プレエマルションと過硫酸カリウムの5%水溶液10部を120分間にわたってフラスコ内に均一に滴下した。滴下終了後、80℃で60分間フラスコの内容物を維持し、25%アンモニア水を8部添加した。
引き続いて、脱イオン水163部、乳化剤〔(株)ADEKA製、商品名:アデカリアソープSR-10〕の25%水溶液150部、2-エチルヘキシルアクリレート180部、ブチルアクリレート60部、メチルメタクリレート324部、アクリル酸4部、メタクリル酸2部およびヒドロキシエチルメタクリレート30部からなる3段目滴下用プレエマルションと過硫酸カリウムの5%水溶液10部を120分間にわたってフラスコ内に均一に滴下した。滴下終了後、80℃で60分間フラスコの内容物を維持し、25%アンモニア水を添加し、pHを9に調整することにより、重合反応を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することにより、不揮発分量が50質量%である建築建材の中塗り塗料用樹脂エマルションを得た。当該樹脂エマルションに含まれるエマルション粒子は、平均粒子径が150nmの3層構造を有し、エマルション粒子全体のガラス転移温度は0℃であった。
実施例5~8
実施例4で使用した単量体成分を表1に示す単量体成分に変更したこと以外は、実施例4と同様にして建築建材の中塗り塗料用樹脂エマルションを得た。当該樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該樹脂エマルションの性質を表1および表2に示す。
比較例1および2
実施例1で使用した単量体成分を表1に示す単量体成分に変更したこと以外は、実施例1と同様にして建築建材の中塗り塗料用樹脂エマルションを得た。当該樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該樹脂エマルションの性質を表1および表2に示す。
比較例3および4
実施例4で使用した単量体成分を表1に示す単量体成分に変更したこと以外は、実施例4と同様にして建築建材の中塗り塗料用樹脂エマルションを得た。当該樹脂エマルションに用いられた単量体成分の組成および当該樹脂エマルションの性質を表1および表2に示す。
なお、表1および表2に記載の略号および用語は、以下のことを意味する。
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
BA:ブチルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
t-BMA:tert-ブチルメタクリレート
St:スチレン
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
Tg:エマルション粒子を構成する各樹脂層のガラス転移温度(単位:℃)
Acid:エマルション粒子を構成する各樹脂層の酸価(単位:mgKOH/g)
OH:エマルション粒子を構成する各樹脂層の水酸基価(単位:mgKOH/g)
総OH価:エマルション粒子を構成する樹脂層全体の水酸基価(単位:mgKOH/g)
外層OH/最外層以外の層OH:最外層を構成する樹脂層と最外層以外の樹脂との水酸基価の分配比〔最外層を構成する樹脂層の水酸基価/最外層以外の樹脂の水酸基価〕の値
総MMA量:エマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる全単量体成分におけるMMAの含有率(単位:質量%)
総カルボキシル基含有単量体量:エマルション粒子を構成する樹脂の原料として用いられる全単量体成分におけるカルボキシル基含有単量体の含有率(単位:質量%)
層構造:エマルション粒子を構成している樹脂層の数
内層Tg:エマルション粒子が2層構造を有する場合、樹脂層1のガラス転移温度(単位:℃)、エマルション粒子が3層構造を有する場合、樹脂層1のガラス転移温度(単位:℃)
中間層Tg:エマルション粒子が3層構造を有する場合、樹脂層2のガラス転移温度(単位:℃)
最外層Tg:エマルション粒子が2層構造を有する場合、樹脂層2のガラス転移温度(単位:℃)、エマルション粒子が3層構造を有する場合、樹脂層3のガラス転移温度(単位:℃)
全体Tg:エマルション粒子全体のガラス転移温度(単位:℃)
不揮発分量:樹脂エマルションにおける不揮発分量(単位:質量%)
pH:樹脂エマルションのpH
粒子径:エマルション粒子の平均粒子径(単位:nm)
表1において、樹脂層1~樹脂層3は、その順序で形成されていることを示す。表1の樹脂層3の欄に記載の「-」は、樹脂層3が形成されていないことを示す。
実験例1
脱イオン水210部、分散剤〔花王(株)製、商品名:デモールEP〕60部、分散剤〔第一工業製薬(株)製、商品名:ディスコートN-14〕50部、湿潤剤〔花王(株)製、商品名:エマルゲンLS-106〕10部、プロピレングリコール60部、酸化チタン〔石原産業(株)製、品番:CR-95〕1000部およびガラスビーズ(直径:1mm)200部をホモディスパーで回転速度3000回/分にて60分間分散させることにより、白色ペーストを調製した。当該白色ペーストを100メッシュの金網で濾過した後、中塗り塗料に使用した。
各実施例または各比較例で得られた中塗り塗料用樹脂エマルション100部に、成膜助剤として2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS-12〕とブチルセロソルブを等体積で混合することによって得られた混合溶液10部を添加し、ホモディスパーで回転速度1500回/分にて10分間撹拌した後、前記で得られた白色ペースト230部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を添加し、増粘剤〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットWR-503A〕を1.5部添加し、その状態で30分間撹拌することにより、中塗り塗料を得た。得られた中塗り塗料の不揮発分率は、35.0質量%であった。
前記で得られた中塗り塗料を用い、塗膜外観、厚膜の塗膜の乾燥性、泡噛み性、塗料の粘度および機械的安定性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表3に示す。
(1)塗膜外観
スレート板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:6mm〕にシーラー〔エスケー化研(株)製、商品名:EXシーラー〕をエアスプレーで80g/m2の塗布量で均一に塗布し、風速3m、100℃のジェットオーブン中で10分間乾燥させることにより、下塗り層を形成させた。
次に、前記で得られた中塗り塗料をエアスプレーで前記スレート板下塗り層上に120g/m2の塗布量で均一に塗布し、風速3m、100℃のジェットオーブン中で10分間乾燥させることにより、中塗り層が形成された試験板Xを作製した。
試験板Xに形成された中塗り層の表面を目視で観察するとともに、デジタルマイクロスコープ〔(株)キーエンス製、商品名:VHX-2000〕で観察し、以下の評価基準に基づいて塗膜外観を評価した。
(評価基準)
◎:目視およびデジタルマイクロスコープ(倍率:400倍)で観察したが、乾燥収縮による割れが中塗り層の表面に確認されない。
〇:目視では乾燥収縮による割れが中塗り層の表面に確認されないが、デジタルマイクロスコープ(倍率:400倍)で観察したときに乾燥収縮による割れが中塗り層の表面に確認される。
×:目視で乾燥収縮による割れが中塗り層の表面に確認される。
(2)厚膜の塗膜の乾燥性
厚膜の塗膜の乾燥性として、以下のブロッキング性1、ブロッキング性2および揮発分残存率を評価した。
〔耐ブロッキング性1〕
前記で得られた試験板X2枚を用意し、各試験板Xを60℃の雰囲気中で1時間放置した後、各試験板Xの中塗り層が形成されている面同士を重ね合わせ、その上に300g/cm2の荷重をかけ、その状態で60℃の温度にて24時間静置させた後、各試験板Xを引き剥がしたときの中塗り層の表面状態を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて耐ブロッキング性1を評価した。
(評価基準)
◎:各試験板Xを引き剥がすときに抵抗がまったくない。
〇:各試験板Xを引き剥がすときに抵抗があるが、引き剥がした後に塗膜の剥がれがない。
×:各試験板Xを引き剥がすときに抵抗があり、引き剥がした後に塗膜の剥がれがある。
なお、前記評価基準において、◎の評価では塗膜が乾燥性に優れていることから剥がしたときに抵抗がまったくなく、○の評価では塗膜の乾燥性が低く、揮発分が塗膜に残存していることから剥がすときに抵抗があり、×の評価では乾燥性が著しく低く、塗膜に残存している揮発分が塗膜を可塑化していることから剥がすときに抵抗があるとともに、剥がした後に塗膜の剥がれがある。
〔耐ブロッキング性2〕
樹脂エマルション〔(株)日本触媒製、商品名:ユーダブルE-771SI〕110部、脱イオン水46部、ブチルセロソルブ3部、2,2,4-トリメチルー1,3-ペンタンジオールイソブチレート〔JNC(株)製、品番:CS-12〕1部、25%安水0.5部および消泡剤〔サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ8034L〕0.5部を混合し、クレーブス単位粘度計(ブルックフィールド社製、品番:KU-1)を用いて25℃で測定したときの粘度が60KUになるように、得られた混合溶液に増粘剤〔(株)日本触媒製、商品名:アクリセットWR-503A〕を添加し、30分間攪拌することにより、上塗り塗料を調製した。
前記で得られた試験板Xを用い、中塗り層上に前記で得られた上塗り塗料をエアスプレーで60g/m2の塗布量で均一に塗布し、風速3m、100℃のジェットオーブン中で10分間乾燥させることにより、下塗り層、中塗り層および上塗り層を有する試験板Yを作製した。
前記で得られた試験板Y2枚を用意し、各試験板Yを60℃の雰囲気中で1時間放置した後、各試験板Yの上塗り層が形成されている面同士を重ね合わせ、その上に300g/cm2の荷重をかけ、その状態で60℃の温度にて24時間静置させた後、各試験板Yを引き剥がしたときの上塗り層の状態を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて耐ブロッキング性2を評価した。
(評価基準)
◎:各試験板Yを引き剥がすときに抵抗がまったくない。
〇:各試験板Yを引き剥がすときに抵抗があるが、引き剥がした後に上塗り層に剥がれがない。
×:各試験板Yを引き剥がすときに抵抗があり、引き剥がした後に上塗り層に剥がれがある。
なお、前記評価基準において、◎の評価では塗膜が乾燥性に優れていることから剥がしたときに抵抗がまったくなく、○の評価では塗膜の乾燥性が低く、揮発分が塗膜に残存していることから剥がすときに抵抗があり、×の評価では乾燥性が著しく低く、塗膜に残存している揮発分が塗膜を可塑化していることから剥がすときに抵抗があるとともに、剥がした後に塗膜の剥がれがある。
〔揮発分残存性〕
ガラス板〔日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:2mm〕の初期重量をW0として測定した。
中塗り塗料を前記ガラス板にエアスプレーで120g/m2の塗布量で均一に塗布し、未乾燥時の前記ガラス板の質量W1を測定した。未乾燥時の質量W1を測定した後、風速3m、100℃のジェットオーブン中で前記ガラス板を5分間乾燥させた後の前記ガラス板の質量W2を測定した。さらに風速3m、150℃のジェットオーブン中で前記ガラス板を2時間乾燥させた後の前記ガラス板の質量W3を測定し、式:
[揮発分残存率(%)]
=[{(W2-W0)-(W3-W0)}÷(W1-W0)]×100
に基づいて揮発分残存率を算出し、以下の評価基準に基づいて揮発分残存性を評価した。
(評価基準)
◎:揮発分残存率が3.5%未満
〇:揮発分残存率が3.5%以上、5%未満
×:揮発分残存率が5%以上
(3)泡噛み性
前記で得られた試験板Xの中塗り層からの泡の発生状態(塗膜の泡噛み)を目視で観察するとともに、デジタルマイクロスコープ〔(株)キーエンス製、商品名:VHX-2000〕で観察し、以下の評価基準に基づいて塗膜の泡噛み性を評価した。
(評価基準)
◎:目視およびデジタルマイクロスコープ(倍率:400倍)で観察したが、塗膜の泡噛みが確認されない。
〇:目視では塗膜の泡噛みが確認されないが、デジタルマイクロスコープ(倍率:400倍)で観察したときに塗膜の泡噛みが確認される。
×:目視で塗膜の泡噛みが確認される。
(4)塗料の粘度
中塗り塗料を密閉容器内に入れ、室温で1日間養生させた後、BM粘度計(東機産業製、品番:TVB-10M)を用い、回転速度30rpmでの25℃における粘度を測定し、以下の評価基準に基づいて塗料の粘度を評価した。
(評価基準)
◎:粘度が2000mPa・s以下である。
〇:粘度が2000mPa・sを超え、5000mPa・s以下である。
×:粘度が5000mPa・sを超える。
(5)機械的安定性
300メッシュの金網で濾過した中塗り塗料50gにマーロン安定度試験機〔熊谷理機工業(株)製、品番:No2312-1〕で荷重10kgの負荷を加えて10分間試験した後、当該中塗り塗料を再度300メッシュの金網で濾過し、当該中塗り塗料に含まれている凝集物の含有率を式:
〔凝集物の含有率(質量%)〕
=〔凝集物の量(g)〕÷〔中塗り塗料の質量(50g)〕×100
に基づいて求め、以下の評価基準に基づいて機械的安定性を評価した。
(評価基準)
◎:凝集物の含有率が0.005質量%未満である。
〇:凝集物の含有率が0.005質量%以上、0.05質量%未満である。
×:凝集物の含有率が0.05質量%以上である。
〔総合評価〕
次に、各物性において、◎の評価を20点、〇の評価を10点、△の評価を5点、×の評価を0点として総合得点を集計し、その結果を表3の総合評価の欄に記載した。なお、評価に×が1つでも存在するものは、不合格である。
なお、中塗り塗料の物性は、塗膜外観および厚膜の塗膜の乾燥性を調べた結果、×の評価が発生した場合には、それ以降の物性の評価を中止した。
表3に示された結果から、各実施例で得られた中塗り塗料用樹脂エマルションは、いずれも、不揮発分含量が高くても形成される塗膜の外観に優れ、塗膜が厚膜であっても乾燥性に優れた塗膜を形成することがわかる。また、各実施例で得られた中塗り塗料用樹脂エマルションは、いずれも、粘度が低く、機械的安定性に優れるとともに、泡噛み性に優れた塗膜を形成することがわかる。