JP2000319301A - 水性エマルションの製造方法 - Google Patents

水性エマルションの製造方法

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JP2000319301A
JP2000319301A JP11132906A JP13290699A JP2000319301A JP 2000319301 A JP2000319301 A JP 2000319301A JP 11132906 A JP11132906 A JP 11132906A JP 13290699 A JP13290699 A JP 13290699A JP 2000319301 A JP2000319301 A JP 2000319301A
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aqueous emulsion
unsaturated compound
film
ethylenically unsaturated
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JP11132906A
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English (en)
Inventor
Yasuhiro Nakagawa
康宏 中川
Hideo Takeuchi
英夫 武内
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Resonac Holdings Corp
Original Assignee
Showa Highpolymer Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 良好な低温成膜性を有し、樹脂皮膜表面のタ
ックが少ない水性エマルションを得る製造方法の提供。 【解決手段】 重合物のTgが−30℃以下となるエチ
レン性不飽和化合物(A)と、重合物のTgが30℃以
上となるエチレン性不飽和化合物(B)とを、水性媒体
中でパワーフィード重合する。なお、重合条件は、
(A)の全体量を(A1)および(A2)に分け、(A
1)を重合させた後に(A2)成分を導入し重合させ
る;(A2)の導入開始とともに(A2)に(B)を導
入し、重合反応を続ける;重量比率として(A1)+
(A2)+(B)=100、20≦(A1)≦60、1
0≦(A2)≦40、10≦(B)≦40であり;
(A)および(B)全体の共重合体のTgが−35℃〜
−15℃である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、造膜助剤などの溶
剤を使用せずに良好な低温成膜性を有し、得られた樹脂
皮膜の表面のタックが少なく、かつ優れた耐久性を有す
る水性エマルションを得ることのできる製造方法と、該
製造方法により得られた水性エマルションに関するもの
である。本発明により得られた水性エマルションは、被
覆材、水性塗料のバインダー、繊維処理剤等の広範囲の
用途に適用可能である。
【0002】
【従来の技術】樹脂を水性媒体中に分散させた水性エマ
ルションはそれ自身を単独で被覆材としたり、水性塗料
のバインダーとして広く使用されている。
【0003】この様に、水を分散媒体としている水性エ
マルションは、溶剤を溶媒もしくは分散媒体としている
溶剤系樹脂や非水系分散樹脂(NAD)と比較して引
火、中毒、大気汚染などの危険性が少ないことなどか
ら、近年、被覆材、水性塗料のバインダーとして、多く
使用されている。
【0004】しかし、とくに人が居住する家の内装やそ
の中で使用する物品の美観、保護等のために使用されて
いる水性エマルションは、溶剤系の樹脂ほどではないに
しても、作業環境で飛散する造膜助剤、添加剤等の溶
剤、作業完了後も徐々に放出される溶剤の有害性が問題
になっており、とくにその例がシックハウス症候群に示
される、微量の揮発性有毒物(ホルマリン、アルコール
類等の刺激性の揮発性有機溶剤)が原因のアレルギーで
ある。
【0005】また、有機溶剤を含まない水性エマルショ
ンは、水に溶解させるために必要な多量のカルボキシル
基、水酸基等の置換基の導入が不可欠であるため、耐水
性などの耐久性に問題を生じる。また、その耐久性を付
与するために高分子量化すると水に不溶となるため、水
溶性溶剤の添加、更なる水溶性置換基の導入が必要であ
る。さらに、常温架橋性を付与する方法もあるが、有効
な架橋性を得るためには、常温における反応性を持つ置
換基を使用せざるをえないため、それらを共存させて、
1液で貯蔵、使用することが困難である。
【0006】また、溶剤を使用しない水性エマルショ
ン、とくに保護コロイドを使用し、水性媒体中で乳化重
合して得られた水性エマルションは、保護コロイド成分
のガラス転移温度が高く、樹脂成分のガラス転移温度を
低く設定した場合は、樹脂の成膜時の阻害がなく、しか
も水溶液樹脂の特徴を有する保護コロイドは低温で成膜
が可能であるので、樹脂皮膜の表面に保護コロイド成分
が存在すれば皮膜表面のタックが少ないものが得られる
可能性がある。しかし、先に述べた水溶液樹脂の欠点と
同様に、耐水性などの耐久性が悪くなってしまう。
【0007】さらに、溶剤を使用しない水性エマルショ
ン、とくに乳化剤存在下における水性媒体中での通常の
乳化重合によって得られるエマルションを低温(常温以
下)で成膜させるためには、樹脂成分を少なくとも成膜
させる温度以下のガラス転移温度にする必要があるの
で、常温で成膜させるためには、それ以下のガラス転移
温度の樹脂組成に設定することになる。そのようにして
得られたエマルションの皮膜は、常温もしくはその近辺
の温度条件下において表面にタックを生じてしまうた
め、汚れの付着やブロッキングの原因となってしまう。
【0008】これらを改善するために、低ガラス転移温
度と高ガラス転移温度のエマルションをそれぞれ重合
し、それを適当な割合でブレンドすることで成膜性と耐
ブロッキング性を両立する方法が検討されており(特開
平9−111154号公報)、これを応用すれば、低温
成膜、皮膜のタック抑制が達成できる可能性がある。し
かし、成膜性と耐ブロッキング性のバランスをとること
が難しく、さらにエマルションを製造する工程も2倍以
上必要なため、非効率的である。
【0009】一方、先の低ガラス転移温度の水性エマル
ションの樹脂皮膜の表面のタックを抑制する方法とし
て、低ガラス転移温度の樹脂組成を持つシード粒子に高
ガラス転移温度の樹脂組成をシェルとして重合させて得
られたコア−シェル型の水性エマルションの使用が一般
的に知られている。しかし、低温で成膜させることを目
的として、コアをかなり低いガラス転移温度に設定する
と、重合中の温度がそのガラス転移温度より高く、その
時、容易にポリマーが流動してしまうことが原因で、高
ガラス転移温度の樹脂組成をシェルとして共重合させた
ときに、コアの変形で高ガラス転移温度の樹脂部分が不
均一に分布していることが予想され、低ガラス転移温度
の樹脂部分も成膜時に露出してしまい、樹脂皮膜の表面
にタックを生じてしまったりすることがしばしば起こ
る。また、上手くコア−シェル構造ができたとしても、
高ガラス転移温度の樹脂部分が少なすぎて十分に樹脂皮
膜の表面のタックを抑えることが出来なかったり、高ガ
ラス転移温度の樹脂部分が大きすぎて成膜不良を起こ
し、MFT(最低造膜温度)が上昇してしまったりする
ことが多く、組成のバランスや反応を制御しにくい。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、造膜助剤などの溶剤を使用せずに良好な低温成
膜性を有し、得られた樹脂皮膜の表面のタックが少な
く、かつ優れた耐久性を有する水性エマルションを得る
ことのできる製造方法と、該製造方法により得られた水
性エマルションの提供にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、先のコア
−シェル構造を持つ水性エマルションの有する欠点を改
善することが最も有効であると考え、鋭意研究を重ね
た。その結果、特定条件を満たしたパワーフィード重合
によれば、低タックを実現するための高ガラス転移温度
の樹脂部分と、成膜性を向上させる低ガラス転移温度の
樹脂部分とのバランスが容易にコントロールされ、また
的確な局在化が可能であり、さらにその異なったガラス
転移温度の樹脂間が連続的に変化して異相界面の歪みが
回避され、さらにまたその他の要因が重なり合い、本発
明の目的が達成され得ることを見出し、本発明を完成す
ることができた。
【0012】すなわち、本発明は、重合物のガラス転移
温度が−30℃以下となる第1のエチレン性不飽和化合
物成分(A)と、重合物のガラス転移温度が30℃以上
となる第2のエチレン性不飽和化合物成分(B)とを、
水性媒体中で下記の重合条件によりパワーフィード重合
することを特徴とする水性エマルションの製造方法を提
供するものである。重合条件: 前記第1のエチレン性不飽和化合物成分(A)の全
体量を(A1)および(A2)の2つに分割し、先ず反
応容器内で前記(A1)成分を重合させた後に、前記反
応容器内に前記(A2)成分を導入し重合させる; 前記(A2)成分の導入開始とともに、前記(A
2)成分を収容する容器内に前記第2のエチレン性不飽
和化合物成分(B)を所定の速度で導入し、前記重合反
応を継続させる; 前記(A1)成分、(A2)成分および(B)成分
の重量比率は、(A1)+(A2)+(B)=100と
したときに、20≦(A1)≦60、10≦(A2)≦
40、かつ10≦(B)≦40である;および 使用する前記(A)成分および(B)成分全体の共
重合体のガラス転移温度は−35℃〜−15℃である。
また本発明は、(A2)成分の反応容器内への導入が終
了する時点で(B)成分の(A2)成分への導入が完了
するように、一定速度で(B)成分を導入する前記の製
造方法を提供するものである。さらに本発明は、前記の
製造方法により得られる水性エマルションを提供するも
のである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明をさらに詳しく説明
する。本発明の製造方法は、重合物のガラス転移温度
(以下、Tgと略記する)が−30℃以下となる第1の
エチレン性不飽和化合物成分(A)と、重合物のガラス
転移温度が30℃以上となる第2のエチレン性不飽和化
合物成分(B)とを、水性媒体中で特定の重合条件下で
パワーフィード重合するものである。パワーフィード重
合そのものは公知であり、例えば文献(L.H.Ken
neth,J.of Coating Techno
l.,51,651,27−41(1979)等)や、
特公昭51−46555号公報に示されているのでここ
での詳細な説明は省略するが、一般的に反応容器内で2
種類のモノマーAおよびBを重合するに際し、モノマー
Bを、モノマーAを収容する容器内に滴下しながら、モ
ノマーAを反応容器に導入してこれを重合するという方
法である。このようなパワーフィード重合によれば、樹
脂の組成分布が一定組成の部分と内部から外部へ向けて
組成が連続的に変化している部分とを有する樹脂が得ら
れると考えられる。
【0014】(A)成分および(B)成分を構成するエ
チレン性不飽和化合物は、少なくとも1個の重合可能な
ビニル基を有するものである。用いることのできるエチ
レン性不飽和化合物としては、メチルメタクリレート、
2−エチルヘキシルアクリレート、メタクリル酸等が好
ましい例として挙げられるが、他の共重合可能なエチレ
ン性不飽和化合物成分も併用できる。併用できるその他
の共重合可能なエチレン性不飽和化合物成分の具体例と
しては、1〜18個の炭素数の直鎖状、分岐鎖状もしく
は環状のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル酸エステ
ル、例えばメチルアクリレート、エチル(メタ)アクリ
レート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブ
チル(メタ)クリレート、tert−ブチル(メタ)ア
クリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2
−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリル(メタ)ア
クリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボ
ロニル(メタ)アクリレート等;芳香族ビニル化合物、
例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチ
レン、エチルビニルベンゼン等;複素環式ビニル化合
物、例えばビニルピロリドン等;ヒドロキシアルキル
(メタ)アクリレート、例えば2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート等;グリコールジ(メタ)アクリレー
ト、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等;ア
ルキルアミノ(メタ)アクリレート、例えばN,N−ジ
メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジ
メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等;ビニル
エステル化合物、例えば蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロ
ピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル(商品名)等;
モノオレフィン化合物、例えばエチレンプロピレン、ブ
チレン、イソブチレン等;共役ジオレフィン化合物、例
えばブタジエン、イソプレン、クロロプレン等;α,β
−不飽和モノまたはジカルボン酸、例えばアクリル酸、
メタクリル酸、クロトン酸、シトラコン酸、イタコン
酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等;カルボ
キシル基含有ビニル化合物、例えばフタル酸モノヒドロ
キシエチル(メタ)アクリレート、シュウ酸モノヒドロ
キシプロピル(メタ)アクリレート等;シアン化ビニル
化合物、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル
等;アミド基もしくは置換アミド基含有α,β−エチレ
ン性不飽和化合物、例えば(メタ)アクリルアミド、N
−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)ア
クリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メ
タ)アクリルアミド等;カルボニル基含有α,β−エチ
レン性不飽和化合物、例えばアクロレイン、ダイアセト
ンアクリルアミド、ビニルメチルケトン、ダイアセトン
アクリレート、アセトニトリルアクリレート等;スルホ
ン酸基含有α,β−エチレン性不飽和化合物、例えばス
ルホン酸アリル、p−スチレンスルホン酸ナトリウム
等;の公知の重合性ビニル化合物が挙げられる。
【0015】また、必要に応じて、架橋性エチレン性不
飽和化合物成分(先に列挙したエチレン性不飽和化合物
成分に含まれるものもある)として、エポキシ基含有
α,β−エチレン性不飽和化合物、例えばグリシジル
(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシ
ルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエー
テル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エ
ポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等;加水分
解性アルコキシシリル基含有α,β−エチレン性不飽和
化合物、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ
ス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキ
シプロピルトリメトキシシラン等;多官能ビニル化合
物、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリ
レート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼ
ン、ジアリルフタレート等;を導入し、それ自身同士の
架橋をさせるか、活性水素基を持つエチレン性不飽和化
合物成分と組み合わせて架橋させる、もしくは、カルボ
ニル基含有α,β−エチレン性不飽和化合物(とくにケ
ト基含有のものに限る)を導入し、ポリヒドラジン化合
物(とくに2つ以上のヒドラジド基を有する化合物:シ
ュウ酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン
酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド等)との組
み合わせで架橋させることも可能である。しかしなが
ら、低温での成膜性を低下させないためには、これらの
使用量を低温成膜性を阻害しない極少量に抑えるか、も
しくは使用しないことが望ましい。
【0016】本発明に用いられる(A)成分は、重合物
のTgが−30℃以下となるエチレン性不飽和化合物で
あり、好ましくはTgが−45℃以下となるのがよい。
これは、低温成膜性を付与するために必要なTgであ
り、−30℃を超えると、低温成膜性が低下する。本発
明におけるパワーフィード重合において、(A)成分
は、(A)成分および(B)成分の合計重量に対して6
0〜90重量%を構成する。そして、(A)成分はその
全体量が(A1)および(A2)の2つに分割される。
なお、(A1)および(A2)成分は、組成が同じであ
るならば、本発明におけるTgの条件を満たす限り、配
合割合が異なっていてもよい。これら(A1)および
(A2)成分は、重量比率において(A1)+(A2)
+(B)=100としたときに、20≦(A1)≦6
0、かつ10≦(A2)≦40の条件を満たすことが必
要である。好ましくは、25≦(A1)≦50、15≦
(A2)≦30がよい。前記の(A1)の範囲は、低温
成膜性と樹脂皮膜表面のタックの抑制の両立に必要であ
り、この範囲外では、低温成膜性が劣り、しかも樹脂皮
膜表面のタックが大きくなる。また前記の(A2)の範
囲は、低温成膜性と樹脂皮膜表面のタックの抑制の両立
に必要であり、この範囲外では、低温成膜性が劣り、し
かも樹脂皮膜表面のタックが大きくなる。(A1)成分
は、まずこれを単独成分として重合される。
【0017】(B)成分は、重合物のTgが30℃以上
となるエチレン性不飽和化合物であり、好ましくはTg
が55℃以上となるのがよい。これは、常温もしくはそ
の近辺の温度条件下における樹脂皮膜表面のタックを抑
制するために必要なTgであるる。Tgが30℃未満で
は、著しく樹脂皮膜表面にタックを生じてしまう。ま
た、(B)成分は、重量比率において(A1)+(A
2)+(B)=100としたときに、10≦(B)≦4
0の条件を満たすことが必要である。好ましくは25≦
(B)≦40がよい。この範囲は、低温成膜性と樹脂皮
膜の表面のタックの抑制の両立に必要であり、前記範囲
外では、低温成膜性が劣り、しかも樹脂皮膜の表面のタ
ックが大きくなる。
【0018】さらに、使用する前記(A)成分および
(B)成分全体の共重合体のTgは−35℃〜−15℃
であることも必要である。好ましくはTgは−25℃〜
−15℃がよい。この範囲は、低温成膜性と樹脂皮膜表
面のタックの抑制の両立に必要であり、前記共重合体の
Tgが−35℃未満では樹脂皮膜の表面のタックが大き
くなってしまい、−15℃を超えると、低温成膜性が低
下する。
【0019】なお、上記に示される共重合体のTgは、
以下の式より計算して求めた。
【0020】
【数1】Tg=T−273 ただし、1/T=(W1/T1+W2/T2+W3/T
3+...+Wn/Tn) (式中、Tgは共重合体のガラス転移温度(摂氏温度)
であり、Tは共重合体のガラス転移温度(絶対温度)で
あり、Wnは各エチレン性不飽和化合物成分の重量分率
であり、Tnは各エチレン性不飽和化合物成分の単独重
合体のガラス転移温度(絶対温度)である)
【0021】本発明の水性エマルションは、上記各種成
分を乳化重合して得られるものであり、とくに(A)成
分と(B)成分とを乳化剤存在下、重合開始剤を使用し
てパワーフィード重合して得られる。
【0022】使用する乳化剤としては、とくに制限され
るものではなく、市販の乳化剤が使用できるが、ドデシ
ルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリ
ウム等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンラ
ウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエ
ーテル等のノニオン性界面活性剤;セシルトリメチルア
ンモニウムブロミド、ラウリルピリジニウムクロリド等
のカチオン性界面活性剤;ラウリルベダイン等の両性界
面活性剤;その他反応性界面活性剤等が挙げられる。こ
れらの乳化剤は単独で使用しても混合して使用してもよ
い。
【0023】また、使用される重合開始剤としては、過
硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始
剤;2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジ
ン)ジ塩酸塩等の水溶性アゾ系開始剤;t−ブチルヒド
ロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド等の有機過
酸化物類;過酸化水素等が挙げられる。これらの重合開
始剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。
【0024】さらに必要に応じて、これら重合開始剤と
共に還元剤を使用できる。このような還元剤としては、
アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルム
アルデヒドスルホキシラート金属塩等の還元性有機化合
物;チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸
ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化
合物等が挙げられる。
【0025】さらにまた、必要に応じて連鎖移動剤を使
用できる。このような連鎖移動剤としては、n−ドデシ
ルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n
−ブチルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコ
レート、2−メルカプトエタノール、β−メルカプトプ
ロピオン酸等が挙げられる。しかし、使用量について
は、低分子量化し過ぎて、皮膜の表面タックが生じない
程度に抑えることに注意する必要がある。
【0026】本発明におけるパワーフィード重合は、通
常約5〜約100℃、好ましくは約50〜90℃の温度
条件下で行われる。
【0027】以上に示すようなパワーフィード重合は、
(A2)成分の反応容器内への導入が終了する時点で
(B)成分の(A2)成分への導入が完了するように、
一定速度で(B)成分を導入して行うのがよい。
【0028】得られた水性エマルションに1種またはそ
れ以上の酸もしくは塩基を添加したり、あるいは水性エ
マルションのpHを4〜10に中和することによって、
水性エマルションの表面電荷を高くし、安定性を付与す
ることができる。使用する一般的な酸としては、酢酸、
乳酸、塩酸、燐酸、硫酸などが挙げられる。また、使用
する一般的な塩基としては、トリエチルアミン、アンモ
ニア、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール
等のアミン化合物;水酸化カリウム、水酸化ナトリウ
ム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げら
れる。
【0029】さらに必要に応じて、増粘剤、消泡剤、顔
料、分散剤、防腐剤などを添加することができる。
【0030】
【実施例】以下、実施例および比較例により本発明をさ
らに説明する。なお、例中の「部」は重量部を示す。ま
た、実施例および比較例における物性の評価は、以下に
示す方法を用いて行った。
【0031】(1)皮膜指触タック 室温(25℃、65%RH)の環境下において、横幅1
00mm×縦幅200mm×厚み15mmのガラス板に
6mil厚、80mm幅のアプリケーターを用いて水性
エマルションを塗布し、同環境下で24時間放置した後
の同環境下の皮膜の表面タックを指触で評価した。 〇:タック感がほとんど無い、〇〜△:指を押しつける
と若干タック感がある、△:タック感があるが、指が付
着しない、△〜×:かなりのタックを生じ、指を押しつ
けると付着するような感じがある、×:ベタツキが酷
く、押しつけた指が容易に付着する。
【0032】(2)塗料化物の低温厚膜乾燥性 まず、評価する水性エマルションを以下の様に塗料化し
た。ミルベースの調製:脱イオン水27.6部、増粘剤
としてナトロゾール250HR(ハーキュレース製)
0.41部、中和剤として10%水酸化ナトリウム水溶
液0.09部、防腐剤としてノプコサイドSN−135
(サンノプコ製)0.30部、分散剤としてデモールE
P(花王製)1.52部、10%トリポリ燐酸ナトリウ
ム水溶液0.83部、エマルゲン910(花王製)0.
18部、消泡剤としてノプコ8034L(サンノプコ
製)0.07部、酸化チタンとしてタイペークR−82
0(石原産業製)16.6部、クレーとしてNCクレー
(丸尾カルシウム製)9.3部、炭酸カルシウムとして
NS−100(日東粉化製)17.6部を容器中でホモ
ディスパーを用いて約1000rpmで撹拌しながら、
上記順に仕込み、さらに約1000rpmで3時間撹拌
した。その後、120メッシュのテフロンメッシュで濾
過し、合計74.5部、固形分濃度58.4%(体質顔
料を固形分として計算)のミルベースを得た。 レットダウン:別容器に、前記ミルベース74.5部、
水性エマルション(不揮発分50%)24.8部、消泡
剤としてノプコ8034L0.15部を仕込み、ホモデ
ィスパーを用いて約2000rpmで10分間撹拌し
た。その後、150メッシュのテフロンメッシュで濾過
し、合計99.3部、固形分濃度56.24%、体質顔
料濃度55.3%(比重を酸化チタン:4.2、クレ
ー:2.7、炭酸カルシウム:2.7、水性エマルショ
ン:1.1として計算した)の低温厚膜乾燥性試験用
(フラット)塗料を得た。得られた塗料を5℃に冷却
し、低温(5℃、90%RH)の条件下において、横幅
100mm×縦幅200mm×厚み15mmのガラス板
に1mm厚、80mm幅のアプリケーターを用いて塗布
し、同環境下で24時間乾燥した塗膜の成膜状態を目視
で評価した。 〇:成膜不良によるクラックが認められない、〇〜△:
成膜不良によるクラックは殆ど無いが、部分的に微少な
クラックが認められる、△:成膜不良による細かいクラ
ックが目立ち始める、△〜×:成膜不良による大きなク
ラックと細かいクラックが全面に認められる、×:成膜
不良で全体が割れている。
【0033】(実施例1) 水性エマルションの製造例 撹拌機、温度計、還流凝縮機を備えた重合装置中に、表
1に示す仕込みのイオン水および乳化剤を入れ、窒素置
換を十分に行った後、昇温した。約120rpmで撹拌
しながら内温を80℃に保ち、表1に示される成分(A
1)をホモミキサーを用いて乳化したもの(以下、(A
1)成分乳化物という。(A2)および(B)成分につ
いても同様に表記する)、および開始剤(水溶液)を滴
下開始し、重合させた。滴下速度は、(A1)成分乳化
物は約280.0部/時間、開始剤水溶液は約17.0
部/時間とした。(A1)成分乳化物が滴下終了すると
同時に、表1に示す(A2)成分乳化物を滴下し始め
た。これと同時に表1に示す(B)成分乳化物を(A
2)成分乳化物に滴下した。(B)成分乳化物の滴下速
度は、(A2)成分乳化物の滴下終了と同時に滴下が終
了する速度、すなわち本実施例では約140.0部/時
間とした。滴下終了後、80℃で2時間反応し、その後
室温(25℃)に冷却した。最後に表1に示す中和剤
(水溶液)を添加し、水性エマルションを得た。得られ
た水性エマルションの性状は、不揮発分(110℃、3
時間乾燥)49.1%、粘度(BM型粘度計、60rp
m、23℃)200mPa・s、pH7.4(pHメー
ター)、平均粒子径(MICROTRACK UPA測
定値)0.15μmであった。
【0034】(実施例2)表1に示す実施例2の原料お
よび組成を用いること以外は、実施例1を繰り返した。
得られた水性エマルションの性状は、不揮発分49.5
%、粘度200mPa・s、pH7.3、平均粒子径
(MICROTRACK UPA測定値)0.15μm
であった。
【0035】(比較例1)表2に示す比較例1の原料、
組成を用いること以外は、実施例1を繰り返した。得ら
れた水性エマルションの性状は、不揮発分48.9%、
粘度230mPa・s、pH7.6、平均粒子径0.1
5μmであった。
【0036】(比較例2)表2に示す比較例2の原料、
組成を用いること、また、(A1)成分乳化物を用いな
いため、(A2)成分乳化物を始めから滴下し、これと
同時に成分(B)乳化物を成分(A2)乳化物に滴下
(ここでは約84.0部/時間)したこと意外は実施例
1を繰り返した。得られた水性エマルションの性状は、
不揮発分49.4%、粘度300mPa・s、pH7.
4、平均粒子径0.15μmであった。
【0037】(比較例3)表2に示す比較例3の原料、
組成を用いること以外は、実施例1を繰り返した。得ら
れた水性エマルションの性状は、不揮発分49.5%、
粘度200mPa・s、pH7.3、平均粒子径0.1
5μmであった。
【0038】(比較例4)表3に示す比較例4の原料、
組成を用いること以外は、実施例1を繰り返した。得ら
れた水性エマルションの性状は、不揮発分49.1%、
粘度170mPa・s、pH7.2、平均粒子径0.1
4μmであった。
【0039】(比較例5) 1段重合 表3に示す比較例5の原料、組成を用いること、また、
(A2)および(B)成分乳化物を用いないため、(A
1)乳化物のみを始めから滴下したこと以外は、実施例
1を繰り返した。得られた水性エマルションの性状は、
不揮発分50.0%、粘度440mPa・s、pH7.
7、平均粒子径0.14μmであった。
【0040】(比較例6) 3段シード重合 表3に示す比較例6の原料、組成を用いること、また、
成分(A)が3成分に分かれており、それぞれの乳化物
を順に滴下したこと以外は、実施例1を繰り返した。得
られた水性エマルションの性状は、不揮発分49.7
%、粘度420mPa・s、pH7.6、平均粒子径
0.15μmであった。
【0041】実施例1〜2、比較例1〜6の工程で得ら
れた水性エマルションの皮膜指触タックおよび塗料化物
の低温厚膜乾燥性の評価結果を表4に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、造膜助剤などの溶剤を
使用せずに良好な低温成膜性を有し、得られた樹脂皮膜
の表面のタックが少なく、かつ優れた耐久性を有する水
性エマルションを得ることのできる製造方法と、該製造
方法により得られた水性エマルションが提供される。本
発明は、近年問題となっている、揮発性有機物質の飛散
による人体の健康、地球環境への悪影響を減らせる有効
な手段となることが期待できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J011 BA02 BA04 BB01 BB07 BB09 KB09 KB13 KB14 KB29 4J026 AA42 AA45 AC15 BA02 BA03 BA05 BA06 BA20 BA24 BA25 BA27 BA28 BA31 BA32 BA33 BA34 BA46 BA47 BA49 BB03 BB07 DB24 FA04 GA02 GA06

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重合物のガラス転移温度が−30℃以下
    となる第1のエチレン性不飽和化合物成分(A)と、重
    合物のガラス転移温度が30℃以上となる第2のエチレ
    ン性不飽和化合物成分(B)とを、水性媒体中で下記の
    重合条件によりパワーフィード重合することを特徴とす
    る水性エマルションの製造方法。重合条件: 前記第1のエチレン性不飽和化合物成分(A)の全
    体量を(A1)および(A2)の2つに分割し、先ず反
    応容器内で前記(A1)成分を重合させた後に、前記反
    応容器内に前記(A2)成分を導入し重合させる; 前記(A2)成分の導入開始とともに、前記(A
    2)成分を収容する容器内に前記第2のエチレン性不飽
    和化合物成分(B)を所定の速度で導入し、前記重合反
    応を継続させる; 前記(A1)成分、(A2)成分および(B)成分
    の重量比率は、(A1)+(A2)+(B)=100と
    したときに、20≦(A1)≦60、10≦(A2)≦
    40、かつ10≦(B)≦40である;および 使用する前記(A)成分および(B)成分全体の共
    重合体のガラス転移温度は−35℃〜−15℃である。
  2. 【請求項2】 (A2)成分の反応容器内への導入が終
    了する時点で(B)成分の(A2)成分への導入が完了
    するように、一定速度で(B)成分を導入する請求項1
    に記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の製造方法によ
    り得られる水性エマルション。
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