JP5770432B2 - 加熱乾燥用エマルション組成物、その製造方法及び制振材組成物 - Google Patents
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Description
この特許文献1及び2の組成物のように、近年、塗料分野ではエマルション型組成物が多用されつつある。エマルション型組成物は、塗布後の加熱乾燥により、水が揮散してエマルション粒子(樹脂粒子)同士が融着することで塗膜を形成するため、工業的に加熱乾燥に要する時間が重要になることが多々ある。しかし、特許文献1及び2では、乾燥時間については検討されていないため、加熱乾燥時間を大幅に短縮できるようにするための工夫の余地があった。
本発明はまた、上記加熱乾燥用エマルション組成物を含む制振材組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。
ノニオン性界面活性剤は、通常、加熱していくと水中で結合している水分子が徐々に外れることによって親水性が徐々に減少し、ある温度で水に不溶になる性質を有するが、この温度を曇点(℃)という。曇点が90℃以上のノニオン性界面活性剤を用いると、加熱乾燥初期には、エマルション粒子間に存在して塗膜表面での粒子の融着を遅延させるためにエマルション内部から表面への水性媒体の通り道が確保されると考えられ、また加熱温度が曇点に達すると一気に水分子を離すため、エマルションからの水性媒体の揮散が一気に進むと推測される。曇点が90℃未満では、エマルション組成物の加熱乾燥速度が充分とはならないが、これは、加熱乾燥初期に粒子の融着を充分に遅延することができず、表面部だけ乾燥し、内部からの水性媒体の揮散が進まないためであると考えられる。
なお、曇点は、例えば、以下のようにして測定することができる。
<曇点特定方法>
温度計付きのフラスコ内に2質量%濃度のノニオン性界面活性剤を入れ加温し、濁り始める温度を曇点(℃)とする。
なお、本発明の加熱乾燥用エマルション組成物は、エマルションを得るための乳化剤として上記乾燥促進剤に該当する界面活性剤を乳化剤として用い、得られたエマルション中に当該界面活性剤が残存してなる形態のものであってもよい。すなわち本発明の加熱乾燥用エマルション組成物には、エマルションに乾燥促進剤を更に添加して得られるものだけでなく、乾燥促進剤に該当する界面活性剤を乳化剤として用い、得られたエマルション中に当該界面活性剤が残存してなるものも含まれ、更に、これらの併用形態も含まれる。したがって、上記乾燥促進剤に該当する界面活性剤をエマルションを得るための乳化剤として用いた場合は、得られたエマルション中に残存する当該界面活性剤の量を確認して、更に添加する乾燥促進剤の量を調整することが好ましい。
上記媒体としては、水性媒体であることが好ましく、例えば、水や、水と混じりあう溶媒と水との混合溶媒等が挙げられる。中でも、本発明の加熱乾燥用エマルション組成物を塗布する際の安全性や環境への影響を考慮すると、水性媒体100質量%中、水が50質量%以上であることが好適である。より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは100質量%、すなわち水を媒体として用いることである。
上記塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が好適である。金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子が好適であり、また、有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩が好適である。
なお、上記塩としては、上述した(メタ)アクリル酸系単量体の塩と同様の形態であることが好ましい。
なお、上記単量体成分中の(メタ)アクリロイル基を有する不飽和単量体、すなわち上述した(メタ)アクリル酸系単量体や(メタ)アクリル系単量体の含有量としては、これらの合計量が、全単量体成分100質量%中、20質量%以上となることが好適である。これにより、制振性がより向上されることになる。より好ましくは30質量%以上である。
上記芳香環を有する不飽和単量体の割合としては、全単量体成分100質量%中、0〜40質量%であることが好適である。より好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは3〜20質量%である。
なお、本明細書中、ホモポリマーのガラス転移温度とは、ホモポリマーの硬化物のガラス転移温度を意味する。
上記官能基を有する不飽和単量体の含有量は、全単量体成分100質量%に対して10質量%未満であることが好適であり、より好ましくは0.1〜3質量%である。
上記Tgは、エマルションを構成する各単量体のホモポリマー(単独重合体)のガラス転移温度(Tgn)を用いて、下記Foxの式より計算することができる(単位:K)。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn)/100
(式中、Wnは、全単量体成分に対する単量体nの質量分率(質量%)を表す。Tgnは、単量体nからなるホモポリマーのガラス転移温度(単位:K、絶対温度)を表す。)
なお、3種以上の重合体を含む場合には、このうちの少なくとも2種の重合体のTgが異なればよく、残りの1種以上については、当該2種の重合体のいずれかとTgが同じであってもよい。
またTgが最も高い重合体とTgが最も低い重合体とのTg差は、10〜60℃であることが好適である。差が10℃未満であったり、温度差が大き過ぎると、実用的範囲での制振性がより充分なものとはならないおそれがある。より好ましくは15〜55℃であり、更に好ましくは20〜50℃である。
上記重量平均分子量は、例えば、以下の測定条件下、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
上記平均粒子径(体積平均粒子径)は、例えば、エマルションを蒸留水で希釈し充分に攪拌混合した後、ガラスセルに約10ml採取し、これを動的光散法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOMP Model 380」)で測定することにより求めることができる。
なお、コア部とシェル部とを有するエマルション粒子において、不飽和カルボン酸単量体及びその他の共重合可能な不飽和単量体は、エマルションのコア部を形成する単量体成分、シェル部を形成する単量体成分のいずれに含まれていてもよく、これらの両方に用いられるものであってもよい。
例えば、コア部を形成する単量体成分とシェル部を形成する単量体成分とのガラス転移温度(Tg)の差が10〜60℃であることが好ましい。Tgの差が10℃未満である場合や、60℃より大きい場合には、幅広い温度領域(20℃〜60℃)にわたっての制振性が得られないおそれがある。より好ましくはTgの差が15〜55℃、更に好ましくは、20〜50℃である。また、コア部を形成する単量体成分のTgは、シェル部を形成する単量体成分のTgよりも高いほうが好ましい。すなわち、コア部とシェル部とを有するエマルションを製造する場合、コア部のエマルションを形成した後、シェル部のエマルションを形成する多段重合により製造されることになるが、前段工程で使用される単量体成分のTgは、後段工程で使用される単量体成分のTgよりも高いほうが好ましい。エマルションが3段階以上の工程で製造される場合も同様に、後の工程で使用される単量体成分のTgは、その直前の工程で使用される単量体成分のTgよりも低いものであることが好ましい。
上記コア部とシェル部とを有するエマルション粒子は、後述する乳化重合法(多段重合)を用いて得ることができる。
上記コア・シェル複合構造においては、コア部の表面がシェル部によって被覆された形態であることが好ましい。この場合、コア部の表面は、シェル部によって完全に被覆されていることが好適であるが、完全に被覆されていなくてもよく、例えば、網目状に被覆されている形態や、所々においてコア部が露出している形態であってもよい。
なお、上記エマルションの粒子がコア部とシェル部とを有するエマルション粒子である場合には、乳化剤及び/又は保護コロイドの存在下、水性媒体中で単量体成分を乳化重合させてコア部を形成した後、該コア部を含むエマルションに更に単量体成分を乳化重合させてシェル部を形成する多段重合により得ることが好ましい。
上記アニオン性乳化剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)スチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)ベンジルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルコハク酸ジ塩;ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィン塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等が挙げられる。
上記カチオン性乳化剤としては特に限定されず、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリニウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記高分子乳化剤としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物;(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシエチル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記乳化剤の使用量としては、用いる乳化剤の種類や単量体成分の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、上記単量体成分の総量100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜5重量部である。更に好ましくは、1〜3重量部である。
上記保護コロイドの使用量としては、使用条件等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、上記単量体成分の総量100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは3重量部以下である。
上記重合開始剤の使用量としては特に限定されず、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、上記単量体成分の総量100重量部に対して、0.1〜2重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.2〜1重量部である。
上記還元剤の使用量としては特に限定されず、例えば、上記単量体成分の総量100重量部に対して、0.05〜1重量部であることが好ましい。
また単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては特に限定されず、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
なお、粘度は、B型回転粘度計を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定することができる。
また上記製造方法では、上記添加工程後に、上記エマルションと加熱乾燥剤とを充分に混合する工程を含むことが好ましい。添加・混合方法は特に限定されるものではない。
なお、感熱ゲル化剤を2種以上混合して用いることは、ゲル化温度の制御を容易にするために好適な方法であり、ニトロパラフィン、有機エステル類等は酸化亜鉛との併用が効果的である。
なお、「感熱ゲル化」とは、ゲル化温度以上に加温することによってゲル化反応の進行が著しく促進されることを意味し、常温で全くゲル化が進行しないことを意味するものではない。
上記制振材組成物は、本発明の加熱乾燥用エマルション組成物、顔料、発泡剤及び増粘剤を少なくとも含むものであることが好ましく、これらの成分及び必要に応じて含まれる他の成分を、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等を用いて混合して得ることができる。
上記制振材組成物はまた、固形分含有量が70〜90質量%であることが好適である。固形分含有量とは、制振材組成物の総量100質量%に対する固形分の含有量を意味するが、固形分含有量としてより好ましくは、80〜90質量%である。
上記顔料の配合量は、上記加熱乾燥用エマルション組成物の固形分100重量部に対し、50〜700重量部とすることが好ましい。より好ましくは、100〜550重量部である。
上記発泡剤の配合量は、上記加熱乾燥用エマルション組成物の固形分100重量部に対し、0.5〜5重量部とすることが好ましい。より好ましくは、1〜3重量部である。
上記増粘剤の配合量は、上記加熱乾燥用エマルション組成物の固形分100重量部に対し、固形分で0.01〜2重量部とすることが好ましい。より好ましくは、0.05〜1.5重量部であり、更に好ましくは、0.1〜1重量部である。
上記加熱乾燥用エマルション組成物又は制振材組成物に架橋剤を混合することにより、樹脂の強靱性が向上し、その結果、高温領域で充分な高制振性が発現する。中でもオキサゾリン化合物を用いることが好ましい。
上記分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等の無機質分散剤及びポリカルボン酸系分散剤等の有機質分散剤が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤等が挙げられる。
上記制振材組成物の塗布量は、用途や所望する性能等により適宜設定すればよいが、乾燥時の塗膜の膜厚が、0.5〜8.0mmとなるようにすることが好ましい。より好ましくは、3.0〜6.0mmである。
また、乾燥時(後)の塗膜の面密度が1.0〜7.0kg/m2となるように塗布することも好ましい。より好ましくは、2.0〜6.0kg/m2である。なお、本発明の制振材組成物を使用することにより、乾燥時に膨張やクラックが生じにくく、しかも傾斜面の塗料のずり落ちも発生しにくい塗膜を得ることが可能となる。
このように、乾燥時の塗膜の膜厚が、0.5〜8.0mmとなるように塗工し、乾燥する制振材組成物の塗工方法や、乾燥後の塗膜の面密度が2.0〜6.0kg/m2となるように塗工し、乾燥する制振材組成物の塗工方法もまた、本発明の好ましい実施形態のひとつである。また、上記制振材組成物の塗工方法によって得られた制振材もまた、本発明の好ましい実施形態のひとつである。
<ガラス転移温度(Tg)>
各段で用いた単量体組成から、上述したFoxの式を用いて算出した。なお、全ての段で用いた単量体組成から算出したTgを「トータルTg」として記載した。
Foxの式により重合性単量体成分のガラス転移温度(Tg)を算出するのに使用したそれぞれのホモポリマーのTg値を下記に示す。
メチルメタクリレート(MMA):105℃
スチレン:100℃
ブチルアクリレート(BA):−56℃
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
アクリル酸(AA):95℃
アクリロニトリル(AN):96℃
得られた水性樹脂分散体約1gを秤量、熱風乾燥機で110℃×1時間後、乾燥残量を不揮発分として、乾燥前質量に対する比率を質量%で表示した。
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水300部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇湿した。一方、上記滴下ロートに、スチレン200部、メチルメタクリレート95部、2−エチルヘキシルアクリレート190部、アクリル酸15部、t−ドデシルメルカプタン0.4部、予め20%水溶液に調整したレベノールWZ(商品名、花王社製)90.0部及び脱イオン水97部からなる第1段目の単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの8部、5%過硫酸カリウム水溶液5部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を120分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持した。
次いで、滴下ロートにスチレン100部、メチルメタクリレート95部、ブチルアクリレート290部、アクリル酸15部、t−ドデシルメルカプタン0.4部、予め20%水溶液に調整したレベノールWZ(商品名、花王社製)90.0部及び脱イオン水97部からなる第2段目の単量体乳化物を仕込み、120分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後90分同温度を維持し、重合を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却後、25%アンモニア水6部を添加し、不揮発分55%、pH7.0、粘度420mPa・s、平均粒子径230nm、粒度分布22%、重量平均分子量170000、1段目のTg10℃、2段目のTg−10℃、トータルTg0℃のエマルション(1)を得た。
表1に示す配合で、表1に示すモノマー及び重合連鎖移動剤を用いる他は、製造例1と同様にして、エマルション(2)〜(9)を得た。得られたエマルションのTg及びスペックを、表1に示す。
酸化亜鉛、炭酸水素アンモニウム及びアンモニアを、モル比で1:1:3となるようにガラス容器に仕込み、スターラーで30分撹拌して、下記式で表される反応により亜鉛の炭酸アンミン錯体を得た。
ZnO+NH4HCO3+3NH3→[Zn(NH3)4]CO3
製造例で得たエマルション100部(固形分)に、表2−1及び2−2に示す配合量で、表2−1及び2−2に示す乾燥促進剤を適宜添加することにより、本発明の加熱乾燥用エマルション組成物及び比較用エマルション組成物を得た。なお、実施例6及び7は、エマルションを得るための乳化剤として本発明の乾燥促進剤に該当する界面活性剤を使用した例であり、当該界面活性剤はエマルション中に残存している。
これらの加熱乾燥用エマルション組成物又は比較用エマルション組成物を下記のとおり配合し、制振材組成物(制振材配合物)として、下記試験方法にて、加熱乾燥時の塗膜表面状態及び制振性を評価した。結果を表2−1及び2−2に示す。
加熱乾燥用エマルション組成物又は比較用エマルション組成物 359部
炭酸カルシウム(NN#200※1) 620部
分散剤(アクアリックDL−40S※2) 6部
増粘剤(アクリセットWR−650※3) 4部
消泡剤(ノプコ8034L※4) 1部
発泡剤(F−30※5) 6部
※1:日東粉化工業社製 充填剤
※2:日本触媒社製 ポリカルボン酸型分散剤(有効成分44%)
※3:日本触媒社製 アルカリ可溶性のアクリル系増粘剤(有効成分30%)
※4:サンノプコ社製 消泡剤(主成分:疎水性シリコーン+鉱物油)
※5:松本油脂社製 発泡剤
鋼板(商品名「SPCC−SD」、75mm幅×150mm長さ×0.8mm厚み、日本テストパネル社製)の上に、作製した制振材組成物をその塗布厚みが5mmとなるように塗布した。その後、熱風乾燥機を用いて、130℃で30分間加熱し、下記式:
水分揮発率(%)=(乾燥後の塗膜+鋼板の重量)/(乾燥前の塗膜+鋼板の重量)×100
より水分揮発率を算出した。この値が高いほど、乾燥性(乾燥効率、乾燥速度)が良好であることを示す。
鋼板(商品名 SPCC−SD 75mm幅×150mm長さ×0.8mm厚み:日本テストパネル社製)の上に、作製した制振材組成物をその塗布厚みが3mmとなるように塗布した。その後、熱風乾燥機を用いて、150℃で30分間加熱し、得られた乾燥塗膜の表面状態を以下の基準で評価した。
○:異常なし
△:表面や界面に亀裂、表面に凸凹あり
×:塗膜形状を維持できない
得られた制振材組成物を冷間圧延鋼板(SPCC・幅15mm×長さ250mm×厚み1.5mm)上に3mmの厚みで塗布して150℃で30分間乾燥し、冷間圧延鋼板上に面密度4.0Kg/m2の制振材被膜を形成した。制振性の測定は、片持ち梁法(株式会社小野測機製損失係数測定システム)を用いて、それぞれの温度(20℃、40℃、60℃)における損失係数を共振法(3dB法)により測定した。また、制振性の評価は、総損失係数(20℃、40℃、60℃での損失係数の和)により行い、総損失係数の値が大きいほど制振性に優れるものとした。
エマルゲン120P:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(曇点:98℃、花王社製、ノニオン性界面活性剤)
エマルゲン1118S:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(曇点:100℃、花王社製、ノニオン性界面活性剤)
エマールO:ラウリル硫酸ナトリウム(花王社製、アニオン性界面活性剤)
ネオペレックスG−65:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王社製、アニオン性界面活性剤)
エマルゲン109P:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(曇点:83℃、花王社製、ノニオン性界面活性剤)
レベノールWZ:ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製、アニオン性界面活性剤)
例えば、特定の乾燥促進剤を用いることによる技術的意義は、実施例1〜5と比較例3とを比較すれば明らかである。実施例1〜5と比較例3とは、特定の乾燥促進剤を使用するか又は使用しないかの点で相違する他は、同じ条件で実施した例であるが、乾燥性(乾燥効率)の指標である水分揮発率(%)は、実施例1〜5では80〜85%となったのに対し、比較例3では70%と著しく劣っており、特定の乾燥促進剤を用いることにより乾燥効率が飛躍的に向上されることが分かる。
また、乾燥促進剤として金属錯体(亜鉛の炭酸アンミン錯体)を添加した場合(実施例14)にも、加熱乾燥用エマルション組成物の加熱乾燥性が著しく向上することが確認された。
Claims (4)
- 不飽和カルボン酸単量体及びその他の共重合可能な不飽和単量体を含む単量体成分を重合してなるエマルションを含む加熱乾燥用エマルション組成物であって、
該加熱乾燥用エマルション組成物は、エマルションの固形分100重量部に対し、1.5〜10重量部の乾燥促進剤又はエマルションの固形分100重量部に対し、1〜10重量部の炭酸アンモニウム亜鉛錯体、硫酸アンモニウム亜鉛錯体、酸化亜鉛と無機または有機アンモニウム塩とから得られる亜鉛錯体のいずれかである感熱ゲル化剤を含み、
該乾燥促進剤は、90℃以上の曇点を有するノニオン性界面活性剤及び/又はエチレングリコール鎖を含有しないアニオン系界面活性剤であり、
エマルションは、ガラス転移点が−20〜30℃、重量平均分子量が2万〜40万、エマルション粒子の平均粒子径が100〜400nmである
ことを特徴とする加熱乾燥用エマルション組成物。 - 前記単量体成分は、前記不飽和カルボン酸単量体として(メタ)アクリル酸系単量体を含み、前記その他の共重合可能な不飽和単量体として(メタ)アクリル系単量体を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱乾燥用エマルション組成物。 - 請求項1又は2に記載の加熱乾燥用エマルション組成物を含む
ことを特徴とする制振材組成物。 - 不飽和カルボン酸単量体及びその他の共重合可能な不飽和単量体を含む単量体成分を重合してなるエマルションを含む加熱乾燥用エマルション組成物を製造する方法であって、
該製造方法は、該単量体成分を重合してなり、ガラス転移点が−20〜30℃、重量平均分子量が2万〜40万、エマルション粒子の平均粒子径が100〜400nmであるエマルションに、エマルションの固形分100重量部に対し、1.5〜10重量部の乾燥促進剤又はエマルションの固形分100重量部に対し、1〜10重量部の炭酸アンモニウム亜鉛錯体、硫酸アンモニウム亜鉛錯体、酸化亜鉛と無機または有機アンモニウム塩とから得られる亜鉛錯体のいずれかである感熱ゲル化剤を添加する工程を含み、
該乾燥促進剤は、90℃以上の曇点を有するノニオン性界面活性剤及び/又はエチレングリコール鎖を含有しないアニオン系界面活性剤である
ことを特徴とする加熱乾燥用エマルション組成物の製造方法。
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