JP2015063651A - 制振材用エマルション組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた制振性を発揮するとともに、塗膜の剥離が充分に抑制された高い強度の塗膜を形成することができる制振材用組成物を提供する。
【解決手段】 単量体成分をエマルション重合してなる(メタ)アクリル系ポリマーエマルションを含む制振材用エマルション組成物であって、該(メタ)アクリル系ポリマーは、数平均分子量が25000以下であることを特徴とする制振材用エマルション組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、制振材用エマルション組成物に関する。より詳しくは、各種構造体における振動や騒音を防止して静寂性を保つために使用される制振材の材料等として有用な制振材用エマルション組成物に関する。
制振材は、各種構造体における振動や騒音を防止して静寂性を保つためのものであり、例えば、自動車の室内床下等に用いられている他、鉄道車両、船舶、航空機や電気機器、建築構造物、建設機器等にも広く利用されている。このような制振材に用いられる材料としては、従来、振動吸収性能及び吸音性能を有する材料を素材とする板状成形体やシート状成形体等の成形加工品が使用されている。一方で、振動や音響の発生箇所の形状が複雑な場合には、これらの成形加工品を振動発生箇所に適用することが困難であることから、作業性を改善して制振性を充分に発揮させるための手法が種々検討されている。例えば、自動車の室内床下等には無機粉体を含んだアスファルトシートが用いられてきたが、熱融着させる必要性があることから、作業性等の改善が望まれており、制振材を形成する種々の制振材用組成物や重合体の検討がなされている。
このように、成形加工品の代替材料として、塗布型制振材(塗料)が開発されており、例えば、該当箇所にスプレーにより吹き付けるか又は任意の方法により塗布することにより形成される塗膜により、振動吸収効果及び吸音効果を得ることが可能な制振塗料が種々提案されるに至っている。具体的には、例えば、アスファルト、ゴム、合成樹脂等の展色剤に合成樹脂粉末を配合して得られる塗膜硬度を改良した水系制振塗料の他、自動車の室内用に適するものとして、樹脂エマルションに充填材として活性炭を分散させた制振塗料等が開発されている。しかしながら、これらの従来品をもってしても未だ、制振性能が充分に満足できるレベルにあるとはいえず、更に充分に制振性能を発揮できるようにする技術が求められている。
制振材に用いられる従来の組成物としては、例えば、ガラス転移温度の異なり、特定の重量平均分子量を有する2種の重合体を少なくとも含む水性制振材用エマルション(特許文献1参照。)等が開示されている。
特開2005−281576号公報
塗布型制振材には、優れた制振性を発揮することの他、塗膜が容易に剥離しない強度を有することも求められる。上記特許文献1の水性制振材用エマルションが、幅広い温度領域での高い制振性を与える制振材用エマルションの提供を目的としているように、従来の制振材用組成物は、優れた制振性を発揮することを目的として開発されたものが多く、制振材用組成物から形成される塗膜の強度については、充分に検討されてきたとはいえないのが現状である。自動車、鉄道車両、船舶、航空機や電気機器、建築構造物、建設機器等の塗布型制振材が使用される用途では、形成された塗膜が容易に破損したり剥離したりしない塗膜強度に優れたものであることも重要な特性である。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、優れた制振性を発揮するとともに、塗膜の剥離が充分に抑制された高い強度の塗膜を形成することができる制振材用組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、優れた制振性を発揮するとともに高い強度の塗膜を形成することができる制振材用組成物について種々検討したところ、数平均分子量が25000以下の(メタ)アクリル系ポリマーエマルションを含む組成物を制振材用組成物として用いると、この組成物から得られる塗膜が制振性にも優れ、また高い強度を有するものとなることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、単量体成分をエマルション重合してなる(メタ)アクリル系ポリマーエマルションを含む制振材用エマルション組成物であって、上記(メタ)アクリル系ポリマーは、数平均分子量が25000以下であることを特徴とする制振材用エマルション組成物である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の制振材用エマルション組成物は、数平均分子量が25000以下の(メタ)アクリル系ポリマーを1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。また、数平均分子量が25000以下の(メタ)アクリル系ポリマーを含む限り、(メタ)アクリル系以外のポリマーを含んでいてもよい。
本発明の制振材用エマルション組成物が含む(メタ)アクリル系ポリマーは、数平均分子量が25000以下のものである。制振性を発揮するためには、ポリマーに加えられた振動のエネルギーを摩擦による熱エネルギーに変えることが好適であり、ポリマーに振動が加えられたときに運動することが可能であることが必要となる。(メタ)アクリル系ポリマーがこのような数平均分子量を有するものであると、振動が加えられたときに重合体が充分に運動することができ、高い制振性を発揮することができる。また、このような数平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマーを含む制振材用エマルション組成物から得られる塗膜は、塗膜強度にも優れたものとなる。
このように、数平均分子量が25000以下の(メタ)アクリル系ポリマーのエマルションを制振材用エマルション組成物に使用することに本発明の技術的意義があり、数平均分子量が25000以下の(メタ)アクリル系ポリマーを含む制振材用エマルション組成物、このような制振材用エマルション組成物から形成される塗膜、及び、数平均分子量が25000以下の(メタ)アクリル系ポリマーを用いる制振材用エマルション組成物の製造方法のいずれも本発明に含まれる。
上記(メタ)アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは、22000以下である。アクリル系ポリマーの数平均分子量がこのような範囲であると、制振材用エマルション組成物がより制振性に優れたものとなる。数平均分子量は、より好ましくは、20000以下である。また、数平均分子量は、10000以上が好ましい。より好ましくは、15000以上である。
数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができる。
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、分子量分布が3.0以下であることが好ましい。このような分子量分布の幅のものであると、(メタ)アクリル系ポリマーに含まれるポリマーの多くが、好ましい数平均分子量と近い値を有することになり、効果的にポリマーに加えられた振動エネルギーを摩擦による熱エネルギーに変換することができ、制振性により優れたものとなる。分子量分布は、より好ましくは、2.5以下であり、更に好ましくは、2.3以下である。
なお、分子量分布とは、重量平均分子量/数平均分子量である。
本発明の制振材用エマルション組成物が含む(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸系単量体及び/又は(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分をエマルション重合して得られるものである。
なお、本明細書中、(メタ)アクリル酸系単量体とは、アクリロイル基若しくはメタクリロイル基、又は、これらの基における水素原子が他の原子若しくは原子団に置き換わった基を有し、かつ、−COOH基を有する単量体であり、(メタ)アクリル系単量体とは、アクリロイル基若しくはメタクリロイル基、又は、これらの基における水素原子が他の原子若しくは原子団に置き換わった基を有し、かつ、−COOH基がエステルとなった形態若しくは塩となった形態の単量体又はそのような単量体の誘導体である。
上記(メタ)アクリル系ポリマーの原料となる単量体成分は、全単量体成分100質量%に対して(メタ)アクリル酸系単量体を0.1〜20質量%、その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を80〜99.9質量%含んでなることが好ましい。(メタ)アクリル酸系単量体を含むことにより、本発明の制振材用エマルション組成物において、無機粉体等の充填材の分散性が向上し、制振性がより向上することになる。また、その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を含むことにより、重合体の酸価、Tgや物性等を調整しやすくなる。上記単量体成分において、(メタ)アクリル酸系単量体が0.1質量%以上であり、20質量%以下であれば、単量体成分が安定に共重合する。より好ましくは、全単量体成分100質量%に対して(メタ)アクリル酸系単量体を0.5〜3質量%、その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を97〜99.5質量%含んでなることである。
その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体には、(メタ)アクリル酸系単量体以外の(メタ)アクリル系単量体、芳香環を有する不飽和単量体、(メタ)アクリル酸系単量体と共重合可能なその他の単量体が含まれる。
上記(メタ)アクリル酸系単量体としては、アクリル酸又はメタクリル酸を用いることが好適である。
上記(メタ)アクリル酸系単量体以外の(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルアクリレート、ペンチルメタクリレート、イソアミルアクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタアクリレート等;これらの塩やエステル化物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することが好適である。
上記塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等であることが好ましい。金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子が好適である。また、有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩が好適である。
上記(メタ)アクリル系ポリマーの原料となる単量体成分としては、(メタ)アクリル系単量体を、全単量体成分100質量%に対して、20質量%以上含有するものであることが好ましい。より好ましくは、30質量%以上である。
上記芳香環を有する不飽和単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン等が挙げられる。好ましくはスチレンである。
上記(メタ)アクリル系単量体の原料となる単量体成分が芳香環を有する不飽和単量体を含む場合、全単量体成分100質量%に対して、芳香環を有する不飽和単量体を1〜70質量%含むことが好ましい。より好ましくは5〜60質量%であり、更に好ましくは10〜40質量%である。
上記(メタ)アクリル系ポリマーは、極性基含有単量体を含む単量体成分から得られたものであることも好ましい。
上記極性基含有単量体が有する極性基としては、有機化合物において一般に極性基とされるものであればよく、水酸基、カルボキシル基等が挙げられる。
また上記(メタ)アクリル系ポリマーの原料となる単量体成分が極性基含有単量体を含む場合、全単量体成分100質量%に対して、極性基含有単量体を0.1〜10質量%含むことが好ましい。より好ましくは0.3〜5質量%であり、更に好ましくは0.5〜2質量%である。
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーエマルションは、上記単量体成分から形成される(メタ)アクリル系ポリマーと水性媒体を含有してなるものであることが好ましい。
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーエマルションは、上記単量体成分から形成される(メタ)アクリル系ポリマーと水性媒体とを含むものである限り、その他の成分を含んでもよい。
その他の成分を含む場合、(メタ)アクリル系ポリマーエマルション全体に対して、その他の成分の割合は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。なお、ここでいうその他の成分とは、(メタ)アクリル系ポリマーエマルションを塗布し、加熱乾燥した後も塗膜中に残る不揮発分(固形分)のことを意味し、水性媒体は含まれない。
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーエマルションは、固形分の含有割合が(メタ)アクリル系ポリマーエマルション全体に対して40〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは50〜70質量%である。
なお、ここでいう固形分とは、(メタ)アクリル系ポリマーエマルションに含まれる水性媒体以外の成分を意味する。
本発明において、(メタ)アクリル系ポリマーは、上述したように1種の重合体であってもよく、2種以上の重合体からなるものでもよい。また、(メタ)アクリル系ポリマーが2種以上の重合体からなり、それらが複合化した形態のものであってもよいが、(メタ)アクリル系ポリマーがコア部とシェル部とを有するコア・シェル形態であることが好ましい。
コア・シェル構造においては、コア部の表面がシェル部によって被覆された形態であることが好ましい。この場合、コア部の表面は、シェル部によって完全に被覆されていることが好適であるが、完全に被覆されていなくてもよく、例えば、網目状に被覆されている形態や、所々においてコア部が露出している形態であってもよい。
上記コア部とシェル部とを有するエマルション粒子は、後述する乳化重合法(多段重合)を用いて得ることができる。
また、ポリマーエマルションを形成するポリマーのうち少なくとも1種がコア部とシェル部とを有するエマルション粒子の形態であることが好ましい。これにより、ポリマー間の界面を多くすることができ、制振性向上等の効果をより大きくすることができる。
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーが、コア部とシェル部とを有する形態である場合、上記(メタ)アクリル酸系単量体及び(メタ)アクリル酸系単量体と共重合可能なエチレン系不飽和単量体は、エマルションのコア部を形成する単量体成分、シェル部を形成する単量体成分のいずれに含まれていてもよく、これらの両方に用いられるものであってもよい。また、コア部を形成する単量体成分中の各単量体の好ましい含有割合、及び、シェル部を形成する単量体成分中の各単量体の好ましい含有割合は、上述したものと同様である。
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーが、コア部とシェル部とを有する形態である場合、コア部を構成する単量体成分の合計質量とシェル部を構成する単量体成分の合計質量との質量比(コア部/シェル部)が、30/70〜70/30であることが好ましい。このような範囲にあると、(メタ)アクリル系ポリマーがコア部とシェル部とを有する形態であることの効果を充分に発揮することができる。より好ましくは、35/65〜65/35である。
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が−20〜40℃であることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーがこのようなガラス転移温度を有するものであると、制振材の実用温度域での制振性能を効果的に発現することができる。(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、より好ましくは−15〜35℃であり、更に好ましくは−10〜30℃である。本発明における(メタ)アクリル系ポリマーがコア・シェル形態のものである場合、コア部とシェル部とを合わせたポリマー全体のガラス転移温度がこのような範囲であることが好ましい。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、既に得られている知見に基づいて決定されてもよいし、後述する単量体成分の種類や使用割合によって制御されてもよいが、理論上は、以下の計算式(1)より算出することができる。
Figure 2015063651
式中、Tg′は、ポリマーのTg(絶対温度)である。W′、W′、・・・Wn′は、全単量体成分に対する各単量体の質量分率である。T、T、・・・Tnは、各単量体成分からなるホモポリマー(単独重合体)のガラス転移温度(絶対温度)である。
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーがコア・シェル形態のものである場合、コア部のポリマーのガラス転移温度は、0〜60℃であることが好ましい。より好ましくは、10〜50℃である。
シェル部のポリマーのガラス転移温度は、−30〜30℃であることが好ましい。より好ましくは、−20〜20℃である。
またコア部のポリマーとシェル部のポリマーとのガラス転移温度の差は、5〜60℃であることが好ましい。このようにガラス転移温度に差を設けることにより、例えば、制振材用途に適用したときに、幅広い温度領域下でより高い制振性を発現させることが可能となり、特に実用的範囲である20〜60℃域での制振性がより向上されることとなる。ガラス転移温度の差は、より好ましくは5〜50℃であり、更に好ましくは5〜40℃である。
上記ポリマーエマルションにおける、エマルション粒子の平均粒子径は80〜450nmであることが好ましい。
平均粒子径がこの範囲にあるエマルション粒子を用いることにより、制振材に要求される塗膜外観、塗工性等の基本性能を充分なものとした上で、制振性をより優れたものとすることができる。上記上限は、より好ましくは400nm以下であり、更に好ましくは350nm以下である。エマルション粒子の平均粒子径がこのような範囲であると、上記制振材用エマルション組成物の作用効果がより効果的に発揮されることになる。また、平均粒子径の下限は、好ましくは100nm以上である。
平均粒子径(体積平均粒子径)は、例えば、エマルションを蒸留水で希釈し、充分に攪拌混合した後、ガラスセルに約10ml採取し、これを動的光散乱法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOMP Model 380」)で測定することにより求めることができる。
上記平均粒子径を有するエマルション粒子は、標準偏差をその体積平均粒子径で割った値(標準偏差/体積平均粒子径×100)で定義される粒度分布が、40%以下であることが好ましい。より好ましくは30%以下である。粒度分布が40%以下であることにより、粗大粒子が含まれず、その結果、制振材用エマルション組成物が充分な加熱乾燥性を発揮することができる。
本発明の制振材用エマルション組成物のpHとしては特に限定されないが、2〜10であることが好ましく、より好ましくは3〜9.5であり、更に好ましくは7〜9である。ポリマーエマルションのpHは、当該樹脂に、アンモニア水、水溶性アミン類、水酸化アルカリ水溶液等を添加することによって調整することができる。
本明細書中、pHは、pHメーターにより測定することができる。例えば、pHメーター(堀場製作所社製「F−23」)を用いて25℃での値を測定することが好ましい。
上記制振材用エマルション組成物の粘度としては特に限定されないが、1〜10000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは5〜5000mPa・sである。中でもより好ましくは、5〜2000mPa・sであり、更に好ましくは、5〜1500mPa・sである。中でも更に好ましくは、5〜1000mPa・sであり、特に好ましくは、5〜500mPa・sである。中でも特に好ましくは、10〜500mPa・sであり、更に特に好ましくは、20〜500mPa・sであり、最も好ましくは、50〜500mPa・sである。
なお、粘度は、B型回転粘度計を用いて、25℃、30min−1の条件下で測定することができる。
上記(メタ)アクリル系ポリマーエマルションの製造方法としては、乳化剤の存在下で乳化重合法により単量体成分を重合することになるが、乳化重合を行う形態としては特に限定されず、例えば、水性媒体中に単量体成分、重合開始剤及び乳化剤を適宜加えて重合することにより行うことができる。また、分子量調節のために重合連鎖移動剤等を用いることが好ましい。
上記(メタ)アクリル系ポリマーエマルションがコア部とシェル部とを有するエマルションである場合、通常の乳化重合法を用いて得ることが好ましい。具体的には、乳化剤及び/又は保護コロイドの存在下、水性媒体中で単量体成分を乳化重合させてコア部を形成した後、該コア部を含むエマルションに更に単量体成分を乳化重合させてシェル部を形成する多段重合により得ることが好ましい。このように、(メタ)アクリル系ポリマーエマルションがコア部とシェル部とを有するエマルションであって、該エマルションがコア部を形成した後、シェル部を形成する多段重合により得られるものである形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記水性媒体としては特に限定されず、例えば、水、水と混じり合うことができる溶媒の1種又は2種以上の混合溶媒、このような溶媒に水が主成分となるように混合した混合溶媒等が挙げられる。これらの中でも、本発明における(メタ)アクリル系ポリマーエマルションを含む塗料を塗布する際の安全性や環境への影響を考慮すると、水が好適である。
上記乳化剤の使用量としては、重合性不飽和結合基を有する化合物の総量100質量%に対して、好ましくは0.1〜10質量%である。0.1質量%以上であることにより、機械安定性及び重合安定性が良好となる。より好ましくは0.5〜5質量%であり、更に好ましくは1〜3質量%である。
乳化剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性の各種界面活性剤、及び、高分子界面活性剤の1種又は2種以上を用いることができる。
上記アニオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)スチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)ベンジルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルコハク酸ジ塩;ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィン塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記アニオン系界面活性剤として好適な市販品としては、例えば、ラテムルWX、ラテムル118B、ペレックスSS−H、エマルゲンA−60、B−66、レベノールWZ、エマールO(花王社製)、ニューコール707SF、ニューコール707SN、ニューコール714SF、ニューコール714SN、AB−26S、ABEX−2010、2020、2030、DSB(ローディア日華社製)、ハイテノール18E、ハイテノールNF−08(第一工業製薬社製)等を挙げることができる。
また、これらのノニオンタイプに相当する界面活性剤も使用することができる。
上記アニオン系界面活性剤としては、また反応性界面活性剤として、反応性アニオン系界面活性剤、スルホコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤、アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤等の1種又は2種以上を用いることができる。
スルホコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤の市販品としては、ラテムルS−120、S−120A、S−180及びS−180A(いずれも商品名、花王社製)、エレミノールJS−2(商品名、三洋化成工業社製)、アデカリアソープSR−10、SR−20、SR−30(ADEKA社製)等が挙げられる。
アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系界面活性剤の市販品としては、ラテムルASK(商品名、花王社製)等が挙げられる。
更に、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルフォネート塩(例えば、三洋化成工業社製「エレミノールRS−30」、日本乳化剤社製「アントックスMS−60」等)、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルフォネー卜塩(例えば、第一工業製薬社製「アクアロンKH−10」等)等のアリル基を有する硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(例えば、花王社製「ラテムルPD−104」等)等も用いることができる。
また、上記アニオン系界面活性剤としては、更に反応性界面活性剤として、下記の界面活性剤等も用いることができる。
炭素数3〜5の脂肪族不飽和カルボン酸のスルホアルキル(炭素数1〜4)エステル塩型界面活性剤、例えば、2−スルホエチル(メタ)アクリレートナトリウム塩、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートアンモニウム塩等の(メタ)アクリル酸スルホアルキルエステル塩型界面活性剤;スルホプロピルマレイン酸アルキルエステルナトリウム塩、スルホプロピルマレイン酸ポリオキシエチレンアルキルエステルアンモニウム塩、スルホエチルフマル酸ポリオキシエチレンアルキルエステルアンモニウム塩等の脂肪族不飽和ジカルボン酸アルキルスルホアルキルジエステル塩型界面活性剤。
上記ノニオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪族エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪族モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミド又は酸との縮合生成物等が挙げられる。例えば、市販品としては、エマルゲン1118S(花王社製)等が挙げられる。また、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、ADEKA社製「アデカリアソープER−20」等)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(例えば、花王社製「ラテムルPD−420」、「ラテムルPD−430」等)等の反応性を有するノニオン系界面活性剤も用いることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記カチオン系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリニウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記両性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記高分子界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物;(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシエチル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記界面活性剤として、アニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。より好ましくは、エチレンオキサイド鎖含有アニオン系界面活性剤を用いることである。アニオン系界面活性剤、中でもエチレンオキサイド鎖含有アニオン系界面活性剤を用いると、作業性が良好で、かつ、塗膜強度及び制振性に優れた塗膜を得ることができる。
また、上記界面活性剤の中でも、環境面からは、非ノニルフェニル型の界面活性剤を用いることが好適である。
上記界面活性剤の使用量としては、用いる界面活性剤の種類や単量体成分の種類等に応じて適宜設定すればよいが、重合時の安定性や重合後の貯蔵安定性確保に必要な最低限の量といった観点から、例えば、重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部であり、更に好ましくは1〜3質量部である。
上記保護コロイドとしては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩等のセルロース誘導体;グアーガム等の天然多糖類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なお、保護コロイドは単独で使用されてもよいし、界面活性剤と併用されてもよい。
上記保護コロイドの使用量としては、使用条件等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは3質量部以下である。
上記重合開始剤(酸化剤)としては、熱によって分解し、ラジカル分子を発生させる物質であれば特に限定されないが、水溶性開始剤が好適に使用される。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4′−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、t−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系重合開始剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記重合開始剤の使用量としては特に限定されず、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100質量部に対して、0.1〜2質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1質量部である。
上記重合開始剤には、乳化重合を促進させるため、必要に応じて還元剤を併用することができる。還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖等の還元性有機化合物;例えば、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、二酸化チオ尿素等の還元性無機化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記還元剤の使用量としては特に限定されず、例えば、重合体を形成するのに用いられる単量体成分の総量100質量部に対して、0.05〜1質量部であることが好ましい。
上記重合開始剤と還元剤の配合比(重合開始剤/還元剤)は、制振材用エマルション組成物において後述するイソチアゾリン系化合物を使用した場合に、イソチアゾリン系化合物の分解を防止する点から、モル比で1.0〜2.0であることが好ましく、1.2〜1.9がより好ましい。更に好ましくは、1.2〜1.8である。
上記重合連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素;メルカプト酢酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトピロピオン酸トリデシルエステル等のメルカプトカルボン酸アルキルエステル;メルカプト酢酸メトキシブチルエステル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルエステル等のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステル;オクタン酸2−メルカプトエチルエステル等のカルボン酸メルカプトアルキルエステルや、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、アニソール、アリルアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を用いることが好ましい。
上記重合連鎖移動剤の使用量としては、例えば、全単量体成分100質量%に対して、好ましくは0.1〜1.0質量%、より好ましくは0.3〜0.8質量%である。
上記乳化重合は、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のキレート剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の分散剤や、無機塩等の存在下で行ってもよい。また、単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
上記製造方法における乳化重合条件に関し、重合温度としては特に限定されず、例えば、0〜100℃であることが好ましく、より好ましくは40〜95℃である。また、重合時間も特に限定されず、例えば、1〜15時間とすることが好適で、より好ましくは5〜10時間である。
単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては特に限定されず、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
上記(メタ)アクリル系ポリマーエマルションの製造方法においては、乳化重合によりエマルションを製造した後、中和剤によりエマルションを中和することが好ましい。これにより、エマルションが安定化されることになる。
中和剤としては特に限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマーエマルションを必須とする制振材用エマルション組成物から形成される塗膜の耐水性等が向上することから、塗膜の加熱時に揮散する揮発性塩基を用いることが好ましい。より好ましくは、加熱乾燥性が良好となり、制振性、塗膜強度が向上することから、沸点が80〜360℃のアミンを用いることである。このような中和剤としては、例えば、トリエタノールアミン、2−メチルアミノエタノール、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の三級アミン、ジグリコールアミンが好適である。より好ましくは、沸点が130〜280℃のアミンを用いることである。
なお、上記沸点は、常圧での沸点である。
また、上記中和剤の分子量としては、特に限定されないが、揮発性の点から130〜280が好ましい。
更に、ポリマーエマルションに含有される重合体が有する酸基1当量に対して、アミンが0.6〜1.4当量になるように添加することが好ましい。より好ましくは0.8〜1.2当量である。
本発明の制振材用エマルション組成物は、組成物の総量100質量%に対し、固形分を40〜90質量%含有してなることが好ましく、より好ましくは50〜90質量%であり、更に好ましくは60〜90質量%である。
上記制振材用エマルション組成物における(メタ)アクリル系ポリマーの配合量としては、例えば、制振材用エマルション組成物の固形分100質量%に対し、(メタ)アクリル系ポリマーの固形分が10〜60質量%となるように設定することが好ましく、より好ましくは15〜60質量%である。
本発明の制振材用エマルション組成物は、その他の成分として、(A−1)沸点が150℃以上であり、かつ、水100gへの溶解度が3〜120gである化合物、及び、(A−2)沸点が260℃以上であり、かつ、構造中にエステル基を有する化合物のいずれか又は両方を制振性調整剤として含むことが好ましい。
(A−1)の化合物を添加すると、20〜60℃の温度域での制振性を向上させることができる。また通常、制振材用エマルション組成物に溶剤を添加すると、塗膜のTgが下がって40〜60℃の高温域の制振性能が低下したり、制振性を発現する温度領域が狭くなるが、(A−1)の化合物を添加しても、塗膜のTgが低下しないか、又は、低下してもその幅が小さいため、高温域の制振性能の低下がないか、又は、あったとしても充分に小さいため、高温域においても充分な制振性能を発揮することができる。(A−1)の化合物は、水溶性であるためポリマー粒子内部まで溶け込まず、可塑化(Tgを下げる)効果が少ない一方、塗膜の乾燥後は、ポリマー粒子表面で存在し、塗膜に柔軟性を付与する効果を発揮しているものと推定される。
また、(A−1)の化合物、及び、(A−2)の化合物には、添加することで塗膜の焼付け時の泡を消えやすくする(塗膜の空隙率を低下させる)効果がある。これにより、塗膜の強度、及び、基材との密着性が向上するため、本発明の制振材用エマルション組成物が、自動車や鉄道車両等の振動や衝撃を受ける可能性のある用途に用いられた場合でも、塗膜の破損や剥離が抑制され、良好な制振性を発揮することができる。
このような(A−1)の化合物や(A−2)の化合物を含むことによる効果は、上記式(1)で表されるイソチアゾリン系化合物とポリマーエマルションとを含む組成物の場合に限って発揮されるものではなく、ポリマーエマルションに対して(A−1)の化合物や(A−2)の化合物を添加することにより発揮することができるものである。したがって、ポリマーエマルションと、(A−1)の化合物や(A−2)の化合物とを含む組成物は、制振性等に優れた塗膜を形成する制振材用エマルション組成物として好適に使用することができる。
このような、沸点が150℃以上であり、かつ、水100gへの溶解度が3〜120gである化合物と、ポリマーエマルションとを含む制振材用エマルション組成物もまた、本発明の1つである。
また、沸点が260℃以上であり、かつ、構造中にエステル基を有する化合物と、ポリマーエマルションとを含む制振材用エマルション組成物もまた、本発明の1つである。
更に、(A−1)の化合物と(A−2)の化合物の両方と、ポリマーエマルションとを含む制振材用エマルション組成物もまた、本発明の1つである。
なお、上記(A−1)の化合物の沸点、(A−2)の化合物の沸点は、いずれも1気圧での沸点を意味するが、1気圧で沸点に達する前に分解する化合物については、減圧下での沸点を複数測定し、ノモグラフ(沸点換算図表)で換算した1気圧での沸点、又は、アントワンの式を用いて換算した1気圧での沸点により判断する。
アントワンの式は、蒸気圧p、温度Tとすると、下記式で表される。A、B、Cは化合物固有の定数であり、3点以上の蒸気圧実測値によりアントワン定数(A、B、C)を算出することで常圧での沸点を計算することができる。
Figure 2015063651
上記(A−1)の化合物は、沸点が150℃以上の化合物であるが、中でも沸点が180℃以上の化合物が好ましい。更に好ましくは190℃以上である。また、水100gへの溶解度が5〜100gの化合物が好ましく、より好ましくは、水100gへの溶解度が6〜80gの化合物であり、更に好ましくは、水100gへの溶解度が10〜80gの化合物である。
上記(A−1)の化合物としては、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
上記(A−2)の化合物は、沸点が260℃以上の化合物であるが、中でも沸点が300℃以上の化合物が好ましい。より好ましくは、沸点が400℃以上の化合物である。
上記(A−2)の化合物としては、ジエステル構造を有するものが好ましい。そのような化合物としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソドデシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル等が挙げられる。これらの中でも、構造中に芳香環を有する化合物が更に好ましい。
上記制振性調整剤の配合量は、制振材用エマルション組成物に含まれるポリマーエマルションの原料となる単量体成分100質量%に対して0.1〜40質量%であることが好ましい。このような割合で含むことで、(A−1)の化合物、上記(A−2)の化合物を含むことによる効果をより充分に発揮することができる。より好ましくは、単量体成分100質量%に対して0.5〜30質量%であり、更に好ましくは、0.5〜20質量%、特に好ましくは、0.5〜15質量%である。
なお、ここでいう「制振性調整剤の配合量」とは、制振材用エマルション組成物が制振性調整剤として(A−1)の化合物、(A−2)の化合物のいずれか一方のみを含む場合には、当該(A−1)の化合物、又は、上記(A−2)の化合物の配合量を意味し、制振材用エマルション組成物が制振性調整剤として(A−1)の化合物、(A−2)の化合物の両方を含む場合には、(A−1)の化合物、(A−2)の化合物の合計配合量を意味する。
上記(A−1)の化合物及び/又は(A−2)の化合物を含む本発明の制振材用エマルション組成物は、ホモポリマーのガラス転移温度が100℃以上である単量体を含む単量体成分をエマルション重合して得られたポリマーエマルションを含むものであることが好ましい。このようなポリマーエマルションに対して上記(A−1)の化合物及び/又は(A−2)の化合物を加えることで、幅広い温度領域での制振性を向上することができる。
上記ホモポリマーのガラス転移温度が100℃以上である単量体を含む単量体成分をエマルション重合して得られた(メタ)アクリル系ポリマーエマルションは、ホモポリマーのガラス転移温度が100℃以上である単量体の割合が、単量体成分100質量%中20〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは、30〜70質量%である。
上記(A−1)の化合物及び/又は(A−2)の化合物(制振性調整剤)と、ホモポリマーのガラス転移温度が100℃以上である単量体を含む単量体成分をエマルション重合して得られたポリマーエマルションとを含む制振材用エマルション組成物においては、ホモポリマーのガラス転移温度が100℃以上である単量体100質量%に対する制振性調整剤の配合量が、0.1〜50質量%であることが好ましい。このような配合割合であることで、制振材用エマルション組成物から得られる塗膜が、塗膜の強度及び基材との密着性により優れ、より良好な制振性を発揮することができる。より好ましくは、1〜40質量
%であり、更に好ましくは、2〜35質量%であり、特に好ましくは、3〜30質量%であり、最も好ましくは、3〜20質量%である。
なお、ここでいう「制振性調整剤の配合量」の意味は上述したものと同じである。
上記(A−1)の化合物及び/又は(A−2)の化合物を含む本発明の制振材用エマルション組成物は、ポリマーエマルションの原料となる単量体成分にブチルアクリレート及び/又は2−エチルヘキシルアクリレートを含むことが好ましく、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートを含むことがより好ましい。
上記単量体成分中のブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとを合わせた量はポリマーエマルションの原料となる単量体成分100質量%に対して、20〜60質量%が好ましく、より好ましくは30〜50質量%である。
なお、「単量体成分中のブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとを合わせた量」は、単量体成分がブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートのうちいずれか一方のみを含む場合には、当該単量体成分に含まれるブチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレートの量を意味する。
本発明の制振材用エマルション組成物に、充填材、顔料、発泡剤及び増粘剤等の成分を添加することで制振塗料配合物とすることができる。
このうち、制振塗料配合物が発泡剤を含む場合、得られる塗膜が充分な塗膜強度を有さないものとなる場合があるが、本発明の制振材用エマルション組成物が数平均分子量が25000以下の(メタ)アクリル系ポリマーを含むことで、制振塗料配合物が発泡剤を含む場合でも塗膜強度に優れた塗膜を形成することができる。
このような、本発明の制振材用エマルション組成物と発泡剤とを含んでなる制振塗料配合物もまた、本発明の1つである。
本発明において、制振塗料配合物とは、少なくとも本発明の制振材用エマルション組成物と発泡剤を含むものを意味する。制振塗料配合物は、発泡剤以外の他の成分を含んでいてもよい。
本発明の制振塗料配合物は、本発明の制振材用エマルション組成物と発泡剤と、必要に応じて他の成分とを配合して製造することができる。
このような、単量体成分をエマルション重合してなる数平均分子量が25000以下の(メタ)アクリル系ポリマーエマルションと発泡剤とを配合する工程を含む制振塗料配合物の製造方法もまた、本発明の1つである。
本発明の制振塗料配合物の製造方法は、単量体成分をエマルション重合してなる数平均分子量が25000以下の(メタ)アクリル系ポリマーエマルションと発泡剤とを配合する工程を含む限り、充填材、顔料、増粘剤等の他の成分を配合する工程を含んでいてもよい。このような他の成分を配合する工程を含む場合、発泡剤、又は、他の成分のいずれを先に(メタ)アクリル系ポリマーエマルションに配合するかは特に制限されず、本発明の制振塗料配合物の製造方法は、いずれを先に(メタ)アクリル系ポリマーエマルションに配合する工程を含むものであってもよい。
上記制振塗料配合物における本発明の制振材用エマルション組成物の配合量としては、制振塗料配合物の固形分100質量%に対し、制振材用エマルション組成物の固形分が10〜60質量%となるように設定することが好ましく、より好ましくは15〜60質量%である。
上記発泡剤としては、例えば、低沸点炭化水素内包の加熱膨張カプセル、有機発泡剤、無機発泡剤等が好適であり、これらの1種又は2種以上を使用することができる。加熱膨張カプセルとしては、例えば、マツモトマイクロスフィアーF−30、F−50(松本油脂社製);エクスパンセルWU642、WU551、WU461、DU551、DU401(日本エクスパンセル社製)等が挙げられ、有機発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジン、p−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)等が挙げられ、無機発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、シリコンハイドライド等が挙げられる。
本発明の制振塗料配合物が発泡剤を含む場合、発泡剤の含有量は、制振材用エマルション組成物の固形分100質量%に対して、0.4〜8.0質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.6〜7.0質量%である。
上記増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース系誘導体、ポリカルボン酸系樹脂等が挙げられる。増粘剤の配合量としては、制振材用エマルション組成物の固形分100質量部に対し、固形分で0.01〜2質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.05〜1.5質量部であり、更に好ましくは0.1〜1質量部である。
その他、本発明の制振塗料配合物に配合することのできる他の成分としては、例えば、溶媒;水系架橋剤;充填材;ゲル化剤;分散剤;消泡剤;着色剤;防錆顔料;可塑剤;安定剤;湿潤剤;防腐剤;発泡防止剤;老化防止剤;防黴剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
なお、上記他の成分は、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等を用いて、上記(メタ)アクリル系ポリマー等と混合することができる。
上記溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。溶剤の配合量としては、制振塗料配合物中の制振材用エマルション組成物の固形分濃度が上述した範囲となるように適宜設定すればよい。
上記水系架橋剤としては、例えば、エポクロスWS−500、WS−700、K−2010、2020、2030(いずれも商品名、日本触媒社製)等のオキサゾリン化合物;アデカレジンEMN−26−60、EM−101−50(いずれも商品名、ADEKA社製)等のエポキシ化合物;サイメルC−325(商品名、三井サイテック社製)等のメラミン化合物;ブロックイソシアネート化合物;AZO−50(商品名、50質量%酸化亜鉛水分散体、日本触媒社製)等の酸化亜鉛化合物等が好適である。水系架橋剤の配合量としては、例えば、制振材用エマルション組成物の固形分100質量部に対し、固形分で0.01〜20質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.15〜15質量部、更に好ましくは0.5〜15質量部である。
水系架橋剤は、(メタ)アクリル系ポリマーに添加してよいし、制振塗料配合物として他の成分を配合するときに同時に添加してもよい。上記(メタ)アクリル系ポリマー、制振材用エマルション組成物又は制振塗料配合物に架橋剤を混合することにより、樹脂の強靱性が向上し、その結果、高温領域で充分な高制振性が発現する。中でもオキサゾリン化合物を用いることが好ましい。
上記充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、ガラストーク、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、珪藻土、クレー等の無機質充填材;ガラスフレーク、マイカ等の鱗片状無機質充填材;金属酸化物ウィスカー、ガラス繊維等の繊維状無機質充填材等が挙げられる。充填材の配合量としては、制振材用エマルション組成物の固形分100質量部に対し、50〜700質量部とすることが好ましく、より好ましくは100〜550質量部である。
上記ゲル化剤としては、例えば、デンプン、寒天等が挙げられる。
上記分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等の無機質分散剤、及び、ポリカルボン酸系分散剤等の有機質分散剤が挙げられる。
上記防腐剤としては、イソチアゾリン系化合物等が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤等が挙げられる。
上記着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄、ハンザイエロー、ベンジンイエロー、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド等の有機又は無機の着色剤が挙げられる。
上記防錆顔料としては、例えば、リン酸金属塩、モリブデン酸金属塩、硼酸金属塩等が挙げられる。
上記他の成分としては更に、多価金属化合物を用いてもよい。この場合、多価金属化合物により、制振材用エマルション組成物の安定性、分散性、加熱乾燥性や、制振塗料配合物から形成される制振材の制振性が向上することとなる。多価金属化合物としては特に限定されず、例えば、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記多価金属化合物の形態としては、例えば、粉体、水分散体や乳化分散体等であってよい。中でも、制振塗料配合物中への分散性が向上することから、水分散体又は乳化分散体の形態で使用することが好ましく、より好ましくは乳化分散体の形態で使用することである。
また、多価金属化合物の使用量は、制振材用エマルション組成物中の固形分100質量部に対して、0.05〜5.0質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.05〜3.5質量部である。
本発明の制振塗料配合物のpHとしては特に限定されないが、2〜10であることが好ましく、より好ましくは3〜9であり、更に好ましくは7〜8である。制振塗料配合物のpHは、当該樹脂に、アンモニア水、水溶性アミン類、水酸化アルカリ水溶液等を添加することによって調整することができる。
制振塗料配合物のpHは、上述した制振材用エマルション組成物のpHと同様の方法により測定することができる。
本発明の制振塗料配合物の粘度としては特に限定されないが、2min−1(=2回転/分)の条件下では、100〜2000Pa・sであることが好ましく、より好ましくは200〜1000Pa・sである。また、20min−1(=20回転/分)の条件下では、10〜500Pa・sであることが好ましく、より好ましくは30〜300Pa・sである。
このような粘度であると、基材への塗工がしやすく、かつ、液ダレのない、塗布型制振材用組成物として好適なものとなる。
B型回転粘度計を用いて、25℃の条件下で測定することができる。
また、制振塗料配合物を塗布し乾燥させて得られる制振材も、本発明の1つである。
本発明の制振塗料配合物から形成される制振材の塗膜の膜厚は、1〜5mmであることが好ましい。本発明の制振塗料配合物から形成される塗膜を制振性、剥離強度に優れたものとする点からは、1.5〜4.5mmであることが好ましい。
塗膜の膜厚は、ノギスにより測定することができる。
本発明の制振塗料配合物は、例えば、基材に塗布して乾燥することにより制振材となる塗膜を形成することができる。制振塗料配合物を基材に塗布する方法としては、例えば、刷毛、へら、エアスプレー、エアレススプレー、モルタルガン、リシンガン等を用いて塗布することができる。
上記制振塗料配合物を塗布した後、乾燥して塗膜を形成させる条件としては、加熱乾燥してもよく、常温乾燥してもよいが、本発明の制振塗料配合物は、加熱乾燥性に優れることから、効率性の点で加熱乾燥することが好ましい。制振塗料が発泡剤を含む場合には、発泡剤の発泡効果を充分に発揮するため、発泡剤の発泡温度よりも高い温度で乾燥させることが好ましい。加熱乾燥の温度の下限としては、110℃以上とすることが好ましく、より好ましくは120℃以上である。また、加熱乾燥の温度の上限としては、210℃以下とすることが好ましく、より好ましくは170℃以下である。
本発明の制振塗料配合物を制振材用途に適用する場合、その制振性は、制振塗料配合物から形成される膜の損失係数を測定することにより評価することができる。
損失係数は、通常ηで表され、制振材に対して与えた振動がどの程度減衰したかを示すものである。上記損失係数は、数値が高いほど制振性能に優れていることを示す。
上記損失係数の測定方法としては、共振周波数付近で測定する共振法が一般的であり、半値幅法、減衰率法、機械インピーダンス法がある。本発明の制振塗料配合物において、制振塗料配合物から形成される膜の損失係数としては、片持ち梁法を用いた共振法(3dB法)により測定することが好適である。片持ち梁法を用いる測定は、例えば、株式会社小野測機製のCF−5200型FFTアナライザーを用いて行うことができる。
また、上記損失係数は、冷間圧延鋼板(SPCC−SD:長さ250mm×幅10mm×厚み1.6mm)上に、長さ200mm×幅10mm×厚み3.0mmの塗膜容量で制振塗料配合物を塗布し、95℃×30分間乾燥後、130℃×60分間焼付け乾燥して被膜を形成することにより、測定することが好ましい。損失係数の測定は、例えば、20℃、30℃、40℃及び60℃の各温度における損失係数を共振法(3dB法)により測定し、その中のピーク値により評価するのが好ましい。また、制振塗料配合物から形成される膜の実用温度範囲が通常では20〜60℃であるので、20〜60℃の各温度における損失係数を合計した値で制振性能を評価してもよく、制振塗料配合物から形成される膜が、20℃、40℃及び60℃における損失係数を合計した総損失係数が0.200以上であることが好ましい。より好ましくは、0.250以上であり、更に好ましくは、0.300以上である。そのような制振塗料配合物である場合に、制振塗料配合物から形成される膜の実用温度範囲である20〜60℃において充分な制振性を発揮しているということができる。
本発明の制振材用エマルション組成物は、上述の構成よりなり、優れた制振性を発揮するとともに、高い強度の塗膜を形成することができる制振塗料配合物に用いることができることから、形成された塗膜が剥離する不具合の発生を抑制することができ、自動車、鉄道車両、船舶、航空機や電気機器、建築構造物、建設機器等の塗布型制振材が使用される用途において好適に用いることができる制振材用エマルション組成物である。
実施例における剥離強度の測定方法を示した概念図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
以下の製造例において、各種物性等は以下のように評価した。
<平均粒子径>
動的光散乱法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOMP Model 380」)を用い、エマルション粒子の体積平均粒子径を測定した。
<不揮発分(N.V.)>
得られたエマルション約1gを秤量、熱風乾燥機で110℃×1時間後、乾燥残量を不揮発分として、乾燥前質量に対する比率を質量%で表示した。
<pH>
pHメーター(堀場製作所社製「F−23」)により25℃での値を測定した。
<粘度>
B型回転粘度計(東機産業社製「VISCOMETER TUB−10」)を用いて、25℃、30min−1の条件下で測定した。
<数平均分子量>
以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
<ガラス転移温度(Tg)>
各段で用いた単量体組成から、下記計算式(1)を用いて算出した。
Figure 2015063651
なお、全ての段で用いた単量体組成から算出したTgを「トータルTg」として記載した。
上記計算式(1)により重合性単量体成分のガラス転移温度(Tg)を算出するのに使用したそれぞれのホモポリマーのTg値を下記に示した。
メチルメタクリレート(MMA):105℃
スチレン(St):100℃
ブチルアクリレート(BA):−56℃
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
アクリル酸(AA):95℃
実施例1
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水285部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにスチレン180部、メチルメタクリレート180部、2−エチルヘキシルアクリレート130部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン3.0部、予め20%水溶液に調整したハイテノール18E(商品名、第一工業製薬社製)75部及び脱イオン水100部からなる第1段目の単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの50部、3%過硫酸カリウム水溶液6.6部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液5.0部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を120分にわたって均一に滴下した。同時に3%過硫酸カリウム水溶液80部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持した。次に、滴下ロートにスチレン105部、メチルメタクリレート100部、2−エチルヘキシルアクリレート85部、ブチルアクリレート200部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン4.0部、予め20%水溶液に調整したハイテノール18E(商品名、第一工業製薬社製)75部及び脱イオン水100部からなる第2段目の単量体乳化物を仕込み、120分にわたって均一に滴下した。同時に3%過硫酸カリウム水溶液80部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後90分同温度を維持し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、2−ジメチルエタノールアミン20部及びファインサイドHS−10;3部(商品名、東京ファイン社製、有効成分5%)を添加し、不揮発分54.9%、pH8.2、粘度410mPa・s、数平均分子量16,000、分子量分布3.0の制振材用エマルション組成物1を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは34℃、第2段目のポリマーのTgは−12℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
実施例2
実施例1において、第1段目の単量体乳化物を、メチルメタクリレート300部、2−エチルヘキシルアクリレート75部、ブチルアクリレート115部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン2.5部、予め20%水溶液に調整したラテムル118B(商品名、花王社製)75部及び脱イオン水100部に変更し、第2段目の単量体乳化物を、メチルメタクリレート250部、2−エチルヘキシルアクリレート50部、ブチルアクリレート190部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン2.5部、予め20%水溶液に調整したラテムル118B(商品名、花王社製)75部及び脱イオン水100部に変更し、更に、得られた反応液を室温まで冷却後、得られた反応液に加えた添加剤として、ファインサイドHS−10;3部の代わりにロシマ553(商品名、ダウ社製、有効成分12%)1.5部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分55%、pH8.1、粘度500mPa・s、数平均分子量24,000、分子量分布2.1の制振材用エマルション組成物2を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
実施例3
実施例1において、第1段目の単量体乳化物を、2−エチルヘキシルアクリレート50部、ブチルアクリレート90部、スチレン250部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン3.0部、予め20%水溶液に調整したラテムルWX(商品名、花王社製)60部及び脱イオン水80部に変更し、初期重合以後に使用する亜硫酸水素ナトリウム水溶液を2.3%亜硫酸水素ナトリウム水溶液に変更し、同時に滴下した3%過硫酸カリウム水溶液を64部、初期重合以後に使用する2.3%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を24部に変更し、第2段目の単量体乳化物を、2−エチルヘキシルアクリレート290部、スチレン300部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン3.0部、予め20%水溶液に調整したラテムルWX(商品名、花王社製)90部及び脱イオン水120部に変更し、同時に滴下した3%過硫酸カリウム水溶液を96部、2.3%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を36部に変更し、更に、得られた反応液を室温まで冷却後、得られた反応液に加えた添加剤として、ファインサイドHS−10;3部の代わりにプロキセルGXL(商品名、ロンザ社製、有効成分20%)0.5部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.6%、pH8.0、粘度290mPa・s、数平均分子量20,000、分子量分布2.0の制振材用エマルション組成物3を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは21℃、第2段目のポリマーのTgは−8℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、3℃である。
実施例4
実施例1において、第1段目の単量体乳化物を、2−エチルヘキシルアクリレート100部、スチレン220部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン2.5部、予め20%水溶液に調整したニューコール707SF(商品名、日本乳化剤社製)49.5部及び脱イオン水66部に変更し、初期重合以後に使用する亜硫酸水素ナトリウム水溶液を1.6%亜硫酸水素ナトリウム水溶液に変更し、同時に滴下した3%過硫酸カリウム水溶液を52.8部、初期重合以後に使用する1.6%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を19.8部に変更し、第2段目の単量体乳化物を、2−エチルヘキシルアクリレート150部、スチレン330部、ブチルアクリレート180部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン5.0部、予め20%水溶液に調整したニューコール707SF(商品名、日本乳化剤社製)100.5部及び脱イオン水134部に変更し、同時に滴下した3%過硫酸カリウム水溶液を107.2部、1.6%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を40.2部に変更し、更に、得られた反応液を室温まで冷却後、得られた反応液に加えた添加剤として、ファインサイドHS−10;3部の代わりにプロキセルNBZ(商品名、ロンザ社製、有効成分10%)1.0部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.7%、pH7.9、粘度270mPa・s、数平均分子量20,000、分子量分布2.3の制振材用エマルション組成物4を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは24℃、第2段目のポリマーのTgは−3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、6℃である。
実施例5
実施例1において、第1段目の単量体乳化物を、2−エチルヘキシルアクリレート165部、スチレン165部、メチルメタクリレート160部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン3.0部、予め20%水溶液に調整したエマールO(商品名、花王社製)75部及び脱イオン水100部に変更し、第2段目の単量体乳化物を、2−エチルヘキシルアクリレート85部、スチレン105部、メチルメタクリレート100部、ブチルアクリレート200部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン3.0部、予め20%水溶液に調整したエマールO(商品名、花王社製)75部及び脱イオン水100部に変更し、更に、得られた反応液を室温まで冷却後、得られた反応液に加えた添加剤として、ファインサイドHS−10;3部の代わりにロシマ553(商品名、ダウ社製、有効成分12%)1.0部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.8%、pH7.9、粘度200mPa・s、数平均分子量25,000、分子量分布3.0の制振材用エマルション組成物5を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは20℃、第2段目のポリマーのTgは−12℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、3℃である。
実施例6
実施例1において、第1段目の単量体乳化物を、2−エチルヘキシルアクリレート75部、メチルメタクリレート300部、ブチルアクリレート115部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン4.5部、予め20%水溶液に調整したラテムル118Bとエマルゲン1118S(商品名、共に花王社製、両者の質量比率1:1)75部及び脱イオン水100部に変更し、第2段目の単量体乳化物を、2−エチルヘキシルアクリレート50部、メチルメタクリレート250部、ブチルアクリレート190部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン4.5部、予め20%水溶液に調整したラテムル118Bとエマルゲン1118S(商品名、共に花王社製、両者の質量比率1:1)75部及び脱イオン水100部に変更し、更に、得られた反応液を室温まで冷却後、得られた反応液に加えた添加剤として、2−ジメチルエタノールアミンの代わりにトリエチルアミン22部を用い、ファインサイドHS−10;3部の代わりにプロキセルNBZ(商品名、ロンザ社製、有効成分10%)1.0部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分55%、pH8.0、粘度240mPa・s、数平均分子量13,000、分子量分布2.9の制振材用エマルション組成物6を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
実施例7
実施例1において、第1段目の単量体乳化物を、2−エチルヘキシルアクリレート50部、スチレン250部、ブチルアクリレート90部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン3.0部、予め20%水溶液に調整したハイテノールNF−08(商品名、第一工業製薬社製)60部及び脱イオン水80部に変更し、同時に滴下した3%過硫酸カリウム水溶液を64部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を24部に変更し、第2段目の単量体乳化物を、2−エチルヘキシルアクリレート290部、スチレン300部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン3.0部、予め20%水溶液に調整したハイテノールNF−08(商品名、第一工業製薬社製)90部及び脱イオン水120部に変更し、同時に滴下した3%過硫酸カリウム水溶液を96部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を36部に変更し、更に、得られた反応液を室温まで冷却後、得られた反応液に加えた添加剤として、2−ジメチルエタノールアミンの代わりにアンモニア10部を用い、ファインサイドHS−10;3部の代わりにトップサイド1000(商品名、パーマケムアジア社製、有効成分5%)1.0部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.8%、pH8.1、粘度230mPa・s、数平均分子量25,000、分子量分布2.1の制振材用エマルション組成物7を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは21℃、第2段目のポリマーのTgは−8℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、3℃である。
比較例1
実施例1から第一段目に用いるt−ドデシルメルカプタン2.0部にし、初期重合以後に使用する亜硫酸水素ナトリウム水溶液を7.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液に変更すること、第一段目の単量体乳化物のうちの100部を添加して初期重合を開始したことと、第二段目に用いるt−ドデシルメルカプタン1.0部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液濃度を7.5%にすること、ファインサイドHS−10を3部の代わりに、プロキセルGXLを0.25部とファインサイドHS−10を1部用いること、及び、2−ジメチルエタノールアミンの代わりにジグリコールアミン22部を用いること以外は同様の操作を繰り返し、不揮発分54.7%、pH7.8、粘度150mPa・s、数平均分子量35,000、分子量分布2.9の比較制振材用エマルション組成物1を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは34℃、第2段目のポリマーのTgは−12℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例2
実施例1から第一段目にはt−ドデシルメルカプタンを用いないこと、第一段目の単量体乳化物のうちの100部を添加して初期重合を開始したことと、第二段目に用いるt−ドデシルメルカプタンの量を0.1部にすること、及び、ファインサイドHS−10を3部の代わりに、プロキセルGXLを0.25部とファインサイドHS−10を1部用いること以外は同様の操作を繰り返して、不揮発分54.6%、pH7.8、粘度350mPa・s、数平均分子量81,000、分子量分布3.0の比較制振材用エマルション組成物2を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは34℃、第2段目のポリマーのTgは−12℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例3
実施例1で重合器に仕込んだ水の量を435部、初期反応分及び滴下分の2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を用いず、3%過硫酸カリウムの使用量を初期反時1.6部、第一段目の滴下時に35部、第二段目の滴下時に35部に変更したこと、t−ドデシルメルカプタンの使用量を第一段目、第二段目ともに2.5部としたこと、第一段目の単量体乳化物のうちの100部を添加して初期重合を開始したことと、及び、2−ジメチルエタノールアミンの代わりにモノエタノールアミン14部を用いること以外は同様の操作を繰り返して、不揮発分54.5%、pH8.3、粘度350mPa・s、数平均分子量29,000、分子量分布2.8の比較制振材用エマルション組成物3を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは34℃、第2段目のポリマーのTgは−12℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例4
実施例1において、第1段目の単量体乳化物を、メチルメタクリレート300部、2−エチルヘキシルアクリレート75部、ブチルアクリレート115部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン1.0部、予め20%水溶液に調整したラテムル118B(商品名、花王社製)75部及び脱イオン水100部に変更し、第一段目の単量体乳化物のうちの100部を添加して初期重合を開始したことと、第2段目の単量体乳化物を、メチルメタクリレート250部、2−エチルヘキシルアクリレート50部、ブチルアクリレート190部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン1.0部、予め20%水溶液に調整したラテムル118B(商品名、花王社製)75部及び脱イオン水100部に変更し、更に、得られた反応液を室温まで冷却後、得られた反応液に加えた添加剤として、ファインサイドHS−10;3部の代わりにロシマ553(商品名、ダウ社製、有効成分12%)1.5部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.9%、pH8.0、粘度440mPa・s、数平均分子量45,000、分子量分布3.1の比較制振材用エマルション組成物4を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
実施例8
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水285部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにスチレン180部、メチルメタクリレート180部、2−エチルヘキシルアクリレート130部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン3.0部、予め20%水溶液に調整したハイテノール18E(商品名、第一工業製薬社製)75部及び脱イオン水100部からなる第1段目の単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの50部、3%過硫酸カリウム水溶液6.6部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液5.0部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を120分にわたって均一に滴下した。同時に3%過硫酸カリウム水溶液80部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持した。次に、滴下ロートにスチレン105部、メチルメタクリレート100部、2−エチルヘキシルアクリレート85部、ブチルアクリレート200部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン4.0部、予め20%水溶液に調整したハイテノール18E(商品名、第一工業製薬社製)75部及び脱イオン水100部からなる第2段目の単量体乳化物を仕込み、120分にわたって均一に滴下した。同時に3%過硫酸カリウム水溶液80部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後90分同温度を維持し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、2−ジメチルエタノールアミン20部、プロピレングリコールジアセテート21部及びファインサイドHS−10;3部(商品名、東京ファイン社製、有効成分5%)を添加し、不揮発分54.8%、pH8.2、粘度410mPa・s、数平均分子量17,000、分子量分布2.9の制振材用エマルション組成物8を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは34℃、第2段目のポリマーのTgは−12℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
実施例9
実施例8において、第1段目の単量体乳化物を、2−エチルヘキシルアクリレート50部、スチレン250部、ブチルアクリレート90部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン3.0部、予め20%水溶液に調整したラテムルWX(商品名、花王社製)60部及び脱イオン水80部に変更し、同時に滴下した3%過硫酸カリウム水溶液を64部、2.3%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を24部に変更し、第2段目の単量体乳化物を、2−エチルヘキシルアクリレート290部、スチレン300部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン3.0部、予め20%水溶液に調整したラテムルWX(商品名、花王社製)90部及び脱イオン水120部に変更し、同時に滴下した3%過硫酸カリウム水溶液を96部、2.3%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を36部に変更し、更に、得られた反応液を室温まで冷却後、得られた反応液に加えた添加剤として、プロピレングリコールジアセテート21部及びファインサイドHS−10;3部の代わりにジプロピレングリコールモノプロピルエーテル21部及びプロキセルGXL(商品名、ロンザ社製、有効成分20%)0.5部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.5%、pH8.1、粘度500mPa・s、数平均分子量20,000、分子量分布2.1の制振材用エマルション組成物9を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
実施例10
実施例8において、プロピレングリコールジアセテート21部の代わりにフタル酸ジイソデシル21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分55.4%、pH8.2、粘度410mPa・s、数平均分子量16,000、分子量分布3.2の制振材用エマルション組成物10を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは34℃、第2段目のポリマーのTgは−12℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
実施例11
実施例8において、プロピレングリコールジアセテート21部の代わりにフタル酸ジイソノニル10部及びジプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分55.1%、pH8.2、粘度410mPa・s、数平均分子量17,000、分子量分布2.9の制振材用エマルション組成物11を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは34℃、第2段目のポリマーのTgは−12℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例5
実施例8において、第一段目単量体乳化物のうちの100部を添加して初期重合を開始したことと、第1段目の単量体乳化物にt−ドデシルメルカプタンを用いず、第2段目の単量体乳化物のt−ドデシルメルカプタンを4.0部から0.1部に変更した以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.5%、pH7.8、粘度340mPa・s、数平均分子量84,000、分子量分布3.0の比較制振材用エマルション組成物5を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは34℃、第2段目のポリマーのTgは−12℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例6
実施例8において、第一段目単量体乳化物のうちの100部を添加して初期重合を開始したことと、第1段目の単量体乳化物にt−ドデシルメルカプタンを用いず、第2段目の単量体乳化物のt−ドデシルメルカプタンを4.0部から0.1部に変更し、プロピレングリコールジアセテート21部の代わりにジプロピレングリコールモノブチルエーテル21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.6%、pH7.8、粘度350mPa・s、数平均分子量83,000、分子量分布3.0の比較制振材用エマルション組成物6を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは34℃、第2段目のポリマーのTgは−12℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例7
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水285部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにメチルメタクリレート300部、2−エチルヘキシルアクリレート75部、ブチルアクリレート115部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン1.0部、予め20%水溶液に調整したラテムル118B(商品名、花王社製)75部及び脱イオン水100部からなる第1段目の単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの100部、3%過硫酸カリウム水溶液6.6部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液5.0部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を120分にわたって均一に滴下した。同時に3%過硫酸カリウム水溶液80部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持した。次に、滴下ロートにメチルメタクリレート250部、2−エチルヘキシルアクリレート50部、ブチルアクリレート190部、アクリル酸10部、t−ドデシルメルカプタン1.0部、予め20%水溶液に調整したラテムル118B(商品名、花王社製)75部及び脱イオン水100部からなる第2段目の単量体乳化物を仕込み、120分にわたって均一に滴下した。同時に3%過硫酸カリウム水溶液80部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液30部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後90分同温度を維持し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、2−ジメチルエタノールアミン20部、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部及びロシマ553(商品名、ダウ社製、有効成分12%)1.5部を添加し、不揮発分54.9%、pH8.0、粘度430mPa・s、数平均分子量42,000、分子量分布3.0の比較制振材用エマルション組成物7を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例8
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにプロピレングリコールジアセテート21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.7%、pH8.0、粘度430mPa・s、数平均分子量44,000、分子量分布3.1の比較制振材用エマルション組成物8を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例9
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにジプロピレングリコールモノプロピルエーテル21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.8%、pH8.0、粘度420mPa・s、数平均分子量46,000、分子量分布3.2の比較制振材用エマルション組成物9を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例10
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにジプロピレングリコールモノブチルエーテル21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.8%、pH8.0、粘度430mPa・s、数平均分子量45,000、分子量分布3.1の比較制振材用エマルション組成物10を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例11
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部を90部に増量した以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.9%、pH8.0、粘度400mPa・s、数平均分子量46,000、分子量分布3.2の比較制振材用エマルション組成物11を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例12
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにプロピレングリコールジアセテート11部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.8%、pH8.0、粘度440mPa・s、数平均分子量49,000、分子量分布3.1の比較制振材用エマルション組成物12を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例13
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにジエチレングリコールモノエチルエーテル21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.3%、pH8.0、粘度390mPa・s、数平均分子量47,000、分子量分布3.0の比較制振材用エマルション組成物13を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例14
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにエチレングリコールモノプロピルエーテル21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.7%、pH8.0、粘度400mPa・s、数平均分子量43,000、分子量分布3.2の比較制振材用エマルション組成物14を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例15
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分54.6%、pH8.0、粘度400mPa・s、数平均分子量46,000、分子量分布3.1の比較制振材用エマルション組成物15を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例16
実施例8において、プロピレングリコールジアセテート21部の代わりにフタル酸ジイソデシル21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分55.4%、pH8.2、粘度410mPa・s、数平均分子量79,000、分子量分布2.9の比較制振材用エマルション組成物16を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは34℃、第2段目のポリマーのTgは−12℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例17
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにフタル酸ジイソデシル21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分55.4%、pH8.0、粘度400mPa・s、数平均分子量43,000、分子量分布3.2の比較制振材用エマルション組成物17を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例18
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにフタル酸ジオクチル21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分55.4%、pH8.0、粘度400mPa・s、数平均分子量44,000、分子量分布3.1の比較制振材用エマルション組成物18を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例19
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにフタル酸ジイソノニル21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分55.4%、pH8.0、粘度400mPa・s、数平均分子量42,000、分子量分布3.3の比較制振材用エマルション組成物19を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例20
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにアジピン酸ジオクチル21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分55.4%、pH8.0、粘度1700mPa・s、数平均分子量45,000、分子量分布3.2の比較制振材用エマルション組成物20を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例21
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにフタル酸ジオクチル10部及びジプロピレングリコールモノブチルエーテル10部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分55.1%、pH8.0、粘度400mPa・s、数平均分子量43,000、分子量分布3.2の比較制振材用エマルション組成物21を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例22
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにフタル酸ジイソノニル10部及びジプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分55.1%、pH8.0、粘度400mPa・s、数平均分子量46,000、分子量分布3.1の比較制振材用エマルション組成物22を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例23
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにマレイン酸ジメチル21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分55.4%、pH8.0、粘度680mPa・s、数平均分子量45,000、分子量分布3.1の比較制振材用エマルション組成物23を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
比較例24
比較例7において、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート21部の代わりにアジピン酸ジイソノニル21部を用いた以外は、同様の操作を行い、不揮発分55.4%、pH8.1、粘度770mPa・s、数平均分子量43,000、分子量分布3.2の比較制振材用エマルション組成物24を得た。なお、第1段目のポリマーのTgは18℃、第2段目のポリマーのTgは3℃、第1段目、第2段目を合わせたポリマー全体のTgは、10℃である。
上記実施例及び比較例で用いた各商品名の具体的内容は以下のとおりである。
<イソチアゾリン系化合物>
*ファインサイドHS−10:東京ファイン社製、有効成分5%、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)
*ロシマ553:ダウ社製、有効成分12%、2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(OIT)及び2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)
*プロキセルGXL:ロンザ社製、有効成分20%、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)
*プロキセルNBZ:ロンザ社製、イソチアゾリンの有効成分5%、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)及びジンクピリチオン(ZPT)
*トップサイド1000:パーマケムアジア社製、有効成分5%、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(C−MIT)及び2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)
<乳化剤>
*ハイテノール18E:第一工業製薬社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム(アニオン系)
*ラテムル118B:花王社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(アニオン系)
*ラテムルWX:花王社製、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸アンモニウム(アニオン系)
*ニューコール707SF:日本乳化剤社製、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム(アニオン系)
*エマールO:花王社製、ラウリル硫酸ナトリウム(アニオン系)
*エマルゲン1118S:花王社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ノニオン系)
*ハイテノールNF−08:第一工業製薬社製、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム(アニオン系)
上記実施例、比較例において用いた制振性調製剤を表1に示す。表1中、(A−1)比較の欄に記載の化合物は、化合物の沸点又は水100gへの溶解度が上記(A−1)の化合物の要件を満たさない、(A−1)の化合物との比較のための化合物であり、(A−2)比較の欄に記載のマレイン酸ジメチルは、化合物の沸点が上記(A−2)の化合物の要件を満たさない、(A−2)の化合物との比較のための化合物である。
Figure 2015063651
<制振塗料配合物の調製>
上記実施例及び比較例で得られた各制振材用エマルション組成物を下記のとおり配合し、制振塗料配合物とした。
制振材用エマルション組成物 359部
炭酸カルシウム(NN♯200※1) 620部
カーボンブラック 1部
デンプン 46.8部
分散剤(アクアリックDL−40S※2) 6部
増粘剤(アクリセットWR−650※3) 4部
消泡剤(ノプコ8034L※4) 1部
発泡剤(F−30※5) 6部
※1:日東粉化工業株式会社製 充填材(平均粒子径20μm)
※2:株式会社日本触媒製 ポリカルボン酸型分散剤(有効成分44%)
※3:株式会社日本触媒製 アルカリ可溶性のアクリル系増粘剤(有効成分30%)
※4:サンノプコ株式会社製 消泡剤(主成分:疎水性シリコーン+鉱物油)
※5:松本油脂社製 発泡剤
上記実施例及び比較例で得られた制振材用エマルション組成物を用いて調製した制振塗料配合物について、以下の方法により制振性の評価、及び、塗膜の剥離強度の測定を行った。結果を表2〜4に示す。表2〜4には、それぞれの制振材用エマルション組成物の平均粒子径、不揮発分、pH、及び、粘度も併せて記載した。
<制振性試験>
得られた制振塗料配合物を冷間圧延鋼板(SPCC・幅15mm×長さ250mm×厚み1.5mm)上に3mmの厚みで塗布して150℃で30分間乾燥し、冷間圧延鋼板上に面密度4.0Kg/mの制振材被膜を形成した。制振性の測定は、片持ち梁法(損失係数測定システム、小野測機社製)を用いて、20℃、40℃、60℃における損失係数を共振法(3dB法)により測定した。損失係数の値が大きいほど制振性に優れる。
<塗膜剥離強度>
以下の方法により、建研式接着力試験機による剥離強度測定を行った。
20cm×20cm×3mmの冷間圧延鋼板(SPCC)を基材として用いた。得られた制振塗料配合物を厚み3mmで塗布し、熱風乾燥機にて130℃で30分間乾燥させた後、室温まで冷却した。図1に示すように、基材1上で乾燥した制振塗料配合物2に接着面積が4.0cm×4.0cmのアタッチメント3をエポキシ樹脂接着剤4(セメダイン1500、セメダイン社製)で取り付けた。25℃で4日間養生して接着剤を硬化させ、アタッチメント3の外周に沿ってカッターナイフでアタッチメント3の周囲に、基材に到達する切れ込み5を入れた後、建研式接着力試験機(山本工重機社製LPT−1500)で、アタッチメント3を、制振塗料配合物2の塗膜が形成された基材1の面に対して鉛直方向6に引張り、制振塗料配合物2の塗膜を基材1から剥がすのに必要な荷重(破壊荷重)を測定した。試験温度は25℃とし、建研式接着力試験機の載荷速度は約100kPa/secとし、剥離強度は、得られた破壊荷重と、アタッチメント3と制振塗料配合物2との接着面積(=基材1から剥離した制振塗料配合物2の塗膜の面積)とから、以下の式により求めた。
剥離強度(kPa)=(破壊荷重(N)/接着面積(cm))×10
Figure 2015063651
Figure 2015063651
Figure 2015063651
1:基材
2:制振塗料配合物
3:アタッチメント
4:エポキシ樹脂接着剤
5:カッターナイフによる切れ込み
6:建研式接着力試験機によるアタッチメントの引張り方向

Claims (2)

  1. 単量体成分をエマルション重合してなる(メタ)アクリル系ポリマーエマルションを含む制振材用エマルション組成物であって、
    該(メタ)アクリル系ポリマーは、数平均分子量が25000以下であることを特徴とする制振材用エマルション組成物。
  2. 請求項1に記載の制振材用エマルション組成物と発泡剤とを含んでなることを特徴とする制振塗料配合物。
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