JP5685002B2 - 制振材用エマルション及び制振材組成物 - Google Patents
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Description
また成形シートに使用される材料として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位、ジエン系単位及びラジカル重合性不飽和カルボン酸単位からなる共重合体に1価又は2価の金属カチオンを付加して共重合体中のカルボキシル基をイオン架橋したイオン架橋物からなる粒子と、可塑剤とを含有するアクリル酸エステル系共重合体プラスチゾルが開示されている(特許文献3参照。)。
本発明はまた、上記制振材用エマルション、顔料、発泡剤及び増粘剤を含み、固形分含有量が70〜90質量%である制振材組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。
上記媒体としては、水性媒体であることが好ましく、例えば、水や、水と混じりあう溶媒と水との混合溶媒等が挙げられる。中でも、本発明の制振材用エマルションを含む組成物を塗布する際の安全性や環境への影響を考慮すると、水性媒体100質量%中、水が50質量%以上であることが好適である。より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは100質量%、すなわち水を媒体として用いることである。
上記塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が好適である。金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子が好適であり、また、有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩が好適である。
なお、上記塩としては、上述した(メタ)アクリル酸系単量体の塩と同様の形態であることが好ましい。
なお、上記単量体成分中の(メタ)アクリロイル基を有する不飽和単量体、すなわち上述した(メタ)アクリル酸系単量体や(メタ)アクリル系単量体の含有量としては、これらの合計量が、全単量体成分100質量%中、20質量%以上となることが好適である。これにより、制振性がより向上されることになる。より好ましくは30質量%以上である。
上記芳香環を有する不飽和単量体の割合としては、全単量体成分100質量%中、0〜40質量%であることが好適である。
上記窒素原子を有する不飽和化合物の割合としては、全単量体成分100質量%中、0〜40質量%であることが好適である。
なお、本明細書中、ホモポリマーのガラス転移温度とは、ホモポリマーの硬化物のガラス転移温度(Tg)を意味し、例えば、JIS K−7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」に準じて測定可能であり、「POLYMER HANDBOOK」を参照することができる。
また上記単量体成分が2−エチルヘキシルアクリレートを含む場合、2−エチルヘキシルアクリレートの含有量は、全単量体成分100質量%に対して、5〜55質量%であることが好ましい。より好ましくは、10〜50質量%である。
更に上記単量体成分がブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートの両方を含むものである場合、これらの合計量は、全単量体成分100質量%に対して、20〜70質量%であることが好ましい。より好ましくは、30〜60質量%である。
上記官能基を有する不飽和単量体の含有量は、全単量体成分100質量%に対して10質量%未満であることが好適であり、より好ましくは0.1〜3質量%である。
上記多価金属塩基は、M(OH)n(式中、Mは、2価以上の金属元素を表す。nは、2以上の整数を表す。)で表される化合物である。式中、nは、Mの価数により決定される数値であり、Mは、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra等のアルカリ土類金属;Cr、Mn、Fe、Cu等の遷移金属;Al等の卑金属等が挙げられる。中でも、アルカリ土類金属であることが好ましい。なお、多価金属塩基は、1種又は2種以上を使用することができる。
上記pHは、pHメーター(例えば、堀場製作所社製「F−23」)を用いて測定することができる。
上記Tgは、エマルションを構成する各単量体のホモポリマー(単独重合体)のガラス転移温度(Tgn)を用いて、下記Foxの式より計算することができる(単位:K)。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn)/100
(式中、Wnは、全単量体成分に対する単量体nの質量分率(質量%)を表す。Tgnは、単量体nからなるホモポリマーのガラス転移温度(単位:K、絶対温度)を表す。)
なお、3種以上の重合体を含む場合には、このうちの少なくとも2種の重合体のTgが異なればよく、残りの1種以上については、当該2種の重合体のいずれかとTgが同じであってもよい。
またTgが最も高い重合体とTgが最も低い重合体とのTg差は、10〜60℃であることが好適である。差が10℃未満であったり、温度差が大き過ぎると、実用的範囲での制振性がより充分なものとはならないおそれがある。より好ましくは15〜55℃であり、更に好ましくは20〜50℃である。
上記重量平均分子量は、例えば、以下の測定条件下、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
上記平均粒子径(体積平均粒子径)は、例えば、エマルションを蒸留水で希釈し充分に攪拌混合した後、ガラスセルに約10ml採取し、これを動的光散法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOMP Model 380」)で測定することにより求めることができる。
なお、コア部とシェル部とを有するエマルション粒子において、不飽和カルボン酸単量体及びその他の共重合可能な不飽和単量体は、エマルションのコア部を形成する単量体成分、シェル部を形成する単量体成分のいずれに含まれていてもよく、これらの両方に用いられるものであってもよい。
例えば、コア部を形成する単量体成分とシェル部を形成する単量体成分とのガラス転移温度(Tg)の差が10〜60℃であることが好ましい。Tgの差が10℃未満である場合や、60℃より大きい場合には、幅広い温度領域(20℃〜60℃)にわたっての制振性が得られないおそれがある。より好ましくはTgの差が15〜55℃、更に好ましくは、20〜50℃である。また、コア部を形成する単量体成分のTgは、シェル部を形成する単量体成分のTgよりも高いほうが好ましい。すなわち、コア部とシェル部とを有するエマルションを製造する場合、コア部のエマルションを形成した後、シェル部のエマルションを形成する多段重合により製造されることになるが、前段工程で使用される単量体成分のTgは、後段工程で使用される単量体成分のTgよりも高いほうが好ましい。エマルションが3段階以上の工程で製造される場合も同様に、後の工程で使用される単量体成分のTgは、その直前の工程で使用される単量体成分のTgよりも低いものであることが好ましい。
上記コア部とシェル部とを有するエマルション粒子は、後述する乳化重合法(多段重合)を用いて得ることができる。
上記コア・シェル複合構造においては、コア部の表面がシェル部によって被覆された形態であることが好ましい。この場合、コア部の表面は、シェル部によって完全に被覆されていることが好適であるが、完全に被覆されていなくてもよく、例えば、網目状に被覆されている形態や、所々においてコア部が露出している形態であってもよい。
なお、上記制振材用エマルションの粒子がコア部とシェル部とを有するエマルション粒子である場合には、乳化剤及び/又は保護コロイドの存在下、水性媒体中で単量体成分を乳化重合させてコア部を形成した後、該コア部を含むエマルションに更に単量体成分を乳化重合させてシェル部を形成する多段重合により得ることが好ましい。
上記アニオン性乳化剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)スチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)ベンジルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルコハク酸ジ塩;ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィン塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等が挙げられる。
上記カチオン性乳化剤としては特に限定されず、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリニウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記高分子乳化剤としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物;(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシエチル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記乳化剤の使用量としては、用いる乳化剤の種類や単量体成分の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、上記単量体成分の総量100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜5重量部である。更に好ましくは、1〜3重量部である。
上記保護コロイドの使用量としては、使用条件等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、上記単量体成分の総量100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは3重量部以下である。
上記重合開始剤の使用量としては特に限定されず、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、上記単量体成分の総量100重量部に対して、0.1〜2重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.2〜1重量部である。
上記還元剤の使用量としては特に限定されず、例えば、上記単量体成分の総量100重量部に対して、0.05〜1重量部であることが好ましい。
また単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては特に限定されず、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
ここで、本発明では、多価金属塩基によりエマルション中のカルボキシル基を中和するため、多価金属塩基のみで中和しても、更に上記中和剤により中和しても、効果は同じであると考えられる。つまり、多価金属塩基で金属結合したカルボキシル基の数(モル数)が一定の範囲内であれば、効果は発現されると考えられる。
なお、粘度は、B型回転粘度計を用いて、25℃、20rpmの条件下で測定することができる。
このような、感熱ゲル化剤を含み、感熱ゲル化性を有する制振材用エマルションや、エマルションの製造を、曇点を持つノニオン性乳化剤を用いて行い、感熱ゲル化性を有する制振材用エマルションもまた、本発明の1つである。
これらの中でも、エマルションに感熱ゲル化剤を添加することによって感熱ゲル化性を付加した制振材用エマルションがより好ましい。
なお、感熱ゲル化剤を2種以上混合して用いることは、ゲル化温度の制御を容易にするために好適な方法であり、ニトロパラフィン、有機エステル類等は酸化亜鉛との併用が効果的である。
なお、「感熱ゲル化」とは、ゲル化温度以上に加温することによってゲル化反応の進行が著しく促進されることを意味し、常温で全くゲル化が進行しないことを意味するものではない。
上記制振材組成物は、本発明の制振材用エマルション、顔料、発泡剤及び増粘剤を少なくとも含むものであることが好ましく、これらの成分及び必要に応じて含まれる他の成分を、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等を用いて混合して得ることができる。
上記制振材組成物はまた、固形分含有量が70〜90質量%であることが好適である。固形分含有量とは、制振材組成物の総量100質量%に対する固形分の含有量を意味するが、このように、上記制振材用エマルション、顔料、発泡剤及び増粘剤を含み、固形分含有量が70〜90質量%である制振材組成物(制振材配合物ともいう。)もまた、本発明の1つである。固形分含有量としてより好ましくは、80〜90質量%である。
上記制振材組成物はまた、本発明の制振材用エマルションとともに、他のエマルション樹脂とを含むものであってもよい。他のエマルション樹脂としては、ウレタン樹脂、SBR樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−エチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系樹脂等のエマルション樹脂が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。この場合、本発明の制振材用エマルションと他のエマルション樹脂との質量比(本発明の制振材用エマルション/他のエマルション樹脂)は、100〜50/0〜50であることが好適である。
上記顔料の配合量は、上記制振材用エマルションの固形分100重量部に対し、50〜700重量部とすることが好ましい。より好ましくは、100〜550重量部である。
上記発泡剤の配合量は、上記制振材用エマルションの固形分100重量部に対し、0.5〜5重量部とすることが好ましい。より好ましくは、1〜3重量部である。
上記増粘剤の配合量は、上記制振材用エマルションの固形分100重量部に対し、固形分で0.01〜2重量部とすることが好ましい。より好ましくは、0.05〜1.5重量部であり、更に好ましくは、0.1〜1重量部である。
上記制振材用エマルション又は制振材組成物に架橋剤を混合することにより、樹脂の強靱性が向上し、その結果、高温領域で充分な高制振性が発現する。中でもオキサゾリン化合物を用いることが好ましい。
上記分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等の無機質分散剤及びポリカルボン酸系分散剤等の有機質分散剤が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤等が挙げられる。
上記制振材組成物の塗布量は、用途や所望する性能等により適宜設定すればよいが、乾燥時の塗膜の膜厚が、0.5〜8.0mmとなるようにすることが好ましい。より好ましくは、3.0〜6.0mmである。
また、乾燥時(後)の塗膜の面密度が1.0〜7.0kg/m2となるように塗布することも好ましい。より好ましくは、2.0〜6.0kg/m2である。なお、本発明の制振材組成物を使用することにより、乾燥時に膨張やクラックが生じにくく、しかも傾斜面の塗料のずり落ちも発生しにくい塗膜を得ることが可能となる。
このように、乾燥時の塗膜の膜厚が、0.5〜8.0mmとなるように塗工し、乾燥する制振材組成物の塗工方法や、乾燥後の塗膜の面密度が2.0〜6.0kg/m2となるように塗工し、乾燥する制振材組成物の塗工方法もまた、本発明の好ましい実施形態のひとつである。また、上記制振材組成物の塗工方法によって得られた制振材もまた、本発明の好ましい実施形態のひとつである。
<ガラス転移温度(Tg)>
各段で用いた単量体組成から、上述したFoxの式を用いて算出した。なお、全ての段で用いた単量体組成から算出したTgを「トータルTg」として記載した。
Foxの式により重合性単量体成分のガラス転移温度(Tg)を算出するのに使用したそれぞれのホモポリマーのTg値を下記に示す。
メチルメタクリレート(MMA):105℃
スチレン:100℃
ブチルアクリレート(BA):−56℃
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
アクリル酸(AA):95℃
アクリロニトリル(AN):96℃
得られた水性樹脂分散体約1gを秤量、熱風乾燥機で110℃×1時間後、乾燥残量を不揮発分として、乾燥前質量に対する比率を質量%で表示した。
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水300部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を75℃まで昇湿した。一方、上記滴下ロートに、スチレン200部、メチルメタクリレート95部、2−エチルヘキシルアクリレート190部、アクリル酸15部、t−ドデシルメルカプタン0.4部、予め20%水溶液に調整したレベノールWZ(商品名、花王社製)90.0部及び脱イオン水97部からなる第1段目の単量体乳化物を仕込んだ。次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの8部、5%過硫酸カリウム水溶液5部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を120分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持した。
次いで、滴下ロートにスチレン100部、メチルメタクリレート95部、ブチルアクリレート290部、アクリル酸15部、t−ドデシルメルカプタン0.4部、予め20%水溶液に調整したレベノールWZ(商品名、花王社製)90.0部及び脱イオン水97部からなる第2段目の単量体乳化物を仕込み、120分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後90分同温度を維持し、重合を終了した。
得られた反応液を室温まで冷却後、25%アンモニア水6部を添加し、不揮発分55%、pH7.0、粘度420mPa・s、平均粒子径230nm、粒度分布22%、重量平均分子量170000、1段目のTg10℃、2段目のTg−10℃、トータルTg0℃のエマルション(1)を得た。
表1に示す配合で、表1に示すモノマー及び重合連鎖移動剤を用いる他は、製造例1と同様にして、エマルション(2)〜(8)を得た。得られたエマルションのTg及びスペックを、表1に示す。
酸化亜鉛、炭酸水素アンモニウム及びアンモニアを、モル比で1:1:3となるようにガラス容器に仕込み、スターラーで30分撹拌して、下記式で表される反応により亜鉛の炭酸アンミン錯体を得た。
ZnO+NH4HCO3+3NH3→[Zn(NH3)4]CO3
製造例1〜8で得たエマルション100部に、表2に示す配合量で、表2に示す多価金属塩基又は製造例9で得た金属錯体(亜鉛の炭酸アンミン錯体)を添加し、本発明の制振材用エマルション及び比較用制振材用エマルションを得た。
この制振材用エマルション又は比較用制振材用エマルションを下記のとおり配合し、制振材組成物(制振材配合物)として、下記試験方法にて、加熱乾燥時の塗膜表面状態及び制振性を評価した。結果を表2に示す。
制振材用エマルション又は比較用制振材用エマルション 359部
炭酸カルシウム(NN#200※1) 620部
分散剤(アクアリックDL−40S※2) 6部
増粘剤(アクリセットWR−650※3) 4部
消泡剤(ノプコ8034L※4) 1部
発泡剤(F−30※5) 6部
※1:日東粉化工業社製 充填剤
※2:日本触媒社製 ポリカルボン酸型分散剤(有効成分44%)
※3:日本触媒社製 アルカリ可溶性のアクリル系増粘剤(有効成分30%)
※4:サンノプコ社製 消泡剤(主成分:疎水性シリコーン+鉱物油)
※5:松本油脂社製 発泡剤
鋼板(商品名 SPCC−SD 75mm幅×150mm長さ×0.8mm厚み:日本テストパネル社製)の上に、作製した制振材組成物をその塗布厚みが3mmとなるように塗布した。その後、熱風乾燥機を用いて、150℃で30分間加熱し、得られた乾燥塗膜の表面状態を以下の基準で評価した。
○:異常なし
△:表面や界面に亀裂、表面に凸凹あり
×:塗膜形状を維持できない
得られた制振材組成物を冷間圧延鋼板(SPCC・幅15mm×長さ250mm×厚み1.5mm)上に3mmの厚みで塗布して150℃で30分間乾燥し、冷間圧延鋼板上に面密度4.0Kg/m2の制振材被膜を形成した。制振性の測定は、片持ち梁法(株式会社小野測機製損失係数測定システム)を用いて、それぞれの温度(20℃、40℃、60℃)における損失係数を共振法(3dB法)により測定した。また、制振性の評価は、総損失係数(20℃、40℃、60℃での損失係数の和)により行い、総損失係数の値が大きいほど制振性に優れるものとした。
特に多価金属塩基を用いることによる技術的意義は、実施例1〜4と比較例3とを比較すれば明らかである。実施例1〜4と比較例3とは、使用した金属塩基が多価塩基であるか又は1価塩基(NaOH)であるかの点で相違する他は、ほぼ同じ条件で実施した例であるが、各温度の損失係数の合計で表される制振性は、実施例1〜4では0.346〜0.367となったのに対し、比較例3では0.302と著しく劣っており、多価金属塩基を用いることにより制振性が飛躍的に向上することが分かる。
更に実施例1〜8、比較例9〜12の制振材用エマルションの中でも、ガラス転移温度(トータルTg)が−20〜30℃、かつ重量平均分子量(Mw)が2万〜40万であるエマルション(1)〜(4)を用いた実施例1〜8では、乾燥塗膜の表面状態がより良好で、かつ制振性能も高いため、特に好適なものであることが分かった。
また、多価金属塩基による中和を行う代わりに、金属錯体(亜鉛の炭酸アンミン錯体)を感熱ゲル化剤として添加した場合(実施例13)にも、制振材用エマルションの制振性が著しく向上することが確認された。これにより、感熱ゲル化剤の添加によって感熱ゲル化性を付加した制振材用エマルションもまた、優れた制振性を発揮することがわかった。
Claims (5)
- 不飽和カルボン酸単量体及びその他の共重合可能な不飽和単量体を含む単量体成分を重合してなる制振材用エマルションであって、
該エマルションの粒子は、コア部とシェル部とを有するエマルション粒子であり、
該エマルションは、M(OH)n(式中、Mは、2価以上の金属元素を表す。nは、2以上の整数を表す。)で表される多価金属塩基によって中和されたカルボキシル基を有し、
該中和カルボキシル基を有する構成単位は、該エマルションを構成する重合体の全構成単位100モル%に対し、0.5〜5モル%であり、
該エマルションは、単量体成分を重合した後、多価金属塩基を添加して得られたものであり、ガラス転移点が−20〜30℃、重量平均分子量が2万〜40万であることを特徴とする制振材用エマルション。 - 前記制振材用エマルションは、エマルション粒子の平均粒子径が100〜400nmである
ことを特徴とする請求項1に記載の制振材用エマルション。 - 前記単量体成分は、前記不飽和カルボン酸単量体として(メタ)アクリル酸を含み、前記その他の共重合可能な不飽和単量体として(メタ)アクリル系単量体を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制振材用エマルション。 - 前記中和カルボキシル基を有する構成単位は、該エマルションを構成する重合体の全構成単位100モル%に対し、0.8〜5モル%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制振材用エマルション。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の制振材用エマルション、顔料、発泡剤及び増粘剤を含み、固形分含有量が70〜90質量%である
ことを特徴とする制振材組成物。
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