JP3804956B2 - 制振材用エマルション - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、制振材用エマルションに関する。詳しくは、制振材配合物を構成するものとして好適に用いられる制振材用エマルションに関する。
【0002】
【従来の技術】
制振材は、各種の構造体における振動や騒音を防止して静寂性を保つためのものであり、自動車の室内床下等に用いられている他、鉄道車両、船舶、航空機や電気機器、建築構造物、建設機器等にも利用されている場合がある。このような制振材としては、例えば、自動車の室内床下等には無機粉体を含んだアスファルトシートが用いられてきたが、熱融着させる必要性があることから、作業性等の改善が望まれている。
【0003】
従来の制振材を形成する制振材用組成物としては、エマルションを含む共重合体ラテックスが開示されている。すなわち合成樹脂エマルション、アスファルトエマルションから選ばれる少なくとも1種の展色剤等を含む水系制振塗料組成物(例えば、特許文献1参照。)、脂肪族共役ジエン系単量体やエチレン系不飽和カルボン酸単量体等をα−メチルスチレンダイマーの存在下に共重合して得られる水系塗料用共重合体ラテックス(例えば、特許文献2参照。)、共役ジエン系単量体、エチレン系不飽和カルボン酸アミド単量体やエチレン系不飽和カルボン酸単量体等を無機過硫酸塩系の重合開始剤の存在下に乳化重合して得られる耐チッピング塗料用共重合体ラテックス(例えば、特許文献3参照。)、共役ジエン系単量体、エポキシ基を有するエチレン系不飽和単量体やエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体等を乳化重合して得られる制振材用共重合体ラテックス(例えば、特許文献4参照。)、共役ジエン系単量体、エポキシ基を有するエチレン系不飽和単量体やエチレン系不飽和カルボン酸アミド単量体等を乳化重合して得られる制振材用共重合体ラテックス(例えば、特許文献5参照。)が開示されている。
【0004】
しかしながら、これらの技術では、優れた加熱乾燥性と制振性との両立を達成する制振材を得ることができなかった。すなわち合成樹脂エマルションやアスファルトエマルションを用いる場合には、塗膜を加熱乾燥して形成するときに表面乾燥すると共に未乾燥塗膜中の水分が蒸発しようとするためにフクレが発生しやすいことから、加熱乾燥性を向上させる工夫の余地があり、また、共役ジエン系単量体とその他の単量体とから形成される共重合体ラテックスを用いる場合には、共役ジエン系単量体による単量体単位が制振性を充分に発揮するものではなく、優れた加熱乾燥性と制振性とを両立させる工夫の余地があった。また、制振材は、自動車の室内床下等に用いられる場合、金属製の構造体に塗工されることにより使用されることになることから、このような構造体への密着性を向上させることにより制振材としての基本性能を向上させるための工夫の余地があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−104842号公報(第1、2頁)
【特許文献2】
特開平11−29737号公報(第1、2頁)
【特許文献3】
特開2000−178497号公報(第1、2頁)
【特許文献4】
特開2000−178498号公報(第1、2頁)
【特許文献5】
特開2000−178499号公報(第1、2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、配合物の安定性や分散性が向上して、優れた加熱乾燥性と制振性とを発揮することが可能であり、しかも各種の構造体への密着性が向上した水系制振材を与える制振材配合物を形成することができる制振材用エマルションを提供することを目的とするものである
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々の制振材配合物に用いられる原材料を検討するうち、水系制振材を与えるエマルションが作業性等の点において優れていることにまず着目し、このようなエマルションを形成するために多価金属塩単量体を用いると、金属等への密着性(親和性)を向上し、これにともない制振性等の基本性能を向上させることができ、また、エマルションの安定性や分散性、加熱乾燥性を向上させることが可能となることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。このようなエマルションは、金属の内部架橋(エマルションの粒子内金属架橋)が形成されたものであると考えられる。また、本発明においては、エマルションのゲル化等を防止する点から、粒子間架橋が形成されないように調製されたものであることが好ましい。本発明の制振材用エマルションを必須とする制振材配合物から形成される制振材においては、各種の構造体における振動や騒音を防止して静寂性を保つ作用が向上する効果が上記のようにエマルションの粒子内架橋により達成されることになるが、このような作用効果は、エマルションの金属等への密着性が向上することに起因するものであるが、その他にも、エマルションの安定性や分散性が向上することや、制振材が制振材用エマルションとして好適な上記エマルションにより構成されること等に起因するものと考えられる。
また本発明において、多価金属塩単量体としては、多価金属の有機塩が好適であり、これにより本発明の作用効果をより充分に発揮することができることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、多価金属塩単量体を必須とする単量体成分を重合してなるエマルションを含んでなる制振材用エマルションである。
以下に、本発明を詳述する。
【0009】
本発明の制振材用エマルションは、多価金属塩単量体を必須とする単量体成分を重合してなるエマルションを含んでなる。
本発明では、このようなエマルションを必須として含むことにより、制振材用エマルションの安定性、分散性、加熱乾燥性や、このような制振材用エマルションを必須とする制振材配合物から形成される制振材の制振性、金属への密着性を向上することができることとなる。
【0010】
上記多価金属塩単量体としては、不飽和結合を有する多価金属の塩であればよく、1種又は2種以上を用いることができるが、多価金属の有機塩であることが好ましい。多価金属塩単量体に含まれる多価金属としては、マグネシウム、カルシウム等の2族元素;亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、亜鉛を必須とすることが好ましく、これにより金属への密着性や制振性がより充分に発揮されることになる。また、有機塩としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸の塩が好適である。これらの中でも、(メタ)アクリル酸の塩が好ましく、より好ましくは、アクリル酸亜鉛(2−プロペン酸亜鉛)である。すなわち本発明における多価金属塩単量体としては、アクリル酸亜鉛(2−プロペン酸亜鉛)が好適である。また、多価金属塩単量体としては、水や単一成分に溶けるようなものが好ましく、このようなアクリル酸亜鉛の市販品としては、ZN−DA100(商品名、日本触媒社製)が好ましい。また、アクリル酸亜鉛とステアリン酸亜鉛(オクタデカン酸亜鉛)との混合物であるZN−DA90S(商品名、日本触媒社製)も好適である。
【0011】
上記多価金属塩単量体の使用量としては、全単量体成分100質量%に対して0.1質量%以上とすることが好ましく、また、15質量%以下とすることが好ましい。0.1質量%未満であると、金属等への密着性を充分に向上できず、これにともない制振材の基本性能を充分に向上することができなくなるおそれがあり、15質量%を超えると、エマルションの製造時に生成したエマルションが凝集してゲル化が起こるおそれがある。より好ましくは、0.5質量%以上であり、また、7質量%以下である。
【0012】
上記エマルションは、水を連続相とし、多価金属塩単量体を必須とする重合体が分散している水系のものである。通常ではこのようなエマルションを必須とする制振材用エマルションと、必要に応じて他の添加剤や溶剤等とを含んでなる制振材配合物を塗布することにより制振材を形成することになる。
【0013】
本発明におけるエマルションを形成することになる単量体成分としては、多価金属塩単量体を必須とし、本発明の作用効果を発揮することができる限り特に限定されるものではないが、多価金属塩単量体と共重合可能な他の単量体1種又は2種以上を含むことが好ましい。多価金属塩単量体と共重合可能な他の単量体としては、不飽和カルボン酸単量体を必須とすることが好ましい。不飽和カルボン酸単量体としては、分子中に不飽和結合とカルボキシル基とを有する化合物であれば特に限定されるものではないが、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含むことが好ましい。すなわち多価金属塩単量体及びエチレン系不飽和カルボン酸単量体を必須とする単量体成分を重合してなるエマルションを含んでなる制振材用エマルションは、本発明の好ましい形態の1つである。
【0014】
上記エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノメチルマイエート、モノエチルマイエート等の不飽和カルボン酸類又はその誘導体等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0015】
また上記単量体成分としては、アクリル系単量体を必須として含んでなることが好ましい。アクリル系単量体とは、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体を意味する。
上記単量体成分におけるアクリル系単量体の含有量としては、例えば、全単量体成分に対して50質量%以上となるようにすることが好ましい。このような単量体成分としては、制振性の点から、共役ジエン系単量体の含有量が全単量体成分に対して10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、5質量%以下であり、最も好ましくは、共役ジエン系単量体を含有しないことである。
【0016】
更に上記単量体成分としては、全単量体成分に対して官能基を有する不飽和単量体を10質量%未満含有するものであることが好ましい。官能基を有する不飽和単量体における官能基は、エマルションを重合により得る際に架橋することができる官能基であればよい。このような官能基の作用により、エマルションの成膜性や加熱乾燥性を向上することができることになる。より好ましくは、0.1〜3.0質量%である。
なお上記質量割合は、全単量体成分100質量%に対する質量割合である。
【0017】
上記官能基としては、例えば、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジニル基、イソシアネート基、メチロール基、ビニルエーテル基、シクロカーボネート基、アルコキシシラン基等が挙げられる。これらの官能基は、不飽和単量体の1分子中に1種あってもよく、2種以上あってもよい。
【0018】
上記官能基を有する不飽和単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性不飽和単量体類;グリシジル(メタ)アクリレート、アクリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有不飽和単量体類等が挙げられる。これらの中でも、官能基を2個以上有する不飽和単量体(多官能性不飽和単量体)を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明においてはまた、上記単量体成分が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.1〜20質量%及び他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体99.9〜80質量%を含んでなることが好ましい。エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含むことにより、本発明の制振材用エマルションを必須とする制振材配合物において、無機粉体等の充填剤の分散性が向上し、制振性がより向上することになる。また、その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を含むことにより、エマルションの酸価、Tgや物性等を調整しやすくなる。上記単量体成分において、エチレン系不飽和カルボン酸単量体が0.1質量%未満であっても、20質量%を超えても、いずれも、エマルションが安定に共重合できないおそれがある。
本発明におけるエマルションでは、これらの単量体から形成される単量体単位の相乗効果により、水系制振材において優れた加熱乾燥性と制振性とをより充分に発揮することが可能となる。
なお上記質量割合は、全単量体成分100質量%に対する質量割合である。
【0020】
上記他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、上述した官能基を有する不飽和単量体や、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン等の芳香族不飽和単量体等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0021】
本発明におけるエマルションの製造方法としては、エマルションを形成することになる単量体成分中に多価金属塩単量体が含まれることになればよい。例えば、本発明においては、多価金属塩単量体と単量体成分の一部又は全部とを混合して重合し、更に残りの単量体成分を混合して重合することによりエマルションを製造することができる。また、多価金属塩単量体を形成する化合物と単量体成分の一部又は全部とを混合して重合し、更に残りの単量体成分を混合して重合することによりエマルションを製造することもできる。この場合には、多価金属塩単量体を形成する化合物により多価金属塩単量体が形成されるようにして単量体成分と反応することになるが、形成された多価金属塩単量体と単量体成分とが反応するように重合条件や重合方法を設定することが好ましい。本発明においては、これらの形態が好ましい。
【0022】
上記単量体成分を重合する方法としては、例えば、乳化重合法を好適に適用することができる。乳化重合を行う形態としては特に限定されず、例えば、水性媒体中に単量体成分、重合開始剤及び界面活性剤を適宜加えて重合することにより行うことができる。また、分子量調節のために重合連鎖移動剤等を用いてもよい。
【0023】
上記水性媒体としては特に限定されず、例えば、水、水と混じり合うことができる溶媒の1種又は2種以上の混合溶媒、このような溶媒に水が主成分となるように混合した混合溶媒等が挙げられる。これらの中でも、水を用いることが好ましい。
【0024】
上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、ブチルハイドロパーオキサイド等の公知の水溶性又は油溶性開始剤等が挙げられる。また、乳化重合を促進させるため、還元剤として亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸等を用いてレドックス系開始剤としてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記重合開始剤の使用量としては特に限定されず、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、全単量体成分100重量部に対して、0.1〜2重量部とすることが好ましい。より好ましくは、0.2〜1重量部である。
【0026】
上記界面活性剤としては特に限定されず、例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、ノニオンアニオン性乳化剤のいずれの乳化剤も使用することができる。これらの乳化剤の中でも、乳化重合安定性の点でノニオン性乳化剤、ノニオンアニオン性乳化剤を用いることが好ましく、ノニオン性乳化剤とノニオンアニオン性乳化剤とを併用するのがより好ましい。アニオン性乳化剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、ロジン酸石鹸、アルキルスルホン酸石鹸、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩等が挙げられる。ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記界面活性剤の使用量としては特に限定されず、乳化剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、全単量体成分100重量部に対して、0.05〜5.0重量部とすることが好ましい。より好ましくは、0.1〜3重量部である。
【0028】
上記重合連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素;メルカプト酢酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトピロピオン酸トリデシルエステル等のメルカプトカルボン酸アルキルエステル;メルカプト酢酸メトキシブチルエステル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルエステル等のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステル;オクタン酸2−メルカプトエチルエステル等のカルボン酸メルカプトアルキルエステルや、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、アニソール、アリルアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を用いることが好ましい。重合連鎖移動剤の使用量としては、例えば、全単量体成分100重量部に対して、通常0〜1重量部、好ましくは0〜0.5重量部である。
【0029】
上記乳化重合においては、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のキレート剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の分散剤や無機塩等の存在下で行ってもよい。また、単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
【0030】
上記乳化重合における反応条件としては、単量体成分の組成や用いる重合開始剤等に応じて適宜設定すればよい。重合温度は、例えば、5〜90℃とすることが好ましい。より好ましくは、20〜85℃である。重合時間は、例えば、3〜8時間とすることが好ましい。また、重合や滴下は攪拌下に行われることが好ましい。
【0031】
上記製造方法においては、乳化重合によりエマルションを製造した後、中和剤によりエマルションを中和することが好ましい。これにより、エマルションが安定化されることになる。中和剤としては特に限定されず、例えば、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の三級アミン;アンモニア水;水酸化ナトリウム等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、制振材用エマルションを必須とする制振材配合物から形成される塗膜の耐水性等が向上することから、塗膜の加熱時に揮散する揮発性塩基を用いることが好ましい。より好ましくは、加熱乾燥性が良好となり、制振性が向上することから、沸点が80〜360℃のアミンを用いることが好ましい。このような中和剤としては、例えば、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の三級アミンが好適である。より好ましくは、沸点が130〜170℃のアミンを用いることである。
なお、上記沸点は、常圧での沸点である。
【0032】
上記中和剤の添加量としては特に限定されず、例えば、エマルションの酸価、すなわちエマルションが有する酸基1当量に対して中和剤の塩基が0.6〜1.4当量となるように添加したことが好ましい。より好ましくは、0.8〜1.2当量である。
【0033】
上記エマルションは、数平均分子量が小さいと、エマルションを必須とする本発明の制振材用エマルションを含んでなる制振材配合物において、無機粉体等の充填剤とエマルションとの親和性が向上して分散性が向上することになる。
【0034】
上記エマルションとしてはまた、ガラス転移点(Tg)が−50〜40℃であることが好ましい。Tgが−50℃未満であっても40℃を超えても制振性が充分とはならないおそれがある。より好ましくは、−10〜20℃である。なおエマルションのTgは、エマルションを形成する各単量体の単独重合体のTgにより計算することができる。
【0035】
上記エマルションは、例えば、以下に記載するように制振材配合物を調製したときに、制振材配合物の損失係数(tanδ)が0.15以上であることが好ましい。すなわち、本発明におけるエマルションを用いて以下に記載するように制振材配合物を調製し、この制振材配合物から形成される皮膜の損失係数(tanδ)が0.15以上となることが好ましい。制振性は、現在使われている2mm厚のアスファルトシートを施した鋼板の損失係数が0.1程度であり、その数値以上の値が一般的に要求されている。制振性すなわち損失係数は用いる塗膜のtanδに相関し、tanδが高い程損失係数が高く制振性に優れていると考えられる。
上記損失係数(tanδ)が0.15未満であると、水系制振材において優れた制振性を発揮することができなくなるおそれがある。より好ましくは、0.16以上であり、更に好ましくは、0.18以上である。
【0036】
制振材配合物の組成
エマルション 100重量部
炭酸カルシウム:NN♯200(商品名、日東粉化工業社製) 250重量部
分散剤:デモールEP(商品名、花王社製) 1重量部
増粘剤:アクリセットAT−2(商品名、日本触媒社製) 2重量部
消泡剤:ノプコ8034L(商品名、サンノプコ社製) 0.3重量部
【0037】
損失係数(tanδ)の測定方法
上記制振材配合物をカチオン電着塗装鋼板(15幅×250長さ×厚み0.8mm)上、3mm厚の型枠中に流し込み、150℃×30分乾燥し、試験片とする。この試験片について小野測器社製の損失係数測定システム・片持ち梁法を用いて25℃の測定環境の損失係数を測定する。
【0038】
本発明の制振材用エマルションは、必要に応じて添加剤や溶剤等を配合することにより制振材配合物を製造することができるものである。このような、本発明の制振材用エマルションを必須する制振材配合物は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0039】
本発明の制振材用エマルションを必須とする制振材配合物は、該制振材用エマルションと、上述した添加剤や溶剤等とを混合することにより製造することができる。
上記制振材配合物における制振材用エマルションの配合量としては、例えば、制振材配合物の固形分100質量%に対して、制振材用エマルションの固形分が30〜60質量%となるようにすることが好ましい。また、制振材配合物の固形分濃度としては、例えば、制振材配合物100質量%に対して10〜40質量%となるようにすることが好ましい。
【0040】
上記添加剤としては、例えば、充填剤、着色剤、防腐剤、分散剤、増粘剤、揺変剤、凍結防止剤、pH調整剤、消泡剤、湿潤剤、防錆剤、密着付与剤等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、充填剤を含むことが好ましい。
【0041】
上記充填剤としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、ガラストーク等の無機質の充填剤;ガラスフレーク、マイカ等の鱗片状無機質充填剤;金属酸化物ウィスカー、ガラス繊維等の繊維状無機質充填剤等が挙げられる。
【0042】
上記充填剤の配合量としては、例えば、エマルションの固形分100重量部に対して、50〜400重量部とすることが好ましい。より好ましくは、100〜350重量部である。
【0043】
上記溶剤としては、本発明の作用効果を奏する限り特に限定されず、1種又は2種以上を用いることができる。また、溶剤の配合量としては、例えば、制振材配合物の固形分濃度が上述した範囲となるように適宜設定すればよい。
【0044】
上記制振材配合物の製造に用いる装置としては特に限定されず、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等が挙げられる。
【0045】
上記制振材配合物は、優れた加熱乾燥性と制振性とを発揮して、水系制振材を形成することができるものである。このような、本発明の制振材用エマルションを必須とする制振材配合物から形成される制振材は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
上記水系制振材において、乾燥時の皮膜の膜厚としては、0.5〜5.0mmとなるようにすることが好ましく、より好ましくは、1.5〜4.5mmである。このような水系制振材を形成するためには、制振材配合物の粘度としては、5万mPa・s〜20万mPa・s(Bm型粘度計、ローター220rpm)とすることが好ましい。また、制振材配合物を基材に塗布して乾燥するに際し、塗布方法としては、例えば、刷毛、へら、エアスプレー、エアレススプレー、モルタルガン、リシンガン等を用いて塗布することができるが、スリット押し出し等を用いて塗布することが好適である。
上記水系制振材を形成するのに適する基材としては、金属製のものが好適であり、例えば、鋼板等を挙げることができる。本発明においては、電着塗装等の処理が施された鋼板に水系制振材を形成することが好ましい。
【0046】
上記制振材配合物を塗布した後、乾燥して皮膜を形成させる条件としては、例えば、加熱乾燥してもよく、常温乾燥してもよいが、効率性の点で加熱乾燥することが好ましく、本発明では加熱乾燥性に優れることから、好適である。加熱乾燥の温度としては、例えば、80〜210℃とすることが好ましい。より好ましくは、110〜160℃である。
【0047】
本発明の制振材用エマルションを必須とする制振材配合物の用途としては特に限定されず、優れた加熱乾燥性と制振性とを発揮することができるため、例えば、自動車の室内床下の他、鉄道車両、船舶、航空機、電気機器、建築構造物、建設機器等に好適に適用することができる。
【0048】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は、「重量部」を意味するものとする。
【0049】
実施例1
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水171.7部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタクリレート53.3部、スチレン242.5部、2−エチルヘキシルアクリレート189.2部、2−プロペン酸亜鉛2.5部、アクリル酸7.5部、予め20%水溶液に調整したハイテノールN−08(商品名、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、第一工業製薬社製)50.0部、25%水溶液に調整したノニポール200(商品名、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、三洋化成工業社製)20.0部及び脱イオン水106.5部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。このとき同時に3.9%過硫酸カリウム水溶液65.8部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液60部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を4.7部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂(アクリル系樹脂エマルション)を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は53.4%、pHは8.8、粘度は200mPa・sであった。上記単量体乳化物における単量体の組成をまとめて表1にまとめた。
【0050】
実施例2
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水171.7部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタクリレート53.2部、スチレン213.2、ブチルアクリレート218.6部、2−プロペン酸亜鉛2.5部、アクリル酸7.5部、予め20%水溶液に調整したハイテノールN−08(商品名、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、第一工業製薬社製)50.0部、25%水溶液に調整したノニポール200(商品名、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、三洋化成工業社製)20.0部及び脱イオン水106.5部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。このとき同時に3.9%過硫酸カリウム水溶液65.8部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液60部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を4.7部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂(アクリル系樹脂エマルション)を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は53.4%、pHは8.7、粘度は190mPa・sであった。上記単量体乳化物における単量体の組成をまとめて表1にまとめた。
【0051】
実施例3
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水171.7部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタクリレート52.4部、スチレン240.5部、2−エチルヘキシルアクリレート184.9部、2−プロペン酸亜鉛2.5部、アクリル酸7.5部、t−ドデシルメルカプタン9.9部、予め20%水溶液に調整したハイテノールN−08(商品名、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、第一工業製薬社製)50.0部、25%水溶液に調整したノニポール200(商品名、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、三洋化成工業社製)20.0部及び脱イオン水106.5部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。このとき同時に3.9%過硫酸カリウム水溶液65.8部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液60部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を4.7部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂(アクリル系樹脂エマルション)を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は53.2%、pHは8.7、粘度は210mPa・sであった。上記単量体乳化物における単量体の組成をまとめて表1にまとめた。
【0052】
実施例4
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水171.7部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタクリレート53.3部、スチレン240.0部、2−エチルヘキシルアクリレート189.2部、2−プロペン酸亜鉛5.0部、アクリル酸7.5部、予め20%水溶液に調整したハイテノールN−08(商品名、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、第一工業製薬社製)50.0部、25%水溶液に調整したノニポール200(商品名、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、三洋化成工業社製)20.0部及び脱イオン水106.5部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。このとき同時に3.9%過硫酸カリウム水溶液65.8部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液60部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を4.7部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂(アクリル系樹脂エマルション)を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は53.0%、pHは9.0、粘度は160mPa・sであった。上記単量体乳化物における単量体の組成をまとめて表1にまとめた。
【0053】
実施例5
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水171.7部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタクリレート52.9部、スチレン212.1部、ブチルアクリレート217.6部、2−プロペン酸亜鉛5.0部、アクリル酸7.4部、予め20%水溶液に調整したハイテノールN−08(商品名、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、第一工業製薬社製)50.0部、25%水溶液に調整したノニポール200(商品名、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、三洋化成工業社製)20.0部及び脱イオン水106.5部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。このとき同時に3.9%過硫酸カリウム水溶液65.8部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液60部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を4.7部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂(アクリル系樹脂エマルション)を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は53.1%、pHは8.9、粘度は170mPa・sであった。上記単量体乳化物における単量体の組成をまとめて表1にまとめた。
【0054】
比較例1
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水171.7部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタクリレート52.4部、スチレン240.5、2−エチルヘキシルアクリレート184.9部、アクリル酸7.5部、t−ドデシルメルカプタン9.9部、予め20%水溶液に調整したハイテノールN−08(商品名、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、第一工業製薬社製)50.0部、25%水溶液に調整したノニポール200(商品名、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、三洋化成工業社製)20.0部及び脱イオン水106.5部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。このとき同時に3.9%過硫酸カリウム水溶液65.8部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液60部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を4.7部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂(アクリル系樹脂エマルション)を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は53.5%、pHは8.7、粘度は210mPa・sであった。上記単量体乳化物における単量体の組成をまとめて表2にまとめた。
【0055】
比較例2
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水171.7部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタクリレート53.3部、スチレン242.5部、2−エチルヘキシルアクリレート189.2部、アクリル酸7.5部、予め20%水溶液に調整したハイテノールN−08(商品名、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、第一工業製薬社製)50.0部、25%水溶液に調整したノニポール200(商品名、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、三洋化成工業社製)20.0部及び脱イオン水106.5部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。このとき同時に3.9%過硫酸カリウム水溶液65.8部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液60部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を4.7部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂(アクリル系樹脂エマルション)を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は53.4%、pHは8.8、粘度は230mPa・sであった。上記単量体乳化物における単量体の組成をまとめて表2にまとめた。
【0056】
比較例3
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水171.7部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタクリレート53.2部、スチレン213.2、ブチルアクリレート218.6部、アクリル酸7.5部、予め20%水溶液に調整したハイテノールN−08(商品名、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、第一工業製薬社製)50.0部、25%水溶液に調整したノニポール200(商品名、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、三洋化成工業社製)20.0部及び脱イオン水106.5部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。このとき同時に3.9%過硫酸カリウム水溶液65.8部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液60部を3時間かけて均一に滴下した。滴下終了後、76℃で3時間熟成後、冷却して25%のアンモニア水を4.7部添加した。それら乳化物を冷却後100メッシュのステンレス金網によりろ過を行い取り出した。これにより水性樹脂(アクリル系樹脂エマルション)を得た。得られた水性樹脂の不揮発分は53.4%、pHは8.7、粘度は220mPa・sであった。上記単量体乳化物における単量体の組成をまとめて表2にまとめた。
【0057】
比較例4
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けたセパラブルフラスコに脱イオン水171.7部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で撹拌しながら内温を70℃まで昇温した。一方上記滴下ロートにメチルメタクリレート48.1部、スチレン170.7部、2−エチルヘキシルアクリレート195.3部、2−プロペン酸亜鉛74.3部、アクリル酸6.7部、予め20%水溶液に調整したハイテノールN−08(商品名、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、第一工業製薬社製)50.0部、25%水溶液に調整したノニポール200(商品名、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、三洋化成工業社製)20.0部及び脱イオン水106.5部からなる単量体乳化物を仕込んだ。次にセパラブルフラスコの内温を70℃に維持しながら上記単量体乳化物を3時間かけて均一に滴下した。このとき同時に3.9%過硫酸カリウム水溶液65.8部、2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液60部を3時間かけて均一に滴下した。しかし滴下途中でエマルションがゲル化した。そのため、それ以降の評価試験を行わなかった。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
実施例1〜5及び比較例1〜3において得られたアクリル系樹脂エマルションについて、下記の評価試験を行った。その結果は、表3にそれぞれ示す通りであった。
(1)加熱乾燥性試験
鋼板(SPCC−SD、75mm幅×150mm長さ×0.8mm厚み、日本テストパネル社製)の上に、作製した制振材配合物を配合物の塗布厚みが1.5mm、3.0mm、4.5mmになるように塗布した。その後熱風乾燥機を用いて、150℃で30分間乾燥し、得られた乾燥塗膜の膨れ・割れ等の状態を以下の基準で評価した。
評価基準(目視評価)
○:膨れ・割れの発生なし
△:膨れ・割れが少し発生
×:膨れ・割れが多数発生
【0061】
(2)損失係数
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られたアクリル系樹脂エマルションを下記のとおり配合し、制振性水性塗料組成物として制振性を確認した。
・アクリル共重合エマルション 100部
・炭酸カルシウム:NN♯200(商品名、日東粉化工業社製) 250部
・分散剤:デモールEP(商品名、花王社製) 1部
・増粘剤:アクリセットAT−2(商品名、日本触媒製社製) 2部
・消泡剤:ノプコ8034L(商品名、サンノプコ社製) 0.3部
【0062】
上記制振材配合物を冷間圧延鋼板(SPCC、15mm幅×250mm長さ×厚み0.8mm)上、3mm厚の型枠中に流し込み、150℃×25分間乾燥し、冷間圧延鋼板上に3mmの被膜を形成した。制振性の測定は、小野測機社製の損失係数測定システムを用いて25℃の測定環境において片持ち梁法のtanδを測定し、制振性を評価した。すなわち、損失係数の値が大きい程、制振性が良いことを示す。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【発明の効果】
本発明の制振材用エマルションは、上述のような構成よりなるため、制振材配合物を構成するものとして好適に用いることができるものである。また、このような制振材用エマルションを必須とする制振材配合物は、優れた加熱乾燥性を発揮し、しかも金属への密着性及び制振性が向上した水系制振材を形成することができるため、自動車の室内床下の他、鉄道車両、船舶、航空機、電気機器、建築構造物、建設機器等に好適に適用することができるものである。
Claims (2)
- 多価金属塩単量体を必須とする単量体成分を重合してなるエマルションを含んでなる
ことを特徴とする制振材用エマルション。 - 前記多価金属塩単量体は、多価金属の有機塩である
ことを特徴とする請求項1記載の制振材用エマルション。
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