JP2010215730A - エマルション樹脂組成物及びそれを用いた制振材配合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】エマルション樹脂組成物を高温条件下で加熱乾燥させる場合、例えばエマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成する場合において、その製造時から使用時に至るまでアルデヒド類の放散を低減させることで、シックハウス症候群の発生源であるアルデヒド類の発生を抑制し、各種用途に好適に用いることができるエマルション樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エマルション樹脂に、アミン化合物が添加されたエマルション樹脂組成物であって、該アミン化合物は、沸点が170℃以上で水溶性の第1級及び/又は第2級アミン基を必須とし、その添加量が、エマルション樹脂の固形分100質量%に対して、0.5〜5質量%である加熱乾燥用エマルション樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、エマルション樹脂組成物並びにそれを用いた制振材配合物に関する。より詳しくは、各種構造体における振動や騒音を防止して静寂性を保つために使用される制振材配合物を形成するために好適に用いられるエマルション樹脂組成物、並びに、それを用いた制振材配合物に関する。
エマルション樹脂組成物は、水系塗料等の技術分野において、その安全性、低公害性から種々の用途において広く用いられている。例えば制振材に好適に用いられ、振動吸収能及び吸音能を有する塗布型制振材が開発されている。塗布型の制振材は、例えば、該当箇所にスプレーにより吹き付けるか又は任意の方法により塗布することで形成される塗膜によって、制振効果を得ることが可能である。そのため、制振効果を有する材料を素材とする板状成形体やシート状成形体等の、従来制振材として用いられてきた成形加工品に比べて、塗布型制振材は制振性を発揮する樹脂層を形成する際の作業性に優れ、振動や音響の発生箇所の形状が複雑な場合にも、制振性を発揮する樹脂層を容易に形成することができるという特性を有している。制振材は、各種構造体における振動や騒音を防止して静寂性を保つためのものであって、例えば、自動車の室内床下等に用いられている他、鉄道車両、船舶、航空機や電気機器、建築構造物、建設機器等にも広く利用されており、形状の複雑な箇所に適用する機会が多く、エマルション樹脂組成物を用いた制振材の需要は大きい。
ところで、エマルション樹脂は、その合成原料及びその合成過程に起因すると考えられる、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドを含んでいる。このため、エマルション樹脂組成物が屋内や制振材用途等において車内で利用される場合には、いわゆる「シックハウス症候群」の原因となり得、利用者及び居住者に影響を及ぼすおそれがある。一般的にこのような分野の業界においては、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドを低減させるための検討が行われているが、特に高温加熱乾燥工程を含む用途においては有効な方策が見つかっていないのが現状である。
このため、エマルション樹脂組成物から放散されるホルムアルデヒドやアセトアルデヒドの低減が求められるところであった。
様々な材料から放散されるホルムアルデヒドやアセトアルデヒドを低減するための従来の方法としては、例えば、粘着剤中にアセチルアセトンを含有させることによって粘着剤から発生しうるホルムアルデヒドを捕捉する方法(例えば、特許文献1参照。)、建築材料に付与することで建築材料からのホルムアルデヒドの放散を低減させることを目的とした、全アミン価が100以上であって、水への溶解度が25℃で50g/L未満であるポリアミドアミンと、25℃で液体である水酸基を2個以上有するポリオールとを混合して得られる組成物をホルムアルデヒド捕捉剤として用いる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、特に木質材料、壁紙等の製造に用いられる接着剤に由来したホルムアルデヒドを効率的に除去することを目的として、特定の構造を持ったメラミン誘導体をホルムアルデヒド消臭剤として用いる方法が開示され(例えば、特許文献3参照。)、主にヒドラジド化合物からなるアルデヒド類の捕捉剤が市販されている。
更に、アミン類がホルムアルデヒドやアセトアルデヒドと反応してヘミアミナル又はシッフ塩基を形成して、アルデヒドを化学的に固定化することで捕捉する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この場合、下記式(1)及び(2)に示すように、アミン基とカルボニル基によるシッフ反応によって、アルデヒドが捕捉されると考えられている。
Figure 2010215730
特開2005−139323号公報(第1−2、6頁) 特開2007−009003号公報(第1−2頁) 特開2004−291523号公報(第1−2、4頁)
上述のように、従来の技術において、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド(以下、併せてアルデヒド類と呼ぶ)を低減させる方法が検討されているが、これらは、粘着剤や接着剤等に関係する技術であるために、室温又は比較的緩やかな温度条件下で乾燥が行われることになり、そのような条件下において検討がなされていた。しかしながら、エマルションを用いる技術分野において高温下での加熱乾燥を行う場合、例えば、制振材を形成する場合には、自動車工業等のラインにおける乾燥工程が必須の工程となり、通常、制振材用エマルションにおいては、作業性等を考慮して、厳しい高温条件下で加熱乾燥が行われることになる。
このような制振材の技術分野においては、乾燥前のエマルション樹脂組成物に含まれるアルデヒド類が充分に低減、除去されるようにしていたとしても、エマルション樹脂組成物を含む制振材配合物を厳しい高温条件下で加熱乾燥すると、乾燥工程や乾燥後の塗膜からアルデヒド類が放散することが判明した。これは、厳しい高温条件下での加熱によって、アルデヒド類が生じていることによるものと考えられる。このような高温条件下で加熱乾燥工程を行う場合に、従来より知られているアルデヒド類を低減する手段を用いたり、エマルション樹脂組成物に市販のアルデヒド類の捕捉剤を配合させたりしても、加熱乾燥工程において発生するアルデヒド類を充分に低減させることができない。
高温条件下での加熱乾燥工程時にアルデヒド類が発生する原因の1つとしては、エマルション樹脂が熱分解や空気中の酸素による酸化分解を受けて、アルデヒド類が発生することが挙げられる。しかし、例えば上記のように工業的な用途において制振材を形成する場合には、作業効率を考えて乾燥を短時間で行う必要があるため、通常では厳しい高温条件下で加熱乾燥を行うことが必要となり、このような条件下においてもアルデヒド類を充分に低減、除去することができる技術が求められるところであった。
すなわち、エマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成する場合等の、エマルション樹脂組成物を高温条件下で加熱乾燥させる場合においても、その乾燥前から乾燥後に至るまでアルデヒド類の放散が低減されたエマルション樹脂組成物が求められている。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、エマルション樹脂組成物を高温条件下で加熱乾燥させる場合、例えばエマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成する場合において、その製造時から使用時に至るまでアルデヒド類の放散を低減させることで、シックハウス症候群の発生源であるアルデヒド類の発生を抑制し、各種用途に好適に用いることができるエマルション樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者は、エマルション樹脂組成物を高温条件下で加熱乾燥させる場合、例えばエマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成する場合に、その形成された制振材からのアルデヒド類の放散を抑える手段について種々検討したところ、アミン化合物がアルデヒド類の捕捉剤としての機能を有することに着目した。そして、特定の高い沸点をもつ第1級及び/又は第2級アミン基を必須とする化合物を特定量添加すると、そのアミン化合物が制振材配合物を厳しい高温条件下で加熱乾燥させる工程においても、また、乾燥工程後においても、揮散するアルデヒド類を効果的に低減させる機能を発揮することを見出した。従来においては、このようなアミン化合物が厳しい高温加熱条件下においてもアルデヒド類を低減させるのに極めて有効であることは知られていなかった。それに対して、本発明においては、そのような厳しい条件においても有効であるだけでなく、高温条件下で生じたアルデヒド類の捕捉、その後のアルデヒド類の放散抑制においても優れた効果を奏することとなる。ここに本発明の本質的な技術的意義があると言える。
このように、特定のアミン化合物を特定量配合したエマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成する場合に、アルデヒド類の放散低減において際立って優れた効果を発揮することを見出すとともに、このようなアミン化合物として水溶性のものを用いると、近年、環境問題への配慮から使用が増えている水系のエマルション樹脂組成物にも好適に用いることができることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、エマルション樹脂に、アミン化合物が添加されたエマルション樹脂組成物であって、上記アミン化合物は、沸点が170℃以上で水溶性の第1級及び/又は第2級アミン基を必須とし、その添加量が、エマルション樹脂の固形分100質量%に対して、0.5〜5質量%である加熱乾燥用エマルション樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
本発明のエマルション樹脂組成物は、アミン化合物が、エマルション樹脂の固形分100質量%に対して、0.5〜5質量%の割合で添加されたものである。アミン化合物の添加量が0.5質量%未満であると、後述するエマルション樹脂組成物を含む制振材配合物を高温条件下で乾燥する工程や乾燥工程を経た後に、放散するアルデヒド類を低減させることができないおそれがある。一方アミン化合物の添加量の上限については、アミン化合物の添加量が多くなるほどにアルデヒド類の放散量をより低減させることができることは後述の実施例において立証されている。ただし、ある程度アミン化合物の添加量が多くなると、添加量を上げることによって放散するアルデヒド類の低減度合いが低くなる(頭打ちになる)と考えられることから、添加量と効果とを勘案して適宜設定すればよい。エマルション樹脂においては、重合体の分子量やpH等によって、その増粘度合い等を考慮して、種々の用途において上限設定がなされることになるが、本発明におけるエマルション樹脂においては、中和・増粘作用とアルデヒド類の捕捉・低減作用とを考慮して適宜設定することとなる。通常は、アミン化合物の添加量が5質量%を超えると、増粘し過ぎるため不具合を生じるおそれが高く、5質量%以下に設定することになる。
本発明におけるエマルション樹脂組成物の製造方法においては、アミン化合物をエマルション樹脂が合成された後に添加することが好ましい。エマルション樹脂の合成前又は合成時にアミン化合物を添加すると、アミン化合物だけで重合し、アミンが凝集して効果的にアルデヒド類を捕捉することができなくなるおそれがある。
後述するとおり、上記製造方法においてはまた、合成されたエマルション樹脂は中和剤により中和することにより増粘させることが好ましいが、アミン化合物をエマルション樹脂合成後の中和剤としても用いることが可能である。したがって本発明は、本発明において用いられるアミン化合物を中和剤及びアルデヒド類の捕捉剤として添加する形態であってもよく、エマルション樹脂合成後の中和を本発明においてアルデヒド類の捕捉剤として用いられるアミン化合物とは異なる化合物を用いて行い、それとは別にアルデヒド類の捕捉剤としてアミン化合物を添加する形態であってもよい。これらの形態においては、エマルション樹脂組成物に添加する本発明におけるアミン化合物の添加量が異なってくる場合がある。いずれの場合にしても、上記添加量の範囲においては、エマルション樹脂組成物を含む制振材配合物を高温条件下で乾燥させた後の塗膜からのアルデヒド類の放散を低減することができ、本発明の効果が表れることになる。
なお、本発明において、アルデヒド類の放散を低減させるとは、本発明において用いられるアミン化合物を用いない場合に比べてアルデヒド類の放散量が減少していることを意味するが、アルデヒド類の放散量を、厚生労働省の定める室内濃度指針値(ホルムアルデヒド:0.08ppm、アセトアルデヒド:0.03ppm)より少なくすることが好ましい。
また、アルデヒド類の放散量は、社団法人自動車技術会が定めた、JASO M 902「自動車部品−内装材−揮発性有機化合物(VOC)放散測定方法」に準じて測定することができる。
上記アミン化合物としては、沸点が170℃以上のものが用いられる。エマルション樹脂を用いる技術分野の中において高温条件下での加熱乾燥を行う場合、例えば制振性塗膜を形成するために高温加熱乾燥を行う際には、100℃〜160℃の温度で乾燥が行われることになり、沸点が170℃以上のアミン化合物であれば、乾燥時にも気化してしまわずに乾燥後の塗膜中に存在することができ、アルデヒド類を捕捉できることになるが、アミン化合物として、より沸点の高いものを用いることで、更にアルデヒド類を充分に捕捉することが可能となる。アミン化合物として好ましくは、沸点が190℃以上のものであり、より好ましくは、220℃以上のものある。なお、上記沸点は、1atmの場合の沸点である。
上記アミン化合物は、第1級及び/又は第2級アミン基を必須として含むものである。このようなアミン化合物は、アミン化合物の中でも反応性が高いため、アルデヒド類を捕捉する機能に優れている。アミン化合物は、少なくとも1つの第1級アミン基又は第2級アミン基を有していればよく、これらの両方を有していてもよい。また、第1級アミン基又は第2級アミン基以外の他の官能基を有していてもよい。
これらの中でも、本発明におけるアミン化合物としては、第1級アミン基を必須として含むものであることが好ましい。第1級アミン基を必須として含むアミン化合物を用いると、最も反応性が高い為、より優れたアルデヒド類捕捉能が発揮されることになる。
本発明において用いられるアミン化合物は、第1級アミン基を必須とし、分子量が40〜150であることが好ましい。
上記アミン化合物がアルデヒド類捕捉能を発揮する場合、アミン化合物に含まれるアミン基とアルデヒド類とが接触した結果アルデヒド類が化学的に固定化され捕捉されることになるため、アミン化合物のアミン基とアルデヒド類との接触機会は多ければ多いほどアルデヒド類はより捕捉されることとなる。よって、それらの接触効率という観点から、本発明に用いられるアミン化合物の分子量は、40〜150であることが好ましい。アミン化合物の分子量が40〜150である場合、アミン化合物が樹脂組成物中及び乾燥後の塗膜中において、より局在せずに存在することが可能となり、アルデヒド類との接触効率を高くすることができる。より好ましくは、60〜140であり、更に好ましくは、80〜120である。
上記アミン化合物は、本発明においてアルデヒド類捕捉能を有することができれば、特にその構造は限定されず、環状構造、直鎖状構造、分岐状構造等をとることができるが、樹脂組成物中及び乾燥後の塗膜中において、よりアルデヒド類との接触が容易であるためには、直鎖状構造であることが好ましい。
本発明におけるアミン化合物としては、例えば、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ジグリコールアミン、モノエタノールアミン、2−ヒドロキシエチルピペリジン、ベンジルアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)イソプロパノール、1,6−ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
本発明におけるエマルション樹脂は、乳化剤を用いて単量体成分を乳化重合してなる重合体(エマルション)を含むものであり、1種のエマルションを含むものであってもよく、2種以上含むものであってもよい。
上記エマルション樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が、−20〜30℃であることが好ましい。これにより、このようなエマルション樹脂を含むエマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成した場合に、その制振材が幅広い温度領域下でより高い制振性を発現させることが可能となる。また、制振材塗膜の外観もワレや凸凹が見られない外観となる。より好ましくは、−10〜20℃である。更に好ましくは、−5〜10℃である。
なお、エマルション樹脂のガラス転移温度は、既に得られている知見に基づいて決定されてもよいし、エマルションの単量体成分の種類や使用割合によって制御されてもよいが、理論上は、以下の計算式により算出され得る。
Figure 2010215730
式中、Tg’は、エマルション樹脂のTg(絶対温度)である。W’、W’、・・・W’は、全単量体成分に対する各単量体の質量分率である。T、T、・・・Tは、各単量体成分からなるホモポリマー(単独重合体)のガラス転移温度(絶対温度)である。
上記エマルション樹脂はまた、重量平均分子量が20000〜400000であることが好適である。20000未満であると、このようなエマルション樹脂を含むエマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成した場合に、その制振材の制振性が充分とはならず、しかも得られるエマルション樹脂組成物を塗料に配合した状態での安定性が優れたものとはならないおそれがある。400000を超えると、特に30〜40℃域での制振性を向上することができないおそれがあり、また、塗料に配合した状態での低温における造膜性が充分とはならなかったり、塗料から作製した制振材塗膜にワレや凸凹ができたりするおそれがある。より好ましくは、30000〜250000であり、更に好ましくは、40000〜200000である。
なお、重量平均分子量は、例えば、以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
上記エマルション樹脂は、該エマルション樹脂を形成することになる全単量体成分100質量%中0.2〜5質量%の酸性基を含むことが好ましい。エマルション樹脂が酸性基を全単量体成分100質量%に対して0.2〜5質量%含む場合、エマルション粒子の安定性が良好である。より好ましくは、0.3〜4質量%である。
すなわち、本発明において用いられるエマルション樹脂は、全単量体成分100質量%中0.2〜5質量%の酸性基を含み、ガラス転移温度が−20〜30℃であり、重量平均分子量が20000〜400000であることが好ましい。
上記酸性基としては、特に制限されるものではないが、カルボキシル基であることが好ましい。エマルション樹脂が酸性基としてカルボキシル基を含むことにより、エマルション重合が容易となる。
上記エマルション樹脂は、重合体が媒体中に粒子状に分散された形態で存在することが好ましい。なお、媒体としては、水性媒体が好ましく、例えば、水や、水と混じりあう溶媒と水との混合溶媒等が挙げられる。中でも、本発明のエマルション樹脂組成物を含む制振材配合物(塗料)を塗布する際の安全性や環境への影響を考慮すると、水が好適である。
上記エマルション樹脂中の不揮発分、すなわち、エマルション樹脂中のエマルションの含有割合としては、エマルション樹脂の総量100質量%に対し、30質量%以上、70質量%以下であることが好適である。70質量%を超えると、エマルション樹脂の粘度が高くなり過ぎて充分な分散安定性を保持することができないおそれがあり、凝集するおそれがある。30質量%未満であると、このようなエマルション樹脂を含むエマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成した場合に、その制振材は充分な制振性を発揮しないおそれがある。より好ましくは50質量%以上、65質量%以下である。
上記エマルション樹脂は、含まれるエマルションの粒子の平均粒子径が100〜450nmであることが好ましい。平均粒子径がこの範囲にあるエマルション粒子を用いることにより、このようなエマルション樹脂を含むエマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成した場合に、得られる制振材塗膜が熱乾燥後もずり落ちたりすることなく、良好な耐塗膜崩壊性を有するものとなることから、垂直な面にも高い制振性及び機械安定性を発揮する塗膜を形成することができる。より好ましくは、120〜400nmであり、更に好ましくは、150〜350nmである。エマルション粒子の平均粒子径がこのような範囲であると、本発明のエマルション樹脂組成物を制振材用途に用いた時にエマルションの作用効果がより効果的に発揮されることになる。
なお、平均粒子径は、例えば、エマルションを蒸留水で希釈し充分に攪拌混合した後、ガラスセルに約10ml採取し、これを動的光散法による粒度分布測定器(Particle Sizing Systems社製「NICOM P Model 380」)で測定することにより求めることができる。
上記エマルション樹脂のpHは、特に制限されないが、例えば、2〜10であることが好ましい。より好ましくは、3〜9である。エマルション樹脂のpHは、エマルション樹脂に、アンモニア水、水溶性アミン類、水酸化アルカリ水溶液等を添加することによって調整することができる。
pHは、pHメーター(堀場製作所社製「F−23」)等により測定することができる。
上記エマルション樹脂の粘度は、特に制限されないが、例えば、10〜10000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは、50〜5000mPa・sである。
なお、粘度は、BM型回転粘度計を用いて、ローター2又は3、25℃、20rpmの条件下で測定することができる。
上記エマルション樹脂に含まれるエマルションは、乳化剤を用いて単量体成分を乳化重合することにより合成されるが、その際の乳化剤の使用量としては、エマルションの製造に使用される単量体成分の総量100重量部に対し、1.0重量部以上であることが好ましい。1.0重量部未満であると、エマルションが優れた乾燥性や制振性を発揮することができず、また、顔料と混合した際の顔料混和性が充分とはならないおそれがあり、エマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成した場合に、各種構造体の制振材として有用なものとすることができないおそれがある。好ましくは2.0重量部以上であり、より好ましくは2.5重量部以上である。また、経済性を考慮すると、7.0重量部以下であることが好適である。
上記乳化剤としては、乳化重合に通常使用されるものを用いればよく、後述するアニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性、高分子等の各種界面活性剤の1種又は2種以上を使用することができ、また、これらの反応性界面活性剤を用いることもできる。
上記反応性乳化剤としては、重合性基を有するアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤等が好適であり、1種又は2種以上を用いることができるが、これらの中でも、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基等の重合性基を有する乳化剤が好ましい。
上記エマルションの製造に用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記アニオン系乳化剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)スチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(モノ、ジ、トリ)ベンジルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルコハク酸ジ塩;及び、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィン塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記アニオン系乳化剤として特に好適な化合物としては、例えば、ラテムルWX、ラテムル118B、ペレックスSS−H、エマルゲン1118S、エマルゲンA−60、B−66(花王社製)、ニューコール707SF、ニューコール707SN、ニューコール714SF、ニューコール714SN(日本乳化剤社製)、ABEX−26S、ABEX−2010、2020、2030、RHODACAL DSB(ローディア日華社製)、ハイテノールLA−10、ハイテノールNF−08(第一工業製薬社製)等を挙げることができる。
また、これらのノニオンタイプに相当する乳化剤も使用することができる。
上記アニオン系乳化剤としてはまた、反応性乳化剤として、反応性アニオン系乳化剤、スルホコハク酸塩型反応性アニオン系乳化剤、アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系乳化剤等の1種又は2種以上を用いることができる。
スルホコハク酸塩型反応性アニオン系乳化剤の市販品としては、ラテムルS−120、S−120A、S−180及びS−180A(いずれも商品名、花王社製)、エレミノールJS−2(商品名、三洋化成社製)、アデカリアソープSR−10、SR−20、SR−30(ADEKA社製)等が挙げられる。
アルケニルコハク酸塩型反応性アニオン系乳化剤の市販品としては、ラテムルASK(商品名、花王社製)等が挙げられる。
更に、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルフォネート塩(例えば、三洋化成工業社製「エレミノールRS−30」、日本乳化剤社製「アントックスMS−60」等)、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルフォネー卜塩(例えば、第一工業製薬社製「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」等)等のアリル基を有する硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(例えば、花王社製「ラテムルPD−104」等)等も用いることができる。
上記ノニオン系乳化剤としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪族エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪族モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミド又は酸との縮合生成物等が挙げられる。また、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、ADEKA社製「アデカリアソープER−20」等)、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(例えば、花王社製「ラテムルPD−420」、「ラテムルPD−430」等)等の反応性を有するノニオン系乳化剤も用いることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記カチオン系乳化剤としては特に限定されず、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリニウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記両性乳化剤としては特に限定されず、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記高分子乳化剤としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物;(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシエチル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル系水溶性高分子;ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記乳化剤の使用量としては、用いる乳化剤の種類や単量体成分の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、エマルションを形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、0.3〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜5重量部である。
上記保護コロイドとしては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩等のセルロース誘導体;グアーガム等の天然多糖類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なお、保護コロイドは単独で使用されてもよいし、乳化剤と併用されてもよい。
上記保護コロイドの使用量としては、使用条件等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、エマルションを形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは3重量部以下である。
本発明におけるエマルション樹脂に含まれるエマルションは、コア部とシェル部とを有するエマルション粒子であることが好ましい。エマルションがこのようなものである場合、コア部とシェル部とが完全に相溶し、これらを区別できない均質構造のものであってもよく、これらが完全には相溶せずに不均質に形成されるコア・シェル複合構造やミクロドメイン構造であってもよい。
これらの構造の中でも、エマルションの特性を充分に引き出し、安定なエマルションを作製するためには、コア・シェル複合構造であることが好ましい。
なお、上記コア・シェル複合構造においては、コア部の表面がシェル部によって被覆された形態であることが好ましい。この場合、コア部の表面は、シェル部によって完全に被覆されていることが好適であるが、完全に被覆されていなくてもよく、例えば、網目状に被覆されている形態や、所々においてコア部が露出している形態であってもよい。
上記コア部とシェル部とを有するエマルション粒子において、コア部を形成する重合体と、シェル部を形成する重合体とは、例えば、重量平均分子量やガラス転移温度、SP値(溶解度係数)、使用される単量体の種類、単量体の使用割合等の各種物性のうちいずれかにおいて異なるものであればよい。中でも、後述するように、重量平均分子量、ガラス転移温度の少なくとも1つで差を有するものであることが好適である。
上記エマルションの粒子がコア部とシェル部とを有するエマルション粒子である場合、コア部を形成する単量体成分とシェル部を形成する単量体成分とのガラス転位温度(Tg)の差が5〜60℃であることが好ましい。Tgの差が5℃未満である場合や、60℃より大きい場合には、エマルション粒子を含むエマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成した場合に、幅広い温度領域(20〜60℃)にわたって制振性を有する制振材が得られない。より好ましくはTgの差が10〜50℃であることである。また、コア部を形成する単量体成分のTgは、シェル部を形成する単量体成分のTgよりも高いほうが好ましい。すなわち、コア部とシェル部とを有するエマルションを製造する場合、コア部のエマルションを形成した後、シェル部のエマルションを形成する多段重合により製造されることになるが、前段工程で使用される単量体成分のTgは、後段工程で使用される単量体成分のTgよりも高いほうが好ましい。エマルションが3段階以上の工程で製造される場合も同様に、後の工程で使用される単量体成分のTgは、その直前の工程で使用される単量体成分のTgよりも低いものであることが好ましい。
また本発明におけるエマルション樹脂は、Tgが高いエマルションを必須として含むことが好ましく、また、Tgが高いエマルションとTgが低いエマルションとを含むことが好ましい。
上記Tgが高いエマルションとしては、Tgが0℃以上、また、50℃以下のものが好適である。より好ましくは、Tgが0℃以上、また、30℃以下である。また、上記Tgが低いエマルションとしては、Tgが−50℃以上、また、10℃以下のものが好適である。より好ましくは、Tgが−20℃以上、また、0℃以下である。
上記Tgが高いエマルションとTgが低いエマルションのTgの差としては、15℃以上であることが好ましい。差が15℃未満であると、20℃か60℃のいずれかで制振性をより充分に発現できないおそれがある。より好ましくは20℃以上であり、更に好ましくは25℃以上である。また、温度差が大き過ぎると、実用的範囲での制振性がより充分なものとはならないおそれがあることから、Tg差は100℃以下とすることが好ましい。より好ましくは90℃以下であり、更に好ましくは80℃以下である。
このようにTgに差を設けることにより、本発明のエマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成した場合に、その制振材が幅広い温度領域下でより高い制振性を発現することが可能となり、特に実用的範囲である20〜60℃域での制振性が格段に向上することとなる。なお、3種以上のエマルションを用いる場合には、このうちの少なくとも2種のエマルションがTgの異なるものであればよく、残りの1種以上については、当該2種のエマルションのいずれかとTgが同じものであってもよい。
上記Tgが高いエマルションとしては、反応性乳化剤及び/又は特定の構造を有するアニオン性乳化剤により単量体成分を乳化重合してなるエマルションを用いることが好ましく、上記Tgが低いエマルションとしては、反応性乳化剤及び/又は特定の構造を有するアニオン性乳化剤により単量体成分を乳化重合してなるエマルションを用いることもできるが、特に限定せず、SBR及び、アクリルエマルション、酢酸ビニル系エマルション等の市販品を使用しても良い。
上記エマルションの粒子がコア部とシェル部とを有するエマルション粒子である場合はまた、コア部を形成する単量体成分とシェル部を形成する単量体成分との質量比が20/80〜70/30であることが好ましい。コア部を形成する単量体成分の質量比が20/80よりも小さい場合や、70/30よりも大きい場合には、幅広い温度領域での制振性が得られなくなる。より好ましくは、35/65〜55/45である。
本発明におけるエマルション樹脂を形成することになる単量体成分としては、本発明の作用効果を発揮することができる限り特に限定されるものではないが、不飽和カルボン酸単量体を含んでなるものであることが好ましい。より好ましくは、不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体とを含んでなるものである。不飽和カルボン酸単量体としては、分子中に不飽和結合とカルボキシル基とを有する化合物であれば特に限定されるものではないが、エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含むことが好ましい。
なお、本発明におけるエマルションがコア部とシェル部とを有するエマルション粒子である場合、不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸単量体と共重合可能な他の単量体は、エマルションのコア部を形成する単量体成分、シェル部を形成する単量体成分のいずれに含まれていてもよく、これらの両方に用いられるものであってもよい。
上記エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノメチルマイエート、モノエチルマイエート等の不飽和カルボン酸類又はその誘導体等の1種又は2種以上が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
更に上記単量体成分としては、全単量体成分に対して官能基を有する不飽和単量体を10質量%未満含有するものであってもよい。官能基を有する不飽和単量体における官能基は、エマルションを重合により得る際に架橋することができる官能基であればよい。このような官能基の作用により、エマルションの成膜性や加熱乾燥性を向上することができることになる。より好ましくは、0.1〜5質量%である。
なお上記質量割合は、全単量体成分100質量%に対する質量割合である。
上記官能基としては、例えば、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジニル基、イソシアネート基、メチロール基、ビニルエーテル基、シクロカーボネート基、アルコキシシラン基等が挙げられる。これらの官能基は、不飽和単量体の1分子中に1種あってもよく、2種以上あってもよい。
上記官能基を有する不飽和単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性不飽和単量体類;グリシジル(メタ)アクリレート、アクリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有不飽和単量体類等が挙げられる。これらの中でも、官能基を2個以上有する不飽和単量体(多官能性不飽和単量体)を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、上記単量体成分が、エチレン系不飽和カルボン酸単量体0.1〜20質量%及び他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体99.9〜80質量%を含んでなることが好ましい。エチレン系不飽和カルボン酸単量体を含むことにより、本発明のエマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成した場合に、無機粉体等の充填剤の分散性が向上し、制振性がより向上することになる。また、その他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体を含むことにより、エマルションの酸価、Tgや物性等を調整しやすくなる。上記単量体成分において、エチレン系不飽和カルボン酸単量体が0.1質量%未満であっても、20質量%を超えても、いずれも、エマルションが安定に共重合できないおそれがある。
本発明におけるエマルション樹脂では、これらの単量体から形成される単量体単位の相乗効果により、水系制振材において優れた加熱乾燥性と制振性とをより充分に発揮することが可能となる。
なお上記質量割合は、全単量体成分100質量%に対する質量割合である。
上記他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、上述した官能基を有する不飽和単量体や、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等の1種又は2種以上が挙げられる。また、スチレン等の芳香族不飽和単量体等の1種又は2種以上を用いることができる。
本発明におけるエマルション樹脂を形成することになる単量体成分は、(メタ)アクリル酸エステルを全単量体成分100質量%に対して、20質量%以上含有するものであることが好ましい。より好ましくは、30質量%以上である。
また、上記他の共重合可能なエチレン系不飽和単量体のうち、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド化合物の単量体成分中における含有割合は、全単量体成分100質量%に対して、40質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、20質量%以下である。
本発明のエマルション樹脂組成物は、エマルション樹脂に、アミン化合物が添加されたものである限り、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、成膜助剤、防腐剤、消泡剤等が挙げられる。
本発明におけるエマルションの製造方法としては、乳化剤の存在下で乳化重合法により単量体成分を重合することになるが、乳化重合を行う形態としては特に限定されず、例えば、水性媒体中に単量体成分、重合開始剤及び乳化剤を適宜加えて重合することにより行うことができる。また、分子量調節のために重合連鎖移動剤等を用いることが好ましい。
乳化剤としては、上述したように、反応性乳化剤及び/又は特定の構造を有するアニオン性乳化剤を用いることが好ましいが、それら以外の乳化重合に通常使用されるアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤等の1種又は2種以上を使用することができる。
本発明におけるエマルションの粒子がコア部とシェル部とを有するエマルション粒子である場合、通常の乳化重合法を用いて得ることが好ましい。具体的には、乳化剤及び/又は保護コロイドの存在下、水性媒体中で単量体成分を乳化重合させてコア部を形成した後、該コア部を含むエマルションに更に単量体成分を乳化重合させてシェル部を形成する多段重合により得ることが好ましい。
なお、上記コア部とシェル部とを有するエマルション粒子を製造する場合、コア部を形成し、その後、シェル部を形成する単量体成分を加えてシェル部を形成する方法が好ましい。
上記水性媒体としては特に限定されず、例えば、水、水と混じり合うことができる溶媒の1種又は2種以上の混合溶媒、このような溶媒に水が主成分となるように混合した混合溶媒等が挙げられる。これらの中でも、水を用いることが好ましい。
上記保護コロイドとしては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩等のセルロース誘導体;グアーガム等の天然多糖類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なお、保護コロイドは単独で使用されてもよいし、界面活性剤と併用されてもよい。
上記保護コロイドの使用量としては、使用条件等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、エマルションを形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは3重量部以下である。
上記重合開始剤としては、熱によって分解し、ラジカル分子を発生させる物質であれば特に限定されないが、水溶性開始剤が好適に使用される。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、t−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系重合開始剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記重合開始剤の使用量としては特に限定されず、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、エマルションを形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、0.1〜2重量部であることが好ましく、より好ましくは、0.2〜1重量部である。
上記重合開始剤にはまた、乳化重合を促進させるため、必要に応じて還元剤を併用することができる。還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖等の還元性有機化合物;例えば、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等の還元性無機化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記還元剤の使用量としては特に限定されず、例えば、エマルションを形成するのに用いられる単量体成分の総量100重量部に対して、0.05〜1重量部であることが好ましい。
上記重合連鎖移動剤としては特に限定されず、例えば、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素;メルカプト酢酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、メルカプトピロピオン酸トリデシルエステル等のメルカプトカルボン酸アルキルエステル;メルカプト酢酸メトキシブチルエステル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルエステル等のメルカプトカルボン酸アルコキシアルキルエステル;オクタン酸2−メルカプトエチルエステル等のカルボン酸メルカプトアルキルエステルや、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、アニソール、アリルアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を用いることが好ましい。重合連鎖移動剤の使用量としては、例えば、全単量体成分100重量部に対して、通常2.0重量部以下、好ましくは1.0重量部以下である。重合連鎖移動剤の使用量を全単量体成分100重量部に対して0.2〜1.0重量部とすると、そのようにして合成されたエマルション樹脂を含むエマルション樹脂組成物を用いて制振材塗膜を形成した場合に、その外観をワレや凸凹が見られない外観とすることが可能となる。
上記乳化重合においては、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のキレート剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の分散剤や無機塩等の存在下で行ってもよい。また、単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
上記製造方法における乳化重合条件に関し、重合温度としては特に限定されず、例えば、0〜100℃であることが好ましく、より好ましくは、40〜95℃である。また、重合時間も特に限定されず、例えば、1〜15時間とすることが好適で、より好ましくは、5〜10時間である。
また単量体成分や重合開始剤等の添加方法としては特に限定されず、例えば、一括添加法、連続添加法、多段添加法等の方法を適用することができる。また、これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
本発明におけるエマルション樹脂の製造方法においては、乳化重合によりエマルションを製造した後、中和剤によりエマルションを中和することが好ましい。これにより、エマルションが安定化されることになる。中和剤としては、例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム等を用いることが出来る。中和剤の添加量としては、pHが7以上になるように添加することが好ましい。
本発明におけるエマルション樹脂は、数平均分子量が小さいと、このエマルション樹脂を必須とするエマルション樹脂組成物を含む制振材配合物において、無機粉体等の充填剤とエマルションとの親和性が向上して分散性が向上することになる。
上述のとおり、本発明のエマルション樹脂組成物は、制振材用であることが好ましい。制振材を本発明のエマルション樹脂組成物を用いて製造した場合には、上述のような優れた効果を発揮する制振材を得ることが可能となる。
また、本発明のエマルション樹脂組成物は、必要に応じて他成分とともに、制振材配合物を構成することができるものである。このような本発明のエマルション樹脂組成物、顔料、発泡剤及び増粘剤を必須成分として含む制振材配合物は、本発明の好ましい実施形態の1つであり、優れた加熱乾燥性と制振性とを発揮し得る水系制振材を形成することができるものである。なお、これらを必須とする限り、その他の成分を含んでいてもよい。
上記制振材配合物としては、例えば、制振材配合物の総量100質量%に対し、固形分を50〜90質量%含有してなることが好ましい。より好ましくは、60〜90質量%であり、更に好ましくは、70〜90質量%である。また、制振材配合物のpHは、7〜11とすることが好ましい。より好ましくは、7〜9である。
上記制振材配合物におけるエマルション樹脂の配合量としては、例えば、制振材配合物の固形分100質量%に対し、エマルション樹脂の固形分が10〜60質量%となるように設定することが好ましい。より好ましくは、15〜55質量%である。
上記制振材配合物の制振性は、制振材配合物から形成される被膜の損失係数を測定することにより評価することができる。損失係数は、通常ηで表され、制振性能を表す場合に用いられる最も一般的な指標であり、本発明においても、制振性能を評価するために好適に用いることができる。上記損失係数は、数値が高いほど制振性能に優れていることを示している。また、温度による影響を受け、実用温度範囲内において高い制振性能を発揮することが好ましい。本発明においては、例えば、制振材配合物から形成される被膜の実用温度範囲が通常では20〜60℃であるので、20℃、40℃及び60℃における損失係数を合計した値で制振性能を評価することが適当である。すなわち、20℃、40℃及び60℃における損失係数を合計した値が高いほど実用的な制振性能に優れ、制振性を判断する一つの指標として有用である。20℃、40℃及び60℃における損失係数を合計した値の好ましい範囲としては、0.200以上である。より好ましい範囲としては、0.240以上、更に好ましくは、0.260以上である。
上記損失係数の測定方法としては、共周波数付近で測定する共振法が一般的であり、半値幅法、減衰率法、機械インピーダンス法がある。本発明の制振材配合物においては、制振材配合物から形成される被膜の損失係数として、次のように測定することが好適である。すなわち、制振材配合物を冷間圧延鋼板(SPCC・15mm幅×250mm長さ×1.5mm厚み)上に面密度4.0kg/mの被膜で形成し、片持ち梁法(株式会社小野測機製損失係数測定システム)を用いた共振法(3dB法)により測定することができる。
上記顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄、ハンザイエロー、ベンジンイエロー、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド等の有機又は無機の着色剤や、例えば、リン酸金属塩、モリブデン酸金属塩、硼酸金属塩等の防錆顔料が挙げられる。これらのうち、1種を用いてもよく、又は、2種以上を用いてもよい。
顔料の配合量としては、本発明におけるエマルション樹脂の固形分100重量部に対し、50〜700重量部とすることが好ましい。より好ましくは、100〜550重量部である。
上記発泡剤としては特に限定されず、例えば、低沸点炭化水素内包の加熱膨張カプセル、有機発泡剤、無機発泡剤等が好適であり、これらの1種又は2種以上を使用することができる。加熱膨張カプセルとしては、例えば、マツモトマイクロスフィアーF−30、F−50(松本油脂社製);エクスパンセルWU642、WU551、WU461、DU551、DU401(日本エクスパンセル社製)等が挙げられ、有機発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p−トルエンスルホニルヒドラジン、p−オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)等が挙げられ、無機発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、シリコンハイドライド等が挙げられる。
上記発泡剤の配合量としては、本発明におけるエマルション樹脂の固形分100重量部に対し、0.5〜5.0重量部とすることが好ましい。より好ましくは、1.0〜3.0重量部である。
上記増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース系誘導体、ポリカルボン酸系樹脂等が挙げられる。増粘剤の配合量としては、本発明におけるエマルション樹脂の固形分100重量部に対し、固形分で0.01〜2重量部とすることが好ましい。より好ましくは、0.05〜1.5重量部、更に好ましくは、0.1〜1重量部である。
上記他成分としては、例えば、溶媒;可塑剤;安定剤;湿潤剤;防腐剤;充填剤;分散剤;消泡剤;老化防止剤;防黴剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、充填剤を含むことが好ましい。
なお、上記他の成分は、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等等を用いて、上記エマルション樹脂等と混合され得る。
上記溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。溶剤の配合量としては、制振材配合物中のエマルション樹脂の固形分濃度が上述した範囲となるように適宜設定すればよい。
上記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、ガラストーク、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、珪藻土、クレー等の無機質の充填剤;ガラスフレーク、マイカ等の鱗片状無機質充填剤;金属酸化物ウィスカー、ガラス繊維等の繊維状無機質充填剤等が挙げられる。無機質充填剤の配合量としては、本発明におけるエマルション樹脂の固形分100重量部に対し、50〜700重量部とすることが好ましい。より好ましくは、100〜550重量部である。
上記分散剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等の無機質分散剤及びポリカルボン酸系分散剤等の有機質分散剤が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコン系消泡剤等が挙げられる。
上記他成分としては更に、多価金属化合物を用いてもよい。この場合、多価金属化合物により、制振材配合物の安定性、分散性、加熱乾燥性や、制振材配合物から形成される制振材の制振性が向上することとなる。多価金属化合物としては特に限定されず、例えば、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記多価金属化合物の形態は特に限定されず、例えば、粉体、水分散体や乳化分散体等であってよい。中でも、制振材配合物中への分散性が向上することから、水分散体又は乳化分散体の形態で使用することが好ましく、より好ましくは乳化分散体の形態で使用することである。また、多価金属化合物の使用量は、制振材配合物中の固形分100重量部に対して、0.05〜5.0重量部とすることが好ましい。より好ましくは0.05〜3.5重量部である。
上記制振材配合物は、例えば、基材に塗布して乾燥することにより制振材となる塗膜を形成することになる。基材としては特に限定されるものではない。また、制振材配合物を基材に塗布する方法としては、例えば、刷毛、へら、エアスプレー、エアレススプレー、モルタルガン、リシンガン等を用いて塗布することができる。
上記制振材配合物の塗布量は、用途や所望する性能等により適宜設定すればよいが、乾燥時の塗膜の膜厚が、0.5〜8.0mmとなるようにすることが好ましい。より好ましくは、3.0〜6.0mmである。
また、乾燥時(後)の塗膜の面密度が1.0〜7.0kg/mとなるように塗布することも好ましい。より好ましくは、2.0〜6.0kg/mである。なお、本発明の制振材配合物を使用することにより、乾燥時に膨張やクラックが生じにくく、しかも傾斜面の塗料のずり落ちも発生しにくい塗膜を得ることが可能となる。
上記制振材配合物を塗布した後、乾燥して塗膜を形成させる条件としては、加熱乾燥してもよく、常温乾燥してもよいが、本発明の制振材配合物は、加熱乾燥性に優れることから、効率性の点で加熱乾燥することが好ましい。加熱乾燥の温度としては、80〜210℃とすることが好ましい。より好ましくは、110〜180℃、更に好ましくは、120〜170℃である。また、加熱乾燥の時間としては、10〜60分であることが好ましい。より好ましくは、20〜40分、更に好ましくは、20〜30分である。
上述のように、沸点が170℃以上で水溶性の第1級及び/又は第2級アミン基を必須とするアミン化合物をエマルション樹脂の固形分100質量%に対して、0.5〜5質量%添加したエマルション樹脂組成物を含んだ制振材配合物を塗布する工程と、それに続く加熱乾燥工程を含む制振材の製造方法もまた本発明の1つである。
本発明のエマルション樹脂組成物は、上述の構成よりなり、エマルション樹脂組成物及び高温条件下での加熱乾燥後の塗膜から放散されるアルデヒド類を捕捉することで、エマルション樹脂組成物を用いた制振材の製造時から使用時に至るまでアルデヒド類の放散を低減させることができることから、自動車の室内床下の他、鉄道車両、船舶、航空機、電気機器、建築構造物、建設機器等の各種用途の制振材として好適に用いることができるエマルション樹脂組成物である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
なお、以下の実施例において、各種物性等は以下のように評価した。
<Tg>
各段で用いた単量体組成から、上述したFoxの式を用いて算出した。なお、全ての段で用いた単量体組成から算出したTgを「トータルTg」として記載した。
Foxの式により重合性単量体成分のガラス転移温度(Tg)を算出するのに使用したそれぞれのホモポリマーのTg値を下記に示した。
スチレン(St):100℃
メチルメタクリレート(MMA):105℃
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
アクリル酸(AA):95℃
メタクリル酸(MAA):130℃
n−ブチルメタクリレート(n−BMA):20℃
ブチルアクリレート(BA):−56℃
<重量平均分子量>
以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めた。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定した。
<アルデヒド類の発生量>
本発明におけるエマルション樹脂組成物を高温条件下で乾燥したものを試験片とし、10Lテドラーバック法によりアルデヒド類を採取し、液体クロマトグラフィによって、以下の装置及び測定条件で測定し、定量した。
装置:日立ハイテク製高速液体クロマトグラフ
測定条件:溶媒 アセトニトリル/水=5/5
カラム CAPCELL PAK C18 MGII(資生堂製)
溶離液流量 1ml/分
カラム温度 40℃
試料注入量 0.1μl
検出波長 360nm
<アルデヒド類の発生量評価基準>
ホルムアルデヒド
○:0.08ppm未満
△:0.08ppm以上0.1ppm未満
×:0.1ppm以上
アセトアルデヒド
○:0.03ppm未満
△:0.03ppm以上0.05ppm未満
×:0.05ppm以上
<塗膜外観>
鋼板(商品名SPCC−SD 75mm幅×150mm長さ×0.8mm厚み:日本テストパネル社製)の上に、作製した制振材配合物を配合物の塗布厚みが3mmになるように塗布した。その後、熱風乾燥機を用いて、150℃で30分間乾燥し、得られた乾燥塗膜の表面状態を目視観察した。
評価基準
○:ワレ、凸凹の異常なし
△:わずかにワレ、凸凹あり
×:ワレ、凸凹多数
<制振性試験>
作製した制振材配合物を冷間圧延鋼板(SPCC・15mm幅×250mm長さ×1.5mm厚み)上に3mmの厚みで塗布して150℃で30分間乾燥し、冷間圧延鋼板上に面密度4.0kg/mの制振材被膜を形成した。制振性の測定は、片持ち梁法(株式会社小野測機製損失係数測定システム)をもちいて、それぞれの温度(20℃〜60℃)における損失係数を共振法(3dB法)により測定した。
実施例1
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管及び滴下ロートを取り付けた重合器に脱イオン水300部を仕込んだ。その後、窒素ガス気流下で攪拌しながら内温を75℃まで昇温した。一方、上記滴下ロートにスチレン200部、メチルメタクリレート105部、2−エチルへキシルアクリレート190部、アクリル酸5部、t−ドデシルメルカプタン0.4部、予め20%水溶液に調整したレベノールWZ(商品名、花王社製)90.0部及び脱イオン水97部からなる第1段目の単量体乳化物を仕込んだ。
次に、重合器の内温を80℃に維持しながら、上記単量体乳化物のうちの8部、5%過硫酸カリウム水溶液5部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部を添加し、初期重合を開始した。20分後、反応系内を80℃に維持したまま、残りの単量体乳化物を120分にわたって均一に滴下した。
同時に5%過硫酸カリウム水溶液50部及び2%亜流酸水素ナトリウム水溶液50部を120分かけて均一に滴下し、滴下終了後60分同温度を維持した。次に、滴下ロートにスチレン105部、メチルメタクリレート100部、ブチルアクリレート290部、アクリル酸5部、t−ドデシルメルカプタン0.4部、予め20%水溶液に調整したレベノールWZ90.0部及び脱イオン水97部からなる第2段目の単量体乳化物を仕込み、120分にわたって均一に滴下した。同時に5%過硫酸カリウム水溶液50部及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液50部を120分かけて均一に流下し、滴下終了後90分同温度を維持し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、ジグリコールアミン13部を添加し、不揮発分55%、pH8.0、粘度420mPa・s、粒子径230nm、粒度分布22%、重量平均分子量170000、1段目のTg10℃、2段目のTg−10℃、トータルTg0℃のエマルション樹脂組成物を得た。
実施例2〜8および比較例1〜4
表1で示した組成以外は、実施例1と同様の操作で実施例2〜8および比較例1〜4のエマルション樹脂組成物を得た。
得られたエマルション樹脂組成物を下記のとおり配合し、制振材配合物を得た。
エマルション樹脂組成物 359部
炭酸カルシウム NN#200*1 620部
分散剤アクアリックDL−40S*2 6部
増粘剤アクリセットWR−650*3 4部
消泡剤 ノプコ8034L*4 1部
発泡剤 F−30*5 6部
* 1:日東粉化工業株式会社製 充填剤
* 2:株式会社日本触媒製 特殊ポリカルボン酸型分散剤(有効成分44%)
* 3:株式会社日本触媒製 アルカリ可溶性のアクリル系増粘剤(有効成分30%)
* 4:サンノプコ株式会社製 消泡剤(主成分:疎水性シリコーン+鉱物油)
* 5:松本油脂社製 発泡剤
上記制振材配合物を、ガラス板に4mm厚で塗布した後、140℃の乾燥オーブンで60分間加熱乾燥を行った。乾燥して得られた制振材塗膜を試験片として、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの発生量を上記の方法により定量した。また、上記制振材配合物の塗膜外観及び制振性を上記の方法により評価した。
これらの結果を下記表1に示す。なお、表1中に記載されている中和剤の物性は以下のとおりである。
ジグリコールアミン:1級アミン、沸点 221℃、分子量 105
N−(β−アミノエチル)エタノールアミン:1、2級アミン、沸点 244℃、分子量 104
2−ヒドロキシエチルピペリジン:2級アミン、沸点 246℃、分子量 130
モノエタノールアミン:1級アミン、沸点 171℃、分子量 61
3−エトキシプロピルアミン:1級アミン、沸点 135℃、分子量 103
トリエタノールアミン:3級アミン、沸点 360℃、分子量 149
Figure 2010215730
表1の結果より、エマルション樹脂に、特定のアミン化合物を、特定量添加したエマルション樹脂組成物を用いて制振材を形成した場合に、制振材からのアルデヒド類の放散を低減することができることがわかった。アミン化合物として、沸点が170℃未満のものを用いた場合に比べ、沸点が170℃以上のものを用いた場合に、アルデヒド類の放散がより低減されることがわかった(実施例1〜8、比較例3)。アミン化合物として、第1級、第2級アミン基をもたず、第3級アミンを有するものを用いた場合に比べ、第1級及び/又は第2級アミン基を必須とするものを用いた場合に、アルデヒド類の放散がより低減されることがわかった(実施例1〜8、比較例4)。また、アミン化合物の添加量を、エマルション樹脂の固形分100質量%に対して0.5〜5質量%にした場合に、それ以外の添加量とした場合に比べ、アルデヒド類の放散がより低減されることがわかった(実施例1〜8、比較例1、2)。
また、ホルムアルデヒドの放散もアセトアルデヒドの放散もよく低減させることができることから、第1級及び/又は第2級アミン基を必須とするアミン化合物の中でも、ジグリコールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミンがより好ましいことがわかった(実施例1〜4)。この実施例と比較例とのアルデヒド類の放散低減の度合いの差は、数値上はわずかであるが、これらの人体への影響等を考慮すると、その効果は際立っていると評価できるものである。
アミン化合物がアルデヒド類と反応して、アルデヒド類を捕捉することで、アルデヒド類の放散を抑制するという作用機構は、エマルション樹脂に添加されるアミン化合物において全て同様であることから、上記実施例、比較例の結果から、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。

Claims (6)

  1. エマルション樹脂に、アミン化合物が添加されたエマルション樹脂組成物であって、
    該アミン化合物は、沸点が170℃以上で水溶性の第1級及び/又は第2級アミン基を必須とし、その添加量が、エマルション樹脂の固形分100質量%に対して、0.5〜5質量%であることを特徴とする加熱乾燥用エマルション樹脂組成物。
  2. 前記エマルション樹脂は、全単量体成分100質量%中0.2〜5質量%の酸性基を含み、ガラス転移温度が−20〜30℃であり、重量平均分子量が20000〜400000であることを特徴とする請求項1に記載の加熱乾燥用エマルション樹脂組成物。
  3. 前記酸性基は、カルボキシル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱乾燥用エマルション樹脂組成物。
  4. 前記アミン化合物は、第1級アミン基を必須とし、分子量が40〜150であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加熱乾燥用エマルション樹脂組成物。
  5. 前記エマルション樹脂組成物は、制振材用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の加熱乾燥用エマルション樹脂組成物。
  6. 請求項5に記載の加熱乾燥用エマルション樹脂組成物、顔料、発泡剤及び増粘剤を必須成分として含むことを特徴とする制振材配合物。
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