JP2005126644A - 制振性組成物 - Google Patents

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文男 太田
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Abstract

【課題】 塗装の行い易い水系の制振性組成物において、広い温度範囲で損失係数が山型のピークを示し、一定値以上の損失係数を有するとともに、要求される温度前後で飛躍的に高い損失係数を有する、適用場所に適した制振性組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の制振性組成物は、微多孔質隔膜基材の少なくとガラス転移温度の異なる少なくとも二種類のエマルションからなるベースエマルションに、有機フィラーと、オイルを混合してなることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車等の車両、建築構造物、携帯電話やパソコン関連機器その他の各種機器等の振動および騒音の低減に用いる水系の制振性組成物に関する。
従来、車両、建築構造体その他各種機器等の騒音または振動対策として、例えば、車両の室内フロアやルーフ、ドア等の鋼板接合部等の適所や、キッチンの壁面の裏等の適所、その他、携帯電話やパソコン関連機器等の各種機器の振動が発生する部位の適所に、典型的な粘弾性挙動を示す高分子材料からなるシートタイプの制振材を設け、振動を前記制振材で吸収し、減衰させていた。このようなシートタイプの制振材としては、例えばアスファルト系のシートタイプのものが知られている。このようなアスファルト系シートタイプの制振材は、価格が安いため使用されているという現状であった。
近年においては、複雑な形状にも適用でき、施工が簡便である塗装可能な制振性組成物も開発されている。このような、制振性組成物としては、一般に希釈剤として有機溶剤を用いた有機溶剤系の制振性組成物が知られているが、近年の環境問題に関わる規制に伴い、有機溶剤の代わりに水を使用した水系の制振性組成物が開発されている。
また、広い温度範囲一定値以上の損失係数を有する制振性組成物として、比較的高いガラス転移温度のポリマー(樹脂)とガラス転移温度の低いポリマー(ゴム)の2成分をベース材料として、該ベース材料にタルク、マイカ等の無機フィラーを添加した制振性組成物を用いた制振材が開示されている(特許文献1)。
特開2001−142466号公報
しかしながら、前記特許文献1のように、異なるガラス転移温度の二種類のポリマーに無機フィラーを添加した制振性組成物は、各成分のガラス転移温度前後で高い損失係数を有するものの、高温から低温の全体に亘って損失係数が山型のピークとなるのではなく、ベース材料となる二成分の比較的高いガラス転移温度付近と比較的低いガラス転移温度付近で二つのピークが発生し、二つのガラス転移温度の中間の温度では、損失係数が下がる鞍型のピークが形成されるものと推定される。
ところで、近年では、制振性組成物を適用する箇所が、自動車等の車両や飛行機、住宅等の建築構造物等、幅広くなっており、幅広い温度範囲で一定値以上の損失係数を有するとともに、所望の温度前後で高い損失係数のピークを有する、適用場所に適した制振性組成物が要求されている。
そこで、本発明は、塗装の行い易い水系の制振性組成物において、広い温度範囲で損失係数が山型のピークを示し、一定値以上の損失係数を有するとともに、要求される温度前後で飛躍的に高い損失係数を有する、適用場所に適した制振性組成物を提供することを課題とする。
以上の目的を達成するために、本発明者等は鋭意検討の結果、ガラス転移温度の異なる少なくとも二種類のエマルションをベースエマルションとし、このベースエマルションに、有機フィラーとオイルとを混合することにより、広い温度範囲で損失係数が山型のピークとなり、一定値以上の損失係数を有するとともに、所望の温度前後で飛躍的に高い損失係数が得られることを知見した。
すなわち、本発明の制振性組成物は、請求項1に記載の通りガラス転移温度の異なる少なくとも二種類のエマルションからなるベースエマルションに、有機フィラーと、オイルを混合してなることを特徴とする。
また、請求項2記載の制振性組成物は、前記請求項1に記載の制振性組成物において、前前記ベースエマルションは、アクリル系エマルション、酢酸ビニル系エマルション、または、アクリル/スチレン系エマルションであることを特徴とする。
また、請求項3記載の制振性組成物は、前記請求項1または2記載の制振性組成物において、前記オイルは、トリメリット酸誘導体、アジピン酸誘導体、フタル酸誘導体、または、プロセスオイルであることを特徴とする。
また、請求項4記載の制振性組成物は、前記請求項1乃至3のいずれかに記載の制振性組成物において、前記有機フィラーは、6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕−ジオキサホスフェピン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’,4,4’−テトラ−ヒドロキシベンゾフェノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,4−ジハイドロキシベンゾフェノン、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール−3,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ハイドロキシベンゾエートであることを特徴とする。
また、請求項5記載の制振性組成物は、前記請求項1乃至4のいずれかに記載の制振性組成物において、前記ベースエマルションに、発泡剤を混合してなることを特徴とする。
また、請求項6記載の制振性組成物は、前記請求項5記載の制振性組成物において、前記発泡剤は、低沸点炭化水素内包の熱膨張カプセルであることを特徴とする。
また、請求項7記載の制振性組成物は、前記請求項1乃至6のいずれかに記載の制振性組成物において、前記ベースエマルション100重量部に対して、前記オイルを10重量部以下含ませてなることを特徴とする。
また、請求項8記載の制振性組成物は、前記請求項1乃至7のいずれかに記載の制振性組成物において、前記ベースエマルション100重量部に対して、前記有機フィラーを25重量部以下含ませてなることを特徴とする。
また、請求項9記載の制振性組成物は、前記請求項5乃至8のいずれかに記載の制振性組成物において、前記発泡剤を8重量部以下含ませてなることを特徴とする。
ガラス転移温度の異なる少なくとも二種類のエマルションからなるベースエマルションに、有機フィラーを混合することにより、ベースエマルションを構成する二成分の比較的高いガラス転移温度と比較的低いガラス転移温度の間で損失係数が山型のピークとなり、単にガラス転移温度の異なる二種類のエマルションを混合しただけでは得られなかった、広い温度範囲で一定値以上の損失係数を有する制振性組成物が得られる。さらに、前記ベースエマルションにオイルを混合したため、所望の温度範囲で飛躍的に高い損失係数を得ることができ、適用場所の環境に適した制振性組成物を得ることができる。
本発明の制振性組成物は、例えば、エンジンルームのような高温の場所にも、キッチンの壁面の裏等の20℃前後の常温の場所にも適用することが可能である。また、エマルションを使用した水系の制振性組成物であるため、例えば、自動車のエンジンルームのような複雑な形状の場所にも塗装が容易であり、制振性組成物の利用範囲が広がる。
前記オイルは、添加量によって、20℃前後の常温域に高い損失係数のピークを有する制振性組成物や、40℃前後の高温域に高い損失係数のピークを有する制振性組成物を得ることができる。
また、塗布した制振性組成物を乾燥した後、加熱して制振材とする場合、前記ベースエマルションに、発泡剤を混合すると、乾燥により表面が造膜している制振性組成物内の発泡剤が、加熱時に、膨れてまだ硬化していない半固体状の制振性組成物を押し広げて亀裂を生じさせ、この亀裂から制振性組成物内部に含まれた水を蒸発させるため、加熱時に制振性組成物内部に水が析出することによって生じる表面の膨れを防止することができ、外観を良好にすることができる。
本発明の制振性組成物は、ガラス転移温度の異なる少なくとも二種類のエマルションからなるベースエマルションに、有機フィラーと、オイルを混合している。
ガラス転移温度の異なる二種類のエマルションからなるベースエマルションには、有機フィラーを混合することによって、比較的高いガラス転移温度と比較的低いガラス転移温度の間で損失係数が山型のピークとなり、広い温度範囲で一定値以上の安定した損失係数を有する制振性組成物を得ることができる。
さらに、前記ベースエマルションに、オイルを混合することにより、所望の温度前後で飛躍的に高い損失係数を得ることができる。
前記エマルションとしては、アクリル系エマルション、酢酸ビニル系エマルション、または、アクリル/スチレン系エマルションであることが好ましい。
また、前記オイルとして、トリメリット酸誘導体、アジピン酸誘導体、フタル酸誘導体、または、プロセスオイルを用いることが好ましい。例えば、トリメリット酸誘導体としてはトリエチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、アジピン酸誘導体としはアゼライン酸ジオクチル(DOZ)、フタル酸誘導体としては、フタル酸ジオクチル(DOP)若しくはフタル酸ジブチル(DBP)等を用いることが好ましい。
また、前記オイルは、前記ベースエマルション100重量部に対して、前記オイルを10重量部以下含ませることが好ましい。前記オイルが10重量部以下であると、前記ベースエマルションと前記オイルとが分離せず、分離したオイルが飛散しないため、前記制振性組成物を塗装した被着体等を汚染しないからである。
また、前記オイルの添加量によって、20℃前後の常温域で高い損失係数を有する制振性組成物や、40℃前後の高温域で高い損失係数を有する制振性組成物を得ることができる
前記有機フィラーとして、6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕−ジオキサホスフェピン(住友化学工業株式会社、sumilizer(登録商標)GP)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(大内新興化学工業株式会社 ノクラック NS−6)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(大内新興化学工業株式会社 ノクラック300)、または、2,2’,4,4’−テトラ−ヒドロキシベンゾフェノン(住友化学工業株式会社 バイオソーブ105)、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン(大内新興化学工業株式会社 ノクラックPBK)、2,4−ジハイドロキシベンゾフェノン(住友化学工業株式会社 バイオソーブ100)、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール−3,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ハイドロキシベンゾエート(住友化学工業株式会社 バイオソーブ80)などを使用することが好ましい。また、前記有機フィラーは、1種、または、複数種を用いることが可能である。
20℃前後の常温域で高い制振性を有する制振性組成物を得るためには、前記ベースエマルション100重量部に対して、有機フィラーを25重量部以下含ませることが好ましい。また、40℃を超えた高温域で高い制振性を有する制振性組成物を得るためには、前記ベースエマルション100重量部に対して、有機フィラーを25重量部を超える量の有機フィラーを添加することが好ましい。
前記制振性組成物を乾燥後に加熱する場合は、前記ベースエマルションは、発泡剤を混合することが好ましい。前記制振性組成物の乾燥時に表面が被膜化して、前記制振性組成物内部に水が閉じこめられることにより膨れが生じてしまい、制振性ばかりでなく、外観上も問題となる場合がある。前記ベースエマルションに、発泡剤を添加すると、加熱乾燥時に前記発泡剤が膨れてまだ硬化していない半固体状の制振性組成物を押し広げて亀裂を生じさせ、この亀裂から制振性組成物内部に含まれた水が蒸発するため、加熱乾燥時に制振性組成物内部の水が析出することによって生じる表面の膨れを防止することができ、外観を良好にすることができるからである。
前記発泡剤としては、低沸点炭化水素内包の熱膨張カプセルであることが好ましい。発泡剤を構成するカプセルが、ポリアクリロニトリル(PAN)、塩化ビニリデン等からなるものであり、前記カプセル内に前記低沸点炭化水素を内包した発泡剤、例えば、松本油脂製薬製のマツモトマイクロスフェアー等を使用することが好ましい。
また、前記発泡剤は、前記ベースエマルション100重量部に対して、前記発泡剤を8重量部以下含ませることが好ましい。前記発泡剤を8重量部を超えて添加すると、常温乾燥後に加熱した場合に乾燥した制振性組成物と、該制振性組成物を塗布した被着体との間で前記発泡剤が膨張して被着体から制振性組成物が剥がれるからである。
その他、制振制付与材として、マイカやタルク、防錆剤、防腐剤等の顔料を添加することも可能である。
以下実施例を詳細に説明する。
下記表1に示す配合割合で調製し、本発明の制振性組成物を得た。この制振性組成物をスペーサーを用いて面密度が乾燥時に4kg/m2となるように、1.6mm厚さの鋼板に塗りつけ、130℃で15分間の保持を2回繰り返し、制振材を得た。この制振材をオーバスト法により周波数200Hz、測定温度20℃、40℃、60℃で制振性の測定を行った。
Figure 2005126644
表1の比較例2に示すように、ガラス転移温度の異なる二種類のエマルションをベースエマルションに有機フィラーを含有させると所望の20〜60℃の温度範囲において、損失係数が山型のピークとなるバランスの取れた制振性を有する制振性組成物を得ることができ、さらに、実施例1〜8に示すように、ベースエマルションにトリエチルヘキシルトリメリテート(TOTM)のようなトリメリット酸誘導体、アゼライン酸ジオクチル(DOZ)のようなアジピン酸誘導体、フタル酸ジオクチル(DOP)及びフタル酸ジブチル(DBP)のようなフタル酸誘導体、または、プロセスオイル等のオイルを混合すると、約20〜60℃の広い温度範囲において、所望の温度前後で飛躍的に高い損失係数のピークを有する制振性組成物を得られることが確認できた。また、前記オイルの添加量を変えることによって、40℃前後の高温域で飛躍的に高い損失係数のピークを有する制振性組成物(実施例1〜7)、20℃前後の常温域で高い損失係数のピークを有する制振性組成物(実施例8)を得られることが確認できた。
なお、比較例1に示すように、二種類のエマルションをベースエマルションとし、有機フィラーを含有させない場合は、20℃前後と60℃前後で損失係数のピークを示し、40℃前後で損失係数が低下する鞍型のピークとなり、所望の20〜60℃の温度範囲で、所定値以上の損失係数を示していなかった。

Claims (9)

  1. ガラス転移温度の異なる少なくとも二種類のエマルションからなるベースエマルションに、有機フィラーと、オイルを混合してなることを特徴とする制振性組成物。
  2. 前記ベースエマルションは、アクリル系エマルション、酢酸ビニル系エマルション、または、アクリル/スチレン系エマルションであることを特徴とする請求項1に記載の制振性組成物。
  3. 前記オイルは、トリメリット酸誘導体、アジピン酸誘導体、フタル酸誘導体、または、プロセスオイルであることを特徴とする請求項1または2に記載の制振性組成物。
  4. 前記有機フィラーは、6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕−ジオキサホスフェピン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’,4,4’−テトラ−ヒドロキシベンゾフェノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,4−ジハイドロキシベンゾフェノン、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール−3,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ハイドロキシベンゾエートであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の制振性組成物。
  5. 前記ベースエマルションに、発泡剤を混合してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の制振性組成物。
  6. 前記発泡剤は、低沸点炭化水素内包の熱膨張カプセルであることを特徴とする請求項5に記載の制振性組成物。
  7. 前記ベースエマルション100重量部に対して、前記オイルを10重量部以下含ませてなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の制振性組成物。
  8. 前記ベースエマルション100重量部に対して、前記有機フィラーを25重量部以下含ませてなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の制振性組成物。
  9. 前記ベースエマルション100重量部に対して、前記発泡剤を8重量部以下含ませてなることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の制振性組成物。
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