以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る塗料組成物は、下記式(1)で表される基、式(2)で表される基及び、式(3)で表される基を有する(A)アクリル樹脂と、(B)多官能性モノマーと、を含有する。ここで、アクリル樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを共重合してなる樹脂である。式(1)〜式(3)中、*は結合手を示す。
式(1)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を示し、メチル基であることが好ましい。R1がメチル基である場合、式(1)で表される基はアセトアセトキシ基である。
式(2)中、R2及びR3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基を示し、炭素数1又は2の炭化水素基であることが好ましい。
式(3)中、nは0又は1以上の整数を示し、10〜300の整数であることが好ましく、50〜300の整数であることがより好ましい。
式(1)で表される基、式(2)で表される基及び、式(3)で表される基は、上記アクリル樹脂の主鎖に結合してもよいし、グラフト鎖に結合していてもよい。
上記アクリル樹脂は、アセトアセトキシ基及びメタクリロイルオキシ基を有するモノマーに由来するモノマー単位と、(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーに由来するモノマー単位と、ポリジメチルシロキサン鎖と、を有してもよい。すなわち、上記塗料組成物は、アセトアセトキシ基及びメタクリロイルオキシ基を有するモノマーに由来するモノマー単位と、(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーに由来するモノマー単位と、ポリジメチルシロキサン鎖と、を有する(A)アクリル樹脂と、(B)多官能性モノマーと、を含有してもよい。
上記アクリル樹脂は、例えば、(a−1)アセトアセトキシ基及びメタクリロイルオキシ基を有するモノマーと、(a−2)(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーと、(a−3)ポリジメチルシロキサン鎖を有する化合物(ポリジメチルシロキサン成分)とを含む混合物から形成される。以下各成分について説明する。
(a−1)アセトアセトキシ基及びメタクリロイルオキシ基を有するモノマー (a−1)成分としては、アセトアセトキシ基及びメタクリロイルオキシ基を有すればどの様なモノマーでも特に制限はないが、例えば、2−アセトアセトキシエチルメタクリレートが挙げられる。
アセトアセトキシ基とアクリロイル基とのマイケル付加反応を利用することで、(A)アクリル樹脂と、(B)多官能性モノマーとを含む塗料組成物を、低温かつ短時間で熱硬化することができる。さらに、アセトアセトキシ基が有する光活性を利用することで、上記塗料組成物は、活性エネルギー線の照射による硬化も可能である。
また、従来、ウレタン化合物を含む防曇用塗料組成物を低温で硬化させるには、ブロックイソシアネートが使用できないために希釈剤としてアルコールを使用できず、ポリカーボネートを基材として使用するときソルベントアタックが懸念されていた。一方、ソルベントアタックを回避するために希釈剤としてアルコールを使用すると、ブロックイソシアネートを使う必要がある。そのため、防曇用塗料組成
物を高温で硬化させる必要があり、基材であるポリカーボネートが硬化時の高温に耐えられない傾向がある。本実施形態に係る塗料組成物は、希釈溶剤として、アルコールを使用できるので、ポリカーボネートへのソルベントアタックを回避しつつ低温で硬化することができる。
アセトアセトキシ基及びメタクリロイルオキシ基を有するモノマーの含有量は、(A)アクリル樹脂100質量部に対して、5〜55質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることがより好ましく、10〜30質量部であることが更により好ましい。
(a−2)(メタ)アクリルアミド基を有するモノマー (a−2)成分としては、特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミドが挙げられる。これらは1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
上記N−置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド、アリル(メタ)アクリルアミド、2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−プロピルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−プロピルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ダイアセトンアクリルアミドが挙げられる。
(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーは、N,N−ジアルキルアクリルアミドを含むことが好ましく、N,N−ジメチルアクリルアミド又はN,N−ジエチルアクリルアミドを含むことがより好ましい。N,N−ジアルキルアクリルアミドを用いることで、吸湿性が付与され、界面活性剤を用いなくとも防曇性がさらに向上する傾向がある。
(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーの含有量は、(A)アクリル樹脂100質量部に対して、30〜75質量部であることが好ましく、40〜65質量部であることがより好ましい。40質量部以上であると防曇性が更に向上する傾向があり、65質量部以下であると耐水性が更に向上する傾向がある。
(a−3)ポリジメチルシロキサン鎖を有する化合物(ポリジメチルシロキサン成分) 本実施形態において、ポリジメチルシロキサン成分とは、重合性官能基を有するポリジメチルシロキサン化合物又はアゾ基を有するポリジメチルシロキサン化合物を意味する。重合性官能基を有するポリジメチルシロキサン化合物としては、下記式(4)によって表される化合物が挙げられる。式(4)中、mは10〜300の整数を示す。下記式(4)によって表される化合物としては、例えば、JNC株式会社製:サイラプレーン:FM−0711、FM−0721、FM−0725等、信越化学工業株式会社製:X−22−174DX、X−22−2426等、及び、東亞合成株式会社製:AK−5、AK−32等が挙げられる。
アゾ基を有するポリジメチルシロキサン化合物としては、下記式(5)によって表される化合物が挙げられる。式(5)中、lは1〜50の整数を示し、xは10〜300の整数を示す。下記式(5)によって表される化合物としては、例えば、ポリジメチルシロキサン系高分子重合開始剤(和光純薬株式会社製VPS−1001、VPS−0501等)等のアゾ基含有シリコーン高分子開始剤が挙げられる。上述のポリジメチルシロキサン鎖を有する化合物は、1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
ポリジメチルシロキサン成分は、N,N−ジアルキルアクリルアミドとの共重合性に優れるため、透明性に優れた塗膜を得ることができる。さらに、得られる塗膜は防曇性、撥水性、高い透明性、基材への優れた密着性及び耐水性を同時に発揮することが出来る。
(a−3)ポリジメチルシロキサン成分の分子量は、1000〜20000であることが好ましく、3000〜20000であることがより好ましい。
ポリジメチルシロキサン成分の含有量は、(A)アクリル樹脂の樹脂分100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。
(a−4)その他の共重合が可能なモノマー アクリル樹脂は、(a−4)その他の共重合が可能なモノマーに由来するモノマー単位を有していてもよい。(a−4)成分としては、特に制限はないが、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ステアリルアクリレート及びラウリルアクリレート等の脂肪族アクリレート又は環式アクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート及びベンジルメタクリレート等の脂肪族メタクリレート又は環式メタクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル及びiso−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、スチレン及びα−メチルスチレン等のスチレン、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のシアノ基を有する単量体、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニル及び弗化ビニリデン等のハロゲン含有単量体、エチレン、プロピレン及びイソプレン等のオレフィン、クロロプレン及びブタジエン等のジエン、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、アトロパ酸及びシトラコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート4級化物、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート等のアミノ基含有単量体及びジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル塩等の第4級アンモニウム塩含有単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びグリシジルアリルエーテル等のエポキシ基含有単量体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート及びアリルアルコール等の水酸基含有単量体、カージュラEとアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等との反応物、その他ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、並びに、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤並びに新中村化学NKエステル20G、40G、90G、230G、日油ブレンマーPEシリーズ及びAEシリーズ等の片末端(メタ)アクリレート変性ポリアルキレングリコール等の加水分解性シリル基を有するビニル単量体が挙げられる。これらは1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
重合開始剤 (A)アクリル樹脂を得るための重合開始剤は、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤等の一般的な重合開始剤を使用することができる。例えば、1,1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、アゾビス−2−メチルブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、及びアゾビスバレロニトリルが挙げられる。これらは1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
(A)アクリル樹脂は、上記ポリジメチルシロキサン鎖を、グラフト鎖又は主鎖に含むことが好ましい。
(B)多官能性モノマー 本実施形態において多官能性モノマーは、多官能性のオリゴマーの形態も含む。多官能性モノマーとしては、例えば、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アクリルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等が挙げられ、具体的には以下の化合物が挙げられる。2官能モノマーの例としては、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。3官能以上のオリゴマー(モノマー)の例としては、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールグリシジルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モ
ルプロピレンオキサイド付加物のトリアクリレート及びトリメチロールプロパンの6モルエチレンオキサイド付加物のトリアクリレート等のポリアルキレングリコール変性トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物のヘキサアクリレート、並びに、これらの誘導体、変性品等が挙げられる。さらに、市販のポリアルキレングリコール誘導体、アクリレートを導入したウレタンアクリレート、ポリグリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは1種類に限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。上記多官能性モノマーは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含むことが好ましい。
多官能性モノマーは、多官能性(メタ)アクリレートモノマー又は多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーであることが好ましく、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることがより好ましく、2つ以上のアクリロイル基を有する、アルキレングリコール誘導体又はポリグリセリン誘導体であることが更に好ましい。 多官能性モノマーとして、ポリグリセリン誘導体を使用する場合、ポリグリセリンの重合度が2以上であることが好ましい。二重結合の導入方法としては、後述する実施例に記載の方法以外にも、例えば、酸無水物(無水マレイン酸等)によるハーフエステル化、及び酸含有モノマー(アクリル酸等)によるエステル化が挙げられる。導入する二重結合の量は、適宜変更が可能である。
上記塗料組成物における、アクリル樹脂((A)成分)と、多官能性モノマー((B)成分)との配合比は、特に制限されないが、[(B)成分の(メタ)アクリロイル基のモル数]/[(A)成分中の(a−1)成分のモル数]の式で表されるモル比が0.5〜3.0となるように配合することが好ましい。
上記塗料組成物は、対象の基材の表面に塗膜を形成し硬化させることで、上記基材の表面に防曇性、撥水性、透明性、密着性及び耐水性に優れた塗膜(硬化膜)を形成することができる。したがって、上記塗料組成物は、防曇用塗料組成物として好適に用いられる。さらに、上記塗料組成物から形成された塗膜は調湿効果も期待できる。
上記基材としては、特に制限はないが、例えば、プラスチック等の有機素材、ガラス、セラミックス及び金属等の無機素材が挙げられる。上記プラスチックとしては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアルキレン及びこれらの混合物が挙げられる。
上記塗料組成物を硬化させ硬化膜を得る方法としては、熱硬化させる方法及び活性エネルギー線の照射で硬化させる方法が挙げられる。
熱硬化させる方法の場合、上記塗料組成物を(D)アルカリ触媒の存在下で反応させ、熱硬化させてもよい。マイケル付加反応を利用する硬化反応にはアルカリ触媒が使用される。
(D)アルカリ触媒としては、例えばアルカリ金属(カリウム等)の水酸化物、アルコラート及び炭酸塩、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、6−(ジブチルアミノ)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBA−DBU)、6−(2−ヒドロキシプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(OH−DBU)、OH−DBUの水酸基をウレタン化等で変性した化合物、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN)及び1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)等のアミジン類、DBUのフェノール塩(商品名:U−CAT SA1(サンアプロ株式会社製))、DBUのオクチル酸塩(商品名:U−CAT SA102(サンアプロ株式会社製))、DBUのp−トルエンスルホン酸塩(商品名:U−CAT SA506(サンアプロ株式会社製))、並びに、DBNのオクチル酸塩(商品名:U−CAT 1102(サンアプロ株式会社製))等の強アルカリ触媒が挙げられる。
上記塗料組成物は、アセトアセトキシ基とアクリロイル基とのマイケル付加反応を硬化反応に利用できるので、60〜100℃等の低温でも、短時間で熱硬化することができる。
活性エネルギー線の照射で硬化させる方法の場合、上記塗料組成物に(E)光重合開始剤を更に加えて、活性エネルギー線で硬化させてもよい。上記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線等が挙げられる。活性エネルギー線の照射条件としては特に限定されないが、例えば、紫外線を照射する場合の照射条件としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用い、硬化エネルギー(積算光量)で100〜1000mJ/cm2等が挙げられる。また、電子線を照射する場合の照射条件としては、加速電圧150〜250keVで5〜100kGyの照射量等が挙げられる。
本実施形態では、アセトアセトキシ基が活性エネルギー線の照射によって光活性を示すので光重合開始剤を必須としないが、光重合開始剤を併用してもよい。(E)光重合開始剤としては、例えば、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、o−ベンゾイルメチルベンゾエート、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(例えば、チバガイギー株式会社製の「ダロキュア1173」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、チバガイギー株式会社製の「イルガキュア184」)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オン(例えば、チバガイギー株式会社製の「イルガキュア907」)、2−エチルアントラキノン、メチルベンジルホルメート(例えば、ストウファー株式会社製の「バイキュア55」)が挙げられる。
上述のような方法によって得られる、上記硬化膜を備える塗装物品は、その表面が防曇性、撥水性、透明性、密着性及び耐水性に優れている。対象となる物品としては特に制限はないが、例えば、洗面所鏡、浴室鏡、ゴーグル、保護メガネ、メガネ又はカメラのレンズ、建物の窓、建物の外装材、自動車の窓、自動車ランプ類のレンズ又はカバー、自動車のサイドミラー又はルームミラー、カーブミラー、道路反射鏡、農業用ハウスの被覆材料、及び冷凍庫のショーケース等が挙げられ、有機素材、無機素材を問わず使用できる。これら対象となる物品に対して、上記塗料組成物を直接塗装することもできるし、あらかじめ、別の基材に上記塗装組成物を塗装してフィルム又はシートにしたものを対象となる物品に貼り付けて使用することもできる。また、上述の調湿効果から建物の内装用壁紙等に使用できる。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<アクリル樹脂の合成>合成例1 攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた500mlフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(80質量部)及び酢酸エチル(20質量部)を仕込み、115℃に昇温した。別の容器に、メタクリル酸メチル(22質量部)、ジメチルアクリルアミド(50質量部)、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(20質量部)、サイラプレーンFM−0721(JNC株式会社製、8質量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(32質量部)、酢酸エチル(8質量部)及び、1,1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル(0.75質量部)を加えて、溶解させることによって、モノマーの混合溶液(モノマー溶液)を調製した。調製したモノマー溶液を2時間かけて上記500mlフラスコに滴下し、攪拌しながら、115℃で3時間反応させた。
さらに、プロピレングリコールモノメチルアセテート(4質量部)、酢酸エチル(1質量部)、1,1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル(0.1質量部)及びアゾビス−2−メチルブチロニトリル(0.1質量部)の混合液を、上記500mlフラスコに滴下し、攪拌しながら、115℃で1時間反応させた。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(4質量部)、酢酸エチル(1質量部)、1,1−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル(0.1質量部)及びアゾビス−2−メチルブチロニトリル(0.1質量部)の混合液を更に滴下し2時間反応させて、固形分が40%であるアクリル樹脂((A)成分)を得た。
合成例2〜12及び比較合成例1〜3 表1〜3に示す組成でモノマー溶液を調製したこと以外は、合成例1と同様の方法によって、合成例2〜12のアクリル樹脂((A)成分)及び比較合成例1〜3のアクリル樹脂((A)成分)を製造した。
ここで、表1〜3に示される略称は以下の化合物を示し、数値は質量部を示す。DMAA:ジメチルアクリルアミド (興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)DEAA:ジエチルアクリルアミド (興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)AAEM:2−アセトアセトキシエチルメタクリレート (日本合成化学株式会社製)サイラプレーンFM−0711:片末端メタクリレート変性ポリジメチルシロキサン 分子量 1000(JNC株式会社製)サイラプレーン FM−0721:片末端メタクリレート変性ポリジメチルシロキサン 分子量5000(JNC株式会社製)マクロモノマー AK−32:片末端メタクリレート変性ポリジメチルシロキサン 分子量20000(東亞合成株式会社製)VPS501:ポリジメチルシロキサン系高分子重合開始剤(和光純薬株式会社製)MMA:メタクリル酸メチル(三菱レイヨン株式会社製)
赤外分光測定(IR測定) 得られたアクリル樹脂の赤外分光測定は、以下のようにして行った。まず、2枚のミニKBrプレート(ジャスコエンジニアリング株式会社製)の間に、合成例1のアクリル樹脂又は比較合成例1〜3のアクリル樹脂を適量挟んで圧縮し、測定用の試料を調製した。そして、上記試料を、FT−IR Microscope Spotlight 400フーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマージャパン株式会社製)を用いて測定した。結果を図1〜4に示す。
GC−MS 得られたアクリル樹脂のGC−MSは、以下のようにして行った。まず、合成例1のアクリル樹脂又は比較合成例1のアクリル樹脂をDoble−Shot Pyrolyzer PY−2020Dパイロライザー(フロンティア・ラボ株式会社製)を用いて、450℃で熱分解した。次に、熱分解したアクリル樹脂である試料をMass Selective Detector 5973Nガスクロマトグラフ質量分析装置(Agilent社製)を用いて検出した。結果を図5及び6に示す。
結果 合成例1のアクリル樹脂と比較合成例1のアクリル樹脂との比較において、IR測定では特徴的なピークは確認できなかった。しかし、GC−MSでは9.20分にAAEMに由来すると考えられる特徴的なピークを合成例1のアクリル樹脂において確認することが出来た。
合成例1のアクリル樹脂と比較合成例2のアクリル樹脂との比較において、IR測定ではポリジメチルシロキサン特有の810cm−1のピークが合成例1のアクリル樹脂において確認することが出来た。
合成例1のアクリル樹脂と比較合成例3のアクリル樹脂との比較において、IR測定ではジアルキルアクリルアミド(DMAA)特有の1640
cm−1のピークが合成例1のアクリル樹脂において確認することが出来た。
<多官能性オリゴマーの合成>合成例13ポリグリセリン誘導体の合成 攪拌機、温度計及びコンデンサーを備えた500mlフラスコに、ポリグリセリン6量体PGL 06(株式会社ダイセル製、水酸基価959、45.4質量部)、2−アクリロイルエチルイソシアネート カレンズAOI(昭和電工株式会社製、54.6質量部)及びp−メトキシフェノール(和光純薬工業株式会社製、0.05質量部)を仕込み、攪拌した。さらに、ジブチル錫ラウレートTN−12(堺工業株式会社製)の1%メチルエチルケトン(MEK)溶液(1.0質量部)を上記フラスコに添加し、1時間室温で攪拌した。その後、50℃に昇温し、5時間反応させた。赤外分光法にてイソシアネートの消失とウレタン結合の生成とを確認して、アクリロイル基を導入したポリグリセリン誘導体を得た。
<防曇用塗料組成物(塗料組成物)の作製>実施例1 合成例1で得られたアクリル樹脂(100質量部)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(7.4質量部)、ジアザビシクロウンデセン(0.47質量部)及びイソブタノール(50.5質量部)をビーカーに添加して攪拌することで、固形分が30%である防曇用塗料組成物を調製した。ポリエチレンテレフタラート(PET)(東洋紡株式会社製、商品名コスモシャインA−4300 #100)上にNo26のバーコーターを用いて上記防曇用塗料組成物を塗布した。その後、100℃、20分にて硬化させ、厚さが約10μmである、実施例1の硬化膜を得た。
実施例2〜19 (A)成分の種類、(B)成分の種類、(B)成分の(メタ)アクリレートと(A)成分の製造に用いたAAEMとのモル比及び触媒量が、それぞれ表4〜6で示される通りになるように調製し、固形分が30%になるようにイソブタノールで希釈することで、実施例2〜19の防曇用塗料組成物を調製した。PET(東洋紡株式会社製、商品名コスモシャインA−4300 #100)上にNo26のバーコーターを用いて上記防曇用塗料組成物を塗布した。その後、100℃、20分にて硬化させ、厚さが約10μmである、実施例2〜19の硬化膜をそれぞれ得た。
実施例20 (A)成分の種類、(B)成分の種類、(B)成分の(メタ)アクリレートと(A)成分の製造に用いたAAEMとのモル比及び触媒量が表5で示される通りになるように調製し、固形分30%になるように、イソブタノールで希釈することで、実施例20の防曇用塗料組成物を調製した。PET(東洋紡株式会社製、商品名コスモシャインA−4300 #100)上にNo26のバーコーターを用いて上記防曇用塗料組成物を塗布した。その後、100℃10分にて溶剤を揮発させた後、積算光量が500mJ/cm2になるように紫外線(UV)を照射し、塗布した上記防曇用塗料組成物を硬化させることで、厚さが約10μmである実施例20の硬化膜を得た。
比較例1〜3 (A)成分の種類、(B)成分の種類、(B)成分の(メタ)アクリレートと(A)成分の製造に用いたAAEMとのモル比及び触媒量が表6に示される通りになるように調製し、比較例1〜3の塗液(塗料組成物)を得た。PET(東洋紡株式会社製、商品名コスモシャインA−4300 #100)上にNo26のバーコーターを用いて上記塗液を塗布した。その後、100℃、20分にて硬化させることで、厚さが10μmである比較例2及び3の硬化膜をそれぞれ得た。比較例1については、十分硬化せず、硬化膜を得ることができなかった。
なお、表4〜6に示される略称は以下の化合物を示す。A−DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学株式会社製)NK−エステルA−TMPA−9Eo:ポリエチレングリコール変性トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製)A−400:NK エステルA−400 ポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学株式会社製)DBU:ジアザビシクロウンデセン(サンアプロ株式会社製)KOH:水酸化カリウムIBT:イソブタノール また、表4〜6に示されるモル比は、(B)成分の(メタ)アクリレートと(A)成分の製造に用いたAAEMとのモル比、すなわち、[(B)成分の(メタ)アクリロイル基のモル数]/[(A)成分中の(a−1)成分のモル数]であることを意味する。
<評価方法>必要硬化条件(必要硬化温度、必要硬化時間)の評価 PET(東洋紡株式会社製、商品名コスモシャインA−4300 #100)上にNo26のバーコーターを用いて、防曇用塗料組成物を塗布し、厚さが約10μmである撥水防曇層を作製した。その後、60℃、80℃又は100℃のいずれかの温度で10分、20分又は30分間のいずれかの時間にて熱硬化を行い、塗膜試験片を得た。 得られた塗膜試験片を、水でラビング試験(10往復)を行い、ラビングの後の溶解がない最小の硬化温度と最小の硬化時間とをそれぞれ、必要硬化温度及び必要硬化時間とした。 なお、必要硬化温度が100℃以下であって、必要硬化時間が20分以内であればより好ましく、10分以内であれば非常に好ましい。
HAZE測定 試験片は、PET(東洋紡株式会社製、商品名コスモシャインA−4300 #100)上にNo26のバーコーターを用いて、防曇用塗料組成物を塗布し、100℃20分にて加熱硬化させた塗膜試験片を使用した。なお、以下に示す硬度試験、接触角測定、防曇性試験(呼気)、防曇性試験(スチーム試験)、水垂れ跡の評価、耐水性試験、油性インクハジキ性試験及び油性インク拭き取り性試験においても、同様の試験片を用いた。 厚み方向のHAZE[%]を、旧JIS規格K7105に準拠したヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、型式:TC−H3DPK)を用いて測定した。HAZE(%)=(拡散透過率/全光線透過率)×100
硬度試験 鉛筆硬度試験は、ASTM D3363に準拠して測定した。JIS K5600−5−4の「鉛筆引っかき試験」に準じた。
接触角測定 接触角計(協和界面科学株式会社製、「DropMaster DM700」)を用いて、上記にて作製した塗膜上の水(2μL)に対する接触角を測定した。
密着試験 試験片は、ポリカーボネート(PC)板上にアプリケーターにて防曇用塗料組成物を塗布し、100℃20分間にて熱硬化させた塗膜試験片を使用した。 塗膜がある面(塗膜面)にカッターナイフを用いて、ポリカーボネート板に達する互いに平行な11本の切り傷を前後方向及び左右方向にそれぞれつけ、100個の碁盤目を作製した。その後、塗膜の碁盤目の部分にセロハンテープを強く圧着させ、セロハンテープの端を、塗膜の面に対して45°の角度で一気に引き剥がし、碁盤目の状態を評価した(JIS K5600 に準ずる)。評価基準を以下に示す。○と評価した試験片を、密着性が良好であると判断した。 ○:はがれた升目の数/100=0/100〜30/100 ×:はがれた升目の数/100=31/100〜100/100
吸湿率試験 ポリプロピレン板にアプリケーターにて約40μmの厚さに、防曇用塗料組成物の塗膜を形成し、100℃20分熱硬化させた。その後、ポリプロピレン板から、7.5cm×7.5cmのサイズで硬化した塗膜のみをはがし、得られた塗膜を試験サンプルとした。上記試験サンプルを、24℃、湿度98%の条件下で24時間静置し、十分に水分を吸湿させた。加熱乾燥式水分計(株式会社エー・アンド・ディー製、加熱乾燥式水分計MX−50)を用いて、乾燥前の質量(イ)と乾燥後の質量(ロ)とを測定し、下記式にて飽和吸湿率を算出した。飽和吸湿率(%)=100×{乾燥前の試験サンプルの質量(イ)−乾燥後の試験サンプルの質量(ロ)}/乾燥後の試験サンプルの質量(ロ) なお、試験サンプルを150℃まで加熱し、水分を十分に乾燥させてから、乾燥後の試験サンプルの質量を測定した。
防曇性試験(呼気) 上記塗膜試験片の塗膜面に呼気を10秒間拭きかけ、室温にて曇りの有無を評価した。評価基準を以下に示す。◎:まったく曇らない。○:一瞬曇るが、曇りがすぐ消える。□:呼気を吹きかけた一部が曇るがすぐに消える。△:呼気を吹きかけた一部にのみ曇りが認められる。×:広い範囲で曇りが認められる。
防曇性試験(スチーム試験) 60℃に保った温水浴の水面から5cmの高さの所に、上記塗膜試験片を、塗膜面が上記水面側を向くように設置した。その後、温水浴からのスチームを上記塗膜に連続照射し、照射から60秒後の曇りの有無を目視によって次の5段階で評価した。なお、評価が△以上であれば実用上問題なく、○であればより好ましく、◎であれば非常に好ましい。◎:30秒後曇りがまったく認められないが、60秒後曇りが認められる。○:10秒後曇りがまったく認められないが、30秒後曇りが認められる。□:スチーム照射直後は曇らないが、10秒後曇りが認められる。△:スチーム照射直後、一部に曇りが認められる。×:スチーム照射直後、すぐに全体に曇りが認められる。
水垂れ跡の評価 60℃に保った温水浴の水面から5cmの高さの所に、塗膜試験片を塗膜面が上記水面側を向くように設置した。温水浴からのスチームを上記塗膜に60秒間連続照射した後、試験片を垂直に立てた状態で室温にて1時間乾燥させた。乾燥後に塗膜面における水垂れ跡の有無を目視によって次の3段階で評価した。なお、評価が△以上であれば実用上問題ない。○:水垂れ跡がまったく認められない。△:水垂れ跡は認められないが、わずかに塗膜表面が荒れた状態である。×:水垂れ跡が認められる。
耐水性試験 塗膜試験片を50℃の温水に240時間浸漬し、室温にて1時間乾燥した。その後、室温で呼気を10秒間吹きかけ、曇りの有無を目視によって評価した。さらに、目視によって塗膜の状態を評価した。なお、評価が△以上であれば実用上問題なく、◎又は○であればより好ましい。◎:全く曇らない。○:一瞬わずかに曇るがすぐに曇りが晴れる。△:塗膜に一部ふくれがみられるが、全く曇らない。×:硬化不足のため、塗膜が剥がれ落ちる。
油性インクハジキ性試験 油性マーカー(寺西化学工業株式会社製、商品名、黒マジックインキ)にて、塗膜試験片の塗膜面に線を引き、油性インクに対するハジキ性を評価した。◎:とても良くハジク。○:良くハジク。□:ハジク。△:ややハジク。×:まったくはじかない。
油性インク拭き取り性試験 油性マーカー(寺西化学工業株式会社製、商品名、黒マジックインキ)にて、塗膜試験片の塗膜面に線を引き、ティッシュペーパーにて拭き取り、油性インクに対する拭き取り性を以下の基準にて評価した。また、接触角が90度以上であって、拭き取り性が×以外の評価である塗膜を、撥水性が良好であると評価した。◎:軽い力でふき取れ、跡が残らない○:ふき取れ、跡が残らない□:強い力で拭き取れ、跡が残らない△:ふき取れるが、跡が残る×:全くふき取れない
<防曇性被膜が形成された物品の作製> 実施例1の防曇用塗料組成物を、保護メガネ(商品名「JIS安全メガネ」、型番No.337)にスプレー塗装し、100℃で20分間熱硬化させるか、又は、室温に10分間静置し溶剤を揮発させた後、積算光量が500mJ/cm2になるように紫外線(UV)を照射し硬化させることで、
膜厚が約14μmである防曇性被膜が形成された防曇性物品(製造例1及び2)を得た。
<評価方法> 上述した方法と同様の方法にて、HAZE試験、硬度試験、接触角測定、防曇性試験(呼気)、防曇性試験(スチーム試験)、水垂れ跡の評価、耐水性試験、油性インクハジキ性試験及び油性インク拭き取り性試験を行った。
<まとめ及び考察>AAEMの量 比較例1と実施例1との結果から、AAEMを用いないと塗膜が硬化しないことが分かった。 実施例1、5、8、12及び13の結果を比較すると、AAEMの共重合量が少ないと、防曇性が向上する一方で、必要硬化時間の増加又は必要硬化温度の上昇が観察された。また、AAEMの共重合量が多いと、熱硬化性が向上する一方で、架橋密度が高くなる傾向があった。以上のことから、アクリル樹脂を基準として、AAEMの量は5質量%〜55質量%であることが好ましいと結論づけた。
ポリジメチルシロキサン(PDMS)の分子量 実施例1、7及び9の結果を比較すると、分子量が1000であるPDMS(FM−0711)を使用すると、分子量が5000以上であるPDMS(FM−0721又はAK−32)を使用した場合と比較して、油性インクハジキ性、及び油性インク拭き取り性が低下する傾向があった。以上のことから、PDMSの分子量は5000以上であることが好ましいと結論づけた。
PDMSの量 比較例2と実施例1、8及び14との結果を比較すると、PDMSが1質量%以上入っていれば、撥水性を示し、油性インクハジキ性、及び油性インク拭き取り性が向上することが分かった。以上のことから、アクリル樹脂を基準として、PDMSの量は1質量%〜30質量%であることが好ましいと結論づけた。
ジアルキルアクリルアミドの種類 実施例1及び7の結果を比較すると、DMAAとDEAAとでは、DMAAの方が、優れた防曇性を有する傾向があった。
ジアルキルアクリルアミドの量 比較例3と実施例1、6、7、10及び11との結果の比較から、DMAAの量が多いほど吸湿率が高く、防曇性が向上する傾向があった。また、DMAAの量が多いほど、耐水性が低下する傾向があった。以上のことから、防曇性を発揮するには、アクリル樹脂を基準として、ジアルキルアクリルアミドの量は30質量%〜75質量%程度であることが好ましいと結論づけた。
多官能性モノマーの影響 実施例6と実施例16〜19との結果を比較すると、エチレングリコールの誘導体及び、ポリグリセリンの誘導体を使用すると、吸湿率が高く、防曇性が向上する傾向があった。
AAEMとアクリレートとの比率(モル比)の影響 実施例1〜4の結果から、アクリレート/AAEMの比(モル比)が0.5〜3であるとき、塗膜が十分に硬化することが分かった。
触媒 実施例1及び22の結果を比較すると、DBUだけでなく、他のアルカリ触媒でも熱硬化することが分かった。KOHでは樹脂との相溶性が十分ではなく、得られる塗料組成物が濁る傾向があった。
紫外線照射(UV照射)による硬化 実施例1及び23の結果を比較すると、本発明に係る塗料組成物は、触媒なしで、UV等の活性エネルギー線の照射によっても硬化することが分かった。