JPH11129404A - 防曇膜 - Google Patents

防曇膜

Info

Publication number
JPH11129404A
JPH11129404A JP9298700A JP29870097A JPH11129404A JP H11129404 A JPH11129404 A JP H11129404A JP 9298700 A JP9298700 A JP 9298700A JP 29870097 A JP29870097 A JP 29870097A JP H11129404 A JPH11129404 A JP H11129404A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
polymer
meth
hydrophilic
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP9298700A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4032159B2 (ja
Inventor
Hiroshi Omura
博 大村
Yoshiki Higuchi
慶樹 樋口
Masami Okuo
雅巳 奥尾
Eiji Harada
英治 原田
Shuji Suyama
修治 須山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NOF Corp
Original Assignee
NOF Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NOF Corp filed Critical NOF Corp
Priority to JP29870097A priority Critical patent/JP4032159B2/ja
Publication of JPH11129404A publication Critical patent/JPH11129404A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4032159B2 publication Critical patent/JP4032159B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
  • Treatments Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた防曇性能を長期間にわたって維持で
き、透明性が良く、しかも実用的な塗膜強度を有し、か
つ防曇性を付与しようとする基材との密着性が良好であ
る防曇膜を提供する。 【解決手段】 防曇膜は、ガラス等の基材上に形成され
た光重合開始基を有する疎水性重合体のセグメント
(I)の層上に、親水性重合体を塗布して活性エネルギ
ー線を照射することにより親水性重合体セグメント(I
I)の層が形成されている。この親水性重合体セグメン
ト(II)の層は、光重合開始基断片を介して疎水性重合
体セグメント(I)の層に結合されている。ガラスに対
する密着性を向上させるために、疎水性重合体にシラン
カップリング剤が配合される。防曇膜の硬度を高めるた
めに、ラジカル重合性単量体又は無機微粒子が配合され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えばガラスや
合成樹脂成形材料、フィルムの様な透明な材料よりなる
レンズ、鏡などの基材表面の結露による曇りや水滴の付
着を防止することができる防曇膜に関するものである。
さらに詳細には、基材に対して効果的に防曇性能を付与
でき、かつその性能を長期間にわたって持続することが
できる防曇膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、透明な基材は、露点以下の温度
になると表面に結露を生じて透明度が低下する。このよ
うな透明基材の曇りを防止する方法として、従来から幾
つかの提案がなされている。
【0003】例えば、界面活性剤、親水性重合体などの
親水性物質を基材表面に塗布する方法、界面活性剤を含
有する塗膜を基材表面に形成する方法、親水性フィルム
を基材にラミネートする方法(特開昭62−18253
号公報)、親水性の硬化性樹脂を基材に塗布して硬化さ
せる方法(特開昭63−251401号公報)などがあ
る。また、特公昭56−5416号公報には、三重項増
感剤を含有する親水性組成物に光照射して基材表面を親
水化処理する方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、防曇性が付
与された各種基材は、防曇膜に水が接触するような条件
下で使用される場合が多いことから、界面活性剤や親水
性ポリマーを基材表面に塗布する方法では防曇膜が水に
溶解して基材表面から流れ落ち、防曇持続性に欠けると
いう問題があった。
【0005】また、親水性樹脂の硬化物や親水性フィル
ムを防曇膜として使用する方法では、吸湿により塗膜の
硬度が低下して傷が付いたり、塗膜が剥離したりして耐
久性に劣るという問題があった。しかも、防曇膜が吸湿
により白化するという問題があった。
【0006】加えて、前記の特公昭56−5416号公
報に基づく方法では、防曇持続性はあるが、光開始剤が
基材から水素を引き抜いて重合を開始させるという機構
のため、充分に重合が進行せず、防曇性能そのものが満
足出来ないという問題があった。さらに、使用可能な基
材に制限を受ける場合があった。
【0007】この発明は、上記のような従来技術に存在
する問題に着目してなされたものである。その目的とす
るところは、優れた防曇性能を長期間にわたって維持で
き、透明性が良く、しかも実用的な塗膜強度を有し、か
つ防曇性を付与しようとする基材との密着性が良好であ
る防曇膜を提供することにある。その他の目的とすると
ころは、使用可能な基材に制限を受けるおそれを防止で
きるとともに、容易に得られる防曇膜を提供することに
ある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記のような目的を達成
するために、本発明者らは鋭意研究した結果、この発明
を完成した。
【0009】すなわち、第1の発明の防曇膜は、基材上
に形成された光重合開始基を有する疎水性重合体のセグ
メント(I)の層上に、親水性重合体を接触させて活性
エネルギー線を照射することによって親水性重合体セグ
メント(II)の層を形成してなる防曇膜であって、前記
疎水性重合体セグメント(I)の層上に、光重合開始基
断片を介して親水性重合体セグメント(II)の層が疎水
性重合体セグメント(I)に結合している重合体より構
成されているものである。
【0010】第2の発明の防曇膜は、第1の発明におい
て、前記光重合開始基を有する疎水性重合体中の光重合
開始基が下記式(1)に示す基を含むとともに、光重合
開始基断片が下記式(2)に示す基を含む請求項1に記
載の防曇膜。
【0011】
【化4】 (式中、Aは
【0012】
【化5】 を表し、R1 、R2 は炭素数1〜4のアルキル基又はR
1 、R2 間の炭素により形成される炭素数5〜7のシク
ロアルキル基、R3 は水酸基又はアミノ基、R4、R5
は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0013】
【化6】 第3の発明の防曇膜は、第1又は第2の発明において、
前記親水性重合体が下記に示す親水性基を含む重合体で
ある。
【0014】親水性基:カルボキシル基、水酸基、スル
ホン酸基、リン酸基、これらのアルカリ金属塩またはア
ンモニウム塩、アルキレンオキシド基、アミノ基、アミ
ド基、シアノ基、酸無水物基及び4級アンモニウム塩基
からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基。
【0015】第4の発明の防曇膜は、第1〜3のいずれ
かの発明において、前記の光重合開始基を有する疎水性
重合体セグメント(I)の層は、光重合開始基を有する
疎水性重合体を含有する組成物(a)を基材上に塗布す
ることによって形成したものである。
【0016】第5の発明の防曇膜は、第4の発明におい
て、前記組成物(a)は、さらにシランカップリング剤
を含有するものである。第6の発明の防曇膜は、第4又
は第5の発明において、前記組成物(a)は、さらにラ
ジカル重合性単量体及び無機微粒子の少なくとも1種を
含有するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態につい
て詳細に説明する。防曇膜は、その構造に特徴を有し、
基材上に形成された疎水性重合体セグメント(I)の層
と、その上に形成された親水性重合体セグメント(II)
の層が光重合開始基断片を介して化学的に結合されて構
成されている。さらに具体的には、防曇膜は、疎水性重
合体セグメント(I)の層上に、親水性重合体セグメン
ト(II)の層が光重合開始基断片を介して結合した2層
系の共重合体である。
【0018】なお、疎水性重合体と親水性重合体は、そ
れぞれ疎水性重合体セグメント(I)又は親水性重合体
セグメント(II)として互いに結合しない単独重合体な
どを含有していてもよい。すなわち、疎水性重合体と親
水性重合体の反応率が低い場合であっても所期の目的を
達成できればよい。ちなみに、疎水性重合体はその膜厚
が薄いほど反応率が高く、親水性重合体は単独重合体を
除去することにより疎水性重合体との結合の割合が高く
なる。
【0019】疎水性重合体セグメント(I)とは、光重
合開始基を有する疎水性重合体において、この光重合開
始基が開裂した構造を有する重合体である。ここで、光
重合開始基とは、下記の化学式で示される光重合開始剤
に活性エネルギー線を照射してラジカルを発生させる基
である。
【0020】
【化7】 但し、R1 、R2 は炭素数1〜4のアルキル基又は
1 、R2 間の炭素により形成される炭素数5〜7のシ
クロアルキル基、R3 は水酸基又はアミノ基である。
【0021】光重合開始基を重合体分子中に導入する方
法としては、大別すると、 (1) 直接光重合開始基を有する単量体を重合して導
入する方法。 (2) はじめに光重合開始基を含まない重合体を合成
し、得られた重合体分子中に光重合開始基を導入する方
法。 の2つがあるが、合成的な容易さから(1)が好まし
い。
【0022】(1)の方法における、光重合開始基を有
する単量体とは、光重合開始基と、重合性不飽和二重結
合を1分子中にそれぞれ1個以上有するものをいう。光
重合開始基を有する単量体を具体的に示すと、S−(メ
タ)アクリロイル−O−メチルキサンテート、S−(メ
タ)アクリロイル−O−エチルキサンテート、S−(メ
タ)アクリロイル−O−プロピルキサンテートなどのキ
サンテート類、2,2’−アゾビス[2−(アクリロイ
ルオキシメチル)プロピオニトリル]、2,2’−アゾ
ビス[2−(メタクリロイルオキシメチル)プロピオニ
トリル]などのアゾ化合物、及び、前述の化学式化7で
示されるケトン化合物などが例示される。[式中、R1
【0023】
【化8】 を表し、R2 は水素、R6 又はZであり、R3 は水素又
はR13であり、R4 、R 5 は各々独立して水素、炭素数
1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ
基、フェニル基、又はR4 、R5 とその間の炭素により
形成される炭素数5〜7のシクロアルキル基であり、R
6 はO−R15、S−R15、N(R162 、ピペリジノ
基、モルホリノ基、SO2 17、又はZであり、R7
それぞれハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素
数1〜6のアルコキシ基により置換されていてもよい、
炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ベンゾイル基
であり、R8 、R9 は水素、水酸基、炭素数1〜6のア
ルキル基又はZであり、R10は水素又はZであり、R11
は炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基であり、R
12はアルキル基、アシル基又はZを表し、R13は水素、
【0024】
【化9】 又は、R3 と一緒になってオルト位についた−O−又は
−S−であり、R14は水素、Z又はR13であり、R15
水素、炭素数1〜6のアルキル基又はZであり、R16
17は水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R18
は炭素数4〜10の三級アルキル又はアラルキル基を表
す。Zは、
【0025】
【化10】 を表し、A、B、Dは各々独立して、単結合、
【0026】
【化11】 であり、X、Yは無置換又は水酸基が置換した炭素数1
〜4のアルキレン基を表し、p、qは0又は1〜10の
整数であり、Wは、
【0027】
【化12】 を表し、R19は水素又はメチル基、R20は炭素数1〜2
0のアルキル基、R21は水素、炭素数1〜6のアルキル
基又は炭素数1〜3のヒドロキシ置換アルキル基を表
し、Wが二価の場合は同じ構造の基が2つ結合している
ことを表す。かつ、R1 〜R3 の中にZ基が1つ以上含
まれる。] 前記化学式化7で示される光重合開始基を有する単量体
の例を具体的に示すと、1−(4−ビニルフェニル)−
2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−
(4−イソプロペニルフェニル)−2−ヒドロキシ−2
−メチルプロパン−1−オン、1−(4−アリルオキシ
ベンゾイル)−1−ヒドロキシシクロヘキサン、1−
{4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}
−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1
−[4−{2−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロ
キシプロピルオキシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒド
ロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−
(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2
−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−
[4−{2−(2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ
カルボニルオキシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒドロ
キシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−アクリロイ
ルオキシ−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オ
ン、1−{4−(2−アクリロイルオキシエチルチオ)
フェニル}−2−モルホリノ−2−メチルプロパン−1
−オン、メチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メ
チル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]マレ
ート、イソプロピル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2
−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]
フマレート、ブチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2
−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]
イタコネート、オクチル[2−{4−(2−ヒドロキシ
−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチ
ル]メサコネート、ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ
−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチ
ル]フマレート、ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ−
2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチ
ル]イタコネート、ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ
−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチ
ル]メサコネート、1−{4−(2−メタクリロイルオ
キシエトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ−2−
フェニルエタン−1−オン、2−{4−(2−アクリロ
イルオキシブトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ
−2−フェニルエタン−1−オン、1,2−ビス{4−
(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2,
2−ジメトキシエタン−1−オン、2,2−ビス(2−
メタクリロイルオキシエトキシ)−1,2−ジフェニル
エタン−1−オン、2−アリル−2−イソプロピルオキ
シ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−アクリ
ロイルオキシメチル−2−メトキシ−1,2−ジフェニ
ルエタン−1−オン、2−アクリロイルオキシ−1,2
−ジフェニルエタン−1−オン、1,2−ジフェニル−
1,2−エタンジオン−2−O−アクリロイルオキシ
ム、4−ビニルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキ
サイド、4−ビニル−4’−(t−ブチルペルオキシカ
ルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ビス(2−メタ
クリロイルオキシエトキシカルボニル)−4,4’−ビ
ス(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノ
ン、4,4’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒド
ロキシプロピルオキシカルボニル)−3,3’−ビス
(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノ
ン、3,3’−ビス(2−メタクリロイルオキシエトキ
シカルボニル)−4,4’−ビス(t−ブチルペルオキ
シカルボニル)ベンゾフェノン、4−(メタ)アクリロ
イルオキシベンゾフェノン、4−{2−(アクリロイル
オキシ)エトキシ}ベンゾフェノン、4−スチリルメト
キシベンゾフェノン、4−(メタ)アクリロイルオキシ
チオキサントンなどが挙げられる。
【0028】疎水性重合体セグメント(I)の層は、光
重合開始基を有する単量体の他に、光重合開始基を有し
ない単量体の1種又は2種以上を併用して形成されたも
のであっても良い。そのような光重合開始基を有しない
単量体は特に限定されず、具体的には、メチル(メタ)
アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのアル
キル(メタ)アクリレート類、2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレー
ト類、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの
(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジアルキルアミノ
アルキル(メタ)アクリレート類、フマル酸エステル
類、グリシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸エス
テル類、イタコン酸エステル類、(メタ)アクリル酸、
無水マレイン酸、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピ
ロリドン、N−ビニルピルジン、フッ素含有単量体、ケ
イ素含有単量体、リン含有単量体などが挙げられる。
【0029】この光重合開始基を有しない単量体の配合
量は、光照射による親水性単量体の重合効率を維持する
ため、95重量%以下であることが好ましい。前記光重
合開始基断片とは、前述した疎水性重合体に結合してい
る光重合開始基がラジカル開裂して生じ、疎水性重合体
セグメント(I)に結合している基をいう。この光重合
開始基断片としては、次の式で表される基を含むものが
好ましい。
【0030】
【化13】 次に、前記親水性重合体セグメント(II)とは、親水性
を有する重合体より形成されるセグメントである。具体
的には、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン
酸基、これらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、ア
ルキレンオキシド基、アミノ基、アミド基、シアノ基、
酸無水物基及び四級アンモニウム塩基からなる群より選
ばれる少なくとも1種の官能基を有する重合体セグメン
トである。ここで、親水性重合体セグメント(II)を形
成する親水性重合体とは、下記(1) 〜(15)に挙げられる
ように、直接、親水基を有する単量体を重合して得られ
る重合体、下記(16)のようにはじめに親水基を有しない
単量体を重合し、しかる後にそれを親水化して得られる
重合体及び下記(17)のようなセルロース系重合体が挙げ
られる。 (1) (メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタ
コン酸、メサコン酸、シトラコン酸、β−(メタ)アク
リロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネートなど
の不飽和カルボン酸類からなるカルボン酸重合体。 (2) マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン
酸無水物、4−メタクリロキシエチルトリメリット酸無
水物などの不飽和カルボン酸無水物類からなるカルボン
酸無水物重合体。 (3) ヒドロキシフェノキシエチル(メタ)アクリレー
ト、エチレンオキサイドの付加モル数が2〜90のヒド
ロキシフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アク
リレート、プロピレンオキサイドの付加モル数が2〜9
0のヒドロキフェノキシポリプロピレングリコール(メ
タ)アクリレート、ビニルフェノール、ヒドロキシフェ
ニルマレイミドなどのフェノール基含有単量体類からな
るフェノール基含有重合体。 (4) スルホキシエチル(メタ)アクリレート、スチレン
スルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、
(メタ)アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有単量
体類からなるスルホン酸基含有重合体。 (5) モノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッ
ドホスフェートなどのリン酸基含有単量体類からなるリ
ン酸基含有重合体。 (6) N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N
−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル
(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、
N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミ
ド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)
アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類からな
るポリ(メタ)アクリルアミド。 (7) N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレー
ト、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレー
トなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート類。 (8) 2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジ
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロ
キシアルキル(メタ)アクリレート類からなるポリヒド
ロキシアルキル(メタ)アクリレート。 (9) エチレンオキサイドの付加モル数が2〜98のポリ
エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレ
ンオキサイドの付加モル数が2〜98のメトキシポリエ
チレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレン
オキサイド付加モル数が2〜98のフェノキシポリエチ
レングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオ
キサイド付加モル数が1〜4のノニルフェノールモノエ
トキシレート(メタ)アクリレート、メトキシエチルア
クリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)ア
クリレートなどのポリオキシエチレンのモノ(メタ)ア
クリレート類からなるポリ(ポリオキシエチレンモノ
(メタ)アクリレート)。 (10) (メタ)アクリル酸のナトリウム塩、スチレンス
ルホン酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウムエトキシ
(メタ)アクリレート、アクリルアミド−t−ブチルス
ルホン酸のナトリウム塩などの酸基含有単量体のアルカ
リ金属塩類からなるポリアルカリ金属塩。 (11) (メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルトリメチル
アンモニウムクロライド、(メタ)アクリル酸ヒドロキ
シプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの四
級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート類からな
るポリ四級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレー
ト。 (12) アリルグリコール、エチレンオキサイド付加モル
数が3〜32のポリエチレングリコールモノ(メタ)ア
リルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノア
リルエーテルなどの(メタ)アリル化合物類からなるポ
リ(メタ)アリル化合物。 (13) N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタ
ムなどの環状複素環含有化合物類からなる環状複素環含
有重合体。 (14) アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン
化ビニリデンなどのシアン化ビニル類からなるシアン化
ビニル重合体。 (15) 下記に示す化学式(a)〜(g)で例示される反
応性乳化剤からなるビニル重合体。
【0031】
【化14】 但し、Φは芳香環、(OA)m、(OA)nはポリオキシア
ルキレン基(m、nはそれぞれ1〜20である)、R、
R' は炭素数1〜20のアルキル基である。
【0032】
【化15】 但し、Rは炭素数1〜20のアルキル基である。
【0033】
【化16】
【0034】
【化17】
【0035】
【化18】 但し、Φは芳香環である。
【0036】
【化19】 但し、Φは芳香環である。
【0037】
【化20】 但し、Φは芳香環である。 (16) ポリ酢酸ビニルのようなポリアルカン酸ビニル類
をケン化処理したポリビニルアルコール。 (17) カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチル
セルロース、トリアセチルセルソース。
【0038】これらの中では、防曇膜の性能及びその持
続性が特に良好である点で直接親水基を有する単量体を
重合して得られる重合体が好ましい。そのうち、アミド
基を有する重合体がさらに好ましく、具体的には、ポリ
(メタ)アクリルアミド、ポリN,N−ジメチル(メ
タ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリルモルホリ
ン、ポリ(メタ)アクリルアミド−t−ブチルスルホン
酸およびその塩などが挙げられる。
【0039】次に、防曇膜の製造方法について説明す
る。防曇膜の製造方法は、基材上に形成された光重合開
始基を有する疎水性重合体からなる層上に、親水性重合
体を接触させて活性エネルギー線を照射することによ
り、疎水性重合体と親水性重合体との間でラジカルカッ
プリング反応を起こさせて防曇膜を得るものである。
【0040】すなわち、疎水性重合体に結合した光重合
開始基が活性エネルギー線照射によりラジカルを発生
し、ここで生じた光重合開始基から解離したラジカルが
上層の親水性重合体分子中から水素原子を引き抜いて、
親水性重合体ラジカルを生成する。そして、この親水性
重合体ラジカルと、疎水性重合体分子中の光重合開始基
断片のラジカルとがカップリング反応することにより、
親水性重合体セグメント(II)の層が形成される。従っ
て、得られる防曇膜は、疎水性重合体セグメント(I)
の層上に光重合開始基断片を介して結合した親水性重合
体セグメント(II)の層が形成された2層構造を有する
ことになる。
【0041】このように、防曇膜はラジカルカップリン
グ反応に基づいて形成されることから、親水性重合体セ
グメント(II)の層を形成するために親水性単量体が用
いられるのではなく、親水性重合体が用いられる。これ
により、ラジカルカップリング反応が効果的に行われ
る。
【0042】図1は、このような防曇膜の製造方法を概
念的に示したものである。図1において、実線は光重合
開始基を有する疎水性重合体の主鎖、−CDは光重合開
始基、−C・は光重合開始基が開裂した光重合開始基断
片ラジカル、−C−は光重合開始基断片、点線は疎水性
重合体とラジカルカップリング反応した親水性重合体の
重合鎖、DHは光重合開始基の一部と水素との反応物を
表す。
【0043】次に、防曇膜のさらに具体的な製造方法に
ついて説明する。まず、光重合開始基を有する疎水性重
合体からなる層について説明する。この重合体からなる
層は、下記の各方法で得ることができる。 (i) 光重合開始基を有する単量体の単独重合体若しく
は共重合体の単独又は双方を含有する組成物〔以下、組
成物(a)という〕を基材に塗布して形成する方法。 (ii) 光重合開始基を有する単量体を含有する組成物を
基材上に塗布後、熱又は光により重合することによって
形成する方法。 (iii) 光重合開始基を有さず、かつ官能基を有する重
合体の表面に、化学反応によって光重合開始基を導入し
て形成する方法。具体的には、ヨーロピアン・ポリマー
・ジャーナル(Eur.Polym.J.),29巻,
63頁,1993年、及び、ポリマー・マテリアル・サ
イエンス・アンド・エンジニアリング(Polym.M
ater.Sci.Eng.),60巻,1頁,198
9年などに記載の方法である。すなわち、例えば水酸基
を有する基材に、アルコキシシリル基を有する光重合開
始剤を反応させる方法である。
【0044】これらの方法のうち、(i) の方法が簡便で
あるため好ましい。塗布する際には、必要に応じて組成
物(a)を溶剤で希釈して用いてもよい。光重合開始基
を有する単量体は、前述したものであり、それらの中で
は、光重合開始効率が良いこと及び製造が容易な点か
ら、下記式で示される光重合開始基を有する単量体が好
ましい。
【0045】
【化21】 [式中、Aは
【0046】
【化22】 を表し、R1 、R2 は炭素数1〜4のアルキル基又はR
1 、R2 とその間の炭素により形成される炭素数5〜7
のシクロアルキル基、R3 は水酸基又はアミノ基、
4 、R5 は炭素数1〜4のアルキル基を表す。] 光重合開始基を有する単量体として、具体的には、1−
{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フ
ェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−
オン、{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキ
シ)フェニル}(1−ヒドロキシシクロヘキシル)ケト
ン、1−{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエト
キシ)フェニル}−2−モルホリノ−2−メチルプロパ
ン−1−オン、1−{4−(2−(メタ)アクリロイル
オキシエトキシ)フェニル}−2−ジメチルアミノ−2
−メチルプロパン−1−オン、1−[4−{2−(2−
((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシカルボニルオ
キシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メ
チルプロパン−1−オン、1−{4−(2−(メタ)ア
クリロイルエトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ
−2−フェニルエタン−1−オンなどが好ましい。
【0047】この光重合開始基を有する疎水性重合体
は、通常のラジカル重合開始剤を用いて重合することに
よって得られる。この場合の重合体は、光重合開始基を
有する単量体の1種又は2種以上を単独で重合して、又
は前述した光重合開始基を有しない他の単量体の1種又
は2種以上と共重合して得られる。
【0048】基材がガラスの場合は、加水分解性シリル
基を有する単量体を共重合することにより密着性を向上
させることができる。加水分解性シリル基を有する単量
体を具体的に示すと、ビニルトリクロロシラン、ビニル
トリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニ
ルトリアセトキシシラン、3−メタクリロイルオキシト
リメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシトリエト
キシシラン、3−メタクリロイルオキシメチルジメトキ
シシラン、3−メタクリロイルオキシメチルジエトキシ
シランなどが挙げられる。
【0049】光重合開始基を有する疎水性重合体中の光
重合開始基を有する単量体成分の量は5〜100重量%
が好ましく、5重量%未満では光照射によるカップリン
グ反応の効率が悪くなる。
【0050】組成物(a)中には、光重合開始基を有す
る疎水性重合体の他に、未反応の光重合開始基を有する
単量体、及び通常の塗膜を形成する際に用いられる添加
剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、
例えば、他の単官能又は多官能単量体及びそれらの重合
体、光重合開始剤、硬化剤、紫外線吸収剤、レベリング
剤、界面活性剤や、コロイダルシリカなどの無機フィラ
ー等が挙げられる。また、基材との密着性を向上させる
ために、通常用いられるシランカップリング剤、チタネ
ートカップリング剤等を添加してもよい。
【0051】組成物(a)に、ラジカル重合性単量体や
無機微粒子を添加すると防曇膜の硬度が向上するので好
ましい。ラジカル重合性単量体は一個以上の重合性二重
結合を有する化合物であって、具体的な例としては、メ
チル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレー
トなどのアルキル(メタ)アクリレート類、2−ヒドロ
キシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロ
ピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモ
ノ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アク
リレート類、アクリルアミド、N,N−ジメチル(メ
タ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、
N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレー
ト類、フマル酸エステル類、グリシジル(メタ)アクリ
レート、マレイン酸エステル類、イタコン酸エステル
類、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、スチレン、
酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジ
ン、フッ素含有単量体、ケイ素含有単量体、リン含有単
量体などの単官能単量体や、エチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)
アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレー
ト、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペ
ンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペ
ンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの
多価エステル類、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレー
ト、ジアリルマレート、トリアリルイソシアネート、及
びトリアリルホスフェートなどの多価ビニル化合物等の
多官能単量体、及びフマレート基、マレート基、アリル
基、(メタ)アクリレート基を有する硬化性樹脂、不飽
和ポリエステル、不飽和アクリル樹脂、及びイソシアネ
ート改質アクリルオリゴマー、ポリエステルアクリルオ
リゴマー、及びポリエポキシアクリルオリゴマー等の重
合性基含有オリゴマー及び重合性基含有ポリマーなどが
挙げられる。これらの中では、二個以上の重合性二重結
合を有する多官能単量体が特に好ましい。
【0052】無機微粒子は、平均粒子径が5μm以下、
好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以
下の粒状物である。無機微粒子としては例えば、シリカ
微粉末、アルミナ微粉末、フルオロカーボン微粉末、カ
ーボンブラック、及び、酸化チタン、酸化亜鉛などの金
属酸化物微粒子などが挙げられる。これらの中では、粒
子径0.1μm以下のシリカ微粉末が好ましく、さらに
メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンな
どの通常シランカップリング剤として用いられているシ
リル化合物、好ましくは3−メタクリロイルオキシトリ
メトキシシランなどの重合性不飽和基を有するシリル化
合物により表面を変性したものが好ましい。
【0053】また、基材としてガラスを用いる場合は、
シランカップリング剤を添加するのが好ましい。シラン
カップリング剤を具体的に示すと、メチルトリメトキシ
シラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロ
シラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシ
ラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメ
トキシシラン、3−メトキシプロピルトリメトキシシラ
ン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メル
カプトプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシ
ラザン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−
フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビ
ニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビ
ニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラ
ン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3
−メタクリロイルオキシトリメトキシシラン、3−メタ
クリロイルオキシトリエトキシシラン、3−メタクリロ
イルオキシメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイ
ルオキシメチルジエトキシシランなどが挙げられる。こ
れらの中では、得られる被膜の強度や密着性の観点か
ら、3−メタクリロイルオキシトリメトキシシランなど
の重合性不飽和基を有するものが好ましい。また、シラ
ンカップリング剤の反応を促進させてガラスとの密着性
を向上させるために、組成物(a)中に少量の水や酢
酸、塩酸等の酸を添加してもよい。
【0054】次に、親水性重合体セグメント(II)の層
について説明する。この親水性重合体セグメント(II)
の層を形成するための親水性重合体は、親水性重合体単
独又は他の溶剤や添加剤を含有するものである。この親
水性重合体を含有する組成物中の親水性重合体の濃度
は、100%でも使用できるが、親水性重合体が溶解
し、かつ光重合開始基を有する疎水性重合体の層が溶解
しないような溶媒で希釈することが好ましい。そのよう
な溶媒としては特に限定されないが、水、メタノール、
アセトン、メチルエチルケトン等の極性溶媒が好まし
い。また、親水性重合体中には、他の単官能及び多官能
単量体や、界面活性剤、増粘剤等の添加剤を含有してい
ても良い。
【0055】親水性重合体を光重合開始基を有する疎水
性重合体に接触させる際に、光重合開始基を有する疎水
性重合体の層が、その疎水性重合体溶液を形成する溶剤
により、親水性重合体に溶解してしまうと、弊害が生じ
るおそれがある。すなわち、得られる防曇膜の外観が白
化等により悪くなったり、表面層が親水性重合体の均一
な層にならないため、防曇性能が悪くなったりするおそ
れがある。このため、親水性重合体溶液を形成する溶剤
としては、重合体を溶解しないものが好ましい。
【0056】親水性重合体を光重合開始基を有する疎水
性重合体に接触させる方法としては、光重合開始基を有
する疎水性重合体からなる層の上に親水性重合体を溶剤
に溶解或いは分散させて塗布してもよく、また光重合開
始基を有する疎水性重合体の層を表面に有する基材を親
水性重合体の溶剤溶液中に浸漬してもよい。さらに、酸
素による光重合開始基を有する疎水性重合体と親水性重
合体のラジカル反応の障害を防ぐために、親水性重合体
の上を、活性エネルギー線を透過する材質、例えばガラ
ス、石英、透明プラスチック製の板、フィルム等で覆っ
てもよい。また、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活
性ガスの雰囲気下で行ってもよい。
【0057】この親水性重合体は、前述のように、カル
ボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、これら
のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、アルキレンオキ
シド基、アミノ基、アミド基、シアノ基、酸無水物基及
び四級アンモニウム塩基のいずれかの官能基を少なくと
も1種有する重合体である。
【0058】具体的には、前述した親水性重合体が挙げ
られ、これらの重合体の中から適宜その1種を単独で又
は2種以上を混合して使用される。これらの中では、防
曇膜の性能及びその持続性が特に良好である点で、直接
親水基を有する単量体を重合して得られる重合体が好ま
しく、さらに好ましくは、アミド基を有する重合体で、
具体的には、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリN,N
−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アク
リルモルホリン、ポリ(メタ)アクリルアミド−t−ブ
チルスルホン酸及びその塩などが挙げられる。
【0059】防曇膜の製造方法において、活性エネルギ
ー線を照射後に未反応の親水性重合体がある場合は、必
要に応じて水などによって洗浄することが好ましい。活
性エネルギー線としては、用いる光重合開始基が吸収す
る波長であれば特に限定はされないが、具体的には20
0〜800nm、好ましくは、300〜600nmの紫
外線及び可視光線が望ましい。光源としては、高圧水銀
灯、低圧水銀灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、エ
キシマレーザ、色素レーザ、YAGレーザ、太陽光等が
挙げられる。
【0060】基材としては、ガラスやプラスチック成形
材料、フィルムの様な透明又は不透明な材料が用いられ
る。そして、表面に防曇膜が形成された基材は、レン
ズ、鏡、プリズムなどの光学部品あるいは車輌、船舶、
家屋などの窓ガラス、スキーゴーグル、水中メガネ、ヘ
ルメットシールド、計器カバー、農園芸用フィルムなど
の用途に好適に用いられる。
【0061】以上のように、この実施形態によれば、次
のような効果が発揮される。 ・ 実施形態の防曇膜によれば、防曇膜は基材側の疎水
性重合体セグメント(I)上に、その疎水性重合体に光
重合開始基断片により化学的に結合した親水性重合体セ
グメント(II)の層が形成された構造よりなっている。
この膜の表面側は親水性重合体セグメント(II)で構成
されており、かつこれが基材側の疎水性重合体セグメン
ト(I)に化学的に結合している。しかも、疎水性重合
体セグメント(I)は基材に良好な結合力をもって密着
している。
【0062】このため、表面の親水性膜により、水滴の
付着による基材表面の曇りを防止することができ、かつ
多量の水滴が基材表面に付着しても親水性膜が脱落する
おそれがなく、優れた防曇性能を発揮できるとともに、
その防曇性能を長期間にわたって維持することができ
る。
【0063】・ また、実施形態の防曇膜によれば、防
曇膜の表面が親水性重合体セグメント(II)の均一性の
良い膜であるため、薄い膜で充分に性能を発現させるこ
とができ、防曇膜の吸水量を少なくすることができる。
【0064】このため、吸水による性能の低下が抑制さ
れ、防曇膜の膨潤によってその硬度が低下して防曇膜が
傷ついたり、剥離したりするおそれを防止することがで
き、実用的な塗膜強度を発揮することができる。しか
も、防曇膜は透明性に優れている。 ・ 実施形態の防曇膜によれば、反応を開始させる機構
は、光重合開始基が基材から水素を引き抜いて重合を開
始させるという機構ではなく、重合体中の光重合開始基
から生じたラジカルが、既に形成されている親水性重合
体のラジカルとラジカルカップリング反応により反応す
るので、防曇性能が極めて優れており、かつその性能を
長期間維持することができる。
【0065】・ 実施形態の防曇膜によれば、基材表面
に光重合開始基を含有する疎水性重合体の層を形成し、
その上に親水性重合体を塗布した後、活性エネルギー線
を照射することにより、基材表面に形成される防曇膜を
容易に製造することができる。
【0066】・ 実施形態の防曇膜によれば、光重合開
始基を有する疎水性重合体セグメント(I)の層に、シ
ランカップリング剤が含有されることにより、特にガラ
スに対する密着性を向上させることができる。
【0067】・ 実施形態の防曇膜によれば、光重合開
始基を有する疎水性重合体セグメント(I)の層に、ラ
ジカル重合性単量体、無機微粒子などを添加することに
より、防曇膜の硬度を高めることができる。
【0068】・ 従って、実施形態の防曇膜は、特にガ
ラスや合成樹脂のような透明材料よりなる光学部品や成
形品の表面に好適に適用することができる。
【0069】
【実施例】次に、参考例、実施例及び比較例により、こ
の発明をさらに具体的に説明するが、この発明はこれら
により限定されるものではない。なお、各例における本
文及び表中の%は重量%を表す。また、分子量はゲルパ
ーミエーションクロマトグラフ(GPC)によりテトラ
ヒドロフランを展開溶剤として使用して測定した値であ
る。
【0070】本文及び表中の略号は以下の通りである。 PI1:1−[4−{2−(2−(メタクリロイルオキ
シ)エトキシカルボニルオキシ)エトキシ}フェニル]
−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン PI2:メチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メ
チル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]フマ
レート PI3:ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチ
ル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]イタコ
ネート PI4:1−{4−(2−メタクリロイルエトキシ)フ
ェニル}−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタン−
1−オン PI5:1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオン−
2−O−アクリロイルオキシム PI6:3,3’−ビス(メタクリロイルオキシエトキ
シカルボニル)−4,4’−ビス(t−ブチルペルオキ
シカルボニル)ベンゾフェノン MMA:メチルメタクリレート BMA:ブチルメタクリレート LMA:ラウリルメタクリレート ST:スチレン DBF:ジブチルフマレート GMA:グリシジルメタクリレート NMAAm:N−メチロールアクリルアミド MAA:メタクリル酸 HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート KBM503:3−トリメトキシシリルプロピルメタク
リレート(信越化学工業社製「KBM−503」) PPZ:ホスファゼン系6官能メタクリレート(出光石
油化学社製「出光PPZ」) 3002A:2官能エポキシアクリレート(共栄社化学
社製「エポライト3002A」) PNVP:N−ビニル−2−ピロリドン重合体 PDMAEMA:N,N−ジメチルアミノエチルメタク
リレート重合体 PDMAAm:N,N−ジメチルアクリルアミド重合体 PAAm:アクリルアミド重合体 PACMO:アクリロイルモルホリン重合体 PPE350:ポリエチレングリコールモノメタクリレ
ート(日本油脂社製「ブレンマーPE−350」)重合
体 PATBS:アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸
(東亜合成社製[ATBS])重合体 PQA:メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルア
ンモニウムクロリド(日本油脂社製「ブレンマーQ
A」)重合体 PMS2N:スルホエチルメタクリレートNa塩(日本
乳化剤社社製「AntoxMS−2N」)重合体 PDQ100:メタクリロイルオキシエチルトリメチル
アンモニウムクロライド(共栄社化学製「ライトエステ
ルDQ−100」)重合体 PDE400:ポリエチレングリコールジメタクリレー
ト(日本油脂社製「ブレンマーPDE400」) MEK:メチルエチルケトン PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル THF:テトラヒドロフラン PVA:ケン化ポリ酢酸ビニル(日本合成化学工業社製
「ゴーセノールKH−17」) OP80:ノニオン系界面活性剤(日本油脂社製「ノニ
オンOP−80」) TTA:トリエチレンテトラミン(味の素社製「アミキ
ュア」) ACS:コロイダルシリカ(日産化学社製「スノーテッ
クスO」)を3−トリメトキシシリルプロピルメタクリ
レート(信越化学工業社製「KBM−503」)で処理
したアクリル変性コロイダルシリカの20%MEK溶液 LPO:ラウロイルペルオキシド(日本油脂社製「パー
ロイルL」) (参考例1、光重合開始基含有重合体の製造)撹拌機、
温度計、パージガス導入口及び水冷コンデンサーを備え
た1リットルの反応容器に、MEK 50gを仕込み、
窒素ガス通気下、80℃に加熱した。その後、撹拌しな
がら、メチルメタクリレート90g、PI1 10g、
MEK50g、及びLPO 5gの混合物を2時間かけ
て滴下した。滴下終了後、そのまま4時間撹拌を続け、
重合を完結した。得られた溶液を石油エーテル中に注入
して重合体を析出させた後、乾燥して光重合開始基含有
の疎水性重合体a(表中、重合体aと略記)を得た。
【0071】疎水性重合体aの重量平均分子量(Mw)
は21000であった。また、紫外線(UV)吸収スペ
クトルから、仕込み量と同量の光重合開始基が重合体中
に導入されていることを確認した。 (参考例2〜12)単量体を表1及び2の種類及び量に
変える以外は参考例1と同様に重合を行い、光重合開始
基含有の疎水性重合体b〜l(表中、重合体b〜lと略
記)を得た。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】 (実施例1、塗膜の製造)塗布液(イ)として参考例1
で得た重合体aの20%MEK溶液を用い、10cm×
10cm、厚さ2mmのアクリル板に、乾燥膜厚が5μ
mになるようにバーコーターを用いて塗布し、60℃で
10分間乾燥した。得られた塗膜上に親水性重合溶液
(ロ)として20%PATBS水溶液を塗布した後、1
kW高圧水銀灯により1分間光照射した。このときの光
照射量は5J/cm2 であった。光照射後、水洗、乾燥
することにより、無色透明な防曇膜を得た。
【0074】次に、得られた防曇膜について下記に示す
評価方法により物性を評価した。 (1) グラフト膜厚 グラフト重合前後の厚さをデジタル膜厚計(Sheen
Instruments社製)で測定し、増加量をグ
ラフト膜厚(μm)として表した。 (2) 塗膜硬度 JIS K−5400に準じた鉛筆引っかき試験を行
い、塗膜硬度を鉛筆の硬さで表した。 (3) 密着性 JIS K−5400の碁盤目テープ法に準じて、塗膜
をカッターナイフで縦横方向に切断して基材に達するよ
うな100個のクロスカット(切断片)を作り、セロハ
ン粘着テープ[ニチバン(株)製]を貼り付けた。そし
て、接着面と垂直方向に剥離し、剥がれずに残ったクロ
スカットの数を次のような記号で表した。
【0075】○:100/100、△:80/100以
上、×:80/100未満 (4) 防曇性 (a)呼気試験 20℃、相対湿度50%の恒温室内で塗膜に息を吹きか
け、曇りの状態を目視によって次の基準にて判定した。
【0076】○:全く曇らない、△:やや曇りが見られ
る、×:全面が曇る (b)蒸気試験 60℃の恒温水槽上の水面から1cmの位置に試験板を
固定し、10分後の曇りの状態を目視によって次の基準
にて判定した。
【0077】◎:水滴が全くない、○:直径5mm以下
の水滴がない、△:直径5mm以下の水滴が部分的にあ
る、×:全面に5mm以下の水滴がある (5) 持続性 試験板を水中に1カ月間浸漬した後、乾燥し、上記の呼
気試験、蒸気試験及び下記の塗膜外観試験を行った。 (6) 塗膜外観試験(ヘイズ値) 直読式ヘイズメータ(東洋精機製作所製)にてヘイズ値
を測定した。なお、この値は一般的には1.0以下が良
く、1.0を越えると外観不良と判定される。 (実施例2〜10)塗布液(イ)として表3に記載した
ものを用いる以外は、実施例1に記載した方法で防曇膜
を作り、実施例1と同様に物性を評価した。その評価結
果を表5に示した。なお、基板は実施例5,8及び10
ではガラス板を使用した。 (実施例11〜20)親水性重合体溶液(ロ)として表
4に記載したものを用いる以外は、実施例1に記載した
方法で防曇膜を作り、実施例1と同様に物性を評価し
た。その評価結果を表6に示した。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】 (実施例21)重合体k 20g、TTA 5g、PG
M 30gの混合物を、ポリカーボネート板に乾燥膜厚
が5μmになるように塗布し、120℃で1時間加熱し
た。次いで、20%PAAm水溶液を塗布後、実施例1
と同様に光照射、水洗、乾燥し、実施例1と同様に物性
を評価した。その評価結果を表7に示した。 (実施例22)重合体l 20g、MEK 20gの混
合物を、ガラス板に乾燥膜厚が2μmになるように塗布
し、80℃で30分加熱した。次いで、20%PATB
S水溶液を塗布後、実施例1と同様に光照射、水洗、乾
燥し、実施例1と同様に物性を評価した。評価結果を表
7に示した。 (実施例23)重合体a 20g、MEK 20gの混
合物を、PETフィルム(帝人社製「テトロンHP
7」、膜厚100μm)に乾燥膜厚が2μmになるよう
に塗布し、80℃で30分加熱した。次いで、20%P
ACMO水溶液を塗布後、実施例1と同様に光照射、水
洗、乾燥し、実施例1と同様に物性を評価した。その評
価結果を表7に示した。 (実施例24)PI6 10g、PPZ 10g、30
02A 5g、MEK 25gの混合物を、アクリル板
に乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、60℃で10
分乾燥後、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した。
次いで、20%PATBS水溶液を塗布後、実施例1と
同様に光照射、水洗、乾燥し、実施例1と同様に物性を
評価した。その評価結果を表7に示した。 (実施例25)重合体b 20g、MEK 20gの混
合物を、アクリル板に乾燥膜厚が5μmになるように塗
布し、60℃で10分乾燥した。これを、20%PAT
BS水溶液中に入れ、塗布面側から1kW高圧水銀灯に
より1分間光照射した。光照射後、水洗、乾燥し、実施
例1と同様に物性を評価した。その評価結果を表7に示
した。 (実施例26)重合体a 20g、MEK 20gの混
合物を、アクリル板に乾燥膜厚が5μmになるように塗
布し、60℃で10分乾燥した。次いで、20%PAA
m水溶液を塗布し、その上にガラス板を直接置いた後、
実施例1と同様に光照射、水洗、乾燥し、実施例1と同
様に物性を評価した。評価結果を表7に示した。
【0082】
【表7】 (比較例1)アクリル板に界面活性剤OP80を塗布
し、実施例1と同様に物性を評価した。その評価結果を
表8に示した。 (比較例2)MMA/DMAAm(重量比80/20)
共重合体 20g、PDE4005g、AAm 5g、
光重合開始剤(チバガイギー社製「Darocure1
173」)1g、MEK 30gの混合物をアクリル板
に乾燥膜厚が5μmになるように塗布、乾燥後、1kW
高圧水銀灯で1分間光照射した。これを、実施例1と同
様に物性を評価した。その結果を表8に示した。 (比較例3)MMA/HEMA(重量比65/35)共
重合体 300g、HEMA 100g、ジエチレング
リコールジメタクリレート 10g、界面活性剤(花王
社製「エマルゲン106」) 5g、メチルセルソルブ
300gの混合物をアクリル板に塗布し、乾燥後、電
子線を照射した。これを、実施例1と同様に物性を評価
した。その結果を表8に示した。 (比較例4)アセチルセルロースフィルムを水酸化ナト
リウムでケン化した後、アクリル板に貼った。これにつ
いて、実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表
8に示した。
【0083】
【表8】 表5〜8に示したように、各実施例及び比較例の結果か
ら次のことがわかった。すなわち、比較例1の界面活性
剤を塗布したもの及び比較例3の界面活性剤を含有する
硬化物は、初期の性能は良いが、耐水性がなく、容易に
性能が低下してしまう。比較例2の親水性成分を含有す
る共重合体を塗布、硬化したものは初期性能が不十分で
あり、さらに長期間にわたって水に接触すると白化して
しまう。比較例4のセルロースフィルムは耐水性はある
が、防曇性能が不十分である。
【0084】これに対して、実施例1〜26の防曇膜
は、初期の防曇性能に優れ、かつその性能は水中に浸漬
した後も持続しており、公知の防曇膜に比べて防曇性
能、持続性共に優れていることは明かである。 (実施例27)塗布液(イ)として重合体aの20%M
EK溶液、親水性重合体溶液(ロ)として20%PAT
BS水溶液を用い、実施例1に記載した方法で防曇膜を
得た。得られた防曇膜の表面から約10μmを削り取っ
た重合物0.1gをTHFに溶解後、水とTHFを用い
て、分別沈澱法(例えば、「高分子溶液」、高分子学会
高分子実験学編集委員会編、共立出版)により分離した
ところ、水/THF=2〜5(重量比)で沈澱した成分
0.1gが得られた。
【0085】核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)及び
赤外線吸収スペクトル分析(IR)により、重合体aの
MMA成分とATBS成分とが確認され、重合体aと親
水性重合体が結合結合した重合体であることを確認し
た。この重合体は、NMRの7.0〜8.1ppmにフ
ェニル基の吸収、及びIRの1660cm-1に芳香族カ
ルボニル基の吸収があり、また、重合体a単独の場合に
存在する3400cm-1付近の水酸基の吸収が消失して
いた。
【0086】更に、UV吸収スペクトルを測定したとこ
ろ、光重合開始基の340nm以上の吸収が減少し、3
25nmにアルキルフェノンの極大吸収が現れた。これ
らのことから、得られた重合体は、光重合開始基が開裂
した芳香族ケトン基を介して結合した重合体aと親水性
重合体から形成された共重合体であることがわかった。 (実施例28)実施例1で得た防曇膜をXPS[X線光
電子分光分析装置ESCA−850型(島津製作所
製)]で分析した。Nの吸収が7.7%(理論値7.7
%)、Sの吸収が7.6%(理論値7.7%)であっ
た。このことから、防曇膜の表面はPATBSのグラフ
ト鎖であることがわかった。
【0087】前記実施例27及び実施例28の結果よ
り、各実施例の防曇膜は光重合開始基断片を介して結合
した親水性重合体鎖が表面を覆っていることがわかる。
このため、防曇膜は防曇性能が優れ、かつ水に長期間接
触しても親水性が低下することなく、性能を持続するこ
とができた。
【0088】なお、前記実施の形態より把握される技術
的思想について以下に記載する。 ・ 前記重合体は、疎水性重合体セグメント(I)の層
上に、親水性重合体セグメント(II)が光重合開始基断
片を介して結合した共重合体である請求項1に記載の防
曇膜。
【0089】このように構成した場合、基材に対する防
曇膜の密着性、防曇膜の防曇性能、その持続性、透明
性、被膜強度等の性能を確実に発揮させることができ
る。 ・ 前記疎水性重合体セグメント(I)は、光重合開始
基を有する単量体と光重合開始基を有しない単量体とか
ら形成されたものである請求項1に記載の防曇膜。
【0090】このように構成した場合、基材に対する防
曇膜の密着性や防曇膜のその他の性能を調整して、各性
能をバランス良く発揮させることができる。 ・ 基材上に光重合開始基を有する疎水性重合体を含有
する組成物を塗布した後、その上に親水性重合体を接触
させて活性エネルギー線を照射し、基材上に形成された
疎水性重合体セグメント(I)の層に光重合開始基断片
を介して親水性重合体セグメント(II)の層を形成する
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の防曇膜の製造方
法。
【0091】このように構成すれば、防曇性能に優れた
防曇膜を容易かつ確実に製造することができる。 ・ 光重合開始基を有する重合体を基材表面に塗布し、
次いでその表面に親水性重合体を塗布するか、又は親水
性重合体中に基材を浸漬した後、活性エネルギー線を照
射する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の防曇膜の
製造方法。
【0092】このように構成すれば、簡易な操作により
防曇膜を容易に製造することができる。
【0093】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれ
ば、次のような優れた効果を奏する。第1の発明の防曇
膜によれば、基材上に疎水性重合体セグメント(I)の
層が良好な結合力をもって形成され、その上に親水性重
合体セグメント(II)の層が光重合開始基断片を介して
化学的に結合している。従って、表面の親水性の層によ
り、優れた防曇性能を発揮できるとともに、その防曇性
能を長期間にわたって維持することができる。
【0094】さらに、防曇膜の表面は親水性重合体セグ
メント(II)の均一性の良い膜であるため、薄い膜で充
分に性能を発現させることができ、防曇膜の吸水量を少
なくすることができる。従って、吸水による性能の低下
を抑制でき、防曇膜の膨潤によってその硬度が低下して
防曇膜が傷ついたり、剥離したりするおそれを防止する
ことができる。しかも、防曇膜は透明性が良く、実用的
な塗膜強度を有しているとともに、基材との密着性も良
好である。
【0095】加えて、重合開始機構は光重合開始剤が基
材から水素を引き抜いて親水性単量体の重合を開始させ
るという機構ではなく、ラジカルカップリング反応に基
づくものであることから、使用可能な基材に制限を受け
るおそれを防止することができる。
【0096】このような防曇膜は、活性エネルギー線の
照射により容易に形成でき、ガラスや合成樹脂のような
透明材料よりなる光学部品や成形品の表面に好適に適用
でき、産業上有用である。
【0097】第2の発明の防曇膜によれば、第1の発明
の効果に加え、基材側の疎水性重合体セグメント(I)
の層と、表面側の親水性重合体セグメント(II)の層と
が特定の光重合開始基断片を介して結合されていること
から、両層間の結合を確実なものにすることができる。
【0098】第3の発明の防曇膜によれば、親水性重合
体として所定の親水性基を含む重合体を用いることか
ら、防曇性、その持続性、透明性、被膜強度等の防曇性
能を向上させることができる。
【0099】第4の発明の防曇膜によれば、防曇性能の
優れた防曇膜を容易に得ることができる。第5の発明の
防曇膜によれば、シランカップリング剤を配合すること
から、基材としてガラスを使用する場合にガラスに対す
る密着性を向上させることができる。
【0100】第6の発明の防曇膜によれば、ラジカル重
合性単量体及び無機微粒子の少なくとも1種を含有する
ことから、防曇膜の硬度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 基材上に形成される防曇膜の製造法を概念的
に示した説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 須山 修治 愛知県知多郡武豊町字楠4丁目132番地

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材上に形成された光重合開始基を有す
    る疎水性重合体のセグメント(I)の層上に、親水性重
    合体を接触させて活性エネルギー線を照射することによ
    って親水性重合体セグメント(II)の層を形成してなる
    防曇膜であって、 前記疎水性重合体セグメント(I)の層上に、光重合開
    始基断片を介して親水性重合体セグメント(II)の層が
    疎水性重合体セグメント(I)に結合している重合体よ
    り構成されている防曇膜。
  2. 【請求項2】 前記光重合開始基を有する疎水性重合体
    中の光重合開始基が下記式(1)に示す基を含むととも
    に、光重合開始基断片が下記式(2)に示す基を含む請
    求項1に記載の防曇膜。 【化1】 (式中、Aは 【化2】 を表し、R1 、R2 は炭素数1〜4のアルキル基又はR
    1 、R2 間の炭素により形成される炭素数5〜7のシク
    ロアルキル基、R3 は水酸基又はアミノ基、R4、R5
    は炭素数1〜4のアルキル基を表す。) 【化3】
  3. 【請求項3】 前記親水性重合体が下記に示す親水性基
    を含む重合体である請求項1又は請求項2に記載の防曇
    膜。 親水性基:カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リ
    ン酸基、これらのアルカリ金属塩またはアンモニウム
    塩、アルキレンオキシド基、アミノ基、アミド基、シア
    ノ基、酸無水物基及び4級アンモニウム塩基からなる群
    より選ばれる少なくとも1種の官能基。
  4. 【請求項4】 前記の光重合開始基を有する疎水性重合
    体セグメント(I)の層は、光重合開始基を有する疎水
    性重合体を含有する組成物(a)を基材上に塗布するこ
    とによって形成したものである請求項1〜3のいずれか
    に記載の防曇膜。
  5. 【請求項5】 前記組成物(a)は、さらにシランカッ
    プリング剤を含有するものである請求項4に記載の防曇
    膜。
  6. 【請求項6】 前記組成物(a)は、さらにラジカル重
    合性単量体及び無機微粒子の少なくとも1種を含有する
    ものである請求項4又は請求項5に記載の防曇膜。
JP29870097A 1997-10-30 1997-10-30 防曇膜が形成された物品の製造方法 Expired - Lifetime JP4032159B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29870097A JP4032159B2 (ja) 1997-10-30 1997-10-30 防曇膜が形成された物品の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29870097A JP4032159B2 (ja) 1997-10-30 1997-10-30 防曇膜が形成された物品の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11129404A true JPH11129404A (ja) 1999-05-18
JP4032159B2 JP4032159B2 (ja) 2008-01-16

Family

ID=17863160

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP29870097A Expired - Lifetime JP4032159B2 (ja) 1997-10-30 1997-10-30 防曇膜が形成された物品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4032159B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7045276B2 (en) 2001-10-11 2006-05-16 Fuji Photo Film Co., Ltd. Hydrophilic member precursor and pattern forming material that utilizes it, support for planographic printing plate, and planographic printing plate precursor
JP2008014630A (ja) * 1999-05-25 2008-01-24 Saint-Gobain Glass France 断熱グレージングの冷蔵室ドアにおける使用および断熱グレージングを含む冷蔵室ドア
WO2009151086A1 (ja) * 2008-06-11 2009-12-17 旭硝子株式会社 防曇性組成物および防曇性組成物用キットならびに防曇性物品および該防曇性物品の製造方法
CN101864105A (zh) * 2010-06-13 2010-10-20 山东农业大学 一种新型农用无滴消雾膜
CN111234288A (zh) * 2020-01-19 2020-06-05 东华大学 一种亲水性聚合物防雾涂层的制备方法
CN114478436A (zh) * 2022-03-14 2022-05-13 浙江扬帆新材料股份有限公司 一种含有可聚合的衣康酸基团改性的α-氨基酮类光引发剂及其制备方法和用途

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008014630A (ja) * 1999-05-25 2008-01-24 Saint-Gobain Glass France 断熱グレージングの冷蔵室ドアにおける使用および断熱グレージングを含む冷蔵室ドア
JP4629705B2 (ja) * 1999-05-25 2011-02-09 サン−ゴバン グラス フランス 断熱グレージングの冷蔵室ドアにおける使用および断熱グレージングを含む冷蔵室ドア
US7045276B2 (en) 2001-10-11 2006-05-16 Fuji Photo Film Co., Ltd. Hydrophilic member precursor and pattern forming material that utilizes it, support for planographic printing plate, and planographic printing plate precursor
WO2009151086A1 (ja) * 2008-06-11 2009-12-17 旭硝子株式会社 防曇性組成物および防曇性組成物用キットならびに防曇性物品および該防曇性物品の製造方法
JP5423673B2 (ja) * 2008-06-11 2014-02-19 旭硝子株式会社 防曇性組成物および防曇性組成物用キットならびに防曇性物品および該防曇性物品の製造方法
CN101864105A (zh) * 2010-06-13 2010-10-20 山东农业大学 一种新型农用无滴消雾膜
CN111234288A (zh) * 2020-01-19 2020-06-05 东华大学 一种亲水性聚合物防雾涂层的制备方法
CN114478436A (zh) * 2022-03-14 2022-05-13 浙江扬帆新材料股份有限公司 一种含有可聚合的衣康酸基团改性的α-氨基酮类光引发剂及其制备方法和用途
CN114478436B (zh) * 2022-03-14 2024-04-30 浙江扬帆新材料股份有限公司 一种含有可聚合的衣康酸基团改性的α-氨基酮类光引发剂及其制备方法和用途

Also Published As

Publication number Publication date
JP4032159B2 (ja) 2008-01-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5315334B2 (ja) 多官能ビニル芳香族共重合体、その製造方法及び樹脂組成物
JP4873107B2 (ja) 含フッ素硬化性樹脂及びそれを用いた活性エネルギー線硬化性組成物
JP3742647B2 (ja) 基材の表面処理方法
KR101492355B1 (ko) 경화성 수지 조성물
EP2599799A1 (en) Single-layer film and hydrophilic material comprising same
JP6281061B2 (ja) 塗料組成物、その硬化膜及びその硬化膜を備える塗装物品
JP4055427B2 (ja) 硬化性組成物、それを用いたハードコート処理物品及び画像表示装置
JPH0977891A (ja) 基材密着性の良好な表面層を有する物品および該物品の製造方法
JP2005015753A (ja) 硬化性表面改質剤およびそれを用いた硬化性表面改質用組成物
JP3700273B2 (ja) 防曇膜が形成された物品及びその製造方法
JP4032159B2 (ja) 防曇膜が形成された物品の製造方法
JPH1017688A (ja) 基材の表面処理方法
JP4389429B2 (ja) 硬化性組成物およびハードコート処理物品
JPH1143614A (ja) 防曇膜及びその製造方法
KR950014730B1 (ko) 자외선 경화형 방무제 조성물과 방무성 피막 제조방법
JPH06172676A (ja) 紫外線硬化型防曇剤組成物
JP5419410B2 (ja) エマルジョンマスク用電離放射線硬化型保護液およびそれを用いたエマルジョンマスク
JP2001131445A (ja) 塗膜用樹脂組成物及び塗膜付き樹脂成形品
JP4151086B2 (ja) 高分子被膜を有するガラス製品
JP4640566B2 (ja) 偏光板
JPH10279834A (ja) フッ素含有重合体被膜及びその製造方法
JPH11156982A (ja) 防曇膜
JPH0741695A (ja) 耐摩耗性被覆組成物
JPH11217451A (ja) フッ素含有重合体被膜及びその製造方法
JP5516969B2 (ja) 含フッ素硬化性樹脂及びそれを用いた活性エネルギー線硬化型組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20041025

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060614

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060627

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060825

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070925

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20071008

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101102

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101102

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111102

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111102

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121102

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131102

Year of fee payment: 6

EXPY Cancellation because of completion of term