JPH11156982A - 防曇膜 - Google Patents

防曇膜

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Publication number
JPH11156982A
JPH11156982A JP9324513A JP32451397A JPH11156982A JP H11156982 A JPH11156982 A JP H11156982A JP 9324513 A JP9324513 A JP 9324513A JP 32451397 A JP32451397 A JP 32451397A JP H11156982 A JPH11156982 A JP H11156982A
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JP
Japan
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group
polymer
hydrophilic
photopolymerization
hydrophobic polymer
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Pending
Application number
JP9324513A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroshi Omura
博 大村
Yoshiki Higuchi
慶樹 樋口
Masami Okuo
雅巳 奥尾
Eiji Harada
英治 原田
Shuji Suyama
修治 須山
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NOF Corp
Original Assignee
NOF Corp
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Publication date
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Priority to JP9324513A priority Critical patent/JPH11156982A/ja
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  • Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた防曇性能を長期間にわたって維持で
き、透明性が良く、しかも実用的な塗膜強度を有し、か
つ防曇性を付与しようとする基材との密着性が良好であ
る防曇膜を提供する。 【解決手段】 防曇膜は、基材上に形成された光重合開
始基を有する疎水性重合体の層の上に、光重合開始基を
有する親水性重合体を接触させて活性エネルギー線を照
射することにより形成される。親水性重合体により形成
される親水性重合体セグメント(II)が、疎水性重合体
により形成される疎水性重合体セグメント(I)に対
し、光重合開始基断片を介して結合されている。その光
重合開始基断片は下記式(1)に示す基を含むことが望
ましい。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えばガラスや
プラスチック成形材料、フィルムの様な透明な材料より
なるレンズ、鏡などの基材表面の結露による曇りや水滴
の付着を防止するための防曇膜に関するものである。さ
らに詳細には、基材に対して効果的に防曇性能を付与で
き、かつその性能を長期間にわたって持続できる防曇膜
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、透明な基材は、露点以下の温度
になると表面に結露を生じて透明度が低下する。このよ
うな透明基材の曇りを防止する方法として、従来から幾
つかの提案がなされている。
【0003】例えば、界面活性剤、親水性重合体などの
親水性物質を基材表面に塗布する方法、界面活性剤を含
有する塗膜を基材表面に形成する方法、親水性フィルム
を基材にラミネートする方法(特開昭62−18253
号公報)、親水性の硬化性樹脂を基材に塗布して硬化さ
せる方法(特開昭63−251401号公報)などがあ
る。また、特公昭56−5416号公報には、三重項増
感剤を含有する親水性組成物に光照射して基材表面を親
水化処理する方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、防曇性が付
与された各種基材は、防曇膜に水が接触するような条件
下で使用される場合が多いことから、界面活性剤や親水
性重合体を基材表面に塗布する方法では防曇膜が水に溶
解して基材表面から流れ落ち、防曇持続性に欠けるとい
う問題があった。
【0005】また、親水性樹脂の硬化物や親水性フィル
ムを防曇膜として使用する方法では、吸湿により塗膜の
硬度が低下して傷が付いたり、塗膜が剥離したりして耐
久性が劣るという問題があった。しかも、防曇膜が吸湿
により白化するという問題があった。
【0006】加えて、前記の特公昭56−5416号公
報に基づく方法では、防曇持続性はあるが、光開始剤が
基材から水素を引き抜いて重合を開始させるという機構
のため、充分に重合が進行せず、防曇性能そのものが満
足出来ないという問題があった。しかも、使用可能な基
材に制限を受けるという問題があった。
【0007】この発明は、上記のような従来技術に存在
する問題に着目してなされたものである。その目的とす
るところは、優れた防曇性能を長期間にわたって維持で
き、透明性が良く、しかも実用的な塗膜強度を有し、か
つ防曇性を付与しようとする基材との密着性が良好であ
る防曇膜を提供することにある。その他の目的とすると
ころは、使用可能な基材に制限を受けるおそれを防止で
きるとともに、容易に製造できる防曇膜を提供すること
にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記のような目的を達成
するために、本発明者らは鋭意研究した結果、この発明
を完成した。
【0009】すなわち、第1の発明の防曇膜は、基材上
に形成された光重合開始基を有する疎水性重合体の層の
上に、光重合開始基を有する親水性重合体を接触させて
活性エネルギー線を照射することにより形成され、前記
親水性重合体による親水性重合体セグメント(II)が疎
水性重合体による疎水性重合体セグメント(I)に対し
光重合開始基断片を介して結合されているものである。
【0010】第2の発明の防曇膜は、第1の発明におい
て、前記光重合開始基断片が下記式(1)に示す基を含
むものである。
【0011】
【化6】
【0012】第3の発明の防曇膜は、第1又は第2の発
明において、前記親水性重合体セグメント(II)が、下
記に示す親水性基を含むものである。 親水性基:カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リ
ン酸基、これらのアルカリ金属塩またはアンモニウム
塩、アルキレンオキシド基、アミノ基、アミド基、シア
ノ基、酸無水物基及び四級アンモニウム塩基からなる群
より選ばれる少なくとも1種の官能基。
【0013】第4の発明の防曇膜は、第1〜第3のいず
れかの発明において、前記光重合開始基を有する疎水性
重合体が、下記式(2)に示される光重合開始基の群か
ら選ばれる少なくとも1種を有する単量体より形成され
るものである。
【0014】
【化7】
【0015】(式中、Aは
【0016】
【化8】
【0017】を表し、R1 、R2 は炭素数1〜4のアル
キル基又はR1 、R2 間の炭素により形成される炭素数
5〜7のシクロアルキル基、R3 は水酸基又はアミノ
基、R4、R5 は炭素数1〜4のアルキル基を表す。) 第5の発明の防曇膜は、第1〜第4のいずれかの発明に
おいて、前記光重合開始基を有する親水性重合体が、下
記式(2)に示される光重合開始基の群から選ばれる少
なくとも1種を有する単量体5〜50重量%、下記に示
される親水性基の群から選ばれる少なくとも1種を有す
る単量体50〜95重量%より形成される重合体であ
る。
【0018】
【化9】
【0019】(式中、Aは
【0020】
【化10】
【0021】を表し、R1 、R2 は炭素数1〜4のアル
キル基又はR1 、R2 とR1 、R2 間の炭素により形成
される炭素数5〜7のシクロアルキル基、R3 は水酸基
又はアミノ基、R4 、R5 は炭素数1〜4のアルキル基
を表す。) 親水性基:カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リ
ン酸基、これらのアルカリ金属塩、又はアンモニウム
塩、アルキレンオキシド基、アミノ基、アミド基、シア
ノ基、酸無水物基及び四級アンモニウム塩基からなる群
より選ばれる少なくとも1種の官能基。
【0022】第6の発明の防曇膜は、第1〜第5のいず
れかの発明において、前記の光重合開始基を有する疎水
性重合体の層が、光重合開始基を有する疎水性重合体を
含有する組成物(a)を基材上に塗布することによって
形成したものである。
【0023】第7の発明の防曇膜は、第6の発明におい
て、前記組成物(a)が、さらにシランカップリング剤
を含有するものである。第8の発明の防曇膜は、第6又
は第7の発明において、前記組成物(a)が、さらにラ
ジカル重合性単量体及び無機微粒子の少なくとも1種を
含有するものである。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態につい
て詳細に説明する。防曇膜は、その構造に特徴を有し、
基材上に形成された疎水性重合体セグメント(I)と、
その上に形成された親水性重合体セグメント(II)が光
重合開始基断片を介して化学的に結合されて構成されて
いる。さらに具体的には、防曇膜は疎水性重合体セグメ
ント(I)の上に親水性重合体セグメント(II)が光重
合開始基断片を介して結合した2層系の共重合体により
形成されている。
【0025】なお、疎水性重合体と親水性重合体は、そ
れぞれ疎水性重合体セグメント(I)又は親水性重合体
セグメント(II)として互いに結合しない単独重合体な
どを含有していてもよい。すなわち、疎水性重合体と親
水性重合体の反応率が低い場合であっても所期の目的を
達成できればよい。ちなみに、疎水性重合体はその膜厚
が薄いほど反応率が高く、親水性重合体は単独重合体を
除去することにより疎水性重合体との結合の割合が高く
なる。
【0026】疎水性重合体セグメント(I)と親水性重
合体セグメント(II)とは、それぞれ光重合開始基を有
する重合体において、この光重合開始基が開裂した構造
を有する重合体である。ここで、光重合開始基とは、活
性エネルギー線の照射によりラジカルを発生させる基で
ある。
【0027】光重合開始基を重合体分子中に導入する方
法としては、下記の2つの方法がある (1) 光重合開始基を有する単量体を重合して直接導入
する方法。
【0028】(2) はじめに光重合開始基を含まない重
合体を合成し、得られた重合体分子中に光重合開始基を
導入する方法。これらの方法のうち、合成的な容易さか
ら (1)の方法が好ましい。
【0029】(1)の方法における、光重合開始基を有す
る単量体とは、光重合開始基と、重合性不飽和二重結合
を1分子中にそれぞれ1個以上有するものをいう。光重
合開始基を有する単量体を具体的に示すと、S−(メ
タ)アクリロイル−O−メチルキサンテート、S−(メ
タ)アクリロイル−O−エチルキサンテート、S−(メ
タ)アクリロイル−O−プロピルキサンテートなどのキ
サンテート類、2,2’−アゾビス[2−(アクリロイ
ルオキシメチル)プロピオニトリル]、2,2’−アゾ
ビス[2−(メタクリロイルオキシメチル)プロピオニ
トリル]などのアゾ化合物、及び下記の化学式化11で
示されるケトン化合物などが例示される。
【0030】
【化11】
【0031】[式中、R1
【0032】
【化12】
【0033】を表し、R2 は水素、R6 又はZであり、
3 は水素又はR13であり、R4 、R 5 は各々独立して
水素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12の
アルコキシ基、フェニル基、又はR4 、R5 とその間の
炭素により形成される炭素数5〜7のシクロアルキル基
であり、R6 はO−R15、S−R15、N(R162 、ピ
ペリジノ基、モルホリノ基、SO2 17、又はZであ
り、R7 はそれぞれハロゲン、炭素数1〜6のアルキル
基又は炭素数1〜6のアルコキシ基により置換されてい
てもよい、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ベ
ンゾイル基であり、R8 、R9 は水素、水酸基、炭素数
1〜6のアルキル基又はZであり、R10は水素又はZで
あり、R11は炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基
であり、R12はアルキル基、アシル基又はZを表し、R
13は水素、
【0034】
【化13】
【0035】又は、R3 と一緒になってオルト位につい
た−O−又は−S−であり、R14は水素、Z又はR13
あり、R15は水素、炭素数1〜6のアルキル基又はZで
あり、R16、R17は水素又は炭素数1〜6のアルキル基
であり、R18は炭素数4〜10の三級アルキル又はアラ
ルキル基を表す。Zは、
【0036】
【化14】
【0037】を表し、A、B、Dは各々独立して、単結
合、
【0038】
【化15】
【0039】であり、X、Yは無置換又は水酸基が置換
した炭素数1〜4のアルキレン基を表し、p、qは0又
は1〜10の整数であり、Wは、
【0040】
【化16】
【0041】を表し、R19は水素又はメチル基、R20
炭素数1〜20のアルキル基、R21は水素、炭素数1〜
6のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシ置換アル
キル基を表し、Wが二価の場合は同じ構造の基が2つ結
合していることを表す。かつ、R1 〜R3 の中にZ基が
1つ以上含まれる。] 前記化学式化11で示される光重合開始基を有する単量
体の例を具体的に示すと、1−(4−ビニルフェニル)
−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1
−(4−イソプロペニルフェニル)−2−ヒドロキシ−
2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−アリルオキ
シベンゾイル)−1−ヒドロキシシクロヘキサン、1−
{4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}
−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1
−[4−{2−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロ
キシプロピルオキシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒド
ロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−
(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2
−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−
[4−{2−(2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ
カルボニルオキシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒドロ
キシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−アクリロイ
ルオキシ−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オ
ン、1−{4−(2−アクリロイルオキシエチルチオ)
フェニル}−2−モルホリノ−2−メチルプロパン−1
−オン、メチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メ
チル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]マレ
ート、イソプロピル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2
−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]
フマレート、ブチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2
−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]
イタコネート、オクチル[2−{4−(2−ヒドロキシ
−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチ
ル]メサコネート、ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ
−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチ
ル]フマレート、ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ−
2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチ
ル]イタコネート、ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ
−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチ
ル]メサコネート、1−{4−(2−メタクリロイルオ
キシエトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ−2−
フェニルエタン−1−オン、2−{4−(2−アクリロ
イルオキシブトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ
−2−フェニルエタン−1−オン、1,2−ビス{4−
(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2,
2−ジメトキシエタン−1−オン、2,2−ビス(2−
メタクリロイルオキシエトキシ)−1,2−ジフェニル
エタン−1−オン、2−アリル−2−イソプロピルオキ
シ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−アクリ
ロイルオキシメチル−2−メトキシ−1,2−ジフェニ
ルエタン−1−オン、2−アクリロイルオキシ−1,2
−ジフェニルエタン−1−オン、1,2−ジフェニル−
1,2−エタンジオン−2−O−アクリロイルオキシ
ム、4−ビニルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキ
サイド、4−ビニル−4’−(t−ブチルペルオキシカ
ルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ビス(2−メタ
クリロイルオキシエトキシカルボニル)−4,4’−ビ
ス(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノ
ン、4,4’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒド
ロキシプロピルオキシカルボニル)−3,3’−ビス
(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノ
ン、3,3’−ビス(2−メタクリロイルオキシエトキ
シカルボニル)−4,4’−ビス(t−ブチルペルオキ
シカルボニル)ベンゾフェノン、4−(メタ)アクリロ
イルオキシベンゾフェノン、4−{2−(アクリロイル
オキシ)エトキシ}ベンゾフェノン、4−スチリルメト
キシベンゾフェノン、4−(メタ)アクリロイルオキシ
チオキサントンなどが挙げられる。
【0042】疎水性重合体セグメント(I)には、光重
合開始基を有する単量体の他に、光重合開始基を有しな
い単量体の1種又は2種以上を併用して形成されたもの
であってもよい。そのような光重合開始基を有しない単
量体は特に限定されず、具体的には、メチル(メタ)ア
クリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキ
ル(メタ)アクリレート類、2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)ア
クリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート類、
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メ
タ)アクリルアミド類、N,N−ジアルキルアミノアル
キル(メタ)アクリレート類、フマル酸エステル類、グ
リシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸エステル
類、イタコン酸エステル類、(メタ)アクリル酸、無水
マレイン酸、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリ
ドン、N−ビニルピルジン、フッ素含有単量体、ケイ素
含有単量体、リン含有単量体などが挙げられる。
【0043】疎水性重合体中のこの光重合開始基を有し
ない単量体の配合量は、光照射による親水性重合体との
反応効率を維持するため、95重量%以下であることが
好ましい。
【0044】親水性重合体における光重合開始基を有す
る単量体の配合量は、5〜50重量%が好ましい。5重
量%未満の場合、光照射による疎水性重合体との反応効
率が低下するので好ましくない。また、50重量%を越
える場合、親水性重合体の親水性が低下するので好まし
くない。
【0045】前記光重合開始基断片とは、前述した疎水
性重合体又は親水性重合体に結合している光重合開始基
がラジカル開裂して生じ、疎水性重合体セグメント
(I)又は親水性重合体セグメント(II)に結合してい
る基をいう。この光重合開始基断片としては、次の式
(1)で表される基を含むものが好ましい。
【0046】
【化17】
【0047】次に、前記親水性重合体セグメント(II)
は、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸
基、これらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、アル
キレンオキシド基、アミノ基、アミド基、シアノ基、酸
無水物基及び四級アンモニウム塩基からなる群より選ば
れる少なくとも1種の官能基を有する親水性単量体より
選ばれる少なくとも1種の単量体が50〜95重量%含
まれる単量体より形成される重合体セグメントが好まし
い。防曇膜に所要の親水性を発揮させるためである。
【0048】この親水性単量体としては、具体的には下
記の(1)〜(15)の単量体が挙げられる。そして、
それらの単量体の中から適宜その1種を単独で又は2種
以上を混合して使用することができる。 (1) (メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタ
コン酸、メサコン酸、シトラコン酸、β−(メタ)アク
リロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネートなど
の不飽和カルボン酸。 (2) マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン
酸無水物、4−メタクリロキシエチルトリメリット酸無
水物などの不飽和カルボン酸無水物類。 (3) ヒドロキシフェノキシエチル(メタ)アクリレー
ト、エチレンオキサイドの付加モル数が2〜90のヒド
ロキシフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アク
リレート、プロピレンオキサイドの付加モル数が2〜9
0のヒドロキフェノキシポリプロピレングリコール(メ
タ)アクリレート、ビニルフェノール、ヒドロキシフェ
ニルマレイミドなどのフェノール基含有単量体類。 (4) スルホキシエチル(メタ)アクリレート、スチレン
スルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、
(メタ)アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有単量
体類。 (5) モノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッ
ドホスフェートなどのリン酸基含有単量体類。 (6) N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N
−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル
(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、
N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミ
ド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)
アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類。 (7) N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレー
ト、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレー
トなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート類。 (8) 2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジ
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロ
キシアルキル(メタ)アクリレート類。 (9) エチレンオキサイドの付加モル数が2〜98のポリ
エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレ
ンオキサイドの付加モル数が2〜98のメトキシポリエ
チレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレン
オキサイド付加モル数が2〜98のフェノキシポリエチ
レングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオ
キサイド付加モル数が1〜4のノニルフェノールモノエ
トキシレート(メタ)アクリレート、メトキシエチルア
クリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)ア
クリレートなどのポリオキシエチレンのモノ(メタ)ア
クリレート類。 (10)(メタ)アクリル酸のナトリウム塩、スチレンスル
ホン酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウムエトキシ(メ
タ)アクリレート、アクリルアミド−t−ブチルスルホ
ン酸のナトリウム塩などの酸基含有単量体のアルカリ金
属塩類。 (11)(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルトリメチルア
ンモニウムクロライド、(メタ)アクリル酸ヒドロキシ
プロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの四級
アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート類。 (12)アリルグリコール、エチレンオキサイド付加モル数
が3〜32のポリエチレングリコールモノ(メタ)アリ
ルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノアリ
ルエーテルなどの(メタ)アリル化合物類。 (13)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム
などの環状複素環含有化合物類。 (14)アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化
ビニリデンなどのシアン化ビニル類。 (15)下記に示す化学式(3)〜(9)で例示される反応
性乳化剤。
【0049】
【化18】
【0050】但し、Φは芳香環、 (OA)m、 (OA)nは
ポリオキシアルキレン基(m,nはそれぞれ1〜20で
ある)、R、R' は炭素数1〜20のアルキル基であ
る。
【0051】
【化19】
【0052】但し、Rは炭素数1〜20のアルキル基で
ある。
【0053】
【化20】
【0054】
【化21】
【0055】
【化22】
【0056】但し、Φは芳香環である。
【0057】
【化23】
【0058】但し、Φは芳香環である。
【0059】
【化24】
【0060】但し、Φは芳香環である。これらの中で
は、防曇膜の性能及びその持続性が特に良好である点
で、アミド基を有する単量体が好ましい。そして、防曇
膜としては、アミド基を有する単量体を、光重合開始基
を有する単量体と共重合した親水性重合体からなる重合
体セグメントが、基材側に位置する疎水性重合体セグメ
ントと結合した重合体が好ましい。ここでアミド基を有
する単量体とは、具体的には、(メタ)アクリルアミ
ド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メ
タ)アクリルモルホリン、(メタ)アクリルアミド−t
−ブチルスルホン酸及びその塩などが挙げられる。
【0061】次に、防曇膜の製造方法を図1に基づいて
説明する。図1は、このような防曇膜の製造方法を概念
的に示したものである。図1において、実線、点線はそ
れぞれ疎水性重合体、親水性重合体の主鎖、−CDは光
重合開始基、−C・は光重合開始基が開裂した光重合開
始基断片ラジカル、−C−は光重合開始基断片を表す。
D・は開裂して重合体中から離れたラジカルを示す。ま
た、HDはD・が重合体分子中から水素原子を引き抜い
た生成物を示す。
【0062】防曇膜の製造方法は、まず基材上に形成さ
れた光重合開始基(CD)を有する疎水性重合体からな
る層上に、光重合開始基(CD)を有する親水性重合体
を接触させる。次いで、その上に活性エネルギー線を照
射することにより、重合体ラジカルが発生する。そし
て、疎水性重合体ラジカルと親水性重合体ラジカル同士
を基材表面上でラジカルカップリング反応させることに
より、防曇膜が得られる。
【0063】すなわち、疎水性重合体及び親水性重合体
に結合した光重合開始基(CD)は、活性エネルギー線
照射によりラジカルを発生するが、このとき疎水性重合
体中の光重合開始基から解離したラジカル(D・)は、
親水性重合体分子中から水素原子を引き抜き、親水性重
合体ラジカル(−−−・)を生成する。そして、その親
水性重合体ラジカルと、光重合開始基断片を有する疎水
性重合体ラジカル(C・)がカップリング反応すること
により、上層に親水性重合体セグメント(II)が形成さ
れる。
【0064】一方、親水性重合体中の光重合開始基から
解離したラジカル(D・)は、疎水性重合体分子中から
水素を引き抜き、疎水性重合体ラジカル(──・)を生
成する。そして、その疎水性重合体ラジカルと光重合開
始基断片を有する親水性重合体ラジカルがカップリング
反応することにより、下層に疎水性重合体セグメント
(I)の層が形成される。従って、得られる防曇膜は、
光重合開始基断片を介して疎水性重合体セグメント
(I)の層上に、親水性重合体セグメント(II)が結合
した層からなる2層構造をもつことになる。
【0065】次に、防曇膜の具体的な製造方法及びそれ
に使用される各成分について説明する。まず、光重合開
始基を有する疎水性重合体からなる層について説明す
る。この重合体からなる層は、下記の各方法で得ること
ができる。
【0066】(i) 光重合開始基を有する単量体の単独重
合体若しくは共重合体の単独又は双方を含有する組成物
〔以下、組成物(a)〕を基材に塗布して層を形成する
方法。
【0067】(ii) 光重合開始基を有する単量体を含有
する組成物を基材上に塗布後、熱又は光により重合する
ことによって形成する方法。 (iii) 光重合開始基を有さず、かつ官能基を有する重
合体の表面に、化学反応によって光重合開始基を導入し
て形成する方法。具体的には、ヨーロピアン・ポリマー
・ジャーナル(Eur.Polym.J.),29巻,
63頁,1993年、及びポリマー・マテリアル・サイ
エンス・アンド・エンジニアリング(Polym.Ma
ter.Sci.Eng.),60巻,1頁,1989
年などに記載の方法である。すなわち、例えば水酸基を
有する基材に、アルコキシシリル基を有する光重合開始
剤を反応させる方法である。
【0068】これらの方法の中では、(i) の方法が簡便
であるため好ましい。塗布する際には、必要に応じて組
成物(a)を溶剤で希釈して用いてもよい。光重合開始
基を有する単量体は、前述したものであり、それらの中
では、光重合開始効率が良いこと及び製造が容易な点か
ら、下記式(2)で示される光重合開始基を有する単量
体が好ましい。
【0069】
【化25】
【0070】[式中、Aは
【0071】
【化26】
【0072】を表し、R1 、R2 は炭素数1〜4のアル
キル基又はR1 、R2 とその間の炭素により形成される
炭素数5〜7のシクロアルキル基、R3 は水酸基又はア
ミノ基、R4 、R5 は炭素数1〜4のアルキル基を表
す。] 光重合開始基を有する単量体として、具体的には、1−
{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フ
ェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−
オン、{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキ
シ)フェニル}(1−ヒドロキシシクロヘキシル)ケト
ン、1−{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエト
キシ)フェニル}−2−モルホリノ−2−メチルプロパ
ン−1−オン、1−{4−(2−(メタ)アクリロイル
オキシエトキシ)フェニル}−2−ジメチルアミノ−2
−メチルプロパン−1−オン、1−[4−{2−(2−
((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシカルボニルオ
キシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メ
チルプロパン−1−オン、1−{4−(2−(メタ)ア
クリロイルエトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ
−2−フェニルエタン−1−オンなどが好ましい。
【0073】この光重合開始基を有する疎水性重合体
は、通常のラジカル重合開始剤を用いて重合することに
よって得られる。この場合の重合体は、光重合開始基を
有する単量体の1種又は2種以上を単独で重合して、又
は前述した光重合開始基を有しない他の単量体の1種又
は2種以上と共重合して得られる。
【0074】基材がガラスの場合は、加水分解性シリル
基を有する単量体を共重合することにより、密着性を向
上させることができる。加水分解性シリル基を有する単
量体を具体的に示すと、ビニルトリクロロシラン、ビニ
ルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビ
ニルトリアセトキシシラン、3−メタクリロイルオキシ
トリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシトリエ
トキシシラン、3−メタクリロイルオキシメチルジメト
キシシラン、3−メタクリロイルオキシメチルジエトキ
シシランなどが挙げられる。
【0075】光重合開始基を有する疎水性重合体中の光
重合開始基を有する単量体成分の量は5〜100重量%
が好ましく、5重量%未満では光照射によるカップリン
グ反応の効率が悪くなる。
【0076】組成物(a)中には、光重合開始基を有す
る疎水性重合体の他に、未反応の光重合開始基を有する
単量体、及び通常の塗膜を形成する際に用いられる添加
剤を含有していてもよい。そのような添加剤としては、
例えば、他の単官能又は多官能単量体及びそれらの重合
体、光重合開始剤、硬化剤、紫外線吸収剤、レベリング
剤、界面活性剤や、コロイダルシリカなどの無機フィラ
ー等が挙げられる。また、基材との密着性を向上させる
ために、通常用いられるシランカップリング剤、チタネ
ートカップリング剤等を添加してもよい。
【0077】組成物(a)に、ラジカル重合性単量体や
無機微粒子を添加すると、防曇膜の硬度が向上するので
好ましい。ラジカル重合性単量体は一個以上の重合性二
重結合を持つ化合物であって、具体的な例としては、メ
チル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレー
トなどのアルキル(メタ)アクリレート類、2−ヒドロ
キシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロ
ピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモ
ノ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アク
リレート類、アクリルアミド、N,N−ジメチル(メ
タ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、
N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレー
ト類、フマル酸エステル類、グリシジル(メタ)アクリ
レート、マレイン酸エステル類、イタコン酸エステル
類、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、スチレン、
酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジ
ン、フッ素含有単量体、ケイ素含有単量体、リン含有単
量体などの単官能単量体や、エチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)
アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレー
ト、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペ
ンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペ
ンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの
多価エステル類、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレー
ト、ジアリルマレート、トリアリルイソシアヌレート、
及び、トリアリルホスフェートなどの多価ビニル化合物
等の多官能単量体、及び、フマレート基、マレート基、
アリル基、(メタ)アクリレート基を持つ硬化性樹脂、
不飽和ポリエステル、不飽和アクリル樹脂、及び、イソ
シアネート改質アクリルオリゴマー、ポリエステルアク
リルオリゴマー、及び、ポリエポキシアクリルオリゴマ
ー等の重合性基含有オリゴマー及び重合性基含有重合体
などが挙げられる。これらの中では、二個以上の重合性
二重結合を持つ多官能単量体が特に好ましい。
【0078】無機微粒子は、平均粒子径が5μm以下、
好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.5μm以下
の粒状物である。無機微粒子としては例えば、シリカ微
粉末、アルミナ微粉末、フルオロカーボン微粉末、カー
ボンブラック、及び、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属
酸化物微粒子などが挙げられる。これらの中では、粒子
径0.1μm以下のシリカ微粉末が好ましく、更にメチ
ルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどの
通常シランカップリング剤として用いられているシリル
化合物、好ましくは3−メタクリロイルオキシトリメト
キシシランなどの重合性不飽和基を有するシリル化合物
により表面が変性されているものが好ましい。
【0079】また、ガラスを基材として用いる場合、シ
ランカップリング剤を添加するのが、ガラス基材に対す
る防曇膜の密着性を向上させることができるため好まし
い。シランカップリング剤を具体的に示すと、メチルト
リメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチル
トリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチ
ルクロロシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキ
シシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エ
チルトリメトキシシラン、3−メトキシプロピルトリメ
トキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラ
ン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘキ
サメチルジシラザン、3−アミノプロピルトリメトキシ
シラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキ
シシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキ
シシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセ
トキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)
シラン、3−メタクリロイルオキシトリメトキシシラ
ン、3−メタクリロイルオキシトリエトキシシラン、3
−メタクリロイルオキシメチルジメトキシシラン、3−
メタクリロイルオキシメチルジエトキシシランなどが挙
げられる。これらの中では、得られる被膜の強度や密着
性の観点から、3−メタクリロイルオキシトリメトキシ
シランなどの重合性不飽和基を有するものが好ましい。
また、シランカップリング剤の反応を促進させてガラス
との密着性を向上させるために、組成物(a)中に少量
の水や酢酸、塩酸等の酸を添加してもよい。
【0080】次に、親水性重合体セグメント(II)の層
について説明する。この親水性重合体セグメント(II)
の層を形成するための光重合開始基を有する親水性重合
体は、光重合開始基を有する親水性重合体単独又は他の
溶剤や添加剤を含有するものである。この光重合開始基
を有する親水性重合体を含有する組成物中の光重合開始
基を有する親水性重合体の濃度は、100%でもよい
が、光重合開始基を有する親水性重合体が溶解し、かつ
光重合開始基を有する疎水性重合体の層が溶解しないよ
うな溶媒で希釈してもよい。そのような溶媒としては、
特に限定されないが、水、メタノール、アセトン、メチ
ルエチルケトン等の極性溶媒が好ましい。また、光重合
開始基を有する親水性重合体中には、他の単官能及び多
官能単量体や、界面活性剤、増粘剤等の添加剤を含有し
ていてもよい。
【0081】光重合開始基を有する親水性重合体を光重
合開始基を有する疎水性重合体に接触させる際に、光重
合開始基を有する疎水性重合体の層が、光重合開始基を
有する親水性重合体に溶解してしまうと、弊害が生じる
おそれがある。すなわち、得られる防曇膜の外観が白化
等により悪くなったり、表面層が光重合開始基を有する
親水性重合体の均一な層にならないため、防曇性能が悪
くなったりするおそれがある。このため、光重合開始基
を有する親水性重合体溶液を形成する溶剤としては、光
重合開始基を有する疎水性重合体を溶解しないものが好
ましい。
【0082】光重合開始基を有する親水性重合体を光重
合開始基を有する疎水性重合体に接触させる方法として
は、光重合開始基を有する疎水性重合体からなる層の上
に光重合開始基を有する親水性重合体を溶剤に溶解又は
分散させて塗布することができる。また、光重合開始基
を有する疎水性重合体の層を表面に有する基材を、光重
合開始基を有する親水性重合体の溶剤溶液中に浸漬して
もよい。さらに、酸素によるラジカルカップリング反応
の障害を防ぐために、光重合開始基を有する親水性重合
体の上を、活性エネルギー線を透過する材質、例えばガ
ラス、石英、透明プラスチック製の板、フィルム等で覆
ってもよい。また、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不
活性ガスの雰囲気下で行ってもよい。
【0083】この光重合開始基を有する親水性重合体
は、前述のように、カルボキシル基、水酸基、スルホン
酸基、リン酸基、これらのアルカリ金属塩又はアンモニ
ウム塩、アルキレンオキシド基、アミノ基、アミド基、
シアノ基、酸無水物基及び四級アンモニウム塩基のいず
れかの官能基を少なくとも1種含有する単量体を重合す
ることにより得られる。
【0084】具体的には、前述した親水性単量体からな
る重合体が挙げられ、これらの重合体の中から適宜その
1種を単独で又は2種以上が混合して使用される。これ
らの中では、防曇膜の性能及びその持続性が特に良好で
ある点で、アミド基を有する重合体が好ましい。アミド
基を有する重合体としては、具体的には、ポリ(メタ)
アクリルアミド、ポリN,N−ジメチル(メタ)アクリ
ルアミド、ポリ(メタ)アクリルモルホリン、ポリ(メ
タ)アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩
などが挙げられる。もちろん、これらの親水性重合体
は、前述の光重合開始基を有する単量体を5〜50重量
%共重合したものである。
【0085】防曇膜の製造方法において、活性エネルギ
ー線を照射後に未反応の親水性重合体がある場合は、必
要に応じて水などによって洗浄することが好ましい。活
性エネルギー線としては、用いる光重合開始基が吸収す
る波長であれば特に限定はされないが、具体的には好ま
しくは200〜800nm、さらに好ましくは300〜
600nmの紫外線及び可視光線が望ましい。光源とし
ては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、ハロゲンランプ、キセ
ノンランプ、エキシマレーザ、色素レーザ、YAGレー
ザ、太陽光等が挙げられる。
【0086】基材としては、ガラスや合成樹脂成形材
料、フィルムの様な透明又は不透明な材料が用いられ
る。そして、表面に防曇膜が形成された基材は、レン
ズ、鏡、プリズムなどの光学部品、又は車輌、船舶、家
屋などの窓ガラス、スキーゴーグル、水中メガネ、ヘル
メットシールド、計器カバー、農園芸用フィルムなどの
用途に好適に用いられる。
【0087】以上のように、この実施形態によれば、次
のような効果が発揮される。 ・ 実施形態の防曇膜によれば、防曇膜の表面には親水
性重合体セグメント(II)が配向されていることから、
基材表面の防曇膜は優れた防曇性を発揮することができ
る。
【0088】・ しかも、実施形態の防曇膜によれば、
親水性重合体セグメント(II)は光重合開始基断片を介
して疎水性重合体セグメント(I)に結合されていると
ともに、その疎水性重合体セグメント(I)は基材に密
着していることから、防曇性能を長期間にわたって維持
することができる。
【0089】・ また、実施形態の防曇膜によれば、親
水性重合体セグメント(II)により形成される膜は均一
性が良いため、薄い膜で性能を発現でき、透明性に優れ
ている。
【0090】・ さらに、実施形態の防曇膜によれば、
防曇膜は膨潤しにくく、傷付いたり、剥離したりするお
それがなく、実用的な塗膜強度を発揮することができ
る。 ・ 実施形態の防曇膜によれば、基材側には疎水性重合
体セグメント(I)が配向しており、疎水性重合体セグ
メント(I)と基材との結合力がよいため、防曇性を付
与しようとする基材との密着性が良好である。
【0091】・ 実施形態の防曇膜によれば、防曇膜の
反応を開始させる機構は、光重合開始基が基材から水素
を引き抜いて親水性単量体の重合を基材表面で開始させ
るという機構ではない。すなわち、重合体中の光重合開
始基から生じたラジカルが、すでに形成されている重合
体ラジカルとラジカルカップリング反応することによ
り、基材と密着性のよい疎水性重合体セグメント(I)
の上に親水性重合体セグメント(II)が結合される。
【0092】このため、防曇膜は、疎水性重合体セグメ
ント(I)に対して親水性重合体セグメント(II)が確
実に結合し、防曇性能が極めて優れており、かつその性
能を長期間維持することができる。しかも、使用可能な
基材に制限を受けるおそれを防止することができる。
【0093】・ 実施形態の防曇膜によれば、基材表面
に光重合開始基を有する疎水性重合体の層を形成し、そ
の上に光重合開始基を有する親水性重合体を塗布した
後、活性エネルギー線を照射することにより、基材表面
に形成される防曇膜を容易に製造することができる。
【0094】・ 実施形態の防曇膜によれば、光重合開
始基断片が前記式(1)に示す基を含むことにより、疎
水性重合体セグメント(I)と親水性重合体セグメント
(II)との良好な結合力を確実に発揮させることができ
る。
【0095】・ 実施形態の防曇膜によれば、親水性重
合体セグメント(II)が第3の発明の所定の親水性基を
有することにより、防曇膜の性能及びその持続性を効果
的に発揮させることができる。
【0096】・ 実施形態の防曇膜によれば、疎水性重
合体が前記式(2)に示される光重合開始基を有する単
量体より形成されることにより、疎水性重合体の重合開
始効率を向上させることができるとともに、疎水性重合
体を容易に製造することができる。
【0097】・ 実施形態の防曇膜によれば、親水性重
合体が前記式(2)の光重合開始基を有する単量体5〜
50重量%と、前記所定の親水性基を有する単量体50
〜95重量%とより形成されることにより、親水性重合
体セグメント(II)の親水性と、ラジカルカップリング
反応の反応効率を有効に発揮させることができる。
【0098】・ 実施形態の防曇膜によれば、疎水性重
合体セグメント(I)及び親水性重合体セグメント(I
I)の形成を、塗布によって行うことにより、両セグメ
ント(I)、(II)の形成を簡便に行うことができる。
【0099】・ 実施形態の防曇膜によれば、疎水性重
合体を含有する組成物(a)が、シランカップリング剤
を含有することにより、基材としてガラスを使用する場
合、基材に対する疎水性重合体の層の密着性を向上させ
ることができる。
【0100】・ 実施形態の防曇膜によれば、ラジカル
重合性単量体及び無機微粒子の少なくとも1種を含有す
ることにより、防曇膜の硬度を向上させたり、基材に対
する防曇膜の密着性向上させたりすることができる。
【0101】
【実施例】次に、実施例、比較例及び参考例により、こ
の発明をさらに具体的に説明するが、この発明はこれら
により限定されるものではない。なお、本文及び表中の
%は重量%を表す。また、分子量はゲルパーミエーショ
ンクロマトグラフ(GPC)により、テトラヒドロフラ
ンを展開溶剤として測定した値である。
【0102】本文及び表中の略号は以下の通りである。 PI1:1−[4−{2−(2−(メタクリロイルオキ
シ)エトキシカルボニルオキシ)エトキシ}フェニル]
−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン PI2:メチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メ
チル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]フマ
レート PI3:ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチ
ル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]イタコ
ネート PI4:1−{4−(2−メタクリロイルエトキシ)フ
ェニル}−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタン−
1−オン PI5:1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオン−
2−O−アクリロイルオキシム PI6:3,3’−ビス(メタクリロイルオキシエトキ
シカルボニル)−4,4’−ビス(t−ブチルペルオキ
シカルボニル)ベンゾフェノン MMA:メチルメタクリレート BMA:ブチルメタクリレート LMA:ラウリルメタクリレート ST:スチレン DBF:ジブチルフマレート GMA:グリシジルメタクリレート NMAAm:N−メチロールアクリルアミド MAA:メタクリル酸 HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート KBM503:3−トリメトキシシリルプロピルメタク
リレート(信越化学工業社製「KBM−503」) PPZ:ホスファゼン系6官能メタクリレート(出光石
油化学社製「出光PPZ」) 3002A:2官能エポキシアクリレート(共栄社化学
社製「エポライト3002A」) NVP:N−ビニル−2−ピロリドン DMAEMA:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリ
レート DMAAm:N,N−ジメチルアクリルアミド AAm:アクリルアミド ACMO:アクリロイルモルホリン PE350:ポリエチレングリコールモノメタクリレー
ト(日本油脂社製「ブレンマーPE−350」) ATBS:アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸(東
亜合成社製[ATBS]) QA:メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアン
モニウムクロリド(日本油脂社製「ブレンマーQA」) MS2N:スルホエチルメタクリレートNa塩(日本乳
化剤社社製「AntoxMS−2N」) DQ100:メタクリロイルオキシエチルトリメチルア
ンモニウムクロライド(共栄社化学製「ライトエステル
DQ−100」) PDE400:ポリエチレングリコールジメタクリレー
ト(日本油脂社製「ブレンマーPDE400」) MEK:メチルエチルケトン KPS:過硫酸カリウム PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル THF:テトラヒドロフラン PVA:ケン化ポリ酢酸ビニル(日本合成化学工業社製
「ゴーセノールKH−17」) OP80:ノニオン系界面活性剤(日本油脂社製「ノニ
オンOP−80」) TTA:トリエチレンテトラミン(味の素社製「アミキ
ュア」) ACS:コロイダルシリカ(日産化学社製「スノーテッ
クスO」)を3−トリメトキシシリルプロピルメタクリ
レート(信越化学工業社製「KBM−503」)で処理
したアクリル変性コロイダルシリカの20%MEK溶液 LPO:ラウロイルペルオキシド(日本油脂社製「パー
ロイルL」) (参考例1、光重合開始基含有疎水性重合体の製造)撹
拌機、温度計、パージガス導入口、水冷コンデンサーを
備えた1リットルの反応容器に、MEK50gを仕込
み、窒素ガス通気下、80℃に加熱した。その後、撹拌
しながら、メチルメタクリレートを90g、PI1を1
0g、MEKを50g及びLPOを5gの混合物を2時
間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま4時間撹拌を
続け、重合を完結した。得られた溶液を石油エーテル中
に注入して重合体を析出させた後、乾燥して光重合開始
基含有の疎水性重合体a(表中、重合体aと略記)を得
た。
【0103】その疎水性重合体aの重量平均分子量(M
w)は21000であった。また、紫外線(UV)吸収
スペクトルから、仕込み量と同量の光重合開始基が重合
体中に導入されていることを確認した。 (参考例2〜12)単量体を表1及び表2の種類及び量
に変える以外は参考例1と同様に重合を行い、光重合開
始基含有疎水性重合体b〜l(表中、重合体b〜lと略
記)を得た。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】(参考例13、光重合開始基含有親水性重
合体mの製造)撹拌機、温度計、パージガス導入口、水
冷コンデンサーを備えた1リットルの反応容器に、イオ
ン交換水100gを仕込み、窒素ガス通気下、70℃に
加熱した。その後、撹拌しながら、ATBSを80g、
PI1を20g、イオン交換水/エチルアルコール(2
/1wt)を100g及びKPSを5gの混合物を3時
間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま5時間撹拌を
続け、重合を完結した。得られた溶液をメチルアルコー
ル中に注入してポリマーを析出させた後、乾燥して光重
合開始基含有重合体m(表中、重合体mと略記)を得
た。
【0107】その重合体mの重量平均分子量(Mw)は
16000であった。また紫外線(UV)吸収スペクト
ルから、仕込み量と同量の光重合開始基が重合体中に導
入されていることを確認した。 (参考例14〜23)単量体を表3の種類及び量に変え
る以外は参考例13と同様に重合を行い、光重合開始基
含有親水性重合体n〜v(表中、重合体n〜vと略記)
を得た。
【0108】
【表3】
【0109】(実施例1、防曇膜の製造)塗布液(イ)
として参考例1で得た重合体aの20%MEK溶液を用
い、10cm×10cm、厚さ2mmのアクリル板に、
乾燥膜厚が5μmになるようにバーコーターを用いて塗
布し、60℃で10分間乾燥した。得られた塗膜上に親
水性重合体溶液(ロ)として参考例13で得た重合体m
の20%水溶液を塗布した後、1kW高圧水銀灯により
1分間光照射した。このときの光照射量は5J/cm2
であった。光照射後、水洗、乾燥することにより、無色
透明な防曇膜を得た。
【0110】次に、得られた防曇膜について下記に示す
評価方法により物性を評価した。 (1) グラフト膜厚 グラフト重合前後の厚さをデジタル膜厚計(Sheen
Instruments社製)で測定し、増加量をグ
ラフト膜厚(μm)として表した。 (2) 塗膜硬度 JIS K−5400に準じた鉛筆引っかき試験を行
い、塗膜硬度を鉛筆の硬さで表した。 (3) 密着性 JIS K−5400の碁盤目テープ法に準じて行っ
た。すなわち、塗膜をカッターナイフで縦横方向に切断
して基材に達するような100個のクロスカット(切断
片)を作った。そして、その上にセロハン粘着テープ
[ニチバン(株)製]を貼り付け、接着面と垂直方向に
剥離し、剥がれずに残ったクロスカットの数を次のよう
な記号で表した。
【0111】○:100/100、△:80/100以
上、×:80/100未満 (4) 防曇性 (a)呼気試験 20℃、相対湿度50%の恒温室内で塗膜に息を吹きか
け、曇りの状態を目視によって次の基準にて判定した。
【0112】○:全く曇らない、△:やや曇りが見られ
る、×:全面が曇る (b)蒸気試験 60℃の恒温水槽上の水面から1cmの位置に試験板を
固定し、10分後の曇りの状態を目視によって次の基準
にて判定した。
【0113】◎:水滴が全くない、○:直径5mm以下
の水滴がない、△:直径5mm以下の水滴が部分的にあ
る、×:全面に5mm以下の水滴がある (5) 持続性 試験板を水中に1カ月間浸漬した後、乾燥し、上記の呼
気試験、蒸気試験及び下記の塗膜外観試験を行った。
【0114】塗膜外観試験(ヘイズ値)直読式ヘイズメ
ータ(東洋精機製作所製)にてヘイズ値を測定した。な
お、この値は、一般的には1.0以下が良く、1.0を
越えると外観不良と判定される。 (実施例2〜10)塗布液(イ)として表4に記載した
ものを用いる以外は、実施例1に記載した方法で防曇膜
を作り、実施例1と同様に物性を評価した。その評価結
果を表6に示した。なお、基板は実施例5,8,10で
は、ガラス板を使用した。 (実施例11〜20)親水性重合体溶液(ロ)として表
5に記載したものを用いる以外は、実施例1に記載した
方法で防曇膜を作り、実施例1と同様に物性を評価し
た。その評価結果を表7に示した。
【0115】
【表4】
【0116】
【表5】
【0117】
【表6】
【0118】
【表7】
【0119】(実施例21)重合体kを20g、TTA
を5g、PGMを30gの混合物を、ポリカーボネート
板に乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、120℃で
1時間加熱した。次いで、重合体mの20%水溶液を塗
布後、実施例1と同様に光照射、水洗、乾燥し、実施例
1と同様に物性を評価した。その評価結果を表8に示し
た。 (実施例22)重合体lを20g、MEKを20gの混
合物を、ガラス板に乾燥膜厚が2μmになるように塗布
し、80℃で30分加熱した。次いで、重合体nの20
%水溶液を塗布後、実施例1と同様に光照射、水洗、乾
燥し、実施例1と同様に物性を評価した。その評価結果
を表8に示した。 (実施例23)重合体aを20g、MEKを20gの混
合物を、PETフィルム(帝人社製「テトロンHP
7」、膜厚100μm)に乾燥膜厚が2μmになるよう
に塗布し、80℃で30分加熱した。次いで、重合体o
の20%水溶液を塗布後、実施例1と同様に光照射、水
洗、乾燥し、実施例1と同様に物性を評価した。その評
価結果を表8に示した。 (実施例24)PI6を10g、PPZを10g、30
02Aを5g、MEKを25gの混合物を、アクリル板
に乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、60℃で10
分乾燥後、1kW高圧水銀灯により5秒間光照射した。
次いで、重合体pの20%水溶液を塗布後、実施例1と
同様に光照射、水洗、乾燥し、実施例1と同様に物性を
評価した。その評価結果を表8に示した。 (実施例25)重合体bを20g、MEKを20gの混
合物を、アクリル板に乾燥膜厚が5μmになるように塗
布し、60℃で10分乾燥した。これを、重合体qの2
0%水溶液中に入れ、塗布面側から1kW高圧水銀灯に
より1分間光照射した。光照射後、水洗、乾燥し、実施
例1と同様に物性を評価した。その評価結果を表8に示
した。 (実施例26)重合体aを20g、MEKを20gの混
合物を、アクリル板に乾燥膜厚が5μmになるように塗
布し、60℃で10分乾燥した。次いで、重合体rの2
0%水溶液を塗布し、その上にガラス板を直接置いた
後、実施例1と同様に光照射、水洗、乾燥し、実施例1
と同様に物性を評価した。評価結果を表8に示した。
【0120】
【表8】
【0121】(比較例1)アクリル板に界面活性剤OP
80を塗布し、実施例1と同様に物性を評価した。その
評価結果を表9に示した。 (比較例2)MMA/DMAAm(重量比80/20)
共重合体を20g、PDE400を5g、AAmを5
g、光重合開始剤(チバガイギー社製「Darocur
e1173」)を1g、MEKを30gの混合物をアク
リル板に乾燥膜厚が5μmになるように塗布、乾燥後、
1kW高圧水銀灯で1分間光照射した。これを、実施例
1と同様に物性を評価した。その結果を表9に示した。 (比較例3)MMA/HEMA(重量比65/35)共
重合体を300g、HEMAを100g、ジエチレング
リコールジメタクリレートを10g、界面活性剤(花王
社製「エマルゲン106」)を5g、メチルセルソルブ
を300gの混合物をアクリル板に塗布し、乾燥後、電
子線を照射した。これを、実施例1と同様に物性を評価
した。その結果を表9に示した。 (比較例4)アセチルセルロースフィルムを水酸化ナト
リウムでケン化した後、アクリル板に貼った。これにつ
いて、実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表
9に示した。
【0122】
【表9】
【0123】表6〜9に示したように、各実施例及び比
較例の結果から次のことがわかった。すなわち、比較例
1の界面活性剤を塗布したもの及び比較例3の界面活性
剤を含有する硬化物は、初期の性能は良いが、耐水性が
低く、容易に性能が低下してしまう。比較例2の親水性
成分を含有する共重合体を塗布、硬化したものは初期性
能が不十分であり、さらに長期間にわたって水に接触す
ると白化してしまう。比較例4のセルロースフィルムは
耐水性はあるが、防曇性能が不十分である。
【0124】これに対して、実施例1〜26の防曇膜
は、初期の防曇性能に優れ、かつその性能は水中に浸漬
した後も持続しており、各比較例の防曇膜に比べて防曇
性能、持続性共に優れている。 (実施例27)塗布液(イ)として重合体aの20%M
EK溶液、親水性重合体溶液(ロ)として重合体mの2
0%水溶液を用い、実施例1に記載した方法で防曇膜を
得た。得られた防曇膜の表面から約10μmを削り取っ
た重合物0.1gをTHFに溶解後、水とTHFを用い
て、分別沈澱法〔例えば、「高分子溶液」(高分子学会
高分子実験学編集委員会編、共立出版)〕に記載された
方法により分離したところ、水/THF=2〜5(重量
比)で沈澱した成分0.1gが得られた。
【0125】核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)及び
赤外線吸収スペクトル分析(IR)により、重合体aの
MMA成分と重合体mのATBS成分とが確認され、重
合体aと重合体mが結合した重合体であることを確認し
た。この重合体は、NMRの7.0〜8.1ppmにフ
ェニル基の吸収、及びIRの1660cm-1に芳香族カ
ルボニル基の吸収があり、また、3400cm-1付近の
水酸基の吸収が消失していた。
【0126】さらに、UV吸収スペクトルを測定したと
ころ、光重合開始基の340nm以上の吸収が減少し、
325nmにアルキルフェノンの極大吸収が現れた。こ
れらのことから、得られた重合体は、光重合開始基が開
裂した芳香族ケトン基を介して結合した重合体aと、重
合体mから形成された共重合体であることがわかった。 (実施例28)実施例1で得た防曇膜をXPS[X線光
電子分光分析装置ESCA−850型(島津製作所
製)]で分析した。Nの吸収が6.1%(理論値6.3
%)、Sの吸収が6.2%(理論値6.3%)であっ
た。このことから、防曇膜の表面はPATBSを共重合
成分とする重合体mの重合体鎖であることがわかった。
【0127】前記実施例27及び実施例28の結果よ
り、各実施例の防曇膜は光重合開始基断片を介して結合
した親水性重合体鎖が表面を覆っていることがわかっ
た。このため、防曇膜は防曇性能が優れ、かつ水に長期
間接触しても親水性が低下することなく、性能を持続す
ることができた。
【0128】なお、前記実施の形態より把握される技術
的思想について以下に記載する。 ・ 前記疎水性重合体セグメント(I)と親水性重合体
セグメント(II)とは、光重合開始基断片を介して結合
した共重合体である請求項1に記載の防曇膜。
【0129】このように構成した場合、基材に対する防
曇膜の密着性、防曇膜の防曇性能、その持続性、透明
性、被膜強度などの性能を確実に発揮させることができ
る。 ・ 前記疎水性重合体セグメント(I)は、光重合開始
基を有する単量体と光重合開始基を有しない単量体とか
ら形成されたものである請求項1に記載の防曇膜。
【0130】このように構成した場合、基材に対する防
曇膜の密着性や防曇膜のその他の性能を調整して、各性
能をバランス良く発揮させることができる。 ・ 光重合開始基を有する重合体を基材表面に塗布し、
次いでその表面に親水性重合体を塗布するか、又は親水
性重合体中に基材を浸漬した後、活性エネルギー線を照
射する請求項1〜8のいずれかに記載の防曇膜の製造方
法。
【0131】このように構成すれば、簡易な操作により
防曇膜を容易に製造することができる。
【0132】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれ
ば、次のような優れた効果を奏する。第1の発明の防曇
膜によれば、表面側に親水性重合体セグメント(II)が
配向され、かつそれが基材側の疎水性重合体セグメント
(I)に化学的に結合していることから、水滴の付着に
よる基材表面の曇りを防止することができ、かつ多量の
水滴が基材表面に付着しても親水性膜が脱落するおそれ
がなく、長期間にわたって防曇性能を維持することがで
きる。
【0133】さらに、防曇膜の表面は親水性重合体セグ
メント(II)の均一性の良い膜であることから、薄い膜
で充分に性能を発現させることができ、吸水による性能
の低下を抑制でき、防曇膜の膨潤によってその硬度が低
下して防曇膜が傷ついたり、剥離したりするおそれを防
止することができる。しかも、透明性が良く、実用的な
塗膜強度を有しているとともに、基材との密着性も良好
である。
【0134】加えて、重合開始機構は光重合開始剤が基
材から水素を引き抜いて親水性単量体の重合を開始させ
るという機構ではなく、重合体中の光重合開始基から生
じたラジカルが、すでに形成されている重合体ラジカル
とラジカルカップリング反応することにより、疎水性重
合体セグメント上に親水性重合体セグメントが確実に結
合しているため、防曇性能が極めて優れており、かつそ
の性能を長期間維持することができる。
【0135】このように、防曇膜は、ガラスや合成樹脂
のような透明又は不透明の材料よりなる光学部品や成形
品の表面に好適に適用でき、産業上有用である。第2の
発明の防曇膜によれば、第1の発明の効果に加え、疎水
性重合体セグメント(I)と親水性重合体セグメント
(II)との良好な結合力を確実に発揮させることができ
る。
【0136】第3の発明の防曇膜によれば、第1又は第
2の発明の効果に加え、防曇膜の性能及びその持続性を
効果的に発揮させることができる。第4の発明の防曇膜
によれば、第1〜第3のいずれかの発明の効果に加え、
疎水性重合体の重合開始効率を向上させることができる
とともに、疎水性重合体を容易に製造することができ
る。
【0137】第5の発明の防曇膜によれば、第1〜第4
のいずれかの発明の効果に加え、親水性重合体セグメン
ト(II)の親水性と、ラジカルカップリング反応の反応
効率を有効に発揮させることができる。
【0138】第6の発明の防曇膜によれば、第1〜第5
のいずれかの発明の効果に加え、基材上への疎水性重合
体の層の形成を簡単な操作により行うことができる。第
7の発明の防曇膜によれば、第6の発明の効果に加え、
基材としてガラスを使用する場合、基材に対する疎水性
重合体の層の密着性を向上させることができる。
【0139】第8の発明の防曇膜によれば、第6又は第
7の発明の効果に加え、防曇膜の硬度を向上させたり、
基材に対する防曇膜の密着性向上させたりすることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 基材上に形成される防曇膜の製造工程を概念
的に示した説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 須山 修治 愛知県知多郡武豊町字楠4丁目132番地

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材上に形成された光重合開始基を有す
    る疎水性重合体の層の上に、光重合開始基を有する親水
    性重合体を接触させて活性エネルギー線を照射すること
    により形成され、前記親水性重合体による親水性重合体
    セグメント(II)が疎水性重合体による疎水性重合体セ
    グメント(I)に対し光重合開始基断片を介して結合さ
    れている防曇膜。
  2. 【請求項2】 前記光重合開始基断片が下記式(1)に
    示す基を含む請求項1に記載の防曇膜。 【化1】
  3. 【請求項3】 前記親水性重合体セグメント(II)が、
    下記に示す親水性基を含む請求項1又は請求項2に記載
    の防曇膜。 親水性基:カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リ
    ン酸基、これらのアルカリ金属塩またはアンモニウム
    塩、アルキレンオキシド基、アミノ基、アミド基、シア
    ノ基、酸無水物基及び四級アンモニウム塩基からなる群
    より選ばれる少なくとも1種の官能基。
  4. 【請求項4】 前記光重合開始基を有する疎水性重合体
    が、下記式(2)に示される光重合開始基の群から選ば
    れる少なくとも1種を有する単量体より形成される重合
    体である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の防曇
    膜。 【化2】 (式中、Aは 【化3】 を表し、R1 、R2 は炭素数1〜4のアルキル基又はR
    1 、R2 間の炭素により形成される炭素数5〜7のシク
    ロアルキル基、R3 は水酸基又はアミノ基、R4、R5
    は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
  5. 【請求項5】 前記光重合開始基を有する親水性重合体
    が、下記式(2)に示される光重合開始基の群から選ば
    れる少なくとも1種を有する単量体5〜50重量%、下
    記に示される親水性基の群から選ばれる少なくとも1種
    を有する単量体50〜95重量%より形成される重合体
    である請求項1〜4のいずれかに記載の防曇膜。 【化4】 (式中、Aは 【化5】 を表し、R1 、R2 は炭素数1〜4のアルキル基又はR
    1 、R2 とR1 、R2 間の炭素により形成される炭素数
    5〜7のシクロアルキル基、R3 は水酸基又はアミノ
    基、R4 、R5 は炭素数1〜4のアルキル基を表す。) 親水性基:カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リ
    ン酸基、これらのアルカリ金属塩、又はアンモニウム
    塩、アルキレンオキシド基、アミノ基、アミド基、シア
    ノ基、酸無水物基及び四級アンモニウム塩基からなる群
    より選ばれる少なくとも1種の官能基。
  6. 【請求項6】 前記の光重合開始基を有する疎水性重合
    体の層が、光重合開始基を有する疎水性重合体を含有す
    る組成物(a)を基材上に塗布することによって形成し
    たものである請求項1〜5のいずれかに記載の防曇膜。
  7. 【請求項7】 前記組成物(a)が、さらにシランカッ
    プリング剤を含有するものである請求項6に記載の防曇
    膜。
  8. 【請求項8】 前記組成物(a)が、さらにラジカル重
    合性単量体及び無機微粒子の少なくとも1種を含有する
    ものである請求項6又は請求項7に記載の防曇膜。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6733847B2 (en) * 2000-02-08 2004-05-11 Ciba Specialty Chemicals Corporation Process for the production of strongly adherent surface-coatings by plasma-activated grafting

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