JP4151086B2 - 高分子被膜を有するガラス製品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガラス製ゴーグルや保護面などとして使用される高分子被膜を有するガラス製品に関するものである。更に詳細には、光透過部がガラス製であって、その表面に結露による曇りを防止する防曇性高分子被膜や、水滴の付着を防止する撥水性高分子被膜が形成されて機能化されているガラス製品に関するものである。特に、表面に効果的な防曇性能及び撥水性能を有し、且つその性能が長期間持続する機能性高分子被膜を有するガラス製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にガラスは、露点以下になると表面に結露を生じて透明度が低下する。このようなガラスの曇りを防止する方法として従来から種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、界面活性剤、親水性重合体などの親水性物質を塗布する方法、界面活性剤を含有する被膜を形成する方法、親水性フィルムを貼付する方法や、親水性の硬化性樹脂を塗布し硬化させる方法(特開昭55−99930号公報、特公昭62−28986号公報)、界面活性剤を含有する硬化性樹脂を硬化させる方法(特公昭53−18347号公報)、親水性基を有する化合物を表面に結合させる方法(特公昭49−46476号公報)、官能基を有する化合物を結合させた後に親水性単量体を結合させる方法(特開昭56−63845号公報、特開平4−225301号公報)、疎水性単量体組成物を塗布して硬化させた後に親水性単量体組成物を硬化させる方法(特開平8−12791号公報)などが挙げられる。
【0004】
また、ゴーグルの外面は水から出る際に良好な視界を保つために、表面を撥水性にして水滴が速やかに流れ落ちることが望まれる。このため、ガラスを撥水性にする方法として、表面にフッ素化被膜を形成する方法(特開平4−338137号公報)などが提案されている。
【0005】
さらに、光重合開始基を有する化合物を基材上に形成した後、単量体を接触させて光を照射して2層よりなる被膜を形成する方法としては、特開昭63−63030号公報、特開平9−77891号公報等に開示されている。
【0006】
加えて、防曇性能を付与する親水性セグメントと基材との密着性を向上させる疎水性セグメントを有するブロック共重合体又はグラフト共重合体も知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、防曇性が付与されたゴーグルは、湿度が高い状態や水に接触するような条件下で使用されるケースが多いため、界面活性剤や親水性重合体を塗布する方法ではそれら界面活性剤や親水性重合体が水に溶解して流れ落ちてしまい、防曇持続性に欠けていた。また、親水性樹脂の硬化物や親水性フィルムを防曇膜として使用する方法では、ガラス基材との密着性が悪かったり、吸湿により被膜の硬度が低下して傷が付いたり、被膜が剥離したりして耐久性に劣っていた。更に、防曇性能も満足できるものは得られていない。
【0008】
しかも、疎水性硬化物の上に親水性硬化物を形成する場合でも、防曇性能や密着性において充分ではなかった。また、ガラスに撥水性能を付与する方法は、高温で焼き付けるなどの煩雑な操作が必要であった。
【0009】
さらに、前記特開昭63−63030号公報には、光重合開始基を有する化合物よりなる層上に、単量体を接触させて光を照射してなる層の被膜を形成する方法が開示されているが、防曇性能や撥水性能を有する被膜を有するガラス製品については具体的に開示されていない。
【0010】
また、前記特開平9−77891号公報には、ゾル−ゲル法による下塗り層を形成した後、親水性モノマーを用いてグラフト重合するガラス表面の処理が開示されている。すなわち、ゾル−ゲル法は、アルコキシシリル基を有する光重合開始剤、テトラエトキシシラン及び塩酸溶液を用いる処理方法である。しかしながら、このゾル−ゲル法は塩酸溶液を用いるため、取扱いに注意を要し、また処理後に塩酸が残存したり、その残存した塩酸を除去したりしなければならないという問題があった。しかも、ゾル−ゲル法による下塗り層は無機物の層であり、その上の親水性の層は有機物の層であることから、両層間の密着性が低く、耐久性に欠けるという問題があった。
【0011】
加えて、ブロック又はグラフト共重合体を用いる場合、被膜の基材側及び表面側にそれぞれ望ましいセグメントのみが存在するのではないことから、防曇性能を充分に発揮することができなかった。
【0012】
この発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に鑑みてなされたものである。その目的とするところは、透明性が良く、使用時における視界が良好であり、長期間にわたって優れた防曇性能及び撥水性能を発揮できるガラス製品を提供することにある。その他の目的とするところは、実用的な被膜強度を有し、耐久性に優れ、密着性が良好であるとともに、製造が容易なガラス製品を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前述の目的を達成するために鋭意研究した結果、この発明を完成した。
【0014】
すなわち、第1の発明の高分子被膜を有するガラス製品は、ガラス基材の表面に、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体、光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、又は光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)を被覆して被膜(A)を形成し、その被膜(A)上に親水性単量体を含有する組成物(b)を被覆し、活性エネルギー線を照射して親水性重合体を含有する被膜(B)を形成してなるものである。
【0015】
第2の発明の高分子被膜を有するガラス製品は、ガラス製基材の表面に、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体、光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、又は光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)を被覆して被膜(A)を形成し、その被膜(A)上にフッ素含有単量体を含有する組成物(c)を被覆し、活性エネルギー線を照射してフッ素含有重合体を含有する被膜(C)を形成してなるものである。
【0016】
第3の発明の高分子被膜を有するガラス製品は、ガラス製基材の内面に下記に示す高分子被膜(1)を形成し、且つ外面に下記に示す高分子被膜(2)を形成した高分子被膜を有するものである。
【0017】
高分子被膜(1): ガラス基材の表面に、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体、光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、又は光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)を被覆して被膜(A)を形成し、その被膜(A)上に親水性単量体を含有する組成物(b)を被覆し、活性エネルギー線を照射して親水性重合体を含有する被膜(B)を形成してなる高分子被膜。
【0018】
高分子被膜(2): ガラス基材の表面に、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体、光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、又は光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)を被覆して被膜(A)を形成し、その被膜(A)上にフッ素含有単量体を含有する組成物(c)を被覆し、活性エネルギー線を照射してフッ素含有重合体を含有する被膜(C)を形成してなる高分子被膜。
【0019】
第4の発明は、第1〜第3の発明のいずれかに記載の高分子被膜を有するガラス製品において、前記シリル基は、下記一般式(I)で表されるものである。
−Si(R1 )m (R2 )n ・・・・(I)
(式中、R1 はアルキル基、R2 はアルコキシ基、アシルオキシ基、水酸基、又はハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数、mは0〜2の整数であり、且つ、m+n=3を表す。)
第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれかに記載の高分子被膜を有するガラス製品において、前記組成物(a)が、更にラジカル重合性単量体及び無機微粒子の少なくとも1種を含有するものである。
【0020】
第6の発明のガラス製ゴーグルは、第1〜第5の発明のいずれかに記載の高分子被膜を形成したガラス基材を備えたものである。
第7の発明のガラス製鏡は、第1、第2、第4又は第5の発明に記載の高分子被膜を形成したガラス基材を備えたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明を具体化した実施の形態について詳細に説明する。
ガラス製品は、ガラス基材の表面に、親水性や撥水性などの機能を有する高分子被膜(高分子層)が被覆形成されて構成される。この高分子被膜は、所定の組成物(a)より形成される被膜(A)上に、親水性単量体より形成される被膜(B)又はフッ素含有単量体より形成される被膜(C)が化学的に結合された2層構造を有している。
【0022】
組成物(a)としては、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体(以下、単に光重合開始基を有する重合体ともいう)、光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体(以下、単に光重合開始基とシリル基を有する重合体ともいう)、又は重合性不飽和基を有するシランカップリング剤(以下、単にシランカップリング剤ともいう)を含有する組成物が使用される。すなわち、この組成物(a)には、次の(1) 〜(3) の3種類が含まれる。
(1) 光重合開始基を有する重合体と、シランカップリング剤
(2) 光重合開始基を有する重合体と、光重合開始基とシリル基を有する重合体と、シランカップリング剤
(3) 光重合開始基とシリル基を有する重合体と、シランカップリング剤
前記シリル基としては、下記一般式(I)で表されるものが使用される。
【0023】
−Si(R1 )m (R2 )n ・・・・(I)
(式中、R1 はアルキル基、R2 はアルコキシ基、アシルオキシ基、水酸基、又はハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数、mは0〜2の整数であり、且つ、m+n=3を表す。)
このような高分子被膜は、下記の2段階の工程により形成される。
【0024】
工程1: ガラス基材表面に、前述の組成物(a)を被覆して被膜(A)を形成する工程。
工程2: 被膜(A)の上に、親水性単量体を含有する組成物(b)又はフッ素含有単量体を含有する組成物(c)を被覆し、活性エネルギー線を照射して被膜(B)又は被膜(C)を形成する工程。
【0025】
まず、工程1について説明する。
組成物(a)の成分である光重合開始基を有する重合体とは、光重合開始基を有する単量体を重合して得られる重合体である。ここで光重合開始基を有する単量体は、活性エネルギー線照射によりラジカルを発生させる基、すなわち光重合開始基と、重合性不飽和二重結合を1分子中にそれぞれ1個以上有するものである。
【0026】
光重合開始基を有する単量体を具体的に示すと、S−(メタ)アクリロイル−O−メチルキサンテート、S−(メタ)アクリロイル−O−エチルキサンテート、S−(メタ)アクリロイル−O−プロピルキサンテートなどのキサンテート類、2,2’−アゾビス[2−((メタ)アクリロイルオキシメチル)プロピオニトリル]などのアゾ化合物、及び下記の一般式(II)で示されるケトン化合物などが例示される。
【0027】
なお、この明細書においては、アクリルとメタクリルを(メタ)アクリル、アリルとメタリルを(メタ)アリルと総称する。
【0028】
【化1】
〔式中、R3 は
【0029】
【化2】
を表し、R4 は水素、R8 又はZであり、R5 は水素又はR15であり、R6 、R7 は各々独立して水素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、又は、R6 、R7 とその間の炭素により形成される炭素数5〜7のアルキレン基であり、R8 はO−R17、S−R17、N(R18)2 、ピペリジノ基、モルホリノ基、SO2 R18、又はZであり、R9 はそれぞれハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基により置換されていてもよい、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ベンゾイル基であり、R10、R11は水素、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、又はZであり、R12は水素又はZであり、R13は炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基であり、R14はアルキル基、アシル基又はZを表し、R15は水素、
【0030】
【化3】
又は、R5 と一緒になってオルト位についた−O−又は−S−であり、R16は水素、Z又はR15であり、R17は水素、炭素数1〜6のアルキル基又はZであり、R18、R19は水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R20は炭素数4〜10の三級アルキル又はアラルキル基を表す。Zは
−(A−X)p −D−(B−Y)q −W
を表し、A、B、Dは各々独立して、単結合、
【0031】
【化4】
であり、X、Yは無置換又は水酸基が置換した炭素数1〜4のアルキレン基を表し、p、qは0又は1〜10の整数であり、Wは、
【0032】
【化5】
を表し、R21は水素又はメチル基、R22は炭素数1〜20のアルキル基、R23は水素、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシ置換アルキル基を表し、Wが二価の場合は同じ構造の基が2つ結合していることを表す。且つ、R3 〜R5 の中にZ基が1つ以上含まれる〕。
【0033】
一般式(II)で示される光重合開始基を有する単量体の例を具体的に示すと、1−(4−ビニルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロペニルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(メタ)アリルオキシベンゾイル)−1−ヒドロキシシクロヘキサン、1−{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−[4−{2−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−[4−{2−(2−((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシカルボニルオキシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ)フェニル}−2−モルホリノ−2−メチルプロパン−1−オン、メチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]マレート、イソプロピル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]フマレート、ブチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]イタコネート、オクチル[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]メサコネート、ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]フマレート、ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]イタコネート、ビス[2−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−オキソプロピル)フェノキシ}エチル]メサコネート、1−{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタン−1−オン、2−{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシブトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタン−1−オン、1,2−ビス{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシエタン−1−オン、2,2−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−(メタ)アリル−2−イソプロピルオキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1,2−ジフェニル−1,2−エタンジオン−2−O−(メタ)アクリロイルオキシム、4−ビニルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、4−ビニル−4’−(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3' −ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル)−4,4' −ビス(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシカルボニル)−3,3' −ビス(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3' −ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル)−4,4' −ビス(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4−{2−((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ}ベンゾフェノン、4−スチリルメトキシベンゾフェノン、4−(メタ)アクリロイルオキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0034】
光重合開始基を有する単量体の中では、光重合開始効率が良いこと及び製造が容易な点から、次の化学式で示される光重合開始基を有する単量体が好ましい。
【0035】
【化6】
〔式中、Aは
【0036】
【化7】
を表し、R24、R25は炭素数1〜4のアルキル基又はR24とR25とR24とR25間の炭素により形成される炭素数5〜7のシクロアルキレン基、R26は水酸基又はアミノ基、R27、R28は炭素数1〜4のアルキル基を表す〕
そのような光重合開始基を有する単量体としては、具体的には、1−{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}(1−ヒドロキシシクロヘキシル)ケトン、1−{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2−モルホリノ−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパン−1−オン、1−[4−{2−(2−((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシカルボニルオキシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−(2−(メタ)アクリロイルエトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタン−1−オンなどが挙げられる。
【0037】
また、組成物(a)の成分である光重合開始基とシリル基(I)を有する重合体とは、上記の光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合して得られる重合体である。光重合開始基を有する単量体としては、前述したものが使用される。
【0038】
シリル基を有する単量体としては、具体的には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メタクリロイルオキシトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0039】
光重合開始基を有する重合体及び光重合開始基とシリル基を有する重合体には、更に光重合開始基を有しない単量体の1種又は2種以上を配合して重合したものであってもよい。この場合、得られる高分子被膜には、光重合開始基を有しない単量体に基づく物性が単量体の種類と量に応じて発揮される。この光重合開始基を有しない単量体は特に限定されず、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート類、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、フマル酸エステル類、グリシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸エステル類、イタコン酸エステル類、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピルジン、フッ素含有単量体、ケイ素含有単量体、リン含有単量体などが挙げられる。
【0040】
光重合開始基を有する重合体及び光重合開始基とシリル基を有する重合体は、通常のラジカル重合開始剤を用い、光重合開始基を有する単量体の1種又は2種以上を単独で重合、又は前述した他の単量体の1種又は2種以上と共重合することによって得られる。
【0041】
重合体中の光重合開始基を有する単量体の使用量は特に限定はされないが、工程2における光重合の効率をよくするためには5重量%以上が好ましい。
次に、組成物(a)の成分であるシランカップリング剤は、加水分解性のシリル基を有する化合物であり、例えば下記一般式 (III)で示されるものである。
【0042】
(R29)(R30)r −Si−(R31)s ・・・・ (III)
〔式中、R29はアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、ビニル基、アミノ基、塩素、メルカプト基を有するアルキル基を表し、R30はアルキル基、R31はアルコキシ基、アシルオキシ基、水酸基、又はハロゲン原子、sは1〜3の整数、rは0〜2の整数であり且つr+s=3を表す〕。
【0043】
この他に、シリル基を2個以上有する化合物、重合性不飽和基と加水分解性シリル基を有する化合物の単独重合体又は共重合体、更に所定の官能基と加水分解性シリル基を有する化合物が前記官能基と反応する官能基を有する重合体に化学的に結合した重合体であってもよい。そのような官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基などが挙げられる。
【0044】
シランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メトキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロイルオキシトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0045】
これらの中では、得られる高分子被膜の強度や密着性の観点から、3−メタクリロイルオキシトリメトキシシランなどの重合性不飽和基を有するものが好ましい。また、シランカップリング剤の反応を促進させてガラスとの密着性を向上させるために、組成物(a)中に少量の水や酢酸、塩酸等の酸を添加してもよい。
【0046】
組成物(a)中には、ラジカル重合性単量体を含有していてもよい。この場合、活性エネルギー線の照射時に組成物(a)中のラジカル重合性単量体の光重合又は光硬化が起こり、被膜(A)の硬度を高めることができるとともに、被膜(B)又は被膜(C)がこの被膜(A)に結合しているため、高分子被膜の耐擦傷性を向上させることができる。
【0047】
ラジカル重合性単量体は一個以上の重合性二重結合を有する化合物であって、具体的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート類、アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、フマル酸エステル類、グリシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸エステル類、イタコン酸エステル類、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピルジン、フッ素含有単量体、ケイ素含有単量体、リン含有単量体などの単官能単量体や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多価エステル類、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、トリアリルイソシアネート、及びトリアリルホスフェートなどの多価ビニル化合物等の多官能単量体、及びフマレート基、マレート基、アリル基、(メタ)アクリレート基を持つ硬化性樹脂、不飽和ポリエステル、不飽和アクリル樹脂、及びイソシアネート改質アクリルオリゴマー、ポリエステルアクリルオリゴマー、及びポリエポキシアクリルオリゴマー等の重合性基含有オリゴマー並びに重合性基含有重合体などが挙げられる。
【0048】
更に、組成物(a)中には、無機微粒子を含有していてもよい。この場合、被膜(A)の硬度を高めることができるとともに、高分子被膜の耐擦傷性を向上させることができる。この無機微粒子は、平均粒子径が5μm以下、好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.5μm以下の粒状物である。無機微粒子としては例えば、シリカ微粉末、アルミナ微粉末、フルオロカーボン微粉末、カーボンブラック、及び、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物微粒子などが挙げられる。これらの中では、粒子径0.1μm以下のシリカ微粉末が好ましく、更にメチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどの通常シランカップリング剤として用いられているシリル化合物、好ましくは3−メタクリロイルオキシトリメトキシシランなどの重合性不飽和基を有するシリル化合物により表面を変性してあるものが好ましい。
【0049】
組成物(a)中には、更に通常の被膜を形成する際に用いられる添加剤、例えば、光重合開始剤、硬化剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、界面活性剤等を含有していてもよい。また、熱硬化、例えばメラミン硬化、ウレタン硬化、酸によるエポキシ硬化、アミンによるエポキシ硬化、シリコーン硬化などに通常用いられる成分を含有していてもよい。
【0050】
また、組成物(a)は必要により1種又は2種以上の溶剤で希釈されていてもよい。そのような溶剤としては例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコキシアルコール類、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられる。
【0051】
工程1において、組成物(a)の塗布方法は、通常用いられる方法が適用でき、ロールコート法、スプレーコート法、スピンコート法、バーコート法、ディッピング法などが挙げられる。
【0052】
塗布後には、基材との密着性を向上させるため、及び溶剤を使用した場合はこれを除去するために、必要により加熱処理をしてもよい。加熱条件は特に限定されないが、温度は40〜200℃、時間は5分〜5時間の範囲が好ましい。溶剤を除去する目的の場合には更に短時間でもよい。
【0053】
ガラス製の基材は前処理をせずに用いてもよいが、必要により前処理されていてもよい。前処理処理方法としては、コロナ、プラズマ、電子線等による処理、化学薬品処理、蒸着処理、プライマー処理等が挙げられる。これらの中では、シランカップリング剤による処理が、基材に対する密着性をより向上させることができる点から好ましい。
【0054】
次に、工程2について説明する。
親水性単量体を含有する組成物(b)とは、親水性単量体単独又は親水性単量体に他の溶剤や添加剤を含有したものである。
【0055】
この親水性単量体は、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、これらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、アルキレンオキシド基、アミノ基、アミド基、シアノ基、酸無水物基、4級アンモニウム塩基のいずれかの官能基を1種以上有する単量体である。
【0056】
親水性単量体を具体的に示すと、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネートなどの不飽和カルボン酸類;マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、4−メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物などの不飽和酸無水物類;ヒドロキシフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドの付加モル数が2〜90のヒドロキシフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイドの付加モル数が2〜90のヒドロキフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルフェノール、ヒドロキシフェニルマレイミドなどのフェノール基含有単量体類;スルホキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有単量体類;モノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどのリン酸基含有単量体類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレンオキサイドの付加モル数が2〜98のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド付加モル数が1〜4のノニルフェノールモノエトキシレート(メタ)アクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリオキシエチレンのモノ(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸のナトリウム塩、スチレンスルホン酸ナトリウム、スルホン酸ナトリウムエトキシ(メタ)アクリレート、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸のナトリウム塩などの酸基含有単量体のアルカリ金属塩類;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの四級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート類;アリルグリコール、エチレンオキサイド付加モル数が3〜32のポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテルなどの(メタ)アリル化合物類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどの環状複素環含有化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどのシアン化ビニル類;反応性界面活性剤類などの単官能単量体や、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのエチレングリコール付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのエチレングリコール付加物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのエチレングリコール付加物等の多官能単量体、(メタ)アクリル変性ポリビニルアルコール、(メタ)アクリル変性水溶性ポリウレタン等の重合性オリゴマー及び重合性を有する重合体などが挙げられる。
【0057】
組成物(b)中には、これらの単量体の中から適宜その1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの中では、防曇膜の性能及びその持続性が特に良好である点でアミド基を有する単量体が好ましく、具体的には、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルモルモリン、(メタ)アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩などが挙げられる。
【0058】
組成物(b)中の親水性単量体の濃度は、100%でも使用できるが、親水性単量体が溶解し、且つ光重合開始基を有する重合体の被膜(A)が溶解しないような溶媒で希釈して用いてもよい。そのような溶媒は特に限定されないが、例えば水、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン等の極性溶媒が好ましく、これらのうち水が特に好ましい。
【0059】
また、組成物(b)中には、他の単官能及び多官能単量体、光重合開始剤や、界面活性剤、増粘剤等の通常塗膜を形成する際に用いられる添加剤等を含有していてもよい。界面活性剤を添加した場合、初期の防曇性能が向上する傾向にある。
【0060】
次に、組成物(c)は、フッ素含有単量体単独又は他の溶剤や添加剤を含有したものである。
フッ素含有単量体単量体としては、下記一般式(IV)〜(VIII)で示されるものが例示される。
【0061】
CH2 =CR29COOR30Rf ・・・・(IV)
〔式中、R29は水素原子又はメチル基、R30は-Ct H2t - 、-C(Ct H2t+1)H-、
-CH2 C(Ct H2t+1)H- 又は-CH2 CH2 O- 、Rf は-Cv F2v+1 、-(CF2 ) v H 、
-(CF2 ) t OCv H2v C x F2x+1 、-(CF2)t OCw H2w C x F2x H 、-N(Ct H2t+1)COC v F2v+1 、-N(Ct H2t+1)SO2 C v F2v+1 である。但し、t は1 〜10、v は1 〜16、w は0 〜10、x は0 〜16の整数である。〕
CF2 =CFORg ・・・・(V)
〔式中、Rg は炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表わす。〕
CH2 =CHRh ・・・・(VI)
〔式中、Rh は炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表わす。〕
CH2 =CR31COOR33Ri R34OCOCR32=CH2 ・・・ (VII)
〔式中、R31、R32は水素原子又はメチル基、R33、R34は-Cy H 2y- 、
-C(Cy H2y+1)H-、-CH2 C(Cy H2y+1)H-又は-CH2 CH2 O- 、Ri は-Cz F2z - である。但し、y は1 〜10、z は1 〜16の整数である。〕
【0062】
【化8】
〔式中、R35、R36は水素原子又はメチル基、Rj は-Ca F2a+1 である。但し、a は1 〜16の整数である。〕
一般式(IV)で示される単量体としては例えば、CF3 (CF2)7 CH2 CH2 OCOCH=CH2、CF3 CH2 OCOCH=CH2 、CF3 (CF2)4 CH2 CH2 OCOC(CH3)=CH2、
C7 F15CON(C2 H5)CH2OCOC(CH3)=CH2、CF3(CF2)7 SO2N(CH3)CH2 CH2OCOCH=CH2 、
C2 F5 SO2 N(C3H7)CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、(CF3)2 CF(CF2)6 (CH2)3OCOCH=CH2 、
(CF3)2 CF(CF2)10(CH2)3 OCOC(CH3)=CH2、CF3 (CF2)4 CH(CH3)OCOC(CH3)=CH2 、
【0063】
【化9】
、CF3 CH2 OCH2 CH2 OCOCH=CH2、C2 F5(CH2 CH20)2 CH2 OCOCH=CH2 、
(CF3)2 CFO(CH2)5 OCOCH=CH2、CF3 (CF2)4OCH2 CH2 OCOC(CH3)=CH2 、
C2 F5 CON(C2 H5)CH2 OCOCH=CH2 、CF3(CF2)2 CON(CH3)CH(CH3)CH2 OCOCH=CH2、
H(CF2)6C(C2H5)OCOC(CH3)=CH2 、H(CF2)8CH2OCOCH=CH2 、H(CF2)4CH2OCOCH=CH2 、H(CF2)CH2OCOC(CH3)=CH2、
【0064】
【化10】
、CF3(CF2)7SO2N(CH3)CH2CH2OCOC(CH3)=CH2 、
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)10OCOCH=CH2、C2F5SO2N(C2H5)CH2CH20COC(CH3)=CH2 、
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)4OCOCH=CH2 、C2F5SO2N(C2H5)C(C2H5)HCH2OCOCH=CH2等が挙げられる。
【0065】
また、一般式(V)及び(VI)で表わされる単量体としては例えば、
C3F7CH=CH2、C4F9CH=CH2、C10F21CH=CH2、C3F7OCF=CF2 、C7F15OCF=CF2、及びC8F17OCF=CF2などが挙げられる。
【0066】
また、一般式 (VII)及び(VIII)で表される単量体としては例えば、
CH2=CHCOOCH2(CF2)3CH2OCOCH=CH2 、CH2=CHCOOCH2CH(CH2C8H17)OCOCH=CH2 などが挙げられる。
【0067】
組成物(c)中には、これらの単量体の中から適宜その1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
組成物(c)中のフッ素含有単量体の濃度は、100%でも使用できるが、フッ素含有単量体が溶解し、且つ光重合開始基を有する重合体の被膜(A)が溶解しないような溶媒で希釈して用いてもよい。そのような溶媒としては特に限定されないが、メタノール、エタノール等の極性溶媒や、ヘキサンなどの飽和炭化水素等の無極性溶媒が好ましい。また、組成物(c)中には、他のフッ素を含有しない単官能単量体及び多官能単量体、光重合開始剤や、界面活性剤、増粘剤等の通常塗膜を形成する際に用いられる添加剤等を含有していてもよい。
【0068】
この工程2において、組成物(b)又は組成物(c)を被膜(A)に接触させる際に、被膜(A)が溶解してしまうと、得られる被膜の外観が白化等により悪くなったり、表面被膜が均一な被膜にならないために性能が悪くなるなどの弊害が生じるおれがあるため、溶解しないものが好ましい。
【0069】
接触させる方法としては、ロールコート法、スプレーコート法、スピンコート法、バーコート法、ディッピング法などの方法で塗布してもよく、また、組成物(b)又は組成物(c)中に浸漬してもよい。
【0070】
活性エネルギー線としては、用いる光重合開始基が吸収する波長であれば特に限定はされないが、具体的には200〜800nm、好ましくは、300〜600nmの紫外線及び可視光線である。光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、エキシマレーザー、色素レーザー、YAGレーザー、太陽光等が挙げられる。
【0071】
活性エネルギー線を照射する際には、酸素による障害を防ぐため、組成物の上を活性エネルギー線を透過する材質、例えば、ガラス、石英、透明プラスチック製の板、フィルム等で覆ってもよい。また、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で照射してもよい。
【0072】
工程2において、活性エネルギー線を照射後に未反応の単量体や単独重合体が残存する場合、必要に応じて水や溶剤などによって洗浄することが好ましい。また、高分子被膜の表面をアルカリ処理することもできる。
【0073】
ガラス製ゴーグルなどのガラス製品は、片面又は両面に、防曇性高分子被膜又は撥水性高分子被膜が形成されていても良く、また、それぞれの面に防曇性高分子被膜と撥水性高分子被膜が形成されていても良い。好ましくは、内面のみに防曇性高分子被膜が、又は外面のみに撥水性高分子被膜が、更には内面に防曇性高分子被膜が形成され外面に撥水性高分子被膜が形成さているものである。
【0074】
内面と外面の高分子被膜の形成は、それぞれ別々に行っても良く、また、両面を同時に行っても良い。この機能性高分子被膜の形成処理は、(1) ガラス板を成形する前に処理する、(2) ガラスを所望の形に成形してから処理する、(3) ガラスを枠体に装着した状態で処理する、の何れでもよいが、(2) の方法で処理してから枠体に装着する方法が、処理が容易であるので好ましい。
【0075】
表面に上記のような高分子被膜を形成したガラス製品としては、ゴーグル、メガネ、車両の窓ガラス、建築用の窓ガラス、レンズ、プリズム、光学用フィルター、鏡等が挙げられる。これらのガラス製品の内面及び外面のいずれかの面には、前記防曇性高分子被膜又は撥水性高分子被膜が形成され、あるいは内面に防曇性高分子被膜が形成され、且つ外面に撥水性高分子被膜が形成される。
【0076】
以上の実施形態によれば、以下のような効果が発揮される。
・ 実施形態におけるガラス製品は、その表面の高分子被膜の透明性が良く、使用時における視界が良好である。
・ ガラス製品は、ガラス基材の表面にガラス基材に対して密着性の良い被膜(A)が形成され、その被膜(A)上に親水性重合体よりなる被膜(B)が形成されている。このため、親水性重合体よりなる被膜(B)に基づき、初期における優れた防曇性能を発揮できるとともに、その防曇性能を長期間にわたり維持することができる。
・ しかも、親水性重合体よりなる被膜(B)により、水滴の付着による曇りを抑制することができ、多量の水滴が付着しても被膜(B)が脱落するのを抑制でき、その性能を長期間にわたって保持することができる。
・ ガラス製品は、ガラス基材の表面にガラス基材に対して密着性の良い被膜(A)が形成され、その被膜(A)上にフッ素含有重合体よりなる被膜(C)が形成されている。このため、フッ素含有重合体よりなる被膜(C)に基づき、初期における優れた撥水性能を発揮できるとともに、その撥水性能を長期間にわたり維持することができる。さらに、ガラス製品の使用時において、水からの出入りの際に水滴が容易に落下し、視界を良好に保つことができる。
・ ガラス製品表面の高分子被膜は、被膜(A)上に形成される被膜(B)又は被膜(C)が均一な被膜であることから、薄くても充分にその性能を発現させることができる。このため、高分子被膜は実用的な強度を有し、耐久性に優れている。
・ ガラス製品表面の高分子被膜は、ガラス基材表面に形成される被膜(A)により、ガラス基材表面に対する密着性に優れている。
・ 前記被膜(A)、被膜(B)及び被膜(C)はいずれも有機物で構成されていることから、被膜(A)と被膜(B)との間及び被膜(A)と被膜(C)との間の親和性が良く、密着性に優れ、ガラス基材表面上に形成された高分子被膜の耐久性を向上させることができる。
・ ガラス製品は、表面に被膜(A)を形成し、その被膜(A)上に被膜(B)又は被膜(C)を形成すればよいことから、製造が容易である。
・ ガラス製品表面の親水性重合体よりなる被膜(B)は均一に形成されるため、ガラス製品を水中に浸漬してから取り出した場合、表面に均一な水膜が形成される。従って、ガラス製品を透過して見える像が歪むのを防止することができる。
・ ガラス製品の製造に際し、従来のゾル−ゲル法による塩酸溶液を使用しないことから、取扱いが容易で、処理後に塩酸が残存したり、除去したりする必要がなく、ガラス製品の製造が容易である。
【0077】
【実施例】
次に、実施例、比較例及び参考例により前記実施形態を更に具体的に説明するが、この発明はこれらにより限定されるものではない。なお、本文及び表中の部は重量部を表す。更に、本文及び表中の略号は以下の通りである。
PI1:1−[4−{2−(2−(メタクリロイルオキシ)エトキシカルボニルオキシ)エトキシ}フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン
PI2:1−{4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル}−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタン−1−オン
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
DMAEMA:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
KBM503:トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(信越化学工業社製「KBM−503」)
3002A:2官能エポキシアクリレート(共栄社化学社製「エポライト 3002A」)
PPZ:ホスファゼン系6官能メタクリレート(出光石油化学社製「出光PPZ」)
AAm:アクリルアミド
ATBS:アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸(東亜合成社製「ATBS」)
PE350:ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂社製「ブレンマーPE−350」)
QA:メタクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(日本油脂社製「ブレンマーQA」)
MS2N:スルホエチルメタクリレートNa塩(日本乳化剤社社製「AntoxMS−2N」)
PDE400:ポリエチレングリコールジメタクリレート(日本油脂社製「ブレンマーPDE400」)
FA:2−ヘプタデカフルオロオクチルエチルアクリレート(ヘキスト社製「AE-800」)
PPVE:トリフルオロビニルヘキサフルオロプロピルエーテル(旭硝子社製)
DMHF:1,5−ビス(メタクリロイルオキシ)−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン
MEK:メチルエチルケトン
PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
THF:テトラヒドロフラン
PVA:ケン化ポリ酢酸ビニル(日本合成化学工業社製「ゴーセノールKH-17 」)
OP80:ノニオン系界面活性剤(日本油脂社製「ノニオンOP−80」)
TTA:トリエチレンテトラミン(味の素社製「アミキュア」)
ACS:コロイダルシリカ(日産化学社製「スノーテックス O 」)を3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート(信越化学工業社製「KBM-503 」)で処理したアクリル変性コイダルシリカの20%MEK溶液
D2959:光重合開始剤(チバガイギー社製「Darocure2959」)
LPO:ラウロイルペルオキシド(日本油脂製「パーロイルL」)
(参考例1、光重合開始基含有重合体の製造)
撹拌機、温度計、パージガス導入口、水冷コンデンサーを備えた300ml反応容器に、MEK 50gを仕込み、窒素ガス通気下、80℃に加熱後、撹拌しながら、MMA 10g、PI1 90g、MEK 50g、及び、LPO 5gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま4時間撹拌を続け、重合を完結した。得られた溶液を石油エーテル中に注入して重合体を析出させた後、乾燥して光重合開始基含有重合体aを得た。
【0078】
この重合体aについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、THFを展開溶剤として測定した重量平均分子量Mwは21000であった。また、UV吸収スペクトルから、仕込み量と同量の光重合開始基が重合体中に導入されていることを確認した。
(参考例2〜8)
単量体を表1の種類及び量に変える以外は参考例1と同様に重合を行い、光重合開始基含有重合体b〜hを得た。
【0079】
【表1】
(実施例1、防曇性被膜の製造)
塗布液Iとして重合体a 20部、KBM503 3部、PGM 77部の組成の混合液を用い、未処理のガラス板の内面に、乾燥膜厚が1μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃で60分間加熱処理をした。得られた被膜上に単量体溶液IIとしてATBS 20部、水 80部の組成の混合液を50μmの膜厚になるように塗布した後、1kW高圧水銀灯により1分間光照射した。このときの光照射量は5J/cm2 であった。光照射後、水洗、乾燥することにより、基材上に無色透明な防曇性被膜を得た。なお、この被膜は前述した高分子被膜を意味する。
【0080】
次に、得られた防曇性被膜について下記に示す評価方法により物性を評価した。
(1) 被膜硬度
JIS K−5400に準じた鉛筆引っかき試験を行い、被膜硬度を鉛筆の硬さで表した。
(2) 密着性
JIS K−5400の碁盤目テープ法に準じて、被膜をカッターナイフで縦横方向に切断して基材に達するような100個のクロスカット(切断片)を作り、その上にセロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製)を貼り付けた。そして、粘着テープをその接着面と垂直方向に剥離し、剥がれずに残ったクロスカットの数を測定し、次のような記号で表した。
【0081】
○:100/100、△:80/100以上、×:80/100未満
(3) 防曇性
(a)呼気試験
20℃、相対湿度50%の恒温室内で被膜に息を吹きかけ、曇りの状態を目視によって観察し、次の基準にて判定した。
【0082】
○:全く曇らない、△:やや曇りが見られる、×:全面が曇る
(b)蒸気試験
60℃の恒温水槽上の水面から10cmの位置にガラス面を固定し、10分後の曇りの状態を目視によって観察し、次の基準にて判定した。
【0083】
◎:水滴が全くない、 ○:直径5mm以下の水滴がない、 △:直径5mm以下の水滴が部分的にある、 ×:全面に5mm以下の水滴がある
(4) 水濡れ性
試験体の表面が垂直になるように置き、この表面にスプレーを用いて水を全面に吹き付けた。このとき、均一な水膜ができて透過する像が歪まずに見える面積を測定し、次の基準にて判定した。
【0084】
○:全面が均一な水膜で覆われる、 △:均一な水膜の部分が80%以上、×:均一な水膜の部分が80%以下
(5) 持続性
試験体を水中に1カ月間浸漬した後、乾燥し、上記の呼気試験、蒸気試験及び水濡れ性試験を行った。
【0085】
これらの結果を表3に示した。
(実施例2〜7及び9並びに比較参考例8、10)
塗布液I及びモノマー溶液IIとして、表2に記載したものを用いる以外は、実施例1に記載した方法で防曇性被膜を作り、実施例1と同様に物性を評価した。
組成物(a)として、実施例6では、光重合開始基を有する重合体と、光重合開始基及びシリル基を有する重合体と、シランカップリング剤とを用い、比較参考例8では、光重合開始基を有する重合体と、光重合開始基及びシリル基を有する重合体とを用い、実施例9では、光重合開始基及びシリル基を有する重合体と、シランカップリング剤とを用い、比較参考例10では、光重合開始基及びシリル基を有する重合体のみを用いたものである。
【0086】
それらの評価結果を表3に示した。なお、ガラス基材として、実施例5及び7においてはゴーグル用のガラス製基材を用い、実施例6においては鏡用のガラス製基材を用い、実施例9においては車両の窓ガラス用のガラス製基材を用いた。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
表3に示したように、実施例1〜7及び9の被膜においては、防曇性、水濡れ性及びそれらの持続性に優れている。しかも、被膜強度に優れるとともに、基材に対する被膜の密着性に優れている。
(比較例1)
未処理のガラス製ゴーグルを、実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表4に示した。
(比較例2)
ガラス基材に界面活性剤OP80を塗布し、実施例1と同様に物性を評価した。その評価結果を表4に示した。
(比較例3)
MMA/DMAAm(重量比80/20)共重合体20g、PME400 5g、AAm5g、光重合開始剤(チバガイギー社製「Darocure1173」)1g及びMEK30gの比率で混合した溶液をガラス基材表面に、膜厚が10μmになるように塗布した。そして、これを乾燥後、1kW高圧水銀灯により1分間光照射した。これについて、実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表4に示した。
(比較例4)
MMA/HEMA(重量比65/35)共重合体300g、HEMA100g、ジエチレングリコールジメタクリレート10g、界面活性剤(花王社製「エマルゲン106」)5g、メチルセルソルブ300gの比率で混合した溶液をガラス基材表面に、膜厚が10μmになるように塗布した。そして、それを乾燥後、電子線を照射した。これについて、実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表4に示した。
(比較例5)
アセチルセルロースフィルムを水酸化ナトリウムでケン化した後、ガラス基材表面に貼った。これについて、実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表4に示した。
【0089】
【表4】
表4に示したように、未処理のガラス製ゴーグルである比較例1では、防曇性、水濡れ性及びそれらの持続性、更に被膜強度、基材に対する被膜の密着性のいずれも不良である。ガラス基材に界面活性剤を塗布した比較例2では、防曇性及び水濡れ性の持続性が不良である。また、従来の共重合体を用いた比較例3においては、防曇性及び水濡れ性の持続性に欠け、基材に対する被膜の密着性にも劣る。従来の共重合体に界面活性剤を配合した比較例4では、防曇性及び水濡れ性の持続性に欠ける。更に、アセチルセルロースフィルムを使用した比較例5では、水濡れ性及びその持続性が不良である。
(実施例11、撥水性被膜の製造)
塗布液Iとして実施例1に記載の溶液を用い、未処理のガラス製ゴーグル基材の外面に、乾燥膜厚が1μmになるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃で60分間加熱処理をした。得られた塗膜上にモノマー溶液III としてFA20部、メタノール80部の組成の混合液を50μmの膜厚になるように塗布した後、1kW高圧水銀灯により1分間光照射した。光照射後、エタノール、石油エーテルで順次洗浄、乾燥することにより、無色透明な撥水性被膜を得た。
【0090】
次に、得られた撥水性被膜について、実施例1に記載した塗膜硬度試験、密着性試験及び下記に示す撥水性試験により物性を評価した。
(1) 撥水性
(a)転落角
試験体の表面に、純水の水滴0.1mgを滴下して水滴を作成し、次いで、試験体を傾けて水滴が滑落するときの傾斜角度を測定し、次の基準にて判定した。
【0091】
○:40# 以下、 △:40〜80# 、 ×:80# 以上
(b)水滴付着性
試験体の表面が垂直になるように置き、この表面にスプレーを用いて水を全面に吹き付けた。このときに、水滴が付着している面積を測定し、次の基準にて判定した。
【0092】
○:水滴の付着が全く無い、 △:水滴付着部分が10%以下 ×:水滴付着部分が10%以上
(2) 持続性
試験体を海中に1カ月間浸漬した後、乾燥し、上記の撥水性試験を行った。
【0093】
これらの結果を表6に示した。
(実施例12〜16)
塗布液I及びモノマー溶液III として表5に記載したものを用いる以外は、実施例11に記載した方法で撥水性被膜を作り、実施例11と同様に物性を評価した。それらの評価結果を表6に示した。なお、ガラス基材として、実施例15においては、ゴーグル用のガラス製基材を用い、実施例16においては車両の窓ガラス用のガラス製基材を用いた。
【0094】
【表5】
(比較例6)
未処理のガラス製ゴーグルを、実施例11と同様に物性を評価した。結果を表6に示した。
(比較例7)
FA 20g、DMHF 10g、PPZ 10g、光重合開始剤(チバガイギー社製「Darocure1173」)2gの比率で混合した溶液をガラス基材表面に、膜厚が50μmになるように塗布した。その後、これに1kW高圧水銀灯で1分間光照射した。これについて、実施例11と同様に物性を評価した。その結果を表6に示した。なお、表6中の*)は、剥離したため、測定不能であることを示す。
【0095】
【表6】
(実施例17)
未処理のゴーグル用のガラス製基材の両面を、実施例1に記載の塗布液Iを用い、ディッピングにより乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、80℃で60分間加熱処理をした。得られたゴーグル内面の塗膜上に実施例1に記載した単量体溶液IIを膜厚が50μmになるように塗布し、更に外面に実施例11に記載した単量体溶液III を膜厚が50μmになるように塗布した。次いで、1kW高圧水銀灯により、基材の両面から2分間光照射した。光照射後、メタノールで洗浄、乾燥することにより、両面に機能性被膜を有するガラス製ゴーグルを得た。
【0096】
以上のように、実施例及び比較例の結果から、各実施例のガラス製ゴーグルは、未処理及び従来の公知の方法で処理されたゴーグルと比較して、初期性能及びその持続性に優れていることがわかる。
【0097】
なお、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
・ 前記光重合開始基を有する重合体は、光重合開始基と重合性不飽和二重結合を有する単量体を重合してなるものである請求項1〜5のいずれかに記載のガラス製品。
【0098】
このように構成した場合、光重合開始基を有する重合体を効率良く得ることができる。
・ 前記組成物(a)には、ラジカル重合性単量体を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のガラス製品。
【0099】
このように構成した場合、被膜(A)の硬度を高めることができるとともに、被膜の耐擦傷性を向上させることができる。
・ 前記親水性単量体は、アミド基を有する単量体である請求項1、請求項3〜5のいずれかに記載のガラス製品。
【0100】
このように構成した場合、被膜の性能及びその持続性を向上させることができる。
・ 前記組成物(b)には、親水性単量体を溶解し、被膜(A)が溶解しない溶媒を含有する請求項1、請求項3〜5のいずれかに記載のガラス製品。
【0101】
このように構成した場合、組成物(b)の粘度を調整でき、被膜(A)上への塗布性能を良くすることができる。
・ 前記組成物(c)には、フッ素含有単量体を溶解し、被膜(A)が溶解しない溶媒を含有する請求項2〜5のいずれかに記載のガラス製品。
【0102】
このように構成した場合、組成物(c)の粘度を調整でき、被膜(A)上への塗布性能を向上させることができる。
【0103】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、以下のような効果を奏する。
第1の発明の高分子被膜を有するガラス製品によれば、ガラス基材の表面の被膜(A)に化学的に結合した機能性重合体の被膜(B)が形成されていることから、透明性が良く、使用時における視界が良好であり、長期間にわたって優れた防曇性能を維持することができる。しかも、ガラス基材表面の被膜は実用的な強度を有し、耐久性に優れ、密着性が良好であるとともに、製造も容易である。
【0104】
第2の発明の高分子被膜を有するガラス製品によれば、ガラス基材の表面の被膜(A)に化学的に結合した機能性重合体の被膜(C)が形成されていることから、透明性が良く、使用時における視界が良好であり、長期間にわたって優れた撥水性能を発揮することができる。
【0105】
第3の発明の高分子被膜を有するガラス製品によれば、ガラス製品の内面に第1の発明の効果を発揮することができ、ガラス製品の外面に第2の発明の効果を発揮することができる。
【0106】
第4の発明の高分子被膜を有するガラス製品によれば、第1〜第3のいずれかの発明の効果に加え、所定のシランカップリング剤により、ガラス基材に対する被膜(A)の密着性をより向上させることができる。
【0107】
第5の発明の高分子被膜を有するガラス製品によれば、第1〜第4のいずれかの発明の効果に加え、ラジカル重合性単量体及び無機微粒子により、被膜(A)の硬度を高めることができるとともに、被膜の耐擦傷性を向上させることができる。
【0108】
第6の発明のガラス製ゴーグルによれば、透明性、防曇性能、撥水性能、耐久性、密着性等の優れた機能を発揮できるとともに、その機能を長期にわたって持続でき、ゴーグルとして好適である。
【0109】
第7の発明のガラス製鏡によれば、透明性、防曇性能、撥水性能、耐久性、密着性等の優れた機能を発揮できるとともに、その機能を長期にわたって持続でき、鏡として好適である。
Claims (7)
- ガラス基材の表面に、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体、光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、又は光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)を被覆して被膜(A)を形成し、その被膜(A)上に親水性単量体を含有する組成物(b)を被覆し、活性エネルギー線を照射して親水性重合体を含有する被膜(B)を形成してなる高分子被膜を有するガラス製品。
- ガラス基材の表面に、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体、光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、又は光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)を被覆して被膜(A)を形成し、その被膜(A)上にフッ素含有単量体を含有する組成物(c)を被覆し、活性エネルギー線を照射してフッ素含有重合体を含有する被膜(C)を形成してなる高分子被膜を有するガラス製品。
- ガラス基材の内面に下記に示す高分子被膜(1)を形成し、且つ外面に下記に示す高分子被膜(2)を形成した高分子被膜を有するガラス製品。
高分子被膜(1): ガラス基材の表面に、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体、光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、又は光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)を被覆して被膜(A)を形成し、その被膜(A)上に親水性単量体を含有する組成物(b)を被覆し、活性エネルギー線を照射して親水性重合体を含有する被膜(B)を形成してなる高分子被膜。
高分子被膜(2): ガラス基材の表面に、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、光重合開始基を有する単量体を重合してなる光重合開始基を有する重合体、光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)、又は光重合開始基を有する単量体とシリル基を有する単量体を重合してなる光重合開始基とシリル基を有する重合体及び重合性不飽和基を有するシランカップリング剤を含有する組成物(a)を被覆して被膜(A)を形成し、その被膜(A)上にフッ素含有単量体を含有する組成物(c)を被覆し、活性エネルギー線を照射してフッ素含有重合体を含有する被膜(C)を形成してなる高分子被膜。 - 前記シリル基は、下記一般式(I)で表されるものである請求項1〜3のいずれかに記載の高分子被膜を有するガラス製品。
−Si(R1)m (R2)n ・・・・(I)(式中、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、アシルオキシ基、水酸基、又はハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数、mは0〜2の整数であり、且つ、m+n=3を表す。) - 前記組成物(a)が、更にラジカル重合性単量体及び無機微粒子の少なくとも1種を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の高分子被膜を有するガラス製品。
- 前記請求項1〜5のいずれかに記載の高分子被膜を形成したガラス基材を備えたガラス製ゴーグル。
- 前記請求項1、請求項2、請求項4又は請求項5に記載の高分子被膜を形成したガラス基材を備えたガラス製鏡。
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