JP3746446B2 - 水性塗料用樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、揮発性有機化合物(以下、VOCという。)をほとんど含有せず、また優れた凍結−融解安定性及び低温造膜性を有し、さらに耐洗浄性、耐汚染性、耐ブロッキング性、耐水性等に優れた塗膜を形成する水性塗料用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、VOCや毒性等の低減に関する環境姿勢が厳しくなり、また、省資源の観点から、塗料業界では溶媒として、有機溶剤を使用した塗料から水を使用した塗料への転換がなされつつある。その代表的な塗料として水性エマルション塗料があるが、この塗料は、水を溶媒として使用しているため、貯蔵中に凍結−融解サイクルによって、分散状態に変化をきたし、粘度上昇や、さらに進んで凝固するなど、凍結−融解安定性が悪いという問題があった。そこで、従来は、凍結防止剤であるエチレングリコール等の有機溶剤を併用し、凍結−融解安定性を改良する方法が、一般的であった。
【0003】
また、水性エマルション樹脂には、固有の最低造膜温度(以下、MFTという。)があり、被塗装面の温度がMFTより低い場合には、造膜のために成膜助剤として有機溶剤を配合する必要があった。従って、水性エマルション塗料といえども相当量のVOCを含んでおり、さらに塗膜の乾燥が不十分な場合、残存するVOCにより、耐水性や耐ブロッキング性が悪くなる問題点があった。
【0004】
そのため、水性エマルション塗料において、環境対策や、省資源対策、さらには臭気防止の観点からVOCを極力少なくする検討がなされている。例えば、低いMFTの水性エマルション樹脂を使用して、VOCを少なくした塗料も開発されてきているが、低いMFTの水性エマルション樹脂を使用した塗料は、耐洗浄性や、耐汚染性、耐水性、耐ブロッキング性に劣り、さらに塗膜強度も劣る問題点があった。また、低VOCで、かつ凍結−融解安定性などを改良した水性エマルション塗料が、例えば、特開平8−302238号公報に開示されている。
【0005】
しかしながら、その塗料も凍結した状態で長期間貯蔵する場合は、やはり凍結−融解安定性が悪くなり、また、得られる塗膜は、耐洗浄性や、耐汚染性、耐ブロッキング性、耐水性が劣るといった問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような、従来の課題を背景になされたもので、環境汚染や、臭気の発生源となる凍結防止剤や、造膜助剤などのVOCを使用しなくても、また使用したとしても少量の添加で、凍結−融解安定性や低温造膜性に優れ、かつ耐洗浄性、耐汚染性、耐ブロッキング性、耐水性に優れた塗膜を形成する水性塗料用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、以下の構成により、上記課題が確実に達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に関するものである。
【0009】
多段乳化重合法によって得られる異相構造エマルション粒子をバインダーとして含有する水性塗料用樹脂組成物において、前記バインダーが、以下の2種類の異相構造エマルション粒子からなることを特徴とする水性塗料用樹脂組成物。
【0010】
(A)異相構造エマルション粒子が、以下の条件(1)〜(3)を満たす異相構造エマルション粒子。
【0011】
(1)異相構造エマルション粒子の最外相を形成する乳化重合体が、ガラス転移温度−50〜10℃のエチレン性不飽和単量体の乳化重合体であり、かつ、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体を1〜20質量%含有する。
【0012】
(2)異相構造エマルション粒子の最外相より内側にある少なくとも一相を形成する乳化重合体が、ガラス転移温度30〜110℃のエチレン性不飽和単量体の乳化重合体である。
【0013】
(3)最低造膜温度が、10℃以下である。
【0014】
(B)異相構造エマルション粒子が、以下の条件(1)〜(3)を満たす異相構造エマルション粒子。
【0015】
(1)異相構造エマルション粒子の最外相を形成する乳化重合体が、ガラス転移温度60〜80℃のエチレン性不飽和単量体の乳化重合体である。
【0016】
(2)異相構造エマルション粒子の最外相より内側にある少なくとも一相を形成する乳化重合体が、ガラス転移温度−50〜0℃のエチレン性不飽和単量体の乳化重合体である。
【0017】
(3)最低造膜温度が10〜30℃である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明の水性塗料用樹脂組成物は、水中にて、エチレン性不飽和単量体を多段乳化重合法によって製造した2種類の異相構造エマルション粒子をバインダーとして使用するものである。
【0020】
多段乳化重合法は、水中にて、エチレン性不飽和単量体を従来から公知の乳化重合法にて重合を2段階以上、通常2〜5段階繰り返し行い、形成されるエチレン性不飽和単量体の乳化重合体が、異相構造、すなわち、最外相と一相以上の内部相とからなるエマルション粒子を形成させる方法である。
【0021】
多段乳化重合法の代表例としては、水中にて乳化剤及び重合開始剤、さらに必要に応じて連鎖移動剤や、乳化安定剤等の存在下で、エチレン性不飽和単量体を、通常60〜90℃の加温下で乳化重合し、この工程を複数段回繰り返し行う方法が挙げられる。
【0022】
前記乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基または硫酸エステル基を有するモノマーのような反応性乳化剤等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、反応性ノニオン界面活性剤等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;(変性)ポリビニルアルコール等を挙げることができる。
【0023】
前記重合開始剤としては、一般的にラジカル重合に使用されているものが使用可能であるが、中でも水溶性のものが好適であり、例えば、過硫酸カリウムや、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩類、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、4,4'−アゾビス−シアノバレリックアシッド、2,2'−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジハイドロクロライドテトラハイドレートなどのアゾ系化合物、過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの過酸化物等が挙げられる。さらに、L−アスコルビン酸や、チオ硫酸ナトリウムなどの還元剤と硫酸第一鉄などを組み合わせたレドックス系も使用できる。
【0024】
前記連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタンなどの長鎖のアルキルメルカプタン類や、芳香族メルカプタン類、ハロゲン化炭化水素類等を挙げることができる。
【0025】
前記乳化安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコ−ルや、ヒドロキシエチルセルロ−ス、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。
【0026】
また、前記乳化重合は、単量体を一括して仕込む単量体一括仕込み法や、単量体を連続的に滴下する単量体滴下法、単量体と水と乳化剤とを予め混合乳化しておき、これを滴下するプレエマルション法、あるいは、これらを組合わせる方法等が挙げられる。
【0027】
本発明の水性塗料用樹脂組成物は、前述の方法により形成される異相構造エマルション粒子(A)と(B)をバインダーとするものである。
【0028】
<異相構造エマルション粒子(A)について>
異相構造エマルション粒子(A)を製造するに当たり、多段乳化重合の最終段階に加えられ、最外相を形成するエチレン性不飽和単量体として、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体を、全エチレン性不飽和単量体中、1〜20質量%、好ましくは、5〜15質量%含有させ、かつ、得られる最外相の乳化重合体のガラス転移温度(以下、Tgという。)が、−50〜10℃、好ましくは−30〜0℃となるエチレン性不飽和単量体を使用する必要がある。また、内部相の少なくとも一相の乳化重合体は、Tgが、30〜110℃、好ましくは34〜90℃となるエチレン性不飽和単量体を使用する必要がある。
【0029】
また、異相構造エマルション粒子(A)バインダーのMFTは、10℃以下、好ましくは5℃以下のものを使用する必要がある。
【0030】
このような条件を満たすことにより、凍結防止剤や成膜助剤等のVOCを使用しなくとも、また使用したとしても、少量の添加で凍結−融解安定性や、低温造膜性、耐汚染性、耐ブロツキング性、耐水性等に優れた塗膜の形成が可能となるのである。
【0031】
なお、本発明において、乳化重合体のTgは、次のFOX式を用いて計算される。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・・+Wi/Tgi+・・・・+Wn/Tgn
〔上記FOX式は、n種の単量体からなる重合体を構成する各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度をTgi(K)とし、各モノマーの質量分率を、Wiとしており、(W1+W2+・・・+Wi+・・・Wn=1)である。〕
【0032】
本発明において、異相構造エマルション粒子(A)の、最外相の乳化重合体のTgが、−50℃未満になると、得られる塗膜の耐汚染性や耐水性等が悪く、逆に10℃を超えると、低温時における造膜性が悪くなる。
【0033】
一方、内部相を形成する全ての相の乳化重合体のTgが、30℃未満になると、得られる塗膜の耐ブロッキング性や物理的強度が悪くなり、逆に110℃を超えると、反応が進まない。
【0034】
また、バインダーのMFTが、10℃を超えると、冬期における低温時において造膜性が悪くなる。
【0035】
次に、異相構造エマルション粒子(A)の形成に使用されるエチレン性不飽和単量体について説明する。
【0036】
最外相を形成する乳化重合体に使用されるエチレン性不飽和単量体は、前述の通り、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体を必須成分として含有するものである。
【0037】
該単量体は、以下の式(1)、(2)または(3)で示されるものである。
・式(1):
CH2=C(R1)−C(=O)−O−〔X−O〕n−R2
(式中、R1は、HまたはCH3であり、R2は、Hまたは炭素数1〜8のアルキル基であり、Xは、−(CH22−、または−CH2CH(CH3)−であり、nは、1〜30の整数である。)
・式(2):
CH2=C(R1)−(CH2m−O−〔X−O〕n−R2
(式中、R1、R2、X及びnは、上記式(1)と同一の意味であり、mは、1〜30の整数である。)
・式(3):
CH2=C(R1)−C(=O)−O−(CH2CH2O)m−〔CH2−CH(CH3)−O〕n−R2
(式中、R1及びR2は、上記式(1)と同一の意味であり、m及びnは、1〜30の整数である。)
【0038】
これらの式で示される単量体が、最外相を形成する全エチレン性不飽和単量体中、1質量%未満となると、塗料の凍結−融解安定性が悪くなり、逆に20質量%を超えると、得られる塗膜の耐水性が悪くなるので好ましくない。
【0039】
これらのモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸やアリルアルコール等にエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドを付加重合反応させた後、必要に応じて、炭素数1〜8個のアルキル基でエーテル化することによって、容易に製造することができる。このようなモノマーとしては、例えば、商品名として、「MA−30」、「MA−50」、「MA−100」、「MA−150」、「MPG−130MA」(以上、日本乳化剤(株)製)、「ブレンマ−PE」、「ブレンマ−PP」、「ブレンマ−AP−400」、「ブレンマ−AE−350」、「ブレンマ−PEP」(以上、日本油脂(株)製)等のモノマーが挙げられる。
【0040】
また、これらの式で示される単量体と共重合する共単量体としては、従来からアクリル樹脂の製造に使用されている各種エチレン性不飽和単量体が、特に制限なく使用できる。
【0041】
具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレートや、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、α−クロロエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系単量体;スチレンや、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレンなどのスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステルなどのカルボキシル基含有単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2(3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミドや、マレインアミドなどのアミド基含有単量体;2−アミノエチル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジンなどのアミノ基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と、活性水素原子を有する単量体との反応により得られるエポキシ基含有単量体やオリゴマー;その他N−メチロール基を有した、N−メチロールアクリルアミドや、酢酸ビニル、塩化ビニル、さらには、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレートなどが代表的なものとして挙げられる。
【0042】
これら共単量体は、前述の通り、最外相を形成する乳化重合体のTgが−50〜10℃になり、また、前記バインダーのMFTが、10℃以下になるよう適宜組合わせて使用すればよい。
【0043】
また、異相構造エマルション粒子の内部相の少なくとも一相の乳化重合体に使用されるエチレン性不飽和単量体としては、前述のエチレン性不飽和単量体と同様のものが使用できるが、乳化重合体のTgが、30〜110℃になり、また前記バインダーのMFTが、10℃以下になるように適宜組合わせて使用する必要がある。
【0044】
なお、最外相と、その内部相の一相を形成する乳化重合体は、前述のTg、MFTを満足する単量体を組合わせればよいが、さらに好ましくは、両者のTg差が30℃以上であり、かつ異相構造エマルション粒子からなるバインダーのMFTが、両者の全単量体を一段で均一に乳化重合して得られる重合体のMFTより低くなるような単量体を選択し、使用することが好ましい。
【0045】
また、エチレン性不飽和単量体として、カルボキシル基含有単量体を使用している場合は、アンモニアや、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等の中和剤で、中和することも可能である。
【0046】
<異相構造エマルション粒子(B)について>
異相構造エマルション粒子(B)は、前述異相構造エマルション粒子(A)と同様にして製造される。ただし異相構造エマルション粒子(B)を製造するに当たり、多段乳化重合の最終段階に加えられ、最外相を形成するエチレン性不飽和単量体として、得られる最外相の乳化重合体のTgが、60〜80℃、好ましくは65〜75℃となるエチレン性不飽和単量体を使用する必要がある。また、内部相の少なくとも一相の乳化重合体は、Tgが、−50〜0℃、好ましくは−30〜0℃となるエチレン性不飽和単量体を使用する必要がある。
【0047】
また、異相構造エマルション粒子(B)バインダーのMFTは、10〜30℃、好ましくは15〜25℃のものを使用する必要がある。
【0048】
このような条件を満たすことにより、耐洗浄性や、耐汚染性、耐ブロッキング性、耐水性等に優れた塗膜の形成が可能となるのである。
【0049】
本発明において、異相構造エマルション粒子(B)の、最外相の乳化重合体のTgが、60℃未満になると、得られる塗膜の汚染性、粘着性等が悪くなり、逆に、80℃を超えると、造膜性、耐クラック性等が悪くなる。
【0050】
一方、内部相を形成する全ての相の乳化重合体のTgが、−50℃未満になると、得られる塗膜の硬さ等が悪くなり、逆に0℃を超えると、造膜性が悪くなる。
【0051】
また、バインダーのMFTが、10℃未満になると、粘着性等が悪くなり、逆に30℃を超えると、耐クラック性が悪くなる。
【0052】
異相構造エマルション粒子(B)の形成に使用されるエチレン性不飽和単量体は、前述の異相構造エマルション粒子(A)で説明した各種(共)単量体と同様なものが使用でき、得られる乳化重合体が、前記Tg、METの範囲となるよう適宜(共)単量体を組合せて使用すればよい。
【0053】
本発明の水性塗料用樹脂組成物は、以上説明した多段乳化重合法によって得られる2種類のエマルションを混合した、異相構造エマルション粒子(A)、(B)をバインダーとして含有するものである。
【0054】
エマルションの混合割合は、異相構造エマルション粒子(A)と異相構造エマルション粒子(B)の質量割合(固形分換算)が、100:10〜70であることが好ましく、100:20〜50であることがより好ましい。なお、後者が、前記範囲より少ないと、得られる塗膜の耐洗浄性や、耐汚染性等が悪くなる傾向にあり、逆に、前記範囲より多くなると、凍結ー融解安定性等が悪くなる傾向にあり、また、MFTが高くなるので、凍結防止剤や成膜助剤等を多く添加する必要が生じ、塗料中のVOCが高くなる。
【0055】
本発明の水性塗料用樹脂組成物は、異相構造エマルション粒子(A)、(B)のバインダーを水に分散(エマルション)した状態のものだけでもクリヤー塗料として使用可能であるが、塗料としての各種機能を付与させるために、防カビ剤や、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定性、さらに体質顔料や、着色顔料を配合する場合は、分散剤や沈降防止剤、増粘剤等の各種添加剤を配合するのが望ましい。このようにして得られた塗料は、各種無機質素材や、金属素材、木材素材、プラスチック素材等に適用でき、自然乾燥もしくは100℃以下の温度で強制乾燥させることにより、優れた塗膜を形成することが可能である。
【0056】
【実施例】
以下、本発明について、実施例によりさらに詳細に説明する。なお、実施例中「部」、「%」は、特に断らない限り質量基準で示す。
【0057】
【表1】
Figure 0003746446
【0058】
表1で示した単量体原料の略号は、下記の意味を有する。
MMA :メチルメタクリレート
2HA :2−エチルへキシルアクリレート
BA :アクリル酸ブチル
AA :アクリル酸
ハイテノールN08:ポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸アンモニウム塩(第一工業製薬社製商品名)
PPGモノマー :ポリプロピレングリコール鎖保有単量体
2C=C(CH3)−C(=O)−O(CH2CH(CH3)O)6
【0059】
また、表1に示した計算Tgにおいて、[トータル(℃)]は、「内部の原料、最外層の原料の混合物を一段で均一乳化重合させた場合に得られる重合体の計算Tg」であり、MFTは、温度勾配法によって成膜不良時点の温度である。
【0060】
<凍結−融解安定性>
(1)各塗料を1リットル内面コート缶にほぼ満たしてから密閉した。
(2)−20℃の冷凍庫に24時間貯蔵し、完全に凍結させた。
(3)冷凍庫から取り出し、20℃で24時間放置し融解させた。
(4)缶内の塗料を撹拌して塗料の状態を目視判定するとともに、凍結前の塗料との粘度変化、及びガラス板に6ミルアプリケーターで塗装し、その塗膜外観も確認した。
【0061】
(評価基準)
○:凝固物・ゲルの発生は認められず、粘度変化も殆どみられなかった。
△:凝固物・ゲルの発生は認められないが、粘度の変動が確認された。
×:粘度の変化が著しい、或いは、凝固物の発生、ゲル化が認められる。
【0062】
<低温造膜性>
(1)各塗料を5℃の低温恒温室にて、ガラス板に6ミルアプリケーターを用いて塗装し、一日放置した。
(2)得られた塗膜の外観を目視で判定した。
【0063】
(評価基準)
○:マッドクラック、マイクロクラックなどの成膜不良部が全く見受けられず、完全に成膜している。
△:大半は成膜しているが、局所的にクラックなどの成膜不良部が見受けられる。
×:全面にクラック、剥離などがみられる。
【0064】
【表2】
Figure 0003746446
【0065】
実施例1、比較例1、2、参考例1で得られた塗料につき、性能評価するため以下の方法で試験し、その結果を表2の下段に示した。
【0066】
<耐汚染性>
各水性塗料組成物をガラス板に6ミルアプリケーターにて塗装し、100℃で5分間強制乾燥させた試験板に赤、黒マジックインキを塗布してから24時間後に、キシレンで濡らした布で拭き取り、除染性を目視判定した。
【0067】
(評価基準)
◎:完全除去
○:極軽微な汚染
△:少し汚染
×:汚染著しい
【0068】
<耐クラック性>
予め40℃に熱しておいたガラス板に6ミルアプリケーターを用いて各水性塗料組成物を塗装し、130℃×30秒のジェット乾燥を実施した後の塗膜の外観を目視判定した。
【0069】
(評価基準)
◎:異常なし
○:一部にクラックがある
△:半分程度の面にクラックがある
×:全面にクラックがある
【0070】
<耐ブロッキング性>
各水性塗料組成物をガラス板に6ミルアプリケーターにて塗装し、100℃で5分間強制乾燥させた試験板を、50℃に加温しておいたホットプレート上に置いた。次に、塗膜表面にガーゼをのせ、さらにその上に事前に50℃まで加温した500g分銅を置き、4.9N/cm2(0.5kg/cm2)の加重を1時間かけた。そして、常温まで冷却した後、ゆっくりガーゼをはがし、その時のはがし抵抗、及びガーゼの痕跡を目視で判定した。
【0071】
(評価基準)
◎:ガーゼが自然に落下し、塗膜上にガーゼの痕跡が殆ど残っていない。
○:ガーゼが自然に落下することはないが、塗膜上にガーゼの痕跡は殆ど残っていない。
△:ガーゼが自然に落下することはないが、少しの力で剥離することができ、ガーゼの痕跡が多少残っている。
×:ガーゼを剥離時に塗膜の一部も剥離し、ガーゼの痕跡がくっきり残っている。
【0072】
【発明の効果】
本発明の水性塗料用樹脂組成物は、低VOCであるため、環境汚染や、臭気が防止でき、また、凍結−融解安定性や低温造膜性に優れ、かつ耐洗浄性、耐汚染性、耐ブロッキング性、耐水性に優れた塗膜を形成する。

Claims (2)

  1. 多段乳化重合法によって得られる異相構造エマルション粒子をバインダーとして含有する水性塗料用樹脂組成物において、前記バインダーが、以下の2種類の異相構造エマルション粒子からなることを特徴とする水性塗料用樹脂組成物。
    (A)異相構造エマルション粒子が、以下の条件(1)〜(3)を満たす異相構造エマルション粒子。
    (1)異相構造エマルション粒子の最外相を形成する乳化重合体が、ガラス転移温度−50〜10℃のエチレン性不飽和単量体の乳化重合体であり、かつ、ポリエチレングリコール鎖及びポリプロピレングリコール鎖の少なくとも一方を有するエチレン性不飽和単量体を1〜20質量%含有する。
    (2)異相構造エマルション粒子の最外相より内側にある少なくとも一相を形成する乳化重合体が、ガラス転移温度30〜110℃のエチレン性不飽和単量体の乳化重合体である。
    (3)最低造膜温度が、10℃以下である。
    (B)異相構造エマルション粒子が、以下の条件(1)〜(3)を満たす異相構造エマルション粒子。
    (1)異相構造エマルション粒子の最外相を形成する乳化重合体が、ガラス転移温度60〜80℃のエチレン性不飽和単量体の乳化重合体である。
    (2)異相構造エマルション粒子の最外相より内側にある少なくとも一相を形成する乳化重合体が、ガラス転移温度−50〜0℃のエチレン性不飽和単量体の乳化重合体である。
    (3)最低造膜温度が10〜30℃である。
  2. (A)異相構造エマルション粒子と(B)異相構造エマルション粒子の質量割合(固形分換算)が、100:10〜70である請求項1に記載の水性塗料用樹脂組成物。
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