JPWO2003106539A1 - 生分解性樹脂、生分解性樹脂組成物、生分解性成形体、生分解性樹脂の製造方法 - Google Patents

生分解性樹脂、生分解性樹脂組成物、生分解性成形体、生分解性樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

生分解性樹脂に共有結合性の熱可逆的架橋構造を導入することで、生分解性を損なうことなく、十分な耐熱性、成形性およびリサイクル性を有する生分解性樹脂を得ることができる。必要に応じて、架橋構造の解離温度を所定の範囲とし、架橋構造の種類を選択し、架橋構造を三次とすることで、耐熱性、成形性、リサイクル性および生分解性を更に向上できる。

Description

技術分野
本発明は、熱可逆的な架橋方法を用いることにより、マテリアルリサイクルを容易にし、耐熱性および成形加工性に優れ、生分解可能な樹脂および樹脂組成物、及びこれらの製造方法に関する。
背景技術
プラスチックは、賦形が容易であり、軽量であり、安価であり、腐食し難い等の優れた特性を有することから、広範な産業分野において多量に使用されている。しかしながら、腐食し難い性質のため、使用済みのプラスチックを自然界に廃棄しても分解されず、環境問題を引起す場合がある。また、自然界に廃棄できないため、使用後に焼却処分などを行う必要があるが、燃焼時の発熱量が大きいため、焼却の際に焼却炉を傷める恐れや、焼却にともないダイオキシンを発生する場合もある。この様な観点から、リサイクル可能で、使用後に自然界に廃棄されると、微生物などに分解される生分解性のプラスチックが望まれている。特に、製造エネルギーの削減や二酸化炭素の排出量を低減の面から、サーマルリサイクルよりもマテリアルリサイクルの可能な生分解性プラスチックが望まれている。
しかしながら、一般のプラスチックと比較して、従来の生分解性プラスチックでは、耐熱性などの特性が不十分な場合がある。このため、生分解性プラスチックの耐熱性などの特性向上を目的に、例えば、特開平6−192375号公報では、ポリカプロラクトンをイソシアネートで架橋しており、共有結合性の架橋構造を導入して生分解性プラスチックの耐熱性を向上させる技術が提案されている。
しかし、上記の従来技術では、架橋構造によって生分解性プラスチックの耐熱性などが向上するが、加熱溶融時の流動性の低下する恐れや、成形性が不十分となる恐れ、或いは、生分解性が低下する恐れがある。また、特に高度に架橋された生分解性プラスチックの場合、これを一度成形すると、あたかも熱硬化性樹脂の様に振舞い、これを回収しリサイクルしようとしても、2度目以降の成形時に十分加熱溶融せず、リサイクルが困難になることもある。
リサイクル性の向上を目的として、共有結合性熱可逆架橋構造をプラスチックに導入することが提案されている。まず、共有結合性熱可逆反応の例としては、Engleら、J.Macromol.Sci.Re.Macromol.Chem.Phys.、第C33巻、第3号、第239〜257頁、1993年刊に、ディールスアルダー反応、ニトロソ二量化反応、エステル化反応、アイオネン化反応、ウレタン化反応、アズラクトン−フェノール付加反応が記載されている。
また、中根喜則および石戸谷昌洋ら、色材、第67巻、第12号、第766〜774頁、1994年刊;中根喜則および石戸谷昌洋ら、色材、第69巻、第11号、第735〜742頁、1996年刊;特開平11−35675号公報には、ビニルエーテル基を利用する熱可逆架橋構造が記載されている。
更に、共有結合性熱可逆架橋構造利用し、リサイクル性を得ている例としては、次のようなものがある。
特開平7−247364号公報には、可逆架橋が可能なオリゴマーを利用して、オリゴマーを分別回収し、ケミカルリサイクルする方法が記載されており、架橋部分の解離方法として紫外線を照射する手法とディールスアルダー反応を利用した熱による解離手法が記載されている。しかしながら、光を利用した解離反応を均一に行なう為には、成形物のままでは光に対する透明性を確保することは難しく、有機溶媒に希釈溶解した状態で行なう必要があり、通常の加熱溶融による樹脂のマテリアルリサイクルに比べ著しく効率が悪い。また、当該公報の実施例3によれば、熱による解離反応が90℃で起こっている。この解離温度は、母材となる樹脂(ポリアクリレート)のガラス転移温度(90〜105℃)以下であり、むしろ耐熱性を損なっている。100℃以上の十分な耐熱性を向上することを目的とする場合、架橋部分の解離反応は少なくとも120℃を超えた温度で起こる必要がある。従って、適切な解離反応温度を有する可逆架橋部位を選定し、これを樹脂に適用する必要がある。
特表平10−508655号公報には、2,5−ジアルキル置換フランを樹脂に導入しリサイクル性を達成している。フランの導入方法として一酸化炭素とオレフィンの共重合体を強酸による脱水反応により実施されている。しかしながら、生分解性樹脂の場合、エステル結合等容易に加水分解する官能基により重合している。このような手法でフラン環を導入することは、樹脂の分解を引き起こすため非常に困難である。また、架橋部の解離温度やジエンの熱安定性は、反応場の極性や濃度に大きく依存する。生分解樹脂の場合、ディールスアルダー反応を2,5−ジアルキル置換フランを用いたものに限定する必要はない。
また、酸無水物のエステル化反応による可逆反応を耐熱性向上とリサイクル性向上に利用した例が特開平11−106578号公報などに記載されており、ビニル重合化合物にカルボン酸無水物を導入し、ヒドロキシ基を有するリンカーで架橋する手法が示されている。しかしながら、生分解性樹脂の多くはエステル結合のような、カルボン酸が触媒となる加水分解性の結合を主鎖に有している。酸無水物のエステル化反応を生分解性樹脂に導入した場合、架橋部を形成した状態でフリーのカルボン酸が生じており、成形前の樹脂の保存時或いは、成型物の使用時において母材となる生分解性樹脂の加水分解速度が著しく速くなる為、樹脂の耐湿性・耐久性が必要以上に低下し、実用に供しえなくなる。
一方、カルボキシル−アルケニルオキシ型の場合は、結合解離温度を120℃以上のものを使用すれば、100℃以下の実用温度域では、フリーのカルボン酸は生じ無い。また、成形に際し、予め十分樹脂を乾燥しておけば、加水分解は起こらずその耐久性を損なう事はない。また、ニトロソ2量体型、ウレタン型、およびアズラクトン−ヒドロキシアリール型も適用可能である。
また、静電結合による熱可逆架橋構造を生分解性樹脂に導入している例もある。まず、静電結合の例としては、特開2000−281805号公報や矢野紳一著、アイオノマーの物性と工業的応用;M.R.Tantら著、Ionomers(ISBN:0−7514−0392−X)がある。
静電結合による熱可逆架橋構造を生分解性樹脂に利用した例として、特開2000−281805号公報には、強度を向上する目的で、カルボキシル基を有するカルボキシメチルセルロースやカルボキシル基含有澱粉等の多糖類のカルボキシル基をMgイオン等の多価金属イオンで架橋したイオン架橋フィルムが開示されている。しかしながら、一般に静電結合は共有結合に比べ結合強度に劣るため樹脂の粘度や弾性率は著しく向上するものの、耐熱性については、充分な向上は望めない。
以上の様に、樹脂材料に共有結合性熱可逆架橋構造を導入し、樹脂材料のリサイクル性を実現する試みは多数なされているものの、これを生分解性樹脂材料に適用した例は余り見受けられない。また、生分解性樹脂材料に共有結合性熱可逆架橋構造を導入するには技術的困難があり、リサイクル性の生分解性樹脂材料で実際の使用に耐え得るだけの性能を実現することは、従来、困難であった。
発明の開示
以上の様な状況に鑑み、生分解性樹脂材料に共有結合性熱可逆架橋構造を導入し、実際の使用に耐え得るだけの性能を有するリサイクル性の生分解性樹脂材料を提供することを、本発明の目的とする。
より具体的には、十分な耐熱性、成形性、リサイクル性および生分解性を有する樹脂および樹脂組成物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明によれば、冷却により共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する官能基を有する生分解性樹脂が提供される。
また、冷却により共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第1官能基を有する第1生分解性樹脂と、冷却により該第1官能基と共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第2官能基を有する第2生分解性樹脂とを含む生分解性樹脂組成物が提供される。
また、冷却により共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第1官能基を有する第1生分解性樹脂と、冷却により該第1官能基と共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第2官能基を有するリンカーとを含む生分解性樹脂組成物が提供される。
また、冷却により共有結合し加熱により開裂する第1官能基および第2官能基が該共有結合した構造と、第3官能基とを有する架橋剤と、該第3官能基の反応する部位を有する生分解性樹脂材料とを該反応させる工程を含む生分解性樹脂の製造方法が提供される。
また、冷却により共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第1官能基を有する第1生分解性樹脂と、冷却により該第1官能基と共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第2官能基を2以上有するリンカーとを該架橋させる工程を含む生分解性樹脂の製造方法が提供される。
熱可逆的な架橋構造を有する生分解性樹脂の架橋構造は、溶融成形時には開裂する。このため、耐熱性などの特性を十分なものとするに必要な数の架橋構造の部位を導入しても、溶融時には適度な粘度を有し、良好な成形加工性を実現できる。また、これを一度成形しても、成形体が熱硬化性樹脂の様に振舞うことは無く、これを回収しリサイクルする際、2度目以降の成形時にも十分に加熱溶融し、良好なリサイクル性を実現できる。また、冷却すれば固化して再び架橋構造が形成されるため、成形体は十分な耐熱性を有する。
特に、共有結合性の熱可逆的な架橋構造は静電結合による熱可逆的な架橋構造に比べ結合力が適度であるため、これを生分解性の材料に導入することにより、高温成形時には架橋構造が開裂し高い流動性を確保しつつ、利用環境下では架橋構造により従来の生分解性樹脂材料の欠点である耐熱性および強度などを向上できる。
熱可逆的な架橋構造の場合、高温において架橋部位が開裂した後、引き続き行われる冷却操作により架橋部位が再度形成する。このため、温度変化により何度でも架橋部位の開裂および再形成を繰り返すことができる。この様な架橋構造を生分解性樹脂材料に導入することにより、優れた樹脂および樹脂組成物を得ることができる。即ち、常温などの成形体を利用する温度領域では、高次架橋構造を形成し耐熱性および強度を向上することが可能であり、成形温度などの溶融温度以上の領域では、架橋構造を失い樹脂が低分子化するため、流動性が向上し、成形性およびマテリアルリサイクル性を向上できる。
なお、成形体は、固化している際には、共有結合で架橋された樹脂を主に含むが、溶融時には架橋部位が開裂するため、2種以上の樹脂を含む組成物となったり、樹脂およびリンカーを含む組成物となる場合がある。このため、樹脂および樹脂組成物を特に区別する必要がない場合、これらを樹脂物とも呼ぶ。
また、共有結合性で熱可逆的な架橋構造に加え、静電結合性で熱可逆的な架橋構造を生分解性樹脂に導入することにより、更に高性能で広範囲な物性を実現できる。この具体例としては、共有結合性架橋構造を形成する官能基と、静電結合性架橋構造を形成する官能基とを同一の生分解性樹脂材料に導入する方法;共有結合性架橋構造を形成する官能基が導入された生分解性樹脂材料と、静電結合性架橋構造を形成する官能基が導入された生分解性樹脂材料とを混合する方法;共有結合性および静電結合性の両方の性質を有する架橋構造を形成する官能基を導入する方法などを挙げることができる。
なお、静電結合性の架橋構造は、水分の存在下、土壌埋設時などにおいて、急速に生分解される。
以上の結果、生分解性樹脂材料に共有結合性熱可逆架橋構造を導入でき、リサイクル性の生分解性樹脂材料で実際の使用に耐え得るだけの性能を実現できる。
よって、十分な耐熱性、成形性、リサイクル性および生分解性を有する樹脂および樹脂組成物を実現できる。
更に、生分解性樹脂材料の種類を注意深く選択したり、架橋構造の解離温度を所定の範囲としたり、架橋構造の種類を注意深く選択したり、架橋構造を三次とすることで、耐熱性、成形性、リサイクル性および生分解性を更に向上できる。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明を詳細に説明する。
(生分解性樹脂材料)
生分解性樹脂の原料となる生分解性樹脂材料は、熱可逆的な架橋構造を形成するために導入される官能基の性質を十分に考慮して選択する。
この様な生分解性樹脂材料としては、主に人工的に合成され入手できる生分解性のモノマー、オリゴマー及びポリマー;主に人工的に合成され入手できる生分解性のモノマーの誘導体、オリゴマーの変性体およびポリマーの変性体;主に天然で合成され入手できる生分解性のモノマー、オリゴマー及びポリマー;主に天然で合成され入手できる生分解性のモノマーの誘導体、オリゴマーの変性体およびポリマーの変性体などを使用する。
人工合成生分解性オリゴマー及びポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸(島津製作所製、商品名:ラクティー等)、ポリグリコール酸などのポリアルファヒドロキシ酸、ポリイプシロンカプロラクトン等のポリオメガヒドロキシアルカノエート(ダイセル社製、商品名:プラクセル等)、ブチレンサクシネート及び/又はエチレンサクシネートの重合体であるポリアルキレンアルカノエート(昭和高分子社製、商品名:ビオノーレなど)、ポリブチレンサクシネート等のポリエステル類、ポリ−γ−グルタメート(味の素社製、商品名:ポリグルタミン酸など)等のポリアミノ酸類、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等のポリオール類などを挙げることができる。
なお、これらの人工合成生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体も好適に使用できる。
また、天然合成生分解性オリゴマー及びポリマーとしては、澱粉、アミロース、セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサン、ゲランガム、カルボキシル基含有セルロース、カルボキシル基含有デンプン、ペクチン酸、アルギン酸などの多糖類;微生物により合成されるヒドロキシブチレート及び/又はヒドロキシバリレートの重合体であるポリベータヒドロキシアルカノエート(ゼネカ社製、商品名:バイオポール等)などを挙げることができ、中でも、澱粉、アミロース、セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサン、微生物により合成されるヒドロキシブチレート及び/又はヒドロキシバリレートの重合体であるポリベータヒドロキシアルカノエート等が好ましい。
なお、天然合成生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体も好適に使用できる。
更に、天然合成生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体としては、リグニン等を使用できる。リグニンは、木材中に20〜30%含有されるコニフェリルアルコール及びシナピルアルコールの脱水素重合体で、生分解される。
以上の様な生分解性樹脂材料の中でも、人工合成生分解性オリゴマー及びポリマー、人工合成生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体、天然合成生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体が、分子間の結合力が適度であるため熱可塑性に優れ、溶融時の粘度が著しく上昇することは無く、良好な成形加工性を有するため好ましい。
なかでも、ポリエステル類およびポリエステル類の変性体が好ましく、脂肪族ポリエステル類および脂肪族ポリエステル類の変性体が更に好ましい。また、ポリアミノ酸類およびポリアミノ酸類の変性体が好ましく、脂肪族ポリアミノ酸類および脂肪族ポリアミノ酸類の変性体が更に好ましい。また、ポリオール類およびポリオール類の変性体が好ましく、脂肪族ポリオール類および脂肪族ポリオール類の変性体が更に好ましい。
なお、原料となる生分解性樹脂材料の数平均分子量は、得られる生分解性樹脂の性能(加工性、成形体の耐熱性、成形体の機械的特性など)の観点から、100以上が好ましく、一方、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、100,000以下が更に好ましく、10,000以下が最も好ましい。
以上の様な生分解性樹脂材料、その誘導体またはその変性体に対して熱可逆的な架橋構造を形成する官能基を導入することにより、熱可逆架橋性生分解性樹脂を製造できる。
熱可逆的架橋に必要な官能基は、生分解性樹脂材料の分子鎖末端に導入してもよいし、分子鎖中に導入してもよい。また、導入の方法としては、付加反応、縮合反応、共重合反応などを用いることができる。生分解性樹脂材料の多くは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基等の官能基を有している。従って、これらの官能基を直接、熱可逆架橋部位として利用することもできれば、これらの官能基を、熱可逆架橋を形成する官能基に誘導することもできる。
例えば、ヒドロキシル基が必要な場合は下記のような方法が可能である。
(ア)多糖類およびポリオール類はヒドロキシル基を既に有している。
(イ)ポリエステル類は、分子鎖末端部にヒドロキシル基およびまたはカルボキシル基を有している。分子鎖の両末端がヒドロキシル基のポリエステル類としては、例えば、両末端ヒドロキシPBS(ポリブチレンサクシネート)を挙げることができる。両末端ヒドロキシPBSは、例えば、1,4−ブタンジオール及びコハク酸を、1,4−ブタンジオール/コハク酸(モル比)が1より多く、より好ましくは1.05以上、更に好ましくは1.1以上となるよう仕込み、脱水縮合反応を行うことにより得られる。
(ウ)一方、分子鎖の末端にカルボキシル基が存在するポリエステル類については、カルボキシル基をヒドロキシル基で封止することにより、両末端がヒドロキシル基のポリエステル類を得ることができる。封止に用いる化合物としてはジオールやポリオールなど2つ以上のヒドロキシル基を持つものが望ましく、3つ以上ヒドロキシル基をもつ化合物を用いれば、3次元架橋構造の架橋点を形成する事が出来るので特に望ましい。例えば、ラクチドを開環重合して得られるポリ乳酸のカルボキシル基をペンタエリスリトールでエステル化して封止することにより、分子鎖の両末端にヒドロキシル基が存在するポリエステルが得られる。なお、「ヒドロキシル基により封止する」とは、例えば末端をヒドロキシル基に誘導することを言う。
(エ)また、Chan−Ming D.らの手法(Polymer、第42巻、第6891頁、2001年刊)に従い、多官能ヒドロキシル化合物を中核としてラクチドを開環重合により順次付加することにより、末端がヒドロキシル基となるポリエステルを調製することも可能である。
エステル化反応には、酸やアルカリの他にカルボジイミド類などの試薬を用いることも可能である。また、カルボキシル基を塩化チオニルやアリルクロライドなどを用いて酸塩化物に誘導した後、ヒドロキシル基と反応する事によりエステル化することも可能である。また、ポリブチレンサクシネートやポリエチレンサクシネートやポリブチレンサクシネートアジペートのようなジカルボン酸およびジオールを原料として合成されているものについては、使用する原料のジオール/ジカルボン酸のモル比率を1より多くすることにより、分子鎖の末端基をすべてヒドロキシル基にすることが可能である。
また、エステル交換反応により、末端をヒドロキシル基にすることが可能である。即ち、ポリエステル樹脂にたいし、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物によりエステル交換することにより、末端がヒドロキシル基を有するポリエステル樹脂が得られる。
ヒドロキシル基を持つ化合物として、3つ以上ヒドロキシル基をもつ化合物を用いれば、3次元架橋構造の架橋点を形成する事が出来るので特に望ましい。例えば、ポリ乳酸のエステル結合をペンタエリスリトールでエステル交換することにより、分子鎖の末端にヒドロキシル基が合計で4つ存在するポリエステルが得られる。なお、末端部にカルボン酸を有する樹脂や未反応のヒドロキシル基を有する化合物は容易に精製除去可能である。
生分解性樹脂材料およびヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料にヒドロキシベンゾイックアシッドでエステル反応を行えば、ヒドロキシル基をフェノール水酸基に変性することが可能である。
カルボキシル基が必要な場合は、生分解性樹脂材料が有するヒドロキシル基に対し、2官能以上カルボン酸を有する化合物を上述のエステル化反応により結合させれば、カルボキシル基に変性する事が可能である。特に酸無水物を用いれば、容易にカルボキシル基を有する生分解性樹脂材料を調製する事が可能である。酸無水物としては、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸やこれらの誘導体を利用することが可能である。
(架橋部位の化学構造)
架橋部位は、加熱により開裂し冷却により共有結合する2つの第1官能基および第2官能基より構成される。溶融加工温度より低温で固化している際には、第1官能基および第2官能基は共有結合により架橋を形成しており、溶融加工温度などの所定の温度以上では、第1官能基および第2官能基に開裂する。架橋部位の結合反応および開裂反応は温度変化により可逆的に進行する。なお、第1官能基および第2官能基は、異なる官能基でも良いし同じ官能基でも良い。同一の2つの官能基が対称的に結合して架橋を形成する場合、同一の官能基を第1官能基および第2官能基として使用できる。
加熱により結合して架橋部位を形成し、冷却により開裂する可逆的な反応形式は特に制限されないが、樹脂物の生産性、樹脂物の成形性、成形体の性能(機械的特性および耐熱性など)などの観点から、以下より選択されることが望ましい。
(1)ディールス−アルダー型架橋
ディールス−アルダー[4+2]環化反応を利用する。共役ジエン及びジエノフィルを官能基として導入することにより、熱可逆的架橋を形成する生分解性樹脂を得る。共役ジエンとしては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、シクロペンタジエン環、1,3−ブタジエン、チオフェエン−1−オキサイド環、チオフェエン−1,1−ジオキサイド環、シクロペンタ−2,4−ジエノン環、2Hピラン環、シクロヘキサ−1,3−ジエン環、2Hピラン1−オキサイド環、1,2−ジヒドロピリジン環、2Hチオピラン−1,1−ジオキサイド環、シクロヘキサ−2,4−ジエノン環、ピラン−2−オン環およびこれらの置換体などを官能基として用いる。ジエノフィルとしては、共役ジエンと付加的に反応して環式化合物を与える不飽和化合物を用いる。例えば、ビニル基、アセチレン基、アリル基、ジアゾ基、ニトロ基およびこれらの置換体などを官能基として用いる。また、上記共役ジエンもジエノフィルとして作用する場合がある。
これらの中でも、例えば、シクロペンタジエンを架橋反応に用いることができる。ジシクロペンタジエンは共役ジエン及びジエノフィルの両作用を有する。シクロペンタジエンカルボン酸の2量体であるジシクロペンタジエンジカルボン酸は、市販のシクロペンタジエニルナトリウムから容易に得ることができる(E.Rukcensteinら、J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.、第38巻、第818〜825頁、2000年刊)。このジシクロペンタジエンジカルボン酸は、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料、ヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料などに、エステル化反応によりヒドロキシル基の存在している部位に架橋部位として導入される。
また、例えば、3−マレイミドプロピオン酸および3−フリルプロピオン酸を用いれば、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料、ヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料などに、エステル化反応によりヒドロキシル基の存在している部位に容易に架橋部位を導入できる。
架橋部位の導入に利用する上記のエステル化反応については、酸およびアルカリ等の他にカルボジイミド類などの触媒を用いることも可能である。また、カルボキシル基を塩化チオニル又はアリルクロライド等を用いて酸塩化物に誘導した後、ヒドロキシル基と反応する事によりエステル化することも可能である。酸塩化物を用いれば、アミノ基とも容易に反応するためアミノ酸類およびその誘導体のアミノ基側にも導入できる。
これらの官能基は、以下の一般式(I)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
(2)ニトロソ2量体型架橋
例えば、ニトロソベンゼンを架橋反応に用いる。ニトロソベンゼンとしては、例えば、ジニトロソプロパン、ジニトロソヘキサン、ジニトロソベンゼン、ジニトロソトルエン等を用いる。例えば、4−ニトロソ−3,5−ベンジル酸の2量体(米国特許第3,872,057号公報に、4−ニトロソ−3,5−ジクロロベンゾイルクロライドの2量体の合成方法が記載されている。)を用い、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料のヒドロキシル基、ヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料のヒドロキシル基などと反応する事により、ヒドロキシル基の存在している部位に容易に熱可逆的架橋部位を導入できる。また、酸塩化物を用いれば、アミノ基とも容易に反応するためアミノ酸類およびその誘導体のアミノ基側にも導入できる。
これらの官能基は、以下の一般式(II)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
一般式(II)においては、冷却により2つのニトロソ基がニトロソ二量体を形成して架橋となる。この架橋は加熱により開裂する。
(3)酸無水物エステル型架橋
酸無水物およびヒドロキシル基を架橋反応に用いることができる。酸無水物としては、脂肪族無水カルボン酸および芳香族無水カルボン酸などを用いる。また、環状酸無水物基および非環状無水物基のいずれも用いることができるが、環状酸無水物基が好適に用いられる。環状酸無水物基は、例えば、無水マレイン酸基、無水フタル酸基、無水コハク酸基、無水グルタル酸基が挙げられ、非環状酸無水物基は、例えば、無水酢酸基、無水プロピオン酸基、無水安息香酸基が挙げられる。中でも、無水マレイン酸基、無水フタル酸基、無水コハク酸基、無水グルタル酸基、無水ピロメリット酸基、無水トリメリット酸基、ヘキサヒドロ無水フタル酸基、無水酢酸基、無水プロピオン酸基、無水安息香酸基およびこれらの置換体などが、ヒドロキシル基と反応して架橋構造を形成する酸無水物として好ましい。
ヒドロキシル基は、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料のヒドロキシル基、各種の反応によりヒドロキシル基が導入された生分解性樹脂材料などのヒドロキシル基を使用する。また、ジオール及びポリオール等のヒドロキシ化合物を架橋剤として用いても良い。更に、ジアミン及びポリアミンを架橋剤として用いることもできる。酸無水物として、例えば、無水ピロメリット酸のような酸無水物を2つ以上有するものを用いれば、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料、ヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料などに対し架橋剤として使用できる。
また、無水マレイン酸をビニル重合により不飽和化合物と共重合することにより2つ以上の無水マレイン酸を有する化合物が容易に得られる(特開平11−106578号公報、特開2000−34376号公報)。これも、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料、ヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料などに対する架橋剤として使用できる。
以上の様な酸無水物とヒドロキシル基とは、以下の一般式(III)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
一般式(III)においては、冷却により酸無水物基と水酸基とがエステルを形成して架橋となる。この架橋は加熱により開裂する。
(4)ハロゲン−アミン型架橋
ポリアミン及びテトラメチルヘキサンジアミン等とハロゲン化アルキルとから、熱可逆的架橋部位を形成できる。例えば、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料、ヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料などに、4−ブロモメチルベンゾイックアシッドのようなカルボキシル基を有するハロゲン化物をエステル結合する事によりハロゲン化物を得ることができる。これに、例えば、テトラメチルヘキサンジアミンを架橋剤として添加することにより、熱可逆的な架橋を形成する生分解性樹脂を得る。
ハロゲン化アルキル基は、例えば、アルキルブロミド、アルキルクロリド、フェニルブロミド、フェニルクロリド、ベンジルブロミド、ベンジルクロリドが挙げられる。
また、アミノ基としては第三級アミノ基が好ましく、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基が挙げられる。中でも、ジメチルアミノ基が好ましい。ハロゲン化アルキル基と第三級アミノ基との組み合わせは、特に限定されないが、例えば、ベンジルブロミドとジメチルアミノ基との組み合わせを例示できる。
これらの官能基は、以下の一般式(IV)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
一般式(IV)においては、冷却によりハロゲン化アルキル基と第三級アミンとが、第四級アンモニウム塩性の共有結合を形成して架橋となる。この架橋は加熱により開裂する。
(5)ウレタン型架橋
イソシアネートと活性水素とから熱可逆的な架橋部位を形成できる。例えば、多価イソシアネートを架橋剤として用い、生分解性樹脂材料およびその誘導体のヒドロキシル基、アミノ基、フェノール性水酸基と反応する。また、ヒドロキシル基、アミノ基およびフェノール性水酸基から選ばれた2つ以上の官能基を有する分子を架橋剤として加えることもできる。更に、開裂温度を所望の範囲とするために、触媒を添加することもできる。また、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル、フェノール樹脂などを架橋剤として加えることもできる。
また、多価イソシアネートを架橋剤として用い、生分解性樹脂材料およびその誘導体のヒドロキシル基、アミノ基、フェノール性水酸基と反応させる。ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル、フェノール樹脂などを架橋剤として加えることもできる。多価イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)およびその重合体、4,4’−ジフェニルメタンシイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート(DPDI)、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等を用いることができる。
また、開裂温度を調整するために、1、3−ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン等の有機化合物、アミン類、金属石鹸などを開裂触媒として用いても良い。
以上の官能基は、以下の一般式(V)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
一般式(V)においては、冷却によりフェノール性水酸基とイソシアネート基とがウレタンを形成して架橋となる。この架橋は加熱により開裂する。
(6)アズラクトン−ヒドロキシアリール型架橋
アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基およびこれらの基より誘導される基が挙げられ、これらの基に結合するフェノール性のヒドロキシル基が、架橋構造を形成する基に含まれるアズラクトン構造と反応する。フェノール性のヒドロキシル基を有するものとしては、フェノール性のヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料、ヒドロキシルフェノール類で修飾された生分解性樹脂材料などを使用する。
アズラクトン構造としては、1,4−(4,4’−ジメチルアズラクチル)ブタン、ポリ(2−ビニル−4,4’−ジメチルアザラクトン)、ビスアズラクトンベンゼン、ビスアズラクトンヘキサン等の多価アズラクトンが好ましい。
また、アズラクトン−フェノール反応架橋のビスアズラクチルブタン等も使用でき、これらは、例えば、Engleら、J.Macromol.Sci.Re.Macromol.Chem.Phys.、第C33巻、第3号、第239〜257頁、1993年刊に記載されている。
これらの官能基は、以下の一般式(VI)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
一般式(VI)においては、冷却によりアズラクトン基とフェノール性水酸基とが共有結合を形成して架橋となる。この架橋は加熱により開裂する。
(7)カルボキシル−アルケニルオキシ型架橋
カルボキシル基を有するものとしては、カルボキシル基を有する生分解性樹脂材料、カルボキシル基で修飾された生分解性樹脂材料などを使用する。また、アルケニルオキシ構造としては、ビニルエーテル、アリルエーテル及びこれらの構造より誘導される構造が挙げられ、2以上のアルケニルオキシ構造を有するものも使用できる。
また、ビス[4−(ビニロキシ)ブチル]アジペート及びビス[4−(ビニロキシ)ブチル]サクシネート等のアルケニルエーテル誘導体を架橋剤として用いることもできる。
これらの官能基は、以下の一般式(VII)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
一般式(VII)においては、冷却によりカルボキシル基とビニルエーテル基とがヘミアセタールエステルを形成して架橋となる。この架橋は加熱により開裂する(特開平11−35675号公報、特開昭60−179479号公報)。
(8)架橋剤
以上で説明した様に、熱可逆的な架橋部位を形成し得る官能基を2つ以上分子中に有する化合物は架橋剤となり得る。
酸無水物基を有する架橋剤としては、例えば、ビス無水フタル酸化合物、ビス無水コハク酸化合物、ビス無水グルタル酸化合物、ビス無水マレイン酸化合物が挙げられる。
水酸基を有する架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類;1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のアルコール化合物が挙げられる。
カルボキシル基を有する架橋剤としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。
ビニルエーテル基を有する架橋剤としては、例えば、ビス[4−(ビニロキシ)ブチル]アジペート、ビス[4−(ビニロキシ)ブチル]サクシネート、エチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、2,2−ビス〔p−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕プロパンが挙げられる。
ハロゲン化アルキル基を有する架橋剤としては、例えば、α,α’−ジブロモキシレン、α,α’−ジクロロキシレン、ビスブロモメチルビフェニル、ビスクロロメチルビフェニル、ビスブロモジフェニルメタン、ビスクロロジフェニルメタン、ビスブロモメチルベンゾフェノン、ビスクロロメチルベンゾフェノン、ビスブロモジフェニルプロパン、ビスクロロジフェニルプロパンが挙げられる。
第三級アミノ基を有する架橋剤としては、例えば、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、ビスジメチルアミノベンゼンが挙げられる。
フェノール性水酸基を有する架橋剤としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
イソシアネート基を有する架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のアリール脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
アズラクトン基を有する架橋剤としては、例えば、ビスアズラクトンブタン、ビスアズラクトンベンゼン、ビスアズラクトンヘキサンが挙げられる。
ニトロソ基を有する架橋剤としては、例えば、ジニトロソプロパン、ジニトロソヘキサン、ジニトロソベンゼン、ジニトロソトルエンが挙げられる。
(架橋構造の選択)
加熱により結合して架橋部位を形成し、冷却により開裂する可逆的な反応の形式としては、上述の様に、ディールス−アルダー型、ニトロソ2量体型、酸無水物エステル型、ハロゲン−アミン型、ウレタン型、アズラクトン−ヒドロキシアリール型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型などを利用できるが、熱分解および加水分解などで生分解性樹脂の主鎖が劣化する化学反応は避けた方が良い場合もある。特に、酸無水物エステル型のような架橋を形成する際に、フリーのカルボン酸を生成するような反応は避けた方が良い場合もある。しかしながら、生分解速度を早くしたい場合は、むしろカルボン酸を生じるような反応の方が好ましい場合もある。また、ハロゲン−アミン型の反応の場合、ハロゲンを含むことから焼却時にダイオキシン類を生じる恐れもある。何れにしても、反応形式の選択は、注意深く行う必要がある。
架橋部分の解離温度は、成形体の100℃以下の使用温度領域において十分な架橋が形成されるために、120℃を越えることが好ましい。一方、生分解性樹脂物の熱劣化の観点から、適度な温度で溶融加工できるために、280℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
より具体的には、成型物として使用する温度において共有結合し、ガラス転移温度(Tg)を超える温度、樹脂に必要な耐熱温度を超える温度、かつ成形温度以下の温度において開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する官能基を有する生分解性樹脂が提供される。
ガラス転移温度(Tg)を超える温度、樹脂に必要な耐熱温度を超える温度としては例えば120℃であり、120℃以上であれば、生分解性樹脂の分解が促進されることなく、架橋構造として、ディールス−アルダー型、カルボキシル−アルケニルオキシ型などから選択することが可能であり、ニトロソ2量体型、ウレタン型およびアズラクトン−ヒドロキシアリール型なども適用可能である。
ディールス−アルダー型の場合、ジシクロペンタンの解離反応は、150℃以上250℃以下で進行するため、高い耐熱性と優れた成形性を生分解性樹脂に付与することが可能である。この架橋部位の解離温度については、例えばフラン−マレイミド間の反応において、中條らの文献(中條ら、Macromo lecules、第23巻、第2636〜2641頁、1990年刊)で、溶液中の解離反応について80℃と紹介されている。一方、Stephen A.Cらは((J.P.S.PartA:Poylm.Chem.,30,1775,(1992))、150℃で解離反応が最大になるものや、210℃で最大になるものが存在することを紹介しており、官能基の導入方法により立体障害の度合いが異なるため解離反応の開始温度が大きく異なると述べている。また、結合部位を安定化し、解離温度を上昇する手法としては、電子吸引性の官能基をマレイミド環に付与する手法および、またはフラン環に電子供与性の官能基を付与する手法がある。これにより結合反応を容易にし、解離温度が高く耐熱性に優れる架橋部位を得ることも可能である。
また、ニトロソ2量体型架橋の解離反応は、110℃以上150℃以下で進行するため、高い耐熱性と優れた成形性を生分解性樹脂に付与することが可能である。
また、ウレタン型架橋の解離反応は、上記触媒の選定及び添加量の調整により120℃以上250℃以下で進行するため、高い耐熱性と優れた成形性を生分解性樹脂に付与することが可能である。
また、アズラクトン−ヒドロキシアリール型架橋の解離反応は、100℃以上200℃以下で進行するため、高い耐熱性と優れた成形性を生分解性樹脂に付与することが可能である。
また、カルボキシル−アルケニルオキシ型架橋により架橋された樹脂には常温でフリーのカルボン酸は存在しないため、生分解性樹脂の耐湿性を低下することがないため好ましい。カルボキシル−アルケニルオキシ型架橋の解離反応は、カルボキシル基に対する100℃以上250℃以下で進行するため、高い耐熱性と優れた成形性を生分解性樹脂に付与することが可能である。
以上の中でも、生分解性樹脂の劣化が少なく、耐湿性が高い等の理由から、ディールス−アルダー型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型が好ましく、官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、共役二重結合を有する基が好ましい。
また、耐熱性の観点から、架橋構造としては、3次元架橋構造が好ましい。
3次元架橋構造の架橋密度は、生分解性樹脂の官能基の数、各部材の混合比などを所定の値とすることで、所望の値とされる。3次元架橋構造の架橋密度は樹脂物100g当たりに含まれる3次元構造の架橋点のモル数で表され、十分な耐熱性を実現するために0.0001以上が好ましく、0.001以上がより好ましく、0.002以上が更に好ましく、一方、架橋部位のモル数が10を超えると、生分解性樹脂を形成する部分よりも架橋部分を形成する部分の方が多くなり、成形時の粘度が低下し良好な成形物を得ることができない。また、生分解性を示さなくなることから、リサイクル性および生分解性を実現するために1以下が好ましく、0.2以下が更に好ましい。
(架橋体の構造)
以上に説明してきた官能基の少なくとも何れかが第1生分解性樹脂に含まれており、2種類以上の第1官能基および2種類以上の第2官能基が第1生分解性樹脂に含まれている場合もある。
第1官能基は第1生分解性樹脂の分子鎖末端に存在している場合もあれば、例えば側鎖などの末端以外に存在している場合もある。例えば、第1官能基がヒドロキシル基の場合、両末端がヒドロキシル基のポリブチレンサクシネート等は、第1官能基が末端に存在している第1生分解性樹脂の例である。この場合、第1生分解性樹脂の両末端に第1官能基が存在しているが、片末端のみに存在する場合もある。
また、第1官能基がヒドロキシル基の場合、両末端がメチル化されたアミロース及びセルロース等は、第1官能基が末端以外に存在している第1生分解性樹脂の例である。
また、第1生分解性樹脂の主鎖は直線状および分岐状の何れでも構わず、例えば4モル部のポリ乳酸が1モル部のペンタエリスリトールを中心として放射線状に結合したエステル体は、分岐状の第1生分解性樹脂の例である。なお、第1官能基が末端に存在している場合、全ての末端に第1官能基が存在している場合もあれば、一部の末端のみに第1官能基が存在している場合もある。
更に、第1生分解性樹脂の分子鎖中の同一部位に複数の第1官能基が結合している場合もあり、例えば、ポリ乳酸のカルボキシル基末端にペンタエリスリトールがエステル結合している場合、ポリ乳酸のカルボキシル基末端に3つのヒドロキシル基が結合している例である。この場合、ペンタエリスリトールの中央のメタンに由来する炭素が同一部位であり、この炭素にメチレンを介して第1官能基であるヒドロキシル基が結合している。なお、同一部位に複数の第1官能基が結合しているとは、1つの原子から数えて0〜5個の原子を介して複数の第1官能基が結合していることを言い、得られる熱可逆架橋性生分解性樹脂の性能上の理由から、0〜3個の原子を介して複数の第1官能基が結合していることが好ましい。
なお、樹脂物の生産性、樹脂物の成形性などの観点からは、分子鎖の末端に第1官能基が存在している第1生分解性樹脂が好ましい。この場合、溶融加工時において異なる分子鎖の第1官能基間の相互作用が適度であるため、良好な流動性および加工性を実現できる。また、成形体の性能(機械的特性および耐熱性など)の観点からは、分岐状の第1生分解性樹脂または同一部位に複数の第1官能基が結合している第1生分解性樹脂が好ましい。この場合、成形体中で3次元的な架橋が形成されるため、良好な機械的特性および耐熱性を有する成形体を得ることができる。
ここで、共有結合性の官能基が2つ以上ある場合、一方の官能基(第1官能基)が存在している生分解性樹脂(第1生分解性樹脂)に他の官能基(第2官能基)が存在している場合もあれば、第2官能基は、第1官能基が存在している生分解性樹脂(第1生分解性樹脂)とは異なる生分解性樹脂(第2生分解性樹脂)に存在している場合もある。以下に、第1官能基および第2官能基の何れもが同一の第1生分解性樹脂に存在している例を挙げる。
(1)アミロース及びセルロースのヒドロキシル基が無水マレイン酸とエステル結合を形成している多価カルボン酸樹脂を調製する。この樹脂のカルボン酸の一部に2−アミノエチルビニルエーテルをカルボジイミド類でエステル結合する。この場合、同一の生分解性樹脂(第1生分解性樹脂)にカルボン酸構造(第1官能基)とビニルエーテル基(第2官能基)とが存在しており、カルボキシル−アルケニルオキシ型の架橋を形成する。
(2)ポリ乳酸のカルボキシル末端にペンタエリスリトールがエステル結合しているものの両末端にある4つのヒドロキシル基に対し、更にシクロペンタジエンカルボン酸とマレイミドのディールスアルダー反応物(3,5−ジオキソ−4−アザ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン−10−カルボン酸)がエステル結合された第1生分解性樹脂の場合、第1官能基および第2官能基が同一のシクロペンタジエン誘導体で、第1官能基および第2官能基が同一の第1生分解性樹脂に存在しており、減圧下加熱によりマレイミドを除去することによりシクロペンタジエン同士のディールス−アルダー型の架橋を形成する。なお、架橋は第1生分解性樹脂の両末端で形成される。
(3)両末端がヒドロキシル基のポリブチレンサクシネートの両末端にシクロペンタジエンカルボン酸がエステル結合された第1生分解性樹脂の場合、第1官能基および第2官能基が同一のシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イル基で、第1官能基および第2官能基が同一の第1生分解性樹脂に存在しており、ディールス−アルダー型の架橋を形成する。なお、架橋は第1生分解性樹脂の分子鎖の両末端で形成される。
(4)両末端がヒドロキシル基のポリブチレンサクシネートの両末端にニトロソ安息香酸がエステル結合された第1生分解性樹脂の場合、第1官能基および第2官能基が同一のニトロソベンゾイル基で、第1官能基および第2官能基が同一の第1生分解性樹脂に存在しており、ニトロソ2量体型の架橋を形成する。なお、架橋は第1生分解性樹脂の両末端で形成される。
上記の(1)及び(2)の樹脂物は、第1生分解性樹脂材料に第1官能基および第2官能基を導入して得られる。
また、上記の(3)及び(4)の樹脂物を製造する際には、架橋部位を形成する第1官能基と第2官能基とが予め共有結合しており、第1官能基および第2官能基以外に第1生分解性樹脂材料と反応する基を有している化合物(例えば、ジシクロペンタジエンジカルボン酸およびニトロソ安息香酸の2量体など)を架橋剤として用いることができる。この様な架橋剤と第1生分解性樹脂材料とを混合し反応させ、架橋剤を第1生分解性樹脂材料に結合すれば、架橋部位が架橋した状態の樹脂物を生産性良好に得ることができる。特に、上記の(3)及び(4)の様に、第1官能基および第2官能基が同一で、同一の官能基が対称的に結合して架橋部位を形成する場合、ジシクロペンタジエンジカルボン酸、ニトロソ安息香酸の2量体などの、官能基が対称的に結合した2量体を架橋剤として使用できる。
なお、架橋剤が複数の官能基を含む場合、官能基が同種であれば、架橋剤の製造が容易であり、架橋反応を制御し易いため、好ましい。
一方、第2官能基は、第1官能基の存在している第1生分解性樹脂と異なる第2生分解性樹脂に存在していても良い。この様な例としては、ポリ乳酸のカルボキシル基末端にペンタエリスリトールがエステル結合しているものの両末端の4つのヒドロキシル基に、更に3−マレイミドプロピオン酸がエステル結合された第1生分解性樹脂と、ポリ乳酸のカルボキシル基末端にペンタエリスリトールがエステル結合しているものの両末端の4つのヒドロキシル基に、更に3−フリルプロピオン酸がエステル結合された第2生分解性樹脂との組み合わせを挙げることができる。第1官能基はマレイミド構造であり、第2官能基はフリル基であり、これらの官能基はディールス−アルダー型で架橋する。なお、架橋は第1生分解性樹脂の分子鎖末端と、第2生分解性樹脂の分子鎖末端とで形成される。
また、第1官能基および第2官能基の何れも有する第1生分解性樹脂、第1官能基および第2官能基の何れも有する第2生分解性樹脂、第1官能基および第2官能基の何れかのみを有する第1生分解性樹脂、第1官能基および第2官能基の何れかのみを有する第2生分解性樹脂などを含む混合物より樹脂物を構成することもできる。
この様な樹脂物を製造する際にも、架橋部位を形成する第1官能基と第2官能基とが予め共有結合しており、第1官能基および第2官能基以外に第1生分解性樹脂材料と反応する基を有している化合物を架橋剤として用いることができる。この様な架橋剤と第1生分解性樹脂材料および第2生分解性樹脂材料とを混合し反応させ、架橋剤を第1生分解性樹脂材料および第2生分解性樹脂材料に結合すれば、架橋部位が架橋した状態の樹脂物を生産性良好に得ることができる。
一方、第2官能基はリンカーに存在している場合もある。この場合、少なくとも、第1官能基を有する第1生分解性樹脂と、第2官能基を有するリンカーとから樹脂物は構成され、リンカーとしては、第1生分解性樹脂の生分解性を損なわないものが使用される。リンカーを使用することにより、より広範な樹脂物を実現できるため、樹脂物の生産性、樹脂物の成形性、成形体の性能(機械的特性および耐熱性など)などの自由度が広くなる。
リンカーは1分子中に2つ以上の第2官能基を有しているモノマー、オリゴマー及びポリマー等で、リンカーの第2官能基は第1生分解性樹脂の第1官能基と架橋部位を形成する。また、リンカーは1分子中に2つ以上の第1官能基を有しているモノマー、オリゴマー及びポリマー等を併用してもよい。この結果、成形体においては、2以上の第1生分解性樹脂が1以上のリンカーを介して架橋された状態となる。また、溶融時には架橋部位は開裂し、架橋部位の結合および開裂は熱可逆反応の関係にある。なお、1分子中に2つ以上の第2官能基を有しているリンカーを、架橋剤と呼ぶ場合もあり、この様なリンカーと第1生分解性樹脂とを混合し反応して、樹脂物を製造する。なお、必要に応じて、複数のリンカーを併用する場合もあれば、複数の第1生分解性樹脂を併用する場合もある。
以上、架橋用の官能基として、(1)生分解性樹脂に導入する方法、(2)リンカーも使用する方法を説明したが、その他の方法として、通常の生分解性樹脂に、リンカー同士の架橋システムを入れる手法も利用できる。例えば、市販の生分解性樹脂に、ディールス−アルダー反応により重合する樹脂を一部混合する。ディールス−アルダー反応する樹脂としては、以上に説明したリンカー等を使用できる。
モノマー性のリンカーとしては、以下を例示できる。
(1)トルエンジイソシアネートをリンカーとして使用する。この場合、第2官能基はイソシアネート基であり、第1生分解性樹脂としては、例えば、フェノール性水酸基を有する生分解性ポリエステルを使用する。第1官能基はフェノール性のヒドロキシル基であり、トルエンジイソシアネートのイソシアネート基は、生分解性ポリエステルのフェノール性のヒドロキシル基と、ウレタン結合により架橋を形成し、フェノール性水酸基を有する生分解性ポリエステルはトルエンジイソシアネートを介して架橋される。
(2)N,N’−ビスマレイミド−4,4’−ジフェニルメタンをリンカーとして使用する。この場合、第2官能基はマレイミド構造であり、第1生分解性樹脂としては、例えば、フル酸がヒドロキシル基末端にエステル結合したポリ乳酸を使用する。第1官能基はフリル基であり、N,N’−ビスマレイミド−4,4’−ジフェニルメタンのマレイミド構造は、ポリ乳酸に結合しているフリル基と、ディールス−アルダー型の架橋を形成し、ポリ乳酸は、N,N’−ビスマレイミド−4,4’−ジフェニルメタンを介して、片末端で架橋される。
なお、リンカーが複数の官能基を含む場合、官能基が同種であれば、リンカーの製造が容易であり、架橋反応を制御し易いため、好ましい。
(静電結合性架橋構造の併用)
静電結合とは、静電的な結合であり、静電引力により形成される結合を意味し、イオン結合および水素結合などが含まれる。これらの結合は、官能基と官能基とで直接形成される場合、官能基と官能基とでイオンを介して形成される場合、官能基と官能基とでポリイオンを介して形成される場合などがある。
官能基と官能基とで直接形成される静電結合としては、イオン性官能基間のイオン対間で形成される場合を挙げることができる。また、官能基と官能基とでイオンを介して形成される静電結合としては、2つ以上のイオン性官能基が1つのカウンターイオンに静電引力で配位されている場合を挙げることができる。更に、官能基と官能基とでポリイオンを介して形成される静電結合としては、2つ以上のイオン性官能基が1つのイオン性高分子に静電引力で配位されている場合を挙げることができる。
生分解性樹脂材料から得られる生分解性樹脂は官能基を有しており、静電結合の様式としては、官能基がイオン対を形成している場合、官能基がカウンターイオンに静電引力で配位されている場合、官能基がポリイオンに静電引力で配位されている場合などがある。
官能基がイオン対を形成している形態は、官能基と官能基との間で静電結合が直接形成されている例であり、例えば、生分解性樹脂中のカルボキシル基がカルボキシレートアニオンとなり、生分解性樹脂中のアミノ基がアンモニウムカチオンとなり、これらがイオン対を形成し有機塩となっている場合などである。
また、官能基がカウンターイオンに静電引力で配位されている形態は、官能基と官能基との間でイオンを介して静電結合が形成される例であり、例えば、生分解性樹脂中の2つ以上のカルボキシル基が1つの金属カチオンにイオン結合している場合などである。
更に、官能基がポリイオンに静電引力で配位されている形態は、官能基と官能基との間でポリイオンを介して静電結合が形成される例であり、例えば、生分解性樹脂中の2つ以上のカルボキシル基がペンタエチレンヘキサミンやポリアミンの様な1つのポリカチオンにイオン結合している場合、生分解性樹脂中の2つ以上のアミノ基がベンゼントリカルボン酸やポリアクリル酸の様な1つのポリアニオンにイオン結合している場合などである。なお、ポリイオンとしては、イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有する単量体;イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有するオリゴマー;イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有するポリマー等を使用できる。
イオン性官能基とは、イオンに解離またはイオンと結合して自身がイオンとなる官能基である。イオン性官能基から形成される静電結合性の架橋構造は、カチオン性官能基とアニオン性官能基とから静電結合を利用して形成できる。カチオン性官能基としては、アミノ基およびイミノ基などを用いる。アニオン性官能基としては、カルボキシル基、スルフォニル基、燐酸基、ハロゲン化物イオンを含む基、水酸基、フェノール性水酸基、チオカルボキシル基などを用いる。また、カチオン性官能基やアニオン性官能基に替えて、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、陰イオン、ポリカチオン、ポリアニオン等1つ以上のイオン性官能基を有する分子を用いることにより、静電結合性の架橋構造を形成することもできる。
以下に、静電結合の形式の具体例を説明する。
(1)イオンを介する結合
イオンを介する静電結合による架橋構造をイオン架橋と言い、イオン架橋の場合、例えば、カルボキシル基などのアニオン性官能基を有する生分解性樹脂材料を用いたり、生分解性樹脂材料にカルボキシル基などのアニオン性官能基が導入されたものを用いる。そして、カチオン性官能基として、ハロゲン化物、無機酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、有機酸塩、カルボン酸塩などを用いて、上記のようなカルボキシル基を有する生分解性樹脂材料を中和することにより、カチオン性官能基をアニオン性官能基の対イオンとして導入できる。中和処理としては、溶融状態の生分解性樹脂材料に上述の塩類から選ばれた1種類以上の塩類を直接添加してもよいし、水溶液として添加してもよい。また、生分解性樹脂材料を水および/または有機溶媒に溶解した後、上述の塩類から選ばれた1種類以上の塩類を添加しても良い。
この様にして得られる生分解性樹脂の形態としては、1つのアニオンを介して2つ以上のカチオンが静電的に結合された構造、1つカチオンを介して2つ以上のアニオンが静電的に結合された構造などがある。
イオン架橋に使用されるイオンは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、有機アンモニウム、ハロゲン化物イオン、カルボキシレートアニオン、アルコラートアニオン、フェノラートアニオン、チオカルボキシレートアニオン、スルフォネートアニオン等であり、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
これらのイオンの中でも、2価以上のイオンが、耐熱性の観点から好ましい。
また、得られる樹脂物および成形体の性能(機械的特性および耐熱性など)の観点から、カルボキシル基を有する生分解性樹脂と、金属イオンとの組み合わせが好ましく、金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、銅イオン等が好ましい。なお、必要に応じて、2種以上金属のイオンを併用することもできる。
また、カルボキシル基の中和率は1%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上が更に好ましく、15%以上が最も好ましい。また、カルボキシル基の中和率は100%以下であるが、95%以下が好ましい。
この様にして得られた生分解性樹脂の場合、金属イオンを介して、2つ以上のカルボキシル基が静電的に結合された構造となる。
(2)ポリイオンを介する結合
ポリイオンを介する静電結合による架橋構造をポリイオン架橋と言い、ポリイオン架橋で使用されるポリイオンの内、イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有するポリカチオン単量体としては、ペンタエチレンヘキサミン以外にも、テトラエチレンペンタミン、ヘキサンジアミン、2,4,6−トリアミノトルエン等を使用できる。
また、イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有するポリアニオン単量体としては、ベンゼントリカルボン酸以外にも、2,3−ジメチルブタン−1,2,3−トリカルボン酸などを使用できる。
また、イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有するポリカチオンオリゴマー及びポリマーとしては、ポリアミン以外にも、ポリビニルアミンやポリエチレンイミン等のポリアミン類などを使用できる。
また、イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有するポリアニオンオリゴマー及びポリマーとしては、ポリアクリル酸以外にも、ポリスチレンスルホン酸、ポリリン酸などを使用できる。
(3)有機塩の形成による結合
例えば、アミノ基などのカチオン性官能基と、カルボキシル基などのアニオン性官能基との間で静電的に形成される結合を利用して、架橋部位を形成できる。
(成形加工)
以上の様にして得られた熱可逆的な架橋を形成する生分解樹脂物を用いて成形体を作製する際には、無機フィラー、有機フィラー、補強材、着色剤、安定剤(ラジカル補足剤、酸化防止剤など)、抗菌剤、防かび材、難燃剤などを、必要に応じて併用できる。
無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、タルク、砂、粘土、鉱滓などを使用できる。有機フィラーとしては、植物繊維などの有機繊維を使用できる。補強材としては、ガラス繊維、炭素繊維、針状無機物、繊維状テフロン樹脂などを使用できる。抗菌剤としては、銀イオン、銅イオン、これらを含有するゼオライトなどを使用できる。難燃剤としては、シリコーン系難燃剤、臭素系難燃剤、燐系難燃剤などを使用できる。
なお、架橋部分の解離温度は、成形体の使用温度領域において十分な架橋が形成されるために、120℃を越える必要があり、一方、生分解性樹脂物の熱劣化が問題とならない温度で溶融加工できるために、280℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。そして、溶融後、生分解性樹脂物は冷却され賦形される。冷却温度は、十分な架橋が形成されるために、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、一方、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。なお、冷却工程中および冷却工程後に、十分な架橋を形成し成形体の十分な特性を発現するために、必要に応じて、成形体を所定の温度で保持する場合もある。成形体を保温することにより、架橋の形成が更に進み、成形体の特性を向上することができる。
また、同様の観点から、生分解性樹脂物の溶融温度(流動開始温度)も、120℃を越える必要があり、一方、280℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
以上の様な樹脂および樹脂組成物は、射出成形法、フィルム成形法、ブロー成形法、発泡成形法などの方法により、電化製品の筐体などの電気・電子機器用途、建材用途、自動車部品用途、日用品用途、医療用途、農業用途などの成形体に加工できる。
熱可逆的な架橋構造は、形状記憶樹脂に利用することが可能である。形状記憶樹脂の例としては、入江正浩ら著、形状記憶ポリマーの材料開発(ISBN4−88231−064−3)がある。形状記憶現象とは、一般的には、所定の温度域で変形加工した後、再加熱すると元の形状に回復する現象をいう。即ち、変形加工は、樹脂のガラス転移温度以上で行い、ガラス転移温度以下に冷却することにより変形を固定化する。(常温域において固定化した樹脂を使用するためには、ガラス転移温度は常温より高い必要がある。)形状を回復するには、樹脂をガラス転移温度以上に加熱することにより、ガラス状態による変形の固定化を解除する。ここで、この樹脂の変形を固定する方法として熱可逆的な架橋構造を利用することが可能である。熱可逆的な架橋構造を変形の固定化に利用した場合は、架橋が解離する温度をガラス転移温度以下に設定することにより、ガラス転移温度以上で元の形状に回復することが可能になる。この例として、米国特許第5,043,396号がある。また、熱可逆的な架橋構造を形状の記憶の為の固定点として利用することも可能である。形状記憶樹脂は樹脂の流動(クリープ現象)を防ぐための固定点(或いは凍結相)が必要である。ポリマー同士の絡まり合いを利用したものは、熱可塑性形状記憶樹脂と呼ばれ、溶融する事によりリサイクル可能となる。しかしながら、形状回復力が弱く、回復速度も遅い。これに対し、固定点に共有結合を用いたものは、熱硬化性形状記憶樹脂と呼ばれ、溶融が出来なくなり、リサイクル不能となるものの、形状回復力が強く、回復速度も速い。この固定点として熱可逆可能な架橋構造を利用した場合、回復力が強く、回復速度も速く、かつ溶融可能でリサイクル可能な形状記憶樹脂を得ることが出来る。
以上を踏まえ、生分解性樹脂の中でもポリエステル系樹脂が好ましく、例えばポリ乳酸が好ましく、ポリブチレンサクシネートも好ましい。また、これらの生分解性樹脂に導入される架橋部位としては、ディールス−アルダー型架橋またはカルボキシル−アルケニルオキシ型架橋が好ましい。この様に、ポリ乳酸などのポリエステル系の生分解性樹脂にディールス−アルダー型架橋またはカルボキシル−アルケニルオキシ型架橋が導入されている場合、架橋部位は三次元架橋点を有することが特に好ましく、三次元架橋点の架橋密度は0.0025〜0.110であることが好ましい。また、架橋部位の解離温度は、120℃以上が好ましい。
以上の様な化学構造を選択することで、生分解性を損なうことなく、耐熱性を向上でき、生分解性樹脂の十分なマテリアルリサイクル性を実現でき、良好な成形性を実現でき、耐湿性など耐久性を十分なものとすることができる。
以上の理由としては、以下の様に推察できる。
(ア)ポリ乳酸やポリブチレンサクシネートを初めとする人工合成生分解性樹脂は、一般に天然合成生分解性樹脂の多糖類に比べ成形性に優れる。
(イ)ポリ乳酸やポリブチレンサクシネートを初めとする人工合成生分解性樹脂は、一般に天然合成生分解性樹脂の微生物により合成される樹脂に比べ量産性に優れる。
(ウ)ポリ乳酸は人工合成生分解性樹脂の中でも、乳酸という植物由来原料を使用出来るため、化石燃料の消費を抑える事が可能であり、CO発生量を抑制できる。
(エ)ディールス−アルダー型架橋やカルボキシル−アルケニルオキシ型架橋は、100℃以下の使用温度域においてイオン性で無いため、ポリ乳酸やポリブチレンサクシネートの主鎖の加水分解を促進しない。これは、電子機器の筐体などの耐久材料用途に用いる場合、耐久性(耐湿性)が要求されるが、この様な用途分野においても、上記の生分解性樹脂を好適に使用することができる。
(オ)三次元架橋点を導入することにより、架橋物により生成した樹脂が三次元構造を持つため、耐熱性を発現する。また、十分量の架橋点の存在により、著しく耐熱性を向上できる。一方、架橋密度が高すぎると、可逆架橋部分が生分解性樹脂に占める割合が多くなるため、生分解樹脂として機能が不足する場合がある。
(カ)架橋部分の解離温度を120℃以上とすれば、生分解性樹脂の耐熱性を100℃以上とできる。
(キ)解離温度を250℃以下とすれば、生分解樹脂の主鎖の熱分解を引き起こすことなく成形できる。
以下では、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。なお、以下特に明記しない限り、試薬等は市販の高純度品を用いた。なお、数平均分子量および重量平均分子量はゲルパーメーションクロマトグラム法により測定し、標準ポリスチレンを用いて換算した。
また、以下の方法で性能を評価した。
耐熱性:島津製作所製TMA測定装置(商品名:TMA−40)を用いて針入れ度試験(JIS K 7196に準拠、荷重0.2g、針径3mm)を行い、100℃以下において、変形の有ったものを×、変形の実質的に無かったものを○、変形が全くないものを◎とした。なお、試験片は100℃にて2時間保持した後測定した。
解離温度:セイコーインスツルメント社製DSC測定装置(商品名:DSC6000)をもちいて、昇温速度10℃/分で測定を行ない、吸熱ピークを解離温度とした。
生分解性:熱プレス(200℃)により成形体(厚み0.1ミリ)を作製し、土壌に埋設した後、6ヶ月後に分解性が認められたものを○、認められなかったものを×とした。
リサイクル性:200℃まで加熱して溶融状態とし、これに続く常温までの冷却を5回繰り返した(200℃と常温とを5サイクル)後、上記の耐熱性試験を行い、100℃以下において、変形の有ったものを×、変形の無かったものを○とした。
成形性:6.4mm×12.5mm×125mmの試験片を200℃の射出成形し、成形できたものを○、できなかったものを×とした。
耐湿性:20℃にて60%RHの条件下で試験片を6ヶ月放置した後80℃で減圧乾燥した。樹脂物の成形温度における粘度を測定し、耐湿試験前の粘度と比較した。
実施例1−1
攪拌機、分流コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した3Lのセパラブルフラスコに、コハク酸716g(6.1モル)、1,4−ブタンジオール613g(6.8モル)を仕込み、窒素雰囲気下180〜220℃で3時間脱水縮合を行った。続いて、減圧下180〜220℃で3時間脱グリコール反応を行い、水およびビニルグリコールを留去して、数平均分子量3,000の両末端ヒドロキシル基脂肪族ポリエステル(A1)を得た。
この様にして得られた両末端ヒドロキシル基脂肪族ポリエステル(A1)100質量部と、新日本理化(株)社製1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物(商品名:リカシッド BT−100、化合物(B1)とも呼ぶ)6.6質量部とを東洋精機社製ミニマクスミクストルーダー(商品名)により200℃にて溶融混練し、組成物(1)を得た。
実施例1−2
両末端ヒドロキシル基脂肪族ポリエステル(A1)100質量部と、無水ピロメリット酸7.3質量部とを東洋精機社製ミニマクスミクストルーダー(商品名)により200℃にて溶融混練し、組成物(2)を得た。
実施例1−3
化合物(B1)に代えて、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体(B2)(数平均分子量:900,000)10.4質量部を使用した以外は、組成物(1)の場合と同様にして組成物(3)を得た(三次元架橋を形成可能な架橋点は樹脂物100g当たり、約0.060)。
以上で得られた組成物につき性能を評価し、結果を表1に示した。
Figure 2003106539
表1より、組成物(1)〜(3)は、耐熱性、生分解性、リサイクル性および成形性の全の性能に優れていることが分かった。
ポリエステル樹脂M−1〜M−10
(M−1)両末端ヒドロキシPBS(ポリブチレンサクシネート):1,4−ブタンジオール及びコハク酸を、1,4−ブタンジオール/コハク酸(モル比)が1より多く、より好ましくは1.05以上、更に好ましくは1.1以上となるよう仕込み、脱水縮合反応を行うことにより数平均分子量100〜1,000,000の両末端がヒドロキシル基のPBSを得る。反応温度を110〜250℃として減圧することにより、脱水縮合反応が進行し分子量が増大する。また、テトライソプロポキシチタン等の触媒を、モノマー混合物100質量部に対し0.1〜5質量部加えることによっても、脱水縮合反応が進行し分子量が増大する。
(M−2)PLA(ポリ乳酸):ラクチド(乳酸の2量体)を開環重合することにより、数平均分子量100〜1,000,000のポリ乳酸を得る。反応温度を120〜220℃とすることにより、開環反応が進行する。また、モノマー100質量部に対し0.01〜1質量部のオクタン酸第一スズを触媒として使用することにより、更に脱水縮合反応を進行させ分子量を増大できる。
(M−3)末端ヒドロキシPLA:PLA(M−2)と、ペンタエリスリトールとをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の末端ヒドロキシPLA(M−3)を得る。クロロホルム溶媒中で、ピリジン及び1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライドを脱水触媒として等モル用いることにより、エステル化反応を進行できる。また、水洗により精製できる。
(M−4)両末端フェノール性ヒドロキシPBS:両末端ヒドロキシPBS(M−1)と、ヒドロキシ安息香酸とをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の両末端フェノール性ヒドロキシPBS(M−4)を得る。クロロホルム溶媒中で、ピリジン及び1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライドを脱水触媒として等モル用いることにより、エステル化反応を進行できる。
(M−5)片末端フェノール性ヒドロキシPLA:PLA(M−2)と、ヒドロキシ安息香酸とをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の片末端フェノール性ヒドロキシPLA(M−5)を得る。クロロホルム溶媒中で、ピリジン及び1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライドを脱水触媒として等モル用いることにより、エステル化反応を進行できる。また、水洗により精製できる。
(M−6)末端フェノール性ヒドロキシPLA:末端ヒドロキシPLA(M−3)と、ヒドロキシ安息香酸とをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の末端フェノール性ヒドロキシPLA(M−6)を得る。クロロホルム溶媒中で、ピリジン及び1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライドを脱水触媒として等モル用いることにより、エステル化反応を進行できる。また、水洗により精製できる。
(M−7)両末端カルボン酸PBS:1,4−ブタンジオール及びコハク酸を、1,4−ブタンジオール/コハク酸(モル比)が1より小さく、より好ましくは0.95以下、更に好ましくは0.9以下となるよう仕込み、脱水縮合反応を行うことにより数平均分子量100〜1,000,000の両末端がカルボキシル基のPBSを得る。反応温度を110〜250℃として減圧することにより、脱水縮合反応が進行し分子量が増大する。また、テトライソプロポキシチタン等の触媒を、モノマー混合物100質量部に対し0.1〜5質量部加えることによっても、脱水縮合反応が進行し分子量が増大する。
(M−8)多価カルボン酸PBS:両末端ヒドロキシPBS(M−1)と、ピロメリット酸とをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の多価カルボン酸PBS(M−8)を得る。ヒドロキシル基に対して、ピロメリット酸を大過剰(10〜100モル倍)用いることにより、両端末にピロメリット酸がエステル結合したPBSを得る。クロロホルム及びTHFの混合溶媒またはトルエン溶媒中で、両末端ヒドロキシPBS(M−1)とピロメリット酸とを還流することにより、エステル化反応を進行できる。なお、過剰に用いたピロメリット酸は、溶媒除去後に熱水洗浄することにより除去できる。
(M−9)多価カルボン酸PLA:PLA(M−2)と、ピロメリット酸とをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の多価カルボン酸PLA(M−9)を得る。ヒドロキシル基に対して、ピロメリット酸を大過剰(10〜100モル倍)用いることにより、片端末にピロメリット酸がエステル結合したPLAを得る。クロロホルム及びTHFの混合溶媒またはトルエン溶媒中で、PLA(M−2)とピロメリット酸とを還流することにより、エステル化反応を進行できる。なお、過剰に用いたピロメリット酸は、溶媒除去後に熱水洗浄することにより除去できる。
(M−10)多価カルボン酸PLA:末端ヒドロキシPLA(M−3)と、ピロメリット酸とをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の多価カルボン酸PLA(M−10)を得る。クロロホルム及びTHFの混合溶媒またはトルエン溶媒中で、末端ヒドロキシPLA(M−3)と大過剰(10〜100モル倍)のピロメリット酸とを還流することにより、エステル化反応を進行できる。なお、過剰に用いたピロメリット酸は、溶媒除去後に熱水洗浄することにより除去できる。
実施例1−4
ディールス−アルダー型架橋樹脂
シクロペンタジエニルナトリウムと過剰のドライアイスとを反応させ、ジシクロペンタジエンジカルボン酸を得る。これに、THF中でカルボン酸と等モル以上のオキサアリルクロライドを加え、ジシクロペンタジエンカルボン酸クロライドを得る。なお、溶媒は60℃で減圧により留去する。これを架橋剤として、ポリエステル樹脂(M−1)〜(M−3)を、それぞれ反応させる。ポリエステル樹脂の水酸基とジシクロペンタジエンカルボン酸クロライドとから脱塩酸し、ポリエステル樹脂の水酸基にジシクロペンタジエンカルボン酸をエステル結合させる。結果として、ジシクロペンタジエンを架橋部位とする、ジシクロペンタジエン架橋のポリエステル樹脂を得る。脱塩酸反応はクロロホルム溶媒中で窒素雰囲気下において常温で進行し、貧溶媒で再沈殿することによりジシクロペンタジエン架橋のポリエステル樹脂を回収できる。ジシクロペンタンによる架橋部位の解離温度は100〜250℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、水酸基密度および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。
実施例1−5
ニトロソ2量体型架橋樹脂
4−ニトロソ−3,5−ジクロロベンゾイルクロライドの2量体を架橋剤として用い、フェノール性水酸基を有するポリエステル樹脂(M−4)、(M−5)及び(M−6)と、それぞれ150〜250℃で溶融混合して、ニトロソ2量体構造を架橋部位とするニトロソ2量体型架橋樹脂を得る。ニトロソ2量化物による架橋部位の解離温度は110〜150℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、フェノール性水酸機密度および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。
実施例1−6
酸無水物エステル型架橋樹脂
2官能以上の酸無水物を架橋剤として用いる。この様な酸無水物としては、例えば、重量平均分子量900,000の無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとの共重合体(ダイセル社製VEMA)、無水ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸無水物(新日本理化社製、商品名:リカジットBT−100)、(5−ジオキソテトラヒドロ−3−ソラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1、2−ジカルボン酸無水物(DIC製、商品名:EPICLON B4400)等を用いる。これらの酸無水物と、ポリエステル樹脂(M−1)〜(M−3)とを、それぞれ反応させ、ポリエステル樹脂の水酸基と酸無水物とからエステル結合を生成させる。結果として、酸無水物から得られるエステル結合を架橋部位とする、酸無水物エステル架橋のポリエステル樹脂を得る。エステル化反応は、クロロホルムとTHFの混合溶媒またはトルエン溶媒中において窒素雰囲気下で還流することで進行し、貧溶媒のヘキサンで再沈殿することにより酸無水物エステル架橋のポリエステル樹脂を回収できる。酸無水物エステルによる架橋部位の解離温度は100〜250℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、水酸基密度および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。
実施例1−7
ハロゲン−アミン型架橋樹脂
ポリエステル樹脂(M−1)〜(M−3)のヒドロキシ基を、4−ブロモメチルベンゾイックアシッドのカルボキシル基とエステル結合することによりハロゲン化ポリエステル樹脂を得る。これらに、テトラメチルヘキサンジアミンを架橋剤として反応させることにより、アンモニウム結合を架橋部位とするハロゲン−アミン型架橋のポリエステル樹脂を得る。ハロゲン−アミン結合による架橋部位の解離温度は100〜200℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、水酸基密度および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。
実施例1−8
ウレタン型架橋樹脂
トルエンジイソシアネート及びフェニルメタンジイソシアネート等を架橋剤として用い、フェノール性水酸基を有するポリエステル樹脂(M−4)、(M−5)及び(M−6)と、それぞれ150〜250℃で溶融混合して、ウレタン結合を架橋部位とするウレタン型架橋のポリエステル樹脂を得る。ウレタン結合による架橋部位の解離温度は120〜250℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、フェノール性水酸基密度および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。また、ウレタン型架橋樹脂100質量部に対して、0.01〜1.0質量部の1,3−ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン等の解離触媒を用いることによっても、解離温度を調整できる。
実施例1−9
アズラクトン−フェノール型架橋樹脂
ビスアズラクチルブタン等を架橋剤として用い、フェノール性水酸基を有するポリエステル樹脂(M−4)、(M−5)及び(M−6)と、それぞれ150〜250℃で溶融混合して、アズラクトン−フェノール結合を架橋部位とするポリエステル樹脂を得る。アズラクトン−フェノール結合による架橋部位の解離温度は100〜200℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、フェノール性水酸基密度および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。
実施例1−10
カルボキシル−ビニルエーテル型架橋樹脂
ビス[4−(ビニロキシ)ブチル]アジペート等を架橋剤として用い、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂(M−7)〜(M−10)と、それぞれ150〜250℃で溶融混合して、ヘミアセタールエステル結合を架橋部位とするカルボキシル−ビニルエーテル型架橋のポリエステル樹脂を得る。ヘミアセタールエステル結合による架橋部位の解離温度は100〜250℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、カルボキシル基密度、酸触媒の添加および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。
実施例1−11
静電結合性架橋構造の併用
以上で得られたポリエステル樹脂(M−7)〜(M−10)を100〜200℃で溶融し、イオンを加える。イオン源(カチオン)としては、Cu、Na、Mg及びCa等を用いる。酢酸銅、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム及び酢酸マグネシウム等の水溶液を、中和度が好ましく1%以上、より好ましくは10%以上、一方、100%以下、より好ましくは95%以下となるよう添加し、直ちに減圧下にて水を留去する。架橋部分の解離温度は100〜200℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、カルボキシル基密度、金属イオンによるカルボキシル基の中和度などにより調整できる。
この様にして得られた組成物を、例えば、上記のカルボキシル−ビニルエーテル型架橋樹脂と混合し、共有結合性架橋構造と静電結合性架橋構造とを併用する。
実施例1−12
静電結合性架橋構造の併用
上記のカルボキシル−ビニルエーテル型架橋樹脂を100〜200℃で溶融し、イオンを加え、共有結合性架橋構造と静電結合性架橋構造とを併用する。イオン源(カチオン)としては、Cu、Na、Mg及びCa等を用いる。
実施例2−1
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂1
ラクチド(乳酸の2量体)を100質量部に対し0.05質量部のオクタン酸第一スズを触媒として、反応温度200℃にて開環重合することにより、数平均分子量100,000のPLAを得た(C−1)。PLA(1000g)にグリセリン(0.5モル、46g)を加え、180℃で6時間エステル交換反応した。これをクロロホルムに溶解し、アルカリ水溶液で洗浄した後、溶媒を留去することにより、数平均分子量4000の末端ヒドロキシPLA(C−2)を得た。
シクロペンタジエニルナトリウム(1.6モルのTHF溶液、1L)とドライアイス(2kg)とを反応させ、ジシクロペンタジエンジカルボン酸を得た。これに、THF中でカルボン酸と等モル以上のオキサアリルクロライドを加え、ジシクロペンタジエンカルボン酸クロライドを得た。なお、溶媒は60℃で減圧により留去した。上述の末端ヒドロキシPLA(100g)をクロロホルム(3L)に溶解し、ジシクロペンタジエンカルボン酸クロライド(0.038モル)および等モルのピリジンを加え、常温で24時間反応した後、未反応物および不純物を洗浄除去した。溶媒を留去することによりジシクロペンタジエン架橋のポリエステル樹脂を回収した(三次元架橋を形成可能な架橋点は樹脂物100g当たり、約0.023)。
実施例2−2
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂2
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂1の場合と同様にして得られたPLA(C−1)1モルにグリセリン(2モル、184g)を加え、180℃で6時間エステル交換反応した。これをクロロホルムに溶解し、アルカリ水溶液で洗浄した後、溶媒を留去することにより、数平均分子量1000の末端ヒドロキシPLA(C−3)を得た。
上述の末端ヒドロキシPLA(100g)をクロロホルム(3L)に溶解し、ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂1の場合で得られたジシクロペンタジエンカルボン酸クロライド(0.15モル)等モルのピリジンを加え、常温で24時間反応した後、未反応物および不純物を洗浄除去した。溶媒を留去することによりジシクロペンタジエン架橋のポリエステル樹脂を回収した(三次元架橋を形成可能な架橋点は樹脂物100g当たり、約0.078)。
実施例2−3
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂3
Chan−Ming D.らの手法(Polymer、第42巻、第6891頁、2001年刊)と同様に、ラクチドを100質量部に対し、トリメチロールプロパン0.16質量部、オクタン酸第一スズを触媒として0.06質量部用いて110℃にて100時間開環重合することにより、数平均分子量40,000のPLAを得た(C−4)。
上述の末端ヒドロキシPLA(100g)をクロロホルム(3L)に溶解し、ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂1の場合で得られたジシクロペンタジエンカルボン酸クロライド(0.0038モル)等モルのピリジンを加え、常温で24時間反応した後、未反応物および不純物を洗浄除去した。溶媒を留去することによりジシクロペンタジエン架橋のポリエステル樹脂を回収した(三次元架橋を形成可能な架橋点は樹脂物100g当たり、約0.0025)。
実施例2−4
カルボキシル−アルケニルオキシ型架橋生分解性樹脂1
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂1の場合で得られたPLA(C−2)100gをクロロホルム(3L)に溶解し、無水コハク酸(0.075モル)、および触媒としてピリジン(0.05g)を加え、6時間還流した。反応後ピリジンを抽出洗浄した後、溶媒を除去し末端カルボン酸PLA樹脂(C−4)を得た。この樹脂(A−4)100gにリンカーとして、トリス[4−(ビニロキシ)ブチル]トリメリテート11.7gを東洋精機社製ミニマクスミクストルーダー(商品名)により200℃にて溶融混練し、組成物を得た(三次元架橋を形成可能な架橋点は樹脂物100g当たり、約0.034)。
実施例2−5
カルボキシル−アルケニルオキシ型架橋生分解性樹脂2
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂2の場合で得られたPLA(C−3)100gをクロロホルム(3L)に溶解し、無水コハク酸(0.30モル)、および触媒としてピリジン(0.05g)を加え、6時間還流した。反応後ピリジンを抽出洗浄した後、溶媒を除去し末端カルボン酸PLA樹脂(C−4)を得た。この樹脂(C−5)100gにリンカーとして、トリス[4−(ビニロキシ)ブチル]トリメリテート38.8gを東洋精機社製ミニマクスミクストルーダー(商品名)により200℃にて溶融混練し、組成物を得た(三次元架橋を形成可能な架橋点は樹脂物100g当たり、約0.110)。
実施例2−6
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂(三次元架橋なし)
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂1の場合と同様にして得られたPLA(C−1)にブタンジオール(0.5モル、45g)を加え、180℃で6時間エステル交換反応した。これをクロロホルムに溶解し、アルカリ水溶液で洗浄した後、溶媒を留去することにより、数平均分子量3000の末端ヒドロキシPLA(C−6)を得た。
上述の末端ヒドロキシPLA(100g)をクロロホルム(3L)に溶解し、実施例1で得られたジシクロペンタジエンカルボン酸クロライド(0.033モル)を加え、常温で24時間反応した後、溶媒を留去することによりジシクロペンタジエン架橋のポリエステル樹脂を回収した(三次元架橋を形成可能な架橋点を含まない)。
以上の評価結果を表2に示した。
Figure 2003106539
表2より明らかなとおり、全ての生分解性樹脂が十分な性能を有しているが、特に、三次元架橋が導入された樹脂の場合、耐熱性が特に高い。また、架橋構造がディールス−アルダー型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型の場合、耐熱性および耐湿性が高い。
【0013】
橋部位の結合反応および開裂反応は温度変化により可逆的に進行する。なお、第1官能基および第2官能基は、異なる官能基でも良いし同じ官能基でも良い。同一の2つの官能基が対称的に結合して架橋を形成する場合、同一の官能基を第1官能基および第2官能基として使用できる。
冷却により結合して架橋部位を形成し、加熱により開裂する可逆的な反応形式は特に制限されないが、樹脂物の生産性、樹脂物の成形性、成形体の性能(機械的特性および耐熱性など)などの観点から、以下より選択されることが望ましい。
(1)ディールス−アルダー型架橋
ディールス−アルダー[4+2]環化反応を利用する。共役ジエン及びジエノフィルを官能基として導入することにより、熱可逆的架橋を形成する生分解性樹脂を得る。共役ジエンとしては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、シクロペンタジエン環、1,3−ブタジエン、チオフェエン−1−オキサイド環、チオフェエン−1,1−ジオキサイド環、シクロペンタ−2,4−ジエノン環、2Hピラン環、シクロヘキサ−1,3−ジエン環、2Hピラン1−オキサイド環、1,2−ジヒドロピリジン環、2Hチオピラン−1,1−ジオキサイド環、シクロヘキサ−2,4−ジエノン環、ピラン−2−オン環およびこれらの置換体などを官能基として用いる。ジエノフィルとしては、共役ジエンと付加的に反応して環式化合物を与える不飽和化合物を用いる。例えば、ビニル基、アセチレン基、アリル基、ジアゾ基、ニトロ基およびこれらの置換体などを官能基として用いる。また、上記共役ジエンもジエノフィルとして作用する場合がある。
これらの中でも、例えば、シクロペンタジエンを架橋反応に用いることができる。ジシクロペンタジエンは共役ジエン及びジエノフィルの両作用を有する。
【0023】
ソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のアリール脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
アズラクトン基を有する架橋剤としては、例えば、ビスアズラクトンブタン、ビスアズラクトンベンゼン、ビスアズラクトンヘキサンが挙げられる。
ニトロソ基を有する架橋剤としては、例えば、ジニトロソプロパン、ジニトロソヘキサン、ジニトロソベンゼン、ジニトロソトルエンが挙げられる。
(架橋構造の選択)
冷却により結合して架橋部位を形成し、加熱により開裂する可逆的な反応の形式としては、上述の様に、ディールス−アルダー型、ニトロソ2量体型、酸無水物エステル型、ハロゲン−アミン型、ウレタン型、アズラクトン−ヒドロキシアリール型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型などを利用できるが、熱分解および加水分解などで生分解性樹脂の主鎖が劣化する化学反応は避けた方が良い場合もある。特に、酸無水物エステル型のような架橋を形成する際に、フリーのカルボン酸を生成するような反応は避けた方が良い場合もある。しかしながら、生分解速度を早くしたい場合は、むしろカルボン酸を生じるような反応の方が好ましい場合もある。また、ハロゲン−アミン型の反応の場合、ハロゲンを含むことから焼却時にダイオキシン類を生じる恐れもある。何れにしても、反応形式の選択は、注意深く行う必要がある。
架橋部分の解離温度は、成形体の100℃以下の使用温度領域において十分な架橋が形成されるために、120℃を越えることが好ましい。一方、生分解
本発明は、熱可逆的な架橋方法を用いることにより、マテリアルリサイクルを容易にし、耐熱性および成形加工性に優れ、生分解可能な樹脂および樹脂組成物、及びこれらの製造方法に関する。
[背景技術]
プラスチックは、賦形が容易であり、軽量であり、安価であり、腐食し難い等の優れた特性を有することから、広範な産業分野において多量に使用されている。しかしながら、腐食し難い性質のため、使用済みのプラスチックを自然界に廃棄しても分解されず、環境問題を引起す場合がある。また、自然界に廃棄できないため、使用後に焼却処分などを行う必要があるが、燃焼時の発熱量が大きいため、焼却の際に焼却炉を傷める恐れや、焼却にともないダイオキシンを発生する場合もある。この様な観点から、リサイクル可能で、使用後に自然界に廃棄されると、微生物などに分解される生分解性のプラスチックが望まれている。特に、製造エネルギーの削減や二酸化炭素の排出量を低減の面から、サーマルリサイクルよりもマテリアルリサイクルの可能な生分解性プラスチックが望まれている。
しかしながら、一般のプラスチックと比較して、従来の生分解性プラスチックでは、耐熱性などの特性が不十分な場合がある。このため、生分解性プラスチックの耐熱性などの特性向上を目的に、例えば、特開平6−192375号公報では、ポリカプロラクトンをイソシアネートで架橋しており、共有結合性の架橋構造を導入して生分解性プラスチックの耐熱性を向上させる技術が提案されている。
しかし、上記の従来技術では、架橋構造によって生分解性プラスチックの耐熱性などが向上するが、加熱溶融時の流動性の低下する恐れや、成形性が不十分となる恐れ、或いは、生分解性が低下する恐れがある。また、特に高度に架橋された生分解性プラスチックの場合、これを一度成形すると、あたかも熱硬化性樹脂の様に振舞い、これを回収しリサイクルしようとしても、2度目以降の成形時に十分加熱溶融せず、リサイクルが困難になることもある。
リサイクル性の向上を目的として、共有結合性熱可逆架橋構造をプラスチックに導入することが提案されている。まず、共有結合性熱可逆反応の例としては、Engleら、J.Macromol.Sci.Re.Macromol.Chem.Phys.、第C33巻、第3号、第239〜257頁、1993年刊に、ディールスアルダー反応、ニトロソ二量化反応、エステル化反応、アイオネン化反応、ウレタン化反応、アズラクトン−フェノール付加反応が記載されている。
また、中根喜則および石戸谷昌洋ら、色材、第67巻、第12号、第766〜774頁、1994年刊;中根喜則および石戸谷昌洋ら、色材、第69巻、第11号、第735〜742頁、1996年刊;特開平11−35675号公報には、ビニルエーテル基を利用する熱可逆架橋構造が記載されている。
更に、共有結合性熱可逆架橋構造利用し、リサイクル性を得ている例としては、次のようなものがある。
特開平7−247364号公報には、可逆架橋が可能なオリゴマーを利用して、オリゴマーを分別回収し、ケミカルリサイクルする方法が記載されており、架橋部分の解離方法として紫外線を照射する手法とディールスアルダー反応を利用した熱による解離手法が記載されている。しかしながら、光を利用した解離反応を均一に行なう為には、成形物のままでは光に対する透明性を確保することは難しく、有機溶媒に希釈溶解した状態で行なう必要があり、通常の加熱溶融による樹脂のマテリアルリサイクルに比べ著しく効率が悪い。また、当該公報の実施例3によれば、熱による解離反応が90℃で起こっている。この解離温度は、母材となる樹脂(ポリアクリレート)のガラス転移温度(90〜105℃)以下であり、むしろ耐熱性を損なっている。100℃以上の十分な耐熱性を向上することを目的とする場合、架橋部分の解離反応は少なくとも120℃を超えた温度で起こる必要がある。従って、適切な解離反応温度を有する可逆架橋部位を選定し、これを樹脂に適用する必要がある。
特表平10−508655号公報には、2,5−ジアルキル置換フランを樹脂に導入しリサイクル性を達成している。フランの導入方法として一酸化炭素とオレフィンの共重合体を強酸による脱水反応により実施されている。しかしながら、生分解性樹脂の場合、エステル結合等容易に加水分解する官能基により重合している。このような手法でフラン環を導入することは、樹脂の分解を引き起こすため非常に困難である。また、架橋部の解離温度やジエンの熱安定性は、反応場の極性や濃度に大きく依存する。生分解樹脂の場合、ディールスアルダー反応を2,5−ジアルキル置換フランを用いたものに限定する必要はない。
また、酸無水物のエステル化反応による可逆反応を耐熱性向上とリサイクル性向上に利用した例が特開平11−106578号公報などに記載されており、ビニル重合化合物にカルボン酸無水物を導入し、ヒドロキシ基を有するリンカーで架橋する手法が示されている。しかしながら、生分解性樹脂の多くはエステル結合のような、カルボン酸が触媒となる加水分解性の結合を主鎖に有している。酸無水物のエステル化反応を生分解性樹脂に導入した場合、架橋部を形成した状態でフリーのカルボン酸が生じており、成形前の樹脂の保存時或いは、成型物の使用時において母材となる生分解性樹脂の加水分解速度が著しく速くなる為、樹脂の耐湿性・耐久性が必要以上に低下し、実用に供しえなくなる。
一方、カルボキシル−アルケニルオキシ型の場合は、結合解離温度を120℃以上のものを使用すれば、100℃以下の実用温度域では、フリーのカルボン酸は生じ無い。また、成形に際し、予め十分樹脂を乾燥しておけば、加水分解は起こらずその耐久性を損なう事はない。また、ニトロソ2量体型、ウレタン型、およびアズラクトン−ヒドロキシアリール型も適用可能である。
また、静電結合による熱可逆架橋構造を生分解性樹脂に導入している例もある。まず、静電結合の例としては、特開2000−281805号公報や矢野紳一著、アイオノマーの物性と工業的応用;M.R.Tantら著、Ionomers(ISBN:0−7514−0392−X)がある。
静電結合による熱可逆架橋構造を生分解性樹脂に利用した例として、特開2000−281805号公報には、強度を向上する目的で、カルボキシル基を有するカルボキシメチルセルロースやカルボキシル基含有澱粉等の多糖類のカルボキシル基をMgイオン等の多価金属イオンで架橋したイオン架橋フィルムが開示されている。しかしながら、一般に静電結合は共有結合に比べ結合強度に劣るため樹脂の粘度や弾性率は著しく向上するものの、耐熱性については、充分な向上は望めない。
以上の様に、樹脂材料に共有結合性熱可逆架橋構造を導入し、樹脂材料のリサイクル性を実現する試みは多数なされているものの、これを生分解性樹脂材料に適用した例は余り見受けられない。また、生分解性樹脂材料に共有結合性熱可逆架橋構造を導入するには技術的困難があり、リサイクル性の生分解性樹脂材料で実際の使用に耐え得るだけの性能を実現することは、従来、困難であった。
[発明の開示]
以上の様な状況に鑑み、生分解性樹脂材料に共有結合性熱可逆架橋構造を導入し、実際の使用に耐え得るだけの性能を有するリサイクル性の生分解性樹脂材料を提供することを、本発明の目的とする。
より具体的には、十分な耐熱性、成形性、リサイクル性および生分解性を有する樹脂および樹脂組成物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明によれば、冷却により共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する官能基を有する生分解性樹脂が提供される。
また、冷却により共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第1官能基を有する第1生分解性樹脂と、冷却により該第1官能基と共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第2官能基を有する第2生分解性樹脂とを含む生分解性樹脂組成物が提供される。
また、冷却により共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第1官能基を有する第1生分解性樹脂と、冷却により該第1官能基と共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第2官能基を有するリンカーとを含む生分解性樹脂組成物が提供される。
また、冷却により共有結合し加熱により開裂する第1官能基および第2官能基が該共有結合した構造と、第3官能基とを有する架橋剤と、該第3官能基の反応する部位を有する生分解性樹脂材料とを該反応させる工程を含む生分解性樹脂の製造方法が提供される。
また、冷却により共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第1官能基を有する第1生分解性樹脂と、冷却により該第1官能基と共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第2官能基を2以上有するリンカーとを該架橋させる工程を含む生分解性樹脂の製造方法が提供される。
熱可逆的な架橋構造を有する生分解性樹脂の架橋構造は、溶融成形時には開裂する。このため、耐熱性などの特性を十分なものとするに必要な数の架橋構造の部位を導入しても、溶融時には適度な粘度を有し、良好な成形加工性を実現できる。また、これを一度成形しても、成形体が熱硬化性樹脂の様に振舞うことは無く、これを回収しリサイクルする際、2度目以降の成形時にも十分に加熱溶融し、良好なリサイクル性を実現できる。また、冷却すれば固化して再び架橋構造が形成されるため、成形体は十分な耐熱性を有する。
特に、共有結合性の熱可逆的な架橋構造は静電結合による熱可逆的な架橋構造に比べ結合力が適度であるため、これを生分解性の材料に導入することにより、高温成形時には架橋構造が開裂し高い流動性を確保しつつ、利用環境下では架橋構造により従来の生分解性樹脂材料の欠点である耐熱性および強度などを向上できる。
熱可逆的な架橋構造の場合、高温において架橋部位が開裂した後、引き続き行われる冷却操作により架橋部位が再度形成する。このため、温度変化により何度でも架橋部位の開裂および再形成を繰り返すことができる。この様な架橋構造を生分解性樹脂材料に導入することにより、優れた樹脂および樹脂組成物を得ることができる。即ち、常温などの成形体を利用する温度領域では、高次架橋構造を形成し耐熱性および強度を向上することが可能であり、成形温度などの溶融温度以上の領域では、架橋構造を失い樹脂が低分子化するため、流動性が向上し、成形性およびマテリアルリサイクル性を向上できる。
なお、成形体は、固化している際には、共有結合で架橋された樹脂を主に含むが、溶融時には架橋部位が開裂するため、2種以上の樹脂を含む組成物となったり、樹脂およびリンカーを含む組成物となる場合がある。このため、樹脂および樹脂組成物を特に区別する必要がない場合、これらを樹脂物とも呼ぶ。
また、共有結合性で熱可逆的な架橋構造に加え、静電結合性で熱可逆的な架橋構造を生分解性樹脂に導入することにより、更に高性能で広範囲な物性を実現できる。この具体例としては、共有結合性架橋構造を形成する官能基と、静電結合性架橋構造を形成する官能基とを同一の生分解性樹脂材料に導入する方法;共有結合性架橋構造を形成する官能基が導入された生分解性樹脂材料と、静電結合性架橋構造を形成する官能基が導入された生分解性樹脂材料とを混合する方法;共有結合性および静電結合性の両方の性質を有する架橋構造を形成する官能基を導入する方法などを挙げることができる。
なお、静電結合性の架橋構造は、水分の存在下、土壌埋設時などにおいて、急速に生分解される。
以上の結果、生分解性樹脂材料に共有結合性熱可逆架橋構造を導入でき、リサイクル性の生分解性樹脂材料で実際の使用に耐え得るだけの性能を実現できる。
よって、十分な耐熱性、成形性、リサイクル性および生分解性を有する樹脂および樹脂組成物を実現できる。
更に、生分解性樹脂材料の種類を注意深く選択したり、架橋構造の解離温度を所定の範囲としたり、架橋構造の種類を注意深く選択したり、架橋構造を三次とすることで、耐熱性、成形性、リサイクル性および生分解性を更に向上できる。
[発明を実施するための最良の形態]
以下に本発明を詳細に説明する。
(生分解性樹脂材料)
生分解性樹脂の原料となる生分解性樹脂材料は、熱可逆的な架橋構造を形成するために導入される官能基の性質を十分に考慮して選択する。
この様な生分解性樹脂材料としては、主に人工的に合成され入手できる生分解性のモノマー、オリゴマー及びポリマー;主に人工的に合成され入手できる生分解性のモノマーの誘導体、オリゴマーの変性体およびポリマーの変性体;主に天然で合成され入手できる生分解性のモノマー、オリゴマー及びポリマー;主に天然で合成され入手できる生分解性のモノマーの誘導体、オリゴマーの変性体およびポリマーの変性体などを使用する。
人工合成生分解性オリゴマー及びポリマーとしては、例えば、ポリ乳酸(島津製作所製、商品名:ラクティー等)、ポリグリコール酸などのポリアルファヒドロキシ酸、ポリイプシロンカプロラクトン等のポリオメガヒドロキシアルカノエート(ダイセル社製、商品名:プラクセル等)、ブチレンサクシネート及び/又はエチレンサクシネートの重合体であるポリアルキレンアルカノエート(昭和高分子社製、商品名:ビオノーレなど)、ポリブチレンサクシネート等のポリエステル類、ポリ−γ−グルタメート(味の素社製、商品名:ポリグルタミン酸など)等のポリアミノ酸類、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等のポリオール類などを挙げることができる。
なお、これらの人工合成生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体も好適に使用できる。
また、天然合成生分解性オリゴマー及びポリマーとしては、澱粉、アミロース、セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサン、ゲランガム、カルボキシル基含有セルロース、カルボキシル基含有デンプン、ペクチン酸、アルギン酸などの多糖類;微生物により合成されるヒドロキシブチレート及び/又はヒドロキシバリレートの重合体であるポリベータヒドロキシアルカノエート(ゼネカ社製、商品名:バイオポール等)などを挙げることができ、中でも、澱粉、アミロース、セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサン、微生物により合成されるヒドロキシブチレート及び/又はヒドロキシバリレートの重合体であるポリベータヒドロキシアルカノエート等が好ましい。
なお、天然合成生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体も好適に使用できる。
更に、天然合成生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体としては、リグニン等を使用できる。リグニンは、木材中に20〜30%含有されるコニフェリルアルコール及びシナピルアルコールの脱水素重合体で、生分解される。
以上の様な生分解性樹脂材料の中でも、人工合成生分解性オリゴマー及びポリマー、人工合成生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体、天然合成生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体が、分子間の結合力が適度であるため熱可塑性に優れ、溶融時の粘度が著しく上昇することは無く、良好な成形加工性を有するため好ましい。
なかでも、ポリエステル類およびポリエステル類の変性体が好ましく、脂肪族ポリエステル類および脂肪族ポリエステル類の変性体が更に好ましい。また、ポリアミノ酸類およびポリアミノ酸類の変性体が好ましく、脂肪族ポリアミノ酸類および脂肪族ポリアミノ酸類の変性体が更に好ましい。また、ポリオール類およびポリオール類の変性体が好ましく、脂肪族ポリオール類および脂肪族ポリオール類の変性体が更に好ましい。
なお、原料となる生分解性樹脂材料の数平均分子量は、得られる生分解性樹脂の性能(加工性、成形体の耐熱性、成形体の機械的特性など)の観点から、100以上が好ましく、一方、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、100,000以下が更に好ましく、10,000以下が最も好ましい。
以上の様な生分解性樹脂材料、その誘導体またはその変性体に対して熱可逆的な架橋構造を形成する官能基を導入することにより、熱可逆架橋性生分解性樹脂を製造できる。
熱可逆的架橋に必要な官能基は、生分解性樹脂材料の分子鎖末端に導入してもよいし、分子鎖中に導入してもよい。また、導入の方法としては、付加反応、縮合反応、共重合反応などを用いることができる。生分解性樹脂材料の多くは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基等の官能基を有している。従って、これらの官能基を直接、熱可逆架橋部位として利用することもできれば、これらの官能基を、熱可逆架橋を形成する官能基に誘導することもできる。
例えば、ヒドロキシル基が必要な場合は下記のような方法が可能である。
(ア)多糖類およびポリオール類はヒドロキシル基を既に有している。
(イ)ポリエステル類は、分子鎖末端部にヒドロキシル基およびまたはカルボキシル基を有している。分子鎖の両末端がヒドロキシル基のポリエステル類としては、例えば、両末端ヒドロキシPBS(ポリブチレンサクシネート)を挙げることができる。両末端ヒドロキシPBSは、例えば、1,4−ブタンジオール及びコハク酸を、1,4−ブタンジオール/コハク酸(モル比)が1より多く、より好ましくは1.05以上、更に好ましくは1.1以上となるよう仕込み、脱水縮合反応を行うことにより得られる。
(ウ)一方、分子鎖の末端にカルボキシル基が存在するポリエステル類については、カルボキシル基をヒドロキシル基で封止することにより、両末端がヒドロキシル基のポリエステル類を得ることができる。封止に用いる化合物としてはジオールやポリオールなど2つ以上のヒドロキシル基を持つものが望ましく、3つ以上ヒドロキシル基をもつ化合物を用いれば、3次元架橋構造の架橋点を形成する事が出来るので特に望ましい。例えば、ラクチドを開環重合して得られるポリ乳酸のカルボキシル基をペンタエリスリトールでエステル化して封止することにより、分子鎖の両末端にヒドロキシル基が存在するポリエステルが得られる。なお、「ヒドロキシル基により封止する」とは、例えば末端をヒドロキシル基に誘導することを言う。
(エ)また、Chan−Ming D.らの手法(Polymer、第42巻、第6891頁、2001年刊)に従い、多官能ヒドロキシル化合物を中核としてラクチドを開環重合により順次付加することにより、末端がヒドロキシル基となるポリエステルを調製することも可能である。
エステル化反応には、酸やアルカリの他にカルボジイミド類などの試薬を用いることも可能である。また、カルボキシル基を塩化チオニルやアリルクロライドなどを用いて酸塩化物に誘導した後、ヒドロキシル基と反応する事によりエステル化することも可能である。また、ポリブチレンサクシネートやポリエチレンサクシネートやポリブチレンサクシネートアジペートのようなジカルボン酸およびジオールを原料として合成されているものについては、使用する原料のジオール/ジカルボン酸のモル比率を1より多くすることにより、分子鎖の末端基をすべてヒドロキシル基にすることが可能である。
また、エステル交換反応により、末端をヒドロキシル基にすることが可能である。即ち、ポリエステル樹脂にたいし、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物によりエステル交換することにより、末端がヒドロキシル基を有するポリエステル樹脂が得られる。
ヒドロキシル基を持つ化合物として、3つ以上ヒドロキシル基をもつ化合物を用いれば、3次元架橋構造の架橋点を形成する事が出来るので特に望ましい。例えば、ポリ乳酸のエステル結合をペンタエリスリトールでエステル交換することにより、分子鎖の末端にヒドロキシル基が合計で4つ存在するポリエステルが得られる。なお、末端部にカルボン酸を有する樹脂や未反応のヒドロキシル基を有する化合物は容易に精製除去可能である。
生分解性樹脂材料およびヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料にヒドロキシベンゾイックアシッドでエステル反応を行えば、ヒドロキシル基をフェノール水酸基に変性することが可能である。
カルボキシル基が必要な場合は、生分解性樹脂材料が有するヒドロキシル基に対し、2官能以上カルボン酸を有する化合物を上述のエステル化反応により結合させれば、カルボキシル基に変性する事が可能である。特に酸無水物を用いれば、容易にカルボキシル基を有する生分解性樹脂材料を調製する事が可能である。酸無水物としては、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸やこれらの誘導体を利用することが可能である。
(架橋部位の化学構造)
架橋部位は、加熱により開裂し冷却により共有結合する2つの第1官能基および第2官能基より構成される。溶融加工温度より低温で固化している際には、第1官能基および第2官能基は共有結合により架橋を形成しており、溶融加工温度などの所定の温度以上では、第1官能基および第2官能基に開裂する。架橋部位の結合反応および開裂反応は温度変化により可逆的に進行する。なお、第1官能基および第2官能基は、異なる官能基でも良いし同じ官能基でも良い。同一の2つの官能基が対称的に結合して架橋を形成する場合、同一の官能基を第1官能基および第2官能基として使用できる。
冷却により結合して架橋部位を形成し、加熱により開裂する可逆的な反応形式は特に制限されないが、樹脂物の生産性、樹脂物の成形性、成形体の性能(機械的特性および耐熱性など)などの観点から、以下より選択されることが望ましい。
(1)ディールス−アルダー型架橋
ディールス−アルダー[4+2]環化反応を利用する。共役ジエン及びジエノフィルを官能基として導入することにより、熱可逆的架橋を形成する生分解性樹脂を得る。共役ジエンとしては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、シクロペンタジエン環、1,3−ブタジエン、チオフェエン−1−オキサイド環、チオフェエン−1,1−ジオキサイド環、シクロペンタ−2,4−ジエノン環、2Hピラン環、シクロヘキサ−1,3−ジエン環、2Hピラン1−オキサイド環、1,2−ジヒドロピリジン環、2Hチオピラン−1,1−ジオキサイド環、シクロヘキサ−2,4−ジエノン環、ピラン−2−オン環およびこれらの置換体などを官能基として用いる。ジエノフィルとしては、共役ジエンと付加的に反応して環式化合物を与える不飽和化合物を用いる。例えば、ビニル基、アセチレン基、アリル基、ジアゾ基、ニトロ基およびこれらの置換体などを官能基として用いる。また、上記共役ジエンもジエノフィルとして作用する場合がある。
これらの中でも、例えば、シクロペンタジエンを架橋反応に用いることができる。ジシクロペンタジエンは共役ジエン及びジエノフィルの両作用を有する。シクロペンタジエンカルボン酸の2量体であるジシクロペンタジエンジカルボン酸は、市販のシクロペンタジエニルナトリウムから容易に得ることができる(E.Rukcensteinら、J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.、第38巻、第818〜825頁、2000年刊)。このジシクロペンタジエンジカルボン酸は、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料、ヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料などに、エステル化反応によりヒドロキシル基の存在している部位に架橋部位として導入される。
また、例えば、3−マレイミドプロピオン酸および3−フリルプロピオン酸を用いれば、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料、ヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料などに、エステル化反応によりヒドロキシル基の存在している部位に容易に架橋部位を導入できる。
架橋部位の導入に利用する上記のエステル化反応については、酸およびアルカリ等の他にカルボジイミド類などの触媒を用いることも可能である。また、カルボキシル基を塩化チオニル又はアリルクロライド等を用いて酸塩化物に誘導した後、ヒドロキシル基と反応する事によりエステル化することも可能である。酸塩化物を用いれば、アミノ基とも容易に反応するためアミノ酸類およびその誘導体のアミノ基側にも導入できる。
これらの官能基は、以下の一般式(I)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
(2)ニトロソ2量体型架橋
例えば、ニトロソベンゼンを架橋反応に用いる。ニトロソベンゼンとしては、例えば、ジニトロソプロパン、ジニトロソヘキサン、ジニトロソベンゼン、ジニトロソトルエン等を用いる。例えば、4−ニトロソ−3,5−ベンジル酸の2量体(米国特許第3,872,057号公報に、4−ニトロソ−3,5−ジクロロベンゾイルクロライドの2量体の合成方法が記載されている。)を用い、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料のヒドロキシル基、ヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料のヒドロキシル基などと反応する事により、ヒドロキシル基の存在している部位に容易に熱可逆的架橋部位を導入できる。また、酸塩化物を用いれば、アミノ基とも容易に反応するためアミノ酸類およびその誘導体のアミノ基側にも導入できる。
これらの官能基は、以下の一般式(II)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
一般式(II)においては、冷却により2つのニトロソ基がニトロソ二量体を形成して架橋となる。この架橋は加熱により開裂する。
(3)酸無水物エステル型架橋
酸無水物およびヒドロキシル基を架橋反応に用いることができる。酸無水物としては、脂肪族無水カルボン酸および芳香族無水カルボン酸などを用いる。また、環状酸無水物基および非環状無水物基のいずれも用いることができるが、環状酸無水物基が好適に用いられる。環状酸無水物基は、例えば、無水マレイン酸基、無水フタル酸基、無水コハク酸基、無水グルタル酸基が挙げられ、非環状酸無水物基は、例えば、無水酢酸基、無水プロピオン酸基、無水安息香酸基が挙げられる。中でも、無水マレイン酸基、無水フタル酸基、無水コハク酸基、無水グルタル酸基、無水ピロメリット酸基、無水トリメリット酸基、ヘキサヒドロ無水フタル酸基、無水酢酸基、無水プロピオン酸基、無水安息香酸基およびこれらの置換体などが、ヒドロキシル基と反応して架橋構造を形成する酸無水物として好ましい。
ヒドロキシル基は、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料のヒドロキシル基、各種の反応によりヒドロキシル基が導入された生分解性樹脂材料などのヒドロキシル基を使用する。また、ジオール及びポリオール等のヒドロキシ化合物を架橋剤として用いても良い。更に、ジアミン及びポリアミンを架橋剤として用いることもできる。酸無水物として、例えば、無水ピロメリット酸のような酸無水物を2つ以上有するものを用いれば、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料、ヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料などに対し架橋剤として使用できる。
また、無水マレイン酸をビニル重合により不飽和化合物と共重合することにより2つ以上の無水マレイン酸を有する化合物が容易に得られる(特開平11−106578号公報、特開2000−34376号公報)。これも、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料、ヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料などに対する架橋剤として使用できる。
以上の様な酸無水物とヒドロキシル基とは、以下の一般式(III)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
一般式(III)においては、冷却により酸無水物基と水酸基とがエステルを形成して架橋となる。この架橋は加熱により開裂する。
(4)ハロゲン−アミン型架橋
ポリアミン及びテトラメチルヘキサンジアミン等とハロゲン化アルキルとから、熱可逆的架橋部位を形成できる。例えば、ヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料、ヒドロキシル基で修飾された生分解性樹脂材料などに、4−ブロモメチルベンゾイックアシッドのようなカルボキシル基を有するハロゲン化物をエステル結合する事によりハロゲン化物を得ることができる。これに、例えば、テトラメチルヘキサンジアミンを架橋剤として添加することにより、熱可逆的な架橋を形成する生分解性樹脂を得る。
ハロゲン化アルキル基は、例えば、アルキルブロミド、アルキルクロリド、フェニルブロミド、フェニルクロリド、ベンジルブロミド、ベンジルクロリドが挙げられる。
また、アミノ基としては第三級アミノ基が好ましく、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基が挙げられる。中でも、ジメチルアミノ基が好ましい。ハロゲン化アルキル基と第三級アミノ基との組み合わせは、特に限定されないが、例えば、ベンジルブロミドとジメチルアミノ基との組み合わせを例示できる。
これらの官能基は、以下の一般式(IV)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
一般式(IV)においては、冷却によりハロゲン化アルキル基と第三級アミンとが、第四級アンモニウム塩性の共有結合を形成して架橋となる。この架橋は加熱により開裂する。
(5)ウレタン型架橋
イソシアネートと活性水素とから熱可逆的な架橋部位を形成できる。例えば、多価イソシアネートを架橋剤として用い、生分解性樹脂材料およびその誘導体のヒドロキシル基、アミノ基、フェノール性水酸基と反応する。また、ヒドロキシル基、アミノ基およびフェノール性水酸基から選ばれた2つ以上の官能基を有する分子を架橋剤として加えることもできる。更に、開裂温度を所望の範囲とするために、触媒を添加することもできる。また、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル、フェノール樹脂などを架橋剤として加えることもできる。
また、多価イソシアネートを架橋剤として用い、生分解性樹脂材料およびその誘導体のヒドロキシル基、アミノ基、フェノール性水酸基と反応させる。ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル、フェノール樹脂などを架橋剤として加えることもできる。多価イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)およびその重合体、4,4’−ジフェニルメタンシイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート(DPDI)、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等を用いることができる。
また、開裂温度を調整するために、1、3−ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン等の有機化合物、アミン類、金属石鹸などを開裂触媒として用いても良い。
以上の官能基は、以下の一般式(V)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
一般式(V)においては、冷却によりフェノール性水酸基とイソシアネート基とがウレタンを形成して架橋となる。この架橋は加熱により開裂する。
(6)アズラクトン−ヒドロキシアリール型架橋
アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基およびこれらの基より誘導される基が挙げられ、これらの基に結合するフェノール性のヒドロキシル基が、架橋構造を形成する基に含まれるアズラクトン構造と反応する。フェノール性のヒドロキシル基を有するものとしては、フェノール性のヒドロキシル基を有する生分解性樹脂材料、ヒドロキシルフェノール類で修飾された生分解性樹脂材料などを使用する。
アズラクトン構造としては、1,4−(4,4’−ジメチルアズラクチル)ブタン、ポリ(2−ビニル−4,4’−ジメチルアザラクトン)、ビスアズラクトンベンゼン、ビスアズラクトンヘキサン等の多価アズラクトンが好ましい。
また、アズラクトン−フェノール反応架橋のビスアズラクチルブタン等も使用でき、これらは、例えば、Engleら、J.Macromol.Sci.Re.Macromol.Chem.Phys.、第C33巻、第3号、第239〜257頁、1993年刊に記載されている。
これらの官能基は、以下の一般式(VI)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
一般式(VI)においては、冷却によりアズラクトン基とフェノール性水酸基とが共有結合を形成して架橋となる。この架橋は加熱により開裂する。
(7)カルボキシル−アルケニルオキシ型架橋
カルボキシル基を有するものとしては、カルボキシル基を有する生分解性樹脂材料、カルボキシル基で修飾された生分解性樹脂材料などを使用する。また、アルケニルオキシ構造としては、ビニルエーテル、アリルエーテル及びこれらの構造より誘導される構造が挙げられ、2以上のアルケニルオキシ構造を有するものも使用できる。
また、ビス[4−(ビニロキシ)ブチル]アジペート及びビス[4−(ビニロキシ)ブチル]サクシネート等のアルケニルエーテル誘導体を架橋剤として用いることもできる。
これらの官能基は、以下の一般式(VII)で示す様に、熱可逆性の架橋構造を形成する。
Figure 2003106539
一般式(VII)においては、冷却によりカルボキシル基とビニルエーテル基とがヘミアセタールエステルを形成して架橋となる。この架橋は加熱により開裂する(特開平11−35675号公報、特開昭60−179479号公報)。
(8)架橋剤
以上で説明した様に、熱可逆的な架橋部位を形成し得る官能基を2つ以上分子中に有する化合物は架橋剤となり得る。
酸無水物基を有する架橋剤としては、例えば、ビス無水フタル酸化合物、ビス無水コハク酸化合物、ビス無水グルタル酸化合物、ビス無水マレイン酸化合物が挙げられる。
水酸基を有する架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類;1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のアルコール化合物が挙げられる。
カルボキシル基を有する架橋剤としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。
ビニルエーテル基を有する架橋剤としては、例えば、ビス[4−(ビニロキシ)ブチル]アジペート、ビス[4−(ビニロキシ)ブチル]サクシネート、エチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、2,2−ビス〔p−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕プロパンが挙げられる。
ハロゲン化アルキル基を有する架橋剤としては、例えば、α,α’−ジブロモキシレン、α,α’−ジクロロキシレン、ビスブロモメチルビフェニル、ビスクロロメチルビフェニル、ビスブロモジフェニルメタン、ビスクロロジフェニルメタン、ビスブロモメチルベンゾフェノン、ビスクロロメチルベンゾフェノン、ビスブロモジフェニルプロパン、ビスクロロジフェニルプロパンが挙げられる。
第三級アミノ基を有する架橋剤としては、例えば、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、ビスジメチルアミノベンゼンが挙げられる。
フェノール性水酸基を有する架橋剤としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシビフェニル、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。
イソシアネート基を有する架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のアリール脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。
アズラクトン基を有する架橋剤としては、例えば、ビスアズラクトンブタン、ビスアズラクトンベンゼン、ビスアズラクトンヘキサンが挙げられる。
ニトロソ基を有する架橋剤としては、例えば、ジニトロソプロパン、ジニトロソヘキサン、ジニトロソベンゼン、ジニトロソトルエンが挙げられる。
(架橋構造の選択)
冷却により結合して架橋部位を形成し、加熱により開裂する可逆的な反応の形式としては、上述の様に、ディールス−アルダー型、ニトロソ2量体型、酸無水物エステル型、ハロゲン−アミン型、ウレタン型、アズラクトン−ヒドロキシアリール型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型などを利用できるが、熱分解および加水分解などで生分解性樹脂の主鎖が劣化する化学反応は避けた方が良い場合もある。特に、酸無水物エステル型のような架橋を形成する際に、フリーのカルボン酸を生成するような反応は避けた方が良い場合もある。しかしながら、生分解速度を早くしたい場合は、むしろカルボン酸を生じるような反応の方が好ましい場合もある。また、ハロゲン−アミン型の反応の場合、ハロゲンを含むことから焼却時にダイオキシン類を生じる恐れもある。何れにしても、反応形式の選択は、注意深く行う必要がある。
架橋部分の解離温度は、成形体の100℃以下の使用温度領域において十分な架橋が形成されるために、120℃を越えることが好ましい。一方、生分解性樹脂物の熱劣化の観点から、適度な温度で溶融加工できるために、280℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
より具体的には、成型物として使用する温度において共有結合し、ガラス転移温度(Tg)を超える温度、樹脂に必要な耐熱温度を超える温度、かつ成形温度以下の温度において開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する官能基を有する生分解性樹脂が提供される。
ガラス転移温度(Tg)を超える温度、樹脂に必要な耐熱温度を超える温度としては例えば120℃であり、120℃以上であれば、生分解性樹脂の分解が促進されることなく、架橋構造として、ディールス−アルダー型、カルボキシル−アルケニルオキシ型などから選択することが可能であり、ニトロソ2量体型、ウレタン型およびアズラクトン−ヒドロキシアリール型なども適用可能である。
ディールス−アルダー型の場合、ジシクロペンタンの解離反応は、150℃以上250℃以下で進行するため、高い耐熱性と優れた成形性を生分解性樹脂に付与することが可能である。この架橋部位の解離温度については、例えばフラン-マレイミド間の反応において、中條らの文献(中條ら、Macromolecules、第23巻、第2636〜2641頁、1990年刊)で、溶液中の解離反応について80℃と紹介されている。一方、Stephen A.Cらは((J.P.S.PartA:Poylm.Chem.,30,1775,(1992))、150℃で解離反応が最大になるものや、210℃で最大になるものが存在することを紹介しており、官能基の導入方法により立体障害の度合いが異なるため解離反応の開始温度が大きく異なると述べている。また、結合部位を安定化し、解離温度を上昇する手法としては、電子吸引性の官能基をマレイミド環に付与する手法および、またはフラン環に電子供与性の官能基を付与する手法がある。これにより結合反応を容易にし、解離温度が高く耐熱性に優れる架橋部位を得ることも可能である。
また、ニトロソ2量体型架橋の解離反応は、110℃以上150℃以下で進行するため、高い耐熱性と優れた成形性を生分解性樹脂に付与することが可能である。
また、ウレタン型架橋の解離反応は、上記触媒の選定及び添加量の調整により120℃以上250℃以下で進行するため、高い耐熱性と優れた成形性を生分解性樹脂に付与することが可能である。
また、アズラクトン−ヒドロキシアリール型架橋の解離反応は、100℃以上200℃以下で進行するため、高い耐熱性と優れた成形性を生分解性樹脂に付与することが可能である。
また、カルボキシル−アルケニルオキシ型架橋により架橋された樹脂には常温でフリーのカルボン酸は存在しないため、生分解性樹脂の耐湿性を低下することがないため好ましい。カルボキシル−アルケニルオキシ型架橋の解離反応は、カルボキシル基に対する100℃以上250℃以下で進行するため、高い耐熱性と優れた成形性を生分解性樹脂に付与することが可能である。
以上の中でも、生分解性樹脂の劣化が少なく、耐湿性が高い等の理由から、ディールス−アルダー型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型が好ましく、官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、共役二重結合を有する基が好ましい。
また、耐熱性の観点から、架橋構造としては、3次元架橋構造が好ましい。
3次元架橋構造の架橋密度は、生分解性樹脂の官能基の数、各部材の混合比などを所定の値とすることで、所望の値とされる。3次元架橋構造の架橋密度は樹脂物100g当たりに含まれる3次元構造の架橋点のモル数で表され、十分な耐熱性を実現するために0.0001以上が好ましく、0.001以上がより好ましく、0.002以上が更に好ましく、一方、架橋部位のモル数が10を超えると、生分解性樹脂を形成する部分よりも架橋部分を形成する部分の方が多くなり、成形時の粘度が低下し良好な成形物を得ることができない。また、生分解性を示さなくなることから、リサイクル性および生分解性を実現するために1以下が好ましく、0.2以下が更に好ましい。
(架橋体の構造)
以上に説明してきた官能基の少なくとも何れかが第1生分解性樹脂に含まれており、2種類以上の第1官能基および2種類以上の第2官能基が第1生分解性樹脂に含まれている場合もある。
第1官能基は第1生分解性樹脂の分子鎖末端に存在している場合もあれば、例えば側鎖などの末端以外に存在している場合もある。例えば、第1官能基がヒドロキシル基の場合、両末端がヒドロキシル基のポリブチレンサクシネート等は、第1官能基が末端に存在している第1生分解性樹脂の例である。この場合、第1生分解性樹脂の両末端に第1官能基が存在しているが、片末端のみに存在する場合もある。
また、第1官能基がヒドロキシル基の場合、両末端がメチル化されたアミロース及びセルロース等は、第1官能基が末端以外に存在している第1生分解性樹脂の例である。
また、第1生分解性樹脂の主鎖は直線状および分岐状の何れでも構わず、例えば4モル部のポリ乳酸が1モル部のペンタエリスリトールを中心として放射線状に結合したエステル体は、分岐状の第1生分解性樹脂の例である。なお、第1官能基が末端に存在している場合、全ての末端に第1官能基が存在している場合もあれば、一部の末端のみに第1官能基が存在している場合もある。
更に、第1生分解性樹脂の分子鎖中の同一部位に複数の第1官能基が結合している場合もあり、例えば、ポリ乳酸のカルボキシル基末端にペンタエリスリトールがエステル結合している場合、ポリ乳酸のカルボキシル基末端に3つのヒドロキシル基が結合している例である。この場合、ペンタエリスリトールの中央のメタンに由来する炭素が同一部位であり、この炭素にメチレンを介して第1官能基であるヒドロキシル基が結合している。なお、同一部位に複数の第1官能基が結合しているとは、1つの原子から数えて0〜5個の原子を介して複数の第1官能基が結合していることを言い、得られる熱可逆架橋性生分解性樹脂の性能上の理由から、0〜3個の原子を介して複数の第1官能基が結合していることが好ましい。
なお、樹脂物の生産性、樹脂物の成形性などの観点からは、分子鎖の末端に第1官能基が存在している第1生分解性樹脂が好ましい。この場合、溶融加工時において異なる分子鎖の第1官能基間の相互作用が適度であるため、良好な流動性および加工性を実現できる。また、成形体の性能(機械的特性および耐熱性など)の観点からは、分岐状の第1生分解性樹脂または同一部位に複数の第1官能基が結合している第1生分解性樹脂が好ましい。この場合、成形体中で3次元的な架橋が形成されるため、良好な機械的特性および耐熱性を有する成形体を得ることができる。
ここで、共有結合性の官能基が2つ以上ある場合、一方の官能基(第1官能基)が存在している生分解性樹脂(第1生分解性樹脂)に他の官能基(第2官能基)が存在している場合もあれば、第2官能基は、第1官能基が存在している生分解性樹脂(第1生分解性樹脂)とは異なる生分解性樹脂(第2生分解性樹脂)に存在している場合もある。以下に、第1官能基および第2官能基の何れもが同一の第1生分解性樹脂に存在している例を挙げる。
(1)アミロース及びセルロースのヒドロキシル基が無水マレイン酸とエステル結合を形成している多価カルボン酸樹脂を調製する。この樹脂のカルボン酸の一部に2−アミノエチルビニルエーテルをカルボジイミド類でエステル結合する。この場合、同一の生分解性樹脂(第1生分解性樹脂)にカルボン酸構造(第1官能基)とビニルエーテル基(第2官能基)とが存在しており、カルボキシルーアルケニルオキシ型の架橋を形成する。
(2)ポリ乳酸のカルボキシル末端にペンタエリスリトールがエステル結合しているものの両末端にある4つのヒドロキシル基に対し、更にシクロペンタジエンカルボン酸とマレイミドのディールスアルダー反応物(3,5−ジオキソ−4−アザ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン−10−カルボン酸)がエステル結合された第1生分解性樹脂の場合、第1官能基および第2官能基 が同一のシクロペンタジエン誘導体で、第1官能基および第2官能基が同一の第1生分解性樹脂に存在しており、減圧下加熱によりマレイミドを除去することによりシクロペンタジエン同士のディールス−アルダー型の架橋を形成する。なお、架橋は第1生分解性樹脂の両末端で形成される。
(3)両末端がヒドロキシル基のポリブチレンサクシネートの両末端にシクロペンタジエンカルボン酸がエステル結合された第1生分解性樹脂の場合、第1官能基および第2官能基が同一のシクロペンタ−2,4−ジエン−1−イル基で、第1官能基および第2官能基が同一の第1生分解性樹脂に存在しており、ディールス−アルダー型の架橋を形成する。なお、架橋は第1生分解性樹脂の分子鎖の両末端で形成される。
(4)両末端がヒドロキシル基のポリブチレンサクシネートの両末端にニトロソ安息香酸がエステル結合された第1生分解性樹脂の場合、第1官能基および第2官能基が同一のニトロソベンゾイル基で、第1官能基および第2官能基が同一の第1生分解性樹脂に存在しており、ニトロソ2量体型の架橋を形成する。なお、架橋は第1生分解性樹脂の両末端で形成される。
上記の(1)及び(2)の樹脂物は、第1生分解性樹脂材料に第1官能基および第2官能基を導入して得られる。
また、上記の(3)及び(4)の樹脂物を製造する際には、架橋部位を形成する第1官能基と第2官能基とが予め共有結合しており、第1官能基および第2官能基以外に第1生分解性樹脂材料と反応する基を有している化合物(例えば、ジシクロペンタジエンジカルボン酸およびニトロソ安息香酸の2量体など)を架橋剤として用いることができる。この様な架橋剤と第1生分解性樹脂材料とを混合し反応させ、架橋剤を第1生分解性樹脂材料に結合すれば、架橋部位が架橋した状態の樹脂物を生産性良好に得ることができる。特に、上記の(3)及び(4)の様に、第1官能基および第2官能基が同一で、同一の官能基が対称的に結合して架橋部位を形成する場合、ジシクロペンタジエンジカルボン酸、ニトロソ安息香酸の2量体などの、官能基が対称的に結合した2量体を架橋剤として使用できる。
なお、架橋剤が複数の官能基を含む場合、官能基が同種であれば、架橋剤の製造が容易であり、架橋反応を制御し易いため、好ましい。
一方、第2官能基は、第1官能基の存在している第1生分解性樹脂と異なる第2生分解性樹脂に存在していても良い。この様な例としては、ポリ乳酸のカルボキシル基末端にペンタエリスリトールがエステル結合しているものの両末端の4つのヒドロキシル基に、更に3−マレイミドプロピオン酸がエステル結合された第1生分解性樹脂と、ポリ乳酸のカルボキシル基末端にペンタエリスリトールがエステル結合しているものの両末端の4つのヒドロキシル基に、更に3−フリルプロピオン酸がエステル結合された第2生分解性樹脂との組み合わせを挙げることができる。第1官能基はマレイミド構造であり、第2官能基はフリル基であり、これらの官能基はディールス−アルダー型で架橋する。なお、架橋は第1生分解性樹脂の分子鎖末端と、第2生分解性樹脂の分子鎖末端とで形成される。
また、第1官能基および第2官能基の何れも有する第1生分解性樹脂、第1官能基および第2官能基の何れも有する第2生分解性樹脂、第1官能基および第2官能基の何れかのみを有する第1生分解性樹脂、第1官能基および第2官能基の何れかのみを有する第2生分解性樹脂などを含む混合物より樹脂物を構成することもできる。
この様な樹脂物を製造する際にも、架橋部位を形成する第1官能基と第2官能基とが予め共有結合しており、第1官能基および第2官能基以外に第1生分解性樹脂材料と反応する基を有している化合物を架橋剤として用いることができる。この様な架橋剤と第1生分解性樹脂材料および第2生分解性樹脂材料とを混合し反応させ、架橋剤を第1生分解性樹脂材料および第2生分解性樹脂材料に結合すれば、架橋部位が架橋した状態の樹脂物を生産性良好に得ることができる。
一方、第2官能基はリンカーに存在している場合もある。この場合、少なくとも、第1官能基を有する第1生分解性樹脂と、第2官能基を有するリンカーとから樹脂物は構成され、リンカーとしては、第1生分解性樹脂の生分解性を損なわないものが使用される。リンカーを使用することにより、より広範な樹脂物を実現できるため、樹脂物の生産性、樹脂物の成形性、成形体の性能(機械的特性および耐熱性など)などの自由度が広くなる。
リンカーは1分子中に2つ以上の第2官能基を有しているモノマー、オリゴマー及びポリマー等で、リンカーの第2官能基は第1生分解性樹脂の第1官能基と架橋部位を形成する。また、リンカーは1分子中に2つ以上の第1官能基を有しているモノマー、オリゴマー及びポリマー等を併用してもよい。この結果、成形体においては、2以上の第1生分解性樹脂が1以上のリンカーを介して架橋された状態となる。また、溶融時には架橋部位は開裂し、架橋部位の結合および開裂は熱可逆反応の関係にある。なお、1分子中に2つ以上の第2官能基を有しているリンカーを、架橋剤と呼ぶ場合もあり、この様なリンカーと第1生分解性樹脂とを混合し反応して、樹脂物を製造する。なお、必要に応じて、複数のリンカーを併用する場合もあれば、複数の第1生分解性樹脂を併用する場合もある。
以上、架橋用の官能基として、(1)生分解性樹脂に導入する方法、(2)リンカーも使用する方法を説明したが、その他の方法として、通常の生分解性樹脂に、リンカー同士の架橋システムを入れる手法も利用できる。例えば、市販の生分解性樹脂に、ディールス−アルダー反応により重合する樹脂を一部混合する。ディールス−アルダー反応する樹脂としては、以上に説明したリンカー等を使用できる。
モノマー性のリンカーとしては、以下を例示できる。
(1)トルエンジイソシアネートをリンカーとして使用する。この場合、第2官能基はイソシアネート基であり、第1生分解性樹脂としては、例えば、フェノール性水酸基を有する生分解性ポリエステルを使用する。第1官能基はフェノール性のヒドロキシル基であり、トルエンジイソシアネートのイソシアネート基は、生分解性ポリエステルのフェノール性のヒドロキシル基と、ウレタン結合により架橋を形成し、フェノール性水酸基を有する生分解性ポリエステルはトルエンジイソシアネートを介して架橋される。
(2)N,N’−ビスマレイミド−4,4’−ジフェニルメタンをリンカーとして使用する。この場合、第2官能基はマレイミド構造であり、第1生分解性樹脂としては、例えば、フル酸がヒドロキシル基末端にエステル結合したポリ乳酸を使用する。第1官能基はフリル基であり、N,N’−ビスマレイミド−4,4’−ジフェニルメタンのマレイミド構造は、ポリ乳酸に結合しているフリル基と、ディールス−アルダー型の架橋を形成し、ポリ乳酸は、N,N’−ビスマレイミド−4,4’−ジフェニルメタンを介して、片末端で架橋される。
なお、リンカーが複数の官能基を含む場合、官能基が同種であれば、リンカーの製造が容易であり、架橋反応を制御し易いため、好ましい。
(静電結合性架橋構造の併用)
静電結合とは、静電的な結合であり、静電引力により形成される結合を意味し、イオン結合および水素結合などが含まれる。これらの結合は、官能基と官能基とで直接形成される場合、官能基と官能基とでイオンを介して形成される場合、官能基と官能基とでポリイオンを介して形成される場合などがある。
官能基と官能基とで直接形成される静電結合としては、イオン性官能基間のイオン対間で形成される場合を挙げることができる。また、官能基と官能基とでイオンを介して形成される静電結合としては、2つ以上のイオン性官能基が1つのカウンターイオンに静電引力で配位されている場合を挙げることができる。更に、官能基と官能基とでポリイオンを介して形成される静電結合としては、2つ以上のイオン性官能基が1つのイオン性高分子に静電引力で配位されている場合を挙げることができる。
生分解性樹脂材料から得られる生分解性樹脂は官能基を有しており、静電結合の様式としては、官能基がイオン対を形成している場合、官能基がカウンターイオンに静電引力で配位されている場合、官能基がポリイオンに静電引力で配位されている場合などがある。
官能基がイオン対を形成している形態は、官能基と官能基との間で静電結合が直接形成されている例であり、例えば、生分解性樹脂中のカルボキシル基がカルボキシレートアニオンとなり、生分解性樹脂中のアミノ基がアンモニウムカチオンとなり、これらがイオン対を形成し有機塩となっている場合などである。
また、官能基がカウンターイオンに静電引力で配位されている形態は、官能基と官能基との間でイオンを介して静電結合が形成される例であり、例えば、生分解性樹脂中の2つ以上のカルボキシル基が1つの金属カチオンにイオン結合している場合などである。
更に、官能基がポリイオンに静電引力で配位されている形態は、官能基と官能基との間でポリイオンを介して静電結合が形成される例であり、例えば、生分解性樹脂中の2つ以上のカルボキシル基がペンタエチレンヘキサミンやポリアミンの様な1つのポリカチオンにイオン結合している場合、生分解性樹脂中の2つ以上のアミノ基がベンゼントリカルボン酸やポリアクリル酸の様な1つのポリアニオンにイオン結合している場合などである。なお、ポリイオンとしては、イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有する単量体;イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有するオリゴマー;イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有するポリマー等を使用できる。
イオン性官能基とは、イオンに解離またはイオンと結合して自身がイオンとなる官能基である。イオン性官能基から形成される静電結合性の架橋構造は、カチオン性官能基とアニオン性官能基とから静電結合を利用して形成できる。カチオン性官能基としては、アミノ基およびイミノ基などを用いる。アニオン性官能基としては、カルボキシル基、スルフォニル基、燐酸基、ハロゲン化物イオンを含む基、水酸基、フェノール性水酸基、チオカルボキシル基などを用いる。また、カチオン性官能基やアニオン性官能基に替えて、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、陰イオン、ポリカチオン、ポリアニオン等1つ以上のイオン性官能基を有する分子を用いることにより、静電結合性の架橋構造を形成することもできる。
以下に、静電結合の形式の具体例を説明する。
(1)イオンを介する結合
イオンを介する静電結合による架橋構造をイオン架橋と言い、イオン架橋の場合、例えば、カルボキシル基などのアニオン性官能基を有する生分解性樹脂材料を用いたり、生分解性樹脂材料にカルボキシル基などのアニオン性官能基が導入されたものを用いる。そして、カチオン性官能基として、ハロゲン化物、無機酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、有機酸塩、カルボン酸塩などを用いて、上記のようなカルボキシル基を有する生分解性樹脂材料を中和することにより、カチオン性官能基をアニオン性官能基の対イオンとして導入できる。中和処理としては、溶融状態の生分解性樹脂材料に上述の塩類から選ばれた1種類以上の塩類を直接添加してもよいし、水溶液として添加してもよい。また、生分解性樹脂材料を水および/または有機溶媒に溶解した後、上述の塩類から選ばれた1種類以上の塩類を添加しても良い。
この様にして得られる生分解性樹脂の形態としては、1つのアニオンを介して2つ以上のカチオンが静電的に結合された構造、1つカチオンを介して2つ以上のアニオンが静電的に結合された構造などがある。
イオン架橋に使用されるイオンは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、有機アンモニウム、ハロゲン化物イオン、カルボキシレートアニオン、アルコラートアニオン、フェノラートアニオン、チオカルボキシレートアニオン、スルフォネートアニオン等であり、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
これらのイオンの中でも、2価以上のイオンが、耐熱性の観点から好ましい。
また、得られる樹脂物および成形体の性能(機械的特性および耐熱性など)の観点から、カルボキシル基を有する生分解性樹脂と、金属イオンとの組み合わせが好ましく、金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、銅イオン等が好ましい。なお、必要に応じて、2種以上金属のイオンを併用することもできる。
また、カルボキシル基の中和率は1%以上が好ましく、5%以上がより好ましく、10%以上が更に好ましく、15%以上が最も好ましい。また、カルボキシル基の中和率は100%以下であるが、95%以下が好ましい。
この様にして得られた生分解性樹脂の場合、金属イオンを介して、2つ以上のカルボキシル基が静電的に結合された構造となる。
(2)ポリイオンを介する結合
ポリイオンを介する静電結合による架橋構造をポリイオン架橋と言い、ポリイオン架橋で使用されるポリイオンの内、イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有するポリカチオン単量体としては、ペンタエチレンヘキサミン以外にも、テトラエチレンペンタミン、ヘキサンジアミン、2,4,6−トリアミノトルエン等を使用できる。
また、イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有するポリアニオン単量体としては、ベンゼントリカルボン酸以外にも、2,3−ジメチルブタン−1,2,3−トリカルボン酸などを使用できる。
また、イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有するポリカチオンオリゴマー及びポリマーとしては、ポリアミン以外にも、ポリビニルアミンやポリエチレンイミン等のポリアミン類などを使用できる。
また、イオン性官能基を1つ以上、好ましくは2つ以上有するポリアニオンオリゴマー及びポリマーとしては、ポリアクリル酸以外にも、ポリスチレンスルホン酸、ポリリン酸などを使用できる。
(3)有機塩の形成による結合
例えば、アミノ基などのカチオン性官能基と、カルボキシル基などのアニオン性官能基との間で静電的に形成される結合を利用して、架橋部位を形成できる。
(成形加工)
以上の様にして得られた熱可逆的な架橋を形成する生分解樹脂物を用いて成形体を作製する際には、無機フィラー、有機フィラー、補強材、着色剤、安定剤(ラジカル補足剤、酸化防止剤など)、抗菌剤、防かび材、難燃剤などを、必要に応じて併用できる。
無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、タルク、砂、粘土、鉱滓などを使用できる。有機フィラーとしては、植物繊維などの有機繊維を使用できる。補強材としては、ガラス繊維、炭素繊維、針状無機物、繊維状テフロン樹脂などを使用できる。抗菌剤としては、銀イオン、銅イオン、これらを含有するゼオライトなどを使用できる。難燃剤としては、シリコーン系難燃剤、臭素系難燃剤、燐系難燃剤などを使用できる。
なお、架橋部分の解離温度は、成形体の使用温度領域において十分な架橋が形成されるために、120℃を越える必要があり、一方、生分解性樹脂物の熱劣化が問題とならない温度で溶融加工できるために、280℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。そして、溶融後、生分解性樹脂物は冷却され賦形される。冷却温度は、十分な架橋が形成されるために、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、一方、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。なお、冷却工程中および冷却工程後に、十分な架橋を形成し成形体の十分な特性を発現するために、必要に応じて、成形体を所定の温度で保持する場合もある。成形体を保温することにより、架橋の形成が更に進み、成形体の特性を向上することができる。
また、同様の観点から、生分解性樹脂物の溶融温度(流動開始温度)も、120℃を越える必要があり、一方、280℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
以上の様な樹脂および樹脂組成物は、射出成形法、フィルム成形法、ブロー成形法、発泡成形法などの方法により、電化製品の筐体などの電気・電子機器用途、建材用途、自動車部品用途、日用品用途、医療用途、農業用途などの成形体に
加工できる。
熱可逆的な架橋構造は、形状記憶樹脂に利用することが可能である。形状記憶樹脂の例としては、入江正浩ら著、形状記憶ポリマーの材料開発(ISBN4−88231−064−3)がある。形状記憶現象とは、一般的には、所定の温度域で変形加工した後、再加熱すると元の形状に回復する現象をいう。即ち、変形加工は、樹脂のガラス転移温度以上で行い、ガラス転移温度以下に冷却することにより変形を固定化する。(常温域において固定化した樹脂を使用するためには、ガラス転移温度は常温より高い必要がある。)形状を回復するには、樹脂をガラス転移温度以上に加熱することにより、ガラス状態による変形の固定化を解除する。ここで、この樹脂の変形を固定する方法として熱可逆的な架橋構造を利用することが可能である。熱可逆的な架橋構造を変形の固定化に利用した場合は、架橋が解離する温度をガラス転移温度以下に設定することにより、ガラス転移温度以上で元の形状に回復することが可能になる。この例として、米国特許第5,043,396号がある。また、熱可逆的な架橋構造を形状の記憶の為の固定点として利用することも可能である。形状記憶樹脂は樹脂の流動(クリープ現象)を防ぐための固定点(或いは凍結相)が必要である。ポリマー同士の絡まり合いを利用したものは、熱可塑性形状記憶樹脂と呼ばれ、溶融する事によりリサイクル可能となる。しかしながら、形状回復力が弱く、回復速度も遅い。これに対し、固定点に共有結合を用いたものは、熱硬化性形状記憶樹脂と呼ばれ、溶融が出来なくなり、リサイクル不能となるものの、形状回復力が強く、回復速度も速い。この固定点として熱可逆可能な架橋構造を利用した場合、回復力が強く、回復速度も速く、かつ溶融可能でリサイクル可能な形状記憶樹脂を得ることが出来る。
以上を踏まえ、生分解性樹脂の中でもポリエステル系樹脂が好ましく、例えばポリ乳酸が好ましく、ポリブチレンサクシネートも好ましい。また、これらの生分解性樹脂に導入される架橋部位としては、ディールス−アルダー型架橋またはカルボキシル−アルケニルオキシ型架橋が好ましい。この様に、ポリ乳酸などのポリエステル系の生分解性樹脂にディールス−アルダー型架橋またはカルボキシル−アルケニルオキシ型架橋が導入されている場合、架橋部位は三次元架橋点を有することが特に好ましく、三次元架橋点の架橋密度は0.0025〜0.110であることが好ましい。また、架橋部位の解離温度は、120℃以上が好ましい。
以上の様な化学構造を選択することで、生分解性を損なうことなく、耐熱性を向上でき、生分解性樹脂の十分なマテリアルリサイクル性を実現でき、良好な成形性を実現でき、耐湿性など耐久性を十分なものとすることができる。
以上の理由としては、以下の様に推察できる。
(ア)ポリ乳酸やポリブチレンサクシネートを初めとする人工合成生分解性樹脂は、一般に天然合成生分解性樹脂の多糖類に比べ成形性に優れる。
(イ)ポリ乳酸やポリブチレンサクシネートを初めとする人工合成生分解性樹脂は、一般に天然合成生分解性樹脂の微生物により合成される樹脂に比べ量産性に優れる。
(ウ)ポリ乳酸は人工合成生分解性樹脂の中でも、乳酸という植物由来原料を使用出来るため、化石燃料の消費を抑える事が可能であり、CO2発生量を抑制できる。
(エ)ディールス−アルダー型架橋やカルボキシル−アルケニルオキシ型架橋は、100℃以下の使用温度域においてイオン性で無いため、ポリ乳酸やポリブチレンサクシネートの主鎖の加水分解を促進しない。これは、電子機器の筐体などの耐久材料用途に用いる場合、耐久性(耐湿性)が要求されるが、この様な用途分野においても、上記の生分解性樹脂を好適に使用することができる。
(オ)三次元架橋点を導入することにより、架橋物により生成した樹脂が三次元構造を持つため、耐熱性を発現する。また、十分量の架橋点の存在により、著しく耐熱性を向上できる。一方、架橋密度が高すぎると、可逆架橋部分が生分解性樹脂に占める割合が多くなるため、生分解樹脂として機能が不足する場合がある。
(カ)架橋部分の解離温度を120℃以上とすれば、生分解性樹脂の耐熱性を100℃以上とできる。
(キ)解離温度を250℃以下とすれば、生分解樹脂の主鎖の熱分解を引き起こすことなく成形できる。
以下では、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。なお、以下特に明記しない限り、試薬等は市販の高純度品を用いた。なお、数平均分子量および重量平均分子量はゲルパーメーションクロマトグラム法により測定し、標準ポリスチレンを用いて換算した。
また、以下の方法で性能を評価した。
耐熱性:島津製作所製TMA測定装置(商品名:TMA−40)を用いて針入れ度試験(JIS K 7196に準拠、荷重0.2g、針径3mm)を行い、100℃以下において、変形の有ったものを×、変形の実質的に無かったものを○、変形が全くないものを◎とした。なお、試験片は100℃にて2時間保持した後測定した。
解離温度:セイコーインスツルメント社製DSC測定装置(商品名:DSC6000)をもちいて、昇温速度10℃/分で測定を行ない、吸熱ピークを解離温度とした。
生分解性:熱プレス(200℃)により成形体(厚み0.1ミリ)を作製し、土壌に埋設した後、6ヶ月後に分解性が認められたものを○、認められなかったものを×とした。
リサイクル性:200℃まで加熱して溶融状態とし、これに続く常温までの冷却を5回繰り返した(200℃と常温とを5サイクル)後、上記の耐熱性試験を行い、100℃以下において、変形の有ったものを×、変形の無かったものを○とした。
成形性:6.4mm×12.5mm×125mmの試験片を200℃の射出成形し、成形できたものを○、できなかったものを×とした。
耐湿性:20℃にて60%RHの条件下で試験片を6ヶ月放置した後80℃で減圧乾燥した。樹脂物の成形温度における粘度を測定し、耐湿試験前の粘度と比較した。
実施例1−1
攪拌機、分流コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した3Lのセパラブルフラスコに、コハク酸716g(6.1モル)、1,4−ブタンジオール613g(6.8モル)を仕込み、窒素雰囲気下180〜220℃で3時間脱水縮合を行った。続いて、減圧下180〜220℃で3時間脱グリコール反応を行い、水およびビニルグリコールを留去して、数平均分子量3,000の両末端ヒドロキシル基脂肪族ポリエステル(A1)を得た。
この様にして得られた両末端ヒドロキシル基脂肪族ポリエステル(A1)100質量部と、新日本理化(株)社製1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物(商品名:リカシッド BT−100、化合物(B1)とも呼ぶ)6.6質量部とを東洋精機社製ミニマクスミクストルーダー(商品名)により200℃にて溶融混練し、組成物(1)を得た。
実施例1−2
両末端ヒドロキシル基脂肪族ポリエステル(A1)100質量部と、無水ピロメリット酸7.3質量部とを東洋精機社製ミニマクスミクストルーダー(商品名)により200℃にて溶融混練し、組成物(2)を得た。
実施例1−3
化合物(B1)に代えて、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体(B2)(数平均分子量:900,000)10.4質量部を使用した以外は、組成物(1)の場合と同様にして組成物(3)を得た(三次元架橋を形成可能な架橋点は樹脂物100g当たり、約0.060)。
以上で得られた組成物につき性能を評価し、結果を表1に示した。
Figure 2003106539
表1より、組成物(1)〜(3)は、耐熱性、生分解性、リサイクル性および成形性の全の性能に優れていることが分かった。
ポリエステル樹脂M−1〜M−10
(M−1)両末端ヒドロキシPBS(ポリブチレンサクシネート):1,4−ブタンジオール及びコハク酸を、1,4−ブタンジオール/コハク酸(モル比)が1より多く、より好ましくは1.05以上、更に好ましくは1.1以上となるよう仕込み、脱水縮合反応を行うことにより数平均分子量100〜1,000,000の両末端がヒドロキシル基のPBSを得る。反応温度を110〜250℃として減圧することにより、脱水縮合反応が進行し分子量が増大する。また、テトライソプロポキシチタン等の触媒を、モノマー混合物100質量部に対し0.1〜5質量部加えることによっても、脱水縮合反応が進行し分子量が増大する。
(M−2)PLA(ポリ乳酸):ラクチド(乳酸の2量体)を開環重合することにより、数平均分子量100〜1,000,000のポリ乳酸を得る。反応温度を120〜220℃とすることにより、開環反応が進行する。また、モノマー100質量部に対し0.01〜1質量部のオクタン酸第一スズを触媒として使用することにより、更に脱水縮合反応を進行させ分子量を増大できる。
(M−3)末端ヒドロキシPLA:PLA(M−2)と、ペンタエリスリトールとをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の末端ヒドロキシPLA(M−3)を得る。クロロホルム溶媒中で、ピリジン及び1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライドを脱水触媒として等モル用いることにより、エステル化反応を進行できる。また、水洗により精製できる。
(M−4)両末端フェノール性ヒドロキシPBS:両末端ヒドロキシPBS(M−1)と、ヒドロキシ安息香酸とをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の両末端フェノール性ヒドロキシPBS(M−4)を得る。クロロホルム溶媒中で、ピリジン及び1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライドを脱水触媒として等モル用いることにより、エステル化反応を進行できる。
(M−5)片末端フェノール性ヒドロキシPLA:PLA(M−2)と、ヒドロキシ安息香酸とをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の片末端フェノール性ヒドロキシPLA(M−5)を得る。クロロホルム溶媒中で、ピリジン及び1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライドを脱水触媒として等モル用いることにより、エステル化反応を進行できる。また、水洗により精製できる。
(M−6)末端フェノール性ヒドロキシPLA:末端ヒドロキシPLA(M−3)と、ヒドロキシ安息香酸とをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の末端フェノール性ヒドロキシPLA(M−6)を得る。クロロホルム溶媒中で、ピリジン及び1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライドを脱水触媒として等モル用いることにより、エステル化反応を進行できる。また、水洗により精製できる。
(M−7)両末端カルボン酸PBS:1,4−ブタンジオール及びコハク酸を、1,4−ブタンジオール/コハク酸(モル比)が1より小さく、より好ましくは0.95以下、更に好ましくは0.9以下となるよう仕込み、脱水縮合反応を行うことにより数平均分子量100〜1,000,000の両末端がカルボキシル基のPBSを得る。反応温度を110〜250℃として減圧することにより、脱水縮合反応が進行し分子量が増大する。また、テトライソプロポキシチタン等の触媒を、モノマー混合物100質量部に対し0.1〜5質量部加えることによっても、脱水縮合反応が進行し分子量が増大する。
(M−8)多価カルボン酸PBS:両末端ヒドロキシPBS(M−1)と、ピロメリット酸とをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の多価カルボン酸PBS(M−8)を得る。ヒドロキシル基に対して、ピロメリット酸を大過剰(10〜100モル倍)用いることにより、両端末にピロメリット酸がエステル結合したPBSを得る。クロロホルム及びTHFの混合溶媒またはトルエン溶媒中で、両末端ヒドロキシPBS(M−1)とピロメリット酸とを還流することにより、エステル化反応を進行できる。なお、過剰に用いたピロメリット酸は、溶媒除去後に熱水洗浄することにより除去できる。
(M−9)多価カルボン酸PLA:PLA(M−2)と、ピロメリット酸とをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の多価カルボン酸PLA(M−9)を得る。ヒドロキシル基に対して、ピロメリット酸を大過剰(10〜100モル倍)用いることにより、片端末にピロメリット酸がエステル結合したPLAを得る。クロロホルム及びTHFの混合溶媒またはトルエン溶媒中で、PLA(M−2)とピロメリット酸とを還流することにより、エステル化反応を進行できる。なお、過剰に用いたピロメリット酸は、溶媒除去後に熱水洗浄することにより除去できる。
(M−10)多価カルボン酸PLA:末端ヒドロキシPLA(M−3)と、ピロメリット酸とをエステル結合することにより、数平均分子量100〜1,000,000の多価カルボン酸PLA(M−10)を得る。クロロホルム及びTHFの混合溶媒またはトルエン溶媒中で、末端ヒドロキシPLA(M−3)と大過剰(10〜100モル倍)のピロメリット酸とを還流することにより、エステル化反応を進行できる。なお、過剰に用いたピロメリット酸は、溶媒除去後に熱水洗浄することにより除去できる。
実施例1−4
ディールス−アルダー型架橋樹脂
シクロペンタジエニルナトリウムと過剰のドライアイスとを反応させ、ジシクロペンタジエンジカルボン酸を得る。これに、THF中でカルボン酸と等モル以上のオキサアリルクロライドを加え、ジシクロペンタジエンカルボン酸クロライドを得る。なお、溶媒は60℃で減圧により留去する。これを架橋剤として、ポリエステル樹脂(M−1)〜(M−3)を、それぞれ反応させる。ポリエステル樹脂の水酸基とジシクロペンタジエンカルボン酸クロライドとから脱塩酸し、ポリエステル樹脂の水酸基にジシクロペンタジエンカルボン酸をエステル結合させる。結果として、ジシクロペンタジエンを架橋部位とする、ジシクロペンタジエン架橋のポリエステル樹脂を得る。脱塩酸反応はクロロホルム溶媒中で窒素雰囲気下において常温で進行し、貧溶媒で再沈殿することによりジシクロペンタジエン架橋のポリエステル樹脂を回収できる。ジシクロペンタンによる架橋部位の解離温度は100〜250℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、水酸基密度および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。
実施例1−5
ニトロソ2量体型架橋樹脂
4−ニトロソ−3,5−ジクロロベンゾイルクロライドの2量体を架橋剤として用い、フェノール性水酸基を有するポリエステル樹脂(M−4)、(M−5)及び(M−6)と、それぞれ150〜250℃で溶融混合して、ニトロソ2量体構造を架橋部位とするニトロソ2量体型架橋樹脂を得る。ニトロソ2量化物による架橋部位の解離温度は110〜150℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、フェノール性水酸機密度および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。
実施例1−6
酸無水物エステル型架橋樹脂
2官能以上の酸無水物を架橋剤として用いる。この様な酸無水物としては、例えば、重量平均分子量900,000の無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとの共重合体(ダイセル社製VEMA)、無水ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸無水物(新日本理化社製、商品名:リカジットBT−100)、(5−ジオキソテトラヒドロ−3−ソラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1、2−ジカルボン酸無水物(DIC製、商品名:EPICLON B4400)等を用いる。これらの酸無水物と、ポリエステル樹脂(M−1)〜(M−3)とを、それぞれ反応させ、ポリエステル樹脂の水酸基と酸無水物とからエステル結合を生成させる。結果として、酸無水物から得られるエステル結合を架橋部位とする、酸無水物エステル架橋のポリエステル樹脂を得る。エステル化反応は、クロロホルムとTHFの混合溶媒またはトルエン溶媒中において窒素雰囲気下で還流することで進行し、貧溶媒のヘキサンで再沈殿することにより酸無水物エステル架橋のポリエステル樹脂を回収できる。酸無水物エステルによる架橋部位の解離温度は100〜250℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、水酸基密度および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。
実施例1−7
ハロゲン−アミン型架橋樹脂
ポリエステル樹脂(M−1)〜(M−3)のヒドロキシ基を、4−ブロモメチルベンゾイックアシッドのカルボキシル基とエステル結合することによりハロゲン化ポリエステル樹脂を得る。これらに、テトラメチルヘキサンジアミンを架橋剤として反応させることにより、アンモニウム結合を架橋部位とするハロゲン−アミン型架橋のポリエステル樹脂を得る。ハロゲン−アミン結合による架橋部位の解離温度は100〜200℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、水酸基密度および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。
実施例1−8
ウレタン型架橋樹脂
トルエンジイソシアネート及びフェニルメタンジイソシアネート等を架橋剤として用い、フェノール性水酸基を有するポリエステル樹脂(M−4)、(M−5)及び(M−6)と、それぞれ150〜250℃で溶融混合して、ウレタン結合を架橋部位とするウレタン型架橋のポリエステル樹脂を得る。ウレタン結合による架橋部位の解離温度は120〜250℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、フェノール性水酸基密度および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。また、ウレタン型架橋樹脂100質量部に対して、0.01〜1.0質量部の1,3−ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン等の解離触媒を用いることによっても、解離温度を調整できる。
実施例1−9
アズラクトン−フェノール型架橋樹脂
ビスアズラクチルブタン等を架橋剤として用い、フェノール性水酸基を有するポリエステル樹脂(M−4)、(M−5)及び(M−6)と、それぞれ150〜250℃で溶融混合して、アズラクトン−フェノール結合を架橋部位とするポリエステル樹脂を得る。アズラクトン−フェノール結合による架橋部位の解離温度は100〜200℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、フェノール性水酸基密度および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。
実施例1−10
カルボキシル−ビニルエーテル型架橋樹脂
ビス[4−(ビニロキシ)ブチル]アジペート等を架橋剤として用い、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂(M−7)〜(M−10)と、それぞれ150〜250℃で溶融混合して、ヘミアセタールエステル結合を架橋部位とするカルボキシル−ビニルエーテル型架橋のポリエステル樹脂を得る。ヘミアセタールエステル結合による架橋部位の解離温度は100〜250℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、カルボキシル基密度、酸触媒の添加および架橋密度(架橋剤の使用量)などにより調整できる。
実施例1−11
静電結合性架橋構造の併用
以上で得られたポリエステル樹脂(M−7)〜(M−10)を100〜200℃で溶融し、イオンを加える。イオン源(カチオン)としては、Cu、Na、Mg及びCa等を用いる。酢酸銅、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム及び酢酸マグネシウム等の水溶液を、中和度が好ましく1%以上、より好ましくは10%以上、一方、100%以下、より好ましくは95%以下となるよう添加し、直ちに減圧下にて水を留去する。架橋部分の解離温度は100〜200℃であるが、成形可能な流動性が得られる温度は、用いるポリエステル樹脂の分子量、カルボキシル基密度、金属イオンによるカルボキシル基の中和度などにより調整できる。
この様にして得られた組成物を、例えば、上記のカルボキシル−ビニルエーテル型架橋樹脂と混合し、共有結合性架橋構造と静電結合性架橋構造とを併用する。
実施例1−12
静電結合性架橋構造の併用
上記のカルボキシル−ビニルエーテル型架橋樹脂を100〜200℃で溶融し、イオンを加え、共有結合性架橋構造と静電結合性架橋構造とを併用する。イオン源(カチオン)としては、Cu、Na、Mg及びCa等を用いる。
実施例2−1
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂1
ラクチド(乳酸の2量体)を100質量部に対し0.05質量部のオクタン酸第一スズを触媒として、反応温度200℃にて開環重合することにより、数平均分子量100,000のPLAを得た(C−1)。PLA(1000g)にグリセリン(0.5モル、46g)を加え、180℃で6時間エステル交換反応した。これをクロロホルムに溶解し、アルカリ水溶液で洗浄した後、溶媒を留去することにより、数平均分子量4000の末端ヒドロキシPLA(C−2)を得た。
シクロペンタジエニルナトリウム(1.6モルのTHF溶液、1L)とドライアイス(2kg)とを反応させ、ジシクロペンタジエンジカルボン酸を得た。これに、THF中でカルボン酸と等モル以上のオキサアリルクロライドを加え、ジシクロペンタジエンカルボン酸クロライドを得た。なお、溶媒は60℃で減圧により留去した。上述の末端ヒドロキシPLA(100g)をクロロホルム(3L)に溶解し、ジシクロペンタジエンカルボン酸クロライド(0.038モル)および等モルのピリジンを加え、常温で24時間反応した後、未反応物および不純物を洗浄除去した。溶媒を留去することによりジシクロペンタジエン架橋のポリエステル樹脂を回収した(三次元架橋を形成可能な架橋点は樹脂物100g当たり、約0.023)。
実施例2−2
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂2
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂1の場合と同様にして得られたPLA(C−1)1モルにグリセリン(2モル、184g)を加え、180℃で6時間エステル交換反応した。これをクロロホルムに溶解し、アルカリ水溶液で洗浄した後、溶媒を留去することにより、数平均分子量1000の末端ヒドロキシPLA(C−3)を得た。
上述の末端ヒドロキシPLA(100g)をクロロホルム(3L)に溶解し、ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂1の場合で得られたジシクロペンタジエンカルボン酸クロライド(0.15モル)等モルのピリジンを加え、常温で24時間反応した後、未反応物および不純物を洗浄除去した。溶媒を留去することによりジシクロペンタジエン架橋のポリエステル樹脂を回収した(三次元架橋を形成可能な架橋点は樹脂物100g当たり、約0.078)。
実施例2−3
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂3
Chan−Ming D.らの手法(Polymer、第42巻、第6891頁、2001年刊)と同様に、ラクチドを100質量部に対し、トリメチロールプロパン0.16質量部、オクタン酸第一スズを触媒として0.06質量部用いて110℃にて100時間開環重合することにより、数平均分子量40,000のPLAを得た(C−4)。
上述の末端ヒドロキシPLA(100g)をクロロホルム(3L)に溶解し、ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂1の場合で得られたジシクロペンタジエンカルボン酸クロライド(0.0038モル)等モルのピリジンを加え、常温で24時間反応した後、未反応物および不純物を洗浄除去した。溶媒を留去することによりジシクロペンタジエン架橋のポリエステル樹脂を回収した(三次元架橋を形成可能な架橋点は樹脂物100g当たり、約0.0025)。
実施例2−4
カルボキシル−アルケニルオキシ型架橋生分解性樹脂1
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂1の場合で得られたPLA(C−2)100gをクロロホルム(3L)に溶解し、無水コハク酸(0.075モル)、および触媒としてピリジン(0.05g)を加え、6時間還流した。反応後ピリジンを抽出洗浄した後、溶媒を除去し末端カルボン酸PLA樹脂(C−4)を得た。この樹脂(A−4)100gにリンカーとして、トリス[4−(ビニロキシ)ブチル]トリメリテート11.7gを東洋精機社製ミニマクスミクストルーダー(商品名)により200℃にて溶融混練し、組成物を得た(三次元架橋を形成可能な架橋点は樹脂物100g当たり、約0.034)。
実施例2−5
カルボキシル−アルケニルオキシ型架橋生分解性樹脂2
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂2の場合で得られたPLA(C−3)100gをクロロホルム(3L)に溶解し、無水コハク酸(0.30モル)、および触媒としてピリジン(0.05g)を加え、6時間還流した。反応後ピリジンを抽出洗浄した後、溶媒を除去し末端カルボン酸PLA樹脂(C−4)を得た。この樹脂(C−5)100gにリンカーとして、トリス[4−(ビニロキシ)ブチル]トリメリテート38.8gを東洋精機社製ミニマクスミクストルーダー(商品名)により200℃にて溶融混練し、組成物を得た(三次元架橋を形成可能な架橋点は樹脂物100g当たり、約0.110)。
実施例2−6
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂(三次元架橋なし)
ディールス−アルダー型架橋生分解性樹脂1の場合と同様にして得られたPLA(C−1)にブタンジオール(0.5モル、45g)を加え、180℃で6時間エステル交換反応した。これをクロロホルムに溶解し、アルカリ水溶液で洗浄した後、溶媒を留去することにより、数平均分子量3000の末端ヒドロキシPLA(C−6)を得た。
上述の末端ヒドロキシPLA(100g)をクロロホルム(3L)に溶解し、実施例1で得られたジシクロペンタジエンカルボン酸クロライド(0.033モル)を加え、常温で24時間反応した後、溶媒を留去することによりジシクロペンタジエン架橋のポリエステル樹脂を回収した(三次元架橋を形成可能な架橋点を含まない)。
以上の評価結果を表2に示した。
Figure 2003106539
表2より明らかなとおり、全ての生分解性樹脂が十分な性能を有しているが、特に、三次元架橋が導入された樹脂の場合、耐熱性が特に高い。また、架橋構造がディールス−アルダー型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型の場合、耐熱性および耐湿性が高い。

Claims (21)

  1. 冷却により共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する官能基を有する生分解性樹脂。
  2. 前記共有結合は、ディールス−アルダー型、ニトロソ2量体型、酸無水物エステル型、ハロゲン−アミン型、ウレタン型、アズラクトン−ヒドロキシアリール型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型からなる群より選ばれる1種以上の形式であることを特徴とする請求項1記載の生分解性樹脂。
  3. 前記官能基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシアリール基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、ニトロソ基、ハロゲン、共役二重結合を有する基、酸無水物構造を有する基、イソシアナート構造を有する基およびアズラクトン構造を有する基からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする請求項1又は2記載の生分解性樹脂。
  4. 前記官能基は、成型物として使用する温度において共有結合し、120℃を越えかつ成形温度以下の温度において開裂する熱可逆的な前記架橋構造を形成することを特徴とする請求項1記載の生分解性樹脂。
  5. 前記共有結合は、ディールス−アルダー型およびカルボキシル−アルケニルオキシ型の少なくとも何れか一方であることを特徴とする請求項4記載の生分解性樹脂。
  6. 前記官能基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、共役二重結合を有する基からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする請求項4又は5記載の生分解性樹脂。
  7. 前記生分解性樹脂は、ヒドロキシル基、カルボキシル基およびアミノ基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有するポリエステル類または該ポリエステル類の変性体であることを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載の生分解性樹脂。
  8. 前記生分解性樹脂は、ヒドロキシル基、カルボキシル基およびアミノ基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有するポリアミノ酸類または該ポリアミノ酸類の変性体であることを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載の生分解性樹脂。
  9. 前記生分解性樹脂は、ヒドロキシル基、カルボキシル基およびアミノ基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有する多糖類または該多糖類の変性体であることを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載の生分解性樹脂。
  10. 前記生分解性樹脂は、ヒドロキシル基、カルボキシル基およびアミノ基からなる群より選ばれる1種以上の官能基を有するポリオール類または該ポリオール類の変性体であることを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載の生分解性樹脂。
  11. 前記生分解性樹脂は3次元架橋構造を有しており、該3次元架橋構造の架橋密度は0.0001〜1であることを特徴とする請求項1乃至10何れかに記載の生分解性樹脂。
  12. 前記生分解性樹脂の主鎖は、直線状または分岐状の少なくとも何れか一方の構造を有することを特徴とする請求項1乃至11何れかに記載の生分解性樹脂。
  13. 前記生分解性樹脂の末端または側鎖の少なくとも何れか一方で、同一部位に1つ又は2つ以上の前記官能基が存在していることを特徴とする請求項1乃至12何れかに記載の生分解性樹脂。
  14. 静電結合性で熱可逆的な架橋構造を併用することを特徴とする請求項1乃至13何れかに記載の生分解性樹脂。
  15. 冷却により共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第1官能基を有する第1生分解性樹脂と、
    冷却により該第1官能基と共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第2官能基を有する第2生分解性樹脂と
    を含む生分解性樹脂組成物。
  16. 前記第1官能基および前記第2官能基は、同一であることを特徴とする請求項15記載の生分解性樹脂組成物。
  17. 冷却により共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第1官能基を有する第1生分解性樹脂と、
    冷却により該第1官能基と共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第2官能基を有するリンカーと
    を含む生分解性樹脂組成物。
  18. 前記リンカーは同一の第2官能基を2以上有することを特徴とする請求項17記載の生分解性樹脂組成物。
  19. 請求項1乃至14何れかに記載の生分解性樹脂、又は請求項15乃至18何れかに記載の生分解性樹脂組成物を含む生分解性成形体。
  20. 冷却により共有結合し加熱により開裂する第1官能基および第2官能基が該共有結合した構造と、第3官能基とを有する架橋剤と、
    該第3官能基の反応する部位を有する生分解性樹脂材料と
    を該反応させる工程を含む生分解性樹脂の製造方法。
  21. 冷却により共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第1官能基を有する第1生分解性樹脂と、
    冷却により該第1官能基と共有結合し、加熱により開裂する熱可逆的な架橋構造を形成する第2官能基を2以上有するリンカーと
    を該架橋させる工程を含む生分解性樹脂の製造方法。
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