JP4031866B2 - リサイクル性エラストマー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、共役ジエン構造とジエノフィル構造からディールス−アルダー反応によって形成される架橋構造を有するエラストマーに関し、詳しくは、温度変化により架橋構造の形成と崩壊を可逆的に起こしうるエラストマーに関する。
【0002】
【従来の技術】
側鎖にフラン骨格を有するポリエステルがビスマレイミド存在下、100℃で架橋し、140℃で解架橋が起こることが知られている(米国特許第3,435,003号明細書)。また、シクロペンタジエンを含むブチルゴムが室温で架橋し、無水マレイン酸存在下、加熱することにより解架橋が起こり、エチレンプロピレンゴムの場合にも、150℃で架橋し、170℃で解架橋が起こることが知られている(J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.,17(1979)p.2039、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.,17(1979)p.2055、米国特許第4,138,441号明細書)。シクロペンタジエンを持つ共重合体でも熱可逆性が見出されている(米国特許第3,826,760号明細書)。オキサゾリジンやフランをつけたポリマーが熱可逆架橋性を示すことも知られている(Macromolecules,1990,23,p.2636.)。
フラン骨格を有する樹脂は数多く知られており、これらにディールス−アルダー反応によりビスジエノフィルを結合させて架橋させること、および得られた架橋体を加熱して脱架橋させることについても知られている(Macromolecules,1998,31,p.314.)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術では、樹脂ポリマーにおける架橋−脱架橋が知られているが、エラストマーについてはこのような技術思想がない。即ち、側鎖にヘテロ原子を含む共役ジエン構造を有するエラストマーは知られておらず、側鎖に共役ジエン構造を有するエラストマーにディールス−アルダー反応により2つ以上のジエノフィルを有する化合物を結合させて架橋させ、また、得られた架橋体を加熱して脱架橋させた例はない。
また、側鎖にジエノフィル構造を有するエラストマーは知られておらず、該エラストマーにディールス−アルダー反応により2つ以上の共役ジエンを有する化合物を結合させて架橋させ、また、得られた架橋体を加熱して脱架橋させた例はない。
本発明は、温度変化により架橋構造の形成と崩壊を可逆的に起こすことができ、耐熱性に優れ、コールドフロー性が低く、リサイクル容易なエラストマー、およびこれに用いることができる原料エラストマーを提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、共役ジエン構造とジエノフィル構造からディールス−アルダー反応によって形成される架橋構造を有するエラストマーを提供する。
【0005】
側鎖に共役ジエン構造を有するエラストマー(A)であって、該共役ジエン構造がヘテロ原子を含む共役ジエン構造であるエラストマー(A)を提供する。
【0006】
前記ヘテロ原子を含む共役ジエン構造がフラン骨格を有する共役ジエン構造であるのが好ましい。
【0007】
側鎖に共役ジエン構造を有するエラストマー(A)および2つ以上のジエノフィル構造を有する化合物(B)を含有するエラストマー組成物を提供する。前記エラストマー組成物を構成する前記エラストマー(A)は、前記共役ジエン構造がヘテロ原子を含む共役ジエン構造であり、フラン骨格を有する共役ジエン構造であるのが好ましい。
温度の調節により、架橋・脱架橋反応を起こさせて、該エラストマー組成物((A)+(B))と下記エラストマー(C)との転換を自由に行うことができる。
【0008】
前記エラストマー(A)が、2つ以上のジエノフィル構造を有する化合物(B)により架橋されてなるエラストマー(C)を提供する。前記エラストマー(C)を構成する前記エラストマー(A)は、前記共役ジエン構造がヘテロ原子を含む共役ジエン構造であり、フラン骨格を有する共役ジエン構造であるのが好ましい。
【0009】
前記エラストマー(C)および共役ジエン構造を有する化合物(D)を含有するエラストマー組成物を提供する。
【0010】
2つ以上のジエノフィル構造を有する化合物(B)と共役ジエン構造を有する化合物(D)との反応物(E)および前記エラストマー(A)を含有するエラストマー組成物を提供する。前記エラストマー組成物を構成する前記エラストマー(A)は、前記共役ジエン構造がヘテロ原子を含む共役ジエン構造であり、フラン骨格を有する共役ジエン構造であるのが好ましい。
温度の調節により、架橋・脱架橋反応を起こさせて、該エラストマー組成物((E)+(A))と上記エラストマー組成物((C)+(D))との転換を自由に行うことができる。また、化合物(D)を系外に除いてエラストマー(C)を得ることができる。
【0011】
主鎖にオレフィン構造を有するエラストマーに、メルカプト基を有するフラン化合物を反応させることを特徴とする前記エラストマー(A)の製造方法を提供する。
【0014】
前記エラストマー(A′)および2つ以上の共役ジエン構造を有する化合物(B′)を含有するエラストマー組成物を提供する。温度の調節により、架橋・脱架橋反応を起こさせて、該エラストマー組成物((A′)+(B′))と下記エラストマー(C′)との転換を自由に行うことができる。
【0015】
側鎖にジエノフィル構造を有するエラストマー(A′)または側鎖にジエノフィル構造を有し、前記ジエノフィル構造がマレイミド骨格を有する構造であるエラストマー(A′)が、2つ以上のヘテロ原子を含む共役ジエン構造を有する化合物(B′)により架橋されてなるエラストマー(C′)であって、前記共役ジエン構造と前記ジエノフィル構造からディールス−アルダー反応によって形成される架橋構造を有するエラストマー(C′)を提供する。
【0016】
前記エラストマー(C′)およびジエノフィル構造を有する化合物(D′)を含有するエラストマー組成物を提供する。
【0017】
2つ以上のヘテロ原子を含む共役ジエン構造を有する化合物(B′)とジエノフィル構造を有する化合物(D′)との反応物(E′)、および、側鎖にジエノフィル構造を有するエラストマー(A′)または側鎖にジエノフィル構造を有し、前記ジエノフィル構造がマレイミド骨格を有する構造であるエラストマー(A′)を含有するエラストマー組成物を提供する。温度の調節により、架橋・脱架橋反応を起こさせて、該エラストマー組成物((E′)+(A′))と上記エラストマー組成物((C′)+(D′))との転換を自由に行うことができる。また、化合物(D′)を系外に除いてエラストマー(C′)を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明は、共役ジエン構造とジエノフィル構造からディールス−アルダー反応によって形成される架橋構造を有するエラストマーを提供する。前記エラストマーは、ヘテロ原子を含む共役ジエン構造およびジエノフィル構造の一方を有する原料エラストマーと他方を2つ以上有する化合物とがディールス−アルダー反応によって架橋してなる。
即ち、前記エラストマーの例として、側鎖に共役ジエン構造を有するエラストマー(A)であって、該共役ジエン構造がヘテロ原子を含む共役ジエン構造であるエラストマー(A)が、2つ以上のジエノフィル構造を有する化合物(B)により架橋されてなるエラストマー(C)、および、側鎖にジエノフィル構造を有するエラストマー(A′)が、2つ以上の共役ジエン構造を有する化合物(B′)であって、該共役ジエン構造がヘテロ原子を含む共役ジエン構造である化合物(B′)により架橋されてなるエラストマー(C′)が挙げられる。
【0020】
初めに前記エラストマーに用いられる原料エラストマーについて説明する。
本発明に用いられる原料エラストマーは、側鎖にヘテロ原子を含む共役ジエン構造を有するエラストマー(A)または側鎖にジエノフィル構造を有するエラストマー(A′)である。即ち、エラストマー(A)は、エラストマーの側鎖にヘテロ原子を含む共役ジエン構造を有し、エラストマー(A′)は、エラストマーの側鎖にジエノフィル構造を有する。
【0021】
共役ジエンは、ヘテロ原子を含むものであれば特に限定されず、鎖状共役ジエンおよび環状共役ジエンを用いることができるが、熱等に対する安定性が優れるため、環状共役ジエンが好ましい。本発明に用いられる共役ジエンを第1表に列記する。
【0022】
【表1】
【0023】
(第1表中、R1 〜R6 は、H、CH3 、C2 H5 、C3 H7 、C6 H5 、F、Cl、BrおよびIからなる群から選ばれる基を表し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
なかでも、フラン骨格を有するものを好適に使用することができる。
【0024】
ジエノフィルは、ディールス−アルダー反応で、ジエンと付加的に反応して環式化合物を与える不飽和化合物である。本発明に用いられるジエノフィルは、特に限定されない。本発明に用いられるジエノフィルを第2表に列記する。
【0025】
【表2】
【0026】
前記共役ジエンまたはジエノフィルの結合しているエラストマーは、特に限定されず、主鎖にオレフィン構造を有するものまたは有しないもののいずれも用いることができる。主鎖にオレフィン構造を有するエラストマーは、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状スチレン−ブタジエンゴム、液状ポリクロロプレンが挙げられる。主鎖にオレフィン構造を有しないエラストマーは、例えば、1,2−ポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、液状1,2−ポリブタジエン、液状シリコーンゴム、液状フッ素ゴムを用いることができる。
なかでも、主鎖にオレフィン構造を有するものが好ましい。
【0027】
エラストマー(A)およびエラストマー(A′)の製造方法は、特に限定されない。例えば、下記式(I)に表されるように、主鎖にオレフィン構造を有するエラストマーにメルカプト基を有するフラン化合物を反応させる方法を用いて、エラストマー(A)を得ることができる。
【0028】
【化1】
【0029】
本発明は、また、前記エラストマー(A)および2つ以上のジエノフィル構造を有する化合物(B)を含有するエラストマー組成物、ならびに、前記エラストマー(A′)および2つ以上のヘテロ原子を含む共役ジエン構造を有する化合物(B′)を含有するエラストマー組成物を提供する。
化合物(B)が有するジエノフィルは、前述した化合物(A′)に用いられるジエノフィルを用いることができ、化合物(B′)が有する共役ジエンは、前述した化合物(A)に用いられる共役ジエンを用いることができる。
【0030】
本発明に用いられる化合物(B)は、2つ以上のジエノフィル構造を有するので、第2表に列記されたジエノフィルのうち、2つ以上が結合している化合物であれば特に限定されず、ポリマーであってもよい。化合物(B)の有する2つ以上のジエノフィル構造は、同一であっても、異なっていてもよい。具体的には、例えば、ビスマレイミド等のビスジエノフィル、トリマレイミド等のトリジエノフィルが挙げられる。ビスマレイミドは、下記式(II)に表されるものを好適に用いることができる。なかでも、4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタンが特に好適に用いられる。
【0031】
【化2】
(式中、R1 〜R4 は、H、CH3 、C2 H5 、C3 H7 、F、Cl、BrおよびIからなる群から選ばれる基を表し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。また、Xは、第3表に列記する群から選ばれる基を表し、第3表中、pおよびqは1以上の整数を表す。)
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
【表6】
【0036】
本発明に用いられる化合物(B′)は、2つ以上のヘテロ原子を含む共役ジエン構造を有するので、第1表に列記された共役ジエンのうち、2つ以上が結合している化合物であれば特に限定されない。化合物(B′)の有する2つ以上の共役ジエン構造は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0037】
前記エラストマー組成物におけるエラストマー(A)と化合物(B)の含有量またはエラストマー(A′)と化合物(B′)の含有量は、エラストマー(A)が側鎖に有する共役ジエン構造1当量またはエラストマー(A′)が側鎖に有するジエノフィル構造1当量に対して、化合物(B)の有するジエノフィル構造または化合物(B′)の有する共役ジエン構造が0.01〜1.5当量とするのが好ましく、0.1〜1.0当量とするのがより好ましい。
【0038】
本発明は、また、前記エラストマー(A)が、前記化合物(B)により架橋されてなるエラストマー(C)、および、前記エラストマー(A′)が、前記化合物(B′)により架橋されてなるエラストマー(C′)を提供する。
エラストマー(C)においては、エラストマー(A)が側鎖に有する共役ジエン構造と化合物(B)の有するジエノフィル構造とが、ディールス−アルダー反応で結合している。その結果、エラストマー(C)は、エラストマー(A)が化合物(B)により架橋されたかたちとなっている。エラストマー(C′)においても同様のことがいえる。
【0039】
エラストマー(C)中のエラストマー(A)と化合物(B)の比率またはエラストマー(C′)中のエラストマー(A′)と化合物(B′)の比率は、エラストマー(A)が側鎖に有する共役ジエン構造1当量またはエラストマー(A′)が側鎖に有するジエノフィル構造1当量に対して、化合物(B)の有するジエノフィル構造または化合物(B′)の有する共役ジエン構造が0.01〜1.5当量とするのが好ましく、0.1〜1.0当量とするのがより好ましい。
【0040】
エラストマー(C)およびエラストマー(C′)には、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の添加剤、例えば、各種安定剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、充填剤等を製造中にまたは製造後に添加することができる。
【0041】
また、前記エラストマー(C)および共役ジエン構造を有する化合物(D)を含有するエラストマー組成物とすることもでき、前記エラストマー(C′)およびジエノフィル構造を有する化合物(D′)を含有するエラストマー組成物とすることもできる。
【0042】
共役ジエン構造を有する化合物(D)は、特に限定されず、鎖状共役ジエンおよび環状共役ジエンを用いることができる。化合物(D)には、第1表に列記した共役ジエンが好適に用いられる(第1表中、R1 〜R6 は、H、CH3 、C2 H5 、C3 H7 、C6 H5 、F、Cl、BrおよびIからなる群から選ばれる基を表し、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)。これらは、エラストマー(C)を構成するエラストマー(A)の側鎖に結合しているジエンと同じであっても、異なっていてもよい。
なかでも、フラン、チオフェン、シクロヘキサジエン等が好適に用いられる。
エラストマー(C)と化合物(D)の含有量は、特に限定されない。
ジエノフィル構造を有する化合物(D′)は、第2表に列記したジエノフィルが好適に用いられる。これらは、エラストマー(C′)を構成するエラストマー(A′)の側鎖に結合しているジエノフィルと同じであっても、異なっていてもよい。
【0043】
エラストマー(C)の製造方法は、特に限定されないが、例えばエラストマー(A)、化合物(B)および必要に応じてその他の添加剤と2軸押出機、バンバリミキサー、ニーダー等を用いて、加熱下、混練して製造する方法を用いることができる。エラストマー(C′)も同様である。
架橋温度は特に限定されないが、フラン骨格を有するエラストマーとビスマレイミドを用いる場合は、50〜100℃で行うことができる。エラストマー(C)の脱架橋は、温度は特に限定されないが、フラン骨格を有するエラストマーとビスマレイミドを用いる場合は、100〜180℃、好ましくは130℃±10℃で行うことができる。
【0044】
加熱下に混練する際に起こる架橋反応は、下記式(III)である。
(A)+(B)→(C) (III)
上記式(III)に例示されるディールス−アルダー反応は、可逆反応であり、架橋体であるエラストマー(C)は、加熱により逆(レトロ)ディールス−アルダー反応を起こして、エラストマー(A)と化合物(B)に解離(脱架橋)する(式(IV))。
(A)+(B)←(C) (IV)
【0045】
また、上述したエラストマー(C)および共役ジエン構造を有する化合物(D)を含有するエラストマー組成物を加熱下に混練すると、脱架橋反応が起こり、化合物(B)と化合物(D)との反応物(E)およびエラストマー(A)を含有する組成物を生じる(式(V))。
(C)+(D)→(E)+(A) (V)
逆に、反応物(E)およびエラストマー(A)を含有する組成物を加熱下に混練すると、架橋反応が起こり、エラストマー(C)および共役ジエン構造を有する化合物(D)を含有するエラストマー組成物を生じる(式(VI))。
(C)+(D)←(E)+(A) (VI)
上記式(V)および(VI)の反応は、必要に応じてトルエン等の溶媒の存在下で行うことができる。
【0046】
上記式(III)および(IV)ならびに上記式(V)および(VI)を具体的に例示したものを下記式(VII)に表す。
【0047】
【化3】
(式中、Xは、下記式(VIII)
【化4】
で表される基である。)
【0048】
上記式(III)〜(VII)で表された反応は、共役ジエン構造とジエノフィル構造からディールス−アルダー反応によって形成される架橋構造を有するエラストマーとしてエラストマー(C)を用いたものであるが、エラストマー(C′)についても同様の反応が起こる。
【0049】
また、上記式(V)および(VI)の反応は、上記式(III)および(IV)の反応に比べて反応速度が速いので、エラストマー(C)の使用時に化合物(D)を用いることにより、架橋構造の形成と崩壊を速く起こさせることができる。
エラストマー(C′)についても同様である。
【0050】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
(1)エラストマー(A1)の調製(フラン骨格の導入)
液状ブタジエンゴム(Polyoil130、ヒュルス社製)15.52g(ブタジエンユニットについて0.287mol)に、フルフリルメルカプタン16.38g(0.144mol)および2,2 ′−アゾビスイソブチロニトリル1.18g(0.00718mol)を加え、窒素雰囲気下、60℃で24時間かくはんした。反応溶液をメタノールに沈殿させ、減圧乾燥することにより側鎖にフラン骨格を有するエラストマー(A1)を得た。
液状ブタジエンゴムおよび得られたエラストマー(A1)について、 1H NMRスペクトルを測定した(図1および図2)。図2においては、図1にみられないフラン骨格の水素に由来するシグナル(図2中のg、h、iおよびj)の発生が見られる一方、液状ブタジエンゴム主鎖中の二重結合炭素に結合している水素に由来するシグナル(図2中のb)が小さくなっている。これにより、側鎖にフラン骨格が導入されていることが確認された。エラストマー(A1)におけるフラン骨格の導入率は、ブタジエンユニットに対して、23%であった。
【0051】
(2)エラストマー(C1)の調製(ディールス−アルダー反応による架橋)
エラストマー(A1)2.39g(フルフリル基について6.9mmol)をトルエン(5mL)に溶解し、4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン0.24g(0.69mmol)を加え、60℃でかくはんした。架橋反応が進むにつれて粘度が高くなり、数時間後にはかくはんが不可能となり、さらに4時間後には完全にゲル状となったエラストマー(C1)が得られた。
エラストマー(A1)および得られたエラストマー(C1)について、IRスペクトルを測定した(図3および図4)。図4において生成した1715cm-1のピークより、エラストマー(A1)と4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタンが結合していることが確認された。
【0052】
(3)エラストマー(A1)の再生(脱架橋)
ゲル状のエラストマー(C1)をフラン溶媒に加え、110℃でかくはんした。1時間後、ゲル状のエラストマー(C1)は溶解し、均一な溶液となった。この溶液をメタノールに沈殿させ、乾燥物を得た。
得られた乾燥物について、 1H NMRスペクトルを測定した(図5)。図5と図2の比較より、得られた乾燥物が(1)項で得られたエラストマー(A1)であることが確認された。
一方、溶液中には、4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタンのフラン付加体(E1)が確認された。
また、エラストマー(C1)について示差走査熱量測定(DSC)を行ったところ、106℃付近から脱架橋による吸熱ピークが観測され(図6)、熱重量測定分析(TGA)でも110℃付近からの重量減少が観測されたことより(図7)、脱架橋が行われたことが確認された。
【0053】
(4)エラストマー(C1)の再生(脱架橋後の再架橋)
(3)項の脱架橋により生成した4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタンのフラン付加体(E1)とエラストマー(A1)の溶液を130℃に加熱してフラン溶媒を気化させ、ゲル状物を得た。
得られたゲル状物について、IRスペクトルを測定し、エラストマー(A1)と4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタンの架橋体、すなわちエラストマー(C1)であることを確認した。これは、フラン溶媒の気化時に4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタンのフラン付加体(E1)からフランが解離して生じた4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタンと、エラストマー(A1)の側鎖が反応したことによると推定された。
【0054】
(3)項の脱架橋と(4)項の再架橋は、可逆反応であり、温度を変化させることにより、何度でも繰り返し行わせることができた。
【0055】
(5)脱架橋温度と再架橋温度の測定(無溶媒の系)
第4表に示される量比で、(1)項で得られたエラストマー(A1)に4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタンを加え、140℃で1時間かくはんし、室温中に放置して冷却し、完全にゲル状となったエラストマー(C2)を得た。エラストマー(A1)および得られたエラストマー(C2)について、IRスペクトルを測定し、エラストマー(A1)と4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタンが結合していることを確認した。
ゲル状のエラストマー(C2)を150℃で1時間かくはんしたところ、ゲル状のエラストマー(C2)は溶解し、均一なエラストマー(A1)の溶液となった。その後冷却して溶液がゲル化を開始した温度を脱架橋温度とした。即ち、溶液を冷却する際、脱架橋温度より高い温度においては、脱架橋した状態(架橋していない状態)にある。
ゲル化を開始した溶液をさらに冷却して、溶液が流動性を失い、ゴム状のエラストマー(C2)になったときの温度を再架橋温度とした。
無溶媒の系における脱架橋温度と再架橋温度を第4表に示す。なお、実施例1においては、溶液を冷却して再架橋させてもゴム状までには至らず、ゲル状物が得られた。
【0056】
【表7】
【0057】
【発明の効果】
本発明の共役ジエン構造とジエノフィル構造からディールス−アルダー反応によって形成される架橋構造を有するエラストマーは、通常のエラストマーに比べて耐熱性が高く、コールドフロー性が低い。また、前記エラストマーは、温度変化を与えることにより、脱架橋して流動性を持ったり、再架橋してゲル状になったりする。この転換は可逆的に何度でも行うことができるので、リサイクルが可能である。従って、前記エラストマーをホットメルト接着剤に配合すると、リサイクル性を向上させることができる。
また、室温ではコールドフローを起こす樹脂やゴムに前記エラストマーを配合すると、押出時の流れ防止や、コールドフローを防止することができる。従って、前記エラストマーは、樹脂やゴムの流れ防止剤として好適に用いることができ、接着剤の改質剤として有用である。
さらに、前記エラストマーは、共役ジエン構造を有する化合物またはジエノフィル構造を有する化合物の存在により、温度変化による架橋・脱架橋の速度を速くすることができるので、各用途において作業性等を改善することもできる。
【0058】
また、前記エラストマーの1態様であるエラストマー(C)の原料等として、本発明が提供するエラストマー(A)、ならびに、前記エラストマー(A)および2つ以上のジエノフィル構造を有する化合物(B)を含有するエラストマー組成物は好適である。同様に、前記エラストマーの1態様であるエラストマー(C′)の原料等として、本発明が提供するエラストマー(A′)、ならびに、前記エラストマー(A′)および2つ以上のジエノフィル構造を有する化合物(B′)を含有するエラストマー組成物は好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 液状ブタジエンゴムの 1H NMRスペクトルを示す図である。
【図2】 エラストマー(A1)の 1H NMRスペクトルを示す図である。
【図3】 エラストマー(A1)のIRスペクトルを示す図である。
【図4】 エラストマー(C1)のIRスペクトルを示す図である。
【図5】 乾燥物の 1H NMRスペクトルを示す図である。
【図6】 エラストマー(C1)のDSC曲線を示す図である。
【図7】 エラストマー(C1)のTG曲線を示す図である。
Claims (1)
- 主鎖にオレフィン構造を有するエラストマーに、メルカプト基を有するフラン化合物を反応させることを特徴とする側鎖にフラン骨格を有する共役ジエン構造を有するエラストマー(A)の製造方法。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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