<共役ジエン系重合体>
本発明の共役ジエン系重合体は、ケイ素原子を含有する変性基と、熱可逆性結合基とを有する。
本発明の共役ジエン系重合体は、たとえば、少なくとも共役ジエン単量体を含有する単量体混合物を重合することでベースポリマーを得て、得られたベースポリマーに、ケイ素原子を含有する変性基および熱可逆性結合基を導入することで得ることができる。ケイ素原子を含有する変性基および熱可逆性結合基の導入位置としては、特に限定されないが、その導入効果をより高めることができるという観点より、ケイ素原子を含有する変性基を重合末端に備え、熱可逆性結合基を重合側鎖に備えるものであることが好ましい。
本発明の共役ジエン系重合体によれば、ケイ素原子を含有する変性基と、熱可逆性結合基とを同時に備えることにより、優れた加工性を実現しながら、ゴム架橋物とした際における、低発熱性およびウエットグリップ性を高めることができるものである。特に、本発明の共役ジエン系重合体は、優れた加工性を備えるものであり、具体的には、架橋剤やシリカなどの充填剤を配合する前のムーニー粘度(ポリマー・ムーニー粘度)と、これらを配合した後のムーニー粘度(コンパウンド・ムーニー粘度)との差を小さくすることができ、これにより、配合剤の種類によらず、ムーニー粘度の変動を小さく抑えることが可能となるため、配合設計がし易いものであり、しかも、ペイン効果(動歪に対する貯蔵弾性率の変化)を低く抑えることができ、これにより、シリカなどの充填剤の分散性に優れたものである。ここで、熱可逆性結合基は、温度変化により架橋構造の形成と解離とを可逆的に起こし得る基であり、架橋構造の形成と解離とを可逆的に起こすことにより、上記効果を奏するものである。
なお、従来においても、ケイ素原子を含有する変性基を有する共役ジエン系重合体が提案されており、このような従来技術では、ケイ素原子を含有することで、シリカなどの充填剤に対する相互作用を高めることで、シリカの再凝集を抑制させることが試みられている。しかしその一方で、従来技術においては、シリカなどの充填剤の初期分散性が十分ではなく、ゴム架橋物とした場合における、タイヤとしての性能(たとえば、低燃費性等)を十分に得ることができないものであった。これに対し、たとえば、共役ジエン系重合体を高分子量ポリマーとすることにより、シリカなどの充填剤の初期分散性を向上させる方法も考えられるが、このような手法では、高分子量としているために、シリカの再凝集を抑制させる効果が不十分となり、この場合においても、ゴム架橋物とした場合における、タイヤとしての性能(たとえば、低燃費性等)を十分に得ることができないものであった。
これに対し、本発明においては、ケイ素原子を含有する変性基と、熱可逆性結合基とを同時に備えることにより、混練初期においては、熱可逆性結合基が架橋構造を形成することで、高分子量ポリマーとしての挙動を示すことで、これにより、シリカなどの充填剤の初期分散性を向上させることができるものである。そして、その一方で、混練後期においては、熱可逆性結合基が解離することで、低分子量ポリマーとしての挙動を示すことで、シリカの再凝集を良好に抑制することができ、これにより、シリカの分散性を向上させることができものである。また、これに加えて、熱可逆性結合基を備えることで、高温時の流動性も向上させることができるものである。そして、本発明によれば、これらの作用により、ゴム架橋物とした場合における、タイヤとしての性能(たとえば、低燃費性等)を飛躍的に向上させることができるものである。
共役ジエン単量体としては、特に限定されないが、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの中でも、低発熱性およびウエットグリップ性に特に優れたゴム架橋物を得ることができるという点より、1,3−ブタジエンが好ましい。
本発明の共役ジエン系重合体中における、共役ジエン単量体単位(後述する、熱可逆性結合基で変性されているものも含む)の含有割合は、好ましくは50〜100重量%であり、より好ましくは55〜90重量%、さらに好ましくは55〜85重量%である。共役ジエン単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、最終的に得られるタイヤのウエットグリップ性および耐摩耗性をより高めることができる。
本発明の共役ジエン系重合体中に含有される共役ジエン単量体単位のビニル結合含有量は、好ましくは0〜80重量%であり、より好ましくは5〜70重量%、さらに好ましくは10〜65重量%である。共役ジエン単量体単位のビニル結合含有量を上記範囲とすることにより、最終的に得られるタイヤの低発熱性をより高めることができる。
また、本発明の共役ジエン系重合体を構成するベースポリマーは、共役ジエン単量体と共重合可能な他の単量体を共重合したものであってもよい。このような他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、および無水マレイン酸などの不飽和力ルボン酸単老体または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル単量体;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、および5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン単量体;などが挙げられる。これらのなかでも、芳香族ビニル単量体が好ましく、スチレンが特に好ましい。
本発明の共役ジエン系重合体中における、他の単量体の単位の含有割合は、好ましくは0〜50重量%であり、より好ましくは10〜45重量%、さらに好ましくは15〜45重量%である。
また、本発明の共役ジエン系重合体中に含有される、ケイ素原子を含有する変性基としては、ケイ素原子を含有する基であればよく特に限定されないが、たとえば、ベースポリマーを活性末端を有するものとし、該活性末端に、シラン化合物を反応させることにより得られる基が挙げられる。活性末端に、シラン化合物を反応させることにより、本発明の共役ジエン系重合体は、重合体末端に、ケイ素原子を含有する変性基を備えるものとなる。この際に用いられるシラン化合物としては、特に限定されないが、たとえば、ジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリフェノキシメチルシラン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、トリエトキシクロロシラン、3−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシブチルプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メチルアミン、トリス(3−トリメトキシリルプロピル)イソシアヌレート)、ジブチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、テトラクロロシラン、3−(ベンジルメチルアミノ)プロピルトリメトキシシランの他、下記一般式(1)〜(3)で表されるポリオルガノシロキサンが挙げられる。これらのなかでも、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンが好ましい。
(上記一般式(1)中、R
1〜R
8は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X
1およびX
4は、(i)その一部がベースポリマーの活性末端と反応する官能基であって、残部が該官能基から導かれる基または単結合であるか、または、(ii)炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数6〜12のアリール基であり、X
1およびX
4は互いに同一であっても相違していてもよい。X
2は、その一部がベースポリマーの活性末端と反応する官能基であって、残部が、該官能基から導かれる基もしくは単結合である。X
3は、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、X
3の一部は2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基から導かれる基であってもよい。mは3〜200の整数、nは0〜200の整数、kは0〜200の整数である。)
(上記一般式(2)中、R
9〜R
16は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X
5〜X
8は、その一部がベースポリマーの活性末端と反応する官能基であって、残部が該官能基から導かれる基または単結合である。)
(上記一般式(3)中、R
17〜R
19は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X
9〜X
11は、その一部がベースポリマーの活性末端と反応する官能基であって、残部が該官能基から導かれる基または単結合である。sは1〜18の整数である。)
上記一般式(1)において、R1〜R8、X1およびX4を構成する炭素数1〜6のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、たとえば、フェニル基、メチルフェニル基などが挙げられる。これらのアルキル基およびアリール基の中では、メチル基が特に好ましい。
X1、X2およびX4を構成するベースポリマーの活性末端と反応する官能基としては、特に限定されないが、炭素数1〜5のアルコキシル基、2−ピロリドニル基を含有する炭化水素基、およびエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基が好ましい。また、X1、X2およびX4を構成する「該官能基(ベースポリマーの活性末端と反応する官能基)から導かれる基」とは、活性末端を有するベースポリマーに、該官能基を有するポリオルガノシロキサンを反応させた際に、それぞれ、活性末端を有するベースポリマーとポリオルガノシロキサン中の該官能基とが反応して、ベースポリマーとポリオルガノシロキサンとの結合が生成した後の、これらの官能基の残基をいう。
炭素数1〜5のアルコキシル基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。なかでも、メトキシ基が好ましい。
2−ピロリドニル基を含有する炭化水素基としては、下記一般式(4)で表される基が好ましく挙げられる。
(上記一般式(4)中、jは2〜10の整数である。特に、jは2であることが好ましい。)
また、エポキシ基を有する炭素数4〜12の基は、下記一般式(5)で表される基が挙げられる。
−Z1−Z2−E (5)
上記一般式(5)中、Z1は、炭素数1〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Z2はメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2〜10の置換炭化水素基である。これらの中でも、Z2が酸素原子であるものが好ましく、Z2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Z1が炭素数3のアルキレン基であり、Z2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
上記一般式(1)において、X1および/またはX4の一部が炭素数1〜5のアルコキシル基、2‐ピロリドニル基を含有する炭化水素基、およびエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基から選ばれる基であるときは、その残部は、該官能基から導かれる基または単結合である。X2は、その一部が炭素数1〜5のアルコキシル基、2‐ピロリドニル基を含有する炭化水素基、およびエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基から選ばれる基であって、残部は、該官能基から導かれる基または単結合である。
ベースポリマーの活性末端と反応する前の一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1、X2およびX4の少なくとも一部が炭素数1〜5のアルコキシル基の場合、ベースポリマーにポリオルガノシロキサンを反応させると、ケイ素原子とアルコキシル基の酸素原子との結合が解離して、そのケイ素原子にベースポリマーが直接結合して単結合を形成する。すなわち、ベースポリマーの活性末端と反応した後の一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1、X2およびX4の一部は単結合(ベースポリマーと結合するうための単結合)となる。
ベースポリマーの活性末端と反応する前の一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1、X2およびX4の少なくとも一部が2‐ピロリドニル基を含有する炭化水素基の場合、ベースポリマーにポリオルガノシロキサンを反応させると、2‐ピロリドニル基を構成するカルボニル基の炭素‐酸素結合が解離して、その炭素原子にベースポリマーが結合した構造を形成する。
さらに、ベースポリマーの活性末端と反応する前の一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1、X2およびX4の少なくとも一部がエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基の場合、ベースポリマーにポリオルガノシロキサンを反応させると、エポキシ環を構成する炭素‐酸素結合が解離して、その炭素原子にベースポリマーが結合した構造を形成する。
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1およびX4としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基およびこれから誘導された基または炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、また、X2としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基およびこれから誘導された基が好ましい。
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X
3、すなわち2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、下記一般式(6)で表される基が好ましい。
上記一般式(6)中、tは2〜20の整数であり、Pは炭素数2〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R
20は水素原子またはメチル基であり、Qは炭素数1〜10のアルコキシル基またはアリーロキシ基である。Qの一部は単結合であってもよい。これらの中でも、tが2〜8の整数であり、Pが炭素数3のアルキレン基であり、Rが水素原子であり、かつQがメトキシ基であるものが好ましい。
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、mは3〜200、好ましくは20〜150、より好ましくは30〜120の整数である。また、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、nは0〜200の整数、好ましくは0〜150の整数、より好ましくは0〜120の整数である。kは0〜200の整数、好ましくは0〜150の整数、より好ましくは0〜120の整数である。さらに、m、n、およびkの合計数は、400以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、250以下であることが特に好ましい。m、n、kを上記範囲とすることにより、加工性をより適切なものとすることができる。
また、上記一般式(2)、上記一般式(3)における、R9〜R19、および、X5〜X11も、上記一般式(1)のR1〜R8、および、X1〜X4と同様とすることができる。
あるいは、シラン化合物としては、としては、下記一般式(7)で示されるヒドロカルビルオキシシラン化合物を用いることもできる。
(上記一般式(7)中、R
21は、炭素数1〜12のアルキレン基であり、R
21が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。R
22〜R
30は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基である。rは1〜10の整数である。)
上記一般式(7)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物において、炭素数1〜6のアルキル基、および炭素数6〜12のアリール基は、上記一般式(1)と同様とすることができる。
上記一般式(7)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物において、炭素数1〜12のアルキレン基としては、たとえば、メチレン基、エチレン基、およびプロピレン基などが挙げられる。これらの中でも、プロピレン基が好ましい。
上記一般式(7)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物の具体例としては、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、およびN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
あるいは、シラン化合物としては、下記一般式(8)で表される化合物を用いることもできる。
上記一般式(8)中、R31、R32は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の有機基であり、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、または炭素数6〜18のアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、またはベンジル基である。また、X12はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、X12で表される官能基となりうるヒドロカルビルオキシ基としては、特に限定されないが、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのアルコキシ基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基などのアルケニルオキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基;などが挙げられる。これらのなかでも、アルコキシ基またはアリーロキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。また、X12となりうるハロゲン基としては、特に限定されないが、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられ、これらのなかでも、クロロ基が好ましい。また、X12は水酸基であってもよく、この水酸基は、ヒドロカルビルオキシ基やハロゲン基であったものが加水分解されて水酸基となったものであってもよい。R33は、炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。pは0〜2の整数であり、aは1〜10の整数であり、好ましくは1〜6の整数である。
上記一般式(8)で表される化合物の具体例としては、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルジエトキシメチルシラン、3−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−フェニル−N−プロピルアミノ)ペンチルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリル−N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルジイソプロピルエトキシシラン、3−(N−メチル−N−フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ビス[トリメチルシリル]アミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリクロロシランなどが挙げられる。
また、シラン化合物としては、下記一般式(9)で表される化合物を用いることもできる。
上記一般式(9)において、R34は、炭素数1〜20の有機基であり、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜18のアリール基であり、より好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基である。また、X13はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、その具体例としては、上記一般式(8)のX12と同様とすることができる。R35は、炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。qは0〜1の整数である。
上記一般式(9)で表される化合物の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジプロポキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−ブチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−ブチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジプロポキシ−1−ブチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−トリメチルシリル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジクロロ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタンなどが挙げられる。
あるいは、シラン化合物としては、下記一般式(10)で表される化合物を用いることもできる。
上記一般式(10)中、X14はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、R36は置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、R37、R38は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の有機基であり、R37およびR38は互いに結合して環構造を形成していてもよく、vは1〜2の整数である。
上記一般式(10)中、X14はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、その具体例としては、上記一般式(8)のX12と同様とすることができる。
また、上記一般式(10)中、v(すなわち、式(10)においてX14で表される官能基の数)は、1〜2の整数であり、好ましくは2である。一般式(10)におけるvが2である場合において、一般式(10)で表される化合物1分子中に2個含まれるX14で表される基は、同一のものであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。
上記一般式(10)中、R36は、置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、R36となりうる炭化水素基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などのアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;などが挙げられる。これらのなかでも、アルキル基またはアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。また、R36で表される炭化水素基は、炭化水素基以外の置換基を有していてもよく、その置換基としては、特に限定されないが、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロカルビルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基などのカルボニル基含有基や、エポキシ基、オキシ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン基などを挙げることができる。
上記一般式(10)中、R37およびR38は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の有機基であり、R37およびR38は互いに結合して、一般式(10)において「N」で表される窒素原子とともに環構造を形成していてもよい。R37およびR38が互いに結合していない場合に、R37およびR38なりうる炭化水素基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などのアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;などが挙げられる。これらのなかでも、アルキル基またはアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基が特に好ましい。また、R37およびR38は互いに結合して環構造を形成する場合に、そのR37およびR38が結合してなる2価の炭化水素基としては、特に限定されないが、n−ブチレン基(一般式(10)において「N」で表される窒素原子とともに1−ピロリジン基を形成する場合)、n−ペンチレン基(1−ピペリジン基を形成する場合)、ブタジエニレン基(1−ピロール基を形成する場合)などが挙げられる。
また、R37およびR38で表される炭化水素基は、環構造形成の有無に関わらず、炭化水素基以外の置換基を有していてもよく、その置換基としては、特に限定されないが、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロカルビルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基などのカルボニル基含有基や、エポキシ基、オキシ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン基などを挙げることができる。さらに、R37およびR38は互いに結合して環構造を形成する場合には、その環構造を形成する原子として、炭素原子および一般式(10)において「N」で表される窒素原子以外の原子が含まれていてもよく、そのような原子の例として、窒素原子や酸素原子を挙げることができる。
本発明においては、上記一般式(10)で表される化合物の中でも、特に好ましいものとして、R
37およびR
38で表される炭化水素基が、互いに結合して、一般式(10)において「N」で表される窒素原子とともに、ピペラジン環構造を形成しているものが挙げられる。より具体的には、下記一般式(11)で表される化合物を用いることが好ましい。
上記一般式(11)中、X14、R36、vは、いずれも上記一般式(10)と同様であり、R39は炭素数1〜20の有機基を表す。
上記一般式(11)中、R39は炭素数1〜20の有機基を表し、R39となりうる炭化水素基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;エチニル基、プロピニル基などのアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;などが挙げられる。これらのなかでも、アルキル基またはアリール基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
上記一般式(11)で表される化合物の具体例としては、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジエトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジメトキシ−8−(N,N−ジエチル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2−メトキシ−2−メチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジクロロ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンなどが挙げられる。
また、シラン化合物としては、下記一般式(12)で表される化合物を用いることもできる。
上記一般式(12)中、X15はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、その具体例としては、上記一般式(8)のX12と同様とすることができる。R40は、炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。また、R41、R42、R43は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の有機基であり、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基またはエチル基である。wは0〜2の整数であり、bは1〜10の整数であり、cは1〜10の整数である。なお、上記一般式(12)中において、R41は、3個含まれることとなるが、全て同じであってもよいし、一部が異なるものであってもよく、同様に、R42、R43も、3個ずつ含まれることとなるが、全て同じであってもよいし、一部が異なるものであってもよい。
上記一般式(12)で表される化合物の具体例としては、3−[N−2−{N’,N’−ビス(トリメチルシリル)アミノ}エチル−N−トリメチルシリルアミノ]プロピルトリエトキシシラン、3−[N−2−{N’,N’−ビス(トリエチルシリル)アミノ}エチル−N−トリエチルシリルアミノ]プロピルトリエトキシシラン、3−[N−2−{N’,N’−ビス(トリエチルシリル)アミノ}エチル−N−トリエチルシリルアミノ]プロピルトリクロロシランなどが挙げられる。
また、シラン化合物としては、下記一般式(13)で表される化合物を用いることもできる。
上記一般式(13)中、X6はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、その具体例としては、上記一般式(8)のX12と同様とすることができる。R44は、炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。また、R45、R46は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機基であり、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、または炭素数6〜18のアリール基である。yは0〜2の整数であり、dは1〜10の整数である。
上記一般式(13)で表される化合物の具体例としては、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4−メチルペンタン−2−イミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4−メチルペンタン−2−イミン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)プロパン−2−イミン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)ペンタン−3−イミン、N−(3−トリクロロシリルプロピル)−4−メチルペンタン−2−イミンなどが挙げられる。
上述したシラン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の共役ジエン系重合体に含有される、熱可逆性結合基は、温度変化により架橋構造の形成と解離とを可逆的に起こし得る基であり、このような基であれば何でもよく、特に限定されないが、本発明においては、下記一般式(14)または下記一般式(15)で表される化合物を、ベースポリマーの共役ジエン単量体単位の二重結合と反応させることにより得られる基であることが好ましい。下記一般式(14)または下記一般式(15)で表される化合物を、ベースポリマーの共役ジエン単量体単位の二重結合と反応させることにより、本発明の共役ジエン系重合体は、側鎖に、熱可逆性結合基を備えるものとなる。また、本発明の共役ジエン系重合体に含有される、下記一般式(14)または下記一般式(15)で表される化合物を用いて形成される熱可逆性結合基は、たとえば、後述する多官能性の熱可逆性を示す化合物と、ディールズアルダー反応により付加反応することで、温度変化により架橋構造の形成と解離とを可逆的に起こし得るものである。
上記一般式(14)中、R
47〜R
50は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、または、ベースポリマーの共役ジエン単量体単位の二重結合と反応する官能基であり、R
47〜R
50のうち、少なくとも一つは、ベースポリマーの共役ジエン単量体単位の二重結合と反応する官能基である。また、Y
1は、−O−、−S−、−S(=O)−、−SO
2−、−NH−、−C(=O)−、または−OC(=O)−である。
上記一般式(15)中、R
51〜R
55は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ハロゲン原子、または、ベースポリマーの共役ジエン単量体単位の二重結合と反応する官能基であり、R
51〜R
55のうち、少なくとも一つは、ベースポリマーの共役ジエン単量体単位の二重結合と反応する官能基である。また、Y
2は、−O−、−S(=O)−、−SO
2−、−NH−、または−C(=O)−である。
これらのなかでも、上記一般式(14)で表される化合物を、ベースポリマーの共役ジエン単量体単位の二重結合と反応させることにより得られる基が好ましく、Y1が、−O−であるフラン骨格を有する化合物を反応させることにより得られる基がより好ましい。
また、ベースポリマーの共役ジエン単量体単位の二重結合と反応する官能基としては、特に限定されないが、炭素数1〜10のメルカプト基を有するアルキル基、ビニル基を有するアルキル基、ヒドロキシ基を有するアルキル基などが挙げられ、これらの中でも、ベースポリマーの共役ジエン単量体単位の二重結合との反応性の観点より、炭素数1〜10のメルカプト基を有するアルキル基が好ましい。
本発明の共役ジエン系重合体中における、熱可逆性結合基の含有割合は、共役ジエン系重合体に含有されているジエン単量体単位(熱可逆性結合基で変性されているものも含む)100モルに対して、好ましくは0.01モル以上、1モル未満であり、より好ましくは0.02〜0.9モル、さらに好ましくは0.03〜0.8モルである。熱可逆性結合基の含有割合を上記範囲とすることにより、ゲル分の増加による加工性の低下を有効に抑制しながら、得られるゴム架橋物の低発熱性およびウエットグリップ性を良好に高めることができる。
本発明の共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、通常、100,000〜3,000,000、好ましくは、150,000〜1,000,000、より好ましくは、200,000〜600,000の範囲で適宜選択される。重量平均分子量を上記範囲とすることにより、加工性を良好なものとしながら、得られるゴム架橋物の低発熱性およびウエットグリップ性を良好に高めることができる。
本発明の共役ジエン系重合体の製造方法としては特に限定されないが、不活性溶媒中で、共役ジエン単量体を含有する単量体混合物を重合開始剤を用いて重合することで、活性末端を有するベースポリマーを得て、ベースポリマーの活性末端に、シラン化合物(たとえば、上記一般式(1)〜(3)で表されるポリオルガノシロキサン)を反応させることで、ケイ素原子を含有する変性基を導入し、次いで、ケイ素原子を含有する変性基が導入されたベースポリマーに、上記一般式(14)または上記一般式(15)で表される化合物を反応させる方法などが挙げられる。
用いられる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用され、重合反応を阻害しないものであれば、特に制限なく使用できる。その具体例としては、たとえば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、2−ブテンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロへキサン、シクロヘキセンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;が挙げられる。不活性溶媒の使用量は、単量体濃度が、通常、1〜50重量%となるような割合であり、好ましくは10〜40重量%となるような割合である。
重合開始剤としては、共役ジエン単量体を含有する単量体混合物を重合させて、活性末端を有するベースポリマーを与えることができるものであれば、特に限定されないが、たとえば、有機アルカリ金属化合物および有機アルカリ土類金属化合物や、ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤が好ましく使用される。有機アルカリ金属化合物の具体例としては、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物が挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、n−ブチルマグネシウム、n−ヘキシルマグネシウム、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム、ケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属とカルボン酸、リン含有有機酸などからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤のなかでも、有機リチウム化合物、特に有機モノリチウム化合物を用いることが好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン(好ましくは、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン)などの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合開始剤の使用量は、重合に用いる単量体混合物1000g当り、通常、1〜50ミリモル、好ましくは2〜20ミリモル、より好ましくは4〜15ミリモルの範囲である。
また、共役ジエン単量体単位のビニル結合含有量を調節するために、単量体混合物を重合する際には、その重合に用いる不活性溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、たとえば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジテトラヒドロフリルプロパンなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物などが挙げられる。なかでも、エーテル化合物および三級アミンが好ましく、三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましく使用される。極性化合物の使用量は、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.01〜100モル、より好ましくは0.3〜30モルの範囲である。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、共役ジエン単量体単位のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
重合温度は、通常、−78〜150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃の範囲である。重合様式は、回分式、連続式などいずれの様式も採用可能である。
そして、このような重合反応により得られる活性末端を有するベースポリマーに、シラン化合物(たとえば、上記一般式(1)〜(3)で表されるポリオルガノシロキサン)を反応させる。
シラン化合物の使用量は、使用した重合開始剤1モルに対して、通常、0.001モルを超え、0.1モル未満であり、好ましくは、0.005モルを超え、0.09モル未満であり、より好ましくは、0.01モルを超え、0.08モル未満である。この使用量であれば、3以上のベースポリマーを、シラン化合物を介して結合された構造を有するものの割合が高くなりやすく、得られるゴム架橋物の低発熱性およびウエットブリップ性をより高めることができる。
シラン化合物は、重合系内に添加すると、重合で使用する不活性溶媒に溶解して、活性末端を有するベースポリマーの活性末端とシラン化合物が均一に反応しやすくなるので好ましい。その溶液濃度は、1〜50重量%であることが好ましい。活性末端を有するベースポリマーにシラン化合物を反応させる時期は、重合反応がほぼ完結した時点が好ましく、重合反応がほぼ完結した後、活性末端を有するベースポリマーが副反応でゲル化したり、重合系中の不純物による連鎖移動反応を受けたりする前であることが好ましい。なお、活性末端を有するベースポリマーにシラン化合物を反応させる前に、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常使用される重合停止剤、重合末端変性剤およびカップリング剤などを重合系内に添加して、ベースポリマーの活性末端の一部を不活性化してもよい。
このとき用いられうる重合末端変性剤およびカップリング剤としては、たとえば、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−フェニル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのN−置換環状アミド類;1,3−ジメチルエチレン尿素、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノンなどのN−置換環状尿素類;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのN−置換アミノケトン類;ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート類;N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのN,N−ジ置換アミノアルキルメタクリルアミド類;4−N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒドなどのN−置換アミノアルデヒド類;N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンなどのアミノアルコキシシラン類;ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのN−置換カルボジイミド類;N−エチルエチリデンイミン、N−メチルベンジリデンイミンなどのシッフ塩基類;プロピレンオキサイド、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、エポキシ化ポリブタジエンなどのエポキシ基含有化合物;4−ビニルピリジンなどのピリジル基含有ビニル化合物;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(トリブトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシタン、メチルトリフェノキシシラン、テトラメトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ノナン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ノナンなどのアルコキシル基含有化合物;四塩化錫、四塩化ケイ素、トリフェノキシクロロシラン、ヘキサクロロシラン、ビス(トリクロロシリル)メタン、ビス(トリクロロシリル)エタン、ビス(トリクロロシリル)プロパン、ビス(トリクロロシリル)ヘキサン、ビス(トリクロロシリル)ノナンなどのハロゲン化金属化合物;が挙げられる。
活性末端を有するベースポリマーにシラン化合物を反応させる際の条件としては、反応温度が、通常0〜100℃、好ましくは30〜90℃の範囲であり、反応時間が、通常1〜120分、好ましくは2〜60分の範囲である。
活性末端を有するベースポリマーにシラン化合物を反応させた後は、メタノール、イソプロパノールなどのアルコールまたは水を添加して活性末端を失活させることが好ましい。なお、活性末端を有するベースポリマーにシラン化合物を反応させた後においても、活性末端を有するベースポリマーが残存している場合、活性末端を失活させる前に、所望により、通常使用される重合末端変性剤およびカップリング剤などを重合系内に添加して反応させてもよい。
次いで、シラン化合物と反応させることにより、ケイ素原子を含有する変性基を導入したベースポリマーの共役ジエン単量体単位の二重結合に、上記一般式(14)または上記一般式(15)で表される化合物を反応させることで、熱可逆性結合基を導入する。
上記一般式(14)または上記一般式(15)で表される化合物を反応させる方法としては、特に限定されないが、不活性溶媒中において、ラジカル発生剤を用いて反応させる方法などが挙げられる。不活性溶媒としては、たとえば、上述したものを用いることができる。ラジカル発生剤としては、特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などが挙げられる。
上記一般式(14)または上記一般式(15)で表される化合物を反応させる際の条件は、反応温度が、通常0〜100℃、好ましくは30〜90℃の範囲であり、反応時間が、通常1〜600分、好ましくは2〜500分の範囲である。
そして、上記一般式(14)または上記一般式(15)で表される化合物を反応させた後、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤、クラム化剤、スケール防止剤などを反応溶液に添加した後、直接乾燥やスチームストリッピングにより反応溶液から反応溶媒を分離して、目的の共役ジエン系重合体を回収する。なお、反応溶液から反応溶媒を分離する前に、反応溶液に伸展油を混合し、共役ジエン系重合体を油展ゴムとして回収しても良い。
共役ジエン系重合体を油展ゴムとして回収する場合に用いる伸展油としては、ゴム工業において通常使用されるものが使用でき、パラフィン系、芳香族系、ナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。この含有量は、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により測定される。伸展油を使用する場合、その使用量は、共役ジエン系重合体100重量部に対して、通常5〜100重量部、好ましくは10〜60重量部、より好ましくは、20〜50重量部である。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の共役ジエン系重合体と、多官能性の熱可逆性を示す化合物とを含有する。
多官能性の熱可逆性を示す化合物としては、特に限定されないが、上述した本発明の共役ジエン系重合体に備えられる熱可逆性結合基に対して、温度変化により架橋構造の形成と解離とを可逆的に起こし得る基を2以上有する化合物であり、より具体的には、ディールズアルダー反応により付加反応することで、温度変化により架橋構造の形成と解離とを可逆的に起こし得る基を2以上有する化合物であることが好ましい。
このような多官能性の熱可逆性を示す化合物としては、特に限定されないが、反応性等の観点より、マレイミド構造を2つ有するビスマレイミド化合物が好ましく、下記一般式(16)で示されるビスマレイミド化合物がより好ましい。
上記一般式(16)中、R
56〜R
59は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または、ハロゲン原子であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。また、Y
3は、下記一般式(17)〜(20)で表されるいずれかの基である。
上記一般式(17)〜(20)中、R
60〜R
69は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、または、ハロゲン原子であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。Y
4〜Y
9は、化学的な単結合、炭素数1〜10の分岐または直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO
2−、−C(=O)−、または、−S(=O)−であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。
本発明においては、上述した本発明の共役ジエン系重合体に、多官能性の熱可逆性を示す化合物を配合することにより、各種配合剤を配合して、混練等を行う際には、共役ジエン系重合体に備えられる熱可逆性結合基と、多官能性の熱可逆性を示す化合物との間で架橋反応が行われてない状態で行うことができるため、これにより高い加工性を実現できるものである。一方で、その後、所望の形状等とした後に加熱することで、ゴム架橋物とした際に、共役ジエン系重合体に備えられる熱可逆性結合基と、多官能性の熱可逆性を示す化合物との間で架橋構造を形成させることができるものである。そして、本発明によれば、このような熱可逆性結合基に加えて、ケイ素原子を含有する変性基を含有するものとすることにより、上述した優れた加工性を実現しながら、得られるゴム架橋物を低発熱性およびウエットグリップ性に優れたものとすることができるものである。
なお、共役ジエン系重合体に熱可逆性結合基を導入する化合物として、フルフリルチオールを用い、かつ、多官能性の熱可逆性を示す化合物として、上記一般式(16)で示されるビスマレイミド化合物を用いた場合を例示すると、これらの架橋および解離反応は、下記式(21)の通りとなる。
また、本発明のゴム組成物中における、多官能性の熱可逆性を示す化合物の配合量は、共役ジエン系重合体に含有される熱可逆性結合基の量および種類に応じて適宜選択すればよいが、共役ジエン系重合体に含有される熱可逆性結合基1モルに対して、好ましくは0.01〜20モルであり、より好ましくは0.05〜15モル、さらに好ましくは0.1〜10モルである。多官能性の熱可逆性を示す化合物の配合量を上記範囲とすることにより、加工性を良好なものとしながら、得られるゴム架橋物の低発熱性およびウエットグリップ性をより向上させることができる。
また、本発明のゴム組成物は、ゴム成分のトルエン不溶解分量が、好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。ゴム成分のトルエン不溶解分量が上記範囲にあることにより、加工性をより高めることができる。なお、ゴム成分のトルエン不溶解分量を上記範囲とする方法としては、特に限定されないが、たとえば、共役ジエン系重合体中に含有される熱可逆性結合基の含有割合を、上記した範囲内に制御する方法などが挙げられる。ゴム成分のトルエン不溶解分量は、たとえば、#150メッシュカゴに、ゴム組成物(重量:Wa[g])を入れ、トルエン中に100℃で2時間浸漬し、次いで、#150メッシュカゴに残ったゴムの乾燥重量(重量:Wb[g])を測定し、「トルエン不溶解分量=(Wb/Wa)×100(重量%)」に従って求めることができる。
また、本発明のゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは20〜100、より好ましくは30〜90、特に好ましくは35〜80である。
<架橋性ゴム組成物>
本発明の架橋性ゴム組成物は、上述した本発明のゴム組成物に、架橋剤を配合してなるものである。
架橋剤としては、たとえば、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
また、本発明の架橋性ゴム組成物は、シリカをさらに含有していることが好ましい。本発明で用いるシリカとしては、たとえば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037−81に準じBET法で測定される)は、好ましくは50〜300m2/g、より好ましくは80〜250m2/g、特に好ましくは100〜220m2/gである。また、シリカのpHは、pH5〜10であることが好ましい。
本発明の架橋性ゴム組成物におけるシリカの配合量は、架橋性ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部であり、より好ましくは30〜150重量部、さらに好ましくは50〜100重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、架橋性ゴム組成物の加工性をより高めることができる。
また、本発明の架橋性ゴム組成物は、シランカップリング剤をさらに含有していることが好ましい。シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−オクタチオ−1−プロピル−トリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどが挙げられる。
本発明の架橋性ゴム組成物におけるシランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
また、本発明の架橋性ゴム組成物には、さらに、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらのなかでも、ファーネスブラックが好ましい。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、通常、120重量部以下である。
さらに、本発明の架橋性ゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、充填剤(上記シリカおよびカーボンブラックを除く)、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、たとえば、スルフェンアミド系架橋促進剤;グアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、架橋性ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸;酸化亜鉛;などを挙げることができる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、架橋性ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜20重量部、特に好ましくは0.5〜15重量部である。
また、本発明の架橋性ゴム組成物には、上述した共役ジエン系ゴム以外のその他のゴムを配合してもよい。その他のゴムとしては、たとえば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(高シス−BR、低シスBRであってもよい。また、1,2−ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴムなどのうち、上述した本発明の製造方法によって得られる共役ジエン系ゴム以外のものをいう。これらのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴムが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の架橋性ゴム組成物において、上述した共役ジエン系ゴムは、架橋性ゴム組成物中のゴム成分の10〜100重量%を占めることが好ましく、50〜100重量%を占めることが特に好ましい。このような割合で、上述した共役ジエン系ゴムをゴム成分中に含めることにより、ゴム架橋物の低発熱性をより高めることができる。
本発明の架橋性ゴム組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよく、たとえば、上述した共役ジエン系重合体および多官能性の熱可逆性を示す化合物を含有するゴム組成物に、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分を配合し、ミキサーなどで混練し、次いで、得られた混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合して目的の組成物を得ることができる。この際において、本発明では、熱に不安定な成分を除く成分の混練温度を、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜180℃とする。
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の架橋性ゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明の架橋性ゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜12時間、特に好ましくは3分〜6時間である。
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の架橋性ゴム組成物を用いて得られるものであるため、低発熱性およびウエットグリップ性に優れるものである。そして、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。特に、本発明のゴム架橋物は、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、およびスタッドレスタイヤなどの各種タイヤにおいて、トレッド、カーカス、サイドウォール、およびビード部などのタイヤ各部位に好適に用いることができ、特に低発熱性に優れるので、低燃費タイヤのトレッド用として、特に好適に用いることができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
〔重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布〕
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより、ポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、そのチャートに基づいて求めた。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下の通りとした。
測定器 :高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC−8220」
カラム :東ソー社製、商品名「GMH−HR−H」を二本直列に連結した。
検出器 :示差屈折計(東ソー社製、商品名「RI−8020」)
溶離液 :テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
〔スチレン含有量およびビニル結合含有量〕
スチレン含有量、およびビニル結合含有量は、ブルカー・バイオスピン社製FT−NMR装置(製品名:ADVANCEIII 500)を用いて1H−NMRにより測定した。
〔熱可逆性結合基の含有割合〕
熱可逆性結合基の含有割合は、ブルカー・バイオスピン社製FT−NMR装置(製品名:ADVANCEIII 500)を用いて1H−NMRにより測定した。
〔トルエン不溶解分量〕
#150メッシュカゴに、ゴム組成物(重量:Wa[g])を1mm角程度に裁断して入れ、トルエン中に100℃で2時間浸漬し、引き上げた。次いで、#150メッシュカゴに残ったゴムを真空乾燥して乾燥後の重量(Wb[g])を秤量した。そして、得られた秤量値から、トルエン不溶解分量を、「トルエン不溶解分量=(Wb/Wa)×100(%)」により求めた。なお、トルエン不溶解分量が低いほど、加工性に優れると判断できる。
[ムーニー粘度(ML1+4,100℃)の変化量]
ゴム組成物のムーニー粘度(ポリマー・ムーニー粘度)と、架橋性ゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンド・ムーニー粘度)とを、JIS K6300に従い、ムーニー粘度計(島津製作所社製)を用いて測定し、得られた結果より、ムーニー粘度の変化量を、「ムーニー粘度の変化量=(コンパウンド・ムーニー粘度)−(ポリマー・ムーニー粘度)」にしたがって、算出した。ムーニー粘度の変化量が小さいほど、加工性に優れると判断できる。
[ペイン効果]
ペイン効果は、架橋性ゴム組成物を用い、粘弾性測定装置(アルファテクノロジーズ社製、製品名「RPA−2000」)により、60℃、1Hzの条件で、動的歪み1%および10%における貯蔵粘弾率G’を測定し、動的歪み1%における貯蔵粘弾率G’と動的歪み10%における貯蔵粘弾率G’との差分(ΔG’=G’(1%)−G’(10%))を算出することにより求めた。得られた差分について、表2,3ごとに、比較例3、比較例4をそれぞれ基準サンプルとし、比較例3、比較例4の測定値をそれぞれ100とする指数で示した。この指数が小さいほど、シリカなどの充填剤の分散性に優れるため、加工性に優れると判断できる。
[ゴム架橋物の引張破断強度および破断伸び]
架橋性ゴム組成物を、160℃、15分間プレス架橋することで、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を得た。そして、得られた試験片を用いて、JIS K6301にしたがって、引張試験を行い、破断強度および破断伸びを測定した。なお、破断強度および破断伸びが大きいほど、機械強度に優れると判断できる。
[ウエットグリップ性]
架橋性ゴム組成物を、160℃、15分間プレス架橋することで、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を得た。そして得られた試験片について、ティー・エイ・インスツルメント社製ARES−G2を用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で0℃におけるtanδを測定した。このtanδの値について、表2,3ごとに、比較例3、比較例4をそれぞれ基準サンプルとし、比較例3、比較例4の測定値をそれぞれ100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、ゴム架橋物をタイヤに用いた際のウエットグリップ性に優れると判断できる。
[低発熱性]
架橋性ゴム組成物を、160℃、15分間プレス架橋することで、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を得た。そして得られた試験片について、ティー・エイ・インスツルメント社製ARES−G2を用い、動的歪み2.0%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。このtanδの値について、表2,3ごとに、比較例3、比較例4をそれぞれ基準サンプルとし、比較例3、比較例4の測定値をそれぞれ100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、ゴム架橋物をタイヤに用いた際の低発熱性に優れると判断できる。
〔製造例1:共役ジエン系重合体aと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Aの製造〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン800g、テトラメチルエチレンジアミン1.28mmol、1,3−ブタジエン94.8g(1.76mol)、およびスチレン25.2g(0.24mol)を仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.71mmolを加え、60℃で重合を開始した。続いて、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、四塩化錫を0.04mmol添加し、30分間反応させた。
次いで、下記式(22)で表されるポリオルガノシロキサンを、使用したn−ブチルリチウムの0.2倍モルに相当するエポキシ基の含有量となるように、20%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、末端をシラノール変性した共役ジエン系重合体を含有する溶液を得た。
次いで、この溶液に、フルフリルチオール0.89ml(8.71mmol)、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.48g(2.94mmol)を加え、70℃で5時間撹拌した後、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、シラノール変性した共役ジエン系重合体100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、共役ジエン系重合体aを得た。
得られた共役ジエン系重合体aについて、1H−NMRを測定した結果、フランに由来するシグナルが観測され、側鎖にフランが導入されていることが確認された。共役ジエン系重合体aのブタジエン単位100モル%に対するフラン構造の導入率は、0.09モル%であった。また、得られた共役ジエン系重合体aのスチレン含有量は20.9%、ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量は64.3%であった。また、GPC測定において、全体としてMnが240,000、Mwが428,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.79であった。
次に、得られた共役ジエン系重合体a 120gをトルエン550mlに溶解し、多官能性の熱可逆性を示す化合物としての4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン0.31g(0.87mmol)を添加した後、スチームストリップングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状のゴム組成物Aを得た。得られたゴム組成物Aについて、1H−NMRを測定した結果、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンのフラン付加体のピークが確認された。また、ゴム組成物Aのトルエン不溶解分量は、5.0%であった。
〔製造例2:共役ジエン系重合体aと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Bの製造〕
製造例1と同様にして、共役ジエン系重合体aを得て、得られた共役ジエン系重合体a 120gをトルエン550mlに溶解し、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン0.23g(0.64mmol)を添加した後、スチームストリップングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状のゴム組成物Bを得た。得られたゴム組成物Bについて、1H−NMRを測定した結果、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンのフラン付加体のピークが確認された。各評価結果を表1に示す。
〔製造例3:共役ジエン系重合体cの製造〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン800g、テトラメチルエチレンジアミン1.28mmol、1,3−ブタジエン94.8g(1.76mol)、およびスチレン25.2g(0.24mol)を仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.71mmolを加え、60℃で重合を開始した。続いて、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、四塩化錫を0.04mmol添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系重合体cを含有する溶液を得た。次いで、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、共役ジエン系重合体c 100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系重合体cを得た。
得られた共役ジエン系重合体cのスチレン含有量は21.3%、ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量は63.5%であった。また、GPC測定において、全体としてMnが202,000、Mwが313,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.55のものであった。また、得られた共役ジエン系重合体cのトルエン不溶解分量は、0.4%であった。
〔製造例4:共役ジエン系重合体dと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Dの製造〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン800g、テトラメチルエチレンジアミン1.28mmol、1,3−ブタジエン94.8g(1.76mol)、およびスチレン25.2g(0.24mol)を仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.71mmolを加え、60℃で重合を開始した。続いて、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、四塩化錫を0.04mmol添加し、30分間反応させた。
そして、この溶液に、フルフリルチオール0.89ml(8.71mmol)、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.48g(2.94mmol)を加え、70℃で5時間撹拌した後、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、得られた重合体100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系重合体dを得た。得られた共役ジエン系重合体dについて、1H−NMRを測定した結果、フランに由来するシグナルが観測され、側鎖にフランが導入されていることが確認された。共役ジエン系重合体dのブタジエン単位100モル%に対するフラン構造の導入率は、0.09モル%であった。また、GPC測定において、全体としてMnが212,000、Mwが328,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.55のものであった。
次に、得られた共役ジエン系重合体d 120gをトルエン550mlに溶解し、多官能性の熱可逆性を示す化合物としての4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン0.31g(0.87mmol)を添加した後、スチームストリップングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状のゴム組成物Dを得た。得られたゴム組成物Dについて、1H−NMRを測定した結果、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンのフラン付加体のピークが確認された。得られたゴム組成物Dのトルエン不溶解分量は、0.8%であった。
〔製造例5:共役ジエン系重合体eの製造〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン800g、テトラメチルエチレンジアミン1.28mmol、1,3−ブタジエン94.8g(1.76mol)、およびスチレン25.2g(0.24mol)を仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.71mmolを加え、60℃で重合を開始した。続いて、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、四塩化錫を0.04mmol添加し、30分間反応させた。次いで、上記式(22)で表されるポリオルガノシロキサンを、使用したn−ブチルリチウムの0.2倍モルに相当するエポキシ基の含有量となるように、20重量パーセント濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、末端をシラノール変性した共役ジエン系重合体eを含有する溶液を得た。次いで、この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、共役ジエン系重合体e 100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系重合体eを得た。得られた共役ジエン系重合体eのトルエン不溶解分量は、0.3%であった。
〔製造例6:共役ジエン系重合体fと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Fの製造〕
製造例1と同様にして、末端をシラノール変性した共役ジエン系重合体を含有する溶液を得て、得られた溶液に、フルフリルチオール3.46ml(34.3mmol)、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.56g(3.43mmol)を加え、70℃で5時間撹拌した後、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、シラノール変性した共役ジエン系重合体100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、共役ジエン系重合体fを得た。
得られた共役ジエン系重合体fについて、1H−NMRを測定した結果、フランに由来するシグナルが観測され、側鎖にフランが導入されていることが確認された。共役ジエン系重合体fのブタジエン単位100モル%に対するフラン構造の導入率は、0.24モル%であった。また、得られた共役ジエン系重合体fのスチレン含有量は20.9%、ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量は64.3%であった。また、GPC測定において、全体としてMnが285,000、Mwが436,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.53であった。
次に、得られた共役ジエン系重合体f 120gをトルエン550mlに溶解し、多官能性の熱可逆性を示す化合物としての4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン0.75g(2.09mmol)を添加した後、スチームストリップングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状のゴム組成物Fを得た。得られたゴム組成物Fについて、1H−NMRを測定した結果、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンのフラン付加体のピークが確認された。また、ゴム組成物Fのトルエン不溶解分量は、7.0%であった。
〔製造例7:共役ジエン系重合体gと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Gの製造〕
製造例1と同様にして、末端をシラノール変性した共役ジエン系重合体を含有する溶液を得て、得られた溶液に、フルフリルチオール6.19ml(61.2mmol)、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.80g(4.90mmol)を加え、70℃で5時間撹拌した後、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、シラノール変性した共役ジエン系重合体100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、共役ジエン系重合体gを得た。
得られた共役ジエン系重合体gについて、1H−NMRを測定した結果、フランに由来するシグナルが観測され、側鎖にフランが導入されていることが確認された。共役ジエン系重合体gのブタジエン単位100モル%に対するフラン構造の導入率は、0.62モル%であった。また、得られた共役ジエン系重合体gのスチレン含有量は20.9%、ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量は64.3%であった。また、GPC測定において、全体としてMnが282,000、Mwが460,000、分子量分布(Mw/Mn)が1.63であった。
次に、得られた共役ジエン系重合体f 120gをトルエン550mlに溶解し、多官能性の熱可逆性を示す化合物としての4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン1.95g(5.44mmol)を添加した後、スチームストリップングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状のゴム組成物Gを得た。得られたゴム組成物Gについて、1H−NMRを測定した結果、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンのフラン付加体のピークが確認された。また、ゴム組成物Gのトルエン不溶解分量は、1.9%であった。
〔実施例1〕
容量250mlのバンバリーミキサーを用いて、製造例1で得られた共役ジエン系重合体aと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物A 70部、および天然ゴム30部を素練りした。次いで、シリカ(商品名「Zeosil1165MP」、ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):160m2/g)40部、シランカップリング剤(ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、商品名「Si69」、デグッサ社製)4.8部、およびプロセスオイル(商品名「フッコール エラミック30」、新日本石油社製)5部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練した。この混練物に、シリカ(商品名「Zeosil1165MP」、ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):160m2/g)20部、酸化亜鉛(亜鉛華1号)3.0部、ステアリン酸(商品名「ビーズステアリン酸つばき」、日油社製)2部、および老化防止剤(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)2部を添加し、2.5分間混練して、バンバリーミキサーから混練物を排出させた。混練終了時の混練物の温度は150℃であった。次いで、この混練物を、室温まで冷却した後、再度バンバリーミキサー中で、3分間混練し、その後、バンバリーミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールを用いて、得られた混練物をと、硫黄1.6部および架橋促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーCZ−G」、大内新興化学工業社製)1.4部と、ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.4部との混合物)とを混練した後、シート状の架橋性ゴム組成物を取り出した。
得られた架橋性ゴム組成物を用いて、上記各評価を行った。結果を表2に示す。
〔実施例2〕
製造例1で得られた共役ジエン系重合体aと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Aの代わりに、製造例2で得られた共役ジエン系重合体aと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Bを使用した以外は、実施例1と同様にして架橋性ゴム組成物を調製し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
〔実施例3〕
製造例1で得られた共役ジエン系重合体aと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Aの代わりに、製造例6で得られた共役ジエン系重合体fと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Fを使用した以外は、実施例1と同様にして架橋性ゴム組成物を調製し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
〔実施例4〕
製造例1で得られた共役ジエン系重合体aと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Aの代わりに、製造例7で得られた共役ジエン系重合体gと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Gを使用した以外は、実施例1と同様にして架橋性ゴム組成物を調製し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例1〕
製造例1で得られた共役ジエン系重合体aと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Aの代わりに、製造例3で得られた共役ジエン系重合体cを使用した以外は、実施例1と同様にして架橋性ゴム組成物を調製し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例2〕
製造例1で得られた共役ジエン系重合体aと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Aの代わりに、製造例4で得られた共役ジエン系重合体dと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Dを使用した以外は、実施例1と同様にして架橋性ゴム組成物を調製し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例3〕
製造例1で得られた共役ジエン系重合体aと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Aの代わりに、製造例5で得られた共役ジエン系重合体eを使用した以外は、実施例1と同様にして架橋性ゴム組成物を調製し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
<実施例1〜4、比較例1〜3の評価>
表1、表2より、ケイ素原子を含有する変性基と、熱可逆性結合基とを有する共役ジエン系重合体を用いた場合には、ムーニー粘度変化(コンパウンド・ムーニー粘度と、ポリマー・ムーニー粘度との差)が小さく、また、ペイン効果の値も低く、そのため、加工性に優れていると判断でき、さらには、得られるゴム架橋物は、機械的強度が良好であり、しかも、低発熱性およびウエットグリップ性に優れるものであった(実施例1〜4)。
一方、ケイ素原子を含有する変性基および熱可逆性結合基のいずれか一方、あるいは両方とも含有しない共役ジエン系重合体を用いた場合には、ムーニー粘度変化が大きく、さらには、ペイン効果の値も高く、加工性に劣るものであり、さらには、得られるゴム架橋物は、低発熱性およびウエットグリップ性のいずれにも劣るものであった(比較例1〜3)。
〔実施例5〕
容量250mlのバンバリーミキサーを用いて、製造例1で得られた共役ジエン系重合体aと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物A 100部を素練りした。次いで、シリカ(商品名「Zeosil1165MP」、ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):160m2/g)40部、シランカップリング剤(ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、商品名「Si69」、デグッサ社製)4.8部、およびプロセスオイル(商品名「フッコール エラミック30」、新日本石油社製)20部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練した。この混練物に、シリカ(商品名「Zeosil1165MP」、ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):160m2/g)20部、酸化亜鉛(亜鉛華1号)3.0部、ステアリン酸(商品名「ビーズステアリン酸つばき」、日油社製)2部、および老化防止剤(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)2部を添加し、2.5分間混練して、バンバリーミキサーから混練物を排出させた。混練終了時のゴム組成物の温度は150℃であった。この混練物を、室温まで冷却した後、再度バンバリーミキサー中で、3分間混練し、その後、バンバリーミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールを用いて、得られた混練物と、硫黄1.6部および架橋促進剤(N−シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーCZ−G」、大内新興化学工業社製)1.4部と、ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.4部との混合物)とを混練した後、シート状の架橋性ゴム組成物を取り出した。
得られた架橋性ゴム組成物を用いて、上記各評価を行った。結果を表3に示す。
〔比較例4〕
製造例1で得られた共役ジエン系重合体aと、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンとを含有するゴム組成物Aの代わりに、製造例5で得られた共役ジエン系重合体eを使用した以外は、実施例1と同様にして架橋性ゴム組成物を調製し、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
<実施例5、比較例4の評価>
表1、表3より、ケイ素原子を含有する変性基と、熱可逆性結合基とを有する共役ジエン系重合体を用いた場合には、ムーニー粘度変化(コンパウンド・ムーニー粘度と、ポリマー・ムーニー粘度との差)が小さく、また、ペイン効果の値も低く、そのため、加工性に優れていると判断でき、さらには、得られるゴム架橋物は、機械的強度が良好であり、しかも、低発熱性およびウエットグリップ性に優れるものであった(実施例5)。
一方、熱可逆性結合基を含有しない共役ジエン系重合体を用いた場合には、ペイン効果の値が高く、加工性に劣るものであり、さらには、得られるゴム架橋物は、低発熱性およびウエットグリップ性のいずれにも劣るものであった(比較例4)。