〔変性共役ジエン系重合体の製造方法〕
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、重合開始剤を用いて、後述する式(1)で表される化合物を重合して、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックを得る第1工程と、前記重合体ブロックの活性末端から、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合して、活性末端を有する共役ジエン重合体鎖を形成させる第2工程と、前記重合体ブロックにおける芳香環のα位の水素原子に、有機アルカリ金属化合物を反応させて、前記水素原子を反応活性点に置換する第3工程と、前記反応活性点に、ケイ素を含有する変性剤Aと、アミノ基を含有し、ケイ素を含まない変性剤Bとを反応させる第4工程と、を備える。
〔第1工程〕
まず、本発明の製造方法における、第1工程について説明する。本発明の製造方法における、第1工程は、重合開始剤を用いて、下記の式(1)で表される化合物を重合して、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックを得る工程である。
式(1)において、R
1は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは水素原子またはメチル基、より好ましくは水素原子である。
また、式(1)において、R2〜R6は、それぞれ、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基であり、R2〜R6のうちの少なくとも1つは炭素数1〜20の、3級炭化水素基以外の炭化水素基である。R2〜R6のうちの少なくとも1つである、炭素数1〜20の、第3級炭化水素基以外の炭化水素基は、メチル基、エチル基、およびn−プロピル基のいずれかであることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
また、式(1)において、R2〜R6で表される基のうち、水素原子であるものの数は、特に限定されないが、2個以上であることが好ましく、4個であることがより好ましい。また、R2〜R6で表される基のうち4個が水素原子である場合において、残りの炭素数1〜20の、第3級炭化水素基以外の炭化水素基の位置は、特に限定されないが、R4であることが特に好ましい。
式(1)で表される化合物として、特に好ましく用いられる化合物としては、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレンが挙げられ、これらのなかでも、4−メチルスチレンが特に好ましく用いられる。なお、式(1)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
式(1)で表される化合物を重合させる際に用いる重合開始剤としては、式(1)で表される化合物を重合させることにより、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックを与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、およびランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤が好ましく使用される。有機アルカリ金属化合物としては、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;などが挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、たとえば、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ−tert−ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ−tert−ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、ジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、たとえば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、有機モノリチウム化合物、および有機多価リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましく、n−ブチルリチウムが特に好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の製造方法の第1工程では、式(1)で表される化合物の重合反応は、通常リビング性を伴って進行するので、重合開始剤と式(1)で表される化合物との使用割合は、目的とする重合体ブロックを構成する繰り返し単位数に応じて決定すればよい。
本発明の製造方法における、式(1)で表される化合物の重合様式は、溶液重合法を用いることが好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒は、溶液重合において通常使用されるものであり、重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。不活性溶媒の具体例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2−ブテンなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、式(1)で表される化合物の重合反応を行うに際しては、反応の促進などを目的として、重合反応系に、極性化合物を添加してもよい。極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。極性化合物の使用量は、特に限定されないが、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.01〜10モルである。
溶液重合法における重合溶液中の式(1)で表される化合物の濃度は、特に限定されないが、通常50重量%以下、好ましくは45重量%以下、より好ましくは40重量%以下の範囲で選択される。溶液中の式(1)で表される化合物の濃度が高すぎると、溶液の粘度が高くなりすぎて、その取り扱いが困難となる場合がある。また、重合温度にも特に制限はないが、通常−30℃〜+200℃、好ましくは0℃〜+180℃の範囲である。重合時間にも特に制限は無く、通常1分〜100時間の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などいずれの様式も採用できる。
なお、本発明の製造方法の第1工程において、得られる式(1)で表される化合物の重合体ブロックの繰り返し単位数は、特に限定されないが、重合体ブロック1分子あたりの平均値として、2個以上であり、2〜50個であることが好ましく、2〜20個であることがより好ましい。この繰り返し単位が少なすぎると、後述する、ケイ素を含有する変性剤A、および、アミノ基を含有し、ケイ素を含まない変性剤Bにより導入できる変性構造の数が少なくなり、これらによる変性による効果が不足するおそれがあり、この繰り返し単位が多すぎると、得られる変性共役ジエン系重合体のゴムとしての特性が劣るものとなるおそれがある。
以上のような本発明の製造方法における第1工程によれば、式(1)で表される化合物を重合することで、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックを得ることができる。なお、本発明において、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックは、式(1)で表される化合物のみからなることが好ましいが、本発明の効果を本質的に損なわない範囲で、その他の化合物が共重合されているブロックを排除するものではない。
〔第2工程〕
次いで、本発明の製造方法における、第2工程について説明する。本発明の製造方法における、第2工程は、上述した第1工程で得られた活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックの活性末端から、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合して、活性末端を有する共役ジエン重合体鎖を形成させる工程である。
重合に用いる共役ジエン化合物としては、特に限定されず、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどを挙げることができる。これらのなかでも、1,3−ブタジエン、イソプレン、または1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。なお、これらの共役ジエン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、第2工程で重合する単量体は、共役ジエン化合物に加えて芳香族ビニル化合物を含有するものであってもよい。芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、5−tert−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン、などを挙げることができる。これらのなかでも、スチレンが特に好ましく用いられる。なお、これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、芳香族ビニル化合物として、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレンなど、式(1)で表される化合物などを用いる場合は、後述する第3工程で、共役ジエン重合体鎖中に反応活性点を生じさせることができ、その反応活性点に変性剤を反応させることもできる。ただし、共役ジエン重合体鎖中に反応活性点を生じさせると、得られる変性共役ジエン系重合体中のゲル分が多くなり、加工性が低下する場合がある。
第2工程で重合する単量体は、芳香族ビニル化合物を0〜50重量%含有するものであることが好ましく、5〜45重量であることがより好ましい。また、第2工程で重合する単量体は、共役ジエン化合物を50〜100重量%含有するものであることが好ましく、55〜95重量%含有するものであることより好ましい。換言すれば、本発明の製造方法で製造する変性共役ジエン系重合体の、共役ジエン化合物を含む重合体鎖(すなわち、式(1)で表される化合物の重合体ブロックを除く部分)中における、共役ジエン化合物に由来する単量体単位(共役ジエン単量体単位)および芳香族ビニル化合物に由来する単量体単位(芳香族ビニル単量体単位)の割合は、共役ジエン単量体単位が、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは55〜95重量%であり、また、芳香族ビニル単量体単位が、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは5〜45重量%である。
また、本発明の製造方法の第2工程においては、本発明の目的を損なわない範囲において、所望により、共役ジエン化合物、および芳香族ビニル化合物に加えて、これらと共重合可能な他の化合物を共重合してもよい。共重合可能な他の化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン;などを挙げることができる。これら共重合可能な他の化合物は、本発明の製造方法で製造する変性共役ジエン系重合体の、共役ジエン化合物を含む重合体鎖(すなわち、式(1)で表される化合物の重合体ブロックを除く部分)中において、単量体単位として、10重量%以下とするのが好ましく、5重量%以下とするのがより好ましい。
本発明の製造方法の第2工程において、2種以上の単量体を用いて共重合体を得る場合の、共重合の様式は特に限定されず、ランダム状、ブロック状、テーパー状などのいずれであってもよいが、ランダム状の結合様式であることが好ましい。ランダム状にすることにより、得られるゴム架橋物は低発熱性に優れたものとなる。
本発明の製造方法の第2工程では、共役ジエン化合物を含んでなる単量体の重合反応は、通常リビング性を伴って進行するので、上述した第1工程において得られた活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックと、共役ジエン化合物を含んでなる単量体との使用割合は、目的とする変性共役ジエン系重合体の分子量に応じて決定すればよいが、共役ジエン化合物を含んでなる単量体1モルに対する、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックの量が、好ましくは0.05〜0.8ミリモル、より好ましくは0.07〜0.7ミリモル、特に好ましくは0.1〜0.6ミリモルとなる範囲で選択される。単量体の使用量に対して活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックの量が少なすぎると、得られる変性共役ジエン系重合体の分子量が高くなりすぎて取り扱いが困難となったり、重合反応が十分に進行しなかったりするおそれがある。一方、多すぎると、得られる変性共役ジエン系重合体の分子量が低くなりすぎて、ゴム材料としての特性に劣るものとなるおそれがある。
本発明の製造方法における、共役ジエン化合物を含んでなる単量体の重合様式は、溶液重合法を用いることが好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、上述した第1工程と同様のものを用いることができ、重合の制御の観点より、共役ジエン化合物を含んでなる単量体が溶解している溶液中に、上述した第1工程において得られた活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックを加えることが好ましい。
また、重合反応を行うに際しては、重合速度や最終的に得られる変性共役ジエン系重合体のミクロ構造、具体的には、ビニル結合含有量を調節するために、重合反応系に、極性化合物を添加してもよい。極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量などに応じて決定すればよく、活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックの活性末端1モルに対して、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.01〜10モルである。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ活性末端の失活による不具合も発生し難い。なお、第1工程において極性化合物を用いた場合には、その極性化合物を反応系にそのまま残存させることにより、この第2工程における極性化合物として機能させることが可能である。また、この第2工程において用いる極性化合物は、反応系にそのまま残存させることにより、後述する第3工程におけるアルカリ金属原子への配位能を有する化合物として機能させることが可能である。
重合反応における重合溶液中の共役ジエン化合物を含んでなる単量体の濃度は、特に限定されないが、通常1〜50重量%、好ましくは2〜45重量%、より好ましくは5〜40重量%の範囲で選択される。溶液中の共役ジエン化合物を含んでなる単量体の濃度が低すぎると、変性共役ジエン系重合体の生産性が悪くなるおそれがあり、濃度が高すぎると、溶液の粘度が高くなりすぎて、その取り扱いが困難となる場合がある。また、重合温度にも特に制限はないが、通常−30℃〜+200℃、好ましくは0℃〜+180℃の範囲である。重合時間にも特に制限は無く、通常1分〜100時間の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などいずれの様式をも採用できるが、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム共重合させる場合は、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすいという点より、回分式が好ましい。
本発明の製造方法の第2工程によれば、以上のようにして、上述した第1工程で得られた活性末端を有する式(1)で表される化合物の重合体ブロックを用いて、共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合することで、活性末端を有する共役ジエン重合体鎖を得ることができる。すなわち、重合開始末端側に式(1)で表される化合物の重合体ブロックを有し、重合重量末端側が活性末端となっている共役ジエン重合体鎖を得ることができる。
本発明の製造方法は、この活性末端を有する共役ジエン重合体鎖の活性末端に変性剤を反応させる工程を有していてもよい。活性末端を有する共役ジエン重合体鎖の活性末端に変性剤を反応させることにより、重合体鎖の重合終了末端側にも官能基を導入することができ、変性共役ジエン系重合体を用いて得られるゴム架橋物の低発熱性をさらに改良することができる。活性末端を有する共役ジエン重合体鎖の活性末端に変性剤を反応させる工程は、例えば、第2工程の後、後述する第3工程の前に行ってもよいし、第2工程の後、共役ジエン重合体鎖の活性末端を維持したまま後述する第3工程を行い、後述する第4工程において反応活性点に変性剤を反応させる際に、併せて行ってもよい。前者の場合には、第4工程で用いる、ケイ素を含有する変性剤A、および、アミノ基を含有し、ケイ素を含まない変性剤Bのいずれか一方のみ、あるいは、これらとは異なる変性剤が使用可能であり、重合体の設計の幅が広くできるという利点がある。一方、後者の場合には、活性末端を有する共役ジエン重合体鎖の活性末端に変性剤を反応させる工程と後述する第4工程とを同じ操作で完了させることが可能であり、実質的に工程数を増やすことなく、活性末端を有する共役ジエン重合体鎖の活性末端に変性剤を反応させる工程を設けることができるという利点がある。なお、この活性末端を有する共役ジエン重合体鎖の活性末端に変性剤を反応させる工程において用いる変性剤の種類としては、特に限定されないが、第4工程で用いることができる変性剤として挙げるものと同様のものを用いることができ、低発熱性をより高めることができるという点より、ケイ素を含有する変性剤Aに該当するものを用いることが好ましく、第4工程で用いるケイ素を含有する変性剤Aと同一の化合物を用いることがより好ましい。
また、重合体鎖の重合終了末端側に官能基を導入する必要がない場合には、後述する第3工程の前に、メタノールなどのアルコールや水などの重合停止剤を反応系内に添加することで、活性末端を有する共役ジエン重合体鎖の活性末端の一部または全部を不活性化してもよい。また、後述する第3工程の前に、テトラメトキシシランや四塩化錫などの重合体の活性末端と反応しうる反応点を複数有する化合物からなるカップリング剤を反応系内に添加することで、活性末端を有する共役ジエン重合体鎖の一部または全部をカップリングすることもできる。
〔第3工程〕
次いで、本発明の製造方法における、第3工程について説明する。本発明の製造方法における、第3工程は、上述した第2工程で得られる重合開始末端側に式(1)で表される化合物の重合体ブロックを有する共役ジエン重合体鎖の、式(1)で表される化合物の重合体ブロック中に存在する芳香環のα位の水素原子に、有機アルカリ金属化合物を反応させて、その芳香環のα位の水素原子を反応活性点に置換する工程である。なお、式(1)で表される化合物の重合体ブロック中に存在する芳香環のα位の水素原子には、式(1)におけるR1が水素原子である場合のその水素原子も含まれうるが、この水素原子は反応活性点に置換されがたく、通常、この第3工程で反応活性点に置換される芳香環のα位の水素原子は、式(1)におけるR2〜R6のうちに少なくとも1つ存在する炭素数1〜20の、第3級炭化水素基以外の炭化水素基におけるものである。
式(1)で表される化合物の重合体ブロック中に存在する芳香環のα位の水素原子に、有機アルカリ金属化合物を反応させる方法は特に限定されるものではないが、不活性溶媒中で反応させる方法が好ましく用いられ、通常、第2工程後の重合反応系に有機アルカリ金属化合物を添加すればよい。
用いる有機アルカリ金属化合物は、特に限定されないが、アルキル基またはアリール基を有するアルカリ金属化合物が好適に用いられ、その具体例としては、メチルリチウム、メチルナトリウム、メチルカリウム、エチルリチウム、エチルナトリウム、エチルカリウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルカリウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、n−ブチルナトリウム、n−ブチルカリウム、ペンチルリチウム、n−アミルリチウム、オクチルリチウム、フェニルリチウム、ナフチルリチウム、フェニルナトリウム、ナフチルナトリウムが挙げられる。
式(1)で表される化合物の重合体ブロック中に存在する芳香環のα位の水素原子を反応活性点に置換するために、アルキル(またはアリール)カリウムやアルキル(またはアリール)ナトリウムを用いる場合は、アルキル基またはアリール基を有するリチウム化合物と、アルコキシ基を有するカリウムまたはナトリウム化合物とを混合することにより、目的とするカリウムまたはナトリウム化合物を得てもよい。このとき用いられるアルコキシ基を有するカリウムまたはナトリウム化合物としては、t−ブトキシカリウムやt−ブトキシナトリウムが例示される。
また、有機アルカリ金属化合物の使用量は、特に限定されないが、式(1)で表される化合物の重合体ブロック中に存在する芳香環のα位である炭素原子1モルに対して、通常0.1〜100モル、好ましくは0.2〜50モル、より好ましくは0.3〜10モルである。この反応の反応時間、反応温度も特に限定されないが、反応時間は、通常1分〜10日、好ましくは1分〜5日の範囲であり、反応温度は、通常−50℃〜100℃の範囲である。
式(1)で表される化合物の重合体ブロック中に存在する芳香環のα位の水素原子に、有機アルカリ金属化合物を反応させるにあたり、反応を促進させる目的で、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物を共存させてもよい。アルカリ金属原子への配位能を有する化合物としては、ヘテロ原子を含有するルイス塩基化合物が好適に用いられ、なかでも、窒素原子または酸素原子を含有するルイス塩基化合物が特に好適に用いられる。窒素原子または酸素原子を含有するルイス塩基化合物の具体例としては、ジエチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、ジメトキシベンゼン、ジメトキシエタン、ジグライム、エチレングリコールジブチルエーテルなどの鎖状エーテル化合物;トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの分子内に窒素原子を1つ有する第3級アミン化合物;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの分子内に酸素原子を1つ有する環状エーテル化合物;ピリジン、ルチジン、1−メチルイミダゾールなどの含窒素複素環化合物;ビステトラヒドロフリルプロパンなどの分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、(−)−スパルテイン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンなどの分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物;ヘキサメチルホスホアミドなどの分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物;などが挙げられる。
アルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量は、特に限定されず、その配位能の強さに応じて決定すればよい。例えば、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、比較的に配位能が弱い化合物である、鎖状エーテル化合物や分子内に窒素原子を1つ有する第3級アミン化合物を用いる場合、その使用量は、芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常1〜100モル、好ましくは5〜50モル、より好ましくは10〜25モルの範囲である。また、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、配位能が中程度である化合物である、分子内に酸素原子を1つ有する環状エーテル化合物や含窒素複素環化合物を用いる場合、その使用量は、芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常1〜100モル、好ましくは1〜20モル、より好ましくは2〜10モルの範囲である。また、アルカリ金属原子への配位能を有する化合物として、比較的に配位能が強い化合物である、分子内に酸素原子を2つ以上有する環状エーテル化合物や分子内に窒素原子を2つ以上有する第3級アミン化合物や分子内に窒素−ヘテロ原子結合を有する第3級アミド化合物を用いる場合、その使用量は、芳香族化合物と反応させる有機アルカリ金属化合物中のアルカリ金属原子1モルに対して、通常0.01〜5モル、好ましくは0.01〜2モル、より好ましくは0.01〜1.5モルの範囲である。アルカリ金属原子への配位能を有する化合物の使用量が多すぎると、反応が進行しなくなるおそれがある。
以上のような第3工程によれば、上述した第2工程で得られる重合開始末端側に式(1)で表される化合物の重合体ブロックを有する共役ジエン重合体鎖の式(1)で表される化合物の重合体ブロック中に存在する芳香環のα位の水素原子を反応活性点に置換することができる。反応活性点への変換率(式(1)で表される化合物の重合体ブロック中に存在する、式(1)におけるR2〜R6のうちに少なくとも1つ存在する炭素数1〜20の、第3級炭化水素基以外の炭化水素基の数に対して、生じる反応活性点の数の割合)は、特に限定されないが、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
〔第4工程〕
次いで、本発明の製造方法における、第4工程について説明する。本発明の製造方法における、第4工程は、上述した第3工程で得られる重合開始末端側に式(1)で表される化合物に由来する重合体ブロックを有する共役ジエン重合体鎖の、式(1)で表される化合物に由来する重合体ブロック中に存在する反応活性点に、ケイ素を含有する変性剤Aと、アミノ基を含有し、ケイ素を含まない変性剤Bとを反応させる工程である。この反応により、反応活性点に、これら変性剤A、変性剤Bに由来する官能基が導入されて、変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
反応活性点にケイ素を含有する変性剤A(以下、適宜、「ケイ素含有変性剤A」とする。)、および、アミノ基を含有し、ケイ素を含まない変性剤B(以下、適宜、「アミノ基含有変性剤B」とする。)を反応させる方法は、特に限定されないが、通常は、第3工程で得られる反応溶液にケイ素含有変性剤Aおよびアミノ基含有変性剤Bを添加すればよい。
ケイ素含有変性剤Aとしては、ケイ素を含有する化合物であればよく特に限定されず、たとえば、ケイ素に加えて、アミノ基を含有するものであってもよく、この場合には、本発明の製造方法においては、アミノ基含有変性剤Bではなく、ケイ素含有変性剤Aに該当するものとする。ケイ素含有変性剤Aとしては、たとえば、アルコキシシリル基を含有する化合物、シラノール基を有する化合物、ハロゲン化シリル基を有する化合物などを用いることができるが、低発熱性をより高めることができるという観点より、これらのなかでも、アルコキシシリル基を含有する化合物、シラノール基を有する化合物が好ましく、アルコキシシリル基を含有する化合物が特に好ましい。
ケイ素含有変性剤Aの具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリフェノキシメチルシラン、ジブチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、テトラクロロシラン、3−(ベンジルメチルアミノ)プロピルトリメトキシシランや、下記式(2)で表される化合物、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物などが挙げられる。
式(2)中、R7、R8は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の有機基であり、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、または炭素数6〜18のアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、またはベンジル基である。また、X1はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、X1で表される官能基となりうるヒドロカルビルオキシ基としては、特に限定されないが、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのアルコキシ基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基などのアルケニルオキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基;などが挙げられる。これらのなかでも、アルコキシ基またはアリーロキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。また、X1となりうるハロゲン基としては、特に限定されないが、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられ、これらのなかでも、クロロ基が好ましい。また、X1は水酸基であってもよく、この水酸基は、ヒドロカルビルオキシ基やハロゲン基であったものが加水分解されて水酸基となったものであってもよい。R9は、炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。rは0〜2の整数であり、aは1〜10の整数であり、好ましくは1〜6の整数である。
式(2)で表される化合物の具体例としては、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルジエトキシメチルシラン、3−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−フェニル−N−プロピルアミノ)ペンチルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリル−N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルジイソプロピルエトキシシラン、3−(N−メチル−N−フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ビス[トリメチルシリル]アミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリクロロシランなどが挙げられる。
式(3)において、R10は、炭素数1〜20の有機基であり、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜18のアリール基であり、より好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基である。また、X2はヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン基および水酸基から選択される官能基を表し、その具体例としては、式(2)のX1と同様とすることができる。R11は、炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。tは0〜1の整数である。
式(3)で表される化合物の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジプロポキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−ブチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−ブチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジプロポキシ−1−ブチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−トリメチルシリル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジクロロ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタンなどが挙げられる。
式(4)中、R7〜R14は、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選択される基を表す。Y1およびY4は、それぞれ、炭素数1〜5のアルコキシル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基またはエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基、炭素数1〜6のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基から選択される基を表す。Y2は、炭素数1〜5のアルコキシル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基およびエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基から選択される基を表す。Y3は、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基である。mは2〜200の整数、nは0〜200の整数、kは0〜200の整数である。
ケイ素含有変性剤Aは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、アミノ基含有変性剤Bとしては、アミノ基を含有し、かつ、ケイ素原子を含有しない化合物であればよく特に限定されないが、たとえば、尿素化合物、アミド化合物、イミド化合物、N−アルキル置換オキサゾリジノン化合物、ピリジル置換ケトン化合物および/またはピリジル置換ビニル化合物、ラクタム化合物などが挙げられる。
尿素化合物の具体例としては、N,N’−ジメチル尿素、N,N’−ジエチル尿素、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N,N−ジメチル−N’,N’−ジフェニル尿素などが挙げられる。
アミド化合物の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、アミノアセトアミド、N,N−ジメチル−N’,N’−ジメチルアミノアセトアミド、N,N−ジメチルアミノアセトアミド、N,N−エチルアミノアセトアミド、N,N−ジメチル−N’−エチルアミノアセトアミド、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、ピコリン酸アミド、N,N−ジメチルイソニコチンアミド、コハク酸アミド、フタル酸アミド、N,N,N’,N’−テトラメチルフタル酸アミド、オキサミド、N,N,N’,N’−テトラメチルオキサミド、2−フランカルボン酸アミド、N,N−ジメチル−2−フランカルボン酸アミド、キノリン−2−カルボン酸アミド、N−エチル−N−メチル−キノリンカルボン酸アミドなどが挙げられる。
イミド化合物の具体例としては、コハク酸イミド、N−メチルコハクイミド、マレイミド、N−メチルマレイミド、フタルイミド、N−メチルフタルイミドなどのイミド化合物などが挙げられる。
N−アルキル置換オキサゾリジノン化合物の具体例としては、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,1−ジプロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−プロピル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−ブチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−(2−メトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−(2−エトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ−(2−エトキシエチル)−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
ピリジル置換ケトン化合物および/またはピリジル置換ビニル化合物の具体例としては、メチル−2−ピリジルケトン、メチル−4−ピリジルケトン、プロピル−2−ピリジルケトン、ジ−4−ピリジルケトン、プロピル−3−ピリジルケトン、2−ベンゾイルピリジン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどが挙げられる。
ラクタム化合物の具体例としては、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−フェニルピロリドン、2−ピペリドン、2−キノロン、N−メチル−キノロン、ε−カプロラクタムなどが挙げられる。
アミノ基含有変性剤Bは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、低発熱性をより高めることができるという観点から、3級アミンが好ましく、3級のラクタム化合物がより好ましく、N−メチルピロリドン、N−フェニルピロリドンが特に好ましい。
ケイ素含有変性剤Aおよびアミノ基含有変性剤Bの使用量は、特に限定されず、上述した第3工程で導入した反応活性点の量に応じて、適宜選択すればよいが、ケイ素含有変性剤Aによる変性構造と、アミノ基含有変性剤Bによる変性構造との導入比率が、「ケイ素含有変性剤Aによる変性構造:アミノ基含有変性剤Bによる変性構造」のモル比で、1:1〜5:1の範囲となる量とすることが好ましく、1.5:1〜5:1の範囲となる量とすることがより好ましく、2:1〜5:1の範囲となる量とすることがさらに好ましい。
ケイ素含有変性剤Aおよびアミノ基含有変性剤Bの具体的な使用量としては、反応活性点(ただし、活性末端を有する共役ジエン重合体鎖の活性末端が残存している場合には、その活性末端も反応活性点として扱うものとする)1モルに対して、ケイ素含有変性剤Aおよびアミノ基含有変性剤Bの合計で、好ましくは0.1〜10モル、より好ましくは0.2〜5モル、さらに好ましくは0.3〜3モルである。
さらに、ケイ素含有変性剤Aおよびアミノ基含有変性剤Bによる変性反応の条件も特に限定されないが、通常、温度が0〜120℃の範囲で選択され、反応時間が、好ましくは1分〜10日、より好ましくは5分〜5日、さらに好ましくは10分〜1日の範囲で選択される。
第4工程の終了後は、必要に応じて、メタノールなどのアルコールや水などの反応停止剤を反応系内に添加することで、残存する反応活性点を不活性化してもよい。
以上のようにして得られる変性共役ジエン系重合体の溶液には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合して、変性共役ジエン系重合体を油展ゴムとしてもよい。伸展油としては、たとえば、パラフィン系、芳香族系およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、変性共役ジエン系重合体100重量部に対して、通常5〜100重量部である。
そして、このようにして得られた変性共役ジエン系重合体は、スチームストリッピングなどにより、溶媒を除去することにより、反応混合物から分離することで、固形状の変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、通常、100,000〜3,000,000、好ましくは120,000〜2,000,000、より好ましくは150,000〜1,500,000の範囲である。変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量を上記範囲とすることにより、変性共役ジエン系重合体へのシリカなどの充填剤の配合が容易となり、ゴム組成物は加工性により優れたものとなる。
また、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布も、特に限定されないが、好ましくは1.0〜5.0、特に好ましくは1.0〜3.0である。変性共役ジエン系重合体の分子量分布を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物は低発熱性により優れたものとなる。
また、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)も、特に限定されないが、通常、20〜200、好ましくは30〜150の範囲である。変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度を上記範囲として、これを用いてゴム組成物を構成することにより、加工性に優れたゴム組成物を得ることができる。なお、変性共役ジエン系重合体を油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
また、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体の共役ジエン単位部分におけるビニル結合含有量は、通常1〜80重量%であり、好ましくは5〜75重量%である。ビニル結合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物は低発熱性に優れたものとなる。
また、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体に含有されるゲル化した重合体の量は、変性共役ジエン系重合体の全体重量に対する割合として、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
本発明の製造方法によれば、上記した第1〜第4工程を採用するものであり、特に、第3工程および第4工程において、共役ジエン重合体鎖の式(1)で表される化合物に由来する重合体ブロックに反応活性点に、ケイ素含有変性剤A、および、アミノ基含有変性剤Bによる変性構造を導入することで、ゲル化した重合体の量を増大させることなく、シリカなどの充填材に対する親和性を向上させることができるものである。そして、これにより、本発明の製造方法によれば、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体を、加工性に優れ、かつ、ゴム架橋物とした場合における、低発熱性に優れたものとすることができるものである。
〔ゴム組成物〕
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100重量部に対して、シリカ10〜200重量部を含有してなる組成物である。
本発明で用いるシリカとしては、たとえば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037−81に準じBET法で測定される)は、好ましくは50〜300m2/g、より好ましくは80〜220m2/g、特に好ましくは100〜170m2/gである。また、シリカのpHは、5〜10であることが好ましい。
本発明のゴム組成物におけるシリカの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、10〜200重量部であり、好ましくは30〜150重量部、より好ましくは50〜100重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、ゴム組成物の加工性がより優れたものとなり、得られるゴム架橋物の低発熱性がより優れたものとなる。
本発明のゴム組成物には、低発熱性をさらに改良するという観点より、さらにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−オクタチオ−1−プロピル−トリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、およびγ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどを挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
また、本発明のゴム組成物には、さらに、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらのなかでも、ファーネスブラックが好ましい。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、通常、120重量部以下である。
なお、本発明の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分に、シリカを添加する方法は特に限定されず、固形のゴム成分に対して添加して混練する方法(乾式混練法)や変性共役ジエン系重合体を含む溶液に対して添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
また、本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有していることが好ましい。架橋剤としては、たとえば、硫黄、ハロゲン化硫黄などの含硫黄化合物、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
さらに、本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、充填剤(上記シリカおよびカーボンブラックを除く)、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、たとえば、スルフェンアミド系架橋促進剤;グアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸;酸化亜鉛;などを挙げることができる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜20重量部、特に好ましくは0.5〜15重量部である。
また、本発明のゴム組成物には、上述した本発明の製造方法によって得られる変性共役ジエン系重合体以外のその他のゴムを配合してもよい。その他のゴムとしては、たとえば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(高シス−BR、低シスBRであってもよい。また、1,2−ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴムを挙げることができる。これらのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴムが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のゴム組成物において、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体は、ゴム組成物中のゴム成分の10〜100重量%を占めることが好ましく、50〜100重量%を占めることが特に好ましい。
本発明のゴム組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよく、たとえば、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分と変性共役ジエン系重合体とを混練後、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合して目的の組成物を得ることができる。熱に不安定な成分を除く成分と変性共役ジエン系重合体との混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは120〜180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒〜30分である。また、その混練物と熱に不安定な成分との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
〔ゴム架橋物〕
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜12時間、特に好ましくは3分〜6時間である。
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系重合体を用いて得られるものであるため、低発熱性に優れたものである。そして、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。特に、本発明のゴム架橋物は、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、およびスタッドレスタイヤなどの各種タイヤにおいて、トレッド、カーカス、サイドウォール、およびビード部などのタイヤ各部位に好適に用いることができ、特に低発熱性に優れるので、低燃費タイヤのトレッド用として、特に好適に用いることができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は、以下の記載に従って行った。
〔重合体の分子量〕
重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めた。具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定器:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC−8320」)
カラム:東ソー社製、商品名「GMH−HR−H」を二本直列に連結した。
検出器:示差屈折計
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
〔重合体のミクロ構造〕
1H−NMRにより測定した。
測定器:Bruker社製、商品名「AV500 NMR」
測定溶媒:重クロロホルム
〔重合体に導入された変性構造のモル比〕
1H−NMRにより測定した。
測定器:Bruker社製、商品名「AV500 NMR」
測定溶媒:重クロロホルム
〔ゲル重量分率〕
#150メッシュカゴにゴム(重量:Wa[g])を1mm角程度に裁断して入れ、トルエン中に室温(25℃)で48時間保管し、引き上げた。次いで、#150メッシュカゴに残ったゴムを真空乾燥して乾燥後の重量(重量:Wb[g])を秤量した。そして、これらの秤量値から、ゲル重量分率を、トルエン不溶分=(Wb−Wa)×100(%)により求めた。なお、ゲル重量分率が低いほど、加工性に優れるものと判断する事ができる。
〔低発熱性評価の試験片(ゴム架橋物)の作製〕
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、評価対象とする重合体96部を30秒素練りし、次いでシリカ(商品名「Zeosil1165MP」、ローディア社製)48部、プロセスオイル(商品名「アロマックス T−DAE」、新日本石油社製、)24部、およびシランカップリング剤:ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(商品名「Si69」、デグッサ社製)5.8部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(商品名「Zeosil1165MP」、ローディア社製)24部、酸化亜鉛2.9部、ステアリン酸1.9部および老化防止剤N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(商品名「ノクラック6C」、大内新興社製)1.9部を添加し、更に2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混錬終了時の混練物の温度は150℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として2分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物と、硫黄1.5部および架橋促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーCZ−G」、大内新興化学工業社製)1.3部とジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、(大内新興化学工業社製))1.3部の混合物)とを混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。このゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋することで、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの低発熱性評価用の試験片を作製した。
〔低発熱性〕
上記にて得られた低発熱性評価用の試験片を、レオメトリックス社製ARESを用い、動的歪み2.0%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定することにより、低発熱性の評価を行った。この特性については、表1、表2ごとに、表1においては比較例1の測定値を、表2においては比較例6の測定値を100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、ゴム架橋物の低発熱性に優れる。
〔製造例1:活性末端を有する重合体ブロック1の製造〕
窒素雰囲気下、ガラス反応容器に、シクロヘキサン33.5部、4−メチルスチレン14.2部、およびテトラメチルエチレンジアミン1.4部を加えた。次に攪拌しながら、n−ブチルリチウム0.77部(n−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.0モルであり、かつn−ブチルリチウム1モル当たり4−メチルスチレン10.0モル)を加え、反応温度50℃にて30分間反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロック1を含有する溶液を得た。得られた活性末端を有する重合体ブロック1の4−メチルスチレン単位数を確認する目的で、反応液の一部を分取し、メタノールを添加して触媒残渣を抽出洗浄したのちに溶媒を留去して、GPC測定を行った。GPC測定より、この活性末端を有する重合体ブロック1の4−メチルスチレン単位数(平均値)は10.3であった。
〔製造例2:活性末端を有する重合体ブロック2の製造〕
窒素雰囲気下、ガラス反応容器に、シクロヘキサン11.1部、スチレン4.2部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.5部を加えた。次に攪拌しながら、n−ブチルリチウム0.26部(n−ブチルリチウム1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.0モルでかつn−ブチルリチウム1モル当たりスチレン10.0モル)を加え、反応温度50℃にて30分間反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロック2を含有する溶液を得た。得られた活性末端を有する重合体ブロック2のスチレン単位数を確認する目的で、反応液の一部を分取し、メタノールを添加して触媒残渣を抽出洗浄したのちに溶媒を留去して、GPC測定を行った。GPC測定より、この活性末端を有する重合体ブロック2のスチレン単位数(平均値)は10.1であった。
〔実施例1〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン86.9部、スチレン23.1部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.07部を仕込んだ後、製造例1で得られた重合体ブロック1を含有する溶液3.6部を添加し、50℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続した後、反応液の一部を分取し、重合転化率を確認するとともに、GPC測定および1H-NMR測定にて得られた重合体の分子量およびスチレン単位含有量、ビニル結合含有量を確認した。これらの結果を表1にまとめて示す。
そして、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、重合停止剤としてメタノール0.02部を添加し、30分間反応させた。次に、60℃に温度を上げて、リチオ化剤としてテトラメチルエチレンジアミン1.3部およびn−ブチルリチウム2.4部(活性末端1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.0モルであり、かつ4−メチルスチレン1モル当たりn−ブチルリチウム5.0モル)を添加して60分間反応させた。さらに、ケイ素含有変性剤Aとしてのジメチルジメトキシシラン3.3部と、アミノ基含有変性剤BとしてのN−メチルピロリドン2.7部とを添加して120分間反応させた後、メタノール2.4部を添加し、30分間反応させて、変性共役ジエン系重合体1を含有する溶液を得た。
得られた溶液に、変性共役ジエン系重合体1 100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(BASF社製、商品名「イルガノックス1520」)0.20部を添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系重合体1を得た。
そして、得られた変性共役ジエン系重合体1について1H-NMRを測定したところ、変性共役ジエン系重合体1は、ジメチルジメトキシシラン由来の変性構造、およびN−メチルピロリドン由来の変性構造を有することが確認された。さらに、変性共役ジエン系重合体1を用いて、上記方法にしたがって低発熱性評価用の試験片(ゴム架橋物)を作製し、低発熱性を評価した。導入した変性構造のモル比、得られた重合体のゲル重量分率、および低発熱性の評価結果を表1に示す。
〔実施例2〕
アミノ基含有変性剤BとしてのN−メチルピロリドンの配合量を2.7部から5.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして、変性共役ジエン系重合体2を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例3〕
アミノ基含有変性剤BとしてのN−メチルピロリドンの配合量を2.7部から8.2部に変更した以外は、実施例1と同様にして、変性共役ジエン系重合体3を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例4〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン86.9部、スチレン23.1部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.07部を仕込んだ後、製造例1で得られた重合体ブロック1を含有する溶液3.6部を添加し、50℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続した後、反応液の一部を分取し、重合転化率を確認するとともに、GPC測定および1H-NMR測定にて得られた重合体の分子量およびスチレン単位含有量、ビニル結合含有量を確認した。これらの結果を表1にまとめて示す。
そして、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、終了末端変性剤としてのジメチルジメトキシシラン0.1部を添加し、30分間反応させた。次に、60℃に温度を上げて、リチオ化剤としてテトラメチルエチレンジアミン1.3部およびn−ブチルリチウム2.4部(活性末端1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.0モルであり、かつ4−メチルスチレン1モル当たりn−ブチルリチウム5.0モル)を添加して60分間反応させた。さらに、ケイ素含有変性剤Aとしてのジメチルジメトキシシラン3.3部と、アミノ基含有変性剤BとしてのN−メチルピロリドン5.5部とを添加して120分間反応させた後、メタノール2.4部を添加し、30分間反応させて、変性共役ジエン系重合体4を含有する溶液を得た。
得られた溶液に、変性共役ジエン系重合体4 100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(BASF社製、商品名「イルガノックス1520」)0.20部を添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系重合体4を得て、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
ケイ素含有変性剤Aとしてのジメチルジメトキシシランの配合量を3.3部から6.6部に変更するとともに、アミノ基含有変性剤BとしてのN−メチルピロリドンを配合しなかた以外は、実施例1と同様にして、変性共役ジエン系重合体5を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例2〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン86.9部、スチレン23.1部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.15部を仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.05部を添加し、50℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続した後、反応液の一部を分取し、重合転化率を確認するとともに、GPC測定および1H-NMR測定にて得られた重合体の分子量およびスチレン単位含有量、ビニル結合含有量を確認した。これらの結果を表1にまとめて示す。
そして、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、終了末端変性剤としてジメチルジメトキシシラン0.1部を添加し、30分間反応させた。次に、メタノール2.4部を添加し、30分間反応させて、変性共役ジエン系重合体6を含有する溶液を得た。
得られた溶液に、変性共役ジエン系重合体6 100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(BASF社製、商品名「イルガノックス1520」)0.20部を添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系重合体6を得て、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例3〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン86.9部、スチレン23.1部、4−メチルスチレン1.0部およびテトラメチルエチレンジアミン0.15部を仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.05部を添加し、50℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続した後、反応液の一部を分取し、重合転化率を確認するとともに、GPC測定および1H-NMR測定にて得られた重合体の分子量およびスチレン単位含有量、ビニル結合含有量を確認した。これらの結果を表1にまとめて示す。
そして、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、重合停止剤としてメタノール0.02部を添加し、30分間反応させた。次に、60℃に温度を上げて、リチオ化剤としてテトラメチルエチレンジアミン1.3部およびn−ブチルリチウム2.4部(活性末端1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.0モルであり、かつ4−メチルスチレン1モル当たりn−ブチルリチウム5.0モル)を添加して60分間反応させた。さらに、ケイ素含有変性剤Aとしてのジメチルジメトキシシラン3.3部と、アミノ基含有変性剤BとしてのN−メチルピロリドン5.5部とを添加して120分間反応させた後、メタノール2.4部を添加し、30分間反応させて、変性共役ジエン系重合体7を含有する溶液を得た。
得られた溶液に、変性共役ジエン系重合体7 100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(BASF社製、商品名「イルガノックス1520」)0.20部を添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系重合体7を得て、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例4〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン86.9部、スチレン23.1部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.07部を仕込んだ後、製造例1で得られた重合体ブロック1を含有する溶液3.6部を添加し、50℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続した後、反応液の一部を分取し、重合転化率を確認するとともに、GPC測定および1H-NMR測定にて得られた重合体の分子量およびスチレン単位含有量、ビニル結合含有量を確認した。これらの結果を表1にまとめて示す。
そして、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、メタノール2.4部を添加し、30分間反応させて、共役ジエン系重合体8を含有する溶液を得た。
得られた溶液に、共役ジエン系重合体8 100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(BASF社製、商品名「イルガノックス1520」)0.20部を添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系重合体8を得て、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
〔比較例5〕
重合開始剤として製造例1で得られた重合体ブロック1を含有する溶液3.6部に代えて、製造例2で得られた重合体ブロック2を含有する溶液3.5部を用いた以外は、実施例2と同様にして、共役ジエン系重合体9を得て、同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
〔実施例5〕
ケイ素含有変性剤Aとして、ジメチルジメトキシシラン3.3部に代えて、2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン6.1部を使用した以外は、実施例2と同様にして、変性共役ジエン系重合体10を得た。
得られた変性共役ジエン系重合体10について1H-NMRを測定したところ、2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン由来の変性構造、およびN−メチルピロリドン由来の変性構造を有することが確認された。さらに、変性共役ジエン系重合体10を用いて、上記方法にしたがって低発熱性評価用の試験片(ゴム架橋物)を作製し、低発熱性を評価した。導入した変性構造のモル比、得られた重合体のゲル重量分率、および低発熱性の評価結果を表2に示す。
〔実施例6〕
アミノ基含有変性剤Bとして、N−メチルピロリドン5.5部に代えて、N−フェニルピロリドン8.9部を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、変性共役ジエン系重合体11を得て、同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
〔実施例7〕
窒素雰囲気下、オートクレーブに、シクロヘキサン800部、1,3−ブタジエン86.9部、スチレン23.1部、およびテトラメチルエチレンジアミン0.07部を仕込んだ後、製造例1で得られた重合体ブロック1を含有する溶液3.6部を添加し、50℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続した後、反応液の一部を分取し、重合転化率を確認するとともに、GPC測定および1H-NMR測定にて得られた重合体の分子量およびスチレン単位含有量、ビニル結合含有量を確認した。これらの結果を表2にまとめて示す。
そして、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、終了末端変性剤として2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン0.2部を添加し、30分間反応させた。次に、60℃に温度を上げて、リチオ化剤としてテトラメチルエチレンジアミン1.3部およびn−ブチルリチウム2.4部(活性末端1モル当たりテトラメチルエチレンジアミン1.0モルであり、かつ4−メチルスチレン1モル当たりn−ブチルリチウム5.0モル)を添加して60分間反応させた。さらに、ケイ素含有変性剤Aとしての2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン6.1部と、アミノ基含有変性剤BとしてのN−メチルピロリドン5.5部とを添加して120分間反応させた後、メタノール2.4部を添加し、30分間反応させて、変性共役ジエン系重合体12を含有する溶液を得た。
得られた溶液に、変性共役ジエン系重合体12 100部に対して、老化防止剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(BASF社製、商品名「イルガノックス1520」)0.20部を添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性共役ジエン系重合体12を得て、同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例6〕
ケイ素含有変性剤Aとして、ケイ素含有変性剤Aとしてのジメチルジメトキシシラン6.6部に代えて、2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン12.3部を使用した以外は、比較例1と同様にして、変性共役ジエン系重合体13を得て、同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例7〕
終了末端変性剤として、ジメチルジメトキシシラン0.1部に代えて、2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン0.2部を使用した以外は、比較例2と同様にして、変性共役ジエン系重合体14を得て、同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
〔比較例8〕
ケイ素含有変性剤Aとして、ジメチルジメトキシシラン3.3部に代えて、2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン6.1部を使用した以外は、比較例3と同様にして、変性共役ジエン系重合体15を得て、同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
表1、表2に示すように、本発明の製造方法によれば、重合体鎖の開始末端側に、ケイ素含有変性剤Aに由来する変性構造、およびアミノ基含有変性剤Bに由来する変性構造を導入することで、ゲル化した重合体の量の増大を抑制することで、加工性を良好なものとしながら、得られるゴム架橋物を低発熱性に優れたものとすることができることが確認できる(実施例1〜7)。
一方で、重合体鎖の開始末端側に、ケイ素含有変性剤Aに由来する変性構造、およびアミノ基含有変性剤Bに由来する変性構造のいずれか一方、あるいは両方を導入しない場合には、得られるゴム架橋物は、低発熱性に劣る結果となった(比較例1〜8)。
なお、各実施例においては、使用する「ケイ素含有変性剤A/アミノ基含有変性剤B」の重量比が小さくなるほど、重合体に導入された「ケイ素含有変性剤Aによる変性構造:アミノ基含有変性剤Bによる変性構造」のモル比が大きくなる結果となったが(たとえば、実施例1に対して、アミノ基含有変性剤Bの使用量を増大させた実施例2は、「ケイ素含有変性剤Aによる変性構造:アミノ基含有変性剤Bによる変性構造」のモル比が、逆に高くなっている。)、これは、アミノ基含有変性剤Bの量が増えるほど、アミノ基含有変性剤Bに対するケイ素含有変性剤Aの相溶性が上がり、ケイ素含有変性剤Aの反応性が高まることによると考えられる。