JP2014084413A - 架橋ゴム組成物及びそれを用いたゴムケーブル - Google Patents

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Abstract

【課題】架橋のために多量のエネルギーを必要とせず、また潰れなどの変形が抑制された架橋ゴム組成物、及びそれを用いたゴムケーブルを提供する。
【解決手段】ハロゲン元素含有ゴムが、分子主鎖間において、シラン基同士のシラノール縮合により架橋しているシラン架橋構造と、共役ジエン構造とジエノフィル構造とのディールス・アルダー反応により熱可逆的に乖離または共有結合し、冷却により共有結合している動的共有結合性架橋構造と、を有する架橋ゴム組成物である。
【選択図】図1

Description

本発明は、架橋ゴム組成物及びそれを用いたゴムケーブルに関する。
ゴム組成物は、電線やゴムケーブルの被覆材料として広く使用されている。ゴム組成物としては例えばクロロプレンゴム(CRゴム)などのハロゲン元素含有ゴムがある。クロロプレンゴム(CRゴム)は耐油性、耐摩耗性、耐候性などの特性に優れ、ゴムケーブルの被覆材料(シース材料)として好適に用いられる。
ゴム組成物は酸化物、硫黄、金属酸化物など種々の架橋剤を用いて架橋されて、架橋ゴム組成物となり、ゴムケーブルのシースとなる。これらの架橋剤を用いて架橋する方法では加熱処理が必要となる。例えばゴムケーブルを製造する場合、架橋剤を含有するゴム組成物を導体の外周上に押出して被覆した後、高温高圧蒸気や高温溶融金属塩を用いて100℃以上の温度で加熱して架橋を行なう。
ただし、上記架橋剤を用いて架橋する方法では、架橋のために多くの熱エネルギーを必要とすることや高価な加熱装置を必要とすることなどが問題となっていた。
この点、加熱による架橋ではなく、水分によって常温、常圧下で架橋するシラン架橋がある。シラン架橋は、ゴム分子の主鎖上に導入されたシラン基が水分により加水分解するとともにシラノール縮合することで、ゴム分子の主鎖間を架橋する方法である。シラン基が導入されたゴム組成物として、例えば特許文献1では、クロロプレンゴム(CRゴム)にシラン化合物をグラフト化させたシラングラフト化CRゴムが提案されている。このCRゴムを用いてゴムケーブルを製造する場合、このCRゴムを導体上に押出し、例えば水中に浸漬させることでシラン架橋構造が形成される。特許文献1によれば、水分との反応によりシラン架橋を形成できるため、常温に放置して空気中の水分でシラン架橋を行うことも可能であり、架橋のために多量のエネルギーを必要としないばかりか、架橋するための高価な加熱装置を必要としない。
特開昭61−1501号公報
しかしながら、ゴムケーブルのシースをシラン架橋により形成する場合、架橋速度が遅いため、架橋されるシースに潰れなどの変形が生じるといった問題があった。ゴムケーブルは、導体にゴム組成物を押出被覆した後、ドラムに巻き取られた状態で常温に放置され、または水中に浸漬されてシラン架橋を行うことにより製造される。この製造において、架橋速度が遅いと、シースの架橋が不十分な状態でドラムに巻き取られるため、シースは巻き取りの際の張力により変形した状態で架橋されることとなる。また、シースは、ドラムに巻き取られた状態で架橋されるため、ゴムケーブルの自重により変形した状態で架橋されることとなる。
本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、その目的は、架橋のために多量のエネルギーを必要とせず、また潰れなどの変形が抑制された架橋ゴム組成物、及びそれを用いたゴムケーブルを提供することにある。
本発明の第1の態様によれば、
ハロゲン元素含有ゴムが、分子主鎖間において、シラン基同士のシラノール縮合により架橋しているシラン架橋構造と、共役ジエン構造とジエノフィル構造とのディールス・アルダー反応により熱可逆的に乖離または共有結合し、冷却により共有結合している動的共有結合性架橋構造と、を有する、架橋ゴム組成物が提供される。
本発明の第2の態様によれば、
前記動的共有結合性架橋構造は、前記ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上にアミノ基を介してグラフト化されている共役ジエン化合物が有する共役ジエン構造と、ジエノフィル化合物が有する2つ以上のジエノフィル構造とを含む、第1の態様の架橋ゴム組成物が提供される。
本発明の第3の態様によれば、
前記動的共有結合性架橋構造は、前記ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上にアミノ基を介してグラフト化されているジエノフィル化合物が有するジエノフィル構造と、共役ジエン化合物が有する2つ以上の共役ジエン構造とを含む、第1の態様の架橋ゴム組成物が提供される。
本発明の第4の態様によれば、
前記動的共有結合性架橋構造は、前記ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上にアミノ基を介してグラフト化されている共役ジエン化合物が有する共役ジエン構造と、前記ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上にアミノ基を介してグラフト化されているジエノフィル化合物が有するジエノフィル構造とを含む、第1の態様の架橋ゴム組成物が提供される。
本発明の第5の態様によれば、
前記動的共有結合性架橋構造は、示差走査熱量測定による乖離の吸熱ピークに基づいて得られる乖離温度が100℃以上である、第1〜第4の態様のいずれかの架橋ゴム組成物が提供される。
本発明の第6の態様によれば、
前記シラン架橋構造は、前記ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上にアミノ基またはメルカプト基を介してグラフト化されているシラン化合物が有するシラン基から形成されている、第1〜第5の態様のいずれかの架橋ゴム組成物が提供される。
本発明の第7の態様によれば、
第1〜第6の態様のいずれかの架橋ゴム組成物から構成されるシースを、導体の外周上に備える、ゴムケーブルが提供される。
本発明によれば、架橋のために多量のエネルギーを必要とせず、また潰れなどの変形が抑制された架橋ゴム組成物、及びそれを用いたゴムケーブルが得られる。
本発明の一実施形態に係るゴムケーブルの断面を示す図である。 本発明の一実施形態に係るゴムケーブルの製造工程を示す図である。
上述したように、シラン架橋によれば、水分で架橋を進行させることができるため、架橋するために加熱する必要がない。しかし、シラン架橋は架橋速度が遅く、架橋されて形成されるシースには潰れなどの変形が生じる場合があった。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、シラン架橋に動的共有結合性架橋構造を組み合わせることで、架橋速度の遅さに起因するシースの変形を抑制できることを見出した。
動的共有結合性架橋構造は、共役ジエン構造とジエノフィル構造とのディールス・アルダー反応によって形成される架橋構造であって、加熱により架橋が乖離するが、冷却により架橋を再形成する熱可逆性架橋となっている。この架橋によれば、温度により架橋を制御することが可能であり、シラン架橋と比較して架橋速度が速い。この架橋構造を有するゴム組成物は、加熱により架橋が乖離して、軟化した状態で成形される。成形後、冷却することで再架橋して硬化させることができる。
2種類の異なる架橋構造が導入されたゴム組成物によれば、加熱により軟化した状態で成形された後、水中に通されることで硬化する。水中においては、加熱により乖離している動的共有結合性架橋構造が速やかに再架橋するとともに、水分との反応によりシラン架橋が徐々に形成される。このため、ゴム組成物の架橋速度が向上し、架橋速度の遅さに起因して生じるシースなどの変形が抑制される。本発明は、以上の知見に基づきなされたものである。
〈本発明の第一の実施形態〉
以下に、本発明の第一の実施形態について説明する。
(1)架橋ゴム組成物
本実施形態に係る架橋ゴム組成物は、ハロゲン元素含有ゴムが架橋されたものであり、ハロゲン元素含有ゴムは、その分子主鎖間に所定の架橋構造を有している。本実施形態の架橋ゴム組成物は、シラン架橋及び動的共有結合性架橋構造の2種類の異なる架橋構造を有している。
すなわち、本実施形態に係る架橋ゴム組成物は、ハロゲン元素含有ゴムが、分子主鎖間において、シラン基同士のシラノール縮合により架橋しているシラン架橋構造と、共役ジエン構造とジエノフィル構造とのディールス・アルダー反応により熱可逆的に乖離または共有結合し、冷却により共有結合している動的共有結合性架橋構造と、を有する。
〈ハロゲン元素含有ゴム〉
ハロゲン元素含有ゴムとしては、例えば、クロロプレンゴム(CRゴム)、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、塩化ビニルまたは、これらを少なくとも1種類以上含む混合ゴムなどが挙げられるが、これに限るものではない。
ハロゲン元素含有ゴム(以下、ゴム成分ともいう)は架橋しており、分子主鎖間に動的共有結合性架橋構造とシラン架橋構造とを含有している。以下、それぞれの架橋構造について説明する。
(動的共有結合性架橋構造)
動的共有結合性架橋構造は、共役ジエン構造とジエノフィル構造とのディールス・アルダー反応により形成されている。この架橋構造は、ディールス・アルダー反応により熱可逆的に乖離または共有結合し、冷却により共有結合してゴム成分の分子主鎖間を架橋している。
動的共有結合性架橋構造は、例えば、ゴム成分の分子主鎖上にアミノ基を介してグラフト化されている共役ジエン化合物が有する共役ジエン構造と、架橋ゴム組成物に含有されるジエノフィル化合物が有する2つ以上のジエノフィル構造とから形成されている。この構造を以下の式(1)に示す。
Figure 2014084413
式(1)に示すように、冷却された状態においては、ゴム成分の分子主鎖上に導入されている共役ジエン構造と、ジエノフィル化合物が有する2つ以上のジエノフィル構造とが共有結合して動的共有結合性架橋構造を形成している。一方、加熱された状態においては、共役ジエン構造とジエノフィル構造とが共有結合を乖離することで動的共有結合性架橋構造が解消される。このように、動的共有結合性架橋構造は、温度により架橋が制御される構成を有している。
共有結合が乖離するときの温度(乖離温度)は、架橋ゴム組成物の耐熱性に影響する。本実施形態の動的共有結合性架橋構造によれば、共役ジエン構造及びジエノフィル構造の組み合わせにより乖離温度を比較的高温度とすることが可能である。乖離温度は、特に限定されないが、架橋ゴム組成物の耐熱性の観点から高いことが好ましい。本実施形態の動的共有結合性架橋構造によれば、乖離温度を例えば100℃以上とすることができる。なお、乖離温度は、示差走査熱量測定により測定され、乖離(脱架橋)の吸熱ピークに基づいて得られる温度を示す。
ゴム成分の分子主鎖上への共役ジエン構造の導入としては、共役ジエン化合物をゴム成分にグラフト共重合(グラフト化)させる方法がある。グラフト化は、以下の式(2)に示すように、例えばアミノ基を有する共役ジエン化合物がゴム成分中のハロゲン原子(ClやF)に対して求核置換反応を起こすことで生じる。
Figure 2014084413
(式中、Rは共役ジエン構造またはジエノフィル構造を示す。)
ゴム成分にグラフト化される共役ジエン化合物は、グラフト化が可能な構造及び共役ジエン構造を有していれば特に限定されない。グラフト化が可能な構造としては、例えばアミン基などが挙げられる。また、共役ジエン構造としては、例えばフラン環を構成するものが挙げられる。このような共役ジエン化合物としては、例えばフルフリルアミン、5−メチルフルフリルアミン、N−メチル−フルフリルアミン、ピロール、1−アミノピロール、イミダゾール、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、2−(2−アミノエチル)チオフェン、ピラゾール、3−アミノピラゾール、3−アミノ−5−メチルイソオキサゾール、トリアゾール、3−アミノ−1,2,4トリアゾール、4−アミノ−1,2,4トリアゾール等が挙げられる。このような共役ジエン化合物によれば、動的共有結合性架橋構造の乖離温度が高く、架橋ゴム組成物の耐熱性を向上させることができる。
上記共役ジエン化合物と動的共有結合性架橋構造を形成するジエノフィル化合物としては、2つ以上のジエノフィル構造を有するものであれば特に限定されない。このようなジエノフィル化合物としては、例えば、ビス(3−エチル−5−メチル−4マレイミドフェニル)メタン、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、1,2−ビス(マレイミド)エタン、1,6−ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N’−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンビスマレイミド等が挙げられる。このようなジエノフィル化合物によれば、動的共有結合性架橋構造の乖離温度が高く、架橋ゴム組成物の耐熱性を向上させることができる。
(シラン架橋構造)
シラン架橋構造は、ゴム成分の分子主鎖間を架橋しており、ゴム成分の分子主鎖上にグラフト化されているシラン基同士がシラノール縮合して形成されている。シラン基は、ゴム成分の分子主鎖上にグラフト化されているシラン化合物に由来するものである。シラン基は水分により加水分解してシラノール基となり、シラノール基がシラノール縮合することでシラン架橋構造を形成する。シラン架橋構造は空気中の水分などで架橋を形成しており、熱などによる乖離がなく、不可逆的な架橋構造となっている。
ゴム成分にグラフト化されるシラン化合物は、ゴム成分へのグラフト化が可能な構造を有していれば特に限定されない。グラフト化が可能な構造としては、例えばアミノ基またはメルカプト基が挙げられる。アミノ基を有するシラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリエトキシシランや3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、またメルカプト基を有するシラン化合物としては、例えば3−メルカプトプロピルトリエトキシシランや3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
架橋ゴム組成物において、シラン架橋構造の割合、つまりシラン架橋構造と動的共有結合性架橋構造との比率は特に限定されないが、シラン架橋構造の比率が大きすぎると、架橋された際のシースの変形を抑制が困難となる。一方、シラン架橋構造の比率が小さすぎると、動的共有結合性架橋構造の乖離温度以上となるような高温においての強度低下が著しい。よって、シラン架橋構造と動的共有結合性架橋構造との比率を、1:3〜3:1とすることが好ましい。
(2)ゴム組成物の製造方法
次に、架橋されて上記架橋ゴム組成物となるゴム組成物の製造方法について説明をする。
〈共役ジエン構造の導入〉
まず、ゴム成分に共役ジエン構造を導入する。ゴム成分100質量部に対して、アミノ基を有する共役ジエン化合物を0.1質量部以上10質量部以下添加し、100℃以上150℃以下で混練して、グラフト共重合させる。この反応により、共役ジエン化合物がアミノ基を介してゴム成分にグラフト化されて、共役ジエン構造が導入されたゴム成分を得る。
〈シラン基の導入〉
続いて、共役ジエン構造が導入されたゴム成分にシラン基を導入する。共役ジエン構造が導入されたゴム成分100質量部に対して、所定のシラン化合物0.1質量部以上10質量部以下を添加し、60℃以上150℃以下で混練して、グラフト共重合させる。この反応により、シラン化合物がアミノ基を介してゴム成分にグラフト化されて、シラン基及び共役ジエン構造が導入されたゴム成分を得る。
〈動的共有結合性架橋構造の形成〉
続いて、上記で得られたゴム成分にジエノフィル化合物を添加して反応させることで、ゴム成分の分子主鎖間に動的共有結合性架橋構造を形成する。上記シラン基及び共役ジエン構造が導入されたゴム成分100質量部に対して、2つ以上のジエノフィル構造を有するジエノフィル化合物を0.1質量部以上10質量部以下添加し、100℃以上150℃以下で混練する。これにより、ゴム成分の分子主鎖上に導入されている共役ジエン構造とジエノフィル化合物のジエノフィル構造とをディールス・アルダー反応させて、動的共有結合性架橋構造が形成されたゴム組成物を得る。得られたゴム組成物において、ゴム成分は分子鎖上にシラン基を含有するが、シラン基は未反応であり、シラン架橋構造を形成していない。つまり、ゴム組成物は、動的共有結合性架橋構造が形成されるもののシラン架橋構造が形成されていないため、部分的に架橋された状態となっている。
〈ゴム組成物の架橋〉
次に、上記で得られたゴム組成物を架橋させて、架橋ゴム組成物を形成する。得られたゴム組成物を所定の形状(例えば、シースなど)に成形した後、水分と接触させてシラン架橋構造を形成することによって架橋ゴム組成物を得る。ゴム組成物を成形する際には、ゴム組成物を加熱して動的共有結合性架橋構造を乖離し、ゴム組成物を軟化させた状態で成形する。加熱により軟化したゴム組成物は、例えば水中で冷却されることで、乖離していた動的共有結合性架橋構造を再形成する。それと同時に、シラン基を水分と反応させてシラン架橋構造を形成する。このように2種類の架橋構造が形成されることで、ゴム組成物は完全に架橋されて架橋ゴム組成物となり、ゴムケーブルにおいてはシースとなる。
なお、上記実施形態においてはゴム成分に共役ジエン構造を導入した後にシラン基を導入したが、本発明はこれに限定されず、導入する順序を変更することも可能である。
また、上記ゴム組成物には、その他添加剤として、例えば安定剤や充填剤を添加してもよい。安定剤は、混練時にハロゲン元素含有ゴムから発生する塩素を捕捉する化合物であり、例えば酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、ビスフェノールA型エポキシ化合物、エポキシ大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸エステルなどがある。充填剤としては、カーボン、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムなどがある。
(3)ゴムケーブル
次に、上記架橋ゴム組成物からなるシースを導体の外周上に備えるゴムケーブルについて図1を参照しながら説明をする。図1は、本発明の一実施形態に係るゴムケーブルの断面を示す図である。
本実施形態のゴムケーブル1は、複数の導体10と、複数の導体10の外周上に形成されたシース11と、を有しており、シース11が上記架橋ゴム組成物からなっている。
導体10としては、低酸素銅や無酸素銅等からなる銅線、銅合金線の他、銀等の他の金属線等が用いられる。図1において、導体10の断面形状は円形状となっているが、本発明はこれに限定されず、例えば四角形状(4隅が湾曲したものも含む)とすることもできる。また、導体10の導体径は特に限定されず、用途に応じて最適な数値が適宜選択される。なお、図1では、複数本の導体10をコアとしたゴムケーブルを示すが、コアを構成する導体10の本数は特に限定されない。
シース11は、上記架橋ゴム組成物からなっている。シース11は、導体10の外周上に所定の厚さとなるようにゴム組成物を押出被覆した後、架橋されて形成される。シース11の厚さは特に限定されず、用途に応じて最適な数値が適宜選択される。
ゴムケーブル1は、例えば図2に示すような製造ラインによって製造される。図2は、本発明の一実施形態に係るゴムケーブルの製造工程を示す図である。
まず、芯線ドラム20から導体10を送り出し、押出機30に導入する。押出機30において、ゴム組成物を導体10の外周上に押出被覆する。押し出されるゴム組成物は押出機30での加熱により動的共有結合性架橋構造が乖離して軟化した状態となっており、容易に押出被覆することができる。
続いて、ゴム組成物で被覆された導体10を水槽40に導入する。加熱により軟化したゴム組成物は、水槽40で急速に冷却されることによってゴム成分における動的共有結合性架橋構造が再形成し、部分的に架橋した状態となる。ゴム組成物は、部分的に架橋した状態では十分な実用強度を示さないが、導体10を送り出す際の張力や自重による変形が抑制される程度の強度を示す。また、動的共有結合性架橋構造の再形成と同時に、ゴム成分におけるシラン基が反応してシラン架橋構造が形成され始める。ただし、シラン架橋構造は架橋速度が遅いため、時間とともに徐々に進行する。
水槽で冷却した後、ゴム組成物で被覆された導体を巻取ドラム50に導入するとともに、空気中の水分によりシラン架橋を促進させる。ゴム組成物はシラン架橋の促進により完全に架橋されて実用強度を示すシースとなり、ゴムケーブルが形成される。
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
本実施形態によれば、架橋ゴム組成物は動的共有結合性架橋構造及びシラン架橋構造の異なる2種類の架橋構造を有している。このため、シラン架橋構造の架橋速度の遅さに起因するシースの潰れなどの変形が抑制されている。
また、本実施形態によれば、動的共有結合性架橋構造は冷却により再形成されており、シラン架橋構造は水分により形成されている。このため、架橋のために多量のエネルギーを必要としない。また、加熱して架橋するための高価な装置を必要としない。
また、本実施形態によれば、動的共有結合性架橋構造が共役ジエン構造とジエノフィル構造とのディールス・アルダー反応により形成されている。このため、導入する共役ジエン構造及びジエノフィル構造により乖離温度を高くすることが可能であり、例えば乖離温度を100℃以上とすることで所定の耐熱性を有する架橋ゴム組成物とすることができる。
〈本発明の第二の実施形態〉
上記第一の実施形態では、動的共有結合性架橋構造が、ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上に導入されている共役ジエン構造と、架橋ゴム組成物に含有されるジエノフィル化合物のジエノフィル構造とから形成されていた。しかしながら、本発明は、係る実施形態に限定されない。以下では、第一の実施形態と異なる点について説明をする。
第二の実施形態では、ゴム成分にジエノフィル構造を導入し、それに対応する化合物として共役ジエン化合物を含有している。すなわち、動的共有結合性架橋構造は、ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上にアミノ基を介してグラフト化されているジエノフィル化合物が有するジエノフィル構造と、共役ジエン化合物が有する2つ以上の共役ジエン構造とから形成されている。この構造を以下の式(3)に示す。
Figure 2014084413
式(3)によれば、上記式(1)と同様に、動的共有結合性架橋構造は、冷却された状態では共有結合して架橋を形成する一方、加熱された状態では共有結合が乖離して架橋が解消される。
ゴム成分へのジエノフィル構造の導入としては、上記式(2)に示すように、アミノ基を介してグラフト化させる方法がある。ゴム成分にグラフト化されるジエノフィル化合物は、グラフト化が可能な構造を有していれば特に限定されず、例えばアミン基を有するものが挙げられる。このようなジエノフィル化合物としては、例えばマレイミド、N−(4−アミノフェニル)マレイミド、マレイン酸モノアミドなどが挙げられる。このようなジエノフィル化合物によれば、動的共有結合性架橋構造の乖離温度が高く、架橋ゴム組成物の耐熱性を向上させることができる。
上記ジエノフィル化合物をゴム成分にグラフト化する場合、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下添加することが好ましい。
上記ジエノフィル化合物と動的共有結合性架橋構造を形成する共役ジエン化合物としては、2つ以上の共役ジエン構造を有するものであれば特に限定されない。このような共役ジエン化合物としては、例えば、ジフルフリルスルフィド、ジフルフリルジスルフィドなどが挙げられる。このような共役ジエン化合物によれば、動的共有結合性架橋構造の乖離温度が高くなり、架橋ゴム組成物の耐熱性を向上させることができる。
上記共役ジエン化合物の添加量は、ジエノフィル構造が導入されたゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下とすることが好ましい。
〈本発明の第三の実施形態〉
上記第一及び第二の実施形態では、共役ジエン構造またはジエノフィル構造がゴム成分に導入されていた。しかしながら、本発明は、係る実施形態に限定されない。以下では、上記第一及び第二の実施形態と異なる点について説明をする。
第三の実施形態では、ゴム成分に共役ジエン構造及びジエノフィル構造が導入されている。すなわち、動的共有結合性架橋構造は、ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上にアミノ基を介してグラフト化されている共役ジエン化合物が有する共役ジエン構造と、ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上にアミノ基を介してグラフト化されているジエノフィル化合物が有するジエノフィル構造とから形成されている。この構造を以下の式(4)に示す。
Figure 2014084413
式(4)に示すように、ゴム成分のある分子主鎖上に導入されている共役ジエン構造と、ゴム成分の他の分子主鎖上に導入されているジエノフィル構造とから動的共有結合性架橋構造が形成されて、ゴム成分が架橋されている。共役ジエン構造及びジエノフィル構造を導入するために用いられる化合物は上記と同様のものが挙げられる。
なお、第三の実施形態においては、ゴム成分の分子主鎖上に導入されている共役ジエン構造及びジエノフィル構造から動的共有結合性架橋構造が形成されているが、これに限定されない。ゴム組成物に対して共役ジエン化合物またはジエノフィル化合物をさらに含有させて、これらの化合物と導入されている共役ジエン構造などとから架橋構造が形成されていてもよい。
また、共役ジエン構造及びジエノフィル構造をゴム成分の分子主鎖上に導入する場合、導入する順序は限定されず、共役ジエン化合物及びジエノフィル化合物を添加して、同時に反応させてもよい。
次に、本発明の実施例を説明する。本実施例では、ゴム組成物を調整し、それを用いてゴムケーブルを製造した。そして、製造されたゴムケーブルのシースの変形を測定することによって架橋ゴム組成物を評価した。これらの実施例は、本発明に係る架橋ゴム組成物及びゴムケーブルの一例であって、本発明はこれらの実施例により限定されない。
(実施例1)
実施例1では、ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上に導入された共役ジエン構造と、ジエノフィル化合物が有する2つ以上のジエノフィル構造と、を含む動的共有結合性架橋構造を有する架橋ゴム組成物を製造した。以下に示す方法によって、ゴム組成物を調整し、架橋ゴム組成物からなるシースを備えるケーブルを製造した。
〈ゴム組成物の調整〉
まず、ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上に共役ジエン構造を導入した。
ハロゲン元素含有ゴムとしてのCRゴムに対して、共役ジエン化合物であるフルフリルアミン、及び安定剤である酸化マグネシウムを添加して混合した。これらの混合物を6インチロールで混練(60℃×10分)することにより、フルフリルアミンがグラフト化されたCRゴムを得た。
CRゴム(ショウプレンW、昭和電工製) 100質量部
フルフリルアミン 0.6質量部
酸化マグネシウム 0.5質量部
フルフリルアミンのグラフト化は、以下の式(5)で示される。式(5)に示すように、フルフリルアミンのアミノ基が1,2結合CRゴムに付加されることで、CRゴムにはフルフリルアミンに由来する共役ジエン構造が導入されることになる。
Figure 2014084413
なお、共役ジエン構造の導入を確認するため、IR測定またはEDXによる元素分析を行った。具体的には、上記で得られたゴム組成物をアセトン抽出(還流温度70℃、24時間)して未反応のフルフリルアミンを除去し、抽出後に残ったゴム成分を測定サンプルとしてIR測定を行った。その結果、1550cm−1にアミノ基由来のピークが確認され、フルフリルアミンのCRゴムへのグラフトが確認された。IR測定にはFT−IR装置(FT/IR−615、JASCO製)を使用した。
続いて、フルフリルアミンがグラフト化されたCRゴムにシラン基を導入した。
フルフリルアミンがグラフト化されたCRゴムに対して、アミノ基を有するシラン化合物である3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及び酸化マグネシウムを添加して混合した。これらの混合物を6インチロールで混練(60℃×10分)することにより、フルフリルアミン及びシランがグラフト化されたCRゴムを得た。
CRゴム(フルフリルアミングラフト化) 100質量部
3−アミノプロピルトリエトキシシラン 1質量部
酸化マグネシウム 0.5質量部
シラン化合物のグラフト化は、以下の式(6)で示される。式(6)に示すように、シラン化合物のアミノ基が1,2結合CRゴムに付加されることで、フルフリルアミンがグラフト化されたCRゴムにはシラン化合物に由来するシラン基が導入されることになる。
Figure 2014084413
続いて、上記で得られたCRゴムにジエノフィル化合物を添加してゴム組成物を調整した。
フルフリルアミン及びシランがグラフト化されたCRゴムに対して、2つのジエノフィル構造を有するジエノフィル化合物のビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを添加して6インチロールで60℃×10分間混練した。その後、混練物を100℃で20分プレス成形した後、20℃で冷却することで、実施例1のCRゴム組成物を得た。プレス成形の加熱の際に、CRゴムに導入された共役ジエン構造と、添加されたジエノフィル化合物のジエノフィル構造とのディールス・アルダー反応が生じ、動的共有結合性架橋構造が形成されることとなる。
CRゴム(フルフリルアミン、シラングラフト化) 100質量部
ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン 1.3質量部
動的共有結合性架橋が形成される際のディールス・アルダー反応は、以下の式(7)で示される。式(7)によれば、実施例1のCRゴム組成物は、動的共有結合性架橋が形成されているが、シラン架橋構造は形成されておらず、部分的に架橋された状態となっている。
Figure 2014084413
なお、動的共有結合性架橋構造の導入を確認するため、共役ジエン構造の導入の確認と同様にしてIR測定を行った。具体的には、得られたゴム成分をアセトン抽出して未反応のフルフリルアミン及びビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを除去し、抽出後に残ったゴム組成物を測定サンプルとしてIR測定を行った。その結果、1710cm−1にカルボニル(C=O)基由来のピークが確認され、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン基の導入が確認された。
また、実施例1のCRゴム組成物について示差走査熱量測定(DSC)を行ったところ、125℃付近に脱架橋による吸熱ピークが確認された。DSC測定にはDSC測定機(DSC Q 200、ティー・エイ・インスツルメント製)を使用した。この結果から、実施例1のCRゴム組成物においては、動的共有結合性架橋構造が125℃以下で共有結合し、125℃以上で乖離することが推測される。動的共有結合性架橋構造の熱可逆的に乖離または共有結合する反応は、以下の式(8)で示される。
Figure 2014084413
また、実施例1のゴム組成物は、架橋して架橋ゴム組成物となったときに、シラン架橋構造と動的共有結合性架橋構造との比率が1:2となるように、共役ジエン構造やシラン基が導入されている。
〈ゴムケーブルの製造〉
次に、上記で得られたゴム組成物を用いてゴムケーブルを製造した。この製造は図2に示すような製造ラインにより行った。
芯線ドラム20から芯線(導体10)としての錫めっき軟銅線(サイズ0.75mm)を2m/minの速度で送り出し、押出機30としての40mm単軸押出機(回転数5rpm、130℃)に導入した。押出機30において、芯線の外周上に実施例1のCRゴム組成物を押出被覆(厚さ0.8mm)した。実施例1のCRゴム組成物は、乖離温度が125℃程度であり、押出時の温度で動的共有結合性架橋構造が解消されて軟化した状態となっている。続いて、CRゴム組成物で被覆された芯線を水槽40(水温20℃、長さ2m)に導入した。CRゴム組成物は水中で急速に冷却されることで動的共有結合性架橋構造を再形成し、部分的に架橋された状態となった。その後、CRゴム組成物で被覆された芯線を8mほど押出して、巻取ドラム50で巻き取った。そして、ドラム巻き付き状態で室温(23℃、湿度50%)に14日間放置してシラン架橋を施し、実施例1のゴムケーブルを製造した。
なお、ゴムケーブルのシースにおいて、シラン架橋構造は以下の式(9)に示すような構造となっている。
Figure 2014084413
〈ゴムケーブルの評価〉
実施例1のゴムケーブルについて、断面形状の潰れを評価した。断面形状の潰れは、以下の算出式に示す扁平率により評価した。
Figure 2014084413
実施例1のゴムケーブルは、扁平率が90%であり、要求される80%以上の数値であった。この結果から、実施例1のゴムケーブルは潰れが抑制されていることが確認された。
(実施例2)
実施例2では、CRゴムにジエノフィル構造を導入し、ゴム組成物に共役ジエン化合物を含有させて動的共有結合性架橋構造を形成した以外は実施例1と同様にゴム組成物を調整した。なお、実施例2のゴム組成物は、架橋して架橋ゴム組成物となったときに、シラン架橋構造と動的共有結合性架橋構造との比率が1:2となるように、ジエノフィル構造やシラン基が導入されている。
まず、CRゴムの分子主鎖上にジエノフィル構造を導入した。CRゴムに対して、ジエノフィル化合物であるマレイミド、及び酸化マグネシウムを混合して反応させることで、マレイミドがグラフト化されたCRゴムを得た。
CRゴム 100質量部
マレイミド 0.6質量部
酸化マグネシウム 0.5質量部
マレイミドのグラフト化は、以下の式(10)で示される。式(10)に示すように、マレイミドのアミノ基が1,2結合CRゴムに付加されることで、CRゴムにはマレイミドに由来するジエノフィル構造が導入される。
Figure 2014084413
ジエノフィル構造の導入をIR測定により確認したところ、1710cm−1にカルボニル(C=O)基由来のピークが確認され、マレイミドのCRゴムへのグラフト化が確認された。
続いて、マレイミドがグラフト化されたCRゴムにシラン架橋基を導入した。マレイミドがグラフト化されたCRゴムに対して、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び酸化マグネシウムを混合して反応させることで、マレイミド及びシランがグラフト化されたCRゴムを得た。
CRゴム(マレイミドグラフト化) 100質量部
3−アミノプロピルトリエトキシシラン 1質量部
酸化マグネシウム 0.5質量部
シラン化合物のグラフト化は、以下の式(11)で示される。式(11)に示すように、シラン化合物のアミノ基が1,2結合CRゴムに付加されることで、CRゴムにはシラン化合物に由来するシラン基が導入されることになる。
Figure 2014084413
続いて、上記で得られたCRゴムに共役ジエン化合物を添加してゴム組成物を調整した。マレイミド及びシランがグラフト化されたCRゴムに対して、2つの共役ジエン構造を有する共役ジエン化合物のジフルフリルスルフィドを添加して混練した。その後、混練物を100℃で20分プレス成形した後、20℃で冷却することで、ディールス・アルダー反応による動的共有結合性架橋構造を形成して、実施例2のCRゴム組成物を得た。
CRゴム(フルフリルアミン、シラングラフト化) 100質量部
ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン 1.4質量部
動的共有結合性架橋が形成される際のディールス・アルダー反応は、以下の式(12)で示される。式(12)に示すように、CRゴムに導入されたジエノフィル構造と、添加された共役ジエン化合物の共役ジエン構造とが、ディールス・アルダー反応により、動的共有結合性架橋構造を形成している。
Figure 2014084413
動的共有結合性架橋構造の導入を確認するため、EDXによる元素分析を行ったところ、ジフルフリルスルフィドに由来する硫黄(S)の元素が検出され、動的共有結合性架橋構造の導入が確認された。
また、得られた実施例2のCRゴム組成物について示差走査熱量測定を行ったところ、125℃付近に脱架橋による吸熱ピークが確認された。この結果から、実施例2のCRゴム組成物においては、動的共有結合性架橋構造が125℃以下で共有結合し、125℃以上で乖離することが推測される。動的共有結合性架橋構造の熱可逆的に乖離または共有結合する反応は、以下の式(13)で示される。
Figure 2014084413
次に、実施例2のCRゴム組成物を用いてゴムケーブルを製造し、その潰れを評価した。実施例2においては、実施例1におけるゴム組成物の押出条件を変更してゴムケーブルを製造した。具体的には、芯線ドラム20から送り出す芯線の送り出す速度を1.8m/minに、また芯線の外周上に押出被覆するCRゴム組成物の厚さを1.0mmにそれぞれ変更して、実施例2のゴムケーブルを製造した。
そして、実施例2のゴムケーブルについて、実施例1と同様に潰れを評価したところ、扁平率が88%であって、潰れが抑制されていることが確認された。
(実施例3)
実施例3では、CRゴムに共役ジエン構造及びジエノフィル構造を導入して動的共有結合性架橋構造を形成した以外は実施例1及び実施例2と同様にゴム組成物を調整した。なお、実施例3のゴム組成物は、架橋して架橋ゴム組成物となったときに、シラン架橋構造と動的共有結合性架橋構造との比率が2:3となるように、共役ジエン構造、ジエノフィル構造、及びシラン基が導入されている。
まず、CRゴムの分子主鎖上に共役ジエン構造及びジエノフィル構造を導入した。CRゴムに対して、フルフリルアミン、マレイミド及び酸化マグネシウムを混合して反応させることで、フルフリルアミン及びマレイミドがグラフト化されたCRゴムを得た。
CRゴム 100質量部
フルフリルアミン 0.3質量部
マレイミド 0.3質量部
酸化マグネシウム 0.5質量部
フルフリルアミン及びマレイミドのグラフト化は以下の式(14)で示される。式(14)に示すように、フルフリルアミン及びマレイミドのアミノ基が1,2結合CRゴムに付加されることで、CRゴムには、フルフリルアミンに由来する共役ジエン構造と、マレイミドに由来するジエノフィル構造とが導入される。なお、動的共有結合性架橋構造は、この段階では形成されておらず、後述する工程により形成される。
Figure 2014084413
ジエノフィル構造の導入をIR測定により確認したところ、1710cm−1にカルボニル(C=O)基由来のピークが確認され、マレイミドのCRゴムへのグラフト化が確認された。なお、フルフリルアミンは、上記実施例1と同様の条件でグラフト化させているため、導入されているものと判断した。
続いて、上記で得られたCRゴムにシラン架橋基を導入した。フルフリルアミン及びマレイミドがグラフト化されたCRゴムに対して、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び酸化マグネシウムを混合して反応させることで、フルフリルアミン、マレイミド及びシランがグラフト化されたCRゴムを得た。
CRゴム(フルフリルアミン・マレイミドグラフト化) 100質量部
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン 1質量部
酸化マグネシウム 0.5質量部
シラン化合物のグラフト化は、以下の式(15)で示される。式(15)に示すように、シラン化合物のメルカプト基が1,2結合CRゴムに付加されることで、CRゴムにはシラン化合物に由来するシラン基が導入されることになる。
Figure 2014084413
続いて、上記で得られたCRゴムを100℃で20分プレス成形することによりディールス・アルダー反応させ、その後20℃で冷却することにより実施例3のCRゴム組成物を得た。このときの反応は以下の式(16)で示される。
Figure 2014084413
実施例3のCRゴム組成物に示差走査熱量測定を行ったところ、125℃付近に脱架橋による吸熱ピークが確認された。この結果から、実施例3のCRゴム組成物においては、動的共有結合性架橋構造が125℃以下で共有結合し、125℃以上で乖離することが推測される。動的共有結合性架橋構造の熱可逆的に乖離または共有結合する反応は、以下の式(17)で示される。
Figure 2014084413
次に、実施例3のCRゴム組成物を用いて、実施例1と同様の押出条件によりゴムケーブルを製造し、その潰れを評価した。その結果、実施例3のゴムケーブルは、扁平率が86%であって、潰れが抑制されていることが確認された。
なお、ゴムケーブルのシースにおいて、シラン架橋構造は以下の式(18)に示すような構造となっている。
Figure 2014084413
(比較例1〜3)
比較例1〜3では、CRゴムにシラン基のみを導入し、シラン架橋構造のみを有する架橋ゴム組成物とした以外は、実施例1と同様にしてCRゴム組成物を調整した。
比較例1〜3では、CRゴムにシラン化合物をグラフト化させて、比較例1〜3のCRゴム組成物を調整した。CRゴムに対して、アミノ基を有するシラン化合物及び酸化マグネシウムを混合して反応させることで、シラン化合物がグラフト化されたCRゴム組成物(シラングラフト化CRゴム)を得た。シラン化合物として、比較例1では3−アミノプロピルトリエトキシシランを、比較例2では3−アミノプロピルトリエトキシシランを、比較例3では3−メルカプトプロピルトリメトキシシランをそれぞれ用いた。
CRゴム(昭和電工製ショウプレンW) 100質量部
シラン化合物 1質量部
酸化マグネシウム 0.5質量部
比較例1〜3におけるシラン化合物のグラフト化は、以下の式(19)〜(21)のそれぞれで示される。式(19)及び式(20)ではシラン化合物のアミノ基が1,2結合CRゴムに付加され、また式(21)ではシラン化合物のメルカプト基が1,2結合CRゴムに付加されることで、CRゴムにシラン基が導入されることになる。
Figure 2014084413
Figure 2014084413
Figure 2014084413
次に、比較例1〜3のCRゴム組成物を用いてゴムケーブルを製造した。比較例1及び比較例3では実施例1と同様の押出条件によりゴムケーブルを製造し、比較例2では実施例2と同様の押出条件によりゴムケーブルを製造した。比較例1〜3のゴムケーブルについて、実施例1〜3と同様に潰れを評価したところ、扁平率が、比較例1では70%、比較例2では71%、比較例3では71%であり、潰れが比較的大きいことが確認された。
このように、本発明によれば、架橋ゴム組成物に動的共有結合性架橋構造及びシラン架橋構造を導入することによって、シースの潰れなどの変形を抑制することができる。
1 ゴムケーブル
10 導体
11 シース(架橋ゴム組成物)
20 芯線ドラム
30 押出機
40 水槽
50 巻取ドラム

Claims (7)

  1. ハロゲン元素含有ゴムが、分子主鎖間において、シラン基同士のシラノール縮合により架橋しているシラン架橋構造と、共役ジエン構造とジエノフィル構造とのディールス・アルダー反応により熱可逆的に乖離または共有結合し、冷却により共有結合している動的共有結合性架橋構造と、を有する
    ことを特徴とする架橋ゴム組成物。
  2. 前記動的共有結合性架橋構造は、前記ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上にアミノ基を介してグラフト化されている共役ジエン化合物が有する共役ジエン構造と、ジエノフィル化合物が有する2つ以上のジエノフィル構造とを含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の架橋ゴム組成物。
  3. 前記動的共有結合性架橋構造は、前記ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上にアミノ基を介してグラフト化されているジエノフィル化合物が有するジエノフィル構造と、共役ジエン化合物が有する2つ以上の共役ジエン構造とを含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の架橋ゴム組成物。
  4. 前記動的共有結合性架橋構造は、前記ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上にアミノ基を介してグラフト化されている共役ジエン化合物が有する共役ジエン構造と、前記ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上にアミノ基を介してグラフト化されているジエノフィル化合物が有するジエノフィル構造とを含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の架橋ゴム組成物。
  5. 前記動的共有結合性架橋構造は、示差走査熱量測定による乖離の吸熱ピークに基づいて得られる乖離温度が100℃以上である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の架橋ゴム組成物。
  6. 前記シラン架橋構造は、前記ハロゲン元素含有ゴムの分子主鎖上にアミノ基またはメルカプト基を介してグラフト化されているシラン化合物が有するシラン基から形成されている
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の架橋ゴム組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の架橋ゴム組成物から構成されるシースを、導体の外周上に備えることを特徴とするゴムケーブル。
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