JP6515571B2 - ポリイミド塗料および絶縁電線 - Google Patents

ポリイミド塗料および絶縁電線 Download PDF

Info

Publication number
JP6515571B2
JP6515571B2 JP2015031018A JP2015031018A JP6515571B2 JP 6515571 B2 JP6515571 B2 JP 6515571B2 JP 2015031018 A JP2015031018 A JP 2015031018A JP 2015031018 A JP2015031018 A JP 2015031018A JP 6515571 B2 JP6515571 B2 JP 6515571B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polyimide
polyimide precursor
acid anhydride
paint
component
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015031018A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016151020A (ja
Inventor
知可子 河村
知可子 河村
秀太 鍋島
秀太 鍋島
祐樹 本田
祐樹 本田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Metals Ltd
Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Metals Ltd filed Critical Hitachi Metals Ltd
Priority to JP2015031018A priority Critical patent/JP6515571B2/ja
Publication of JP2016151020A publication Critical patent/JP2016151020A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6515571B2 publication Critical patent/JP6515571B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Paints Or Removers (AREA)
  • Macromolecular Compounds Obtained By Forming Nitrogen-Containing Linkages In General (AREA)
  • Organic Insulating Materials (AREA)

Description

本発明は、ポリイミド塗料および絶縁電線に関する。
絶縁電線は導体の外周上に絶縁被膜を備えて構成されている。絶縁電線は、例えばモータや変圧器などの電気機器のコイルに形成され、電気機器への電力供給や電気信号の伝達に用いられている。
近年、モータ等の小型化、高出力化および高効率化が進んでいる。小型化に伴い、コイル等に用いられる絶縁電線には厳しい屈曲加工が施されるため、絶縁被膜には屈曲加工で割れないような高い機械的特性が求められている。また高出力化に伴い、絶縁電線にはより高い電圧がかけられるため、絶縁被膜には高電圧で絶縁破壊しないような高い絶縁特性が求められている。また高効率化に伴い、絶縁電線はより高温の環境で用いられるため、絶縁被膜には高温環境で劣化しないような高い耐熱性が求められている。
このような要求を満たすため、絶縁被膜の形成材料としてはポリイミド樹脂が用いられている。ポリイミド樹脂からなる絶縁被膜は、例えば、ポリイミド前駆体が有機溶媒に溶解したポリイミド塗料(以下、単に塗料ともいう)を用いて形成される。具体的には、導体の外周上に塗料を塗布し、その塗料を焼き付ける(加熱する)ことによって、ポリイミド前駆体をイミド化させるとともに有機溶媒を揮発させて、ポリイミド樹脂からなる絶縁被膜を形成する。
塗料においては、絶縁被膜を生産性よく形成する観点から、有機溶媒の濃度を低くし、ポリイミド前駆体の濃度(以下、固形分濃度ともいう)を高くする試みがなされている。しかし、固形分濃度が高くなると、塗料の粘度が高くなるため、絶縁電線の製造の際に塗料を塗布しにくくなってしまう。そのため、塗料としては、固形分濃度が高濃度でありながらも粘度が低いものが求められている。
高濃度かつ低粘度な塗料として、例えば、ジアミン成分と酸無水物成分とを反応させ、その後、水またはアルコールを反応させて得られるポリイミド前駆体と、ジアミン成分とを含有する塗料が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1では、ポリイミド前駆体の分子量を低くすることで、ポリイミド前駆体を高濃度としても、塗料の粘度を低く維持することができる。しかも、この塗料は、加熱の際にポリイミド前駆体とジアミン成分とが重合することによって、分子量が大きく、機械的強度の高いポリイミド樹脂となる。このように、特許文献1の塗料では、低分子量のポリイミド前駆体とジアミン成分とを含有させることで、固形分濃度の高濃度化と塗料の低粘度化とを両立しつつ、加熱により得られるポリイミド樹脂の高分子量化を実現することができる。
特開2001−31764号公報
ところで、絶縁電線の製造において、導体の外周上に塗料を塗布し、加熱することにより絶縁被膜を形成する場合、塗料を加熱する温度を高くするとよい。加熱温度を高くすると、塗料からポリイミド樹脂への反応を促進でき、その結果、絶縁被膜の形成時間を短縮して絶縁電線の生産性を向上できるためである。
しかしながら、特許文献1の塗料を高温度で加熱する場合、得られる絶縁被膜(ポリイミド樹脂)の機械的特性および絶縁特性が低くなる傾向があった。そのため、例えば、絶縁電線に厳しい曲げ加工を施すときに絶縁被膜が割れやすく、また絶縁電線に高電圧をかけたときに絶縁被膜が絶縁破壊しやすかった。
そこで、本発明は、固形分濃度が高く、かつ低粘度であって、高温度で加熱した場合であっても機械的特性および絶縁特性に優れるポリイミド樹脂を形成できるポリイミド塗料、およびそれを用いて形成されるポリイミド樹脂からなる絶縁被膜を備える絶縁電線を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、
酸無水物成分とジアミン成分と末端封止剤とを前記ジアミン成分1モルに対して前記酸無水物成分を1.05モル〜1.07モルで反応させて得られ、分子鎖中に、一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有し、かつ、分子鎖の一端または両端に、前記酸無水物成分が前記末端封止剤により変性された一般式(2)で表わされる末端構造を有するポリイミド前駆体(A)と、
酸無水物成分とジアミン成分とを前記ジアミン成分1モルに対して前記酸無水物成分を0.85モル〜0.89モルで反応させて得られ、分子鎖の両端にアミノ基を有する一般式(3)で表わされるポリイミド前駆体(B)と、
有機溶媒と、を含有し、
固形分濃度が30%のときの30℃における溶液粘度が6.8Pa・s〜14.8Pa・sである、ポリイミド塗料が提供される。
Figure 0006515571
(式(1)中、R1は酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、R2はジアミン成分に由来する2価の有機基であり、繰り返し数mは1以上の整数である。)
Figure 0006515571
(式(2)中、R1は酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、R3は末端封止剤に由来する1価の有機基である。)
Figure 0006515571
(式(3)中、R4は酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、R5はジアミン成分に由来する2価の有機基であり、繰り返し数nは1以上の整数である。)
本発明の他の態様によれば、
上述のポリイミド塗料から形成された絶縁被膜を導体の外周上に備える、絶縁電線が提供される。
本発明によれば、固形分濃度が高く、かつ低粘度であって、高温度で加熱した場合であっても機械的特性および絶縁特性に優れるポリイミド樹脂を形成できるポリイミド塗料、および絶縁電線が得られる。
本発明の一実施形態に係る絶縁電線の断面を示す概略図である。
上述したように、従来の塗料は、ジアミン成分と酸無水物成分と水またはアルコールとを反応させて得られるポリイミド前駆体と、ジアミン成分と、を含有している。このポリイミド前駆体は、具体的には、分子鎖の一端または両端の酸無水物基が末端封止剤としての水またはアルコールによって変性された末端変性のポリイミド前駆体であり、末端封止剤によりジアミン成分と反応しないように構成されている。末端変性のポリイミド前駆体は、塗料の加熱の際、水またはアルコールを脱離させ、ジアミン成分と反応し始めることで、ポリイミド樹脂を形成することになる。しかし、塗料を例えば300℃以上の高い温度で加熱する場合、形成されるポリイミド樹脂の機械的特性や絶縁特性が低くなってしまうという問題があった。
上記問題について本発明者らが検討したところ、ポリイミド樹脂における機械的特性などの低下は、塗料の加熱の際、塗料に含まれるジアミン成分やポリイミド前駆体などが十分に反応しきれずに、未反応のまま、ポリイミド樹脂中に残存してしまうことに起因していると推測された。具体的に説明すると、塗料を加熱すると、末端変性のポリイミド前駆体とジアミン成分とが反応して重合し始めるが、加熱温度が高くなると、これらの成分が十分に重合する前に有機溶剤が揮発してしまうため、末端変性のポリイミド前駆体やジアミン成分が未反応のままポリイミド樹脂中に残存してしまう。これら残存する成分の中でもジアミン成分は、特に分子量が低いため、ポリイミド樹脂の機械的強度や絶縁破壊電圧を大きく低下させてしまう。
このことから、塗料を高温度で加熱する場合に生じる問題を抑制するには、塗料に含まれる成分(ジアミン成分や末端変性のポリイミド前駆体など)の分子量を高くすることが考えられる。
そこで、本発明者らは、低分子量であるジアミン成分に代わる成分について検討を行った。具体的には、ジアミン成分よりも分子量が高く、かつジアミン成分と同様に加熱により末端変性のポリイミド前駆体と反応して重合することが可能な成分について検討を行った。その結果、ジアミン成分と酸無水物成分との反応により得られ、分子鎖の両端にアミノ基を有する、ジアミン末端のポリイミド前駆体がよいことが分かった。ジアミン末端のポリイミド前駆体によれば、ジアミン成分よりも分子量が高いため、高温度での加熱の際にポリイミド樹脂中に残存した場合であっても、ポリイミド樹脂の特性を大きく損ねることがない。しかも、加熱によりポリイミド前駆体の分子鎖の末端同士が結合することにより、分子量の大きなポリイミド樹脂が得られる。
本発明は、上述の知見に基づいて成されたものである。
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について説明する。
(1)ポリイミド塗料
本実施形態のポリイミド塗料(以下、単に塗料ともいう)は、分子鎖中に、一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有し、かつ、分子鎖の一端または両端に、酸無水物成分が末端封止剤により変性された一般式(2)で表わされる末端構造を有するポリイミド前駆体(A)と、分子鎖の両端にアミノ基を有する一般式(3)で表わされるポリイミド前駆体(B)と、有機溶媒と、を含有する。塗料において、ポリイミド前駆体(A)および(B)は、有機溶媒に溶解した状態で存在している。以下、各成分について説明する。
Figure 0006515571
(式(1)中、Rは酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、Rはジアミン成分に由来する2価の有機基であり、繰り返し数mは1以上の整数である。)
Figure 0006515571
(式(2)中、Rは酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、Rは末端封止剤に由来する1価の有機基である。)
Figure 0006515571
(式(3)中、Rは酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、Rはジアミン成分に由来する2価の有機基であり、繰り返し数nは1以上の整数である。)
〔ポリイミド前駆体(A)〕
ポリイミド前駆体(A)は、過剰量の酸無水物成分とジアミン成分とを反応させた後、さらに末端封止剤を反応させて得られる成分である。ポリイミド前駆体(A)は、酸無水物成分とジアミン成分との反応により、これらが交互に結合した分子構造を有しており、分子鎖中に、一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有している。また、分子鎖末端の酸無水物成分が末端封止剤との反応により変性されることで、分子鎖の一端または両端に、一般式(2)で表わされる末端構造を有する。具体的には、この末端構造は、分子鎖末端にある酸無水物成分の酸無水物基が末端封止剤との反応によりエステル化されて変性された構造である。このような末端構造を有するポリイミド前駆体(A)は、分子鎖の両端にアミノ基を有するポリイミド前駆体(B)と化学的に安定で反応しにくい。なお、詳細は後述するが、ポリイミド前駆体(A)は、塗料の加熱の際に末端封止剤を脱離させることで、ポリイミド前駆体(B)と反応することができる。
所定の繰り返し単位および末端構造を有するポリイミド前駆体(A)は、例えば、下記一般式(4)または(5)で表わされる。一般式(4)は、所定の末端構造を分子鎖の両端に有する場合を示し、一般式(5)は、分子鎖の一端に有する場合を示す。
Figure 0006515571
Figure 0006515571
ポリイミド前駆体(A)は、所定の末端構造を分子鎖の少なくとも一端に有していればよいが、塗料の貯蔵安定性の観点からは、分子鎖の両端に有することが好ましい。すなわち、ポリイミド前駆体(A)としては、一般式(5)よりも一般式(4)で表わされるものが好ましい。一般式(5)のポリイミド前駆体(A)は、分子鎖の一端に所定の末端構造を有するものの、他端に酸無水物基を有しており、ポリイミド前駆体(B)と反応するおそれがある。そのため、一般式(5)のポリイミド前駆体(A)を含む塗料では、貯蔵中に、ポリイミド前駆体(B)との重合が徐々に進行し、分子量が増大することによって、塗料粘度が高くなるおそれがある。これに対して、一般式(4)のポリイミド前駆体(A)は、分子鎖の両端に所定の末端構造を有しており、ポリイミド前駆体(B)との反応が抑制されているため、貯蔵中に重合が進行するおそれがなく、貯蔵安定性に優れている。
末端封止剤としては、水酸基を有し、酸無水物成分の酸無水物基と結合できるような化合物であれば特に限定されない。このような末端封止剤としては、例えば、アルコールやフェノール類などを用いることができる。中でも、酸無水物基との反応性、および加熱の際の脱離性の観点からは、アルコールが好ましく、炭素数1〜3の低級アルコール、例えばメタノールやエタノール、プロパノール等がより好ましい。
ポリイミド前駆体(A)の分子量は、ポリイミド前駆体(A)の残存によるポリイミド樹脂の諸特性の低下を抑制する観点からは高いことが好ましい。具体的には、数平均分子量で10,000以上であることが好ましく、15,000以上であることがより好ましい。一方、分子量が高すぎると、塗料粘度が過度に高くなるため、塗料の高濃度化および低粘度化を両立できないおそれがある。そのため、ポリイミド前駆体(A)の数平均分子量は、50,000以下であることが好ましく、33,000以下であることがより好ましい。すなわち、塗料の高濃度化および低粘度化を両立するとともに、塗料を加熱して得られるポリイミド樹脂において高い機械的特性および絶縁特性を実現する観点からは、ポリイミド前駆体(A)の数平均分子量は、好ましくは10,000以上50,000以下、より好ましくは15,000以上35,000以下である。なお、ポリイミド前駆体(A)において、一般式(1)で表わされる繰り返し単位の繰り返し数mは、1以上の整数であれば特に限定されないが、ポリイミド前駆体(A)の数平均分子量が上記範囲を満たすような値であることが好ましい。
〔ポリイミド前駆体(B)〕
ポリイミド前駆体(B)は、酸無水物成分と過剰量のジアミン成分とを反応させて得られる成分である。ポリイミド前駆体(B)は、酸無水物成分とジアミン成分との反応により、これらが交互に結合し、分子鎖の両端がジアミン成分となる分子構造を有する。具体的には、一般式(3)に示すように、分子鎖中に所定の繰り返し単位を有し、かつ分子鎖の両端にジアミン成分に由来するアミノ基を有する。
ポリイミド前駆体(B)の分子量は、ポリイミド前駆体(B)の残存によるポリイミド樹脂の諸特性の低下を抑制する観点からは、ポリイミド前駆体(A)と同様に高いことが好ましい。具体的には、数平均分子量で5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。一方、分子量が高すぎると、塗料粘度が過度に高くなるため、塗料の高濃度化および低粘度化を両立できないおそれがある。そのため、ポリイミド前駆体(B)の数平均分子量は、40,000以下であることが好ましく、35,000以下であることがより好ましい。すなわち、塗料の高濃度化および低粘度化を両立するとともに、塗料を加熱して得られるポリイミド樹脂において高い機械的特性および絶縁特性を実現する観点からは、ポリイミド前駆体(B)の数平均分子量は、好ましくは5,000以上40,000以下、より好ましくは10,000以上35,000以下である。なお、ポリイミド前駆体(B)において、一般式(3)で表わされる繰り返し単位の繰り返し数nは、1以上の整数であれば特に限定されないが、ポリイミド前駆体(B)の数平均分子量が上記範囲を満たすような値であることが好ましい。
なお、塗料において、ポリイミド前駆体(A)とポリイミド前駆体(B)との比率は、特に限定されないが、塗料を加熱したときの反応性の観点から、ポリイミド前駆体(A)とポリイミド前駆体(B)とが互いに反応し合う末端基(反応基)の数が同じとなるような比率であることが好ましい。
〔酸無水物成分〕
ポリイミド成分(A)および(B)を形成する酸無水物成分は、特に限定されず、従来公知の成分を用いることができる。酸無水物成分としては、脂肪族系、芳香族系のいずれも用いることができる。ポリイミド樹脂の耐熱性を向上させる観点からは、芳香族系のテトラカルボン酸二無水物が好ましい。その中でも、芳香環を1つ又は2つ有し、かつ熱分解しやすい脂肪族基や脂肪族連結基を持たない芳香族系のテトラカルボン酸二無水物が、剛直な化学構造を有するため、特に好ましい。
芳香族系のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。この中でも、入手性・汎用性等の観点からピロメリット酸二無水物が特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリイミド前駆体(A)および(B)のそれぞれに用いる酸無水物成分は、同じでもよく、異なっていてもよい。
〔ジアミン成分〕
ポリイミド成分(A)および(B)を形成するジアミン成分は、特に限定されず、従来公知の成分を用いることができる。ジアミン成分としては、脂肪族系、芳香族系のいずれも用いることができる。ポリイミド樹脂の耐熱性を向上させる観点からは、好ましくは、芳香族系ジアミン化合物が好ましく、芳香環を1つ又は2つ有し、かつ熱分解しやすい脂肪族基や脂肪族連結基を有しない芳香族系ジアミン化合物がより好ましい。
芳香族系ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。この中でも、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリイミド前駆体(A)および(B)のそれぞれに用いるジアミン成分は、同じでもよく、異なっていてもよい。
〔塗料粘度〕
本実施形態の塗料では、ポリイミド前駆体(A)および(B)の分子量を低く調整することによって、塗料粘度を低く維持しつつ、固形分濃度を高くすることができる。具体的には、固形分濃度を23%以上、好ましくは27%以上と高くした場合であっても、30℃における塗料粘度を20Pa・s以下、好ましくは3Pa・s以上15Pa・s以下とすることができる。ここで、固形分濃度とは、ポリイミド前駆体(A)および(B)が塗料に占める割合を示す。また、塗料粘度は、E型粘度計(例えば、トキメック社製 viscometer TV−20HT)によって測定される粘度を示す。
なお、有機溶媒としては、ポリイミド前駆体(A)および(B)の合成に影響を及ぼさず、これらを溶解できるものであれば特に限定されない。例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)や、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(2)ポリイミド塗料の製造方法
上述したポリイミド塗料は、有機溶媒中でポリイミド前駆体(A)およびポリイミド前駆体(B)を生成することにより得られる。
〔ポリイミド前駆体(A)の生成工程〕
まず、有機溶媒にジアミン成分を添加して溶解させる。この溶液に酸無水物成分をジアミン成分に対して過剰量となるように添加して溶解させる。そして、これらの成分を反応させ、重合することにより、酸無水物成分およびジアミン成分が交互に結合し、分子鎖の両端が酸無水物成分となる酸無水物末端のポリイミド前駆体(A´)を得る。ポリイミド前駆体(A´)は、下記一般式(6)に示すように、分子鎖の両端に酸無水物成分に由来する酸無水物基を有する。
Figure 0006515571
ポリイミド前駆体(A´)の生成において、酸無水物成分とジアミン成分との添加比率は、酸無水物成分がジアミン成分に対して過剰となるような比率であれば、特に限定されないが、ジアミン成分1モルに対して、酸無水物成分の添加量が1.03〜1.12モルであることが好ましく、1.05〜1.10モルであることがより好ましい。
この添加比率を調整することによって、ポリイミド前駆体(A´)における繰り返し単位の繰り返し数mを調整して、ポリイミド前駆体(A´)の分子量を制御することができる。つまり、添加比率により、最終的に得られるポリイミド前駆体(A)の分子量を制御することができる。例えば、ジアミン成分1モルに対して酸無水物成分の添加量を1.03モルとする場合、繰り返し単位mが比較的大きく、数平均分子量が35,000〜45,000となるようなポリイミド前駆体(A´)を生成することができる。
続いて、ポリイミド前駆体(A´)を含有する有機溶媒中に、末端封止剤として例えばアルコールを添加する。アルコールは、ポリイミド前駆体(A´)の末端にある酸無水物基とエステル化により反応して結合する。これにより、一般式(4)または(5)に示すような、分子鎖の一端または両端に、酸無水物成分がアルコールにより変性された末端構造を有するポリイミド前駆体(A)を生成する。
末端封止剤の添加量は、ポリイミド前駆体(A´)の分子鎖の少なくとも一方の末端を封止できるような量であれば、特に限定されない。ポリイミド前駆体(A´)の分子鎖の両端に末端封止剤を反応させ、一般式(4)に示すポリイミド前駆体(A)を生成する場合、末端封止剤の添加量は、酸無水物成分の過剰モル数に対して2〜8倍とすることが好ましく、2〜4倍とすることがより好ましい。例えば、酸無水物成分を1.03モル、ジアミン成分を1モル添加した場合、末端封止剤の添加量は、酸無水物成分の過剰モル数である0.03モルの2〜8倍とする。末端封止剤の添加量が過剰モル数の2倍未満であると、ポリイミド前駆体(A´)に末端封止剤を十分に反応できないおそれがある。一方、8倍を超えると、未反応の末端封止剤が塗料中に過剰に残存するおそれがあり、この残存する末端封止剤が、塗料を加熱してイミド化する際に、イミド化に必要な熱量を蒸発熱として吸収し、イミド化を妨げるおそれがある。
〔ポリイミド前駆体(B)の生成工程〕
続いて、ポリイミド前駆体(A)が溶解する溶液にジアミン成分を新たに添加して溶解させる。この溶液に酸無水物成分をジアミン成分に対して少なくなるように添加して溶解させる。そして、新たに溶解させたジアミン成分と酸無水物成分とを反応させ、重合することにより、一般式(3)に示すようなジアミン末端のポリイミド前駆体(B)を生成する。なお、この生成工程では、末端変性のポリイミド前駆体(A)は、新たに添加するジアミン成分と化学的に安定で反応しにくくなっている。
ポリイミド前駆体(B)の生成において、酸無水物成分とジアミン成分との添加比率は、酸無水物成分がジアミン成分に対して少なくなるような比率であれば、特に限定されないが、ジアミン成分1モルに対して、酸無水物成分の添加量が0.80〜0.98モルであることが好ましく、0.85〜0.95モルであることがより好ましい。
この添加比率を調整することによって、上述したポリイミド前駆体(A´)の数平均分子量と同様に、ポリイミド前駆体(B)における数平均分子量を調整することができる。
以上により、ポリイミド前駆体(A)およびポリイミド前駆体(B)が有機溶媒に溶解する本実施形態のポリイミド塗料を得る。
なお、本実施形態では、同一の有機溶媒中でポリイミド前駆体(A)および(B)を生成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ポリイミド前駆体(A)および(B)を別々の有機溶媒中で生成した後、これらを混合することによって、製造してもよい。
(3)ポリイミド樹脂
本実施形態の塗料は、加熱によりポリイミド前駆体(A)および(B)が反応してイミド化することで、ポリイミド樹脂となる。具体的には、以下のように反応する。
加熱により、ポリイミド前駆体(A)の末端構造から末端封止剤(R−OH)が脱離する。この脱離により、一般式(4)または(5)に示すポリイミド前駆体(A)が、一般式(6)に示すポリイミド前駆体(A´)になる。ポリイミド前駆体(A´)は、分子鎖の末端が酸無水物成分であるため、分子鎖末端がジアミン成分であるポリイミド前駆体(B)との間にアミド結合を形成し、重合する。これにより、ポリイミド前駆体(A´)とポリイミド前駆体(B)とが交互に結合する分子鎖が形成される。そして、これらの結合により伸長された分子鎖において、イミド化が進み、イミド閉環構造が形成されることで、一般式(7)に示す繰り返し単位を有するポリイミド樹脂が形成される。
このように、本実施形態の塗料によれば、加熱によりポリイミド前駆体(A)および(B)が結合して分子鎖が伸長されるため、分子量が高く、機械的特性に優れるポリイミド樹脂が得られる。また、本実施形態の塗料によれば、高温度での加熱により、ポリイミド前駆体(A)および(B)がポリイミド樹脂中に未反応のまま残存するような場合であっても、これらの前駆体の分子量が高いので、残存成分による特性の低下が抑制され、機械的特性および絶縁特性に優れるポリイミド樹脂が得られる。
Figure 0006515571
(4)絶縁電線
続いて、上述のポリイミド塗料を用いて形成された絶縁被膜を備える絶縁電線について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁電線の断面を示す図である。
本実施形態に係る絶縁電線1は、上述したポリイミド塗料から形成され、ポリイミド樹脂からなる絶縁被膜12を導体11の外周上に備える。
導体11は、例えば、銅または銅合金などの金属材料から形成される。その導体径は、用途に応じて最適なものを適宜選択することができる。その断面形状は、図1に示す丸型に限定されず、例えば角型形状とすることもできる。
絶縁被膜12は、導体11の外周を被覆するように設けられており、上述した塗料を加熱して得られるポリイミド樹脂で形成されている。絶縁被膜12の形成は、例えば、導体11上に塗料を所定の厚さで塗布し、高温度(例えば300℃以上)で所定時間加熱するといった一連の操作(塗布および加熱)を、絶縁被膜12が所定の厚さとなるまで複数回繰り返すことによって行われる。絶縁被膜12の厚さは、用途に応じて最適な大きさが選択される。塗料の塗布方法は、一般的に実施されている方法、例えばバーコータ、ローラー、スピンコータ、ダイスなどを用いて塗布する方法、が挙げられる。また、塗料の加熱温度や加熱時間は、塗料に含まれるポリイミド前駆体(A)および(B)や有機溶媒の種類に応じて適宜変更するとよい。
絶縁被膜12は、塗料を高温度で加熱することで形成された場合であっても、熱によってポリイミド前駆体(A)とポリイミド前駆体(B)を構成する成分が分解されにくいため、高分子量の絶縁被膜とすることができる。これにより、絶縁特性および機械的特性に優れた絶縁被膜12とすることができる。
なお、絶縁電線1において、導体11と絶縁被膜12との密着性を向上させるため、導体11と絶縁被膜12との間に密着層(図示略)を介在させて設けてもよい。また、絶縁被膜12の外周上に融着層や潤滑層(図示略)を設けてもよい。
<本実施形態に係る効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
(a)本実施形態の塗料は、分子鎖中に一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有し、かつ分子鎖の少なくとも一端が末端封止剤により変性された一般式(2)で表わされる末端構造を有するポリイミド前駆体(A)と、分子鎖の両端にアミノ基を有する一般式(3)で表わされるポリイミド前駆体(B)と、を含有する。これらの前駆体は、ともに低分子量であり、塗料の加熱前には互いに反応しない。そのため、本実施形態の塗料においては、これらの前駆体を高濃度で溶解させても、分子量を増大させることなく、塗料粘度を低く維持することができる。一方、塗料の加熱時には、これらの前駆体は重合し、さらにイミド化することで、分子鎖が伸長されて分子量が大きなポリイミド樹脂を形成する。したがって、本実施形態の塗料は、加熱前は固形分濃度が高く、かつ塗料粘度が低いため塗布性に優れており、加熱後は、分子量が大きく、機械的特性に優れるポリイミド樹脂を形成することができる。
(b)本実施形態の塗料は、導体11の外周上に塗布し、加熱することにより絶縁被膜12を形成する際に、加熱温度を高くすると、ポリイミド前駆体(A)や(B)が十分に反応できずに、これらが未反応のまま、絶縁被膜12(ポリイミド樹脂)中に残存してしまうことがある。しかし、これらの残存成分は、比較的高い分子量であるため、低分子量のジアミン成分のように機械的特性や絶縁特性を大きく低下させるおそれがない。すなわち、本実施形態の塗料によれば、高温度で加熱した場合であっても、機械的特性および絶縁特性に優れる絶縁被膜12を形成することができる。
(c)ポリイミド前駆体(B)は、数平均分子量が5,000以上40,000以下である。数平均分子量を上記範囲とすることにより、塗料粘度を低く維持しつつ、固形分濃度を高くできるとともに、塗料を高温度で加熱して得られるポリイミド樹脂において高い機械的特性および絶縁特性を実現することができる。
(d)ポリイミド前駆体(A)は、一般式(4)に示すように、分子鎖の両端の酸無水物成分が末端封止剤により変性されている。これにより、ポリイミド前駆体(A)とポリイミド前駆体(B)との反応をさらに抑制し、塗料の貯蔵時における塗料粘度の増大を抑制できるので、塗料の貯蔵安定性を向上させることができる。
(e)ポリイミド前駆体(A)の分子鎖末端に反応させる末端封止剤がアルコールである。アルコールは、塗料を加熱するときに、ポリイミド前駆体(A)から容易に脱離することができる。そのため、塗料を加熱したときに、ポリイミド前駆体(A)からポリイミド前駆体(A´)を生成させる反応を早め、その後のポリイミド前駆体(A´)とポリイミド前駆体(B)との重合を促進させることができる。これにより、分子量がより高く、より高い機械的特性を有するポリイミド樹脂が得られる。
(f)ポリイミド前駆体(A)は、数平均分子量が10,000以上50,000以下である。ポリイミド前駆体(A)の数平均分子量を上記範囲で調整することで、塗料粘度を低く維持しつつ、固形分濃度を高くすることができる。
(g)本実施形態の塗料は、固形分濃度が23%以上であっても、塗料粘度が15Pa・s以下に維持されるので、優れた塗布性を有する。
(h)本実施形態の塗料によれば、導体の外周上に塗布し、加熱することにより、ポリイミド樹脂からなり、機械的特性および絶縁特性に優れる絶縁被膜を形成できる。また、高温度で加熱できるので、絶縁被膜の形成時間を短縮し、絶縁電線を生産性よく形成することができる。
(i)本実施形態の絶縁電線によれば、機械的特性に優れる絶縁被膜を備えているので、コイルの小型化のため厳しい屈曲加工を施したとしても、絶縁被膜の割れを抑制することができる。
(j)本実施形態の絶縁電線によれば、絶縁特性に優れる絶縁被膜を備えているので、コイルにかける電圧をより高い電圧とすることができる。
次に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明する。本実施例では、以下の方法によりポリイミド塗料を調製し、それを用いて絶縁電線を作製した。これらの実施例は本発明の一例であって、本発明はこれらの実施例に限定されない。
(1)材料
以下の実施例および比較例で用いた材料は次のとおりである。
・酸無水物成分
ピロメリット酸無水物(PMDA)
・ジアミン成分
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)
・末端封止剤
エタノール
・有機溶媒
N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)
(2)ポリイミド塗料の調製
<実施例1>
まず、有機溶媒としてのDMAcに、ジアミン成分としてのODAを341.35g(1.705mol)溶解させ、続いて、酸無水物成分としてのPMDAを、ODAに対して過剰となるように390.47g(1.790mol)添加した。このときのODA:PMDAのモル比率は100:105であった。そして、この溶液を100rpmで撹拌してPMDAとODAとを反応させた後、さらに末端封止剤としてのエタノールを15.71g(0.341mol)添加して撹拌することで、分子鎖中に、一般式(8)で表わされる繰り返し単位を有し、かつ分子鎖の少なくとも一端に一般式(9)で表わされる末端構造を有するポリイミド前駆体(A)を生成した。
次に、ポリイミド前駆体(A)が溶解する溶液にODAを161.2g(0.805mol)溶解させ、続いて、PMDAを、ODAに対して少なくなるように157.0g(0.720mol)溶解させた。このときのODA:PMDAのモル比率は100:89であった。そして、この溶液を撹拌し、ODAおよびPMDAを反応させることにより、下記一般式(10)で表わされるジアミン末端のポリイミド前駆体(B)を生成した。
以上により、ポリイミド前駆体(A)および(B)が溶解する実施例1のポリイミド塗料を得た。
なお、実施例1のポリイミド塗料は、固形分濃度が30%であって、30℃における溶液粘度が14.8Pa・sであった。なお、塗料粘度は、E型粘度計(トキメック社製 viscometer TV−20HT)によって測定された数値を示す。
Figure 0006515571
Figure 0006515571
Figure 0006515571
<実施例2>
実施例2では、ポリイミド前駆体(A)の生成において、ODAの配合量を33.79g(0.169mol)に、PMDAの配合量を39.39g(0.181mol)に、エタノールの配合量を2.18g(0.473mol)に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にポリイミド前駆体(A)を生成した。このときのODA:PMDAのモル比率は100:107であった。
また、ポリイミド前駆体(B)の生成において、ODAの配合量を16.46g(0.082mol)に、PMDAの配合量を15.36g(0.07mol)に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にポリイミド前駆体(B)を生成した。このときのODA:PMDAのモル比率は100:85であった。
なお、実施例2のポリイミド塗料は、固形分濃度が30%であって、30℃における溶液粘度が6.8Pa・sであった。
<比較例1>
比較例1では、実施例1と同様にポリイミド前駆体(A)を生成した後、溶液にジアミン成分としてのODAを溶解させて、ポリイミド塗料を調製した。つまり、比較例1では、実施例1のようにポリイミド前駆体(B)を生成せず、ポリイミド前駆体(A)とODAとが溶解するポリイミド塗料を得た。
具体的には、DMAc2450gに、ODAを469.67g(2.346mol)溶解させ、続いて、PMDAを547.47g(2.510mol)添加した(ODA:PMDAのモル比率は100:107)。そして、この溶液を100rpmで撹拌してPMDAとODAとを反応させた後、さらに末端封止剤としてのエタノールを28.9g(0.628mol)添加して撹拌することで、実施例1と同様のポリイミド前駆体(A)を生成した。次に、ポリイミド前駆体(A)が溶解する溶液に、ODAを32.88g(0.164mol)を溶解させることにより、比較例1のポリイミド塗料を得た。
なお、比較例1のポリイミド塗料は、固形分濃度が28.11%であって、30℃における溶液粘度が2.0Pa・sであった。
(3)絶縁電線の作製
導体(外径0.8mm)の外周上に実施例1の塗料を塗布した後、塗料が硬化する温度で加熱し、所定厚さの塗膜を形成した。その後、塗料を塗布し、加熱して塗膜を形成する工程を所定回数繰り返して塗膜を積層させることによって、下記一般式(11)で表わされる繰り返し単位を有するポリイミド樹脂からなる厚さ35μmの絶縁被膜を形成し、実施例1の絶縁電線を作製した。同様に、実施例2および比較例1の塗料を用いて絶縁電線を作製した。
Figure 0006515571
(4)評価方法
作製して得られた各絶縁電線について、絶縁被膜の機械的特性、絶縁特性および外観を評価した。以下、各評価方法について説明する。
(機械的特性)
絶縁被膜の機械的特性は、JIS C3216−3「5.1 巻付け試験」」に準拠して30%伸長後の可とう性試験を行い、評価した。具体的には、得られた絶縁電線を30%伸長した後、当該絶縁電線の導体径と同じ直径(0.8mm)を有する巻き付け棒へJISC 3216−3「5.1 巻付け試験」に準拠した方法で巻き付けた。そして、光学顕微鏡を用いて絶縁皮膜に亀裂の発生の有無を測定した。
(絶縁特性)
絶縁被膜の絶縁特性は絶縁破壊電圧により評価した。具体的には、JIS C3216−5「4.4.1 常温試験」に準拠して、2個の撚り試料を作製し、昇圧速度500V/sで0Vから印可して絶縁破壊電圧を測定した。
(外観)
絶縁被膜の外観は、外観を目視、手触りによって評価した。本実施例では、絶縁被膜に気泡が発生せず、その表面が平滑であれば、外観が良好であると評価した。
(5)評価結果
実施例1の絶縁被膜は、実施例1の絶縁電線を30%伸張させて0.8mm径の巻付け試験を行っても、絶縁被膜に割れが生じないことが確認された。また、その絶縁破壊電圧が14.1kVであって、絶縁特性に優れていることが確認された。また、絶縁被膜には気泡が発生しておらず、外観が良好であることが確認された。気泡が発生しなかったのは、ポリイミド前駆体(A)および(B)の数平均分子量を高くしたことで、つまり、それぞれの繰り返し数m´およびn´を大きくしたことで、繰り返し単位(A)および(B)の結合箇所の数を少なくできたためと考えられる。つまり、結合箇所を減少させることで、ポリイミド前駆体(A)および(B)の結合の際に生じるアルコールや水の脱離を低減し、気泡の発生を抑制することができたためと考えられる。
実施例2の絶縁被膜は、実施例1と同様に、30%伸長させて0.8mm径の巻付け試験を行っても絶縁被膜に割れが生じておらず、機械的特性に優れていることが確認された、また絶縁破壊電圧が12.1kVであって絶縁特性に優れていることが確認された。その絶縁被膜には気泡の発生が確認されず、表面外観が良好であることが確認された。
比較例1の絶縁被膜は、実施例1,2と同様に、絶縁電線を30%伸長させて0.8mm径の巻付け試験を行っても、絶縁被膜に割れが生じないことが確認されたが、絶縁破壊電圧が8.7kVであり、絶縁特性が実施例1,2よりも低いことがわかった。しかも、絶縁被膜には気泡が発生しており、外観が不良であることが確認された。
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
[付記1]
本発明の一態様によれば、
酸無水物成分とジアミン成分と末端封止剤とを反応して得られ、分子鎖中に、一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有し、かつ、分子鎖の一端または両端に、前記酸無水物成分が前記末端封止剤により変性された一般式(2)で表わされる末端構造を有するポリイミド前駆体(A)と、
酸無水物成分とジアミン成分とを反応して得られ、分子鎖の両端にアミノ基を有する一般式(3)で表わされるポリイミド前駆体(B)と、
有機溶媒と、を含有する、ポリイミド塗料が提供される。
Figure 0006515571
(式(1)中、Rは酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、Rはジアミン成分に由来する2価の有機基であり、繰り返し数mは1以上の整数である。)
Figure 0006515571
(式(2)中、Rは酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、Rは末端封止剤に由来する1価の有機基である。)
Figure 0006515571
(式(3)中、Rは酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、Rはジアミン成分に由来する2価の有機基であり、繰り返し数nは1以上の整数である。)
[付記2]
付記1のポリイミド塗料であって、好ましくは、
前記ポリイミド前駆体(B)の数平均分子量が5,000以上40,000以下である。
[付記3]
付記1又は2のポリイミド塗料であって、好ましくは、
前記ポリイミド前駆体(A)が、分子鎖の両端に前記末端構造を有しており、一般式(4)で表わされる。
Figure 0006515571
(式(4)中、Rは酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、Rはジアミン成分に由来する2価の有機基であり、Rは末端封止剤に由来する1価の有機基であり、繰り返し数mは1以上の整数である。)
[付記4]
付記1ないし3のいずれかのポリイミド塗料であって、好ましくは、
前記末端封止剤がアルコールである。
[付記5]
付記1ないし4のいずれかのポリイミド塗料であって、好ましくは、
前記ポリイミド前駆体(A)の数平均分子量が10,000以上50,000以下である。
[付記6]
付記1ないし5のいずれかのポリイミド塗料であって、好ましくは、
固形分濃度が23%以上であって、30℃における塗料粘度が20Pa・s以下である。
[付記7]
本発明の他の態様によれば、
付記1〜6のいずれかのポリイミド塗料から形成された絶縁被膜を導体の外周上に備える、絶縁電線が提供される。
1 絶縁電線
11 導体
12 絶縁被覆

Claims (6)

  1. 酸無水物成分とジアミン成分と末端封止剤とを前記ジアミン成分1モルに対して前記酸無水物成分を1.05モル〜1.07モルで反応させて得られ、分子鎖中に、一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有し、かつ、分子鎖の一端または両端に、前記酸無水物成分が前記末端封止剤により変性された一般式(2)で表わされる末端構造を有するポリイミド前駆体(A)と、
    酸無水物成分とジアミン成分とを前記ジアミン成分1モルに対して前記酸無水物成分を0.85モル〜0.89モルで反応させて得られ、分子鎖の両端にアミノ基を有する一般式(3)で表わされるポリイミド前駆体(B)と、
    有機溶媒と、を含有し、
    固形分濃度が30%のときの30℃における溶液粘度が6.8Pa・s〜14.8Pa・sである、ポリイミド塗料。
    Figure 0006515571
    (式(1)中、R1は酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、R2はジアミン成分に由来する2価の有機基であり、繰り返し数mは1以上の整数である。)
    Figure 0006515571
    (式(2)中、R1は酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、R3は末端封止剤に由来する1価の有機基である。)
    Figure 0006515571
    (式(3)中、R4は酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、R5はジアミン成分に由来する2価の有機基であり、繰り返し数nは1以上の整数である。)
  2. 前記ポリイミド前駆体(B)の数平均分子量が5,000以上40,000以下である、請求項1に記載のポリイミド塗料。
  3. 前記ポリイミド前駆体(A)が、分子鎖の両端に前記末端構造を有しており、一般式(4)で表わされる、請求項1又は2に記載のポリイミド塗料。
    Figure 0006515571
    (式(4)中、R1は酸無水物成分に由来する4価の有機基であり、R2はジアミン成分に由来する2価の有機基であり、R3は末端封止剤に由来する1価の有機基であり、繰り返し数mは1以上の整数である。)
  4. 前記末端封止剤がアルコールである、請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド塗料。
  5. 前記ポリイミド前駆体(A)の数平均分子量が10,000以上50,000以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド塗料。
  6. 請求項1〜のいずれかのポリイミド塗料から形成された絶縁被膜を導体の外周上に備える、絶縁電線。
JP2015031018A 2015-02-19 2015-02-19 ポリイミド塗料および絶縁電線 Active JP6515571B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015031018A JP6515571B2 (ja) 2015-02-19 2015-02-19 ポリイミド塗料および絶縁電線

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015031018A JP6515571B2 (ja) 2015-02-19 2015-02-19 ポリイミド塗料および絶縁電線

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016151020A JP2016151020A (ja) 2016-08-22
JP6515571B2 true JP6515571B2 (ja) 2019-05-22

Family

ID=56696002

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015031018A Active JP6515571B2 (ja) 2015-02-19 2015-02-19 ポリイミド塗料および絶縁電線

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6515571B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6814079B2 (ja) * 2017-03-22 2021-01-13 住友電気工業株式会社 リアクトル及びリアクトルの製造方法
CN113302227B (zh) * 2019-01-29 2024-04-26 三菱化学株式会社 组合物、金属绝缘被覆材料及其制造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62280257A (ja) * 1986-05-30 1987-12-05 Hitachi Ltd 低粘度ワニス
JP2000234023A (ja) * 1998-12-15 2000-08-29 Unitika Ltd ポリイミド前駆体溶液及びその製造方法、それから得られる塗膜及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016151020A (ja) 2016-08-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6101200B2 (ja) 絶縁ワニス及びこれを用いた絶縁電線
WO2012102121A1 (ja) ポリイミド樹脂ワニス及びそれを用いた絶縁電線、電機コイル、モータ
JP2011190434A (ja) 絶縁塗料及びその製造方法並びにそれを用いた絶縁電線及びその製造方法
JP6394697B2 (ja) 絶縁電線及びコイル
JP2013253124A (ja) ポリイミド樹脂ワニス及びそれを用いた絶縁電線、電機コイル、モータ
CN110800069B (zh) 绝缘电线
JP6515571B2 (ja) ポリイミド塗料および絶縁電線
WO2012153636A1 (ja) ポリイミド樹脂ワニス及びそれを用いた絶縁電線、電機コイル、モータ
JP6496993B2 (ja) ポリイミド前駆体組成物、ポリイミド前駆体の製造方法、ポリイミド成形体、及びポリイミド成形体の製造方法
CN112020532B (zh) 绝缘电线、线圈、以及电气/电子设备
JP7104162B2 (ja) 導体被覆用ポリアミック酸組成物
JP2012234625A (ja) 絶縁電線及びそれを用いた、電機コイル、モータ
JP2015108062A (ja) 分岐ポリアミック酸、ポリアミック酸塗料およびそれを用いた絶縁電線
JP4772945B2 (ja) 絶縁被覆物及びそれを得るための絶縁塗料
JP6865592B2 (ja) 樹脂ワニス、絶縁電線及び絶縁電線の製造方法
JP6964412B2 (ja) 絶縁電線及びその製造方法
JP7179132B2 (ja) 絶縁電線
JP2013028695A (ja) ポリイミド樹脂ワニス及びそれを用いた絶縁電線、電機コイル、モータ
JP2008243677A (ja) 電気絶縁用樹脂組成物、これを用いた塗料及びエナメル線
JP6863161B2 (ja) ワニスの製造方法、エナメル線の製造方法、コイルの製造方法及び電機部品の製造方法
KR102564595B1 (ko) 폴리아믹산 조성물 및 이를 포함하는 폴리이미드 피복물
WO2020016954A1 (ja) 樹脂ワニス、絶縁電線及び絶縁電線の製造方法
KR102564597B1 (ko) 폴리이미드 피복물
JP2015214602A (ja) ポリアミドイミド塗料及び絶縁電線
JP2023163896A (ja) ポリエステルイミド及びポリエステルアミド酸

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20171020

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180713

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180821

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181019

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190319

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190401

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6515571

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350