JP2015214602A - ポリアミドイミド塗料及び絶縁電線 - Google Patents

ポリアミドイミド塗料及び絶縁電線 Download PDF

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秀太 鍋島
菊池 英行
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英行 菊池
祐樹 本田
Yuki Honda
祐樹 本田
泰弘 船山
Yasuhiro Funayama
泰弘 船山
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Abstract

【課題】樹脂成分の濃度が高く、かつ低粘度であり、耐溶剤性に優れるポリアミドイミド樹脂を形成できるポリアミドイミド塗料を提供する。【解決手段】3価以上の多価カルボン酸無水物(a1)、3価以上の多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)および3価以上の多価カルボン酸(a3)を含む酸成分(A)と、ジイソシアネート成分(B)と、を重合させて生成されるポリアミドイミド成分が有機溶媒中に含有されている、ポリアミドイミド塗料。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミドイミド塗料及び絶縁電線に関する。
絶縁電線は、例えば導体の外周を被覆するように設けられた絶縁被覆層を備えている。絶縁被覆層を形成する塗料として、例えば、ポリアミドイミド樹脂が有機溶媒中に溶解されたポリアミドイミド塗料が用いられている。絶縁被覆層は、導体の外周に塗布したポリアミドイミド塗料を焼付により加熱して有機溶媒を揮発させ、ポリアミドイミド樹脂とすることで形成される。
ポリアミドイミド塗料(以下、単に「塗料」ともいう)を用いて絶縁被覆層を形成する場合、塗料を塗布する工程と、塗料を焼き付ける工程とを、絶縁被覆層が所定の厚さとなるまで複数回繰り返して行う。例えば、厚さ35μmの絶縁被覆層を形成する場合、導体の外周に塗料を塗布して焼き付けることで厚さ5μmの絶縁被覆層を形成し、この塗布・焼付の操作を、厚さが35μmとなるまで、複数回繰り返す。
絶縁被覆層を効率的に形成する観点から、塗布・焼付の1回の操作で得られる絶縁被覆層の厚さを大きくして、塗布・焼付を繰り返す回数を減らすことが望まれている。そのため、塗料には、絶縁被覆層を厚く形成できるように、ポリアミドイミド樹脂(樹脂成分)を高濃度で含有することが求められている。
しかしながら、樹脂成分の濃度が高くなると、塗料の粘度が高くなってしまうため、塗料の塗布作業性が低下してしまう。そのため、樹脂成分の濃度を高くするとしても限度がある。
そこで、塗料の粘度を低く維持しつつ、ポリアミドイミド樹脂の濃度を高くする方法として、末端封止剤(ブロック剤)を用いることによりポリアミドイミド樹脂の分子鎖の末端を封止する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、カプロラクタム化合物の存在下で酸成分とイソシアネート成分とを反応させてポリアミドイミド樹脂を合成する方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献1では、ブロック剤によりポリアミドイミド樹脂の分子量を低く調整している。特許文献2では、イソシアネートの反応を制御してポリアミドイミド樹脂の分子量を低く調整している。特許文献1および2によれば、ポリアミドイミド樹脂の分子量を低く調整することによって、ポリアミドイミド樹脂の有機溶媒に対する溶解性を向上させ、低粘度かつ高濃度の塗料を実現している。
特開2008−16266号公報 特開2009−149757号公報
しかしながら、特許文献1〜2では、塗料の粘度を低く維持しつつ、樹脂成分の濃度を高くできるものの、塗料を焼き付けたときに得られるポリアミドイミド樹脂は、分子量が低く、耐溶剤性が低いといった問題がある。そのため、上述の塗料で形成されるポリアミドイミド樹脂からなる絶縁被覆層は、ワニスなどに含浸させたときに、ひび割れてしまうことがある。
そこで、本発明は、上記課題を解決し、樹脂成分の濃度が高く、かつ低粘度であり、耐溶剤性に優れるポリアミドイミド樹脂を形成できるポリアミドイミド塗料、および絶縁電線を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、
3価以上の多価カルボン酸無水物(a1)、3価以上の多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)および3価以上の多価カルボン酸(a3)を含む酸成分(A)と、ジイソシアネート成分(B)と、を重合させて生成されるポリアミドイミド成分が有機溶媒中に含有されている、ポリアミドイミド塗料が提供される。
本発明の他の態様によれば、
3価以上の多価カルボン酸無水物(a1)、3価以上の多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)および3価以上の多価カルボン酸(a3)を含む酸成分(A)と、ジイソシアネート成分(B)と、を重合させて生成されるポリアミドイミド樹脂で形成される絶縁被覆層を備える、絶縁電線が提供される。
本発明によれば、樹脂成分の濃度が高く、かつ低粘度であり、耐溶剤性に優れるポリアミドイミド樹脂を形成できるポリアミドイミド塗料、および絶縁電線が得られる。
<本発明の一実施形態>
以下、本発明に係る一実施形態について説明する。
(1)ポリアミドイミド成分
ポリアミドイミド成分(いわゆるポリアミドイミド前駆体)は、有機溶媒に溶解させることでポリアミドイミド塗料(以下、単に「塗料」ともいう)に形成される。ポリアミドイミド成分は塗料の焼付(加熱)によりポリアミドイミド樹脂となる。ポリアミドイミド成分は、酸成分(A)とジイソシアネート成分(B)とを重合させることで得られる。以下、各成分について説明する。
[酸成分(A)]
本実施形態の酸成分(A)は、3価以上の多価カルボン酸無水物(a1)(以下では、単に「多価カルボン酸無水物(a1)」ともいう)、3価以上の多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)(以下では、単に「ハーフエステル体(a2)」ともいう)と、3価以上の多価カルボン酸(a3)(以下では、単に「多価カルボン酸(a3)」ともいう)と、を含んでいる。
(多価カルボン酸無水物(a1))
多価カルボン酸無水物(a1)としては、芳香族系の多価カルボン酸無水物であれば、特に限定されない。例えば3価のトリカルボン酸無水物や4価のテトラカルボン酸二無水物などを用いることができる。ポリアミドイミド成分を重合するときの反応性の観点からは、トリカルボン酸無水物を用いるとよい。トリカルボン酸無水物としては、例えば、トリメリット酸無水物、2−(3,4−ジカルボキシフェニル)―2−(3−カルボキシフェニル)プロパン無水物、(3,4−ジカルボキシフェニル)(3−カルボキシフェニル)メタン無水物、(3,4−ジカルボキシフェニル)(3−カルボキシフェニル)エーテル無水物、3,3’,4−トリカルボキシベンゾフェノン無水物、1,2,4−ブタントリカルボン酸無水物、2,3,5−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸無水物、2,2’,3−ビフェニルトリカルボン酸無水物の1種又は2種以上を用いることができる。
(ハーフエステル体(a2))
ハーフエステル体(a2)は、3価以上の多価カルボン酸無水物をエステル化することで生成される誘導体である。例えば、多価カルボン酸無水物にアルコール類又はフェノール類を反応させて生成される誘導体である。具体的には、多価カルボン酸無水物は少なくとも1つの無水物基を有しており、ハーフエステル体(a2)は、多価カルボン酸無水物の有する無水物基がアルコール類又はフェノール類と反応して(ハーフエステル化して)開環するとともに、カルボキシル基の一部がアルコール類又はフェノール類により封止されている化合物である。なお、ハーフエステル体(a2)に誘導される多価カルボン酸無水物としては、上述のトリカルボン酸無水物やテトラカルボン酸二無水物などを用いることができる。
多価カルボン酸無水物と反応可能なアルコール類やフェノール類としては、ポリアミドイミド成分を重合するときの反応性、重合した後のポリアミドイミド樹脂の溶解性、またはアミック酸エステルのイミド化の効率などを大きく妨げないものであれば、特に限定されない。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノールを用いることができる。フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノールを用いることができる。
ハーフエステル体(a2)が、例えばトリカルボン酸無水物のハーフエステル体である場合、下記の一般式(1)で示される。
Figure 2015214602
ただし、式中、Rは、アルコール類またはフェノール類に由来する1価の置換基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基である。Rは、トリカルボン酸無水物に由来する3価の有機基である。
ハーフエステル体(a2)は、一般式(1)に示すように、カルボキシル基の一部がアルコール類又はフェノール類によりエステル化されて封止されている。そのため、ハーフエステル体(a2)は、ジイソシアネート成分(B)と重合させるときに、ジイソシアネート成分(B)との間でイミド閉環構造を形成しない。つまり、ハーフエステル体(a2)を用いてポリアミドイミド成分を重合することで、ポリアミドイミド成分におけるイミド閉環構造の割合(イミド基の濃度)を低減することができる。イミド閉環構造がポリアミドイミド成分の有機溶媒に対する溶解性を低下させてしまうことから、ハーフエステル体(a2)を重合することによって、ポリアミドイミド成分の溶解性を向上させることができる。
ハーフエステル体(a2)は、好ましくは、トリカルボン酸無類物であるトリメリット酸無水物にアルコール類またはフェノール類を反応させた誘導体であり、下記の一般式(2)で示される誘導体である。
Figure 2015214602
上述の一般式(2)で示されるハーフエステル体(a2)は、具体的には、下記の一般式(3−1)〜(3−3)で示される。
Figure 2015214602
(多価カルボン酸(a3))
3価以上の多価カルボン酸(a3)は、3つ以上のカルボキシル基を有している。多価カルボン酸(a3)は、ジイソシアネート成分(B)と反応することで、ポリアミドイミド成分の分子鎖中に3次元構造(分岐構造)を導入することができる。3次元構造を有するポリアミドイミド成分は、焼き付けたときに、分子量が高く、緻密な3次元構造を有するポリアミドイミド樹脂となる。したがって、多価カルボン酸(a3)を用いてポリアミドイミド成分を重合させることによって、焼き付けたときに得られるポリアミドイミド樹脂の耐溶剤性を向上させることができる。
3価以上の多価カルボン酸(a3)としては、芳香族系の多価カルボン酸であれば特に限定されない。例えば、3価のトリカルボン酸や4価のテトラカルボン酸を用いることができる。ポリアミドイミド成分を重合するときの反応性の観点からは、トリカルボン酸を用いるとよい。トリカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、2−(3,4−ジカルボキシフェニル)―2−(3−カルボキシフェニル)プロパン、(3,4−ジカルボキシフェニル)(3−カルボキシフェニル)メタン、(3,4−ジカルボキシフェニル)(3−カルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4−トリカルボキシベンゾフェノン、1,2,4−ブタントリカルボン酸、2,3,5−ナフタレントリカルボン酸、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,2’,3−ビフェニルトリカルボンの1種又は2種以上を用いることができる。
(その他の酸成分)
酸成分(A)には、3価以上の多価カルボン酸無水物(a1)、ハーフエステル体(a2)および多価カルボン酸(a3)以外に、フタル酸(a4)が含まれているとよい。フタル酸(a4)としては、例えば、メタフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、または、これらの誘導体を用いることができる。なお、上述の2種以上のフタル酸を併用してもよい。
[ジイソシアネート成分(B)]
ジイソシアネート成分(B)としては、例えば、芳香族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートの異性体や多量体を用いることができる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,2−ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル]プロパン(BIPP)、ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル]スルホン(BIPS)、ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル]エーテル(BIPE)、フルオレンジイソシアネート(FDI)、4,4’−ビス(4−イソシアネートフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−イソシアネートフェノキシ)ベンゼン、又はこれらの異性体の1種又は2種以上を用いることができる。
ジイソシアネート成分(B)には、必要に応じて、例えば、脂肪族ジイソシアネート類、上述の芳香族ジイソシアネートを水添して生成した脂環式ジイソシアネート類、脂肪族ジイソシアネート類や脂環式ジイソシアネート類の異性体が含まれていてもよい。脂肪族ジイソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いることができる。
[分子構造]
ポリアミドイミド成分は、酸成分(A)とジイソシアネート成分(B)とを重合させることで、分子鎖中に、多価カルボン酸無水物(a1)およびジイソシアネート成分(B)に由来する繰り返し単位(I)と、ハーフエステル体(a2)およびジイソシアネート成分(B)に由来する繰り返し単位(II)と、多価カルボン酸(a3)およびジイソシアネート成分(B)に由来する繰り返し単位(III)と、を有している。以下、繰り返し単位(I)〜(III)のそれぞれについて説明する。
(繰り返し単位(I))
繰り返し単位(I)は、多価カルボン酸無水物(a1)とジイソシアネート成分(B)との重合により得られ、例えば、多価カルボン酸無水物(a1)が3価のトリカルボン酸無水物である場合、下記の一般式(4)で示される。
Figure 2015214602
ただし、式中、Rは、トリカルボン酸無水物に由来する3価の有機基である。Rはジイソシアネートに由来する2価の有機基である。
繰り返し単位(I)は、多価カルボン酸無水物(a1)が重合されることで、構造中にイミド閉環構造を有している。繰り返し単位(I)は、好ましくは、多価カルボン酸無水物(a1)としてトリカルボン酸無水物が重合されており、下記の一般式(5)で示される。より好ましくは、多価カルボン酸無水物(a1)としてトリメリット酸無水物が重合されており、下記の一般式(6)で示される。
Figure 2015214602
Figure 2015214602
(繰り返し単位(II))
繰り返し単位(II)は、ハーフエステル体(a2)およびジイソシアネート成分(B)の重合により得られ、アミック酸エステル構造を有している。例えば、ハーフエステル体(a2)が3価のトリカルボン酸無水物のハーフエステル体である場合、繰り返し単位(II)は、下記の一般式(7)で示される。
Figure 2015214602
ただし、式中、Rは1価の有機基である。Rはトリカルボン酸無水物のハーフエステル体に由来する3価の有機基である。Rはジイソシアネートに由来する2価の有機基である。
繰り返し単位(II)は、一般式(7)に示すように、ハーフエステル体(a2)を用いて重合されることによって、カルボキシル基の一部がアルコール類又はフェノール類によりエステル化されて封止されている。このような繰り返し単位(II)をポリアミドイミド成分の分子鎖中に導入することで、一般式(4)に示すイミド閉環構造を有する繰り返し単位(I)の割合を低減し、ポリアミドイミド成分におけるイミド閉環構造の割合(イミド基の濃度)を低減できる。これにより、ポリアミドイミド成分の有機溶媒に対する溶解性を向上できる。その結果、塗料の粘度を低く抑制しつつ、塗料中にポリアミドイミド成分を高濃度に含有させることができる。なお、詳細を後述するように、塗料を焼き付けた際、繰り返し単位(II)では、加熱によりイミド閉環構造が形成されることになる。
繰り返し単位(II)は、好ましくは、ハーフエステル体(a2)としてトリカルボン酸無水物の誘導体が重合されており、下記の一般式(8)で示される。より好ましくは、ハーフエステル体(a2)としてトリメリット酸無水物の誘導体が重合されており、下記の一般式(9−1)または(9−2)で示される。
Figure 2015214602
Figure 2015214602
(繰り返し単位(III))
繰り返し単位(III)は、多価カルボン酸(a3)とジイソシアネート成分(B)との重合により得られ、例えば、多価カルボン酸(a3)が3価のトリカルボン酸である場合、下記の一般式(10)で示される。
Figure 2015214602
ただし、式中、Rはトリカルボン酸に由来する3価の有機基である。
繰り返し単位(III)は、一般式(10)に示すように、多価カルボン酸(a3)としてトリカルボン酸を用いて重合されているので、分岐構造を有している。分岐構造を有する繰り返し単位(III)をポリアミドイミド成分の分子鎖中に導入することにより、ポリアミドイミド成分の分子鎖を3次元構造に形成することができる。
繰り返し単位(III)は、好ましくは、多価カルボン酸(a3)としてトリメリット酸が重合されており、下記の一般式(11)で示される。
Figure 2015214602
[配合量]
ポリアミドイミド成分においては、酸成分(A)に占めるハーフエステル体(a2)及び多価カルボン酸(a3)の割合を変更することにより、ポリアミドイミド成分の分子鎖に導入される繰り返し単位(II)および繰り返し単位(III)の割合を調整することができる。これにより、ポリアミドイミド成分の溶解性、および塗料を焼き付けて得られるポリアミドイミド樹脂の耐溶剤性を調整することができる。溶解性および耐溶剤性を両立する観点からは、酸成分(A)に対するハーフエステル体(a2)及び多価カルボン酸(a3)の割合が5%以上20%以下であるとよい。例えば、酸成分(A)にフタル酸(a4)が含まれる場合、(a1)と(a2)と(a3)と(a4)との合計に対する(a2)および(a3)の合計の割合を5%以上20%以下とするとよい。なお、割合はモル比率から算出される。
ポリアミドイミド成分においては、ハーフエステル体(a2)と多価カルボン酸(a3)との配合比を変更することにより、分子鎖に導入される繰り返し単位(II)と繰り返し単位(III)との比率を調整することができる。これにより、ポリアミドイミド成分の溶解性とポリアミドイミド樹脂の耐溶剤性とのバランスを調整することができる。具体的には、ハーフエステル体(a2)と多価カルボン酸(a3)との配合比がモル比率で20:80〜60:40であるとよい。これにより、塗料の粘度を低くしつつ、ポリアミドイミド成分を高濃度で含有させると共に、塗料を用いて形成されるポリアミドイミド樹脂の耐溶剤性を向上させることができる。
ハーフエステル体(a2)の配合比がモル比率で20%未満であると、ハーフエステル体(a2)の含有量が少なくなるため、ハーフエステル体(a2)に由来する繰り返し単位(II)の割合が小さくなり、ポリアミドイミド成分に導入されるイミド閉環構造の割合を十分に低減できなくなる。そのため、ポリアミドイミド成分の溶解性を向上させにくくなる。また、多価カルボン酸(a3)の含有量が多くなるため、多価カルボン酸(a3)に由来する繰り返し単位(III)の割合が大きくなり、ポリアミドイミド成分に導入される3次元構造の密度が高くなりすぎてしまう。そのため、ポリアミドイミド成分の分子量が高くなってしまい、塗料の粘度がより高くなってしまう。ハーフエステル体(a2)の配合比がモル比率で60%を超えると、多価カルボン酸(a3)の含有量が少なくなるため、多価カルボン酸(a3)に由来する繰り返し単位(III)の割合が少なくなり、ポリアミドイミド成分に導入される3次元構造の数が少なくなってしまう。したがって、焼付により得られるポリアミドイミド樹脂の耐溶剤性が低下してしまう。
酸成分(A)とジイソシアネート成分(B)との配合比は、ポリアミドイミド樹脂を良好に重合させる観点から、同程度であるとよい。好ましくはジイソシアネート成分(B)が多い方が良い。例えば、酸成分(A)とジイソシアネート成分(B)との配合比は、モル比でA:B=100:100〜105:100であるとよく、A:B=102:100であるとよりよい。
(2)ポリアミドイミド塗料
ポリアミドイミド塗料は、上述のポリアミドイミド成分が有機溶媒に溶解されたものである。ポリアミドイミド成分によれば、有機溶媒に対する溶解性に優れているので、塗料の粘度を低く維持しつつ、有機溶媒に対して高濃度で含有させることができる。つまり、ポリアミドイミド成分によれば、高濃度かつ低粘度の塗料が得られる。具体的には、ポリアミドイミド成分の濃度を33%以上、好ましくは35%以上とすることができる。そして、このような高い濃度とした場合であっても、塗料の30℃での粘度を3000mPa・s以下とすることができる。
なお、有機溶媒として、低沸点の溶媒が用いられるとよい。これにより、後述の絶縁電線が備える絶縁被覆層を形成する際、例えば加熱等で有機溶媒を容易に揮発させることができる。有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、クレゾール、アセトン、トラヒドロフラン、1,4−ジオキサンを用いることができる。
(3)ポリアミドイミド塗料の製造方法
次に、本実施形態にかかるポリアミドイミド塗料の製造方法について説明する。
(酸成分生成工程)
まず、有機溶媒中に、3価以上の多価カルボン酸無水物(a1)として例えばトリメリット酸無水物を添加する。そして、有機溶媒中に、アルコール類として例えば所定量のメタノールと、所定量の水とを同時に添加し、混合する。これにより、トリメリット酸無水物にメタノールを反応させることで、ハーフエステル体(a2)として例えばトリメリット酸無水物のハーフエステル体を生成する。また同時に、トリメリット酸無水物に水を反応させることで、多価カルボン酸(a3)として例えばトリメリット酸を生成する。なお、有機溶媒中には、メタノールおよび水と反応しなかったトリメリット酸無水物が残存している。つまり、有機溶媒中には、多価カルボン酸無水物(a1)、ハーフエステル体(a2)および多価カルボン酸(a3)を含む酸成分(A)が含有されている。
なお、メタノールおよび水の添加量は、生成されるハーフエステル体(a2)及び多価カルボン酸(a3)が酸成分(A)に対して5%以上20%以下の割合となるように調整する。また、ハーフエステル体(a2)と多価カルボン酸(a3)との配合率がモル比率で80:20〜60:40となるように調整する。
また、メタノールとトリメリット酸無水物との反応を、所定温度の所定雰囲気中で行うとよい。例えば、メタノール及び水の添加を、所定温度(例えば室温〜100℃程度、このましくは沸点以下)の不活性ガス(例えば窒素(N)ガス)雰囲気中で行うとよい。また、メタノール及び水の添加は、必要に応じて還流しながら行うとよい。
(重合工程)
有機溶媒中にメタノールと水とを同時に添加して所定時間が経過したら、例えば不活性ガス雰囲気中で、酸成分(A)を含む有機溶媒中にジイソシアネート成分(B)を添加する。これにより、酸成分(A)とジイソシアネート成分(B)とを重合させて、ポリアミドイミド成分を重合する。具体的には、酸成分(A)に含まれる多価カルボン酸無水物(a1)、ハーフエステル体(a2)および多価カルボン酸(a3)のそれぞれと、ジイソシアネート成分(B)とを重合させて、例えば一般式(4)、一般式(7)、一般式(10)にそれぞれ示す繰り返し単位(I)〜(III)を有するポリアミドイミド成分を重合する。これにより、重合されたポリアミドイミド成分が有機溶媒に溶解したポリアミドイミド塗料を得る。
なお、酸成分(A)としてフタル酸(a4)(例えばテレフタル酸)を添加する際は、ジイソシアネート成分(B)と同時に添加する。
酸成分(A)とジイソシアネート成分(B)とを重合させる際、加熱部により所定温度に有機溶媒を加熱するとよい。例えば、有機溶媒の温度が100℃〜180℃程度となるように、加熱部により有機溶媒を加熱するとよい。有機溶媒の温度が120℃〜140℃程度となるように、加熱部により有機溶媒を加熱するとよりよい。これにより、急激な重合反応の進行を抑制できるとともに、ハーフエステル体(a2)が加熱されることで生じるアルコール類又はフェノール類の脱離や、酸無水物化を抑制できる。また、時間をかけて有機溶媒を所定温度まで昇温させるとよりよい。これにより、急激な重合反応の進行をより抑制できるとともに、ハーフエステル体(a2)が加熱されることで生じるアルコール類又はフェノール類の脱離や、酸無水物化をより抑制できる。
有機溶媒中にジイソシアネート成分(B)を添加した後、所定時間が経過したら、末端封止剤を添加して、酸成分(A)とジイソシアネート成分(B)との重合を停止させるとともに、加熱部による有機溶媒の加熱を停止する。末端封止剤として、例えばアルコール、アミン類、カルボン酸類を添加するとよい。これにより、ポリアミドイミド成分の分子鎖の長さが長くなりすぎることを抑制できる。つまり、ポリアミドイミド成分の分子量が高くなり、塗料の粘度が高くなることを抑制できる。
(4)ポリアミドイミド樹脂
ポリアミドイミド樹脂は、上述のポリアミドイミド成分を含む塗料を焼付により加熱することで得られる。塗料が加熱されることで、塗料中の有機溶媒が揮発する。有機溶媒の揮発と併行して、ポリアミドイミド成分が加熱されることで、ポリアミドイミド成分に結合された末端封止剤が脱離する。これにより、ポリアミドイミド成分の分子鎖末端同士が反応し始め、再び重合が開始される。このとき、ポリアミドイミド成分は、多価カルボン酸(a3)に由来する3次元構造の繰り返し単位(III)を有するため、塗料中での反応が進行していない場合でも、ポリアミドイミド成分同士が3次元的に(例えば網目のように)重合されていくと考えられる。その結果、分子構造として緻密な3次元構造を有するポリアミドイミド樹脂が形成されることになる。しかも、このポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド成分の分子鎖同士が重合されて分子鎖が伸長することによって、高い分子量を有する。したがって、ポリアミドイミド樹脂は、耐溶剤性および機械的特性(伸び性など)に優れている。
また、ポリアミドイミド成分が加熱されることで、ポリアミドイミド成分に導入されたハーフエステル体(a2)に由来する繰り返し単位(II)がイミド化する。具体的には、繰り返し単位(II)において、開環したカルボキシル基からアルコール類又はフェノール類が脱離する。これにより、カルボキシル基が閉環することでイミド閉環構造が形成される。その結果、一般式(4)に示すような、多価カルボン酸無水物(a1)に由来する繰り返し単位(I)が形成される。つまり、一般式(7)に示す繰り返し単位(II)は、加熱によりイミド化することで、一般式(4)に示す繰り返し単位(I)となる。したがって、繰り返し単位(I)〜(III)を有するポリアミドイミド成分は、加熱によりイミド化することで、繰り返し単位(I)および(III)を有するポリアミドイミド樹脂となる。ポリアミドイミド樹脂は、イミド閉環構造を有する繰り返し単位(I)が導入されているため、強固な分子構造を有しており、伸び性などの機械的特性に優れることになる。
(5)絶縁電線の構成
続いて、上述のポリアミドイミド塗料を用いて形成された絶縁被覆層を備える絶縁電線について説明する。
絶縁電線は、導体を備えている。導体として、銅線、銅合金線、銀線等の金属線を用いることができる。金属線は、幅方向における断面形状が例えば円形状や矩形状に形成されている。また、導体として、上述の金属線を撚り合わせた撚り線を用いてもよい。なお、導体の直径は、絶縁電線の用途に応じて適宜変更できる。
導体の周囲を囲うように、所定厚さ(例えば35μm)の絶縁被覆層が設けられている。つまり、絶縁被覆層は、導体の外周を被覆するように設けられている。
絶縁被覆層は、上述の塗料を導体の外周に塗布する塗布工程と、ポリアミドイミド樹脂を生成する焼付け工程と、を行うことで形成される。焼付け工程では、導体の外周に塗布した塗料を加熱して焼き付けることで、ポリアミドイミド樹脂からなる絶縁被覆層を形成する。なお、絶縁被覆層が所定厚さ(例えば35μm)となるまで、塗布工程と、焼付け工程と、をそれぞれ、所定回数繰り返して行う。
(6)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
(a)本実施形態によれば、ポリアミドイミド塗料は、多価カルボン酸無水物(a1)、ハーフエステル体(a2)及び多価カルボン酸(a3)を含有する酸成分(A)と、ジイソシアネート成分(B)と、を重合させて生成されたポリアミドイミド成分が有機溶媒に溶解されて形成されている。
ハーフエステル体(a2)は、カルボキシル基の一部がアルコール類又はフェノール類によりエステル化されて封止されているので、イソシアネート成分(B)と反応しても、直接イミド閉環構造をとらない。そのため、ハーフエステル体(a2)を用いて重合することで、ポリアミドイミド成分の分子鎖におけるイミド閉環構造の割合(イミド基の濃度)を低減できる。
多価カルボン酸(a3)は分岐構造を有している。この多価カルボン酸(a3)を用いて重合することで、ポリアミドイミド成分の分子鎖中に多価カルボン酸(a3)に由来する3次元構造を導入できる。また、分岐構造を有する多価カルボン酸(a3)は、立体障害によりジイソシアネート成分(B)と重合しにくく、一部は3次元構造を形成していないことも考えられるが、ポリアミドイミド成分の高分子量化を抑制できるため、高濃度化を可能とする。
ハーフエステル体(a2)および多価カルボン酸(a3)によれば、ポリアミドイミド成分におけるイミド基の濃度を低減し、ポリアミドイミド成分の有機溶媒に対する溶解性を高くできる。したがって、本実施形態のポリアミドイミド成分によれば、塗料の粘度を低く維持しつつ、塗料中に高濃度で含有させることができる。
これに対して、多価カルボン酸無水物(a1)およびジイソシアネート成分(B)のみを重合させて生成されたポリアミドイミド成分には、多価カルボン酸無水物(a1)とジイソシアネート成分(B)との重合により得られる繰り返し単位のみが導入されることになる。この繰り返し単位はイミド閉環構造を有するため、ポリアミドイミド成分におけるイミド基の濃度が高くなり、ポリアミドイミド成分の有機溶媒に対する溶解性が低下してしまう。そのため、塗料の粘度を低く維持しつつ、塗料中にポリアミドイミド成分を高濃度で含有させることが困難となる。
(b)また、本実施形態では、多価カルボン酸(a3)を重合することで、ポリアミドイミド成分の分子鎖中には、多価カルボン酸(a3)に由来する3次元構造が導入されている。このようなポリアミドイミド成分は、焼付により加熱されたときに3次元的に(例えば網目のように)重合されるため、分子構造として緻密な3次元構造を有するポリアミドイミド樹脂になる。しかも、ポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド成分同士が重合することで高分子量化されており、高い分子量を有している。したがって、本実施形態のポリアミドイミド塗料によれば、加熱することで、耐溶剤性に優れるポリアミドイミド樹脂を形成することができる。
これに対して、多価カルボン酸(a3)を用いずに、多価カルボン酸無水物(a1)およびジイソシアネート成分(B)のみを重合させて生成されたポリアミドイミド成分は、分子鎖が2次元構造(線状構造)となる。このようなポリアミドイミド成分を加熱すると、分子構造として2次元構造を有するポリアミドイミド樹脂が形成される。このようなポリアミドイミド樹脂では、分子鎖同士が重合して分子量が大きくなったとしても、分子構造が弱いため、耐溶剤性が低くなってしまう。
(c)本実施形態では、ポリアミドイミド塗料の粘度を低くしつつ、ポリアミドイミド成分の濃度を高くできる。例えば、ポリアミドイミド塗料の温度が30℃である場合、ポリアミドイミド成分の濃度を33%以上、好ましくは35%以上と高くても、ポリアミドイミド塗料の粘度は3000mPa・s以下と低くなる。
(d)また、酸成分(A)に対するハーフエステル体(a2)および多価カルボン酸(a3)の割合を5%以上20%以下とすることで、ポリアミドイミド成分の溶解性、およびポリアミドイミド塗料を焼き付けて得られるポリアミドイミド樹脂の耐溶剤性を両立することができる。
(e)また、ハーフエステル体(a2)と多価カルボン酸(a3)との配合比を、モル比率で20:80〜60:40とすることで、ポリアミドイミド樹脂の耐溶剤性を向上させることができる。
(f)酸成分(A)がフタル酸(a4)を含有することで、ポリアミドイミド成分の分子鎖中に、2次元構造(線状部分)を導入することができる。したがって、ポリアミドイミド成分の分子構造が緻密になりすぎることを抑制できる。その結果、ポリアミドイミド成分の分子量が高くなってしまい、ポリアミドイミド塗料の粘度が高くなってしまうことをより抑制できる。また、焼付により得られるポリアミドイミド樹脂の伸び等の機械的特性を向上できる。
(g)また、本実施形態では、ポリアミドイミド塗料を導体の外周に塗布して焼き付けることにより、耐溶剤性に優れる絶縁被覆層を備える絶縁電線を形成できる。一般に、絶縁電線を用いてコイルを形成する場合、絶縁電線をコイル状に巻回した後、コイル状の絶縁電線をワニスに含浸させて、ワニスを加熱硬化させる。絶縁電線が巻回されることで、絶縁電線の絶縁被覆層には歪みが加わっているため、絶縁電線をワニスに含浸させたときに、絶縁被覆層にワニスが浸食し、その侵食箇所からひび割れ(クレーズ)が発生することがある。この点、本実施形態では、絶縁被覆層を形成するポリアミドイミド樹脂の分子構造を3次元構造として、絶縁被覆層の耐溶剤性を向上させている。これにより、ワニスが絶縁被覆層に侵食することを抑制し、絶縁被覆層にひび割れが生じることを抑制することができる。つまり、絶縁被覆層のクレージング特性を向上させることができる。
(h)また、絶縁被覆層のクレージング特性を向上させることで、ポリアミドイミド樹脂が本来有しているべき耐熱性や、可撓性、耐加水分解性の低下を抑制できる。
(i)また、ポリアミドイミド塗料の粘度を低く維持することで、例えば導体の外周を被覆するようにポリアミドイミド塗料を均一に塗布することができる。したがって、絶縁被覆層の外観を良好なものにできる。
(j)また、ポリアミドイミド塗料はポリアミドイミド成分を高濃度で含有するため、ポリアミドイミド塗料を例えば導体の外周上に塗布する際の塗布作業性を向上させることができる。具体的には、ポリアミドイミド塗料の塗布・焼付の1回の操作で絶縁被覆層を厚く形成できるので、絶縁被覆層が所定の厚さとなるまで、塗布・焼付の操作を繰り返す回数を減らすことができる。つまり、絶縁電線を効率的に生産することができる。
(k)3価以上の多価カルボン酸無水物(a1)を添加した有機溶媒中に、アルコール類又はフェノール類と水とを同時に添加することで、3価以上の多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)と3価以上の多価カルボン酸(a3)と、を同時に生成している。これにより、ポリアミドイミド塗料を低コストで容易に形成できる。
(l)また、3価以上の多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)と3価以上の多価カルボン酸(a3)とを含む酸成分(A)に、ジイソシアネート成分(B)を重合させることで、溶解性の高いポリアミドイミド成分を重合している。つまり、本実施形態では、例えばトリカルボン酸クロライドのようなハロゲン化物を使用することなく、溶解性の高いポリアミドイミド成分を含むポリアミドイミド塗料を形成できる。したがって、ポリアミドイミド塗料中にハロゲン成分が含有されないため、ハロゲン成分をポリアミドイミド塗料中からハロゲン成分を除去する水洗浄等の煩雑な精製工程が不要である。その結果、溶解性の高いポリアミドイミド成分を含むポリアミドイミド塗料を、より容易に、また低コストで形成できる。
(本発明の他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
上述の実施形態では、有機溶媒中に水とアルコール類又はフェノール類とを同時に添加して、ハーフエステル体(a2)と多価カルボン酸(a3)とを有機溶媒中で同時に生成しているが、これに限定されない。例えば、まずハーフエステル体(a2)を生成した後、多価カルボン酸(a3)を生成してもよい。また、ハーフエステル体(a2)と、多価カルボン酸(a3)と、をそれぞれ別々に生成した後、ハーフエステル体(a2)と多価カルボン酸(a3)と、多価カルボン酸無水物(a1)と、をそれぞれ有機溶媒中に添加してもよい。このとき、ハーフエステル体(a2)の原料物質(つまり多価カルボン酸無水物)と、3価以上の多価カルボン酸(a3)の原料物質(つまり多価カルボン酸無水物)と、はそれぞれ、異なる物質であってもよい。
上述の実施形態では、ジイソシアネート成分(B)を添加して所定時間が経過した後、末端封止剤を有機溶媒中に添加することで、酸成分(A)とジイソシアネート成分(B)との重合を停止させたが、これに限定されない。例えば、ジイソシアネート成分(B)を添加して所定時間が経過した後、加熱部による加熱を停止し、ポリアミドイミド塗料を冷却手段により冷却することで、酸成分(A)とジイソシアネート成分(B)との重合を停止させてもよい。また、末端封止剤を添加するとともに、ポリアミドイミド塗料を冷却して重合を停止させてもよい。
上述の実施形態では、多価カルボン酸無水物(a1)としてトリカルボン酸無水物を、ハーフエステル体(a2)としてトリカルボン酸無水物にアルコール類を反応させた誘導体を、3価以上の多価カルボン酸(a3)としてトリカルボン酸を、用いる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、3価以上の多価カルボン酸無水物(a1)としてテトラカルボン酸二無水物を用い、ハーフエステル体(a2)を生成する3価以上の多価カルボン酸無水物としてテトラカルボン酸二無水物を用い、多価カルボン酸(a3)としてテトラカルボン酸を用いてもよい。テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン酸二無水物(BPADA)、ブタンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物の1種又は2種以上を用いることができる。また、トラカルボン酸二無水物として、上述のテトラカルボン酸二無水物に水添して生成した脂環式テトラカルボン酸二無水物類が用いられてもよい。テトラカルボン酸としては、上述のテトラカルボン酸二無水物に水を反応させることで得られるものを用いることができる。
ポリアミドイミド塗料には、このポリアミドイミド塗料により形成される絶縁被覆層の可とう性や絶縁性を向上させる観点から、ブロックイソシアネート、他の多価カルボン酸、エポキシ材料などが添加されていてもよい。また、ポリアミドイミド塗料には、イミド化を促進させるイミド化促進剤、絶縁被覆層が接する導体や他の皮膜との密着性を向上させる密着剤、潤滑剤、無機材料フィラ等が添加されていてもよい。無機材料フィラとして、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛微粒子が用いられる。
また、例えば、ポリアミドイミド塗料には、塗料特性等を損なわない範囲で、ポリエステルイミド塗料、ポリイミド塗料、ポリエステル塗料、不飽和エステル塗料などの他の塗料が混合されていてもよい。
上述の実施形態では、絶縁電線が導体と絶縁被覆層とを備える場合について説明したが、これに限定されない。つまり、絶縁被覆層とは異なる他の皮膜が、導体と絶縁被覆層との間や、絶縁被覆層の外周を囲うように設けられていてもよい。例えば、他の皮膜として、導体や絶縁被覆層との密着性が高い皮膜(密着層)が導体と絶縁被覆層との間に設けられていてもよい。また、密着層は、絶縁被覆層の外周を被覆するように設けられていてもよい。密着層の厚さは、密着性を付与できる厚さで、絶縁電線の可撓性や絶縁性を損なわない厚さであればよい。密着層の厚さは、例えば1μm〜10μmであるとよい。また、他の皮膜として自己融着層が、絶縁被覆層の外周を囲うように設けられていてもよい。
上述の実施形態では、本発明にかかるポリアミドイミド塗料を用いて、絶縁電線を形成する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、所定の基材に本発明にかかるポリアミドイミド塗料を用いて絶縁皮膜を形成してもよい。基材としては、ポリマ材料、金属材料、ガラス材料、半導体材料等を用いることができる。絶縁皮膜は、基材にポリアミドイミド塗料を塗布した後、加熱部により所定温度(例えば100℃〜300℃程度)にポリアミドイミド塗料を加熱して焼き付けることで形成できる。なお、ポリアミドイミド塗料の塗布方法としては、スピンコート法、バーコート法、ロール印刷法、キャスト法等を用いることができる。
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)ポリアミドイミド塗料の作製
本実施例では、サンプル1〜6の各種のポリアミドイミド塗料を作製した。
(サンプル1)
まず、有機溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1680gをフラスコ内に添加した。続いて、フラスコ内のNMPに、トリメリット酸無水物555.2gを添加して溶解させた。続いて、フラスコ内を窒素雰囲気下としたうえで、NMPにメタノール2.1gと水4.2gとを同時に添加し、60℃で2時間攪拌させた。これにより、トリメリット酸無水物とメタノールとを反応させて、ハーフエステル体(a2)として、トリメリット酸無水物のハーフエステル体を生成した。また、トリメリット酸無水物と水とを反応させて、多価カルボン酸(a3)として、トリメリット酸を生成した。このとき、添加したトリメリット酸無水物の一部は、メタノールおよび水と反応せずに、多価カルボン酸無水物(a1)として残存している。
次に、フラスコ内のNMP中に、ジイソシアネート成分(B)としての4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と、フタル酸(a4)としてのテレフタル酸(TPA)とを添加した。このとき、酸成分(A)とジイソシアネート成分(B)であるMDIとの配合比がモル比でA:B=100:102となるように、MDI及びTPAの添加量を調整した。具体的には、MDIの添加量を819.7gとし、TPAの添加量を53.3gとした。なお、酸成分(A)は、トリメリット酸無水物のハーフエステル体(a2)、トリメリット酸(a2)、トリメリット酸無水物(a3)及びテレフタル酸(a4)である。
MDIとTPAとを添加した後、フラスコ内のNMPの温度が120℃となるように加熱して、NMP中の酸成分(A)と、MDIとを重合させてポリアミドイミド成分を重合した。NMP中にMDIとTPAとを添加した後、所望の粘度に達したら加熱を停止した。そして、NMP中に末端封止剤としてのベンジルアルコールを244.3gと溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を420g添加して、重合反応を停止させ、ポリアミドイミド塗料を作製した。これをサンプル1の塗料とした。
このように生成されたポリアミドイミド成分は、繰り返し単位(I)として下記の一般式(12)で示される繰り返し単位と、繰り返し単位(II)として下記の一般式(13)で示される繰り返し単位と、繰り返し単位(III)として下記の一般式(11)で示される繰り返し単位と、を有している。一般式(12)で示される繰り返し単位は、トリメリット酸無水物とMDIとが重合することで生成されたものである。一般式(13)で示される繰り返し単位は、トリメリット酸無水物のハーフエステル体とMDIとが重合することで生成されたものである。一般式(11)で示される繰り返し単位は、トリメリット酸とMDIとが重合することで生成されたものである。
Figure 2015214602
Figure 2015214602
Figure 2015214602
サンプル1の作製に用いた酸成分(A)およびジイソシアネート成分(B)のモル比率を以下の表1に示す。サンプル1では、多価カルボン酸無水物(a1)とハーフエステル体(a2)と多価カルボン酸(a3)とフタル酸(a4)のモル比率を、80:2:8:10とした。なお、表1では、酸成分(A)の合計が100となるように、(a1)〜(a4)の各成分のモル比率を示している。
Figure 2015214602
(サンプル2〜5)
サンプル2〜5では、メタノールと水との添加量を適宜変更し、表1に示すように、(a1)〜(a3)の各成分のモル比率を変更した以外は、サンプル1と同様にポリアミドイミド塗料を作製した。
(サンプル6)
サンプル6では、表1に示すように、フタル酸(a4)を添加しない以外は、サンプル1〜5と同様にポリアミドイミド塗料を作製した。
(サンプル7)
サンプル7では、有機溶媒として、NMPを1690g、酸成分(A)を生成する原料物質として、トリメリット酸無水物を616.9g、ジイソシアネート成分(B)としてMDIを819.7g用いた。
サンプル7では、まず、フラスコ内にNMP1690gを添加した。そして、フラスコ内のNMPにトリメリット酸無水物とMDIとを添加して溶解させた。その後、フラスコ内のNMPの温度が140℃となるように加熱して、NMP中のトリメリット酸無水物と、MDIとを重合させてポリアミドイミド成分を生成した。そして、所望の粘度に達したら加熱を停止した。そして、NMP中に末端封止剤としてのベンジルアルコールを244.3gと溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を420g添加して、重合反応を停止させ、ポリアミドイミド塗料を作製した。これをサンプル7の塗料とした。サンプル7の塗料に含まれるポリアミドイミド成分は、繰り返し単位(I)として上記の一般式(12)で示される繰り返し単位を有している。
(2)絶縁電線の作製
絶縁電線の作製は以下のように行った。まず、直径が0.8mmである導体の外周上にサンプル1の塗料を塗布した後、公知の焼付け手段により、導体上に塗布した塗料を400℃で90秒間焼付け(加熱)し、絶縁被覆層を形成した。その後、絶縁被覆層上にサンプル1の塗料を塗布する工程と、塗料を焼き付ける焼付け工程と、を、導体上に形成される絶縁被覆層の厚さが35μmとなるまで、所定回数繰り返して、サンプル1の絶縁電線として丸線の絶縁電線を形成した。同様に、サンプル2〜7の塗料を用いて、サンプル2〜7の絶縁電線を作製した。
サンプル1〜6の絶縁電線の絶縁被覆層は、上記の一般式(11)、(12)および(13)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミド成分が加熱されることで、上記の一般式(11)および(12)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂で形成されている。一方、サンプル7の絶縁電線の絶縁被覆層は、上記の一般式(12)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミド成分が加熱されることで、上記の一般式(12)で示される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂で形成されている。
(3)評価方法
サンプル1〜7の各ポリアミドイミド塗料について、粘度およびポリアミドイミド成分の濃度を評価した。また、サンプル1〜7の絶縁電線について、絶縁電線の可撓性、絶縁被覆層の耐溶剤性(クレージング特性)、絶縁被覆層の外観を評価した。
<塗料の粘度の評価>
サンプル1〜7のポリアミドイミド塗料について、E型粘度計を用いて30℃での粘度を測定した。本実施例では、30℃での粘度が3000mPa・s以下であれば、ポリアミドイミド塗料の塗布作業性がよいことを示す。
<ポリアミドイミド成分の濃度の評価>
サンプル1〜7の塗料中のポリアミドイミド成分の濃度は以下のようにして測定した。まず、約1.5gのサンプル1〜7のポリアミドイミド塗料をそれぞれ、200℃のオーブンで2時間加熱して、有機溶媒を揮発させた。有機溶媒等を揮発させて得られたポリアミドイミド樹脂の重量を測定し、以下の式からポリアミドイミド成分の濃度を算出した。なお、本実施例では、ポリアミドイミド成分の濃度が33%以上であれば、高濃度であることを示す。
[ポリアミドイミド成分の濃度(%)]=([得られたポリアミドイミド樹脂の重量]/[加熱前のポリアミドイミド塗料の重量])×100
<可撓性の評価>
サンプル1〜7の各絶縁電線について、以下のように可撓性を評価した。まず、各絶縁電線を20%伸張した。その後、各絶縁電線がそれぞれ備える導体径(d)の1倍〜10倍の直径を有する巻き付け棒に、各JISC3216に準拠した方法で各絶縁電線を巻き付けた。そして、光学顕微鏡で絶縁被覆層を観察し、絶縁被覆層に亀裂、割れなどの欠陥が生じない最小の巻き付け棒の直径を計測した。最小の巻き付け棒の直径が3d以下、好ましくは2d以下であれば、可撓性に優れていることを示す。
<クレージング特性の評価>
絶縁被覆層の耐溶剤性として、クレージング特性を以下のように評価した。まず、サンプル1〜7の各絶縁電線をテーパーコイルに巻きつけ、コイル状試料を作製した。そして、コイル状試料を試験溶剤に1分間浸漬した後、コイル状試料を取り出し、溶剤を拭き取った後に、光学式の粒検出装置と顕微鏡とを用いて、コイル状試料の絶縁被覆層にひび割れ(亀裂)などが生じていないかを観察した。本実施例では、絶縁被覆層の表面にひび割れが確認できない場合を「○」(合格)、絶縁被覆層の表面にひび割れが発生している場合を「×」(不合格)とした。
<外観評価>
サンプル1〜7の各絶縁電線が備える絶縁被覆層について、外観を目視、手触りにて評価した。本実施例では、絶縁被覆層に粒や発泡がなく平滑である場合を「○」(合格)、粒や発泡がある場合を「×」(不合格)とした。
(4)評価結果
サンプル1〜7の塗料では、表1に示すように、30℃での粘度が3000mPa・s以下であり、塗布作業性に優れていることが確認された。また、サンプル1〜7の塗料では、ポリアミドイミド成分の濃度が33%以上であり、高濃度であることが確認された。
サンプル1〜7の絶縁電線では、最小の巻き付け棒の直径がいずれも3d以下であり、可撓性に優れていることが確認された。
サンプル1〜6と、サンプル7と、を比較すると、ハーフエステル体(a2)および多価カルボン酸(a3)を含む酸成分(A)と、MDIと、を重合させて得られるポリアミドイミド塗料では、ポリアミドイミド樹脂からなる絶縁被覆層のクレージング特性がよいことが確認された。これは、サンプル1〜6では、ポリアミドイミド樹脂が上記一般式(11)および(12)で示される繰り返し単位を有し、ポリアミドイミド樹脂の分子構造が3次元構造となっているためと考えられる。一方、サンプル7では、ポリアミドイミド樹脂が上記一般式(12)の繰り返し単位のみを有し、その分子構造が3次元構造となっていないため、耐溶剤性が低くなったものと考えられる。
サンプル1〜5をそれぞれ比較すると、酸成分(A)中に含まれるハーフエステル体(a2)と多価カルボン酸(a3)の量が多くなるほど、ポリアミドイミド塗料の濃度が高くなっていることが確認された。
サンプル1〜5をそれぞれ比較すると、水の添加量が多くなるほど、つまり酸成分(A)中に含まれる多価カルボン酸(a3)の量が多くなるほど、クレージング特性が向上することが確認された。
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
[付記1]
本発明の一態様によれば、
3価以上の多価カルボン酸無水物(a1)、3価以上の多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)および3価以上の多価カルボン酸(a3)を含む酸成分(A)と、ジイソシアネート成分(B)と、を重合させて生成されるポリアミドイミド成分が有機溶媒中に含有されている、ポリアミドイミド塗料が提供される。
[付記2]
付記1のポリアミドイミド塗料であって、好ましくは、
前記酸成分(A)に対する前記多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)および前記多価カルボン酸(a3)の割合が5%以上20%以下である。
[付記3]
付記1又は2のポリアミドイミド塗料であって、好ましくは、
前記多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)と前記多価カルボン酸(a3)とのモル比率が20:80〜60:40である。
[付記4]
付記1ないし3のいずれかのポリアミドイミド塗料であって、好ましくは、
前記多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)は、多価カルボン酸無水物にアルコール類又はフェノール類を反応させて生成された誘導体である。
[付記5]
付記1ないし4のいずれかのポリアミドイミド塗料であって、好ましくは、
前記酸成分(A)はフタル酸(a4)を含む。
[付記6]
付記1ないし5のいずれかのポリアミドイミド塗料であって、好ましくは、
前記ポリアミドイミド成分の濃度が33%以上であり、30℃のときの粘度が3000mPa・s以下である。
[付記7]
本発明の他の態様によれば、
トリカルボン酸無水物(a1)、トリカルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)およびトリカルボン酸(a3)を含む酸成分(A)と、ジイソシアネート成分(B)と、を重合させて生成されるポリアミドイミド成分が有機溶媒中に含有されている、ポリアミドイミド塗料が提供される。
[付記8]
付記7のポリアミドイミド塗料であって、好ましくは、
前記ポリアミドイミド成分は、分子鎖中に、
前記トリカルボン酸無水物(a1)および前記ジイソシアネート成分(B)に由来する下記一般式(4)で示される繰り返し単位(I)と、
前記トリカルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)および前記ジイソシアネート成分(B)に由来する下記一般式(7)で示される繰り返し単位(II)と、
前記トリカルボン酸(a3)および前記ジイソシアネート成分(B)に由来する下記一般式(10)で示される繰り返し単位(III)と、を有する。
Figure 2015214602

(ただし、式中、Rは3価の有機基であり、Rは2価の有機基である。)
Figure 2015214602

(ただし、式中、Rは1価の有機基であり、Rは3価の有機基であり、Rは2価の有機基である。)
Figure 2015214602

(ただし、式中、Rは3価の有機基である。)
[付記9]
本発明の他の態様によれば、
有機溶媒中に3価以上の多価カルボン酸無水物(a1)を添加する工程と、
前記有機溶媒中にアルコール類又はフェノール類を添加して3価以上の多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)を生成する工程と、
前記有機溶媒中に水を添加して3価以上の多価カルボン酸(a3)を生成する工程と、
前記多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)及び前記多価カルボン酸(a3)を含む酸成分(A)が生成された有機溶媒中にジイソシアネート成分(B)を添加し、酸成分(A)とジイソシアネート成分(B)とを重合させてポリアミドイミド成分を生成する工程と、を有する、ポリアミドイミド塗料の製造方法が提供される。
[付記10]
付記9のポリアミドイミド塗料の製造方法であって、好ましくは、
前記有機溶媒中に前記アルコール類又はフェノール類と前記水とを同時に添加し、前記多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)を生成する工程と、前記多価カルボン酸(a3)を生成する工程と、を同時に行う。
[付記11]
本発明のさらに他の態様によれば、
3価以上の多価カルボン酸無水物(a1)、3価以上の多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)および3価以上の多価カルボン酸(a3)を含む酸成分(A)と、ジイソシアネート成分(B)と、を重合させて生成されるポリアミドイミド樹脂で形成される絶縁被覆層を備える、絶縁電線が提供される。

Claims (7)

  1. 3価以上の多価カルボン酸無水物(a1)、3価以上の多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)および3価以上の多価カルボン酸(a3)を含む酸成分(A)と、ジイソシアネート成分(B)と、を重合させて生成されるポリアミドイミド成分が有機溶媒中に含有されている、ポリアミドイミド塗料。
  2. 前記酸成分(A)に対する前記多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)および前記多価カルボン酸(a3)の割合が5%以上20%以下である、請求項1に記載のポリアミドイミド塗料。
  3. 前記多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)と前記多価カルボン酸(a3)とのモル比率が20:80〜60:40である、請求項1又は2に記載のポリアミドイミド塗料。
  4. 前記多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)は、多価カルボン酸無水物にアルコール類又はフェノール類を反応させて生成された誘導体である、請求項1ないし3のいずれかに記載のポリアミドイミド塗料。
  5. 前記酸成分(A)はフタル酸(a4)を含む、請求項1ないし4のいずれかに記載のポリアミドイミド塗料。
  6. 前記ポリアミドイミド成分の濃度が33%以上であり、30℃のときの粘度が3000mPa・s以下である、請求項1ないし5のいずれかに記載のポリアミドイミド塗料。
  7. 3価以上の多価カルボン酸無水物(a1)、3価以上の多価カルボン酸無水物のハーフエステル体(a2)および3価以上の多価カルボン酸(a3)を含む酸成分(A)と、ジイソシアネート成分(B)と、を重合させて生成されるポリアミドイミド樹脂で形成される絶縁被覆層を備える、絶縁電線。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019026769A (ja) * 2017-08-01 2019-02-21 日立化成株式会社 ポリアミドイミド樹脂液及びその製造方法

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