JP6496993B2 - ポリイミド前駆体組成物、ポリイミド前駆体の製造方法、ポリイミド成形体、及びポリイミド成形体の製造方法 - Google Patents

ポリイミド前駆体組成物、ポリイミド前駆体の製造方法、ポリイミド成形体、及びポリイミド成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリイミド前駆体組成物、ポリイミド前駆体の製造方法、ポリイミド成形体、及びポリイミド成形体の製造方法に関する。
ポリイミド樹脂は、高耐久性、耐熱性に優れた特性を有する材料であり、電子材料用途に広く使用されている。
ポリイミド樹脂の成形体を製造する方法として、その前駆体であるポリアミック酸を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の非プロトン系極性溶剤に溶解したポリイミド前駆体組成物を基材上に塗布して、熱処理によって、乾燥・イミド化することでポリイミド成形体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、ポリアミック酸を溶解する溶剤としては、NMPの他、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)などが挙げられる(例えば非特許文献1参照)。
一方、ポリイミド前駆体組成物の製造において、NMP等の非プロトン系極性溶剤中でポリイミド前駆体樹脂を重合し、再沈殿法によりポリイミド前駆体樹脂を取り出した後にアミン塩を作用させて水に溶解させるプロセスを経ることも知られている(例えば、特許文献2〜5参照)。また、重合溶剤の一部を水に置き換える例も知られている(例えば、特許文献6参照)。
また、水溶性アルコール系溶剤化合物、及び/又は水溶性エーテル系溶剤化合物を用いて、具体的には、テトラヒドロフラン(THF)及びメタノールの混合溶剤中、又はTHF及び水の混合溶剤中の反応系に3級アミンを添加することで、析出させないでポリイミド前駆体組成物を得ることが知られている(例えば、特許文献7〜11参照)。
また、ピロメリット酸二無水物を用いて、水を含む溶剤中で重合を行ってポリイミド前駆体組成物を製造することも知られている(例えば特許文献7、12〜13参照)。
米国特許第4238528号公報 特開平08−120077号公報 特開平08−015519号公報 特開2003−13351号公報 特開平08−059832号公報 特開昭59-164328号公報 特開平08−157599号公報 特開2013−144750号公報 特開2013−144751号公報 特開2013−144752号公報 特開2013−67769号公報 特開平10−195295号公報 特開平06−293834号公報
Journal of Polymer Science. Macromolecular Reviews, Vol.11, P164(1976)
本発明の課題は、第1テトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミド前駆体が水性溶剤に溶解しているポリイミド前駆体組成物であって、製膜性に優れたポリイミド前駆体組成物を提供することである。
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
<1>
水を含むと共に、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤および水溶性アルコール系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤を含む第1水性溶剤に、又は、水溶性アルコール系溶剤を含むと共に、水溶性エーテル系溶剤および水溶性ケトン系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤を含む第2水性溶剤に、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有する第1テトラカルボン酸二無水物、および前記第1テトラカルボン酸二無水物以外の第2テトラカルボン酸二無水物であって、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有さない第2テトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との縮重合体からなるポリイミド前駆体が溶解しており、
前記第1水性溶剤において、前記水溶性有機溶剤と前記水との割合(水溶性有機溶剤/水)が、質量比で、95/5乃至50/50の範囲であり、
前記第2水性溶剤において、前記水溶性アルコール系溶剤以外の水溶性有機溶剤と前記水溶性アルコール系溶剤との割合(水溶性アルコール系溶剤以外の水溶性有機溶剤/水溶性アルコール系溶剤)が、質量比で、95/5乃至50/50の範囲である、
ポリイミド前駆体組成物。

前記第1テトラカルボン酸二無水物が、下記一般式(TD11)および下記一般式(TD12)で表されるテトラカルボン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも一種であるに記載のポリイミド前駆体組成物。
(一般式(TD11)および一般式(TD12)中、RTD11、RTD12、RTD13、およびRTD14は、各々独立に、水素原子、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基を示す。)

前記第2テトラカルボン酸二無水物が、一つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を二つ有するテトラカルボン酸二無水物である又はに記載のポリイミド前駆体組成物。

前記テトラカルボン酸二無水物が、前記第1テトラカルボン酸二無水物を40モル%以上95モル%以下で含むのいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。

前記ポリイミド前駆体において、前記ジアミン化合物のモル当量が、前記テトラカルボン酸二無水物のモル当量よりも大きいのいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。

前記ポリイミド前駆体が、末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体を含むのいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。

前記ポリイミド前駆体の数平均分子量が、2000以上であるのいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。

前記第1水性溶剤、又は第2水性溶剤に、前記第2テトラカルボン酸二無水物、および前記ジアミン化合物を添加した後、更に前記第1テトラカルボン酸二無水物を添加して、前記ポリイミド前駆体が生成されているのいずれか1項の記載のポリイミド前駆体組成物。

を含むと共に、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤および水溶性アルコール系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤を含む第1水性溶剤に、又は、水溶性アルコール系溶剤を含むと共に、水溶性エーテル系溶剤および水溶性ケトン系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤を含む第2水性溶剤に、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有する第1テトラカルボン酸二無水物以外の第2テトラカルボン酸二無水物であって、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有さない第2テトラカルボン酸二無水物、およびジアミン化合物を添加した後、前記第1テトラカルボン酸二無水物を添加して、ポリイミド前駆体を生成する工程を有するポリイミド前駆体組成物の製造方法。
10
のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物を加熱処理して成形されたポリイミド成形体。
11
のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物を加熱処理して成形するポリイミド成形体の製造方法。
、又はに係る発明によれば、テトラカルボン酸として、第1テトラカルボン酸二無水物を単独で適用した場合、又は、水性溶剤として、水、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、若しくは水溶性アルコール系溶剤を各々単独で適用した場合に比べ、第1テトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミド前駆体が水性溶剤に溶解しているポリイミド前駆体組成物であって、製膜性に優れたポリイミド前駆体組成物が提供される。
に係る発明によれば、第1テトラカルボン酸二無水物の量が40モル%未満の場合に比べ、機械的強度に優れたポリイミド前駆体組成物が提供される。
に係る発明によれば、ジアミン化合物のモル当量が、テトラカルボン酸二無水物のモル当量よりも小さい場合に比べ、機械的強度に優れたポリイミド成形体の成形を実現するポリイミド前駆体組成物が提供される。
に係る発明によれば、ポリイミド前駆体の全末端にカルボキシル基を有する場合に比べ、機械的強度に優れたポリイミド成形体の成形を実現するポリイミド前駆体組成物が提供される。
に係る発明によれば、ポリイミド前駆体の数平均分子量が2000未満の場合に比べ、機械的強度に優れたポリイミド成形体の成形を実現するポリイミド前駆体組成物が提供される。
に係る発明によれば、水性溶剤に、第1テトラカルボン酸二無水物と第2テトラカルボン酸二無水物とを同時に添加して、ポリイミド前駆体が生成されている場合に比べ、機械的強度に優れたポリイミド成形体の成形を実現し、且つ製膜性に優れたポリイミド前駆体組成物が提供される。
に係る発明によれば、テトラカルボン酸として、第1テトラカルボン酸二無水物を単独で適用した場合、水性溶剤として、水、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、若しくは水溶性アルコール系溶剤を各々単独で適用した場合に比べ、又は、水性溶剤に、第1テトラカルボン酸二無水物と第2テトラカルボン酸二無水物とを同時に添加して、ポリイミド前駆体を生成する場合に比べ、機械的強度に優れたポリイミド成形体の成形を実現し、且つ製膜性に優れたポリイミド前駆体組成物の製造方法が提供される。
10に係る発明によれば、使用するポリイミド前駆体組成物において、テトラカルボン酸として、第1テトラカルボン酸二無水物を単独で適用した場合、又は、水性溶剤として、水、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、若しくは水溶性アルコール系溶剤を各々単独で適用した場合に比べ、第1テトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミド前駆体をイミド化したポリイミド成形体であって、表面性状に優れたポリイミド成形体が提供される。
11に係る発明によれば、使用するポリイミド前駆体組成物において、テトラカルボン酸として、第1テトラカルボン酸二無水物を単独で適用した場合、又は、水性溶剤として、水、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、若しくは水溶性アルコール系溶剤を各々単独で適用した場合に比べ、第1テトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミド前駆体をイミド化したポリイミド成形体であって、表面性状に優れたポリイミド成形体の製造方法が提供される。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<ポリイミド前駆体組成物>
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、第1水性溶剤に、又は、第2水性溶剤に、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有する第1テトラカルボン酸二無水物、および前記第1テトラカルボン酸二無水物以外の第2テトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との縮重合体からなるポリイミド前駆体(以下、「特定ポリイミド前駆体」と称する)が溶解している組成物である。つまり、特定ポリイミド前駆体は、水性溶剤に溶解した状態で組成物中に含まれる。なお、溶解とは、溶解物の残存が目視にて確認でない状態を示す。
そして、第1水性溶剤としては、水と、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤および水溶性アルコール系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤と、を含む水性溶剤が適用される。一方、第2水性溶剤としては、水溶性アルコール系溶剤と、水溶性エーテル系溶剤および水溶性ケトン系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤と、を含む水性溶剤が適用される。
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、製膜性に優れる。その理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと推測される。
まず、ピロメリット酸二無水物に代表される第1テトラカルボン酸二無水物は、他のテトラカルボン酸二無水物に比べ、1)価格が安い、2)分子量が小さいため、ポリイミド前駆体に占める割合が小さくなる、3)分子構造の対象性が高く、剛直なベンゼン環−イミド環を形成するといった特性を有している。このため、第1テトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミドイミド前駆体を含む組成物は、機械的強度が高く、低コストのポリイミド成形体の成形が実現される。
しかしながら、第1テトラカルボン酸二無水物は、分子構造の対象性が高く、剛直なベンゼン環−イミド環を形成するため、テトラカルボン酸二無水物として単独で使用した場合、生成するポリイミド前駆体も剛直で分子対称性が高くなり、水又は水溶性アルコール系溶剤等の水性溶剤中で凝集しやすくなる。このため、組成物の製膜性が低下することがある。また、水又は水溶性アルコール系溶剤等の水性溶剤中での安定性が低く、経時での粘度変化が生じてしまい、安定な成型加工を困難としてしまう。
これに対して、第1テトラカルボン酸二無水物と共に、第1テトラカルボン酸二無水物以外の第2テトラカルボン酸二無水物を併用すると、生成するポリイミド前駆体の分子対称性が低下する。このため、水性溶剤中で、ポリイミド前駆体の凝集の発生が抑えられる。
これに加え、水性溶剤として、第1水性溶剤に、又は、第2水性溶剤といった特定の組成の水性溶剤を適用すると、上記併用により生成するポリイミド前駆体の溶解性(水性溶剤に対する溶解性)も高まる。
以上から、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、製膜性に優れる。そして、このポリイミド前駆体組成物を用いて成形したポリイミド成形体は、表面性状に優れる。
ここで、ピロメリット酸二無水物に代表される第1テトラカルボン酸二無水物は、一つのベンゼン環に二つのカルボン酸無水物基が結合した構造を有しているため、水中では、カルボン酸無水物基(無水カルボン酸構造)の加水分解反応が生じやすい。特に、アミン化合物の共存下では、この加水分解反応が促進される傾向がある。一方で、水溶性アルコール系溶剤中では、カルボン酸無水物基(無水カルボン酸構造)が開環エステル化反応を生じやすい。このため、ピロメリット酸二無水物に代表される第1テトラカルボン酸二無水物はジアミン化合物との重縮合反応が進行し難く、高分子量化し難いことがある。
これに対して、第1テトラカルボン酸二無水物と共に、第1テトラカルボン酸二無水物以外の第2テトラカルボン酸二無水物を併用すると、第1テトラカルボン酸二無水物の重縮合反応が進行しやすくなり、生成するポリイミド前駆体の高分子量化が図られやすくなる。
また、水性溶剤として、水を含むと共に、さらに水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤および水溶性アルコール系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤を含む第1水性溶剤、又は、水溶性アルコール系溶剤を含むと共に、さらに水溶性エーテル系溶剤および水溶性ケトン系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤を含む第2水性溶剤を適用している。このため、上記加水分解反応又は開環エステル化反応の進行を抑制し、重縮合反応が生じやすくなる。このため、上記加水分解反応又は開環エステル化反応の進行によるポリイミド前駆体の高分子量化の阻害が抑制されやすくなる。
よって、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、機械的強度に優れたポリイミド成形体が得られやすくなる。また、成形時の加熱による収縮も抑えられやすくなる。
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物において、溶剤として水性溶剤を適用する。このため、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、環境適性に優れる。また、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物を用いてポリイミド成形体を成形するとき、溶剤留去のための加熱温度の低減、及び加熱時間の短縮化が実現される。
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物において、溶剤として、水性溶剤を適用するため、溶剤として非プロトン系極性溶剤を含まない、又はその量が低減されている。
なお、非プロトン系極性溶剤とは、沸点150℃以上300℃以下で、双極子モーメントが3.0D以上5.0D以下の溶剤である。非プロトン系極性溶剤として具体的には、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチレンホスホルアミド(HMPA)、N−メチルカプロラクタム、N−アセチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に代表される非プロトン系極性溶剤は、沸点が150℃以上と高く、ポリイミド成形体の製造における乾燥工程後も、組成物中の溶剤が成形体中に残留することが多い。この非プロトン系極性溶剤が、ポリイミド成形体中に残留すると、ポリイミド前駆体の高分子鎖の再配向を引き起こし、高分子鎖のパッキング性を損なうため、得られるポリイミド成形体の機械的強度の低下を引き起こすことがある。
これに対して、溶剤に非プロトン系極性溶剤を含まない、又はその量が低減されていることにより、得られるポリイミド成形体中においても、非プロトン系極性溶剤が含まれない、又はその量が低減される。その結果、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物によるポリイミド成形体は機械的強度の低下が抑制される。
そして、溶剤に非プロトン系極性溶剤を含まない、又はその量が低減されていることにより、機械的強度に加え、耐熱性、電気特性、耐溶剤性等の諸特性に優れたポリイミド樹脂成形体が得られ易い。
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物において、ポリイミド前駆体としての特定ポリイミド前駆体は、低分子化合物ではなく、また、一次構造に屈曲鎖及び脂肪族環状構造等を導入して高分子鎖間の相互作用力を下げて、溶剤への溶解性を高めた構造ではなく、溶剤として上記特定の組成の水性溶剤を適用して、溶解している。このため、従来のポリイミド前駆体樹脂において溶解性を改善するための方法に見られるポリイミド前駆体の低分子化、ポリイミド前駆体の分子構造変更により生じるポリイミド成形体の機械的強度の低下を起こさず、ポリイミド前駆体の水溶化が図られる。
なお、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物において、特定ポリイミド前駆体として、芳香族ポリイミド前駆体(例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物との縮重合体)を適用した場合、通常、溶剤に溶解し難い傾向があるものの、溶剤として水性溶剤を適用して溶解する。このため、特定ポリイミド前駆体として、芳香族ポリイミド前駆体を適用した場合であっても、製膜性が高く、環境適性に優れる。
以下、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の各成分について説明する。
(特定ポリイミド前駆体)
特定ポリイミド前駆体は、第1テトラカルボン酸二無水物および第2テトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物と、の縮重合体からなる樹脂(ポリアミック酸)。なお、特定ポリイミド前駆体のイミド化率は、0.2以下であることがよい。
第1テトラカルボン酸二無水物について説明する。
第1テトラカルボン酸二無水物は、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有するテトラカルボン酸二無水物である。つまり、第1テトラカルボン酸二無水物は、少なくとも一つベンゼン環を有し、この一つのベンゼン環に二つのカルボン酸無水物基が結合した構造を有するテトラカルボン酸二無水物である。
第1テトラカルボン酸二無水物としては、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有する構造であれば、特に制限はないが、例えば、下記一般式(TD11)および下記一般式(TD12)で表されるテトラカルボン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
一般式(TD11)および一般式(TD12)中、RTD11、RTD12、RTD13、およびRTD14は、各々独立に、水素原子、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基を示す。
一般式(TD11)および一般式(TD12)中、RTD11〜RTD14を示すアルキル基としては、炭素数1以上12以下(好ましくは1以上6以下)が挙げられる。アルキル基は、鎖式でもよく環式でもよく、鎖式の場合、直鎖状でも分岐状でもよく、環式の場合、単環式でも多環式(例えば、二環、三環、スピロ環など)でもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、シクロオクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、シクロノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、シクロデシル基、などが挙げられる。」
アルキル基に置換する置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シアノ基等が挙げられる。
一般式(TD11)および一般式(TD12)中、RTD11〜RTD14を示すフェニル基に置換する置換基としては、水酸基、カルボキシル基、シアノ基等が挙げられる。
一般式(TD11)で示されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、RTD11が、水素原子、メチル基、フェニル基、又はカルボキシル基を示し、RTD12が、水素原子、メチル基、フェニル基、又はカルボキシル基を示すテトラカルボン酸二無水物が好適に挙げられる。
一般式(TD12)で示されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、RTD13が、水素原子、メチル基、フェニル基、又はカルボキシル基を示し、RTD14が、水素原子、メチル基、フェニル基、又はカルボキシル基を示すテトラカルボン酸二無水物が好適に挙げられる。
第1テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、メチルピロメリット酸二無水物、ジメチルピロメリット酸二無水物、エチルピロメリット酸二無水物、ジエチルピロメリット酸二無水物、フェニルピロメリット酸二無水物、ジフェニルピロメリット酸二無水物、1,2,3,4,5−ベンゼンペンタカルボン酸−1,2,4,5−二無水物,1,2,3,4,5−ベンゼンペンタカルボン酸−1,2,3,4−二無水物,ベンゼンヘキサカルボン酸−1,2,4,5−二無水物,ベンゼンヘキサカルボン酸−1,2,3,4−二無水物等が挙げられる。
第1テトラカルボン酸二無水物は、製膜性および成形体の機械的強度向上の点から、全テトラカルボン酸無水物に対して、40モル%以上95モル%以下(好ましくは45モル%以上90モル%以下、より好ましくは50モル%以上80モル%以下)で含むことがよい。
なお、第1テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。
第2テトラカルボン酸二無水物について説明する。
第2テトラカルボン酸二無水物は、第1テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物である。つまり、第2テトラカルボン酸二無水物は、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有さない第2テトラカルボン酸二無水物である。
第2テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物、および脂肪族テトラカルボン酸二無水物のいずれであってもよいが、成形体の機械的強度向上の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
第2テトラカルボン酸二無水物は、例えば、一つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を二つ有するテトラカルボン酸二無水物がよい。つまり、第2テトラカルボン酸二無水物は、少なくとも二つのベンゼン環を有し、二つのベンゼン環のうち、一方のベンゼン環に一つのカルボン酸無水物基が結合し、他の方のベンゼン環に一つのカルボン酸無水物基が結合したテトラカルボン酸二無水物がよい。
第2テトラカルボン酸二無水物としては、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有さない構造であれば、特に制限はないが、例えば、下記一般式(TD21)および下記一般式(TD22)で表されるテトラカルボン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
一般式(TD21)中、RTD21、およびRTD22は、各々独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基を示す。ここで、RTD21、およびRTD22を示す置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基の詳細については、一般式(TD11)および一般式(TD12)中、RTD11〜RTD14を示す置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基と同様である。
n21およびn22は、各々独立に、0、又は1〜3の整数を示す。
21は、単結合、又は下記1)〜8)のいずれかの基を示す。
1) −C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、又は−O−
2) アルキレン基(例えば、炭素数1以上12以下のアルキレン基)、
3) フルオロアルキレン基(例えば、少なくとも一つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1以上12以下のアルキレン基)
4) −Si(−RTD23)(−RTD24)−(但し、RTD23およびRTD24は、各々独立に、アルキル基(例えば、炭素数1以上3以下のアルキル基)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル等)、又はアルコキシ基を示す。)
5) −O−Ph−RTD25−Ph−O−(但し、Phはフェニレン基を示す。RTD25は、−S−S−、−S(=O)−、エステル基、又はアミド基示す。)
6) −P(=O)(−RTD26)−(但し、RTD26は、アリール基(例えばフェニル基)、エステル基、又はアミド基を示す。)
7) −C(−Ph)(−Ph)−Ph−RTD27−Ph−C(−Ph)(−Ph)−(但し、Phはフェニレン基を示す。Phはフェニル基を示す。RTD27は、各々独立に、−O−、アルキル基(例えば炭素数1以上6以下のアルキル基)、又はアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)を示す。)
8)−O−(RTD28)−O−(但し、RTD28は、アルキレン基(例えば、炭素数1以上12以下のアルキレン基)を示す。)
一般式(TD22)中、W22およびW23は、互いに結合して、置換若しくは無置換の縮合芳香環(例えばナフタレン環、ピレン環、アントラセン環等)、又は置換若しくは無置換の複素環(例えばフラン環、ピリジン環、イミダゾール環等)を形成するための原子群を示す。
縮合芳香環、又は複素環に置換する置換基としては、アルキル基、カルボキシル基等が挙げられる。
一般式(TD21)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、n21およびn22が0を示し、W21が、−C(=O)−、又はアルキレン基(例えば、炭素数1以上6以下のアルキレン基)を示すテトラカルボン酸二無水物が好適に挙げられる。
一般式(TD22)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、W22およびW23が、互いに結合して、ナフタレン環、フラン環、ピレン環、アントラセン環を形成するための原子群を示すテトラカルボン酸二無水物が好適に挙げられる。
第2テトラカルボン酸二無水物のうち、芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3‘,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。
第2テトラカルボン酸二無水物のうち、脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
第2テトラカルボン酸二無水物は、製膜性および成形体の機械的強度向上の点から、全テトラカルボン酸二無水物に対して、5モル%以上60モル%以下(好ましくは10モル%以上55モル%以下、より好ましくは20モル%以上50モル%以下)で含むこと
なお、第2テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸、又は脂肪族テトラカルボン酸を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸と脂肪族テトラカルボン酸とを組み合わせてもよい。
ジアミン化合物について説明する。
ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物である。ジアミン化合物としては、芳香族ジアミン化合物、脂肪族ジアミン化合物のいずれの化合物も挙げられるが、芳香族ジアミン化合物であることがよい。
ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン化合物;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン化合物及び脂環式ジアミン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、ジアミン化合物としては、芳香族ジアミン化合物がよく、具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォンがよく、特に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンがよい。
なお、ジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族ジアミン化合物、又は脂肪族ジアミン化合物を各々併用しても、芳香族ジアミン化合物と脂肪族ジアミン化合物とを組み合わせてもよい。
−ポリイミド前駆体のイミド化率−
特定ポリイミド前駆体は、イミド化率が0.2以下(好ましくは0.15、より好ましくは0.10)の樹脂であることがよい。つまり、特定ポリイミド前駆体は、一部がイミド化された樹脂であってもよい。
イミド化率を0.2以下とすると、ポリイミド前駆体組成物のゲル化又は析出分離を抑制し、保存安定性、製膜性の悪化を抑制しやすくなる。
特定ポリイミド前駆体のイミド化率は、次の方法により測定される。
−ポリイミド前駆体のイミド化率の測定−
・ポリイミド前駆体試料の作製
(i)測定対象となるポリイミド前駆体組成物を、シリコーンウェハー上に、膜厚1μm以上10μm以下の範囲で塗布して、塗膜試料を作製する。
(ii)塗膜試料をテトラヒドロフラン(THF)中に20分間浸漬させて、塗膜試料中の溶剤をテトラヒドロフラン(THF)に置換する。浸漬させる溶剤は、THFに限定されることになく、ポリイミド前駆体を溶解せず、ポリイミド前駆体組成物に含まれている溶剤成分と混和し得る溶剤より選択できる。具体的には、メタノール、エタノールなどのアルコール溶剤、ジオキサンなどのエーテル化合物が使用できる。
(iii)塗膜試料を、THF中より取り出し、塗膜試料表面に付着しているTHFにN2ガスを吹き付け、取り除く。10mmHg以下の減圧下、5℃以上25℃以下の範囲にて12時間以上処理して塗膜試料を乾燥させ、ポリイミド前駆体試料を作製する。
・100%イミド化標準試料の作製
(iv)上記(i)と同様に、測定対象となるポリイミド前駆体組成物をシリコーンウェハー上に塗布して、塗膜試料を作製する。
(v)塗膜試料を380℃にて60分間加熱してイミド化反応を行い、100%イミド化標準試料を作製する。
・測定と解析(4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなるポリイミド前駆体試料の測定例と解析例)
(vi)フーリエ変換赤外分光光度計(堀場製作所製FT−730)を用いて、100%イミド化標準試料、ポリイミド前駆体試料の赤外吸光スペクトルを測定する。100%イミド化標準試料の1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab’(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab’(1780cm−1))の比I’(100)を求める。
(vii)同様にして、ポリイミド前駆体試料について測定を行い、1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab(1780cm−1))の比I(x)を求める。
そして、測定した各吸光ピークI’(100)、I(x)を使用し、下記式に基づき、ポリイミド前駆体のイミド化率を算出する。
・式: ポリイミド前駆体のイミド化率=I(x)/I’(100)
・式: I’(100)=(Ab’(1780cm−1))/(Ab’(1500cm−1))
・式: I(x)=(Ab(1780cm−1))/(Ab(1500cm−1))
なお、このポリイミド前駆体のイミド化率の測定は、芳香族ポリイミド前駆体のイミド化率の測定に適用される。脂肪族ポリイミド前駆体のイミド化率を測定する場合、芳香環の吸収ピークに代えて、イミド化反応前後で変化のない構造由来のピークを内部標準ピークとして使用する。
−(テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との割合)−
特定ポリイミド前駆体において、ジアミン化合物のモル当量は、テトラカルボン酸二無水物のモル当量よりも大きいことがよい。
この関係は、重合反応の際に使用するジアミン化合物のモル当量を、テトラカルボン酸二無水物のモル当量より過剰にすることで実現される。ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とのモル当量の比は、ジアミン化合物のモル当量を1に対するテトラカルボン酸二無水物のモル当量で、0.900以上0.999以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.950以上0.990以下の範囲である。
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とのモル当量の比が0.900以上にすると、成形体の機械強度が高まりやすくなる。また、モル当量の比が0.950以上にすると、ポリイミド前駆体の分子量が大きくなり、例えば、フィルム状のポリイミド成形体としたときに、そのフィルム強度(引裂き強度、引張り強度)が高まりやすくなる。
ここで、特定ポリイミド前駆体において、ジアミン化合物のモル当量とテトラカルボン酸二無水物のモル当量との測定は、次の通りである。特定ポリイミド前駆体樹脂を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性水溶液中で加水分解処理を行い、ジアミン化合物とテトラカルボン酸塩に分解する。得られた試料をガスクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィなどで分析を行い、特定ポリイミド前駆体を構成するテトラカルボン酸、ジアミン化合物の割合を定量する。
−ポリイミド前駆体の末端構造−
特定ポリイミド前駆体は、末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体(樹脂)を含むことがよく、好ましくは全ての末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体とすることがよい。
末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体(樹脂)を含むと、ポリイミド成形体の機械強度が高まりやすくなる。また、ポリイミド成形体に各種機能を付与するために添加する各種フィラーの分散を促進し、少量のフィラーでも高い機能が発現されやすくなる。
末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体の末端アミノ基の一部又は全部をジカルボン酸無水物等で封止してもよい。末端アミノ基を封止すると、ポリイミド前駆体組成物の保存安定性が高まりやすくなる。
末端アミノ基の封止に使用されるジカルボン酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水フマル酸等が挙げられる。
特定ポリイミド前駆体の末端アミノ基は、ポリイミド前駆体組成物にトリフルオロ酢酸無水物(アミノ基に対して定量的に反応)を作用させることによって検出される。すなわち、特定ポリイミド前駆体の末端アミノ基をトリフルオロ酢酸によりアミド化する。処理後、特定ポリイミド前駆体を再沈殿などで精製して過剰のトリフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸残渣を除去する。処理後の特定ポリイミド前駆体について、核磁気共鳴(NMR)法によって定量することで、特定ポリイミド前駆体の末端アミノ基量が測定される。
−ポリイミド前駆体の数平均分子量−
特定ポリイミド前駆体の数平均分子量は、1000以上100000以下であることがよく、より好ましくは5000以上50000以下、更に好ましくは10000以上30000以下である。特定ポリイミド前駆体の数平均分子量を上記範囲とすると、特定ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性の低下が抑制され、製膜性が確保され易くなる。
特に、特定ポリイミド前駆体の数平均分子量を2000以上(好ましくは10000以上、より好ましくは15000以上)とすると、成形体の機械的強度が高まりやすくなる。
なお、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とのモル当量の比を、調整することで、目的とする数平均分子量の特定ポリイミド前駆体が得られる。
特定ポリイミド前駆体の数平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される。
・カラム:東ソーTSKgelα−M(7.8mm I.D×30cm)
・溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/30mMLiBr/60mMリン酸
・流速:0.6mL/min
・注入量:60μL
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
−特定ポリイミド前駆体の含有量−
特定ポリイミド前駆体の含有量(濃度)は、全ポリイミド前駆体組成物に対して、0.1質量%以上40質量%以下であることがよく、好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、より好ましくは1質量%以上20質量%以下である。
(水性溶剤)
水性溶剤は、第1水性溶剤、又は第2水性溶剤が適用される。水性溶剤とは、水溶性を有する溶剤である。ここで、本明細書において、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
第1水性溶剤は、水を含むと共に、さらに、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤および水溶性アルコール系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤と、を含む水性溶剤が適用される。具体的には、例えば、第1水性溶剤としては、例えば、水と水溶性エーテル系溶剤を含む水性溶剤、水と水溶性ケトン系溶剤を含む水性溶剤、水と水溶性アルコール系溶剤を含む水性溶剤が適用される。
第1水性溶剤において、水を全水性溶剤に対して5質量%以上含むことが好ましい。具体的には、水溶性有機溶剤と水との割合(水溶性有機溶剤/水)は、質量比で、95/5乃至50/50の範囲が好ましく、好ましくは90/10乃至60/40(重量/重量%)、より好ましくは90/10乃至70/30である。
第2水性溶剤は、水溶性アルコール系溶剤を含むと共に、さらに、水溶性エーテル系溶剤および水溶性ケトン系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤と、を含む水性溶剤が適用される。具体的には、例えば、第2水性溶剤は、水溶性アルコール系溶剤と水溶性エーテル系溶剤を含む水性溶剤、水溶性アルコール系溶剤と水溶性ケトン系溶剤を含む水性溶剤が適用される。
第2水性溶剤において、水溶性アルコール系溶剤を全水性溶剤に対して5質量%以上含むことが好ましい。具体的には、水溶性アルコール系溶剤以外の水溶性有機溶剤と水溶性アルコール系溶剤との割合(水溶性アルコール系溶剤以外の水溶性有機溶剤/水溶性アルコール系溶剤)は、質量比で、95/5乃至50/50の範囲が好ましく、好ましくは90/10乃至60/40、より好ましくは90/10乃至70/30である。
水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。
水溶性エーテル系溶剤は、一分子中にエーテル結合を持つ水溶性の溶剤である。水溶性エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、トリオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、水溶性エーテル系溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンが好ましい。
水溶性ケトン系溶剤は、一分子中にケトン基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらの中でも、水溶性ケトン系溶剤としては、アセトンが好ましい。
水溶性アルコール系溶剤は、一分子中にアルコール性水酸基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性アルコール系溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。これらの中でも、水溶性アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコールが好ましい。
これら水溶性有機溶剤は、沸点が160℃以下であることがよく、好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは50℃以上120℃以下である。併用される溶剤の沸点を上記範囲とすると、その溶剤がポリイミド成形体に残留し難くなり、機械的強度の高いポリイミド成形体が得られ易くなる。
(その他の添加剤)
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、これを用いて製造するポリイミド成形体に導電性や、機械強度などの各種機能を付与することを目的として、各種フィラーなどを含んでもよいし、また、イミド化反応促進のための触媒や、製膜品質向上のためのレベリング材などを含んでもよい。
導電性付与のため添加される導電材料としては、導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm未満、以下同様である)もしくは半導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下、以下同様である)のものが挙げられ、使用目的により選択される。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック(例えばpH5.0以下の酸性カーボンブラック)、金属(例えばアルミニウムやニッケル等)、金属酸化物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等)、イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等)、導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなど)等が挙げられる。
これら導電材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
また、導電材料が粒子状の場合、その一次粒径が10μm未満、好ましくは1μm以下の粒子であることがよい。
機械強度向上のため添加されるフィラーとしては、シリカ粉、アルミナ粉、硫酸バリウム粉、酸化チタン粉、マイカ、タルクなどの粒子状材料が挙げられる。また、ポリイミド成形体表面の撥水性、離型性改善のためには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂粉末などを添加してもよい。
イミド化反応促進のための触媒には、酸無水物など脱水剤、フェノール誘導体、スルホン酸誘導体、安息香酸誘導体などの酸触媒などを使用してもよい。
ポリイミド成形体の製膜品質の向上には、界面活性剤を添加してもよい。使用する界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、のいずれを用いてもよい。
その他の添加剤の含有量は、製造するポリイミド成形体の使用目的に応じて選択すればよい。
<ポリイミド前駆体組成物の製造方法>
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の製造方法は、第1水性溶剤に、又は、第2水性溶剤に、第2テトラカルボン酸二無水物、およびジアミン化合物を添加した後、第1テトラカルボン酸二無水物を添加して、ポリイミド前駆体を生成する工程を有する。
具体的には、例えば、ポリイミド前駆体を生成する工程は、第1水性溶剤に、又は、第2水性溶剤に、第2テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物を添加し、第2テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物を縮重合して、ポリイミド前駆体のプレポリマーを生成する工程と、プレポリマーが溶解した溶剤に、第1テトラカルボン酸二無水物を添加して、プレポリマーと第1テトラカルボン酸二無水物とを縮重合して、ポリイミド前駆体を生成する工程と、を有することが好ましい。
特に、ポリイミド前駆体組成物のプレポリマーを生成する工程では、末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体のプレポリマーを生成することがよい。つまり、ジアミン化合物に由来する構造を末端に有するポリイミド前駆体のプレポリマーを生成することがよい。
また、ポリイミド前駆体のプレポリマーを生成後、第1テトラカルボン酸二無水物を添加する際に溶剤を添加して、溶剤の組成を変量させてもよい。さらに、第1テトラカルボン酸二無水物を添加する際に、別途、ジアミン化合物を添加してもよい。
第2テトラカルボン酸二無水物、およびジアミン化合物(好ましくは、プレポリマーが溶解した溶剤、より好ましくは、末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体のプレポリマーが溶解した溶剤)に、第1テトラカルボン酸二無水物を添加すると、加水分解反応又は開環エステル化反応を抑制し、第1テトラカルボン酸二無水物の重合反応が促進され易くなる。これにより、生成するポリイミド前駆体を高分子化しやすくなる。その結果、成形体の機械的強度が高まる。
末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体のプレポリマーを生成するには、例えば、ジアミン化合物のモル当量を、第2テトラカルボン酸二無水物のモル当量より大きくなる配合比で、水性溶剤に各モノマーを添加すればよい。
ジアミン化合物と第2テトラカルボン酸二無水物とのモル当量の比は、ジアミン化合物のモル当量を1に対する第2テトラカルボン酸二無水物のモル当量で、0.05以上0.6以下の範囲とすることが好ましく、より好ましく0.1以上0.55以下の範囲である。
なお、生成するポリイミド前駆体組成物のプレポリマーの数平均分子量は、100以上1000以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは200以上600以下の範囲である。
ポリイミド前駆体、及びポリイミド前駆体のプレポリマーの重合反応時の反応温度は、例えば、0℃以上70℃以下であることがよく、望ましくは10℃以上60℃以下、より望ましくは20℃以上55℃以下である。この反応温度を0℃以上とすることで、重合反応の進行を促進し、反応に要する時間が短時間化され、生産性が向上し易くなる。一方、反応温度を70℃以下とすると、生成したポリイミド前駆体の分子内で生じるイミド化反応の進行が抑制され、ポリイミド前駆体、及びポリイミド前駆体のプレポリマーの溶解性低下に伴う析出、又はゲル化が抑制され易くなる。
なお、ポリイミド前駆体、及びポリイミド前駆体のプレポリマーの重合反応時の時間は、合計で、反応温度により1時間以上24時間以下の範囲とすることがよい。
ここで、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の製造方法は、ポリイミド成形体の機械的強度の低下の原因となる非プロトン系極性溶剤を使用しないかまたは低減された水性溶剤中で、ポリイミド前駆体の生成を行う。
このため、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の製造方法では、機械的強度の高いポリイミド成形体が得られるポリイミド前駆体組成物が製造される。
また、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の製造方法では、機械的強度に加え、耐熱性、電気特性、耐溶剤性等の諸特性に優れたポリイミド成形体が得られ易いポリイミド前駆体組成物が製造される。
また、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の製造方法では、溶剤として、水性溶剤を適用しているため、生産性も高く、ポリイミド前駆体組成物が製造される。
<ポリイミド成形体の製造方法>
本実施形態に係るポリイミド成形体の製造方法は、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物(以下、「特定ポリイミド前駆体組成物」とも称する)を加熱処理して成形するポリイミド成形体の製造方法である。
具体的には、本実施形態に係るポリイミド成形体の製造方法は、例えば、特定ポリイミド前駆体組成物を被塗布物上に塗布して塗膜を形成する工程(以下「塗膜形成工程」と称する)と、塗膜を加熱処理してポリイミド樹脂層を形成する工程(以下「加熱工程」と称する)と、を有する。
(塗膜形成工程)
まず、被塗布物を準備する。この被塗布物は、製造するポリイミド成形体の用途に応じて選択される。
具体的には、ポリイミド成形体として液晶配向膜を製造する場合、被塗布物としては、液晶素子に適用される各種基板が挙げられ、例えば、シリコン基板、ガラス基板又はこれら表面に金属又は合金膜が形成された基板等が挙げられる。
また、ポリイミド成形体としてパッシベーション膜を製造する場合、被塗布物としては、例えば、集積回路が形成された半導体基板、配線が形成された配線基板、電子部品及び配線が設けられたプリント基板等から選択される。
また、ポリイミド成形体として電線被覆材を製造する場合、被塗布物としては、例えば、各種の電線(軟銅、硬銅、無酸素銅、クロム鉱、アルミニウム等の金属又は合金製の線材、棒材、又は板材)が挙げられる。なお、ポリイミド成形体をテープ状に成形・加工し、これを電線に巻き付けるテープ状の電線被覆材として利用する場合、各種の平面基板又は円筒状基体が被塗布物として利用される。
また、ポリイミド成形体として接着膜を製造する場合、例えば、接着対象となる各種の成形体(例えば、半導体チップ、プリント基板等の種々の電器部品等)が挙げられる。
次に、特定ポリイミド前駆体組成物を目的とする被塗布物に塗布し、特定ポリイミド前駆体組成物の塗膜を形成する。
特定ポリイミド前駆体組成物の塗布法は、特に制限はなく、例えば、スプレー塗布、回転塗布法、ロール塗布法、バー塗布法、スリットダイ塗布法、インクジェット塗布法等の各種の塗布法が挙げられる。
(加熱工程)
次に、特定ポリイミド前駆体組成物の塗膜に対して、乾燥処理を行う。この乾燥処理により、乾燥膜(乾燥したイミド化前の皮膜)を形成する。
乾燥処理の加熱条件は、例えば80℃以上200℃以下の温度で10分間以上60分間以下がよく、温度が高いほど加熱時間は短くてよい。加熱の際、熱風を当てることも有効である。加熱のときは、温度を段階的に上昇させたり、速度を変化させずに上昇させてもよい。
次に、乾燥膜に対して、イミド化処理を行う。これにより、ポリイミド樹脂層が形成される。
イミド化処理の加熱条件としては、例えば150℃以上400℃以下(好ましくは200℃以上300℃以下)で、20分間以上60分間以下加熱することで、イミド化反応が起こり、ポリイミド樹脂層が形成される。加熱反応の際、加熱の最終温度に達する前に、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱することがよい。
以上の工程を経て、ポリイミド成形体が形成される。そして、必要に応じて、ポリイミド成形体を被塗布物から取り出し、後加工が施される。
<ポリイミド成形体>
本実施形態に係るポリイミド成形体は、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物を加熱処理して成形されたポリイミド成形体である。つまり、本実施形態に係るポリイミド成形体は、上記本実施形態に係るポリイミド成形体の製造方法により得られるポリイミド成形体である。このポリイミド成形体としては、例えば、液晶配向膜、パッシベーション膜、電線被覆材、接着膜等の各種のポリイミド成形体が例示される。その他、ポリイミド成形体としては、例えば、フレキシブル電子基板フィルム、銅張積層フィルム、ラミネートフィルム、電気絶縁フィルム、燃料電池用多孔質フィルム、分離フィルム、耐熱性皮膜、ICパッケージ、レジスト膜、平坦化膜、マイクロレンズアレイ膜、光ファイバー被覆膜等も例示される。
ポリイミド成形体としては、ベルト部材も挙げられる。ベルト部材としては、駆動ベルト、電子写真方式の画像形成装置用のベルト(例えば、中間転写ベルト、転写ベルト、定着ベルト、搬送ベルト)等が例示される。
つまり、本実施形態に係るポリイミド成形体の製造方法は、上記例示された各種のポリイミド成形体の製造方法に適用され得る。
本実施形態に係るポリイミド成形体には、特定ポリイミド前駆体組成物に含まれる水性溶剤が含有される。
本実施形態に係るポリイミド成形体に含有される水性溶剤は、ポリイミド成形体中、1ppb以上1%未満である。ポリイミド成形体中に含有される水性溶剤の量は、ポリイミド成形体を加熱して発生するガス分をガスクロマトグラフィー法により定量される。
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
<実施例1>ポリイミド前駆体組成物(A−1)の作製
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、テトラヒドロフラン(以下、THFと表記)810g、水90gを充填した。ここに、4,4‘−ジアミノジフェニルエーテル(以下、ODAと表記:分子量200.24)43.65g(217.99mmol)を加え、40℃に加熱しながら30分間撹拌した。3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと表記:分子量294.22)37.71g(128.17mmol)を加え、40℃で30分間撹拌反応を行った。これによりポリイミド前駆体のプレポリマーを生成した。このプレポリマーおよび原料モノマーが溶解していることを確認した後、ピロメリット酸二無水物(以下、PMDAと表記:分子量218.12)18.64g(85.46mmol)を粉末で徐々に加えて、40℃で24時間反応を行い、ポリイミド前駆体組成物(A−1)を得た。ポリイミド前駆体組成物(A−1)の諸特性、液状態は、表1に示す。
なお、生成したポリイミド前駆体のイミド化率は0.03であり、既述の末端アミノ基量の測定の結果、少なくとも末端にアミノ基を有するものを含有するものであった。
なお、各測定は以下の通りである。
(固形分測定方法)
固形分は、示差熱熱重量同時測定装置を用いて下記条件で測定した。なお、380℃の測定値をもって、固形分はポリイミドとしての固形分率として測定した。
・測定装置: 示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6200(セイコーインスツルメンツ株式会社)
・測定範囲: 20℃以上400℃以下
・昇温速度: 20℃/分
<評価>
得られた作製直後のポリイミド前駆体組成物(A−1)を用いて製膜を行って、フィルムを作製し、その製膜性について評価した。また、得られた製膜フィルムの機械的強度(引張り強度、引張り伸び)を測定した。
(製膜方法)
塗布厚500μmとなるようにスペーサーを設置した塗布ブレードを用いたバーコート法で塗布した。
・塗布基材: 1.1mmtガラス板
・乾燥温度: 60℃×10分
・焼成温度: 250℃×30分
(製膜性)
製膜フィルムについて、(1)ボイド痕、(2)表面ムラ・模様を評価した。
(1)ボイド痕
製膜フィルム表面のボイド痕の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎: ボイド痕の発生が見られない。
○: 製膜フィルム表面に1個以上10個未満のボイド痕が確認できる。
△: 製膜フィルム表面に10個以上50個未満のボイド痕が点在する。
×: 製膜フィルム表面に無数のボイド痕が一様に発生している。
(2)表面ムラ・模様
製膜フィルム表面に発生する表面ムラ、模様の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎: 表面ムラ、模様の発生が見られない。
○: 製膜フィルム表面の一部に表面ムラ、模様が僅かに確認できる(製膜フィルム表面
面積の10%未満)。
△: 製膜フィルム表面の一部に表面ムラ、模様が確認できる。
×: 製膜フィルム表面に表面ムラ、模様が一様に発生している(製膜フィルム表面面積の10%以上)。
(引張り強度・伸び)
作製した製膜フィルムより、ダンベル3号を用いて試料片を打ち抜き成形した。試料片を引張り試験機に設置し、下記条件で、試料片が引張り破断する印加荷重(引張り強度)、破断伸び(引張り伸び)を測定した。
・試験装置 : アイコーエンイジアリング社製引張り試験機1605型
・試料長さ : 30mm
・試料幅 : 5mm
・引張り速度 :10mm/min
(保存安定性)
得られたポリイミド前駆体組成物(A−1)を室温(25℃)で20日間保管した。保管後のポリイミド前駆体組成物(A−1)を用い、下記操作により製膜を行った。塗布直後の塗膜について、(1)表面ムラ・模様、(2)はじきを評価した。
・塗布法: 塗布厚100μmとなるようにスペーサーを設置した塗布ブレードを用いたバーコート法。
・塗布基材: 1.1mmtガラス板
・乾燥温度: 60℃×10分
・焼成温度: 250℃×30分
(1)表面ムラ・模様
塗膜表面に発生する表面ムラ・模様の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎: 表面ムラ、模様の発生が見られない。
○: 塗膜表面の一部に表面ムラ、模様が僅かに確認できる(塗膜表面面積の10%未満)。
△: 塗膜表面の一部に表面ムラ、模様が確認できる。
×: 塗膜表面に表面ムラ、模様が一様に発生している(塗膜表面面積の10%以上)。
(2)はじき
塗膜表面に発生するはじきの有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎: はじきの発生が見られない。
○: 塗膜表面の一部にはじきが僅かに確認できる(塗膜表面面積の5%未満)。
△: 塗膜表面の一部にはじきが確認できる。
×: 塗膜表面にはじきが一様に発生している(塗膜表面面積の15%以上)。
<実施例2〜15>ポリイミド前駆体組成物(A−2)〜(A−15)の作製
ポリイミド前駆体組成物の作製条件を、下記表1〜表4に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体組成物(A−2)〜(A−15)を作製した。
そして、実施例1と同様にして、評価をした。評価結果を表1〜表4に示す。
<比較例1>ポリイミド前駆体組成物(X−1)の作製
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと表記)900gを充填した。ここに、ODA46.69g(233.15mmol)を加え、40℃に加熱しながら30分間撹拌した。BPDA13.44g(45.70mmol)、PMDA39.87g(182.79mmol)を加えて、40℃で24時間反応を行い、ポリイミド前駆体組成物(X−1)を得た。
なお、生成したポリイミド前駆体のイミド化率は0.03であり、既述の末端アミノ基量の測定の結果、少なくとも末端にアミノ基を有するものを含有するものであった。
得られたポリイミド前駆体組成物(X−1)を用いて、実施例1と同様にして、評価をした。評価結果を表5に示す。
その結果、焼成温度を実施例1と同じく、250℃とすると、膜中にNMPが残留するため、引張り強度、引張り伸びともに、実施例3に比べて低くなってしまった。ポリイミド前駆体組成物(X−1)に含まれる高沸点のNMPが製膜フィルム中に残留することで、機械的強度低下を引き起こすことが原因の一つと考えられる。
<比較例2〜7>ポリイミド前駆体組成物(X−2)〜(X−7)の作製
ポリイミド前駆体組成物の作製条件を、下記表5〜表6に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体組成物(X−2)〜(X−7)を作製した。
得られたポリイミド前駆体組成物(X−2)〜(X−7)を用いて、実施例1と同様にして、評価をした。評価結果を表5〜表6に示す。
その結果、得られたポリイミド前駆体組成物(X−2)〜(X−7)は、添加した原料が溶解できず不均一であり、製膜することはできなかった。
<比較例8>ポリイミド前駆体組成物(X−8)の作製
THF810g、水90gを充填した。ここに、ODA43.37g(241.55mmol)を加え、40℃に加熱しながら30分間撹拌した。PMDA51.63g(236.72mmol)を加え、40℃で24時間反応を行い、ポリイミド前駆体組成物(X−8)を得た。
得られたポリイミド前駆体組成物(X−8)を用いて、実施例1と同様にして、評価をした。評価結果を表6に示す。
その結果、得られたポリイミド前駆体組成物(X−8)は、粘度が低く、分子量測定の結果、殆ど重合が進行していないことが分かった。また、製膜性も劣り、引張り試験の結果、試料片は殆ど伸びずに破断した。
<実施例16〜25>ポリイミド前駆体組成物(R−1)〜(R−10)の作製
ポリイミド前駆体組成物の作製条件を、下記表7〜表9に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体組成物(R−1)〜(R−10)を作製した。
得られたポリイミド前駆体組成物(R−1)〜(R−10)を用いて、実施例1と同様にして、評価をした。評価結果を表7〜表9に示す。
上記結果から、本実施例では、製膜性の評価について良好な結果が得られたことがわかる。特に、本実施例では、NMPを使用した比較例1、に比べ、PMDA(ピロメリット酸二無水物)を単独で使用した比較例8と比べ、機械的強度の評価について良好な結果が得られたことがわかる。
なお、表1〜表9中の略称については、以下の通りである。また、表1〜表9中、評価においての「−」は未添加又は未実施を意味している。
・PMDA(ピロメリット酸二無水物: 分子量218.12)
・BPDA(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物: 分子量294.22)
・BTDA(3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物: 分子量322.23)
・PDA(p−フェニレンジアミン: 分子量108.14)
・ODA(4,4’−ジアミノジフェニルエーテル: 分子量200.24)
・BAPP(2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン: 分子量410.51)
・PA(無水フタル酸: 分子量148.12)
・THF(テトラヒドロフラン)
・IPA(イソプロピルアルコール)
・THFA(テトラヒドロフランフルフリールアルコール)

Claims (10)

  1. 水を含むと共に、水溶性エーテル系溶剤、および水溶性ケトン系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤を含む第1水性溶剤に、又は、水溶性アルコール系溶剤を含むと共に、水溶性エーテル系溶剤および水溶性ケトン系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤を含む第2水性溶剤に、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有する第1テトラカルボン酸二無水物、および前記第1テトラカルボン酸二無水物以外の第2テトラカルボン酸二無水物であって、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有さない第2テトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との縮重合体からなるポリイミド前駆体が溶解しており、
    前記第1水性溶剤において、前記水溶性有機溶剤と前記水との割合(水溶性有機溶剤/水)が、質量比で、95/5乃至50/50の範囲であり、
    前記第2水性溶剤において、前記水溶性アルコール系溶剤以外の水溶性有機溶剤と前記水溶性アルコール系溶剤との割合(水溶性アルコール系溶剤以外の水溶性有機溶剤/水溶性アルコール系溶剤)が、質量比で、95/5乃至50/50の範囲である、
    ポリイミド前駆体組成物。
  2. 前記第1テトラカルボン酸二無水物が、下記一般式(TD11)および下記一般式(TD12)で表されるテトラカルボン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載のポリイミド前駆体組成物。


    (一般式(TD11)および一般式(TD12)中、RTD11、RTD12、RTD13、およびRTD14は、各々独立に、水素原子、カルボキシル基、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基を示す。)
  3. 前記第2テトラカルボン酸二無水物が、一つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を二つ有するテトラカルボン酸二無水物である請求項1又は請求項2に記載のポリイミド前駆体組成物。
  4. 前記テトラカルボン酸二無水物が、前記第1テトラカルボン酸二無水物を40モル%以上95モル%以下で含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
  5. 前記ポリイミド前駆体において、前記ジアミン化合物のモル当量が、前記テトラカルボン酸二無水物のモル当量よりも大きい請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
  6. 前記ポリイミド前駆体が、末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
  7. 前記ポリイミド前駆体の数平均分子量が、2000以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
  8. 水を含むと共に、水溶性エーテル系溶剤、および水溶性ケトン系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤を含む第1水性溶剤に、又は、水溶性アルコール系溶剤を含むと共に、水溶性エーテル系溶剤および水溶性ケトン系溶剤からなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶剤を含む第2水性溶剤に、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有する第1テトラカルボン酸二無水物以外の第2テトラカルボン酸二無水物であって、二つのカルボン酸無水物基が結合したベンゼン環を有さない第2テトラカルボン酸二無水物、およびジアミン化合物を添加した後、前記第1テトラカルボン酸二無水物を添加して、ポリイミド前駆体を生成する工程を有するポリイミド前駆体組成物の製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物を加熱処理して成形されたポリイミド成形体。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物を加熱処理して成形するポリイミド成形体の製造方法。
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