JP6427903B2 - ポリイミド前駆体組成物、ポリイミド成形体の製造方法、及びポリイミド成形体 - Google Patents

ポリイミド前駆体組成物、ポリイミド成形体の製造方法、及びポリイミド成形体 Download PDF

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本発明は、ポリイミド前駆体組成物、ポリイミド成形体の製造方法、及びポリイミド成形体に関する。
ポリイミド樹脂は、高耐久性、耐熱性に優れた特性を有する材料であり、電子材料用途に広く使用されている。
ポリイミド樹脂の成形体を製造する方法として、その前駆体であるポリアミック酸を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の非プロトン系極性溶剤に溶解したポリイミド前駆体組成物を基材上に塗布して、熱処理によって、乾燥・イミド化することでポリイミド成形体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、ポリイミド前駆体組成物の製造において、NMP等の非プロトン系極性溶剤中でポリイミド前駆体樹脂を重合し、再沈殿法によりポリイミド前駆体樹脂を取り出した後にアミン塩を作用させて水に溶解させるプロセスを経ることも知られている(例えば、特許文献2〜5参照)。
なお、ポリアミック酸を溶解する溶剤としては、NMPの他、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)などが挙げられる(例えば非特許文献1参照)。
一方、非プロトン系極性溶剤として、水溶性アルコール系溶剤化合物、及び/又は水溶性エーテル系溶剤化合物を用いて、具体的には、テトラヒドロフラン(THF)及びメタノールの混合溶剤中、又はTHF及び水の混合溶剤中の反応系に3級アミンを添加することで、析出させないでポリイミド前駆体組成物を得ることが知られている(例えば、特許文献6参照)。
アミン化合物として特定構造のイミダゾールの共存下、水中でポリイミド前駆体を重合して水系ポリイミド前駆体組成物を得ることも知られている(例えば、特許文献7参照)。
米国特許第4238528号公報 特開平08−120077号公報 特開平08−015519号公報 特開2003−13351号公報 特開平08−059832号公報 特開平08−157599号公報 特開2012−036382号公報
Journal of Polymer Science. Macromolecular Reviews, Vol.11, P164(1976)
本発明の課題は、保存安定性に優れたポリイミド前駆体組成物を提供することである。
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
請求項1に係る発明は、
水を含む水性溶剤に、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂と、有機アミン化合物と、アミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、およびイミダゾリニウム塩から選択される少なくとも1種のカチオン性界面活性剤と、が溶解しており、
カチオン性界面活性剤の含有量が、ポリイミド前駆体樹脂組成物全体に対して0.0001質量%以上0.5質量%以下であるポリイミド前駆体組成物。

(一般式(I)中、Aは4価の有機基を示し、Bは2価の有機基を示す。)
請求項2に係る発明は、
前記カチオン性界面活性剤が、下記一般式(II)で表される第4級アンモニウム塩である請求項1に記載のポリイミド前駆体組成物。
(一般式(II)中、Xは、塩素原子、又は臭素原子を示し、R、R、R、及びRは、各々独立に炭素数1以上22以下の有機基を示す。
請求項3に係る発明は、
前記カチオン性界面活性剤の分子量が200以上である請求項1又は2に記載のポリイミド前駆体組成物。
請求項4に係る発明は、
前記有機アミン化合物が、3級アミン化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
請求項5に係る発明は、
前記樹脂が、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物とから合成された樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
請求項6に係る発明は、
前記樹脂が、末端にアミノ基を有する樹脂を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
請求項7に係る発明は、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物を加熱処理して成形するポリイミド成形体の製造方法。
請求項8に係る発明は、
請求項7に記載のポリイミド成形体の製造方法により製造されたポリイミド成形体。
請求項1、2、又は3に係る発明によれば、カチオン性界面活性剤を含まない場合に比べ、保存安定性に優れたポリイミド前駆体組成物が提供される。
請求項4に係る発明によれば、有機アミン化合物が1級又は2級アミン化合物である場合に比べ、製膜性に優れたポリイミド前駆体組成物が提供される。
請求項5に係る発明によれば、カチオン性界面活性剤を含まない場合に比べ、芳香族系のモノマーを用いて合成した樹脂を適用しても、保存安定性に優れたポリイミド前駆体組成物が提供される。
請求項6に係る発明によれば、樹脂の全末端にカルボキシル基を有する場合に比べ、製膜性に優れたポリイミド前駆体組成物が提供される。
請求項7、又は8に係る発明によれば、表面平滑性に優れたポリイミド成形体の製造方法、又はそれにより得られるポリイミド成形体が提供される。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<ポリイミド前駆体組成物>
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、水を含む水性溶剤に、一般式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂(以下、「特定ポリイミド前駆体」と称する)と、有機アミン化合物と、カチオン性界面活性剤と、が溶解している組成物である。つまり、特定ポリイミド前駆体、有機アミン化合物、及びカチオン性界面活性剤は、水性溶剤に溶解した状態で組成物中に含まれる。なお、溶解とは、溶解物の残存が目視にて確認でない状態を示す。
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、保存安定性(以下「ポットライフ」とも称する)に優れる。その理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと推測される。
まず、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物において、水性溶剤に有機アミン化合物が溶解していと、特定ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)がアミン化合物によりアミン塩化された状態となる。このため、特定ポリイミド前駆体の水性溶剤に対する溶解性が高められ、有機アミン化合物を含むポリイミド前駆体組成物は、製膜性が高く、ポリイミド成形体形成用の組成物として適する。
しかし、有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体組成物の保存安定性を低下させる傾向がある。つまり、特定ポリイミド前駆体を水性溶剤に溶解せしめる量の有機アミン化合物だけを配合したポリイミド前駆体組成物は、室温(例えば25℃)環境下で、粘度変動を起こし易い傾向がある。
これに対して、水性溶剤に、有機アミン化合物と共にカチオン性界面活性剤を溶解させると、有機アミン化合物と同様に、カチオン性界面活性剤も特定ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)の塩化に寄与する。つまり、同じ有機アミン化合物の量でも、特定ポリイミド前駆体の水性溶剤に対する溶解性が高められる。言い換えれば、有機アミン化合物の量を低減しても、特定ポリイミド前駆体の水性溶剤に対する溶解性が高められる。このため、粘度変動を起こし難くなる。
したがって、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、保存安定性に優れると推測される。
また、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、上述のように、特定ポリイミド前駆体の水性溶剤に対する溶解性を損なうことなく、有機アミン化合物の量を低減できる。これに加え、水性溶剤に、有機アミン化合物と共にカチオン性界面活性剤を溶解させると、カチオン性界面活性剤は、特定ポリイミド前駆体のアミン塩化に寄与しない有機アミン化合物と塩を形成すると推測される。特定ポリイミド前駆体のアミン塩化に寄与しない有機アミン化合物がカチオン性界面活性剤と塩を形成すると、有機アミン化合物の見かけ上の分子量が増加し、揮発し難くなる。このため、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、有機アミン化合物特有の臭気も抑えられる。つまり、組成物を取り扱うとき、及び組成物を加熱成形するときの双方において、低臭気で作業者の負荷が抑制される。
そして、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物を用いて成形したポリイミド成形体は、表面平滑性が高まる。また、機械的特性、耐熱性、電気特性、耐溶剤性などの諸特性も高まる。また、ポリイミド前駆体組成物が保存安定性に優れるため、ポリイミド前駆体組成物の塗工性能が高く維持され易くなり、ポリイミド成形体の品質のバラツキも抑制される。
ここで、ポリイミド成形体に有機アミン化合物が含まれると、成形時の加熱により有機アミン化合物が揮発し易いことから、ポリイミド成形体の表面に空隙(ボイド)が発生し易くなり、成形体の外観品質(つまり表面平滑性)を低下させる。これに対して、有機アミン化合物と共にカチオン性界面活性剤を併用し、有機アミン化合物の使用量と共に揮発性を低減することにより、ポリイミド成形体の表面の空隙(ボイド)が抑制され、表面平滑性が高まる。
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物において、水性溶剤に特定ポリイミド前駆体と有機アミン化合物とカチオン性界面活性剤とが溶解していることから、ポリイミド成形体の成形のとき、下地となる基材の腐食が抑制される。これは、特定ポリイミド前駆体のカルボキシル基の酸性が共存する有機アミン化合物及びカチオン性界面活性剤の塩基性によって抑制されるためと考えられる。
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物において、一般式(I)中、Aが4価の芳香族系有機基を示し、Bが2価の芳香族系有機基を示す特定ポリイミド前駆体(例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物とから合成された樹脂)を適用した場合、通常、溶剤に溶解し難い傾向があるものの、溶剤として水性溶剤を適用し、これに特定ポリイミド前駆体が有機アミン化合物及びカチオン性界面活性剤により塩化された状態で溶解する。このため、特定ポリイミド前駆体として、芳香族系ポリイミド前駆体を適用した場合であっても、製膜性が高く、環境適性に優れる。
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物において、溶剤として水を含む水性溶剤を適用する。このため、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、環境適性に優れる。また、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物を用いてポリイミド成形体を成形するとき、溶剤留去のための加熱温度の低減、及び加熱時間の短縮化が実現される。
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物において、溶剤として、水を含む水性溶剤を適用するため、溶剤として非プロトン系極性溶剤を含まない、又はその量が低減されている。
なお、非プロトン系極性溶剤とは、沸点150℃以上300℃以下で、双極子モーメントが3.0D以上5.0D以下の溶剤である。非プロトン系極性溶剤として具体的には、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチレンホスホルアミド(HMPA)、N−メチルカプロラクタム、N−アセチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に代表される非プロトン系極性溶剤は、沸点が150℃以上と高く、ポリイミド成形体の製造における乾燥工程後も、組成物中の溶剤が成形体中に残留することが多い。この非プロトン系極性溶剤が、ポリイミド成形体中に残留すると、ポリイミド前駆体の高分子鎖の再配向を引き起こし、高分子鎖のパッキング性を損なうため、得られるポリイミド成形体の機械的強度の低下を引き起こすことがある。
これに対して、溶剤に非プロトン系極性溶剤を含まない、又はその量が低減されていることにより、得られるポリイミド成形体中においても、非プロトン系極性溶剤が含まれない、又はその量が低減される。その結果、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物によるポリイミド成形体は機械的強度の低下が抑制される。
そして、溶剤に非プロトン系極性溶剤を含まない、又はその量が低減されていることにより、機械的強度に加え、耐熱性、電気特性、耐溶剤性等の諸特性に優れたポリイミド樹脂成形体が得られ易い。
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物において、ポリイミド前駆体としての特定ポリイミド前駆体は、低分子化合物ではなく、また、一次構造に屈曲鎖及び脂肪族環状構造等を導入して高分子鎖間の相互作用力を下げて、溶剤への溶解性を高めた構造ではなく、溶剤として水性溶剤を適用し、特定ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)は、有機アミン化合物及びカチオン性界面活性剤により塩化して溶解している。このため、従来のポリイミド前駆体樹脂において溶解性を改善するための方法に見られるポリイミド前駆体の低分子化、ポリイミド前駆体の分子構造変更により生じるポリイミド成形体の機械的強度の低下を起こさず、ポリイミド前駆体の水溶化が図られる。
以下、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の各成分について説明する。
(特定ポリイミド前駆体)
特定ポリイミド前駆体は、一般式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂(ポリアミック酸)である。なお、特定ポリイミド前駆体のイミド化率は、0.2以下であることがよい。

(一般式(I)中、Aは4価の有機基を示し、Bは2価の有機基を示す。)
ここで、一般式(I)中、Aが表す4価の有機基としては、原料となるテトラカルボン酸二無水物より4つのカルボキシル基を除いたその残基である。
一方、Bが表す2価の有機基としては、原料となるジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基である。
つまり、一般式(I)で表される繰り返し単位を有する特定ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体である。
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も挙げられるが、芳香族系の化合物であることがよい。つまり、一般式(I)中、Aが表す4価の有機基は、芳香族系有機基であることがよい。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3‘,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらの中でも、テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物がよく、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、更に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、特に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がよい。
なお、テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。
また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸、又は脂肪族テトラカルボン酸を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸と脂肪族テトラカルボン酸とを組み合わせてもよい。
一方、ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物である。ジアミン化合物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も挙げられるが、芳香族系の化合物であることがよい。つまり、一般式(I)中、Bが表す2価の有機基は、芳香族系有機基であることがよい。
ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等が挙げられる。
これらの中でも、ジアミン化合物としては、芳香族系ジアミン化合物がよく、具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォンがよく、特に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンがよい。
なお、ジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族ジアミン化合物、又は脂肪族ジアミン化合物を各々併用しても、芳香族ジアミン化合物と脂肪族ジアミン化合物とを組み合わせてもよい。
特定ポリイミド前駆体は、イミド化率が0.2以下の樹脂であることがよい。つまり、特定ポリイミド前駆体は、一部がイミド化された樹脂であってもよい。
具体的には、特定ポリイミド前駆体としては、例えば、一般式(I−1)、一般式(I−2)及び一般式(I−3)で表される繰り返し単位を有する樹脂が挙げられる。

一般式(I−1)、一般式(I−2)及び一般式(I−3)中、Aは4価の有機基を示し、Bは2価の有機基を示す。なお、A及びBは、一般式(I)中のA及びBと同義である。
lは1以上の整数を示し、m及びnは、各々独立に0又は1以上の整数を示し、且つ(2n+m)/(2l+2m+2n)≦0.2の関係を満たす。
一般式(I−1)〜(I−3)中、lは1以上の整数を示すが、好ましくは1以上200以下の整数、より好ましくは1以上100以下の整数を示すことがよい。m及びnは、各々独立に0又は1以上の整数を示すが、好ましくは各々独立に0又は1以上200以下の整数、より好ましくは0又は1以上100以下の整数を示すことがよい。
そして、l、m及びnは、(2n+m)/(2l+2m+2n)≦0.2の関係を満たすが、好ましくは(2n+m)/(2l+2m+2n)≦0.15の関係、より好ましくは(2n+m)/(2l+2m+2n)≦0.10を満たすことである。
ここで、「(2n+m)/(2l+2m+2n)」は、特定ポリイミド前駆体の結合部(テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応部)において、イミド閉環している結合部数(2n+m)の全結合部数(2l+2m+2n)に対する割合を示している。つまり、「(2n+m)/(2l+2m+2n)」は特定ポリイミド前駆体のイミド化率を示している。
そして、特定ポリイミド前駆体のイミド化率(「(2n+m)/(2l+2m+2n)」の値)を0.2以下(好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下)とすることにより、特定ポリイミド前駆体のゲル化や析出分離を引き起こすことが抑制される。
特定ポリイミド前駆体のイミド化率(「(2n+m)/(2l+2m+2n)」の値)は、次の方法により測定される。
−ポリイミド前駆体のイミド化率の測定−
・ポリイミド前駆体試料の作製
(i)測定対象となるポリイミド前駆体組成物を、シリコーンウェハー上に、膜厚1μm以上10μm以下の範囲で塗布して、塗膜試料を作製する。
(ii)塗膜試料をテトラヒドロフラン(THF)中に20分間浸漬させて、塗膜試料中の溶剤をテトラヒドロフラン(THF)に置換する。浸漬させる溶剤は、THFに限定されることになく、ポリイミド前駆体を溶解せず、ポリイミド前駆体組成物に含まれている溶剤成分と混和し得る溶剤より選択できる。具体的には、メタノール、エタノールなどのアルコール溶剤、ジオキサンなどのエーテル化合物が使用できる。
(iii)塗膜試料を、THF中より取り出し、塗膜試料表面に付着しているTHFにN2ガスを吹き付け、取り除く。10mmHg以下の減圧下、5℃以上25℃以下の範囲にて12時間以上処理して塗膜試料を乾燥させ、ポリイミド前駆体試料を作製する。
・100%イミド化標準試料の作製
(iv)上記(i)と同様に、測定対象となるポリイミド前駆体組成物をシリコーンウェハー上に塗布して、塗膜試料を作製する。
(v)塗膜試料を380℃にて60分間加熱してイミド化反応を行い、100%イミド化標準試料を作製する。
・測定と解析(4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなるポリイミド前駆体試料の測定例と解析例)
(vi)フーリエ変換赤外分光光度計(堀場製作所製FT−730)を用いて、100%イミド化標準試料、ポリイミド前駆体試料の赤外吸光スペクトルを測定する。100%イミド化標準試料の1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab’(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab’(1780cm−1))の比I’(100)を求める。
(vii)同様にして、ポリイミド前駆体試料について測定を行い、1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab(1780cm−1))の比I(x)を求める。
そして、測定した各吸光ピークI’(100)、I(x)を使用し、下記式に基づき、ポリイミド前駆体のイミド化率を算出する。
・式: ポリイミド前駆体のイミド化率=I(x)/I’(100)
・式: I’(100)=(Ab’(1780cm−1))/(Ab’(1500cm−1))
・式: I(x)=(Ab(1780cm−1))/(Ab(1500cm−1))
なお、このポリイミド前駆体のイミド化率の測定は、芳香族系ポリイミド前駆体のイミド化率の測定に適用される。脂肪族ポリイミド前駆体のイミド化率を測定する場合、芳香環の吸収ピークに代えて、イミド化反応前後で変化のない構造由来のピークを内部標準ピークとして使用する。
−ポリイミド前駆体の末端アミノ基−
特定ポリイミド前駆体は、末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体(樹脂)を含むことがよく、好ましくは全ての末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体とすることがよい。
ポリイミド前駆体の分子末端にアミノ基を持たせるには、例えば、重合反応の際に使用するジアミン化合物のモル当量を、テトラカルボン酸二無水物のモル当量より過剰に添加することで実現される。ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とのモル当量の比は、テトラカルボン酸のモル当量を1に対して、1.0001以上1.2以下の範囲とすることが好ましく、より好ましくは、1.001以上1.2以下の範囲である。
ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とのモル当量の比が1.0001以上であれば、分子末端のアミノ基の効果が大きく、良好な分散性が得られる。また、モル当量の比が1.2以下であれば、得られるポリイミド前駆体の分子量が大きく、例えば、フィルム状のポリイミド成形体としたときに、十分なフィルム強度(引裂き強度、引張り強度)が得られ易い。
特定ポリイミド前駆体の末端アミノ基は、ポリイミド前駆体組成物にトリフルオロ酢酸無水物(アミノ基に対して定量的に反応)を作用させることによって検出される。すなわち、特定ポリイミド前駆体の末端アミノ基をトリフルオロ酢酸によりアミド化する。処理後、特定ポリイミド前駆体を再沈殿などで精製して過剰のトリフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸残渣を除去する。処理後の特定ポリイミド前駆体について、核磁気共鳴(NMR)法によって定量することで、特定ポリイミド前駆体の末端アミノ基量が測定される。
特定ポリイミド前駆体の数平均分子量は、1000以上100000以下であることがよく、より好ましくは5000以上50000以下、更に好ましくは10000以上30000以下である。
特定ポリイミド前駆体の数平均分子量を上記範囲とすると、特定ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性の低下が抑制され、製膜性が確保され易くなる。特に、末端にアミノ基を有する樹脂を含む特定ポリイミド前駆体を適用した場合、分子量が低くなると、末端アミノ基の存在率が高まり、ポリイミド前駆体組成物中の共存する有機アミン化合物の影響を受けて溶解性が低下し易いが、特定ポリイミド前駆体の数平均分子量の範囲を上記範囲にすることで、溶解性の低下を抑制することができる。
なお、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とのモル当量の比を、調整することで、目的とする数平均分子量の特定ポリイミド前駆体が得られる。
特定ポリイミド前駆体の数平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される。
・カラム:東ソーTSKgelα−M(7.8mm I.D×30cm)
・溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/30mMLiBr/60mMリン酸
・流速:0.6mL/min
・注入量:60μL
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
特定ポリイミド前駆体の含有量(濃度)は、全ポリイミド前駆体組成物に対して、0.1質量%以上40質量%以下であることがよく、好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、より好ましくは1質量%以上20質量%以下である。
(有機アミン化合物)
有機アミン化合物は、特定ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)をアミン塩化して、その溶剤に対する溶解性を高めると共に、イミド化促進剤としても機能する化合物である。有機アミン化合物は、界面活性を有さない非界面活性のアミン化合物である。具体的には、有機アミン化合物は、分子量170以下のアミン化合物であることがよい。
なお、有機アミン化合物は、水溶性の化合物であることがよい。ここで、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
有機アミン化合物としては、1級アミン化合物、2級アミン化合物、3級アミン化合物が挙げられる。
これらの中でも、有機アミン化合物としては、2級アミン化合物、及び3級アミン化合物から選択される少なくとも一種(特に、3級アミン化合物)がよい。有機アミン化合物として、3級アミン化合物又は2級アミン化合物を適用すると(特に、3級アミン化合物)、特定ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなり、また、ポリイミド前駆体組成物の保存安定性が向上し易くなる。
また、有機アミン化合物としては、1価のアミン化合物以外にも、2価以上の多価アミン化合物も挙げられる。2価以上の多価アミン化合物を適用すると、特定ポリイミド前駆体の分子間に疑似架橋構造を形成し易くなり、また、ポリイミド前駆体組成物の保存安定性が向上し易くなる。
1級アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、2−エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、などが挙げられる。
2級アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、モルホリンなどが挙げられる。
3級アミン化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、トリエチルアミン、ピコリン、メチルモルホリン、エチルモルホリンなどが挙げられる。
多価アミン化合物としては、例えば、イソキノリン類(イソキノリン骨格を有するアミン化合物)、ピリジン類(ピリジン骨格を有するアミン化合物)、ピリミジン類(ピリミジン骨格を有するアミン化合物)、ピラジン類(ピラジン骨格を有するアミン化合物)、ピペラジン類(ピペラジン骨格を有するアミン化合物)、トリアジン類(トリアジン骨格を有するアミン化合物)、イミダゾール類(イミダゾール骨格を有するアミン化合物)、ポリアニリン、ポリピリジン、ポリアミンなどが挙げられる。
これらの中でも、有機アミン化合物としては、沸点が60℃以上(好ましくは60℃以上200℃以下、より好ましくは70℃以上150℃以下)の化合物であることがよい。有機アミン化合物の沸点を60℃以上とすると、保管時に、ポリイミド前駆体組成物から有機アミン化合物が揮発するのを抑制し、特定ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性の低下が抑制され易くなる。
有機アミン化合物は、特定ポリイミド前駆体中に含まれるカルボキシル基に対して、30モル%以上500モル%以下で含有することがよく、好ましくは50モル%以上250モル%以下、より好ましくは70モル%以上200モル%以下で含有することである。
有機アミン化合物の含有量を上記範囲とすると、特定ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなる。また、ポリイミド前駆体組成物の保存安定性も向上し易くなる。
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤は、陽イオン性の親水基を有し、界面活性を有する化合物である。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等の周知の界面活性剤が挙げられる。具体的には、カチオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数30以上の有機基(例えばアルキル鎖、アルケニル鎖等)を有さない分子量200以上の界面活性剤であることがよい。つまり、カチオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数30未満の有機基(例えばアルキル鎖、アルケニル鎖等)を有する分子量200以上の界面活性剤であることがよい。
カチオン性界面活性剤としては、保存安定性、臭気低減の点から、特に、下記一般式(II)で表される第4級アンモニウム塩であることがよい。
一般式(II)中、Xは、塩素原子、又は臭素原子を示し、R、R、R、及びRは、各々独立に炭素数1以上22以下の有機基を示す。
一般式(II)中、R、R、R、及びRが表す有機基としては、炭素数1以上22以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数1以上22以下の置換若しくは無置換のアルケニル基が挙げられる。
ここで、一般式(II)中、保存安定性、臭気低減の点から、R、R、R、及びRのうち、少なくとも1つが炭素数8以上22以下の有機基(以下「高炭素数有機基」と称する)を示すことがよく、残りが炭素数1以上6以下の有機基(以下「低炭素数有機基」と称する)を示すことがよい。具体的には、R、R、R、及びRのうち、1つ又は2つが高炭素数有機基を示すことがよく、残りが低炭素数有機基を示すことがよい。
高炭素数有機基としては、例えば、炭素数8以上22以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数8以上22以下の置換若しくは無置換のアルケニル基が挙げられる。
炭素数8以上22以下の無置換のアルキル基としては、炭素数10以上22以下のアルキル基が好ましく、炭素数12以上22以下のアルキル基がより好ましい。炭素数8以上22以下の無置換のアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状、又は分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
炭素数8以上22以下の無置換のアルケニル基としては、炭素数10以上22以下のアルケニル基が好ましく、炭素数12以上22以下のアルケニル基がより好ましい。アルケニル基は、炭素−炭素間の結合の中に二重結合を1つ又は2つ有する基であることがよい。アルケニル基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状、又は分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
低炭素数有機基としては、例えば、炭素数1以上6以下の置換若しくは無置換の
アルキル基が挙げられる。
炭素数1以上6以下の無置換のアルキル基としては、炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上2以下のアルキル基がより好ましい。炭素数1以上6以下の無置換のアルキル基は、直鎖状、及び分岐状のいずれであってもよく、直鎖状が好ましい。
なお、アルキル基及びアルケニル基に置換する置換基としては、例えば、アリール基(例えばフェニル基等)が挙げられる。
特に、一般式(II)で表される第4級アンモニウム塩としては、XがClを示し、
がn−ドデシル基を示し、Rがメチル基を示し、Rがメチル基を示し、Rがメチル基を示す第4級アンモニウム塩であることが好ましい。
一般式(II)で表される第4級アンモニウム塩として具体的には、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウム塩;アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド等のアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;トリメチルフェニルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
カチオン性界面活性剤の分子量は、保存安定性、臭気低減の点から、200以上が好ましく、250以上がより好ましく、300以上が更に好ましい。
カチオン性界面活性剤は、ポリイミド前駆体樹脂組成物全体に対して、0.0001質量%以上0.5質量%以下で含有することがよく、好ましくは0.001質量%以上0.1質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上0.05質量%以下で含有することである。
カチオン性界面活性剤の含有量を上記範囲とすると、保存安定性が高まり易くなり、また、臭気の低減され易くなる。
ここで、有機アミン化合物とカチオン性界面活性剤との比率(質量比:有機アミン化合物/カチオン性界面活性剤)は、ポリイミド前駆体組成物の保存安定性、臭気低減の点から、2/1以上30/1以下であることがよく、好ましくは5/1以上25/1以下、より好ましくは10/1以上20/1以下である。
(水性溶剤)
水性溶剤は、水を含む水性溶剤である。水性溶剤は、少なくとも水を70質量%以上含有することがよい。水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。
水は、水性溶剤において70質量%以上100質量%以下で含有され、好ましくは80質量%以上100質量%以下、より好ましくは90質量%以上100質量%以下で含有され、水以外の溶剤を含まないことが特に好ましい。
なお、水性溶剤として水以外の溶剤を含有する場合、例えば水溶性の有機溶剤が好適に用いられる。
水溶性の有機溶剤としては、例えば、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、水溶性アルコール系溶剤等が挙げられる。ここで、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
上記水溶性有機溶剤は、1種単独で用いてもよいが、2種以上併用する場合、例えば、水溶性エーテル系溶剤と水溶性アルコール系溶剤との組合せ、水溶性ケトン系溶剤と水溶性アルコール系溶剤との組合せ、水溶性エーテル系溶剤と水溶性ケトン系溶剤と水溶性アルコール系溶剤との組合せが挙げられる。
水溶性エーテル系溶剤は、一分子中にエーテル結合を持つ水溶性の溶剤である。水溶性エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、トリオキサン、1,2 ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、水溶性エーテル系溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンが好ましい。
水溶性ケトン系溶剤は、一分子中にケトン基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらの中でも、水溶性ケトン系溶剤としては、アセトンが好ましい。
水溶性アルコール系溶剤は、一分子中にアルコール性水酸基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性アルコール系溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。これらの中でも、水溶性アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコールが好ましい。
水性溶剤として水以外の溶剤を含有する場合、併用される溶剤は、沸点が160℃以下であることがよく、好ましくは40℃以上150℃以下、より好ましくは50℃以上120℃以下である。併用される溶剤の沸点を上記範囲とすると、その溶剤がポリイミド成形体に残留し難くなり、機械的強度の高いポリイミド成形体が得られ易くなる。
ここで、特定ポリイミド前駆体が溶剤に溶解する範囲は、水の含有率、有機アミン化合物の種類及び量、並びに、カチオン性界面活性剤の種類及び量によって制御される。水の含有率の低い範囲では、有機アミン化合物及びカチオン性界面活性剤の添加量が少ない領域で特定ポリイミド前駆体は溶解し易くなる。逆に、水の含有率の高い範囲では、有機アミン化合物及びカチオン性界面活性剤の添加量が多い領域で特定ポリイミド前駆体は溶解し易くなる。また、有機アミン化合物が水酸基を含むなど親水性が高い場合は、水の含有率の高い領域で特定ポリイミド前駆体は溶解し易くなる。
(その他の添加剤)
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、これを用いて製造するポリイミド成形体に導電性や、機械強度などの各種機能を付与することを目的として、各種フィラーなどを含んでもよいし、また、イミド化反応促進のための触媒や、製膜品質向上のためのレベリング材などを含んでもよい。
導電性付与のため添加される導電材料としては、導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm未満、以下同様である)もしくは半導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下、以下同様である)のものが挙げられ、使用目的により選択される。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック(例えばpH5.0以下の酸性カーボンブラック)、金属(例えばアルミニウムやニッケル等)、金属酸化物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等)、イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等)、導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなど)等が挙げられる。
これら導電材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
また、導電材料が粒子状の場合、その一次粒径が10μm未満、好ましくは1μm以下の粒子であることがよい。
機械強度向上のため添加されるフィラーとしては、シリカ粉、アルミナ粉、硫酸バリウム粉、酸化チタン粉、マイカ、タルクなどの粒子状材料が挙げられる。また、ポリイミド成形体表面の撥水性、離型性改善のためには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂粉末などを添加してもよい。
イミド化反応促進のための触媒には、酸無水物など脱水剤、フェノール誘導体、スルホン酸誘導体、安息香酸誘導体などの酸触媒などを使用してもよい。
その他の添加剤の含有量は、製造するポリイミド成形体の使用目的に応じて選択すればよい。
<ポリイミド前駆体組成物の製造方法>
本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物の製造方法としては、特に限定されるものではないが、下記(1)又は(2)に示す製造方法が挙げられる。なお、カチオン性界面活性剤は、下記(1)又は(2)に示す製造方法の過程において添加する。
(1): 水を含む水性溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(以下、「ポリイミド前駆体」と称する)を生成する工程(以下「重合工程」と称する)と、樹脂を生成した後、樹脂が生成した水性溶剤に有機アミン化合物を添加する工程(以下、「アミン塩化工程」と称する)と、を有する製造方法。
なお、(1)に示す製造方法では、必要に応じて、重合工程後、溶剤を置換又は溶剤組成を変更する工程(以下、「溶剤置換工程」と称する」)を有してもよい。
(1)に示す製造方法では、水を含む水性溶剤中で、ポリイミド前駆体を生成した後、その溶剤に有機アミン化合物を添加し、ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)のアミン塩化を行う。
(1)に示す製造方法では、ポリイミド前駆体の生成後に、有機アミン化合物を添加する(重合工程では有機アミン化合物を添加しない)ことから、有機アミン化合物によるポリイミド前駆体の生成阻害(重合反応の阻害)が抑制される。
ここで、(1)に示す製造方法において、カチオン性界面活性剤は、重合工程、アミン塩化工程、溶剤置換工程のいずれかの工程中に組成物中に添加する。また、カチオン性界面活性剤は、全ての工程を実施後に組成物中に添加してもよい。
以下、(1)に示す製造方法の各工程について説明する。なお、使用する各材料は、上記本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物で説明したものと同様であるため、説明を省略する。
(重合工程)
重合工程では、水を含む水性溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリイミド前駆体を生成する。
ポリイミド前駆体の重合反応時の反応温度は、例えば、0℃以上70℃以下であることがよく、好ましくは10℃以上60℃以下、より好ましくは20℃以上55℃以下である。この反応温度を0℃以上とすることで、重合反応により発生する反応熱を除去して重合反応の進行を促進し、反応に要する時間が短時間化され、生産性が向上し易くなる。一方、反応温度を70℃以下とすると、生成したポリイミド前駆体の分子内で生じるイミド化反応の進行が抑制され、ポリイミド前駆体の溶解性低下に伴う析出、又はゲル化が抑制され易くなる。
なお、ポリイミド前駆体の重合反応時の時間は、反応温度により1時間以上24時間以下の範囲とすることがよい。
(アミン塩化工程)
アミン塩化工程では、ポリイミド前駆体を生成した後、溶剤に有機アミン化合物を添加し、ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)のアミン塩化を行う。これにより、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まる。
アミン塩化工程では、溶剤としての水も添加してもよい。
(溶剤置換工程)
溶剤置換工程は、例えば、ポリイミド前駆体の生成後の溶液中の溶剤組成を変更し、製造するポリイミド前駆体組成物の安定化、生成するポリイミド前駆体の溶解及び固形分濃度の調整等を目的として行われる。
溶剤置換工程は、水、その他溶剤を添加することや、目的とする溶剤を除去することで行われる。溶剤の除去には、加熱及び減圧を行って溶剤を留去する方法(留去法)、水を添加して、ポリイミド前駆体を析出させた後、溶剤を分離除去する再沈殿法が挙げられる。溶剤の除去は、留去法と再沈殿法と組み合わせて行ってもよい。
溶剤置換工程又は溶剤組成変更工程とアミン塩化工程とはどちらを先に行ってもよい。また、両工程を並行して行ってもよい。
なお、溶剤置換工程は、ポリイミド前駆体の生成後、溶液中の溶剤組成変更の必要がなければ、実施しなくてもよい工程である。
ここで、溶剤置換工程を実施する場合、アミン塩化工程は、以下の第1アミン塩化工程又は第2アミン塩化工程を実施することがよい。
−第1アミン塩化工程−
第1アミン塩化工程では、ポリイミド前駆体を生成した後、溶剤に水を添加して、ポリイミド前駆体と溶剤とを分離し、分離後の溶剤の一部を除去した後、残部に水及び有機アミン化合物を添加する。
具体的には、例えば、第1アミン塩化工程では、ポリイミド前駆体を生成した後、溶剤に水を過剰に添加すると、ポリイミド前駆体の溶解性が低下し、析出する結果、ポリイミド前駆体と溶剤とが分離する。溶剤に添加する水の添加量は、例えば、全溶剤に対して、例えば、10質量%以上300質量%以下(好ましくは50質量%以上200質量%以下)がよい。
ポリイミド前駆体と溶剤とが分離すると、ポリイミド前駆体が沈降し、上澄みが溶剤となり、この上澄み液を除去することで、分離後の溶剤の一部を除去する。この溶剤の一部の除去は、上澄み液の除去に限られず、ろ過等により行ってよい。
そして、残部に、溶剤となる水と共に有機アミン化合物(例えば、有機アミン化合物が溶解した水溶液)を添加すると、溶剤置換が行われると共に、ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)のアミン塩化が行われる。
第1アミン塩化工程を行うと、純度の高いポリイミド前駆体組成物が得られ易くなる。
−第2アミン塩化工程−
第2アミン塩化工程では、ポリイミド前駆体を生成した後、溶剤の一部を留去した後又は溶剤の一部を留去しながら、残部に有機アミン化合物を添加する。
具体的には、例えば、第2アミン塩化工程では、ポリイミド前駆体を生成した後、加熱及び減圧にして、溶剤の一部を留去する。この溶剤の留去は、主に有機溶剤の留去である。そして、この溶剤の留去をした後又は溶剤の一部を留去しながら、有機アミン化合物を添加すると、溶剤組成変更が行われると共に、ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)のアミン塩化が行われる。なお、有機アミン化合物を添加するとき、溶剤として水も添加してもよい。
第2アミン塩化工程を行うと、ポリイミド前駆体の析出等を経ずに、簡易な工程で、溶剤置換されたポリイミド前駆体組成物が得られ易くなる。
(2):水を含む水性溶剤中で、有機アミン化合物の存在下、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(以下、「ポリイミド前駆体」と称する)を生成する工程(以下「重合工程」と称する)を有する製造方法。
なお、(2)に示す製造方法では、必要に応じて、重合工程後、溶剤を置換又は溶剤組成を変更する工程(以下、「溶剤置換工程」と称する」)を有してもよい。
(2)に示す製造方法では、非プロトン系極性溶剤を含まないか、または少なくとも非プロトン系極性溶剤の含有量が低減された水性溶剤中で、有機アミン化合物の存在下、ポリイミド前駆体の生成を行う。
ここで、(2)に示す製造方法において、カチオン性界面活性剤は、重合工程、溶剤置換工程のいずれかの工程中に組成物中に添加する。また、カチオン性界面活性剤は、全ての工程を実施後に組成物中に添加してもよい。
なお、(1)及び(2)に示す製造方法では、溶剤として、ポリイミド成形体の機械的強度の低下の原因となる非プロトン系極性溶剤を使用しない、又は非プロトン系極性溶剤の使用量を低減している。このため、(1)及び(2)に示す製造方法では、機械的強度の高いポリイミド成形体が得られるポリイミド前駆体組成物が製造される。また、(1)及び(2)に示す製造方法では、機械的強度に加え、耐熱性、電気特性、耐溶剤性等の諸特性に優れたポリイミド成形体が得られ易いポリイミド前駆体組成物が製造される。
更に、(1)及び(2)に示す製造方法では、溶剤として、水を含む水性溶剤を適用しているため、生産性も高く、ポリイミド前駆体組成物が製造される。特に、溶剤置換を行う場合、過剰な加熱が必要なく、生成されたポリイミド前駆体の熱イミド化が抑制され易い。
<ポリイミド成形体及びその製造方法>
本実施形態に係るポリイミド成形体の製造方法は、本実施形態に係るポリイミド前駆体組成物(以下、「特定ポリイミド前駆体組成物」とも称する)を加熱処理して成形するポリイミド成形体の製造方法である。
具体的には、本実施形態に係るポリイミド成形体の製造方法は、例えば、特定ポリイミド前駆体組成物を被塗布物上に塗布して塗膜を形成する工程(以下「塗膜形成工程」と称する)と、塗膜を加熱処理してポリイミド樹脂層を形成する工程(以下「加熱工程」称する)と、を有する。
(塗膜形成工程)
まず、被塗布物を準備する。この被塗布物は、製造するポリイミド成形体の用途に応じて選択される。
具体的には、ポリイミド成形体として液晶配向膜を製造する場合、被塗布物としては、液晶素子に適用される各種基板が挙げられ、例えば、シリコン基板、ガラス基板又はこれら表面に金属又は合金膜が形成された基板等が挙げられる。
また、ポリイミド成形体としてパッシベーション膜を製造する場合、被塗布物としては、例えば、集積回路が形成された半導体基板、配線が形成された配線基板、電子部品及び配線が設けられたプリント基板等から選択される。
また、ポリイミド成形体として電線被覆材を製造する場合、被塗布物としては、例えば、各種の電線(軟銅、硬銅、無酸素銅、クロム鉱、アルミニウム等の金属又は合金製の線材、棒材、又は板材)が挙げられる。なお、ポリイミド成形体をテープ状に成形・加工し、これを電線に巻き付けるテープ状の電線被覆材として利用する場合、各種の平面基板又は円筒状基体が被塗布物として利用される。
また、ポリイミド成形体として接着膜を製造する場合、例えば、接着対象となる各種の成形体(例えば、半導体チップ、プリント基板等の種々の電器部品等)が挙げられる。
次に、特定ポリイミド前駆体組成物を目的とする被塗布物に塗布し、特定ポリイミド前駆体組成物の塗膜を形成する。
特定ポリイミド前駆体組成物の塗布法は、特に制限はなく、例えば、スプレー塗布、回転塗布法、ロール塗布法、バー塗布法、スリットダイ塗布法、インクジェット塗布法等の各種の塗布法が挙げられる。
(加熱工程)
次に、特定ポリイミド前駆体組成物の塗膜に対して、乾燥処理を行う。この乾燥処理により、乾燥膜(乾燥したイミド化前の皮膜)を形成する。
乾燥処理の加熱条件は、例えば80℃以上200℃以下の温度で10分間以上60分間以下がよく、温度が高いほど加熱時間は短くてよい。加熱の際、熱風を当てることも有効である。加熱のときは、温度を段階的に上昇させたり、速度を変化させずに上昇させてもよい。
次に、乾燥膜に対して、イミド化処理を行う。これにより、ポリイミド樹脂層が形成される。
イミド化処理の加熱条件としては、例えば150℃以上400℃以下(好ましくは200℃以上300℃以下)で、20分間以上60分間以下加熱することで、イミド化反応が起こり、ポリイミド樹脂層が形成される。加熱反応の際、加熱の最終温度に達する前に、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱することがよい。
以上の工程を経て、ポリイミド成形体が形成される。そして、必要に応じて、ポリイミド成形体を被塗布物から取り出し、後加工が施される。
<ポリイミド成形体>
本実施形態に係るポリイミド成形体は、上記本実施形態に係るポリイミド成形体の製造方法により得られるポリイミド成形体である。このポリイミド成形体としては、例えば、液晶配向膜、パッシベーション膜、電線被覆材、接着膜等の各種のポリイミド成形体が例示される。その他、ポリイミド成形体としては、例えば、フレキシブル電子基板フィルム、銅張積層フィルム、ラミネートフィルム、電気絶縁フィルム、燃料電池用多孔質フィルム、分離フィルム、耐熱性皮膜、ICパッケージ、レジスト膜、平坦化膜、マイクロレンズアレイ膜、光ファイバー被覆膜等も例示される。
ポリイミド成形体としては、ベルト部材も挙げられる。ベルト部材としては、駆動ベルト、電子写真方式の画像形成装置用のベルト(例えば、中間転写ベルト、転写ベルト、定着ベルト、搬送ベルト)等が例示される。
つまり、本実施形態に係るポリイミド成形体の製造方法は、上記例示された各種のポリイミド成形体の製造方法に適用され得る。
本実施形態に係るポリイミド成形体には、特定ポリイミド前駆体組成物に含まれる水性溶剤、有機アミン化合物、及びカチオン性界面活性剤が含有される。
本実施形態に係るポリイミド成形体に含有される水性溶剤は、ポリイミド成形体中、1ppb以上1%未満である。ポリイミド成形体中に含有される水性溶剤の量は、ポリイミド成形体を加熱して発生するガス分をガスクロマトグラフィー法により定量される。また、ポリイミド成形体中に含まれる、有機アミン化合物及びカチオン性界面活性剤の量についても、ポリイミド成形体を加熱して発生するガス分をガスクロマトグラフィー法により定量される。
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
<実施例1>
[ポリイミド前駆体組成物(A−1)、(A−2)の作製]
−重合工程−
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、テトラヒドロフラン(以下、THFと表記)360g、水40gを充填した。乾燥した窒素ガスを通じながら、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下、ODAと表記:分子量200.24)41.23g(205.92ミリモル)を添加した。溶液温度を30℃に保ちながら撹拌を行い、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと表記:分子量294.22)58.77g(199.75ミリモル)を徐々に添加した。ジアミン化合物、テトラカルボン酸二無水物の溶解を確認後、さらに、反応温度を30℃に保持しながら、24時間反応を行った。後述の方法でポリイミド前駆体溶液(固形分20質量%)の粘度を測定したところ、70Pasであった。
なお、生成したポリイミド前駆体のイミド化率は0.02であり、既述の末端アミノ基量の測定の結果、少なくとも一つの末端にアミノ基を有するものであった。
−アミン塩化工程−
重合工程で得たポリイミド前駆体溶液を撹拌しながら、ジメチルアミノエタノール(以下、DMAEtと表記:分子量89.14:有機アミン化合物)35.62g(399.5ミリモル)と水400gを添加した。これにより、ポリイミド前駆体がアミン塩化により水溶化したポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液に、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド「商品名コータミン24P(花王(株)製):カチオン性界面活性剤」を得られるポリイミド前駆体組成物に対して0.01質量%となる量で添加し、この溶液をポリイミド前駆体樹脂組成物(A−1)とした。得られたポリイミド前駆体樹脂組成物(A−1)の組成は以下の通りである。
〜ポリイミド前駆体樹脂組成物(A−1)の組成〜
・固形分: 10%(ポリイミドとしての固形分率)
・溶剤組成比: THF/水=360g/440g
−溶剤置換工程−
ポリイミド前駆体樹脂組成物(A−1)を撹拌しながら、10mmHg/30℃で減圧し、THFの一部を留去して、下記組成のポリイミド前駆体樹脂組成物(A−2)を得た。
〜ポリイミド前駆体樹脂組成物(A−2)の組成〜
・粘度: 50Pas
・固形分: 13.0%(ポリイミドとしての固形分率)
・溶剤組成比: THF/水=6/94
なお、各測定は以下の通りである。
(粘度測定方法)
粘度は、E型回転粘度計を用いて下記条件で測定を行った。
・測定装置: E型回転粘度計TV−20H(東機産業株式会社)
・測定プローブ: No.3型ローター3°×R14
・測定温度: 22℃
(固形分測定方法)
固形分は、示差熱熱重量同時測定装置を用いて下記条件で測定した。なお、380℃の測定値をもって、固形分はポリイミドとしての固形分率として測定した。
・測定装置: 示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6200(セイコーインスツルメンツ株式会社)
・測定範囲: 20℃以上400℃以下
・昇温速度: 20℃/分
(溶剤組成、溶剤中の水分量)
ポリイミド前駆体組成物中の水分率電量滴定方式自動水分測定装置(カールフィッシャー)を用いて、下記条件で水分率を測定した。測定値から試料中に含まれる樹脂分を除することで、溶剤中の水分量を算出した。これにより、溶剤組成を求めた。
・測定装置: 電量滴定方式自動水分測定装置(カールフィッシャー)CA−07型(三菱化学株式会社)
・試料量: 10μl
<評価>
得られたポリイミド前駆体組成物(A−1)、(A−2)の保存安定性について評価した。また、ポリイミド前駆体組成物(A−1)、(A−2)を用いて製膜を行って、フィルムを作製し、その塗布安定性及び製膜性について評価した。
(保存安定性)
ポリイミド前駆体組成物(A−1)、(A−2)の調製直後、及び室温(25℃)で20日間保管後の液状性、及び粘度を調べた。
(塗布安定性)
ポリイミド前駆体組成物(A−1)、(A−2)を用い、下記操作により製膜を行った。塗布直後の塗膜について、(1)表面ムラ・模様、(2)はじきを評価した。
・塗布法: 塗布厚100μmとなるようにスペーサーを設置した塗布ブレードを用いたバーコート法。
・塗布基材: 1.1mmtガラス板
・乾燥温度: 60℃×10分
・焼成温度: 250℃×30分
(1)表面ムラ・模様
塗膜表面に発生する表面ムラ・模様の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎: 表面ムラ、模様の発生が見られない。
○: 塗膜表面の一部に表面ムラ、模様が僅かに確認できる(塗膜表面面積の10%未満)。
△: 塗膜表面の一部に表面ムラ、模様が確認できる。
×: 塗膜表面に表面ムラ、模様が一様に発生している(塗膜表面面積の10%以上)。
(2)はじき
塗膜表面に発生するはじきの有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎: はじきの発生が見られない。
○: 塗膜表面の一部に表はじきが僅かに確認できる(塗膜表面面積の5%未満)。
△: 塗膜表面の一部にはじきが確認できる。
×: 塗膜表面にはじきが一様に発生している(塗膜表面面積の15%以上)。
(製膜性)
ポリイミド前駆体組成物(A−1)、(A−2)を用い、下記操作により製膜を行った。製膜フィルムについて、(3)ボイド痕、(4)表面ムラ・模様を評価した。
(3)ボイド痕
製膜フィルム表面のボイド痕の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎: ボイド痕の発生が見られない。
○: 製膜フィルム表面に1個以上10個未満のボイド痕が確認できる。
△: 製膜フィルム表面に10個以上の50未満のボイド痕が点在する。
×: 製膜フィルム表面に無数のボイド痕が一様に発生している。
(4)表面ムラ・模様:
製膜フィルム体表面に発生する表面ムラ、模様の有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎: 表面ムラ、模様の発生が見られない。
○: 製膜フィルム表面の一部に表面ムラ、模様が僅かに確認できる(製膜フィルム表面面積の10%未満)。
△: 製膜フィルム表面の一部に表面ムラ、模様が確認できる。
×: 製膜フィルム表面に表面ムラ、模様が一様に発生している(製膜フィルム表面面積の10%以上)。
<実施例2〜6>
[ポリイミド前駆体組成物(A−3)〜(A−7)の作製]
ポリイミド前駆体組成物の重合工程およびアミン塩化工程、溶剤置換工程の条件を、下記表1に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体組成物(A−3)〜(A−7)を作製した。
そして、実施例1と同様に保存安定性について評価した後、製膜して塗布安定性、及び製膜性について評価をした。評価結果を表1に示す。
<比較例1>
[ポリイミド前駆体組成物(X−1)、(X−2)の作製]
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと表記)400gを充填した。乾燥した窒素ガスを通じながら、ODA41.23g(205.92ミリモル)を添加した。溶液温度を30℃に保ちながら攪拌を行い、BPDA58.77g(199.75ミリモル)を徐々に添加した。ジアミン化合物、テトラカルボン酸二無水物の溶解を確認後、さらに、反応温度を30℃に保持しながら、24時間反応を行った。前述の方法でポリイミド前駆体溶液(固形分20質量%)の粘度を測定したところ、160Pasであった。
得られたポリイミド前駆体水溶液に、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド「商品名コータミン24P(花王(株)製):カチオン性界面活性剤」を得られるポリイミド前駆体組成物に対して0.01質量%となる量で添加し、この溶液をポリイミド前駆体組成物(X−1)とした。
そして、実施例1と同様に保存安定性について評価した後、製膜して塗布安定性、及び製膜性について評価をした。評価結果を表2に示す。
なお、得られたポリイミド前駆体組成物(X−1)と、実施例1で得られた(A−1)を、それぞれ50℃24時間の環境下で保管した。保管後の(X−1)を(X−2)とする。(X−2)と(A−1)の液状を比較したところ、(A−1)は樹脂が均一に近い状態で溶解して安定であったが、(X−2)は樹脂が析出してしまった。保管温度を50℃とすると、イミド化が進行したために樹脂が析出してしまったと考えられる。
<比較例2>
[ポリイミド前駆体組成物(X−3)の作製]
ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド(カチオン性界面活性剤)を添加しなかった以外は、実施例1のポリイミド前駆体組成物(A−2)と同様にしてポリイミド前駆体組成物(X−3)を作製した。室温(25℃)で20日間保管後の(X−3)の溶液性状を確認したところ、ゲル化してしまっていた。原因は、カチオン性界面活性剤を添加していなかったために徐々に増粘してしまったためであると考えられる。
<比較例3>
[ポリイミド前駆体組成物(X−4)の作製]
ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド(カチオン性界面活性剤)を添加しなかった以外は、ポリイミド前駆体組成物(A−3)と同様にしてポリイミド前駆体組成物(X−4)を作製した。室温(25℃)で5日間保管後の(X−4)の溶液性状を確認したところ、ゲル化してしまっていた。原因は、カチオン性界面活性剤を添加していなかったために急速に増粘してしまったと考えられる。
<実施例7>
[ポリイミド前駆体組成物(B−1)の作製]
−重合工程−
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、水900gを充填した。ここに、p−フェニレンジアミン(以下、PDAと表記:分子量108.14)27.28g(252.27ミリモル)と、メチルモルホリン(以下、MMOと表記:有機アミン化合物)50.00g(494.32ミリモル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。この溶液に、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド「商品名コータミン24P(花王(株)製):カチオン性界面活性剤」を得られるポリイミド前駆体組成物に対して0.01質量%となる量で添加した。更に、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと表記:分子量294.22)72.72g(247.16ミリモル)を添加し、反応温度20℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、ポリイミド前駆体水溶液(B−1)を得た。
そして、実施例1と同様に保存安定性について評価した後、製膜して塗布安定性、及び製膜性について評価をした。評価結果を表3に示す。
なお、生成したポリイミド前駆体のイミド化率は0.02であり、既述の末端アミノ基量の測定の結果、少なくとも末端にアミノ基を有するものものであった。
<実施例8〜22>
[ポリイミド前駆体組成物(B−2)〜(B−16)の作製]
ポリイミド前駆体組成物の重合工程の条件を、表3〜表5に記載の条件に変更した以外は、実施例7と同様にして、ポリイミド前駆体組成物(B−2)〜(B−16)を作製した。
そして、実施例1と同様に保存安定性について評価した後、製膜して塗布安定性、及び製膜性について評価をした。評価結果を表3〜表5に示す。
なお、実施例22で生成したポリイミド前駆体は、既述の末端アミノ基量の測定の結果、アミノ基末端を含まず、全末端がカルボキシル基を有するものであった。
<比較例4>
[ポリイミド前駆体組成物(Y−1)の作製]
−重合工程−
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、NMP900gを充填した。ここに、PDA27.28g(252.27ミリモル)を添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。この溶液にBPDA72.72g(247.16ミリモル)を添加し、反応温度を20℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、ポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液に、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド「商品名コータミン24P(花王(株)製)」を得られるポリイミド前駆体組成物に対して0.01質量%となる量で添加し、この溶液をポリイミド前駆体組成物(Y−1)とした。
そして、実施例1と同様に保存安定性について評価した後、製膜して塗布安定性、及び製膜性について評価をした。評価結果を表2に示す。
なお、得られたポリイミド前駆体組成物(Y−1)と、実施例7で得られた(B−1)を、それぞれ50℃24時間の環境下で保管した。保管後の(Y−1)を(Y−2)とする。(Y−2)と(B−1)の液状を比較したところ、(B−1)は樹脂が均一に近い状態で溶解して安定であったが、(Y−2)は樹脂が析出してしまった。保管温度を50℃とすると、イミド化が進行したために樹脂が析出してしまったことが考えられる。
<比較例5>
[ポリイミド前駆体組成物(Y−3)の作製]
−重合工程−
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、水900gを充填した。ここに、PDA27.28g(252.27ミリモル)と、MMO51.03g(504.54ミリモル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。この溶液にBPDA72.72g(247.16ミリモル)を添加し、反応温度を20℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、ポリイミド前駆体組成物(Y−3)を得た。
室温(25℃)で20日間保管後の(Y−3)の溶液性状を確認したところ、ゲル化してしまっていた。原因は、カチオン性界面活性剤を添加していなかったために徐々に増粘してしまったと考えられる。
<比較例6>
[ポリイミド前駆体組成物(Y−4)の作製]
ポリイミド前駆体組成物の重合工程の条件を、表6に記載の条件に変更した以外は、実施例7と同様にして、ポリイミド前駆体組成物(Y−4)を作製した。
そして、実施例1と同様に保存安定性について評価した後、製膜して塗布安定性、及び製膜性について評価をした。評価結果を表6に示す。
<比較例7>
[ポリイミド前駆体組成物(Y−5)の作製]
ポリイミド前駆体組成物の重合工程の条件を、表6に記載の条件に変更した以外は、実施例7と同様にして、ポリイミド前駆体組成物(Y−5)を作製した。
そして、実施例1と同様に保存安定性について評価した後、製膜して塗布安定性、及び製膜性について評価をした。評価結果を表6に示す。
<比較例8>
[ポリイミド前駆体組成物(Y−6)の作製]
ポリイミド前駆体組成物の重合工程の条件を、表6に記載の条件に変更した以外は、実施例7と同様にして、ポリイミド前駆体組成物(Y−6)を作製した。
そして、実施例1と同様に保存安定性について評価した後、製膜して塗布安定性、及び製膜性について評価をした。評価結果を表6に示す。
<比較例9>
[ポリイミド前駆体組成物(Y−7)の作製]
ポリイミド前駆体組成物の重合工程の条件を、表6に記載の条件に変更した以外は、実施例7と同様にして、ポリイミド前駆体組成物(Y−7)を作製した。
室温(25℃)で5日間保管後の(Y−7)の溶液性状を確認したところ、ゲル化してしまっていた。原因は、カチオン性界面活性剤を添加していなかったために急速に増粘してしまったと考えられる。
<臭気検査>
各例で得られたポリイミド前駆体組成物の臭気について、試験者A〜Jの計10名による検査を行った。試験者A〜Jは無作為に抽出した男女5名で、試料素性を隠し試料番号により最も悪臭のする試料を選定する方法で行った。
臭気検査は、ポリイミド前駆体組成物(A−1)〜(A−7)及び(X−3)の試料を用いて行った臭気検査(1)と、ポリイミド前駆体組成物(B−1)〜(B−16)及び(Y−3)の試料を用いて行った臭気検査(2)と、の2回に分けて行った。各臭気検査の結果を表7に各々示す。
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、ポリイミド前駆体組成物の保存安定性の評価について良好な結果が得られたことがわかる。
また、本実施例では、比較例に比べ、ポリイミド前駆体組成物の塗布安定性、及び製膜性の評価についても良好な結果が得られたことがわかる。
また、本実施例では、比較例に比べ、同等のアミン化合物の配合量でも臭気が抑制されていることもわかる。
なお、表1〜表6中の略称については、以下の通りである。また、表1〜表6中、「−」は未添加又は未実施を意味している。
・テトラカルボン酸二無水物:「BPDA」(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、「PMDA」(ピロメリット酸二無水物)、「BTDA」(ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)、「CBDA」(シクロブタン−1,2:3,4−テトラカルボン酸二無水物)
・ジアミン化合物:「ODA」(4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)、「PDA」(p−フェニレンジアミン)
・有機アミン化合物:DMAEt(ジメチルアミノエタノール:3級アミン化合物:沸点bp133℃から134℃)、γ−Pyc(γ−ピコリン:3級アミン化合物:沸点bp145℃)、MMO(メチルモルホリン:3級アミン化合物)、1−メチルピペリジン(3級アミン化合物:分子量99.17)、N,N−ジメチルピペラジン(3級アミン化合物:分子量114.19)、1−メチルピロリジン(3級アミン化合物:分子量85.15)、モルホリン(2級アミン化合物:分子量87.1)
・界面活性剤(カチオン性界面活性剤):LTMAC(ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、商品名「コータミン24P(花王(株)製)」)、STMAC(ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、商品名「コータミン86W(花王(株)製)」)
、DSDMAC(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、商品名「コータミンD86P(花王(株)製)」)、ABDMAC(アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)、商品名「サニゾールC(花王(株)製)」)
・溶剤:THF(テトラヒドロフラン:水溶性エーテル系溶剤:沸点bp67℃)、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)
なお、本実施例において、アミン塩化工程又は重合工程での「処理率」は、ポリイミド前駆体中に含まれるカルボキシル基の理論量に対する有機アミン化合物量(モル%)である。ここでカルボキシル基の理論量とは、ポリイミド前駆体に含まれるテトラカルボン酸のモル量を2倍した値を示す。

Claims (8)

  1. 水を含む水性溶剤に、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂と、有機アミン化合物と、アミン塩、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、およびイミダゾリニウム塩から選択される少なくとも1種のカチオン性界面活性剤と、が溶解しており、
    カチオン性界面活性剤の含有量が、ポリイミド前駆体樹脂組成物全体に対して0.0001質量%以上0.5質量%以下であるポリイミド前駆体組成物。



    (一般式(I)中、Aは4価の有機基を示し、Bは2価の有機基を示す。)
  2. 前記カチオン性界面活性剤が、下記一般式(II)で表される第4級アンモニウム塩である請求項1に記載のポリイミド前駆体組成物。


    (一般式(II)中、Xは、塩素原子、又は臭素原子を示し、R、R、R、及びRは、各々独立に炭素数1以上22以下の有機基を示す。
  3. 前記カチオン性界面活性剤の分子量が200以上である請求項1又は2に記載のポリイミド前駆体組成物。
  4. 前記有機アミン化合物が、3級アミン化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
  5. 前記樹脂が、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物とから合成された樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
  6. 前記樹脂が、末端にアミノ基を有する樹脂を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体組成物を加熱処理して成形するポリイミド成形体の製造方法。
  8. 請求項7に記載のポリイミド成形体の製造方法により製造されたポリイミド成形体。
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